本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の、その冠詞の文法的対象語を指すために使用される。例として、「ポリマー樹脂(a polymer resin)」は、1つのポリマー樹脂又は2つ以上のポリマー樹脂を意味する。本明細書に記載されるいずれの範囲も、包括的である。本明細書の全体を通して使用される用語「実質的に」及び「約」は、小規模な変動を記述及び説明するために使用される。例えば、それらの用語は、±2%以下など、±1%以下など、±0.5%以下など、±0.2%以下など、±0.1%以下など、±0.05%以下などの、±5%以下を指すことができる。
バルク凝固アモルファス合金、すなわちバルク金属ガラス(「BMG」)は、最近開発された部類の金属材料である。これらの合金は、比較的穏やかな速度で、凝固及び冷却させることができ、それらはアモルファスの、非晶質(すなわち、ガラス質)状態を室温で保持する。アモルファス合金は、それらの結晶性の対応物よりも、多くの優れた特性を有する。しかしながら、冷却速度が十分に高速ではない場合には、冷却の間に、その合金の内部で結晶が形成される恐れがあり、そのため、アモルファス状態の利益が失われる恐れがある。例えば、バルクアモルファス合金部品の製作に伴う1つの重要な課題は、徐冷又は合金原材料中の不純物のいずれかによる、それらの部品の部分的な結晶化である。BMG部品内では、高い程度のアモルファス化度(また反対に、低い程度の結晶化度)が望ましいため、制御された量のアモルファス化度を有するBMG部品を鋳造するための方法を開発する必要性がある。
図1(米国特許第7,575,040号より入手)は、Liquidmetal Technologyによって製造されたZr−−Ti−−Ni−−Cu−−BeファミリーのVIT−001シリーズからの、例示的なバルク凝固アモルファス合金の粘度−温度グラフを示す。アモルファス固体の形成の間、バルク凝固アモルファス金属に関しては、明確な液体/固体変態が存在しないことに留意するべきである。この溶融合金は、ガラス転移温度近傍で固体形態に近づくまで、過冷却の増大と共に、ますます粘稠になる。したがって、バルク凝固アモルファス合金に関する凝固前面の温度は、ガラス転移温度近傍であり得、その温度近傍で、この合金は、急冷アモルファスシート製品を取り出すために、実際に固体として作用する。
図2(米国特許第7,575,040号より入手)は、例示的なバルク凝固アモルファス合金の時間−温度−変態(TTT)冷却曲線、すなわちTTT図を示す。バルク凝固アモルファス金属は、従来の金属と同様に、冷却の際の液体/固体の結晶化変態を起こさない。その代わりに、高温で(「融解温度」Tm近傍で)見出される、流動性の高い非晶質形態の金属は、温度が低下するにつれて(ガラス転移温度Tg近傍まで)より粘稠になり、最終的に従来の固体の外面的な物理的特性を呈する。
バルク凝固アモルファス金属に関しては、液体/結晶化変態は存在しないにも関わらず、対応する結晶相の熱力学的液相温度として、「融解温度」Tmを定義することができる。この体系の下では、バルク凝固アモルファス合金の融解温度での粘度は、約0.1ポアズ〜約10,000ポアズの範囲に、更に場合によっては、0.01ポアズ未満にあることが可能である。この「融解温度」でのより低い粘度は、BMG部品を成形するためのバルク凝固アモルファス金属による、シェル/金型の複雑な部分のより速く完全な充填をもたらす。更には、BMG部品を成形するための溶融金属の冷却速度は、冷却の間の時間−温度プロファイルが、図2のTTT図内の結晶化領域を境界付けるノーズ形状領域を横断しないようなものでなければならない。図2では、Tノーズは、結晶化が最も急速であり、かつ最短の時間スケールで生じる、臨界結晶化温度Txである。
過冷却液体領域、すなわちTg〜Txの温度領域は、バルク凝固合金の結晶化に対する極度の安定性を明示するものである。この温度領域内では、バルク凝固合金は、高粘度の液体として存在し得る。この過冷却液体領域内でのバルク凝固合金の粘度は、ガラス転移温度での1012Pa・sから、結晶化温度である過冷却液体領域の高温限界での105Pa・sに至るまでの間で変化し得る。そのような粘度を有する液体は、加圧力の下で、実質的な塑性歪みを経験し得る。本明細書の実施形態は、成形及び分離方法として、この過冷却液体領域内での大きい塑性成形性を利用する。
Txについて明確にする必要がある。技術的には、TTT図に示されるノーズ形状の曲線は、Txを温度及び時間の関数として説明する。それゆえ、金属合金を加熱又は冷却する間に辿る軌跡とは関係なく、このTTT曲線に当る場合に、Txに到達している。図2では、Txは破線として示されるが、これは、Tmの近位からTgの近位まで、Txが変化し得るためである。
図2の概略的なTTT図は、時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(1)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tm以上〜Tg未満のダイカストの加工処理方法を示す。ダイカストの間、この成形は、軌跡がTTT曲線に当ることを回避するために、実質的に急速冷却と同時に行われる。時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(2)、(3)及び(4)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tg以下からTm未満までの超塑性成形(SPF)に関する加工処理方法。SPFでは、アモルファスBMGは、過冷却液体領域内へと再加熱され、利用可能な加工処理ウインドウは、ダイカストよりも遙かに大きく、より良好なプロセスの可制御性をもたらすことが可能である。SPFプロセスは、冷却の間の結晶化を回避するための急速冷却を必要としない。また、例示的軌跡(2)、(3)、及び(4)によって示されるように、SPFの間の最高温度が、Tノーズ超又はTノーズ未満、最大約Tmとなる状態で、SPFを実施することができる。アモルファス合金の断片を昇温させつつ、TTT曲線に当ることを回避させた場合には、「Tg〜Tm」に加熱しても、Txには到達していない。
20℃/分の加熱速度で得られる、バルク凝固アモルファス合金の典型的な示差走査熱量計(DSC)加熱曲線は、大部分は、TTTデータを横切る具体的な軌跡を説明するものであり、特定温度のTgと、DSC加熱傾斜がTTT結晶化開始と交差する場合のTxと、最終的に、同じ軌跡が融解に関する温度範囲と交差する場合の融解ピークとが認められるであろう。
もし、図2の軌跡(2)、(3)、及び(4)の上り傾斜部分によって示されるような急速な加熱速度で、バルク凝固アモルファス合金を加熱するならば、TTT曲線を完全に回避することが可能であり、DSCデータは、加熱の際、ガラス転移を示すが、Txは示さない。このことについての別の考察方法は、軌跡(2)、(3)、及び(4)は、結晶化曲線に当らない限り、TTT曲線のノーズ(及び更にその上方)〜Tg線の温度内の、いずれの場所にも収まることができる点である。そのことは、加工処理温度が上昇するにつれて、軌跡内の水平な平坦部が遙かに短くなり得ることを単に意味する。
相
本明細書での用語「相」は、熱力学状態図内で見出すことができるものを指し得る。相は、その全体にわたって、材料の全ての物理的特性が本質的に均一である、空間の領域(例えば、熱力学系)である。物理的特性の例としては、密度、屈折率、化学組成、及び格子周期性が挙げられる。相の単純な説明は、化学的に均一で、物理的に異なっており、及び/又は機械的に分離可能な材料の領域である。例えば、ガラスジャー内の、氷及び水からなる系では、その角氷が1つの相であり、水が第2の相であり、その水の上の湿り空気が第3の相である。ジャーのガラスは、別の分離相である。相は、金属間化合物などの、2成分、3成分、4成分以上の溶体又は化合物とすることができる、固溶体を指すことができる。別の例としては、アモルファス相は、結晶相とは区別ができる。
金属、遷移金属、及び非金属
用語「金属」は、電気陽性の化学元素を指す。本明細書での用語「元素」は、一般的には、周期表に見出すことができる元素を指す。物理的には、基底状態の金属原子は、占有状態に近い、空状態を有する部分的充満帯を含む。用語「遷移金属」とは、不完全な内部電子殻を有し、一連の元素内の、最も電気陽性のものと最も電気陽性ではないものとの間の遷移リンクとして役立つ、周期表の第3族〜第12族の範囲内の金属元素のうちのいずれかである。遷移金属は、複数の原子価、着色化合物、及び安定な錯イオンを形成する能力によって特徴付けられる。用語「非金属」は、電子を失って陽イオンを形成する能力を有さない化学元素を指す。
用途に応じて、任意の好適な非金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金(又は「合金組成物」)は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の非金属元素などの複数の非金属元素を含み得る。非金属元素は、周期表内の第13族〜第17族内に見出される、いずれかの元素とすることができる。例えば、非金属元素は、F、Cl、Br、I、At、O、S、Se、Te、Po、N、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、Pb、及びBのうちの、いずれか1つとすることができる。場合により、非金属元素はまた、第13族〜第17族内の特定の半金属(例えば、B、Si、Ge、As、Sb、Te、及びPo)を指すこともできる。一実施形態では、非金属元素としては、B、Si、C、P、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。したがって、例えば、その合金は、ホウ化物若しくは炭化物、又は双方を含み得る。
遷移金属元素は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ウンウンニリウム、ウンウンウニウム、及びウンウンビウムのうちのいずれかとすることができる。一実施形態では、遷移金属元素含有BMGは、Sc、Y、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、及びHgのうちの少なくとも1つを有し得る。用途に応じて、任意の好適な遷移金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金組成物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の遷移金属元素など、複数の遷移金属元素を含み得る。
