JP2020029413A - ERO1−αの阻害物質を用いた、がん幹細胞分化誘導およびがん用化学療法の増強 - Google Patents

ERO1−αの阻害物質を用いた、がん幹細胞分化誘導およびがん用化学療法の増強 Download PDF

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Abstract

【課題】がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導し、分化した通常細胞に対して化学療法等を行うことにより癌を治療する方法の提供。【解決手段】がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導するための分化誘導剤であって、有効成分としてERO1−α(小胞体酸化酵素)阻害物質を含む、前記分化誘導剤。【選択図】なし

Description

本発明は、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導するための医薬およびその方法、がん用化学療法剤を増強するための医薬およびその方法、ならびに、がん用化学療法剤と併用して投与するための医薬およびその方法に関する。
がん幹細胞は、がん細胞のうち幹細胞の性質を有する細胞である。これまでの研究により、がん幹細胞は通常がん細胞と比較して化学療法剤抵抗性が高いことが知られており、がん幹細胞が死滅せずに対象内に潜伏していることが、転移・再発の原因の1つであると考えられている(非特許文献1および2)。そのため、がん幹細胞を標的とする治療法の開発が望まれているが、未だ有望な治療法は開発されていない。
ここで、小胞体酸化酵素(ERO1−α;endoplasmic reticulum oxidoreductin 1−α)は、小胞体内に存在するジスルフィド結合形成酵素である。ERO1−αは、小胞体内において、ジスルフィド結合の掛け替えを行うタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI;Protein disulfide-isomerase)の還元型を再酸化する役割を担っており、増殖因子を含む様々な分泌タンパク質の産生に必須である。これまでに、ERO1−αとがんとの関係については、いくつかの知見があり、例えば、ERO1−αが、がんの環境を特徴付ける低酸素ストレスにより発現誘導されること(非特許文献3)、およびERO1−αのタンパク質発現を抑制することにより腫瘍形性能が抑えられること(特許文献1)などが知られている。しかしながら、ERO1−αとがんとの関係について十分に解明されているとは言えず、ましてやERO1−αとがん幹細胞との関係性については全く知られていない。
特開2015−232441号公報
Ebben et al., Expert Opin Ther Targets. 2010, June; 14(6): 621-632 Clarke et al., Cancer Res 2006; 66: (19), October 1, 2006 May et al., Oncogene (2005) 24, 1011-1020
がん幹細胞は、化学療法剤抵抗性が高く、従来の化学療法では治療することが困難であるところ、本発明者らは、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導することにより、既知の化学療法等により治療を行うことができるという着想を得た。この着想を実現すべく、本発明は、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導し、分化した通常細胞に対して化学療法等を行うことにより癌を治療することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねる中で、ERO1−αを阻害することにより、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導することができ、さらに各種がん用化学療法剤の効果を増強させることができることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
[1]がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導するための分化誘導剤であって、有効成分としてERO1−α阻害物質を含む、前記分化誘導剤。
[2]ERO1−α阻害物質が、ERO1−α遺伝子に対する干渉核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、もしくはこれらを発現するベクター、もしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−αタンパク質活性阻害剤である、[1]に記載の分化誘導剤。
[3]がん幹細胞が、CD44v9を発現する細胞である、[1]または[2]に記載の分化誘導剤。
[4]分化誘導が、がん幹細胞におけるCD44v9またはKLF4の発現の低下により確認される、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の分化誘導剤。
[5]がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導して、がんを治療および/または予防するための、ERO1−α阻害物質を含む、医薬組成物。
[6]がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導して、がんを治療および/または予防するための医薬の製造のための、ERO1−α阻害物質の使用。
[7]がん幹細胞をERO1−α阻害物質で処置することを含む、インビトロにおいて、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導する方法。
[8]対象において、ERO1−α阻害物質により、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導する方法。
[9]対象に有効量のERO1−α阻害物質を投与することを含む、対象におけるがん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導して、がんを治療および/または予防するための方法。
[10]ERO1−α阻害物質を含む、がん用化学療法剤の増強剤。
[11]ERO1−α阻害物質が、ERO1−α遺伝子に対する干渉核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、もしくはこれらを発現するベクター、もしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−αタンパク質活性阻害剤である、[10]に記載の増強剤。
[12]増強が、薬物排出タンパク質の発現抑制によるものである、[10]または[11]に記載の増強剤。
[13]薬物排出タンパク質が、ABCトランスポーターである、[12]に記載の増強剤。
[14]化学療法剤が、細胞膜透過性の抗がん剤である、[10]〜[13]のいずれか一つに記載の増強剤。
[15][10]に記載の増強剤、および化学療法剤を含むキット。
[16]がん用化学療法剤と併用して投与するための、ERO1−α阻害物質を含む医薬組成物。
[17]ERO1−α阻害物質が、ERO1−α遺伝子に対する干渉核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、もしくはこれらを発現するベクター、もしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−αタンパク質活性阻害剤である、[16]に記載の医薬組成物。
[18]化学療法剤が、細胞膜透過性の抗がん剤である、[16]に記載の医薬組成物。
[19]ERO1−α阻害物質が腫瘍内投与され、化学療法剤が静脈投与される[16]に記載の医薬組成物。
[20]化学療法剤とERO1−α阻害物質とを併用して投与することによってがんを治療するための医薬の製造のためのERO1−α阻害物質の使用。
[21]化学療法剤とERO1−α阻害物質とを併用して投与することを含む、インビトロにおいて、がん幹細胞を処置する方法。
[22]化学療法剤とERO1−α阻害物質とを併用して投与することを含む、対象において、がん幹細胞を処置する方法。
[23]化学療法剤とERO1−α阻害物質とを併用して投与することを含む、対象において、がんを治療および/または予防する方法。
