JP2008110950A - 糖尿病網膜症の治療方法 - Google Patents

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Hirochika Yokouchi
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Abstract

【課題】糖尿病網膜症に有効な新規薬剤及びその使用方法を提供すること。
【解決手段】発明者らは、糖尿病患者において、網膜血液中の血糖値が上昇すると網膜色素上皮細胞からアンジオポエチン関連タンパク質4の発現が亢進し、アンジオポエチン関連タンパク質4が網膜血管内皮細胞の管腔形成を促進し、最終的に、網膜血管の血管新生が進行する、という糖尿病網膜症における血管新生のメカニズムを明らかにした。そこで、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制する抑制因子を含有する薬剤を、アンジオポエチン関連タンパク質4によって生じる網膜の血管新生に起因する疾患に対する治療薬とする。なお、対象となる疾患の例は、糖尿病網膜症や血管新生緑内障等である。
【選択図】なし

Description

本発明は、糖尿病網膜症の治療方法に関する。
糖尿病に罹患し、高血糖を主体とした代謝異常が長期間持続したり反復したりすると、網膜血管に異常をきたし、それを取り巻く網膜や硝子体に多様な病変を形成するようになる。これを糖尿病網膜症と呼ぶ。
網膜は、光学顕微鏡的に10層に分かれており、内側の9層は神経網膜からなり、外側の1層は網膜色素上皮細胞からなる。この網膜色素上皮細胞には網膜血管が取り巻き、この網膜血管の透過性が亢進したり閉塞が進行したりすると、網膜血管の内皮細胞から新生血管が生じる。
糖尿病網膜症患者の眼底所見では、主に新生血管、増殖組織、硝子体出血、網膜剥離等が観察される。これは、患者の網膜において、微小血管障害や網膜血管の内腔閉塞によって網膜血管内の酸素が欠乏し、その結果、網膜内部と硝子体の中で血管新生が起きるためである。こうして生じた新生血管は、網膜血管の透過性亢進(血管壁が弱くなり、血管内の物質が血管外に出やすくなること。)、及び、網膜血管の内腔閉塞(血管が詰まること。初期の閉塞は血栓によることが多い。)という特徴を有するため、脆弱で透過性が高く、血管壁はしばしば破綻して網膜前出血や硝子体出血を生じ、最終的には増殖組織や硝子体の牽引や収縮により牽引性網膜剥離をきたし、失明に至る。
現在、このような事態を回避すべく、糖尿病網膜症患者に対して、新生血管の発生を予防したり、発生した新生血管を凝固したりするため、網膜光凝固療法や薬物療法が行なわれている。しかしながら、現在行なわれている薬物療法は、血管強化薬、循環改善薬、血小板凝集抑制薬等を用いた補助的な治療であり(例えば、非特許文献1を参照)、糖尿病網膜症の基本病態である網膜血管の透過性亢進、内腔閉塞、血管新生のいずれかを抑制する薬物は、糖尿病黄斑症等ごく一部の特殊な病態を除き、ほとんど存在しない。
Bhavsar AR: Diabetic retinopathy. The latest in current management,Retina 26(6) S71-S79, 2006.
以上のような現状から、糖尿病網膜症の基本病態を根本的に治療する薬剤の開発が期待されていた。
そこで、本発明は、糖尿病網膜症に有効な新規薬剤及びその使用方法を提供することを目的とする。
糖尿病網膜症の基本病態の発症、進展には種々のサイトカインが関与することが知られており、中でも、最も重要なサイトカインは、血管新生に関与するVEGF(vascular endotheliaLGrowth factor; VEGF)であるとされている。
近年、アンジオポエチン関連タンパク質4(angiopoietin-like 4)(別名、PGAR、FIAF)も血管内皮細胞を増殖させることが明らかになった(Yoshida K, et al., Vet. Res. Commun., 28 (4), 299-305 (2004)))。しかし、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現は、肝臓や脂肪組織でしか知られておらず、しかも血糖値の低い空腹時に上昇し(Annual Report of Sankyo Research Laboratories, vol.57, 4, (2005))、血糖値が高い糖尿病患者では低下する(Kersten, S. et al., J. Biol. Chem., 275, 28488-28493 (2000))。従って、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現は、グルコース濃度に関係なく変化すると考えられ(Annual Report of Sankyo Research Laboratories, vol.57, 4, (2005))、糖尿病網膜症における血管新生に関与するとは考えられていなかった。
本発明者らは、以下の実施例に示すように、網膜色素上皮細胞(RPE cells)でアンジオポエチン関連タンパク質4が発現していること、低濃度のグルコースが存在する状態では、網膜色素上皮細胞においてアンジオポエチン関連タンパク質4はほとんど発現しないが、グルコースの濃度が上昇するにつれて、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現量は増加すること、さらに、低濃度のグルコース濃度より、高濃度のグルコースの濃度で網膜色素上皮細胞を培養した方が、網膜色素上皮細胞から産生されるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現量が増加することを明らかにした。また、グルコース存在下で培養された網膜色素上皮細胞の培養上清を、血管内皮細胞の培地に添加した時に生じる管腔形成は、培地にアンジオポエチン関連タンパク質4を添加しても起きることや、培地のグルコース濃度を高めた状態で培養した網膜色素上皮細胞において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制することによって得られた培養上清を用いると、網膜血管内皮細胞の管腔形成が生じないことを見出した。これらの結果より、本発明者らは、高濃度のグルコース存在下で培養された網膜色素上皮細胞の培養上清による網膜血管内皮細胞の管腔形成は、培養上清中のアンジオポエチン関連タンパク質4によって誘導されることを明らかにし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかるアンジオポエチン関連タンパク質4(angiopoietin-like 4)発現亢進剤は、グルコースを有効成分として含有することを特徴とする。前記発現亢進剤は、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させる発現亢進剤であることが好ましい。
また、本発明にかかる網膜血管新生促進剤は、アンジオポエチン関連タンパク質4を有効成分として含有することを特徴とする。ここで、前記アンジオポエチン関連タンパク質4は、網膜色素上皮細胞由来であってもよい。
さらに、本発明にかかる網膜血管新生抑制剤は、アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を抑制するアンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を有効成分として含有することを特徴とする。ここで、前記アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子は、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制する発現抑制剤であってもよい。
また、本発明にかかる網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防・治療剤は、アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を抑制するアンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を有効成分として含有することを特徴とする。ここで、前記アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子は、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制する発現抑制剤であってもよい。なお、前記疾患は、例えば、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障等である。
さらに、本発明にかかるアンジオポエチン関連タンパク質4発現亢進剤は、HIF1又はPPARγの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有することを特徴とする。前記発現亢進剤は、HIF1αの発現を亢進させる発現亢進剤又はPPARγのアゴニストであることが好ましい。
また、本発明にかかるアンジオポエチン関連タンパク質4発現抑制剤は、HIF1α又はPPARγの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有することを特徴とする。前記発現抑制剤は、HIF1α又はPPARγの発現を抑制する発現抑制剤又はPPARγのアンタゴニストであることが好ましい。ここで、前記発現抑制剤は、siRNAを含有していてもよい。
さらに、本発明にかかる網膜血管新生促進剤は、HIF1α又はPPARγの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有することを特徴とする。前記網膜血管新生促進剤は、HIF1αの発現を亢進させる発現亢進剤又はPPARγのアゴニストであることが好ましい。
