JP2015231809A - ゴムクローラおよびゴムクローラの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のゴムクローラは、加硫済みゴムからなるクローラ本体1に、加硫済みゴムからなるラグ部材2およびガイド部材3の少なくともいずれか一方が接着手段Mによって接着されたゴムクローラ10であって、接着手段Mの厚さdは、0.5mm以下である。
【選択図】図1
Description
本発明に係る、ゴムクローラによれば、ラグ部材やガイド部材を別体として接着した、耐久性に優れたゴムクローラを提供することができる。
この場合、ラグ部材およびガイド部材を強力に接着することができる。
この場合、加硫成形品である、クローラ本体、ラグ部材およびガイド部材の相互間がそれぞれ、より強力に接着されたゴムクローラとなる。
本発明に係る、ゴムクローラの製造方法によれば、ラグ部材やガイド部材を別体として接着した、耐久性に優れたゴムクローラを得ることができる。
図1(a)において、符号10は、本発明の一実施形態である、ゴムクローラである。ゴムクローラ10は、加硫済みゴムからなる無端状のクローラ本体1に、この実施形態では、加硫済みゴムからなる複数のラグ部材2および複数のガイド部材3が接着手段Mによって接着されている。接着手段Mは、この実施形態では、加硫ゴム中に存在する炭素−炭素結合の少なくとも一つの炭素原子と結合し得る組成物を含んでいる。接着手段Mには、例えば、接着剤、接着シートが含まれる。図1(a)中、符号M2は、クローラ本体1とラグ部材2との間を接着する接着手段である。また、符号M3は、クローラ本体1とガイド部材3との間を接着する接着手段である。本実施形態では、接着手段M2の厚さd2は、0mmを含まない0.5mm以下の厚さである(0<d2≦0.5mm)。厚さd2の好適な範囲としては、10〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmの範囲が挙げられる。同様に、本実施形態では、接着手段M3の厚さd3は、0mmを含まない0.5mm以下の厚さ(0<d3≦0.5mm)である。厚さd3の好適な範囲としては、10〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmの範囲が挙げられる。
本発明のゴムクローラに用いられる前記組成物の一例は、ポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、及びラジカル発生剤(C)を配合してなり、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)が例えば0.2以上かつ0.78以下である、組成物である。
ポリチオール化合物(A)の一部とイソシアネート基含有化合物(B)とがウレタン化反応を起こすことにより、前記組成物が強固に硬化すると考えられる。また、ポリチオール化合物(A)の他の一部が、ラジカル発生剤(C)と反応してチイルラジカルが生じ、このチイルラジカルが、ゴム中に存在する炭素−炭素二重結合と反応すると考えられる。このようなチオール・エン反応により、前記組成物がゴムに化学的に結合することにより、前記組成物がゴムに強力に接着すると考えられる。特に、未加硫ゴムのみならず加硫ゴムにも炭素−炭素二重結合が存在するため、前記組成物によると、ゴム特に加硫ゴムを強力に接着することができると考えられる。
また、ゴム中に存在する炭素−炭素結合主鎖からの水素引き抜き反応により、ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−炭素結合の炭素原子とが化学的に結合すると考えられる。したがって、必ずしもゴム中に炭素−炭素二重結合が存在しなくても良い。
なお、本明細書において、ポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、ラジカル発生剤(C)、ウレタン化触媒(D)及び表面調整剤(E)を、それぞれ、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び成分(E)ということがある。
前記組成物において、ポリチオール化合物(A)とは、1分子中にチオール基を2つ以上有する化合物のことをいう。
ポリチオール化合物(A)には特に制限はないが、接着性を向上させる観点から、1分子中にチオール基を2〜6個有するものが好ましい。
また、ポリチオール化合物(A)には、1級、2級及び3級のものが含まれるが、接着性を向上させる観点から、1級がより好ましい。
ポリチオール化合物(A)の分子量は、接着性を向上させる観点から、好ましくは3000以下であり、より好ましくは2000以下であり、更に好ましくは1000以下であり、より更に好ましくは900以下であり、より更に好ましくは800以下である。なお、ポリチオール化合物(A)がポリマーの場合、分子量とは、スチレン換算の数平均分子量のことをいう。
ここで、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族ポリチオールとは、1分子中にチオール基を2つ以上有する、ヘテロ原子を含んでもよい脂肪族化合物のことをいう。また、ヘテロ原子を含んでいてもよい芳香族ポリチオールとは、1分子中にチオール基を2つ以上有する、ヘテロ原子を含んでもよい芳香族化合物のことをいう。
ヘテロ原子は、接着力の向上の観点から、好ましくは酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン原子、ケイ素から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは酸素、窒素、硫黄、リン及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種であり、更に好ましくは酸素、窒素及び硫黄から選択される少なくとも1種である。
