本発明は、特に測定装置で使用される、ズームレンズ及び可動ズーム光学系とリニアエンコーダとを含むカメラシステム、並びに、こうしたカメラシステムを備えたレーザートラッカに関する。
こうしたタイプのカメラシステムは、特に、レーザートラッカで使用される。従来技術のレーザートラッカは、大抵の場合、2次元の光感応アレイ、例えばCCDカメラもしくはCIDカメラもしくはCMOSアレイベースのカメラを含む光学画像検出ユニットを備えているか、又は、ピクセルアレイセンサ及び画像処理ユニットを備えている。この場合、レーザートラッカ及びカメラは、特に、相互の位置が相対的に変化しないように取り付けられている。カメラは、例えば、レーザートラッカとともにほぼ垂直の軸を中心として回転可能であり、また、レーザートラッカから独立に上下方向に旋回可能であって、特にレーザービームの光学系から分離されて配置されている。特にカメラに魚眼光学系が設けられる場合には、カメラの画像検出領域がきわめて大きいため、カメラの旋回は回避されるか又は少なくとも低減される。さらに、カメラを、例えばそのつどの適用分野に応じて、唯一の軸を中心として回転可能に構成することもできる。同様に、カメラとレーザービーム学系とを共通のケーシングに組み込んで構成してもよい。
画像検出ユニット及び画像処理ユニットを用いて、いわゆる測定補助ツールの、相対位置が既知となっている複数のマークの画像を検出及び評価することにより、測定補助ツールに配置された対象物(例えばプローブ)の空間内の配向を推定することができる。また、目標点の空間位置とともに、対象物の絶対空間位置及び絶対空間配向、及び/又は、レーザートラッカに対する対象物の相対空間位置及び相対空間配向も正確に求めることができる。
上述した測定装置によって位置及び配向が測定される物体は、対象物そのものではなく、測定補助ツールでなくてはならない。測定補助ツールは、測定装置の要素として、測定の際に、目標対象物に対して機械的に定義された位置、又は、測定中に検出可能な位置へ移動される。ここで、測定された位置及び配向から、対象物(例えば測定プローブ)の位置乃至配向を推定することができる。
こうした測定補助ツールは、その接触点が目標対象物の所定ポイント上に位置決めされる、いわゆるテストツールによって実現される。テストツールは、複数のマーク(例えば複数の光点)と1つのリフレクタとを有しており、リフレクタはテストツールでの目標点を表し、レーザートラッカのレーザービームによって照準可能である。ここで、テストツールの接触点に対する各マーク及びリフレクタの位置は正確に既知となっている。測定補助ツールは、例えば、非接触式の表面測定のための、距離測定部を有するハンドヘルドスキャナであり、スキャナに配置された光点及びリフレクタに対する、距離測定に使用されたスキャナ測定ビームの方向及び位置が正確に既知となる。こうしたスキャナは例えばEP0553266A1に記載されている。
測定補助ツールの配向を求めるために、レーザートラッカのトラッキングビームの方向の画像が検出されるよう、カメラの検出方向が連続的に配向される。
カメラ(可変対物カメラ)にはさらにズーム機能が設けられており、レーザートラッカから目標点乃至測定補助ツールまでの求められた距離に依存して増幅度が調整される。こうした2つの適合化機能(配向及び増幅)により、カメラは連続的に、測定補助ツール(特にその光点)を結像した画像を検出できる。これにより、電子的に評価可能な光点の空間配置の2次元画像が得られる。
この種のレーザートラッカ及び画像検出ユニットを備えた測定装置は、光点及びリフレクタが配置された空間における対象物の位置及び方向を求めるために構成されており、こうした測定装置は、例えばUS5973788に記載されている。
EP1510846A1には、レンズもしくはレンズ群などの光学素子がズーム系の光軸に沿って移動可能に構成されたズーム系に対するガイド装置が開示されている。この場合、光学素子、特にレンズもしくはレンズ群を収容するキャリッジが設けられており、キャリッジの外面は、レンズチューブの内側に当接する当接面となっている。キャリッジの定義された運動に対し、駆動ユニットとしてスピンドルカーブが設けられている。実際の線形位置は、直接には報知されず、モータのステップを計数することによって導出されるので、摩耗によってモータステップが僅かでも増減してしまうと、モータの劣化過程に起因する不正確性が生じる。同様に、例えば装置の振動によって、計数されないステップが生じることもある。これらのことから、キャリッジがシステムによって想定されているのとは異なる位置に動いてしまい、一方では不鮮明な画像及び測定誤差が発生し、他方では装置の損傷が発生するという事態にいたる。