また、本発明にかかる網膜血管新生抑制剤は、HIF1α又はPPARγの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有することを特徴とする。前記網膜血管新生抑制剤は、HIF1α又はPPARγの発現を抑制する発現抑制剤又はPPARγのアンタゴニストであることが好ましい。ここで、前記発現抑制剤は、siRNAを含有していてもよい。
さらに、本発明にかかるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させる方法は、網膜色素上皮細胞を含む培養細胞において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させる方法であって、グルコースを前記培養細胞に投与することを特徴とする。
また、本発明にかかる血管新生を促進する方法は、網膜血管内皮細胞を含む培養細胞において、血管新生を促進する方法であって、アンジオポエチン関連タンパク質4を前記培養細胞に投与することを特徴とする。なお、前記アンジオポエチン関連タンパク質4は、網膜色素上皮細胞由来のものであってもよい。
さらに、本発明にかかる血管新生を抑制する方法は、網膜血管内皮細胞を含む培養細胞において、血管新生を抑制する方法であって、アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を前記培養細胞に投与することを特徴とする。
また、本発明にかかるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させる方法は、網膜色素上皮細胞を含む培養細胞において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させる方法であって、HIF1α又はPPARγの機能を増強する機能増強剤を前記培養細胞に投与することを特徴とする。
さらに、本発明にかかるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制する方法は、網膜色素上皮細胞を含む培養細胞において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制する方法であって、HIF1α又はPPARγの機能を抑制する抑制因子を前記培養細胞に投与することを特徴とする。
また、本発明にかかる診断キットは、網膜の血管新生に起因する疾患を診断する診断キットであって、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を診断マーカーとして使用することを特徴とする。前記疾患は、例えば、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障等である。
さらに、本発明にかかるスクリーニング方法は、網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防又は治療に効果を有する物質のスクリーニング方法であって、基準値以上の濃度のグルコース存在下において網膜色素上皮細胞を培養し、前記網膜色素上皮細胞に被験物質を投与し、前記網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4を測定する工程を含むことを特徴とする。前記疾患は、例えば、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障等である。
また、本発明にかかるアッセイ系は、網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防又は治療に効果を有する物質のスクリーニングに使用するアッセイ系であって、基準値以上の濃度のグルコース存在下において培養した網膜色素上皮細胞を含むことを特徴とする。前記疾患は、例えば、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障等である。
さらに、本発明にかかる網膜血管新生を抑制する方法は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物において網膜血管新生を抑制する方法であって、前記網膜血管新生抑制剤を前記脊椎動物内に投与することを特徴とする。また、前記方法は、網膜の血管新生に起因する疾患に対する治療に用いてもよい。前記疾病は、例えば、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障等である。
また、本発明にかかる診断方法は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物において網膜の血管新生に起因する疾患を診断する方法であって、前記診断キットを前記脊椎動物に用いることを特徴とする。前記疾病は、例えば、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障等である。
本発明によって、本発明は、糖尿病網膜症に有効な新規薬剤及びその使用方法を提供することができるようになった。
以下に、本発明の実施の形態において実施例を挙げながら具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
(1)薬理作用
本発明者らは、以下の実施例に示すように、糖尿病患者において、網膜血液中の血糖値が上昇すると網膜色素上皮細胞からアンジオポエチン関連タンパク質4の発現が誘導され、分泌されたアンジオポエチン関連タンパク質4が網膜血管内皮細胞の管腔形成を促進し、最終的に、網膜血管の血管新生が進行する、という糖尿病網膜症における血管新生のメカニズムを明らかにした。
同時に、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制することにより、網膜血管内皮細胞の管腔形成(血管新生)を抑制することを可能にした。従って、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制する抑制因子は、アンジオポエチン関連タンパク質4によって生じる網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防・治療等に用いることができる。
ここで、アンジオポエチン関連タンパク質4によって生じる網膜の血管新生に起因する疾患としては、糖尿病網膜症、血管新生緑内障等が挙げられる。なお、これらの疾患においては、網膜剥離、網膜出血、網膜血管増殖組織、硝子体出血等の眼底所見が観察される。また、糖尿病以外で網膜血液中の血糖値が上昇する疾患・状態としては、糖尿病、耐糖障害、急性・慢性膵炎、ラ島炎、膵摘出、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症、グルカゴノーマ、褐色細胞腫、脳血管障害、脳腫瘍、髄膜炎、脂肪肝、慢性肝炎、インスリンレセプター異常、胃切除、糖過剰摂取、薬物副作用発現時等が挙げられる。
(2)本発明の薬剤
(i)グルコースを有効成分として含有する薬剤
以下の実施例に示すように、グルコースを網膜色素上皮細胞に投与すると、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現が亢進した。さらに高濃度のグルコースを網膜色素上皮細胞に投与すると、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現はさらに亢進した。従って、グルコースを含有する薬剤は、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させるのに有用である。なお、本発明の薬剤に含有するグルコースは、市販のものでもよいし、公知の方法を用いて製造してもよい。
グルコースを有効成分として含有する薬剤に用いられ得る薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質を用いてもよく、例えば、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等を含有してもよいし、軟膏製剤におけるワセリン等の基剤、流動パラフィン、精製ラノリン等を用いてもよい。さらに必要に応じて、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、吸着剤、ビタミン剤等の添加物を適宜、適量含有してもよい。また、本薬剤の剤形は特に限定されないが、ヒト又はヒト以外の脊椎動物に投与する場合は、外用剤の形態が好ましく、特に点眼剤が好ましい。
(ii)アンジオポエチン関連タンパク質4を有効成分として含有する薬剤
血管新生は、血管内皮細胞が遊走し、浸潤し、増殖し、最終的に管腔を形成する、という順序で起こる。培養系における血管内皮細胞の管腔形成は、血管新生のin vitroモデル系だと考えられており、以下の実施例に示すように、アンジオポエチン関連タンパク質4を血管内皮細胞に投与すると、これら血管内皮細胞の遊走、浸潤、増殖及び管腔形成を促進した。従って、アンジオポエチン関連タンパク質4を含有する薬剤は、網膜における血管新生を促進するのに有用である。
本薬剤に含有されるアンジオポエチン関連タンパク質4は、天然由来(例えば、網膜色素上皮細胞由来)であってもよいし、遺伝子組換え体であってもよい。組換えタンパク質の場合、アンジオポエチン関連タンパク質4を発現する細胞から公知の方法を用いて製造及び精製することができる。また、ファージプロモーター等を用いたin vitro転写系及び小麦胚芽抽出液やウサギ網状赤血球抽出液などのin vitro翻訳系を用いて、アンジオポエチン関連タンパク質4を合成後、精製してもよい。
