JP2015231597A - 鉄鋼系廃水の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】懸濁物質を除去した処理水を冷却水として再使用する系の、粗大SSと微細SSとが併存している廃水中の懸濁物質の分離除去を極めて簡便に行うと同時に、処理水中に溶存しているカルシウムによるスケール析出を抑制する鉄鋼系廃水の処理方法の提供。【解決手段】懸濁物質を除去処理後の処理水を冷却水として使用する系の懸濁物質を含む鉄鋼系廃水の処理において、粗大SSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、少なくとも1種の有機凝集剤が共存する状態を生じさせ、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させ、これらの懸濁物質を同時に除去し、更に、懸濁物質を除去した後の処理水のpHが8.3以下となるようにすることで、該処理水を冷却水として循環使用した系内におけるカルシウムによるスケール析出を抑制するように構成した鉄鋼系廃水の処理方法。【選択図】なし

Description

本発明は、鉄鋼系廃水の処理方法に関する。より詳しくは、懸濁物質を除去処理後に処理水を再度冷却水として使用される系の鉄鋼系廃水の処理において、製鉄所において大量に発生する粒径が50μm以上の金属粉や油分等の粗大な懸濁物質を含む廃水中から、これらの粗大な懸濁物質を含んだままの状態で懸濁物質を一挙に、しかも極めて効率よく凝集沈降させることができ、更に、処理水を循環使用した際に、高温で熱負荷が大きく、冷却水の濡れ・渇きが繰り返される箇所において生じ易いカルシウムスケールの発生を格段に抑制できる鉄鋼系廃水の処理方法に関する。
例えば、製鉄所において発生する廃水としては、連続鋳造工程における直接冷却廃水、圧延工程における直接冷却廃水、高炉、転炉、電炉工程における集塵廃水、屋外原料貯蔵ヤードから発生する雨水廃水などがあるが、その量は大量である。また、これらの廃水中には、下記に述べるように、いずれも、微細な懸濁物質のみならず、鉄等の金属粉や、水砕スラグ、石炭粉・コークス粉等の粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質(以下、粗大SSとも呼ぶ)が含まれている。このような廃水から懸濁物質を除去する場合は、先ず、粗大な懸濁物質を沈降分離等の方法で予め除去した後、除去後の廃水を種々の凝集剤を用いて更に処理して、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質(以下、微細SSとも呼ぶ)を、凝集沈降させて除去することが多い。
図5は、廃水中に含有されている上記したような粗大SSと微細SSとを含む懸濁物質(SS)を除去処理する従来の方法の一例であるが、鋼材圧延ラインの圧延工程における直接冷却廃水の処理の概要を模式的に示したものである。図5に示したように、直接冷却廃水は、SSを除去処理されて処理水となった後、再び直接冷却水として循環使用されている。したがって、その処理水は、懸濁物質の少ない、より清澄なものであることが望まれる。以下に、図5を参照して、従来の直接冷却廃水の処理手順を説明する。先ず、圧延工程では、冷却水がスプレーノズル等から鋼材表面へ噴射されて、鋼材を冷却する。その際に使用された冷却水は、鋼材圧延ラインの下に作られた、図5中に1で示したスケールスルースと呼ばれる開放樋に流れ落ちる。これが、直接冷却廃水と呼ばれているものであり、種々の懸濁物質を含むものになる。具体的には、この直接冷却廃水中には、鋼材表面から剥がれ落ちたスケールと呼ばれる50μm以上の粒径を持つ大き目の懸濁物質や、鋳造や圧延に用いられるロールの軸用潤滑油や圧延油や、これらのロールと鋼材との摩擦により生じる微細な鉄粉等が含まれており、少なくとも粗大SSと微細SSとが混在したものとなっている。なお、鋼材製造ラインにおける連続鋳造工程で生じる直接冷却廃水も同様の性状のものであり、その処理も、上記と同様に行われることが多い。
上記でスケールスルース1に流れ落ちた大量の直接冷却廃水は、図5中に3で示したスケールピットと呼ばれる槽へと激しい流れによって排水されて、ピット内に貯溜される。スケールピットは、直接冷却廃水中に存在している粒径の大きなスケール(粗大SS)の沈殿分離を主目的としたものであり、Over Flow Rateが約10m/hr以上程度の比較的小さな槽である。
先に述べたように、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水に対しての従来の処理では、先ず、このスケールピット3で、粒径の大きな懸濁物質(粗大SS)を沈殿分離し、その後に、粗大SSを取り除いた廃水を、後段に設けた凝集沈殿設備8やろ過機9、更には電磁フィルター(不図示)等で、主に粒径50μmに満たない微粒子(すなわち、微細SS)を除去処理することが行われている。そして、上記のようにして粗大SSと微細SSを除去後、処理水を冷却塔4などに通水することで冷却して、再び直接冷却用水として工場へ給水されている。
上記したようにして行われている従来の、直接冷却廃水からの懸濁物質の除去処理方法では、懸濁物質の沈降を効率よく行うことを目的として、凝集剤が使用されている。使用される凝集剤は、廃水の性状に応じて選択されており、更には各種の凝集剤を組み合わせて使用することが一般的になっている。例えば、鉄鋼圧延廃水の水処理方法に関する特許文献1では、鉄鋼圧延に使った水を回収してなる原水に、無機凝集剤であるポリ塩化アルミニウム(PAC)及び有機凝集剤を注入する工程を有することを前提とした上で、これらの注入量を調整することで、懸濁物質濃度を、より大幅且つ有利に低減させ得るとしている。また、特許文献2では、鉄鋼業等から生じる含油廃水を、PACで処理するにあたり、有機凝集剤であるカチオン系ディスパージョン型(共)重合体を添加し、次いで凝集沈澱処理及び脱水処理に付する方法が提案されている。また、特許文献3では、自動車工業廃水等の鉱油が混入した廃水において、特有のカチオン性有機凝集剤を添加した後、アニオン性有機凝集剤を添加し凝集させフロックを分離することを提案している。
更に、特許文献4では、先に述べた圧延工程における直接冷却廃水の水処理方法において、無機凝集剤の硫酸バンドやPACを使用すると、冷却水中の硫酸イオンや塩素イオンが増加し、冷却水と接触する圧延機、ロール等の機器類の腐食を促進し、冷却水中に微細な酸化鉄(Fe23)を発生させるという問題があり、このような酸化鉄は、凝集処理によっても十分に除去することはできないとしている。そして、特許文献4に記載の技術では、その対策として、アンモニア、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン又はアルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの重縮合物等のカチオン系有機凝集剤を用いて凝集処理し、該処理水に特有のスケール防止剤を添加することが有効であるとしている。
ここで、製鉄業では大量の冷却水を必要とすることから、直接冷却廃水は、鋼材圧延ラインの圧延工程で鋼材の冷却に使用された後、図5に示したように、処理水は、再び直接冷却水として循環使用されている。そして、循環使用を可能にするために、下記の処理が行われている。
製鉄所の連続鋳造工程や熱間圧延工程で使用する直接冷却系循環水は、該循環水中の懸濁物質や油分の影響で、ストレーナーの差圧上昇、スプレーノズル、スプレーチップの閉塞といった障害が発生するため、循環水中からの懸濁物質や油分の除去処理が必要となる。これに対し、従来の方法では、懸濁物質や油分の除去処理を、処理水が透明になるほどに十分に行うことは難しく、冷却水中に残存している懸濁物質や油分を原因とするスプレーノズル等の閉塞によって発生する問題を回避するため、系内を定期的に清掃することが行われている。
また、上記した懸濁物質や油分の除去処理や清掃作によっても、循環水中に溶存しているカルシウム等を除去することはできないため、溶存しているカルシウムに起因するスケールの析出は避けられず、スプレーノズル等に硬く固着した析出物によって生じる閉塞の問題を回避するために、析出物の除去作業が頻繁に行われている。上記した清掃作業や析出物の除去処理は、製鉄所の連続鋳造工程や熱間圧延工程の稼働を停止して行わなければならず、生産性を低減させる原因となっている。冷却水中に含有されたカルシウムが様々な部分でスケールとなって析出することが原因して、種々の運転不良を生じ、製造の安定性が損なわれる場合があることから、スケールの析出は重要な課題である。
これに対し、例えば、特許文献5では、製鉄所の循環式熱間圧延工程における直接冷却水系における圧延機内のスプレー部の、ロールやフレーム等の周辺機器の腐食及びスプレーノズルの閉塞等の障害を防止する方法において、塩素剤と特有のスケール防止剤とを併用することが有効であるとしている。
特開2012−139633号公報 特開2008−006382号公報 特許第4072075号公報 特許第3868521号公報 特許第3427859号公報
上記した製鉄所で使用されている直接冷却廃水中から懸濁物質を除去処理する際には、先に述べたように、無機系や有機系の各種凝集剤から選択された複数種類の凝集剤が使用されている。製鉄所における直接冷却廃水の量は大量であるため、凝集剤にかかる費用も多大になるので、より安価で、且つ少ない量で高い凝集沈降効率を達成する技術の開発が要望されている。従来の技術において、複数種類の凝集剤は別々に廃水に添加されるとしても、その添加地点は、通常は水処理設備内に入ってからである。例えば、図5に示した例では、水処理設備における最初の処理槽である先に述べたスケールピット3内に、粗大SSの沈殿をより早める目的で凝集剤を添加することもあるが、その際に用いられている凝集剤は、通常、無機凝集剤である。一方、有機凝集剤は、微細SSを凝集させて大きなフロックとし凝集沈降するために用いられており、図5に示した例では、スケールピット3内で粗大SSを沈殿した後における廃水中の微細SSを凝集沈殿させる目的で使用されている。また、図5に示した例では、例えば、凝集沈殿設備を構成する広大な沈殿池8に有機凝集剤を添加している。その場合に混合を促進させる方法としては、例えば、沈殿池内に撹拌機を設置する方法や、沈殿池の前段に撹拌槽を設け、撹拌槽で予め凝集剤を混合させる方法が行われている。これらの場合は、使用する有機凝集剤にかかる費用に加えて、撹拌機や撹拌槽の設備費及び維持費が別途必要となるので、撹拌機等の使用を伴わない懸濁物質の除去処理方法の開発が望まれる。
