JP2015232441A - 癌の検出方法、診断薬および診断キット並びに癌治療用医薬組成物 - Google Patents

癌の検出方法、診断薬および診断キット並びに癌治療用医薬組成物 Download PDF

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村 保 明 田
和 晴 久木田
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和 晴 久木田
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Yoshihiko Hirohashi
橋 良 彦 廣
越 俊 彦 鳥
Toshihiko Torigoe
越 俊 彦 鳥
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Abstract

【課題】本発明は、サンプルの入手や測定が容易な癌の検出方法の提供を目的とする。【解決手段】本発明は、被検体から得られた試料中のERO1−Lαタンパク質を検出することを含んでなる、癌の検出方法であって、試料中のERO1−Lαタンパク質の存在が、被検体中の癌の存在を示す方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、ERO1−Lαタンパク質を指標にした癌の検出方法に関する。本発明はまた、ERO1−Lαタンパク質の検出手段を含んでなる癌の診断薬および診断キットに関する。本発明はさらに、ERO1−Lαタンパク質の発現抑制剤を含んでなる癌治療用医薬組成物に関する。
膵臓癌は、予後不良な癌として知られ、極めて治療が困難な癌の一つである。特徴的な症状や自覚症状が現れにくく、多くは進行が進んでから発見されることが多い。従って、早期に発見するための手法の開発が望まれる。また、膵臓癌は、外科的切除により治療が試みられるが手術は侵襲性が高い。従って、外科的手術の代替法の確立が望まれる。
また、大腸癌は、便潜血検査などにより早期発見が可能であり、早期発見により手術により根治ができる可能性の高い癌である。手術後に再発した場合も、早期発見と早期の切除により根治が期待できる場合がある。しかし、発見が遅れ、切除困難な転移が起こった場合には、抗癌剤治療または放射線治療などが試みられる。しかし、これらの治療は必ずしも有効でない場合があり、治療法の選択やその有効性の評価が極めて重要である。従って、最適な治療法を選択する際の指標の確立が望まれる。
ところで、Endoplasmic Reticulum Oxidoreductin 1 Like α(ERO1−Lα)タンパク質が、特に低酸素環境下で誘導されるタンパク質として見出されている(非特許文献1)。ERO1−Lαタンパク質は、ジスルフィド結合の形成を触媒することが知られ、従ってタンパク質のフォールディングに不可欠な役割を果たしている(非特許文献2)。しかしながら、ERO1−Lαタンパク質と、癌、特に膵臓癌との具体的関係は不明であった。
Dalit May et. al, Oncogene (2005) 24: 1011-1020 Yanyan Chu et. al., Biochem. Biophys. Res. Commun. (2009) 389: 645-650
本発明は、サンプルの入手や測定が容易な癌の検出方法、診断薬および診断キットを提供することを目的とする。本発明はさらに、副作用が低減された癌の治療のための医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、ERO1−Lαタンパク質が癌細胞特異的に発現していること、特に膵臓癌および大腸癌で高発現していることを見出した。本発明者らはまた、ERO1−Lαタンパク質が高発現している癌患者では、外科的手術後の予後が不良であることを見出した。本発明者らはさらに、ERO1−Lαタンパク質が高発現している癌細胞において、ERO1−Lα遺伝子をノックダウンすると癌の形成が抑制されることを見出した。本発明者らはさらにまた、細胞内タンパク質として知られるERO1−Lαタンパク質が、意外にも細胞外に分泌されていることを見出した。本発明はこれらの知見に基づく発明である。
すなわち、本発明では、以下の発明が提供される。
(1)被検体から得られた試料中のERO1−Lαタンパク質を検出することを含んでなる、癌の検出方法であって、試料中のERO1−Lαタンパク質の存在が、被検体中の癌の存在を示す、方法。
(2)癌が、膵臓癌または大腸癌である、上記(1)に記載の方法。
(3)試料中のERO1−Lαタンパク質の存在が、ERO1−Lαタンパク質を標的とした治療に対して感受性を有する癌の存在を示す、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)試料中のERO1−Lαタンパク質の存在が、予後不良の癌の存在を示す、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)試料が被検体から得られた細胞外液である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)ERO1−Lαタンパク質の検出手段を含んでなる、癌の診断薬または診断キット。
(7)癌が、膵臓癌または大腸癌である、上記(5)に記載の診断薬または診断キット。
(8)癌が、ERO1−Lαタンパク質を標的とした治療に対して感受性を有する癌である、上記(6)または(7)に記載の診断薬または診断キット。
(9)癌が、予後不良の癌である、上記(6)〜(8)のいずれかに記載の診断薬または診断キット。
(10)検出手段がERO1−Lαタンパク質に対する抗体である、上記(6)〜(9)のいずれかに記載の診断薬または診断キット。