また、本薬剤は、アンジオポエチン関連タンパク質4を発現する細胞を含有してもよいが、特に、その細胞は、アンジオポエチン関連タンパク質4を分泌することが好ましい。例えば、このような細胞として、網膜色素上皮細胞や、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現ベクターを含む組換え細胞などを用いることができる。
アンジオポエチン関連タンパク質4を有効成分として含有する薬剤に用い得る薬学的に許容される担体及び剤形は、(2)(i)に記載の通りである。
(iii)アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を有効成分として含有する薬剤
以下の実施例に示す通り、網膜血管内皮細胞に対してアンジオポエチン関連タンパク質4の投与量を減少させた場合や、網膜色素上皮細胞のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制し、これら網膜色素上皮細胞を培養する培養上清を用いたた場合(図5A及び5B)において、網膜血管内皮細胞の管腔形成は抑制された。従って、アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を抑制する抑制因子を含有する薬剤は、網膜における血管新生を抑制するのに有用である。
本薬剤に含有するアンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子は、アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を抑制するものであればよく、例えば、アンジオポエチン関連タンパク質4に特異的に結合し、その機能を特異的に抑制する抗体やアプタマーや、化合物等を用いてもよい。また、アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を抑制するために、網膜色素上皮細胞のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制してもよく、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制する発現抑制剤、例えば、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA等を用いてもよい。
アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を有効成分として含有する薬剤に用い得る薬学的に許容される担体及び剤形は、(2)(i)に記載の通りである。
(iv)HIF1αの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有する薬剤
HIF(hypoxia inducible factor)は、αサブユニット(α1、α2、α3)とβサブユニットからなる二量体である。HIF1α(hypoxia inducible factor 1 subunit α)はほぼ全ての細胞で発現していることが知られているが、常酸素条件下ではユビキチン−プロテアソーム系により分解されるので、ほとんどその発現は検出されない。低酸素条件下では、分解抑制を受けて核内に移行し、DNA上に存在するHRE(Hypoxia Responsive Element)に結合することによって、低酸素応答を引き起こす。
実施例に示すように、網膜色素上皮細胞において、HIF1αの発現を阻害すると、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現が抑制される。そこで、HIF1αの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有する薬剤は、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現抑制を通じ、アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を抑制するのに有用である。
従って、HIF1αの機能を抑制する抑制因子は、網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防・治療等に用いることができる。なお、「網膜の血管新生に起因する疾患」は、前述の通りである。
本薬剤に含有されるHIF1α抑制因子は、HIF1αの機能を抑制するものであればよく、例えば、HIF1αに特異的に結合し、その機能を特異的に抑制する抗体やアプタマーや、化合物等を用いてもよい。また、HIF1αの機能を抑制するために、網膜色素上皮細胞のHIF1αの発現を抑制してもよく、HIF1αの発現を抑制する発現抑制剤、例えば、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA等を用いてもよい。
HIF1αの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有する薬剤に用い得る薬学的に許容される担体及び剤形は、(2)(i)に記載の通りである。
(v)HIF1αの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有する薬剤
実施例に示すように、HIF1αの発現を抑制すると網膜色素上皮細胞のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現は抑制される。従って、HIF1αの機能の強弱によってアンジオポエチン関連タンパク質4の発現が制御されている細胞においては、HIF1αの機能を増強すれば、網膜色素上皮細胞のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させることができると考えられる。そこで、HIF1αの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有する薬剤は、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させるのに有用である。
本薬剤に含有される、HIF1αの機能を増強する機能増強剤は、HIF1αの機能を増強するものであればよく、典型的には、HIF1α発現亢進剤を用いることができる。例えば、HIF1αのタンパク質それ自体を含有したり、HIF1αの発現ベクターや、その発現ベクターを含む組換え細胞を含有したりしてもよい。
HIF1αの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有する薬剤に用いられ得る薬学的に許容される担体及び剤形は、(2)(i)に記載の通りである。
(vi)PPARγの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有する薬剤
PPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor gamma;ペルオキシゾーム増殖促進受容体ガンマ)は核内受容体型転写因子で、脂肪細胞の分化を促進する。PPARγアゴニストであるチアゾリジン誘導体は、糖尿病患者において、高インスリン血症、高中性脂肪血症、低HDL血症、インスリン抵抗性を改善する。
実施例に示すように、網膜色素上皮細胞において、PPARγの発現を抑制すると、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現が抑制される。そこで、PPARγの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有する薬剤は、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現抑制を通じ、アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を抑制するのに有用である。
従って、PPARγの機能を抑制する抑制因子は、網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防・治療等に用いることができる。なお、「網膜の血管新生に起因する疾患」は、前述の通りである。
本薬剤に含有されるPPARγ抑制因子は、PPARγの機能を抑制するもの、即ちPPARγのアンタゴニストであればよく、例えば、PPARγに特異的に結合し、その機能を特異的に抑制する抗体やアプタマーや、化合物等を用いてもよい。また、PPARγの機能を抑制するために、網膜色素上皮細胞のPPARγの発現を抑制してもよく、PPARγの発現を抑制する発現抑制剤、例えば、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA等を用いてもよい。
PPARγの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有する薬剤に用い得る薬学的に許容される担体及び剤形は、(2)(i)に記載の通りである。
(vii)PPARγの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有する薬剤
実施例に示すように、網膜色素上皮細胞において、PPARγを刺激すると、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現が亢進する。そこで、PPARγの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有する薬剤は、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現亢進を通じ、アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を増強するのに有用である。