ERO1−αを阻害することにより、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導することができる。さらに各種がん用化学療法剤の治療効果を増強させることができる。がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導することにより、死滅せずに潜伏するがん幹細胞の数を減らすことができるので、がんの転移・再発の予防も期待される。
図1は、ヒト大腸がん細胞SW480におけるサイドポピュレーション(SP)解析の結果である。 図2(A)は、図1に示すSP解析において、サイドポピュレーション(SP:Side Population)に分類されたクローンSP−BおよびSP−H、ならびにメインポピュレーション(MP:main population)に分類されたクローンMP−Dにおける、リアルタイムPCRによるCD44v9/CD44の発現比を示すグラフである。図2(B)は、クローンSP−B、SP−HおよびMP−DにおけるABCG2、ERO1−α、PDIおよびβ−actinについてのウェスタンブロッティング像である。 図3は、ERO1−αに対するsiRNAをトランスフェクトしたヒト大腸がん細胞SW480における、ERO1−αについてのウェスタンブロッティング像である。 図4(A)は、ERO1−αをノックダウンしたヒト大腸がん細胞SW480における、CD44v9を標識して行ったフローサイトメトリーの結果である。太線はノックダウンした細胞を表し、細線は対照を表す。図4(B)は、ERO1−αをノックダウンした細胞における、リアルタイムPCRによるCD44v9/CD44の発現比を示すグラフである。図4(C)は、ERO1−αをノックダウンした細胞における、リアルタイムPCRによるCD44v9/β−actinの発現比を示すグラフである。
図5は、ERO1−αをノックアウトしたヒト大腸がん細胞SW480における、SP解析の結果である。 図6は、ERO1−αをノックダウンしたヒト大腸がん細胞SW480における、リアルタイムPCRによる、POU5F1(図6A)、NANOG(図6B)、c−Myc(図6C)、KLF4(図6D)のβ−actinに対する発現比を示すグラフである。 図7は、ヒト乳癌細胞MDA−MB−231におけるshRNAによるERO1−α遺伝子抑制の影響を示す。図7(A)は、ERO1−αに対するshRNAをトランスフェクトしたヒト乳癌細胞MDA−MB−231(クローンsh2−5)おける、ERO1−αについてのウェスタンブロッティング像である。図7(B)は、フローサイトメトリーの結果である。太線は抗CD44抗体または抗CD44v9抗体で標識した対照細胞を表し、細線は抗CD44抗体または抗CD44v9抗体で標識したノックダウン細胞を表し、破線はアイソタイプ対照抗体で標識した対照細胞を表し、点線はアイソタイプ対照抗体で標識したノックダウン細胞を表す。図7(C)は、リアルタイムPCRによる、CD44v9/β−actinの発現比を示すグラフである。図7(D)は、リアルタイムPCRによる、CD44v9/CD44の発現比を示すグラフである。図7(E)は、リアルタイムPCRによる、KLF4/β−actinの発現比を示すグラフである。 図8は、ヒト大腸がん細胞SW480におけるERO1−αタンパク質活性阻害剤EN460による影響を示す。図8(A)は、リアルタイムPCRによる、CD44v9/β−actinの発現比を示すグラフである。図8(B)は、リアルタイムPCRによる、KLF4/β−actinの発現比を示すグラフである。
図9は、ヒト乳癌細胞MDA−MB−231におけるshRNAによるERO1−α遺伝子抑制の影響を示す。図9(A)は、ERO1−αに対するshRNAをトランスフェクトしたヒト乳癌細胞MDA−MB−231(クローンsh2−2)おける、ERO1−αについてのウェスタンブロッティング像である。図9(B)は、フローサイトメトリーの結果である。太線は抗ABCG2抗体で標識したノックダウン細胞を表し、細線は抗ABCG2抗体で標識した対照細胞を表し、破線はアイソタイプ対照抗体で標識した対照細胞を表し、点線はアイソタイプ対照抗体で標識したノックダウン細胞を表す。 ヒト大腸がん細胞SW480の腫瘍における5−FUとsiRNAの併用投与の結果である。 ヒト乳癌細胞MDA−MB−231の腫瘍におけるパクリタキセルとsiRNAの併用投与の結果である。 ヒト乳癌細胞MDA−MB−231の腫瘍におけるゲムシタビンとsiRNAの併用投与の結果である。
本発明は、有効成分としてERO1−α阻害物質を用いる、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導するための医薬およびその方法、がん用化学療法剤を増強するための医薬およびその方法、ならびに、がん用化学療法剤と併用して投与するための医薬およびその方法に関する。
本発明において、「がん細胞(cancer cell)」は、悪性腫瘍細胞を指し、ここで悪性腫瘍とは、癌(carcinoma)や肉腫(sarcoma)、白血病などの血液悪性腫瘍も含めた広義な意味で悪性腫瘍を指しており、「がん幹細胞」および「通常がん細胞」が含まれる。
本発明において標的とするがんとしては、例えば、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫などの肉腫、脳腫瘍、頭頚部癌、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、虫垂癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肝癌、膵癌、胆嚢癌、胆管癌、肛門癌、腎癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、外陰癌、膣癌、皮膚癌などの癌腫、さらには白血病や悪性リンパ腫などが挙げられる。本発明において、がんは、好ましくは大腸癌、乳癌、または膵臓癌であり、より好ましくは大腸癌、または乳癌である。
がん細胞は、「がん幹細胞」と「通常がん細胞」とに大別することができる。本発明において、「がん幹細胞」とは、がん細胞のうち幹細胞の性質を有する細胞を指し、「通常がん細胞」とは、がん細胞のうちがん幹細胞から分化した細胞を指す。がん細胞が、がん幹細胞であるか否かは、例えば、がん幹細胞に特徴的な細胞表面マーカー、例えば、CD44v9やCD133などを発現していること、KLF4などの幹細胞性の維持に重要な遺伝子を発現していること、Hoechst 33342色素排出能を指標としたサイドポピュレーション(SP)解析によりSPに分類されることなどによって判別される。
本発明において、がん幹細胞から通常がん細胞への分化誘導は、例えば、CD44v9のmRNA発現またはタンパク質発現が低下すること、CD133のmRNA発現またはタンパク質発現が低下すること、KLF4のmRNA発現またはタンパク質発現が低下すること、SP解析においてメインポピュレーション(MP)に分類されたことなどによって確認することができる。
ここで、CD44v9は、細胞表面マーカーCD44のバリアントであり、がん幹細胞において高頻度で発現していることから、がん幹細胞のマーカーとして一般に用いられている。CD133は、造血幹細胞、内皮前駆細胞、神経幹細胞およびグリア幹細胞で発現することが報告されている細胞表面マーカーであり、がん幹細胞マーカーとしても報告されている。
また、KLF4は、体細胞の初期化に用いられる遺伝子の1つであり、KLF4の発現は、幹細胞性の維持に必須であると考えられている。
ERO1−αは、小胞体内に存在するジスルフィド結合形成酵素である。ERO1−α遺伝子の塩基配列およびそれがコードするアミノ酸配列は、当該技術分野において公知である。
本発明において、「ERO1−α阻害物質」とは、ERO1−αのmRNAの発現を阻害する物質、ERO1−αのタンパク質発現を阻害する物質、および発現したERO1−αの活性を阻害する物質を含む。例えば、ERO1−α阻害物質は、ERO1−αに対する干渉核酸、リボザイム、アンチセンス核酸、これらを発現するベクターもしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−αタンパク質の活性阻害剤が挙げられる。
ERO1−αに対する干渉核酸としては、例えば、RNA干渉(RNAi)作用を有する、短鎖干渉核酸(siNA)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)または短鎖ヘアピンRNA(shRNA))などが挙げられる。
ERO1−α遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列は、当該技術分野において公知であり、当業者は、干渉核酸を設計することができる。