(11)ERO1−Lαタンパク質の発現抑制剤を含んでなる、癌治療用医薬組成物。
(12)癌が、膵臓癌または大腸癌である、上記(11)に記載の医薬組成物。
(13)ERO1−Lαタンパク質の発現抑制剤が、ERO1−Lαに対するsiRNAまたはshRNAである、上記(11)または(12)に記載の医薬組成物。
本発明の癌の検出方法は、血液や体液などの細胞外液をサンプルとして用いることができるので、サンプルの入手容易性および測定容易性の観点で有利である。本発明の癌の検出方法はまた、癌の治療方法の有効性に関する示唆が得られる点で有利である。本発明の医薬組成物の有効成分が標的とするERO1−Lαタンパク質は、癌細胞でのみ高発現を示すため、本発明の医薬組成物は、副作用低減の観点で有利である。
図1は、正常なヒト組織から作製された市販のcDNAライブラリを用いてERO1−Lαおよびβの発現をPCRにより確認した結果を示す図である。 図2は、癌細胞株から抽出して得られたmRNAを用いてERO1−Lαおよびβの発現をRT−PCR法により確認した結果を示す図である。 図3は、癌患者の膵臓組織の切片におけるERO1−Lαタンパク質の発現を示す免疫組織化学染色像である。 図4は、各種組織切片におけるERO1−Lαタンパク質の発現を示す免疫組織化学染色像である。図4Aは、正常な膵臓組織、図4Bは、正常な小腸組織、図4Cは、正常な直腸組織および直腸癌の組織の組織切片におけるERO1−Lαタンパク質の発現を示す。 図5は、各組織におけるERO1−Lαタンパク質の発現を、ウェスタンブロット法により確認した結果を示す図である。 図6は、ERO1−Lα遺伝子の発現のshRNAによるノックダウンの結果を示すウェスタンブロットの結果である。 図7は、ERO1−Lα遺伝子の発現が低下したがん細胞が、ヌードマウスの体内では癌を形成できなくなることを示す図である。 図8は、ERO1−Lαタンパク質のノックダウンクローンにおける、MHCクラスI分子の発現量の低下を示す図である。 図9は、ERO1−Lαタンパク質のノックダウンクローンにおける、特異的細胞傷害性T細胞への応答の低下を示す図である。 図10は、癌患者におけるERO1−Lαタンパク質の発現量の分布を示す図である。 図11は、癌患者におけるERO1−Lαタンパク質の発現量と癌の再発リスクとの関係を示す図である。 図12は、ERO1−Lαの発現が高い癌患者と低い癌患者の生存曲線を示す図である。 図13は、mycタグERO1−Lαタンパク質を強制発現させた大腸癌細胞SW480細胞が、培養上清にERO1−Lαタンパク質を分泌することを示す図である。図13では、培養上清をmyc抗体で免疫沈降して得られたERO1−Lαタンパク質をウェスタンブロット法により検出している。
発明の具体的な説明
後記実施例で示されるように、ERO1−Lαタンパク質は正常組織では発現せず癌特異的に発現する。従って、本発明の検出方法では、ERO1−Lαタンパク質が被検体の試料で検出された場合には、被検体に癌が存在する可能性が高いと判定することができる。すなわち、本発明の検出方法は、ERO1−Lαタンパク質の存在を指標として、被検体に癌が存在するか否かを判定する方法である。
このように本発明の検出方法では被検体に癌が存在すると判定することができるが、被験体が癌患者であるか否かは医師等の判断により決定される。従って、本発明の検出方法は、癌の診断を補助する方法として用いることができる。すなわち、本発明によれば、被検体から得られた試料中のERO1−Lαタンパク質を検出することを含んでなる、癌の診断のためのERO1−Lαタンパク質の検出方法であって、試料中のERO1−Lαタンパク質の存在が、被検体中の癌の存在を示す方法が提供される。本発明の検出方法による結果に基づいて診断を行う際には、医師等は、例えば、癌マーカーを測定する方法および生検による方法などの当業者に周知の検査方法および/または診断方法を用いることができる。さらに、本発明の検出方法では癌細胞を検出することができる。すなわち、本発明によれば、被検体から得られた試料中のERO1−Lαタンパク質を検出することを含んでなる、癌細胞の検出方法であって、試料中のERO1−Lαタンパク質の存在が、被検体中の癌細胞の存在を示す、癌細胞の検出方法が提供される。
後記実施例で示されるように、ERO1−Lαタンパク質は細胞内にて発現するタンパク質であり癌組織内にて検出されるが、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌からはERO1−Lαタンパク質が細胞外に分泌される。従って、本発明の検出方法では、ERO1−Lαタンパク質を被検体から得られた細胞外液で検出することができる。すなわち、本発明では、検出対象となる試料は、癌組織または癌であると疑われる組織としてもよく、また、被検体から得られた細胞外液としてもよい。
本明細書では、細胞外液とは、血液、リンパ液および組織液などの体液を意味し、体腔内にたまった体腔液も細胞外液に含まれる。本発明では、血液の代わりに、血清または血漿などの血液の液体成分を用いてもよい。従って、「血液」には血清や血漿などの血液の液体成分も含まれる。
本発明の検出方法の指標となるERO1−Lαタンパク質は、細胞内タンパク質であり、プロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)を酸化する。PDIは酸化により活性化し、標的タンパク質にジスルフィド結合を形成させ、これにより、タンパク質のフォールディングおよび品質管理に関与するとされている(非特許文献2)。ERO1−Lαタンパク質のアミノ酸配列およびERO1−Lα遺伝子の塩基配列は周知であり、例えば、ヒトERO1−Lα(hERO1−Lα)の塩基配列およびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および2に示される通りである。