また、従来の処理方法では、先に述べたように、スケールピット内で粗大SSを沈殿した後、粗大SSを取り除いた廃水について、凝集沈殿設備で処理を行っているため、沈殿池、または、その沈殿池の前段に設けられた撹拌槽に流入する廃水中の懸濁物質は、前述した通り、粒径50μmに満たない微粒子(微細SS)となっている。このため、種々の凝集剤を用いてフロックとしたとしても、その沈降速度は、大きくても2〜3m/hr程度であり、迅速なものではない。したがって、従来の処理方法では、この微細SSからなるフロックの沈降速度を下回るOver Flow Rateを持つ大きさの広大な沈殿池が必要となる。このことは、処理設備の規模が極めて大きくなることを意味しており、この点が改善されれば、極めて効果的である。
また、先に述べたように、従来行われている、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水における懸濁物質の除去では、無機凝集剤のみ、または、無機凝集剤と有機凝集剤とを併用するため、無機凝集剤に由来するCl-やSO4 2-といった腐食性陰イオンが処理水に混入することが起こるため、下記の問題がある。これらの処理水を冷却塔等で冷却して、再び冷却水として工場へ給水するが、その際に水分が蒸発して上記した腐食性陰イオンの濃度が上昇する結果、循環系統の配管やスプレーノズルの腐食を促進する恐れがある。
また、直接冷却廃水における懸濁物質の除去処理では、油分と微細な鉄粉等の懸濁物質とが強固に吸着し合った高油分スラッジが沈殿池において大量に発生する。この高油分スラッジは、産業廃棄物として廃棄処理されるか、製鉄原料としてリサイクルされており、殆どの場合、濃縮、脱水する工程が必要となる。また、高油分スラッジは、濃縮不良や脱水不良が起こり易い上に、燃焼性が非常に悪いため、含まれる油分が焼結機内で充分に燃焼できずに油蒸気が発生し、排ガスの集塵装置内に蓄積されて自然発火や爆発を引き起こすことが懸念され、リサイクルには不向きである。
上記した高油分スラッジにおける濃縮不良や脱水不良といった課題に対する解決策としては、油分の含有量が少ない他のスラッジと混合させた後に濃縮脱水処理する方法や、焼却処理する方法がある。しかし、これらの方法は、高油分スラッジに混合させるための低油分スラッジの量に限りがある場合や、焼却炉の余力が大きくない場合は、採用することができないので、高油分スラッジの濃縮不良や脱水不良における問題に対する根本的な解決策とはなっていない。このため、従来の方法で大量に発生する高油分スラッジにおける課題の根本的な解決策を見出すことができれば、極めて有用である。
上記のような状況から、本発明者らは、特に、製鉄所において発生する多様な懸濁物質を含む廃水中の懸濁物質を除去処理する方法において、下記の効果が得られ、しかも、少なくとも、廃水中の粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とを、更には油分を含むものであったとしても、これらを、同時に一括して、スケールピット等のOver Flow Rateが10m/hr以上となる比較的小さな水槽で、分離、除去処理することを可能にする技術が提供できれば、極めて有用であると認識するに至った。特に、製鉄所において循環使用されることが多い、例えば、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水の懸濁物質を含有する各種廃水に対し、(1)簡略化された設備で処理して迅速に清澄な処理水を得ることができ、(2)維持管理費が低く、(3)できれば処理水への悪影響を生じ得る無機凝集剤を用いることなく、(4)廃水中に、金属やコークス等の懸濁物質に加えて油分が懸濁していたとしても、処理によってリサイクル困難なスラッジを発生しない、経済的で簡便な廃水中の懸濁物質の除去方法が実現できれば、極めて効果的である。
更に、本発明者は、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水の懸濁物質を含有する各種廃水に対し、上記した経済的で簡便な廃水中の懸濁物質の除去方法が実現できたとしても、溶存しているカルシウムを除去することはできず、カルシウムによるスケール析出によるスプレーノズル等の閉塞の問題があるが、この点についての課題を同時に解決することができれば更に有用な技術となるとの認識をもった。先に述べたように、スケールが析出した場合、析出物の除去が必要となるが、除去処理は、製鉄所の連続鋳造工程や熱間圧延工程の稼働を停止して行わなければならず、その生産性を低減させる原因となる。これに対し、カルシウムによるスケール析出の問題は、スケール防止剤を循環冷却水に添加することで抑制できるものの、上記したような製鉄所の直接冷却系循環水は水量が多いことから、多量の薬剤を必要とし、薬剤にかかるコストが高くなるという課題がある。
したがって、本発明の目的は、懸濁物質を除去処理後の処理水を冷却水として使用する系の懸濁物質を含む鉄鋼系廃水、例えば、製鉄所の連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水において発生する、粗大SSと微細SSとが併存している廃水中の懸濁物質を分離除去する際に、従来の技術では到底達成できなかった下記の点を達成し、これと同時に、直接冷却廃水中に溶存しているカルシウムによるスケール析出を抑制することも達成できる、工業上、極めて有用な鉄鋼系廃水の処理方法を提供することにある。すなわち、本発明の目的の一つは、懸濁物質の除去処理に際し、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させているにもかかわらず、別々に処理していた従来の処理方法で達成していたのと同等以上の清澄な水質の処理水を迅速に得ることを達成することに加え、同一に処理することを可能にすることで、凝集剤の総使用量を従来よりも低減することができ、更に、設備を大幅に簡略化することで設備費及び維持管理費を縮小でき、加えて、発生する凝集沈降した沈殿物のリサイクル費の低減、場合によっては無機凝集剤を使用することに起因して処理水に混入される配管の腐食を促進する物質の低減をも達成できる技術の提供を可能とすることにある。更に、本発明の別の目的は、上記に挙げた優れた効果に加えて、溶存しているカルシウムによるスケールの析出を抑制できる技術を実現することで、循環水中に溶存しているカルシウムが析出し、スプレーチップやスプレーノズルの閉塞を引き起こすといった課題を、より好ましくはスケール分散剤(スケール防止剤)を利用することなく解決し、これによって、系内において定期的に行われている清掃作業や析出物の除去処理の回数を減らすことを可能にすることで、製鉄所の連続鋳造工程や熱間圧延工程における生産性を向上させることにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、懸濁物質を除去処理後の処理水を冷却水として使用する系の懸濁物質を含む鉄鋼系廃水の処理方法において、少なくとも、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、少なくとも1種の有機凝集剤が共存する状態を生じさせ、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させ、これらの懸濁物質を同時に除去し、更に、少なくとも、懸濁物質を除去した後の処理水のpHが8.3以下となるようにすることで、該処理水を冷却水として循環使用した系内におけるカルシウムによるスケール析出を抑制するように構成したことを特徴とする鉄鋼系廃水の処理方法を提供する。
上記した本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、下記の点が挙げられる。前記鉄鋼系廃水が、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させてこれらの懸濁物を除去した後に、処理水を、直接系冷却循環水として使用する系のものであり、前記有機凝集剤を、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存している廃水が発生する地点から、該廃水を浄化するための水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点で廃水に添加し、且つ、前記直接系冷却循環水はスケール分散剤を含まないこと;前記有機凝集剤の添加量が0.1mg/L以上であり、且つ、前記pHが、7.0以上8.3以下であること;前記pHが、7.5以上8.1以下であること;前記粗大な懸濁物質が、粒径が50μm以上のものであり、前記微細な懸濁物質が、粒径が50μmに満たないものであり、且つ、これらの物質の併存状態が、微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が、その質量比で0.5以上であること;前記乱流状態の水のレイノズル数が、8000以上であること場挙げられる。