ここで、本発明の課題は、ズームレンズを含むカメラに対して、キャリッジの線形位置を定める際の精度の高い、改善されたガイド装置を提供することである。
また、特別の課題として、特に正確な、改善された位置フィードバックを行えるガイド装置を提供することが挙げられる。
さらなる課題として、レーザートラッカのカメラに対して、こうしたガイド装置を提供することも挙げられる。
これらの課題は、本発明の請求項1及び/又は他の請求項記載の特徴を有するカメラシステムによって解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
本発明のカメラシステムは、レンズ系と、このレンズ系に後置されたカメラセンサ(特にCMOSセンサ)とを含むズームレンズを含む。レンズ系は1つもしくは複数の固定の光学モジュールと、1つもしくは複数の可動ズームレンズ群とを含む。有利には、レンズ系は2つの固定の光学モジュールと2つの可動の光学モジュールとを含み、可動の光学モジュールは固定の光学モジュールの間に配置されている。
可動ズームレンズ群はそれぞれ遊びなしに光学担体に支承されている。光学担体及び光学モジュールは、ここでは、キャリッジの形態の構造ユニットを形成しており、キャリッジはそれぞれ1つずつほぼ円形の断面を有する。
キャリッジはレンズチューブ内でガイドされており、特に、ボールケージ又はスライドエレメントによってレンズチューブとの当接点乃至接触点が形成されることによって、キャリッジ乃至そこに支承されているズームレンズ群が軸方向に運動可能となる。スライドエレメントによるガイドが行われる場合、プリテンションエレメントによって、キャリッジの上面でのスライドエレメントのプリテンションが保証され、ねじ込まれている回転位置合わせスライドエレメントが実質的に遊びなしにレンズチューブの内面に支承される。
レンズチューブとは、本発明では、側面が閉じた中空円筒状の形状だけでなく、光軸に沿ったキャリッジのガイドを保証するチューブ状のガイド装置の機能を意味すると理解されたい。特に、レンズチューブの断面は、円形だけに限られず、楕円形もしくは多角形であってもよい。同様に、レンズチューブは、開口、特に長手スリットの形状の開口を有しているか、又は、光軸の方向に配置された個々の長手セグメントから成っている。個々の長手セグメントは配置によって実質的に中空円筒を取り巻いている。
キャリッジは、レンズチューブのガイド装置とは別個のそれぞれ1つずつの駆動ユニットにより、光軸に沿って運動可能である。駆動ユニットは、モータと運動伝達素子とを有しており、キャリッジはそれぞれ伝導体によって運動伝達素子の運動に結合される。キャリッジに固定されている伝導体により、伝導体のガイドのために管体に設けられている長手方向ガイドスリットに関連して、管体をガイドしている期間中のキャリッジの回転防止が保証される。
伝導体は、有利にはキャリッジの要素として構成される。つまり、伝導体は、例えば、特にはねじ込みによって光学担体に固定に取り付けられるか、又は、光学担体と共通のユニットとして構成される。伝導体は、特にボールジョイントによって運動可能に、駆動ユニットの運動伝達素子に配置されている。これに代えて、伝導体を、運動伝達素子に固定に取り付け、キャリッジで運動可能となるように配置してもよい。伝導体には有利にはスライドエレメントが設けられ、レンズチューブの長手方向ガイドスリット内をガイドされて、光軸に対して平行な平面におけるキャリッジの回転が防止される。これに代えて、伝導体を、1つもしくは2つの磁石によって、作用の点でキャリッジに結合してもよい。このようにすれば、伝導体のための開口を管体に設ける必要がなくなる。
モータについても種々のバリエーションが考えられ、特に、直流モータ又は線形の圧電モータが利用される。運動伝達素子は、例えば、直流モータによって駆動されるベルト、特に歯付ベルト又はフラットベルトに固定されるか、又は、圧電モータによって運動可能なセラミックロッドとして構成される。
本発明によれば、各キャリッジは、特に光学的にもしくは容量的に検出可能な位置コードを含む位置符号化素子を含む。位置符号化素子は、有利には、接合されたガラススケールの形態で光学担体上に配置される。