後記実施例に示される通り、ERO1−Lαタンパク質は、特に大腸癌(直腸癌および結腸癌)および膵臓癌で高い発現を示す。そして、大腸癌(直腸癌および結腸癌)および膵臓癌などのERO1−Lαタンパク質を高発現する癌からはERO1−Lαタンパク質が分泌される。従って、本発明の検出方法の検出対象となる癌は、特に限定されないが、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌、より好ましくはERO1−Lαタンパク質を高発現する癌、例えば、大腸癌および膵臓癌などの固形癌である。
ERO1−Lαタンパク質は、細胞外に分泌されて細胞外液中に混入するが、体内を循環中に細胞外液中で代謝または分解されることがある。従って、本発明の検出方法では、細胞外液中でERO1−Lαタンパク質を検出する際には、ERO1−Lαタンパク質の代謝物および/または分解物(例えば、ERO1−Lαタンパク質の断片)を細胞から分泌されたERO1−Lαタンパク質として検出してもよい。
本発明の検出方法の対象となる被検体は、哺乳類動物、好ましくは霊長類、より好ましくはヒトである。被検体は、必ずしも癌が疑われる被検体である必要はないが、例えば、癌が疑われる被検体(例えば、ヒト)とすることが好ましく、膵臓癌または大腸癌であることが疑われる被検体(例えば、ヒト)とすることがより好ましい。本発明の検出方法では、予後不良な癌の存在が示され、また、ERO1−Lα遺伝子の発現および/または機能を阻害する治療法に対して感受性を有する癌の存在が示されるので、被検体は癌と診断された被検体(例えば、癌患者)であってもよい。癌であると疑われる被検体または癌と診断された被検体を対象とする場合には、測定する試料は、細胞外液としてもよいし、癌であると疑われる組織または癌組織としてもよい。
後記実施例に示されるように、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌を有する患者は、ERO1−Lαタンパク質を発現しない癌を有する患者に比べて、治療後の予後が不良であった。具体的には、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌を有すると、外科的治療後の患者における再発までの期間が短くなる、または、再発率が高まるなど、癌の再発のリスクが高まる。従って、本発明の検出方法では、被検体の試料中でERO1−Lαタンパク質が検出された場合には、予後不良の癌が存在することが示される。例えば、本発明の検出方法を癌と診断された被検体に実施する場合に、被検体の試料中でERO1−Lαタンパク質が検出されたときは、癌が予後不良の癌であることが示される。
また、後記実施例に示されるように、ERO1−Lαタンパク質の発現量が高い癌を有する患者は、ERO1−Lαタンパク質の発現量が低い癌を有する患者に比べて、治療後の予後が不良であった。具体的には、ERO1−Lαタンパク質の発現量が高い癌を有すると、外科的治療後の患者における再発までの期間が短くなる、または、再発率が高まるなど、癌の再発のリスクが高まる。従って、本発明の検出方法では、被検体の試料中のERO1−Lαタンパク質の発現量が、健常者または予後が良好であった患者の試料中のERO1−Lαタンパク質の発現量よりも増加している場合には、予後不良の癌が存在することが示される。
また、後記実施例に示されるように、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌において、ERO1−Lαタンパク質の発現を抑制すると、癌の発達が阻害された。本発明の検出方法によれば、被検体の試料中のERO1−Lαタンパク質の存在は、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌の存在を示す。そして、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌は、上述の通り、ERO1−Lαタンパク質の発現抑制などのERO1−Lαタンパク質を標的とした治療法に感受性を有する。従って、本発明の検出方法では、被検体の試料中のERO1−Lαタンパク質が検出された場合には、ERO1−Lαタンパク質を標的とした治療に対して感受性を有する癌が存在することが示される。本発明の検出方法を癌と診断された被検体に実施する場合に、被検体の試料中でERO1−Lαタンパク質が検出されたときは、癌が、ERO1−Lαタンパク質を標的とした治療に対して感受性を有する癌であることが示される。
なお、本明細書では、ERO1−Lαタンパク質を標的とした治療は、特に限定されないが、例えば、ERO1−Lαタンパク質の発現を抑制すること、または、ERO1−Lαタンパク質の活性を阻害することなど、癌細胞内でERO1−Lαタンパク質の働きを抑えることにより行う治療を意味する。
このように、本発明によれば、被検体の試料中のERO1−Lαタンパク質を検出することにより、被検体が癌を有しているか否か、癌治療の予後が良好であるか否か、癌がERO1−Lαタンパク質を標的とした治療に対して感受性を有するか否かを判定することができる。
被検体の試料中のERO1−Lαタンパク質の検出は、ERO1−Lαタンパク質を検出できる限り限定されるものではないが、例えば、簡便性、感度および特異性の観点から、ERO1−Lαタンパク質に対する抗体(抗ERO1−Lαタンパク質抗体)を用いて行うことが好ましい。抗体を用いたタンパク質の検出法としては、特に限定されないが、Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay(ELISA)などの当業者に周知の方法が挙げられ、ELISAは診断薬にも利用されている。また、抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、抗原特異性の高さの観点からはモノクローナル抗体であることが好ましい。
