本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)の、その冠詞の文法的対象語を指すために使用される。例として、「ポリマー樹脂(a polymer resin)」は、1つのポリマー樹脂又は2つ以上のポリマー樹脂を意味する。本明細書に記載されるいずれの範囲も、包括的である。本明細書の全体を通して使用される、用語「実質的に」及び「約」は、小規模な変動を記述及び説明するために使用される。例えば、それらの用語は、±2%以下など、±1%以下など、±0.5%以下など、±0.2%以下など、±0.1%以下など、±0.05%以下などの、±5%以下を指すことができる。
バルク凝固アモルファス合金、すなわちバルク金属ガラス(「BMG」)は、最近開発された部類の金属材料である。これらの合金は、比較的穏やかな速度で、凝固及び冷却させることができ、それらは、アモルファスの、非晶質(すなわち、ガラス質)状態を、室温で保持する。アモルファス合金は、それらの結晶性の対応物よりも、多くの優れた特性を有する。しかしながら、冷却速度が十分に高速ではない場合には、冷却の間に、その合金の内部で結晶が形成される恐れがあり、そのため、アモルファス状態の利益が失われる恐れがある。例えば、バルクアモルファス合金部品の製造に伴う1つの重要な課題は、徐冷又は合金原料中の不純物のいずれかによる、それらの部品の部分的な結晶化である。BMG部品内では、高い程度のアモルファス化度(また反対に、低い程度の結晶化度)が望ましいため、制御された量のアモルファス化度を有するBMG部品を成形するための方法を、開発する必要性がある。
図1(米国特許第7,575,040号より入手)は、Liquidmetal Technologyによって製造されたZr−−Ti−−Ni−−Cu−−BeファミリーのVIT−001シリーズからの、例示的なバルク凝固アモルファス合金の粘度−温度グラフを示す。アモルファス固体の形成の間、バルク凝固アモルファス金属に関しては、明確な液体/固体変態が存在しないことに留意するべきである。この溶融合金は、ガラス転移温度近傍で固体形態に近づくまで、過冷却の増大と共に、ますます粘稠になる。したがって、バルク凝固アモルファス合金に関する凝固前面の温度は、ガラス転移温度近傍であり得、その温度近傍で、この合金は、急冷アモルファスシート製品を引き抜く目的のため、実際に固体として作用する。
図2(米国特許第7,575,040号より入手)は、例示的なバルク凝固アモルファス合金の時間−温度−変態(TTT)冷却曲線、すなわちTTT図を示す。バルク凝固アモルファス金属は、従来型金属と同様に、冷却時に液体/固体の結晶化変態を経験することがない。その代わりに、高温で(「融解温度」Tm近傍で)観察される、流動性の高い、非晶質形態の金属は、温度が低減されるにつれて(ガラス転移温度Tg近傍まで)、より粘稠になり、最終的に、従来型の固体の外面的な物理的特性を呈する。
バルク凝固アモルファス金属に関しては、液体/結晶化変態は存在しないにも関わらず、対応する結晶相の熱力学的液相温度として、「融解温度」Tmを定義することができる。この体系の下では、バルク凝固アモルファス合金の融解温度での粘度は、約0.1ポアズ〜約10,000ポアズの範囲に、更に場合によっては、0.01ポアズ未満にあることが可能である。この「融解温度」でのより低い粘度は、BMG部品を成形するためのバルク凝固アモルファス金属による、シェル/金型の複雑な部分のより速く完全な充填をもたらす。更には、BMG部品を成形するための溶融金属の冷却速度は、冷却の間の時間−温度プロファイルが、図2のTTT図内の結晶化領域を境界付けるノーズ形状領域を横断しないようなものでなければならない。図2では、Tノーズは、結晶化が最も急速であり、かつ最短の時間スケールで生じる、臨界結晶化温度Txである。
過冷却液体領域である、Tg〜Txの温度領域は、バルク凝固合金の結晶化に対する、極度の安定性を明示するものである。この温度領域内では、バルク凝固合金は、高粘度の液体として存在し得る。この過冷却液体領域内でのバルク凝固合金の粘度は、ガラス転移温度での1012Pa・sから、結晶化温度である過冷却液体領域の高温限界での105Pa・sに至るまでの間で、変化し得る。そのような粘度を有する液体は、加圧力の下で、実質的な塑性歪みを経験し得る。本明細書の実施形態は、成形及び分離方法として、この過冷却液体領域内での、大きい塑性成形性を利用する。
Txについて明確にする必要がある。技術的には、TTT図に示されるノーズ形状の曲線は、Txを温度及び時間の関数として説明する。それゆえ、金属合金を加熱又は冷却する間に辿る軌跡とは関係なく、このTTT曲線に当る場合に、Txに到達している。図2では、Txは破線として示されるが、これは、Tmの近位からTgの近位まで、Txが変化し得るためである。
図2の概略的なTTT図は、時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(1)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tm以上〜Tg未満のダイキャストの加工処理方法を示す。ダイキャストの間、この成形は、軌跡がTTT曲線に当ることを回避するために、実質的に急速冷却と同時に行われる。時間−温度の軌跡(例示的軌跡として、(2)、(3)及び(4)として示す)がTTT曲線に当ることがない、Tg以下からTm未満までの超塑性成形(SPF)に関する加工処理方法。SPFでは、アモルファスBMGは、過冷却液体領域内へと再加熱され、利用可能な加工処理ウインドウは、ダイキャストよりも遙かに大きく、より良好なプロセスの可制御性をもたらすことが可能である。SPFプロセスは、冷却の間の結晶化を回避するために、急速冷却を必要としない。また、例示的軌跡(2)、(3)、及び(4)によって示されるように、SPFの間の最高温度が、Tノーズ超又はTノーズ未満、最大約Tmとなる状態で、SPFを実施することができる。アモルファス合金の断片を昇温させつつ、TTT曲線に当ることを回避させた場合には、「Tg〜Tm」に加熱しても、Txには到達していない。
20℃/分の加熱速度で得られる、バルク凝固アモルファス合金の典型的な示差走査熱量計(DSC)加熱曲線は、大部分は、TTTデータを横切る具体的な軌跡を説明するものであり、特定温度のTgと、DSC加熱傾斜がTTT結晶化開始と交差する場合のTxと、最終的に、同じ軌跡が融解に関する温度範囲と交差する場合の融解ピークとが認められるであろう。図2の軌跡(2)、(3)、及び(4)の上り傾斜部分によって示されるような急速な加熱速度で、バルク凝固アモルファス合金を加熱する場合には、TTT曲線を完全に回避することが可能であり、DSCデータは、加熱の際、ガラス転移を示すが、Txは示さない。このことについての別の考察方法は、軌跡(2)、(3)、及び(4)は、結晶化曲線に当らない限り、TTT曲線のノーズ(及び更にその上方)〜Tg線の温度内の、いずれの場所にも収まることができる点である。そのことは、加工処理温度が上昇するにつれて、軌跡内の水平な平坦部が遙かに短くなり得ることを単に意味する。
相
本明細書での用語「相」は、熱力学状態図内で見出すことができるものを指すことができる。相は、その全体にわたって、材料の全ての物理的特性が本質的に均一である、空間の領域(例えば、熱力学系)である。物理的特性の例としては、密度、屈折率、化学組成、及び格子周期性が挙げられる。相の単純な説明は、化学的に均一であり、物理的にまったく別であり、及び/又は機械的に分離可能な材料の領域である。例えば、ガラスジャー内の、氷及び水からなる系では、その角氷が1つの相であり、水が第2の相であり、その水の上の湿り空気が第3の相である。ジャーのガラスは、別の分離相である。相は、2成分、3成分、4成分以上の溶体であり得る固溶体、又は金属間化合物などの化合物を指すこともある。別の例としては、アモルファス相は、結晶相とはまったく別である。
金属、遷移金属、及び非金属
用語「金属」は、電気陽性の化学元素を指す。本明細書での用語「元素」は、全般的には、周期表に見出すことができる元素を指す。物理的には、基底状態の金属原子は、占有状態に近い、空状態を有する部分的充満帯を含む。用語「遷移金属」とは、不完全な内部電子殻を有し、一連の元素内の、最も電気陽性のものと最も電気陽性ではないものとの間の遷移リンクとして役立つ、周期表の第3族〜第12族の範囲内の金属元素のうちのいずれかである。遷移金属は、複数の原子価、着色化合物、及び安定な錯イオンを形成する能力によって特徴付けられる。用語「非金属」は、電子を失って陽イオンを形成する能力を有さない化学元素を指す。
用途に応じて、任意の好適な非金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金(又は「合金組成物」)は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の非金属元素などの、複数の非金属元素を含み得る。非金属元素は、周期表内の第13族〜第17族内に見出される、いずれかの元素とすることができる。例えば、非金属元素は、F、Cl、Br、I、At、O、S、Se、Te、Po、N、P、As、Sb、Bi、C、Si、Ge、Sn、Pb、及びBのうちのいずれか1つとすることができる。場合により、非金属元素は、第13族〜第17族内の特定の半金属(例えば、B、Si、Ge、As、Sb、Te、及びPo)を指すことがある。一実施形態では、非金属元素としては、B、Si、C、P、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。したがって、例えば、その合金は、ホウ化物若しくは炭化物、又は双方を含み得る。
遷移金属元素は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ウンウンニリウム、ウンウンウニウム、及びウンウンビウムのうちのいずれかとすることができる。一実施形態では、遷移金属元素含有BMGは、Sc、Y、La、Ac、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、及びHgのうちの少なくとも1つを有し得る。用途に応じて、任意の好適な遷移金属元素、又はそれらの組み合わせを使用することができる。合金組成物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の遷移金属元素などの、複数の遷移金属元素を含み得る。
本明細書で説明される、合金又は合金「サンプル」又は「試料」合金は、任意の形状又はサイズを有し得る。例えば、合金は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの形状を有し得る、微粒子の形状を有し得る。この微粒子は、任意のサイズを有し得る。例えば、その微粒子は、約5マイクロメートル〜約80マイクロメートルなど、約10マイクロメートル〜約60マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約50マイクロメートルなど、約15マイクロメートル〜約45マイクロメートルなど、約20マイクロメートル〜約40マイクロメートルなど、約25マイクロメートル〜約35マイクロメートルなどの、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの平均直径を有し得る。例えば、一実施形態では、微粒子の平均直径は、約25マイクロメートル〜約44マイクロメートルである。一部の実施形態では、ナノメートルの範囲のものなどの、より小さい微粒子、又は100マイクロメートルよりも大きいものなどの、より大型の微粒子を使用することができる。
