JP2015510392A - 低減したispa活性を有する宿主細胞を用いるイソプレン産生増強法 - Google Patents

低減したispa活性を有する宿主細胞を用いるイソプレン産生増強法 Download PDF

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Abstract

本発明は、イソプレンを生産することのできる組み換え微生物、並びにこのような組み換え微生物を利用して、高効率でイソプレンを生産させることに関する。本発明では、ispA遺伝子の機能活性を変更することにより、イソプレンを産生するよう遺伝子操作された組換え細胞における、あるいは本来であれば発酵中にイソプレノイドが蓄積し易い細胞における、イソプレノイド分子の産生が低減される。これによりispA遺伝子の機能活性が低減されることで、宿主微生物におけるイソプレン合成を増強させることができる。

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願番号第61/580,163号(2011年12月23日出願)及び米国特許仮出願番号第61/639,855号(2012年4月27日出願)に対する優先権を主張する。これらの特許文献のそれぞれは、本明細書において参照によりその全体が組み込まれる。
(参考文献による組み込み)
次のASCIIテキストファイルの内容は、本明細書において参照によりその全体が組み込まれる:コンピュータ可読の形式の(CRF)配列リスト(ファイル名:643842004240.txt,記録日:2012年12月21日,ファイルサイズ:65,536バイト)。
(発明の分野)
本発明は、一般的に、培養細胞からのイソプレンの産生方法及びこれらの培養細胞を含む組成物に関する。
イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)は、各種合成ポリマー、特に合成ゴムの重要な出発物質である。イソプレンは、さまざまな微生物、植物、及び動物種によって天然に生成される。特に、イソプレンの生合成に関しては、メバロン酸(MVA)経路と非メバロン酸(DXP)経路の2つの経路が同定されている。しかしながら、天然に生じる生物から得られるイソプレンの収率は商業的には魅力的でない。イソプレンは石油の分留によって得ることもできるが、この材料の精製には費用及び時間がかかる。石油分解生成物中のC5留分から生成されるイソプレン量はほんの約15%にすぎない。イソプレンの重合により、約725,748メートルトン(800,000トン)/年のcis−ポリイソプレンが製造されており、このポリイソプレンのほとんどがタイヤ及びゴム産業で使用されている。また、履き物、機械製品、医療用品、スポーツ用品、及びラテックスなどのその他の製品では、共重合させたイソプレンが合成エラストマーとして使用されている。
微生物における代謝過程では、メバロン酸依存性生合成経路はアセチル−CoAをイソペンテニルジホスフェート(IPP)及びジメチルアリル二リン酸(DMAPP)に変換する。IPP及びDMAPPはイソプレン及びイソプレノイド類として知られるより高分子量の分子の前駆体である。イソプレノイドは、細胞膜の流動性及び電子輸送を維持する手だてとなるため、多くの生命体及び細胞にとって非常に重要である。
イソプレンの産生における近年の進歩により、ロバストな商業工程に必要とされる要求を十分に満たすことのできる速度、力価及び純度でのイソプレンの産生方法が開示されているものの(例えば、国際出願公開第2009/076676(A2)号を参照されたい)、尚もこれらの化合物の産生性及び収率を向上させる代替経路が必要とされている。
本明細書においては、組換え培養細胞、これらの細胞を含む組成物、並びにイソプレンの産生を向上させるためのこれらの細胞の使用方法が提供される。
本明細書を通じ、各種特許、特許出願及び他の種類の刊行物(例えば、学術論文)を参照する。本明細書に引用する、本開示に関係する全ての特許、特許出願及び刊行物は、すべての目的に関し、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
本明細書で提供される発明は、とりわけ、内容物に組換え細胞を含む組成物、並びにイソプレンを産生する際のこれらの組み換え細胞の製造及び使用方法を開示する。一部の態様では、組換え微生物は、低減された機能活性を有するispA遺伝子並びに1種以上のイソプレン合成酵素及び/又はMVA経路の1種以上の酵素をコードしている1種以上の核酸を含む。
したがって、一部の態様では、本明細書では、イソプレンを産生することのできる組換え細胞が提供され、この細胞は低減された機能活性を有するispA遺伝子並びに次の:(a)イソプレン合成酵素ポリペプチド、ここで、イソプレン合成酵素ポリペプチドは異種核酸によりコードされている、及び(b)メバロン酸(MVA)経路の1種以上のポリペプチドをコードしている、1種以上の核酸を含み、好適な培地でこの組換え細胞を培養することにより、このポリペプチドの産生及びイソプレンの合成が提供される。他の態様では、ispA遺伝子の機能活性は、ispA遺伝子を欠失させること、ispA遺伝子の発現を低減させること、ispAタンパク質の活性を低減させること、ispAタンパク質の発現を低減させること、又はispAの発現を一時的に調節することにより低減される。他の態様では、ispA遺伝子の発現は、弱いプロモーターの調節下にispA遺伝子を配置することにより低減される。一部の態様では、ispA遺伝子の発現は、自己調節型プロモーターの調節下にispA遺伝子を配置することにより低減される。更に他の態様では、ispAタンパク質活性は、翻訳によりispAタンパク質をタンパク質分解性のタグと融合させることにより低減される。他の態様では、ispAタンパク質の発現は、アンチセンスRNAを使用することにより低減される。一部の態様では、ispAタンパク質の発現は、ispAのmRNA分子中に存在するリボソーム結合部位に1つ以上の変異を導入することにより低減される。他の態様では、ispA遺伝子の発現は、転写抑制因子HrcAにより低減される。他の態様では、ispAタンパク質活性は、内在性ispA遺伝子を、内在性ispA遺伝子によりコードされるポリペプチドのKmと比較してDMAPPに関し向上したKmを含むポリペプチドをコードしている遺伝子で置き換えることにより低減される。他の態様では、ispAタンパク質活性は、内在性ispA遺伝子を、異なる温度最適化を伴う別の遺伝子で置き換えることにより低減される。
本明細書に記載の任意の細胞の他の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、植物のイソプレン合成酵素ポリペプチド又はこれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、クズ属(Pueraria)又はハコヤナギ属(Populus)、ウラジロハコヤナギ(Populusalba)xヤマナラシ(Populus tremula)などの交雑種、又はこれらの変異体由来のポリペプチドである。他の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、プエラリア・モンタナ(Pueraria montana)又はプエラリア・ロバタ(Pueraria lobata)、アメリカヤマナラシ(Populus tremuloides)、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)、セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)、コットンウッド(Populus trichocarpa)、又はこれらの変異体からなる群から選択される。更に他の態様では、植物のイソプレン合成酵素ポリペプチドはクズ(kudzu)イソプレン合成酵素ポリペプチド又はこれらの変異体である。更に他の態様では、植物のイソプレン合成酵素ポリペプチドはユーカリプタス(Eucalyptus)イソプレン合成酵素ポリペプチド又はこれらの変異体である。本明細書に記載の任意の細胞の一部の態様では、この(b)の、MVA経路のポリペプチドの1種以上をコードしている1種以上の核酸は、異種核酸である。一部の態様では、この細胞は、MVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸は、上流MVA経路に由来するものであり、上流MVA経路の核酸は、AA−CoAチオラーゼ又はアセトアセチル−CoA合成酵素、HMG−CoA合成酵素及びHMG−CoAレダクターゼの核酸からなる群から選択される。一部の態様では、この細胞が含む、MVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸は、下流MVA経路に由来するものであり、下流MVA経路の核酸は、MVK、PMK及びMVDの核酸からなる群から選択される。一部の態様では、この細胞は、完全なMVA経路の、MVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸を含む。一部の態様では、この細胞は、イソペンテニル−ジホスフェートδ−イソメラーゼ(IDI)のポリペプチドをコードしている核酸を更に1種以上含む。本明細書に記載の任意の細胞の他の態様では、細胞は1−デオキシキシルロース(Deoxyxlulose)−5−リン酸合成酵素(DXS)ポリペプチドを更に含む。他の態様では、この(b)の、DXSポリペプチドをコードしている1種以上の核酸は、DXSポリペプチドをコードしている異種核酸である。更に別の態様では、この(b)の、DXSポリペプチドをコードしている1種以上の核酸は、DXSポリペプチドをコードしている内在性核酸のコピーである。本明細書に記載の任意の細胞の他の態様では、1種以上の異種核酸は、誘導型プロモーター又は常時発現型プロモーターの下に配置される。他の態様では、1つ以上の異種核酸は、マルチコピープラスミドにクローン化されている。他の態様では、1つ以上の異種核酸は、細胞の染色体に組み込まれる。
更に他の態様では、細胞は細菌、藻類、真菌、又は酵母細胞である。一態様では、細胞は、細菌細胞である。他の態様では、細菌細胞は、グラム陽性細菌細胞又はグラム陰性細菌細胞である。一部の態様では、細菌細胞は、大腸菌(E.coli)、パントエア・シトレア(P. citrea)、バチルス・スブチリス(B. subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)、バチルス・レンタス(B. lentus)、バチルス・ブレビス(B. brevis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィルス(B. alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、バチルス・クラウシィ(B. clausii)、バチルス・ハロドュランス(B. halodurans)、バチルス・メガテリウム(B. megaterium)、バチルス・コアギュランス(B. coagulans)、バチルス・サーキュランス(B. circulans)、バチルス・ロータス(B. lautus)、バチルス・チューリンゲンシス(B. thuringiensis)、ストレプトマイセス・アルバス(S. albus)、ストレプトミセス・リビダンス(S. lividans)、ストレプトマイセス・セリカラー(S. coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(S. griseus)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、コリネバクテリウム(Corynebacteria sp.)、及びシュードモナス・アルカリゲネス(P. alcaligenes)細胞からなる群から選択される。一態様では、細菌細胞は大腸菌(E. coli)である。他の態様では、細胞は藻類細胞である。更に別の態様では、藻類細胞は緑藻類、紅藻類、灰色藻類、クロララクニオン藻類、ミドリムシ類、クロミスタ類、又は渦鞭毛藻類からなる群から選択される。他の態様では、細胞は真菌細胞である。一部の態様では、真菌細胞は糸状菌である。他の態様では、細胞は酵母細胞である。一態様では、酵母細胞は、サッカロマイセス属(Saccharomyces sp.)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces sp.)、ピキア属(Pichia sp.)、又はカンジダ属(Candida sp.)からなる群から選択される。他の態様では、酵母細胞はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
本明細書では、本明細書で開示されるいずれかの細胞を含む組成物が提供される。
本明細書では、(a)イソプレン合成に好適な条件下で、本明細書に記載のいずれかの組換え細胞を培養する工程、並びに(b)イソプレンの産生工程を含むイソプレン産生方法も提供される。一部の態様では、方法は、この組換え細胞により産生されたイソプレンを回収する工程を更に含む。
本明細書では、イソプレン産生方法であって、(a)イソプレンを産生することのできる組換え細胞を培養する工程であって、この細胞が、低減された機能活性を有するispA遺伝子と、(i)イソプレン合成酵素ポリペプチド及び(ii)メバロン酸(MVA)経路の1種以上のポリペプチドをコードしている、1種以上の核酸とを含み、ここで、イソプレン合成酵素ポリペプチドは異種核酸によりコードされ、好適な培地で組換え細胞を培養することにより、このポリペプチドの産生及びイソプレンの合成が提供される、培養工程、並びに(b)イソプレンの産生工程を含む、方法が提供される。一部の態様では、方法は、この組換え細胞により産生されたイソプレンを回収する工程を更に含む。本明細書に記載の方法の他の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、植物のイソプレン合成酵素ポリペプチド又はこれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、クズ属(Pueraria)又はハコヤナギ属(Populus)、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)xヤマナラシ(Populus tremula)などの交雑種、又はこれらの変異体由来のポリペプチドである。他の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、プエラリア・モンタナ(Pueraria montana)又はプエラリア・ロバタ(Pueraria lobata)、アメリカヤマナラシ(Populus tremuloides)、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)、セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)、コットンウッド(Populus trichocarpa)、又はこれらの変異体からなる群から選択される。更に他の態様では、植物のイソプレン合成酵素ポリペプチドはクズ(kudzu)イソプレン合成酵素ポリペプチド又はこれらの変異体である。更に他の態様では、植物のイソプレン合成酵素ポリペプチドはユーカリプタス(Eucalyptus)イソプレン合成酵素ポリペプチド又はこれらの変異体である。本明細書に記載の任意の方法の一部の態様では、この(b)の、MVA経路のポリペプチドの1種以上をコードしている1種以上の核酸は、異種核酸である。一部の態様では、この細胞は、MVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸は、上流MVA経路に由来するものであり、上流MVA経路の核酸は、AA−CoAチオラーゼ又はアセトアセチル−CoA合成酵素、HMG−CoA合成酵素及びHMG−CoAレダクターゼの核酸からなる群から選択される。一部の態様では、この細胞が含む、MVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸は、下流MVA経路に由来するものであり、下流MVA経路の核酸は、MVK、PMK及びMVDの核酸からなる群から選択される。一部の態様では、この細胞は、完全なMVA経路の、MVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸を含む。一部の態様では、この細胞は、イソペンテニル−ジホスフェートδ−イソメラーゼ(IDI)ポリペプチドをコードしている核酸を更に1種以上含む。本明細書に記載の任意の細胞の他の態様では、細胞は1−デオキシキシルロース(Deoxyxlulose)−5−リン酸合成酵素(DXS)ポリペプチドを更に含む。他の態様では、この(b)の、DXSポリペプチドをコードしている1種以上の核酸は、DXSポリペプチドをコードしている異種核酸である。更に別の態様では、この(b)の、DXSポリペプチドをコードしている1種以上の核酸は、DXSポリペプチドをコードしている内在性核酸のコピーである。
CMP882及びCMP884の発酵中のメバロン酸供給濃度を示すグラフである。 株CMP882及びCMP884の発酵中の培地へのメバロン酸の蓄積を示すグラフである。 CMP882及びCMP884の発酵中のファルネシルピロリン酸(FPP)濃度を示すグラフである。 発酵中のCMP882及びCMP884の細胞生存率を示すグラフである。 株CMP882及びCMP884の発酵中の呼吸速度(CER)を示すグラフである。 発酵中のMVA経路株(CMP457)におけるyddV発現を野生型対照株(MCM1020)と比較して示すグラフである。 株CMP457及びMCM1020の発酵中の呼吸速度(CER)を示すグラフである。 遺伝子操作した様々なイソプレン産生株の増殖曲線を示す(内容を重複させた培養2つの平均)。 遺伝子操作した様々なイソプレン産生株の比産生性(任意単位)を示すグラフである(内容を重複させた培養2つの平均)。 IspA合成遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号10)である。 pMCM1535のヌクレオチド配列(配列番号11)である。 pMCM1535のプラスミドコンストラクトである。 トリファルネシル二リン酸合成酵素、A116W変異体のヌクレオチド配列(配列番号12)である。 トリファルネシル二リン酸合成酵素、N144’W変異体のヌクレオチド配列(配列番号13)である。 15L発酵において、yddV−ispA株CMP1082(黒四角)により得られる、グルコースに対するイソプレン収率を、対照株CMP1043(黒三角)と比較して経時的に示すグラフである。 15L発酵において、yddV−ispA株CMP1082(黒四角及び白四角)により得られる、イソプレン力価を、対照株CMP1043(黒三角)と比較して経時的に示すグラフである。 15L発酵において、yddV−ispA株CMP1082(黒四角)により得られる、細胞産生性指数(CPI)を、対照株CMP1043(黒三角)と比較して経時的に示すグラフである。 15L発酵において、yddV−ispA株CMP1082(黒四角)により得られる、容積産生量を、対照株CMP1043(黒三角)と比較して経時的に示すグラフである。 15L発酵において、yddV−ispA株CMP1082(黒四角)により得られる、比産生量を、対照株CMP1043(黒三角)と比較して経時的に示すグラフである。 大腸菌(E. coli)(配列番号14)において発現させるためにコドン最適化したhrcAの対立遺伝子のヌクレオチド配列を示す。 各15L規模での発酵により、経時的にグルコースに対して得られるイソプレン収率を示す。CMP1082(pgl+)は白三角により示し、CMP1136(pgl−)は黒四角により示す。 各15L規模での発酵により得られた、グルコースに対するイソプレンの瞬間的な収率を経時的に示す。CMP1082(pgl+)は白三角により示し、CMP1136(pgl−)は黒四角により示す。 各15L規模での発酵により得られた、細胞産生性指数(CPI)を経時的に示す。CMP1082(pgl+)は白三角により示し、CMP1136(pgl−)は黒四角により示す。 各15L規模での発酵により得られた、容積産生量を経時的に示す。CMP1082(pgl+)は白三角により示し、CMP1136(pgl−)は黒四角により示す。 各15L規模での発酵により得られた、比産生量を経時的に示す。CMP1082(pgl+)は白三角により示し、CMP1136(pgl−)は黒四角により示す。 各15L規模での発酵により、経時的にグルコースに対して得られるイソプレン収率を示す。エンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)又はエンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)(それぞれ三角形及び四角形)を使用して実施したすべての試験では、グルコースに対するイソプレン収率(%)は、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)の上流経路の酵素を使用して実施した2試験(白ひし形及び黒ひし形)よりも高かった。グルコースに対する収率(%)は、総イソプレン量(t)/[(供給重量(0)−供給重量(t)+83.5)0.59)]として算出した。式中、0.59はグルコース供給溶液中のグルコースの重量%であり、83.5は、t=0の時点で発酵容器にバッチ供給(feed batched)したグラム重量である。各供給量は、独立して重量%として測定した。 各15L規模での発酵により得られた、容積産生量を経時的に示す。エンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)又はエンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)(それぞれ三角形及び四角形)を使用して実施したすべての試験では、総容積産生量は、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)の上流経路の酵素を使用して実施した2試験(白ひし形及び黒ひし形)よりも高かった。容積産生量は、次式を使用して算出した:容積産生量(g/L/hr)=[Σ(ER(t)/100068.117)]/[t−t]。式中、総和はt〜tである。タンクのターンアラウンド・タイム(turnaround time)は係数に含めなかった。 各15L規模での発酵により得られた、比産生量を経時的に示す。エンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)又はエンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)(それぞれ三角形及び四角形)を使用して実施したすべての試験では、最大比産生量は、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)の)上流経路の酵素を使用して実施した2試験(白ひし形及び黒ひし形)よりも高かった。比産生量は、次式を使用して算出した:比産生量(mg/L/hr/OD)=HgER68.117g/mol/OD。HgERはイソプレンの放出速度(Evolution Rate)(mmol/L/hr)である。OD=吸光度=550nmでの吸光度水への希釈倍率。 特定の株におけるIspA濃度を示すグラフである。 各15L規模での発酵により得られた、グルコースに対するイソプレンの収率を経時的に示す。RBS部位の改変された株、すなわちCMP1286(RBS9 yddV)、CMP1284(RBS3 yddV)、及びCMP1275(RBS1/3 yddV)(白丸、白四角、及び白三角それぞれ)により得られたグルコースに対する累積イソプレン収率(%)は、対照株(DW719、実施番号20120526及び20120565、それぞれ黒四角及び黒ひし形)と類似していた。グルコースに対して得られる収率(%)=総イソプレン(t)/[(供給重量(0)−供給重量(t)+83.5)0.59)]として算出される。式中、0.59はグルコース供給溶液中のグルコースの割合(重量%)であり、及び83.5はt=0の時点で発酵槽に供給したバッチのグラム重量である。各供給量は、独立して重量%として測定した。 各15L規模での発酵により得られた、グルコースに対するイソプレンの瞬間的な収率を経時的に示す。RBS部位の改変された株、すなわちCMP1286(RBS9 yddV)、CMP1284(RBS3 yddV)、及びCMP1275(RBS1/3 yddV)(白丸、白四角、及び白三角それぞれ)により得られた、同様の、グルコースに対する最大瞬間イソプレン収率(%)は、対照株(DW719、実施番号20120526及び20120565、それぞれ黒四角及び黒ひし形)と類似していた。すべての改変株で、培養の早期に、より高い瞬間収率が得られ、培養の終了時には株CMP1284が最もロバストな性能を有した(56〜64時間EFT時点)。イソプレン瞬間収率(g/g%)は産生されたイソプレン量として算出した。 (t−t)/消費されたグルコース量(t−t100 各15L規模での発酵により得られた、容積生産量を経時的に示す。RBS部位の改変された株、すなわちCMP1286(RBS9 yddV)、CMP1284(RBS3 yddV)、及びCMP1275(RBS1/3 yddV)(白丸、白四角、及び白三角それぞれ)により得られたイソプレンの容積産生量は、対照株(DW719、実施番号20120526及び20120565、それぞれ黒四角及び黒ひし形)と類似していた。容積生産量は、次式を使用して算出した:容積生産量(g/L/hr)=[Σ(HGER(t)/100068.117)]/[t−t]。式中、総和はt〜tである。タンクのターンアラウンド・タイム(turnaround time)は係数に含めなかった。 各15L規模での発酵により得られた、細胞産生性指数(CPI)を経時的に示すグラフである。RBS部位の改変された株、すなわちCMP1286(RBS9 yddV)、CMP1284(RBS3 yddV)、及びCMP1275(RBS1/3 yddV)(白丸、白四角、及び白三角それぞれ)により得られたCPIは、対照株(DW719、実施番号20120526及び20120565、それぞれ黒四角及び黒ひし形)と類似していた。細胞産生性指数(CPI)は、次式を使用して算出した:CPI=イソプレン総重量(g)/細胞の総乾燥重量。 各15L規模での発酵により得られた、比生産量を経時的に示す。RBS部位の改変された株、すなわちCMP1286(RBS9 yddV)、CMP1284(RBS3 yddV)、及びCMP1275(RBS1/3 yddV)(白丸、白四角、及び白三角それぞれ)により得られたイソプレンの比産生量は、対照株(DW719、実施番号20120526及び20120565、それぞれ黒四角及び黒ひし形)と類似していた。比産生量は、次式を使用して算出した:比産生量(mg/L/hr/OD)=HgER68.117g/mol/OD。HgERはイソプレンの放出速度(Evolution Rate)(mmol/L/hr)である。OD=吸光度=550nmでの吸光度水への希釈倍率。 発酵開始から32及び44時間後に測定されたFPP濃度を示すグラフである。 発酵開始から32及び44時間後に測定されたGPP濃度を示すグラフである。 発酵開始から32及び44時間後に測定されたDMAPP濃度を示すグラフである。 発酵開始から32及び44時間後に測定されたIPP濃度を示すグラフである。 pCHL426のプラスミドコンストラクトである。 pCHL426のヌクレオチド配列(配列番号104)である。 pCHL427のプラスミドコンストラクトである。 pCHL427のヌクレオチド配列(配列番号105)である。 常時発現型イソプレン合成酵素変異体を含む宿主細胞の増殖を、誘導型イソプレン合成酵素変異体を含む宿主細胞と比較して示すグラフである。 常時発現型イソプレン合成酵素変異体を含む宿主細胞のイソプレン比産生性を、誘導型イソプレン合成酵素変異体を含む宿主細胞と比較して示すグラフである。
本明細書で提供される発明は、とりわけ、発酵時の正確な期間中に、ispA遺伝子の発現又は機能活性が下方調節されるよう遺伝子操作を施した組換え細胞においてイソプレンを産生するための組成物及び方法を開示する。本発明は、発酵時の組換え細胞のispA遺伝子の発現を低減させることで、ispA遺伝子の機能活性を低減させていない細胞と比較して高濃度のイソプレン産生が得られるという発見に基づくものである。理論に束縛されるものではないが、ispA遺伝子の発現及び/又は機能活性を低減させることで高分子量イソプレノイド分子の産生及び蓄積が低減され、これによりイソプレン合成に利用可能な炭素量が増大し、並びに細胞生存率が向上すると考えられる。しかしながら、ispA遺伝子は、細菌及びその他の微生物のロバストな増殖に必須である酵素を産生することから、遺伝子ノックアウトなどによりこの遺伝子をすべて除去することはイソプレン収率の向上に現実的な選択肢ではなく、遺伝子の完全な除去により細胞増殖の障害(Fukisaki et al.,2005,J.Biochem.,137(3):395〜400)又は細胞死(www.genome.wisc.edu/resources/essential.htm;Baba et al.,2006,Mol.Syst.Biol.,2006.0008)のいずれかが生じることが報告されている。本発明者らは、イソプレン産生(例えば、発酵の対数増殖期後)中のispA遺伝子の発現及び/又は機能活性を特異的及び一時的に正確に低下させることで、組換え細胞による高イソプレン収率、高力価、高細胞産生性、高容積産生量、高比産生性、及び高細胞生存率が得られるという発見に基づき、この技術的課題を解決した。
一般的技術
本発明の実施においては、別途記載のない限り、当業者の技能の範囲内に含まれる従来の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の技術を用いる。このような技術は、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第3版(Sambrook et al.、2001年);「オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)」(M.J.Gait,ed.、1984年);「動物細胞培養法:実践的アプローチ(Animal Cell Culture: A practical approach)、第3版(J.R.Masters,ed.,2000年);「酵素学的手法(Methods in Enzymology)」(Academic Press,Inc.);「分子生物学最新プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」(F.M.Ausubel et al.,編.、1987年、周期的に改訂);「PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR: The Polymerase Chain Reaction)」(Mullis et al.,編.、1994年)、Singleton et al.、「微生物学及び分子生物学辞典(Dictionary of Microbiology and Molecular Biology)第3版」J.Wiley & Sons(New York,N.Y.2006年)、並びに「マーチ最新有機化学反応、機序及び構造(March's Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure)第6版、John Wiley & Sons(New York,N.Y.2007年)といった文献中に十分に説明されており、これらの文献は、当業者に対し、本開示に使用される多くの用語について一般的な指針を提供する。
用語の定義
用語「ispA」は、任意の生物においてイソペンテニルジホスフェート(IPP)と3,3−ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)又はゲラニル二リン酸(GPP)の縮合を触媒してFPPを生成し得る、任意のゲラニルトランスフェラーゼ又はファルネシル二リン酸(FPP)合成酵素酵素又はプレニルトランスフェラーゼファミリーの任意の酵素を意味し得る。一部の実施形態では、ispAはispA遺伝子によりコードされる。
用語「イソプレン」は、2−メチル−1,3−ブタジエン(CAS# 78−79−5)を指す。DMAPPからピロリン酸を除去することで、揮発性のC5炭化水素を、直接的に及び最終的に生成することができる。IPP分子をDMAPP分子に結合又は重合させることは包含しない場合がある。用語「イソプレン」は、概して、本明細書に別途記載のない限り、産生方法を限定されることを意図しない。
本明細書で使用するとき、用語「ポリペプチド」には、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド断片、及び融合ポリペプチドが含まれる。
本明細書で使用するとき、「単離ポリペプチド」は、2、5、10、20、又は50個以上の異なるポリペプチドのライブラリなどといった、ポリペプチドのライブラリの一部を意味するものではなく、天然に生じる少なくとも1つの成分から分離されたポリペプチドを意味する。例えば、ポリペプチドをコードしている組み換え核酸を発現させることで単離ポリペプチドを得ることができる。
「異種ポリペプチド」は、宿主細胞と異なる生物、種、又は株由来の核酸配列によりコードされるポリペプチドを意味する。一部の実施形態では、異種ポリペプチドは、同様の宿主細胞に天然に見られる野生型ポリペプチドと同一ではない。
本明細書で使用するとき、「核酸」は、共有結合により単鎖又は二本鎖のいずれかの形態で連結している、2つ以上のデオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドを指す。
「組換え核酸」とは、対象とする核酸が由来する生物において自然に存在するゲノムにおいて、対象とする核酸に隣接する1つ以上の核酸(例えば遺伝子)を含まない、対象とする核酸のことを意味する。したがって、この用語には、例えば、ベクターに組み込まれた、プラスミド又はウィルスに自己複製的に組み込まれた、原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた、又は他の配列とは独立して別個の分子(例えば、cDNA、ゲノムDNA断片、又はPCRにより産生された若しくは制限エンドヌクレアーゼによる消化により産生されたcDNA断片)として存在する、組み換えDNAが包含される。
「異種核酸」は、宿主細胞と異なる生物、種又は株由来の核酸配列を意味する。一部の実施形態では、異種核酸は、同様の宿主細胞に天然に見られる野生型核酸と同一ではない。
本明細書において使用するところの「発現調節配列」とは、対象とする核酸の転写を指示する核酸配列のことを意味する。発現制御配列は、常時発現型若しくは誘導型のプロモーター、又はエンハンサーなどのプロモーターであり得る。発現制御配列は「ネイティブ」な配列又は異種の配列であり得る。ネイティブな発現制御配列は、遺伝子を発現させる生物、種又は株と同様の生物、種又は株に由来する配列である。異種の発現制御配列は、遺伝子を発現させる生物、種又は株とは異なる生物、種又は株に由来する配列である。「誘導型プロモーター」は、環境下、又は発育制限下で活性であるプロモーターである。
「調節可能に連結された」は、核酸の発現制御配列(プロモーターなど)及び第2の核酸配列間の機能的連結を意味し、発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を指示する。
本明細書で使用するとき、用語「最少培地(minimal medium又はminimal media)」は、細胞の増殖に必要とされる最低限の栄養素を含有し、概してアミノ酸の存在していない増殖培地を指す。最少培地は、典型的には:(1)細菌を増殖させるための炭素源;(2)細菌種及び増殖条件によって異なる様々な塩;並びに(3)水;を含有する。炭素源は、グルコースなどの単糖から、本明細書で以下により詳細に記載されるような、他のバイオマスのより複雑な加水分解物、例えば、酵母エキスなどといった多様なものであり得る。塩は、概してマグネシウム、窒素、リン及びイオウなどの必須元素を提供し、細胞がタンパク質及び核酸を合成できるようにする。また、最少培地には、特定のプラスミド及び同様物を維持すべく選別するために、抗菌剤などの選択剤を添加することもできる。例えば、微生物が、例えばアンピシリン又はテトラサイクリンなどの特定の抗菌剤に耐性である場合、耐性を欠く細胞の増殖を阻害する目的で培地に抗菌剤を添加することができる。培地には、所望される生理学的又は生化学的特性について選別するのに必要とされる、例えば特定のアミノ酸などといった他の化合物を添加することができる。
本明細書で使用するとき、用語「イソプレノイド」は、2つ以上の炭化水素単位からなり、各単位は、特定の様式で配置された5つの炭素原子からなる、天然に生じる有機化合物類の、広範にわたるかつ多様な部類を指す。イソプレノイド類としては、限定するものではないが、テルペノイド(例えば、ヘミテルペノイド、モノテルペノイド、セスキテルペノイド、ジテルペノイド、セステルテルペノイド、トリテルペノイド、テトラテルペノイド、及び/又はポリテルペノイド)が挙げられる。本明細書で使用するとき、「イソプレン」は、明らかに「イソプレノイド」の定義から除外される。
本明細書で使用するとき、用語「質量収率」は、組み換え(例えば、細菌)細胞により産生される産生物の質量を、組み換え細胞により消費されたグルコースの質量より除算し、100を乗じたものを指す。
「比産生性」は、細菌細胞により産生される産生物の質量を、産生物の産生にかかった時間、細胞密度及び培養体積により除したものを意味する。
「力価」は、組み換え(例えば、細菌)細胞により産生される産生物の質量を、培養体積により除したものを意味する。
本明細書で使用するとき、用語「細胞産生性指数(cell productivity index)(CPI)」は、組み換え(例えば、細菌)細胞により産生される産生物の質量を、培養により産生された組み換え細胞の質量により除したものを指す。
本明細書において別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同様の意味を持つ。
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈に明示されない限り、対象物が複数ある場合をも包含する。
本明細書を通じて与えられるあらゆる最大数の限定は、あらゆるより小さい数値の限定を、あたかもそのようなより小さい数値の限定が明確に書かれているかのように包含するものと理解されることが意図される。本明細書の全体を通じて与えられるすべての最小の数値的限定には、これよりも大きいすべての数値的限定が、あたかもこうしたより大きい数値的限定が本明細書に明確に記載されているものと同様に含まれる。本明細書の全体を通じて与えられるすべての数値的範囲には、これよりも狭い数値的範囲が、あたかもこうしたより狭い数値的範囲がすべて本明細書に明確に記載されているものと同様に含まれる。
イソプレン産生を増大させ得る組み換え微生物
イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)は、多様な用途で使用される重要な有機化合物である。例えば、イソプレンは、合成ゴムの製造時など、数多くの化学組成物及びポリマーの合成時に、中間体又は出発物質として使用される。イソプレンはまた、多くの植物及び動物により天然に合成される重要な生体物質でもある。メバロン酸依存性生合成経路(MVA経路)は、全ての高等真核生物及び特定種の細菌に存在する、重要な代謝経路である。メバロン酸経路は、タンパク質のプレニル化、細胞膜の維持、タンパク質の固定及びN−グリコシル化などの、多様な工程において使用される分子の産生に重要であり、イソプレノイド及びイソプレンのいずれもの生合成時の主成分とし機能するジメチルアリル二リン酸(DMAPP)及びイソペンテニルジホスフェート(IPP)の主要な供給源を提供する。
イソペンテニルtRNA、イソプレノイドキノン、及び糖キャリア脂質などのイソプレノイド化合物は、大腸菌(E. coli)などの多くの微生物による通常の代謝産物の一部として合成される(Fujisaki,et al.(1989)J.Bacteriol.171:5654〜5658)。イソプレノイド化合物の産生に関する合成経路における分岐点は、IPPをDMAPP又はゲラニル二リン酸(GPP)と縮合させてFPPを生成する酵素ファルネシル二リン酸(FPP)合成酵素により触媒される反応を包含する。FPP合成酵素(EC:2.5.1.10)は、酵素のトランスフェラーゼファミリー、具体的には、代謝反応においてアリール又はメチル基以外のアルキル基を移動させることのできる酵素ファミリーに属する。FPP合成酵素に対し一般的に使用されるその他の名称としては、ゲラニルトランスフェラーゼ、ゲラニルトランスフェラーゼI、プレニルトランスフェラーゼ、ファルネシルピロリン酸シンセターゼ、及びファルネシルピロホスフェートシンセターゼが挙げられる。
上記のように、DMAPP及びIPPは、イソプレノイド類及びイソプレンのいずれもの生合成に取り込まれる初期の炭素源を提供する。イソプレン合成酵素は、イソプレン産生の触媒としてこれらの分子を使用するのに対し、FPP合成酵素はこれらの分子をGPP及びFPPを産生するのに利用し、続いてGPP及びFPPは、より高分子量のイソプレノイド分子の合成に使用される。したがって、理論に束縛されるものではないが、イソプレンを産生するよう遺伝子操作された組換え細胞に関しては、FPP合成酵素の酵素活性により、イソプレン合成酵素によるイソプレンへの変換に利用可能なDMAPP及びIPP分子の生成量が低下し、イソプレン産生に関係する炭素利用能が低下することになると考えられる。更に、本来であればイソプレノイドを蓄積しやすい組換え細胞又は細胞におけるイソプレノイド産生の向上は、形態の貧弱さ並びに細胞生存率の低下に関連する。
大腸菌(E. coli)などの微生物において、FPP合成酵素はispA遺伝子によりコードされる(Fukisaki,et al.,(1990),J.Biochem.108:995〜1000)。ispA遺伝子は、2つの他の遺伝子:デオキシキシルロース−5−リン酸合成酵素(DXS)をコードするdxs遺伝子、並びにエキソヌクレアーゼVII小サブユニットを産生するxseB遺伝子(Lois et al.,(March 3,1998)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95(5):2105〜2110)のオペロン中に位置する。ispA遺伝子を完全に除去することにより、細胞の増殖速度は野生型株と比較して低くなり(Fukisaki et al.,2005,J.Biochem.,137(3):395〜400)、あるいは細胞致死が生じる(www.genome.wisc.edu/resources/essential.htm;Baba et al.,2006,Mol.Syst.Biol.,2006.0008)ことから、ispA遺伝子の発現は、微生物のロバストな増殖に必要とされるものと報告されている。
イソプレンを産生するよう遺伝子操作を施した組換え細胞は、培養時に2期、すなわち1)組換え細胞が対数的に細胞分裂する「増殖期」、並びに2)細胞が炭素源(例えば、グルコース)を利用してイソプレンを産生する「発酵期」を示す。したがって、一部の実施形態では、組換え細胞は、低減された機能活性を有するispAを含む。一態様では、ispAの機能活性は、細胞培養の発酵期中にのみ低減される。他の態様では、ispAの機能活性は、細胞培養時の対数増殖期中にのみ低減される。一部の態様では、ispAの機能活性は、細胞培養の増殖及び発酵期のいずれもにおいて低減される。更に別の態様では、ispAの機能活性は、細胞培養の増殖及び発酵期のいずれもにおいて低減されるものの、発酵期における低減のほうが大きい。
ispAの機能活性の低減には任意の方法を使用することができ、限定するものではないが、ispA遺伝子を欠失させること、ispA遺伝子の発現を低減させること、又はispA遺伝子によりコードされるポリペプチドの活性又は利用能を低減させることが挙げられる。他の態様では、本発明の組換え細胞は、低減された機能活性を有するispA及びイソプレンの生合成に関与し宿主微生物におけるイソプレン合成を可能にする遺伝子群のうちの1種以上を含む。他の態様では、本発明の組換え宿主細胞は、宿主細胞における発現のためコドンを最適化されている組換えispA遺伝子を含む。一部の態様では、コドンを最適化したispA遺伝子が宿主細胞のゲノムに組み込まれる。他の態様では、ispA遺伝子は、染色体外DNA(プラスミドなど)の断片上で発現される。他の態様では、コドンを最適化したispA遺伝子を、宿主細胞のゲノムのyhfS座に組み込み、内在性ispA遺伝子を欠失させる。
一部の態様では、本発明の組換え宿主細胞は、内因的にコードされているFPP合成酵素によりDMAPPに対し示されるKm値と比較して、DMAPPに対し向上したKm値を有するFPP合成酵素(例えば、トリFPP合成酵素)をコードしている組換えispA遺伝子を含む。このような高Km値のFPP合成酵素は、これまでに、例えば、Fernandez et al.,Biochemistry,2000,39(50):15316〜21において記載されている。他の態様では、本発明の組換え宿主細胞は、最適温度の異なるFPP合成酵素(限定するものではないが、Koyama et al.,1993,J.Biochem.,113(3):355〜363に記載の好熱性FPP合成酵素など)、好冷性FPP合成酵素(Nichols et al.,2004,J.Bact.,186:8508〜8515に記載のFPP合成酵素など。この非特許文献は本明細書に参照によりその全体が組み込まれる。)、又は海洋原核生物由来のFPP合成酵素(Ranzer et al.,2009,Mar.Biotechnol,11:62〜73に記載のFPP合成酵素など)を含み得る。一部の態様では、本明細書に記載のいずれかの組換え細胞において、内在性の宿主細胞ispA遺伝子は、本明細書に記載のFPP合成酵素をコードしている別のいずれかの遺伝子により置き換えられる。他の態様では、組換えispA遺伝子は、誘導型又は常時発現型プロモーターの調節下に配置される。他の態様では、組換えispA遺伝子は多コピープラスミドで発現される。更に別の態様では、組換えispA遺伝子が宿主細胞の染色体に組み込まれる。
一部の態様では、本発明の組換え宿主細胞は、弱いプロモーター(すなわち、ispA遺伝子の発現を駆動するプロモーターであって、発現量が、内在性又は野生型ispAプロモーターにより観察されるものよりも少ないプロモーター)の調節下にispA遺伝子を含む。一部の態様では、ispA遺伝子の発現を調節するプロモーターは、細胞培養時の対数増殖期中に、発酵期中のispA遺伝子の発現と比較して高レベルでispA遺伝子を発現する。
ispAの機能活性の低減
一部の態様では、本明細書に記載の組換え細胞は、低減された機能活性を有するispAを含む。本文脈において、「機能活性の低減」は、ispAポリペプチド(例えば、ispA遺伝子によりコードされるポリペプチド)がIPP及びDMAPPをGPP及び/又はFPP(すなわち、以降のイソプレノイド類の産生に必要とされる分子)に変換する能力に関する。一部の態様では、本明細書で開示される任意の組換え細胞にはispA遺伝子を含ませることができ、ispAの機能活性は、低減された機能活性を有するispAを含まない細胞におけるGPP及び/又はFPPの分子濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を細胞に産生させる。他の態様では、イソプレンを産生するために遺伝子操作を施した組換え細胞は、イソプレン合成酵素活性を有するポリペプチドをコードしている1種以上の異種核酸、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸、並びに低減された機能活性を有するispAを含むものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むものの低減された機能活性を有するispAは含まない組換え細胞におけるGPP及び/又はFPPの分子濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%未満並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、GPP及び/又はFPP分子を産生する。