本明細書で説明される、合金又は合金「サンプル」又は「試料」合金は、任意の形状又はサイズを有し得る。例えば、合金は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの形状を有し得る、微粒子の形状を有し得る。この微粒子は、任意のサイズを有し得る。例えば、その微粒子は、約5マイクロメートル〜約80マイクロメートルなど、約10マイクロメートル〜約60マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約50マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約45マイクロメートルなど、約20マイクロメートル〜約40マイクロメートルなど、約25マイクロメートル〜約35マイクロメートルなど、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの平均直径を有し得る。例えば、一実施形態では、微粒子の平均直径は、約25マイクロメートル〜約44マイクロメートルである。一部の実施形態では、ナノメートルの範囲のものなどの、より小さい微粒子、又は100マイクロメートルよりも大きいものなどの、より大型の微粒子を使用することができる。
合金のサンプル又は試料はまた、遙かに大きい寸法のものにすることもできる。例えば、インゴットなどのバルク構造構成要素、電子デバイスの筺体/ケーシング、又は更にミリメートル、センチメートル、又はメートルの範囲の寸法を有する構造的構成要素の一部分とすることができる。
固溶体
用語「固溶体」は、溶体の固体形態を指す。用語「溶体」は、固体、液体、気体、又はこれらの組み合わせとすることができる、2種以上の物質の混合物を指す。この混合物は、均質又は不均質とすることができる。用語「混合物」とは、互いに組み合わされ、一般的には分離することが可能である、2種以上の物質の組成物である。一般的には、それらの2種以上の物質は、互いに化合されない。
合金
一部の実施形態では、本明細書で説明される合金組成物は、完全に合金化することができる。一実施形態では、「合金」とは、一方の原子が他方の原子に置き換わるか、又は原子間の格子間位置を占有する、2種以上の金属の均質な混合物又は固溶体を指すものであり、例えば、黄銅は、亜鉛及び銅の合金である。合金とは、複合材料とは対照的に、金属マトリックス中の1種以上の化合物などの、金属マトリックス中の1種以上の元素の部分的又は完全な固溶体を指すことができる。本明細書での合金という用語は、単一の固相の微細構造を呈し得る全率固溶合金、及び2つ以上の相を呈し得る部分的溶体の双方を指すことができる。本明細書で説明される合金組成物は、合金を含むもの、又は合金含有複合材料を含むものを指すことができる。
それゆえ、完全に合金化した合金は、固溶体相であれ、化合物相であれ、又は双方であれ、その構成成分の均質な分布を有し得る。本明細書で使用される用語「完全に合金化された」は、許容誤差範囲内の僅かな変異を説明することができる。例えば、その用語は、少なくとも95%の合金化など、少なくとも99%の合金化など、少なくとも99.5%の合金化など、少なくとも99.9%の合金化など、少なくとも90%の合金化を指すことができる。本明細書での百分率は、文脈に応じて、体積百分率又は重量百分率のいずれかを指すことができる。
これらの百分率は、合金の部分ではない組成又は相の観点によるものとすることができる不純物によって均衡させることができる。
アモルファスすなわち非晶質固体
「アモルファス」又は「非晶質固体」は、結晶に特徴的な格子周期性を欠く固体である。本明細書で使用するとき、「アモルファス固体」は、ガラス転移を通じて、加熱されると液体状の状態へと軟化及び変態するアモルファス固体である、「ガラス」を含む。一般的には、アモルファス材料は、結晶に特徴的な長距離秩序を欠くが、それらのアモルファス材料は、化学結合の性質による、原子の長さスケールでの何らかの短距離秩序を保有し得る。アモルファス固体と結晶性固体との区別は、X線回折及び透過型電子顕微鏡検査などの構造特性評価技術によって判定される、格子周期性に基づいて行うことができる。
用語「秩序」及び「無秩序」とは、多粒子系内での何らかの対称性又は相関性の有無を指示する。用語「長距離秩序」及び「短距離秩序」は、長さスケールに基づいて、材料内の秩序を区別する。
固体における秩序の最も厳密な形態は格子周期性であり、特定のパターン(単位格子内の原子配列)が何度も繰り返され、空間の並進に普遍の、空間充填を形成する。この格子周期性は、結晶の定義特性である。可能な対称性は、14種のブラベー格子及び230種の空間群に分類されている。
格子周期性は、長距離秩序を示唆するものである。1つの単位格子のみが知られる場合には、その並進対称性によって、任意の距離での、全ての原子配置を正確に予測することが可能である。一般に逆も真であるが、ただし、例えば、完全に確定的な充填を有するが、格子周期性を保有しない準結晶の場合は例外である。
長距離秩序は、同じサンプルの遠隔の部分が、相関する挙動を呈する、物理系を特徴付ける。この長距離秩序は、相関関数、すなわち次のスピン−スピン相関関数として表現することができる。G(x,x’)=〈s(x),s(x’)〉。
上記の関数では、sはスピン量子数であり、xは特定の系内の距離関数である。この関数は、x=x’である場合、単位元に等しく、距離|x−x’|が増大するにつれて減少する。
典型的には、この関数は、長距離で、指数関数的にゼロまで減衰し、その系は無秩序であると見なされる。しかしながら、この相関関数が大きい|x−x’|で一定値へと減衰する場合には、その系は長距離秩序を保有すると述べることができる。この関数が、距離の累乗でゼロまで減衰する場合には、準長距離秩序と呼ぶことができる。大きい値の|x−x’|を構成するものは、相対的であることに留意されたい。
系は、その挙動を定義する一部のパラメータが、経時的に進展しないランダム変数である(すなわち、それらが急冷又は凍結された)場合、急冷無秩序、例えば、スピングラスを提示すると延べることができる。この急冷無秩序は、ランダム変数自体が進展することが可能な、焼鈍無秩序とは反対である。本明細書の実施形態は、急冷無秩序を含む系を包含する。
本明細書で説明される合金は、結晶性、部分結晶性、アモルファス、又は実質的アモルファスとすることができる。例えば、合金サンプル/試料は、少なくともある程度の結晶化度を含み得るものであり、結晶粒/結晶は、ナノメートル及び/又はマイクロメートルの範囲のサイズを有する。あるいは、合金は、完全にアモルファスであるなどの、実質的アモルファスとすることができる。一実施形態では、合金組成物は、完全に結晶性であるなど、実質的に結晶性であり、少なくとも実質的にアモルファスではない。
一実施形態では、他のアモルファス合金中の1種の結晶又は複数種の結晶の存在は、その合金中の「結晶相」として解釈することができる。合金の結晶化度の程度(又は一部の実施形態では、略して「結晶化度」)とは、その合金中に存在する結晶相の量を指すことができる。その程度とは、例えば、合金中に存在する結晶の分率を指すことができる。この分率は、文脈に応じて、体積分率又は重量分率を指すことができる。アモルファス合金がどの程度「アモルファス」であるかの尺度を、アモルファス化度とすることができる。アモルファス化度は、結晶化度の程度の観点により測定することができる。例えば、一実施形態では、低い程度の結晶化度を有する合金は、高い程度のアモルファス化度を有すると述べることができる。一実施形態では、例えば、60体積%の結晶相を有する合金は、40体積%のアモルファス相を有し得る。
アモルファス合金又はアモルファス金属
「アモルファス合金」とは、50体積%超のアモルファス含有量、好ましくは90体積%超のアモルファス含有量、より好ましくは95体積%超のアモルファス含有量、最も好ましくは99体積%超〜ほぼ100体積%のアモルファス含有量を有する合金である。
上述のように、アモルファス化度が高い合金は、結晶化度の程度が同等に低いことに留意されたい。「アモルファス金属」とは、無秩序な原子スケール構造を有するアモルファス金属材料である。結晶性であり、したがって高度に秩序化された原子配置を有する、殆どの金属とは対照的に、アモルファス合金は非晶質である。そのような無秩序構造が、冷却の間に液体状態から直接作り出される材料は、「ガラス」と称される場合がある。したがって、アモルファス金属は、一般に「金属ガラス」又は「ガラス金属」と称される。一実施形態では、バルク金属ガラス(「BMG」)とは、その微細構造が少なくとも部分的にアモルファスである合金を、指すことができる。しかしながら、アモルファス金属を作り出すためには、極度な急速冷却の他にも、物理蒸着、固相反応、イオン照射、メルトスピニング、及び機械的合金化を含めた、幾つかの方法が存在する。アモルファス合金は、それらが調製される方法とは関係なく、単一の部類の材料とすることができる。
アモルファス金属は、様々な急冷法を通じて作り出すことができる。例えば、アモルファス金属は、回転する金属ディスク上に溶融金属をスパッタリングすることによって、作り出すことができる。1秒当り約数百万度の急冷は、結晶が形成するには過度に高速である得るため、その金属は、ガラス状態で「固定」される。また、アモルファス金属/合金は、厚い層のアモルファス構造、例えば、バルク金属ガラスの形成を可能にするための、十分に低速な臨界冷却速度で作り出すこともできる。
用語「バルク金属ガラス」(「BMG」)、バルクアモルファス合金(「BAA」)、及びバルク凝固アモルファス合金は、本明細書で互換的に使用される。それらの用語は、少なくともミリメートルの範囲の最小寸法を有する、アモルファス合金を指す。例えば、その寸法は、少なくとも約1mmなど、少なくとも約2mmなど、少なくとも約4mmなど、少なくとも約5mmなど、少なくとも約6mmなど、少なくとも約8mmなど、少なくとも約10mmなど、少なくとも約12mmなどの、少なくとも約0.5mmとすることができる。幾何学形状に応じて、その寸法は、直径、半径、厚さ、幅、長さなどを指すことができる。BMGはまた、少なくとも約1.0cmなど、少なくとも約2.0cmなど、少なくとも約5.0cmなど、少なくとも約10.0cmなどの、センチメートルの範囲の少なくとも1つの寸法を有する、金属ガラスとすることもできる。一部の実施形態では、BMGは、少なくともメートルの範囲の、少なくとも1つの寸法を有し得る。BMGは、金属ガラスに関連する、上述の形状又は形態のうちの、いずれかを呈することができる。したがって、本明細書で説明されるBMGは、一部の実施形態では、重要な一態様での従来の堆積技術によって作製される薄膜とは異なるものとすることができ、前者のBMGは、後者の薄膜よりも遙かに大きい寸法のものとすることができる。
アモルファス金属は、純金属ではなく、合金とすることができる。この合金は、著しく異なるサイズの原子を含有し得ることにより、溶融状態で、低い自由体積がもたらされる(またそれゆえ、他の金属及び合金よりも、桁違いとなるまでの高い粘度を有する)。この粘度は、原子が、規則格子を形成するために十分に移動することを防ぐ。この材料構造は、冷却の間の低収縮性、及び塑性変形に対する抵抗性をもたらし得る。一部の場合には結晶性材料の弱点である、この結晶粒界の不在は、例えば、磨耗及び腐食に対する、より良好な抵抗性をもたらし得る。一実施形態では、技術的にはガラスであるが、アモルファス金属はまた、酸化物ガラス及びセラミックよりも遙かに強靭であり、脆性ではないものにすることもできる。