本発明によれば、ERO1−Lαタンパク質の検出手段を含んでなる、癌の診断薬および診断キットが提供される。本発明の診断薬および診断キットは本発明の検出方法に関する記載に従って実施することができる。すなわち、ERO1−Lαタンパク質の検出手段はERO1−Lαタンパク質を検出できる適切な材料(ERO1−Lαタンパク質の検出剤)である限り限定されるものではないが、上記のように抗ERO1−Lαタンパク質抗体を用いることができる。
前述のように、ERO1−Lαタンパク質は細胞外液中に分泌される。従って、本発明の診断キットは、細胞外液(例えば、血液)検査用の診断キットとしてもよく、その場合、診断薬の他に細胞外液(例えば、血液)採取のための器具および/または容器を含んでいてもよい。本発明の細胞外液検査用の診断キットでERO1−Lαタンパク質が検出された場合には、癌、特に膵臓癌または大腸癌を疑うことができ、癌が予後不良であると疑うことができ、および/または、癌がERO1−Lαタンパク質を標的とした治療に対して感受性を有する可能性が高いと判断することができる。
癌が既に同定されている場合には、本発明の診断薬または診断キットは、診断の正確性を高める観点で、患者から採取した癌組織を診断するための診断薬または診断キットとすることが好ましい。このとき、正常組織と比較して癌組織でのERO1−Lαタンパク質の発現がより高いことが示された場合には、癌が予後不良であると疑うことができ、および/または、癌がERO1−Lαタンパク質を標的とした治療に対して感受性を有する可能性が高いと判断することができる。
従って、本発明の診断薬または診断キットは、ERO1−Lαタンパク質の発現および/または機能を阻害する薬剤や治療方法の有効性を予測するための、コンパニオン診断薬または診断キットとして用いることもできる。
本発明の診断薬および診断キットの診断対象となる癌は、特に限定されないが、癌、好ましくは、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌、より好ましくは、膵臓癌および大腸癌などのERO1−Lαタンパク質を高発現する固形癌である。
本発明の検出方法は、本発明の診断薬または診断キットを用いて行ってもよい。すなわち、本発明によれば、本発明の診断薬または診断キットを用いて、被検体から得られた試料中のERO1−Lαタンパク質を検出することを含んでなる、本発明の検出方法が提供される。
後記実施例によれば、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌においてERO1−Lαタンパク質の発現を抑制した場合には、癌はほとんど増殖しなくなった。従って、本発明によれば、癌、好ましくは、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌、より好ましくは、膵臓癌および大腸癌などのERO1−Lαタンパク質を高発現する癌の治療に用いるための、ERO1−Lαタンパク質の発現抑制剤を含んでなる医薬組成物が提供される。
ERO1−Lαタンパク質の発現抑制剤としては、特に限定されないが、ERO1−Lα遺伝子を標的としたshRNAおよびsiRNAなどが挙げられる。
siRNAとは、RNA干渉(RNAi)を誘導することができる二本鎖RNA(核酸)、特に限定されないが、20〜30bp、好ましくは、21〜23bp、25bp、27bpからなる二本鎖RNAであって、標的遺伝子の配列と相同な配列を有する二本鎖RNAである。このような二本鎖RNAは、当業者であれば、周知の方法を用いて、ERO1−Lαの遺伝子配列を元に設計し製造することができる。本発明では、特に限定されないが、例えば、siRNAとして、配列番号13および14の塩基配列を有する核酸をアニールして得られるsiRNAを用いることができる。また、本発明では、配列番号13および14の塩基配列として、3’末端に2つのTを有する核酸を用いたが、この2つのTは、そのうちの一つまたは両方をUに代えて用いてもよい。
shRNAとは、生体内でDicerにより分解を受けてsiRNAを生成することができるRNAである。shRNAは、二本鎖のステムとヘアピンループを含むステムループ構造を有する。このヘアピンループ部分の配列は特に限定されないが、5〜12塩基の配列とすることができる(Kawasaki H. et. al., Nucleic Acid Res. (2003) 31: 700-707、Paddison P. J. et. al., Genes and Dev. (2002) 16: 948-958、Lee N. S., Nat. Biotech. (2002) 20: 500-505およびSui G., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. (2002) 99: 5515-5520)。このようなshRNAは、当業者に周知の方法によりERO1−Lαの遺伝子配列を元に設計し製造することができる。本発明では、特に限定されないが、例えば、shRNAとして、実施例で用いた配列番号11または12のshRNAを用いることができる。
本発明の医薬組成物は、賦形剤、補助剤および/または添加剤を含んでいてもよい。本発明の医薬組成物はまた、1以上の他の抗癌剤をさらに含んでいてもよい。
本発明によればまた、治療上有効量のERO1−Lα遺伝子の発現抑制剤を、それを必要とする哺乳類(例えば、ヒト)、例えば、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与することを含んでなる、癌の治療法が提供される。