さらに、有利には、管内室の外部で管体上もしくは管体内に配置される走査センサが設けられている。走査センサは特に、位置符号化素子もしくはその位置コードを検出し、そこから走査信号を形成して、キャリッジの線形位置を導出できるように構成されている。走査センサが管体上に配置されている場合、管体は、コード要素を走査できるよう、内部又は上方に走査センサを配置するのに適した開口を有する。この開口は、特には完全に走査モジュールによって覆われてもよい。ガラススケールを含むリニアエンコーダとして、例えば、MicroE社製の“Mercury 1500P”タイプのエンコーダが用いられる。走査センサからガラススケールまでの距離は、有利には2mmから3mmまで、特に有利には2.25mmから2.55mmまでである。
同様に、伝導体がキャリッジの要素として構成されている場合、又は、キャリッジに固定に実装されている場合、位置符号化素子は伝導体上に配置され、特には固定にねじ止めされる。走査センサはこの場合、伝導体上の位置コードを検出できるよう、特にレンズチューブの外側に配置される。これに代えて、伝導体そのものを位置符号化素子として構成することもできる。例えば、3つの光源により、光感応性走査センサの方向へ光を放出させ、伝導体によって走査センサ上に影を投じさせて、この影の位置から、伝導体ひいてはキャリッジの線形位置を導出することができる。
各位置符号化素子は、同じキャリッジの光学モジュールに対して不変の空間関係で、特には1つのキャリッジの全ての要素、又は、少なくとも光学モジュール及び位置符号化素子を担持する要素が、遊びなしで相互に接続されるように、配置されている。これにより、走査センサで形成された信号から、直接に、光学モジュールの位置変化が導出される。当該空間関係から、さらに、光学モジュールの一義的な実際位置も導出可能である。
キャリッジの光学担体は、EP1510846A1に記載されているように、有利には120°又は90°の円弧を描いて配置される複数のスリーブセグメントを有しており、これらのスリーブセグメントに複数のスライドエレメントが配置されている。これにより、一方では、光軸の方向での大きなガイド長さが得られ、他方では、スリーブセグメント相互の挿入によって、隣り合うキャリッジの光学素子どうしを相互にきわめて接近させることができる。
光学担体及びレンズチューブは、有利にはアルミニウムから製造される。光学担体及び伝導体は、この場合、特にアルミニウム材を用いた成形によって例えば共通ユニットとして構成され、そうでない場合には、伝導体は有利には鋼合金から製造される。レンズチューブは、調整作業及びメンテナンス作業のための開口を有している。管内室の壁は、キャリッジのガイドを改善するために、有利には表面コーティングされている。回転位置合わせスライドエレメントは、有利には鋼合金又は銅合金、特には鋼又は青銅から形成される。
有利には、暗補償のために、モータ駆動される旋回可能なシャッタ絞りを設けることができる。
特に、レーザートラッカの要素として、可変対物カメラ(バリオカメラ)で使用されるガイド装置が適している。可変対物カメラとは、ここでは、ズーム機能を備え、カメラから目標までの距離に依存して増幅度を調整可能なカメラのことであると理解されたい。これにより特に、距離から独立に、つねに同じ大きさで、目標を結像することができる。
本発明のカメラシステムを以下に概略的な実施例に則して説明する。本発明のさらなる特徴及びその利点は、有利な実施例及び添付図から理解されるはずである。
本発明のカメラシステムを第1の側から見た側面図である。
本発明のカメラシステムの別の状態を第1の側から見た側面図である。
本発明のカメラシステムを第3の側から見た側面図である。
第1の実施例のキャリッジの種々の形態を示す側面図及び断面図である。
第2の実施例のキャリッジを示す側面図である。
レンズチューブ及び2つの駆動ユニットを示す断面図である。
第1の実施例の伝導体の種々の形態を示す図である。
第2の実施例の伝導体を示す図である。
位置符号化素子(エンコーダ)としての伝導体の実施形態を示す側面図及び断面図である。
本発明のカメラシステムの縦断面図である。
キャリッジ及び光学モジュールを含むレンズチューブを第1の側から見た縦断面図である。
キャリッジ及び光学モジュールを含むレンズチューブを第2の側から見た縦断面図である。
本発明のカメラシステムを備えた2つのレーザートラッカの実施例を示す図である。