アモルファス材料の熱伝導率は、それらの結晶性対応物の熱伝導率よりも低いものにすることができる。より緩徐な冷却の間でも、アモルファス構造の形成を達成するために、3種以上の構成成分で合金を作製して、より高いポテンシャルエネルギー、及びより低い形成の確率を有する、複合結晶単位をもたらすことができる。アモルファス合金の形成は、以下の幾つかの因子:合金の構成成分の組成、構成成分の原子半径(好ましくは、高い充填密度及び低い自由体積を達成するために、12%超の有意差を有する)、並びに結晶核生成を阻止し、溶融金属が過冷却状態に留まる時間を延長する、構成成分の組み合わせの負の混合熱によって決まり得る。しかしながら、アモルファス合金の形成は、多種多様な変数に基づくものであるため、合金組成物がアモルファス合金を形成するか否かを事前に決定することは、困難な場合がある。
例えば、ホウ素、ケイ素、リン、及び他のガラス形成剤と、磁性金属(鉄、コバルト、ニッケル)とのアモルファス合金は、低い保磁力及び高い電気抵抗を有する、磁性のものとすることができる。この高い抵抗は、例えば、トランス用磁心として有用な特性である、交番磁界に晒された場合の渦電流による低損失をもたらす。
アモルファス合金は、潜在的に有用な様々な特性を有し得る。具体的には、アモルファス合金は、同様の化学組成の結晶性合金よりも強固である傾向にあり、それらは結晶性合金よりも大きい可逆性(「弾性」)変形に耐え得る。
アモルファス金属は、それらの強度を、それらの非晶質構造から直接導き出すものであり、この非晶質構造は、結晶性合金の強度を制限する欠陥(転位などの)を全く有し得ない。例えば、Vitreloy(商標)として知られる、1つの最新のアモルファス金属は、高級チタンのほぼ2倍の引張り強さを有する。一部の実施形態では、室温での金属ガラスは延性ではなく、張力が負荷されると突然破損するが、このことは、差し迫った破壊が明白ではないため、信頼性が重要な用途での、その材料の適用性を制限する。それゆえ、この課題を克服するために、延性の結晶性金属の樹枝状の粒子又は繊維を含有する金属ガラスマトリックスを有する、金属マトリックス複合材料を使用することができる。あるいは、深刻化を引き起こす傾向がある元素(例えば、Ni)が少ないBMGを使用することができる。例えば、Niを含まないBMGを使用することにより、そのBMGの延性を改善することができる。
バルクアモルファス合金の別の有用な特性は、これらが真のガラスであり、換言すれば、加熱により軟化かつ流動し得ることである。これは、ポリマーと同様に射出成形などの容易な加工処理を可能にする。結果として、アモルファス合金は、スポーツ用品、医療用機器、電子部品及び電子装備、並びに薄膜を作製するために使用することができる。アモルファス金属の薄膜は、高速酸素燃料技術を介して、保護コーティングとして堆積させることができる。
材料は、アモルファス相、結晶相、又は双方を有し得る。これらのアモルファス相及び結晶相は、同じ化学組成を有し、微細構造のみが異なる(すなわち、一方はアモルファスであり、他方は結晶質である)ものとすることができる。一実施形態での微細構造は、25×以上の倍率の顕微鏡によって明らかとなるような材料の構造を指す。あるいは、これらの2つの相は、異なる化学組成及び微細構造を有し得る。例えば、組成物は、部分的アモルファス、実質的アモルファス、又は完全アモルファスとすることができる。
上述のように、アモルファス化度の程度(また反対に結晶化度の程度)は、合金中に存在する結晶の分率によって測定することができる。その程度とは、合金中に存在する結晶相の体積分率又は重量分率を指すことができる。部分的アモルファス組成物とは、少なくとも約10体積%など、少なくとも約20体積%など、少なくとも約40体積%など、少なくとも約60体積%など、少なくとも約80体積%など、少なくとも約90体積%などの、少なくともその約5体積%がアモルファス相である組成物を指すことができる。用語「実質的に」及び「約」は、本明細書中の他の場所で定義されている。したがって、少なくとも実質的にアモルファスである組成物とは、少なくとも約95体積%など、少なくとも約98体積%など、少なくとも約99体積%など、少なくとも約99.5体積%など、少なくとも約99.8体積%など、少なくとも約99.9体積%などの、少なくともその約90体積%がアモルファスであるものを指すことができる。
一実施形態では、実質的アモルファス組成物は、内部に存在する、何らかの付随的な少量の結晶相を有し得る。
一実施形態では、アモルファス合金組成物は、アモルファス相に関して均質とすることができる。組成が均一である物質は、均質である。このことは、不均質である物質とは対照的である。用語「組成」とは、物質中の化学組成及び/又は微細構造を指す。物質は、その物質の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ組成を有する場合に均質である。例えば、微粒子懸濁液は、その微粒子懸濁液の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ体積の粒子を有する場合に均質である。しかしながら、顕微鏡下で個々の粒子を視認することが可能な場合もある。均質な物質の別の例は、空気であり、その空気中の種々の成分は等しく浮遊するが、空気中の粒子、気体、及び液体は、個別に分析することができ、又は空気から分離することもできる。
アモルファス合金に関して均質である組成とは、その微細構造の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス相を有するものを指すことができる。換言すれば、その組成物は、組成物の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス合金を巨視的に含む。代替の実施形態では、この組成は、非アモルファス相をその中に有する、アモルファス相を有する複合材料のものとすることができる。この非アモルファス相は、1つの結晶又は複数の結晶とすることができる。それらの結晶は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの、任意の形状の微粒子の形態とすることができる。一実施形態では、結晶は、樹枝状形態を有し得る。例えば、少なくとも部分的にアモルファスの複合組成物は、アモルファス相マトリックス中に分散する樹枝状結晶の形状の結晶相を有し得るものであり、この分散は、均一又は不均一なものとすることができ、アモルファス相と結晶相とは、同じ化学組成又は異なる化学組成を有し得る。一実施形態では、それらの相は実質的に同じ化学組成を有し得る。別の実施形態では、結晶相は、BMG相よりも延性とすることができる。
本明細書で説明される方法は、任意のタイプのアモルファス合金に適用可能とすることができる。同様に、組成物又は物品の成分として、本明細書で説明されるアモルファス合金は、任意のタイプのものとすることができる。このアモルファス合金は、Zr、Hf、Ti、Cu、Ni、Pt、Pd、Fe、Mg、Au、La、Ag、Al、Mo、Nb、Beの元素、又はこれらの組み合わせを含み得る。すなわち、この合金は、その化学式又は化学組成中に、これらの元素のいずれかの組み合わせを含み得る。それらの元素は、種々の重量百分率又は体積百分率で存在し得る。例えば、鉄「ベース」合金とは、その中に存在する無視することができない重量百分率の鉄を有する、合金を指すことができ、その重量百分率は、例えば、少なくとも約40重量%など、少なくとも約50重量%など、少なくとも約60重量%など、少なくとも約80重量%などの、少なくとも約20重量%などとすることができる。あるいは、一実施形態では、上述の百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。したがって、アモルファス合金は、ジルコニウムベース、チタンベース、白金ベース、パラジウムベース、金ベース、銀ベース、銅ベース、鉄ベース、ニッケルベース、アルミニウムベース、モリブデンベースなどとすることができる。この合金はまた、特定の目的に適合するように、上述の元素のうちのいずれかを含まない場合もある。例えば、一部の実施形態では、この合金、又はこの合金を含む組成物は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを実質的に含まないものであり得る。一実施形態では、この合金又は複合材料は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを全く含まない。
例えば、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu,Fe)
b(Be,Al,Si,B)
cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは30〜75の範囲であり、bは5〜60の範囲であり、cは0〜50の範囲である。あるいは、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu)
b(Be)
cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは40〜75の範囲であり、bは5〜50の範囲であり、cは5〜50の範囲である。この合金はまた、式(Zr,Ti)
a(Ni,Cu)
b(Be)
cを有し得るものでもあり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは7.5〜35の範囲であり、cは10〜37.5の範囲である。あるいは、この合金は式(Zr)
a(Nb,Ti)
b(Ni,Cu)
c(Al)
dを有し得るものであり、式中、a、b、c、及びdはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは0〜10の範囲であり、cは20〜40の範囲であり、dは7.5〜15の範囲である。上述の合金系の例示的一実施形態は、Liquidmetal Technologies(CA,USA)によって製作されるような、Vitreloy−1及びVitreloy−101などの、商品名Vitreloy(商標)の、Zr−Ti−Ni−Cu−Beベースのアモルファス合金である。
種々の系のアモルファス合金の一部の実施例が、表1及び表2に記載される。