なお、上記の分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールとしては、炭素数2〜20のアルカンジオール、ポリ(オキシアルキレン)グリコール、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
チオール基以外の部分が脂肪族炭化水素であるポリチオールの例としては、炭素数2〜20のアルカンジチオールがある。
前記炭素数2〜20のアルカンジチオールとしては、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール等が挙げられる。
チオグリコール酸エステル化物としては、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、1,6−ヘキサンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等が挙げられる。
メルカプト脂肪酸エステル化物としては、接着性の向上の観点から、1級チオール基を有するメルカプト脂肪酸エステル化物が好ましく、分子内に水酸基2〜6個を有する多価アルコールの、β−メルカプトプロピオン酸エステル化物がより好ましい。また、1級チオール基を有するメルカプト脂肪酸エステル化物は、接着性の向上の観点から、1分子中におけるチオール基の数が4〜6個であることが好ましく、4個又は5個であることが好ましく、4個であることがより好ましい。
イソシアヌレート化合物とチオールとを反応させてなるチオールイソシアヌレート化合物としては、接着力の向上の観点から、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物が好ましい。また、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、接着性の向上の観点から、1分子中におけるチオール基の数が2〜4個であることが好ましく、3個であることがより好ましい。
上記の1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)が好ましい。
チオール基で変性されたシリコーンとしては、商品名KF-2001、KF-2004、X-22-167B(信越化学工業)、SMS042、SMS022(Gelest社)、PS849、PS850(UCT社)等が挙げられる。
芳香族ポリチオールとしては、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等が挙げられる。
イソシアネート基含有化合物(B)としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらの変性体等が挙げられる。
すなわち、TMPアダクト型変性体としては、TMPとTDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPとXDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPと水素化XDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPとIPDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、TMPとHDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体、及びTMPとMDIとの反応により得られるTMPアダクト型変性体が好ましい。
また、イソシアヌレート型変性体としては、HDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、IPDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、TDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、及び水素化XDIの3量化により得られるイソシアヌレート型変性体、が好ましい。
また、ビューレット型変性体としては、ウレアとHDIとの反応により得られるビューレット型変性体、が好ましい。
また、アロファネート型変性体としては、ウレタンとIPDIとの反応により得られるアロファネート型変性体が好ましい。
ここで、1級チオール基を有するβ−メルカプトプロピオン酸エステル化物としては、好ましくはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)及びジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)の少なくとも1種である。また、1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物としては、好ましくは1分子中におけるチオール基の数が3個である1級チオール基を有するチオールイソシアヌレート化合物であり、より好ましくはトリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)である。
ラジカル発生剤(C)としては、熱ラジカル発生剤及び光ラジカル発生剤の少なくとも1種を用いることができる。これらの中で、接着力の向上の観点及び透明ではない(光を通さない)ゴムを接着できるという観点から、熱ラジカル発生剤が好ましく、過酸化物からなる熱ラジカル発生剤がより好ましく、有機過酸化物からなる熱ラジカル発生剤が更に好ましい。
ラジカル発生剤(C)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