図1aから図1cには、本発明のカメラシステム1が示されている。ここで、図1a,図1bはカメラシステム1の第1の側面を表しており、図1cは反対側の第2の側面を表している。
図1aに示されている本発明のカメラシステム1は管体2を有するレンズチューブを含み、この管体2は、一方端部にレンズの形態の光学素子17が設けられ、他方端部にセンサモジュール50が設けられることで、区切られている。管体2の外面は、この実施例に示されているように円筒形状を有してもよいが、直方体状又は他の形状を有してもよい。ここには図示されていないが、管体2によって定められるレンズチューブの内室(管内室)は、有利には実質的な円筒形状を有する。
管内室には第1のキャリッジ20が線形に運動可能に配置されている。第1のキャリッジ20は光学素子と光学担体200とを有しており、第1の駆動ユニット60により、レンズチューブの長手軸線に沿って運動可能である。第1の駆動ユニット60は、特に直流駆動モータの形態のモータ61と、プリテンション可能な偏向ローラ62と、対応偏向ローラ63と、これらの偏向ローラ62,63に架けわたされた歯付ベルト64とを有する。
歯付ベルト64には運動伝達素子65が例えばクランプによって固定されており、この運動伝達素子65は伝導体25を介して運動を第1のキャリッジ20へ伝達する。伝導体25をガイドするために、管体2は長手方向ガイドスリット26を有している。当該長手方向ガイドスリット26での良好なスライド運動のために、伝導体25には図示されていない複数のスライドエレメントが設けられている。
さらに、管体2上には、位置コードを検出して第1のキャリッジ20の位置を導出するための走査モジュール70が配置されている。
図1bには、見やすくするために、走査モジュール70が管体2から取り外された状態のカメラシステム1が示されている。走査モジュール70の下方では、管体2に開口22が設けられている。管体2の壁内の第1のキャリッジ20の輪郭は点線によって示されており、第1のキャリッジ20上、開口22の高さのところに、例えばガラススケールの形態の位置符号化素子21が設けられている。当該位置符号化素子21は、走査モジュール70の走査センサ71によって検出可能な位置コードを担持しており、検出された位置コードから第1のキャリッジ20の線形位置が導出される。
図1cには、カメラシステム1の反対側の第2の側面が示されており、管内室に配置された第2のキャリッジ30が見えている。第2のキャリッジ30は第2の駆動ユニット80によって駆動される。第2の駆動ユニット80は、モータ81と、プリテンション可能な偏向ローラ82と、対応偏向ローラ83と、歯付ベルト84と、運動伝達素子85とを有している。運動伝達素子85は伝導体35を介して運動を第2のキャリッジ30へ伝達する。管体2の当該第2の側面には、伝導体35に対する長手方向ガイドスリット36が設けられている。さらに、管体2には、位置コードを検出して第2のキャリッジ30の位置を導出する第2の走査モジュール90も配置されている。
図2のa−cには、本発明の図1a−図1cのカメラシステムのキャリッジの構造の実施例が第1のキャリッジ20に則して示されている。本発明のキャリッジは、相互に固定された複数の素子から成るユニットである。
図2のaにはキャリッジ20の側面図が示されている。ここに示されているのは、キャリッジの光学モジュールの一部としての、レンズの形態の光学素子27である。複数の光学素子を包囲する光学担体200は、有利にはアルミニウムから形成されている。光学担体200には位置コードを担持した位置符号化素子21が配置されており、当該位置コードが走査センサによって検出され、そこからキャリッジ20の線形位置が導出される。位置符号化素子21は特にはガラススケールであり、光学担体200に接着されている。伝導体25は、例えばねじ止めによって光学担体200に固定されているか、又は、光学担体200と一体のユニットとして構成されており、図示されていない駆動ユニットの運動伝達素子への接続部となっている。光学担体200には2種のスライドエレメント23,24、すなわち、2つのプリテンション可能なスライドエレメント23と、複数の回転位置合わせスライドエレメント24とが配置されている。後者は特に鋼もしくは青銅から形成される。
図2のbには、レンズチューブ内に配置された図2のaと同じキャリッジ20の断面図が示されている。一対のプリテンション可能なスライドエレメント23と2対の回転位置合わせスライドエレメント24とにより、キャリッジ20が光軸に対して垂直な平面で見て遊びなく管内室3に支承されかつスライドガイド可能となることが保証される。管体2はアルミニウムから形成されており、管内室3の壁はキャリッジ20の良好なガイドのために表面コーティングされている。