合金のサンプル又は試料はまた、遙かに大きい寸法のものにすることもできる。例えば、インゴットなどのバルク構造構成要素、電子機器の筺体/ケーシング、又は更にミリメートル、センチメートル、又はメートルの範囲の寸法を有する構造的構成要素の一部分とすることができる。
固溶体
用語「固溶体」は、溶体の固体形態を指す。用語「溶体」は、固体、液体、気体、又はこれらの組み合わせとすることができる、2種以上の物質の混合物を指す。この混合物は、均質又は不均質とすることができる。用語「混合物」とは、互いに組み合わされ、一般的には分離することが可能である、2種以上の物質の組成物である。一般的には、それらの2種以上の物質は、互いに化合されない。
合金
一部の実施形態では、本明細書で説明される合金組成物は、完全に合金化することができる。一実施形態では、「合金」とは、一方の原子が他方の原子に置き換わるか、又は原子間の格子間位置を占有する、2種以上の金属の均質な混合物又は固溶体を指すものであり、例えば、黄銅は、亜鉛及び銅の合金である合金とは、複合材料とは対照的に、金属マトリックス中の1種以上の化合物などの、金属マトリックス中の1種以上の元素の部分的又は完全な固溶体を指すことができる。本明細書での合金という用語は、単一の固相の微細構造を呈し得る全率固溶合金、及び2つ以上の相を呈し得る部分的溶体の双方を指すことができる。本明細書で説明される合金組成物は、合金を含むもの、又は合金含有複合材料を含むものを指すことができる。
それゆえ、完全に合金化した合金は、固溶体相であれ、化合物相であれ、又は双方であれ、その構成成分の均質な分布を有し得る。本明細書で使用される用語「完全に合金化した」は、許容誤差範囲内の僅かな変異を説明することができる。例えば、その用語は、少なくとも95%の合金化など、少なくとも99%の合金化など、少なくとも99.5%の合金化など、少なくとも99.9%の合金化などの、少なくとも90%の合金化を指すことができる。本明細書での百分率は、文脈に応じて、体積百分率又は重量百分率のいずれかを指すことができる。これらの百分率は、合金の部分ではない組成又は相の観点によるものとすることができる、不純物によって均衡させることができる。
アモルファス、すなわち非晶質固体
「アモルファス」すなわち「非晶質固体」は、結晶に特徴的な格子周期性を欠く固体である。本明細書で使用するとき、「アモルファス固体」は、ガラス転移を通じて、加熱されると液体状の状態へと軟化及び変態するアモルファス固体である、「ガラス」を含む。一般的には、アモルファス材料は、結晶に特徴的な長距離秩序を欠くが、それらのアモルファス材料は、化学結合の性質による、原子の長さスケールでの何らかの短距離秩序を保有し得る。アモルファス固体と結晶性固体との区別は、X線回折及び透過型電子顕微鏡検査などの構造特性評価技術によって判定される、格子周期性に基づいて行なうことができる。
用語「秩序」及び「無秩序」とは、多粒子系内での何らかの対称性又は相関性の有無を指示する。用語「長距離秩序」及び「短距離秩序」は、長さスケールに基づいて、材料内の秩序を区別する。
固体内の秩序の、最も厳密な形態は、格子周期性である。特定のパターン(単位格子内の原子の配置構成)が何度も繰り返され、並進的に不変の、空間の充填を形成する。この格子周期性は、結晶の定義特性である。可能な対称性は、14種のブラベー格子及び230種の空間群に分類されている。
格子周期性は、長距離秩序を示唆するものである。1つの単位格子のみが知られる場合には、その並進対称性によって、任意の距離での、全ての原子配置を正確に予測することが可能である。一般に逆も真であるが、ただし、例えば、完全に確定的な充填を有するが、格子周期性を保有しない、準結晶の場合は例外である。
長距離秩序は、同じサンプルの遠隔の部分が、相関する挙動を呈する、物理系を特徴付ける。この長距離秩序は、相関関数、すなわち次のスピン−スピン相関関数として表現することができる。
上記の関数では、sはスピン量子数であり、xは特定の系内の距離関数である。この関数は、x=x’である場合、単位元に等しく、距離|x−x’|が増大するにつれて減少する。典型的には、この関数は、長距離で、指数関数的にゼロまで減衰し、その系は無秩序であると見なされる。しかしながら、この相関関数が、大きい|x−x’|で一定値へと減衰する場合には、その系は長距離秩序を保有すると述べることができる。この関数が、距離の累乗でゼロまで減衰する場合には、準長距離秩序と呼ぶことができる。大きい値の|x−x’|を構成するものは、相対的であることに留意されたい。
系は、その挙動を定義する一部のパラメータが、経時的に進展しないランダム変数である(すなわち、それらが急冷又は凍結される)場合、急冷無秩序、例えば、スピングラスを呈すると延べることができる。この急冷無秩序は、ランダム変数自体が進展することが可能な、焼鈍無秩序とは反対である。本明細書の実施形態は、急冷無秩序を含む系を包含する。
本明細書で説明される合金は、結晶性、部分結晶性、アモルファス、又は実質的アモルファスとすることができる。例えば、合金サンプル/試料は、少なくともある程度の結晶化度を含み得るものであり、結晶粒/結晶は、ナノメートル及び/又はマイクロメートルの範囲のサイズを有する。あるいは、合金は、完全にアモルファスであるなど、実質的アモルファスとすることができる。一実施形態では、合金組成物は、完全に結晶性であるなど、実質的に結晶性であり、少なくとも実質的にアモルファスではない。
一実施形態では、他のアモルファス合金中の、1種の結晶又は複数種の結晶の存在は、その合金中の「結晶相」として解釈することができる。合金の結晶化度の程度(又は一部の実施形態では、略して「結晶化度」)とは、その合金中に存在する結晶相の量を指すことができる。その程度とは、例えば、合金中に存在する結晶の分率を指すことができる。この分率は、文脈に応じて、体積分率又は重量分率を指すことができる。アモルファス合金がどの程度「アモルファス」であるかの尺度を、アモルファス化度とすることができる。アモルファス化度は、結晶化度の程度の観点により測定することができる。例えば、一実施形態では、低い程度の結晶化度を有する合金は、高い程度のアモルファス化度を有すると述べることができる。一実施形態では、例えば、60体積%の結晶相を有する合金は、40体積%のアモルファス相を有し得る。
アモルファス合金又はアモルファス金属
「アモルファス合金」とは、50体積%超のアモルファス含有量、好ましくは90体積%超のアモルファス含有量、より好ましくは95体積%超のアモルファス含有量、最も好ましくは99体積%超〜ほぼ100体積%のアモルファス含有量を有する合金である。上述のように、アモルファス化度が高い合金は、結晶化度の程度が同等に低いことに留意されたい。「アモルファス金属」とは、無秩序な原子スケール構造を有するアモルファス金属材料である。結晶性であり、したがって高度に秩序化した原子配置を有する殆どの金属とは対照的に、アモルファス合金は非晶質である。そのような無秩序構造が、冷却の間に液体状態から直接作り出される材料は、「ガラス」と称される場合がある。したがって、アモルファス金属は、一般に「金属ガラス」又は「ガラス金属」と称される。一実施形態では、バルク金属ガラス(「BMG」)とは、その微細構造が少なくとも部分的にアモルファスである合金を指すことができる。しかしながら、アモルファス金属を作り出すためには、極度な急速冷却の他にも、物理蒸着、固相反応、イオン照射、メルトスピニング、及び機械的合金化を含めた、幾つかの方法が存在する。アモルファス合金は、それらが調製される方法とは関係なく、単一の部類の材料とすることができる。
アモルファス金属は、様々な急冷法を通じて作り出すことができる。例えば、アモルファス金属は、回転する金属ディスク上に溶融金属をスパッタリングすることによって、作り出すことができる。1秒当り約数百万度の急冷は、結晶が形成するには過度に高速である得るため、その金属は、ガラス状態で「固定」される。また、アモルファス金属/合金は、厚い層のアモルファス構造、例えば、バルク金属ガラスの形成を可能にするための、十分に低速な臨界冷却速度で作り出すこともできる。
用語「バルク金属ガラス」(「BMG」)、バルクアモルファス合金(「BAA」)、及びバルク凝固アモルファス合金は、本明細書で互換的に使用される。それらの用語は、少なくともミリメートルの範囲の最小寸法を有する、アモルファス合金を指す。例えば、その寸法は、少なくとも約1mmなど、少なくとも約2mmなど、少なくとも約4mmなど、少なくとも約5mmなど、少なくとも約6mmなど、少なくとも約8mmなど、少なくとも約10mmなど、少なくとも約12mmなどの、少なくとも約0.5mmとすることができる。幾何学形状に応じて、その寸法は、直径、半径、厚さ、幅、長さなどを指すことができる。BMGはまた、少なくとも約1.0cmなど、少なくとも約2.0cmなど、少なくとも約5.0cmなど、少なくとも約10.0cmなどの、センチメートルの範囲の少なくとも1つの寸法を有する、金属ガラスとすることもできる。一部の実施形態では、BMGは、少なくともメートルの範囲の、少なくとも1つの寸法を有し得る。BMGは、金属ガラスに関して、上述の形状又は形態のうちの、いずれかを呈することができる。したがって、本明細書で説明されるBMGは、一部の実施形態では、重要な一態様での従来の堆積技術によって作製される薄膜とは異なるものとすることができ、前者のBMGは、後者の薄膜よりも遙かに大きい寸法のものとすることができる。
アモルファス金属は、純金属ではなく、合金とすることができる。この合金は、著しく異なるサイズの原子を含有し得ることにより、溶融状態で、低い自由体積がもたらされる(またそれゆえ、他の金属及び合金よりも、桁違いとなるまでの高い粘度を有する)。この粘度は、原子が、規則格子を形成するために十分に移動することを防ぐ。この材料構造は、冷却の間の低収縮性、及び塑性変形に対する抵抗性をもたらし得る。一部の場合には結晶性材料の弱点である、この結晶粒界の不在は、例えば、磨耗及び腐食に対する、より良好な抵抗性をもたらし得る。一実施形態では、技術的にはガラスであるが、アモルファス金属はまた、酸化物ガラス及びセラミックよりも遙かに強靭であり、脆性ではないものにすることもできる。
アモルファス材料の熱伝導率は、それらの結晶性対応物の熱伝導率よりも低いものにすることができる。より緩徐な冷却の間でも、アモルファス構造の形成を達成するために、3種以上の構成成分で合金を作製して、より高いポテンシャルエネルギー、及びより低い形成の確率を有する、複合結晶単位をもたらすことができる。アモルファス合金の形成は、以下の幾つかの因子:合金の構成成分の組成と、構成成分の原子半径(好ましくは、高い充填密度及び低い自由体積を達成するために、12%超の有意差を有する)と、結晶核生成を阻止し、溶融金属が過冷却状態に留まる時間を延長する、構成成分の組み合わせの負の混合熱と、に応じて変化し得る。しかしながら、アモルファス合金の形成は、多種多様な変数に基づくものであるため、合金組成物がアモルファス合金を形成するか否かを事前に判定することは、困難な場合がある。
例えば、ホウ素、ケイ素、リン、及び他のガラス形成剤と、磁性金属(鉄、コバルト、ニッケル)とのアモルファス合金は、低い保磁力及び高い電気抵抗を有する、磁性のものとすることができる。この高い抵抗は、例えば、トランス用磁心として有用な特性である、交番磁界に晒された場合の渦電流による低損失をもたらす。