その他の例示的な鉄系合金には、例えば米国特許出願公開第2007/0079907号及び同第2008/0118387号に開示されている組成物が挙げられる。これらの組成物には、Fe(Mn,Co,Ni,Cu)(C,Si,B,P,Al)系が含まれ、Fe含有量は60〜75原子パーセント、(Mn,Co,Ni,Cu)の合計は5〜25原子パーセントの範囲内、及び(C,Si,B,P,Al)の合計は8〜20原子パーセントの範囲内であり、例示的な組成はFe48Cr15Mo14Y2C15B6である。また、Fe−Cr−Mo−(Y,Ln)−C−B,Co−Cr−Mo−Ln−C−B、Fe−Mn−Cr−Mo−(Y,Ln)−C−B、(Fe,Cr,Co)−(Mo,Mn)−(C,B)−Y、Fe−(Co,Ni)−(Zr,Nb,Ta)−(Mo,W)−B,Fe−(Al,Ga)−(P,C,B,Si,Ge)、Fe−(Co,Cr,Mo,Ga,Sb)−P−B−C、(Fe,Co)−B−Si−Nb合金、及びFe−(Cr−Mo)−(C,B)−Tmにより記述される合金系が挙げられ、ここにおいてLnはランタニド元素、Tmは遷移金属元素を示す。更に、このアモルファス合金は、米国特許出願公開第2010/0300148号に記述される例示的組成物Fe80P12.5C5B2.5、Fe80PllC5B2.5Sil.5、Fe74.5Mo5.5P12.5C5B2.5、Fe74.5Mo5.5PllC5B2.5Sil.5、Fe70Mo5Ni5P12.5C5B2.5、Fe70Mo5Ni5PllC5B2.5Sil.5、Fe68Mo5Ni5Cr2P12.5C5B2.5、及びFe68Mo5Ni5Cr2PllC5B2.5Sil.5のうちの1つであり得る。
これらのアモルファス合金はまた、(Fe,Ni,Co)ベース合金などの、鉄合金とすることもできる。係る組成物の例は、米国特許第6,325,868号、同第5,288,344号、同第5,368,659号、同第5,618,359号、及び同第5,735,975号、Inoueら、Appl.Phys.Lett.,Volume 71,p 464(1997)、Shenら、Mater.Trans.,JIM,Volume 42,p 2136(2001)、並びに日本特許出願第200126277号(公開番号第2001303218(A)号)で開示されている。
1つの例示的な組成物は、Fe72Al5Ga2P11C6B4である。別の実施例は、Fe72Al7Zr10Mo5W2B15である。本明細書でのコーティングに使用することができる、別の鉄ベース合金系が、米国特許出願公開第2010/0084052号で開示されており、そのアモルファス金属は、例えば、括弧内に記される組成の範囲で、マンガン(1〜3原子%)、イットリウム(0.1〜10原子%)、及びケイ素(0.3〜3.1原子%)を含有し、また括弧内に記される組成の指定範囲で以下の元素:クロム(15〜20原子%)、モリブデン(2〜15原子%)タングステン(1〜3原子%)、ホウ素(5〜16原子%)、炭素(3〜16原子%)、及び残部の鉄を含有する。
上述のアモルファス合金系は、Nb、Cr、V、及びCoを含めた添加遷移金属元素などの、添加元素を更に含み得る。これらの添加元素は、約20重量%以下など、約10重量%以下など、約5重量%など、約30重量%以下で存在し得る。一実施形態では、この任意選択の添加元素は、コバルト、マンガン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、イットリウム、チタン、バナジウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つであり、炭化物を形成して、耐摩耗性及び耐食性を更に改善する。更なる任意選択の元素としては、融点を低下させるための、合計で最大約2%の、好ましくは1%未満の、リン、ゲルマニウム、及びヒ素を挙げることができる。他の少量の不純物は、約2%未満、好ましくは0.5%未満とするべきである。
一部の実施形態では、アモルファス合金を有する組成物は少量の不純物を含み得る。不純物元素を意図的に添加することにより、機械的特性(例えば、硬度、強度、破壊機構など)の改善、及び/又は耐食性の改善などの、その組成物の特性を修正することができる。あるいは、それらの不純物は、加工処理及び製造の副生成物として得られるもののような、不可避の付随的な不純物として存在し得る。これらの不純物は、約5重量%など、約2重量%など、約1重量%など、約0.5重量%など、約0.1重量%などの、約10重量%以下とすることができる。一部の実施形態では、これらの百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。一実施形態では、この合金サンプル/組成物は、アモルファス合金から本質的になる(少量の付随的な不純物のみを有する)。別の実施形態では、この組成物はアモルファス合金を含む(観察可能な微量の不純物を全く有さない)。
一実施形態では、最終部品は、バルク凝固アモルファス合金の臨界鋳造厚さを超過するものであった。
本明細書の実施形態では、バルク凝固アモルファス合金が高粘度の液体として存在することができる、過冷却液体領域の存在により、超塑性成形が可能となる。大きい塑性変形を得ることができる。過冷却液体領域内で大きく塑性変形する能力は、成形プロセス及び/又は切断プロセスに使用される。固体とは対照的に、この液体のバルク凝固合金は、局所的に変形し、このことが、切断及び成形のために必要とされるエネルギーを大幅に低下させる。切断及び成形の容易性は、合金、金型、及び切断工具の温度に応じて変化する。温度が高くなるにつれて、粘度が低下し、その結果として、切断及び成形が容易になる。
本明細書の実施形態は、例えば、Tg〜Txで実施される、アモルファス合金を使用する熱可塑性成形プロセスを利用することができる。本明細書では、Tx及びTgは、結晶化の開始の温度、及びガラス転移の開始の温度として、典型的な加熱速度(例えば、20℃/分)での標準的なDSC測定から決定される。
アモルファス合金構成要素は、臨界鋳造厚さを有し得るものであり、最終部品は、その臨界鋳造厚さよりも厚い厚さを有し得る。更には、加熱及び整形操作の時間並びに温度は、アモルファス合金の弾性歪み限界が、1.0%以上、好ましくは1.5%以上であることを実質的に維持し得るように選択される。本明細書の実施形態との関連では、ガラス転移近傍の温度とは、成形温度がガラス転移未満、ガラス転移温度若しくはガラス転位温度近傍、及びガラス転移温度超とすることができることを意味するが、結晶化温度Txより低い温度であることが好ましい。冷却工程は、加熱工程での加熱速度と同様の速度で、好ましくは、加熱工程での加熱速度を超える速度で実施される。冷却工程はまた、好ましくは、形成荷重及び成形荷重が依然として維持されている間にも達成される。
電子デバイス
本明細書の実施形態は、BMGを使用する電子デバイスの製作で有用であり得る。本明細書での電子デバイスとは、当該技術分野において既知の任意の電子デバイスを指すことができる。例えば、この電子デバイスは、セル電話及び固定電話などの電話、あるいは、例えばiPhone(商標)を含めたスマートフォン、及び電子eメール送信/受信デバイスなどの、いずれかの通信デバイスとすることができる。この電子デバイスは、デジタルディスプレイ、TVモニタ、電子ブックリーダ、ポータブルウェブブラウザ(例えば、iPad(商標))、及びコンピュータモニタなどの、ディスプレイの一部とすることができる。この電子デバイスはまた、携帯DVDプレーヤ、従来型DVDプレーヤ、ブルーレイディスクプレーヤ、ビデオゲームコンソール、携帯音楽プレーヤ(例えば、iPod(商標))などの音楽プレーヤなどを含めた、娯楽デバイスとすることもできる。この電子デバイスはまた、画像、ビデオ、音声のストリーミングを制御することなどの、制御を提供するデバイス(例えば、Apple TV(商標))の一部とすることもでき、又は電子デバイス用の遠隔制御装置とすることができる。この電子デバイスは、コンピュータ、あるいはハードドライブタワーの筺体若しくはケーシング、ラップトップ筺体、ラップトップキーボード、ラップトップトラックパッド、デスクトップキーボード、マウス、及びスピーカなどの、コンピュータ付属品の一部とすることができる。この物品はまた、腕時計又は時計などの機器にも適用することができる。
本明細書に記述される方法、技法、及び装置は、記述されている実施形態を限定することを意図したものではない。
本明細書に開示されるように、装置又はシステム(あるいは装置又は機械)は、材料(例えばアモルファス合金)の溶融及び射出成形を行うように構成され得る。このシステムは、高融解温度で溶融させてから、その溶融材料を金型内に注入して成形を行うことにより、そのような材料又は合金を加工するように構成される。下記で更に述べられるように、この装置の部品は互いに一線上に配置される。いくつかの実施形態により、この装置の部品(又はこのシステムへのアクセス)は、水平軸に沿っている。
アモルファス合金材料を使用して部品を成形する際、部品の品質は、アモルファス合金が加工処理サイクル中に完全に溶融しないことにより、形成及び成形の際に低下し得る。具体的には、射出成形機内でアモルファス合金材料を使用する際、材料が均一に高温に加熱されない場合、及び/又は溶融した材料の均一に加熱された高温状態が成形されるまでに維持されない場合には、材料(その溶融状態の材料)は、溶融中、及び/又は射出成形機内で金型に材料を移動する間に、内部に結晶を生成するか又はスカルを形成し得る。本開示全体に使用される「スカル」とは、結晶化したアモルファス合金、又は結晶として定義される。溶融可能材料の一部で加工処理サイクル中に温度が低下した場合、又は、材料のある層が溶融しないか、若しくは十分に高い温度に加熱されない場合に、アモルファス合金材料中にスカルが形成され得る。これは、溶融した材料中に、結晶の、層、スラッシュ、又はスラリーを含み得る。スカルは、(より)低温の表面に直接接触する領域に形成され得る。例えば、アモルファス合金が温度制御又は冷却機能を備えた容器内又はボート型るつぼ(例えば銅製)の中で溶融される場合、温度冷却領域近くで容器に接触している材料の一部は、完全に溶融するのに十分な高温に達しない可能性があり、よって、(例えば溶融した材料の底又は側面にある)容器の冷却部品に接触する表面の近くで、溶融材料内にスカル層が形成され得る。別の一例として、溶融したアモルファス合金材料が溶融ゾーンから金型内へ(例えば移送スリーブを通って)射出のために移動する際、溶融した材料の一部が冷えて、スカルを形成し得る。場合によっては、射出成形システム又は装置の全部品が温度制御及び/又は加熱されているわけではないため、例えば移送スリーブ内を通過する際に、スカル層の形成が誤って生じることがある。例えば、本明細書に記述される移送スリーブ(30)は低温スリーブ(例えば、加熱されていない)である場合があり、又は室温で提供される場合がある。
スカルは、射出成形プロセスに対する悪影響を引き起こし得る。例えば、アモルファス合金(又はBMG)のスカルは、結晶質構造を生じ得る。結晶質材料が射出成形部品に導入されると、例えば、部品の強度の低下、部品品質の低下、及び部品表面に望ましくない斑点を生じることがある。したがって、本開示は、射出成形システムの様々な部品内での熱伝導差の結果として生じるアモルファス合金の、スカルを最小限に抑え及び/又は除去するための、いくつかの例示的な方法及びシステムを提供する。