管体2上には、走査センサ71を含む走査モジュール70が配置されている。走査センサ71は、光学担体200上に配置された位置符号化素子21の位置コードを検出して、キャリッジ20の線形位置に関連する位置依存性の走査信号を形成することにより、キャリッジ20の線形位置を導出できるように構成されている。
図2のcには、図2のa,bのキャリッジ20が別様の管体2に配置される様子が示されている。管内室3はこの実施例においても円形断面の円筒形状を有しているが、長方形断面を有していたり直方体状であったりしてもよい。走査センサ71は、この実施例では管体2に組み込まれている。また、長手方向ガイドスリット26における線形スライドのための伝導体25及びスライドエレメント26aも示されている。
図3には、キャリッジ20の代替実施例が示されている。ここでは、キャリッジ20の光学担体200が一方側に複数のセグメント201,202を有しており、これらのセグメントがそれぞれ1つずつスライドエレメント23,24を有している。位置符号化素子21はその一部が上方のセグメント201上に配置されている。
光学担体200の各セグメント201,202により、キャリッジ20のガイド長さが増大される。なお、図示の第1のキャリッジ20の右方に(ここでは見えない)第2のキャリッジ30が配置される場合、2つのキャリッジの接近時に第2のキャリッジ30の各セグメントが第1のキャリッジ20の各セグメント201,202の中間に嵌合するように第2のキャリッジ30をずらして配置すれば、2つのキャリッジ間の最小距離を保ったまま、ガイド長さを増大させることができる。なお、セグメントの個数は2つに限定されない。キャリッジ当たり1つずつ、又は、3つ以上のセグメントを設けることもできる。
図4には、側方に2つの駆動ユニット60,80が配置された図2cのレンズチューブの断面図が示されている。2つの駆動ユニット60,80はそれぞれ1つずつのモータ61,81と、モータ駆動可能かつプリテンション可能な偏向ローラ62,82と、(ここでは見えない)対応偏向ローラと、これらのローラに架けわたされた歯付ベルト64,84と、歯付ベルトにクランプされた運動伝達素子65,85とを有している。各運動伝達素子65,85には、それぞれボールジョイント66,86を介して、キャリッジの要素である伝導体25,35が取り付けられている。
図5のa−cには、図2のbのキャリッジ20の断面図に基づいて、伝導体25及びそこに取り付けられる運動伝達素子65の実施形態が示されている。
図5のaには、伝導体25の第1の実施形態が示されている。ここでは、伝導体25は、キャリッジ20の要素として構成されている。このために、伝導体25は、特に光学担体200へのねじ込みによって光学担体200に固定に接続されているか、又は、アルミニウム材を用いた成形によって光学系ホルダを含む共通ユニットとして製造されている。伝導体25は、ボールジョイント66を介して、歯付ベルト64に固定された運動伝達素子65に接続されている。
図5のbには、伝導体25を運動伝達素子65に固定する第2の実施形態が示されている。運動伝達素子65は、歯付ベルト64にクランプされており、さらに、伝導体25に固定されたボールジョイント66を対応位置に固定するV字状軸受67を有している。
図5のcには、伝導体25の変形形態が示されている。ここでは、位置符号化素子21が伝導体25上に配置されており、走査センサ71が対応位置に配置されている。伝導体25はキャリッジ20の要素として構成されており、遊びなく光学担体200に接続されているので、伝導体25の線形位置から、キャリッジ20の線形位置を導出することができる。
図6には、別の実施形態の伝導体25’が示されている。ここでは、伝導体25’は、一方側では、特にねじ止めによって運動伝達素子65に固定に接続されているか、又は、一体成形されており、他方側では、ボールジョイント66を介してキャリッジ20に接続されている。