他の態様では、本明細書で開示される任意の組換え細胞はispAを含んでよく、ispAの機能活性は、細胞が、低減された機能活性を有するispAを含まない細胞におけるイソプレノイド類濃度と比較して約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度でイソプレノイド類を産生するよう、低減されている。他の態様では、本明細書で開示される任意の組換え細胞はispAを含んでよく、ispA遺伝子の機能活性は、細胞が、低減された機能活性を有するispAを含まない細胞の生存能と比較して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示すよう、低減されている。他の態様では、イソプレンを産生するよう遺伝子操作を施した組換え細胞はMVA経路の1種以上の構成酵素類及び低減された機能活性を有するispAをコードしている1種以上の異種核酸を含むものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むものの低減された機能活性を有するispAは含まない細胞の生存能と比較して約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示し得る。本明細書で使用するとき、「向上した生存能」は、発酵過程中の、死細胞、瀕死の細胞、又はさもなければ形態異常を示している細胞の出現が低減されていることを意味する。形態異常としては、限定するものではないが、伸長した細胞、及び/又は死細胞若しくは瀕死の細胞由来の細胞残渣が挙げられる。一部の実施形態では、「向上した生存能」は、当該技術分野において知られる細胞生物学的、分子生物学的、又は生化学的手法(例えば、限定するものではないが、蛍光標示式細胞分取(FACS)又はDiBAC4(3)染色など)により生存しているものと判定される細胞数が大幅に増加していることを意味し得る。一部の態様では、ispAの機能活性は、発酵の最大イソプレン産生期中は低下している。他の態様では、ispAの機能活性は発酵の対数増殖期中には低下していない。
ispAの機能活性の低下を測定する方法は数多くあり、当業者に周知である。例えば、標準法を使用して、細胞全体から代謝産物を化学的に抽出し、質量分析法により同定を行うことにより、細胞における代謝産物(例えば、FPP及びGPP)の産生量を測定することができる。同様にして、標準法を使用して、顕微鏡観察により又は膜電位の測定により形態解析するなどして、ispAの機能活性を低減させた細胞の生存能を評価することができる。正常な膜電位をもつ細胞は生細胞であり、代謝活性をもつと仮定し、それに対し、膜電位をもたない細胞は死細胞であり、代謝活性をもたないと仮定する。
ispA遺伝子の発現の低減
一部の態様では、ispA遺伝子の機能活性は、ispA遺伝子の発現を低減させることにより低減される。この低減には、ispA遺伝子そのものの全て又は一部を欠失させること、あるいは本明細書に記載の又は当業者に知られる通りの任意の数の手法により発現を低減させることを包含し得る。一部の態様では、遺伝子組み換えにより細胞にプロモーターを組み込み、ispA遺伝子の発現を調節することもできる。一態様では、イソプレノイド化合物の蓄積が増加することから、ispA遺伝子の発現を駆動するプロモーターを抑制することができる。このようなプロモーターを導入してispAの発現を調節する場合、イソプレノイド経路への取り込みに対応する期間中にispAを抑制することができる。しかしながら、取り込みが低下する期間には、プロモーターは誘導されたまま維持されるため、ispAを発現できる。
自己調節型プロモーターによる発現の一時的な下方調節
一部の態様では、ispA遺伝子の発現は、自己調節型プロモーターの調節下にispA遺伝子を配置することにより低減される。特定の実施形態では、イソプレンを多量に産生するよう遺伝子操作を施した組換え細胞の発酵後期中にのみ抑制されるプロモーターを使用することにより、ispA遺伝子の機能活性を低減することができる。理論に束縛されるものではないが、このようなプロモーターは、発酵が進行するにつれイソプレノイド化合物の蓄積量が増加する期間中には、抑制されているものと予想される。したがって、これらのプロモーターの調節下にispA遺伝子を配置することにより、イソプレノイド経路への取り込み増加に対応する期間にispAの抑制が生じるよう一時的にispAの発現を調節することができる。しかしながら、発酵の対数増殖期中など、イソプレノイド経路への取り込みが低い期間では、プロモーターは誘導されたまま維持され、ispA遺伝子の発現が可能となる。この特徴的な活性プロファイルが、自己調節型ispA発現調節系を構成する。
したがって、一部の態様では、本明細書に記載のいずれかの組換え細胞には、低減された機能活性を有するispA遺伝子を含ませることができ、ispA遺伝子の機能活性は、自己調節型プロモーターの調節下にispA遺伝子を配置することにより低減される。一部の態様では、自己調節型プロモーターは、efeO、kpsC、kpsD、kpsD、kpsE、kpsF、kpsS、kpsU、nmpC、sodA、ybl129、ybl130、ybl131、yddV、及びydiUからなる群から選択される。一態様では、ispA遺伝子は、yddVプロモーターの調節下に配置される。他の態様では、内在性ispA遺伝子を組み換え細胞(例えば、組換え型大腸菌(E. coli)細胞)のゲノムから欠失させて、かつゲノム上の異なる遺伝子座に新しいispA遺伝子を組み込むことができる。一態様では、異種ispA遺伝子は、組み換え細胞(例えば、組換え型大腸菌(E. coli)細胞)のゲノム上のyhfS座に挿入される。異種ispA遺伝子は、欠失させた内在性のispA遺伝子と同一であっても、又は別の供給源由来のispA遺伝子であってもよい。他の態様では、自己調節型プロモーターの調節下の異種ispA遺伝子は染色体外で発現される。他の態様では、本発明の組換え宿主細胞は、宿主細胞における発現のためコドンを最適化されている組換えispA遺伝子を含む。一部の態様では、コドンを最適化したispA遺伝子が宿主細胞のゲノムに組み込まれる。他の態様では、コドンを最適化したispA遺伝子は、efeO、kpsC、kpsD、kpsD、kpsE、kpsF、kpsS、kpsU、nmpC、sodA、ybl129、ybl130、ybl131、yddV、及びydiUからなる群から選択される自己調節型プロモーターの調節下にある。一部の態様では、コドンを最適化したispA遺伝子は、yddVプロモーターの調節下にある。更に別の態様では、本明細書に記載の任意の自己調節型プロモーターは、コドン最適化したispA、微生物由来のispAによりコードされる酵素と比較して高Kmを含む酵素をコードしているispA対立遺伝子(例えば、トリispA対立遺伝子)、並びに内在性のispA対立遺伝子からなる群から選択されるispA遺伝子の発現を駆動し得る。
一部の態様では、自己調節型プロモーターの調節下でispA遺伝子を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、自己調節型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない細胞におけるGPP及び/又はFPP分子の濃度と比較して約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。他の態様では、イソプレンを産生するよう遺伝子操作を施した組換え細胞は、自己調節型プロモーターの調節下にMVA経路の1種以上の構成酵素類及びispA遺伝子をコードしている1種以上の異種核酸を含むものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むものの自己調節型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない組換え細胞におけるGPP及び/又はFPP分子の濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。一部の態様では、自己調節型プロモーターの調節下でispA遺伝子を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、自己調節型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない細胞におけるGPP及び/又はFPP分子の濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。他の態様では、自己調節型プロモーターの調節下でispA遺伝子を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、自己調節型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない細胞における生存能と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示す。他の態様では、イソプレンを産生するよう遺伝子操作を施した組換え細胞は、自己調節型プロモーターの調節下にMVA経路の1種以上の構成酵素類及びispA遺伝子をコードしている1種以上の異種核酸を含むものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むものの自己調節型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない細胞の生存能と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示し得る。
異種リプレッサータンパク質HrcAによる一時的な発現下方調節
ispAの発現を調節する代替法としては、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)の転写抑制因子HrcAを利用するものが挙げられる(Roberts et al.,1996,Journal of Bacteriology,178(7):1829〜1841;Susin et al.,2004,Journal of Bacteriology,186(20):6759〜6767)。HrcAをコードしている遺伝子は、大腸菌(E. coli)においては天然に見られず、HrcAにより認識されるCIRCEエレメントが大腸菌(E. coli)の遺伝子発現の管理に関与することを示す情報は知られていない。したがって、大腸菌(E. coli)のイソプレン産生系の、ispA発現を管理する制御配列内に、CIRCEエレメントを組み込むことにより、HrcAを介在させてispAを抑制することができる。厳密に調節される数多くの手段のうちの少なくとも1つにより発現が管理され得る大腸菌(E. coli)イソプレン産生宿主には、更に異種hrcA遺伝子を導入することができる。
したがって、一部の態様では、本明細書に記載のいずれかの組換え細胞には、低減された機能活性を有するispA遺伝子を含ませることができ、ここで、ispA遺伝子の機能活性は、hrcA遺伝子によりコードされるHrcAリプレッサータンパク質により低減され、ispA発現を管理する制御配列には遺伝子操作によりCIRCEエレメントが組み込まれる。一部の態様では、hrcA発現は、イソプレンを生成する大規模発酵間の細胞の転写プロファイルに関し特定された、対数増殖期に調節されるプロモーターにより調節される。一部の態様では、対数増殖期に調節されるプロモーターは、otsA、amiB、及びdeoCからなる群から選択される。
他の態様では、hrcA発現は、即時的栄養制限又は温度の変更などの誘導シグナルにより、発酵の望ましい緩慢な増殖期の間中活性化される、正に制御されたループにより調節され得る。この態様では、トランス活性化因子Tなどのトランス活性化因子ペプチドが、特定のシグナルを検知するプロモーターと機能上関連付けられる。誘導シグナルの導入により、シグナルを検知するプロモーターの活性が誘導され、これによりトランス活性化因子Tの発現が上方調節される。トランス活性化因子T遺伝子のコピーを、更にトランス活性化因子T依存型プロモーターと連結することにより、誘導シグナルの除去に応じ、正のフィードバックループが開始され、維持される。他の態様では、hrcA遺伝子を、少なくとも1つのトランス活性化因子T依存型プロモーターと連結させることで、正の制御ループが活性化された後にHrcAが期間中持続的に発現されるようになる。特定の態様では、トランス活性化因子T依存型プロモーターにより駆動されるトランス活性化因子Tの遺伝子は、hrcA遺伝子として同一のオペロン上に位置する。他の態様では、トランス活性化因子T依存型プロモーターにより駆動されるトランス活性化因子T遺伝子は、hrcA遺伝子を含有しない独立した遺伝子座に位置する。
一部の態様では、HrcAリプレッサータンパク質の調節下でispA遺伝子を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、HrcAリプレッサータンパク質の調節下にispA遺伝子を含まない細胞におけるこれらのGPP及び/又はFPP濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を細胞に産生させる。他の態様では、イソプレンを産生するよう遺伝子操作を施した組換え細胞は、HrcAリプレッサータンパク質の調節下にMVA経路の1種以上の構成酵素類及びispA遺伝子をコードしている1種以上の異種核酸を含むものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むもののHrcAリプレッサータンパク質の調節下にispA遺伝子を含まない組換え細胞におけるGPP及び/又はFPP濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。一部の態様では、HrcAリプレッサータンパク質の調節下でispA遺伝子を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、HrcAリプレッサータンパク質の調節下にispA遺伝子を含まない細胞におけるイソプレノイド類の濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。他の態様では、HrcAリプレッサータンパク質の調節下でispA遺伝子を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、HrcAリプレッサータンパク質の調節下にispA遺伝子を含まない細胞の生存能と比較して5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示す。他の態様では、イソプレンを産生するよう遺伝子操作を施した組換え細胞は、HrcAリプレッサータンパク質の調節下にMVA経路の1種以上の構成酵素類及びispA遺伝子をコードしている1種以上の異種核酸を含むものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むもののHrcAリプレッサータンパク質の調節下にispA遺伝子を含まない細胞の生存能と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示し得る。
キシロースによるispAの発現調節を介した一時的な発現の下方調節
炭素資源利用能により介在される遺伝子発現調節は、産生宿主(例えば、大腸菌(E. coli)産生宿主)内でispA遺伝子の発現を制御する際の別のスケーラブルな代替法である。このような方法により、バイオマスの迅速な置換えを可能にする健康的でロバストで高速な細胞増殖に必要とされる、比較的正常なレベル及び/又は十分なレベルのispA遺伝子の発現が提供され得る。加えて、FPP合成酵素活性が細胞生存率に有害であるものとして考えられる場合、このような方法により、グルコースにより支持されるイソプレン産生中にispAを限定的に発現する能力がもたらされ、結果として、グルコースから産生されるイソプレンの収率が低下する。
これらを踏まえ、一部の態様では、本明細書に記載のいずれかの組換え細胞は、低減された機能活性を有するispA遺伝子を含み得るものであり、ispA遺伝子の機能活性は、ispA遺伝子をキシロースにより制御されるプロモーターの調節下に配置することにより低減される。一部の態様では、組み換え細胞(組換え型大腸菌(E. coli)細胞など)におけるispA発現は、組み換え細胞内で、内在性xylA若しくはxylFプロモーターの直接調節下又はD−キシロースにより正の影響を受け、グルコースにより負の影響を受ける任意のプロモーターの調節下におかれる。これは、内在性ispA遺伝子を欠失させ、D−キシロース応答性プロモーターのxylA又はxylFのいずれかの調節下に異種ispAを置換することにより実施される。大腸菌(E. coli)の多様なxylA−xylFプロモーター、並びにD−キシロース及び転写活性化因子XylRを介する正の制御、及びそれらのグルコース及び代謝産物による負の制御がこれまでに報告されている(S.Song and C.Park,1997,J.Bacterial.,179(22):7025〜7032)。一部の態様では、ispA遺伝子の発現は、グルコースの非存在下でのキシロース利用能により正に管理され、並びにグルコースの存在により負に管理される。一部の態様では、キシロース誘導性のispA座は、組み換え細胞(組換え型大腸菌(E. coli)細胞など)の染色体内に存在するものの、あるいは、プラスミドなどの染色体外のヌクレオチド配列によりコードされてもよい。キシロースにより誘導することのできるispAコンストラクトの構築、並びにイソプレンを産生する大腸菌(E. coli)宿主へのコンストラクトの導入は、標準的な分子生物学的及び微生物学的手法を使用し実施することができる(J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.1989)。
一部の態様では、キシロース誘導型プロモーターの調節下でispA遺伝子を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、キシロース誘導型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない細胞におけるGPP及び/又はFPPの濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。他の態様では、イソプレンを産生するよう遺伝子操作を施した組換え細胞は、キシロース誘導型プロモーターの調節下にMVA経路の1種以上の構成酵素類及びispA遺伝子をコードしている1種以上の異種核酸を含むものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むもののキシロース誘導型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない組換え細胞におけるGPP及び/又はFPP分子の濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。一部の態様では、キシロース誘導型プロモーターの調節下でispA遺伝子を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、キシロース誘導型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない細胞におけるイソプレノイド類の濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。他の態様では、キシロース誘導型プロモーターの調節下でispA遺伝子を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、キシロース誘導型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない細胞における生存能と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示す。他の態様では、イソプレンを産生するよう遺伝子操作を施した組換え細胞は、キシロース誘導型プロモーターの調節下にMVA経路の1種以上の構成酵素類及びispA遺伝子をコードしている1種以上の異種核酸を含むものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むもののキシロース誘導型プロモーターの調節下にispA遺伝子を含まない細胞の生存能と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示し得る。
FPP合成酵素活性の低下
一部の態様では、ispA遺伝子の機能活性は、ispAタンパク質であるFPP合成酵素の活性を低減させることにより低減される。この低減は、IspAのmRNAの翻訳を阻害すること、又は本明細書に記載されるような任意の種類の方法によりFPP合成酵素そのものを分解させることを包含し得る。
翻訳により、ispAタンパク質をタンパク質分解性のタグと融合させて、タンパク質活性を低減させる。
本明細書に記載のいずれかの組換え細胞の一部の態様では、遺伝子操作により、DNA配列を、アミノ酸残基11個分のタンパク質タグをコードするispA遺伝子に組み込むことにより、FPP合成酵素をタンパク質分解の標的とする(Andersen et al.,1998,Appl Environ Microbiol.,64(6):2240〜2246)。タンパク質分解性のtmRNAタグは、次に宿主細胞における分解に際しFPP合成酵素を標的とし、したがってFPP合成酵素活性を低減させる。一部の態様では、タンパク質分解性のタグをFPP合成酵素タンパク質のC末端に融合させる。他の態様では、タンパク質分解性のタグをFPP合成酵素タンパク質のN末端に融合させる。
一部の態様では、タンパク質分解性のタグと融合させたFPP合成酵素タンパク質を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、タンパク質分解性タグと融合させたFPP合成酵素タンパク質を含まない細胞におけるGPP及び/又はFPP濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。他の態様では、組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含み、イソプレンを産生するよう遺伝子操作されており、タンパク質分解性タグと融合させたFPP合成酵素タンパク質を発現するものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むもののタンパク質分解性タグと融合させたFPP合成酵素タンパク質は含まない組換え細胞におけるGPP及び/又はFPPの分子濃度と比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を細胞に産生させる。一部の態様では、タンパク質分解性タグと融合させたFPP合成酵素タンパク質を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、タンパク質分解性タグと融合させたFPP合成酵素タンパク質を含まない細胞におけるイソプレノイド類の濃度と比較して約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度低減された濃度で、これらの分子を産生する。他の態様では、タンパク質分解性タグと融合させたFPP合成酵素タンパク質を発現する組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、タンパク質分解性タグと融合させたispAタンパク質を含まない細胞の生存能と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示す。他の態様では、組換え細胞(本明細書で開示される任意の組換え細胞など)は、タンパク質分解性タグと融合させたFPP合成酵素タンパク質を発現しており、MVA経路の1種以上の構成酵素類及びispA遺伝子をコードしている1種以上の異種核酸を含むものであり、MVA経路の1種以上の構成酵素類をコードしている1種以上の異種核酸を含むもののタンパク質分解性タグと融合させたFPP合成酵素タンパク質を含まない細胞の生存能と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度向上した生存能を示す。
アンチセンスmRNA及びリボソーム結合の変異を使用することによるispAタンパク質の発現の低減
一部の態様では、ispAのmRNAに対するアンチセンスmRNAを使用して、ispAのmRNAのispAタンパク質への翻訳を防ぎ、その結果として、ispAタンパク質の発現を低下させる。アンチセンス法は当業者に周知であり、酢酸などの分子の産生を低減させる際(Kim J.and Cha H.J.,2003,Biotech Bioeng.,83:841〜853)、又は遺伝子操作によりカタラーゼをノックアウトさせた表現型を作製する際(Chan E.et al.,2010,J.Exp.Microbiol Immunol.,14:127〜134)に大腸菌(E. coli)において使用されてきた。大腸菌(E. coli)のispA遺伝子を標的としたアンチセンスコンストラクトの設計は、Shao Y.et al.,2006,Nucleic Acids Res.,34:5660〜5669に報告される方法を使用し作製することができる。アンチセンスRNA分子は、対化した終端を使用し安定化することができる(Nakashima N.et al.,2006,Nucleic Acids Res.,34:e138)。一部の態様では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは約150bpである。アンチセンスmRNA処理による、ispAのmRNAの翻訳の低減は、限定するものではないが、酵素活性アッセイ、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、又はRT−PCRなどの当該技術分野において知られる任意の手法により測定することができる。
他の態様では、ispAタンパク質の発現は、ispAのmRNA分子に位置する1つ以上のリボソーム結合部位に1つ以上の変異を導入することにより低減される。リボソーム結合性に変異を導入することで、IspAのmRNAの翻訳が干渉され又は無効になり、ispAタンパク質の発現が低減する。ispAのmRNA分子上に配置される1つ以上のリボソーム結合部位に、1つ以上の変異を導入することによる、ispAのmRNAの翻訳の低減は、当該技術分野において知られる、限定するものではないが、酵素活性評価法又はウェスタンブロットなどの任意の手段により測定することができる。
特定のmRNA上のリボソーム結合部位(RBS)の配置は、当該技術分野において知られる最適化ソフトウェアを使用して同定することができる。例えば、RNAの熱力学的パラメーターを用いるRBS計算機の最適化ソフトウェアを、Vienna RNA Package v.1.8.4(world.wide.web.tbi.univie.ac.at/〜ivo/RNA/,Gruber et al.,(NAR,2008で入手可能)並びにRBS計算機用Vienna RNAモデルと組み合わせて使用することができる。このようなRBS計算機最適化ソフトウェアを使用して、タンパク質発現に対し予想される効果に関しRBSを同定することができる。例えば、標的タンパク質(例えば、ispA)の発現の低減をもたらすRBSは、RBS計算機最適化ソフトウェアを使用して同定することができる。
イソプレン合成酵素の核酸及びポリぺプチド
本発明の一部の態様では、本開示の組成物又は方法のいずれかに記載の組み換え細胞は、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている1種以上の核酸、又はイソプレン合成酵素活性を有するポリペプチドを更に含む。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは内在性ポリペプチドである。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている内在性核酸は、常時発現型プロモーターに調節可能なように連結される。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている内在性核酸は、誘導型プロモーターに調節可能なように連結される。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている内在性核酸は、高発現型プロモーターに調節可能なように連結される。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている内在性の核酸を1つ以上(例えば、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている内在性の核酸の2、3、又は4つ以上のコピー)を使用する。特定の態様では、野生型細胞と比べ、内在性イソプレン合成酵素経路のポリペプチドが過剰発現するよう細胞を遺伝子操作する。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている内在性核酸は、低発現型プロモーターに調節可能なように連結される。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、クズ属(Pueraria)又はハコヤナギ属(Populus)、又はウラジロハコヤナギ(Populus alba)xヤマナラシ(Populus tremula)などの交雑種由来のポリペプチドである。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドはユーカリプタス(Eucalyptus)に由来するものである。
一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは異種ポリペプチドである。一部の態様では、細胞は、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている異種核酸のコピーを1つ以上含む。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている異種核酸は、常時発現型プロモーターに調節可能なように連結される。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている異種核酸は、誘導型プロモーターに調節可能なように連結される。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている異種核酸は、高発現型プロモーターに調節可能なように連結される。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている異種核酸は、低発現型プロモーターに調節可能なように連結される。
イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、あるいは細胞で安定的に発現させることができる。イソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている核酸は、更にベクターに組み込むこともできる。
代表的なイソプレン合成酵素の核酸としては、イソプレン合成酵素ポリペプチドの活性を少なくとも1種有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、又は融合ポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。イソプレン合成酵素ポリペプチドは、ジメチルアリールジホスフェート(DMAPP)をイソプレンに変換する。代表的なイソプレン合成酵素ポリペプチドとしては、イソプレン合成酵素ポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、並びに融合ポリペプチドが挙げられる。イソプレン合成酵素ポリペプチド及び核酸の例としては、本明細書に記載されるような任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸が挙げられる。加えて、イソプレン合成酵素変異体は、酵素活性が向上しているなどして、活性が向上されていてよい。一部の態様では、イソプレン合成酵素変異体は、安定性(例えば、熱安定性)が改良されている、及び/又は溶解性が改良されているなどして、その他の特性が改良されている。
インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボで、ポリペプチドがDMAPPをイソプレンへと変換する能力を測定して、ポリペプチドがイソプレン合成酵素ポリペプチド活性を有するか否かを判定する際には、標準法を使用できる。細胞抽出物中のイソプレン合成酵素ポリペプチド活性は、例えば、Silver et al.,1995,J.Biol.Chem.270:13010〜13016に記載の通りに測定することができる。代表的なアッセイでは、DMAPP(Sigma)は窒素流下で蒸発させ、乾燥させ、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH 8.2)を用い100mMに再水和し、−20℃で保存する。アッセイを実施するために、金属製スクリューキャップと、テフロンコーティングのなされたシリコン製隔壁(Agilent Technologies)とを取り付けた20mLのヘッドスペースバイアル内で、5μLの1M MgCl、1mM(250μg/mL)DMAPP、65μLの植物抽出緩衝液(PEB)(50mM Tris−HCl(pH 8.0)、20mM MgCl、5%グリセロール、及び2mM DTT)に、25μLの細胞抽出物を加え、振とうさせながら37℃で15分間培養した。200μLの250mM EDTAを加えて反応をクエンチさせ、GC/MSにより定量することができる。
一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、植物のイソプレン合成酵素ポリペプチド又はそれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、プエラリア(Pueraria)に由来するイソプレン合成酵素又はそれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、ハコヤナギ属(Populus)由来のイソプレン合成酵素又はそれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、ポプラ(poplar)のイソプレン合成酵素ポリペプチド又はそれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドはクズ(kudzu)のイソプレン合成酵素ポリペプチド又はそれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、クズ属(Pueraria)又はハコヤナギ属(Populus)、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)xヤマナラシ(Populus tremula)などの交雑種、又はこれらの(変異体(variant))由来のポリペプチドである。
一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチド又は核酸は、マメ科、例えば、マメ亜科(Faboideae)由来のものである。特定の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチド又は核酸は、プエラリア・モンタナ(Pueraria montana)(クズ(kudzu))(Sharkeyet al.、Plant Physiology 137:700〜712)、プエラリア・ロバタ(Pueraria lobata)、ポプラ(ウラジロハコヤナギ(Populus alba)、セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)、コットンウッド(Populus trichocarpa)、又はウラジロハコヤナギ(Populus alba)xトレムラ(tremula)(CAC35696)(Miller et al.,2001,Planta 213:483〜487)、アスペン(aspen)(アメリカヤマナラシ(Populus tremuloides)など)Silver et al.,1995,JBC 270(22):13010〜1316)、又はヨーロッパナラ(Quercus robur)(Zimmer et al.、国際特許出願公開第98/02550号)に由来するポリペプチド又は核酸である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、タイワンクズ(Pueraria montana)、クズ(Pueraria lobata)、アメリカヤマナラシ(Populus tremuloides)、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)、セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)又はコットンウッド(Populus trichocarpa)由来のイソプレン合成酵素、又はこれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)由来のイソプレン合成酵素であるか、又はこれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素は、バルサムポプラ(Populus balsamifera)(Genbank JN173037)、アメリカクロヤマナラシ(Populus deltoides)(Genbank JN173039)、フレモントコットンウッド(Populus fremontii)(Genbank JN173040)、オオバギンドロ(Populus granididenta)(Genbank JN173038)、ヤナギ属(Salix)(Genbank JN173043)、ニセアカシア(Robinia pseudoacacia)(Genbank JN173041)、フジ属(Wisteria)(Genbank JN173042)、ユーカリ・グロブルス(Eucalyptus globulus)(Genbank AB266390)又はティーツリー(Melaleuca alterniflora)(Genbank AY279379)又はこれらの変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素(例えば、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)又はこれらの変異体由来のイソプレン合成酵素)をコードしている核酸は、コドンを最適化されている。
一部の態様では、イソプレン合成酵素核酸又はポリペプチドは、天然に生じるポリペプチド又は核酸である(例えば、ハコヤナギ属(Populus)から天然に生じるポリペプチド又は核酸)。一部の態様では、イソプレン合成酵素核酸又はポリペプチドは、野生型又は天然に生じるポリペプチド又は核酸ではない。一部の態様では、イソプレン合成酵素核酸又はポリペプチドは、野生型又は天然に生じるポリペプチド又は核酸の変異体である(例えば、ハコヤナギ属(Populus)の野生型又は天然に生じるポリペプチド又は核酸の変異体)。
一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは変異体である。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、野生型又は天然型イソプレン合成酵素の変異体である。一部の態様では、変異体は、野生型又は天然型イソプレン合成酵素と比較して触媒活性が向上しているなど、活性が向上している。活性(例えば、触媒活性)の向上は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%のうちのいずれかの程度であり得る。一部の態様では、触媒活性などの活性の向上は、少なくとも約1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、又は100倍のいずれかである。一部の態様では、触媒活性などの活性の向上は、約10%〜約100倍である(例えば、約20%〜約100倍、約50%〜約50倍、約1倍〜約25倍、約2倍〜約20倍、又は約5倍〜約20倍)。一部の態様では、変異体は、野生型又は天然型イソプレン合成酵素と比較して可溶性が向上している。可溶性の向上は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%のうちのいずれかの程度であり得る。可溶性の向上は、少なくとも約1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、75倍、又は100倍のうちのいずれかの程度であり得る。一部の態様では、溶解性の向上は、約10%〜約100倍のうちのいずれかの程度であり得る(例えば、約20%〜約100倍、約50%〜約50倍、約1倍〜約25倍、約2倍〜約20倍、又は約5倍〜約20倍)。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、天然型イソプレン合成酵素変異体であり、かつ天然型イソプレン合成酵素と比較して安定性が向上している(熱安定性など)。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、ユーカリプタス(Eucalyptus)又はこれらの変異体に由来するものである。他の態様では、イソプレン合成酵素は、ハリエンジュ属(Robinia)、ヤナギ属(Salix)、若しくはコバノブラシノキ属(Melaleuca)、又はこれらの変異体に由来するものである。
一部の態様では、変異体は、野生型又は天然型イソプレン合成酵素の活性の、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%、少なくとも約200%の活性を有する。変異体は、野生型又は天然型イソプレン合成酵素との配列類似性を保有し得る。一部の態様では、野生型又は天然型イソプレン合成酵素の変異体は、野生型又は天然型イソプレン合成酵素のアミノ酸配列と、少なくとも約40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%のうちのいずれかの程度で配列同一性を有する。一部の態様では、野生型又は天然型イソプレン合成酵素の変異体は、野生型又は天然型イソプレン合成酵素のアミノ酸配列と、約70%〜約99.9%、約75%〜約99%、約80%〜約98%、約85%〜約97%、又は約90%〜約95%のうちのいずれかの程度で配列同一性を有する。
一部の態様では、変異体は、野生型又は天然型イソプレン合成酵素内に変異を持つ。一部の態様では、変異体は、少なくとも1箇所にアミノ酸置換、少なくとも1箇所にアミノ酸挿入、及び/又は少なくとも1箇所にアミノ酸欠失を有する。一部の態様では、変異体は、少なくとも1箇所にアミノ酸置換を有する。一部の態様では、変異体と、野生型又は天然型イソプレン合成酵素との間で異なっているアミノ酸残基の数は、1以上であってよく、例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、又は50以上のアミノ酸残基が異なっていてよい。天然型イソプレン合成酵素としては、植物由来の任意のイソプレン合成酵素を挙げることができ、例えば、クズ(kudzu)イソプレン合成酵素、ポプラ(poplar)イソプレン合成酵素、ヨーロッパナラ(English oak)イソプレン合成酵素、及びヤナギ(willow)イソプレン合成酵素が挙げられる。一部の態様では、変異体は、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)由来のイソプレン合成酵素の変異体である。一部の態様では、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)由来のイソプレン合成酵素変異体は、少なくとも1箇所にアミノ酸置換、少なくとも1箇所にアミノ酸挿入、及び/又は少なくとも1箇所にアミノ酸欠失を有する。一部の態様では、変異体は、トランケート型のウラジロハコヤナギ(Populus alba)イソプレン合成酵素である。一部の態様では、変異体(例えば、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)由来のイソプレン合成酵素の変異体)をコードしている核酸は、コドンを最適化させたものである(例えば、異種イソプレン合成酵素を発現させる宿主細胞に基づきコドンを最適化している)。一部の態様では、イソプレン合成酵素ポリペプチドは、ユーカリプタス(Eucalyptus)又はこれらの変異体に由来するものである。他の態様では、イソプレン合成酵素は、ハリエンジュ属(Robinia)、ヤナギ属(Salix)、若しくはコバノブラシノキ属(Melaleuca)、又はこれらの変異体に由来するものである。
本開示のイソプレン合成酵素ポリペプチドは、国際公開第2009/132220号、同第2010/124146号、米国特許出願第2010/0086978号に記載のいずれかのイソプレン合成酵素又はイソプレン合成酵素変異体であってよい。これらの文献に記載される、イソプレン合成酵素及びイソプレン合成酵素変異体に関係するすべての内容は、参照により本開示に明示的に組み込む。
本開示のプロモーターのうちのいずれか(例えば、本開示に記載され、本開示の実施例において識別される、誘導型プロモーター及び常時発現型プロモーターなどのプロモーター)を使用して、本開示のいずれかのイソプレン合成酵素の発現を駆動させることができる。
好適なイソプレン合成酵素としては、限定するものではないが、Genbank受託番号AY341431、AY316691、AY279379、AJ457070、及びAY182241として識別されるものが挙げられる。本明細書に記載のイソプレン合成酵素をコードしている微生物の製造法を含む組成物又は方法のいずれかにおいて使用することのできる種類のイソプレン合成酵素は、国際特許出願公開第2009/076676号、同第2010/003007号、同第2009/132220号、同第2010/031062号、同第2010/031068号、同第2010/031076号、同第2010/013077号、同第2010/031079号、同第2010/148150号、同第2010/124146号、同第2010/078457号、同第2010/148256号、並びにSharkey et al.,「イソプレン合成酵素の遺伝子はTps−Bテルペン合成酵素ファミリーにおけるアクリル系テルペン合成酵素の単系統群を形成する(Isoprene Synthase Genes Form A Monophyletic Clade Of Acyclic Terpene Synthases In The Tps-B Terpene Synthase Family)」,Evolution(2012)(DOI:10.1111/evo.12013においてオンライン利用可能である)にも開示されており、これらの文献の各々の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
各種イソプレン合成酵素変異体には、表Aに示す残基位置において置換をなすことができる。本発明の組成物及び方法には、本明細書に記載の任意の変異体(表A、特許請求の範囲、又は実施例)を使用してよい。一部の態様では、変異体は、ウラジロハコヤナギ(P. alba)のアミノ酸配列に相当する表A由来の変異を1つ以上(すなわち、2、3、4、5、6など)含む。
Figure 2015510392
表Aには、MEAウラジロハコヤナギ(P. alba)イソプレン合成酵素における具体的な置換を掲載する。他の親イソプレン合成酵素において、対応する残基を同様に変異させて、本発明のイソプレン合成酵素変異体を生成することもできる。
MVA経路の核酸及びポリぺプチド
完全なMVA経路は、上流経路及び下流経路の2群に分けることができる。MVA経路の上流部位では、細胞代謝中に産出されたアセチルCo−Aは、(a)(i)チオラーゼ活性又は(ii)アセトアセチル−CoA合成酵素活性、(b)HMG−CoAレダクターゼ、及び(c)HMG−CoA合成酵素酵素活性のいずれかを有するポリペプチド部位によりメバロン酸へと変換される。まず始めに、チオラーゼ又はアセトアセチル−CoA合成酵素(アセチル−CoA及びマロニル−CoAを利用する)の作用によりアセチルCo−AをアセトアセチルCoAに変換する。次に、アセトアセチル−CoAは、HMG−CoA合成酵素の酵素作用により、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)へと変換される。このCo−A誘導体をHMG−CoAレダクターゼにより還元してメバロン酸を生成する。この反応は、メバロン酸経路によるイソプレノイド産生の律速段階となる。下流MVA経路では、メバロン酸塩は、次にメバロン酸キナーゼの作用により5−ホスホメバロン酸へと変換され、これは続いてホスホメバロン酸キナーゼの酵素活性により5−ジホスホメバロン酸へと転換される。最後に、酵素のメバロン酸−5−ピロリン酸塩デカルボキシラーゼの活性により、5−ジホスホメバロン酸からIPPが形成される。