本薬剤に含有される、PPARγの機能を増強する機能増強剤は、PPARγの機能を増強するものであればよく、典型的には、PPARγアゴニスト(例えば、チアゾリジン誘導体や、プロスタグランジンJ2代謝産物等)を用いることができる。
PPARγの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有する薬剤に用いられ得る薬学的に許容される担体及び剤形は、(2)(i)に記載の通りである。
(3)上記薬剤の投与方法及び投与量
(i)ヒト又はヒト以外の脊椎動物に投与する場合
上記薬剤の投与方法は特に限定されず、例えば、液状の薬剤を点眼しても、注入しても、塗布してもよく、また、脂質等のキャリアを用いて細胞に導入してもよい。上記薬剤の投与量は、年齢、体重、適応症又は投与・摂取経路によって異なるが、上記作用が発揮でき、かつ、生じる副作用が許容し得る範囲内であれば特に限定されない。また、本発明の薬剤の好ましい投与経路は、眼球内投与(眼内投与、網膜内投与等)等である。特に、本発明の薬剤にsiRNAなどの核酸が含まれている場合は、脂質等のキャリアとともに局所に直接注入する(マイクロインジェクション、眼球注射、カニュレーション等)のが好ましい。また、各薬剤にタンパク質が含有されている時は、HIVのTATタンパク質を利用した導入やマイクロインジェクション等で、タンパク質を細胞内に導入することができる。
具体的投与方法としては、例えば、ヒト又はヒト以外の脊椎動物において、網膜血液又は網膜色素上皮細胞を含む組織や器官におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現量を測定し、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現量が所定値以下である場合に、本発明のグルコースを有効成分として含有する薬剤、又はHIF1αの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有する薬剤を投与することにより、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させることができる。一方、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現量の発現量が所定値以上である場合に、本発明のアンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を有効成分として含有する薬剤、又はHIF1αの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有する薬剤を投与することにより、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制することができる。
また、ヒト又はヒト以外の脊椎動物において、網膜血液又は網膜色素上皮細胞を含む組織や器官におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現量を測定し、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現量の発現量が所定値以下である場合に、本発明のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させる発現亢進剤を有効成分として含有する薬剤を投与することにより網膜の血管新生を促進することができる。一方、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現量の発現量が所定値以上である場合に、アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を有効成分として含有する薬剤を投与することにより網膜の血管新生を抑制することができる。
ここで、「所定値」とは、例えば、一般的に健常人におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現量又は当該患者の糖尿病発症前のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現量等が考えられる。なお、アンジオポエチン関連タンパク質4は、網膜血液や網膜色素上皮細胞を含む細胞を採取し、PCR法、サザンブロット法、ノーザンブロット法、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫組織学的方法等によって測定することができる。
なお、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現量の測定すること無く、必要な時に各薬剤を投与してもよい。例えば、糖尿病網膜症特有の眼底所見が観察される時など、網膜の血管新生を抑制させたい場合に、アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を有効成分として含有する薬剤又はHIF1αの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有する薬剤を投与することができる。
(ii)培養系の場合
網膜色素上皮細胞を含む細胞のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させるためには、グルコース又はHIF1αの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有する薬剤を投与すればよい。
また、網膜血管内皮細胞を含む培養細胞において、血管新生を促進するためにはアンジオポエチン関連タンパク質4を有効成分として含有する薬剤を投与すればよい。
なお、各薬剤にsiRNA、miRNA、アンチセンスRNA、発現ベクターなどの核酸が含まれている場合は、薬剤の投与方法として、エレクトロポレーション、トランスフェクション等を用いて細胞内に導入することが好ましい。また、各薬剤にタンパク質が含有されている時は、HIVのTATタンパク質を利用した導入やマイクロインジェクション等で、タンパク質を細胞内に導入することができる。
培養網膜血管内皮細胞における血管新生は、顕微鏡を使用し、細胞等に管腔が形成されているかどうかを観察することで、容易に同定できる。また、培養網膜色素上皮細胞においてアンジオポエチン関連タンパク質4が発現しているかどうかは、これらの培養細胞を回収し、PCR法、サザンブロット法、ノーザンブロット法、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫組織学的方法等によって測定すればよい。
なお、ここで対象としている細胞は、単層培養細胞でもよく、また組織や器官の形態などの立体構造をとっていてもよい。
(4)診断マーカー及び推定マーカー
前述の通り、アンジオポエチン関連タンパク質4は、網膜血管内皮細胞の血管新生を促進する。従って、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現量は、網膜血管の血管新生に起因する疾患を診断するマーカーとして利用できる。例えば、網膜血管内皮細胞の血管新生が進行すると、網膜血管の血管新生に起因する疾患は増悪するため、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現量によって、網膜血管の血管新生に起因する疾患の病状推移を推定することも可能である。
なお、「網膜の血管新生に起因する疾患」は、(1)に記載の通りである。
(i)アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を調べる場合
網膜血管又は網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の転写産物の量を指標とし、診断対象の個体から得た網膜血管又は網膜色素上皮細胞において、転写産物の量をノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCRで検出することにより、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を調べることができる。
さらに、アンジオポエチン関連タンパク質4の量を指標とすることもでき、この場合、アンジオポエチン関連タンパク質4に対して特異的に反応する抗体を用いて、ELISA、ウエスタンブロッティング法、免疫組織学的方法等を行えばよい。
このようにして調べた結果、診断対象の個体において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現が所定値よりも高かったり、元々患者個人が有するアンジオポエチン関連タンパク質4の正常値よりも高かったりした場合には、網膜の血管新生に起因する疾患を発現していると診断する。また、網膜の血管新生に起因する疾患を既に合併している場合において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現の推移を調べることにより、疾患が増悪しているかどうか推定することができる。
(ii)診断マーカー及び推定マーカーの有用性
本発明のマーカーは、網膜中心静脈、網膜中心動脈、網膜、網膜色素上皮細胞を含む細胞、組織又は器官等のサンプルにおいて測定することができる。
また、網膜の血管新生に起因する疾患を診断するためのキットは、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現量を測定するための試薬を含み、具体例としては、RT−PCR用の酵素、プライマー、バッファー等や、ELISA用の抗体、バッファー等、を含んでいてもよい。
(5)網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防又は治療に効果を有する物質のスクリーニング方法