アモルファス合金は、潜在的に有用な、様々な特性を有し得る。具体的には、アモルファス合金は、同様の化学組成の結晶性合金よりも強固である傾向にあり、それらは、結晶性合金よりも大きい可逆性(「弾性」)変形に耐え得る。アモルファス金属は、それらの強度を、それらの非晶質構造から直接導き出すものであり、この非晶質構造は、結晶性合金の強度を制限する欠陥(転位などの)を全く有し得ない。例えば、Vitreloy(商標)として知られる、1つの最新のアモルファス金属は、高級チタンのほぼ2倍の引張り強さを有する。一部の実施形態では、室温での金属ガラスは延性ではなく、張力が負荷されると突然破損するが、このことは、差し迫った破壊が明白ではないため、信頼性が重要な用途での、その材料の適用性を制限する。それゆえ、この課題を克服するために、延性の結晶性金属の樹枝状の粒子又は繊維を含有する、金属ガラスマトリックスを有する、金属マトリックス複合材料を使用することができる。あるいは、障害を生じる傾向がある元素(例えば、Ni)が少ないBMGを使用することができる。例えば、Niを含まないBMGを使用することにより、そのBMGの延性を改善することができる。
バルクアモルファス合金の別の有用な特性は、それらを真性のガラスとすることができる点であり、換言すれば、バルクアモルファス合金は、加熱されると、軟化して流動することができる。このことは、ポリマーと殆ど同じ方法での、射出成形などによる、容易な加工処理を可能にする。結果として、アモルファス合金は、スポーツ用品、医療用装置、電子部品及び電子装備、並びに薄膜を作製するために使用することができる。アモルファス金属の薄膜は、高速酸素燃料技術を介して、保護コーティングとして堆積させることができる。
材料は、アモルファス相、結晶相、又は双方を有し得る。これらのアモルファス相及び結晶相は、同じ化学組成を有し、微細構造のみが異なる(すなわち、一方はアモルファスであり、他方は結晶質である)ものとすることができる。一実施形態での微細構造は、25X以上の倍率の顕微鏡によって明らかとなるような材料の構造を指す。あるいは、これらの2つの相は、異なる化学組成及び微細構造を有し得る。例えば、組成物は、部分的アモルファス、実質的アモルファス、又は完全アモルファスとすることができる。
上述のように、アモルファス化度の程度(また反対に結晶化度の程度)は、合金中に存在する結晶の分率によって測定することができる。その程度とは、合金中に存在する結晶相の体積分率又は重量分率を指すことができる。部分的アモルファス組成物とは、少なくとも約10体積%など、少なくとも約20体積%など、少なくとも約40体積%など、少なくとも約60体積%など、少なくとも約80体積%など、少なくとも約90体積%などの、少なくともその約5体積%がアモルファス相である組成物を指すことができる。用語「実質的に」及び「約」は、本明細書中の他の場所で定義されている。したがって、少なくとも実質的にアモルファスである組成物とは、少なくとも約95体積%など、少なくとも約98体積%など、少なくとも約99体積%など、少なくとも約99.5体積%など、少なくとも約99.8体積%など、少なくとも約99.9体積%などの、少なくともその約90体積%がアモルファスであるものを指すことができる。一実施形態では、実質的アモルファス組成物は、その中に存在する何らかの付随的な少量の結晶相を有し得る。
一実施形態では、アモルファス合金組成物は、アモルファス相に関して均質とすることができる。組成が均一である物質は均質である。このことは、不均質である物質とは対照的である。用語「組成」とは、物質中の化学組成及び/又は微細構造を指す。物質は、その物質の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ組成を有する場合に、均質である。例えば、微粒子懸濁液は、その微粒子懸濁液の体積を半分に分割して、両半分が実質的に同じ体積の粒子を有する場合に、均質である。しかしながら、顕微鏡下で個々の粒子を視認することが可能な場合もある。均質な物質の別の例は、空気であり、その空気中の種々の成分は等しく浮遊するが、空気中の粒子、気体、及び液体は、個別に分析することができ、又は空気から分離することもできる。
アモルファス合金に関して均質である組成とは、その微細構造の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス相を有するものを指すことができる。換言すれば、その組成物は、組成物の全体にわたって実質的に均一に分布するアモルファス合金を巨視的に含む。代替の実施形態では、この組成は、非アモルファス相をその中に有する、アモルファス相を有する複合材料のものとすることができる。この非アモルファス相は、1つの結晶又は複数の結晶とすることができる。それらの結晶は、球形、楕円、ワイヤ状、ロッド状、シート状、フレーク状、又は不規則形状などの、任意の形状の微粒子の形態とすることができる。一実施形態では、結晶は、樹枝状形態を有し得る。例えば、少なくとも部分的にアモルファスの複合組成物は、アモルファス相マトリックス中に分散する樹枝状結晶の形状の結晶相を有し得るものであり、この分散は、均一又は不均一なものとすることができ、アモルファス相と結晶相とは、同じ化学組成又は異なる化学組成を有し得る一実施形態では、それらの相は実質的に同じ化学組成を有し得る。別の実施形態では、結晶相は、BMG相よりも延性とすることができる。
本明細書で説明される方法は、任意のタイプのアモルファス合金に適用可能とすることができる。同様に、組成物又は物品の成分として、本明細書で説明されるアモルファス合金は、任意のタイプのものとすることができる。このアモルファス合金は、Zr、Hf、Ti、Cu、Ni、Pt、Pd、Fe、Mg、Au、La、Ag、Al、Mo、Nb、Beの元素、又はこれらの組み合わせを含み得る。すなわち、この合金は、その化学式又は化学組成中に、これらの元素のいずれかの組み合わせを含み得る。それらの元素は、種々の重量百分率又は体積百分率で存在し得る。例えば、鉄「ベース」合金とは、その中に存在する無視することができない重量百分率の鉄を有する、合金を指すことができ、その重量百分率は、例えば、少なくとも約40重量%など、少なくとも約50重量%など、少なくとも約60重量%など、少なくとも約80重量%などの、少なくとも約20重量%などとすることができる。あるいは、一実施形態では、上述の百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。したがって、アモルファス合金は、ジルコニウムベース、チタンベース、白金ベース、パラジウムベース、金ベース、銀ベース、銅ベース、鉄ベース、ニッケルベース、アルミニウムベース、モリブデンベースなどとすることができる。この合金はまた、特定の目的に適合するように、上述の元素のうちのいずれかを含まない場合もある。例えば、一部の実施形態では、この合金、又はこの合金を含む組成物は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを実質的に含まないものであり得る。一実施形態では、この合金又は複合材料は、ニッケル、アルミニウム、チタン、ベリリウム、又はこれらの組み合わせを、全く含まない。
例えば、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)a(Ni,Cu,Fe)b(Be,A1,Si,B)cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは30〜75の範囲であり、bは5〜60の範囲であり、cは0〜50の範囲である。あるいは、このアモルファス合金は、式(Zr,Ti)a(Ni,Cu)b(Be)cを有し得るものであり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは40〜75の範囲であり、bは5〜50の範囲であり、cは5〜50の範囲である。この合金はまた、式(Zr,Ti)a(Ni,Cu)b(Be)cを有し得るものでもあり、式中、a、b、及びcはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは7.5〜35の範囲であり、cは10〜37.5の範囲である。あるいは、この合金は、式(Zr)a(Nb,Ti)b(Ni,Cu)c(A1)dを有し得るものでもあり、式中、a、b、c、及びdはそれぞれ、重量百分率又は原子百分率を表す。一実施形態では、原子百分率で、aは45〜65の範囲であり、bは0〜10の範囲であり、cは20〜40の範囲であり、dは7.5〜15の範囲である。上述の合金系の例示的一実施形態は、Liquidmetal Technologies(CA,USA)によって製作されるような、Vitreloy−1及びVitreloy−101などの、商品名Vitreloy(商標)の、Zr−Ti−Ni−Cu−Beベースのアモルファス合金である。種々の系のアモルファス合金の一部の実施例が、表1に記載される。
これらのアモルファス合金はまた、(Fe,Ni,Co)ベース合金などの、鉄合金とすることもできる。そのような組成物の例は、米国特許第6,325,868号、同第5,288,344号、同第5,368,659号、同第5,618,359号、及び同第5,735,975、Inoueら、Appl.Phys.Lett.,Volume 71,p 464(1997)、Shenら、Mater.Trans.,JIM,Volume 42,p 2136(2001)、及び日本特許出願第200126277号(公開番号第2001303218 A号)に開示されている。1つの例示的な組成物は、Fe72A15Ga2PllC6B4である。別の実施例は、Fe72A17Zr10Mo5W2B15である。本明細書でのコーティングに使用することができる、別の鉄ベース合金系が、米国特許出願公開第2010/0084052号で開示されており、そのアモルファス金属は、例えば、括弧内に記される組成の範囲で、マンガン(1〜3原子%)、イットリウム(0.1〜10原子%)、及びケイ素(0.3〜3.1原子%)を含有し、また括弧内に記される組成の指定範囲で以下の元素:クロム(15〜20原子%)、モリブデン(2〜15原子%)タングステン(1〜3原子%)、ホウ素(5〜16原子%)、炭素(3〜16原子%)、及び残部の鉄を含有する。
上述のアモルファス合金系は、Nb、Cr、V、及びCoを含めた添加遷移金属元素などの、添加元素を更に含み得る。これらの添加元素は、約20重量%以下など、約10重量%以下など、約5重量%など、約30重量%以下で存在し得る。一実施形態では、この任意選択の添加元素は、コバルト、マンガン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、タングステン、イットリウム、チタン、バナジウム、及びハフニウムのうちの少なくとも1つであり、炭化物を形成して、耐摩耗性及び耐食性を更に改善する。更なる任意選択の元素としては、融点を低下させるための、合計で最大約2%の、好ましくは1%未満の、リン、ゲルマニウム、及びヒ素を挙げることができる。他の少量の不純物は、約2%未満、好ましくは0.5%未満とするべきである。
一部の実施形態では、アモルファス合金を有する組成物は少量の不純物を含み得る。不純物元素を意図的に添加することにより、機械的特性(例えば、硬度、強度、破壊機構など)の改善、及び/又は耐食性の改善などの、その組成物の特性を修正することができる。あるいは、それらの不純物は、加工処理及び製造の副生成物として得られるもののような、不可避の付随的な不純物として存在し得る。この不純物は、約5重量%以下など、約2重量%以下など、約1重量%以下など、約0.5重量%以下など、約0.1重量%以下などの、約10重量%以下とすることができる。一部の実施形態では、これらの百分率は、重量百分率の代わりに、体積百分率とすることができる。一実施形態では、この合金サンプル/組成物は、アモルファス合金から本質的になる(少量の付随的不純物のみを有する)。別の実施形態では、この組成物はアモルファス合金を含む(観察可能な微量の不純物を全く有さない)。