また、上記した本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、前記有機凝集剤が、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量とpH7におけるカチオンコロイド当量の2乗を乗じた値をNとした場合に、N値が500万〜6000万であること;前記有機凝集剤が、さらに、重量平均分子量が200万〜1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が0.7〜4.1であることが挙げられる。
(上記式中の、R1、R2は、それぞれ独立にCH3又はC25を表し、R3は、H、CH3又はC25のいずれかを表す。X-は、アニオン性対イオンを表す。)
本発明の鉄鋼系廃水の処理方法では、粗大なSSと微細なSSとが併存する直接冷却廃水等の鉄鋼系廃水中に、少なくとも1種の有機凝集剤を勢いよく添加して共存させ、更に、通常の鉄鋼系廃水の場合は酸を添加して有機凝集剤を共存させた状態における廃水のpHを8.3以下とするという極めて簡便な方法によって、粒径が50μm以上の金属粉や油分等の粗大なSSを含む廃水中から、これらの粗大なSSを含んだままの状態で全ての懸濁物質を一挙に効率よく凝集沈降させて除去でき、その処理水は極めて清澄なものとなるので、循環水中に残留した懸濁物質に起因する詰まりの発生が有効に低減され、更に、上記処理水のpHを8.3以下としたことで、スケール分散剤(スケール防止剤)を利用することなく、溶存するカルシウムによるスケールの生成・析出が格段に抑制される。
本発明によれば、まず、製鉄所の連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水のような、懸濁物質を除去処理後の処理水を冷却水として使用する系の、粗大SSと微細SSとが併存している懸濁物質を含む鉄鋼系廃水中の懸濁物質を分離除去する際に、例えば、Over Flow Rateが10m/hr以上の比較的小さな槽のみで、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、SSを速やかに沈降させることができ、しかも、得られる処理水を、従来の処理方法では達成し得なかった清澄な水質のものにでき、これに加えて、処理水中に溶存しているカルシウムによるスケールの析出を抑制できる、工業上、極めて有用な鉄鋼系廃水の処理方法の提供が可能になる。すなわち、本発明の鉄鋼系廃水の処理プロセスを採用することで、凝集剤の総使用量を従来よりも低減することができ、設備を大幅に簡略化することで設備費及び維持管理費を縮小でき、しかも、処理水を再び直接冷却廃水として循環使用する場合に、従来の懸濁物質の除去処理方法によるよりも清澄な処理水とできるため、処理水中に残存する懸濁物質に起因する詰まりの発生を格段に低減できる。更に、本発明の鉄鋼系廃水の処理プロセスを採用することで、上記した懸濁物質に起因する詰まりの発生を低減できること加え、直接冷却廃水中に溶存しているカルシウムによるスケール析出を抑制することも達成できるので、製鉄所の連続鋳造工程や熱間圧延工程における生産性を向上させることができる。
また、本発明によれば、本発明の処理プロセスを採用することで、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、しかも従来技術と比べて明らかに迅速に凝集沈降させることが可能になるので、設備を大幅に簡略化することもでき、設備費及び維持管理費を縮小できる。本発明の処理プロセスで凝集沈降した凝集・沈降物は、水離れのよい、取り扱い易い、リサイクルに適したものであるので、凝集・沈降物の処理にかかる費用を従来の方法の場合よりも大幅に低減でき、この点でも、高い経済的な効果の実現が可能になる。更に、本発明の処理プロセスによって得られる処理水は、従来の処理方法で達成していたのと同等以上の清澄な水質を示すので、そのまま循環使用することが可能であるが、上記に加えて、極めて簡便な手段によって、循環水中に溶存しているカルシウムに起因するスケールの析出が格段に抑制できるので、この点からの経済的効果も極めて大きいものとなる。
本発明で規定する懸濁物質の凝集沈降処理方法を、連続鋳造工程の直接冷却廃水処理に適用した場合の一例を示す模式図である。なお、酸を添加する等の方法で処理水のpHが調整されていない場合は、参考例となる。 本発明で規定する懸濁物質の凝集沈降処理方法を、熱間圧延工程における直接冷却廃水処理に適用した一例を示す模式図(実施例1)である。なお、酸を添加する等の方法で処理水のpHが調整されていない場合は、参考例となる。 実施例の方法の場合におけるスケール析出状況を示す写真の図である。 比較例の方法の場合におけるスケール析出状況を示す写真の図である。 従来の熱間圧延工程の直接冷却廃水に対する懸濁物質の除去処理方法の模式図である。 本発明で規定する懸濁物質の凝集沈降処理方法に好適に用いることができる有機凝集剤の範囲を示す図である。
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明者らは、最初に、前述したような製鉄所の連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水において発生する、粗大SSと微細SSとが併存している鉄鋼系廃水中の懸濁物質を分離除去する際の効率化を達成すべく鋭意検討を行った。その結果、無機凝集剤の使用を停止する一方で、有機凝集剤を併存させる際に、或いは、有機凝集剤の添加が行われた以降に、該有機凝集剤と、粗大SSと微細SSとが、流速が0.5m/秒以上と速く、且つ、乱流状態となる中に共存する状態を生じさせる、という極めて単純な方法によって、廃水中に存在している、或いは、廃水中に存在することとなる、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、極めて効率よく迅速に凝集沈降させることができる、という従来技術の常識を覆す驚くべき事実を見出した。本発明で規定する上記の方法によれば、鉄鋼系廃水中の懸濁物質の除去処理において、従来の方法と比較して、下記に挙げる種々の効果を得ることができる。まず、従来、粗大SSの沈降の促進に用いていた無機凝集剤の使用の必要がなく、また、粗大SSの処理の後段で微細SSを取り除く必要がなくなるので、そのために必要となっていた設備が不要となるので、従来の処理方法よりも、設備費及び維持管理費を縮小できる。更に、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、極めて迅速にこれらのSSを凝集沈降させることができることに加え、その凝集・沈降物(沈殿物)は、従来の処理で生じていた汚泥とは全く異なり、脱水性が良好で油分の含有率も低いため、その後の処理が極めて容易であり、沈殿物の処理のために従来の処理で必要のあった設備費及び維持管理費が大幅に削減できる。また、沈殿物は、リサイクルに適した性状のものとなる。更に、得られる処理水は、無機凝集剤の使用に起因して混入する塩素イオンや硫酸イオンの問題がないことに加え、従来の懸濁物質の除去処理方法で得られた処理水に比べて明らかに清澄な、懸濁物質の残留が極めて少ない水質のものであり、後段で、更に微細SSを取り除くことなく、そのまま、良好な冷却水として再利用できる画期的なものである。
本発明の鉄鋼系廃水の処理方法では、少なくとも1種の有機凝集剤を用い、少なくとも、粗大なSSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、廃水中の懸濁物質の除去処理を極めて効率よくすることができ、この点のみでも、上記に挙げた種々の優れた作用・効果が得られる。以下に、本発明の鉄鋼系廃水の処理方法で規定する、懸濁物質の除去処理方法について詳述する。
製鉄所において発生する廃水では、通常、粒径が50μm以上のものを粗大SS、粒径が50μmに満たないものを微細SSとして扱い、粗大SSを取り除いた廃水に対し、後段で、微細SSを凝集沈殿等の処理をしてこれらを処理しているが、本発明では、これらの粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたことを一つの特徴としている。処理する廃水中における粗大SSと微細SSとの併存状態は特に限定されないが、本発明者らの検討によれば、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)が、その質量比で0.5以上である廃水であれば、これらを一緒に安定した状態で良好に処理することができる。また、本発明者らの検討によれば、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)は、0.5以上であればよく、むしろ大きい場合に良好な処理ができ、例えば、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比が100程度であっても問題なく処理できる。本発明者らが確認したところ、製鉄所において発生する廃水の、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)は、懸濁物質の比重にもよるが、例えば、その大半が、5〜100程度或いは10〜70程度であった。更に、本発明者らの検討によれば、これらのいずれの廃水に対しても、本発明の処理方法を適用することで、廃水中の異なる大きさの懸濁物質を、同一の処理で、例えば、Over Flow Rateが10m/hr以上の比較的小さな槽のみで、極めて迅速に沈降させることができ、これに加えてその処理水は、従来の処理では容易に達成することができなかった清澄なものとなる。