低減された機能活性を有するispA遺伝子と合わせて使用することのできる代表的なMVA経路ポリペプチドとしては、限定するものではないが、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA合成酵素(HMG−CoA合成酵素)ポリペプチド(例えば、mvaSによりコードされる酵素)、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼ(HMG−CoAレダクターゼ)ポリペプチド(例えば、mvaRによりコードされている酵素又はチオラーゼが欠損するよう改変されているもののレダクターゼ活性は保有しているmvaEによりコードされている酵素)、メバロン酸キナーゼ(MVK)ポリペプチド、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)ポリペプチド、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MVD)ポリペプチド、ホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(PMDC)ポリペプチド、イソペンテニルリン酸キナーゼ(IPK)ポリペプチド、IPPイソメラーゼポリペプチド、IDIポリペプチド、及びMVA経路の2つ以上のポリペプチド活性を有するポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)が挙げられる。特に、MVA経路ポリペプチドとしては、MVA経路のポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド及び融合ポリペプチドが挙げられる。MVA経路の代表的な核酸としては、MVA経路に含まれるポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、又は融合ポリペプチドをコードしている核酸が挙げられる。MVA経路に含まれる代表的なポリペプチド及び核酸としては、本明細書に記載されるような任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸が挙げられる。更に、イソプレンの産生を増大させるような、MVA経路のポリペプチド変異体も、良好に使用することができる。
使用され得るMVA経路ポリペプチドの非限定例は、国際特許出願公開第2009/076676号;同第2010/003007号及び同第2010/148150号に記載のものである。
アセトアセチル−CoA合成酵素核酸及びポリペプチド
アセトアセチルCoA合成酵素遺伝子(nphT7としても知られる)は、マロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する活性を有し、かつ2分子のアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する活性は最小限である(例えば、非活性である)酵素をコードしている遺伝子である。例えば、Okamura et al.,2010,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107(25):11265〜11270を参照されたい。この非特許文献の内容は、nphT7についての教示に関し明示的に本明細書に組み込まれる。ストレプトミセス(Streptomyces)属CL190株の放線菌(actinomycete)由来のアセトアセチル−CoA合成酵素遺伝子は、特許公開第2008−61506(A)号及び米国特許出願公開第2010/0285549号に記載される。アセトアセチル−CoA合成酵素も、アセチルCoA:マロニルCoAアシル基転移酵素として参照され得る。使用することのできる代表的なアセトアセチル−CoA合成酵素(又はアセチルCoA:マロニルCoAアシル基転移酵素)としては、Genbank AB540131.1が挙げられる。
一実施形態では、本発明のアセトアセチルCoA合成酵素は、不可逆反応を介し、マロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する。アセトアセチルCoA合成酵素を使用してアセチルCoAを生成することで、この作用は不可逆的なものであり、かつアセトアセチルCoAチオラーゼ酵素の2分子のアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する作用は可逆的なものであるという、更なる利点が提供される。これらを踏まえると、アセトアセチルCoA合成酵素を使用して、マロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成することで、チオラーゼを使用して同様の最終産物を産生した場合と比較して、イソプレンの産生量において著しい向上が得られる。
これに加え、アセトアセチルCoA合成酵素を使用してイソプレンを生成した場合には、アセトアセチルCoA合成酵素が、マロニルCoAの脱炭酸によりマロニルCoAをアセチルCoAへと変換し得るという更なる利点も提供する。したがって、開始基質の貯蔵量は、アセチルCoAの開始量により制限されない。アセトアセチルCoA合成酵素によるアセトアセチルCoAの合成は、開始基質がマロニルCoAのみである場合にのみ引き続き生じ得る。一実施形態では、開始時のマロニルCoAのプール量は、よりマロニルCoAを有する宿主株を使用することにより増加する。このようなプール量の増加は、天然に生じ得るものであり又は分子操作により設計され得るものである。例えば、Fowler,et.al,2009,Applied and Environmental Microbiology,75(18):5831〜5839を参照されたい。
本開示に記載の任意の態様又は実施例では、マロニル−CoA及びアセチル−CoAからアセトアセチル−CoAを合成する能力を有する酵素を使用できる。このような酵素の非限定例を本明細書に記載する。本開示に記載の特定の実施形態では、マロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する能力を有する放線菌のストレプトマイセス(Streptomyces)属から誘導されるアセトアセチルCoA合成酵素遺伝子を使用できる。
このようなアセトアセチルCoA合成酵素の遺伝子の例としては、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしている遺伝子が挙げられる。このような、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質は、マロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する活性を有し、2分子のアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する活性は有さないアセトアセチルCoA合成酵素に相当する。
一実施形態では、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしている遺伝子は、ストレプトミセス属(Streptomyces sp.)CL190株の放線菌(actinomycete)から得られるゲノムDNAをテンプレートとして使用し、日本国特許公開第2008−61506(A)号を参照して設計することのできるプライマー対を使用して核酸増幅法(例えば、PCR)により得ることができる。
本明細書に記載するとき、本発明での使用に関し、アセトアセチルCoA合成酵素遺伝子は、ストレプトミセス属(Streptomyces sp.)CL190株の放線菌(actinomycete)に由来する配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードしている遺伝子に限定されない。マロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成することができかつ2分子のアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成することはできないタンパク質をコードしている任意の遺伝子を本発明に記載の方法に使用することができる。特定の実施形態では、アセトアセチルCoA合成酵素遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列と類似性が高く又は実質的に同一であるアミノ酸配列を有し、かつマロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する機能を有するタンパク質をコードしている遺伝子であり得る。表現「類似性の高い」又は「実質的に同一」は、例えば、少なくとも約80%同一性、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、及び少なくとも約99%同一であることを意味する。上記で使用した通り、同一度の値は、異なるアミノ酸配列及び配列番号1のアミノ酸配列に含まれるアミノ酸残基間の同一度(%)に相当するものであり、配列類似性について検索するためのプログラムを使用し、配列番号1のアミノ酸配列と、異なるアミノ酸配列とを整列させることで算出される。
他の実施形態では、アセトアセチルCoA合成酵素遺伝子は、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、付加又は挿入により、配列番号1のアミノ酸配列由来のアミノ酸配列を有し、かつマロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する機能を有するタンパク質をコードしている遺伝子であってよい。本明細書において、表現「1つ以上のアミノ酸(more amino acids)」は、例えば、2〜30個のアミノ酸、好ましくは2〜20個のアミノ酸、より好ましくは2〜10個のアミノ酸及び最も好ましくは2〜5個のアミノ酸を指す。
更に他の実施形態では、アセトアセチルCoA合成酵素遺伝子は、厳密な条件下で配列番号1のアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列と相補的であり、ヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを一部又は完全に加水分解することのできる、並びにマロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する機能を有するタンパク質をコードすることのできる、ポリヌクレオチドからなる場合がある。本明細書において、厳密な条件下でのハイブリダイゼーションは、60℃で2回SSCで洗浄する条件下で結合を維持させることに相当する。ハイブリダイゼーションは、J.Sambrook et al.「分子クローニング;標準実験法(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)第3版」(Cold Spring Harbor Laboratory(2001年))に記載の手法などの、既知の従来法により実施することができる。
本明細書に記載されるとおり、配列番号1のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するアセトアセチルCoA合成酵素をコードしている遺伝子は、任意の生物から単離できる可能性があり、例えば、ストレプトミセス属(Streptomyces sp.)CL190株から得られない放線菌(actinomycete)から得ることもできる。加えて、本明細書で用いるアセトアセチルCoA合成酵素遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列をコードしているポリヌクレオチドを、当該技術分野において既知の手法により改変することで得ることもできる。ヌクレオチド配列への変異導入は、Kunkel法又はgapped duplex法あるいはこれらのいずれかに類似の手法などの既知の手法により実施することができる。例えば、変異導入は、部位特異的変異導入については、変異導入キット(例えば、製品名;Mutant−K及びMutant−G(タカラバイオ))及び製品名LA PCR in vitro Mutagenesisシリーズのキット(タカラバイオ)などを使用することで実施できる。
配列番号1のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有するアセトアセチルCoA合成酵素の活性は、以下に記載の通りに評価することができる。具体的には、評価されることになるタンパク質をコードしている遺伝子は、遺伝子を細胞中で発現させ、続いてクロマトグラフィーなどの手法によりタンパク質を精製することができるような様式で、まずは宿主細胞に導入される。得られた評価すべきタンパク質を含有させた緩衝液に、基質としてマロニルCoA及びアセチルCoAを加え、続いて例えば、所望の温度(例えば、10℃〜60℃)でインキュベートする。反応の完了後、基質の減少量及び/又は生成物量(アセトアセチルCoA)を測定する。したがって、試験したタンパク質がマロニルCoA及びアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する機能を有するか評価すること、並びに合成度を評価することができる。このような場合では、このタンパク質が、2分子のアセチルCoAからアセトアセチルCoAを合成する活性を有しているか否かは、得られた評価すべきタンパク質を含有させた緩衝液に、アセチルCoAのみを基質として加え、基質の減少量及び/又は同様の方法において産生された産生物量を測定することにより、試験することができる。
上流MVA経路のポリペプチドをコードしている核酸
MVA経路の上流は、細胞内代謝中に産生されるアセチルCo−Aを、(a)(i)チオラーゼ活性又は(ii)アセトアセチル−CoA活性、(b)HMG−CoAレダクターゼ、及び(c)HMG−CoA合成酵素活性のいずれかの活性をもつポリペプチドの作用によりメバロン酸に変換する際の開始基質として利用する。まず始めに、チオラーゼ又はアセトアセチル−CoA合成酵素(アセチル−CoA及びマロニル−CoAを利用する)の作用によりアセチルCo−AをアセトアセチルCoAに変換する。次に、アセトアセチル−CoAは、HMG−CoA合成酵素の酵素作用により、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)へと変換される。このCo−A誘導体をHMG−CoAレダクターゼにより還元してメバロン酸を生成する。この反応は、メバロン酸経路によるイソプレノイド産生の律速段階となる。
低減された機能活性を有するispA遺伝子と組み合わせて使用することのできる上流MVA経路ポリペプチドの非限定例としては、アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ(AA−CoAチオラーゼ)ポリペプチド、アセトアセチル−CoA合成酵素ポリペプチド、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA合成酵素(HMG−CoA合成酵素)ポリペプチド、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼ(HMG−CoAレダクターゼ)ポリペプチドが挙げられる。上流MVA経路のポリペプチドには、上流MVA経路のポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド及び融合ポリペプチドが含まれる。上流MVA経路の代表的な核酸としては、上流MVA経路に関係するポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、又は融合ポリペプチドをコードしている核酸が挙げられる。MVA経路の代表的なポリペプチド及び核酸としては、本明細書に記載されるような任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸が挙げられる。したがって、本開示では、上流MVA経路のポリペプチドをコードしている任意の遺伝子は、本発明において使用できることを企図する。
特定の実施形態では、リステリア・グレイ(L. grayi)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)、エンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)及び/又はエンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)由来の様々なmvaE及びmvaS遺伝子を、単独で、あるいは上流MVA経路関連性タンパク質をコードしている1つ以上の他のmvaE及びmvaS遺伝子と組み合わせて選択することが、本発明の範囲内のものとして企図される。他の実施形態では、アセトアセチル−CoA合成酵素の遺伝子は、(i)3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA合成酵素(HMG−CoA合成酵素)ポリペプチド及び3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼ(HMG−CoAレダクターゼ)ポリペプチドをコードしている1種以上の他の遺伝子との組み合わせで本発明の範囲内のものとして企図される。したがって、特定の態様では、本明細書に記載の任意の方法により、企図される任意の組み合わせの遺伝子を、低減された機能活性を有するispA遺伝子と組み合わせて組換え細胞において発現させることができる。
本明細書に使用することのできる上流MVA経路ポリペプチドの更なる非限定例は、国際特許出願公開第2009/076676号;同第2010/003007号及び同第2010/148150号に記載される。
mvaE及びmvaSポリペプチドをコードしている遺伝子
特定の実施形態では、様々なmvaE及びmvaS遺伝子の選択(限定するものではないが、リステリア・グレイ(L. grayi)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)、エンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)、及び/又はエンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)由来のmvaE及びmvaS遺伝子など)は、単独で又は上流MVA経路のタンパク質をコードしている1つ以上の他のmvaE及びmvaS遺伝子と組み合わせて、組換え細胞において低減された機能活性を有するispAを組み合わせた本発明の範囲内で企図される。多くの生物(例えば、リステリア・グレイ(L. grayi)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)、エンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)、及びエンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis))において、mvaE遺伝子は、チオラーゼ及びHMG−CoAレダクターゼ活性をいずれも保有するポリペプチドをコードする(Hedl,et al.,April 2002,J Bacteriol.184(8):2116〜2122)。それに対しmvaS遺伝子は、HMG−CoA合成酵素活性を有するポリペプチドをコードする。
適宜に、組換え細胞(例えば、大腸菌(E. coli))は、1つ以上のmvaE及びmvaS遺伝子(限定するものではないが、リステリア・グレイ(L. grayi)、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)、エンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)及び/又はエンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)由来のmvaE及びmvaS遺伝子など)を発現し、低減された機能活性を有するispA遺伝子と組み合わせてイソプレンを産生するよう遺伝子操作することができる。1つ以上のmvaE及びmvaS遺伝子をマルチコピープラスミドで発現させることもできる。プラスミドは高コピー数プラスミド、低コピー数プラスミド又は中程度コピー数プラスミドであってよい。あるいは、1つ以上のmvaE及びmvaS遺伝子を宿主細胞の染色体に組み込むことができる。プラスミド上の、あるいは宿主細胞染色体の一部に組み込まれた、1つ以上のmvaE及びmvaS遺伝子のいずれもの異種発現に際し、遺伝子発現は、誘導型プロモーター又は常時発現型プロモーターのいずれかにより駆動できる。プロモーターは、1つ以上のmvaE及びmvaS遺伝子の発現を強力に駆動することができ、弱く駆動することができ、あるいは中程度に駆動することができる。
mvaE遺伝子は、チオラーゼ活性及びHMG−CoAレダクターゼ活性を両方保有しているポリペプチドをコードする。mvaE遺伝子によりコードされているポリペプチドのチオラーゼ活性は、アセチルCo−AをアセトアセチルCoAに変換するのに対し、HMG−CoAレダクターゼポリペプチドの酵素活性は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAをメバロン酸に変換する。mvaEポリペプチド及び核酸の例としては、本明細書に記載の任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸、並びにmvaEポリペプチドの活性を少なくとも1つ有する、本明細書に記載の任意の生物資源から誘導されるポリペプチド変異体及び核酸変異体が挙げられる。
変異型mvaEポリペプチドとしては、1つ以上のアミノ酸残基がアミノ酸置換を受けており、かつmvaEポリペプチド活性(すなわち、アセチルCo−AをアセトアセチルCoAに変換する能力並びに3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAをメバロン酸に変換する能力)を保持しているものが挙げられる。アミノ酸置換は、保存的なものであっても非保存的なものであってもよく、アミノ酸残基の置換は遺伝子暗号によりコードされていてもコードされていなくてもよい。標準的な20個のアミノ酸「記号(alphabet)」を、側鎖の類似性に基づき化学的なファミリーに分けた。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、極性無電荷側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を持つアミノ酸が挙げられる。「保存的アミノ酸置換」では、アミノ酸残基は、化学的に類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される(すなわち、塩基性側鎖を有するアミノ酸は、塩基性側鎖を有する別のアミノ酸により置換される)。「非保存的アミノ酸置換」では、アミノ酸残基は、化学的に異なる側鎖を有するアミノ酸残基で置換される(すなわち、塩基性側鎖を有するアミノ酸は、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸により置換される)。
mvaEポリペプチド中にアミノ酸置換を導入することで、分子の官能性を改良することができる。例えば、mvaEポリペプチドの、基質に対する結合親和性を増加させるアミノ酸置換、あるいはアセチルCo−AをアセトアセチルCoAに変換する能力及び/又は3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAをメバロン酸に変換する能力を改良するアミノ酸置換を、mvaEポリペプチドに導入することができる。一部の態様では、mvaEポリペプチド変異体は、1つ以上の保存的なアミノ酸置換を含有する。
一態様では、イソプレン産生には、分解していない又は分解しにくいmvaEタンパク質を使用することができる。使用することのできる、分解されていない又は分解しにくいmvaE遺伝子産物の例としては、限定するものではないが、エンテロコッカス・フェシウム(E. faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)、エンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)及びリステリア・グレイ(L. grayi)に由来するものが挙げられる。当業者は、大腸菌(E. coli)BL21(DE3)においてmvaEタンパク質を発現させ、任意の標準的な分子生物学的手法により断片が存在していないか調べることができる。例えば、His−tagを利用して精製した後、すなわちメバロン酸、イソプレン又はイソプレノイドを産生する大腸菌(E. coli)BL21において発現させた後、本明細書に記載の検出法を使用して、SDS−PAGEゲルをSafestainで染色することにより、断片が存在していないことを確認することができる。
Hedl et al.,(Hedl,et al.,J Bacteriol.April 2002,184(8):2116〜2122)に記載のものなどの標準法を使用して、アセトアセチルCoAチオラーゼ活性並びにHMG−CoAレダクターゼ活性を測定することにより、ポリペプチドがmvaE活性を有しているか評価することができる。代表的なアッセイでは、アセトアセチルCoAチオラーゼ活性は、アセトアセチルCoAの形成又はチオリシスに伴う吸光度の変化を分光光度計により302nmにて監視することで測定できる。アセトアセチルCoA合成を判定するための各反応に関する標準的なアッセイ条件は、1mMのアセチルCoA、10mMのMgCl、50mMのトリス(pH10.5)というものであり、反応は酵素の添加により開始される。アッセイは最終用量200μLで実施できる。アッセイに関し、1酵素単位(eu)は、1分間で1μmolのアセトアセチルCoAを合成又はチオリシスすることを意味する。他の代表的なアッセイでは、HMG−CoAレダクターゼ活性は、分光光度計により、340nmでのNADP(H)の出現又は消失をもとに監視することもできる。HMG−CoAのメバロン酸への還元的脱アシル化について測定した各反応の標準的なアッセイ条件は、0.4mMのNADPH、1.0mMの(R,S)−HMG−CoA、100mMのKCl及び100mMのKPO(pH 6.5)というものである。アッセイは最終用量200μLで実施する。反応は酵素の添加により開始される。アッセイに関し、1euは、1分間で1μmolのNADP(H)が代謝回転されることを意味する。これは、0.5μmolのHMG−CoA又はメバロン酸が代謝回転することに相当する。
mvaE核酸の例としては、mvaEポリペプチド活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、又はポリペプチド融合物をコードしている核酸が挙げられる。mvaEポリペプチド及び核酸の例としては、本明細書に記載の任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸、並びに本明細書に記載の任意の生物資源から誘導されるポリペプチド変異体及び核酸変異体が挙げられる。代表的なmvaE核酸としては、例えば、リステリア・グレイ(Listeria grayi)DSM 20601、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)EG2、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、及び/又はエンテロコッカス・カセリフラブス(Enterococcus casseliflavus)から単離されたmvaE核酸が挙げられる。リステリア・グレイ(Listeria grayi)DSM 20601 mvaE遺伝子によりコードされるmvaE核酸は、配列番号2に対して99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、又は85%配列同一性を有し得る。エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)mvaE遺伝子によりコードされるmvaE核酸は、配列番号3に対し、約99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%又は85%配列同一性を有し得る。エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)EG2 mvaE遺伝子によりコードされるmvaE核酸は、配列番号4に対し、99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、又は85%配列同一性を有し得る。エンテロコッカス・カセリフラブス(Enterococcus casseliflavus)mvaE遺伝子によりコードされるmvaE核酸は、配列番号5に対し、99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、又は85%配列同一性を有し得る。エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)mvaE遺伝子によりコードされるmvaE核酸は、これまでにメバロン酸を産生するための大腸菌(E. coli)において開示されているmvaE遺伝子に対し99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、又は85%配列同一性を有し得る(米国特許第2005/0287655(A1)号;Tabata、K.and Hashimoto,S.−I.2004、Biotechnology Letters 26:1487〜1491を参照されたい)。
mvaE核酸は、組み換え細胞において、マルチコピープラスミド上で発現させることができる。プラスミドは高コピー数プラスミド、低コピー数プラスミド又は中程度コピー数プラスミドであってよい。あるいは、mvaE核酸は、宿主細胞の染色体に組み込むこともできる。プラスミド上の、あるいは宿主細胞染色体の一部に組み込まれたmvaE核酸の異種発現に際し、核酸の発現は、誘導型プロモーター又は常時発現型プロモーターのいずれかにより駆動できる。プロモーターは、mvaE核酸の発現を強力に駆動することができ、弱く駆動することができ、あるいは中程度に駆動することができる。
mvaS遺伝子は、HMG−CoA合成酵素活性を保有するポリペプチドをコードする。このポリペプチドは、アセトアセチルCoAを、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を変換させることができる。mvaSポリペプチド及び核酸の例としては、本明細書に記載の任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸、並びにmvaSポリペプチドの活性を少なくとも1つ有する、本明細書に記載の任意の生物資源から誘導されるポリペプチド変異体及び核酸変異体が挙げられる。
変異型mvaSポリペプチドとしては、1つ以上のアミノ酸残基がアミノ酸置換を受けており、かつmvaSポリペプチド活性(すなわち、アセトアセチルCoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに変換する能力)を保持しているものが挙げられる。mvaSポリペプチド中にアミノ酸置換を導入することで、分子の官能性を改良することができる。例えば、mvaSポリペプチドの、基質に対する結合親和性を増加させるアミノ酸置換、あるいはアセトアセチルCoAを3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAに変換する能力を増加させるアミノ酸置換を、mvaSポリペプチドに導入することができる。一部の態様では、mvaSポリペプチド変異体は、1つ以上の保存的なアミノ酸置換を含有する。
Quant et al.(Biochem J.,1989,262:159〜164)に記載のものなどの標準法を使用して、HMG−CoA合成酵素の活性を測定することにより、ポリペプチドがmvaS活性を有するか評価することもできる。代表的なアッセイでは、HMG−CoA合成酵素の活性は、303nmでの吸光度の変化を監視し、エノール形態のアセトアセチルCoAの消失を分光光度をもとに評価することで、検定できる。30℃下で、50mMのTris/HCl(pH 8.0)、10mMのMgCl2及び0.2mMのジチオスレイトールを含有する標準的な1mLのアッセイ系に、5mMのアセチルリン酸、10mM−アセトアセチルCoA及び5μLの抽出試料を加え、続いてアセチルCoA(100μM)及び10ユニットのPTAを同時に加えることができる。次に、HMG−CoA合成酵素の活性を、アセチルCoA添加前及び添加後の比率(rate)の差として測定する。使用した条件下(pH 8.0、10mM−MgCl)での、アセトアセチルCoAの吸光係数は、12.2×10−1cm−1である。定義によると、1ユニットの酵素活性により、1分あたり1μmolのアセトアセチルCoAが変換されることになる。
mvaS核酸の例としては、mvaSポリペプチド活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、又はポリペプチド融合物をコードしている核酸が挙げられる。mvaSポリペプチド及び核酸の例としては、本明細書に記載の任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸、並びに本明細書に記載の任意の生物資源から誘導されるポリペプチド変異体及び核酸変異体が挙げられる。代表的なmvaS核酸としては、例えば、リステリア・グレイ(Listeria grayi)DSM 20601、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)EG2、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、及び/又はエンテロコッカス・カセリフラブス(Enterococcus casseliflavus)から単離されたmvaS核酸が挙げられる。リステリア・グレイ(Listeria grayi)DSM 20601 mvaS遺伝子によりコードされるmvaS核酸は、配列番号6に対し、少なくとも約99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%又は85%配列同一性を有し得る。エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcusfaecium)mvaS遺伝子によりコードされるmvaS核酸は、配列番号7に対し、約99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%又は85%配列同一性を有し得る。エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)EG2 mvaS遺伝子によりコードされるmvaS核酸は、配列番号8に対し、99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、又は85%配列同一性を有し得る。エンテロコッカス・カセリフラブス(Enterococcus casseliflavus)mvaS遺伝子によりコードされるmvaS核酸は、配列番号9に対し、約99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%又は85%配列同一性を有し得る。エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)mvaS遺伝子によりコードされるmvaS核酸は、これまでにメバロン酸を産生するための大腸菌(E. coli)において開示されているmvaE遺伝子に対し99%、98%、97%、96%、95%、95%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、又は85%配列同一性を有し得る(米国特許第2005/0287655(A1)号;Tabata、K.and Hashimoto,S.−I.2004、Biotechnology Letters 26:1487〜1491を参照されたい)。
mvaS核酸は、組み換え細胞において多コピープラスミド上で発現させることができる。プラスミドは高コピー数プラスミド、低コピー数プラスミド又は中程度コピー数プラスミドであってよい。あるいは、mvaS核酸は、宿主細胞の染色体に組み込むこともできる。プラスミド上での、あるいは宿主細胞染色体に組み込まれた一部としてのmvaS核酸の異種発現に際し、核酸の発現は、誘導型プロモーター又は常時発現型プロモーターのいずれかにより駆動できる。プロモーターは、mvaS核酸の発現を強力に駆動することができ、弱く駆動することができ、あるいは中程度に駆動することができる。
本開示に記載される通りの組み換え細胞の組成は、同様に本発明の範囲内で企図される。組み換え細胞には、同様に子孫細胞も包含されることは理解される。
下流MVA経路のポリペプチドをコードしている核酸
本発明の一部の態様では、本明細書に記載の組成物又は方法の任意のものに記載の細胞は、下流メバロン酸(MVA)経路のポリペプチドをコードしている核酸を更に1種以上含む。一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドは内在性ポリペプチドである。一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドをコードしている内在性核酸は、調節可能なように常時発現型プロモーターに連結される。一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドをコードしている内在性核酸は、調節可能なように誘導型プロモーターに連結される。一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドをコードしている内在性核酸は、調節可能なように高発現型プロモーターに連結される。特定の態様では、細胞は、野生型細胞と比較して、内在性の下流MVA経路のポリペプチドが過剰発現するよう設計する。一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドをコードしている内在性核酸は、調節可能なように低発現型プロモーターに連結される。
下流メバロン酸生合成経路は、メバロン酸キナーゼ(MVK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)及びジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MVD)を含む。一部の態様では、下流MVA経路は、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(IDI)を更に含む。本明細書に提供される細胞は、イソプレン合成酵素、上流MVA経路の1種以上のポリペプチド及び/又は下流MVA経路の1種以上のポリペプチドをコードしている核酸を含み得る。下流MVA経路のポリペプチドは、(a)メバロン酸を5−ホスホメバロン酸ヘとリン酸化する酵素、(b)5−ホスホメバロン酸を5−ジホスホメバロン酸へと変換する酵素、(c)5−ジホスホメバロン酸をイソペンテニルピロリン酸へと変換する酵素、のうちの任意の酵素であり得る。より具体的には、メバロン酸を5−ホスホメバロン酸へとリン酸化する酵素は、メタノサルシナ・マゼイ(M. mazei)メバロン酸キナーゼ、メタノコッカシド・バートニイ(M. Burtonii)メバロン酸キナーゼ、ラクトバチルス(Lactobacillus)メバロン酸キナーゼポリペプチド、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)メバロン酸キナーゼポリペプチド、酵母メバロン酸キナーゼポリペプチド、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)メバロン酸キナーゼポリペプチド、ストレプトコッカス(Streptococcus)メバロン酸キナーゼポリペプチド、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)メバロン酸キナーゼポリペプチド、ストレプトミセス(Streptomyces)メバロン酸キナーゼポリペプチド、及びストレプトミセス(Streptomyces)CL190メバロン酸キナーゼポリペプチドからなるに由来するものであり得る。他の態様では、メバロン酸を5−ホスホメバロン酸へとリン酸化する酵素はM.マゼイ(M. mazei)メバロン酸キナーゼである。
一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドは異種ポリペプチドである。一部の態様では、細胞は、下流MVA経路のポリペプチドをコードしている異種核酸のコピーを1つ以上含む。一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドをコードしている異種核酸は、調節可能なように常時発現型プロモーターに連結される。一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドをコードしている異種核酸は、調節可能なように誘導型プロモーターに連結される。一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドをコードしている異種核酸は、調節可能なように高発現型プロモーターに連結される。一部の態様では、下流MVA経路のポリペプチドをコードしている異種核酸は、調節可能なように低発現型プロモーターに連結される。一部の態様では、異種下流MVA経路のポリペプチドは、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、メタノコッカシド・バートニイ(Methanococcoides burtonii)又はメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)由来のポリペプチドである。
下流MVA経路のポリペプチドをコードしている核酸は、細胞のゲノムに組み込むことができ、あるいは細胞で安定的に発現させることができる。下流MVA経路のポリペプチドをコードしている核酸は更に、ベクター上に存在させてもよい。
下流MVA経路のポリペプチドの例としては、次の(i)メバロン酸キナーゼ(MVK);(ii)ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK);(iii)ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MVD);及び(iv)イソペンテニル二リン酸イソメラーゼ(IDI)も挙げられる。詳細には、下流のMVKポリペプチドは、メタノサルシナ(Methanosarcina)属由来のものであってよく、更に詳細には、下流のMVKポリペプチドは、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)由来のものであってよい。加えて、下流MVKポリペプチドは、メタノコッカシド属(Methanococcoides)、より具体的には、メタノコッカシド・バートニイ(M. Burtonii)由来のものであってよい。下流MVA経路のポリぺプチドのその他の例は、米国特許出願公開第2010/0086978号に見出すことができ、この内容は、下流MVK経路のポリペプチド及び下流MVK経路のポリペプチド変異体に関し参照によりその全文が明示的に本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載の細胞のうち任意のものは、IDI核酸(例えば、IDIをコードしている内在性又は異種核酸)を含み得る。イソペンテニルジホスフェートイソメラーゼポリペプチド(イソペンテニル−ジホスフェートδ−イソメラーゼ又はIDI)は、イソペンテニルジホスフェート(IPP)及びジメチルアリル二リン酸(DMAPP)の相互変換を触媒する(例えば、IPPをDMAPPへと変換し及び/又はDMAPPをIPPヘと変換する)。例示的なIDIポリペプチドとしては、IDIポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、及び融合ポリペプチドが挙げられる。標準法(本明細書に記載されるものなど)を用い、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでポリペプチドがIPP及びDMAPPを相互変換する能力を測定することで、ポリペプチドがIDIポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。IDI核酸の例としては、IDIポリペプチド活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、又はポリペプチド融合物をコードしている核酸が挙げられる。IDIポリペプチド及び核酸の例としては、本明細書に記載の任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸、並びに本明細書に記載の任意の生物資源から誘導されるポリペプチド変異体及び核酸変異体が挙げられる。
特に、下流MVA経路のポリペプチドとしては、下流MVA経路のポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド及び融合ポリペプチドが挙げられる。下流MVA経路の核酸の例としては、下流MVA経路のポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、又は融合ポリペプチドをコードしている核酸が挙げられる。下流MVA経路のポリペプチド及び核酸の例としては、本明細書に記載されるような任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸が挙げられる。更に、イソプレンの産生量を増加させるような、下流MVA経路のポリペプチド変異体も、良好に使用することができる。
一部の態様では、下流MVA経路ポリペプチドは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、メタノコッカシド・バートニイ(Methanococcoides burtonii)、又はメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)由来のポリペプチドである。一部の態様では、MVKポリペプチドは、ラクトバチルス(Lactobacillus)メバロン酸キナーゼポリペプチド、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)メバロン酸キナーゼポリペプチド、酵母・メバロン酸キナーゼポリペプチド、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)メバロン酸キナーゼポリペプチド、ストレプトコッカス(Streptococcus)メバロン酸キナーゼポリペプチド、ストレプトコッカス・ニューモニアエ(Streptococcus pneumoniae)メバロン酸キナーゼポリペプチド、ストレプトマイセス(Streptomyces)メバロン酸キナーゼポリペプチド、ストレプトマイセス(Streptomyces)CL190・メバロン酸キナーゼポリペプチド及びメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)メバロン酸キナーゼポリペプチド、からなる群から選択される。本開示のプロモーターのうちのいずれか(例えば、本開示に記載され、本開示の実施例において識別される、誘導型プロモーター及び常時発現型プロモーターなどのプロモーター)を使用して、本開示のいずれかのMVAポリペプチドの発現を駆動させることができる。
DXP経路核酸及びポリペプチド
本発明の一部の態様では、本明細書に記載の任意の組成物又は方法に記載の組み換え細胞は、DXSポリペプチド又はDXP経路の他のポリペプチドをコードしている1つ以上の異種核酸を更に含む。一部の態様では、細胞は更に、DXSポリペプチド又は他のDXP経路ポリペプチドをコードしている内在性の核酸の染色体コピーを含む。一部の態様では、大腸菌(E. coli)細胞は更に、IDIポリペプチド及びDXSポリペプチド又は他のDXP経路ポリペプチドをコードしている核酸を1種以上含む。一部の態様では、1つの核酸は、イソプレン合成酵素、IDIポリペプチド及びDXSポリペプチド又は他のDXP経路ポリペプチドをコードしている。一部の態様では、1つのプラスミドは、イソプレン合成酵素、IDIポリペプチド及びDXSポリペプチド又は他のDXP経路ポリペプチドをコードしている。一部の態様では、複数のプラスミド(multiple plasmids)は、イソプレン合成酵素、IDIポリペプチド及びDXSポリペプチド又は他のDXP経路ポリペプチドをコードしている。