本開示全体において、射出システム内で使用され、溶融され、及び成形される際の、溶融可能材料、溶融した材料、又は溶融状態の材料という表現は、例えば上記で詳細に記述されている材料などのアモルファス合金材料を指す。
また、全体にわたって理解されるように、「クッキー」は、成形部品と共に成形部品から生じる、あるいは、成形がいったん完了した後に移送スリーブに残る、残存物(例えばスラグ)である(最初に金型内に入り得るが、成形中に押し出され又は流出し得る材料)。場合によっては、これは成形部品から除去(例えば切除)する必要がある場合があり、又は、部品が完成する前に排出された成形部品に機械的技法を適用する場合がある。
下記の実施形態は単に例示目的のためのものであり、限定することを意図するものではない。
図3は、そのような例示的システムの概略図を示す。より具体的には、図3は、射出成形装置又はシステム10を示す。一実施形態により、射出成形システム10は、その中に受容した溶融可能材料を溶融するよう構成されている溶融ゾーン12と、溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へと動かし射出するよう構成されている、先端22を備えた少なくとも1本のプランジャロッド14とを有する。一実施形態では、少なくとも、プランジャロッド14及び溶融ゾーン12は一直線上にかつ水平軸(例えばX軸)上に設けられ、これによりプランジャロッド14は実質的に溶融ゾーン12を通って水平方向に(例えばX軸に沿って)移動し、溶融材料を金型16内に移動させる。この金型は、溶融ゾーンに隣接して配置され得る。
溶融可能アモルファス合金材料は、任意の数の形態で溶融ゾーンに受容され得る。例えば、溶融可能材料は、インゴット(固体状態)、半固体状態、予熱されたスラリー、粉末、ペレットなどの形態で溶融ゾーン12に供給され得る。いくつかの実施形態において、搭載ポート(例えばインゴット搭載ポート18の図示例)が、射出成形システム10の一部として提供され得る。搭載ポート18は、任意の数の場所で装置内に提供される別々の開口部又は領域であってもよい。一実施形態において、搭載ポート18は、装置の1つ以上の部品を通過する経路であり得る(例えば、それらの中に別個に形成されたものではない)。例えば、材料(例えばインゴット)は、プランジャ14によって容器20内に水平方向に挿入することができ、あるいは、射出システム10の金型側から水平方向に挿入することができる(例えば、金型16を通って、及び/又は移送スリーブ30を通って、容器20内へ)。他の実施形態において、溶融可能材料は、他の方法及び/又は他の装置を用いて(例えば射出システムの反対側を通して)溶融ゾーン12内に供給することができる。
溶融ゾーン12は、溶融可能材料を受容し、その材料が溶融状態に加熱された際にそれを保持するよう構成された溶融機構を有する。溶融機構は、容器20の形態であってよく、これは例えば、溶融可能材料を受容し、かつ、内部の材料を溶融するよう構成された本体を有する。本開示全体にわたって使用されている容器は、物質を高温に加熱するために採用された材料で作製された容器である。例えば、一実施形態において、この容器はるつぼであってよく、例えばボート形るつぼ、又はスカルるつぼであり得る。一実施形態において、容器20は、真空下(例えば真空装置38又はポンプによって適用される)で溶融可能材料用に利用できるよう構成された低温炉床溶融装置である。一実施形態において、下記に詳しく述べられるように、この容器は温度調節された容器である。
容器20はまた、本体の受容部分又は溶融部分24内に材料(例えば原材料)を投入するための入口も有し得る。一実施形態において、容器20の本体は、実質的にU字型の構造を含む。ただし、この形状は、制限することを意味するものではない。容器20は、任意の数の形状又は構成を含み得る。この容器の本体は、ある長さを有し、長手かつ水平方向に延在していてよく、これにより溶融した材料がプランジャ14を用いてここから水平方向に移送される。例えば、この本体は、そこから垂直に延在する側壁を備えた底部を含み得る。加熱又は溶融のための材料は、容器の溶融部分24に受容することができる。溶融部分24は、溶融される溶融可能材料を内部に受容するよう構成される。例えば、溶融部分24は材料を受容するための表面を有する。容器20は、送達のための射出システム(例えば搭載ポート、搭載装置、及び/又はプランジャ)の1つ以上の装置を使用して溶融部分24内に材料(例えばインゴットの形態)を受容することができる。
容器20の本体は、溶融した材料を移動させるために、プランジャロッドを、内部を通じて水平方向に受容するよう構成され得る。すなわち、一実施形態において、溶融機構はプランジャロッドと同じ軸上にあり、本体は、このプランジャロッドの少なくとも一部分を受容するような構成及び/又は寸法にすることができる。よって、プランジャロッド14は、容器20内を実質的に貫通して動くことによって、溶融した材料(加熱/溶融後)を容器及び溶融ゾーン12から金型16へと、移動させるよう構成することができる。図3に図示されているシステム10の実施形態を参照し、例えば、プランジャロッド14は、容器20を通じて、右から左に向かって水平方向に動き、溶融した材料を金型16内へと移動させて押し出す。
溶融ゾーン12を加熱して、容器20内に受容した溶融可能材料を溶融させるために、射出システム10には、その溶融可能材料を加熱して溶融させるのに使用する熱源も含まれる。本体自体の実質的に全体ではなくとも、少なくとも容器の溶融部分24は、内部に受容した材料を溶融させるべく、加熱されるよう構成される。加熱は、例えば、溶融可能材料を溶融させるよう構成された、溶融ゾーン12内に配置された誘導源26を使用して達成される。一実施形態において、誘導源26は容器20に隣接して配置される。例えば、誘導源26は、実質的に、容器本体の一定の長さにわたってその周囲に、螺旋状に配置されたコイルの形状であり得る。したがって、容器20は、電源供給又は電源28を用いて、誘導源/コイル26に電力を供給することにより、溶融部分24内の溶融可能材(例えば挿入されたインゴット)を電磁誘導により溶融するように構成することができる。よって、溶融ゾーン12には誘導ゾーンが含まれ得る。誘導コイル26は、容器20を溶融させて濡らすことなしに、容器20に収容されている任意の材料を加熱し溶融させるよう構成される。誘導コイル26は容器20に対して無線周波数(RF)波を放射する。図示されているように、本体と、容器20を取り巻くコイル26は、水平軸(例えばX軸)に沿って水平方向に配置されるように構成されてもよい。
一実施形態において、容器20は温度調節された容器である。そのような容器は、1本以上の温度調節管を含んでもよく、これは、容器内に受容した材料の溶融中に容器20の本体の温度を調節する(例えば容器を強制的に冷やす)ために、流体(例えば水又はその他の流体)を内部に流すよう構成される。そのような強制冷却されたるつぼはまた、プランジャロッドと同じ軸上に提供され得る。冷却管は、容器20の本体自体が過熱して溶融するのを防ぐのに役立つことができる。冷却管は、容器内の液体の流れを誘導するよう構成された冷却システムに接続することができる。冷却管は、液体又は流体が内部を通じて流れるための1つ以上の入口及び出口を含み得る。この冷却管の入口及び出口は、任意の数の方法で構成することができ、限定することを意図したものではない。例えば、冷却管は、中の材料が溶融して容器温度が調節されるように(すなわち、熱が吸収され、かつ容器が冷却されるように)、溶融部分24に対して配置され得る。冷却管の数、配置及び/又は方向は限定されるべきではない。冷却液体又は冷却流体は、誘導源26が通電されているときに、溶融可能材料の溶融中に冷却管を流れるよう構成され得る。
材料が容器20内で溶融された後、プランジャ14を使用して、その溶融した材料を、物体、部品又は構成片へと成形するために、容器20から金型16へと押し出すことができる。溶融可能材料がアモルファス合金である場合において、金型16は、成形されたバルクアモルファス合金の物体、部品又は構成片を形成するよう構成される。金型16は、それを通じて溶融した材料を受容するための入口を有する。容器20の出口と金型16の入口は、一線上かつ水平軸上に提供することができ、これによりプランジャロッド14は、容器の本体を貫通して水平方向に動き、溶融した材料を、金型16の入口を介して金型内に押し出す。
いくつかの実施形態において、射出成形システム10は、移送スリーブ30を含む。移送スリーブ30(時に、当該技術分野及び本明細書においてショットスリーブ、コールドスリーブ又は注入スリーブと呼ばれる)は、溶融ゾーン12と金型16との間に提供され得る。移送スリーブ30は開口部を有し、開口部は、これを通じて溶融した材料を受容し、(プランジャ14を用いて)金型16内に移送するよう構成される。この開口部は、水平軸(例えばX軸)に沿って水平方向に提供され得る。移送スリーブは、コールドチャンバである必要はない。一実施形態において、少なくともプランジャロッド14、容器20(例えばその受容部分又は溶融部分)、及び移送スリーブ30の開口部又は経路は、インラインかつ水平軸上に設けられ、これによりプランジャロッド14は、溶融した材料を移送スリーブ30の開口部内に移動させる(及び、その後通過させる)ために、容器20を通って水平方向に移動できる。溶融した材料は、移送スリーブ30を通って水平方向に押され、入口を通って金型キャビティに入る。
前述のように、金属又は合金などの材料を成形するのに使用される射出成形システム10のようなシステムは、金型又はダイキャビティ内に溶融した材料を押し出す際、真空を利用することができる。射出成形システム10は、少なくとも溶融ゾーン12及び金型16に真空圧を適用するよう構成された少なくとも1つの真空源38又はポンプを更に含み得る。この真空圧は、中の材料を溶融し、移動又は移送し、成形するのに使用される射出成形システム10の少なくとも部分に適用され得る。例えば容器20、移送スリーブ30、及びプランジャロッド14は、全て真空下であってよく、及び/又は真空チャンバ内で密閉されていてもよい。
一実施形態において、金型16は、材料を成形する際に内部の真空圧を調節するよう構成された封入構造である真空金型である。例えば、一実施形態において、真空金型16は、互いに隣接して(それぞれ)配置された、第1プレート32(「A」金型又は「A」プレートとも呼ばれる)、第2プレート34(「B」金型又は「B」プレートとも呼ばれる)を含む。第1プレート32及び第2プレート34は一般にそれぞれ、それらの間で溶融した材料を成形するために、それぞれに伴う金型キャビティ36及び38を有する。この金型キャビティは、注入スリーブ又は移送スリーブ30を介してその間に受容される溶融した材料を成形するよう構成される。金型キャビティ36及び38には、その中で部品を形成及び鋳造するための部品キャビティが含まれ得る。