本発明の癌の治療法は、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌を有する哺乳類(例えば、ヒト)に対してERO1−Lα遺伝子の発現または機能を阻害することにより行われ得る。従って、本発明の癌の治療法は、ERO1−Lαタンパク質を発現する哺乳類(例えば、ヒト)を、本発明の検出方法に基づいて同定した後に行うことが好ましい。従って、本発明の癌の治療法は、哺乳類(例えば、ヒト)の試料中にERO1−Lαタンパク質が存在するか否かを決定すること、ERO1−Lαタンパク質の存在を指標として癌を診断すること、および治療上の有効量のERO1−Lα遺伝子の発現抑制剤を該哺乳類に投与することを含んでなる、癌の治療法とすることができる。
実施例1:ERO1−Lα遺伝子の発現の組織特異性
本実施例では、様々なヒト組織におけるERO1−Lα遺伝子の発現を確認した。
ヒトの各組織のcDNAとしては、BDバイオサイエンシズ社から購入したmultiple tissue cDNA panelsのcDNAを用い、PCR法により正常組織におけるERO1−Lα遺伝子の発現を確認した。
PCRは、ERO1−Lαの検出用プライマーとしては、5’−GCCCGTTTTATGCTTGATGT−3’(配列番号:5)および5’−AACTGGGTATGGTGGCAGAC−3’(配列番号:6)を用い、ERO1−Lβの検出用プライマーとしては、5’−ATCCATGTTTGCAGGTGACA−3’(配列番号:7)および5’−ATTTCCTGTCGGGTGAGTTG−3’(配列番号:8)を用い、インターナルコントロールとしてのグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(G3PDH)の検出用プライマーとしては、5’−GAGTCAACGGATTTGGTCGT−3’(配列番号:9)および5’−TCCACCACCCTGTTGCTGTA−3’(配列番号:10)を用いた。
PCR反応では、1μLのcDNA、各50pmolのプライマーおよびKOD Plus DNAポリメラーゼ(TOYOBO社製)を含むPCR反応液50μLを用い、92℃で2分加熱した後に、92℃1分、62℃1分および72℃1分のサイクルを30サイクル行った。
PCR産物は、1%アガロースゲル電気泳動の後にエチジウムブロマイド染色を行い、UV光により検出した。また、PCR産物の塩基配列は、ABI Genetic analyzer PRISM 310およびAmpliCycle sequencing kit(パーキンエルマー社製)を用いて決定した。
その結果、ERO1−Lβは、リンパ球、肝臓、脾臓、膵臓および精巣などの正常組織にて発現が認められたが、ERO1−Lαは、正常組織での発現はほとんど認められなかった(図1)。
次に、ERO1−Lαの癌細胞株における発現を確認した。
ヒト膵臓癌細胞株である、Panc1、HPAF2、HPACおよびBxPC3は、ATCC社から購入した。その他、ヒト白血病細胞株T2A24(ATCC社から購入)、ヒト乳癌細胞株MCF7(ATCC社から購入)、ヒト肺腺癌細胞株LHK2(札幌医科大学で樹立された肺癌細胞株)、ヒト結腸癌細胞株HCT15(ATCC社から購入)、ヒト大腸癌細胞株SW480(ATCC社から購入)、ヒト腎臓癌細胞株Caki1(ATCC社から購入)、ヒト乳癌細胞株HMC1(ATCC社から購入)およびヒト腎臓癌細胞株SMKTR(札幌医科大学で樹立された腎臓癌細胞株)を用いて、各種癌細胞株でのERO1−Lαの発現を確認した。
これらの細胞からISOGEN試薬(ニッポンジーン社製)を用いて全RNAを抽出し、SuperscriptIIIおよびオリゴ(dT)プライマー(Life Technologies社製)を用いて製造者マニュアルに従ってcDNAを合成した。PCR反応は、正常組織における条件と同一の条件で行った。
その結果、ERO1−Lαは、HCT15細胞、SW480細胞、Caki1細胞、HPAF2細胞、HPAC細胞、およびBxPC3細胞において比較的高い発現が認められた(図2)。
このように、ERO1−Lαは、正常組織では発現がほとんど認められなかったが、癌細胞株では発現が認められた。
実施例2:癌組織におけるERO1−Lα遺伝子の発現
本実施例では、癌組織におけるERO1−Lα遺伝子の発現を組織切片の免疫染色により確認した。
ヒトの癌患者の各種組織におけるERO1−Lαの発現を調べた。組織としては、乳癌組織検体、胃癌組織検体、結腸直腸癌組織および膵臓癌組織を対象とした。組織は、10%ホルマリンにより固定し、パラフィン包埋してから、ミクロトームを用いて20μm厚の組織切片とした。その後、組織切片に対して、脱パラフィン処理および121℃10分間のオートクレーブ処理を行った。さらに、抗ERO1−Lα抗体(Abnova社製、製品番号:H00030001−M01)、二次抗体としてペルオキシダーゼコンジュゲート羊抗マウス抗体(DAKO社製、製品番号:K4000)およびDAB (DAKO社製、製品番号K3468)を用いて常法に従って免疫組織化学染色を行った。その後、光学顕微鏡を用いて染色した各種組織切片を観察した。
観察の際、各組織のERO1−Lαタンパク質の発現量は4段階で評価した。4段階評価は以下の指標に基づいて行った。すなわち、図3AのようにERO1−Lαがほとんど発現しないものは(−)とし、図3Bのようにわずかに発現が認められるものを(+)とし、図3Cのように部分的に高い発現が認められるものを(++)とし、図3Dのように全体的に高い発現が認められるものを(+++)とした。