例示的なDXSポリペプチドとしては、DXSポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、及び融合ポリペプチドが挙げられる。標準法(本明細書に記載されるものなど)を用い、ポリペプチドが、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでピルビン酸及びD−グリセルアルデヒド−3−リン酸を1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸ヘと変換する能力を測定することで、ポリペプチドがDXSポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。DXSポリペプチド及び核酸の例並びにDXS活性の測定法は、国際公開第2009/076676号、米国特許出願第12/335,071号(米国特許出願公開第2009/0203102号)、国際公開第2010/003007号、米国特許出願公開第2010/0048964号、国際公開第2009/132220号、及び米国特許出願公開第2010/0003716号に、より詳細に記載される。
DXP経路に含まれるポリペプチドの例としては、限定するものではないが、次の任意のポリペプチド:DXSポリペプチド、DXRポリペプチド、MCTポリペプチド、CMKポリペプチド、MCSポリペプチド、HDSポリペプチド、HDRポリペプチド、及びDXP経路のポリペプチドの活性を1種、又は2種以上有するDXP経路ポリペプチド(例えば、融合ポリペプチド)、が挙げられる。特に、DXP経路ポリペプチドとしては、DXP経路のポリペプチドの活性を少なくとも1種有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド及び融合ポリペプチドが挙げられる。DXP経路の核酸の例としては、DXP経路のポリペプチドの活性を少なくとも1種有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、又は融合ポリペプチドをコードしている核酸が挙げられる。DXP経路のポリペプチド及び核酸の例としては、本明細書に記載の任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸、並びに本明細書に記載の任意の生物資源から誘導されるポリペプチド変異体及び核酸変異体が挙げられる。DXP経路のポリペプチド及び核酸の例としては、並びにDXP経路のポリペプチド活性を測定する方法については、国際公開第2010/148150号に、より詳細に記載されている。
例示的なDXSポリペプチドとしては、DXSポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、及び融合ポリペプチドが挙げられる。標準法(本明細書に記載されるものなど)を用い、ポリペプチドが、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでピルビン酸及びD−グリセルアルデヒド−3−リン酸を1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸ヘと変換する能力を測定することで、ポリペプチドがDXSポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。DXSポリペプチド及び核酸の例並びにDXS活性の測定法の例は、国際公開第2009/076676号、米国特許出願第12/335,071号(米国特許出願公開第2009/0203102号)、国際公開第2010/003007号、米国特許出願公開第2010/0048964号、国際公開第2009/132220号、及び米国特許出願公開第2010/0003716号に、より詳細に記載される。
特に、DXSポリペプチドは、ピルビン酸及びD−グリセルアルデヒド3−リン酸を1−デオキシ−d−キシルロース5−リン酸(DXP)ヘと変換する。標準法を用い、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでポリペプチドがピルビン酸及びD−グリセルアルデヒド−3−リン酸を変換する能力を測定することで、ポリペプチドがDXSポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。
DXRポリペプチドは、1−デオキシ−d−キシルロース5−リン酸(DXP)を2−C−メチル−D−エリスリトール4−リン酸(MEP)ヘと変換する。標準法を用い、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでポリペプチドがDXPを変換する能力を測定することで、ポリペプチドがDXRポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。
MCTポリペプチドは、2−C−メチル−D−エリスリトール4−リン酸(MEP)を4−(シチジン5’−ジホスホ)−2−メチル−D−エリスリトール(CDP−ME)ヘと変換する。標準法を用い、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでポリペプチドがMEPを変換する能力を測定することで、ポリペプチドがMCTポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。
CMKポリペプチドは、4−(シチジン5’−ジホスホ)−2−C−メチル−D−エリスリトール(CDP−ME)を2−ホスホ−4−(シチジン5’−ジホスホ)−2−C−メチル−D−エリスリトール(CDP−MEP)ヘと変換する。標準法を用い、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでポリペプチドがCDP−MEを変換する能力を測定することで、ポリペプチドがCMKポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。
MCSポリペプチドは、2−ホスホ−4−(シチジン5’−ジホスホ)−2−C−メチル−D−エリスリトール(CDP−MEP)を2−C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロジホスフェート(ME−CPP又はcMEPP)ヘと変換する。標準法を用い、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでポリペプチドがCDP−MEPを変換する能力を測定することで、ポリペプチドがMCSポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。
HDSポリペプチドは、2−C−メチル−D−エリスリトール2,4−シクロジホスフェートを(E)−4−ヒドロキシ−3−メチルブタ−2−エン−1−イルジホスフェート(HMBPP又はHDMAPP)ヘと変換する。標準法を用い、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでポリペプチドがME−CPPを変換する能力を測定することで、ポリペプチドがHDSポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。
HDRポリペプチドは、(E)−4−ヒドロキシ−3−メチルブタ−2−エン−1−イルジホスフェートをイソペンテニルジホスフェート(IPP)及びジメチルアリールジホスフェート(DMAPP)ヘと変換する。一実施形態では、HDRポリペプチドのコードには、ispH遺伝子を使用することができる。IspHは、1−ヒドロキシ−2−メチル−2−(E)−ブテニル4−ジホスフェートレダクターゼ、4Fe−4Sタンパク質、ECK0030、JW0027、lytB、yaaE、及びb0029としても知られている。標準法を用い、インビトロで、細胞抽出物中で又はインビボでポリペプチドがHMBPPを変換する能力を測定することで、ポリペプチドがHDRポリペプチド活性を有するか否かを判定することができる。
MVA経路、イソプレン合成酵素、IDI及びDXP経路のポリペプチドに関する生物資源
イソプレン合成酵素、IDI、DXP経路及び/又は下流MVA経路の核酸は、イソプレン合成酵素、IDI、DXP経路及び/又はMVA経路の核酸を天然に含有する任意の生物から得ることができる。イソプレンは、細菌、酵母、植物及び動物などの様々な生物により天然に生成される。一部の生物は、イソプレンの産生に関係するMVA経路を含有する。イソプレン合成酵素の核酸は、例えば、イソプレン合成酵素を含有する任意の生物から得ることができる。したがってMVA経路の核酸は、例えば、MVA経路を含有する任意の生物から得ることができる。IDI及びDXP経路の核酸は、例えば、IDI及びDXP経路を含有する任意の生物から得ることができる。
イソプレン合成酵素、DXP経路、IDI、及び/又はMVA経路の核酸の核酸配列は、細菌、真菌、植物、藻類、又はシアノ細菌から単離することができる。生物資源の例としては、例えば、酵母、例えばサッカロマイセス(Saccharomyces)(例えば、サッカロマイセス・セレヴィシエ(S.cerevisiae)、微生物、例えば、エシェリキア(Escherichia)(例えば、大腸菌(E. coli))、又はメタノサルシナ(Methanosarcina)(例えば、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei))又はメタノコッカシド(Methanococcoides)(例えば、メタノコッカシド・バートニイ(M. Burtonii))、植物、例えばクズ(kudzu)又はポプラ(poplar)(例えば、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)、又はウラジロハコヤナギ(Populus alba)xトレムラ(tremula)CAC35696))又はヤマナラシ(aspen)(例えば、アメリカヤマナラシ(Populus tremuloides))が挙げられる。使用することのできるイソプレン合成酵素、IDI、及び/又はMVA経路ポリペプチドの資源例は、国際特許出願公開第2009/076676号、同第2010/003007号、同第2009/132220号、同第2010/031062号、同第2010/031068号、同第2010/031076号、同第2010/013077号、同第2010/031079号、同第2010/148150号、同第2010/078457号、及び同第2010/148256号にも記載される。
一部の実施形態では、微生物源は、例えば、アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)及びアスペルギルス・ニガー(A. niger)などのアスペルギルス(aspergillus)種、サッカロマイセス・セレヴィシエ(S. cerevisiae)などのサッカロマイセス(Saccharomyces)種、シゾサッカロマイセス・ポンベ(S. pombe)などのシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)種、及びトリコデルマ・リーゼイ(T. reesei)などのトリコデルマ(trichoderma)種の真菌である。一部の実施形態では、微生物源は糸状真菌細胞である。用語「糸状菌」は、真菌のうち糸状形態をとるものすべてを指す(Alexopoulos,C.J.(1962),Introductory Mycology,Wiley,New Yorkを参照されたい)。これらの真菌は、キチン、セルロース、及びその他の複合多糖からなる細胞壁を有する栄養菌糸を示すことを特徴とする。糸状菌は、酵母とは、形態学的に、生理学的に、及び遺伝学的に異なる。糸状菌の栄養生長は菌糸の伸展によるものであり、炭素の異化は絶対好気性である。糸状菌親細胞は、限定するものではないが、トリコデルマ(trichoderma)種(例えば、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、これまでT.ロンギブラキアタム(T. longibrachiatum)として分類されていたヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)の無性形態、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)(Sheir−Neirs et al.,1984,Appl.Microbiol.Biotechnol.20:46〜53;ATCC No.56765及びATCC No.26921);ペニシリウム(Penicillium sp.)、ヒュミコラ(Humicola sp.)(例えば、ヒュミコラ・インソレンス(H. insolens)、ヒュミコラ・ラヌギノーサ(H. lanuginose)、又はヒュミコラ・グリセア(H. grisea));クリソスポリウム(Chrysosporium sp.)(例えば、クリソスポリウム・ラックノウエンス(C. lucknowense)、グリオクラジウム(Gliocladium sp.)、アスペルギルス(Aspergillus sp.)(例えば、アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)、ショウユコウジカビ(A sojae)、アスペルギルス・ジャポニクス(A. japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(A. nidulans)、又はアワモリコウジカビ(A. awamori))(Ward,M.et al.,1993,Appl.Microbiol.Biotechnol.39:738〜743、及びGoedegebuur et al.,2002,Genet 41:89〜98)、フザリウム(Fusarium sp.)、(例えば、フザリウム・ロゼウム(F. roseum)、フザリウム・グラミナム(F. graminum)、フザリウム・セレアリス(F. cerealis)、フザリウム・オキシスポラム(F. oxysporuim)、又はフザリウム・ベネナタム(F. venenatum))、ニューロスポラ(Neurospora sp.)、(例えば、ニューロスポラ・クラッサ(N. crassa))、ヒポクレア(Hypocrea sp.)、ムコール(Mucor sp.)(例えば、ムコール・ミエヘイ(M. miehei))、リゾプス(Rhizopus sp.)及びエメリセラ(Emericella sp)(同様に、Innis et al.,1985,Sci.228:21〜26を参照されたい)の細胞であってよい。用語「トリコデルマ(Trichoderma)」又は「トリコデルマ(Trichoderma sp.)」又は「トリコデルマ(Trichoderma spp.)」は、従来又は現在リコデルマとして分類されている任意の真菌属を指す。
一部の実施形態では、真菌は、アスペルギルス・ニデュランス(A. nidulans)、アワモリコウジカビ(A. awamori)、アスペルギルス・オリザエ(A. oryzae)、アスペルギルス・アクレタス(A. aculeatus)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)、アスペルギルス・ジャポニクス(A. japonicus)、トリコデルマ・リーゼイ(T. reesei)、トリコデルマ・ビリデ(T. viride)、フザリウム・オキシスポラム(F. oxysporum)、又はフザリウム・ソラニ(F. solani)である。アスペルギルス(aspergillus)株は、Ward,M.et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.39:738〜743並びにGoedegebuur et al.,2002,Curr Gene 41:89〜98に開示されており、これらの非特許文献は、参照により、その全体が、特に真菌について本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、真菌は、トリコデルマ・リーゼイ(T. reesei)株などのトリコデルマ(trichoderma)株である。トリコデルマ・リーゼイ(T. reesei)株は既知であり、非限定的な例としては、受託番号13631、受託番号26921、受託番号56764、受託番号56765、受託番号56767、及びNRRL 15709が挙げられる。これらの文献に記載される内容を、特にトリコデルマ・リーゼイ(T. reesei)株に関し、それぞれ参照により、本開示に明示的に援用する。一部の実施形態では、宿主株はRL−P37誘導体である。RL−P37はSheir−Neiss et al.,1984,Appl.Microbiol.Biotechnology 20:46〜53に報告されており、この非特許文献は、参照により、その全体が、特にトリコデルマ・リーゼイ(T. reesei)株について本明細書に組み込まれる。
一部の態様では、生物資源は酵母であり、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces sp.)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces sp.)、ピキア(Pichia sp.)又はカンジダ(Candida sp.)である。
一部の態様では、宿主細胞は、バチルス・リケノフォルミス(B.lichenoformis)又はバチルス・スブチリス(B. subtilis)などのバチルス(Bacillus)株、パントエア・シトレア(P. citrea)などのパントエア(Pantoea)株、シュードモナス・アルカリゲネス(P. alcaligenes)などのシュードモナス(Pseudomonas)株、ストレプトマイセス・リビダンス(S. lividans)又はストレプトマイセス・ルビギノーサス(S. rubiginosus)などのストレプトマイセス(Streptomyces)株、大腸菌(E. coli)などのエシェリキア(Escherichia)株、エンテロバクター株(Enterobacter)、ストレプトコッカス(Streptococcus)株、又はメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)などの古細菌株である。
本明細書で使用するとき、「バチルス(Bacillus)」属としては、当業者に既知の「バチルス(Bacillus)属」のすべての種を包含し、限定するものではないが、例えば、バチルス・スブチリス(B. subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)、バチルス・レンタス(B. lentus)、バチルス・ブレビス(B. brevis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィルス(B. alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、バチルス・クラウシイ(B. clausii)、バチルス・ハロデュランス(B. halodurans)、バチルス・メガテリウム(B. megaterium)、バチルス・コアギュランス(B. coagulans)、バチルス・サーキュランス(B. circulans)、バチルス・ロータス(B. lautus)、及びバチルス・チューリンゲンシス(B. thuringiensis)が挙げられる。バチルス属は分類上の再編成を受け続けるものと認識される。したがって、この属は、再分類された種を包含することを意図し、例えば、限定するものではないが、現在は「ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)」と命名されたバチルス・ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)のような生物を包含する。酸素存在下での耐性内生胞子の生成はバチルス属の決定的特徴と考えられるが、この特徴は最近命名されたアリシクロバチルス(Alicyclobacillus)、アンフィバチルス(Amphibacillus)、アネウリニバチルス(Aneurinibacillus)、アノキシバチルス(Anoxybacillus)、ブレビバチルス(Brevibacillus)、フィロバチルス(Filobacillus)、グラシリバチルス(Gracilibacillus)、ハロバチルス(Halobacillus)、パエニバチルス(Paenibacillus)、サリバチルス(Salibacillus)、サーモバチルス(Thermobacillus)、ウレイバチルス(Ureibacillus)、及びビルジバチルス(Virgibacillus)にも当てはまる。
一部の態様では、生物資源はグラム陽性細菌である。非限定的な例としては、ストレプトマイセス(Streptomyces)株(例えば、ストレプトミセス・リビダンス(S. lividans)、ストレプトマイセス・セリカラー(S. coelicolor)、又はストレプトマイセス・グリセウス(S. griseus))及びバチルス株が挙げられる。一部の態様では、生物資源は、大腸菌(E. coli)又はシュードモナス属(Pseudomonas sp.)などのグラム陰性細菌である。一部の態様では、生物資源はラクトバチルス・アシドフィルス(L. acidophilus)である。
一部の態様では、微生物源は植物であり、例えば、マメ科(Fabaceae)、例えばマメ亜科(Faboideae)などの植物である。一部の態様では、生物資源はクズ(kudzu)、ポプラ(poplar)(例えば、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)xトレムラ(tremula)CAC35696など)、アスペン(例えば、アメリカヤマナラシ(Populus tremuloides))、又はヨーロッパナラ(Quercus robur)である。
一部の態様では、微生物源は、藻類、例えば緑藻、紅藻、灰色藻、クロララクニオン藻、ミドリムシ目、クロミスタ、又は渦鞭毛藻類である。
一部の態様では、生物資源は、形態に基づき次の群:クロオコッカス(Chroococcales)、プレウロカプサ(Pleurocapsales)、ユレモ(Oscillatoriales)、ネンジュモ(Nostocales)、又はスティゴネマ(Stigonematales)のいずれかに分類される、ラン藻である。
ホスホケトラーゼ核酸及びポリペプチド
本発明の一部の態様では、本開示の組成物又は方法のいずれかに記載の組み換え細胞は、ホスホケトラーゼポリペプチドをコードしている1種以上の核酸、又はホスホケトラーゼ活性を有するポリペプチドを更に含む。一部の態様では、ホスホケトラーゼポリペプチドは内在性ポリペプチドである。一部の態様では、ホスホケトラーゼポリペプチドをコードしている内在性核酸は、調節可能なように常時発現型プロモーターに連結される。一部の態様では、ホスホケトラーゼポリペプチドをコードしている内在性核酸は、調節可能なように誘導型プロモーターに連結される。一部の態様では、ホスホケトラーゼポリペプチドをコードしている内在性核酸は、調節可能なように高発現型プロモーターに連結される。一部の態様では、ホスホケトラーゼポリペプチドをコードしている内在性の核酸を1つ以上(例えば、ホスホケトラーゼポリペプチドをコードしている内在性の核酸の2、3、又は4種以上のコピー)を使用する。特定の態様では、細胞は、野生型細胞と比べ、内在性のホスホケトラーゼポリペプチドが過剰発現するよう遺伝子操作される。一部の態様では、ホスホケトラーゼポリペプチドをコードしている内在性核酸は、調節可能なように低発現型プロモーターに連結される。
ホスホケトラーゼ酵素は、キシルロース5−リン酸のグリセルアルデヒド3−リン酸及びアセチルリン酸への変換、並びに/又はフルクトース6−リン酸のエリトロース4−リン酸及びアセチルリン酸への変換を触媒する。特定の実施形態では、ホスホケトラーゼ酵素は、キシルロース5−リン酸のグリセルアルデヒド3−リン酸及びアセチルリン酸への変換を触媒する。他の実施形態では、ホスホケトラーゼ酵素は、フルクトース6−リン酸のエリトロース4−リン酸及びアセチルリン酸への変換を触媒する。したがって、理論に束縛されるものではないが、本明細書で説明されるとおりホスホケトラーゼを発現させることにより、炭水化物資源から生成されるアセチルリン酸量を増加させることができる。このアセチルリン酸をアセチルCoAへと変換させ、更にこれを利用して、MVA経路に関係する酵素活性により、メバロン酸、イソプレノイド前駆体分子、イソプレン及び/又はイソプレノイドを生成させることができる。したがって、炭水化物基質より生成されるこれらの化合物量を増加させることができる。あるいは、細胞内濃度の上昇という形式で生成性の向上が反映されずとも、アセチル−P及びAcCoAの生成量を増加させることができる。特定の実施形態では、細胞内アセチル−P又はアセチルCoA濃度は、ホスホケトラーゼによる反応が生じた場合でさえ変化せず一定であり、又は減少する場合すらある。
ホスホケトラーゼの核酸の例としては、ホスホケトラーゼポリペプチドの活性を少なくとも1種有するポリペプチド、ポリペプチド断片、ペプチド、又はポリペプチド融合物をコードしている核酸が挙げられる。ホスホケトラーゼのポリペプチド及び核酸の例としては、本明細書に記載の任意の生物資源から天然に生じるポリペプチド及び核酸、並びに本明細書に記載の任意の生物資源から誘導されるポリペプチド変異体及び核酸変異体が挙げられる。
標準法を使用し、ペプチドがD−フルクトース6−リン酸又はD−キシルロース5−リン酸をアセチル−Pへと変換する能力を測定することで、ポリペプチドがホスホケトラーゼペプチド活性を有するかを判断できる。次に、アセチル−Pはフェリルアセチルヒドロキサム酸(ferryl acetyl hydroxamate)に変換され得る。この変換は、分光測定により検出可能である(Meile et al.,2001,J.Bact.183:2929〜2936)。本発明での使用には、本明細書に記載されるとおりホスホケトラーゼペプチド活性を有するとして判定された任意のポリペプチドが好適である。
他の態様では、ホスホケトラーゼの核酸の例としては、限定するものではないが、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、フェリモナス・バレアリカ(Ferrimonas balearica)、ペドバクター・サルタンス(Pedobactor saltans)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、及び/又はノカルディオプシス・ダッソンビレイ(Nocardiopsis dassonvillei)から単離したホスホケトラーゼが挙げられる。本明細書において使用することのできるホスホケトラーゼ酵素の更なる例は、米国特許第7,785,858号及び国際特許出願公開第2011/159853号に開示されており、これらの特許文献は参照により本明細書に組み込まれる。
エントナー・ドゥドロフ経路に関与する経路
エントナー・ドゥドロフ(ED)経路は、エムデン・マイヤーホフ・パルナス(EMP−解糖)経路とは異なる経路である。大腸菌(E. coli)などの一部の生物がED経路及びEMP経路の両方を内包するのに対し、その他の生物はいずれか1つの経路のみを有する。バチルス・スブチルス(Bacillus subtilis)はEMP経路のみを有するのに対し、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)はED経路のみを有する(Peekhaus and Conway,1998,J.Bact.180:3495〜3502;Stulke and Hillen,2000,Annu.Rev.Microbiol.54:849〜880;Dawes et al.1966.Biochem.J.98:795〜803)。
ホスホグルコン酸デヒドラターゼ(edd)は、6−ホスホ−D−グルコネートから一分子のHOを除去して2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコネート6−リン酸を生成するのに対し、2−ケト−3−デオキシグルコネート6−リン酸アルドラーゼ(eda)はアルドールを開裂する(Egan et al.1992.J.Bact.174:4638〜4646)。2つの遺伝子はオペロンの関係である。
ホスホケトラーゼ経路に指向する代謝経路をED経路に迂回させることもできる。ED経路に取り込まれる代謝産物が損失することを回避するため、ホスホグルコン酸デヒドラターゼ遺伝子(例えば、内在性ホスホグルコン酸デヒドラターゼ遺伝子)及び/又は2−ケト−3−デオキシグルコナーゼ6−リン酸アルドラーゼ遺伝子(例えば、内在性2−ケト−3−デオキシグルコネート6−リン酸アルドラーゼ遺伝子)活性を減弱させる。1つの手法としては、ホスホグルコン酸デヒドラターゼ(edd)及び/又は2−ケト−3−デオキシグルコネート6−リン酸アルドラーゼ(eda)を欠失させることで減弱を行うことができる。この欠失は、クロラムフェニコール又はカナマイシンカセットにより片方又はいずれもの遺伝子を置き換え、その後カセットを除去することで導入される。これらの酵素活性を存在させずとも、ホスホケトラーゼ酵素によってより多くの炭素を取り込むことができ、ひいてはメバロン酸、イソプレン、又はイソプレノイドの収率を増加させることができる。
ホスホグルコン酸デヒドラターゼ(edd)及び/又は2−ケト−3−デオキシグルコネート6−リン酸アルドラーゼ(eda)の活性は、酵素に関係する他の分子操作により減少させることもできる。酵素活性を低下させることで、比活性又は総活性を、活性を操作しなかった場合と比較して任意の量で低下させることができる。一部の例では、酵素活性を、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%低下させる。
一部の場合では、内在性ホスホグルコン酸デヒドラターゼ遺伝子及び/又は内在性2−ケト−3−デオキシグルコネート6−リン酸アルドラーゼ遺伝子の活性を減弱させることにより、内在性ホスホグルコン酸デヒドラターゼ遺伝子及び/又は内在性酢酸キナーゼ2−ケト−3−デオキシグルコネート6−リン酸アルドラーゼ遺伝子の発現を減弱させていない細胞と比較して、多量の炭素がメバロン酸依存性生合成経路に取り込まれることになる。
ペントースリン酸経路の酸化経路に関与する経路
大腸菌(E. coli)は、ペントースリン酸経路を使用してヘキソース及びペントースを分解し、各種代謝経路に関係する中間体を細胞に提供する。この経路は、NADPHの主要な生成経路でもある。ペントースリン酸経路は、酸化経路(グルコース6−リン酸1−デヒドロゲナーゼ(zwf)、6−ホスホグルコノラクトナーゼ(pgl)又は6−ホスホグルコネートデヒドロゲナーゼ(gnd)などの酵素による)及び非酸化経路(トランスケトラーゼ(tktA)、トランスアルドラーゼ(talA又はtalB)、リブロース−5−リン酸−エピメラーゼ及び(又は)リボース−5−リン酸エピメラーゼなどの酵素による)から構成される(Sprenger.1995.Arch.Microbiol.164:324〜330)。
ホスホケトラーゼ酵素に炭素を直接作用させる目的で、ペントースリン酸経路の非酸化的経路(トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、リブロース−5−リン酸−エピメラーゼ、及び(又は)リボース−5−リン酸エピメラーゼ)の発現を調節して(例えば、酵素活性を上昇させる)、より多くの炭素をフルクトース6−ホスフェート及びキシルロース5−ホスフェートとして取り込ませて、最終的なメバロン酸、イソプレン及びイソプレノイド類の産生を増加させることができる。トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、リブロース−5−リン酸−エピメラーゼ及び(又は)リボース−5−リン酸エピメラーゼ活性を増加させることで、活性を操作しなかった場合と比較して比活性又は総活性を任意の量で増加させることができる。一部の例では、酵素活性は少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%上昇する。一部の態様では、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、リブロース−5−リン酸−エピメラーゼ及び(又は)リボース−5−リン酸エピメラーゼの活性は、内在性トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、リブロース−5−リン酸−エピメラーゼ及び(又は)リボース−5−リン酸エピメラーゼの活性を増強させることにより調節される。このような上昇は、内在性トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、リブロース−5−リン酸−エピメラーゼ及び(又は)リボース−5−リン酸エピメラーゼ遺伝子のプロモーターを常時高発現型の合成プロモーターにより置き換えることで得られる。トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、リブロース−5−リン酸−エピメラーゼ及び(又は)リボース−5−リン酸エピメラーゼをコードしている遺伝子を、プラスミド上の適切なプロモーターの後にクローン化させてもよい。トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、リブロース−5−リン酸−エピメラーゼ及び(又は)リボース−5−リン酸エピメラーゼの活性を増加させることにより、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、リブロース−5−リン酸−エピメラーゼ及び(又は)リボース−5−リン酸エピメラーゼの発現を増加させていない細胞と比較して多量の炭素をメバロン酸依存型の生合成経路に取り込ませることができる。
ホスホフルクトキナーゼに関与する経路
ホスホフルクトキナーゼは、解糖系でフルクトース6−リン酸のリン酸化を触媒する重要な酵素である。大腸菌(E. coli)はpfkA及びpfkBによりコードされる2種のイソ酵素を有する。細胞におけるホスホフルクトキナーゼ活性の大部分はpfkAによるものである(Kotlarz et al.1975,Biochim.Biophys.Acta,381:257〜268)。
ホスホケトラーゼ酵素を炭素に直接作用させるために、ホスホフルクトキナーゼの発現を調節(例えば、酵素活性を低下させるなど)して、より多量の炭素をフルクトース6−リン酸及びキシルロース5−リン酸へと変換させ、以降に続くメバロン酸、イソプレン、及びイソプレノイドの産生量を増加させることもできる。ホスホフルクトキナーゼ活性を低下させることで、比活性又は総活性を、活性を操作しなかった場合と比較して任意の量で低下させることができる。場合によっては、酵素活性の低減は、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%.又は100%の低減である。一部の態様では、内在性ホスホフルクトキナーゼの活性を低下させることにより、ホスホフルクトキナーゼの活性を調節する。このような調節は、内在性ホスホフルクトキナーゼ遺伝子プロモーターを常時低発現型合成プロモーターと置き換えることにより行うことができる。ホスホフルクトキナーゼをコードしている遺伝子を欠失させてもよい。ホスホフルクトキナーゼの活性を低下させることで、メバロン酸依存性の生合成経路への炭素の取り込みを、ホスホフルクトキナーゼの発現を低下させていない細胞と比較して増加させることができる。
その他の宿主細胞変異
本発明は、MVA経路に取り込まれる炭素量を増大させる追加の宿主細胞変異も企図する。炭素取り込み量を増加させることにより、イソプレン産生量を増加させることができる。本明細書に記載の通りの異種発現した核酸(例えば、異種発現したアセトアセチル−CoA合成酵素核酸)のいずれかを含む組換え細胞を、メバロン酸産生に取り込まれる炭素量が増加するよう遺伝子操作することができ、(a)クエン酸合成酵素、(b)ホスホトランスアセチラーゼ、(c)酢酸キナーゼ、(d)乳酸デヒドロゲナーゼ、(e)NADP依存型リンゴ酸酵素、並びに(f)ピルビン酸デヒドロゲナーゼからなる群の1種以上の酵素の活性が調節される。
クエン酸合成酵素による経路
クエン酸合成酵素は、オキサロ酢酸とアセチルCoAを縮合させることによるクエン酸(トリカルボン酸(TCA)回路の代謝生成物)の生成を触媒する(Ner,S.et al.1983.Biochemistry 22,:5243〜5249;Bhayana,V.and Duckworth,H.1984.Biochemistry 23:2900〜2905)(図5)。大腸菌(E. coli)では、gltAによりコードされたこの酵素は、二量体サブユニットからなる三量体様の挙動を示す。六量体の形成により、酵素はNADHによりアロステリックに制御されるようになる。この酵素は、これまでに広く研究されている(Wiegand,G.,and Remington,S.1986.Annual Rev.Biophysics Biophys.Chem.15:97〜117;Duckworth et al.1987.Biochem Soc Symp.54:83〜92;Stockell,D.et al.2003.J.Biol.Chem.278:35435〜43;Maurus,R.et al.2003.Biochemistry.42:5555〜5565)。NADHによるアロステリック阻害を回避するにあたって、これまでに、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)NADH感受性クエン酸合成酵素による置き換え、又はこの酵素の添加が検討されている(Underwood et al.2002.Appl.Environ.Microbiol.68:1071〜1081;Sanchez et al.2005.Met.Eng.7:229〜239)。
クエン酸合成酵素による触媒反応は、メバロン酸経路の第一工程を触媒し、同様にアセチルCoAを基質として使用するチオラーゼと直接的に競合する(Hedl et al.2002.J.Bact.184:2116〜2122)。したがって、当業者は、クエン酸合成酵素の発現を調節して(例えば、酵素活性を減少させて)、より多量の炭素がメバロン酸経路に取り込まれるようにすることで、メバロン酸及びイソプレンの最終的な産生量を増加させることができる。クエン酸合成酵素活性を低下させることで、比活性又は総活性を、活性を操作しなかった場合と比較して任意の量で低下させることができる。一部の例では、酵素活性を、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%低下させる。一部の態様では、クエン酸合成酵素に関係する内在性遺伝子の活性を減少させることにより、クエン酸合成酵素の活性を調節する。この調節は、NADH非感受性クエン酸合成酵素をコードしている導入遺伝子により、あるいはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)から誘導したNADH非感受性クエン酸合成酵素をコードしている導入遺伝子により、内在性クエン酸合成酵素遺伝子の染色体を置換することで実施できる。クエン酸合成酵素の活性は、内在性クエン酸合成酵素遺伝子のプロモーターを、常時低発現型の合成プロモーターと置き換えることによっても調節(例えば、低下させる)できる。クエン酸合成酵素の活性を低下させることで、メバロン酸依存性の生合成経路への炭素の取り込みを、クエン酸合成酵素の発現を低下させていない微生物と比較して増加させることができる。
ホスホトランスアセチラーゼ及び/又は酢酸キナーゼの関与する経路
ホスホトランスアセチラーゼ(pta)(Shimizu et al.1969.Biochim.Biophys.Acta 191:550〜558)は、アセチルCoAとアセチルリン酸(アセチル−P)の可逆性の変換を触媒するのに対し、酢酸キナーゼ(ackA)(Kakuda,H.et al.1994.J.Biochem.11:916〜922)は、アセチル−Pを使用して酢酸を生成する。これらの遺伝子は、大腸菌においてオペロンとして転写され得る。これらの遺伝子は共に、ATPの放出により酢酸の異化を触媒する。したがって、当業者は、ホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(例えば、内在性ホスホトランスアセチラーゼ遺伝子)及び/又は酢酸キナーゼ遺伝子(例えば、内在性酢酸キナーゼ遺伝子)の活性を減弱させて、利用可能なアセチルCo−Aを増加させることができる。減弱させる手法の一つとしては、ホスホトランスアセチラーゼ(pta)及び/又は酢酸キナーゼ(ackA)の欠失が挙げられる。この欠失は、クロラムフェニコールカセットにより片方又はいずれもの遺伝子を置き換え、その後カセットを除去することで導入される。酢酸は多様な理由により大腸菌(E. coli)により生成される(Wolfe,A.2005.Microb.Mol.Biol.Rev.69:12〜50)。理論に束縛されるものではないが、ackA−ptaはアセチル−CoAを使用することから、これらの遺伝子を欠失させることで、炭素は酢酸に転用されず、メバロン酸及び/又はイソプレンの収率が増加する。
一部の態様では、組み換え微生物は、内在性ホスホトランスアセチラーゼ遺伝子及び/又は内在性酢酸キナーゼ遺伝子の発現を減弱させていない微生物と比較して、酢酸の生成量が減少している。酢酸生成量の減少は、当業者に既知の所定のアッセイ法により測定できる。酢酸の生成量は、分子的な操作を行なっていない場合と比較して、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%減少する。
ホスホトランスアセチラーゼ(pta)及び/又は酢酸キナーゼ(ackA)の活性は、酵素に関係する他の分子的操作によっても低下させることができる。酵素活性を低下させることで、比活性又は総活性を、活性を操作しなかった場合と比較して任意の量で低下させることができる。一部の例では、酵素活性を、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%低下させる。
一部の場合では、内在性ホスホトランスアセチラーゼ遺伝子及び/又は内在性酢酸キナーゼ遺伝子の活性を減弱させることで、内在性ホスホトランスアセチラーゼ遺伝子及び/又は内在性酢酸キナーゼ遺伝子発現を減弱させていない微生物と比較して、メバロン酸依存性生合成経路への炭素原子の取り込みが増加する。
乳酸脱水素酵素の関与する経路
大腸菌(E. coli)では、D−乳酸は、乳酸デヒドロゲナーゼ(ldhA−図5)により、ピルビン酸から生成される(Bunch,P.et al.1997.Microbiol.143:187〜195)。乳酸の生成はNADHの酸化によりなされるため、乳酸は、酸素制限下で、かつ還元当量のすべてを収容できない場合に生成されることになる。したがって、乳酸の生成は、炭素消費の原因となり得る。そのため、メバロン酸産生(及び必要に応じてイソプレン産生)に取り込まれる炭素量を増加させるにあたり、当業者は、酵素活性を低減することにより乳酸デヒドロゲナーゼの活性を調節することができる。
したがって、一態様では、乳酸脱水素酵素の活性は、内在性乳酸脱水素酵素遺伝子の活性を減弱させることで調節できる。このような減弱は、内在性乳酸脱水素酵素遺伝子の欠失により実施できる。当業者に知られている、乳酸脱水素酵素遺伝子の活性を減弱させる他の手法も使用できる。乳酸脱水素酵素の関与する経路を操作することで、組み換え微生物の生成する乳酸量は、内在性乳酸脱水素酵素遺伝子の発現を減弱させていない微生物と比較して、減少することになる。乳酸の生成量の減少は、当業者に知られている所定のアッセイ法により測定できる。乳酸の生成量は、分子的な操作を行なっていない場合と比較して、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%減少する。
乳酸脱水素酵素の活性は、酵素に関係するその他の分子操作により低下させることもできる。酵素活性を低下させることで、比活性又は総活性を、活性を操作しなかった場合と比較して任意の量で低下させることができる。一部の例では、酵素活性を、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%低下させる。
したがって、一部の場合では、内在性乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の活性を減弱させることで、内在性乳酸デヒドロゲナーゼの遺伝子発現を減弱させていない微生物と比較して、メバロン酸依存性の生合成経路への炭素の取り込みが増加する。
リンゴ酸酵素の関与する経路
リンゴ酸酵素(大腸菌(E. coli)ではsfcA及びmaeB)は、次式に従いリンゴ酸のピルビン酸への変換を触媒する(NAD+又はNADP+を用いる)アナプレロティックな酵素である:
Figure 2015510392
したがって、この酵素の2種の基質は(S)−リンゴ酸及びNAD(P)であり、これらにより3種の生成物、すなわち、ピルビン酸、CO、及びNADPHが生成される。
NADP依存型リンゴ酸酵素(maeB−図5)(Iwikura,M.et al.1979.J.Biochem.85:1355〜1365)を発現させ、1)TCAサイクルの炭素を、それ自体がメバロン酸経路の直接的な前駆体であるアセチル−CoAの直接的な前駆体であるピルビン酸に戻し、2)HMG−CoAレダクターゼによる反応に使用され得る過剰なNADPHを産生することにより(Oh,MK et al.(2002)J.Biol.Chem.277:13175〜13183;Bologna,F.et al.(2007)J.Bact.189:5937〜5946)、メバロン酸及び/又はイソプレン収率の増加を助けることができる。
そのため、リンゴ酸酵素の活性及び/又は発現を増加させるなどして調節することにより下流でのメバロン酸及び/又はイソプレン生産に関係する開始基質(ピルビン酸又はアセチル−CoA)がより多く得られる。NADP依存性のリンゴ酸酵素の遺伝子は、内在性遺伝子であってよい。非限定的な手法の1つとしては、NADP依存性のリンゴ酸酵素の内在性遺伝子プロモーターを、常時発現型の合成発現プロモーターにより置き換えるというものが挙げられる。酵素活性を増加させる手法のその他の非限定例としては、NADP依存性のリンゴ酸酵素ポリペプチドをコードしている1つ以上の異種核酸を用いるものが挙げられる。当業者は、容易に利用可能な分子生物学手技を用い発酵又は培養する際に、maeB RNAの発現をモニターすることができる。
したがって、一部の実施形態では、組み換え微生物は、NADP依存性のリンゴ酸酵素遺伝子の発現を増加させていない微生物と比較して、ピルビン酸の産生量が増加する。一部の態様では、NADP依存性のリンゴ酸酵素遺伝子の活性を増加させることで、NADP依存性のリンゴ酸酵素遺伝子の発現を増加させていない微生物と比較して、メバロン酸依存性の生合成経路への炭素原子の取り込みが増加する。
ピルビン酸生成量の増加は、当業者に既知の所定のアッセイ法により測定できる。ピルビン酸の生成量は、分子的な操作を行なっていない場合と比較して、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%増加する。
リンゴ酸酵素の活性は、酵素に関係するその他の分子操作により増加させることもできる。酵素活性を増加させることで、比活性又は総活性を、活性を操作しなかった場合と比較して任意の量で増加させることができる。一部の例では、酵素活性を、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%増加させる。
ピルビン酸脱水素酵素複合体の関与する経路
ピルビン酸のアセチル−CoAへの脱炭酸を触媒するピルビン酸脱水素酵素複合体は、遺伝子aceE、aceF、及びlpdAによりコードされるタンパク質から構成される。これらの遺伝子の転写は、複数の制御因子により制御される。したがって、当業者は、ピルビン酸脱水素酵素複合体の活性を調節して、アセチル−CoAを増加することができる。調節により、ピルビン酸脱水素酵素複合体の活性及び/又は発現(例えば、常時発現)を増加させることができる。このような調節は、異なる手法により、例えば、PL.6(aattcatataaaaaacatacagataaccatctgcggtgataaattatctctggcggtgttgacataaataccactggcggtgatactgagcacatcagcaggacgcactgaccaccatgaaggtg−ラムダプロモーター、GenBank NC_001416(配列番号15)などの強力な常時発現型プロモーターをオペロンの前に配置することにより、あるいは常時発現型合成プロモーターを1種以上用いることにより行うことができる。