本発明において、siRNAは、ERO1−α遺伝子の転写体RNAの一部に実質的に相補的な18〜25ヌクレオチド、好ましくは20〜24ヌクレオチド、さらに好ましくは、21〜23ヌクレオチドを含むアンチセンスRNA、を有し、かつRNAi(RNA干渉)作用を有する、センスRNAとアンチセンスRNAとからなる二本鎖RNAであってもよい。
本発明において、「相補的」とは、核酸が、他の核酸配列と、古典的なワトソン−クリック型か、または他の非古典的なタイプにより水素結合を形成できることを意味する。
また、本発明において、「実質的に相補的」とは、核酸配列の全ての連続する残基が、他の核酸配列における同じ数の連続する残基と水素結合を形成する場合のみならず、核酸配列の全ての残基のうち、例えば、70%、80%、および90%の残基が、他の核酸配列の残基と水素結合を形成する場合も含む。
したがって、本発明において、siRNAは、ERO1−α遺伝子の転写体RNAの一部に100%相補的なヌクレオチドから数塩基変更されているヌクレオチドを含むアンチセンスRNAを有していてもよい。
また、本発明において、センスRNAとアンチセンスRNAの各3'末端には、2〜5ヌクレオチド、好ましくは2ヌクレオチドの突出末端を有していてもよい。また、本発明において、siRNAは、修飾siRNAであってもよい。
本発明において、ERO1−α阻害物質は、例えば、センス鎖とアンチセンス鎖との組み合わせを含むsiRNAであってもよく、例えば、以下の配列などであってもよい。以下の配列において、大文字はRNAを表し、小文字は、DNAを表す。
ERO1−A siRNA:
5'-ACCAGACAAGAAAUAGUAUCAUUat-3'(センス鎖、配列番号1)
5'-AAUGAUACUAUUUCUUGUCUGGUat-3'(アンチセンス鎖、配列番号2);
ERO1−B siRNA:
5'-GGUAUAACAUGUU- GAAAUGUCACat-3'(センス鎖、配列番号3)
5'-GUGACAUUUCAA- CAUGUUAUACCat-3'(アンチセンス鎖、配列番号4);
ERO1−C siRNA:
5'-AGCUGAAUAUGUAGAUUUGCUUCtt-3'(センス鎖、配列番号5)
5'-GAAGCAAAUCUACAUAUUCAGCUtt-3'(アンチセンス鎖、配列番号6)
上記siRNAは、OriGene(Rockville, MD, USA)から購入することができる。
また、本発明において、ERO1−α阻害物質は、shRNAであってもよく、例えば、以下の配列を含むプラスミドを用いてもよい。
ERO1 shRNA:
5'-AGAGCATTCTACAGACTTATATCTGGCCT-3'(配列番号7)
上記shRNAは、OriGene(Rockville, MD, USA)から購入することができる。
ERO1−α阻害物質の阻害物質の細胞への導入は、任意の既知の導入手法、例えば、限定されずに、リポフェクタミン法、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、超音波導入法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターなど)を利用する方法、またはマイクロインジェクション法などを用いることができる。
ウイルスベクターを使用する場合、ウイルスの力価としては1×10〜1×1015p.f.u.(プラーク形成単位)であってもよく、好ましくは1×10〜1×1013p.f.u.、より好ましくは1×10〜1×1011p.f.u.、さらに好ましくは1×10〜1×1010p.f.u.で用いることができる。
上記核酸分子は、裸の核酸として使用しても、種々の核酸構築物またはベクターに組み込んで使用してもよい。ベクターとしては、プラスミドベクター、ファージベクター、ファージミドベクター、コスミドベクター、ウイルスベクター等の公知の任意のものを利用することができる。核酸構築物またはベクターは、例えば哺乳動物、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子から誘導される適当な転写または翻訳制御配列を少なくとも含んでいることが好ましい。かかる制御配列は、遺伝子発現において調節的役割を有する配列、例えば転写プロモーターまたはエンハンサー、転写を調節するためのオペレーター配列、メッセンジャーRNA内部のリボゾーム結合部位をコードしている配列、ならびに、転写、翻訳開始または転写終了を調節する適切な配列を包含する。
本発明において、「化学療法剤」とは、がん用化学療法に有用な化学物質を指し、特に限定されない。
本発明の化学療法剤としては、細胞透過性抗がん剤などの、がん治療に用いられる化学療法剤が好ましく、細胞透過性抗がん剤としては、限定されずに、殺細胞作用や増殖阻害作用などの細胞障害作用を有する化学療法剤、例えば、アルキル化剤(例えば、イホスファミド、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、ニムスチン、ブスルファン、プロカルバジン、メルファラン、ラニムスチンなど)、代謝拮抗剤(例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)、メトトレキサート、クラドリビン、クロファラビン、6−メルカプトプリン、ゲムシタビン、エノシタビン、カペシタビン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、テガフール、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、ドキシフルリジン、ネララビン、ヒドロキシカルバミド、フルダラビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、など)、抗腫瘍性抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、アクラルビシン、アムルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ジノスタチンスチマラマー、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、リポソーマルドキソルビシンなど)、アルカロイド、ホルモン療法剤(例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、エストラムスチン、エチニルエストラジオール、クロルマジノン、ゴセレリン、タモキシフェン、デキサメタゾン、トレミフェン、ビカルタミド、フルタミド、プレドニゾロン、ホスフェストロール、ミトタン、メチルテストステロン、メドロキシプロゲステロン、メピチオスタン、リュープロレリン、レトロゾールなど)、白金錯体(例えば、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、ネダプラチンなど)、血管新生阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、ミトキサントロン、エトポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イリノテカン、SN−38、ノギテカン、ソブゾキサンなど)、微小管作用薬(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、エリブリン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチンなど)、CDK阻害剤(フラボピリドールなど)、および、チロシンキナーゼ阻害剤(イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ルカパリブなど)などが挙げられる。
本発明の化学療法剤は、より好ましくは、ABCG2の基質となる細胞透過性抗がん剤であり、例えば、Westover et al., J Exp Clin Cancer Res. 2015; 34: 159や、Mo et al., Int J Biochem Mol Biol. 2012; 3(1): 1-27などに記載されているものであってもよく、例えば、限定されずに、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、クラドリビン、クロファラビン、6−メルカプトプリン、ミトキサントロン、エトポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イリノテカン、SN−38、フラボピリドール、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ルカパリブなどが挙げられる。