各癌組織でのERO1−Lαタンパク質の発現を上記指標に基づいて評価し、ERO1−Lαタンパク質の発現レベルと癌の種類との関係を調べたところ、結果は表1に示される通りであった。
表1に示されるように、ERO1−Lαは、直腸結腸癌および膵臓癌において高い発現を示し、特に、膵臓癌では検体のうち約86%が(++)または(+++)の高発現を示した。一方で、乳癌や胃癌では(−)または(+)の発現レベルに留まるものが大半を占めた。このことから、ERO1−Lαの発現は、膵臓癌および直腸結腸癌(大腸癌)に特徴的であることが明らかとなった。
実施例3:正常な膵臓組織におけるERO1−Lα遺伝子の発現
本実施例では、正常な膵臓組織におけるERO1−Lαの発現を免疫組織化学染色法とウェスタンブロット法により確認した。
正常なヒト膵臓、小腸および大腸、並びに大腸癌組織の正常な部分を対象とし、これらの組織切片におけるERO1−Lαの発現解析は、実施例2に記載の免疫組織化学染色法により確認した。
その結果、正常なヒト膵臓および小腸では、ERO1−Lαの発現は認められなかった(図4AおよびB)。また、正常な大腸でもERO1−Lαタンパク質の発現は認められなかったが、大腸癌の組織では、ERO1−Lαタンパク質の高い発現が認められた(図4C)。
次に、ヒト膵臓、胃および末梢血単核球(PBMC)中のERO1−Lαタンパク質の発現をウェスタンブロット法により確認した。正の対照としては、mycタグを付したERO1−Lα(配列番号:3および4)を発現する293T細胞を用いた。この細胞株は、80%コンフルエントの293T細胞(ATCC社から購入)にヒトERO1−Lα遺伝子の5’末端にmyc遺伝子をインフレームで連結した遺伝子を挿入した発現ベクター(ピューロマイシン耐性遺伝子を発現する)を、Lipofectamine 2000 Reagent(インビトロジェン社製)を用いて製造者マニュアルに従ってトランスフェクションし、48時間後に2μg/mL ピューロマイシン(シグマアルドリッチ社製)を添加して安定クローンとして樹立した株である。なお、KG−1細胞(ATCC社から購入)は、ヒト急性骨髄性白血病細胞として知られる細胞株であり、KG−1/H−2K細胞は、本発明者らがKG−1細胞にマウスのMHCクラスI分子であるH−2K遺伝子を導入して樹立した細胞株である。
各組織を氷冷したPBSで洗浄し、次いで、細胞を溶解させるために、細胞溶解バッファー(50mM Tris−HCl(pH8.0)、150mM NaCl、1% NP−40、およびComplete Protease Inhibitor Cocktail(ロッシュ社製))中で、氷上でインキュベートした。その後、15,000rpm、4℃の条件で溶解したサンプルは20分間遠心分離を行った。得られた全細胞抽出液は、常法に従ってSDSサンプルバッファー中で5分間煮沸し、10%アクリルアミドゲルを用いてSDS−PAGEを行い、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜(Immobilon−P社製)に転写した。タンパク質を転写したPVDF膜は、ブロッキングバッファー(5%脱脂粉乳を含むPBS)で室温で1時間ブロッキングし、その後、ウサギ抗ERO1−Lαモノクローナル抗体(Abnova社製)またはマウス抗β−アクチンモノクローナル抗体AC−15(シグマアルドリッチ社製)を用いて60分間インキュベートした。その後、PVDF膜は、洗浄バッファー(0.1% Tween−20を含むPBS)で3回洗浄し、ペルオキシダーゼ−ラベルしたヤギ抗マウスIgG抗体(KPL社製)を用いて2時間インキュベートした。最後に、シグナルをenhanced chemiluminescence(ECL)detectionシステム(Amersham Life Science社製)を用いて製造者マニュアルに従って検出した。
すると、膵臓、胃およびPBMCのいずれにおいても、ERO1−Lαタンパク質の発現は認められなかった(図5)。一方、正の対照として用いたmycタグを有するERO1−Lαを発現する293T細胞では、ERO1−Lαタンパク質の高い発現が認められた(図5)。
このように、組織切片における免疫組織化学染色法によっても、組織から抽出した全タンパク質を用いたウェスタンブロット法によっても、正常な組織ではERO1−Lαタンパク質の発現を確認することはできなかった。
実施例1および2の結果を総合すると、ERO1−Lαタンパク質は、ヒト癌患者の組織(特に膵臓および直腸結腸)において高い発現を示したが、正常な組織(特に膵臓、胃、小腸を含む多くの組織)においてはほとんど発現していないことが明らかとなった。
実施例4:ERO1−Lα遺伝子のノックダウンと腫瘍形成の関係
実施例1〜3により、ERO1−Lαタンパク質は、癌組織(特に膵臓や直腸結腸)でのみ高い発現を示し、癌でない正常組織での発現は認められなかった。本実施例では、ERO1−Lαタンパク質が癌治療の標的となり得るかを調べるため、癌モデルマウスを用いてERO1−Lα遺伝子のノックダウン実験を行った。
