JP2015229336A - 透明積層フィルム、透明導電性フィルム及び透明基板 - Google Patents

透明積層フィルム、透明導電性フィルム及び透明基板 Download PDF

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Abstract

【課題】高い透明性を持ちつつも微粒子を多量に充填させた層を緻密に制御された厚みで積層させることにより、高温における熱寸法安定性に優れた、新たな透明積層フィルムを提供する。【解決手段】基材フィルムの表裏両側に光又は熱硬化樹脂層を有する積層フィルムであって、一方の硬化樹脂層(A層)は、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%含有し、かつ、基材フィルムの厚み(X)に対して0.04(X)〜0.15(X)の厚み(Y)を有する層であり、他方の硬化樹脂層(B層)は、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%含有し、かつ、該A層の厚み(Y)に対して0.75(Y)〜1.45(Y)以下の厚みを有する層であり、該A層と該B層の厚みが異なることを特徴とする、透明積層フィルムを提案する。【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、太陽電池(中でも特に有機系太陽電池)、フレキシブルディスプレイ、有機EL照明、タッチパネルなどの基板材料として用いることができる透明積層フィルム並びに該透明積層フィルムを用いてなる透明導電性フィルム及び透明基板に関する。
照明や表示部材、太陽電池など光を利用する分野において、特にフレキシブルディスプレイ、有機系太陽電池、有機EL照明など薄型かつ軽量である用途に関し、それらに使用する基板、フロントシートその他バックシートなどには、高い耐熱性や透明性、軽量性、フレキシブル性など、様々な性質が求められている。
有機ELなどの各種表示素子や太陽電池などの基板材料としては、従来、ガラスが用いられてきた。
しかしながら、ガラスは、割れやすい、重い、薄型化困難などの欠点があるため、近年のディスプレイの薄型・軽量化やフレキシブルディスプレイのニーズに伴い、このガラスの代替として、薄型でかつ軽量の透明樹脂製のフィルム状基板が検討されている。
このような用途で用いる場合、フィルム状基板には高い耐熱性が求められるが、従来のポリエステルフィルムは、150℃以上の高温雰囲気下における熱寸法安定性が不十分であるため、ガスバリア加工用フィルムとして用いる場合には、機能層にひびが入る又はシワがよる結果、機能層が破壊されて、ガスバリア性を含む機能が十分に発現しないなどの問題があった。
さらに、フィルム基板上にTFTなどの回路を形成する場合、回路形成時にパターンずれを起こさないために、当該フィルムには、TFTの熱処理温度である200℃前後での高い寸法安定性が必要となる。
二軸延伸フィルムに対し高温下における寸法安定性を付与する手段として、フィルム製造工程の最終工程で熱弛緩処理(アニール処理)を付加する手法(例えば、特許文献1参照)と、通常の工程によって製造したフィルムの表面に各種塗膜を形成する手法(例えば、特許文献2参照)とが採られており、高い寸法安定性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムが製造されている。
また、フィルムの機械的性質を向上させるため、無機粒子を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。無機のナノ粒子を添加することで、表面硬度の上昇、線膨張係数の低減などが期待される。
また、特許文献4には、透明基板に使用可能な透明フィルムとして、基材フィルムの表裏両側に硬化層を有する透明積層フィルムについて開示されている。この透明積層フィルムは、透明性及び高温における熱寸法性に優れるという性質を有し、太陽電池、有機系太陽電池、フレキシブルディスプレイ、有機EL照明、タッチパネルなどの基材として用いることができる。
特開2008−265318号公報 特開2001−277455号公報 特開2007−298732号公報 国際公開第13/022011号パンフレット
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱弛緩処理(アニール処理)を付加する手法では、十分な寸法安定性を付与するためには、フィルム自体の製造コストが高くなってしまうなどの問題がある。また、アニール処理以上の温度まで加熱した場合は、基材の収縮が避けられない。
また上記特許文献2に記載の硬化塗膜を塗布する製造方法は、加工処理スピードが速く、トータルコスト的に安価になるが、硬化性材料の耐熱性が十分に吟味されておらず、200℃前後での高い寸法安定性を求められている用途には不十分である。