本発明で規定する「流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態」が意味するところは、有機凝集剤の使用状態を、従来の撹拌しながらの緩やかな流動状態の中で処理するのでなく、本発明の顕著な効果が得られる激しい流動状態に、粗大なSSと微細SSと有機凝集剤とを共存させることを意味している。流速が0.5m/秒以上の速さで流動している状態であればよいが、より好ましくは、流速が1.0m/秒以上の速さで流動している状態となることが好ましい。更に、その流動状態が、乱流状態であることを要するが、より具体的には、水のレイノズル数が8000以上、更に好ましくは、水のレイノズル数が10000以上である状態となっている水の中に、粗大なSSと微細SSとが併存し、更に有機凝集剤が共存する状態を生じさせればよい。本発明で規定する上記構成は、従来の懸濁物の処理方法の場合のように撹拌設備等を別に設けて達成する必要がなく、下記に述べるように、工場内で生じている廃水の激しい流れを懸濁物質の除去処理に巧みに利用することで達成できるので、その設備的なメリットは極めて大きい。
本発明で規定する上記した水の状態を生じさせる方法としては、例えば、下記(1)のそのような状態の廃水中に有機凝集剤を添加する方法や、下記(2)の、粗大なSSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水(循環水)に、予め有機凝集剤を添加する方法が挙げられる。
(1)有機凝集剤を、粗大なSSと微細SSとが併存している、流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態の廃水中に添加する。その場合における有機凝集剤の好ましい添加の位置としては、粗大なSSと微細SSとが併存している廃水が発生する地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点が挙げられる。
(2)粗大なSSと微細SSとが併存した廃水になる前の循環水に予め前記有機凝集剤を添加しておき、更にこの水を冷却水として使用することで、粗大なSSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることもできる。その場合における有機凝集剤の添加の位置の一例としては、粗大なSSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水が、前記粗大なSSと微細SSとを、前記有機凝集剤の存在下、同一の処理で凝集沈降させて、これらを同時に除去処理した後に得られる処理水を、再び冷却水として循環使用する系において、有機凝集剤の添加を、直接冷却廃水等の使用基準を満たすまでに循環水の処理がなされた地点から、該循環水を使用する給水地点に至るまで、のいずれかの地点で行うことが挙げられる。
上記(1)及び(2)について、製鉄所の連続鋳造工程や圧延工程において発生する直接冷却廃水を例にとって具体的に説明すれば、上記(1)でいう「粗大なSSと微細SSとが併存している廃水の発生地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点」とは、以下の地点を含むものである。まず、冷却水がスプレーノズル等から鋼材表面へ噴射されて、鋼材を冷却した時点で、冷却水は直接冷却廃水となるので、この地点が「廃水の発生地点」である。また、「廃水の発生地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点」は、鋼材を冷却後、直接冷却廃水となってスケールスルースと呼ばれる開放樋に流れ落ちて、この開放樋を流れて、水処理設備であるスケールピットに至るので、この間の一連の地点とその近傍の地点を意味している。
上記したことから、本発明において、有機凝集剤の添加は、粗大なSSと微細SSとが併存している廃水となっているスケールスルースに流れ落ちる地点で行っても、スケールスルースのいずれかの地点で行っても、スケールピットに排水される直前の激しい流れの中に添加させても、スケールピット入口付近に添加しても、スケールピットポンプのサクション付近に添加してもよい。
また、上記(2)でいう「その使用基準を満たすまでに用水の処理がなされた地点から、該用水の給水地点に至るまでのいずれかの地点」とは、スケールピット以降、沈殿池、ろ過機、電磁フィルター等の懸濁物質の除去設備の出口地点(すなわち処理水の排出口)から、冷却塔を通じて、上記した廃水の発生地点まで、及び、スケールピット下流側からスケールスルースへと循環流を生じさせるスケールピットポンプのサクション近傍から、先に説明した廃水の発生地点までを意味している。
本発明者らの検討によれば、少なくとも1種類の有機凝集剤を、粗大なSSと微細SSとが併存し、水と共に激しく流動している状態の中に共存する状態を生じさせることで、高い効果が得られることがわかった。より具体的には、有機凝集剤を、粗大SS及び微細SSと激しい混合状態で共存させた場合に、有機凝集剤の凝結・凝集・沈降効果がより顕著に発揮され、粗大SSと微細SSが同一の処理で、従来技術では達成できていなかった速度で速やかに凝集沈降して、その上澄み液が従来にない清澄(透明)なものとなる。更に、これらが共存した状態で、激しく流動している時間がある程度確保された方がより高い効果が得られることと、添加作業の容易性から、例えば、図1及び図2中に2で示したように、スケールスルースのスケールピット3からできるだけ遠い地点で有機凝集剤を添加することが好ましいこともわかった。このように構成すれば、例えば、直接冷却廃水がスケールスルースを流れていくいずれの地点でも、有機凝集剤と粗大SSと微細SSとが激しい混合状態となる。その結果、驚くべきことに、スケールピット3に排出された時点で、直接冷却廃水中の粗大SSと微細SSとを含む懸濁物質は、凝結・凝集中である、または既に凝結・凝集しているため、沈殿物と清澄な処理水とに速やかに分離する。また、処理水を冷却水として循環使用する系において、スケールピット3からできるだけ遠い地点として、例えば、先に説明した廃水の発生地点の前の、得られた処理水を用水(循環水)に使用することとなる給水地点に至るまでを選択し、廃水になる前の用水に有機凝集剤を添加することも有効である。
本発明者らは、本発明の構成によって上記優れた効果が得られた理由について、以下のように考えている。有機凝集剤を上記したような地点で、廃水或いは用水に添加すると激しく混合され、その状態で、まず、有機凝集剤が、共存している粗大SSに対して特に高い凝集効果、更に強い凝結効果を示し、その結果、粗大SSの凝結・凝集が速やかに生じ、その際に、併存している微細SSが、この有機凝集剤によって形成された粗大な凝集物内に取り込まれ、これらのことによって、同一処理による速やかで、効率のよい良好な凝集沈降という本発明の優れた効果が得られたものと考えている。特に、廃水が、溝や液路内を流動している場合は、微細SSが廃水内を活発に動いているので、微細SSが、粗大な凝集物内により取り込まれやすくなったものと推論している。更に、このようなメカニズムで得られたと考えられる、本発明の処理方法によって得られる凝集・沈降物は、従来の、凝集剤を添加して沈殿槽内に沈降させることで得られた汚泥とは明らかに異なり、脱水性がよく、油分の含有率も低いものとなる。このため、その後の処理が極めて容易なものになり、従来、沈降・沈殿物の2次処理にかかっていたコストの大幅な低減が可能になる。また、得られる凝集・沈降物は、高油分にならないので、リサイクルに適したものになる。
本発明の鉄鋼系廃水の処理方法では、上記した効果的な懸濁物質の除去処理方法を適用したことを特徴の一つとしており、直接冷却廃水中の粗大SSと微細SSとを一挙に凝集沈降させることができ、この凝集・沈降物を除去した後に得られる処理水は、極めて清澄なものとなる。このため、処理水をそのまま直接系冷却水として循環使用することができる。得られる処理水は極めて清澄であることから、そのまま用いても、水中に残留する懸濁物質や油分の影響で生じていた、ストレーナーの差圧上昇、スプレーノズル、スプレーチップの閉塞といった障害の発生を抑制することができる。更に、このような障害の発生を未然に防ぐために、残留する懸濁物質や油分を処理水から除去するために必要となっていた、定期的に行う系内の清掃作業の回数を減少させることができる。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記の方法によって、懸濁物質や油分を効果的に凝集・沈降させて除去処理し、処理水を従来にない清澄なものにできたとしても、水中に溶存するカルシウムを除去することができないため、下記の別の課題があることがわかった。すなわち、上記した清澄な処理水を循環使用した場合であっても、循環水中に溶存しているカルシウムの析出を避けることができず、この析出物によってスプレーノズル等の閉塞の問題が生じるため、安定した製造状態を維持するためには、製造ラインを停止して析出物の除去を頻繁する必要があり、連続鋳造工程や圧延工程等における生産性を低下させる原因となっていた。これに対し、本発明者は、懸濁物質を除去処理後の処理水を冷却水として使用する系において、析出物が生じ易い箇所について調べた結果、高温で熱負荷が大きく、循環水の濡れ・渇きが繰り返される箇所、より具体的には、スプレーによる濡れ・乾きを繰り返すことで、循環水中に溶存しているカルシウムによるスケールが析出し、スプレーチップやスプレーノズルの閉塞が生じ易いことを確認した。先に述べたように、一般的に、カルシウムスケールの析出は、スケール分散剤を循環水に添加することで抑制できることが知られており、種々の薬剤が提案されているが、製鉄所で用いる直接冷却系循環水は水量が多いこともあり、薬剤コストが膨大になるという経済的な課題があった。