一般に、第1プレート32は、移送スリーブ30に接続することができる。一実施形態により、プランジャロッド14は、溶融した材料を、容器20から、移送スリーブ30を介して、金型16へと移動させるように構成されている。すなわち、金型16のキャビティへの入口が第1プレート32内に提供され、第1プレート32と第2プレート34との間にキャビティが配置される。
材料の成形中、少なくとも金型16の第1プレート及び第2プレートは、その間にある材料(例えば溶融したアモルファス合金)が少なくとも酸素及び窒素に曝露するのを実質的に排除するよう構成される。具体的には、プレート並びにそれらのキャビティから、大気空気が実質的に排除されるよう、真空が適用される。真空ラインに接続された少なくとも1つの真空源38を使用して、真空金型16の内部に真空圧を適用する。例えば、システムの真空又は真空レベルは、溶融及びその後の成形サイクル中において、1×10-1〜1×10-4Torrに保持され得る。別の一実施形態において、この真空レベルは、溶融及び成形サイクル中において、1×10-2〜約1×10-4Torrに保持される。もちろん、他の圧力レベル又は範囲、例えば、1×10-9Torr〜約1×10-3Torr、及び/又は1×10-3Torr〜約0.1Torrも使用することができる。真空イジェクタボックス(図示なし)は、金型16の第1プレート32と第2プレート34との間の金型キャビティから、成形された(アモルファス合金)材料を取り出すように構成されている。この取り出し機構は、成形された材料又は部品を外すために、作動するよう構成された作動機構(図示なし)に関連付けられ又は接続される(例えば、少なくともプレート間の真空圧が解放された後、第1プレート及び第2プレートが互いからに離れるよう水平方向に動いた後)。
場合によっては、後述されるように、仕上げられた成形部品を製造する前に、排出された成形構成片に対して、追加の機械加工が実施される。例えば、クッキー及び/又は余分に成形された材料(例えば、スカル材料を含む、トラップされ成形された材料)は、部品の最終仕上げの前に除去することができる。
装置10には、任意の数又はタイプの金型を採用することができる。例えば、任意の数のプレートを、第1プレートと第2プレートとの間及び/又はこれらに隣接するように設けて、金型を形成することができる。例えば「A」シリーズ、「B」シリーズ、及び/又は「X」シリーズの金型として知られる金型を、射出成形システム/装置10に取り付けることができる。
容器20内の冷却管は、容器本体を冷却するのに役立つが、前に述べたように、場合によっては、溶融したアモルファス合金材料中にスカル材料の形成を引き起こすことがある。あるいは、冷却管がない場合であっても、溶融したアモルファス合金材料の一部が、成形前に結晶化してスカル材料になることがある。例えば、溶融した材料は、溶融ゾーン12から金型16へと移送される間に冷却され得る。溶融される材料を均一に加熱し、このような射出成形装置10の中にある溶融した材料の温度を維持することが、均一に成形された部品を形成するのに役立つ。スカル材料と一緒に成形を行うと、品質及び完全性が低下する。
したがって、本開示は、スカル材料を伴う成形を低減及び/又は防止する必要性に対処するため、射出成形システムの異なる部品内の熱伝導差の結果として生じたスカル部分をアモルファス合金から低減又は除去することによる、いくつかの異なる構想を提供する。
いくつかの実施形態により、このスカルは、加工処理サイクル(すなわち、少なくとも溶融ゾーン12内での溶融の時点から、溶融した材料が金型16中で成形完了するまでの、加工処理サイクル)中に、射出成形システム(例えばシステム10)中で機械的に分離するよう設計される。一実施形態において、射出成形システムはその中に、溶融した材料のスカル材料を先端内でトラップし、これによって、最終仕上げされた成形部品におけるスカル又は結晶質材料の量を実質的に低減するよう構成されているキャビティを含む。これによって、スカル材料がキャビティ内に押し込まれて成形部品内に引き込まれる可能性が低下する(よって部品の品質が向上する)。例えば、図4に示すように、プランジャロッド14のプランジャ先端22が、溶融した材料42を溶融ゾーン12から移送スリーブ30を通って金型16へと移動させる際、溶融した材料42はスカル46を形成し得る。すなわち、溶融した材料42は、材料(アモルファス合金)のより高温の溶融プール44と、より低温のスカル材料46の、両方を含み得る。このスカル材料46が最終的な成形部品内に存在するのを低減及び/又は防ぐために、図4は、溶融したアモルファス合金中のスカル材料をトラップするよう構成された、金型16内に提供されたキャビティ40の一実施形態を示す。より具体的には、部品を形成するために使用される金型キャビティ内に、スカルトラップゾーン40、キャビティ(単数又は複数)、又は領域が提供される。スカルトラップゾーン40は、部品を形成するのに使用される実際の金型の拡張部であり得る。図示されている実施形態において、スカルトラップゾーン40は、金型16の第2プレート34内の金型キャビティ38の拡張部として提供される。これは、溶融した材料42が第1プレート32と第2プレート34との間、そしてそれぞれのキャビティ36及び36内に射出されたときに、スカル材料46が実質的にスカルトラップゾーン40へと押し込まれ、これによってスカル材料46の大半又は実質的に全部が、金型16の分離された領域に入り、これは部品を形成するのに使用されるキャビティからは区別される。部品が形成された後、成形された部品を排出させ、更なる機械加工を使用して、その成形された部品を仕上げることができる。すなわち、スカルトラップゾーン40に射出され、ここで成形され、かつ硬化した材料は、機械加工で除去することができ、これにより最終部品は、硬化したスカル又は結晶質材料を必ずしも含まない。
図示されている実施形態において、スカル材料46は、下の移動表面(例えば移送スリーブ30の経路)及びプランジャ先端22の近くで形成されるものとして示されている。これは例示である。この例に基づいて、スカルトラップゾーン40は、金型16内に射出されたときに、スカル材料46がその中に押し込まれるように、金型16内に配置されるよう構成される。しかしながら、図4ではスカルトラップゾーン40が第2キャビティ38内の拡張部として示されているが、この位置は単に例示であり、これに限定することを意図したものではない。例えば、スカルトラップゾーン40は第1プレート32のキャビティ36の一部として提供することができる。したがって、スカルトラップゾーン40は、溶融した材料42から実質的な量のスカル材料46を受容するよう決定された、金型内又は金型に隣接する領域に配置され得る。
いくつかの他の実施形態により、スカル46は、金型に入る前に、溶融した材料42から機械的に分離される。図5〜8は、スカル材料を分離するための別の実施例を示す。具体的には、溶融した材料が、プランジャロッド14の先端22を使って、溶融ゾーン12から金型16へと押し込まれる際に、スカルは溶融した材料(合金)から機械的に分離される。例えば、プランジャロッド14の先端22にキャビティが提供され得る。いくつかの実施形態において、プランジャロッド22の先端内のキャビティは、プランジャロッド14の中心線(水平の長手方向線)よりも下に提供することができ、これによってスカル材料がその中に捕捉又はトラップされる。すなわち、底面及び/又はプランジャロッド22の端近くで形成されたスカル材料46(例えば図4に示す)がある場合、キャビティは、溶融した材料42のプール44からスカル46を分離するよう設計することができる。
図5及び6は、端に提供されたキャビティ50を有する本体48を備えたプランジャ先端22の一例を示し、これは、少なくとも、溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へと動かすよう構成されている。例えば、キャビティ50は、プランジャロッド14の中心線より実質的に下で、かつ丸みを帯びた形状を有するよう提供され得る。キャビティ50は、プランジャ先端22の端から後ろ向きに延在するよう構成される。キャビティ50は、溶融した材料42中のスカル材料46の大半又は実質的に全てが、金型16に向かう動きの間に、及び/又は、溶融した材料が金型16へと射出されるときに、キャビティ50内にトラップされ、このとき同時に、より高温のアモルファス合金材料の溶融プール44は、金型16に押し込まれ、キャビティ36及び38を使って部品に成形される。部品が形成された後、成形された部品を排出させ、更なる機械加工を使用して、その成形された部品を仕上げることができる。すなわち、プランジャ本体48のキャビティ50にトラップされた材料は、部品と一緒に硬化及び成形され得る。よって、そのような材料は機械加工で除去することができ、これによって最終部品は必ずしも、硬化したスカル又は結晶化材料を含まない。
図7は、別の丸みを帯びた形状のキャビティ52を有するプランジャ先端22の別の一実施例を示す。キャビティ52は、キャビティ50同様、プランジャ先端22の端に提供され、これは少なくとも、溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へと動かすよう構成されている。キャビティ52は、図7に示すように、プランジャロッド14の中心線より実質的に下で、かつ、弧又は舌形の溝の形状である丸みを帯びた形状を有して提供され得る。キャビティ52は、プランジャ先端22の端から後ろ向きに延在するよう構成される。キャビティ52は、溶融した材料42中のスカル材料46の大半又は実質的に全てが、金型16に向かう動きの間に、及び/又は、溶融した材料が金型16へと射出されるときに、キャビティ52内にトラップされ、このとき同時に、より高温のアモルファス合金材料の溶融プール44は、金型16に押し込まれる。部品が形成された後、成形された部品を排出させ、更なる機械加工を使用して、その成形された部品を仕上げることができる。すなわち、プランジャのキャビティ52内にトラップされた材料は、図18に示すように、部品と一緒に硬化され成形され得る。具体的には、図18は、射出成形機内の金型から排出された部品100の斜視図を示す。部品100は、最終部品である成形部分102を有していることに加え、図7においてキャビティ52内で硬化された成型部分104をも含む。この成形部分104は、トラップされ、及び/又は金型16内に押し込まれるのが防止された、スカル材料46の少なくとも一部分を含む。よって、成形部分104は、成形部分102を機械加工で切断することができ、これによって最終部品100は必ずしも硬化したスカル又は結晶化した材料を含まない。