一実施形態では、最終部品は、バルク凝固アモルファス合金の臨界鋳造厚さを超過するものであった。
本明細書の実施形態では、バルク凝固アモルファス合金が高粘度の液体として存在することができる、過冷却液体領域の存在により、超塑性成形が可能となる。大きな塑性変形を得ることができる。過冷却液体領域内で大きく塑性変形する能力は、成形プロセス及び/又は切断プロセスに使用される。固体とは対照的に、この液体のバルク凝固合金は、局所的に変形し、このことが、切断及び成形のために必要とされるエネルギーを、大幅に低下させる。切断及び成形の容易性は、合金、金型、及び切断工具の温度に応じて変化する。温度が高くなるにつれて、粘度が低下し、その結果として、切断及び成形が容易になる。
本明細書の実施形態は、例えば、Tg〜Txで実施される、アモルファス合金を使用する熱可塑性成形プロセスを利用することができる。本明細書では、Tx及びTgは、結晶化の開始の温度、及びガラス転移の開始の温度として、典型的な加熱速度(例えば、20℃/分)での標準的なDSC測定から決定される。
アモルファス合金構成要素は、臨界鋳造厚さを有し得るものであり、最終部品は、その臨界鋳造厚さよりも厚い厚さを有し得る。更には、加熱及び整形操作の時間並びに温度は、アモルファス合金の弾性歪み限界が、1.0%以上、好ましくは1.5%以上に、実質的に維持し得るように選択される。本明細書の実施形態との関連では、ガラス転移近傍の温度とは、成形温度がガラス転移温度未満、ガラス転移温度若しくはガラス転位温度近傍、及びガラス転移温度超とすることができることを意味するが、結晶化温度Txより低い温度であることが好ましい。冷却工程は、加熱工程での加熱速度と同様の速度で、好ましくは、加熱工程での加熱速度を超える速度で実施される。冷却工程はまた、好ましくは、成形荷重及び整形荷重が依然として維持されている間にも、達成される。
電子機器
本明細書に記載の実施形態は、BMGを用いた電子機器の作製で、価値のあるものとすることができる。本明細書での電子機器とは、当該技術分野において既知の任意の電子機器を指すことができる。例えば、この電子機器は、携帯電話及び固定電話などの電話、あるいは、例えばiPhone(商標)を含めたスマートフォン、及び電子eメール送信/受信機器などの、任意の通信機器とすることができる。この電子機器は、デジタルディスプレイ、TVモニタ、電子ブックリーダ、携帯ウェブブラウザ(例えば、iPad(商標))、及びコンピュータモニタなどの、ディスプレイの一部とすることができる。この電子デバイスはまた、携帯DVDプレーヤ、従来型DVDプレーヤ、ブルーレイディスクプレーヤ、ビデオゲームコンソール、携帯音楽プレーヤ(例えば、iPod(商標))などの音楽プレーヤなどを含めた、娯楽デバイスとすることもできる。この電子デバイスはまた、画像、ビデオ、音声のストリーミングを制御することなどの、制御を提供するデバイス(例えば、Apple TV(商標))の一部とすることもでき、又は電子デバイス用の遠隔制御装置とすることができる。この電子機器は、コンピュータ、あるいはハードドライブタワーの筺体若しくはケーシング、ラップトップ筺体、ラップトップキーボード、ラップトップトラックパッド、デスクトップキーボード、マウス、及びスピーカなどの、コンピュータ付属品の一部とすることができる。この物品はまた、腕時計又は時計などの機器にも適用することができる。
本明細書に記述される方法、技法、及び装置は、記述されている実施形態を限定することを意図したものではない。
本明細書に開示されるように、装置又はシステム(あるいは装置又は機械)は、材料(例えばアモルファス合金)の溶融及び射出成形を行うように構成され得る。この装置は、高融解温度で溶融させてから、その溶融した材料を金型に注入して成形を行うことにより、そのような材料又は合金を処理するように構成されている。下記で詳しく述べられるように、この装置の部品は互いに一線上に配置される。いくつかの実施形態により、この装置の部品(又はこの装置へのアクセス)は、水平軸に沿っている。
下記の実施形態は単に例示目的のためのものであり、限定することを意図するものではない。
図3は、そのような例示的システムの概略図を示す。より具体的には、図3は、射出成形装置又はシステム10を示す。一実施形態により、射出成形システム10は、その中に受容した溶融可能材料を溶融するように構成されている溶融ゾーン12と、溶融した材料を溶融ゾーン12から金型16へと射出するように構成されている少なくとも1本のプランジャロッド14とを有する。一実施形態では、少なくとも、プランジャロッド14及び溶融ゾーン12はインラインかつ水平軸(例えばX軸)上に設けられ、これによりプランジャロッド14は実質的に溶融ゾーン12を通って水平方向に(例えばX軸に沿って)移動し、溶融材料を金型16内に移動させる。この金型は、溶融ゾーンに隣接して配置され得る。
溶融可能材料は、任意の数の形態で溶融ゾーンに受容され得る。例えば、溶融可能材料は、インゴット(固体状態)、半固体状態、予熱されたスラリー、粉末、ペレットなどの形態で溶融ゾーン12に供給され得る。幾つかの実施形態において、装入ポート(例えばインゴット装入ポート18の図示例)が、射出成形システム10の一部として設けられてもよい。装入ポート18は、任意の数の場所で装置内に設けられる別々の開口部又は領域であってもよい。一実施形態において、装入ポート18は、装置の1つ以上の部分を通過する経路であり得る。例えば、材料(例えばインゴット)は、プランジャ14によって容器20内に水平方向に挿入することができ、あるいは、射出システム10の金型側から水平方向に挿入することができる(例えば、金型16を通って、及び/又は移送スリーブ30を通って、容器20内へ)。他の実施形態において、溶融可能材料は、他の方法及び/又は他の装置を用いて(例えば射出システムの反対側を通して)溶融ゾーン12内に供給することができる。
溶融ゾーン12は、溶融可能材料を受容し、かつその材料が溶融状態に加熱された際にそれを保持するように構成された溶融機構を有する。溶融機構は、容器20の形態であってよく、これは例えば、溶融可能材料を受容し、かつ、中にある材料を溶融するように構成された本体を有する。本開示全体にわたって使用されている容器は、物質を高温に加熱するために採用された材料で製造された容器である。例えば、一実施形態において、この容器はるつぼであってよく、例えばボート形るつぼ、又はスカルるつぼであり得る。一実施形態において、容器20は、真空下(例えば真空装置38又はポンプによって適用される)で溶融可能材料用に利用できるように構成された低温炉床溶融装置である。一実施形態において、下記に詳しく述べられるように、この容器は温度調節された容器である。
容器20はまた、本体の受容部分又は溶融部分24内に材料(例えば原材料)を入れるための入口も有し得る。図に示されている実施形態において、容器20の本体は、実質的にU字型の構造を含む。ただし、この図示されている形状は、限定することを意味するものではない。容器20は、任意の数の形状又は構成を含み得る。この容器の本体は、ある長さを有し、長手かつ水平方向に延在していてよく、これにより溶融した材料がプランジャ14を用いてここから水平方向に移送される。例えば、この本体は、そこから垂直に延在する側壁を備えた底部を含み得る。加熱又は溶融のための材料は、容器の溶融部分24に受容され得る。溶融部分24は、内部で溶融される溶融可能材料を受容するように構成されている。例えば、溶融部分24は材料を受容するための表面を有する。容器20は、送達のための射出システムの1つ以上の装置(例えば装入ポート及びプランジャ)を使用して溶融部分24内に材料(例えばインゴットの形態)を受容することができる。
一実施形態において、本体及び/又はその溶融部分24は、実質的に丸みのある及び/又は滑らかな表面を含み得る。例えば、溶融部分24の表面は、円弧形状に形成することができる。ただし、本体の形状及び/又は表面は、限定することを意図したものではない。この本体は、一体型構造であってよく、又は、接合若しくは合わせて機械加工された別個の部品から形成されていてもよい。容器20の本体は、任意の数の材料(例えば銅、銀)から形成されてもよく、これには1つ以上のコーティング、及び/又は構成若しくは設計が含まれる。例えば、1つ以上の表面は、その中に凹部又は溝を有し得る。
容器20の本体は、溶融した材料を移動させるために、プランジャロッドを、内部を通じて水平方向に受容するように構成され得る。すなわち、一実施形態において、溶融機構はプランジャロッドと同じ軸上にあり、本体は、このプランジャロッドの少なくとも一部分を受容するような構成及び/又は寸法にすることができる。よって、プランジャロッド14は、実質的に容器20内を通じて移動することにより、溶融した材料(加熱/溶融後)を容器から金型16内に移動させるように構成することができる。図3に図示されているシステム10の実施形態を参照し、例えば、プランジャロッド14は、容器20を通じて、右から左に向かって水平方向に動き、溶融した材料を金型16内へと移動させて押し出す。
溶融ゾーン12を加熱して、容器20に受容した溶融可能材料を溶融するために、射出システム10には、その溶融可能材料を加熱し、溶融するのに使用する熱源も含まれる。本体自体の実質的に全体ではなくとも、少なくとも容器の溶融部分24は、内部に受容した材料を溶融するべく、加熱されるように構成されている。加熱は、例えば、溶融可能材料を溶融するように構成された、溶融ゾーン12内に配置された誘導源26を使用して達成される。一実施形態において、誘導源26は容器20に隣接して配置される。例えば、誘導源26は、容器本体のある長さにわたって実質的に周囲に巻き付く螺旋状に配置されたコイル形状であり得る。したがって、容器20は、電源供給又は電源28を用いて、誘導源/コイル26に電力を供給することにより、溶融部分24内の溶融可能材(例えば挿入されたインゴット)を電磁誘導により溶融させるように構成することができる。よって、溶融ゾーン12には誘導ゾーンが含まれ得る。誘導コイル26は、容器20を溶融させて濡らすことなしに、容器20に収容されている任意の材料を加熱し溶融させるように構成されている。誘導コイル26は容器20に対して無線周波数(RF)波を放射する。図示されているように、本体と、容器20を取り巻くコイル26は、水平軸(例えばX軸)に沿って水平方向に配置されるように構成されてもよい。
一実施形態において、容器20は温度調節された容器である。そのような容器は、1本以上の温度調節管を含んでもよく、これは、容器内に受容した材料の溶融中に容器20の本体の温度を調節する(例えば容器を強制的に冷やす)ために、流体(例えば水又はその他の流体)を内部に流すように構成されている。そのような強制冷却されたるつぼはまた、プランジャロッドと同じ軸上に設けられ得る。冷却管は、容器20の本体自体が過熱して溶融するのを防ぐのに役立つことができる。冷却管は、容器内の液体の流れを誘導するように構成された冷却システムに接続することができる。冷却管は、液体又は流体が通過して流れるための1つ以上の入口と出口を含み得る。この冷却管の入口及び出口は、任意の数の方法で構成することができ、限定することを意図したものではない。例えば、冷却管は、中の材料が溶融して容器温度が調節されるように(すなわち、熱が吸収され、かつ容器が冷却されるように)、溶融部分24に対して配置され得る。冷却管の数、配置及び/又は方向は限定されるべきではない。冷却液体又は冷却流体は、誘導源26が通電されているときに、溶融可能材料の溶融中に冷却管を通じて流れるように構成され得る。