上記課題に対し、本発明者らが鋭意検討した結果、本発明で規定した、鉄鋼系の直接冷却廃水中の粗大SSと微細SSを一挙に凝集沈降させる方法を用い、凝集・沈降物を効果的に除去して清澄な処理水とし、これを循環水として再度使用した場合においては、単に循環水のpHを8.3以下にするという極めて簡便な方法によって、pHを調整しない場合と比較し、劇的にカルシウムスケールの析出が低減されることを見出した。本発明で規定した、粗大SSと微細SSを一挙に凝集沈降させて凝集・沈降物を除去することによって得られる清澄な処理水では、処理水中のSSは10mg/L程度かそれ以下、油分は2mg/L程度かそれ以下となる。そして、処理水のpHは、通常、8.5〜8.7程度である。本発明者らは、この場合に、循環使用する処理水のpHを8.3以下になるようにするだけで、循環使用した場合に生じるカルシウムスケールの析出が劇的に少なくなることを見出した。図4は、循環水のpHを調整せずに8.5程度の状態で循環させた場合の2.5ヶ月後のスプレーノズルの状態を示す図であり、図3は、循環水のpHを酸で8.1〜8.2程度に調整して循環させた場合の2.5ヶ月後のスプレーノズルの状態を示す図であるが、その違いは明確である。なお、いずれの場合も、試験開始前にスプレーノズルに固着していた析出物を除去し、同様の状態とした。
本発明において行う循環水のpH調整は、いずれの方法で行ってもよいが、鉄鋼系廃水の場合、そのpHは、上記したように8.5〜8.7程度であることが多いので、通常は酸を添加してpHを調整すればよい。pHを調整に使用する酸としては、一般的に使用されている公知の無機酸や有機酸を使用すればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、硫酸や塩酸やリン酸等の無機酸や、クエン酸等の有機酸が挙げられる。
本発明の鉄鋼系廃水の処理方法では、このように、循環水のpHを8.3以下となるようにすることを要するが、配管等に与える影響を考慮すると、pHを7.0以上8.3以下、より好ましくは、pHが、7.5以上8.1以下とすればよい。本発明の顕著な効果は、8.5程度のpHであった循環水のpHを、若干下げて8.3以下にするだけで得られるが、本発明者は、その理由を以下のように考えている。まず、本発明者らは、スプレーノズルの閉塞を生じさせている付着物の成分について分析を行った。その結果、その成分の殆どは炭酸カルシウムであることがわかった。ここで、水中における炭酸イオンの濃度は、pHによって大きく異なり、液のpHが8.0の場合に比べて、8.5の場合では、炭酸イオンの濃度が3倍になることを確認した。また、循環水のpHを調整してスケールの析出を抑制した場合、循環水中の懸濁物質や油分の濃度をできるだけ低濃度に処理しておくことで、よりカルシウムスケールの析出・成長を低減できることを確認した。これらのことから、本発明では、直接冷却水等に使用した後、再度、循環水として利用するための処理水が、懸濁物質や油分が従来にない程度にまで低減させることと、加えて循環水のpHを下げて炭酸イオン濃度存在比を下げることの両方の効果が、炭酸カルシウムの析出量の違いになったと考えられる。
本発明で使用する有機凝集剤は、特に限定されず、例えば、アクリル系、ポリアミン系、およびジアリルアンモニウム系の化合物から選ばれる有機凝集剤を用いることができる。本発明者らの検討によれば、下記に挙げる有機凝集剤を用いれば、より顕著な効果が得られる。具体的には、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量とpH7におけるカチオンコロイド当量の2乗を乗じた値をNとした場合に、N値が500万〜6000万である有機凝集剤を用いることが好ましい。さらには、重量平均分子量が200万〜1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が0.7〜4.1である有機凝集剤を用いることが有効であり、重量平均分子量が400万〜1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.1〜3.5である有機凝集剤を用いることがより好ましい。
(上記式中の、R1、R2は、それぞれ独立にCH3又はC25を表し、R3は、H、CH3又はC25のいずれかを表す。X-は、アニオン性対イオンを表す。)
本発明の処理方法に好適に用いることのできる上記したカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなる有機凝集剤は、上記式(1)及び/又は(2)で表されるモノマーを5モル%以上含む原料モノマーから誘導できるが、その際に、上記の要件を満たすようにモノマー組成を設計したものを使用することが好ましい。具体的な合成方法としては、カチオン性の共重合体については、先に挙げた特許文献4に記載の合成方法が利用できる。また、両性の共重合体は、例えば、特許第3352835号公報に記載されているように、上記式(1)及び/又は(2)で表されるカチオン性モノマーに、その他のモノマーとしてイタコン酸やアクリル酸等のアニオン性モノマーを適宜混合して原料モノマーとすることで、同様の方法で得ることができる。
上記式(1)で示されるモノマーの代表的なもとしては、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩酸塩等が挙げられる。また、式(2)で示されるモノマーの代表例としては、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドが挙げられる。これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
本発明者らは、上記したような原料モノマーから得られる有機凝集剤について、本発明が目的の一つとしている「粗大SSと微細なSSとが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除くことを実現する」という観点から詳細に検討した。その結果、より高レベルで安定して上記の目的を達成させるためには、前記した式(1)及び/又は(2)で表されるモノマーを5モル%以上含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体が、下記の要件を満たす場合に、上記した本発明の顕著な効果がより高レベルで達成できることを見出した。本発明者らは、最初に、該共重合体の重量平均分子量が200万〜1300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.4meq/g以上である場合に、本発明が目的とする凝集性が得られることを知見した。そして、(1)カチオンコロイド当量値が小さい場合は、分子量が大きい共重合体の方が、上記した効果が大きい傾向にあり、(2)カチオンコロイド当量値が大きい場合は、分子量が小さい共重合体の方が、上記した効果が大きい傾向があることがわかった。
本発明者らは、「粗大SSと微細なSSとが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除く」ことが達成されることによる技術的な効果が極めて大きいことから、さらに工業的価値を高めるべく、使用する有機凝集剤について、より詳細な検討を行った。その結果、上記原料モノマーから誘導される共重合体の中でも、該共重合体の重量平均分子量とpH7におけるカチオンコロイド当量の2乗を乗じたN値が500万〜6000万である場合に、より優れた有機凝集剤として機能することを見出した。なお、本発明に使用するカチオンコロイド当量値は、コロイド滴定法(ポリビニル硫酸カリウム溶液で滴定する方法)により有機凝集剤中の有効成分1グラムあたりのカチオンコロイド当量値を測定した値である。また、重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法によって測定した値である。
図6は、本発明で規定する懸濁物質の凝集沈降処理方法に好適に用いることができる有機凝集剤の範囲を示す図である。図6は、本発明者らが行った、前記一般式(1)及び/又は(2)で表されるモノマーを必須成分として5モル%以上を含む原料モノマーから誘導した、重量平均分子量と、pH7におけるカチオンコロイド当量とが異なる種々の共重合体を、それぞれ有機凝集剤として使用して廃水に添加した場合に得られた凝集・沈降効果の違いをA〜Dの4段階で評価した検討結果を示すものである。A〜Dは、いずれも本発明の効果が認められるものであるが、相対的にA>B>C>Dの順で顕著な効果が認められた。Dは、全く凝集・沈降の効果が認められないわけではないが、実施化することを考えて不適と評価した。本発明者らは、これらの結果から、本発明が目的の一つとしている「粗大SSと微細なSSとが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除くことの実現」できる有機凝集剤の範囲についての詳細な検討を行い、共重合体の重量平均分子量とpH7におけるカチオンコロイド当量の2乗を乗じたN値が500万〜6000万であるものが、より顕著な効果を実現できるものであると結論した。図6中にその範囲を破線で示した。さらに、この範囲内のものの中でも、重量平均分子量が200万〜1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が0.7〜4.1である場合、重量平均分子量が400万〜1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.1〜3.5である場合により顕著な効果が得られる傾向にある。N値でいえば、1500万〜5500万が程度となる重量平均分子量とコロイド当量の兼ね合いをもつ有機凝集剤を使用することが、より好適である。
上記のことから、有機凝集剤の主成分である共重合体の重量平均分子量が小さ過ぎると十分なSS除去効果が得難いことがわかった。一方、重量平均分子量が大き過ぎるとその粘度が上昇し、使用し難くなるので好ましくない。上記で使用したカチオンコロイド当量値は、有機凝集剤中のカチオン密度、すなわち、カチオン性を示す官能基の量を示すものである。上記したように、本発明の目的の一つである「粗大SSと微細なSSとが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除く」ことに対しては、重量平均分子量との兼ね合いで最適なカチオンコロイド当量値の範囲があり、上記した特性を満たす範囲内の共重合体を有機凝集剤として用いることで、顕著な効果が確実に得られることがわかった。