例えば分子内開裂型の光ラジカル発生剤が挙げられ、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル系光ラジカル発生剤;2,2−ジエトキシアセトフェノン、4'−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系光ラジカル発生剤;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4'−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4'−ドデシル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン系光ラジカル発生剤;ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−エチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン系光ラジカル発生剤;アシルフォスフィンオキサイド系光ラジカル発生剤等が挙げられる。
これらの光ラジカル発生剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明のゴムクローラに用いられる前記組成物は、更に任意成分が配合されてもよい。任意成分としては、ウレタン化触媒、表面調整剤、溶剤、バインダー、フィラー、顔料分散剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、乾燥防止剤、浸透剤、pH調整剤、金属封鎖剤、防菌防かび剤、界面活性剤、可塑剤、ワックス、レベリング剤等が挙げられる。
ウレタン化触媒(D)としては、任意のウレタン化触媒を用いることができる。該ウレタン化触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート、オクテン酸スズ、モノブチルスズオキシド等の有機スズ化合物;塩化第一スズ等の無機スズ化合物;オクテン酸鉛等の有機鉛化合物;ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、ベンジルジメチルアミン、2,2’−ジモルホリノエチルエーテル、N−メチルモルフォリン等のアミン類;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロ硫酸等の有機スルホン酸;硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸;ナトリウムアルコラート、水酸化リチウム、アルミニウムアルコラート、水酸化ナトリウム等の塩基類;テトラブチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン化合物;ビスマス化合物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは上記アミン類であり、より好ましくはトリエチレンジアミン(TEDA)である。これら触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
表面調整剤(E)としては、任意の表面調整剤を使用することができる。該表面調整剤としては、アクリル系、ビニル系、シリコーン系、フッ素系などが挙げられる。これらの中でも、相溶性と表面張力低下能の観点からシリコーン系が好ましい。
溶剤としては、他の配合成分と反応しないものであれば特に制限はなく、芳香族溶媒や脂肪族溶媒が挙げられる。
芳香族溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族溶媒としては、ヘキサン等が挙げられる。
本発明のゴムクローラの製造方法に用いられる前記組成物に配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数に対する、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数の比(イソシアネート基/チオール基)は、0.20以上0.78以下であることが好ましい。当該比(イソシアネート基/チオール基)が0.20未満であると、前記組成物が十分に強固に硬化せず、接着強度が小さくなる。また、当該比(イソシアネート基/チオール基)が0.78よりも大きいと、チオール基が少ないために、チオール基とゴム部材の炭素−炭素二重結合との間でチオール・エン反応が十分に行われず、前記組成物をゴム部材に強固に接着させることができなくなることがあり、接着強度が小さくなる虞がある。同様の観点から、当該比(イソシアネート基/チオール基)は、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.7以下であり、さらに好ましくは0.4〜0.7である。
ここで、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数は、配合されるポリチオール化合物(A)のモル数に、ポリチオール化合物(A)の1分子が有するチオール基数を乗じることにより算出することができる。
また、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数は、JIS K1603−1 B法により測定することができる。
更に、上記モル数の比(イソシアネート基/チオール基)は、上記のようにして得られる、配合されるイソシアネート基含有化合物(B)に含まれるイソシアネート基の合計モル数を、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数で除することにより求めることができる。
ここで、配合される炭素−炭素二重結合を含む化合物に含まれる炭素−炭素二重結合の合計モル数は、配合される当該化合物のモル数に、当該化合物の1分子が有する炭素−炭素二重結合の数を乗じることにより求めることができる。