したがって、一態様では、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの活性は、(a)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)、(b)ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ、及び(c)ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼから構成されるピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体に関係する、1種以上の遺伝子の活性を増加させることで調節される。これらの遺伝子のうちの任意の1つ、2つ、又は3つを操作して、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの活性を増加させることができることは理解される。他の態様では、以降に更に説明するように、ピルビン酸脱水素酵素複合体の活性は、内在性ピルビン酸脱水素酵素複合体のリプレッサー遺伝子の活性を減弱させることで調節できる。内在性ピルビン酸脱水素酵素複合体のリプレッサーの活性は、内在性ピルビン酸脱水素酵素複合体リプレッサー遺伝子を欠失させることにより減弱させることができる。
一部の場合では、ピルビン酸脱水素酵素複合体に関係する遺伝子の1つ以上は内在性遺伝子である。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の活性を増加させるその他の方法としては、微生物に、(a)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(E1)、(b)ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ、及び(c)ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼからなる群に由来するポリペプチを1つ以上コードしている異種核酸を1つ以上導入することによるものが挙げられる。
これらの方法のうち任意のものを用いることで、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性の調節されていない微生物と比較して、組み換え微生物によるアセチルCo−Aの産生量を増加させることができる。ピルビン酸脱水素酵素の活性を調節することで、ピルビン酸脱水素酵素の発現を調節していない微生物と比較して、メバロン酸依存性の生合成経路への炭素原子の取り込みを増加させることができる。
変異の組み合わせ
本開示の酵素及び/又は酵素経路の何れかに関し、本開示の酵素及び/又は酵素経路の任意の組み合わせ(これらのうち2、3、4、5、又は6の組み合わせ)を調節する分子的操作は、明確に企図されることは理解される。組み合わせの引用を容易にするために、クエン酸合成酵素(gltA)はAと記載し、ホスホトランスアセチラーゼ(ptaB)はBと記載し、酢酸キナーゼ(ackA)はCと記載し、乳酸脱水素酵素(ldhA)はDと記載し、リンゴ酸酵素(sfcA又はmaeB)はEと記載し、かつピルビン酸脱炭酸酵素(aceE、aceF、及び/又はlpdA)はFと記載する。上記の通り、ピルビン酸脱炭酸酵素複合体のaceE、aceF、及び/又はlpdA酵素を単独で使用して、又は3つの酵素のうち2つを、又は3つ酵素のうち3つを使用して、ピルビン酸脱炭酸酵素の活性を増加させることができる。
したがって、酵素A〜Fのうちの任意の2つの組み合わせに関し、使用することのできる非限定的な組み合わせとしては:AB、AC、AD、AE、AF、BC、BD、BE、BF、CD、CE、CF、DE、DF、及びEFが挙げられる。酵素A〜Fのうちの任意の3つの組み合わせに関し、使用することのできる非限定的な組み合わせとしては:ABC、ABD、ABE、ABF、BCD、BCE、BCF、CDE、CDF、DEF、ACD、ACE、ACF、ADE、ADF、AEF、BDE、BDF、BEF、及びCEFが挙げられる。酵素A〜Fのうちの任意の4つの組み合わせに関し、使用することのできる非限定的な組み合わせとしては:ABCD、ABCE、ABCF、ABDE、ABDF、ABEF、BCDE、BCDF、CDEF、ACDE、ACDF、ACEF、BCEF、BDEF、及びADEFが挙げられる。酵素A〜Fのうちの任意の5つの組み合わせに関し、使用することのできる非限定的な組み合わせとしては:ABCDE、ABCDF、ABDEF、BCDEF、ACDEF、及びABCEFが挙げられる。他の態様では、6つの酵素の組み合わせ:ABCDEFが使用される。
したがって、本開示に記載する通りの組み換え微生物は、トリカルボン酸(TCA)サイクルの活性条件下で増殖しない微生物と比較して、メバロン酸産生を増加させることができ、(a)クエン酸合成酵素、(b)ホスホトランスアセチラーゼ及び/又は酢酸キナーゼ、(c)乳酸脱水素酵素、(d)リンゴ酸酵素、並びに(e)ピルビン酸脱炭酸酵素複合体からなる群の1つ以上の酵素の活性を調節することで、組み換え微生物における代謝性炭素の取り込みがメバロン酸の産生に指向する。
イソプレン産生の増加に関係するその他の制御分子及び因子
他の分子的操作を使用して、イソプレン産生に指向する炭素取り込みを増加させることができる。このような方法のうちの1つは、メバロン酸経路に合流する経路に対する負の制御効果を減少させ、低下させるか、又は除去するものである。例えば、一部の場合では、遺伝子aceEF−lpdAはオペロンであり、pdhRの上流に遺伝子を4つ有する。pdhRは、このオペロンの転写に対する負の制御因子である。pdhRは、ピルビン酸の非存在下で標的プロモーターに結合し、転写を抑制する。この制御因子は同様の手法でndh及びcyoABCDも制御する(Ogasawara,H.et al.2007.J.Bact.189:5534〜5541)。一態様では、pdhR制御因子を欠失させることにより、ピルビン酸の供給及びそれに伴うメバロン酸及び/又はイソプレンの産生性を向上させることができる。
他の態様では、メバロン酸及び/又はイソプレンの産生性を向上させるために、PGLを欠損している微生物(各種大腸菌(E. coli)株など)に6−ホスホグルコノラクトナーゼ(PGL)を導入し、使用することができる。PGLは、染色体への組み込み、又はプラスミドなどの染色体外のビヒクルを用い、導入することができる。他の態様では、内在性PGLを発現している微生物(各種大腸菌(E. coli)株など)のゲノムから、PGLを欠失させて、メバロン酸及び/又はイソプレンの生産を増大させることもできる。一部の態様では、PGLを欠失させることで、PGLを発現している微生物と比較して、包括的に約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%ほど(これらの割合の間の任意の値も含む)、イソプレンの収率が高くなる。他の態様では、PGLを欠失させることで、PGLを発現している微生物と比較して包括的に約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%ほど(これらの割合の間の任意の値も含む)、イソプレンの瞬間的な収率が高くなる。他の態様では、PGLを欠失させることで、PGLを発現している微生物と比較して、包括的に約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%ほど(これらの割合の間の任意の値も含む)、細胞産生性指数が高くなる。他の態様では、PGLを欠失させることで、PGLを発現している微生物と比較して、包括的に約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%ほど(これらの割合の間の任意の値も含む)、容積産生量が高くなる。他の態様では、PGLを欠失させることで、PGLを発現している微生物と比較して、包括的に約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%ほど(これらの割合の間の任意の値も含む)、最大比産生量が高くなる。一部の態様では、PGLを欠失させることで、PGLを発現している微生物と比較して、より長期間、最大比産生量が維持されることになる。
例示的な宿主細胞
当業者であれば、具体的な宿主株における遺伝子発現を最適化する特定の配列を含有するよう、発現ベクターが設計されることを認識するであろう。このような最適化配列としては、限定するものではないが、複製起点、プロモーター、及びエンハンサーが挙げられる。本明細書で参照するベクター及び配列は例示目的で記載され、本発明の範囲を狭めることを意味するものではない。
任意の微生物又はそれらの子孫微生物を使用して、本明細書に記載のいずれかの遺伝子(異種又は同種)を発現させすることができる。グラム陽性又はグラム陰性細菌などの細菌細胞を使用して、本開示に記載の遺伝子のうち任意のものを発現させることができる。具体的には、本明細書に記載の遺伝子は、大腸菌(E. coli)、パントエア・シトレア(P. citrea)、バチルス・スブチリス(B. subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)、バチルス・レンタス(B. lentus)、バチルス・ブレビス(B. brevis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィルス(B. alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、バチルス・クラウシィ(B. clausii)、バチルス・ハロドュランス(B. halodurans)、バチルス・メガテリウム(B. megaterium)、バチルス・コアギュランス(B. coagulans)、バチルス・サーキュランス(B. circulans)、バチルス・ロータス(B. lautus)、バチルス・チューリンゲンシス(B. thuringiensis)、ストレプトマイセス・アルバス(S. albus)、ストレプトミセス・リビダンス(S. lividans)、ストレプトマイセス・セリカラー(S. coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(S. griseus)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、シュードモナス・アルカリゲネス(P. alcaligenes)、及びラクトバチルス・アシドフィルス(L. acidophilus)細胞のうちのいずれかで発現させることができる。一部の態様では、本明細書に記載の本明細書に記載の任意の組成物又は方法に使用する細菌細胞はコリネバクテリウム(Corynebacterium spp.)由来のものである。一部の態様では、本明細書に記載の本明細書に記載の任意の組成物又は方法に使用する細菌細胞は、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacilus lactis)などのラクトバチルス(Lactobacilus spp.)由来のものである。
本発明の組成物及び方法には、数多くの種類の嫌気生細胞を宿主細胞として使用することができる。本発明の一態様では、本明細書に記載の任意の組成物又は方法に関し記載される細胞は、絶対嫌気性細胞及びその子孫細胞である。絶対嫌気性菌は、典型的には、条件下に酸素が存在する場合には良好に増殖しない。絶対嫌気性菌が低濃度の酸素に対しある程度の耐性を示す場合には、少量の酸素が存在してもよいことは理解されるであろう。一態様では、イソプレンを産生するよう遺伝子操作した偏性嫌気性菌を、本明細書に記載のいずれかの方法及び/又は組成物のための宿主細胞として提供し、実質的に無酸素条件下で増殖させることができ、存在する酸素量は、嫌気性菌の増殖、維持、及び/又は発酵に有害な量ではない。
本発明の他の態様では、本明細書に記載の組成物又は方法のいずれかにおいて記載され及び/又は使用される宿主細胞は、通性嫌気性細胞及びその子孫細胞である。酸素が存在する場合、通性嫌気性菌は、好気呼吸により(例えば、TCAサイクルを利用するなどして)細胞ATPを生成し得る。しかしながら、通性嫌気性菌も、酸素の非存在下で増殖させることができる。絶対嫌気性菌とは対照的に、通性嫌気性菌はより多量の酸素の存在下で死滅し、又は増殖性が乏しくなる。したがって、一態様では、通性嫌気性菌は、本明細書で提供される組成物及び/又は方法のいずれかにおいて、宿主細胞として使用でき、イソプレンを産生するよう遺伝子操作を行うことができる。通性嫌気性の宿主細胞は、実質的に無酸素(存在する酸素量が、増殖、嫌気性菌の維持、及び/又は発酵に有害なものではないことを意味する)条件下で増殖させることができ、あるいは酸素がより多量に存在している場合にも増殖することができる。
宿主細胞は、糸状真菌細胞及びその子孫細胞であってもよい。(例えば、Berka & Barnett,Biotechnology Advances,(1989),7(2):127〜154を参照されたい)。一部の態様では、糸状菌細胞はトリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・ビリデ(T. viride)、トリコデルマ・コニンギ(T. koningii)、トリコデルマ・ハルジアナム(T. harzianum)、ペニシリウム(Penicillium sp.)、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、ヒュミコラ・ラヌギノス(H. lanuginose)、ヒュミコラ・グリセア(H. grisea)、クリソスポリウム(Chrysosporium sp.)、クリソスポリウム・ラックノウエンス(C. lucknowense)、グリオクラジウム(Gliocladium sp.)、アスペルギルス(Aspergillus sp.)、例えば、アスペルギルス・オリゼ(A. oryzae)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)、ショウユコウジカビ(A sojae)、アスペルギルス・ジャポニクス(A. japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(A. nidulans)、又はアワモリコウジカビ(A. awamori)、フザリウム(Fusarium sp.)、例えばフザリウム・ロゼウム(F. roseum)、フザリウム・グラミニウム(F. graminum)、フザリウム・セレアリス(F. cerealis)、フザリウム・オキシスポラム(F. oxysporuim)、又はフザリウム・ベネナタム(F. venenatum)、ニューロスポラ(Neurospora sp.)、例えば、ニューロスポラ・クラッサ(N. crassa)、ヒポクレア(Hypocrea sp.)、ムコール(Mucor sp.)、例えば、ムコール・ミエヘイ(M. miehei)、リゾプス(Rhizopus sp.)又はエメリセラ(Emericella sp.)のいずれか由来のものであってよい。一部の態様では、真菌は、アスペルギルス・ニデュランス(A. nidulans)、アワモリコウジカビ(A. awamori)、アスペルギルス・オリゼ(A. oryzae)、アスペルギルス・アクレタス(A. aculeatus)、アスペルギルス・ニガー(A. niger)、アスペルギルス・ジャポニクス(A. japonicus)、トリコデルマ・リーゼイ(T. reesei)、トリコデルマ・ビリデ(T. viride)(T.viride)、フザリウム・オキシスポラム(F. oxysporum)又はフザリウム・ソラニ(F.solani)である。特定の実施形態では、本明細書で使用するためのプラスミド又はプラスミド配列には、米国特許出願公開第2011/0045563号に記載のものが包含される。
宿主細胞は、サッカロマイセス(Saccharomyces sp)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces sp.)、ピキア(Pichia sp.)、又はカンジダ属(Candida sp.)などの酵母であってもよい。一部の態様では、サッカロマイセス(Saccharomyces sp.)は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である(例えば、Romanos et al.,1992,Yeast,8(6):423〜488を参照されたい)。特定の実施形態では、本明細書で使用するプラスミド又はプラスミド配列には、米国特許第7,659,097号、及び米国特許出願公開第2011/0045563号に記載のものが包含される。
宿主細胞は、緑藻類、紅藻類、灰色藻類、クロララクニオン藻類、ミドリムシ類、クロミスタ類、又は渦鞭毛藻類などの藻類であってもよい。(例えば、Saunders及びWarmbrodt、「藻類及び酵母などの菌類における遺伝子発現(Gene Expression in Algae and Fungi, Including Yeast)」(1993年),National Agricultural Library,Beltsville,MDを参照されたい)。特定の実施形態では、本明細書で使用するためのプラスミド又はプラスミド配列には、米国特許出願公開第2011/0045563号に記載のものが包含される。一部の態様では、宿主細胞は、形態学に基づき次の群:クロオコッカス目(Chroococcales)、プレウロカプサ目(Pleurocapsales)、ユレモ目(Oscillatoriales)、ネンジュモ目(Nostocales)、又はスティゴネマ目(Stigonematales)(例えば、Lindberg et al.,2010,Metab.Eng.12(1):70〜79を参照されたい)のいずれかに分類されるラン藻などのラン藻である。特定の実施形態では、本明細書で使用するプラスミド又はプラスミド配列には、米国特許出願公開第2010/0297749号、同第2009/0282545号、及び国際公開第2011/034863号に記載のものが包含される。
一部の態様では、大腸菌(E. coli)宿主細胞を使用して、本明細書に記載の組成物及び方法において、1種以上のHMG−CoAレダクターゼ、イソプレン合成酵素、MVA経路(例えば、非チオラーゼMVA経路)、及び/又はDXP経路核酸を発現させることができる。一態様では、宿主細胞は、HMG−CoAレダクターゼ、イソプレン合成酵素、MVA経路(例えば、非チオラーゼMVA経路など)、及び/又はDXP経路核酸をコードしている1種以上の核酸を発現し、メバロン酸又はイソプレンを産生することのできる大腸菌(E. coli)株又はこれらの前駆細胞の組み換え細胞である。大腸菌(E. coli)宿主細胞は、異種発現したHMG−CoAレダクターゼをコードしている核酸、イソプレン合成酵素をコードしている核酸、MVA経路(例えば、チオラーゼ以外のMVA経路)の1つ以上をコードしている核酸、及び/又はDXP経路の1つ以上をコードしている核酸のうちの1種以上の異種発現を欠く同様の細胞よりも多量、高最大力価、及び高細胞生産性で、メバロン酸又はイソプレンを産生することができる。更に、大腸菌(E. coli)において異種発現させたHMG−CoAレダクターゼをコードしている核酸、イソプレン合成酵素をコードしている核酸、MVA経路(例えば、チオラーゼ以外のMVA経路)の1つ以上をコードしている核酸、及び/又はDXP経路の1つ以上をコードしている核酸のうちの1種以上は染色体コピー(例えば、大腸菌(E. coli)染色体)であってよい。他の態様では、大腸菌(E. coli)細胞は培養物である。
ベクター
本明細書に記載の任意の組成物及び方法には好適なベクターを使用することができる。例えば、適切なベクターを使用して、HMG−CoAレダクターゼ、イソプレン合成酵素、及び/又はチオラーゼ以外の1つ以上のMVA経路ポリぺプチドをコードしている遺伝子の1つ以上のコピーの発現を最適化することができる。一部の態様では、ベクターには選択マーカーを含有させる。選択可能なマーカーの例としては、これらに限定されるものではないが、抗生物質耐性の核酸(例えば、カナマイシン、アンピシリン、カルベニシリン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、フレオマイシン、ブレオマイシン、ネオマイシン又はクロラムフェニコール)、及び/又は宿主細胞に栄養面での利点などの代謝上の利点を与える核酸が挙げられる。一部の態様では、選択マーカーは使用せずに、HMG−CoAレダクターゼ、イソプレン合成酵素、及び/又はチオラーゼ以外のMVA経路ポリペプチドの核酸の1つ以上のコピーを宿主細胞のゲノムに組み込む。本開示の実施例において特徴づけられ又は使用される任意の1つのベクターを使用することができる。
形質転換法
アセトアセチル−CoA合成酵素、マロニル−CoA及びアセチル−CoAからアセトアセチル−CoA合成酵素を生成する酵素、チオラーゼ以外のMVA経路のポリペプチド、完全なMVA経路のポリペプチド(アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ(AA−CoAチオラーゼ)、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA合成酵素(HMG−CoA合成酵素)、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼ(HMG−CoAレダクターゼ)、メバロン酸キナーゼ(MVK)、ホスホメバロン酸キナーゼ(PMK)、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(MVD)、ホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(PMDC)及び/又はイソペンテニルリン酸キナーゼ(IPK)など)、DXP経路ポリペプチド、イソプレン合成酵素ポリペプチド、IDI、並びにイソプレン産生に必要とされる任意の他の酵素をコードしている核酸を、当業者に知られる任意の手法により宿主細胞(例えば、植物細胞、真菌細胞、酵母細胞、又は細菌細胞)に導入することができる。
宿主細胞へのDNAコンストラクト又はベクターの導入に一般的な手法、例えば、形質転換、電気穿孔法、核酸のマイクロインジェクション、形質導入、形質移入(例えば、リポフェクションを利用した又はDEAE−デキストリンを利用した遺伝子導入、あるいは組み換えファージウイルスを用いた遺伝子導入)、リン酸カルシウムDNA沈殿法を用いるインキュベーション、DNAコートした微粒子銃による高速導入、及びプロトプラストの融合などの手法を使用することができる。一般的な形質転換法は、当該技術分野で既知である(例えば、分子生物学領域の現行のプロトコル(F.M.Ausubel et al.(eds.)Chapter 9,1987;Sambrook et al.,「分子クローニング:実験室マニュアル第3版(Molecular Cloning 3rd: A Laboratory Manual, ed)」,Cold Spring Harbor,2001;及びCampbell et al.,1989,Curr.Genet.16:53〜56を参照されたい)。導入された核酸は、染色体DNAに組み込むことができ、又は染色体外の複製配列として維持することができる。形質転換体は、当該技術分野において既知の任意の方法により選別することができる。形質転換体を選択するのに好適な手法としては、国際公開第2009/076676号、米国特許出願第12/335,071号(米国特許公開第2009/0203102号)、国際公開第2010/003007号、米国特許公開第2010/0048964号、国際公開第2009/132220号及び米国特許公開第2010/0003716号が挙げられる。
一実施形態では、大腸菌(E. coli)などの細菌を宿主として使用する。この実施形態では、発現ベクターは、このような細菌において自己複製させることができるよう選択及び/又は遺伝子操作することができる。本開示に掲載する遺伝子に加え、プロモーター、リボソーム結合配列、転写終結配列も発現ベクターに含有させることができる。所望により、発現ベクターには、プロモーター活性を調節する遺伝子を含有させることもできる。
大腸菌(E. coli)などの宿主で発現させることができるものであれば、任意のプロモーターを使用することができる。使用することのできるこのようなプロモーターの例としては、大腸菌(E. coli)由来のtrpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、及びPRプロモーター、並びにファージ由来のT7プロモーターなどが挙げられる。更に、tacプロモーターなどの人工的に設計又は改変したプロモーターを使用することもできる。
その方法によりDNAが細菌に導入されるのであれば、発現ベクターの導入方法は特に限定はされない。このような手法の例としては、カルシウムイオンを使用する方法(Cohen,S.N.,et,al.,1972,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69:2110〜2114)、及び電気穿孔法が挙げられる。
酵母を宿主として使用する場合、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、又はピキア・パストリス(Pichia pastoris)を使用することができる。この場合、酵母で発現させることができるものであればプロモーターは特に限定はされない。このようなプロモーターの例としては、gallプロモーター、gal10プロモーター、熱ショックタンパク質プロモーター、MF.alpha.1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、及びAOX1プロモーターが挙げられる。
その方法により酵母にDNAが導入されるものであれば酵母への組み換えベクターの導入法は特に限定はされない。このような導入法の例としては、電気穿孔法(Becker,D.M.,et al.(1990)Methods.Enzymol.,194:182〜187)、スフェロプラスト法(Hinnen,A.et al.,(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,75:1929〜1933)、及び酢酸リチウム法(Itoh,H.:(1978)J.Bacteriol.,153:163〜168)が挙げられる。
例示的な細胞培養培地
本明細書で使用するとき、用語「最少培地(minimal medium又はminimal media))」は、概して細胞増殖に必要とされる最低限の栄養素を含有している増殖培地を指すが、常に1種以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10種以上のアミノ酸)が存在していないわけではない。最少培地は、典型的には:(1)細菌を増殖させるための炭素源;(2)細菌種及び増殖条件によって異なり得る様々な塩;並びに(3)水;を含有する。炭素源は、グルコースなどの単糖から、本明細書で以下により詳細に記載されるような、他のバイオマスのより複雑な加水分解物、例えば、酵母エキスなどといった多様なものであり得る。塩は、概してマグネシウム、窒素、リン及びイオウなどの必須元素を提供し、細胞がタンパク質及び核酸を合成できるようにする。また、最少培地には、特定のプラスミド及び同様物を維持すべく選別するために、抗菌剤などの選択剤を添加することもできる。例えば、微生物が、例えばアンピシリン又はテトラサイクリンなどの特定の抗菌剤に耐性である場合、耐性を欠く細胞の増殖を阻害する目的で培地に抗菌剤を添加することができる。培地には、所望される生理学的又は生化学的特性について選別するのに必要とされる、例えば特定のアミノ酸などといった他の化合物を添加することができる。
宿主細胞を培養するにあたり、任意の最少培地処方を使用することができる。最少培地処方の例としては、例えば、M9最少培地及びTM3最少培地が挙げられる。M9最少培地は、1Lにつき(1)200mLの滅菌M9塩類(1Lあたり64gのNaHPO−7HO、15gのKHPO、2.5gのNaCl及び5.0gのNHCl);(2)2mLの1MのMgSO(滅菌);(3)20mLの20%(重量/体積)グルコース(又は他の炭素源);及び(4)100μLの1MのCaCl(滅菌)を含有する。TM3最少培地は、1L中に(1)KHPO(13.6g);(2)KHPO(13.6g);(3)MgSO 7HO(2g);(4)クエン酸一水和物(2g);(5)クエン酸鉄アンモニウム(0.3g);(6)(NHSO(3.2g);(7)酵母エキス(0.2g);及び(8)1000X微量元素溶液(1mL)を含有する。pHは約6.8に調整し、溶液は濾過滅菌する。1000X微量元素は、1L中に(1)クエン酸一水和物(40g);(2)MnSO O(30g);(3)NaCl(10g);(4)FeSO 7HO(1g);(4)CoCl 6HO(1g);(5)ZnSO 7HO(1g);(6)CuSO 5HO(100mg);(7)HBO(100mg);及び(8)NaMoO 2HO(100mg)を含有する。pHは約3.0に調節する。
その他の最小培地の例は、(1)リン酸カリウムKHPO、(2)硫酸マグネシウムMgSO 7HO、(3)クエン酸一水和物C O、(4)クエン酸鉄アンモニウムNHFeC、(5)酵母エキス(biospringer)、(6)1000X改変微量金属溶液、(7)硫酸50%(重量/体積)、(8)foamblast 882(Emerald Performance Materials)及び(9)マクロ塩溶液3.36mLを含有する。成分のすべてを一緒に加え、脱イオン水に溶解させ、次に加熱滅菌する。続いて室温に冷却し、水酸化アンモニウム(28%)によりpHを7.0に調節し、用量に調整する。滅菌後にビタミン溶液及びスペクチノマイシンを加え、pHを調整する。
宿主細胞を培養するにあたり任意の炭素源を使用することができる。用語「炭素源」は、宿主細胞又は微生物により代謝させることのできる、1つ以上の炭素を含有している化合物を指す。例えば、宿主細胞を培養するにあたり使用される細胞培地には、宿主細胞の生存能を維持させる又は宿主細胞を増殖させるのに好適な任意の炭素源を包含させることができる。一部の態様では、炭素源は炭水化物(例えば、単糖、二糖、オリゴ糖、又は多糖など)、又は転化糖(例えば、酵素により処理したスクロースシロップ)である。一態様では、最初に、発酵の対数増殖期中に、炭素源としてD−キシロースを含有させた培地(TM3培地など)で宿主細胞を培養する。他の態様では、宿主細胞が発酵のイソプレン産生期に達したら、炭素源は、D−キシロースからグルコースに変更される。
一部の態様では、炭素源としては、酵母エキス又は酵母エキスの1つ以上の成分が挙げられる。一部の態様では、酵母エキスの濃度は、酵母エキスの0.1%(重量/体積)、0.09%(重量/体積)、0.08%(重量/体積)、0.07%(重量/体積)、0.06%(重量/体積)、0.05%(重量/体積)、0.04%(重量/体積)、0.03%(重量/体積)、0.02%(重量/体積)、又は0.01%(重量/体積)である。一部の態様では、炭素源には、酵母エキス(又は酵母エキスの1つ以上の成分)及び他の炭素源、例えばグルコースの両方を含む。
単糖の例としては、グルコース及びフルクトースが挙げられ、オリゴ糖の一例としては、ラクトース及びスクロースが挙げられ、並びに多糖の例としては、デンプン及びセルロースが挙げられる。炭水化物例としては、C6糖(例えば、フルクトース、マンノース、ガラクトース、又はグルコース)及びC5糖(例えば、キシロース又はアラビノース)が挙げられる。
一部の態様では、本明細書に記載の細胞は、エネルギー及び/又は炭素源として合成ガスを使用することができる。一部の実施形態では、合成ガスは、少なくとも一酸化炭素及び水素を含有する。一部の実施形態では、合成ガスは、二酸化炭素、水、又は窒素のうちの1つ以上を更に含有する。一部の実施形態では、合成ガス中の一酸化炭素に対する水素のmol比は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、3.0、4.0、5.0、又は10.0である。一部の実施形態では、合成ガスは、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90体積%の一酸化炭素を含む。一部の実施形態では、合成ガスは、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90体積%の水素を含む。一部の実施形態では、合成ガスは、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90体積%の二酸化炭素を含む。一部の実施形態では、合成ガスは、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90体積%の水を含む。一部の実施形態では、合成ガスは、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90体積%の窒素を含む。
合成ガスは、天然又は合成資源に由来するものであり得る。合成ガスの由来する資源を「フィードストック」として参照する。一部の実施形態では、合成ガスは、バイオマス(例えば、木材、スイッチグラス、農業廃棄物、都市ごみ)又は炭水化物(例えば、糖類)に由来する。他の実施形態では、合成ガスは、石炭、石油、油母、タールサンド、オイルシェール、又は天然ガスに由来する。他の実施形態では、合成ガスは、ゴムタイヤなどのゴムに由来する。
メタン改質、石炭液化、混焼、発酵反応、酵素反応、及びバイオマスのガス化などの多様な加工法により、フィードストックから合成ガスを得ることができる。バイオマスのガス化は、反応器中で、化学量論量未満の酸素の存在下、約700℃を超える温度にて、バイオマスを部分的に酸価することにより実施される。空気、高純度酸素、又は蒸気の形態で酸素をバイオリアクタに導入する。ガス化は、主に、1)最初に加熱して、バイオマスに含有されている何らかの水分を乾燥させる工程、2)酸化剤の非存在下で、バイオマスを300〜500℃に加熱して、ガス、タール、油及び炭化固体残渣を生成する、熱分解工程、並びに3)炭化固体、タール、及びガスをガス化して、合成ガスの主成分を生成する工程、の3工程で生じ得る。混焼は、石炭/バイオマス混合物をガス化することにより実施される。合成ガス成分の同一性及びmol比など、合成ガスの組成は、合成ガスの由来するフィードストック、並びにフィードストックを合成ガスに変換する方法に応じ変化し得る。
合成ガスは不純物を含有してもよく、不純物の性質及び量は、産生に使用されたフィードストック及び加工法の両方によって異なる。発酵は、ある種の不純物に対し許容性を示し得るものの、発酵装置及び関連する設備を損傷させる恐れのあるタール及び微粒子などは、合成ガス材料から除去する必要がある。イソプレン産物に混入し得る、揮発性芳香族化合物、酸性気体、メタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、HS、COS、CS、HCl、O、有機硫黄化合物、アンモニア、酸化窒素、窒素含有有機化合物、及び重金属蒸気などの化合物を除去することも好ましい。合成ガスからの不純物の除去は、ガス洗浄、固相吸着剤による処置、及びガス透過性膜を用いる精製などの数種類の手法のいずれかにより実施することができる。
細胞培養条件例
本発明の組み換え細胞を維持し及び増殖させるのに好適な材料及び方法は、以下、例えば、実施例の節に記載される。微生物培養物の維持及び増殖に好適な他の材料及び方法は当該技術分野において周知である。例示的な手法としては、国際公開第2009/076676号、米国特許出願第12/335,071号(同第2009/0203102号)、国際公開第2010/003007号、米国特許出願公開第2010/0048964号、国際公開第2009/132220号、米国特許出願公開第2010/0003716号、Gerhardt et al.,編の一般細菌学に関係する手法についてのマニュアル)、American Society for Microbiology,Washington,D.C.(1994)又はBrock in Biotechnology:テキスト「工業微生物学(Industrial Microbiology)」第2版(1989)Sinauer Associates,Inc.(Sunderland,MA)が挙げられる。一部の態様では、細胞は、宿主細胞に挿入された核酸によりコードされるイソプレン合成酵素、DXP経路の1つ以上のポリペプチド、MVA経路の1つ以上ポリペプチド、IDI、又はPGLポリペプチドのうちの1つ以上を発現させる条件下で、培養培地で培養される。
細胞を培養するにあたり、標準的な細胞培養条件を使用することができる(例えば、国際公開第2004/033646号及び該当特許中に引用される参考文献を参照されたい)。一部の態様では、細胞は適切な温度、気体混合物、及びpH(例えば、約20℃〜約37℃、約6%〜約84%のCO、及び約5〜約9のpH)で増殖し、維持される。一部の態様では、細胞は適切な細胞培地中で35℃で増殖する。一部の態様では、発酵の際のpH範囲は約pH 5.0〜約pH 9.0(例えば、約pH 6.0〜約pH 8.0、又は約6.5〜約7.0)である。細胞は、宿主細胞に必要とされる条件に基づき、好気性、無酸素性、又は嫌気性条件下で生育させることができる。加えて、細胞を培養するにあたり、より特異的な細胞培養条件を使用することができる。例えば一部の実施形態では、組換え型(例えば、細菌)細胞は、低〜中コピー数のプラスミドにおいて、高発現型プロモーターの調節下で、本明細書に記載のいずれかの核酸をコードしている1種以上の異種核酸(例えば、HMG−CoAレダクターゼ、イソプレン合成酵素、MVA経路の酵素、及び/又はDXP経路の酵素)を発現し、34℃にて培養される。
使用することのできる標準的な培養条件、並びに回分式、流加式、又は連続式発酵などの発酵様式は、国際公開第2009/076676号、米国特許出願第12/335,071号(米国特許出願公開第2009/0203102号)、国際公開第2010/003007号、米国特許出願公開第2010/0048964号、国際公開第2009/132220号、米国特許出願公開第2010/0003716号に記載されている。回分式発酵及び流加式発酵は当該技術分野では一般的かつ周知のものであり、その例は、Brock,Biotechnology:テキスト「工業微生物学(Industrial Microbiology)」第2版(1989)Sinauer Associates,Inc.に見ることができる。
一部の態様では、細胞はグルコース制限条件下で培養される。「グルコース制限条件」は、添加されるグルコースの量が、細胞により消費されるグルコース量の約105%以下(例えば、約100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、又は10%)であることを意味する。特定の態様では、培養培地に添加されるグルコース量は、特定の期間中に細胞により消費されるグルコース量とほぼ同量である。一部の態様では、細胞の増殖速度は、細胞培地中のグルコースの量により維持することのできる速度で細胞が増殖するよう、添加するグルコース量を制限することで制御される。一部の態様では、グルコースは細胞培養時に蓄積しない。様々な態様で、細胞はグルコース制限条件下で、約1、2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、又は70時間以上培養される。様々な態様で、細胞は、細胞を培養する合計時間の長さの約5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、95又は100%以上の時間にわたって、グルコース制限条件下で培養される。任意の特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、グルコース制限条件は、細胞をより都合よく制御し得るものであると考えられる。
一部の態様では、組換え細胞(例えば、細菌細胞)は回分式培養で生育させる。組換え細胞は、流加式培養又は連続式培養により生育させることもできる。加えて、組換え細胞は、限定するものではないが、上記のいずれかの最少培地などの最少培地で培養することができる。最少培地には、更に1.0%(重量/体積)グルコース又は任意の他の6単糖以下の糖などを添加してもよい。具体的には、最少培地には1%(重量/体積)、0.9%(重量/体積)、0.8%(重量/体積)、0.7%(重量/体積)、0.6%(重量/体積)、0.5%(重量/体積)、0.4%(重量/体積)、0.3%(重量/体積)、0.2%(重量/体積)、又は0.1%(重量/体積)のグルコースが添加される。加えて、最少培地には0.1%(重量/体積)以下の酵母エキスを添加してもよい。具体的には、最少培地には0.1%(重量/体積)、0.09%(重量/体積)、0.08%(重量/体積)、0.07%(重量/体積)、0.06%(重量/体積)、0.05%(重量/体積)、0.04%(重量/体積)、0.03%(重量/体積)、0.02%(重量/体積)又は0.01%(重量/体積)の酵母エキスを添加してもよい。あるいは、最少培地には1%(重量/体積)、0.9%(重量/体積)、0.8%(重量/体積)、0.7%(重量/体積)、0.6%(重量/体積)、0.5%(重量/体積)、0.4%(重量/体積)、0.3%(重量/体積)、0.2%(重量/体積)又は0.1%(重量/体積)のグルコース及び0.1%(重量/体積)、0.09%(重量/体積)、0.08%(重量/体積)、0.07%(重量/体積)、0.06%(重量/体積)、0.05%(重量/体積)、0.04%(重量/体積)、0.03%(重量/体積)、0.02%(重量/体積)又は0.01%(重量/体積)の酵母エキスを添加してもよい。
一部の態様では、組換え細胞は低酸素条件下で増殖させる。他の態様では、組換え(例えば、細菌)細胞は、約4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、又は15%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度酸素を含む大気条件下で増殖させる。他の態様では、組換え細胞は、約3〜8%、3.5〜8.5%、4〜9%、4.5〜9.5%、5〜10%、5.5〜10.5%、6〜11%、又は6.5〜11.5%の任意の濃度で酸素を含む大気条件下で増殖させる。
組み換え細胞を使用してイソプレンを産生する方法
本明細書では、本明細書で開示される条件下で本明細書に記載のいずれかの組換え細胞を培養する工程によりイソプレンを産生する方法が提供される。一態様では、イソプレンは、低減された機能活性を有するispA遺伝子と、(a)イソプレン合成酵素ポリペプチド(イソプレン合成酵素ポリペプチドは、異種核酸によりコードされる)及び(b)メバロン酸(MVA)経路の1種以上のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸とを含む組換え細胞を培養することにより産生され得る。一態様では、HMG−CoAレダクターゼ、下流MVA経路のポリペプチド、及びイソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている1種以上の異種核酸を使用することができる。別の態様では、HMG−CoAレダクターゼ及びHMG−CoA合成酵素、下流MVA経路のポリペプチド、並びにイソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている1種以上の異種核酸を含む組み換え細胞を培養することによりイソプレンを産生することができる。更に別の態様では、上流MVA経路の1つ以上のポリペプチド、下流MVA経路の1つ以上のポリペプチド、及び/又はDXP経路の1つ以上のポリペプチドをコードしている1種以上の異種核酸を使用することができる。一部の態様では、本明細書に記載の組換え細胞は、低減された機能活性を有するispAを含まない細胞と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度イソプレン産生の増加を示す。イソプレンは、本開示の任意の方法に従い、本明細書に記載の任意の細胞から産生することができる。六炭糖(グルコースなど)などの炭水化物からイソプレンを産生する目的に際し、任意の細胞を使用することができる。
細胞は、上記の下流MVA経路のポリペプチド(例えば、MVK、PMK、MVD及び/又はIDI)、上記の上流MVA経路の任意のポリペプチド(例えば、チオラーゼ、アセトアセチル−CoA合成酵素、HMG−CoAレダクターゼ、及び/又はHMG−CoA合成酵素)、及び/又は上記の任意のイソプレン合成酵素ポリペプチド(例えば、ウラジロハコヤナギ(P. alba)イソプレン合成酵素)をコードしている1種以上の核酸分子を更に含ませることができる。一部の態様では、組換え(例えば、細菌)細胞は、本明細書に記載の任意の細胞であってよい。本明細書に記載の任意のイソプレン合成酵素又はそれらの変異体、本明細書に記載の任意の細菌株、本明細書に記載の任意のプロモーター及び/又は本明細書に記載の任意のベクターも、本明細書に記載の任意のエネルギー源(例えば、グルコース又は任意のその他の六炭糖)を使用するイソプレンの産生に使用することができる。一部の態様では、イソプレンの産生方法は更に、イソプレンを回収する工程を含む。
一部の態様では、産生されるイソプレン量は、各産生時点で測定されたものである。一部の態様では、細胞に関し産生量は、本開示の任意のおよそのイソプレン量を指していうものである。一部の態様では、産生されたイソプレンの総量は累積値として測定される。一部の態様では、細胞の累積産生量は、本明細書で開示される任意のおよそのイソプレン量を指していうものである。
一部の態様では、本明細書に記載の、任意の細胞(例えば、培養物中の細胞)は、約1、10、25、50、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,500、3,000、4,000又は5,000以上のうちのいずれかのイソプレン(nmol)/細胞湿潤重量(g)/hr(nmol/gwcm/hr)値でイソプレンを産生する。一部の態様では、イソプレンの量は約2〜約5,000nmol/gwcm/hrであり、例えば、約2〜約100nmol/gwcm/hr、約100〜約500nmol/gwcm/hr、約150〜約500nmol/gwcm/hr、約500〜約1,000nmol/gwcm/hr、約1,000〜約2,000nmol/gwcm/hr又は約2,000〜約5,000nmol/gwcm/hrである。一部の態様では、イソプレンの量は約20〜約5,000nmol/gwcm/hr、約100〜約5,000nmol/gwcm/hr、約200〜約2,000nmol/gwcm/hr、約200〜約1,000nmol/gwcm/hr、約300〜約1,000nmol/gwcm/hr又は約400〜約1,000nmol/gwcm/hrである。
一部の態様では、細胞は、培養時に、約1、10、25、50、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、10,000又は100,000以上のうちのいずれかのイソプレン(nmol)/細胞湿潤重量(g)/hr(ng/gwcm/hr)値でイソプレンを産生する。一部の態様では、イソプレンの量は、約2〜約5,000ng/gwcm/hrであり、例えば、約2〜約100ng/gwcm/hr、約100〜約500ng/gwcm/hr、約500〜約1,000ng/gwcm/hr、約1,000〜約2,000ng/gwcm/hr又は約2,000〜約5,000ng/gwcm/hrである。一部の態様では、イソプレンの量は、約20〜約5,000ng/gwcm/hr、約100〜約5,000ng/gwcm/hr、約200〜約2,000ng/gwcm/hr、約200〜約1,000ng/gwcm/hr、約300〜約1,000ng/gwcm/hr又は約400〜約1,000ng/gwcm/hrである。
一部の態様では、細胞は、培養時に、約1、10、25、50、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,500、3,000、4,000、5,000、10,000、50,000、100,000以上のうちのいずれかのイソプレン(mg)/ブロス(L)(mg/Lブロス、ブロス体積には、細胞及び細胞培地の体積を含む)値の累積力価(総量)でイソプレンを産生する。一部の態様では、イソプレンの量は、約2〜約5,000mg/Lブロスであり、例えば、約2〜約100mg/Lブロス、約100〜約500mg/Lブロス、約500〜約1,000mg/Lブロス、約1,000〜約2,000mg/Lブロス、又は約2,000〜約5,000mg/Lブロスなどである。一部の態様では、イソプレンの量は、約20〜約5,000mg/Lブロス、約100〜約5,000mg/Lブロス、約200〜約2,000mg/Lブロス、約200〜約1,000mg/Lブロス、約300〜約1,000mg/Lブロス、又は約400〜約1,000mg/Lブロスである。