さらに、前記特許文献3に記載の透明多層シートにおいては、高い熱的安定性を得る為には微粒子を充填した層を積層しているが、このような層では、二軸延伸フィルムに適用した場合には、加熱した際に発生する収縮応力に負けてしまう場合がある。
また、有機ELなどの各種表示素子の基板材料としてフィルム状基板を用いる場合、高温下で該フィルム状基板上に無機材料である透明電極を積層させるが、透明電極の線膨張係数が該フィルム状基板よりも小さいため、かかる透明電極を積層・加熱収縮後冷却した際に該フィルム状基板は、透明電極を積層させていない側に反ってしまうことがある。
そこで本発明の目的は、上記従来技術の問題を鑑み、高い透明性を持ちつつも微粒子を多量に充填させた層を緻密に制御された厚みで積層させることにより、高温における熱寸法安定性に優れた、新たな透明積層フィルムを提供せんとするものである。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、光の散乱が少ないナノレベルの微粒子を高い充填量で充填させて隣接する微粒子との距離を限りなく小さい値にした硬化樹脂層を、基材フィルムの両面に制御された厚みで積層して非対称厚み構成とした透明積層フィルムは、透明性が高く、可撓性に優れ、温度変化に対する寸法変化や反りが小さく、かつ、各種の光学素子用の基板として用いた場合において、該透明積層フィルム上に透明電極等の無機層を積層させた後も反りの少ないという特性を備えることを明らかにし、該透明積層フィルムによって、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、基材フィルムの表裏両側に光又は熱硬化樹脂層を有する積層フィルムであって、一方の硬化樹脂層(A層)は、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%含有し、かつ、基材フィルムの厚み(X)に対して0.04(X)〜0.15(X)の厚み(Y)を有する層であり、他方の硬化樹脂層(B層)は、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%含有し、かつ、該A層の厚み(Y)に対して0.75(Y)〜1.45(Y)以下の厚みを有する層であり、該A層と該B層の厚みが異なることを特徴とする、透明積層フィルムを提案する。
本発明が提案する透明積層フィルムは、表裏両側に厚みの制御された光又は熱硬化樹脂層を有するため、高い透明性を発揮しつつ、有機ELなどの各種表示素子の基板材料として無機層等の他の機能層を積層させた後の加熱処理によっても反りの発生を抑えることができる。
したがって、本発明の透明積層フィルムは、ディスプレイ材料、太陽電池、光電素子基板などに好適に使用することができる。
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明が下記実施形態に限定されるものではない。
[本積層フィルム]
本発明の実施形態の一例に係る透明積層フィルム(以下、「本積層フィルム」と称する。)は、基材フィルムの表裏両側に厚みの異なる光又は熱硬化樹脂層を有するものである。
(基材フィルム)
本積層フィルムに用いられる基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィンホモポリマーや環状オレフィンコポリマー等の環状オレフィン系樹脂などの樹脂を含有するフィルム、好ましくはこれらの樹脂を主成分とするフィルム、例えば、これらの樹脂からなるフィルムを挙げることができる。ただし、該基材フィルムを構成する樹脂及びその製法を限定するものではない。
これらの中でも、透明であり、かつ、融点が220℃以上である、ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点260℃)、ポリエーテルイミド樹脂(融点275℃)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(融点280℃)、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂(融点270℃)などを使用するのが好ましい。またこれらの樹脂は、一種類又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
中でも二軸延伸ポリエステルフィルムが基材フィルムとして特に好ましい。二軸延伸ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルを主成分とするフィルムであればよい。中でも、光学特性の観点からポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが好ましい。