本発明は、一側面において、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導するための分化誘導剤であって、有効成分としてERO1−α阻害物質を含む、前記分化誘導剤に関する。
本発明の一態様において、がん幹細胞は、細胞表面マーカーCD44v9を発現する細胞である。
本発明の一態様において、ERO1−α阻害物質は、ERO1−αに対する干渉核酸、リボザイム、アンチセンス核酸、これらを発現するベクターもしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−α活性阻害剤である。
本発明はまた、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導して、がんを治療および/または予防するための、ERO1−α阻害物質を含む、医薬組成物に関する。
本発明はまた、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導して、がんを治療および/または予防するための医薬の製造のための、ERO1−α阻害物質の使用に関する。
本発明はまた、インビトロにおいて、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導する方法であって、がん幹細胞をERO1−α阻害物質で処置することを含む、前記方法に関する。
本発明はまた、対象において、分化誘導剤により、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導する方法に関する。
本発明の一態様において、分化誘導剤は、有効成分としてERO1−α阻害物質を含む。
本発明の一態様において、ERO1−α阻害物質は、ERO1−αに対する干渉核酸、リボザイム、アンチセンス核酸、これらを発現するベクターもしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−α活性阻害剤である。
本発明はまた、対象におけるがん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導して、がんを治療および/または予防するための方法であって、対象に有効量のERO1−α阻害物質を投与することを含む、前記方法に関する。
本発明は、別の側面において、ERO1−α阻害物質を含む、がん用化学療法剤の増強剤に関する。
本発明において、「化学療法剤の増強」とは、抗がん剤などの化学療法剤を、同じ濃度で投与した場合において、がん細胞または対象におけるその化学療法剤の効果が増強されることを指す。
特定の理論に拘束されることは望まないが、ERO1−αの発現を抑制することにより、がん幹細胞が通常がん細胞に分化誘導され、がん幹細胞において高発現していた薬物排出タンパク質の発現が抑制され、その結果、化学療法剤の薬物排出能が低下することにより、化学療法剤が細胞内に留まりやすくなり、化学療法剤の効果が増強されるものと考えられる。
本発明の一態様において、ERO1−α阻害物質は、ERO1−α遺伝子に対する干渉核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、もしくはこれらを発現するベクター、もしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−αタンパク質活性阻害剤である。
本発明の一態様において、増強は、薬物排出タンパク質の発現抑制によるものである。
薬物排出タンパク質としては、例えば、ABCトランスポーター(ATP-binding cassette transporters)(ABCB1、ABCC1、ABCG2など)、多剤排出トランスポーター(multi-drug resistance(MDR)transporter)などが挙げられる。
本発明の一態様において、薬物排出タンパク質は、ABCトランスポーターである。
本発明の一態様において、化学療法剤は、細胞膜透過性の抗がん剤である。
本発明において、細胞膜透過性の抗がん剤は、好ましくは、ABCG2の基質となる細胞透過性抗がん剤であり、例えば、限定されずに、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、クラドリビン、クロファラビン、6−メルカプトプリン、ミトキサントロン、エトポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イリノテカン、SN−38、フラボピリドール、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、またはルカパリブなどである。
本発明はまた、ERO1−α阻害物質を含む、がん用化学療法剤の増強剤、および化学療法剤を含むキットに関する。
本発明は、さらに別の側面において、がん用化学療法剤と併用して投与するための、ERO1−α阻害物質を含む医薬組成物に関する。
本発明において、「化学療法剤と併用して投与する」とは、本発明の医薬組成物を化学療法剤と組み合わせて投与することを意味する。本発明の医薬組成物と化学療法剤を同時に投与してもよく、または逐次的に投与してもよい。本発明の医薬組成物と化学療法剤はまた、単一の組成物に含めてもよく、複数の組成物に別々に含ませ、それらを別々に用いてもよい。
本発明において、本発明の医薬組成物と化学療法剤は、投与する経路が同じでも異なっていてもよい。例えば、本発明の医薬組成物が、独立して、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、腫瘍内、直腸、動脈内、門脈内、骨髄内、歯髄内、舌下、口腔内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等から選択される経路により投与され、化学療法剤が、独立して、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、腫瘍内、直腸、動脈内、門脈内、骨髄内、歯髄内、舌下、口腔内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等から選択される経路により投与されてもよい。具体的には、例えば、本発明の医薬組成物が腫瘍内投与されかつ化学療法剤が静脈投与される態様、本発明の医薬組成物と化学療法剤の両方が静脈投与される態様、本発明の医薬組成物が腫瘍内投与されかつ化学療法剤が経口投与される態様、本発明の医薬組成物と化学療法剤の両方が経口投与される態様、および本発明の医薬組成物と化学療法剤の両方が腫瘍内投与される態様等が挙げられる。
本発明の一態様において、ERO1−α阻害物質が腫瘍内投与され、化学療法剤が静脈投与される。
本発明の一態様において、ERO1−α阻害物質は、ERO1−α遺伝子に対する干渉核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、もしくはこれらを発現するベクター、もしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−αタンパク質活性阻害剤である。
本発明の一態様において、化学療法剤が、細胞膜透過性の抗がん剤である。
本発明はまた、がんを治療するための医薬の製造のためのERO1−α阻害物質の使用であって、前記医薬が、化学療法剤とERO1−α阻害物質とが併用して投与される医薬である、前記使用に関する。
本発明はまた、インビトロにおいて、がん幹細胞を処置する方法であって、前記処置が、化学療法剤とERO1−α阻害物質とが併用して投与される処置である、前記方法に関する。
本発明はまた、対象において、がん幹細胞を処置する方法であって、前記処置が、化学療法剤とERO1−α阻害物質とが併用して投与される処置である、前記方法に関する。
本発明はまた、対象において、がんを治療および/または予防する方法であって、前記治療が、化学療法剤とERO1−α阻害物質とが併用して投与される治療である、対象に有効量のERO1−α阻害物質を投与することを含む、前記方法に関する。
本発明の医薬
本発明において、対象とは、処置の必要な対象であり、任意の生物であればよく、好ましくは哺乳動物であり、例えば、ヒト、チンパンジーなどの霊長類、マウス、ラット、モルモット、ハムスターなどの齧歯動物、ウシ、ラクダ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコなどが挙げられ、より好ましくはヒトである。