一部の態様では、培養において細胞により産生されるイソプレン(本明細書に記載のいずれかの組換え細胞など)は、少なくとも約1、2、5、10、15、20、又は25体積%の発酵時排出気体を含む。一部の態様では、イソプレンは、排出気体の体積の約1〜約25%を構成し、例えば、約5〜約15%、約15〜約25%、約10〜約20%又は約1〜約10%を構成する。
一部の態様では、培養における細胞(本明細書に記載のいずれかの組換え細胞など)は、低減したispAの機能活性を含まない細胞と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度、グルコースに対する累積イソプレン収率が高い。他の態様では、培養における細胞(本明細書に記載のいずれかの組換え細胞など)は、低減したispAの機能活性を含まない細胞と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度イソプレン産生性が増加している。他の態様では、培養における細胞(本明細書に記載のいずれかの組換え細胞など)は、低減したispAの機能活性を含まない細胞と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度イソプレンの最大比産生性が増加している。一部の態様では、培養における細胞(本明細書に記載のいずれかの組換え細胞など)は、低減したispAの機能活性を含まない細胞と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100並びにこれらの値間の任意の割合を包含した程度、細胞イソプレン産生指数が増加している。
精製方法例
一部の態様では、本開示の任意の方法は、本明細書で開示される任意の組換え細胞により産生されたイソプレンを回収する工程を更に含有する。一部の態様では、イソプレンは吸着脱離により回収される(例えば、米国特許出願公開第2011/0178261(A1)号を参照されたい)。一部の態様では、本明細書に記載の任意の方法は更に異種ポリペプチドを回収する工程を包含する。
好適な精製方法は、米国特許出願第2010/0196977(A1)号においてより詳細に記載される。
本明細書を通じ、各種特許、特許出願及び他の種類の刊行物(例えば、学術論文)を参照する。本明細書に引用する、本開示に関係する全ての特許、特許出願及び刊行物は、すべての目的に関し、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
本発明は、実例として提供され、制限することを意味するものではない以降の実施例を参照することにより更に理解することができる。
一般情報
Figure 2015510392
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実施例1:イソプレノイド経路への炭素の取り込み増加は細胞生存能に効果を示す
大腸菌(E. coli)においてイソプレノイド経路に取り込まれる炭素量を増加させることによる効果を調査する目的で、染色体に下流MVA経路を組み込まれ保有している2種の株、すなわち、CMP882(HMB gi1.2 gltA+pTrcHis2B+pCL1920)並びにCMP884(HMB GI1.2 gltA evolved,pTrcHis2B,pCL1920(inactive MVK))を流加培養条件下で増殖させた。CMP884株はメバロン酸キナーゼ(MVK)遺伝子中に、酵素を不活性化させて下流MVA経路への炭素の取り込みを妨げる点変異を含有している。メバロン酸を発酵槽に供給し、培地中のメバロン酸の濃度を測定した。
方法
培地組成(発酵培地1L当たり):K2HPO4(7.5g)、MgSO47H2O(2g)、クエン酸一水和物(2g)、クエン酸鉄アンモニウム(0.3g)、酵母エキス(0.5g)、50%硫酸(1.6mL)、1000X改変微量金属溶液(1mL)。すべての成分を共に加え、脱イオン水に溶解させた。この溶液を加熱滅菌した(123℃で20分)。水酸化アンモニウム(28%)によりpHを7.0に調整し、容量に合わせた。滅菌及びpH調製後にグルコース10g、ビタミン溶液8mL、及び抗生物質を加えた。
1000X改変微量金属溶液(1L当たり):クエン酸H2O(40g)、MnSO4H2O(30g)、NaCl(10g)、FeSO47H2O(1g)、CoCl26H2O(1g)、ZnSO7H2O(1g)、CuSO45H2O(100mg)、H3BO3(100mg)、NaMoO42H2O(100mg)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
ビタミン溶液(1L当たり):塩酸チアミン(1.0g)、D−(+)−ビオチン(1.0g)、ニコチン酸(1.0g)、塩酸ピリドキシン(4.0g)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、孔径0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
マクロ塩溶液(1L当たり):MgSO47H2O(296g)、クエン酸一水和物(296g)、クエン酸鉄アンモニウム(49.6g)。すべての成分を水に溶解させ、用量に調整し、0.22μmのフィルタを用い、ろ過滅菌した。
供給溶液(1kg当たり):グルコース(0.590kg)、脱イオン水(0.393kg)、K2HPO4(7.4g)、及び100% Foamblast882(8.9g)。すべての成分を合わせて混合し、オートクレーブ処理した。供給溶液をオートクレーブ処理した後、滅菌フード内で、供給ボトルに栄養塩類を添加する。滅菌後に供給溶液に添加するものは(供給溶液1kg当たり)マクロ塩溶液5.54mL、ビタミン溶液6.55mL、1000X改変微量金属溶液0.82mLである。
メバロン酸フィード:精製及び濃縮したメバロン酸資源を脱イオン水で希釈して、最終濃度約60g/Lを得る。この溶液を口径0.22μmのフィルタによりろ過滅菌し、供給ボトルに注ぎ入れる。
本実験は、所望の発酵pH(7.0)及び温度(34℃)でのグルコースからのイソプレン発酵をモニターするために実施した。大腸菌(E. coli)株を凍結したバイアルを解凍し、トリプトン酵母エキス培地及び適切な抗生物質を入れたフラスコに接種した。550nm(OD550)での吸光度が1.0になるまで接種材料を生育させた後、培養物のうち500mLを15Lのバイオリアクタに接種し、初期槽容量を5Lに調整した。
各バッチの培地には、グルコースを9.7g/L含有させた。誘導は、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し実施した。細胞のOD550が6になったなら、200μMの濃度になるようIPTGを反応槽に添加した。メバロン酸供給液を、TCER(総二酸化炭素発生速度,mmol CO/h)を3000(供給液(g)/分の最終単位)により除したものに相当する速度で、連続的に発酵槽に供給した。追加のグルコース溶液を供給する際には、pHの上昇をグルコースの枯渇の目安とし、代謝に必要とされる10g/分以下の速度を満たすようにした。
pTrcHis2B(インビトロジェン,Carlsbad,CA)及びpCL1920(米国特許出願公開第2009/0203102号を参照されたい)を電気穿孔法により同時にCMP451に導入し、CMP882を構築した。LB+カルベニシリン50mg/L及びスペクチノマイシン50mg/Lで生育したコロニーを選択し、CMP882と名づけた。CMP876は、染色体のメバロン酸キナーゼ座中の1箇所に酵素を不活性にする変異が存在することを除き、CMP451と相同である。プラスミドpTrcHis2B及びpCL1920を電気穿孔法により同時にCMP876に導入した。LB+カルベニシリン50mg/L及びスペクチノマイシン50mg/Lで生育したコロニーを選択し、CMP884と名づけた。
膜電位解析を用い、発酵中の細菌の生存能を評価した。発酵槽からブロスを回収し、PBS緩衝液を用い直ちに150倍希釈した。次に、1μMビス−(1,3−ジブチルバルビツル酸)トリメチンオキソノール(DiBAC(3)、(インビトロジェン、カタログ番号B−438)を含有させたPBS緩衝液を用い細胞を更に150倍希釈した。試料を10分間染色し、フローサイトメトリー(FACSCalibur,Becton Dickinson)により単個細胞の緑色蛍光を定量した。488nmの励起波長と、530nmの発光波長を用いた。まず、対数増殖期の大腸菌(E. coli)BL21の培養液及び加熱殺菌した大腸菌(E. coli)BL21の培養液をDiBAC(3)で染色し、生菌及び死菌の緑色蛍光強度をそれぞれ測定した。この情報を利用して、フローサイトメトリーデータを解析する際のゲーティングを行い、正常な膜電位をもつ細胞画分及び膜電位をもたない細胞画分を判別した。無傷な細菌のみを識別するために、適切な細胞の大きさ(488nmにて前方散乱対側方散乱を測定)についてもゲーティングを行った。次に、これらの基準のもと、通過する細胞が発する緑色蛍光強度を利用し、発酵試料中に含まれる正常な膜電位をもつ細胞画分と、膜電位をもたない細胞画分とを判別した。正常な膜電位をもつ細胞は生細胞であり、かつ代謝活性をもつものであると仮定し、それに対し、膜電位をもたない細胞は死細胞であり、代謝活性をもたないものであると仮定する。
結果
この実験の結果を図1〜図4に掲載する。メバロン酸を供給された細胞において、不活性型のMVK酵素が存在することで、生物の生存能に著しく影響が出ることが示された。図1bに見られる通り、メバロン酸は、活性型MVKを含有している細胞により首尾よく取り込まれたのに対し、MVK不活性型の細胞株CMP884では培地中へのメバロン酸の蓄積が生じた。この取り込みにより、結果として、図2に見られるファルネシルピロリン酸濃度の増加として示されるとおり、IspAからイソプレノイド経路への炭素の取り込みが増加する。不活性型メバロン酸キナーゼ酵素を備える株ではファルネシルピロリン酸は蓄積されなかった。膜電位解析により、MVK不活性型細胞株はメバロン酸の供給中に高い割合で細胞生存率を維持したのに対し、MVK活性型細胞では細胞生存率の低下が見られた(図3)。図4に見られる通り、2種類の細胞株の炭素放出速度(CER)にも変化が生じていた。発酵が定常相に達したとき、活性型MVKを有する株の呼吸速度(すなわち、CO排出)は急速に低下した。対照的に、不活性型MVA経路を有する株の呼吸速度は、大幅に緩徐に低下した。これらの結果から、イソプレノイドの取り込み増加は大腸菌(E. coli)に有害であることが示され、ispAの活性低下はDMAPP及びIPPへの取り込みが増大している大腸菌(E. coli)株の生存能に有益であることが示唆される。
実施例2:ispAタンパク質の活性を調節するためのタンパク質分解性タグの利用
イソプレン産生株におけるFPP及びDMAPPの細胞内濃度を最適化するため、FPP合成酵素(IspA)及びタンパク質分解性タグを翻訳により融合させた。タンパク質分解性のtmRNAタグ(Andersen et al.,1998,Appl Environ Microbiol.,64(6),2240〜2246)は、宿主細胞におけるIspAの分解を対象とする。
方法
製造元(Gene Bridges)の推奨するプロトコルに従って、Red/ET組み換え系を使用し、アミノ酸11個のtmRNAタンパク質分解性タグをIspAのC末端に融合させた。簡潔に述べると、プライマー「GBIspACtmRNA−ASV−For」及び「GBisp2」を使用し、クロラムフェニコール耐性をコードしているGene Bridge挿入カセットをPCRにより増幅させた(表2を参照されたい)。次にカセットを、製造元の推奨するプロトコルに従って大腸菌(E. coli)BL21 DE3(インビトロジェン,Carlsbad,CA)に導入し、検証のためクロラムフェニコールに耐性のコロニーを選別した。プライマー「ispTest1」及び「GBprimer2」を使用し、挿入カセットが正しく組み込まれていることをPCRにより確認した(表2を参照されたい)。更なる解析のため、適切な大きさのPCR産物を示した検証株MD08−97を選別した。
標準的な分子生物学的実施を使用し、ベクターpTrcKanKKDIy(米国特許出願公開第2009/0203102号を参照されたい)において下流メバロン酸経路によりBL21 DE3(対照)及びMD08−97の両方を形質転換し、それぞれ株DW141及びDW142を生成した。初期対数増殖相に向け、株をTM3培地において適切な抗生物質下で増殖させ、次に500μM IPTGで発現誘導を行い、5mMメバロン酸で約2〜3時間処理した。培養物は、代謝解析前に当量の冷メタノールに回収した。以下に記載のものと類似する手法を用い代謝解析を実施した。表4に示す代謝値をOD600について補正する。2つの独立した同一の実験(実験1及び2、表4を参照されたい)を実施し、タンパク質分解性タグを付したIspA酵素が代謝分配に対し効果を示すことを確認した。
結果
いずれの実験においても、タンパク質分解性タグを付したIspA酵素を含有しているDW142株は、対照株DW141と比較して著しく高濃度のDMAPP、IPP、及びGPPを示した。また、DW142は、対照と比較してFPPの細胞濃度の著しい低下を示した。これらの結果から、tmRNAタグは細胞内のIspAの分解又は代謝回転を増加させ、これにより、これらの株内のIspAの活性が低下することが示される。理論に束縛されるものではないが、FPP合成酵素活性の低下により、イソプレン合成酵素がより多くの基質を利用でき、高分子量イソプレノイド類として失われる炭素がより少なくなる、イソプレン産生に良好に適した細胞内環境が生成され得るものと考えられる。
Figure 2015510392
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実施例3:IspA発現を調節するための自己制御系
MVA経路の酵素を過剰発現している株では発酵時にのみ一時的に抑制されるが、対照株、すなわちDXP経路の酵素を過剰発現している株又は野生株では抑制されないプロモーターを、遺伝子発現データを元に特定した。理論に束縛されるものではないが、このようなプロモーターは、イソプレノイド化合物の蓄積量の増加により抑制されているものと予想される。このようなプロモーターを導入してispAの発現を調節する場合、イソプレノイド経路への取り込みに対応する期間にispAを抑制することができる。しかしながら、取り込みが少ない期間ではプロモーターが誘導されたままになり、ispAが発現される。この特徴的な活性プロファイルが、自己調節型ispA発現調節系を構成する。
RNA精製及び転写解析法:
このゲノム・ワイドな翻訳試験には、株CMP457及びMCM1020を使用した。電気穿孔法によりプラスミドpTrcHis2B(インビトロジェン,Carlsbad,CA)及びpCL1920(米国特許出願公開番号第2009/0203102号を参照されたい。この出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。)を株CMP258(国際出願第PCT/US2011/058188号を参照されたい。この出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。)に導入し、LB+50mg/Lのスペクチノマイシン+50mg/Lのカルベニシリンでコロニーを選択して、株MCM1020を構築した。
発酵試料をRNALater(Qiagen,Valencia,CA)により手早く1:5希釈し、−20℃で凍結させた。細胞を回収し、Trizol(インビトロジェン)に溶解し、室温で5分インキュベートした。20%氷冷クロロホルムを添加して抽出を行い、核酸を単離した。溶液を混合し、室温で5分インキュベートした後、4℃にて13,000rpmで15分遠心分離した。頂部の水相を単離し、当量の氷冷エタノールを加えた。RNEasyミニキット(Qiagen)を使用し、RNAを単離した。製造元の指示に従って、DNase溶液(10μLのDNase Iストック/70μLのRDD緩衝液)(Qiagen)を添加し、室温で30分インキュベートする手順を行い、DNAを分解した。ヌクレアーゼフリーの水により、RNeasyカラムからRNAを溶出した。Nanodrop装置を使用し測定を行い、各試料から最低で20μgのRNAを回収した。3Mの酢酸ナトリウムの場合には1/10容量を添加して沈殿させ、RNAを更に精製した。最終濃度1ug/μLとなるようグリコーゲン(発酵物由来のRNA等級)を添加した後、2.5倍量の氷冷エタノールを添加した。溶液を−80℃で60分インキュベートし、次に10,000rpmで15分遠心分離した。上清を廃棄し、RNAペレットを氷冷70%エタノールにより簡単に洗浄した。RNAペレットを20分風乾させ、濃度1μg/μLでヌクレアーゼフリー水に溶解した。Nanodrop装置及びゲル電気泳動を使用し、品質及び濃度を測定した。大腸菌(E. coli)BL21専用に設計した385K 4−plexマイクロアレイを使用して、Roche NimbleGen(Iceland)によるcDNAの合成、標識及び転写解析を実施した。得られたデータを、GenepringGX Version 11(Agilent)を使用して解析した。完全なMVA経路をもつ株CMP457の発酵後期から解明された特定のプロモーター及びそれらの任意の発現レベルを表5に掲載する。
Figure 2015510392
ispA発現の調節に有用なプロモーターの一例は、yddVの発現を調節するものである。このプロモーターは、MVA経路株の発酵後期に特に抑制される。対照的に、このプロモーターは、図5に示すとおり野生型の大腸菌(E. coli)株では抑制されない。YddVタンパク質は、イソプレノイドが多量に取り込まれる条件下で恐らく濃度変化する化合物のヘムに結合する。解析した発酵物の呼吸速度を図6に掲載する。
実施例4:yhfS座へのIspAの挿入
次の方法に従ってコロニーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施した。1つの細菌コロニーを30μLのHO中で攪拌し、5分間95℃に加熱した。得られた溶液をスピン・ダウンし、テンプレートとして2μLの上清を次のPCR反応液に使用した。PCR反応液:2μLコロニー水溶液、10μL Herculase(登録商標)緩衝液、1μL 100mM dNTP、1.25μL 10μM順方向プライマー、1.25μL 10μM逆方向プライマー、1μL Herculase(登録商標)増強DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies,Stratagene Products Division,La Jolla,California)、並びに33.5μL脱イオン水。95℃/2分間;95℃/30秒間、x℃/30秒間、72℃/60秒間を30サイクル;及び72℃/(生成物1kbにつき40秒間)の通りにPCR反応をPCR Express Thermal Cycler(Thermo Hybaid,Franklin,MA)で実施した。次にこの反応物を4℃に冷却した。x℃のアニーリング温度は、プライマー対の最低融解温度よりも3℃低くなるよう選択した。得られたPCRフラグメントのサイズは、プレキャストした0.8% E−ゲル(登録商標)(インビトロジェン,Carlsbad,CA)上でDNA Molecular Weight Marker X(75〜12,216bp)(Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)をサイズマーカーとして使用して測定した。
yhfS座にIspAを挿入するため、PCRにより3つのDNA片を生成した。断片1は、seamlessキット(インビトロジェン)によりXbaI/EcoRI消化ベクターpBBR1MCS5(Kovach et al.1995,Gene 166:175〜176)に組み込むための15bpの配列、BL21のyhfS領域と相同な領域、カナマイシンマーカー、及びxseB−ispA−dxsオペロンのプロモーターを組み込むための15bpの配列を含有する。断片を得るために使用したプライマーはCMP247(5’−gcggtggcggccgctttgtcatcggttaacgctggaacacctgccgcgcgcaacgttgccagcaccctccttagttcctattccgaagttc−3’(配列番号20))及びCMP248(5’−gctggagctgcttcgaagttcc−3’(配列番号21))であり、テンプレートはpKD4(Datsenko and Wanner,PNAS,2000,97(12),6640〜6645)とした。断片2はxseB−ispA−dxsオペロンのプロモーターを含有する。断片を得るために使用したプライマーはCMP249(5’−cgaagcagctccagcgaacaatttaatgataaacttcatggcg−3’(配列番号22))及びCMP250(5’−AATGAATGTCTGACTCTCAATATTTTTCGC−3’(配列番号23)であり、テンプレートはBL21の染色体DNAとし、あるいはこれらの誘導体とした。断片1及び断片3を継ぎ目なく組み立てられるようにプライマーを設計した。断片3は、大腸菌(E. coli)ispA遺伝子と、断片2、並びにXbaI及びEcoRIにより消化したpBBR1MCS5とを組み込むための15bpの配列2組とを含有する。断片を得るために使用したプライマーはCMP255(5’−agtcagacattcattatggactttccgcagcaactcg−3’(配列番号24))及びCMP256(5’−ATAAGCTTGATATCGacctgtcggcactgaagcaggtcgtcgacgagcaacaaccggatgcggcgTTATTTATTACGCTGGATGATGTAGTCC−3’(配列番号25))であり、テンプレートはBL21の染色体DNAとし、あるいはこれらの誘導体とした。
すべてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、製造元(Agilent,Santa Clara,CA)により推奨されるプロトコルに従ってHerculase II Fusionを使用して実施した。これらを、Qiagen(Germantown,MD,USA)のPCR精製キットを使用し精製した。次に、EcoRI/XbaIにより消化したプラスミドpBBR1−MCS5を用い、製造元により推奨されるプロトコルに従ってGeneArt seamless cloning and assemblyキット(インビトロジェン(Carlsbad,CA))を使用して断片1、2及び3を組み立てた。反応液により大腸菌(E. coli)Top10細胞(インビトロジェン(Carlsbad,CA))を形質転換させ、形質転換体をLB+カナマイシン20mg/Lで選別した。これらのコロニーのうちの1つからプラスミドを単離し、pCMP944と命名した。プラスミド中に正しいコンストラクトが存在していることを配列決定(Quintara Bio(Albany,CA))により確認した。プライマーCMP257(5’−cattcgcgccgcattcacagccgattcgagccaccttcatcaccgcatagttgtcatcggttaacgctggaacac−3’(配列番号26))及びCMP258(5’−GGTTATTATTGAGCAGATGGGGCTGACGCTTATTACTGTTGATTTCAATGACCTGTCGG CACTGAAGCAGG−3’(配列番号27))を使用するPCR反応には、プラスミドpCMP944をテンプレートとして使用した。Qiagen PCR精製キット(Germantown(MD,USA))を使用してPCR産物を精製し、制限酵素DpnIにより消化した。更なる精製後、このPCR産物を、株CMP451(米国特許出願第13/283,564号を参照されたい)の組み換え反応(上掲Datsenko及びWannerを参照されたい)に使用した。形質転換体を、LB+10mg/Lカナマイシンで選別した。PCR(プライマーCMP267(5’−cgattcgagccaccttcatcacc−3’(配列番号28))及びCMP268(5’−CAG CGT CTT CTG GTG CAT GAC G−3’(配列番号29))を使用)により妥当な大きさであるものと判断されたコロニーをCMP981と命名した。pCP20(上掲Datsenko及びWanner)によりカナマイシンマーカーを除去してCMP992を作製し、次に更なる改変のためこれを使用した。除去を行うため、pCP20(50mg/Lカルベニシリンにより30℃下で増殖)により形質転換させたコロニーをLBに画線し、42℃で一晩増殖させた。1日後、コロニーを採取し、LB並びにLB+10mg/Lカナマイシンに接種した。マーカーを除去したコロニーはLBでは増殖したもののLB+10mg/Lカナマイシンでは増殖しなかった。
実施例5:内在性IspAのノックアウト
この反応に関し、PCRにより3つのDNA断片を作製した。実施例4に記載の方法に従ってポリメラーゼ連鎖反応のプロトコルを実施した。断片1は、BL21のthiI遺伝子289bp並びにseamless assembly(インビトロジェン,Carlsbad,CA)によりXbaI/EcoRI消化ベクターpBBR1−MCS5(上掲Kovach et al.)に組み込むための15bpを隣接させたそのプロモーター、並び下記断片2を含有する。断片を得るためにはプライマーCMP236(5’−Gcggtggcggccgctgaaccaacgctttctcgaaaatatcg−3’(配列番号30))及びCMP237(5’−cagcctacacaatcgagcgatgttagtggtatacttccgc−3’(配列番号31))を使用し、大腸菌(E. coli)BL21の染色体DNA又はそれらの誘導体をテンプレートとした。断片2は、FRT部位に隣接させたクロラムフェニコールカセットを含有する。断片を得るためにはプライマーCMP234(5’−Cgattgtgtaggctggagctgcttc−3’(配列番号32))及びCMP235(5’−gtccatatgaatatcctccttagttc−3’(配列番号33))を使用し、pKD3(上掲Datsenko及びWanner)をテンプレートとした。断片3は、xseB−ispA−dxsオペロンのプロモーターと、その下流のispA遺伝子のおよそ中程までのDNAとを含有しているDNA断片を含有する。断片を得るためにはプライマーCMP238(5’−gatattcatatggacttgctgcgcacatcaccttacc−3’(配列番号34))及びCMP239(5’−ATAAGCTTGATATCG ccttccgcgtctaaatctagtgcc−3’(配列番号35))を使用し、大腸菌(E. coli)BL21の染色体DNA又は誘導体をテンプレートとした。
次に、EcoRI/XbaIにより消化したプラスミドpBBR1−MCS5を用い、製造元により推奨されるプロトコルに従ってGeneArt seamless cloning and assemblyキット(インビトロジェン,Carlsbad,CA)を使用して断片1、2及び3を組み立てた。反応液により大腸菌(E. coli)Top10細胞(インビトロジェン(Carlsbad,CA))を形質転換させ、形質転換体をLB+クロラムフェニコール25mg/Lで選別した。これらのコロニーのうちの1つからプラスミドを単離し、pCMP935と命名した。プラスミド中に正しいコンストラクトが存在していることを配列決定(Quintara Bio(Albany,CA))により確認した。
プライマーCMP241(5’−gaaccaacgctttctcgaaaatatcg−3’(配列番号36)及びCMP242(5’−ccttccgcgtctaaatctagtgcc−3’(配列番号37)を使用するPCR反応には、プラスミドpCMP935をテンプレートとして使用した。Qiagen PCR精製キット(Germantown,MD,USA)を使用してPCR産物を精製し、制限酵素DpnIにより消化した。更なる精製後、PCR産物を株CMP451(米国特許出願公開第13/283,564号)の組み換え反応(上掲Datsenko及びWanner)に使用した。形質転換体を、LB+5mg/Lクロラムフェニコールで選別した。PCR(プライマーCMP265(5’−cacgcgtacgcagaaggttttgc−3’(配列番号38))及びCMP266(5’−CAGTGCCAGGGTCGGGTATTTGG−3’(配列番号39))を使用)により妥当な大きさであるものと判断されたコロニーをCMP939と命名した。CMP939は、親であるCMP451と同様の増殖性を有した。
製造元(Agilent(Santa Clara,CA))に従い、Quikchange $キットを使用して、プラスミドpCMP935に対しQuikchange反応を行った。プライマーCMP245(5’−cttttacaccggacaatgagtaatcgccccactgccctttcag−3’(配列番号40))及びCMP246(5’−ctgaaagggcagtggggcgattactcattgtccggtgtaaaag−3’(配列番号41))を使用した。このようにして得られたプラスミドをpCMP948と命名した。このプラスミドはATGとしてispAをコードしておらず、遺伝子の最初の20残基のアミノ酸が除去されていた。プライマーCMP241(5’−gaaccaacgctttctcgaaaatatcg−3’(配列番号42)及びCMP242(5’−ccttccgcgtctaaatctagtgcc−3’(配列番号43)を使用するPCR反応には、プラスミドpCMP948をテンプレートとして使用した。Qiagen PCR精製キット(Germantown(MD,USA))を使用してPCR産物を精製し、制限酵素DpnIにより消化した。更なる精製後、株CMP992の組み換え反応(上掲Datsenko及びWanner)にPCR産物を使用した。形質転換体を、LB+5mg/Lクロラムフェニコールで選別した。PCR(プライマーCMP265(5’−cacgcgtacgcagaaggttttgc−3’(配列番号44))及びCMP266(5’−CAGTGCCAGGGTCGGGTATTTGG−3’(配列番号45))を使用)により妥当な大きさであるものと判断されたコロニーをCMP1018と命名した。pCP20(上掲Datsenko及びWanner)からカナマイシンマーカーを除去してCMP1030を作製し、次に更なる改変のためこれを使用した。除去を行うため、pCP20(50mg/Lカルベニシリンにより30℃下で増殖)により形質転換させたコロニーをLBに画線し、42℃で一晩増殖させた。1日後、コロニーを採取し、LB並びにLB+5mg/Lクロラムフェニコールに接種した。マーカーを除去したコロニーはLBでは増殖するものの、LB+5mg/Lクロラムフェニコールでは増殖しない。CMP1030に、プラスミドMCM82(米国特許出願公開第2011/0159557号を参照されたい)及びpCHL243(これまでに米国特許出願第13/283,564号に記載)を電気穿孔法により同時に導入した。LB+カルベニシリン50mg/L及びスペクチノマイシン50mg/Lで増殖したコロニーを選択し、CMP1061と名づけた。
実施例6:yhfS座へのPyddV−IspAの導入
この反応に関し、PCRにより3つのDNA断片を作製した。実施例4に記載の方法に従ってポリメラーゼ連鎖反応のプロトコルを実施した。断片1は、seamlessキット(インビトロジェン)によりXbaI/EcoRI消化ベクターpBBR1MCS5(上掲Kovach et al.)に組み込むための15bpの配列、BL21のyhfS領域と相同な領域、カナマイシンマーカー、及びxseB−ispA−dxsオペロンのプロモーターを組み込むための15bpの配列を含有する。断片を得るためにプライマーCMP247(5’−gcggtggcggccgctttgtcatcggttaacgctggaacacctgccgcgcgcaacgttgccagcaccctccttagttcctattccgaagttc−3’(配列番号46))及びCMP248(5’−gctggagctgcttcgaagttcc−3’(配列番号47))を使用し、pKD4(上掲Datsenko及びWanner)をテンプレートとする。断片2は、yddV遺伝子のプロモーターを含有する。断片を得るためにプライマーCMP338(5’−cgaagcagctccagcgaactatcccactactaatcatgcttac−3’(配列番号48))及びCMP339(5’−ctgcggaaagtccatAATTCACACCCTTATAAGGCTGGG−3’(配列番号49))を使用し、BL21の染色体DNA又はそれらの誘導体をテンプレートとした。断片1及び断片3を継ぎ目なく組み立てられるようにプライマーを設計した。断片3は、GeneOracleにより予めコドンを変更されている大腸菌(E. coli)ispA遺伝子(図8)、並びに断片2と、XbaI及びEcoRIにより消化されたpBBR1−MCS5との組み立てを可能にする15bpの配列2組とを含有する。断片を得るためにプライマーCMP340(5’−ataagggtgtgaatt ATGGACTTTCCGCAGCAACTCG−3’(配列番号50))及びCMP256(5’−ATAAGCTTGATATCGacctgtcggcactgaagcaggtcgtcgacgagcaacaaccggatgcggcgTTATTTATTACGCTGGATGATGTAGTCC−3’(配列番号51))を使用し、プラスミドpMCM1535をテンプレートとする(図9〜10)。
すべてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、製造元(Agilent,Santa Clara,CA)により推奨されるプロトコルに従ってHerculase II Fusionを使用して実施した。これらを、Qiagen(Germantown,MD,USA)のPCR精製キットを使用し精製した。次に、製造元により推奨されるプロトコルに従ってGeneArt seamless cloning and assemblyキット(インビトロジェン,Carlsbad,CA)を使用して、断片1、2及び3を、EcoRI/XbaIにより消化したプラスミドpBBR1−MCS5に組み込んだ。反応液により大腸菌(E. coli)Top10細胞(インビトロジェン,Carlsbdad,CA)を形質転換させ、形質転換体をLB+カナマイシン20mg/Lで選別した。これらのコロニーのうちの1つからプラスミドを単離し、pCMP1046と命名した。プラスミド中に正しいコンストラクトが存在していることを配列決定(Quintara Bio(Albany,CA))により確認した。プライマーCMP257(5’−cattcgcgccgcattcacagccgattcgagccaccttcatcaccgcatagttgtcatcggttaacgctggaacac−3’(配列番号52))及びCMP258(5’−GGTTATTATTGAGCAGATGGGGCTGACGCTTATTACTGTTGATTTCAATGACCTGTCGG CACTGAAGCAGG−3’(配列番号53)を使用するPCR反応には、プラスミドpCMP1046をテンプレートとして使用した。Qiagen PCR精製キット(Germantown(MD,USA))を使用してPCR産物を精製し、制限酵素DpnIにより消化した。更なる精製後、株CMP1018の組み換え反応(上掲Datsenko及びWanner)にPCR産物を使用した。形質転換体を、LB+10mg/Lカナマイシンで選別した。PCR(プライマーCMP267(5’−cgattcgagccaccttcatcacc−3’(配列番号54))及びCMP268(5’−CAGCGTCTTCTGGTGCATGACG−3’(配列番号55)))により妥当な大きさであるものと判断されたコロニーをCMP1067と命名した。pCP20(上掲Datsenko及びWanner)からカナマイシン及びクロラムフェニコールマーカーを除去し、CMP1075を作製した。除去を行うため、pCP20(50mg/Lカルベニシリンにより30℃下で増殖)により形質転換させたコロニーをLBに画線し、42℃で一晩増殖させた。1日後、コロニーを回収し、LB、LB+10mg/Lカナマイシン及びLB+5mg/Lクロラムフェニコールに接種した。マーカーを除去したコロニーはLBでは増殖するものの、LB+10mg/Lカナマイシン又はLB+5mg/Lクロラムフェニコールでは増殖しない。プラスミドMCM82(既述)及びpCHL243を電気穿孔法によりCMP1075に同時に導入した。LB+カルベニシリン50mg/L及びスペクチノマイシン50mg/Lで増殖したコロニーを選択し、CMP1082と名づけた。
実施例7:株CMP1059の構築(ispAにタンパク質分解性のタグを付加)
上記の方法を使用し、ldhAの欠失を含むKeio株JW1375(Baba et al.,2006,Mol Syst Biol.,2:1〜11)並びにプライマーldhAseqF2(5’−CTA ATG CAA TAC GTG TCC CGA GC−3’(配列番号56))及びldhAseqR(5’−ggcttaccgtttacgctttccagc−3’(配列番号57))を使用し、FRT部位並びにldhAの上流及び下流と相同性の領域に隣接したカナマイシンカセットを含有しているPCR産物を得た。大腸菌(E. coli)BL21の組み換え反応(上記のプロトコルを参照されたい)にこのPCR産物を使用し、BL21 ldhA:Kanを作製した。後者の株からP1細胞溶解液を調製し、これを使用してCMP451に形質導入した。P1細胞溶解液を調製し、Ausubel,et al.,分子生物学標準プロトコル(John Wiley and Sons,Inc)に記載の方法に従って使用した。コロニーをLB+カナマイシン10mg/Lで選別し、CMP596と命名した。製造元により推奨されるプロトコルを用い、株CMP722からカナマイシンマーカーを除去した(Gene Bridges(Heidelberg,Germany))。
実施例8:ispAに改変を含有する株におけるイソプレン産生
方法
TM3培地組成(発酵培地1L当たり):K2HPO4(13.6g)、KH2PO4(13.6g)、MgSO47H2O(2g)、クエン酸一水和物(2g)、クエン酸鉄アンモニウム(0.3g)、(NH4)2SO4(3.2g)、酵母エキス(0.2g)、1000X微量金属溶液(1mL)。すべての成分を共に加え、脱イオン水に溶解させる。水酸化アンモニウム(30%)によりpHを6.8に調整し、及び容量を調整する。0.22μmフィルタで培地を濾過滅菌する。pH調整及び滅菌後にグルコース10.0g及び抗菌剤を添加する。
1000X微量金属溶液(発酵培地1L当たり):クエン酸H2O(40g)、MnSO4H2O(30g)、NaCl(10g)、FeSO47H2O(1g)、CoCl26H2O(1g)、ZnSO47H2O(1g)、CuSO45H2O(100mg)、H3BO3(100mg)、NaMoO42H2O(100mg)。各成分を1成分ずつ脱イオン水に溶解する。pHをHCl/NaOHで3.0に調整した後、溶液を用量に調整し、0.22μmフィルタでフィルタ滅菌する。
ルリア・ベルターニブロス+抗生物質で細胞を一晩増殖させる。翌日、OD600が0.1になるよう、250mLのバッフル付き三角フラスコにおいて細胞を20mLのTM3培地(50μg/mLのスペクチノマイシン及び50μg/mLのカルベニシリンを含有)により希釈し、34℃かつ200rpmでインキュベートする。2時間増殖させた後、OD600を測定し、200μMのIPTGを加える。発酵工程の間、規則的に試料を採取する。各時点でOD600を測定する。また、ガスクロマトグラフ−質量分析器(GC−MS)(Agilent)によるヘッドスペースアッセイにより、イソプレンのオフガス解析を行った(米国特許出願公開番号第2005/0287655号を参照されたい。この特許文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。100μLの全ブロスをGCバイアルに入れ密閉し、34℃かつ200rpmで30分間インキュベートする。70℃で7分のインキュベーションからなる熱殺菌工程後、試料をGCに装填する。GCによるイソプレン量の読み取り値(μg/L)を、インキュベート時間(30分)及びOD600測定値で除算し、比産生量として記録する。
結果
野生型ispA、DW415(米国特許出願第13/283,564号に記載)又は再構成したispA(CMP1061)を有する株は、ispAの発現が改変された株よりもわずかに緩慢に増殖した(CMP1059及びCMP1082)(図7a)。すべての株の比産生性は非常に類似していた(図7b)。
実施例9:CMP1082の大規模発酵
対照株CMP1043(HMB GI1.2gltA,−MCM82,pCHL243)に対し、株CMP1082(HMB GI1.2gltA,PyddVIspA_GO,truncIspA,MCM82,pCHL243)の特定の性能指数(グルコースに対する累積イソプレン収率、イソプレン産生性、最大比産生性、並びに細胞性能指数)を試験するため、次のプロトコルにしたがって発酵を実施した。
培地組成(発酵培地1L当たり):K2HPO4(7.5g)、MgSO47H2O(2g)、クエン酸一水和物(2g)、クエン酸鉄アンモニウム(0.3g)、酵母エキス(0.5g)、50%硫酸(1.6mL)、1000X改変微量金属溶液(1mL)。すべての成分を共に加え、脱イオン水に溶解させた。この溶液を加熱滅菌した(123℃で20分)。水酸化アンモニウム(28%)によりpHを7.0に調整し、容量に調整した。滅菌及びpH調製後にグルコース10g、ビタミン溶液8mL、及び抗生物質を加えた。
1000X改変微量金属溶液(1L当たり):クエン酸H2O(40g)、MnSO4H2O(30g)、NaCl(10g)、FeSO47H2O(1g)、CoCl26H2O(1g)、ZnSO7H2O(1g)、CuSO45H2O(100mg)、H3BO3(100mg)、NaMoO42H2O(100mg)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
ビタミン溶液(1L当たり):塩酸チアミン(1.0g)、D−(+)−ビオチン(1.0g)、ニコチン酸(1.0g)、塩酸ピリドキシン(4.0g)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、孔径0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
マクロ塩溶液(1L当たり):MgSO47H2O(296g)、クエン酸一水和物(296g)、クエン酸鉄アンモニウム(49.6g)。すべての成分を水に溶解させ、用量に調整し、0.22μmのフィルタを用い、ろ過滅菌した。
供給溶液(1kg当たり):グルコース(0.590kg)、脱イオン水(0.393kg)、K2HPO4(7.4g)、及び100% Foamblast882(8.9g)。すべての成分を合わせて混合し、オートクレーブ処理した。供給溶液をオートクレーブ処理した後、滅菌フード内で、供給ボトルに栄養塩類を添加する。滅菌後に供給溶液に添加するものは(供給溶液1kg当たり)マクロ塩溶液5.54mL、ビタミン溶液6.55mL、1000X改変微量金属溶液0.82mLである。
代謝解析:ドライアイスにより冷却した9mLのメタノールを入れたチューブに約3mLの培養液を回収し、大腸菌(E. coli)からの代謝産物の抽出を実施した。得られた試料を計量し、試料としたブロス量を算出し、以降の解析に備え−80℃で保管した。代謝産物の抽出並びに濃縮の際には、0.5mLの細胞懸濁液アリコート(OD600で測定した時の培養物の細胞密度が50を下回る場合には1mLのアリコートを使用する)を2.5mLのメタノール/酢酸アンモニウム緩衝液(5mM,pH=8.0)混合液(6:1、体積/体積)を使用して希釈し、5分間遠心分離し細胞片をペレット化させた。上清を回収し、Phenomenex(33μm 30mg/3mL Polymeric Weak Anion Exchange)のStrata−X−AWカラムに装填する。まず3mLのメタノール/酢酸アンモニウム緩衝液(5mM,pH=8.0)混合液(6:1体積/体積)を使用し、次に3mLのメタノール/酢酸アンモニウム緩衝液(5mM,pH=8.0)混合液(1:1体積/体積)を使用して、細胞ペレットを2回以上抽出した。いずれの場合にも、細胞は遠心分離によりペレット化し、得られた上清を、同一のStrata−X−AWカラムに連続的に装填した。抽出−遠心分離中、細胞を含む試料は4℃未満に維持した。1mLの水及び1mLのメタノールによりカラムを洗浄した後、対象とする代謝産物を、最初に濃NHOH/メタノール(1:14、体積/体積)混合物0.3mLを用い、次に0.3mLの濃NHOH/メタノール/水(1:12:2、体積/体積/体積)混合物を用いカラムから溶出した。20μL氷酢酸を加え、得られた溶離液を中和し、次に遠心分離により清澄化した。
TSQ Quantum Access TSQシステム(Thermo Scientific)を使用し、質量分析法により代謝産物の解析を実施した。すべての系の制御、データ取得、及び質量スペクトルデータの評価は、XCalibur and LCQuanソフトウェア(Thermo Scientific)を使用して実施した。LC−ESI−MS/MS方法に関しては、chiral Nucleodex β−OH 5μM HPLCカラム(100×2mm,Macherey−Nagel,Germany)を、CC 8/4 Nucleodex β−OHガードカートリッジとともに使用した。移動相Aは100mM酢酸アンモニウム(Sigmaウルトラ等級,Sigma)緩衝液(pH=8)/MilliQ−等級水とし、移動相BはMilliQ等級水とし、移動相CはLC−MS等級アセトニトリル(Chromasolv,Riedel−de Haen)とし、移動相の勾配を適用した。カラム及び試料のトレイ温度をそれぞれ5℃及び4℃に低下させた。注入容量は10μLとした。
エレクトロスプレーイオン化法を用い、陰イオンモード(ESIスプレー電圧:3.0kV及びイオン送達管(ion transfer tube)温度390℃)で質量検出を実施した。前駆体イオンに関し次のm/z値を選択して、SRMモードで対象とする代謝産物を検出した:IPP及びDMAPPに関しては245.0、GPPに関しては313.1、FPPに関しては381.1、MVPに関しては227.0、及びMVPPに関しては307.1。PO3−生成イオン(m/z=79.0)により生成されたピークの積分強度を元に代謝産物の濃度を求めた。標準を注入することにより得た校正曲線を使用して、細胞抽出液中の代謝産物濃度を算出した。IPP、DMAPP、GPP、及びFPP標準をEchelon Biosciences Inc.から購入し、MVP及びMVPP(R−forms)をSigma−Aldrichから購入した。OD600=200の培養液1mL中の全細胞の総容積は50μLであるとする仮定を元に代謝産物の細胞内濃度を求めた。
この実験をpH 7.0及び温度34℃で実施した。大腸菌(E.coli)株を凍結したバイアルを解凍し、トリプトン酵母エキス培地及び適切な抗生物質を入れたフラスコに接種した。550nm(OD550)での吸光度が1.0になるまで接種材料を増殖させた後、500mLを15Lのバイオリアクタに接種し、初期槽容量を5Lに調整した。各バッチの培地には、グルコースを9.7g/L含有させた。細胞のOD550が6に達したら、最終濃度200μMでイソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を加え誘導を実施した。培養によるグルコースの消費がpHの上昇により示されたなら、代謝に必要とされる量に足りるよう、10g/分以下の速度でグルコース供給溶液を供給した。グルコースに対するメバロン酸の最大質量収率を測定するのに十分な時間、すなわち発酵の開始から合計48〜72時間にわたって発酵を行った。
イソプレンは揮発性であり、送入気体により槽から効率的に回収することができる。バイオリアクタ中のオフガスに含まれるイソプレン濃度を、iSCAN(Hamilton Sundstrand)質量分析計を用い測定した。送入気体は一般的な酸素及び窒素混合気体とした(それぞれ約9.3体積%及び90.7体積%)。4時間間隔でブロス試料にHPLC解析を行い、発酵ブロス中のクエン酸、グルコース、酢酸及びメバロン酸濃度を測定した。屈折率と、濃度既知の標準を使用して予め作成した検量線とを比較して、ブロス試料中の濃度を測定した。
結果
Figure 2015510392
グルコースに対する収率(重量%)=総イソプレン量(t)/[(供給重量(0)−供給重量(t)+83.5)0.59)]、
式中、0.59はグルコース供給溶液中のグルコースの割合(重量%)であり、及び83.5は、t=0の時点で発酵槽に供給したバッチのグラム重量である。各供給量は、独立して重量%として測定した。
イソプレン力価(g/L)=イソプレン放出速度(evolution Rate)の積分値(mol/L)イソプレン分子量(g/mol)