当該二軸延伸ポリエステルフィルムとしては、光学特性及び機械特性を確保する観点から、例えば、押出法により押し出されたポリエステルフィルムを二軸延伸し、必要に応じて熱固定したフィルムが好ましい。
(基材フィルムの厚み)
上記基材フィルムの厚みは、1μm〜200μmであるのが好ましく、中でも5μm以上或いは100μm以下、その中でも12μm以上或いは50μm以下であるのがより好ましい。このような範囲とすることで、光線透過率の向上、ハンドリング性能が高いなどの利点を得ることができる。
基材フィルムは、易滑性の付与及び各工程での傷発生防止を主たる目的として微粒子を含有するものであってもよい。
当該微粒子としては、平均粒子径が0.02μm〜3.0μm、中でも0.02μm〜2.0μmの微粒子が好ましい。平均粒子径が0.02μm以上であれば、基材フィルムの巻き特性が劣ることもなく作業性を維持することができる。また、平均粒子径が3.0μm以下であれば、基材フィルム表面の平面性を維持することができ、表面粗さによるヘーズの上昇を抑えることができる。
ここで「平均粒子径」とは、数平均粒子径の意味であり、微粒子の形状が球状の場合には、「測定粒子の円相当径の総和/測定粒子の数」で算出することができ、また、微粒子の形状が球状でない場合には、「短径と長径の総和/測定粒子の数」で算出することができる。また、二種類以上の微粒子を含有する場合には、それら混合微粒子の平均粒子径が前記の「平均粒子径」となる。他の箇所に記載された平均粒子径についても同様である。
基材フィルムが含有する微粒子の種類としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシム、フッ化リチウム、ゼオライト、セライト、カオリン、タルク、カーボンブラックなどからなる微粒子を挙げることができる。また、特公昭59−5216号公報に記載されたような架橋高分子粒子であってもよい。また、これらの微粒子うちの一種類を含有してもよいし、二種類以上を組み合わせて含有してもよい。但し、基材フィルムが含有する微粒子の種類を前記例示列挙されたものに限定するものではない。
また、基材フィルム中の微粒子の含有量は、0.0005質量%〜0.5質量%であるのが好ましく、中でも0.001質量%以上或いは0.3質量%以下であるのが特に好ましい。微粒子の含有量が、0.0005質量%以上であれば、フィルムの巻き特性が劣るようなことがなく、作業性を確保することができる。
<光又は熱硬化樹脂層A、B>
光又は熱硬化樹脂層は、本積層フィルムに主に耐熱性を付与する他、非対称厚み構成でありながら制御された厚み構成により反りの発生を抑えることを可能とする層であり、基材フィルムの表裏一側に位置する光又は熱硬化樹脂層(A層)は、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%の割合で含有し、かつ、基材フィルムの厚み(X)に対して4〜15%(0.04X〜0.15X)の厚み(Y)を有する層((Y)=0.04X〜0.15X)とする一方、基材フィルムを介して光又は熱硬化樹脂層(A層)とは反対側に位置する光又は熱硬化樹脂層(B層)は、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%の割合で含有し、かつ、前記A層の厚み(Y)の75%〜145%以下の厚み(Z)を有する層((Z)=0.75〜1.45(Y))とするのが好ましい。
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に光又は熱硬化樹脂層(A層、B層)を1層以上備えており、これらA、B層は共に微粒子の含有量が多く、各微粒子が隣接する微粒子と密に接するため、高温での熱寸法安定性を得ることができる。すなわち、高温雰囲気において基材フィルムが収縮しようとしたとしても、A、B層はこれら収縮に抵抗して、積層フィルム全体としては、その収縮応力に耐えることができ、積層フィルムとしての熱寸法安定性を高めることができる。
また、前記の構成において、A、B層の厚みを厚くすると高温での耐収縮性がより向上することから、A、B層での厚みをそれぞれ異なるものとすると前記した高温での熱寸法安定性も異なることになり、結果として積層フィルムに反りが生じることとなる。
このため、前記の構成において、A、B層の厚みは、同一或いは同等の対称厚み構成とするのが通常である。
しかしながら、本積層フィルムは、厚みの異なるA、B層を有する、すなわち、非対称厚み構成でありながら積層フィルムとして実用上耐え得る耐反り特性を有するから、例えば、厚みの薄い層側に、有機ELなどの各種表示素子の基板材料として無機層を積層させた場合において、該無機層を積層させたフィルム全体の構成が対称厚み構成に近づくため、結果として反りの発生を抑えることができる。