本明細書において「処置」とは、本明細書で用いる場合、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、疾患の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
本発明の種々の態様において、本発明の処置、治療または予防における有効量とは、例えば、疾患の症状を低減し、疾患の進行を遅延もしくは停止、または疾患の発症もしくは再発を予防する量である。また、例えば、がん幹細胞を通常細胞に分化誘導することや、化学療法剤を増強することなどを指標として、適宜、量を決定することもできる。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、培養細胞などを用いたin vitro試験や、マウス、ラット、イヌまたはブタなどのモデル動物における試験により適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。また、本発明の処置方法に用いる薬物の用量は当業者に公知であるか、または、上記の試験等により適宜決定することができる。
本明細書に記載される本発明の方法において投与する有効成分の具体的な用量は、処置を要する対象に関する種々の条件、例えば、症状の重篤度、対象の一般健康状態、年齢、体重、対象の性別、食事、投与の時期および頻度、併用している医薬、治療への反応性、剤形、および治療に対するコンプライアンスなどを考慮して決定され得る。
投与経路としては、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、腫瘍内、直腸、動脈内、門脈内、骨髄内、歯髄内、舌下、口腔内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等の経路が含まれる。
本発明の医薬は、各投与経路に適した剤形に製剤してもよい。かかる剤形および製剤方法は任意の公知のものを適宜採用することができる(例えば、標準薬剤学、渡辺喜照ら編、南江堂、2003年、上記Remington’s Pharmaceutical Sciencesなどを参照)。
例えば、経口投与に適した剤形としては、限定することなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、シロップ剤などが挙げられ、また非経口投与に適した剤形としては、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤などの注射剤が挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であり得る。
本発明の医薬は、種々の薬物送達担体に担持させて使用することもできる。かかる担体としては、限定されずに、例えば、ポリマーナノ粒子、ポリマーミセル、デンドリマー、リポソーム、ウイルスナノ粒子、カーボンナノチューブ等が挙げられる(Cho K. et al., Clin Cancer Res. 2008 Mar 1;14(5):1310-6など参照)。
投与頻度は、用いる剤や組成物の性状や、上記のものを含む対象の条件によって適宜決定することができる。例えば、毎日、数日毎(すなわち、2日、3日、4日、5日、6日、7日毎など)、数週間毎(すなわち、2、3、4週間毎など)の投与であってもよい。また、投与は、1回または複数回(すなわち、2、3、4、5回など)投与してもよい。したがって、例えば、1日複数回(すなわち1日、2、3、4回または5回以上)、1日1回、数日毎(すなわち2、3、4、5、6日毎など)に1回、週に複数回(すなわち、週に1または2回など)、1週間毎に1回、数週間毎(すなわち2、3、4週間毎など)に1回であってもよい。
本発明においては、投与を、少なくとも1日、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも14週間、少なくとも16週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも4ヶ月間、少なくとも5ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間または少なくとも12ヶ月間続けてもよい。
本発明の方法においては、本発明の医薬を、がんを処置するのに有用な他の作用物質または処置方法と併用することもできる。例えば、本発明の方法は、放射線治療などの物理療法や外科手術などの外科的治療などと併用することができる。対象を外科的治療で治療する場合には、本発明の術前化学療法及び術後化学療法の何れか一方又は双方において適用することができる。
本発明のキット
本発明は、本発明の医薬に含まれ得る有効成分を、単独でもしくは組み合わせて含む1個または2個以上の容器を含む組成物の調製キット、ならびに、そのようなキットの形で提供される医薬の必要構成要素にも関する。本発明のキットは、上記のほか、本発明の医薬の調製方法や投与方法などが記載された指示、例えば説明書や、CD、DVD等の電子記録媒体等を含んでいてもよい。
本発明を下記の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施例に限定されないものとする。
実験方法
細胞および薬剤
ヒト結腸癌細胞株SW480およびヒト乳癌細胞株MDA−MB−231はATCC(Manassas, VA, USA)から購入した。SW480細胞およびMDA−MB−231細胞は、10%ウシ胎児血清(FCS)(Invitrogen Life Technologies)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)中で5%CO雰囲気下、37℃で培養した。
ヒトERO1−αに対するsiRNA(配列番号1および2)には、OriGene(Rockville, MD, USA)から購入した以下の配列:
ERO1−A siRNA;
5'-ACCAGACAAGAAAUAGUAUCAUUat-3'(センス鎖、配列番号1)
5'-AAUGAUACUAUUUCUUGUCUGGUat-3'(アンチセンス鎖、配列番号2)
または対照スクランブルsiRNAを用いた。図3〜6および10〜12には、上記配列を使用して得られた結果を示しているが、以下の配列:
ERO1−B siRNA:
5'-GGUAUAACAUGUU- GAAAUGUCACat-3'(センス鎖、配列番号3)
5'-GUGACAUUUCAA- CAUGUUAUACCat-3'(アンチセンス鎖、配列番号4);
ERO1−C siRNA:
5'-AGCUGAAUAUGUAGAUUUGCUUCtt-3'(センス鎖、配列番号5)
5'-GAAGCAAAUCUACAUAUUCAGCUtt-3'(アンチセンス鎖、配列番号6)
を用いても同様の結果が得られる。上記の配列において、大文字はRNAを表し、小文字は、DNAを表す。
トランスフェクトは、RNAiMAX(Life Technologies)を用いて行い、5%CO雰囲気下、37℃で細胞を培養した。
ヒトERO1−αに対するshRNAには、OriGene(Rockville, MD, USA)から購入した以下の配列:
ERO1 shRNA:
5'-AGAGCATTCTACAGACTTATATCTGGCCT-3'(配列番号7)
または対照スクランブル配列を含むプラスミドを用いた。トランスフェクトは、Lipofectamine 2000(Life Technologies)を用いて行い、ピューロマイシン(Sigma-Aldrich)選択(4μg/ml)下で、5%CO雰囲気下、37℃で細胞を安定に増殖させた。
ヒトERO1−αをノックアウトした細胞は、以下のように作成した。CRISPR/Cas9ゲノム編集のためのオールインワンベクターであるpCG SapIベクター(gRNA配列挿入のためのクローニング部位およびCas9配列が含まれる)に、ERO1−αエクソン1に特異的に設計されたgRNA配列(5'-GCTCAGCTCGGGCCACGGAGAGG-3'(配列番号8))を挿入した。このように構築したベクターとpcDNA3.1(+)をLipofectamine 3000(Thermo Fisher Scientific)を用いてヒト大腸癌細胞株SW480にトランスフェクトし、G418薬剤(800μg/mL)選択下で培養した。単一細胞クローンを選択し、T7エンドヌクレアーゼアッセイにより標的対立遺伝子のインデル(挿入/欠失)を確認した。次に、精製したゲノムDNAを鋳型とし、標的遺伝子座近傍に結合するように設計したプライマーを用いてPCR増幅を行い、得られたPCR産物をpGEM Teasy(Promega)にサブクローニングした。得られたクローンを3100 Genetic Analyzer(ABI)により配列解析し、各対立遺伝子の標的配列中のインデルの存在を確認した。ERO1−αがタンパク質レベルで発現していないことを選択したクローンにおいてウェスタンブロッティングにより確認した。対照細胞クローン(Mock)は、空のベクターをトランスフェクトすることによって作製した。細胞株の確立のために、ノックアウトしたクローンにpCMV6−ERO1α(OriGene)をトランスフェクトし、単一コロニーの選択のために細胞を0.8μg/mLピューロマイシンを含有する培地で培養した。