本発明の網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防又は治療に効果を有する物質のスクリーニング方法においては、所定の濃度のグルコースの存在下で培養した網膜色素上皮細胞をアッセイ系とし、被験物質を投与し、これらの網膜色素上皮細胞が産生したアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制する物質を選択する。このようにして選択された物質は、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現抑制を通じ、最終的に網膜の血管新生を抑制する。ここで、培養液中のグルコース濃度は300mg/dl以上であることが好ましい。なお、網膜の血管新生に起因する疾患は、(1)に記載の通りである。
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(1)試料の調製
実験に使用する細胞、タンパク質及び培地は、以下のように調製した。
(i)ヒト網膜血管内皮細胞の調製
網膜における血管新生の観察は、ヒト網膜血管内皮細胞を用いて行った。これらの実験に用いるヒト網膜血管内皮細胞株は、Cell Systems社(Kirkaland, WA; catalog No. CS-ABI-181)から購入した。
I型コラーゲンでコーティングされた培養皿で、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン(Gibco BRLGrand Island, NY)含有CS-C Complete Medium(10%FBS含有DMEM/F12=1:1)を用いてヒト網膜血管内皮細胞を培養した。なお、CS-C Complete Mediumは、Cell Systems Corpoeationから購入した(カタログNo.CS-4ZO-500)。また、無血清培地CS-C Medium(DMEM/F12(成長因子及び血清の含有無し)も、Cell Systems Corpoeationから購入した(カタログNo.CS4Z3 500S)。また、継代は、細胞が90%のコンフルエンスに達した時、培地を継代培養試薬ACCUTASE(Innovative Cell Technologies, Inc. San Diego, CA)に交換して行った。
(ii)ARPE-19細胞の調製
網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現、及び網膜色素上皮細胞から産生されるアンジオポエチン関連タンパク質4の機能の解析は、ARPE-19細胞を用いて行った。これらの実験に用いるARPE-19細胞は、Amerikan Type Culture Collection ( Rockville, MA, USA; catalog No. CRL-2302)から購入した。なお、培地には、D-MEM/F12 (Gibco BRLGrand Island, NY, USA; catalog No. 11330-032)(15mM HEPESバッファー、7.5mMグルコース、10%ウシ胎仔血清(FBS; Gibco BRLGrand Island, NY, USA)、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンを含有)を用いてARPE-19細胞を培養した。
(iii)アンジオポエチン関連タンパク質4(ANGPTL4)
アンジオポエチン関連タンパク質4は、組換え型ヒトANGPTL4(AdipoGen(ソウル(韓国);カタログNo. 293-VE))を使用した。
(iv)VEGF(VEGF)
VEGFは、組換え型ヒトVEGF(R&D systems (カタログNo.293-VE))を使用した。
(v)グルコース含有培地の作製
培地に存在するグルコースの濃度の違いによって、ARPE-19細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現がどのように変化するかを調べるために、異なるグルコース濃度を含有する培地を作製した。
VLG培地:5mMグルコース含有培地(5mMグルコース、10%FBS、100U/mlペニシリン及び100μ/mlストレプトマイシン含有D-MEM/F12)
LG培地:7.5mMグルコース含有培地:(7.5mMグルコース、10%FBS、100U/mlペニシリン及び100μ/mlストレプトマイシン含有D-MEM/F12)
MG培地:12.5mMグルコース含有培地(12.5mMグルコース、10%FBS、100U/mlペニシリン及び100μ/mlストレプトマイシン含有D-MEM/F12)
HG培地:17.5mMグルコース含有培地(17.5mMグルコース、10%FBS、100U/mlペニシリン及び100μ/mlストレプトマイシン含有D-MEM/F12)
(2)網膜色素上皮細胞の培養上清の添加による網膜血管内皮細胞の管腔形成
まず、網膜色素上皮細胞(ARPE-19細胞)の培養上清が、ヒト網膜血管内皮細胞へどのように影響するのかを、管腔形成アッセイを用いて検討した。なお、管腔形成アッセイは、BD BioCoat angiogenesis system endothelial cell tube formationplates(BD Bioscience;カタログNo.354149)を用いて行った。
まず、ARPE-19細胞をコンフルエントになるまで培養した後、LG培地(血清無添加)又はHG培地(血清無添加)に交換し、さらに48時間培養した培養上清を管腔形成アッセイに用いた。
このキットに付属のプレートの各ウェルにDMEM/F12(10%FBS、100U/mlペニシリン及び100μ/mlストレプトマイシン含有)を入れ、この中に網膜血管内皮細胞を2×104個ずつ入れ、3時間37℃でインキュベート(5%CO2)した(欠乏培養)後に、LG培地(培養上清)及びHG培地(培養上清)、コントロールとしてLG培地(血清無添加)及びHG培地(コントロール、血清無添加)のそれぞれの培地に交換して、16時間37℃でインキュベート(5%CO2)した(管腔形成アッセイ)。
管腔形成アッセイ終了後、培地を除去し、HBSS培地で2回洗浄し、カルセインAM(Molecular Probes, Eugene, OR;カタログNo,C3099)含有HBSSを各ウェルに入れ、30分間37℃でインキュベート(5%CO2)した。HBSS培地で2回洗浄した後、蛍光顕微鏡下で、網膜血管内皮細胞の管腔形成を観察した(倍率×4)。さらに、各ウェルに存在する全ての管腔の長さを、Win Roof software (MITANI, corporation, Jpan)を用いて測定した。結果は、図1A及びBに示す通りである。なお、管腔の長さは、コントロールのLG培地(血清無添加)を100とした時の比率で示している。
上記管腔形成アッセイにおいて、ARPE-19細胞の培養上清で培養した網膜血管内皮細胞は、コントロールに比較して管腔形成が進行していた(p<0.01)(図1A)。特に、その管腔形成は、HG培地を用いて得られた培養上清において顕著に認められた。
従って、網膜色素上皮細胞がグルコース濃度に依存して分泌する液性因子に反応して、網膜血管内皮細胞の血管新生が誘導されることが明らかになった。
(3)培地中のグルコース濃度と網膜色素上皮細胞からのアンジオポエチン関連タンパク質4の発現の相関
この液性因子を同定するため、ARPE-19細胞を高グルコースと低グルコースで培養し、各培養細胞から全mRNAを抽出し、cDNAを介してcRNAを合成し、gene chipを用いて、高グルコース刺激で発現が上昇したクローンを解析したところ、そのうちの一つのクローンとして、アンジオポエチン関連タンパク質4が得られた。以下に記載する(3)〜(5)の解析により、アンジオポエチン関連タンパク質4が、網膜血管内皮細胞の血管新生を誘導する液性因子であることが明らかになった。
[1]網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現
環境中のグルコース濃度に対する網膜色素上皮細胞における遺伝子発現を検討するために、網膜色素上皮細胞のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現量と、培地中のグルコース濃度の相関を調べた。
まず、10cmの培養プレートに10%FBS、100U/mlペニシリン及び100μ/mlストレプトマイシン含有DMEM/F12を入れ、この中に約2×106個のARPE-19細胞を播種し、3時間37℃でインキュベート(5%CO2)した(欠乏培養)。3時間後に、培地を上記(1)(v)のVLG培地、LG培地、MG培地又はHG培地に交換して、48時間37℃でインキュベート(5%CO2)した。なお、コントロールは、グルコースを添加していない培地を用いて、ARPE-19細胞を培養した。
48時間後、培地を除去し、各々の培地で培養されたARPE-19細胞を回収し、TRIzol試薬(Invitrogen, Carlsabad, CA, USA)を用いて、ARPE-19由来のRNAを抽出した。その後、SuperScript II RTとオリゴdTプライマーを用いて、抽出したRNAからcDNAを作製した。mRNAの発現量は、ABI Prism 7900 sequence-detection system ( Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を使用し、TaqManRプローブ(Applied Biosystem社)を用いて定量した。用いたプライマーは以下の通りである。なお、コントロールは、ヒトβアクチンmRNA量とした。
アンジオポエチン関連タンパク質4(ANGPTL4)プライマー(Applied Biosystem社;Hs00211522_ml)
ヒトβアクチン(ACTB)プライマー(Applied Biosystem社;Hs99999903_ml)