(光又は熱硬化樹脂層)
本発明では、上記基材フィルムの表裏両側に光又は熱硬化樹脂層を設ける。
そして、一方の光又は熱硬化樹脂層をA層とした場合、該A層は、上述のように、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%の割合で含有し、かつ、基材フィルムの厚み(X)の4〜15%の厚み(Y)とするのが好ましい(A層の厚み(Y)=0.04(X)〜0.15(X))。
このような耐熱性樹脂層Aを形成することで、加熱時に基材フィルムが収縮するのを抑制することができ、また本積層フィルム表面で反射する光の量を低減させて高い透明性を付与することができる。
上記A層における微粒子の含有率は、40体積%〜70体積%であることが好ましい。
当該含有率が40体積%以上であれば、微粒子間距離を短くすることができるから、加熱時に基材フィルムの配向に由来して発生する収縮による寸法変化を当該微粒子によって低減させることが可能となる。他方、当該含有率が70体積%以下であれば、A層が脆化してしまう問題を生じることもない。
かかる観点から、耐熱性樹脂層Aにおける微粒子の含有率は40〜70体積%であるのが好ましく、中でも50体積%以上或いは65体積%以下、その中でも特に55体積%以上或いは65体積%以下であるのがさらに好ましい。
上記A層の厚みは、基材フィルムの厚みの4〜15%であることが好ましく、中でも5%以上或いは10%以下、その中でも特に7%以上或いは10%以下であるのがさらに好ましい。A層の厚みをこのような範囲とすることで、基材フィルムの収縮応力に対して安定であり、かつ片面塗布時の反りによる生産性の低下を抑制することもできる。
また、他方の光又は熱硬化樹脂層をB層とした場合、該B層は、上述のように、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%の割合で含有し、かつ、該A層の厚み(Y)の75%〜145%の厚み(Z)とするのが好ましい(B層の厚み(Z)=0.75(Y)〜1.45(Y))。またB層における微粒子の含有率の好ましい範囲はA層と同様である。
このようなB層であれば、本積層フィルム作製時における反りの発生を抑制しながら、加熱時に基材フィルムが収縮するのを抑制することができる。
かかる観点から、B層の厚みは、A層の厚みの75%以上95%以下又は105%以上145%以下であることが好ましく、中でも75%以上90%以下又は110%以上145%以下であることがより好ましい。
B層の厚みを、このようにA層の厚みとの関係で規定することにより、上記A層とのバランスにより、本積層フィルム作製時の反りの発生を抑制しながらも、本積層フィルムに対して、有機ELなどの各種表示素子の基板材料として無機層等の別の機能層を積層した後、加熱処理を行った際に発生する反りを抑制することができる。
このように、本発明によれば、上記のように本積層フィルムに別の機能層を積層させる前後の両方において、反りの発生を抑えることができる。
さらに、B層の厚みは0.5μm以上であるのが好ましい。B層の厚みが0.5μm以上であれば、加熱時に基材フィルムの配向に由来して発生する収縮による寸法変化を、耐熱性樹脂層により低減させると同時に、基材の持つ表面凹凸の影響を低減することが可能となるからである。かかる観点から、B層の厚みは0.5μm以上であるのが好ましく、中でも1μm以上、その中でも2μm以上であるのがさらに好ましい。
また、A層及びB層の合計厚みは、基材フィルムの厚みの60%以下であるのが好ましい。表裏両側のA層及びB層の合計厚みが基材フィルムの60%以下であれば、基材のもつハンドリング性が失われることがないからである。
かかる観点から、A層及びB層の合計厚みは、基材フィルムの厚みの60%以下であるのが好ましく、中でも50%以下、その中でも45%以下であるのがさらに好ましい。
他方、表裏両側のA層及びB層の合計厚みは、基材フィルムの8%以上であることが好ましい。表裏両側の耐熱性樹脂層A及びBの合計厚みが、基材フィルムの8%以上であれば、耐熱性を高めることができ、例えば、本積層フィルムを200℃で10分間加熱した際の縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の熱収縮率が、いずれにおいても1%未満とすることができる。但し、耐熱性樹脂層A及びBが過剰に厚いと、ひびや割れが発生しやすくなり好ましくない。
かかる観点から、表裏両側のA層及びB層の合計厚みが基材フィルムの8%以上であることが好ましく、中でも基材フィルムの厚みの10%以上であることがより好ましく、特に15%以上或いは50%以下であることがより一層好ましく、中でも特に20%以上或いは45%以下であることがさらに好ましく、30%を越え45%以下であることが最も好ましい。
(光又は熱硬化樹脂層の構成成分)