ERO1−αのタンパク質活性阻害剤EN460は、MERCK(Darmstadt, Germany)から購入した。5−フルオロウラシル(5−FU)、パクリタキセル、ゲムシタビンはWako(Tokyo, Japan)から購入した。
SP解析
SP解析は、いくつかの改変を伴って、Inoda et al., The American journal of pathology. 2011;178(4):1805-13. Epub 2011/03/26. pmid:21435460; PubMed Central PMCID: PMC3078439、Takaya et al., PLoS One. 2016 Jul 14;11(7):e0158903. doi: 10.1371/journal.pone.0158903. eCollection 2016、およびNishizawa et al., Cancer Res. 2012 Jun 1;72(11):2844-54. doi: 10.1158/0008-5472.CAN-11-3062. Epub 2012 May 2などに記載されているように行った。細胞を、ABCトランスポーター阻害剤であるベラパミル(Sigma-Aldrich)75μMの存在下または非存在下で、終濃度2.5μg/mlのHoechst 33342 色素(Lonza, Walkersville, MD, USA)で染色した。細胞を連続振とうしながら37℃で90分間インキュベートした。FACS Aria II(BD Biosciences, San Jose, CA, USA)を用い、357nmで励起し、その蛍光を二重波長(青色、402〜446nm;赤色、650〜670nm)で測定した。
フローサイトメトリー
CD44v9、CD44およびABCG2に対する反応性の抗体(適切なアイソタイプ対照を含む)を用いて、細胞を標識した。標識された対照細胞およびノックダウンした細胞を、FACS Caliburフローサイトメーター(BD Biosciences)およびFlowJo(Tree Star Inc.)によって分析した。抗体は、全てFunakoshi(Tokyo, Japan)から購入した。
ウェスタンブロット分析
培養した細胞を氷冷PBSで洗浄し、溶解緩衝液(50mmol/L Tris-HCl[pH7.5]、150mmol/L NaCl、5mmol/L EDTA、1%NP40)中で氷上でインキュベートすることによって溶解し、4℃において21880gで30分間遠心分離して細胞を分離した。遊離チオールのブロックのために、細胞をPBS中の10mMメチルメタンチオスルホナート(Pierce, Rockford, IL, USA)で5分間前処理した。核除去後の上清を非還元または還元SDSサンプル緩衝液中で95℃で5分間加熱し、SDS−PAGEにより分離し、PVDF膜(Immobilon-P;Millipore, Billerica, MA, USA)に電気泳動的に転写した。膜をブロッキング緩衝液(PBSまたはBSA中5%脱脂粉乳)で30分間室温でインキュベートし、その後、抗ERO1−α mAb(Abnova, Taipei, Taiwan)、抗PDIポリクローナル抗体(Enzo Life Sciences, Farmingdale, NY, USA)、抗ABCG2抗体(Cell Signaling Technologies, Danvers, Massachusetts, USA)、またはマウス抗β−actin mAb AC−15(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)で一晩インキュベートした。洗浄緩衝液(TBS中0.1%Tween−20)で3回洗浄後、膜をペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG抗体、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体(KPL, Gaitherburg, MD, USA)と3時間反応させた。その後、製造元のプロトコールに従って、ECL検出システム(Amersham Life Science, Arlington Heights, IL, USA)またはIMMOBILON検出システム(Millipore Corporation, Billerica, Massachusetts, USA)を用いてシグナルを視覚化した。
リアルタイムPCR分析
ISOGEN試薬(Nippon Gene, Tokyo, Japan)およびRNeasy Miniキット(QIAGEN, Valencia, CA)を製造元の指示に従って用いて、細胞から単離した。cDNA混合物を製造元のプロトコールに従って、Superscript IIIおよびoligo(dT)プライマー(Life Technologies)を用いて全逆転写により計1μgの全RNAから合成した。正常大腸組織cDNAおよび正常乳腺組織cDNAの鋳型には、ヒト多組織cDNAパネルIおよびII(TAKARA BIO INC., Otsu, JAPAN)の正常大腸組織cDNAおよび正常乳腺組織cDNAをそれぞれ用いた。
その後、CD44v9、CD44、POU5F1、NANOG、c−Myc、KLFまたは4およびβ−actinに対して、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)を実施した。各種プライマーは、Thermo Fisher Scientific(Tokyo, Japan)から購入した。各試料の発現値をβ−actinに対して正規化し、所定の遺伝子の発現レベルは、複数回の反応の平均(±SEM)したものにより表した。PCRは、StepOneReal-TimePCRシステム(Life Technologies)により、95℃で10分、95℃で15秒および60℃で1分のサイクルを45サイクル行い、その後、融解曲線解析を行った。データ解析にはΔΔCt法を用いた。
マウスおよび異種移植片移植
4〜6週齢の雌性非肥満糖尿病/重度複合免疫不全(NOD/SCID)マウスをSankyo Laboratory Co. Ltd.(Tsukuba, Japan)から購入し、研究は札幌医科大学の動物実験倫理委員会(Sapporo, Japan)の承認を得て行った。
ヒト大腸癌細胞SW480細胞については、5×10個のSW480細胞をPBSとマトリゲル(BD Biosciences)との混合物に懸濁し、NOD/SCIDマウスの左背部に注入した。対照群については、移植後7日目から生理食塩水10μlを週に2回投与した。siRNA投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与した。5−FU投与群については移植後7日目から、5−FU(50mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)、合計4回、腹腔内に投与した。siRNAおよび5−FU併用投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与し、5−FU(50mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)、合計4回腹腔内に投与した。
ヒト乳癌細胞MDA−MB−231細胞については、1×10個のMDA−MB−231細胞をPBSとマトリゲル(BD Biosciences)との混合物に懸濁し、NOD/SCIDマウスの右第3乳腺に注入した。対照群については、移植後7日目からエタノール10μlを週に2回投与した。siRNA投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを、移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与した。パクリタキセルまたはゲムシタビン投与群については移植後7日目から、パクリタキセル(5mg/kg)またはゲムシタビン(100mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)静脈内に投与した。siRNAおよびパクリタキセルまたはゲムシタビン併用投与群については、siRNA投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与し、パクリタキセル(5mg/kg)またはゲムシタビン(100mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)静脈内に投与した。