材料が容器20内で溶融された後、プランジャ14を使用して、その溶融した材料を、物体、部品又は構成片へと成形するために、容器20から金型16へと押し出すことができる。溶融可能材料が合金(例えばアモルファス合金)である場合において、金型16は、成形されたバルクアモルファス合金の物体、部品又は構成片を形成するように構成されている。金型16は、それを通じて溶融した材料を受容するための入口を有する。容器20の出口と金型16の入口は、一線上かつ水平軸上に設けることができ、これによりプランジャロッド14は、容器の本体22を通じて水平方向に動き、溶融した材料を、金型16の入口を介して金型内に射出する。
前述のように、金属又は合金などの材料を成形するのに使用される射出成形システム10のようなシステムは、金型又はダイ型穴内に溶融した材料を押し出す際、真空を利用することができる。射出成形システム10は、少なくとも溶融ゾーン12及び金型16に真空圧を適用するように構成された少なくとも1つの真空源38又はポンプを更に含み得る。この真空圧は、内部の材料を溶融し、移動又は移送し、かつ成形するのに使用される射出成形システム10の少なくとも部品に適用され得る。例えば、容器20、移送スリーブ30、及びプランジャロッド14は、すべて真空圧下であってよく、及び/又は真空チャンバ内に封入されていてもよい。
一実施形態において、金型16は、材料を成形する際にその中の真空圧を調節するように構成された封入構造である真空金型である。例えば、一実施形態において、真空金型16は、互いに対して隣接して(それぞれ)配置された、第1プレート(「A」金型又は「A」プレートとも呼ばれる)、第2プレート(「B」金型又は「B」プレートとも呼ばれる)を含む。第1プレートと第2プレートは一般にそれぞれ、それらの間で溶融した材料を成形するために、それぞれに伴う型穴を有する。この型穴は、注入スリーブ又は移送スリーブ30を介してその間に受容される溶融した材料を成形するように構成されている。型穴には、その中で部品を形成及び成形するための部品型穴が含まれ得る。
一般に、第1プレートは、移送スリーブ30に接続することができる。一実施形態により、プランジャロッド14は、溶融した材料を、容器20から、移送スリーブ30を介して、金型16へと移動させるように構成されている。移送スリーブ30(時に、当該技術分野及び本明細書においてショットスリーブ、コールドスリーブ又は注入スリーブと呼ばれる)は、溶融ゾーン12と金型16との間に提供され得る。移送スリーブ30は開口部を有し、開口部は、これを通じて溶融した材料を受容し、かつ(プランジャ14を用いて)金型16へと移送するように構成されている。この開口部は、水平軸(例えばX軸)に沿って水平方向に設けられ得る。移送スリーブは、コールドチャンバである必要はない。一実施形態において、少なくともプランジャロッド14、容器20(例えばその受容部分又は溶融部分)、及び移送スリーブ30の開口部は、一線上かつ水平軸上に設けられ、これによりプランジャロッド14は、溶融した材料を移送スリーブ30の開口部内に移動させる(及び、その後、通過させる)ために、容器20を通って水平方向に移動できる。
溶融した材料は、移送スリーブ30を通って水平方向に押され、入口(例えば第1プレート内)を介し、第1プレートと第2プレートとの間を通って型穴内に入る。材料の成形中、少なくとも第1プレート及び第2プレートは、その間にある材料(例えばアモルファス合金)の少なくとも酸素及び窒素への曝露を実質的に排除するように構成されている。具体的には、プレート及び型穴の中から、大気空気が実質的に排除されるよう、真空が適用される。真空ラインに接続された少なくとも1つの真空源38を使用して、真空金型16の内部に真空圧を適用する。例えば、システムの真空圧又は真空レベルは、溶融及びその後の成形サイクル中において、13.3〜0.013Pa(1×10-1〜1×10-4Torr)に維持され得る。別の実施形態において、この真空レベルは、溶融及び成形サイクル中において、1.3〜0.013Pa(1×10-2〜約1×10-4Torr)に維持される。もちろん、他の圧力レベル又は範囲、例えば、0.013μPa(1×10-9Torr)〜約0.13Pa(1×10-3Torr)、及び/又は0.13Pa(1×10-3Torr)〜約13.3Pa(0.1Torr)も使用することができる。真空イジェクタ機構(図示なし)は、金型16の第1プレートと第2プレートとの間の型穴から、成形された(アモルファス合金)材料(又は成形された部分)を取り出すように構成されている。この取り出し機構は、成形された材料又は部品を外すために作動するように構成された作動機構(図示なし)に関連付けられている又は接続される(例えば、少なくともプレートの間の真空が解除された後、第1部品及び第2部品が互いから相対的に離れるよう水平方向に動いた後に)。
装置10には、任意の数又はタイプの金型を採用することができる。例えば、第1プレートと第2プレートとの間及び/又は隣に任意の数のプレートを設けて、金型を形成することができる。例えば「A」シリーズ、「B」シリーズ、及び/又は「X」シリーズの金型として知られる金型を、射出成形システム/装置10に設けることができる。
溶融される材料を均一に加熱し、このような射出成形装置10の中にある溶融した材料の温度を維持することが、均一に成形された部品を形成するのに役立つ。単に例示目的のため、本開示全体で、溶融される材料は、固体状態の原材料であるインゴット25の形態であるものとして説明及び図示される。ただし、溶融される材料は、固体状態、半固体状態、予熱されたスラリー、粉末、ペレットなどの形態で、射出成形システム又は装置10内に受容されてもよく、材料の形態は限定されないことに注意されたい。本開示に従い、そのようなシステム内で溶融されている及び/又は溶融した材料を収容するため、少なくとも1つのゲートがこの装置内に設けられる。このゲートは、溶融した材料を装置の溶融ゾーン内に閉じ込め、熱損失を最小限に抑えるように構成されている。加えて、溶融した材料は、過剰に混ざりすぎないよう、又は急激に冷えすぎないように、溶融ゾーンに保持される必要がある。
インラインでかつ水平方向に配置される射出成形装置10において、電力入力の大半を溶融のための材料に適用するために、誘導コイル26に隣接する溶融ゾーン12内に材料を収容することが、各サイクルで一貫した溶融を行うために効果的である(例えば、溶融した材料の流れを容器20の取り出し経路に向ける、及び/又は取り出し経路から出すのに比べて)。
したがって、本開示は、射出成形装置/機器の少なくとも誘導/溶融ゾーン内に、少なくとも1つのゲートを必要とし、これに対処するためのいくつかの異なる概念を提示する。溶融ゾーン内に溶融物を収容するゲートなしでは、溶融される材料(又は溶融した材料)は、溶融源(例えば誘導場)の範囲を超えて延伸し移動する傾向があり、温度の損失、(例えば、溶融物を溶融させ、又は溶融物の温度を維持するために)必要な電力入力要件の増大、及び形成又は成形された部品の品質低下を引き起こすことが分かっている。開示及び図示されているゲートの実施形態では更に、加熱及び溶融プロセス中に、装置の他の部分の機能を妨げることなく(例えば、プランジャ機能と、プロセス中に十分な真空を生じさせる能力を維持する)、及び/又は機械の信頼性に影響を与えることなく、溶融される材料が確実に収容されるようにする。この実施形態は、溶融プロセス中に材料を閉じ込め(例えば、誘導源26からの無線周波数を適用するために)、また、この材料が溶融される間の安定状態の温度分布を促す。
射出成形装置10内の材料としてBMGを使用した場合、本明細書に開示されているように少なくとも1つのゲートを用いることによって、高い弾性限界、耐腐食性、及び低密度を備えた材料をもたらし、また費用効率が良い。
ゲートは、無線周波数透過性材料(例えば、これにより、熱源/誘導源26からの誘導電流又は無線周波数がゲートを加熱しない)を含むがこれに限定されない任意の材料で製造することができる。この材料は、気体、流体又はその他の手段により温度を制御することができるような材料であり得る。例えば、ゲートを形成するのに使用可能なそのような例示的な材料は、金属(例えば銅)、ガラス、セラミック、又は任意の他の材料であり得る。一実施形態において、このゲートは、銅又は銅合金などの、小さな外皮厚さを備えた高導電性金属で作製することができる。ゲートはまた、磁性材料、セラミック、非磁性材料、絶縁体又はその他の材料でコーティングすることもできる。
更に、ゲートの本体は、全体が同じ材料で作製されている必要はないことに注意されたい。例えば、ゲートには、耐熱性であるように構成された、及び/又は溶融中に材料に損傷を与えずにこれを収容するように構成された、1つ以上の材料から作製される先端が含まれていてよく、ゲートの本体は、別の材料で作製されていてもよい。
本明細書で開示されている実施形態において、例えば、各ゲートは第1(閉)位置及び第2(開)位置に移動可能である。ゲートは、容器20の取り出し経路内への侵入を制限し、かつ、材料の溶融中に、溶融可能な形態の材料を容器20内に収容する第1位置と、取り出し経路を通って、溶融した形態の材料の移動を可能にする第2位置との間で、移動するように構成されている。装置10は材料を溶融するように構成され、このゲートは、材料の溶融及び形成/鋳造成形中に、装置10が真空下に維持できるように構成されている。
単ゲート(例えば、溶融段階でプランジャ14がインゴットに接触している)(例えば図4〜14を参照)及びデュアルゲートシステム(例えば図15〜16を参照)両方の例示的な実施形態が下記に更に説明される。単ゲートシステムとして採用される一実施形態において、例えば、プランジャ14は、容器20内の取り出し経路の相対する側を制限し、かつ材料の溶融中に、溶融可能な形態の材料を容器20内に収容するよう、構成することができる。プランジャ14はまた、溶融後にゲートが第2位置(開位置)に移動したときに、溶融した形態の材料を容器20の取り出し経路を通って、金型16内に移動させるように更に構成することができる。例えば、プランジャ14の先端は、高温に耐え、溶融物からの高温と最小限の熱損失を可能にする材料(例えばセラミックなど)から形成することができる。一実施形態において、プランジャ先端は、溶融中及び/又はいったん金型内に入ると、液冷/空冷により冷却して、固化を促進させることができる。例えば、プランジャを備えた単ゲートを用いることにより、密封箇所の少ない単純な設計が得られる。別の方法としては、デュアルゲートシステムにより、溶融段階中にゲートを加熱させることができる。そのような構成により、プランジャ14の先端は冷えたままに保つことができ、溶融段階中(材料の加熱中)に溶融ゾーン12から安全に引き戻すことができる。ゲートを第2位置に引き戻した後、プランジャ14を溶融した材料に接触させることができ、この溶融物を冷却してから金型16に挿入することができる。
図4〜16の図示されている実施形態それぞれにおいて、容器20は水平軸(X軸)に沿って配置されており、溶融した形態の材料の移動は、取り出し経路を通って(例えばプランジャ14を使って)導かれる際に水平方向であるよう、容器20は水平軸に沿って配置される。容器20の少なくとも一部分は、材料を加熱して溶融するよう配置及び構成されているコイル形状の誘導源26で取り囲まれている。単に例示目的のため、容器20の図示像は、U字形ボート/容器のX軸に沿った断面図であり、溶融される材料を(例えばインゴットの形態で)内部に受容するための溶融部分24を有する。例えば、図14に示す俯瞰図は、図中に示されるU字形容器の一例を詳細に表している。ただし、この図示されている形状は、限定することを意図するものではない。