蛍光は、TaqManR Universal PCR Master Mix (Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて測定した。
その結果、グルコースの濃度に依存して、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現量は増加することが分かった(図2)。
[2]高濃度のグルコース存在下における網膜色素上皮細胞のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現の時経的変化
[1]の実験より、高濃度のグルコース存在下において、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現が亢進することが明らかになった。そこで、網膜色素上皮細胞(ARPE-19細胞)に高濃度のグルコースを添加した後、どのようにアンジオポエチン関連タンパク質4の発現が変化するか、その発現の変化を時間ごとに測定した。
まず、6cmの培養プレートに上記(1)(vi)で作製したLG培地を入れ、この中に約2×106個のARPE-19細胞を入れ、37℃でインキュベート(5%CO2)した。ARPE-19細胞がコンフルエンスに達した後に、培地をHG培地に交換して、0分、30分、60分、90分、120分間37℃でインキュベート(5%CO2)した。
各々の時間が経過した後、培地を除去し、各ARPE-19細胞を回収し、TRIzol試薬(Invitrogen, Carlsabad, CA, USA)を用いて、ARPE-19由来のRNAを抽出した。そして、上記(2)に記載のリアルタイムPCR法を用いて、アンジオポエチン関連タンパク質4mRNA量を測定した。なお、コントロールは、ヒトβアクチンmRNA量とした。
その結果、高濃度のグルコースを添加して60分経過した頃から、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現が増加することが分かった(図3)。
[3]結論
以上より、網膜色素上皮細胞において、環境のグルコース濃度に依存して、アンジオポエチン関連タンパク質4が発現することが示された。従って、網膜色素上皮細胞がグルコース濃度に依存して分泌し、網膜血管内皮細胞の血管新生を誘導する液性因子の候補として、アンジオポエチン関連タンパク質4が考えられた。
(4)アンジオポエチン関連タンパク質4の血管新生に対する関与
糖尿病網膜症で生じる血管新生は、血管内皮細胞が遊走し、浸潤し、増殖し、最終的に管腔を形成する、という順序で起こる。そこで、アンジオポエチン関連タンパク質4が、網膜血管内皮細胞の血管新生の各段階に関与しているかどうかを調べた。
[1]網膜血管内皮細胞を用いた浸潤アッセイ及び遊走アッセイ
まず、網膜血管内皮細胞の浸潤及び遊走に対するアンジオポエチン関連タンパク質4の影響を調べた。なお、VEGF(血管内皮増殖因子)は、網膜における血管内皮細胞を増殖させ、血管新生に関与することが知られているため、以下の実験において、VEGFを入れた系をポジティブコントロールとした。
遊走アッセイ及び浸潤アッセイは、BD BioCoat angiogenesis system endothelial cell migration(BD Bioscience, カタログNo. 354141、カタログNo. 354143)を用いて、また、浸潤アッセイは、浸潤プレート(BD Bioscience, カタログNo. 354143)を用いて行った。
まず、これらのキットに付属のプレートの下側のチャンバーに250μlの0.4%FBS含有CS-C Mediumを入れ、上側のチャンバーに以下に示す培地及び細胞1〜細胞3をそれぞれ入れた。
細胞1:コントロール(250μlの0.4%FBS含有CS-C Medium、1×105のヒト網膜血管内皮細胞)
細胞2:VEGF(250μlの5ng/ml VEGF及び0.4%FBS含有CS-C Medium、1×105のヒト網膜血管内皮細胞)
細胞3:アンジオポエチン関連タンパク質4(250μlの0.1μg/mlアンジオポエチン関連タンパク質4及び0.4%FBS含有CS-C Medium、1×105のヒト網膜血管内皮細胞)
遊走アッセイに関しては、これらのプレートを27時間37℃でインキュベート(5%CO2)し、血管内皮細胞を遊走させた。一方、浸潤アッセイに関しては、これらのプレートを21時間37℃でインキュベートし、マトリジェルコートのメンブレンを介して、血管内皮細胞を浸潤させた。
遊走アッセイ終了後(27時間の培養後)又は浸潤アッセイ終了後(21時間の培養後)、カルセインAM(Molecular Probes, Eugene, OR;カタログNo,C3099)含有Hank’s balanced salt solutionを含むウェルにチャンバーを移し、1.5時間室温に放置し、その後蛍光プレートリーダー(Envision, PerkinElmer)(485/535nm)を用いて、蛍光を測定した。結果を、図4A及び図4Bに示す。なお、遊走及び浸潤した細胞が発する蛍光の値は、コントロールを100にした時の比率で示した。
遊走アッセイにおいて、アンジオポエチン関連タンパク質4を添加した群及びVEGFを添加した群は、どちらも添加していないコントロール群と比較して、高い蛍光を発していた(p<0.01)(図4A)。これは、アンジオポエチン関連タンパク質4及びVEGFがヒト網膜血管内皮細胞の遊走を引き起こしたことを示す。
また、浸潤アッセイにおいて、アンジオポエチン関連タンパク質4を添加した群及びVEGFを添加した群は、コントロール群と比較して、高い蛍光を発していた(p<0.01)(図4B)。これは、アンジオポエチン関連タンパク質4及びVEGFがヒト網膜血管内皮細胞のマトリジェルへの浸潤を引き起こしたことを示す。
[2]網膜血管内皮細胞を用いた増殖アッセイ
次に、アンジオポエチン関連タンパク質4が、網膜血管内皮細胞の増殖に対して、どのような影響を与えるのかについて調べた。なお、[1]と同様に、VEGFを入れた系をポジティブコントロールとした。
細胞増殖アッセイは、Cell Count Reagent SF(nacalai tesque, Japan;カタログNo. 07553-15)を用いて、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼ活性を測定することによって行った。
まず、96穴平底プレートの各ウェルに10%FBS含有CS-C Mediumを入れ、この中にヒト網膜血管内皮細胞を2×104個ずつ入れ、37℃でインキュベートした。これらの細胞をウェルの底に接着させた後に、接着した細胞を10%FBS含有CS-C Mediumで2回洗浄し、培地を欠乏培地(培地:CS-C Medium)に交換してさらに3時間37℃でインキュベートした。3時間後、各ウェルの培地を以下の培地4〜6のそれぞれと交換した。
4: 250μlの0.4%FBS含有CS-C Medium(コントロール)
5: 250μlの5ng/mlVEGF及び0.4%FBS含有CS-C Medium
6: 250μlの0.1μg/ml アンジオポエチン関連タンパク質4及び0.4%FBS含有CS-C Medium
このプレートを48時間37℃でインキュベート(5%CO2)した後、細胞増殖を見るために、細胞数計測用の試薬WST-8試薬を入れ、4時間放置した。その後マイクロプレートリーダーを用いて、450nmの吸光度を測定した。結果は、図4Cに示す通りである。なお、増殖した細胞が発する蛍光の値は、コントロールとの比率で示している。
上記細胞増殖アッセイにおいて、アンジオポエチン関連タンパク質4を添加した群及びVEGFを添加した群は、コントロール群と比較して、高い吸光度を有していた(p<0.01)(図4C)。これは、アンジオポエチン関連タンパク質4及びVEGFがヒト網膜血管内皮細胞の増殖を促進したことを示す。
[3]網膜血管内皮細胞を用いた管腔形成アッセイ
さらに、本発明にかかるアンジオポエチン関連タンパク質4が、網膜血管内皮細胞の管腔形成に対して、どのような影響を与えるのかについて調べた。なお、[2]と同様に、VEGFを入れた系をポジティブコントロールとした。
管腔形成アッセイは、BD BioCoat angiogenesis system endothelial cell tube formationplates(BD Bioscience;カタログNo.354149)を用いて行った。
まず、このキットに付属のプレートの各ウェルに10%FBS含有CS-C Mediumを入れ、この中にヒト網膜血管内皮細胞を2×104個ずつ入れ、37℃でインキュベートした。これらの細胞をウェルの底に接着させた後に、接着した細胞を10%FBS含有CS-C Mediumで2回洗浄し、培地を欠乏培地(培地:CS-C Medium)に交換してさらに3時間37℃でインキュベートした。3時間後、各ウェルに以下の培地7〜9を入れた。
7: 250μlのCS-C Medium(FBS含有無し)(コントロール)
8: 250μlの15ng/ml VEGF及びCS-C Medium(FBS含有無し)
9: 250μlの0.1μg/ml アンジオポエチン関連タンパク質4及びCS-C Medium(FBS含有無し)
このプレートを16時間37℃でインキュベート(5%CO2)した後、培地を除去し、HBSS培地で2回洗浄した。カルセインAM(Molecular Probes, Eugene, OR;カタログNo,C3099)含有HBSSを各ウェルに入れ、30分間37℃でインキュベート(5%CO2)した後、HBSS培地で2回洗浄した。その後、蛍光顕微鏡下で、ヒト網膜血管内皮細胞の管腔形成を観察した(倍率×4)。各ウェルに存在する全ての管腔の長さを、Win Roof software (MITANI, corporation, Jpan)を用いて測定した。結果を、図4D及び図4Eに示す。なお、管腔の長さは、コントロールを100にした時の比率で示した。