図8及び9は、端に提供されたキャビティ56を有する本体54を備えたプランジャ先端22の更に別の一例を示し、これは、少なくとも、溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へと動かすよう構成されている。キャビティ56は、プランジャロッド14の中心線より実質的に下で、かつ階段状の形状を有するよう提供され得る。キャビティ56は、プランジャ先端22の端から後ろ向きに延在するよう構成される。キャビティ56は、溶融した材料42中のスカル材料46の大半又は実質的に全てが、金型16に向かう動きの間に、及び/又は、溶融した材料が金型16へと射出されるときに、キャビティ56の一部内にトラップされ、このとき同時に、より高温のアモルファス合金材料の溶融プール44は、金型16に押し込まれ、キャビティ36及び38を使って部品に成形される。部品が形成された後、成形された部品を排出させ、更なる機械加工を使用して、その成形された部品を仕上げることができる。すなわち、プランジャ本体54のキャビティ56にトラップされた材料は、部品と一緒に硬化及び成形され得る。よって、そのような材料は機械加工で除去することができ、これによって最終部品は必ずしも、硬化したスカル又は結晶化材料を含まない。
もちろん、プランジャ先端の図5〜8に示すキャビティの形状は、例示的なものであり、制限するものではないことが理解されよう。プランジャロッド14の先端22にキャビティを形成するため、任意の数の様々な構成又は形状を使用することができる。
したがって、例えば図5〜8に示す例のように、キャビティを備えた設計のプランジャ先端という構想を使用することにより、溶融した材料内に形成されるスカル材料は、実質的に金型のキャビティ内に入らない。このとき、スカルはプランジャ先端によってトラップされる(そして、部品又はクッキーと共に留まる)。
しかしながら、金型又はプランジャロッド以外の機械又はシステム部品も、スカルが金型に入る前に溶融材料から除去するよう構成することができる。キャビティは、金型又はプランジャの外側に提供することができ、これは依然として、プランジャが溶融した材料を金型に移動させる前にスカル材料をトラップするよう構成することができる。例えば、(溶融ゾーンと金型の間に)移送スリーブ30を含むシステムにおいて、キャビティは、移送スリーブの経路内に提供することができる。このとき、溶融した材料がここを通って移動する際、キャビティを使用して、スカル材料の少なくとも一部をトラップ又は捕捉することができる。図14及び15は、(プランジャロッド及び材料がそこを通って移動するための)移送スリーブ30内の経路の底面58に提供された、そのようなキャビティ60又はチャネルの一例を示す。概ね図示されているように、キャビティ60は経路内に長手方向(例えば、水平軸に沿った方向)に延在している。キャビティ60は、経路の底面58より下に提供され、これによって、プランジャロッド14が溶融した材料42を溶融ゾーン12から移動させる際に、スカル材料46がキャビティ60内に捕捉され、同時に溶融プール44は金型16へと押し込まれる。例えば、キャビティ60は経路内に長手方向に(例えばX軸に沿って)延在する湯道又は開口部の形状であってよく、これは、スカル材料が金型の成形部品領域に入る前に、これをトラップするよう構成されている。
一実施形態において、キャビティ60は、金型16の入口近くの移送スリーブ30の経路に配置するよう構成され、これによって、溶融した材料がスリーブ30を通る際に形成されたスカル材料46の大半が、金型16内に射出される前に捕捉される。しかしながら、図14〜15は、その中にキャビティ60内を備えた移送スリーブ30を示しているが、このようなキャビティ又はチャネルは、溶融ゾーン12の近く又はその中、及び/又は金型に入る前の任意の地点に提供し得ることが理解されよう。別の一実施形態において、複数のキャビティ又はチャネルを、移送スリーブの長さに沿って提供することができる。例えば、キャビティ又はチャネルは、溶融した材料が経路に沿って移動する際に、スカル材料を選択的に回収又はそぎ取るよう、底面に沿って長手方向に間隔を空けて配置され得る。
キャビティ60の深さは、一実施形態において、約0.10mm〜約0.25mmであり得る。キャビティの深さはまた、他の一実施形態において、約0.25mm〜約10.0mmであり得る。別の一実施形態において、キャビティ60の深さは、2.0mm〜約5.0mmである。これらの寸法は例示的であり、限定的なものではない。例えば、別の一実施形態において、キャビティ60の深さは、溶融した材料から回収される材料の量(例えば、これは、射出及び成形される溶融した材料の合計量の割合であり得る)に依存し得る。キャビティ60の深さは、別の一実施形態により、射出速度に依存し得る。したがって、キャビティ60の寸法を決定するには、任意の数の要素が使用され得る。したがって、キャビティ60の実施により、溶融した材料中に形成されたスカル材料は、実質的に、金型のキャビティ内に入らない。ここでスカルは、移送スリーブを通って移動する際に、キャビティ内に落下することにより、トラップされる。
材料がいったんキャビティ60にトラップされた後、任意の数の手段又は装置を使用して、この材料を除去することができる。場合によっては、キャビティ60内の材料を冷却して、固形片を形成してから、除去することができる。図16及び17は、射出成形システム内の経路でそぎ取られた又はトラップされたスカル材料を除去するための、射出成形システム内のデバイスを使用するための例示的な実施形態を示す。図示されている実施形態において、排出デバイスは、作動機構68(シャフトの形状で図示されている)に取り付けられたプレート66を含む。プレート66は経路内(例えば、溶融ゾーン12と金型16との間の移送スリーブ30内)に提供され、溶融プールの経路の下にキャビティを形成するように配置される。例えば、プレート66は、図16に示すように、キャビティ60と同様のキャビティを形成するように配置することができる。プレート66は、経路に対して任意の位置及び深さで提供され得る。
キャビティ内にトラップされる材料は、数多くの方法で、図示されているデバイスを使用して排出され得る。例えば、このデバイスは上又は下に動くことができる。一実施形態において、作動機構68は、プレート66垂直方向に下に動かして経路から離すことができ、これによりキャビティ60内の材料が解放され及び/又は落下する。別の一実施形態において、図17に示すように、プレート66を垂直方向、経路内に向かって上に動かすことができ、これによって材料を上に押し上げることができる。例えば、プレート66は、材料が経路から除去され得るような配列で構成することができる。図17に示す実施形態において、プランジャ14は、水平方向に後ろ向きに(ホーム位置、例えば溶融及び射出を開始する前の位置に向かって)動くよう構成され、これによって、その先端22を使ってその材料を後ろ向きに、例えば溶融ゾーン12内に移動させ又は押し出すことができる。しかしながら、プランジャ14はまた、あるいは別の方法として、キャビティから金型16を通って材料を排出するのに使用することもできる。例えば、プレート66を動かす前に、プランジャ14をホーム位置まで引き戻すことができる。次に、作動機構68が、プレート66を使用して、キャビティ内の材料を上向きに押し上げるよう構成され得る。プランジャ14を次に、金型16に向かって前進させ、その材料を前方に押し出し、おそらくはこの金型を通過させて、除去することができる。
あるいは、別の一実施形態において、キャビティ60からこの材料を排出するためにピンを提供することも考えられる。例えば、複数のピンを、キャビティ領域を通って選択的に移動するよう割り当てて、これによりキャビティ内の材料がキャビティから(例えば底から)押し出される。そのようなピンは、例えば、金型キャビティから成形された部品を排出するのに使用されるイジェクタピンに類似のものであり得る。
更に別の代替の一実施形態により、射出成形機又はシステムの部品が、溶融プール44から材料を除去することなしに、金型に入る前に、溶融した材料からスカルを除去するよう構成することができる。例えば、図10〜13は、金型に入る前に(すなわち、溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へと移動させている間に)、溶融した材料(合金)の混合を誘導するための、プランジャ先端を使用する構想及び方法を示す。
図3の射出成形システム10におけるデバイスを参照し、プランジャロッド14は、右から左へ水平方向に、溶融ゾーン12から金型16に向かって材料を動かすのに使用される。一実施形態において、溶融した材料42の混合を誘導及び提供するため、プランジャロッド14は材料の混合又は攪拌を誘導するような制御された様相で動くようあらかじめプログラムすることができる。例えば、一実施形態において、プランジャは、短時間(例えば1秒間)、水平経路に沿って定期的に停止するか、及び/又は、相互又は前後の動き(例えば、反対方向、例えば左から右、又は金型から戻って離れる方向)で定期的に動かしてから、再び金型に向けて動かすことができる。そのようなプランジャロッド14の動きは、溶融した材料の混合を誘導し得る。例えば、図10の矢印に示すように、プランジャロッド14は経路を通り、移送スリーブ30の表面58に沿って、材料を水平方向に押す際に、溶融した材料42が前方に向かって溢れ、これによりプランジャの動きに基づいて前方に流れて混合される。次に、図11に示すように、溶融した材料42の乱流によりスカル材料46がより高温の溶融プール44と混合され、これにより溶融プール44の一部となる。そのような攪拌を開始することにより、スカル材料46は、成形される前に、より高温のプール44中に融解し得る。
別の一実施形態において、プランジャロッド14の先端22は、金型16に向かって動く際に、溶融した材料の混合又は攪拌を誘導するような形状にすることができる。混合は、少なくともプランジャ先端の面を、プランジャ先端及び材料の溶融プールの金型に向かう前方への動きの関数として、溶融した合金を攪拌するような形状に形作ることにより、誘導され得る。図13は、溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へ押し込むよう構成された、形作られた端64を備えた本体62を含むプランジャ先端22の一実施例を示す。形作られた端64は、(図示のように)僅かに凹面であってよく、又は、プランジャロッド14が金型16に向かって水平方向に移動する際に混合及び攪拌を誘導するよう設計された円錐形状を有してもよい。そのようなプランジャ先端設計は、プランジャが動く際に、溶融した材料42の動きを誘導することができ、これによって、材料を激しく動かし、スカル材料46がより高い温度の溶融プール44と混合して、より高い温度のプール44中に融解してから成形され得る。図19〜21は、他の実施形態による、射出成形システムに使用され得る別のプランジャ先端の別の設計を示す。一実施形態において、攪拌運動は、射出軸(例えば水平X軸)に対して角度を成す回転運動となり得、これは、例えば図19に示すように、プランジャ先端22のネジ形状の先端面70により生成され得る。あるいは、プランジャ先端22は、例えば図20に示すような斜面先端面72を含み得、これは軸方向に回転することにより、溶融物の底から上へと溶融流体を攪拌することができる。別の一実施形態において、攪拌は、例えば図21に示すように、円錐形の先端面により、軸方向の射出から半径方向に放射させることができる。