更に、各実施形態には、容器20の少なくとも一部分を取り囲むよう配置されたスリーブ42が含まれる。スリーブ42は、容器20と共に水平方向に(すなわちX軸に沿って)延在する。スリーブ42は、任意の材料で作製され、任意の形状で提供することができ、限定することを意図するものではない。例えば、スリーブ42は、形成された石英チューブであり得る。スリーブ42は、容器20の外側を取り囲んで配置され、これにより真空を適用することができ、溶融プロセスを真空下に実施することができる。スリーブ42は、ゲート40を第1(閉)位置及び第2(開)位置に配置できるように構成されている。
また、作動機構は、この第1位置と第2位置との間でゲートを選択的に移動させるよう各ゲートと関連付けられている。任意の種類の作動機構を使用することができ、及び/又は制御することができる(例えばコントローラによって)。本明細書に開示されているゲートの実施形態に使用可能な作動機構のいくつかの例としては、空圧ピストン、液圧ピストン、ソレノイド、及び/又はサーボモータが挙げられる。ゲートは、直接シャフト、磁石、重力、又はその他の装置を用いて制御することができる。ゲートを第1位置と第2位置に向かって及びこれらの間で動かすのに使用される作動機構の種類は、限定することを意図するものではない。
ここで図を参照し、図4及び5は、射出成形システム10内の容器20と関連付けられているゲート40の一実施形態の詳細断面図を、それぞれ第1位置及び第2位置にある状態で示す。この実施形態において、スリーブ42は、それ自体から延出する突出部44を含み、この内部でゲートが第1位置及び第2位置に(延伸し及び引き戻して)動くように構成されている。突出部44は、ゲート40の少なくとも一部が容器20の本体内に移動し、その溶融部分24に接触することができるように配置される。突出部44は、ゲート40がU字形容器20の上部分内に入り込めるように、スリーブ42上に配置される。より具体的には、ゲート40は、容器20に対してある角度で取り付けられた直線状の作動ゲートである。スリーブ42の突出部44は、容器20の軸(X軸上)に対して角度αで配置された軸A−A上に、斜めに取り付けられる。よって、ゲート40は、軸A−Aに沿って直線状に、第1位置と第2位置との間で、容器に対して斜め方向に動くように構成されている。一実施形態において、突出部44は、スリーブ42に対して約15〜約90度の角度αで提供することができ、これによってゲート40は、容器20に対して同様の角度で配置される。ただし、ゲート40の取り付け角度は、限定することを意図するものではない。
一実施形態において、突出部44が容器に対して提供される角度αは、約90度であり、すなわち、ゲートは、これが第1位置と第2位置との間を移動するときに、容器に対して垂直方向に移動するように構成されている。角度を約90度とすることにより、容器の長さ(水平/長手方向)を短くすることができ、これにより、溶融した材料の望ましくない冷却を低減するのに役立ち、これによって材料の鋳造品質が改善される。
ゲート40には、溶融プロセス中に溶融した及び/又は溶融状態にある材料の移動を制限するように構成された接触表面(又は先端)46が含まれる。この先端は、本体に対してある角度で提供され得る。例えば、第1位置において、ゲートの先端46は、容器20の溶融部分24に対して垂直に延在するように構成することができる。この接触表面又は先端46は、ゲート40の本体に類似の材料、又は異なる材料で、形成することができる。ゲート40を形成するには、任意の数の材料を使用することができる。ゲート40は、上述したように、作動機構又は装置(図示なし)によって、第1位置(図4)又は第2位置(図5)に移動される。例えば、溶融の前に、ゲート40を図4の第1(閉)位置に配置(又は必要に応じて移動)することができる。ゲート40は、溶融される材料(インゴット25)を容器20に挿入する前又は後に、第1位置に提供することができる。ゲート40は溶融プロセスの間、適所に留まって、材料の溶融中に溶融可能な形態の材料を容器20内に閉じ込め、望ましい温度/安定状態/溶融した材料が達成されたら、ゲート40を作動させて、図5に示すように第2(開)位置に移動させ、これにより溶融形態にある材料を、容器20の取り出し経路を通って金型16内へと移動させることが可能になる。したがって、ゲート40の構成は、第1位置と第2位置との間での、及びこれらの位置への中断されない移動をもたらすように設計される。ゲート40は、溶融プロセス中に、誘導コイル場/溶融ゾーン12内に、溶融されている材料を維持することができる(例えば、容器の相対する側、又は端部にあるプランジャ14と共に)。
一実施形態により、ゲート40は、(例えば溶融プロセス中に)温度制御又は冷却が可能な本体及び/又は先端46を含むように構成することができる。ゲートは、連続的又は断続的に、伝導、対流、気体、又は流体により冷却することができる。一実施形態において、図4に示すように、容器内に受容した材料の溶融中にゲート(又はその先端)の温度を調節するために(例えばゲート及び/又はその先端を強制的に冷却するため)、1つ以上の温度調節管48をゲート内に設け、液体(例えば水又はその他の流体)を内部に流すように構成することができる。この管は、ゲート又はゲート先端自体が過熱して溶融するのを防ぐのに役立つことができる。この管は、容器内の液体の流れを誘導するように構成された冷却システムに接続することができる。この管は、液体又は流体が通過して流れるための1つ以上の入口と出口を含み得る。この管の入口及び出口は、任意の数の方法で構成することができ、限定することを意図したものではない。この管の数、配置及び/又は方向は限定されるべきではない。ゲートが第1(閉)位置にあってインゴットを溶融するため溶融中に収容するとき、及び/又は、誘導源26が通電しているときに、冷却液又は流体が、溶融可能材料の溶融中に管内を通って流れるように構成することができる。
図6及び7はそれぞれ、別の実施形態による、それぞれ第1位置及び第2位置での、射出成形システム10の容器20と関連付けられているゲート50の詳細な斜視断面図を示す。この実施形態において、ゲート50の侵入及び相対的な移動は、スリーブ42の外側で達成される。より具体的には、ゲート50は移送スリーブ30を通って延伸することにより容器20に入り、及び容器20の取り出し経路に入るように構成され、これによって、少なくともその先端54が、溶融中の材料に接触しこれを保持するように設けられる。移送スリーブ30には封止部が含まれ得、これにより使用中に、溶融ゾーン12が真空密閉状態を維持する。ゲート50は、内部で第1及び第2位置に(前進及び後退)動くように構成されている。ゲート50は、容器20に対してある角度βで取り付けられた直線状の作動ゲートである。より具体的には、ゲート50は、容器20の軸(X軸上)に対してある角度で配置された軸B−B上に、斜めに取り付けられる。よって、ゲート50は、軸B−Bに沿って直線状に、第1位置と第2位置との間で、容器に対して斜め方向に動くように構成されている。一実施形態において、ゲート50は、スリーブ42及び/又は容器20に対して、約30〜約90度の角度βで設けられてもよい。一実施形態において、角度βは約45度である。一実施形態において、誘導ゾーン又は溶融ゾーン12内の到達範囲は、ゲート50の設置角度によって異なり得る。ただし、ゲート50の取り付け角度は、限定することを意図するものではない。
ゲート50には、本体52と、溶融プロセス中に溶融した及び/又は溶融状態にある材料の移動を制限するように構成された接触表面(又は先端)54とが含まれる。この先端は、本体に対してある角度で提供され得る。例えば、第1位置において、ゲートの先端54は、容器20の溶融部分24に対して垂直に延在するように構成することができる。図6及び7において、接触表面又は先端54は、ゲート54の本体52とは異なる材料で形成される。例えば、本体52は銅材料で作製することができ、先端54はセラミック材料で作製される。ゲート50を形成するには、任意の数の材料を使用することができる。ゲート50は、上述したように、作動機構又は装置56によって、第1位置(図6)又は第2位置(図6)に移動される。例えば、作動機構56には、第1位置及び第2位置に向かって又はこれらの間でゲート50を移動させるための空圧ピストンが含まれ得る。溶融の前に、ゲート50を図6の第1(閉)位置に配置(又は必要に応じて移動)することができる。ゲート50は、溶融される材料(インゴット25)を容器20に挿入する前又は後に、第1位置に提供することができる。ゲート50は溶融プロセスの間、適所に留まって、材料の溶融中に溶融可能な形態の材料を容器20内に閉じ込め、望ましい温度/安定状態/溶融した材料が達成されたら、ゲート50を作動させて、図7に示すように第2(開)位置に移動させ、これにより溶融形態にある材料を、容器20の取り出し経路を通って、移送スリーブ30を通り、金型16内へと移動させることが可能になる。したがって、ゲート50の構成は、第1位置と第2位置との間での、及びこれらの位置への中断されない移動をもたらすように設計される。ゲート50は、溶融プロセス中に、誘導コイル場/溶融ゾーン12内に、溶融されている材料を維持することができる(例えば、容器の相対する側、又は端部にあるプランジャ14と共に)。これには、スリーブ42の再構成又は変更を必要としない。ゲート50はスリーブ42の単純な設計を維持し(図4に示される突出部44などの突出部を形成する必要なしに)、溶融ゾーン12に隣接して設けられる、統合が容易な作動機構をもたらす。
図8及び9はそれぞれ、一実施形態による第1位置及び第2位置での、射出成形システム10において容器20と関連付けられている回転可能なゲート60の詳細断面図を示す。この実施形態において、スリーブ42にはそれ自体から延出する突出部45が含まれ、この内部でゲートの少なくとも一部分が第1位置及び第2位置に回転して移動するように構成されている。突出部45は、ゲート60がU字形容器20の上部分内にある本体を通ってここに入り込めるように、スリーブ42上に配置される。より具体的には、ゲート60は回転して作動するゲートである。スリーブ42の突出部45は、容器20の軸(X軸上)に対して垂直に配置される軸C−C(Y軸上)に、垂直に取り付けられる(例えば、X軸に対して90度の角度)。よって、ゲート60は容器20の軸(X軸)に対して垂直な軸(軸C−C)を中心に動くよう配置される。ゲート60は、第1又は第2位置に本体64を作動し移動させる(すなわち回転させる)ため、突出部45を通って垂直に延在する延長部62を含む。本体64は、その壁が、装置の溶融ゾーン内に溶融した材料を収容することにより、溶融している材料が取り出し経路を通って移動又は流出するのを防ぐように、形成される。本体64も、その中を貫通する開口部66を含む。例えば、一実施形態において、ゲート60はボールバルブの形状であり得る。開口部66により、溶融状態の材料が、容器の溶融部分24から、取り出し経路を通って、金型16内へと向かって/この内部に移動することが可能になる。一実施形態において、このゲートは流体により温度制御することができる。