本発明に用いられる光又は熱硬化樹脂層(以下、総称して単に「硬化樹脂層」と称する)は、具体的には、光重合性化合物、光重合開始剤及び無機微粒子を含む光硬化性組成物や光又は熱硬化性樹脂を含む材料(以下、総称して単に「硬化性組成物」という)を、基材フィルムに塗布し、光エネルギー又は熱エネルギーを与えることにより硬化(架橋)して得られる層である。ただし、このような形成方法に限定するものではない。
そこで、次に、硬化樹脂層を形成するのに用いることができる構成成分について説明する。
(光又は熱硬化性樹脂)
上記硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂などの光又は熱硬化性樹脂や、透明ポリイミド前駆体ワニスなどを挙げることができる。
(光重合性化合物)
上記光重合性化合物としては、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、フルオレン(メタ)アクリレート等の分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルモノマーを挙げることができる。
このような光重合性化合物を使用することにより、積層時の透明性、耐熱性などの効果を奏することができる。なお、これらは一種類又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート等を例示することができる。これらの光重合開始剤は、一種を単独で又は二種以上を併用して用いることができる。
活性エネルギー線として紫外線照射を応用する場合、光重合開始剤は必須であり、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、フォスフィンオキシド系及びパーオキシド系等を使用することができる。
上記光重合開始剤の量は、光硬化性組成物の硬化性等に応じて適宜調整するのが好ましい。例えば、上記光重合性化合物100重量部に対して1〜10重量部の割合で含有させるのが好ましい。
(微粒子)
上記硬化樹脂層中に含有させる微粒子は、平均粒子径が1nm〜200nmである微粒子であるのが好ましく、中でも平均粒子径が4nm以上或いは100nm以下、その中でも5nm以上或いは50nm以下の範囲にある微粒子を用いるのが特に好ましい。
平均粒子径が200nm以下であれば、入射した可視光領域の光はミー散乱現象によって入射する光に対して散乱現象を起こすことがなく、本積層フィルムの透明性を確保することができる。
上記硬化樹脂層中に含有させる微粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ソーダガラス、ダイヤモンド等の微粒子を挙げることができる。中でも、硬化樹脂層に入射する屈折光の量を低減させるためには、屈折率が0.2未満であるものがより好ましい。特に好ましくは、線膨張係数や比重、価格の点において、酸化ケイ素微粒子が好ましい。
酸化ケイ素微粒子は、表面修飾されたものが多数開発されており、表面修飾されたものを用いることで、硬化性組成物中での分散性が向上し、均一な硬化膜を形成することができる。酸化ケイ素微粒子の具体例としては、乾燥された粉末状の酸化ケイ素微粒子、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)等を使用することができる。
中でも、分散性の点で、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いるのが好ましい。また、分散性を向上させる目的であれば、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を極端に損なうことのない範囲で、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等の表面処理材や表面に対して易分散処理をされたものであっても、好適に用いることができる。
上記硬化性組成物中には、例えば、硬化性や粘度及び硬化物の吸水性、硬度など諸物性を調整するために、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマーを任意で添加することができる。なお、これらは一種類又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
(その他の成分)
上記の硬化樹脂層は、上記硬化性組成物以外の成分として、例えば、上記例示以外の他の光硬化性又は熱硬化性のオリゴマー・モノマーや光重合開始剤、増感剤、架橋剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、充填材、熱可塑性樹脂等を、硬化性や透明性、吸水性等の物性に支障とならない範囲で含有することができる。