CPI=イソプレン総重量(g)/総乾燥細胞重量(g)
比産生性(mg/L/hr/OD)=HgER68.117g/mol/OD(HgER=イソプレン放出速度)。
HgERはイソプレンの放出速度(mmol/L/hr)である。
OD=吸光度=550nmでの吸光度水への希釈倍率。
結論
図13及び表6に見られるとおり、ispAプロモーターを改変した株(CMP1082)を用いる発酵は、野生型ispAプロモーターを使用する対照株(CMP1043)よりもグルコースに対するイソプレン収率が高い。ispAプロモーターを改変した株(CMP1082)による発酵は、野生型ispAプロモーターを使用する対照株(CMP1043)と比較して、より高いイソプレン力価(図14及び表6を参照されたい)、より高い細胞産生性指数(図15及び表6を参照されたい)、より高いイソプレン容積産生量(図16及び表6を参照されたい)、並びにより高いイソプレンの最大比産生性(12時間の範囲;図17及び表6を参照されたい)を有する。
実施例10:CMP1059の大規模発酵
実施例4に記載の方法に従ってポリメラーゼ連鎖反応のプロトコルを実施した。株MD08−97(上記)からP1細胞溶解液を作製し、CMP722への形質導入に使用した。コロニーをLB+クロラムフェニコール5mg/Lで選別し、CMP1024と名づけた。PCRによりCMP1024を確認し、配列決定を行い、タンパク質分解性のタグが存在していることを実証した。pCP20(上掲Datsenko及びWanner)を使用してクロラムフェニコールマーカーを除去し、クロラムフェニコール感受性のコロニーを選別し、CMP1034と命名した。電気穿孔法により、プラスミドMCM82及びpCHL243をCMP1034に同時に導入した。LB+カルベニシリン50mg/L及びスペクチノマイシン50mg/Lで増殖させたコロニーを選択し、CMP105と命名した。
対照株CMP1043(前述)に対し、株CMP1059(HMB GI1.2gltA,ispA_prot_tag,MCM82,pCHL243)の特定の性能指数(グルコースに対する累積イソプレン収率、イソプレン産生性、最大比産生性、並びに細胞性能指数)を試験するため、次のプロトコルにしたがって発酵を実施した。
培地組成(発酵培地1L当たり):K2HPO4(7.5g)、MgSO47H2O(2g)、クエン酸一水和物(2g)、クエン酸鉄アンモニウム(0.3g)、酵母エキス(0.5g)、50%硫酸(1.6mL)、1000X改変微量金属溶液(1mL)。すべての成分を共に加え、脱イオン水に溶解させた。この溶液を熱滅菌した(123℃、20分)。水酸化アンモニウム(28%)によりpHを7.0に調整し、容量に調整した。滅菌及びpH調製後にグルコース10g、ビタミン溶液8mL、及び抗生物質を加えた。
1000X改変微量金属溶液(1L当たり):クエン酸H2O(40g)、MnSO4H2O(30g)、NaCl(10g)、FeSO47H2O(1g)、CoCl26H2O(1g)、ZnSO7H2O(1g)、CuSO45H2O(100mg)、H3BO3(100mg)、NaMoO42H2O(100mg)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
ビタミン溶液(1L当たり):塩酸チアミン(1.0g)、D−(+)−ビオチン(1.0g)、ニコチン酸(1.0g)、塩酸ピリドキシン(4.0g)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、孔径0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
マクロ塩溶液(1L当たり):MgSO47H2O(296g)、クエン酸一水和物(296g)、クエン酸鉄アンモニウム(49.6g)。すべての成分を水に溶解させ、用量に調整し、0.22μmのフィルタを用い、ろ過滅菌した。
供給溶液(1kg当たり):グルコース(0.590kg)、脱イオン水(0.393kg)、K2HPO4(7.4g)、及び100% Foamblast882(8.9g)。すべての成分を合わせて混合し、オートクレーブ処理した。供給溶液をオートクレーブ処理した後、滅菌フード内で、供給ボトルに栄養塩類を添加する。滅菌後に供給溶液に添加するものは(供給溶液1kg当たり)マクロ塩溶液5.54mL、ビタミン溶液6.55mL、1000X改変微量金属溶液0.82mLである。
この実験をpH 7.0及び温度34℃で実施した。大腸菌(E. coli)株を凍結したバイアルを解凍し、トリプトン酵母エキス培地及び適切な抗生物質を入れたフラスコに接種した。550nm(OD550)での吸光度が1.0になるまで接種材料を増殖させた後、培養物のうち500mLを15Lのバイオリアクタに接種し、初期槽容量を5Lに調整した。各バッチの培地には、グルコースを9.7g/L含有させた。細胞のOD550が6に達したら、最終濃度200μMでイソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を加え誘導を実施した。培養によるグルコースの消費がpHの上昇により示されたなら、代謝に必要とされる量に足りるよう、10g/分以下の速度でグルコース供給溶液を供給した。グルコースに対するメバロン酸の最大質量収率を測定するのに十分な時間、すなわち発酵の開始から合計48〜72時間にわたって発酵を行った。
バイオリアクタ中のオフガスに含まれるイソプレン濃度を、iSCAN(Hamilton Sundstrand)質量分析計を用い測定した。送入気体は一般的な酸素及び窒素混合気体とした(それぞれ約9.3体積%及び90.7体積%)。4時間間隔でブロス試料にHPLC解析を行い、発酵ブロス中のクエン酸、グルコース、酢酸及びメバロン酸濃度を測定した。屈折率と、濃度既知の標準を使用して予め作成した検量線とを比較して、ブロス試料中の濃度を測定した。
結果
ispA株(CMP1059)に対しタンパク質分解性タグを用いる発酵では、野生型ispAタンパク質を使用する対照株(CMP1043)と比較して細胞産生性指数が11%高かった。加えて、ispA株(CMP1059)に対しタンパク質分解性タグを用いる発酵では、イソプレンの最大比産生性(16時間EFT時点)は、野生型ispAタンパク質を使用する対照株(16時間EFT時点,CMP1043)よりも14%高かった。
実施例11:ispAの改変を含む株における代謝データ
実施例9及び10に記載のプロトコルに従い、株CMP1059及びCMP1082、並びに対照株CMP1043において代謝産物の蓄積を試験するため、発酵を実施した。
代謝解析:ドライアイスにより冷却した9mLのメタノールを入れたチューブに約3mLの培養液を回収し、大腸菌(E. coli)からの代謝産物の抽出を実施した。得られた試料を計量し、試料としたブロス量を算出し、以降の解析に備え−80℃で保管した。代謝産物の抽出並びに濃縮の際には、0.5mLの細胞懸濁液アリコート(OD600で測定した時の培養物の細胞密度が50を下回る場合には1mLのアリコートを使用する)を2.5mLのメタノール/酢酸アンモニウム緩衝液(5mM,pH=8.0)混合液(6:1、体積/体積)を使用して希釈し、5分間遠心分離し細胞片をペレット化させた。上清を回収し、Phenomenex(33μm 30mg/3mL Polymeric Weak Anion Exchange)のStrata−X−AWカラムに装填する。まず3mLのメタノール/酢酸アンモニウム緩衝液(5mM,pH=8.0)混合液(6:1体積/体積)を使用し、次に3mLのメタノール/酢酸アンモニウム緩衝液(5mM、pH=8.0)混合液(1:1体積/体積)を使用して、細胞ペレットを2回以上抽出した。いずれの場合にも、細胞は遠心分離によりペレット化し、得られた上清を、同一のStrata−X−AWカラムに連続的に装填した。抽出−遠心分離中、細胞を含む試料は4℃未満に維持した。1mLの水及び1mLのメタノールによりカラムを洗浄した後、対象とする代謝産物を、最初に濃NHOH/メタノール(1:14、体積/体積)混合物0.3mLを用い、次に0.3mLの濃NHOH/メタノール/水(1:12:2、体積/体積/体積)混合物を用いカラムから溶出した。得られた溶離液に20μL氷酢酸を加え中和し、次に遠心分離により清澄化した。
TSQ Quantum Access TSQシステム(Thermo Scientific)を使用し、質量分析法により代謝産物の解析を実施した。すべての系の制御、データ取得、及び質量スペクトルデータの評価は、XCalibur and LCQuanソフトウェア(Thermo Scientific)を使用して実施した。LC−ESI−MS/MS方法に関しては、chiral Nucleodex β−OH 5μM HPLCカラム(100×2mm,Macherey−Nagel,Germany)を、CC 8/4 Nucleodex β−OHガードカートリッジとともに使用した。移動相Aは100mM酢酸アンモニウム(Sigmaウルトラ等級,Sigma)緩衝液(pH=8)/MilliQ−等級水とし、移動相BはMilliQ等級水とし、移動相CはLC−MS等級アセトニトリル(Chromasolv,Riedel−de Haen)とし、移動相の勾配を適用した。カラム及び試料のトレイ温度をそれぞれ5℃及び4℃に低下させた。注入容量は10μLとした。
エレクトロスプレーイオン化法を用い、陰イオンモード(ESIスプレー電圧:3.0kV及びイオン送達管(ion transfer tube)温度390℃)で質量検出を実施した。前駆体イオンに関し次のm/z値を選択して、SRMモードで対象とする代謝産物を検出した:IPP及びDMAPPに関しては245.0、GPPに関しては313.1、FPPに関しては381.1。PO−生成イオン(m/z=79.0)により生成されたピークの積分強度を元に代謝産物の濃度を求めた。標準を注入することにより得た校正曲線を使用して、細胞抽出液中の代謝産物濃度を算出した。IPP、DMAPP、GPP、及びFPP標準はEchelon Biosciences Inc.から購入した。OD600=200の培養液1mL中の全細胞の総容積は50μLであるとする仮定を元に代謝産物の細胞内濃度を求めた。
結果
Figure 2015510392
実施例12:トリ改変ファルネシル二リン酸合成酵素による大腸菌(E. coli)野生型ファルネシル二リン酸合成酵素の置き換え
DMAPPからの、低分子量イソプレノイド類よりもイソプレンへの炭素の分配を増加させる目的で、DMAPPに関しKm値の増加しているファルネシル二リン酸合成酵素を使用することは有用である場合がある。このような酵素はFernandez,S.et al.,2000,Biochemistry,39(50):15316〜15321に記載される。したがって、野生型大腸菌(E. coli)ファルネシル二リン酸合成酵素を、A116W又はN144’W変異を有するトリ酵素により置き換えた。
このような株を作製するため、PCRにより3つのDNA断片を作製した。断片1は、seamlessキット(インビトロジェン)によりXbaI/EcoRI消化ベクターpBBR1MCS5(Kovach et al.1995,Gene 166:175〜176)に組み込むための15bpの配列、BL21のyhfS領域と相同な領域、カナマイシンマーカー、及びxseB−ispA−dxsオペロンのプロモーターを組み込むための15bpの配列を含有する。断片を得るためにプライマーCMP247(5’−gcggtggcggccgctttgtcatcggttaacgctggaacacctgccgcgcgcaacgttgccagcaccctccttagttcctattccgaagttc−3’(配列番号58))及びCMP248(5’−gctggagctgcttcgaagttcc−3’(配列番号59))を使用し、pKD4(上掲Datsenko及びWanner)をテンプレートとした。断片2はxseB−ispA−dxsオペロンのプロモーターを含有する。断片を得るために使用したプライマーはCMP249(5’−cgaagcagctccagcgaacaatttaatgataaacttcatggcg−3’(配列番号60))及びCMP250(5’−AATGAATGTCTGACTCTCAATATTTTTCGC−3’(配列番号61)であり、テンプレートはBL21の染色体DNAとし、あるいはこれらの誘導体とする。断片1及び断片3を継ぎ目なく組み立てられるようにプライマーを設計した。断片3は、トリファルネシル二リン酸合成酵素遺伝子、対立遺伝子A166W又はN144’W、並びに断片2とXbaI及びEcoRIにより消化したpBBR1MCS5とを組み込むための15bpの配列を2組含有する。断片を得るために、プライマーCMP343(5’−ATAAGCTTGATATCGacctgtcggcactgaagcaggtcgtcgacgagcaacaaccggatgcggcgTCATTTCTGGCGTTTGTAGATCTTC−3’(配列番号62))及びCMP344(5’−agtcagacattcattatgcataaatttactggtgtcaatg−3’(配列番号63)を使用し、並びにA166W対立遺伝子に関してはプラスミドpA166W及びN144’W対立遺伝子に関してはプラスミドpN144’Wをテンプレートとした(Fernandez,S.et al.,上掲)。
すべてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、製造元(Agilent,Santa Clara,CA)により推奨されるプロトコルに従ってHerculase II Fusionを使用して実施した。これらを、Qiagen(Germantown,MD,USA)のPCR精製キットを使用し精製した。
次に、断片1、2及び3を、製造元により推奨されるプロトコルに従ってGeneArt seamless cloning and assemblyキット(インビトロジェン,Carlsbad,CA)を使用しEcoRI/XbaIにより消化したプラスミドpBBR1−MCS5に組み込んだ。反応液により大腸菌(E. coli)Top10細胞(インビトロジェン,Carlsbdad,CA)を形質転換させ、形質転換体をLB+カナマイシン20mg/Lで選別した。これらのコロニーのうちの1つからプラスミドを単離し、A166W対立遺伝子に関してはpCMP1093、及びN144’W対立遺伝子に関してはpCMP1094と命名した。プラスミド中に正しいコンストラクトが存在していることを配列決定(Quintara Bio(Albany,CA))により確認した。プライマーCMP257(5’−cattcgcgccgcattcacagccgattcgagccaccttcatcaccgcatagttgtcatcggttaacgctggaacac−3’(配列番号64))及びCMP258(5’−GGTTATTATTGAGCAGATGGGGCTGACGCTTATTACTGTTGATTTCAATGACCTGTCGGCACTGAAGCAGG−3’(配列番号65))を使用するPCR反応には、プラスミドpCMP1093及び1094をテンプレートとして使用した。Qiagen PCR精製キット(Germantown(MD,USA))を使用してPCR産物を精製し、制限酵素DpnIにより消化した。更なる精製後、株CMP1018の組み換え反応(上掲Datsenko及びWanner)にこれらのPCR産物を使用した。形質転換体を、LB+10mg/Lカナマイシンで選別した。PCR(プライマーCMP267(5’−cgattcgagccaccttcatcacc−3’(配列番号66))及びCMP268(5’−CAGCGTCTTCTGGTGCATGACG−3’(配列番号67))を使用)により妥当な大きさであるものと判断されたコロニーをそれぞれCMP1101及びCMP1102と命名した。pCP20(上掲Datsenko及びWanner)からカナマイシンマーカーを除去し、それぞれCMP1107及びCMP1108を作製した。除去を行うため、pCP20(50mg/Lカルベニシリンにより30℃下で増殖)により形質転換させたコロニーをLBに画線し、42℃で一晩増殖させた。1日後、コロニーを採取し、LB並びにLB+10mg/Lカナマイシンに接種した。マーカーを除去したコロニーはLBでは増殖するものの、LB+10mg/Lカナマイシンでは増殖しない。電気穿孔法により、プラスミドMCM82及びpCHL243をCMP1107及び1108に同時に導入した。それぞれに関し、LB+カルベニシリン50mg/L及びスペクチノマイシン50mg/Lで増殖したコロニーを選別し、それぞれCMP1112及びCMP1113と命名した。
実施例13:ispAの後ろに収束性誘導プロモーター(convergent inducible promoter)を保有している株の構築
所与の時点でispAの発現を低下させるための代替法は、収束性誘導プロモーターを遺伝子の下流に配置するというものである。この方法は、これまでに、pykFの発現を低下させる際に良好に適用されている(Krylov et al.,2010,J Mol Microbiol Biotechnol,18:1〜13)。
一実施形態では、株CMP1018において、ispAの下流にTrcプロモーターを挿入する。プラスミドMCM82(米国特許出願第2011/0159557号を参照されたい)及びpCHL243を電気穿孔法により同時に株に導入した。LB+カルベニシリン50mg/L及びスペクチノマイシン50mg/Lで増殖したコロニーを選別し、それぞれCMP1112及びCMP1113と命名する。IPTGによる誘導時に、IspAの発現が低下することによりTrcプロモーターが誘導される。
実施例14:IspA発現を低下させるためのアンチセンスRNAの利用
アンチセンスRNA法は、標的とする遺伝子の減弱を得るための手法を提示する。この手法は、酢酸の産生を低減させる際(Kim J.and Cha H.J.,2003,Biotech Bioeng.,283:841〜853)、又は遺伝子操作によりカタラーゼをノックアウトさせて表現型を生成する際(Chan E.et al.,2010,J.Exp.Microbiol Immunol.,14:127〜134)に大腸菌(E. coli)において使用されてきた。
大腸菌(E. coli)のispA遺伝子を標的としたアンチセンスコンストラクトの設計は、Shao Y.et al.,2006,Nucleic Acids Res.,34:5660〜5669に報告される方法を使用し作製することができる。アンチセンスRNA分子は、対化した終端を使用し安定化することができる(Nakashima N.et al.,2006,Nucleic Acids Res.,34:e138)。MCM82又はpCHL243においてオペロンの末端にこれらのコンストラクトを配置する。これらのアンチセンスRNAコンストラクトを使用することで、結果としてイソプレンの収率が増加し得る。
実施例15:異種リプレッサータンパク質HrcAによるispA発現の低下
ispAの発現を調節するための代替法には、これまでに同定されているカウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)の転写抑制因子HrcAを利用するというものがある(Roberts et al.,1996,Journal of Bacteriology,178(7):1829〜1841;Susin et al.,2004,Journal of Bacteriology,186(20):6759〜6767)。HrcAをコードしている遺伝子は、多くの微生物(例えば、大腸菌(E. coli))においては天然では見られず、HrcAにより認識され、これらの微生物における遺伝子発現の管理に関係するCIRCEエレメントであるとは考えられていない。したがって、ispAの発現を管理する制御配列内にCIRCEエレメントを組み込むことで、HrcA介在性のispA抑制が可能になる。更に、厳密に制御される数多くの手段のうちの少なくとも1つにより発現が管理され得る異種hrcA遺伝子を導入することができる。このように制御系の仕組みを遺伝子操作することで、結果として、発酵時の増殖が緩慢な期間又は高イソプレン産生期間中の所定の期間、hrcAの発現が誘導されることになる。このような方法を例証するため、緊密に制御された遺伝子発現調節系の例を以降に記載する。
下流の必須遺伝子dxsの発現に対する影響を排除するため、2段階法を利用した。最初に、GeneBridges technology(Heidelberg,Germany)などの標準法を用い、内在性の遺伝子座からispAの5’側の半分を除去する。これにより、連結している遺伝子xseB及びdxsを通常発現させて、3つの遺伝子オペロン;xseB−ispA−dxsを形成する天然の遺伝子座に未変化のまま残すことができる(Ecocycデータベースのecocyc.orgを参照されたい)。次に、オンラインのSoftBerry tool BPROMによる細菌プロモーターの予測(http://linux1.softberry.com/berry.phtml?topic=bprom&group=programs&subgroup=gfindb)を使用するプロモーター検索により、dxs発現を管理するσ−70依存型プロモーターがispA遺伝子の3’側の半分に存在するものと予想する。これにより、ispAを欠失させることで、続いて、直後に記載する、ランダム化したispA HrcAにより管理される対立遺伝子の導入が生じる。
HrcAにより制御されているプロモーターにより管理されている、コドンをランダム化したispAをコードしている配列(図8を参照されたい)をGene Oracle(Mountain View,CA)から得て、標準的なGeneBridges法を使用し、イソプレンを産生する大腸菌(E. coli)株の染色体に導入する。イソプレン産生を最適化するために、イソプレン産生の際の候補として2種類のプロモーターを試験することもできる。更なる使用に際し、増殖期中に野生型ispAの遺伝子座をもつ株と同程度ispAを産生する候補を選択した。候補とする2種類のプロモーターとしては:プロモーター候補1)予想される転写開始部位の3’側にCIRCEエレメントを導入された3遺伝子オペロンの発現を推進するものと推測される、xseB上流の制御配列部位;及びプロモーター候補2)xseBコード配列の一部を包含するispAの上流の制御領域部位が挙げられ、オンラインSoftBerry tool BPROMにより、予想される転写開始部位の3’側にCIRCEエレメントを導入された細菌プロモーターが予想される。CIRCEエレメント配列、並びにispAの発現を管理するよう計画されたプロモーターの配置は、Baldini et al.,1998,Journal of Bacteriology,180(7):1632〜1641の図10において提供される情報から導き出される。
プロモーター候補1)に関し、ボールド体のみの場合には推定される転写開始部位であり、下線を付した配列は参照(上掲Baldini et al.)に記載のCIRCEエレメントであり、ボールド体で下線を付されたものはCIRCEエレメントの左側及び右側の逆方向反復配列であり、ボールド体の小文字は予想されるRBSであり、小文字のatgは開始コドンである。
Figure 2015510392
プロモーター候補2)に関し、ボールド体のみの場合には推定される転写開始部位であり、下線を付した配列は参照(上掲Baldini et al.)に記載のCIRCEエレメントであり、ボールド体で下線を付されたものはCIRCEエレメントの左及び右側の逆方向反復配列であり、ボールド体の小文字は予想されるRBSであり、小文字のatgは開始コドンである。
Figure 2015510392
hrcAの対立遺伝子を大腸菌(E. coli)において発現させるためのコドン最適化は、Gene Oracle(Mountain View,CA)から得ることができる。ヌクレオチド配列については図18を参照のこと。これまでに議論したとおり、HrcA制御因子の発現に関与する的確なプロモーターは、大腸菌(E. coli)のイソプレン産生系の数多くの生理学的に関連する特質に由来するものであり得る。このような例では、IPTGにより制御されるTacプロモーターを利用して、pK184由来のプラスミドベクターからPTac−hrcAを発現させることができる(Jobling et al.,1990,Nucleic Acids Res.,18(17):5315〜5316)。標準的な電気穿孔法により、PTac−hrcAコンストラクトを、ΔispAプロモーター候補1)ランダム化したispAバックグラウンド、並びにΔispAプロモーター候補2)ランダム化したispAバックグラウンド中に移動させ、50ug/mLカナマイシンLB培地プレートなどといった、適切な抗生物質を付加したプレートで選別する。得られる一連のカナマイシン耐性コロニーを単離し、イソプレン産生の増強など得られ得る効果を評価するため、更に試験する。
Tacプロモーターに関し、ボールド体の小文字は予想されるRBSであり、小文字のatgは開始コドンである。
Figure 2015510392
抗IspA抗体を使用して、液体培地内のIspAの蓄積を監視することができる。所望により、抗HrcA抗体を使用して、宿主内でのこのタンパク質の機能性を検証する目的で、前駆体濃度を監視することもできる。設計されたプロモーター候補1)及び2)のHrcA抑制性に加えて、イソプレン産生宿主細胞内での、HrcA制御因子の発現及び機能の成功は、IPTGの付加後のIspA濃度に反映され得る。プロモーター候補1)及び2)は、CIRCEエレメントにHrcAを結合させることにより抑制することができ、その結果IspAの蓄積の減少が観察されることになる。この観察は、培養物に加えられる誘導物質IPTGの濃度と逆相関する。
IspA濃度の低下と関連する任意の表現形について、顕微鏡観察により細胞を監視することができる。更に、増殖速度の測定のために細胞を監視することもできる。IspA濃度の著しい低下により、結果として、増殖が緩慢になることが見込まれ、並びにIspAの蓄積が不十分になり又は損なわれて増殖が停止し、及び細胞生存率が低下することが見込まれる。更に、ΔispAプロモーター候補1)ランダム化ispA、並びにΔispAプロモーター候補2)ランダム化ispAバックグラウンドのqRT−PCRを実施して、HrcA発現の欠損下で、各プロモーター候補によりどの程度の量のIspA及びispAのmRNAが生成されるのか測定することができる。この情報に加え、株の増殖及び挙動は、最適な発現調節をもたらすプロモーターを決める際の指針として役立ち得る。
実施例16:キシロースによるispA発現の制御
本明細書に記載されるとおり、ispAの発現を低下させることにより、イソプレンを産生するよう遺伝子操作した細胞がグルコースから産生するイソプレンの収率が大幅に増加し得る。炭素源利用能により介在される遺伝子発現制御は、産生宿主内でispAの発現を調節する際のスケーラブルな代替法である。このような方法により、バイオマスの迅速な置換えを可能にする健康的でロバストで高速な細胞増殖に必要とされる、比較的正常なレベル及び/又は十分なレベルのispAの発現が提供され得る。加えて、ispA活性が細胞生存率に有害であるものとして考えられる場合、このような方法により、グルコースにより支持されるイソプレン産生の主要な期間中にispAを限定的に発現する能力がもたらされ、結果として、グルコースから産生されるイソプレンの収率が低下する。炭素源を制限した遺伝子発現を用いることで、IPTGなどの化学的誘導剤の費用が高く付く場合のある大規模での遺伝子発現を経済的に実施することができる。
一実施例では、イソプレン産生宿主株におけるispA発現は、大腸菌(E. coli)に対して内在性のxylA又はxylFプロモーターの直接的な調節下に置かれ、あるいはイソプレンを産生するよう遺伝子操作された大腸菌(E. coli)細胞内でD−キシロースにより正に影響し、かつグルコースにより負に影響する任意のプロモーターの調節下に置かれる。これは、内在性ispA遺伝子を欠失させ、D−キシロース応答性プロモーターのxylA又はxylFの何れかの調節下で異種ispAを置換することにより実施される。大腸菌(E. coli)の多様なxylA−xylFプロモーター、並びにD−キシロース及び転写活性化因子XylRを介するそれらのプロモーターの正の制御、及びグルコース及び代謝産物の抑制によるそれらのプロモーターの負の制御がこれまでに報告されている(S.Song and C.Park,1997,J.Bacterial.,179(22):7025〜7032)。これらの細胞では、IspA活性は、グルコースの非存在下でのキシロース利用能により正に、並びにグルコースの存在により負に管理される。キシロース誘導性のispA座は、宿主の染色体内に存在するものの、あるいは、プラスミドなどの染色体外のヌクレオチド配列によりコードされてもよい。キシロースにより誘導することのできるispAコンストラクトの構築、並びにイソプレンを産生する大腸菌(E. coli)宿主へのコンストラクトの導入は、標準的な分子生物学的及び微生物学的手法を使用し実施することができる(J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.1989)。
最初に、D−キシロースを唯一の炭素源として存在させ、IspA活性をコードしている唯一の遺伝子座としてxylAプロモーター−ispA又はxylFプロモーター−ispAのいずれかを保有しているイソプレン産生株を増殖させる。所望の時点で、発酵を実施するために発酵槽にグルコースを送り込み、ispAの発現を効果的に抑制し、グルコース代謝により駆動される呼吸を迅速に移行させる。以降の発酵の間中、グルコースは、イソプレン産生に利用される炭素源となる。グルコース存在下では、xylAプロモーター−ispA又はxylFプロモーター−ispA遺伝子座からの転写、並びにグルコースの非存在下でそれまでに発現された、コードされていたIspAに固有の半減期は減少し、結果として、高濃度グルコースにより支持されるイソプレン産生中はIspA活性が著しく低下し、細胞生存率は増強され、イソプレン産生宿主株によりグルコースから生成されるイソプレンの収率が向上する。
実施例17:株CMP1136(−PGL)の構築
pgl座にカナマイシンカセットを含有しているKeio株JW0750(Baba et al.2006.Mol.Syst.Biol.2:1〜11)と、プライマーpglAmpF(5’−cagcaaatagcaggtgtatccagc−3’(配列番号71)及びpglAmpR(5’−GCA ACC GAC TGT TGA TAG AAC AAC−3’(配列番号72))とを使用し、実施例4に記載のPCR法により、FRT部位並びにpgl(ybhE)の上流及び下流に対する相同領域と隣接させたカナマイシンカセットを含有しているPCR産物を得た。このPCR産物を使用して、大腸菌(E. coli)CMP1075(上掲)の組み換え反応を行った(プロトコルについては上記を参照されたい)。コロニーをLB+カナマイシン10mg/Lで選別し、CMP1125と命名した。製造元により推奨されるプロトコルを用い、株CMP1133からカナマイシンマーカーを除去した(Gene Bridges,Heidelberg,Germany)。
プライマーpglAmpF(上掲)及びpglRecCheck(5’−GGT TAC AAA ATG ATT GGC GTA CGC−3’(配列番号73))を使用してPCRを行い、CMP1133がpgl遺伝子を欠失していることを確認した。電気穿孔法により、プラスミドMCM82及びpCHL243をCMP1133に同時に導入した。LB+カルベニシリン50mg/L及びスペクチノマイシン50mg/Lで増殖したコロニーを選別し、CMP1136と命名した。
実施例18:CMP1136の大規模発酵
本試験を実施して、導入したメバロン酸経路由来遺伝子を発現させかつ15L規模の流加式培養で増殖させた大腸菌(E. coli)(BL21)によるイソプレン産生を評価した。下記の通りイソプレン産生株CMP1082(HMB GI1.2gltA、PyddVIspA_GO、truncIspA、pMCM82、pDW72)を使用し、標準的なイソプレン産生工程を実施した。同一条件での試験株CMP1136(HMB GI1.2gltA、PyddVIspA_GO、truncIspA,pgl−、pMCM82、pDW72)の生産指数(グルコースに対する累積イソプレン収率、グルコースに対する瞬間的なイソプレン収率、イソプレンの容積生産量、比生産量及び細胞産生性指数)を比較して、CMP1136においてpgl遺伝子を欠失させたことによる収率の向上を確認した。
培地組成(発酵培地1L当たり):K2HPO4(7.5g)、MgSO47H2O(2g)、クエン酸一水和物(2g)、クエン酸鉄アンモニウム(0.3g)、酵母エキス(0.5g)、50%硫酸(1.6mL)、1000X改変微量金属溶液(1mL)。すべての成分を共に加え、脱イオン水に溶解させた。この溶液を加熱滅菌した(123℃で20分)。水酸化アンモニウム(28%)によりpHを7.0に調整し、容量に調整した。滅菌及びpH調製後にグルコース10g、ビタミン溶液8mL、及び抗生物質を加えた。
1000X改変微量金属溶液(1L当たり):クエン酸H2O(40g)、MnSO4H2O(30g)、NaCl(10g)、FeSO47H2O(1g)、CoCl26H2O(1g)、ZnSO7H2O(1g)、CuSO45H2O(100mg)、H3BO3(100mg)、NaMoO42H2O(100mg)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
ビタミン溶液(1L当たり):塩酸チアミン(1.0g)、D−(+)−ビオチン(1.0g)、ニコチン酸(1.0g)、塩酸ピリドキシン(4.0g)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、孔径0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
マクロ塩溶液(1L当たり):MgSO47H2O(296g)、クエン酸一水和物(296g)、クエン酸鉄アンモニウム(49.6g)。すべての成分を水に溶解させ、用量に調整し、0.22μmのフィルタを用い、ろ過滅菌した。
供給溶液(1kg当たり):グルコース(0.590kg)、脱イオン水(0.393kg)、K2HPO4(7.4g)、及び100% Foamblast882(8.9g)。すべての成分を合わせて混合し、オートクレーブ処理した。供給溶液をオートクレーブ処理した後、滅菌フード内で、供給ボトルに栄養塩類を添加する。滅菌後に供給溶液に添加するものは(供給溶液1kg当たり)マクロ塩溶液5.54mL、ビタミン溶液6.55mL、1000X改変微量金属溶液0.82mLである。
本実験は、所望の発酵pH(7.0)及び温度(34℃)でのグルコースからのイソプレン発酵をモニターするために実施した。大腸菌(E.coli)株を凍結したバイアルを解凍し、トリプトン酵母エキス培地及び適切な抗生物質を入れたフラスコに接種した。550nm(OD550)での吸光度が1.0になるまで接種材料を生育させた後、培養物のうち500mLを15Lのバイオリアクタに接種し、初期槽容量を5Lに調整した。
各バッチの培地には、グルコースを9.7g/L含有させた。誘導は、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し実施した。細胞のOD550が6になったなら、200μMの濃度になるようIPTGを反応槽に添加した。培養によるグルコースの消費がpHの上昇により示されたなら、代謝に必要とされる量に足りるよう、10g/分以下の速度でグルコース供給溶液を供給した。グルコースに対するメバロン酸の最大質量収率を測定するのに十分な時間、すなわち発酵の開始から合計68〜72時間にわたって発酵を行った。
結果
pgl−株(CMP1136)は、pgl+株(CMP1082)と比較して、グルコースに対するイソプレンの収率(%)が高かった。表8及び図19を参照されたい。pgl−株(CMP1136)は、pgl+株(CMP1082)と比較して、グルコースに対するイソプレンの瞬間的な収率(%)が高く、かつこの産生性の高さをより長時間維持した(pgl−は最大約24時間維持したのに対し、pgl+は最大約12時間維持した)。表8及び図20を参照されたい。pgl−株(CMP1136)の細胞産生性指数はpgl+株(CMP1082)よりも高かった。68〜72時間の発酵終了時に、pgl−株はかなり高いCPIを有していた。また、グルコースに対するイソプレンの累積産生性が最大となる時(pgl+株については44時間及びpgl−株については56時間)のCPIはpgl−株の方が高かった。表8及び図21を参照されたい。pgl−株(CMP1136)の総容積産生量はpgl+株(CMP1082)のものとおおよそ同程度であった。表8及び図22を参照されたい。pgl−株(CMP1136)の最大比産生量はpgl+株(CMP1082)のものとおおよそ同程度であった。しかしながら、pgl−株(CMP1136)は、この産生性の高さをpgl+株(CMP1082)よりも長時間維持し、かつ発酵速度が顕著に良好であった。表8及び図23を参照されたい。
Figure 2015510392
実施例19:メバロン酸経路上流の遺伝子を発現している大腸菌(E. coli)によるイソプレン産生
本実施例では、導入したメバロン酸経路由来の遺伝子を発現させ、15L規模で流加式培養により生育させた大腸菌(E. coli)(BL21)におけるイソプレン産生量を評価した。上流MVA経路の酵素の遺伝子は、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)(DW709及びDW717株)、エンテロコッカス・カッセリフラバス(E.casseliflavus)(DW718)又はエンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)のいずれかに由来した(DW719,MCM2158(BL21 t pgl,GI1.2gltA pgl−,yhfSFRTPyddVIspAyhfS thiFRTtruncIspA,FRT−PL.2−2cis−RBS10000−MVK(burtonii)−KDyI+pTrcAlba−MVKdel2+pCL−Ptrc−Upper_Egallinarum))。
(i)材料及び方法
株構築:産生宿主株として、大腸菌(Escherichia coli)を、イソプレン合成酵素(IspS)変異体と、異なる4種の上流MVA経路のうちの1種を含有させたプラスミドとにより同時形質転換させて、株DW709、DW717、DW718、及びDW719を作製した。標準的な分子生物学的手法に従い、宿主株CMP1133(BL21 Δpgl PL.2mKKDyI GI1.2gltA yhfSFRTPyddVIspAyhfS thiFRTtruncIspA)に、電気穿孔法により、IspS変異体を保持しているpDW240(pTrc P.alba IspS MEA−mMVK(Carb50))、並びにpMCM82(米国特許出願公開番号:2009/0203102)、pCHL276(pCL_pTrc−Upper(E.faecalis)−leaderless)、pCHL277(pCL_pTrc−Upper(E.casseliflavus)−leaderless)、又はpMCM1225(pCL−Ptrc−Upper_E.gallinarum)のいずれかを導入する。細胞を回復させ、選択培地に播種したところ、それぞれスペクチノマイシン及びカルベニシリンに耐性を示す株DW709、DW717、DW718及びDW719が得られた。これらのイソプレン産生株は、IspS変異体と、それぞれエンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)由来の上流MVA経路、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)由来のleaderless上流MVA経路、エンテロコッカス・カセリフラブス(Enterococcus casseliflavus)由来の上流MVA経路、又はエンテロコッカス・ガリラナラム(Enterococcus gallinarum)由来の上流MVA経路のいずれかとを発現していた(表9を参照されたい)。株MCM2065に、電気穿孔法によりプラスミドpMCM2149を導入し、形質転換体を室温で3日間LA carb50プレートで選別した。対数増殖期中期まで、単一のコロニーをLB carb50で増殖させ、MCM2152として、−80下で33%グリセロール中で凍結及び保存した。株MCM2152に、電気穿孔法によりプラスミドpMCM1225を導入し、形質転換体をLA carb50 spec50プレートで選別した。対数増殖期中期まで、単一のコロニーをLB carb50 spec50で増殖させ、33%グリセロールに入れ、MCM2158として凍結した。
Figure 2015510392
培地組成(発酵培地1L当たり):K2HPO4(7.5g)、MgSO47H2O(2g)、クエン酸一水和物(2g)、クエン酸鉄アンモニウム(0.3g)、酵母エキス(0.5g)、50%硫酸(1.6mL)、1000X改変微量金属溶液(1mL)。すべての成分を共に加え、脱イオン水に溶解させた。この溶液を加熱滅菌した(123℃で20分)。水酸化アンモニウム(28%)によりpHを7.0に調整し、容量に調整した。滅菌及びpH調製後にグルコース10g、ビタミン溶液8mL、及び抗生物質を加えた。
1000X改変微量金属溶液(1L当たり):クエン酸H2O(40g)、MnSO4H2O(30g)、NaCl(10g)、FeSO47H2O(1g)、CoCl26H2O(1g)、ZnSO7H2O(1g)、CuSO45H2O(100mg)、H3BO3(100mg)、NaMoO42H2O(100mg)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
ビタミン溶液(1L当たり):塩酸チアミン(1.0g)、D−(+)−ビオチン(1.0g)、ニコチン酸(1.0g)、塩酸ピリドキシン(4.0g)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、孔径0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
マクロ塩溶液(1L当たり):MgSO47H2O(296g)、クエン酸一水和物(296g)、クエン酸鉄アンモニウム(49.6g)。すべての成分を水に溶解させ、用量に調整し、0.22μmのフィルタを用い、ろ過滅菌した。
供給溶液(1kg当たり):グルコース(0.590kg)、脱イオン水(0.393kg)、K2HPO4(7.4g)、及び100% Foamblast882(8.9g)。すべての成分を合わせて混合し、オートクレーブ処理した。供給溶液をオートクレーブ処理した後、滅菌フード内で、供給ボトルに栄養塩類を添加する。滅菌後に供給溶液に添加するものは(供給溶液1kg当たり)マクロ塩溶液5.54mL、ビタミン溶液6.55mL、1000X改変微量金属溶液0.82mLである。
本実験は、所望の発酵pH(7.0)及び温度(34℃)でのグルコースからのイソプレン発酵をモニターするために実施した。大腸菌(E. coli)株を凍結したバイアルを解凍し、トリプトン酵母エキス培地及び適切な抗生物質を入れたフラスコに接種した。550nm(OD550)での吸光度が1.0になるまで接種材料を生育させた後、培養物のうち500mLを15Lのバイオリアクタに接種し、初期槽容量を5Lに調整した。イソプレン産生株に流加培養工程を実施した。
各バッチの培地には、グルコースを9.7g/L含有させた。誘導は、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し実施した。細胞のOD550が6になったなら、200μMの濃度になるようIPTGを反応槽に添加した。培養によるグルコースの消費がpHの上昇により示されたなら、代謝に必要とされる量に足りるよう、10g/分以下の速度でグルコース供給溶液を供給した。グルコースに対するメバロン酸の最大質量収率を測定するのに十分な時間、すなわち発酵の開始から合計64〜68時間にわたって発酵を行った。
解析法:イソプレンは揮発性であり、吹きこみガスにより槽から効率的に回収することができる。バイオリアクタのオフガス中のイソプレン濃度は、2つの質量分析器iSCAN(Hamilton Sundstrand)及びHiden HPR20(Hiden Analytical)質量分析器を使用して測定した。オフガス中の酸素、窒素及びCO2濃度は、同様の質量分析ユニットにより測定した。発酵ブロス中の溶存酸素は、Hamilton Companyにより提供された光学センサーを備えた衛生的であり滅菌可能なプローブにより測定した。
4時間間隔でブロス試料にHPLC解析を行い、発酵ブロス中のクエン酸、グルコース、酢酸及びメバロン酸濃度を測定した。屈折率と、濃度既知の標準を使用して予め作成した検量線とを比較して、ブロス試料中の濃度を測定した。
(ii)結果:
Figure 2015510392
表10に要約するとおり、エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis)の上流MVA経路を使用する発酵と比較して、エンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)又はエンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)のいずれかの上流MVA経路の酵素を使用する発酵の方が、合計質量収率が高く(図24)、最大容積産生量が大きく(図25)、最大比産生量が高かった(図26)。加えて、細胞中アセチルCo−A濃度は、エンテロコッカス・カッセリフラバス(E. casseliflavus)又はエンテロコッカス・ガリナラム(E. gallinarum)の経路を含有させた株と比較して、低かった(表11)。このアセチルCoA濃度の低下は、細胞中でMVA経路に取り込まれる炭素量が増加していることの指標となる。
Figure 2015510392
実施例20:IspAの発現を改変するためのリボソーム結合部位の設計(RBS)
Vienna RNAパッケージv.1.8.4(http://www.tbi.univie.ac.at/〜ivo/RNA/、Andreas R.Gruber、Ronny Lorenz、Stephan H.Bernhart、Richard Neubock及びIvo L.Hofacker(NAR、2008))により算出された、RNAの熱力学的パラメーターと、RBS Calculator用のVienna RNAモジュールを利用し、RBS Calculatorの最適化ソフトウェアを使用した。RBSは、LinuxサーバーでPython v.2.4.3.を起動させ算出した。
(i)材料及び方法
PyddVの転写開始部位は未知であることから、IspA ORFの上流40、30、又は20nt及びORFの最初の50ntを含有するPyddv−IspAコンストラクト由来の配列を、予想されるRBS強度に関し解析した(表12を参照されたい)。
Figure 2015510392
実験系を設計するにあたり、75を対象強度として選択した。RBSの5’UTRの上流(27nt、ORFの40nt上流から開始)及び50ntのORF配列を使用し、新しいRBSを設計した。対象とする所与の強度の複数のRBSを算出した。上流の5’UTR配列tgattccgtctgatttcccagccttat(配列番号74)及び下流のORF配列atggactttccgcaacaattggaggcgtgcgtaaagcaagcaaatcaagc(配列番号75)を使用して、対象とする強度8、25、225、及び675(内在性RBSスコア75の1/9倍、1/3倍、3倍、及び9倍)のRBSを設計した。
(ii)結果:
計算による複数回の設計により、対象とする各スコアのために2〜3つのRBSを設計した(表13を参照されたい)。
Figure 2015510392
異なる長さのUTRに関する文脈において、これらのRBSに予想されるRBS強度の解析により、内在性RBSよりも低強度の依存性が示された。
実施例21:様々なRBS算出コンストラクトのクローニング/発現
製造元(Agilent,Santa Clara,CA)のプロトコルに従い、プラスミドpCMP1046に対しQuikchangeによる反応を実施し、変更を加えた3種のRBSを得た。表14に掲載されるプライマーを使用した。DpnIによる消化後、反応液により大腸菌(E. coli)Top10細胞(インビトロジェン,Carlsbdad,CA)を形質転換させ、形質転換体をLB+カナマイシン20mg/Lで選別した。反応毎に6つのコロニーからプラスミドを単離し、配列決定を行った。所望のRBSを含有するプラスミドを、それぞれpCMP1249(RBS 1/3)、pCMP1258(RBS 3)及びpCMP1259(RBS 9)と命名した。