まず、配列番号11または12の塩基配列を有するERO1−Lα遺伝子ノックダウン用のshRNAを転写するDNAをRNAi−Ready pSIREN−RetroQベクター(インビトロジェン社製)のBamHIとEcoRIの制限酵素部位に挿入した。具体的には、配列番号11または12の塩基配列を有する一本鎖DNAの5’末端にgatccgからなるBamHIの制限酵素切断部位を連結し、3’末端にttttttctagaからなるターミネータおよびEcoRIの制限酵素切断部位を連結して得られた一本鎖DNAと、これに相補的な配列を有する一本鎖DNAとを100℃で20分加熱し、その後、室温に戻しながらアニールして得たDNAをRNAi−Ready pSIREN−RetroQベクター(インビトロジェン社製)のBamHIとEcoRIの制限酵素部位に挿入した。これらのshRNA発現ベクターは、80%コンフルエントにしたPanc1細胞にLipofectamine 2000 Reagent(インビトロジェン社製)を用いて製造者マニュアルに従ってトランスフェクションし、48時間後に2μg/mL ピューロマイシン(シグマアルドリッチ社製)を添加して、安定クローンを樹立した。得られたERO1−Lαノックダウンクローン3種(sh1−3、sh3−4およびsh3−6)のERO1−Lαタンパク質の発現をウェスタンブロット法により確認した。sh1−3は、配列番号11の塩基配列を組み込んだshRNA発現ベクターを用いてERO1−Lα遺伝子をノックダウンしたクローンであり、sh3−4およびsh3−6は、配列番号12の塩基配列を組み込んだshRNA発現ベクターを用いてERO1−Lα遺伝子をノックダウンしたクローンであった。なお、ウェスタンブロット法は、実施例3に記載の方法に従って行った。
その結果、いずれのクローンにおいても、ERO1−Lαタンパク質の発現が大きく抑制されていることが分かった(図6)。
得られたERO1−Lαノックダウンクローン3種のうち、sh1−3またはsh3−4を導入した2種、panc1細胞、スクランブルshRNAを発現するpanc1細胞をそれぞれ1×10細胞ヌードマウスの腹腔内に注射してその後の腫瘍形成を調べた。実験は、1群あたり5匹のマウスを用いて行った。
その結果、panc1細胞またはコントロールshRNAのクローンを注射したマウスは、腫瘍を形成したが、ERO1−Lαノックダウンクローンであるsh1−3およびsh3−4は、腫瘍形成能がほとんど認められなかった(図7)。
また、配列番号13および配列番号14の塩基配列を有するRNAをアニールして得られるsiRNAを用いて、大腸癌細胞株SW480でERO1−Lα遺伝子の発現をノックダウンする実験を行った。その結果、このsiRNAを用いた場合でも、ERO1−Lα遺伝子の発現のノックダウンが確認できた(データ省略)。なお、このsiRNAの3’末端のオーバーハングは、TTをUUに変えてもノックダウンの効果に差は無いことが知られている。また、ERO1−Lα遺伝子の発現をノックダウンした大腸癌細胞株SW480細胞において、細胞表面に提示されるMHCクラスI分子の量を、W6/32−FITC抗体を用いたフローサイトメーターを用いて調べた。すると、MHCクラスI分子の発現量は40%低下した(図8)。さらに、ERO1−Lα遺伝子の発現のノックダウンとT細胞応答との関係を調べるために、siRNAを導入した上記SW480細胞と細胞傷害性T細胞(cep55 specific CTL)とを24時間共培養し、細胞傷害性T細胞からのインターフェロン−γ(INF−γ)の産生量をELISA法を用いて測定した。すると、ERO1−Lα遺伝子の発現をノックダウンした細胞では特異的細胞傷害性T細胞の応答が低下した(図9)。このように、ERO1−Lα遺伝子の発現をノックダウンした細胞で、MHCクラスI分子の細胞表面での発現が低下したことから、ERO1−Lαタンパク質の発現が低下すると癌免疫機能が低下する可能性が示唆されたが、この結果に反して、ERO1−Lα遺伝子の発現のノックダウンクローン(sh1−1、sh3−4およびsh3−6)では腫瘍形成能が抑えられたことは驚きであった。
これらの結果から、ERO1−Lαタンパク質の発現は、腫瘍形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。
実施例5:大腸癌患者における予後とERO1−Lαタンパク質の発現
実施例4で、ERO1−Lαタンパク質の発現が腫瘍形成に重要な役割を果たしていることが示された。そこで、本実施例では、実際の直腸結腸癌患者におけるERO1−Lαタンパク質の発現と予後の関連について調べた。
2005年〜2008年の間に札幌医科大学で手術を行った85人の直腸結腸癌患者におけるERO1−Lαタンパク質の発現を免疫組織化学染色法により確認した。まず、本実施例では、評価対象の組織は、各癌患者から得た直腸結腸癌の組織とした。組織は、10%ホルマリンにより固定し、パラフィン包埋してから、ミクロトームを用いて20μm厚の組織切片を作製した。脱パラフィン処理を行い、121℃で10分間オートクレーブ処理を行ってから、抗ERO1−Lα抗体(Abnova社製、製品番号:H00030001−M01)および二次抗体としてペルオキシダーゼコンジュゲート羊抗マウス抗体(DAKO社製、製品番号:K4000)およびDAB(DAKO社製、製品番号K3468)を用いて常法に従って免疫組織化学染色を行った。その後、光学顕微鏡を用いて染色した各種組織切片を観察した。
観察の際、各組織のERO1−Lαタンパク質の発現量は4段階で評価した。すなわち、ERO1−Lαがほとんど発現しないものはスコア0、わずかに発現が認められるものはスコア1、部分的に高い発現が認められるものはスコア2、全体的に高い発現が認められるものはスコア3と評価した(図10)。
次に、患者が直腸結腸癌を再発するまでの期間を各患者に調べ、ERO1−Lαタンパク質の発現と関連付けた。すると、ERO1−Lαタンパク質を過剰発現する患者群(スコア3)では、ERO1−Lαタンパク質の発現が低い患者群(スコア0〜2)と比較して、再発までの期間が有意に短かった(図11)。具体的には、表2に示されるように、再発までの期間は、ERO1−Lαタンパク質を過剰発現する患者群(スコア3)では平均2.35年であり、ERO1−Lαタンパク質の発現が低い患者群(スコア0〜2)の期間の約8割であった。また、無再発生存率(relapse free survival)は、ERO1−Lαタンパク質を過剰発現する患者群(スコア3)では、ERO1−Lαタンパク質の発現が低い患者群(スコア0〜2)に対して67.86%に低下していた。