ゲート60の本体64は、溶融プロセス中に溶融した及び/又は溶融状態にある材料の移動を制限するように構成されている。本体64は、延長部62と同じ又は異なる材料で形成することができる。ゲート60を形成するには、任意の数の材料を使用することができる。ゲート60は、上述したように、作動機構又は装置(図示なし)によって、第1位置(図8)又は第2位置(図8)に移動される。作動装置は、延長部を軸C−Cを中心に回転しながら移動させるように構成されている。例えば、溶融前に、ゲート60を図8の第1(閉)位置に配置(又は必要に応じて移動)し、これにより本体64が材料の移動を阻止するようにすることができる。ゲート60は、溶融される材料(インゴット25)を容器20に挿入する前又は後に、第1位置に提供することができる。ゲート60は溶融プロセスの間、適所に留まって、材料の溶融中に溶融可能な形態の材料を容器20内に閉じ込め、望ましい温度/安定状態/溶融した材料が達成されたら、ゲート60を作動させて、図9に示すように軸C−Cを中心に回転させて第2(開)位置に移動させ、これにより溶融形態にある材料を、開口部66から、容器20の取り出し経路を通って、金型16内へと移動させることが可能になる。ゲート60は、第1位置から第2位置へ90度回転するように構成されている。したがって、ゲート60の構成は、第1位置と第2位置との間での、及びこれらの位置への中断されない移動をもたらすように設計される。これは、第1位置と第2位置との間で90度の回転運動の利用をもたらす。これと共に使用される任意の密封は、損なわれる可能性が低い。ゲート60は、溶融プロセス中に、誘導コイル場/溶融ゾーン12内に、溶融されている材料を維持することができる(例えば、容器の相対する側又は端部にあるプランジャ14と共に)。一実施形態において、プランジャの先端は、溶融した材料を金型16内へ移動させるために開口部66を通って延在できるような寸法である。一実施形態において、このゲートは流体により温度制御することができる。
図10及び11はそれぞれ、第1位置及び第2位置での、射出成形システム10の容器20と関連付けられている別の代替的ゲート70の詳細斜視図を示す。この実施形態において、スリーブ42は、図4及び5に示す突出部44と類似の突出部74を含み、これはスリーブから延出し、ゲートの少なくとも一部分が、内部において第1位置及び第2位置へと回転しながら動くことを可能にする。突出部74は、ゲート70の少なくとも一部(例えば先端76)が容器20の本体内で移動し、その溶融部分24に接触することができるように、配置される。突出部74は、ゲート70がU字形容器20の上部分内にある本体を通ってここに入り込めるように、スリーブ42上に配置される。より具体的には、ゲート70は、容器20に対してある角度で取り付けられた、回転して作動するゲートである。スリーブ42の突出部74は、容器20の軸(X軸上)に対して角度θで配置された軸D−D上に、斜めに取り付けられる。ゲート70は、軸A−Aに沿って第1位置と第2位置との間で容器に対して斜め方向に配置されるが、第1位置と第2位置との間で容器20に対して回転するように構成されている。一実施形態において、突出部74は、スリーブ42に対して約30〜90度の角度θで提供することができ、これによってゲート70は、容器20に対して同様の角度で配置される。別の実施形態において、突出部74は、容器20の軸(X軸)に対して角度θが約45度で配置される。ただし、ゲート70の取り付け角度は、限定することを意図するものではない。一実施形態において、このゲートは流体により温度制御することができる。
ゲート70には、溶融プロセス中に溶融した及び/又は溶融状態にある材料の移動を制限するように構成された接触表面(又は先端)76が含まれる。この先端は、本体に対してある角度で提供され得る。例えば、第1位置において、ゲートの先端76は、容器20の溶融部分24に対して垂直に延在するように構成することができる。ただし、ゲート70を回転させた後、先端76は、容器の溶融部分24に対して水平かつ平行に延在するように構成することができる。この接触表面又は先端76は、ゲート70の本体72に類似の材料、又は異なる材料で、形成することができる。ゲート70を形成するには、任意の数の材料を使用することができる。ゲート70は、上述したように、作動機構又は装置(図示なし)によって、第1位置(図10)又は第2位置(図11)に移動される。例えば、溶融の前に、ゲート70を図10の第1(閉)位置に配置(又は必要に応じて移動)することができる。ゲート70は、溶融される材料(インゴット25)を容器20に挿入する前又は後に、第1位置に提供することができる。ゲート70は溶融プロセスの間、適所に留まって、材料の溶融中に溶融可能な形態の材料を容器20内に閉じ込め、望ましい温度/安定状態/溶融した材料が達成されたら、ゲート70を作動させて回転させ、図11に示すように第2(開)位置に移動させ、これにより溶融形態にある材料を、容器20の取り出し経路を通って金型16内へと移動させることが可能になる。ゲート70は、第1位置から第2位置へ180度回転するように構成されている。したがって、ゲート70の構成は、第1位置と第2位置との間での、及びこれらの位置への中断されない移動をもたらすように設計される。これは、第1位置と第2位置との間で180度の回転運動の利用を提供する。これと共に使用される任意の密封は、損なわれる可能性が低い。ゲート70は、溶融プロセス中に、誘導コイル場/溶融ゾーン12内に、溶融されている材料を維持することができる(例えば、容器の相対する側、又は端部にあるプランジャ14と共に)。一実施形態において、プランジャの先端は、溶融した材料を金型16内へ移動させるために、ゲート70が第2位置にあるときに、先端76の下に延在できるような寸法である。一実施形態において、このゲートは流体により温度制御することができる。
図12及び13はそれぞれ、別の実施形態による第1位置及び第2位置での、射出成形システム10において容器20と関連付けられているヒンジ式ゲート80の詳細断面図を示す。この実施形態において、スリーブ42は、容器20の少なくとも溶融部分24を取り囲む。ゲート80は、本体82と、第1と第2位置との間で回転するためのヒンジ84とを有する。ゲート80は、容器20に対して回転するように構成されている。より具体的には、ゲート80は重力作動ゲート(フラッパーなど)であるように構成され、これは、誘導ゾーン内で旋回し、その自重により第1(閉)位置に保持される。ゲート80は、(溶融プロセス後に容器の取り出し部分を通って前進してくる際に)溶融物が押し付けられる力によって、又は例えばプッシュロッドの力によって、その第2位置に移動するか、又は開くことができる。ゲート80を動かすのには、別の方法及び/又は部品、例えばロッド、磁石、及び/又はアクチュエータを、併用又は代替として使用することができる。一実施形態において、このゲートは流体により温度制御することができる。
図14の俯瞰図でよりよく示されているように、ゲート80は、容器20を取り囲む部分86に取り付けることができる。部分86は、誘導コイル26の位置に隣接する容器20の一部分に配置することができ、例えばこれにより、ゲート80は、溶融中に溶融ゾーン12の誘導ゾーン内に材料を収容するよう配置することができる。部分86は、別に形成又は作製して容器に取り付けることができ、あるいは、容器の本体と一体のものとして形成又は作製することができる。部分86は、スリーブ42により取り囲まれるように構成することができる。
部分86は、ゲート80のヒンジのために、少なくとも1つの取り付け領域88を含む。図示されている実施形態において、部分86は、ヒンジ84の端部をそれぞれ受容するように構成されているU字形容器のいずれかの側に取り付け領域88を備えた、円形の部品である。部分86は、ゲート80がU字形容器20の上部分内にある本体を通ってここに入り込めるように、容器20上に配置される。部分86の取り付け領域88は、容器20の軸(X軸上)に対して垂直に配置されている軸(Z軸)上に水平に、ヒンジ84を配置するよう位置合わせされる(例えば、X軸に対して90度の角度で、Y軸に対して垂直)。よって、ゲート80は、容器20の軸(X軸上)に対してZ軸を中心とする回転又はヒンジ運動をするよう配置される。
ゲート80の本体82は、溶融プロセス中に溶融した及び/又は溶融状態にある材料の移動を制限するように構成されている。ゲート80を形成するには、任意の数の材料を使用することができる。ここでも、ゲート80は、その自重(例えば、本体82の重量)により第1(閉)位置に提供される、重力作動ゲートである。よって、ゲート80は、溶融前、及び/又は溶融される材料(インゴット25)を容器20に挿入する前に、第1位置(図12)に提供される(例えばデフォルトとして)。ゲート80は溶融プロセスの間、適所に留まって、材料の溶融中に溶融可能な形態の材料を容器20内に閉じ込め、望ましい温度/安定状態/溶融した材料が達成されたら、ゲート80を作動させて、図13に示すようにZ軸を中心に回転させて第2(開)位置に移動させ、これにより溶融形態にある材料を、容器20内を通してプランジャ14を動かすことにより、開口部66から、容器20の取り出し経路を通って、金型16内へと移動させることが可能になる。溶融した材料及び/又はプランジャ14の先端からかかる力により、ヒンジ84を中心にゲート80を回転させ、スリーブ42に向かって上向きにフリップさせる。ゲート80は、第1位置から第2位置へ90度回転するように構成されている。したがって、ゲート80の構成は、第1位置と第2位置との間での、及びこれらの位置への中断されない移動をもたらすように設計される。これは、第1位置と第2位置との間で90度の回転運動の利用を提供する。これには、スリーブ42の再構成又は変更を必要としない。ゲート80は、溶融プロセス中に、誘導コイル場/溶融ゾーン12内に、溶融されている材料を維持することができる(例えば、容器の相対する側、又は端部にあるプランジャ14と共に)。ゲート80はスリーブ42の単純な設計を維持し(図4に示される突出部44などの突出部を形成する必要なしに)、溶融ゾーン12に隣接して設けられる、統合が容易な作動機構をもたらす。
更に別の実施形態により、(溶融プロセス中に、容器20の一方の端の側又は取り出し経路に単一のゲート、もう一方の反対側の端にゲートとして作用するプランジャ14を備える代わりに、)デュアルゲートシステムを、装置10などの射出成形システムに採用することができる。図15及び16は、誘導コイルの下流側と上流側の両方にあるゲート機構の一例を示す。一実施形態によるそれぞれ第1位置及び第2位置での、射出成形システム10の容器20と関連付けられているデュアルゲートシステムの詳細断面図が示されている。図15及び16は図4及び5で示し説明した設計に類似であり、上述のように、スリーブ42の突出部44内に配置され、かつ第1位置と第2位置との間を移動するように構成されたゲート40を含む。ゲート40の説明がここにおいて本実施形態に組み込まれ、よって単に単純化目的のため、ここでは繰り返さない。更に、図15及び16は、容器20の反対側を制限するように構成された追加のゲート90を示す。この反対側とは、いくつかの実施形態において、例えば装入ポート18から材料(例えばインゴット25)を射出するための射出側として使用することができる端側である。追加のゲート90は、溶融プロセス中にプランジャ14(又はプランジャ先端)を使用する代わりに、材料溶融中に容器内に溶融可能な形態の材料を収容するように構成されている。この実施形態において、スリーブ42は、それ自体から延出する第2突出部92を更に含み、この内部で追加のゲート90が第1位置及び第2位置に(延伸し及び引き戻して)動くように構成されている。突出部92は、追加のゲート90の少なくとも一部が容器20の本体内に移動し、容器20の反対側の端でその溶融部分24に接触することができるように配置される。突出部92は、追加のゲート90がU字形容器20の上部分内に入り込めるように、スリーブ42上に配置される。より具体的には、追加のゲート90は、容器20に対してある角度で取り付けられた直線状の作動ゲートである。スリーブ42の突出部92は、容器20の軸(X軸上)に対して角度σで配置された軸E−E上に、斜めに取り付けられる。よって、追加のゲート90は、ゲート40によって示されるのと同様にして、軸E−Eに沿って直線的に第1位置と第2位置との間を、容器に対して斜め方向に移動するように構成されている。一実施形態において、突出部92は、スリーブ42に対して約15〜約90度の角度σで提供することができ、これによって追加のゲート90は、容器20に対して同様の角度で配置される。ただし、追加のゲート90の取り付け角度は、限定することを意図するものではない。