その他、上記の硬化樹脂層は、硬化性、吸水性及び硬度などの物性を調整するために、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等のポリマー成分を含有させることも可能である。
<積層構成>
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏面に硬化樹脂層(A層及びB層)を直接重ねて積層してもよいし、また、基材フィルムと当該耐熱性樹脂層との間に他の層が介在してもよい。基材フィルムと当該耐熱性樹脂層との間に、耐熱性樹脂層の基材フィルムへの密着性を改良するためのプライマー層などを介在させることができる。
<物性>
本積層フィルムが備えることができる各種物性について説明する。
(反り)
本積層フィルムに関しては、下記の方法にて測定した反りの値を20mm未満、特に好ましくは7mm未満、さらに特に好ましくは5mm未満とすることができる。本積層フィルムの反りの測定方法は、下述の実施例に記載の方法に従えばよい。
(全光線透過率)
本積層フィルムに関しては、全光線透過率を80%〜95%、中でも85%以上或いは95%以下、その中でも90%以上或いは95%以下とすることができる。本積層フィルムの全光線透過率の測定方法は、下述の実施例に記載の方法に従えばよい。
(熱収縮率)
本積層フィルムに関しては、200℃で10分間加熱した際の縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)のいずれの収縮率も1.2%未満とすることができる。
本積層フィルムがかかる範囲の収縮率を有することで、回路や素子を形成する際の寸法ズレを少なくし、また無機バリア層を積層させる際にもより高いバリア性を得られる利点を有する。
特に二軸延伸フィルムなどでは、製膜工程中に横方向の施緩処理によって収縮率を低減することが可能であるが、縦方向の施緩処理は別工程が必要である場合が多く、一般的に縦方向の収縮率が相対的に大きくなる。そのため、本積層フィルムでは特に縦方向の収縮率を低減させることが好ましい。
基材フィルムの表裏両側に、上記硬化樹脂層を備えることで、高温領域における基材フィルムの収縮応力に該硬化樹脂層が対抗して収縮を緩和することができる。そのため、高温時の収縮に対する本積層フィルムの熱寸法安定性を上記のように向上させることができる。
本積層フィルムは、このように高温下で高い熱寸法安定性を備えているため、本積層フィルム上に透明導電層を形成する際、高温雰囲気下(具体的には150〜220℃)で透明導電層を形成することが可能である。その結果、透明導電層の結晶化を十分に高めることができ、透明導電層の表面抵抗値を十分に低くすることができる。本積層フィルムの熱収縮率の測定方法は、下述の実施例に記載の方法に従えばよい。
<製造方法>
本積層フィルムは、例えば、基材フィルムの少なくとも表裏両面に、硬化性組成物を塗付し、硬化させて上記硬化樹脂層を形成して、本積層フィルムを作製することができる。但し、本積層フィルムの作製方法をこのような方法に限定するものではない。
上記硬化性組成物は、必要によって溶剤を添加して使用することができる。すなわち、上記硬化性組成物を含む溶液(塗料とも言う)として使用することができ、この溶液を基材フィルムに、塗布・硬化して、硬化樹脂層を形成することができる。
後述する種々のコーティング方式に応じて、溶剤の種類や添加量は適宜選択することができる。
上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、さらにシクロヘキサノン、イソプロパノール等を例示することができる。
これら溶剤の使用量は、特に制限されるものではない。通常、硬化性組成物の固形分全体量100質量部に対して、0〜300質量部である。
硬化性組成物などを塗工する方法としては、例えば、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ディップコートなどによって、硬化性組成物を基材フィルムに塗工する方法を挙げることができる。また、ガラスやポリエステルフィルム上でA層及びB層を成形した後、成形したA層及びB層を基材フィルムに転写させる方法も有効である。
硬化性組成物を硬化(架橋)させる方法としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化等の方法を単独又は組み合わせて用いることができる。中でも、短時間かつ比較的容易に硬化達成可能なことから、紫外線硬化による方法を用いることが好ましい。
紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置を使用して、必要に応じて光量、光源の配置などを調整することで実施することができる。