腫瘍の長さおよび幅は、キャリパーで測定した。
統計分析
2つの不対サンプルの分析にスチューデントのt検定を用いた。ERO1−αの発現とKLF4の発現との間の相関性、およびKLF4の発現とCD44v9の発現との間の相関性を、スピアマンの順位相関係数を用いて評価した。全ての分析は、STATMATE version 3.19(ATMS Co., Ltd., Tokyo, Japan)を用いて行った。0.05未満のP値を統計的に有意であるとみなした。全ての統計的検定を両側検定で行った。
例1:ヒト大腸がん細胞SW480におけるサイドポピュレーション(SP)解析
ヒト大腸がん細胞SW480においてSP解析を行った。結果を図1に示す。近年、多くの幹細胞がABCG2ポンプの発現により、Hoechst 33342というDNA蛍光色素に対して高い排出能を持つことが報告されており、これらの細胞はサイドポピュレーション(SP)細胞と呼ばれている。ヒト大腸がん細胞SW480において、Hoechst 33342色素排出能を有するSP細胞、すなわちがん幹細胞が存在していることが分かる。
例2:SP細胞におけるCD44v9およびABCG2の発現
ヒト大腸がん細胞SW480においてSPに分類されたクローンSP−BおよびSP−H、ならびにメインポピュレーション(MP)に分類されたクローンMP−Dにおいて、リアルタイムPCRにより、がん幹細胞の指標であるCD44v9/CD44の発現比を測定した。結果を図2(A)に示す。CD44v9/CD44の発現比は、SP−BおよびSP−Hにおいて高く、MP−Dにおいては低かった。このことからもSP細胞は、がん幹細胞であるものと考えられる。
また、ヒト大腸がん細胞SW480においてSPに分類されたクローンSP−BおよびSP−H、ならびにMPに分類されたクローンMP−Dにおいて、ERO1−α、ABCG2、PDI、およびβ−actin(対照)について、ウェスタンブロッティングを行った。結果を図2(B)に示す。SP−BおよびSP−HのABCG2およびERO1−αの発現量は、MP−Dと比較して高く、がん幹細胞において、ERO1−αおよびABCG2が高発現していることが確認された。
例3:ERO1−α抑制剤によるERO1−αタンパク質発現への影響
ヒト大腸がん細胞SW480に、ERO1−αに対するsiRNAをトランスフェクトし、ERO1−αおよびβ−actin(対照)について、ウェスタンブロッティングを行った。結果を図4に示す。ERO1−αに対するsiRNAをトランスフェクトした細胞において、ERO1−α発現の低下が見られた。したがって、siRNAをトランスフェクトすることにより、当該細胞においてERO1−α発現がノックダウンされたことが確認された。
例4:ERO1−α抑制剤によるCD44v9への影響
ヒト大腸がん細胞SW480を、例3で用いたERO1−αに対するsiRNAによりノックダウンし、がん幹細胞マーカーであるCD44v9の発現について調べた。
CD44v9を標識して行ったフローサイトメトリーの結果を図4(A)に示す。太線がノックダウンした細胞を表し、細線が対照を表す。ノックダウンし細胞は、対照と比較して、CD44v9の発現が低下していた。
加えて、リアルタイムPCRにより、CD44v9/CD44の発現比およびCD44v9/β−actinの発現比を測定した。結果を図4(B)と(C)に示す。ノックダウンした細胞は、対照と比較して、CD44v9/CD44の発現比およびCD44v9/β−actinの発現比が低下していた。
以上より、ERO1−αの発現を抑制することが、がん幹細胞が通常がん細胞に分化しているものと理解することができる。
例5:ERO1−α抑制剤によるSP解析
ヒト大腸がん細胞SW480を、ERO1−αに対するsiRNAでノックアウトし、SP解析を行った。結果を図5に示す。mock対照においてSPに分類される細胞の割合が9.75%であるのに対し、ノックダウンした細胞においては、SPに分類される細胞の割合は0.27%であった。ERO1−αをノックアウトすることにより、SPに分類される細胞の割合は大きく低下したことからも、ERO1−αの発現の抑制が、がん幹細胞が通常がん細胞に分化しているものと理解することができる。
例6:ERO1−α抑制剤による各種遺伝子への影響
ヒト大腸がん細胞SW480を、ERO1−αに対するsiRNAでノックダウンし、POU5F1、NANOG、c−Myc、KLF4の発現についてリアルタイムPCRを行った。結果を図6に示す。ノックダウンした細胞は、対照と比較して、幹細胞性の維持に重要な遺伝子である山中因子の一つであるKLF4の発現が著しく低下していた。ERO1−αの発現の抑制により、KLF4発現の低下が生じることは、ERO1−αの発現の抑制が、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導していることを示すものである。
例7:ヒト乳癌細胞MDA−MB−231におけるERO1−α抑制剤のCD44v9およびKLF4への影響
まず、ヒト乳癌細胞MDA−MB−231に、ERO1−αに対するshRNAをトランスフェクトし、クローンsh2−5を得た。ERO1−αおよびβ−actinについて、ウェスタンブロッティングを行った。結果を図7(A)に示す。クローンsh2−5において、ERO1−α発現の低下が見られた。したがって、shRNAをトランスフェクトすることにより、当該細胞においてERO1−αがノックダウンされたことが確認された。
次に、CD44またはCD44v9を標識してフローサイトメトリーを行った。結果を図7(B)に示す。細線は抗CD44抗体または抗CD44v9抗体で標識した対照細胞を表し、太線は抗CD44抗体または抗CD44v9抗体で標識したノックダウン細胞を表す。ノックダウンした細胞は、対照細胞と比較して、CD44v9の発現が低下していた。
さらに、リアルタイムPCRにより、CD44v9/β−actinの発現比、CD44v9/CD44比の発現比、およびKLF4/β−actinの発現比を測定した。結果を図7(C)、(D)および(E)にそれぞれ示す。ノックダウンした細胞のCD44v9/β−actin発現比、CD44v9/CD44発現比、およびKLF4/β−actin発現比は、いずれも対照より低いものであった。すなわち、ERO1−αの発現の抑制により、がん幹細胞マーカーであるCD44v9の発現、および幹細胞性の維持に重要な役割を果たしているKLF4の発現低下が低下していた。
これらの結果はヒト大腸がん細胞SW480で見られたのと同様の傾向であり、ヒト乳癌細胞MDA−MB−231においても、ERO1−αの発現の抑制が、がん幹細胞が通常がん細胞に分化誘導していることを示すものである。
例8:ヒト大腸がん細胞SW480におけるERO1−αタンパク質活性阻害剤(EN460)の影響
ヒト大腸がん細胞SW480において、ERO1−αタンパク質活性阻害剤であるEN460により処理し、リアルタイムPCRにより、CD44v9/β−actinの発現比およびKLF4/β−actinの発現比を測定した。結果を図8(A)と(B)に示す。CD44v9/β−actinの発現比およびKLF4/β−actinの発現比は、EN460の濃度依存的に、低下した。ERO1−αタンパク質活性阻害剤による処理によっても、ERO1−αに対するsiRNAまたはshRNAをトランスフェクトした場合と同様に、がん幹細胞は通常がん細胞に分化誘導されることが示された。
例9:ヒト乳癌細胞MDA−MB−231におけるERO1−α抑制剤によるERO1−αおよびABCG2タンパク質発現への影響
ヒト乳癌細胞MDA−MB−231に、ERO1−αに対するshRNAをトランスフェクトし、クローンsh2−2を得た。ERO1−αおよびβ−actinについて、ウェスタンブロッティングを行った。結果を図9(A)に示す。クローンsh2−2において、ERO1−α発現の低下が見られた。shRNAをトランスフェクトすることにより、当該細胞においてERO1−αがノックダウンされたされたことが確認された。
次に、ABCG2を標識してフローサイトメトリーを行った。結果を図7(B)に示す。細線は抗ABCG2抗体で標識した対照細胞を表し、太線は抗ABCG2抗体で標識したノックダウン細胞を表す。ノックダウンした細胞は、対照細胞と比較して、ABCG2の発現が低下していた。
例10:ヒト大腸癌細胞SW480における、ERO1−αに対するsiRNAと抗がん剤5−FUとの併用効果