図7のa,bには、伝導体のさらに別の実施形態が示されている。ここでは、光学担体200に遊びなく接続されている伝導体が位置符号化素子21’として機能する。キャリッジ20では、位置符号化素子21’の上方に、キャリッジ20の移動方向に沿って3つの光源75が配置されている。さらに、これらの光源に対向する1つの光感応性走査センサ71’が配置されている。3つの光源75が走査センサ71’へ向かって光を放出すると、位置符号化素子21’としての伝導体によって走査センサ71’に3つの影が生じ、これらの影が位置符号化素子21’によって検出される。3つの影の位置から位置符号化素子21’の位置ひいてはキャリッジ20の位置が導出される。
図8には、本発明のカメラシステム1の縦断面図が示されている。管体2によって管内室3と光軸4とが定められる。レンズチューブの端部には、光ビームを受信する光センサ51を含むセンサモジュール50が配置されている。
管内室3には、純粋に例示的にではあるが、光軸4に沿って、可動に固定された光学モジュールが配置されている。レンズチューブの前端では、2つの光学素子17,18を含む固定の第1の光学モジュール10が管体2に接続されており、レンズチューブの後端には、光学素子47を含む固定の第2の光学モジュール40が取り付けられている。固定の2つの光学モジュール10,40は有利には位置調整可能である。
2つの固定の光学モジュール10,40間では、2つのキャリッジ20,30が、複数のスライドエレメント23,33を介して、光軸4に沿って可動に支承されている。第1のキャリッジ20及び第2のキャリッジ30は、それぞれ3つずつの光学素子27−29,37−39を光学担体200に配置した光学モジュールを1つずつ有する。2つずつのスライドエレメント23,33は、光学担体200に配置されたプリテンションエレメント23a,33aによってプリテンション可能である。なお、光学素子はシンボリックに示されているのみであり、当業者に周知の種々の形態を有することができる。
図9a,図9bには、管内室3に配置されたキャリッジ20,30と固定の光学モジュール10,40とを2つの側面から見た管体2の縦断面図が示されている。キャリッジ20,30では、それぞれ1つずつの位置符号化素子21,31と、1つずつの伝導体25,35と、一対のプリテンション可能なスライドエレメント23,33と、2対の回転位置合わせスライドエレメント24,34とが光学担体200に配置されている。
図10には、本発明のカメラシステムの適用例として、レーザートラッカ100,110の2つの実施例が示されている。また、接触式測定装置として構成された測定補助ツール120も示されている。
各レーザートラッカ100,110は、特に本発明のカメラシステムとして構成されているか又は本発明のカメラシステムを含む画像検出ユニットを有している。
第1のレーザートラッカ100は、ベース104と支持部103とを備えており、支持部103は、ベース104を通って定められる旋回軸5を中心として、ベース104に対して相対的に旋回可能又は回転可能に配置されている。さらに、照準ユニット102が、傾斜軸(トランジット軸)を中心として、支持部103に対して相対的に旋回可能に、支持部103に配置されている。照準ユニット102がこのように2つの軸を中心として配向可能であることにより、照準ユニット102から放出されるレーザービーム6をフレキシブルに配向して、目標を照準できる。この場合、旋回軸5と傾斜軸とは相互にほぼ直交するように配置されている。なお、「ほぼ直交する」とは、厳密な軸直交性からわずかに偏差していてもよいが、例えばこの偏差が予め定められており、偏差に起因して生じる測定誤差を補償できるよう、システムに格納されていることを意味する。
図示の構成では、レーザービーム6は、測定補助ツール120のリフレクタ121へ配向され、そこで後方反射されてレーザートラッカ100へ戻る。測定レーザービーム6により、リフレクタ121までの距離が、特に走行時間測定又は位相測定又はフィゾー方式測定によって、求められる。レーザートラッカ100には、当該レーザートラッカ100からリフレクタ121までの距離を角度センサによって求める精密距離測定ユニットが設けられている。この角度センサは、レーザービーム6を定義された状態で配向及び案内する照準ユニット102の位置を検出するので、ここからレーザービーム6の伝搬方向を求めることができる。