上記の高圧水銀灯を使用する場合は、80〜160W/cmの光量を有したランプ1灯に対して搬送速度5〜60m/分で硬化させるのが好ましい。
他方、電子線により硬化させる場合は、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置の使用が好ましい。
<ヒートセット処理>
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に所定の硬化樹脂層を備えた構成であるから、基材フィルムに対してヒートセット処理を行わなくても、透明性及び高温(例えば200℃以上)における熱寸法安定性に優れた積層フィルムを得ることができる。
しかしながら、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされた基材フィルムを使用することも可能である。
但し、基材フィルム上に硬化性組成物を塗布する前に、予め基材フィルムにヒートセット処理を施すことにより、基材フィルム及び本積層フィルムの寸法安定性をさらに向上させることができる。
中でも、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされた二軸延伸ポリエステルフィルムは、基材フィルムとして好ましい一例である。
基材フィルムのヒートセット処理は、該基材フィルムのガラス転移温度をTgとした際、Tg〜Tg+100℃の温度で0.1〜180分間、該基材フィルムを加熱処理するのが好ましい。
ヒートセット処理の具体的手法は、必要な温度、時間を維持できる方法であれば特に限定されない。例えば、必要な温度に設定したオーブンや恒温室で保管する方法、熱風を吹き付ける方法、赤外線ヒーターで加熱する方法、ランプで光を照射する方法、熱ロールや熱板と接触させて直接的に熱を付与する方法、マイクロ波を照射する方法などが使用できる。また、取扱が容易な大きさにフィルムを切断してから加熱処理しても、フィルムロールのままで加熱処理してもよい。さらに、必要な時間と温度を得ることができる限りにおいては、コーター、スリッター等のフィルム製造装置の一部分に加熱装置を組み込み、製造過程で加熱を行うこともできる。
<用途>
本積層フィルムは、例えば、太陽電池、有機系太陽電池、フレキシブルディスプレイ、有機EL照明、タッチパネルなどの基板材料として用いることができる積層フィルム及びこれを基材として備えた透明基板等として使用することができる。但し、これらの用途に限定されるものではない。
より具体的には、本積層フィルム上に、直接又は樹脂材料からなる下塗り層を介して、透明導電層を形成して導電性フィルム(「本導電性フィルム」と称する)を作製することができる。
本積層フィルムに設けられた硬化樹脂層の一方又は両方に、ガスバリア加工を施すことで、バリアフィルム性を有する透明導電性フィルムとして使用することもできる。
[本導電性フィルム]
次に、本積層フィルム上に、直接又は樹脂材料からなる下塗り層を介して、透明導電層を形成してなる構成を備えた導電性フィルム(「本導電性フィルム」と称する)について説明する。
<透明導電層>
上記透明導電層の材料を特に限定するものではない。透明な導電性の膜を形成することができる材料であればよい。例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、さらには酸化インジウム、酸化亜鉛及び酸化ガリウムを含有する複合酸化物(IGZO)などの薄膜が挙げられる。これらの化合物は、適切な生成条件を選択することにより、透明性と導電性を両立できる。
透明導電層の厚みは、100nm未満であることが好ましく、中でも15nm以上或いは50nm以下であることがより好ましく、その中でも20nm以上或いは40μm未満であることが最も好ましい。これまで、透明導電性フィルムの表面抵抗値を低く(例えば、150Ω/□未満)するためには、導電層の厚みを厚くする試みがなされているが、本導電性フィルムによれば、高温下で高い熱寸法安定性を有するので、高温での導電層形成が可能であり、導電層の厚みを厚くしなくても、十分に低い表面低抵抗値を得ることができる。
透明導電層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法などが知られており、材料の種類及び必要な膜厚に応じて適宜の方法を選択して使用することができる。例えば、スパッタリング法の場合は、化合物ターゲットを使用した通常のスパッタ、金属ターゲットを使用した反応性スパッタ等が使用される。この際、酸素、窒素、水蒸気などの反応性ガスを導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を併用したりすることもできる。