ゲート40と同様、追加のゲート90には、溶融プロセス中に溶融した及び/又は溶融状態にある材料の移動を制限するように構成された接触表面(又は先端)96が含まれる。この先端は、本体に対してある角度で提供され得る。例えば、第1位置において、追加のゲート90の先端96は、容器20の溶融部分24に対して垂直に延在するように構成することができる。この追加のゲート90の接触表面又は先端96は、その本体に類似の材料、又は異なる材料で、形成することができる。追加のゲート90を形成するには、任意の数の材料を使用することができる。追加のゲート90は、上述したように、作動機構又は装置(図示なし)によって、第1位置(図15)又は第2位置(図16)に移動される。ゲート40及び90は、それぞれの第1及び第2位置との間を実質的に一緒に移動するように構成することができる。例えば、溶融の前に、追加のゲート40を図4の第1(閉)位置に配置(又は必要に応じて移動)することができる。ゲート40は、溶融される材料(インゴット25)を容器20に挿入する前又は後に、第1位置に提供することができる。一方、装入ポート18及び/又はプランジャ14を使用してインゴット25を容器20の溶融部分24に装入した場合、ゲート90は、インゴット25挿入後に、図15に示すように第1(閉)位置に動かすことができる。あるいは、ゲート40と90の両方を、材料装入後にそれぞれの第1(閉)位置に直線的に動かすことができる。ゲート40と追加のゲート90は両方とも、溶融プロセスの間第1位置に留まって、溶融可能な形態の材料を容器20内に閉じ込め、望ましい温度/安定状態/溶融した材料が達成されたら、ゲート40と追加のゲート90を作動させて、図16に示すようにそれぞれの第2(開)位置に移動させ、これにより溶融形態にある材料を、容器20の取り出し経路を通って、金型16内へと移動させることが可能になる。別の実施形態において、プランジャ14が容器20内に動かすことができるように、先に追加のゲート90を第2位置に移動させ、いったんゲート40が第2位置に移動したら溶融した材料を移動させるように構成することができる。それでもなお、両方のゲートがいったん第2位置になったときに、プランジャ14は、溶融した材料を容器20の取り出し経路を通って金型に押し入れるように構成されている。したがって、ゲート40及び追加のゲート90の構成は、第1及び第2位置との間での中断されない移動及びこれらの位置への中断されない移動をもたらすよう設計される。ゲート40及び追加のゲート90の両方とも、溶融プロセス中に、誘導コイル場/溶融ゾーン12内に、溶融されている材料を維持することができる。
図15及び16では、図4及び5に示されているゲート40の構成に同様の2つのゲートの使用が図示されているが、本明細書に開示されている任意の実施形態(例えば直線移動又は回転移動するゲート)を、上流ゲートとして、単独で、又は図示のように下流ゲートに加えて使用するために、適用及び採用することができることに注意されたい。更に、異なるゲート設計の組み合わせを、一緒に使用することもできる。
したがって、本明細書に記述されているゲートは、単に例示として意図されている。ゲートの取り付け及び/又は移動の構成は、限定するものではない。
図17は、図3に示す装置10を使用した、本開示の一実施形態による部品の材料溶融及び部品成形のための方法を示す。この装置は、102に示すように、ゲートと、容器20と、金型16とを含むよう設計される。このゲートは、前述のように、容器20での材料の流れを停止及び流させるために、それぞれ第1位置と第2位置との間の移動を可能にするような、本明細書に記述される任意の構成、又はその他の構成であり得る。一般に、射出成形システム/装置10は、下記のように作動させることができる:溶融可能な材料(例えば、アモルファス合金又はBMGを単一インゴット25の形状で)は、フィード機構(例えば装入ポート18)に装入し、104に示すように、容器20内の溶融ゾーン12(これは誘導コイル26で取り囲まれている)に挿入し受容させる。106において、ゲートは、容器の取り出し経路への侵入を制限し、かつ材料の溶融中に、溶融可能な形態の材料を容器内に収容するために、第1位置に設けられる。108に示すように、溶融される材料を装入する前又は後に、ゲート及び/又は装置10に真空を適用してもよい。射出成形装置の「ノズル」ストローク又はプランジャ14を使用して、この材料を、必要に応じて、容器20の溶融部分24内に移動させることができる。110で、誘導プロセスにより、材料を加熱する(すなわち、電源によって誘導コイル26に電力を供給することにより)。射出成形装置は、閉ループ又は開ループシステムを介して温度を制御し、これにより(例えば、温度センサとコントローラを使用して)材料を特定の温度で安定させる。材料の溶融中、ゲートは、装置を真空下に維持できるように構成されている加熱/溶融中には更に、容器20及び/又はゲート(又はゲート先端)の任意の冷却管に液体(冷却液)を流すよう作動させることができる。望ましい温度に達し、溶融可能な材料の溶融状態が維持されたら、誘導コイル26を用いた加熱を停止することができる。112に示すように、ゲートを第1位置から第2位置へと移動させて、溶融した形状の材料を取り出し経路を通って、金型へと移動できるようにし、装置は次に、水平軸(X軸)に沿って水平方向に(右から左に)移動させることにより、容器20から、移送スリーブ30を通じ、真空金型16への、溶融した材料の射出を開始する。これは、プランジャ14を使用して制御可能であり、これはサーボ駆動ドライブ又は水圧駆動を用いて作動させることができる。114に示すように、金型16は、溶融した材料を入口を介して受容するように構成され、かつ、真空下でその溶融した材料を成形するように構成されている。すなわち、金型16で部品を成形するため、少なくとも第1プレートと第2プレートとの間の型穴内に溶融した材料が注入される。前述のように、いくつかの実施形態において、この材料は、バルクアモルファス合金部品を成形するのに使用されるアモルファス合金材料であり得る。型穴が充填され始めたら、真空圧(真空ライン及び真空源38を介して)を所定の圧力に保持して、溶融した材料を型穴内の残りの空洞領域に「詰め」、材料を成形することができる。成形プロセスの後(例えば約10〜15秒後)、116に示すように、少なくとも金型16(装置10全体でない場合は)に真空圧を解除する。次に金型16を開けて圧力を解放し、部品を大気に暴露する。118で、イジェクタ機構を作動させ、作動装置を介して、固化した成形物品を、金型16の少なくとも第1プレートと第2プレートとの間から外す。この後、プロセスを再び開始することができる。第1及び第2プレートが互いに隣接するように、少なくとも第1及び第2プレートを互いに向かって動かすことにより、金型16を閉じることができる。プランジャ14を装入位置に引き戻した後、溶融ゾーン12及び金型16は、真空源により排気され、これによって更に材料を挿入して溶融し、別の部品を成形することができる。ゲートは第1位置に戻してから、次のインゴット材料の溶融を開始することができる。
したがって、本明細書に開示される実施形態は、水平軸に沿ったインラインの溶融システムを有する、例示的な射出システム内における少なくとも1つのゲートの使用を示す。少なくとも1つのゲートを、容器の下流/取り出し側に提供することにより、溶融中に材料を保持し、その溶融状態を維持し、かつ溶融プロセス中に安定状態の溶融を誘導することができる。溶融中に、誘導コイルにより形成される誘導ゾーンに隣接して材料を保持することにより、より均一な成形部品を得ることができる。本明細書に開示される任意のゲートを、異なるゲート設計と組み合わせて使用することができる。任意のゲートが、流体を用いて温度制御され得る。加えて、2つのゲートを使用して、溶融する材料を誘導/溶融ゾーンに収容する設計において、ゲートのいずれか一方又は両方が、流体を用いて温度制御され得る。
詳しくは記述されていないが、本開示の射出システムは、1つ以上のセンサ、流量計など(例えば温度、冷却水流量などをモニタリングするため)、及び/又は1つ以上のコントローラを含むがこれらに限定されない追加部品を含み得る。更に、真空下にあるとき、顕著な空気曝露又は漏れを実質的に制限又は排除することにより、溶融した材料の一部の溶融及び形成を支援するため、任意の数の部品に、又はそれに隣接して、封止部が設けられてもよい。例えば、封止部はOリングの形態であり得る。封止部は、任意の材料で製造することができ、封止される部品間を物質(例えば空気)が移動するのを停止させる装置として定義される。射出システムは、その中に溶融可能材料を挿入し、真空を適用し、加熱し、注入し、材料を成形して部品を形成するための、自動又は半自動プロセスを実施し得る。
本明細書に開示される射出システムの任意の実施形態を用いて成形される(及び/又は溶融される)材料には、任意の数の材料が含まれ得、限定されるべきものではない。一実施形態において、成形される材料は、上記に詳述されるように、アモルファス合金である。
本明細書に示される実施形態のいずれかにおけるゲートに使用されているタイプ及び材料は、限定することを意図するものではない。更に、図4にのみ図示されているが、図6〜16に示される本明細書に記述されるゲート(又はその先端)の実施形態のいずれもが、何らかの方式で温度制御又は冷却されるように構成され得ることに注意されたい。
一実施形態により、このゲートは、銅製の、温度制御されたゲートである。別の実施形態において、このゲートは、例えばセラミックなどの他の材料のコーティング材でコーティングされている、銅製の、温度制御されたゲートである。別の実施形態において、このゲートは、例えばセラミックなどの材料で内張りされている、温度制御されたゲートである。
別の実施形態において、このゲートは、セラミック製の、温度制御されたゲートである。別の実施形態において、このゲートは、他の材料のコーティング材でコーティングされている、セラミック製の、温度制御されたゲートである。別の実施形態において、このゲートは、任意の材料で内張りされている、温度制御されたゲートである。
ただし、ゲートは必ずしも温度制御されている必要はない。更に別の実施形態において、このゲートは、セラミック製のゲートである。別の実施形態において、このゲートは、別の材料のコーティング材でコーティングされている、セラミック製のゲートである。別の実施形態において、このゲートは材料で内張りされている。
本開示の原理は、上述の例示的実施形態において明確にされているが、本開示の実施に使用される構造、配置、割合、要素、材料、及び構成部品に対して様々な改変が行われ得ることが、当業者には明らかであろう。
上述並びにその他の数多くの特徴及び機能、又はそれらの代替物は、数多くの他の異なるシステム/装置又は用途に好適に組み合わせ得ることが、理解されよう。これらにおける現在予想できない又は予測されない様々な代替物、変更、バリエーション、又は改善が、続いて当業者によりなされる可能性があり、これも下記の請求項の範囲に包含されることが意図される。