上記に例示した有機凝集剤は、カチオン性又は両性のものであるが、本発明はこれに限定されるものでなく、対象とする廃水によってはアニオン性やノニオン性の有機凝集剤を使用することもできる。例えば、本発明者らの検討によれば、転炉からの集塵廃水の場合は、カチオン性の有機凝集剤を用いた場合よりも、アニオン性の有機凝集剤を用いた方が大きな効果が得られる。また、石炭ヤードの雨水排水などからの石炭・コークス等の炭素系の粉塵を含有する廃水を処理する場合には、微アニオン性或いはノニオン性の有機凝集剤の使用が適している。
本発明者らの検討によれば、上記したような共重合体を主成分とする有機凝集剤を、例えば、製鉄工場の熱間圧延工程から大量に排出される、鉄粉等の金属や圧延油等の油分が懸濁した、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊している状態の直接冷却廃水に、該処理廃水に対して0.1mg/L以上、例えば、2mg/L程度と微少量添加するだけで、廃水中の懸濁物質が速やかに凝集沈降して、しかも、その上澄みは、目視において濁りの見られない極めて清澄なものになる。これに対し、この有機凝集剤を、従来のように、予め廃水中から粗大SSを除去した後に行う凝集沈降処理に使用した場合には、上記したような顕著な効果は得られず、微細SSが凝集沈降する傾向はみられるものの、その上澄みは、目視において濁りがあり、明らかに十分なものではなかった。このことは、上記した有機凝集剤によってもたらされる本発明のより顕著な凝結・凝集・沈降効果は、微細なSSと共に、粒径が50μm以上の粗大なSSが併存している場合に発揮されるものであり、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊している状態の廃水を処理することが重要であることを示している。
更に、本発明者らの検討によれば、上記有機凝集剤は、先に述べたように、例えば、上記熱間圧延工程からの直接冷却廃水が、水処理設備である「スケールピット」に至るまでの廃水が激しく流動している「スケールスルース」と呼ばれている溝や液路に添加するとより高い効果が得られる。製鉄所において発生する廃水中の懸濁物質には、比重の大きな鉄粉が多く含まれているため、懸濁物質の沈降を防止する必要があり、このスケールスルースの流れは1〜5m/秒程度と極めて速いものとなっている。本発明者らの検討によれば、この速い廃水の流れ中に有機凝集剤を単に添加するだけで、本発明で規定する要件を満たし、その結果、上記した顕著な効果を得ることができる。また、先にも述べたように、この場合に、有機凝集剤を、水処理設備である「スケールピット」に対してより上流側に添加することがより効果的である。特に、上記有機凝集剤の添加を廃水の発生地点の近傍で行うことで、「スケールスルース」を経由して「スケールピット」に至るまでの廃水が激しく流動している状態の時間をより長く確保できるようになるが、このようにした方が、懸濁物質の凝集・沈降に対して、より速やかに高い効果を得ることができる。これらのことは、有機凝集剤を添加する場合は、廃水が激しく流動している場所に添加し、有機凝集剤と、粗大SS及び微細SSを激しい混合状態で反応させた方が、該有機凝集剤を使用したことによる凝結・凝集・沈降効果が、より速やかにより顕著に発揮されることを示している。先述したように、スケールスルースと呼ばれている溝や液路では、廃水が速い流れの中で激しく流動しており、例えば、水処理設備に廃水が導入される前のこの地点を巧みに利用すれば、別途、撹拌装置等の設備を設ける必要がなく、有機凝集剤を添加する地点を適宜に設計するという簡便な手段によって、工業上、極めて優れた効果を得ることが可能になる。このため、懸濁物質を効果的に凝集・沈降させるために必須としている本発明で規定する要件を達成するためには、スケールスルースと呼ばれている従来の溝や液路をそのまま利用してもよいが、場合によっては、例えば、溝や液路内に障害物や回転羽等を設置するといった方法で、流れがより乱流となるように工夫してもよい。いずれにしても、本発明の鉄鋼廃水の処理方法では、有機凝集剤と、除去処理の対象である粗大SSおよび微細SSを激しい混合状態で反応させることを要し、このようにすることで、下記に挙げる本発明の(1)〜(4)の顕著な効果が得られる。さらに、本発明では、廃水中から懸濁物質を除去した後の処理水のpHを8.3以下となるようにすることで、該処理水を冷却水として循環使用した系内におけるカルシウムによるスケール析出を抑制することができ、下記の(5)の顕著な効果が得られる。
本発明の鉄鋼系廃水の処理方法によれば、上記した極めて簡便な方法によって、以下に挙げる工業上極めて有用な種々の効果が得られる。以下、本発明の処理方法によって得られる主な効果、またはメリットについて述べる。
(1)水処理プロセスの簡略化
本発明で規定する懸濁物質の除去処理方法では、有機凝集剤の添加地点を工夫するだけで、廃水中の粗大なSSと微細なSSが有機凝集剤とよく混合されることで、微細な鉄粉や油と粒径の大きなスケールとが極めて速やかに凝集し、沈降させることができ、従来は、粗大な懸濁物質を処理するためのスケールピットでは除去できなかった微細な鉄粉や油も、スケールピット、またはそれに類する比較的小さい槽で沈殿分離でき、スケールピットの出側で、従来と同等或いはそれ以上のレベルまで懸濁物質の混入を低減した極めて清澄な処理水が得られるので、簡易且つ迅速な処理が可能になる。
上記の結果、従来の廃水中の微細なSSの除去処理において必要とされていた、沈殿池やろ過機、電磁フィルターといった、微細鉄粉や油の分離設備が不要となる。これに伴い、撹拌機や、ろ過機や電磁フィルターを使用した場合に必要となっていた逆流洗浄排水処理設備も不要となる。
また、本発明で規定する懸濁物質の除去処理方法では、無機凝集剤が不要となることから、そのためのタンクやポンプ、撹拌機、送液ライン等の設備も不要となる。
したがって、製鉄所において大量に発生する、粗大なSSと微細なSSとが共存している状態の廃水に対して、新たに懸濁物質の除去処理設備を建設する場合には、上記に関連した設備スペース、及び建設費が大幅に削減できる。
(2)維持管理費の縮小
本発明で規定する懸濁物質の除去処理方法では、沈殿池やろ過機が不要となり、スケールピットの出側から処理水を冷却塔へ直接送水できるため、必要なポンプの台数を減らすことができ、電気代を含む維持管理費が大幅に縮小できる。
(3)腐食の低減
本発明で規定する懸濁物質の除去処理方法では、無機凝集剤を必要としないため、ポリ塩化アルミニウムや、硫酸バンド等に代表される無機凝集剤に含まれる、腐食性陰イオンである、Cl-や、SO4 2-が処理水中に混入することを著しく低減できる。このため、凝集沈殿、及び冷却処理した処理水を、再度工場へ給水する場合、その配管系等、ならびに生産する鋼材表面の腐食を軽減することが可能となる。
(4)鉄スラッジのリサイクル促進
本発明で規定する懸濁物質の除去処理方法では、粗大なSSと微細なSSとを同一の処理で凝集沈降させたことによってスケールピットにおいて発生する、粒径の大きなスケール、微細な鉄粉、及び油からなるスラッジは、脱水性と濃縮性がよく、重量あたりの油含有率が小さいため、その運搬及びリサイクルが簡便にできる。
本発明の鉄鋼系廃水の処理方法では、特定の構成からなる懸濁物質の除去処理方法を適用することで、上記した種々の効果を実現し、懸濁物質の混入を低減した極めて清澄な処理水が得られるが、更に、少なくとも、懸濁物質を除去した後の処理水のpHが8.3以下となるようにすることを要し、この結果、下記の(5)の顕著な効果が得られる。
(5)カルシウムによるスケール析出の抑制
処理水を冷却水として循環使用した系内におけるカルシウムによるスケール析出が格段に抑制されるので、定期的に行っていた析出したカルシウムスケールの除去処理作業の回数を格段に低減できる。カルシウムスケールの除去処理作業は、製造装置の稼働を停止して行う必要があることから、生産効率の改善に繋がる。更に、カルシウムスケールによるスプレーチップやスプレーノズルの閉塞が生じると、良好な運転ができず、製品の品質の低下を招く恐れがあったことから、製品の品質維持にも寄与できる。なお、カルシウムスケールの問題は、スケール分散剤(スケール防止剤)を利用することによっても解決できるが、本発明によれば、薬剤にかかる費用を低減できる。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
[確認試験例−粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させることの優位性の確認]
まず、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させることの優位性について、下記のようにして確認試験を行った。検討には、図5に示した、実際の熱間圧延工程において発生する、スケールピット3への流入水を採水し、これを確認試験に使用した。具体的には、採水したスケールピット3流入水を2つに分け、一方のスケールピット流入水はそのままの状態で試験に用い、他方のスケールピット流入水は、その中の粒径50μm以上のSS(粗大SS)を除去したものを用いた。上記したそれぞれの水に対して、下記の有機凝集剤を同量添加してよく混合した後、複数の同じ形状の縦長の筒状容器内にそれぞれ同量ずつ入れて、一番長いもので20分間となるように静置させて、各時点における沈降状態を観察した。そして、沈降状態を客観的に評価するため、静置時間の異なる処理水を、筒状容器の底面から一定の高さから採水し、採水したそれぞれの水(処理水)について、JIS K0102に則して、SS濃度を分析した。試験には、前記した一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分として、それぞれ20モル%ずつ含む原料モノマーから誘導した、アクリルアミド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]ベンジルジメチルアンモニウム・クロリド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・クロリド共重合体(モル比=60/20/20)を主成分とするカチオン性のものを用いた。その重量平均分子量は1100万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2〜2.2meq/g程度であるものを用いた。N値は、1584万〜5324万である。