また、上記モル数の比(炭素−炭素二重結合/チオール基)は、上記のようにして得られる、配合される炭素−炭素二重結合を含む化合物に含まれる炭素−炭素二重結合の合計モル数を、配合されるポリチオール化合物(A)に含まれるチオール基の合計モル数で除することにより求めることができる。
同様の観点から、成分(A)〜(E)の合計含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
本発明のゴムクローラの製造方法に使用可能な、接着手段Mの一例としての接着剤は、上記の組成物を含む。この接着剤は、本発明の目的を阻害しない範囲内において、上記の組成物以外の成分を含んでもよい。しかし、本発明の効果を良好に発現させる観点から、接着剤中における組成物の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
本発明のゴムクローラの製造方法に使用可能な、接着手段Mの他の一例としての接着シートは、前述した組成物を用いてなるものである。
この接着シートは、剥離紙や剥離フィルム等の剥離シート上に前記組成物を塗布し、シート形状を保持することにより、好適に製造することができる。この保持により、前記組成物中のチオール基とイソシアネート基の少なくとも一部がチオールウレタン反応することにより、シート形状になるものと考えられる。なお、塗布後、常温で放置することにより、接着シートを好適に製造することができる。また、塗布後、ラジカル発生剤によるラジカル反応が開始しない程度に加熱することにより、接着シートを製造してもよい。
塗布後の放置又は加熱温度は、好ましくは−30〜60°Cであり、より好ましくは−20〜40°C、更に好ましくは0〜40°Cである。
塗布後、放置又は加熱する前の状態における、剥離シート及びその上の前記組成物の合計厚さは、接着する対象や要求される接着強度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜1000μmであり、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmである。
保持時間は、ウレタン化触媒の量により調整することができる。シート化形成の作業性及び接着作業時にシート形状を維持し得る程度に保形させる観点から、好ましくは1分以上であり、より好ましくは3分以上であり、更に好ましくは30分以上であり、より更に好ましくは60分以上である。また、保持温度は、通常室温でシート化可能であるが、材料中のラジカル発生剤が開裂しない程度に加温することも可能である。以上の観点から好ましくは0〜60°Cであり、より好ましくは15〜40°Cである。なお、剥離シートは使用の際に取り除かれる。
前記接着シートの厚さは、接着する対象や要求される接着強度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜1000μmであり、好ましくは、10〜300μmであり、より好ましくは、30〜200μmである。なお、当該接着シートを用いるときには、当該接着シートを剥離シートから剥離してから又は剥離しながら用いることができる。
図1(b)において、本発明のゴムクローラおよびその製造方法に用いられるクローラ本体1は、完成品としてのゴムクローラ10の本体である。クローラ本体1は、帯状の部材の両端が連結された無端状の部材である。クローラ本体1の内周面1bは、スプロケット(動輪)などに巻き掛けられる。クローラ本体1は、予め未加硫ゴムを用いて加硫成形された加硫成形品である。本実施形態では、複数のラグ部材2は、クローラ本体1と同様、予め未加硫ゴムを用いて加硫成形された加硫成形品である。ラグ部材2はそれぞれ、クローラ本体1の外周面1aに対して、クローラ本体1の周方向に間隔を置いて接着される。ラグ部材2はそれぞれ、路面等に接地可能である。本実施形態では、複数のガイド部材3は、クローラ本体1と同様、予め未加硫ゴムを用いて加硫成形された加硫成形品である。ガイド部材3はそれぞれ、クローラ本体1の内周面1bに対して、クローラ本体1の周方向に間隔を置いて接着される。ガイド部材3は、スプロケットと噛み合って、スプロケットの回転力をクローラ本体1に伝達する。
ただし、前記加硫ゴムが、炭素−炭素二重結合を有しなくても、クローラ本体1等を得ることができると推測される。これは前述したように、ポリチオール化合物(A)による、加硫ゴム中に存在する炭素−炭素結合主鎖からの水素引き抜き反応により、ポリチオール化合物(A)のチオール基の硫黄原子と炭素−炭素結合の炭素原子とが化学的に結合するためと推測される。しかし、接着力の向上の観点からは、前記加硫ゴムが、炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。
次に、接着手段Mの一例として、前記接着剤を用いてゴムクローラ10を製造する方法について、図1(b)を参照して説明する。
本実施形態の製造方法では先ず、加硫済みのゴムからなるクローラ本体1を準備するととともに、同じく加硫済みのゴムからなるラグ部材2およびガイド部材3をそれぞれ、複数準備する。次いで、複数のラグ部材2をクローラ本体1の外周面1aに接着するとともに、複数のガイド部材3をクローラ本体1の内周面1bに接着する。さらに詳細には、予め加硫成形された複数のラグ部材2のクローラ本体1との接着面(接着剤塗布面)2aに、前記接着剤を塗布する。次いで、必要に応じて所定時間放置した後、クローラ本体1の外周面1aに対して、ラグ部材2の接着面2aを面接触させる。ガイド部材3についても同様で、予め加硫成形された複数のガイド部材3のクローラ本体1との接着面(接着剤塗布面)3bに、前記接着剤を塗布する。次いで、必要に応じて所定時間放置した後、クローラ本体1の内周面1bに対して、ガイド部材3の接着面3aを面接触させる。このようにして、クローラ本体1にラグ部材2およびガイド部材3を配置することにより、図1(a)に示すような形状の、ゴムクローラ10の半完成品を得る。