この結果から、ERO1−Lαタンパク質の発現量と大腸癌の再発率および再発までの期間は関連し、ERO1−Lαタンパク質の発現量を調べることにより大腸癌の再発率および再発までの期間を評価することが可能であることが示された。
さらに、再発しなかった例と再発した例とで各スコアの占める割合を調べると、再発しなかった71例中スコア3の症例は19例(71例中26.8%)であったのに対して、再発した14例中ではスコア3の症例は9例(14例中64.3%)であった。このことから、ERO1−Lαの発現量が高いほど、再発リスクが高まることが示唆された(表3および4)。
さらに、実施例2の表1に示される膵臓癌患者51名に関して、カプランマイヤー曲線を作成した。すると、表1で(−)または(+)に分類された低発現の群(7名)では、(++)または(+++)に分類された高発現の群(44名)に比べ、生存日数が長くなる傾向が見られた(図12)。生存中央値を比較すると、低発現群では1517日であり、高発現群は527日であり、高発現群と低発現群の生存中央値の差は統計的に有意であった(P=0.0019)。
このことから、ERO1−Lαタンパク質が発現する癌を有する患者では、予後が不良であることが示唆された。
実施例6:ERO1−Lαタンパク質の細胞外への分泌
さらに、本発明者らは、ERO1−Lαタンパク質は、細胞外に分泌されることを発見した。
まず、mycタグを付したERO1−Lα遺伝子を導入したpIRES-puro発現ベクターを調製した。得られた発現ベクターは、Lipofectamine 2000 Reagent(インビトロジェン社製)を用いて製造者マニュアルに従って大腸癌細胞株SW480細胞にトランスフェクションし、48時間後に、細胞の培養上清を回収した。次に、得られた培養上清中のERO1−Lαタンパク質を抗myc抗体を用いて免疫沈降し、その後、ウェスタンブロット法によりERO1−Lα遺伝子の存在を確認した。正の対照として、ERO1−Lα遺伝子を導入したSW480細胞およびERO1−Lα遺伝子を発現する293Tを用い、これらの細胞溶解物は実施例3に記載の方法を用いて得た。
その結果、抗myc抗体を用いて免疫沈降した細胞の培養上清中に、ERO1−Lαタンパク質の62kDaのバンドを認めた(図13)。
このことから、ERO1−Lαタンパク質は、細胞外に分泌されることが明らかとなった。
生体内では細胞外に分泌されたタンパク質は組織液と一緒になってリンパ液に流入し、最終的には血液に流入する。従って、被検体から得られた細胞外液中のERO1−Lαタンパク質の存在を調べることにより、細胞外に分泌されたERO1−Lαタンパク質を検出することができる。
正常組織ではERO1−Lαタンパク質はほとんど産生されず、ERO1−Lαタンパク質を細胞外に分泌するのは、ERO1−Lαタンパク質を発現する組織、すなわち、癌(例えば、膵臓癌または大腸癌)である。従って、被検体から得られた細胞外液中のERO1−Lαタンパク質の存在を調べることにより、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌の存在を推定できる。
ERO1−Lαタンパク質を発現する癌は、ERO1−Lαタンパク質の発現を抑制することで、増殖が困難となる。癌患者の細胞外液中のERO1−Lαタンパク質の存在を確認することにより、ERO1−Lαタンパク質を発現する癌の存在、および、ERO1−Lαタンパク質の阻害剤などが抗癌剤としての有効性を評価し得る。この結果は、血清中のERO1−Lαタンパク質の存在を調べることにより、ERO1−Lαタンパク質の阻害剤などの抗癌剤としての有効性が評価可能であることを示すものである。

Claims (13)

  1. 被検体から得られた試料中のERO1−Lαタンパク質を検出することを含んでなる、癌の検出方法であって、試料中のERO1−Lαタンパク質の存在が、被検体中の癌の存在を示す、方法。
  2. 癌が、膵臓癌または大腸癌である、請求項1に記載の方法。
  3. 試料中のERO1−Lαタンパク質の存在が、ERO1−Lαタンパク質を標的とした治療に対して感受性を有する癌の存在を示す、請求項1または2に記載の方法。
  4. 試料中のERO1−Lαタンパク質の存在が、予後不良の癌の存在を示す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 試料が被検体から得られた細胞外液である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. ERO1−Lαタンパク質の検出手段を含んでなる、癌の診断薬または診断キット。
  7. 癌が、膵臓癌または大腸癌である、請求項5に記載の診断薬または診断キット。
  8. 癌が、ERO1−Lαタンパク質を標的とした治療に対して感受性を有する癌である、請求項6または7に記載の診断薬または診断キット。
  9. 癌が、予後不良の癌である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の診断薬または診断キット。
  10. 検出手段がERO1−Lαタンパク質に対する抗体である、請求項6〜9のいずれか一項に記載の診断薬または診断キット。
  11. ERO1−Lαタンパク質の発現抑制剤を含んでなる、癌治療用医薬組成物。
  12. 癌が、膵臓癌または大腸癌である、請求項11に記載の医薬組成物。
  13. ERO1−Lαタンパク質の発現抑制剤が、ERO1−Lαに対するsiRNAまたはshRNAである、請求項11または12に記載の医薬組成物。
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