上記管腔形成アッセイにおいて、アンジオポエチン関連タンパク質4を添加した群及びVEGFを添加した群は、コントロール群と比較して、長い管腔を形成していた(p<0.01)。特に、その管腔形成は、アンジオポエチン関連タンパク質4を添加した群において顕著に認められた。これは、アンジオポエチン関連タンパク質4及びVEGFがヒト網膜血管内皮細胞の管腔形成を促進したことを示す。
[4]結論
これらの結果より、アンジオポエチン関連タンパク質4は、血管新生の各段階において、網膜血管内皮細胞の分化や増殖を促進することが明らかになった。この結果は、アンジオポエチン関連タンパク質4が、網膜血管内皮細胞が血管新生する過程に関与していることを示唆した。
(5)アンジオポエチン関連タンパク質4の発現抑制
網膜色素上皮細胞の培養上清において、アンジオポエチン関連タンパク質4が、血管新生を誘導する液性因子かどうか調べるため、siRNAを用いて、ARPE-19細胞中でアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制し、得られた培養上清を用いて管腔形成アッセイを行った。
まず、ARPE-19細胞においてアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制した場合、ARPE-19細胞の培養上清が網膜血管内皮細胞の管腔形成に対してどのような影響を与えるか調べた。
6穴培養プレートにLG培地を入れ、各ウェルに約2×105個のARPE-19細胞を播種し、24時間37℃でインキュベート(5%CO2)した。その後、トランスフェクション試薬Dharmafect R(Dharmacon, Inc. カタログNo.T-2001-01)をLG培地(血清無添加)で希釈し、以下に示すsiRNAを終濃度20nMになるように添加し、これらのsiRNAを各ウェルに添加した。なお、コントロールには、Lamin A/C siRNAを用いた。
アンジオポエチン関連タンパク質4 siRNA(Dharmacon, Inc.; siGENOME SMART poolカタログNo.M_007807-01-0010)
VEGF siRNA(Dharmacon, Inc.; siGENOME SMART poolカタログNo.M_003550-01-0010)
細胞を48時間37℃でインキュベート(5%CO2)した後、新たに各ウェルにHG培地又はLG培地を加え、さらに48時間37℃でインキュベート(5%CO2)した。こうして得られた培養上清を管腔形成アッセイに用いた。なお、コントロールとして、ARPE-19細胞を培養していないHG培地、及びARPE-19細胞を培養したが、siRNAを添加しなかったHG培地を用いた。
管腔形成アッセイ終了後、培地を除去し、HBSS培地で2回洗浄した。その後、カルセインAM(Molecular Probes, Eugene, OR;カタログNo,C3099)含有HBSSを各ウェルに入れ、30分間37℃でインキュベート(5%CO2)した。その後、HBSS培地で2回洗浄した。その後、蛍光顕微鏡下で、網膜血管内皮細胞の管腔形成を観察した(倍率×4)。各ウェルに存在する全ての管腔の長さを、Win Roof software (MITANI, corporation, Jpan)を用いて測定した。結果を、図5A及び図5Bに示す。なお、管腔の長さは、コントロール(ARPE-19細胞を培養していないHG培地)を100とした時に比率で示した。
その結果、網膜色素上皮細胞において、高濃度グルコースによってアンジオポエチン関連タンパク質4を誘導しても、アンジオポエチン関連タンパク質4siRNAを添加しておくと、その培養上清は、網膜血管内皮細胞の管腔形成を促進しないことが明らかになった。
従って、アンジオポエチン関連タンパク質4が、網膜色素上皮細胞から分泌され、血管新生を誘導する液性因子であることが証明された。
(6)グルコース存在下におけるPPARγアゴニスト処理後のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現の変化
グルコースを含有する培地に、PPARγアゴニストであるチアゾリジン誘導体の一種シグリタゾンを入れ、このような培地において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現がどのように変化するのかを調べた。
(i)PPARγアゴニスト(シグリタゾン)処理後のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現
まず、6cmの培養プレートに上記(1)(vi)で作製したLG培地又はHG培地を入れ、この中に約2×106個のARPE-19細胞を入れ、37℃でインキュベート(5%CO2)した。ARPE-19細胞が80%のコンフルエンスに達した後に、これらの培地に30μMのシグリタゾンを入れ、48時間37℃でインキュベート(5%CO2)した。なお、シグリタゾンを添加しないものをコントロールとした。
48時間後、培地を除去し、ピペッティングによって各々の培地で培養されたARPE-19細胞を回収し、TRIzol試薬(Invitrogen, Carlsabad, CA, USA)を用いて、ARPE-19由来のRNAを抽出した。そして、上記(2)に記載のリアルタイムPCR法を用いて、アンジオポエチン関連タンパク質4mRNA量を測定した。なお、コントロールは、ヒトβアクチンmRNA量とした。
グラフに示すように、低濃度のグルコースを含有する培地では、ARPE-19細胞にシグリタゾンを添加すると、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現は増加した(図6)。これより、PPARγを刺激すると、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現が増加することが明らかになった。なお、高濃度のグルコースを含有する培地では、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現が既に増加しているため、シグリタゾンを添加しても、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現の変化は認められないと考えられた。
(ii)PPARαアゴニスト(WY14643)処理後のアンジオポエチン関連タンパク質4の発現
(6)(i)において、30μMシグリタゾンを10μM WY14643に変えた以外は、同様の方法を用いて、各々のアンジオポエチン関連タンパク質4mRNA量を測定した。
その結果、低濃度のグルコースを含有する培地及び高濃度のグルコースを含有する培地共に、WY14643によってアンジオポエチン関連タンパク質4の発現は変化しないことが分かった(図7)。この結果は、PPARαアゴニストの抗糖尿病薬を投与した場合には、網膜の血管新生は起こらず、糖尿病網膜症は増悪しないという臨床上の観察結果に一致する。
(iii)PPARγ及びHIF1-αの発現抑制
次に、(5)と同様に、以下のsiRNAを用い、網膜色素上皮細胞において、PPARγ及びHIF1-αの発現抑制を行った。なお、コントロールには、EGR-1siRNA及びLamin A/C siRNAを用いた。
PPARγ siRNA(Dharmacon, Inc.; siGENOME SMART poolカタログNo.M_003436-01)
HIF1-α siRNA(Dharmacon, Inc.; siGENOME SMART poolカタログNo.M_004018-02)
EGR-1 siRNA(Dharmacon, Inc.; siGENOME SMART poolカタログNo.M_006526-01)
Lamin A/C siRNA(Dharmacon, Inc.; siGENOME SMART poolカタログNo.M_001050-01-05)
トランスフェクション48時間後、培地を除去し、ピペッティングによって、ARPE-19細胞を回収し、TRIzol試薬(Invitrogen, Carlsabad, CA, USA)を用いて、ARPE-19由来のRNAを抽出した。そして、上記のリアルタイムPCR法を用いて、アンジオポエチン関連タンパク質4mRNA量を測定した。なお、コントロールは、ヒトβアクチンmRNA量とした。
その結果、図8に示すように、PPARγsiRNAを添加した群において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現が抑制された。従って、PPARγは、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を正に制御していることが明らかになり、(i)の結果と一致した。
また、HIF1-αがアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を正に制御していることが明らかになった。