したがって、これらのプランジャ先端設計、デバイス、及び/又は方法の任意のものを使用して、混合を強化し、これによりスカルを連続的に、溶融した材料内に相互混合させることができる。溶融したプールを移動させ射出しながら同時にスカル材料を取込み混合することにより、最終的な成形部品中に存在するスカル材料の量は低減及び/又は排除される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記述される実装例の組み合わせを射出成形機に使用することができ、これにより最終的な成形部品中のスカル材料(結晶)を低減及び/又は実質的に排除し得ることが考えられる。例えば、一実施形態において、スカル材料は、プランジャ先端内のキャビティ(例えば図5〜8における設計を参照)と、移送スリーブ内のキャビティ(例えば、図14〜15を参照)の両方によってトラップされ得る。別の一実施形態において、スカルトラップゾーン40と誘導混合の両方を使用することができる。更に別の一実施形態において、誘導混合と、1つ以上のキャビティの両方を使用して、スカル材料をトラップすることができる。
記述された実装例に加え、最終的な成形部品中のスカル材料の量を低減するため、射出成形システム10の追加機能も提供され得る。例えば、場合によっては、移送スリーブ30の経路壁を、スカル除去を促進又はスカル形成を軽減するための特定の材料で製造することができる。いくつかの実施形態において、移送スリーブ300は、熱伝導性の低い材料で製造することができ、これにより、プランジャロッド14によって移動する際に、溶融した材料の冷却が低下し、溶融した材料中のスカルの形成が低減され得る。別の実施形態において、溶融可能材料が過熱可能な場合、システム10は、より高い温度まで材料を加熱し、これによりスカル形成を最小限に抑えるよう構成することができる。
トラップ又は除去され、かつ、少なくとも実質的にスカルを含む材料は、例えば図4〜8及び図14〜15の方法/デバイスを用いて示されたように、例えば、必ずしも廃棄又は捨てる必要はない。場合によっては、スカル材料はリサイクル可能である。スカルは実質的に、溶解される材料(合金)と同じ組成物を有しているため、スカルを溶融可能材料と合わせ、及び/又は、溶融可能材料と共に溶融ゾーン12に挿入して、再び溶融させることができる。場合によっては、必要に応じて追加の成分を加えることができる。
本明細書に記述された構成は、射出成形機における部品形成用に知られている材料とは異なる材料を必要としない。いくつかの実施形態において、耐摩耗性を改善し熱損失を低減するために、コーティング及び/又は表面質感を加えることができる(例えば移送スリーブ内に)。
上記の方法及びシステムは、スカル形成を低減及び/又は最小限に抑え、かつ/あるいは加工処理中に形成されたスカルを除去する。したがって、最終成形製品中のスカルは、低減及び/又は最小限に抑えられる。場合によっては、最終成形製品からスカルを実質的に除去することができる。成形部品中のスカル又は結晶化材料の量を低減することで、品質が向上し、これには強度関連特性、審美的特性、耐腐食性、及びアモルファス均一性が挙げられるがこれらに限定されない。
一般に、溶融可能材料(例えばアモルファス合金)を使用して部品(例えばバルクアモルファス合金部品)を形成するために、射出成形システム/装置10は、下記のように作動させることができる:溶融可能な材料(例えば、アモルファス合金又はBMGを単一インゴットの形状で)を、供給機構(例えば搭載ポート18又はデバイス)に搭載し、容器20内の溶融ゾーン12(これは誘導コイル26で取り囲まれている)に挿入し受容させる。システム(溶融ゾーン及び金型)に真空を印加し、溶融ゾーン12内の誘導プロセスにより(すなわち、誘導コイル26に電源を介して電力を供給することによって)材料を加熱する。射出成形装置は、閉ループシステムを介して温度を制御することができ、これにより(例えば、温度センサとコントローラを使用して)材料を特定の温度で安定させうる。材料の溶融中に、装置は真空下に維持される。また、加熱/溶融中に、冷却システムを作動させて、容器20の冷却管内に(冷却)液を流すことができる。望ましい温度に達し、溶融可能な材料の溶融状態が維持されたら、誘導コイル26を用いた加熱を停止することができる。装置は、溶融した材料を、容器20から移送スリーブ30を通して真空金型16へと、水平軸(X軸)に沿って水平方向に(右から左へ)動かすことにより、注入を開始する。これは、プランジャ14を使用して制御可能であり、これはサーボ駆動ドライブ又は水圧駆動を用いて作動させることができる。金型16は、溶融した材料を入口を介して受容するように構成され、真空下でその溶融した材料を成形するように構成される。すなわち、溶融した材料は、少なくとも第1プレートと第2プレートとの間の金型キャビティ内に注入されて、金型16で部品を成形する。一実施形態において、溶融した材料の少なくとも一部が、射出成形装置のキャビティ内にトラップされる。具体的には、溶融した材料から生じたスカル材料が、図4〜図8及び図14〜図15を参照して記述されたように、金型、プランジャ先端、及び/又は移送スリーブの構成の単独又は組み合わせを用いて、トラップ又は捕捉される。別の一実施形態において、溶融した材料の混合が誘導され(例えばプランジャを用いて)、これにより、スカル材料は実質的に形成が防止され、及び/又は、形成されたスカルも、溶融プール内に混合されて溶融される。その後に材料が金型に射出される。金型キャビティが充填され始めたら、真空(真空ライン及び真空源38を介して)を所定の圧力に保持して、溶融した材料を金型キャビティ領域に「押し詰め」、材料を成形することができる。成形プロセスの後(例えば約10〜15秒後)、少なくとも金型16(又は装置10全体)に印加した真空を解除する。次に金型16を開けて圧力を解放し、部品を大気に暴露させる。イジェクタ機構を作動させ、作動装置を介して、固化した成形物品を、金型16の少なくとも第1及び第2プレートの間から外す。この後、プロセスを再び開始することができる。金型16は、少なくとも第1及び第2プレートを互いに近づくように動かすことによって閉じ、これによって第1及び第2プレートを互いに隣接させることができる。プランジャ14を装入位置に引き戻した後、より多くの材料を挿入及び溶融し、別の部品を成形するために、溶融ゾーン12及び金型16は、真空源を介して排気される。排出された成形部品は必要に応じて機械加工し、最終成形部品を製造することができ、これは、硬化したスカル材料の含有量が低減しているか、及び/又は実質的に含まない。
したがって、本明細書に開示される実施形態は、水平軸に沿ったインラインの溶融システムを有する、例示的な射出システム内におけるスカルトラップの方法及びデバイスを示す。しかしながら、本明細書に記述される実施形態のいくつかは、垂直軸に配置されたシステムに実装することもできる。
詳しくは記述されていないが、本開示の射出システムは、1つ以上のセンサ、流量計など(例えば温度、冷却水流量などをモニターするため)、及び/又は1つ以上のコントローラを含むがこれらに限定されない追加部品を含み得る。更に、真空下にあるとき、顕著な空気曝露又は漏れを実質的に制限又は排除することにより、溶融した材料の一部の溶融及び形成を支援するため、任意の数の部品に、又はそれに隣接して、封止部が設けられてもよい。例えば、封止部はOリングの形状であり得る。封止部は、任意の材料で製造することができ、封止される部品間を物質(例えば空気)が移動するのを停止させる装置として定義される。射出システムは、内部に溶融可能材料を挿入し、真空を適用し、加熱し、注入し、材料を成形して部品を形成するための、自動又は半自動プロセスを実施し得る。
本明細書に記述されるどの実施形態のプランジャ、移送スリーブ、又は金型に使用されるタイプ及び材料も、制限することを意図したものではない。プランジャロッド及びその先端は、類似又は異なる材料で製造され得る。例えば、プランジャロッド本体の形成に使用される一般的な材料は、硬質工具鋼である。プランジャ先端については、1つ以上の機械加工可能な非鉄材料、例えば銅、銅合金、銅ベリリウム合金、ステンレス鋼、真鍮、タングステン、又は様々な高温及び高強度セラミックス、及び/又は同様物を使用することができる。いくつかの実施形態において、プランジャ本体及び/又は先端は、プランジャ先端の使用寿命を延ばし、及び/又は溶融物均一性を改善する目的で、高耐摩耗性を促進し、断熱性を提供するために、その上にコーティング(例えば炭化物、窒化物、セラミックなどのコーティング)を有してもよい。プランジャ先端は、プランジャ先端と、ボート及び/又は低温スリーブ材料との間のより良い滑り機構を提供するため、比較的柔らかい材料でコーティングすることもできる。プランジャ先端のコーティングは、セラミック又は金属製の性質であってよく、化学浴、蒸着、パウダーコーティングなど幅広い方法で堆積され得る。いくつかの実施形態において、プランジャ先端材料を形成するのに使用される材料は非磁性である。プランジャ先端は、複数の部品又は構造片から形成することができ、例えば、より強靱な本体部分と、交換可能な先端部分(例えば、溶融した材料と接触するのに十分な特性を備えた材料を含むか、そのような材料から形成され得る)とから形成されてよい。
更に、図5〜8及び13〜15に示される、本明細書に記述されるプランジャロッド及びプランジャ先端の実施形態のいずれも、何らかの方法(例えば流体を使用)で温度制御又は冷却され得る。
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される射出システムの任意の実施形態を用いて成形される(及び/又は溶融される)材料には、任意の数の材料が含まれ得、アモルファス合金に限定されるべきものではない。いくつかの実施形態において、本明細書に記述されるプランジャのいずれも、アモルファス合金以外の材料を動かすのに使用することができる。
本開示の原理は、上述の例示的実施形態において明確にされているが、本開示の実践に使用される構造、配置、割合、要素、材料、及び構成部品に対して様々な改変を行い得ることが、当業者には明らかであろう。
上述並びにその他の特徴及び機能、又はそれらの代替物の多くは、数多くの他の異なるシステム/装置又は用途に好適に組み合わせ得ることが、理解されよう。これらにおける現在予想できない又は予測されない様々な代替物、変更、変形形態、又は改善が、続いて当業者によりなされる可能性があり、これも下記の請求項の範囲に包含されることが意図される。