さらに、レーザートラッカ100、特にその照準ユニット102乃至画像検出ユニットは、センサ上又は検出画像内のセンサ照明位置を特定するために、CMOSを含むか、又は、特にCCDカメラもしくはピクセルセンサアレイカメラとして構成されている。こうしたセンサにより、検出器上で検出された照明の位置識別が可能となる。さらに、測定補助ツール120は接触式センサを含み、この接触式センサは、その接触点123が測定すべき目標対象物に接触するように配置される。接触ツール120と目標対象物とが接触している間、接触点123の空間内位置ひいては目標対象物の所定点の座標を正確に求めることができる。これは、リフレクタ121に対する接触点123の所定の相対位置と、測定補助ツール120に配置された複数のマーク122に対する接触点123の所定の相対位置とを用いて求められる。なお、各マーク122は例えば発光ダイオードとして構成される。これに代えて、各マーク122が、例えば所定波長のビームで照明が行われる際に、(後方反射性リフレクタである複数の補助点マーク122として)到来するビームを反射し、特に所定の発光特性を呈するように、又は、所定のパターンもしくは色符号を有するように構成してもよい。このようにすれば、画像検出ユニットのセンサで検出された画像における複数のマーク122の位置及び分布から、接触ツール120の配向を求めることができる。
第2のレーザートラッカ110は、画像検出ユニット115と、これとは別個に、同様に第2のレーザービーム7を放出してリフレクタ121へ配向する光案内ユニット116とを備えている。第2のレーザービーム7及び画像検出ユニット115も、それぞれ2つの軸を中心としてモータ駆動によって旋回可能であり、これにより、第2のレーザービーム7で照準される目標121と測定補助ツール120の複数のマーク122とが画像検出ユニット115によって検出可能となるように配向される。したがって、この場合も、リフレクタ121までの正確な距離と測定補助ツール120の配向とを、マーク122の空間位置に基づいて求めることができる。
各レーザービーム6,7をリフレクタ121へ配向するために、レーザートラッカ100,110には、リフレクタ121を所定波長のビーム(特に赤外波長領域のビーム)で照明する照明手段がそれぞれ設けられており、さらに、位置感応性検出器を含む少なくとも2つのカメラが配置されている。リフレクタ121で反射されてレーザートラッカ100,110へ戻る照明光はカメラによって検出され、各位置感応性検出器にリフレクタ121の位置が結像される。こうして、第1のレーザートラッカ100及び第2のレーザートラッカ110の双方によって、2つのリフレクタ結像位置が求められ、当該結像位置に依存して、例えば一般に知られている写真測量法の方式にしたがって、目標(リフレクタ121)が見出される。なお、照準ユニット102及び光案内ユニット116は、目標が測定ビーム6,7によって照準されるように配置される。
また、レーザートラッカ100,110のそれぞれ2つの画像に基づいて、リフレクタの1つずつの粗位置を求めることもできる。これらの位置は、一般的な幾何学定理又は三角公式によって、例えば三角形の構造の幾何学定理又は正弦法則及び/又は余弦法則によって求めることができる。さらに、粗位置を求めるために、一般に知られている写真測量法(ステレオフォトグラメトリ)を利用してもよい。このために、各レーザートラッカ100,110のカメラ相互の相対位置、特に相対配向は既知となっている。
このことに関連して、照明手段及びカメラを、例えば画像検出ユニット115又は光案内ユニット116又は照準ユニット102又は支持部103又はベース104のそれぞれ所定の位置に配置することができる。
それぞれのレーザービーム6,7の放出方向に対するカメラの位置が既知であることにより、レーザービーム6,7は、求められたリフレクタ121の粗位置へ配向され、そこに結合(ロックオン)される。これにより、構造に起因してレーザーの放出方向がカメラの検出方向に対してずれていても、各レーザービーム6,7を迅速に配向し、カメラの光軸とレーザービーム6,7とから生じる視差を解消することができる。特には、レーザービーム6,7を直接に、つまり中間ステップの反復なしに、目標121へ配向することができる。
特に、リフレクタ121の粗位置を求めることに代えてもしくはこれに加えて、レーザートラッカ100,110の各検出器に結像及び検出された目標位置から、リフレクタ121までの粗距離を求めることができる。これは、一般に妥当する幾何学法則、例えば三角形の高さを求める公式及び/又は正弦法則及び/又は余弦法則によって求めることができる。
なお、各図は可能な実施例を概略的に表したのみであることを理解されたい。また、本発明の装置及び方法の種々のアプローチは、単独でも、相互に組み合わせても、また、従来技術と組み合わせても、本発明の対象となりうる。