プライマーCMP257(5’−cattcgcgccgcattcacagccgattcgagccaccttcatcaccgcatagttgtcatcggttaacgctggaacac−3’(配列番号90))及びCMP258(5’−GGTTATTATTGAGCAGATGGGGCTGACGCTTATTACTGTTGATTTCAATGACCTGTCGG CACTGAAGCAGG−3’(配列番号91))を使用するPCR反応には、プラスミドpCMP1249、1258及び1259をテンプレートとして使用した。Qiagen PCR精製キット(Germantown,MD,USA)を使用してPCR産物を精製し、制限酵素DpnIにより消化した。更なる精製後、株CMP1133の組み換え反応(上掲Datsenko及びWanner)にこれらのPCR産物を使用した。形質転換体を、LB+10mg/Lカナマイシンで選別した。各形質転換体のうち、PCR(プライマーCMP267(5’−cgattcgagccaccttcatcacc−3’(配列番号92))及びCMP268(5’−CAGCGTCTTCTGGTGCATGACG−3’(配列番号93)))により妥当な大きさであるものと判断された1つのコロニーをCMP1067と命名した。pCP20(上掲Datsenko及びWanner)からカナマイシンマーカーを除去し、それぞれCMP1262、CMP1266及びCMP1267を作製した(表15を参照されたい)。除去を行うため、pCP20(50mg/Lカルベニシリンにより30℃下で増殖)により形質転換させたコロニーをLBに画線し、42℃で一晩増殖させた。1日後、コロニーを採取し、LB並びにLB+10mg/Lカナマイシンに接種した。マーカーを除去したコロニーはLBでは増殖するもののLB+10mg/Lカナマイシンでは増殖しない。電気穿孔法により、プラスミドpMCM1225及びpDW240を、CMP1265、1266及び1267に同時に導入した。各形質転換に関し、LB+カルベニシリン50mg/L及びスペクチノマイシン50mg/Lで生育したコロニーを選択した。これらのコロニーは、それぞれCMP1275、CMP1284、及びCMP1286と命名した(表15を参照されたい)。
Figure 2015510392
Figure 2015510392
実施例22:ファルネシル二リン酸合成酵素(IspA)の発現解析
大腸菌(E. coli)細胞溶解液中のファルネシル二リン酸合成酵素(IspA)発現レベルを定量するため、サンドイッチELISA法を開発した。この方法を用い、表16に記載の株についてIspAの濃度を解析した。
Figure 2015510392
(i)材料及び方法
His−IspA酵素を所内で精製した。ProSci Incorporatedにより、アフィニティ精製した抗IspA抗体及びビオチン化抗IspA抗体を準備した。高感度ストレプトアビジン−HRP、SuperSignal ELISA Pico chemiluminescent substrate、黒色96ウェルプレートcostar 3915、ELISAプレートシール、及び10X PBSは、Thermo Scientificから購入した。4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホン酸フルオリド塩酸塩(AEBSF)、ウシ膵臓由来デオキシリボヌクレアーゼ1、NaCl、イミダゾール、HEPES、NaHPO、EDTA、DTT、Tween−20、ウシ血清アルブミン(BSA)及び200mMイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)はSigmaから購入した。IMAC HPトラップカラム及びPrep 26/10脱塩カラムはHPから購入した。ELISAプレート洗浄緩衝液(PBS−T)は、1X PBSと0.05% Tween−20から構成された。ブロッキング緩衝液は、5% BSA−PBS−T溶液から構成された。ニッケルカラム洗浄緩衝液(pH 8)には、50mM NaHPO及び300mM NaClを含有させた。ニッケルカラム溶出緩衝液(pH 8)は、20mMイミダゾール、50mM NaHPO、300mM NaCl及び500mMイミダゾールから構成された。フレンチプレスはAmerican Instrument Companyから購入した。
IspA精製:MD08_67(ispA−D227D−pET200D in BL21(DE3))の一晩培養物を、30℃にて一晩、LB培地で増殖させた。10mLの一晩培養した接種菌液を1Lの新鮮なLB培地に加え、新鮮なLB培地において34℃にて培養を開始した。細胞に200μM IPTGにより発現誘導を行い、誘導から4時間後に回収した。細胞ペレットを、1mg/mLリゾチーム、0.1mg/mL DNase、及び0.5mM AEBSFを添加したニッケル洗浄緩衝液に再懸濁した。フレンチプレスセルにより、細胞懸濁液を96.5MPa(14,000psi)で可溶化した。細胞溶解液の上清を、ニッケルカラムに通過させ、ニッケル溶出緩衝液を用い溶出した。更にアフィニティ精製するため、精製した酵素画分を1X PBSにより脱塩し、抗体製剤により標識した。精製した酵素濃度をUV 280nmにより測定した。
IspAの発現解析のための細胞溶解法:IspAの発現解析のため、0.1% DNase及び0.5mM AEBSFを添加した2mL 1X PBSに発酵試料の細胞ペレットを再懸濁した。フレンチプレスセルにより、細胞懸濁液を96.5MPa(14,000psi)で可溶化した。次に、Eppendorf 5804R遠心機により、細胞溶解液を4℃にて15,000rpmで10分遠心分離した。上清及びペレットを分離し、この上清を使用して、IspAの発現レベルを定量した。
サンドイッチELISA法:黒色96ウェルプレートを、5μg/mL捕捉抗体により4℃で一晩コーティングした。約24時間後、プレートをPBS−Tにより3回洗浄し、5% BSA/PBS−Tにより37℃で2時間ブロッキングした。PBS−Tにより3回洗浄後、プレートを未知の試料のPBS溶液100μLにより37℃で1時間、2μg/mLビオチン化抗IspA抗体のPBS−T溶液により34℃で1時間、並びに1μg/mLのストレプトアビジン−HRP複合体のPBS溶液により34℃で1時間コーティングした。各コーティングに先立ち、プレートはPBS−Tにより3回洗浄した。続いて、100μLの発光基質を加え、終点の吸光度を425nmで測定した。精製したIspAを使用して検量線を作成し、試料中のIspA濃度を算出した(表17及び図27を参照されたい)。
Figure 2015510392
結果
表17に見られる通り、低減したispAの発現レベルを有するよう遺伝子操作した各大腸菌(E. coli)株は、野生型ispAを保有している対照株(BL21)と比較して、著しく低いispA発現レベルを示した。
実施例23:大規模発酵の結果
この実験は、メバロン酸/イソプレン経路から導入した遺伝子を発現する、各種改変を施した大腸菌(E. coli)(BL21)宿主(CMP1275、CMP1284、CMP1286)からのイソプレン産生を評価するために実施し、これらの大腸菌を15L規模での流加培養で増殖させた。これらの株に導入された宿主の改変は、IspAの前にあるyddVプロモーターに対するものであり(表18を参照されたい)、改変は、プロモーター強度、したがってIspA発現レベルを改変すべくRBS計算機に従って設計された。以下に記載のとおり、標準的な産生工程において、これらのイソプレン産生株の培養を実施した。ここでは、対照株(DW719)の性能指数を、実験株CMP1275(RBS1/3)、CMP1284(RBS3)及びCMP1286(RBS9)と比較する。これらの実験の目標は、細胞生存率を最大化し、及びグルコース又はイソプレン産生性に対するイソプレン収率を増加させる目的で、このような方法においてIspA発現を改変することで、生成され得る毒性の中間体FPP及びGPPへの取り込みが最小限に抑えられるかを判定するというものである。対照(DW719)として、同一条件下で実験用「RBS ladder」株を培養し、IspAの発現を改変することで何らかの収率又は産生性の改善が得られるかを判断する。リボソーム結合強度(RBS)1でモデルを開始し、異なるRBS配列により、1/3(3倍減)、3(3倍増)及び9(9倍増)の予想リボソーム結合強度を対象とする値が得られる。しかしながら、IspAの実際の発現レベルはこの実験では測定されなかった。
Figure 2015510392
本実験では、DW719(YddVプロモーター−IspA)を基準株として使用した。REM B7_26(CMP1199(HMB GI1.2gltA pgl−)+pDW240+pMCM1225)を含有している野生型IspA株を使用し、典型的な小規模条件下で実験を開始する際、株のイソプレン産生能をDW719と比較して評価を行ったことに留意されたい。DW719は、REM B7_26(比産生性は10,184μg/L/hr/ODイソプレン)と比較してより良好な増殖性及び比産生性(18,276μg/L/hr/ODイソプレン)を示した。したがって、株DW719の比産生性は、野生株のほとんど2倍超であった。REM B7_26の小規模でのイソプレン産生をもとに、この株では15L発酵は実施しなかった。
(i)材料及び方法
培地組成(発酵培地1L当たり):K2HPO4(7.5g)、MgSO47H2O(2g)、クエン酸一水和物(2g)、クエン酸鉄アンモニウム(0.3g)、酵母エキス(0.5g)、50%硫酸(1.6mL)、1000X改変微量金属溶液(1mL)。すべての成分を共に加え、脱イオン水に溶解させた。この溶液を加熱滅菌した(123℃、20分間)。水酸化アンモニウム(28%)によりpHを7.0に調整し、容量に調整した。滅菌及びpH調製後にグルコース10g、ビタミン溶液8mL、及び抗生物質を加えた。
1000X改変微量金属溶液(1L当たり):クエン酸H2O(40g)、MnSO4H2O(30g)、NaCl(10g)、FeSO47H2O(1g)、CoCl26H2O(1g)、ZnSO7H2O(1g)、CuSO45H2O(100mg)、H3BO3(100mg)、NaMoO42H2O(100mg)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
ビタミン溶液(1L当たり):塩酸チアミン(1.0g)、D−(+)−ビオチン(1.0g)、ニコチン酸(1.0g)、塩酸ピリドキシン(4.0g)。各成分を1つずつ脱イオン水に溶解させ、HCl/NaOHによりpHを3.0に調整し、次に溶液を用量に調整し、孔径0.22μmのフィルタを用いろ過滅菌した。
マクロ塩溶液(1L当たり):MgSO47H2O(296g)、クエン酸一水和物(296g)、クエン酸鉄アンモニウム(49.6g)。すべての成分を水に溶解させ、用量に調整し、0.22μmのフィルタを用い、ろ過滅菌した。
供給溶液(1kg当たり):グルコース(0.590kg)、脱イオン水(0.393kg)、K2HPO4(7.4g)、及び100% Foamblast882(8.9g)。すべての成分を合わせて混合し、オートクレーブ処理した。供給溶液をオートクレーブ処理した後、滅菌フード内で、供給ボトルに栄養塩類を添加する。滅菌後に、供給溶液には、マクロ塩溶液5.54mL、ビタミン溶液6.55mL、1000X改変微量金属溶液0.82mL、10mg/mL IPTG溶液(1.86mL)を添加する(供給溶液1kg毎)。
本実施例は、所望の発酵pH(7.0)及び温度(34℃)でのグルコースからのイソプレン産生を監視するために実施した。各実験を開始する際、大腸菌(E. coli)(BL21)株の適切な凍結バイアルを解凍し、トリプトン酵母エキスの培地(LB)並びに適切な抗生物質を入れたフラスコに接種した。550nm(OD550)での吸光度が約1.0になるまで接種材料を増殖させた後、500mLを15Lのバイオリアクタに接種し、初期槽容量を5Lに調整した。
バイオリアクタの内圧をゲージ圧で70kPa(0.7bar)に維持し、産生生物に酸素をもたらすために使用した吹きこみガスは、取り込み気体を既知の濃度(7.7〜9.5体積%酸素)に希釈する工場内設備により供給した。
各バッチの培地には、グルコースを9.7g/L含有させた。IPTGを添加することで導入を実施した。細胞のOD550が6になったなら、所定の濃度になるようIPTGを反応槽に添加した。培養によるグルコースの消費がpHの上昇により示されたなら、代謝に必要とされる量に足りるよう、10g/分以下の速度でグルコース供給溶液を供給した。グルコースに対するイソプレンの最大累積質量収率を測定するのに十分な時間、すなわち発酵の開始から合計56〜64時間にわたって発酵を行った。工程においては、培養を開始するために使用した株のみを可変要素とした。
オフガス中の酸素、窒素、及び二酸化炭素濃度は、質量分析計iSCAN(ハミルトン・サンドストランド)及びHiden HPR20(ハイデン・アナリティカル)を使用して独立して求めた。発酵ブロス中の溶存酸素は、ハミルトン社により提供された光学センサーを備えた衛生的であり滅菌可能なプローブにより測定した。
4時間間隔でブロス試料にHPLC解析を行い、発酵ブロス中のクエン酸、グルコース、酢酸及びメバロン酸濃度を測定した。屈折率と、濃度既知の標準を使用して予め作成した検量線とを比較して、ブロス試料中の濃度を測定した。関連するHPLC情報は次のとおりである:a)系:Waters Alliance 2695;b)カラム:BioRad−Aminex HPX−87Hイオン排除カラム、300mm×7.8mm、カタログ番号125−0140;c)カラム温度:50℃;d)ガードカラム:BioRad−マイクロガードCarbo−H詰め替えカートリッジ、30mm×4.6mm、カタログ番号125−0129;e)溶離液:0.01N HSO;f)溶離液流速:0.6mL/分;g)およその流圧:7584〜8274MPa(1100〜1200psi);h)注入容量:20μL;i)検出器:屈折率(Knauer K−2301);及びj)溶出時間:26分間。
(ii)結果:
イソプレン産生性指数を表19に要約する。要約すると、改変されたRBS部位を有する株の性能は、対照株(DW719,実施番号20120526及び20120565)と類似していた。改変されたRBS部位を有する株で得られた、グルコースに対するイソプレンの累積収率(%)は対照株(DW719,実施番号20120526及び20120565)と類似していた(図28を参照されたい)。改変されたRBS部位を有する株で得られた、グルコースに対するイソプレンの最大瞬間収率は対照株(DW719,実施番号20120526及び20120565)と類似していた(図29を参照されたい)。改変株では、培養初期の瞬間収率がより高く、株CMP1284は、培養終了時(56〜64時間EFT)に最もロバストな性能と、最も低濃度のFPPを有した。改変されたRBS部位を有する株で得られた、イソプレンの容積産生量は、対照株(DW719,実施番号20120526及び20120565)と類似していた(図30を参照されたい)。改変されたRBS部位を有する株で得られた、イソプレンのCPIは対照株(DW719,実施番号20120526及び20120565)と類似していた(図31を参照されたい)。しかしながら、発酵開始から40時間後、CMP1286(RBS9)株は持続的な細胞増殖を示し、かつグルコースに対するイソプレンの瞬間収率は低かった。IspAの発現を増加させることにより、イソプレノイド前駆体への取り込みが増加し、これにより増殖性が増した可能性がある。このIspA発現レベルにより、望ましい発現レベルの上限を表すことができる。対照的に、1/3倍RBS株は、培養終了時の総細胞数が最も少なく、CPIが最も高かった。これは、望ましいIspA発現レベルの下限を表し得るものであり、また試験した3倍RBS ladder株の容積産生量は最も低かった。改変されたRBS部位を有する株で得られた、イソプレンの比産生量は対照株(DW719,実施番号20120526及び20120565)と類似していた(図32を参照されたい)。
Figure 2015510392
実施例24:IspA変異体の代謝解析
この実施例では、大腸菌(E. coli)におけるIspA発現変異体由来の代謝産物を測定した。
(i)材料及び方法
大腸菌(E. coli)の代謝産物抽出物。9mLのドライアイスにより冷却した無水メタノールを入れたチューブに約3mLの培養物を加え、発酵槽で増殖させた細菌細胞の代謝を迅速に不活性化させた。得られた試料を計量し、試料としたブロス量を算出し、以降の解析に備え−80℃で保管した。代謝産物の抽出並びに濃縮の際には、0.25mLの細胞懸濁液アリコート(OD600で測定した時の培養物の細胞密度が50を下回る場合には0.4mLを使用する)を1.5mLのメタノール/酢酸アンモニウム緩衝液(5mM,pH=8.0)混合液(6:1、体積/体積)を使用して希釈し、4分間遠心分離し細胞片をペレット化させた。上清を回収し、PhenomenexのStrata−X−AWカラム(33μm 30mg/ウェル、96ウェル、弱アニオン交換ポリマー基材)に装填する。まず1.5mLのメタノール/酢酸アンモニウム緩衝液(5mM,pH=8.0)混合液(6:1体積/体積)を使用し、次に1.5mLのメタノール/酢酸アンモニウム緩衝液(5mM,pH=8.0)混合液(1:1体積/体積)を使用して、細胞ペレットを2回以上抽出した。いずれの場合にも、細胞は遠心分離によりペレット化し、得られた上清を、同一のStrata−X−AWカラムに連続的に装填した。抽出−遠心分離中、細胞を含む試料は4℃未満に維持した。1mLの水及び1mLのメタノールによりカラムを洗浄した後、対象とする代謝産物を、最初に濃NHOH/メタノール(1:14、体積/体積)混合物0.3mLを用い、次に0.3mLの濃NHOH/メタノール/水(1:12:2、体積/体積/体積)混合物を用いカラムから溶出した。20μL氷酢酸を加え、得られた溶離液を中和し、次に遠心分離により清澄化した。
代謝産物の定量TSQ Quantum Accessシステム(Thermo Scientific)を使用し、質量分析法により代謝産物の解析を実施した。すべての系の制御、データ取得、及び質量スペクトルデータの評価は、XCalibur and LCQuanソフトウェア(Thermo Scientific)を使用して実施した。LC−ESI−MS/MS方法に関しては、chiral Nucleodex β−OH 5μM HPLCカラム(100×2mm,Macherey−Nagel,Germany)を、CC 8/4 Nucleodex β−OHガードカートリッジとともに使用した。移動相の勾配は表20に記載のとおりに適用した。表中、移動相Aは100mMアンモニウム重炭酸塩緩衝液(BioUltraグレード,Fluka,pH 7)/MilliQ等級の水、移動相BはMilliQ等級の水、及び移動相Cはアセトニトリル(Honeywell B&J Brand,LC−MSグレード)とした。カラム及び試料のトレイ温度はそれぞれ5℃及び4℃に低下させた。注入容量は10μLとした。
Figure 2015510392
エレクトロスプレーイオン化法を用い、陰イオンモード(ESIスプレー電圧:3.5kV及びイオン送達管(ion transfer tube)温度350℃)で質量検出を実施した。前駆体イオンに関し次のm/z値を選択して、SRMモードで対象とする代謝産物を検出した:IPP及びDMAPPに関しては245.1、GPPに関しては313.1、FPPに関しては381.0、MVPに関しては227.1、及びMVPPに関しては307.1。質量分析計での計測時の感度のわずかな変化を考慮するため、均一に標識した1310−ADPも両方の試料並びに内部標準としての校正物に当量(最終濃度19.6μM)加えた(1310−ADPは、Isotec(Sigma−Aldrich)より得た1310−ATPから酵素反応により調製した;m/z=436.1)。PO プロダクトイオン(m/z=79.0)により、あるいは標識したADPの場合には二リン酸プロダクトイオン(m/z=159.0)により生成されるピークの積分強度の試料/内部標準の応答比をもとに代謝産物の濃度を求めた。標準を注入することにより得た校正曲線を使用して、細胞抽出液中の代謝産物濃度を算出した。IPP、DMAPP、GPP、及びFPP標準はEchelon Biosciences Inc.から購入し、MVP及びMVPPはSigma Aldrichから購入した。
(ii)結果:
発酵開始から32及び44時間後のIPP、DMAPP、GPP、及びFPPの濃度を表21及び22、並びに図33〜36に示す。
Figure 2015510392
Figure 2015510392
実施例25:IspAを再構成した宿主株における常時発現型イソプレン合成酵素
制御因子lacIqを除外して、イソプレン合成酵素、IspS及びIspS_mMVKを持続的に発現させた。
(i)材料及び方法
pCHL426,pTrc(lacI deleted)_pTrc−IspS(variant)_mMVKの構築。次のプライマー:CL449F(5’−attcagggtgtgagcgcaacgcaattaatgt−3’(配列番号100))及びCL450R(5’−GTTGCGCTCACACCCTGAATTGACTCTCTTC−3’(配列番号101))を用いることにより、プラスミドpDW240から制御因子遺伝子lacIqを欠失させた。PCR反応液の組成は、テンプレートDNAのpDW240(100ng)、50μMの各順方向(CL449F)及び逆方向プライマー(CL450R)、1μL 10mM dNTP(Roche)、5μL 10X pfuII反応緩衝液(Agilent)、1μL pfu II融合酵素(Agilent)、及び40μL水から構成された。Bio−Radサーマルサイクラーにより、95℃で50秒、60℃で50秒及び68℃で4分、更に68℃で10分の処理を行う温度プロファイルで、18サイクルを実施した。PCR反応を完了させた後、1μL DpnIを加え、混合物を37℃で2時間インキュベートしてテンプレートDNAを除去した。DpnIを追加で1μL加え、混合物を37℃で一晩インキュベートした。次に、2μLの反応液によりTOP10F’細胞(インビトロジェン)を形質転換させ、LA+カルベニシリン50mg/Lに播種した。代替的な実施形態では、2μLの反応液によりTOP10F’細胞(インビトロジェン)に形質導入し、LB+カルベニシリン50mg/Lに播種することができる。配列決定により適切なクローンであることが確認された。プラスミドマップ及び配列を図37及び38に示す。
pCHL427コンストラクト,pTrc(lacI deleted)_pTrc−IspS(variant)。次のプライマー:CL449F(5’−attcagggtgtgagcgcaacgcaattaatgt−3’(配列番号102))及びCL450R(5’−GTTGCGCTCACACCCTGAATTGACTCTCTTC−3’(配列番号103))を用いることにより、プラスミドpMCM2149から制御因子の遺伝子lacIqを欠失させた。PCR反応液の組成は、テンプレートDNAのpMCM2149(100ng)、50μMの各順方向(CL449F)及び逆方向プライマー(CL450R)、1μL 10mM dNTP(Roche)、5μL 10X pfuII反応緩衝液(Agilent)、1μL pfu II融合酵素(Agilent)、及び40μL水から構成された。Bio−Radサーマルサイクラーにより、95℃で50秒、60℃で50秒及び68℃で4分、更に68℃で10分の処理を行う温度プロファイルで、18サイクルを実施した。PCR反応を完了させた後、1μL DpnIを加え、反応混合物を37℃で2時間インキュベートしてテンプレートDNAを除去した。DpnIを追加で1μL加え、混合物を37℃で一晩インキュベートした。次に、2μLの反応液によりTOP10F’細胞(インビトロジェン)を形質転換させ、LA+カルベニシリン50mg/Lに播種した。代替的な実施形態では、2μLの反応液によりTOP10F’細胞(インビトロジェン)に形質導入し、LB+カルベニシリン50mg/Lに播種することができる。配列決定により適切なクローンであることが確認された。プラスミドマップ及び配列を図39及び40に示す。
常時発現型イソプレン産生株の構築表23に掲載する株に、電気穿孔法によりpCHL426及びpCHL427を導入し、形質転換させた。各種RBSが異なるIspA発現レベルを有する宿主は、持続的に発現したIspS変異体を蓄積することができる。特に、CMP1281宿主バックグラウンドにおいて持続的に発現させたイソプレン合成酵素変異体は、IPTG対照株と同様の、又は対照株よりも良好の細胞増殖及びイソプレン比産生性を示した(図41及び42)。
Figure 2015510392
実施例26:ファルネシルピロリン酸シンセターゼ(ERG20)をコードしている遺伝子を含有しているサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の構築
A.ERG20P又は代替プロモーターの挿入、並びに異なる遺伝子座におけるERG20の挿入
次の方法に従い、コロニーポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプロトコルを実施する。テンプレートはサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の染色体DNAである。テンプレートを、次のPCR反応液:100ngテンプレートDNA 1μL、Herculase緩衝液10μL、100mM dNTP 1μL、10mM順方向プライマー1.25μL、10mM逆方向プライマー1.25μL、Herculase Fusion II DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies,Stratagene Products Division,La Jolla,California)1μL、及び脱イオン水34.5μLに使用する。PCR反応は、PCR Express Thermal Cycler(Thermo Hybaid,Franklin,MA)で次の通り実施した:95℃/2分間;95℃/20秒間、x℃(アニーリング温度)/20秒間、及び72℃/(40秒間/生成物1kb)、を30サイクル。反応液を4℃に冷却する。x℃のアニーリング温度は、プライマー対の最低融解温度よりも3℃低くなるよう選択する。得られたPCR断片の大きさを、プレキャスト0.8% E−ゲル(登録商標)(インビトロジェン,Carlsbad,CA)上で、分子量マーカーとしてDNA分子量マーカーX(75〜12,216bp)(Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)を使用して測定した。
外来性遺伝子座(例えば、PDC6)へのERG20の挿入に関し、3種のDNA断片をPCRにより生成した。断片1は、seamlessキット(Life Technologies(Carlsbad,CA))によりXbaI/EcoRI消化したベクターpBBR1MCS5(Kovach et al.1995.Gene 166:175〜176)に組み込むための15bpの配列、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のPDC6と相同性の領域(約50bp)、URA3マーカー及びloxP部位に隣接したそのプロモーター、並びにERG20又は選択された任意のその他のプロモーターを組み込むための15bpの配列を含有する(その他のプロモーターは、イソプレンを産生するサッカロマイセス・セレヴィシエ(S. cerevisiae)株のマイクロアレイ実験により評価される発現特性をもとに選択することができる)。その他に選択したプロモーターの目的は、常に、あるいは発酵時の産生期間中に(又はイソプレノイド分子が蓄積し始める際に)内在性ERG20プロモーターよりもIspA酵素を低発現するプロモーターを得るというものである。loxP座間にURA3遺伝子を含有しているプラスミドをテンプレートとした。断片2は、ERG20遺伝子のプロモーター又はその他の選択された1種のプロモーターを含有する。サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の染色体DNAをこの断片用のテンプレートとした。断片1及び断片3を継ぎ目なく組み立てられるようにプライマーを設計する。断片3は、染色体DNA、又はコドンを再設計した対立遺伝子、PDC6座(約50bp,プライマーに組み込まれる)にて組み換えるための相同性領域から増幅したサッカロマイセス・セレヴィシエ(S. cerevisiae)ERG20遺伝子、並びに断片2、及びXbaI及びEcoRIにより消化したpBBR1MCS5を組み込むための15bpの配列2組、含有する。この断片用には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の染色体DNA、又はDNA2.0(Menlo Park,CA)により設計及び合成された、コドンを変更された遺伝子を含有するプラスミドをテンプレートとする。
すべてのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、製造元(Agilent Technologies,Stratagene Products Division(La Jolla,California))の推奨するプロトコルに従って、Herculase II Fusionを使用して行った。Qiagen(Germantown,MD,USA)のPCR精製キットを使用し、反応産物を精製した。次に、EcoRI/XbaIにより消化したプラスミドpBBR1−MCS5を用い、製造元により推奨されるプロトコルに従ってGeneArt seamless cloning and assemblyキット(Life Technologies(Carlsbad,CA))を使用して断片1、2及び3を組み立てた。反応液により大腸菌(E. coli)Top10細胞(インビトロジェン(Carlsbad,CA))を形質転換させ、形質転換体をLB+ゲンタマイシン5mg/Lで選別した。プラスミドは、これらのコロニーのうちの1つから単離し、ERG20プロモーターに関してはpCPN100、及び代替的な3種のプロモーターに関してはpCPN110、120、130ERG20と命名した。プラスミド中に正しいコンストラクトが存在していることを配列決定(Quintara Bio(Albany,CA))により確認した。構築されたカセット全体を増幅するプライマーを使用するPCR反応には、プラスミドpCPN101、pCNP100、110、120及び130を使用した。Qiagen PCR精製キット(Germantown(MD,USA))を使用しPCR産物を精製した。更なる精製後、製造元(Sigma Aldrich,St Louis(Mo,USA))のプロトコルに従いSigma酵母形質転換キットを使用し、PCR産物により、URA3すなわちサッカロマイセス・セレヴィシエ(S. cerevisiae)(−HIS3)を形質転換させる。形質転換体を、Formedium(登録商標)drop out(Kaiser,DSCK162)、ヒスチジン及び10g/Lグルコース又はエタノールを添加したアミノ酸不含の酵母窒素源基材(Difco Yeast Nitrogen Base without Amino Acids)で選別する。コロニーを同じプレートに一度以上再画線したあと、これらのプレートで増殖するコロニーの染色体DNAを用いるPCRにより、正しい挿入が存在していることを確認した。URA3マーカーを、形質転換(Sigma形質転換キット)により導入された誘導型Creリコンビナーゼ及びHIS3遺伝子を発現しているプラスミドにより除去し、Formedium(登録商標)drop out(Kaiser,DSCK162)、ウラシル及び10g/Lグルコース又はエタノールを添加した、アミノ酸不含の酵母窒素基材(Difco Yeast Nitrogen Base without Amino Acids)で選別した。このようにして得られたコロニーをそれぞれCPN101,111,121及び131として命名し、更なる改変に使用した。
B.内在性IspAのノックアウト
この実施例に関しては、一片のDNAをPCRにより生成した。上記実施例26(A)に記載の方法に従ってポリメラーゼ連鎖反応のプロトコルを実施した。URA3遺伝子及びloxP部位に隣接したそのプライマーを含有しているプラスミドをテンプレートとする(上記実施例26(A)を参照されたい)。順方向プライマーには、ERG20の上流と50bp相同性であり、これにloxP−URA3−loxPカセットとアニーリングさせるための25bpの配列が続いている配列を含有させ、これに対し、逆方向プライマーには、RG20の下流(順方向プライマーと反対向き)50bpと相同性であり、これにloxP−URA3−loxPカセットとアニーリングさせるための25bpの配列が続いている配列を含有させた。
製造元(Sigma Aldrich,St Louis,Mo,USA)のプロトコルに従いSigma酵母形質転換キットを用い、このようにして得られたPCR産物によりCPN101、111、121及び131を形質転換させた。形質転換体を、Formedium(登録商標)drop out(Kaiser,DSCK162)、ヒスチジン及び10g/Lグルコース又はエタノールを添加したアミノ酸不含のYeast Nitrogen Base(Difco Yeast Nitrogen Base without Amino Acids)で選別する。コロニーを同じプレートに一度以上再画線したあと、これらのプレートで増殖するコロニーの染色体DNAを用いるPCRにより、正しい挿入が存在していることを確認した。上記実施例26(A)に記載のとおりにURA3マーカーを除去し、CPN101、111、121及び131のそれぞれからPCRにより1つずつコロニーを確認し、適切なものであればCPN102、112、122、及び132と命名した。
C.内在性プロモーター又は代替プロモーターの下流にERG20を含有し、イソプレンを産生し得るサッカロマイセス・セレヴィシエ(S. cerevisiae)CPN103、113、123及び133の構築
Sigma酵母形質転換キットを使用し、2種のプラスミド、すなわちURA3遺伝子を発現するプラスミド、並びにHIS3遺伝子とともに、アセチルCoAからイソプレンを産生するのに必要とされるMVA経路ポリペプチドのうち1つ以上を一緒に発現する別のプラスミドにより、CPN102、112、122及び132を形質転換した。コロニーを、Formedium(登録商標)drop out(Kaiser,DSCK162)、及び10g/Lグルコース又はエタノールを添加したアミノ酸不含のYeast Nitrogen Base(Difco Yeast Nitrogen Base without Amino Acids)で選別する。各々からコロニーを1つずつ回収し、それぞれCPN103、113、123及び133と命名し、イソプレンの産生について試験した。
配列
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Claims (55)

  1. イソプレンを産生することのできる組換え細胞であって、該細胞は低減された機能活性を有するispA遺伝子と、
    (a)異種核酸によりコードされるイソプレン合成酵素ポリペプチドをコードしている1種以上の核酸;及び
    (b)メバロン酸(MVA)経路の1種以上のポリぺプチドをコードしている1種以上の核酸とを含み、
    前記組み換え細胞を適切な培地で培養することで、前記ポリぺプチドの生産及びイソプレンの合成が提供される、組み換え細胞。
  2. 前記ispA遺伝子の機能活性が、
    a.ispA遺伝子を欠失させること;
    b.ispA遺伝子の発現を低減させること;
    c.ispAタンパク質の活性を低減させること;
    d.ispAタンパク質の発現を低減させること;又は
    e.ispAの発現を一時的に調節すること、により低減される、請求項1に記載の組み換え細胞。
  3. ispA遺伝子の発現が、弱いプロモーターの調節下にispA遺伝子を配置することにより低減される、請求項2に記載の組み換え細胞。
  4. ispA遺伝子の発現が、自己調節型プロモーターの調節下にispA遺伝子を配置することにより低減される、請求項2に記載の組み換え細胞。
  5. ispAタンパク質活性が、翻訳によりispAタンパク質をタンパク質分解性のタグと融合させることにより低減される、請求項2に記載の組み換え細胞。
  6. ispAタンパク質活性が、アンチセンスRNAを使用することにより低減される、請求項2に記載の組み換え細胞。
  7. ispAタンパク質活性が、ispAのmRNA分子中に存在するリボソーム結合部位に1つ以上の変異を導入することにより低減される、請求項2に記載の組み換え細胞。
  8. ispA遺伝子の発現が、転写抑制因子HrcAにより低減される、請求項2に記載の組み換え細胞。
  9. ispAタンパク質活性が、内在性ispA遺伝子が、内在性ispA遺伝子によりコードされるポリペプチドのKmと比較してDMAPPに関しKmが増加しているポリペプチドをコードしている遺伝子により置き換えられることにより低減される、請求項2に記載の組み換え細胞。
  10. ispAタンパク質活性が、内在性ispA遺伝子が、異なる最適温度を含む別の遺伝子により置き換えられることにより低減される、請求項2に記載の組み換え細胞。
  11. イソプレン合成酵素ポリペプチドが、植物のイソプレン合成酵素ポリペプチド又はこれらの変異体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組み換え細胞。
  12. 前記イソプレン合成酵素ポリペプチドが、クズ属(Pueraria)又はハコヤナギ属(Populus)由来のポリペプチド、又はウラジロハコヤナギ(Populus alba)xヤマナラシ(Populus tremula)などの交雑種由来のポリペプチド、又はそれらの変異体由来のポリペプチドである、請求項11に記載の細胞。
  13. 前記イソプレン合成酵素ポリペプチドが、プエラリア・モンタナ(Pueraria montana)又はクズ(Pueraria lobata)、アメリカヤマナラシ(Populus tremuloides)、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)、セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)、及びコットンウッド(Populus trichocarpa)、又はそれらの変異体からなる群から選択される、請求項12に記載の組み換え細胞。
  14. 前記植物のイソプレン合成酵素ポリペプチドが、クズ(kudzu)イソプレン合成酵素ポリペプチド又はそれらの変異体である、請求項11に記載の組み換え細胞。
  15. 前記植物のイソプレン合成酵素ポリペプチドが、ユーカリプタス(Eucalyptus)イソプレン合成酵素ポリペプチド又はそれらの変異体である、請求項11に記載の組み換え細胞。
  16. (b)の、MVA経路の1種以上のポリペプチドをコードしている前記1種以上の核酸が、異種核酸である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組み換え細胞。
  17. 前記細胞が含むMVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸が、上流MVA経路に由来するものであり、上流MVA経路の核酸が、AA−CoAチオラーゼ又はアセトアセチル−CoA合成酵素、HMG−CoA合成酵素及びHMG−CoAレダクターゼの核酸からなる群から選択される、請求項16に記載の組み換え細胞。
  18. 前記細胞が含むMVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸が、前記下流MVA経路に由来するものであり、前記下流MVA経路の核酸が、MVK、PMK及びMVD核酸からなる群から選択される、請求項16に記載の組み換え細胞。
  19. 前記細胞が、完全なMVA経路の、MVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸を含む、請求項16に記載の組み換え細胞。
  20. 前記細胞が、イソペンテニル−ジホスフェートδ−イソメラーゼ(IDI)のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸を更に含む、請求項1に記載の細胞。
  21. 1−デオキシキシルロース−5−ホスフェート合成酵素(DXS)ポリペプチドを更に含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組み換え細胞。
  22. 前記DXSポリペプチドをコードしている1種以上の核酸がDXSポリペプチドをコードしている異種核酸である、請求項21に記載の組み換え細胞。
  23. 前記DXSポリペプチドをコードしている1種以上の核酸が、DXSポリペプチドをコードしている内在性の核酸のコピーである、請求項21に記載の組み換え細胞。
  24. 前記1種以上の異種核酸が、誘導型プロモーター又は常時発現型プロモーター下に配置される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組み換え細胞。
  25. 前記1種以上の異種核酸が、マルチコピープラスミドにクローン化される、請求項1〜24のいずれか一項に記載の組み換え細胞。
  26. 前記1種以上の異種核酸が、前記細胞の染色体に組み込まれる、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組み換え細胞。
  27. 前記細胞が細菌、藻類、真菌又は酵母細胞である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の組み換え細胞。
  28. 前記細胞が細菌細胞である、請求項27に記載の組み換え細胞。
  29. 前記細菌細胞が、グラム陽性細菌細胞又はグラム陰性細菌細胞である、請求項28に記載の細菌細胞。
  30. 前記細菌細胞が、大腸菌(E. coli)、パントエア・シトレア(P. citrea)、バチルス・スブチリス(B. subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(B. licheniformis)、バチルス・レンタス(B. lentus)、バチルス・ブレビス(B. brevis)、バチルス・ステアロサーモフィルス(B. stearothermophilus)、バチルス・アルカロフィルス(B. alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、バチルス・クラウシィ(B. clausii)、バチルス・ハロドュランス(B. halodurans)、バチルス・メガテリウム(B. megaterium)、バチルス・コアギュランス(B. coagulans)、バチルス・サーキュランス(B. circulans)、バチルス・ロータス(B. lautus)、バチルス・チューリンゲンシス(B. thuringiensis)、ストレプトマイセス・アルバス(S. albus)、ストレプトミセス・リビダンス(S. lividans)、ストレプトマイセス・セリカラー(S. coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(S. griseus)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、及びシュードモナス・アルカリゲネス(P. alcaligenes)細胞からなる群から選択される、請求項29に記載の細菌細胞。
  31. 前記細菌細胞が大腸菌(E. coli)である、請求項30に記載の細菌細胞。
  32. 前記細胞が藻類細胞である、請求項27に記載の組み換え細胞。
  33. 前記藻類細胞が、緑藻類、紅藻類、灰色藻類、クロララクニオン藻類、ミドリムシ類、クロミスタ類、又は渦鞭毛藻類からなる群から選択される、請求項32に記載の藻類細胞。
  34. 前記細胞が真菌細胞である、請求項27に記載の組み換え細胞。
  35. 前記真菌細胞が糸状菌である、請求項34に記載の真菌細胞。
  36. 前記細胞が酵母細胞である、請求項27に記載の組み換え細胞。
  37. 前記酵母細胞が、酵母菌(Saccharomyces sp.)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces sp.)、ピキア(Pichia sp.)、又はカンジダ(Candida sp.)からなる群から選択される、請求項36に記載の酵母細胞。
  38. 前記酵母細胞がサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項37に記載の酵母細胞。
  39. 請求項1〜38のいずれか一項に記載の細胞を含む組成物。
  40. (a)請求項1〜38のいずれか一項の組み換え細胞を、イソプレン合成をもたらすのに好適な条件下で培養する工程;並びに(b)イソプレンを産生させる工程、を含む、イソプレン産生方法。
  41. 前記組み換え細胞により産生された前記イソプレンを回収する工程を更に含む、請求項40に記載の方法。
  42. 前記ispA遺伝子の機能活性が、
    a.ispA遺伝子を欠失させること;
    b.ispA遺伝子の発現を低減させること;
    c.ispAタンパク質の活性を低減させること;
    d.ispAタンパク質の発現を低減させること;又は
    e.ispAの発現を一時的に調節すること、により低減される、請求項40又は41に記載の方法。
  43. 前記イソプレン合成酵素ポリペプチドが、植物のイソプレン合成酵素ポリペプチド又はこれらの変異体である、請求項40〜42のいずれか一項に記載の方法。
  44. 前記イソプレン合成酵素ポリペプチドが、クズ(Pueraria)又はハコヤナギ(Populus)由来のポリペプチド、又はウラジロハコヤナギ(Populus alba)xヤマナラシ(Populus tremula)などの交雑種由来のポリペプチド、又はそれらの変異体由来のポリペプチドである、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
  45. 前記イソプレン合成酵素ポリペプチドが、プエラリア・モンタナ(Pueraria montana)又はクズ(Pueraria lobata)、アメリカヤマナラシ(Populus tremuloides)、ウラジロハコヤナギ(Populus alba)、セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)、及びコットンウッド(Populus trichocarpa)、又はそれらの変異体からなる群から選択される、請求項40〜44のいずれか一項に記載の方法。
  46. 前記植物のイソプレン合成酵素ポリペプチドが、クズ(kudzu)イソプレン合成酵素ポリペプチド又はそれらの変異体である、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
  47. 前記植物のイソプレン合成酵素ポリペプチドがユーカリプタス(Eucalyptus)イソプレン合成酵素ポリペプチド又はそれらの変異体である、請求項40〜43のいずれか一項に記載の方法。
  48. (b)の、MVA経路の1種以上のポリペプチドをコードしている前記1つ以上の核酸が、異種核酸である、請求項40〜47のいずれか一項に記載の方法。
  49. 前記細胞が含むMVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸が、上流MVA経路に由来するものであり、前記上流MVA経路の核酸が、AA−CoAチオラーゼ又はアセトアセチル−CoA合成酵素、HMG−CoA合成酵素及びHMG−CoAレダクターゼの核酸からなる群から選択される、請求項40〜48のいずれか一項に記載の方法。
  50. 前記細胞が含むMVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸が、前記下流MVA経路に由来するものであり、前記下流MVA経路の核酸が、MVK、PMK及びMVDの核酸からなる群から選択される、請求項40〜48のいずれか一項に記載の方法。
  51. 前記細胞が、前記完全なMVA経路のMVA経路のポリペプチドをコードしている1種以上の核酸を含む、請求項40〜48のいずれか一項に記載の方法。
  52. 前記細胞が、イソペンテニル−ジホスフェートδ−イソメラーゼ(IDI)のポリペプチドをコードしている1種以上核酸を更に含む、請求項40〜51のいずれか一項に記載の方法。
  53. 1−デオキシキシルロース−5−ホスフェート合成酵素(DXS)ポリペプチドを更に含む、請求項40〜52のいずれか一項に記載の方法。
  54. DXSポリペプチドをコードしている前記1種以上の核酸が、DXSポリペプチドをコードしている異種核酸である、請求項40〜53のいずれか一項に記載の方法。
  55. DXSポリペプチドをコードしている前記1種以上の核酸が、DXSポリペプチドをコードしている内在性の核酸のコピーである、請求項40〜54のいずれか一項に記載の方法。
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