表1に、上記の試験結果を示した。その結果、表1に示した通り、本発明で規定している、粗大SSと微細SSとを同一に処理した「粗大SSありの系」と、従来の処理で行われている「粗大SSなしの系」では、その沈降速度に大きな違いがあることが確認された。例えば、SS濃度が15mg/Lの処理水を得る場合の沈降時間が、「粗大SSありの系」では、僅か2分間で済むのに対し、従来の処理で行われている「粗大SSなしの系」では8分間必要であった。このことから、本発明で規定した、粗大SSと微細SSとを同一に処理する「粗大SSありの系」とすることで、従来の方法に比べてSSを極めて迅速に沈降させることができることが確認された。
上記した、従来より行われている「粗大SSなしの系」で処理した場合と、本発明で新たに行った「粗大SSありの系」で処理した場合の比較試験で、SSの沈降速度に顕著な差が生じた理由について、本発明者らは、「粗大SSありの系」で処理した場合は、粗大SSと微細SSとが共存する状態の被処理水へ有機凝集剤を添加することで、両SSの凝集体が速やかに生成されたことで、その沈降速度が、従来技術で「粗大SSなしの系」の処理を行う前に行われている粗大SSのみの処理の場合と同程度以上になったためと考えている。
上記した確認試験の結果から、従来の「粗大SSなしの系」で処理する場合には、粗大SSの処理には比較的小さな槽(例えば、設計Over Flow Rate:10〜50m/hr程度)であるスケールピットを使用し、その後の微細SSの処理には、大きな沈殿槽(例えば、設計Over Flow Rate:0.5〜4.0m/hr程度)を用い、場合によっては更にろ過機等が必要であったのに対し、本発明で規定した「粗大SSありの系」を適用することで、上記したスケールピットのような比較的小さな槽のみを使用することで、従来の処理法と同等以上の処理水質が得られることが示唆された。つまり、上記した試験結果は、本発明で新たに規定する「粗大SSありの系」での処理によって、従来技術の「粗大SSなしの系」で行われていた、凝集沈殿処理によっては決して得ることができなかった顕著な効果が達成されることを確認した。
<参考例1、2、比較参考例>
本参考例の概要を図1に示した。本参考例では、図1に示したように、連続鋳造工程において発生するスプレー系冷却廃水に対して、有機凝集剤2をスプレー系冷却廃水が流動していくスケールスルース1の最上流の部分で添加した。そして、スケールピット3で得た上澄み水を、電磁フィルター5で処理後に、冷却塔4で冷却し、再度、冷却水として使用した。本例では、有機凝集剤2として、前記した一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分として、それぞれ20モル%ずつ含む原料モノマーから誘導した、アクリルアミド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]ベンジルジメチルアンモニウム・クロリド/[2−(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・クロリド共重合体(モル比=60/20/20)を主成分とするカチオン性のものを用いた。その重量平均分子量は1100万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2〜2.2meq/g程度であるものを用いた。そして、スケールスルース1内の廃水に対し、該有機凝集剤を、0mg/L(無添加、比較参考例)、1mg/L(参考例1)、2mg/L(参考例2)となるように連続添加した。なお、上記で処理したスプレー系冷却廃水における粗大SSと微細SSとの比(粗/微)は、その質量比で、5〜20程度であった。
そして、上記の処理後に、JIS K0102に則して、スプレー戻水6(処理水A)、スプレー直送水7(処理水B)のSS濃度及びn−Hex抽出物質濃度(油分)を測定した。尚、ここでいうスプレー戻水とは、スケールピット3の出側の水(上澄み水)のことであり、スプレー直送水とは電磁フィルター5で処理後に、冷却された水(処理後の冷却水)のことである。また、比較例1として、有機凝集剤を添加しない場合についても、SS濃度及びn−Hex抽出物質濃度(油分)を測定した。
表2に、上記の有機凝集剤の添加試験の結果を示した。参考例1として、有機凝集剤を1mg/Lとなるように添加することで、スプレー戻水のSS濃度は19mg/L、n−Hex抽出物質濃度は5mg/Lになり、比較参考例の無添加時と比べ、両汚濁物質の濃度が半減することを確認した。また、スプレー直送水においては、SS濃度が10mg/L、n−Hex抽出物質濃度が4mg/Lという良好な水質が得られた。
更に、参考例2として、有機凝集剤を2mg/Lとなるようにして添加した以外は上記と同様にして試験したところ、スプレー戻水のSS濃度は9mg/Lになり、n−Hex抽出物質濃度は2mg/Lになった。このスプレー戻水水質は、有機凝集剤の添加濃度が1mg/Lで後段の電磁フィルター5で処理を行ったスプレー直送水と同等の水質である。したがって、有機凝集剤を2mg/Lになるように添加した場合は、電磁フィルター5による処理を停止しても、良好な水質を維持可能であると考えられる。
[確認試験例−カルシウムによるスケール析出の抑制効果の確認]
図2に示した製鉄所の熱間圧延工場における実際のスプレー系冷却廃水に粗粒を加えて模擬試験用のサンプルとし、下記の試験を行った。具体的には、スプレー系冷却廃水に、スケールピットで沈降した粒径50μm以上の粗粒を5000mg/L加えたものを使用した。また、処理する際に、実施例1および比較例のいずれの場合も、上記で優位性を確認した、本発明で規定する、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させる状態を実現するため、高速撹拌して処理を行った。実施例1と比較例1では、高速撹拌することで、粗大SSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、有機凝集剤が共存する状態を生じさせた。比較例2では、本発明を特徴づける有機凝集剤を添加しなかった。更に、実施例1と比較例2の処理試験では、撹拌処理する際のpHを8.3以下になるようにして処理を行った。すなわち、上記した模擬試験用サンプルを用いて、実施例1では本発明で規定する要件を満足する処理を行い、比較例1、2では、本発明で規定するいずれかの要件を満足しない状態で処理を行って、本発明で規定する処理の顕著な効果を確認した。
<実施例1>
上記した模擬試験用のサンプルに、有機凝集剤1mg/Lと硫酸2mg/Lとを添加し、撹拌機で30秒間高速撹拌した。撹拌停止後、オーバーフローレートが30m/hrとなるように水槽の中間層から処理水を採取し、その水質検査した。表1に示すように、そのpHは7.8であったことから、この例では、上記撹拌処理は、pHは7.8の条件で処理が行われたことになる。本実施例では、有機凝集剤として下記のものを用いた。前記した一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分として、それぞれ35モル%ずつ含む原料モノマーから誘導した、アクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合物(モル比=60/20/20)を主成分とするカチオン性のものを用いた。その重量平均分子量は800万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.0〜2.1meq/gであるものを用いた。N値は、800万〜4851万となる。
<比較例1>
上記した模擬試験用のサンプルに、実施例1で使用したと同様の有機凝集剤を用い、該
有機凝集剤を1mg/L添加し、撹拌機で30秒間高速撹拌した。撹拌停止後、オーバーフローレートが30m/hrとなるように水槽の中間層から処理水を採取し、その水質検査した。表1に示すように、そのpHは8.5であったことから、pHは8.5の条件で処理が行われた以外は、実施例1と同じ条件で上記撹拌処理を行ったことになる。
<比較例2>
上記した模擬試験用のサンプルに、硫酸を2mg/L添加し、撹拌機で30秒間高速撹拌した。撹拌停止後、オーバーフローレートが30m/hrとなるように水槽の中間層から処理水を採取し、その水質検査した。表1に示すように、そのpHは7.8であったことから、この例では、上記撹拌処理は、実施例1と同様に、pH7.8の条件で処理が行われたことになる。
<評価>
(水質分析結果−1)
実施例1、比較例1、2で処理を行って得た各処理水についての水質分析結果を表3に示した。
表3中のランゲリア指数(飽和指数)とは、ランゲリア指数は、給水系における水の腐食性の指標となるもので、水中の炭酸カルシウムの析出傾向を示す数値で、炭酸カルシウムの被膜(スケール)の、形成のされやすさの目安となる。従来より、鉄鋼業において多用されている冷却水では、炭酸カルシウムのスケール生成の傾向を、ランゲリア指数を指標として評価している。ランゲリア指数(飽和指数)は、水の実際のpHと、理論的pH(pHs:水中の炭酸カルシウムが溶解も析出もしない平衡状態にあるときのpH)の差から求められる値である。このランゲリア指数が小さいほど、炭酸カルシウムは溶解しやすく、腐食性が強いことを示しているとされている。給水系における快適水質項目の目標値は、「−1程度以上とし、極力0に近づけること」とされている。