また、半完成品を得るに際しては、ラグ部材2およびガイド部材3の取り付け順序は特に限定されない。また、前記接着剤は、クローラ本体1の外周面1aおよび内周面1bに塗布されていても良い。さらに、ラグ部材2およびガイド部材3は、いずれか一方をクローラ本体1に対して一体に設けておくことができる。すなわち、本発明では、ラグ部材2およびガイド部材3の少なくともいずれか一方を、前記接着剤を用いてクローラ本体1に対して接着することできる。
また、半完成品にプレス圧を加える場合、接着力を向上させると共に半完成品から接着剤が漏出することを防止又は抑制する観点から、プレス圧は、好ましくは0〜5MPaであり、より好ましくは0〜2.5MPaであり、更に好ましくは0〜1MPaである。また、同様の観点から、プレス時間は、好ましくは5〜120分であり、より好ましくは10〜60分であり、更に好ましくは15〜45分である。
前記接着剤がラジカル発生剤として光ラジカル発生剤を含んでいる場合、硬化は光照射により行うことが好ましい。接着力の向上及びコスト低減の観点から、光源としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線などの電磁波、及び、α線、γ線、電子線などの粒子線から選択される少なくとも1種を好適に用いることができ、紫外線ランプをより好適に用いることができる。また、同様の観点から、光照射時間は、好ましくは数秒〜数十秒であり、より好ましくは1秒〜40秒、更に好ましくは3秒〜20秒である。
なお、加熱によって硬化させた場合にも強力な接着力が得られることは、接着剤へ十分な光照射をし難い場合に、加熱する方法を採用できる点で有益である。
次に、接着手段Mの他の例として、前記接着シートを用いてゴムクローラ10を製造する方法について説明する。
図1(b)を参照して説明するように、接着手段Mとして接着剤を用いたときと同様、ラグ部材2については、ラグ部材2の接着面2aとクローラ本体1の外周面1aとの間に、前記接着シートから剥離シートを剥がしたのちの前記組成物を介在させる。ガイド部材3についても同様で、ガイド部材3の接着面3bとクローラ本体1の内周面1bとの間に、前記接着シートから剥離シートを剥がしたのちの前記組成物を介在させる。このようにして、クローラ本体1にラグ部材2およびガイド部材3を配置することにより、図1(a)に示すような、ゴムクローラ10の半完成品を得る。
なお、それ以外のプレス条件(プレス時間)や、硬化条件(加熱温度、加熱時間、光源、及び光照射時間)は、前述した接着剤を用いる場合と同様である。
ゴムクローラは無限軌道帯であり、複数の車輪に巻き掛けられている。ゴムクローラが駆動輪で巻き取られると、ゴムクローラの内周側には圧縮応力が生じる一方、外周側には引っ張り応力が生じる。そして転輪を通過するときには、ゴムクローラに生じた曲げは解消される。このように駆動輪で巻き取られたり転輪面で伸ばされたりすることにより、ゴムクローラには繰り返し曲げが生じる。このため、ゴムクローラの厚みが厚くなればなるほど、高い歪が表面に生じることで、ゴムクローラの疲労を早めることになる。ゴムクローラの厚さは、接着手段(接着部分)M2の厚さd2および接着手段(接着部分)M3の厚さd3に比例し、また、接着手段M2の厚さd2および接着手段M3の厚さd3が厚いと、スプロケットにゴムクローラ10を巻き掛けたときに、接着手段M2や接着手段M3に生じる歪みそのものが大きくなり、この歪みの増大は、接着手段M2や接着手段M3の疲労を早めることになる。
すなわち、ゴムクローラの耐久性は、接着手段M2の厚さd2や接着手段M3の厚さd3に起因することが明らかになった。
理由1:ゴムの成形上、厚さが0.6mm以下の場合、精度の良い成形を行うことが困難である。
理由2:加硫接着では、接着ゴムに多量の硫黄を配合させることにより、接着の対象とする加硫ゴムに硫黄を移行させる必要がある。このため、接着ゴムの厚さを薄くし過ぎると、硫黄の絶対量が減少し、接着強度を維持することができない。
従って、本実施形態の製造方法を用いれば、接着部分(接着手段M)の厚みが抑えられることにより、小型軽量化が図られて耐久性に優れたゴムクローラ10を製造することができる。
これに対し、上記組成物を含有する接着手段Mを用いて接着を行う場合、加硫接着で必要な、バフ処理等の後処理や、別体のシート部材を用いた前処理が不要となる。バフ処理が不要となることで、例えば、バフ処理に要する工数やバフ粉の処理が不要となる。また、別体のシート部材を用いた前処理が不要となることで、例えば、シート部材の材料代、産業廃棄代、シート部材を剥がすのに要する工数が不要となる。
従って、本実施形態の製造方法を用いれば、製造コストおよび製造工数の削減等を図ることができる。
このように、本実施形態の製造方法によれば、金型を用いた一体加硫成形や加硫接着を行うことなく、ゴムクローラ10を得ることができる。
このように、本実施形態のゴムクローラ10は、金型を用いた一体加硫成形や加硫接着を行うことなく、製造可能な、ゴムクローラとなる。
図3(a)において、符号20は、複数のラグ部材2を無端状に連結したラグベルトである。ラグベルト20は、無端状の薄層ベルト4と、その外周面に周方向に間隔を置いて配置される複数のラグ部材2とを、未加硫ゴムにより、予め一体に加硫成形したものである。
本実施形態の製造方法では、ラグベルト20を用いることにより、クローラ本体1にラグ部材2を接着する。すなわち、図3(b)に示すように、クローラ本体1の外周面1aとラグベルト20の内周面20aとを接着手段M(M2)を用いて接着する。さらに具体的な製造方法については、前述した製造方法におけるラグ部材2の接着面2aがラグベルト20の内周面20aとなることで、クローラ本体1の外周面1a全体に接着される点以外は、前述した製造方法と同様である。