4〜6週齢の雌性非肥満糖尿病/重度複合免疫不全(NOD/SCID)マウスの左背部に5×10個のヒト大腸癌細胞SW480を左背部に注入した。対照群については、移植後7日目から生理食塩水10μlを週に2回投与した。siRNA投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与した。5−FU投与群については移植後7日目から、5−FU(50mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)、合計4回、腹腔内に投与した。siRNAおよび5−FU併用投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与し、5−FU(50mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)、合計4回腹腔内に投与した。腫瘍の長さおよび幅は、キャリパーで測定した。
結果を図10に示す。siRNAおよび5−FU併用投与群は、対照群、5−FU投与群、およびsiRNA投与群と比較して、腫瘍体積は著しく減少した。
例11:ヒト乳癌細胞MDA−MB−231における、ERO1−αに対するsiRNAと抗がん剤パクリタキセルとの併用効果
4〜6週齢の雌性非肥満糖尿病/重度複合免疫不全(NOD/SCID)マウスの右第3乳腺に1×10個のヒト乳癌細胞MDA−MB−231細胞を注入した。対照群については、移植後7日目からエタノール10μlを週に2回投与した。siRNA投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを、移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与した。パクリタキセル投与群については移植後7日目から、パクリタキセル(5mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)静脈内に投与した。siRNAおよびパクリタキセル投与併用群については、siRNA投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与し、パクリタキセル(5mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)静脈内に投与した。腫瘍の長さおよび幅は、キャリパーで測定した。
結果を図11に示す。siRNAおよびパクリタキセル併用投与群は、対照群、パクリタキセル投与群、およびsiRNA投与群と比較して、腫瘍体積は著しく減少した。
例12:ヒト乳癌細胞MDA−MB−231における、ERO1−αに対するsiRNAと抗がん剤ゲムシタビンとの併用効果
4〜6週齢の雌性非肥満糖尿病/重度複合免疫不全(NOD/SCID)マウスの右第3乳腺に1×10個のヒト乳癌細胞MDA−MB−231細胞を注入した。対照群については、移植後7日目からエタノール10μlを週に2回投与した。siRNA投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを、移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与した。ゲムシタビン投与群については移植後7日目から、ゲムシタビン(100mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)静脈内に投与した。siRNAおよびゲムシタビン併用投与群については、siRNA投与群については、50μLのLipotrust(Hokkaido System Science, Sapporo, Japan)にERO1−αに対するsiRNA(1mg/kg)を混合したものを移植後7日目から週に2回(7日目、10日目、14日目、17日目、21日目、24日目、28日目)、合計7回腫瘍内に投与し、ゲムシタビン(100mg/kg)を週に1回(7日目、14日目、21日目、28日目)静脈内に投与した。腫瘍の長さおよび幅は、キャリパーで測定した。
結果を図12に示す。siRNAおよびゲムシタビン併用投与群は、対照群、ゲムシタビン投与群、およびsiRNA投与群と比較して、腫瘍体積は著しく減少した。

Claims (23)

  1. がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導するための分化誘導剤であって、有効成分としてERO1−α阻害物質を含む、前記分化誘導剤。
  2. ERO1−α阻害物質が、ERO1−α遺伝子に対する干渉核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、もしくはこれらを発現するベクター、もしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−αタンパク質活性阻害剤である、請求項1に記載の分化誘導剤。
  3. がん幹細胞が、CD44v9を発現する細胞である、請求項1または2に記載の分化誘導剤。
  4. 分化誘導が、がん幹細胞におけるCD44v9またはKLF4の発現の低下により確認される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分化誘導剤。
  5. がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導して、がんを治療および/または予防するための、ERO1−α阻害物質を含む、医薬組成物。
  6. がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導して、がんを治療および/または予防するための医薬の製造のための、ERO1−α阻害物質の使用。
  7. がん幹細胞をERO1−α阻害物質で処置することを含む、インビトロにおいて、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導する方法。
  8. 対象において、ERO1−α阻害物質により、がん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導する方法。
  9. 対象に有効量のERO1−α阻害物質を投与することを含む、対象におけるがん幹細胞を通常がん細胞に分化誘導して、がんを治療および/または予防するための方法。
  10. ERO1−α阻害物質を含む、がん用化学療法剤の増強剤。
  11. ERO1−α阻害物質が、ERO1−α遺伝子に対する干渉核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、もしくはこれらを発現するベクター、もしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−αタンパク質活性阻害剤である、請求項10に記載の増強剤。
  12. 増強が、薬物排出タンパク質の発現抑制によるものである、請求項10または11に記載の増強剤。
  13. 薬物排出タンパク質が、ABCトランスポーターである、請求項12に記載の増強剤。
  14. 化学療法剤が、細胞膜透過性の抗がん剤である、請求項10〜13のいずれか一項に記載の増強剤。
  15. 請求項10に記載の増強剤、および化学療法剤を含むキット。
  16. がん用化学療法剤と併用して投与するための、ERO1−α阻害物質を含む医薬組成物。
  17. ERO1−α阻害物質が、ERO1−α遺伝子に対する干渉核酸、アンチセンス核酸、リボザイム、もしくはこれらを発現するベクター、もしくはこれらを発現するように形質転換された細胞、またはERO1−αタンパク質活性阻害剤である、請求項16に記載の医薬組成物。
  18. 化学療法剤が、細胞膜透過性の抗がん剤である、請求項16に記載の医薬組成物。
  19. ERO1−α阻害物質が腫瘍内投与され、化学療法剤が静脈投与される請求項16に記載の医薬組成物。
  20. 化学療法剤とERO1−α阻害物質とを併用して投与することによってがんを治療するための医薬の製造のためのERO1−α阻害物質の使用。
  21. 化学療法剤とERO1−α阻害物質とを併用して投与することを含む、インビトロにおいて、がん幹細胞を処置する方法。
  22. 化学療法剤とERO1−α阻害物質とを併用して投与することを含む、対象において、がん幹細胞を処置する方法。
  23. 化学療法剤とERO1−α阻害物質とを併用して投与することを含む、対象において、がんを治療および/または予防する方法。
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