表3に示されているように、比較例1の処理で得た処理水は、他の例と比べると、上記した炭酸カルシウムのスケール生成の傾向の指標となるランゲリア指数が比較的大きいことから、スケール生成傾向にあるといえる。一方で、この比較例1における高速撹拌処理条件に酸を添加し、処理時におけるpHを調整した実施例1と比較例2の処理水では、いずれもランゲリア指数が概ね±0となった。このことは、pHを調整することのみで、少なくとも炭酸カルシウムのスケールの生成を抑制可能になることを示している。この点は、ランゲリア指数からみた配管等にスケール付着のし易さは、pH値が高いほど付着しやすいとされている技術常識と一致する。
(水質分析結果−2)
表4に示されているように、実施例1で処理した処理水と、比較例2で処理した処理水とでは、ランゲリア指数は同じ値を示したが、後述するように、本発明者らの詳細な検討によれば、実際の系において、両者を比較すると、配管等へのスケール付着の程度が全く異なるという事実を見出した。
そこで、実施例1、比較例1、2で得た処理水を使用して、下記に述べるようにして回分で付着試験を実施し、付着速度(MCMと略記)を求め、比較検討を行った。具体的には、各処理水1Lをそれぞれガラスビーカーに採り、40mm×20mm×3mmの冷間圧延鋼板(SPCC)をテストピースとし、これをガラスビーカー内に浸漬させ、テストピースに、各処理水が流速約1.0m/sであたるようにマグネチックスターラー回転させて、付着試験を行った。その際に、各処理水は、恒温槽で40℃に保温し、1日1回水を入れ替え、14日間撹拌を続けた。その後、テストピース表面に付着したスケールの付着量を測定し、以下の式で付着速度を求めた。その結果を表4に示した。
表4に示したように、実施例1と比較例1との比較から、高速撹拌処理する際のpHを8.5から7.8に調整するだけで、付着速度(MCM)は、25から10へと半減以下となることが確認された。また、同一のランゲリア指数であった実施例1の処理水と、比較例2の処理水とを比較すると、水中のSS濃度の低い実施例1の処理水の方が更にMCMは小さくなることを確認した。これらのことから、カルシウムが析出・成長することによるスケール析出を抑制するためには、水中のSS濃度の低減と、凝集処理する際のpH値が重要であることが確認された。
<実施例2、比較例3>
上記した模擬試験用のサンプルを使用しての試験結果から、特に、製鉄所において大量に使用されている直接系冷却循環水に対し、本発明を適用することが有用であるとの結論をし、実際の系で、その効果を確認した。具体的には、図1に示したように、スケールピット3への無機凝集剤の添加をすることなく、スケールスルース1の最上流に、実施例1で使用したと同様の有機凝集剤2を3mg/Lの濃度となるように添加した。更に、実施例2では、硫酸を2mg/L程度添加して、循環する冷却水のpHが8.1となるようにした。これに対し、硫酸を添加しない比較例3では、循環する冷却水のpHは8.5程度であった。この状態で、2か月半連続運転したところ、図3に示したように、実施例2の効果は極めて著しいものであった。
本発明の活用例としては、粗大なSSと微細なSSとが併存している状態の大量の廃水である、製鉄所の、連続鋳造工程における鋼材の直接冷却廃水、圧延工程における鋼材の直接冷却廃水の処理に適用することが挙げられるが、これらの廃水処理にいて達成できる多大な経済的な効果と、製鉄所の連続鋳造工程や熱間圧延工程における生産性の向上が実現できるため、その実用価値は極めて高い。すなわち、本発明の鉄鋼系廃水の処理方法では、有機凝集剤の添加位置を工夫し、且つ、懸濁物質が除去処理された処理水のpHを8.3以下とするという極めて簡便な方法で、上記したような鉄鋼系廃水から、粗大なSSと微細なSSとを同一の処理で、極めて迅速に凝集沈降させて、容易に除去処理することが実現されるとともに、SSを除去処理した処理水は、濁りのない極めて清澄なものであるので、処理水を、冷却処理とpH調整するだけでそのまま循環使用することができ、更に、処理水を循環使用した際に生じていた、処理水中に溶存するカルシウムによるスケールの析出が劇的に抑制されるという顕著な効果が得られる。
本発明の鉄鋼系廃水の処理方法は、下記に挙げるように、従来方法と比べて格段に簡略化できるので、その経済的効果は著しく、その適用が期待される。本発明の鉄鋼系廃水の処理方法は、従来方法のように、粗大なSSと微細なSSとを分けて処理する必要がないので、使用する有機凝集剤の種類や量を低減でき、更には、微細な懸濁物質の凝集沈殿に要していた広大な沈殿槽を不要とすることも可能であり、また、凝集・沈降物が従来の処理によって得られたものと比較し、その処理が極めて簡便にでき、電磁フィルターやろ過機等の設備も不要とできる可能性があり、従来の処理方法を根底から覆し、これまで必要とされてきた設備や、これに伴う運転や維持管理が不要とでき、極めて経済的な処理が可能になるので、本発明の鉄鋼系廃水の処理方法は、極めて大きな経済的な効果をもたらすものと期待される。
また、本発明の処理方法で除去処理された、有機凝集剤と粗大なSSと微細なSSとが凝結・凝集してなる沈殿物(スケールスラッジ)は、取り扱い易く、クラム重機で浚渫することができ、しかも強固に凝結したものとなるので、当該作業の際における、上澄み液の水質への影響も小さく、これによって、沈殿物の処理が大幅に簡略化でき、さらには、この点でも極めて経済的な処理が可能になる。
本発明の鉄鋼系廃水の処理方法で規定する、カルシウムによるスケールの析出の抑制手段は、通常の処理水のpHを若干下げて8.3以下にするという極めて簡便なものであり、使用する薬剤の費用や労力がかからないのに対し、スケール析出の抑制効果は劇的なものであり、その利用が期待される。
本発明の鉄鋼系廃水の処理方法では、無機凝集剤を使用する必要がなく、従来の無機凝集剤を使用した方法において懸念されていた、処理水に混入した塩素イオン等による悪影響の問題も生じないので、この点からも極めて経済的である。
1:スケールスルース(開放樋)
2:有機凝集剤
3:スケールピット
4:冷却塔
5:電磁フィルター
6:スプレー戻水(処理水A)
7:スプレー直送水(処理水B)
8:沈殿池
9:ろ過機

Claims (8)

  1. 懸濁物質を除去処理後の処理水を冷却水として使用する系の懸濁物質を含む鉄鋼系廃水の処理方法において、
    少なくとも、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、少なくとも1種の有機凝集剤が共存する状態を生じさせ、
    前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させ、これらの懸濁物質を同時に除去し、
    更に、少なくとも、懸濁物質を除去した後の処理水のpHが8.3以下となるようにすることで、該処理水を冷却水として循環使用した系内におけるカルシウムによるスケール析出を抑制するように構成したことを特徴とする鉄鋼系廃水の処理方法。
  2. 前記鉄鋼系廃水が、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させてこれらの懸濁物を除去した後に、処理水を、直接系冷却循環水として使用する系のものであり、
    前記有機凝集剤を、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存している廃水が発生する地点から、該廃水を浄化するための水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点で廃水に添加し、且つ、前記直接系冷却循環水はスケール分散剤を含まない請求項1に記載の鉄鋼系廃水の処理方法。
  3. 前記有機凝集剤の添加量が0.1mg/L以上であり、且つ、前記pHが、7.0以上8.3以下である請求項1又は2に記載の鉄鋼系廃水の処理方法。
  4. 前記pHが、7.5以上8.1以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄鋼系廃水の処理方法。
  5. 前記粗大な懸濁物質が、粒径が50μm以上のものであり、前記微細な懸濁物質が、粒径が50μmに満たないものであり、且つ、これらの物質の併存状態が、微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が、その質量比で0.5以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄鋼系廃水の処理方法。
  6. 前記乱流状態の水のレイノズル数が、8000以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の廃水中の鉄鋼系廃水の処理方法。
  7. 前記有機凝集剤が、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量とpH7におけるカチオンコロイド当量の2乗を乗じた値をNとした場合に、N値が500万〜6000万である請求項1〜6のいずれか1項に記載の鉄鋼系廃水の処理方法。
    (上記式中の、R1、R2は、それぞれ独立にCH3又はC25を表し、R3は、H、CH3又はC25のいずれかを表す。X-は、アニオン性対イオンを表す。)
  8. 前記有機凝集剤が、さらに、重量平均分子量が200万〜1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が0.7〜4.1である請求項7に記載の鉄鋼系廃水の処理方法。
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