本発明の一実施例において、高濃度のグルコース又は低濃度のグルコースを培地に添加した時の、網膜血管内皮細胞の管腔の長さを測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、高濃度のグルコース又は低濃度のグルコースを培地に添加した時の、網膜血管内皮細胞の管腔形成を観察した図である。 本発明の一実施例において、異なる濃度のグルコースを培地に添加した時の、ARPE-19細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4のmRNAの発現を測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、高濃度のグルコースを培地に添加した時の、網膜色素上皮細胞(ARPE-19細胞)におけるアンジオポエチン関連タンパク質4のmRNAの発現を経時的に測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、アンジオポエチン関連タンパク質4又はVEGFを培地に添加した時の、網膜血管内皮細胞の遊走を測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、アンジオポエチン関連タンパク質4又はVEGFを培地に添加した時の、網膜血管内皮細胞の浸潤を測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、アンジオポエチン関連タンパク質4又はVEGFを培地に添加した時の、網膜血管内皮細胞の増殖を測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、アンジオポエチン関連タンパク質4又はVEGFを培地に添加した時の、網膜血管内皮細胞の管腔の長さを測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、アンジオポエチン関連タンパク質4又はVEGFを培地に添加した時の、網膜血管内皮細胞の管腔形成を観察した図である。 本発明の一実施例において、アンジオポエチン関連タンパク質4 siRNA又はVEGF siRNAを培地に添加した時の、網膜血管内皮細胞の管腔の長さを測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例においてアンジオポエチン関連タンパク質4siRNA又はVEGF siRNAを培地に添加した時の、網膜血管内皮細胞の管腔形成を観察した図である。 本発明の一実施例において、高濃度のグルコース又は低濃度のグルコースを培地に添加し、各々の培地にPPAR γアゴニスト(シグリタゾン)を入れた時の、ARPE-19細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4のmRNAの発現を測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、高濃度のグルコース又は低濃度のグルコースを培地に添加し、各々の培地にPPAR αアゴニスト(WY14643)を入れた時の、ARPE-19細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4のmRNAの発現を測定した結果を示す図である。 本発明の一実施例において、HIF−1α siRNA、PPARγ siRNA又はEGR1 siRNAを培地に添加した時の、網膜色素上皮細胞(ARPE-19細胞)におけるアンジオポエチン関連タンパク質4のmRNAの発現を測定した結果を示す図である。

Claims (31)

  1. グルコースを有効成分として含有するアンジオポエチン関連タンパク質4(angiopoietin-like 4)の発現亢進剤。
  2. 網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させることを特徴とする請求項1に記載の発現亢進剤。
  3. アンジオポエチン関連タンパク質4を有効成分として含有する網膜血管新生促進剤。
  4. 前記アンジオポエチン関連タンパク質4が、網膜色素上皮細胞由来であることを特徴とする請求項3に記載の網膜血管新生促進剤。
  5. アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を抑制するアンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を有効成分として含有する網膜血管新生抑制剤。
  6. 前記アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子は、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制することを特徴とする請求項5に記載の網膜血管新生抑制剤。
  7. 網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防・治療剤であって、
    アンジオポエチン関連タンパク質4の機能を抑制するアンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を有効成分として含有することを特徴とする予防・治療剤。
  8. 前記疾患が、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障であることを特徴とする請求項7に記載の予防・治療剤。
  9. 前記アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子は、網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制することを特徴とする請求項7又は8に記載の予防・治療剤。
  10. HIF1α又はPPARγの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有するアンジオポエチン関連タンパク質4発現亢進剤。
  11. HIF1αの発現を亢進させる発現亢進剤又はPPARγのアゴニストであることを特徴とする請求項10に記載の発現亢進剤。
  12. HIF1α又はPPARγの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有するアンジオポエチン関連タンパク質4発現抑制剤。
  13. HIF1α又はPPARγの発現を抑制する発現抑制剤又はPPARγのアンタゴニストであることを特徴とする請求項12に記載の発現抑制剤。
  14. 前記発現抑制剤が、siRNAを含有することを特徴とする請求項13に記載の発現抑制剤。
  15. HIF1α又はPPARγの機能を増強する機能増強剤を有効成分として含有する網膜血管新生促進剤。
  16. HIF1αの発現を亢進させる発現亢進剤又はPPARγのアゴニストであることを特徴とする請求項15に記載の網膜血管新生促進剤。
  17. HIF1α又はPPARγの機能を抑制する機能抑制剤を有効成分として含有する網膜血管新生抑制剤。
  18. HIF1α又はPPARγの発現を抑制する発現抑制剤又はPPARγのアンタゴニストであることを特徴とする請求項17に記載の網膜血管新生抑制剤。
  19. 前記発現抑制剤が、siRNAを含有することを特徴とする請求項17に記載の網膜血管新生抑制剤。
  20. 網膜色素上皮細胞を含む培養細胞において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させる方法であって、
    グルコースを前記培養細胞に投与すること、
    を特徴とする方法。
  21. 網膜血管内皮細胞を含む培養細胞において、血管新生を促進する方法であって、
    アンジオポエチン関連タンパク質4を前記培養細胞に投与すること、
    を特徴とする方法。
  22. 前記アンジオポエチン関連タンパク質4が、網膜色素上皮細胞由来のものであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
  23. 網膜血管内皮細胞を含む培養細胞において、血管新生を抑制する方法であって、
    アンジオポエチン関連タンパク質4抑制因子を前記培養細胞に投与すること、
    を特徴とする方法。
  24. 網膜色素上皮細胞を含む培養細胞において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を亢進させる方法であって、
    HIF1α又はPPARγの機能を増強する機能増強剤を前記培養細胞に投与すること、
    を特徴とする方法。
  25. 網膜色素上皮細胞を含む培養細胞において、アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を抑制する方法であって、
    HIF1α又はPPARγの機能を抑制する抑制因子を前記培養細胞に投与すること、
    を特徴とする方法。
  26. 網膜の血管新生に起因する疾患を診断する診断キットであって、
    アンジオポエチン関連タンパク質4の発現を診断マーカーとして使用すること、
    を特徴とする診断キット。
  27. 前記疾患が、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障であることを特徴とする請求項26に記載の診断キット。
  28. 網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防又は治療に効果を有する物質のスクリーニング方法であって、
    基準値以上の濃度のグルコース存在下において網膜色素上皮細胞を培養し、前記網膜色素上皮細胞に被験物質を投与し、前記網膜色素上皮細胞におけるアンジオポエチン関連タンパク質4を測定する工程を含むこと、
    を特徴とするスクリーニング方法。
  29. 前記疾患が、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障であることを特徴とする請求項28に記載のスクリーニング方法。
  30. 網膜の血管新生に起因する疾患に対する予防又は治療に効果を有する物質のスクリーニングに使用するアッセイ系であって、
    基準値以上の濃度のグルコース存在下において培養した網膜色素上皮細胞を含むこと、
    を特徴とするアッセイ系。
  31. 前記疾患が、糖尿病網膜症又は血管新生緑内障であることを特徴とする請求項30に記載のアッセイ系。
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