本実施形態の製造方法では、ガイドベルト30を用いることにより、クローラ本体1にガイド部材3を接着する。すなわち、図3(d)に示すように、クローラ本体1の内周面1bとガイドベルト30の外周面30bとを接着手段M(M3)を用いて接着する。さらに具体的な製造方法については、ラグベルト20と同様、前述した製造方法におけるガイド部材3の接着面3bがガイドベルト30の外周面30bとなることで、クローラ本体1の内周面1b全体に接着される点以外は、前述した製造方法と同様である。
原料等としては、次のものを用いることができる。
<ポリチオール化合物(A)(成分(A))>
ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP):SC有機化学株式会社製
ジペンタエリスリトールヘキサキス(3―メルカプトプロピオネート)(DPMP):SC有機化学株式会社製
トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC):SC有機化学株式会社製、商品名「TEMPIC」
HDIビューレット変性型イソシアネート:住友バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールN3200」
HDIイソシアヌレート変性型イソシアネート:日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHXLV」
IPDIイソシアヌレート変性型イソシアネート:住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールZ4470BA」
IPDIアロファネート変性型イソシアネート:住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールXP2565」
TDI TMPアダクト変性型イソシアネート:住化バイエルウレタン(株)製、商品名「デスモジュールL75(C)」
TDIイソシアヌレート変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−204」
XDI TMPアダクト変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−110N」
H6XDI TMPアダクト変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−120N」
H6XDI イソシアヌレート変性型イソシアネート:三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「D−127N」
IPDI:エボニックデグサジャパン(株)製、商品名「VESTANAT IPDI」、官能基当量111
t−ブチル−2−エチルペルオキシヘキサノアート:日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルO」
ジラウロイルパーオキサイド:日本油脂株式会社製、商品名「パーロイルL」
1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート:日本油脂株式会社製、商品名「パーオクタO」
1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサノン:日本油脂株式会社製、商品名「パーヘキサHC」
ジ−t―ブチルパーオキサイド:日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルD」
t−ブチルクミルパーオキサイド:日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルC」
トリエチレンジアミン(TEDA): Air Products社製、商品名「DABCO 33LV catalyst」
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとポリエーテルの混合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK−307」、含有量100%
これらを用いることで、十分な接着力を得ることができる。
1a 外周面
1b 内周面
2 ラグ部材
2a 接着面
2e 先端
2t 傾斜面
3 ガイド部材
3b 接着面
3e 先端
3t 傾斜面
10 ゴムクローラ
10´ ゴムクローラ
20 ラグベルト
30 ガイドベルト
M 接着手段(接着剤、接着シート)
M2 接着手段
d2 厚さ
M3 接着手段
d3 厚さ
Claims (5)
- 加硫済みゴムからなるクローラ本体に、加硫済みゴムからなるラグ部材およびガイド部材の少なくともいずれか一方が接着手段によって接着されたゴムクローラであって、
前記接着手段の厚さが、0.5mm以下であることを特徴とする、ゴムクローラ。 - 請求項1において、前記接着手段は、ゴム中に存在する炭素−炭素結合の少なくとも一つの炭素原子と結合し得る組成物を含むものである、ゴムクローラ。
- 請求項2において、前記組成物と結合し得る前記炭素−炭素結合は、炭素−炭素単結合および炭素−炭素二重結合から選択される1種以上の結合である、ゴムクローラ。
- 請求項2または3において、前記組成物は、少なくともポリチオール化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)およびラジカル発生剤(C)を配合してなる組成物である、ゴムクローラ。
- 加硫済みゴムからなるクローラ本体に、加硫済みゴムからなるラグ部材およびガイド部材の少なくともいずれか一方を接着手段によって接着するゴムクローラの製造方法であって、
製造されたゴムクローラの前記接着手段の厚さが0.5mm以下になるように、当該接着手段により、前記ラグ部材および前記ガイド部材の少なくともいずれか一方を接着したことを特徴とする、ゴムクローラの製造方法。
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