上記透明導電層の形成条件としては、温度150℃〜220℃の範囲であることが好ましい。例えば、スパッタリング法によりフィルム上に透明導電層を形成する場合、通常のスパッタリング温度は、室温〜100℃程度である。これに対し、本積層フィルムは上述のように熱寸法安定に優れているため、上記のような比較的高温下(150℃〜220℃)であってもスパッタリングすることができるから、これにより透明導電層の結晶化を十分に促進させることができ、表面抵抗値が小さい透明導電性フィルムを得ることができる。
<下塗り層>
本積層フィルム上への透明導電層の形成の際、下塗り層を介することが好ましい。下塗り層を介することによって、透明導電層の密着性、結晶性を向上させることができる。中でも、本積層フィルム上への透明導電層の形成の際に上記下塗り層を介在させることが好ましい。このように下塗り層を介在させることで、表面平滑性を高め、透明導電層の連続性を高めることができる理由から、本導電性フィルムの表面抵抗値を小さくすることができる。
下塗り層の材料は樹脂材料であれば特に限定されず、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が好適に用いられる。その他にも、光又は熱重合性化合物を含む組成物を使用し、これを重合させて下塗り層を形成することもできる。
なお、下塗り層の平坦性が悪いと、透明導電層の結晶成長を阻害する可能性があることから、下塗り層は実質的に粒子を有していないことが好ましい。
<用途>
本導電性フィルムは、上述のように、透明性を維持しつつ、加熱処理による寸法変化(熱寸法安定性)が少なく、表面抵抗値が小さいという利点を有するため、例えば、液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネルなどのディスプレイ材料の基板や太陽電池の基板のほか、光電素子基板などに好適に使用することができる。
また、本導電フィルムは、前記のような利点を備えることから、ガスバリア加工を行うことで、有機ELなどの半導体デバイス、液晶表示素子及び太陽電池用途にも好適に使用することができる。
<用語の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。
以下、実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。
(平均粒子径の測定方法)
本積層フィルムに使用した微粒子の平均粒子径は、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)S−4500を用いて測定することができる。具体的には、試料の傾斜角を30度、加速電圧5kV、ソーキングディスタンス15mm、直接倍率を30,000倍に設定し、デジタル画像を取得後、得られた画像からランダムに200個の粒子の粒径を実測し、その平均を求めることで微粒子の平均粒子径とした。この際、粒子の形状が球状の場合には、「測定粒子の円相当径の総和/測定粒子の数」を算出し、粒子の形状が球状でない場合には、「短径と長径の総和/測定粒子の数」を算出して平均粒子径を求めた。
(本積層フィルムの収縮率)
本積層フィルムの収縮率は、JIS−C2330 7.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて、恒温槽の温度を120℃から180℃に変更し、標線を記した短冊の加熱前後の寸法変化率を測定し求めた。
具体的には、以下の方法により測定した。フィルム流れ方向を長辺とし、幅10mm、長さ100mmの短冊形試験片を3個用意し、各々の試験片の中央部を中心として、間隔100mmの標線を記した。標線間の間隔を0.01mmの精度でノギスを用いて読み取った。この試験片を、180℃の恒温槽に30分間無荷重の状態で懸垂し、取り出した後、室温で、15分以上放冷し、先に読んだ標線間の間隔を測定した。加熱前後の標線間の間隔の変化率を求め、加熱前後の寸法変化率とした。
(本積層フィルムの全光線透過率)
本積層フィルムの全光線透過率は、以下の装置を用い、JIS K7361−1に準拠する方法にて測定した。
反射・透過率計:株式会社村上色彩技術研究所「HR−100」
(本積層フィルムの反り)
反りの値の測定方法としては、本積層フィルムから、巻き取り方向(MD方向)、直交方向(TD方向)の長さがそれぞれ200mm、50mmの短冊状の本積層フィルム片を切り出す。切り出した本積層フィルム片を、短辺側の片方の端辺を固定して吊るした状態で、熱風乾燥機を用いて200℃で30分熱処理した後、反りの内面側を上面にして平板に静置し、室温にて放置冷却後、固定されていない短辺側の端辺中央部の、平板からの浮き上がりの値を計測し、MD方向の反りの値とする。
測定は、MD方向及びTD方向について5回ずつ行い、その平均値を算出し、MD方向及びTD方向の平均値のうち、大きな値を本積層フィルムの反りの値とすればよい。
[実施例1〜3、比較例1〜3及び参考例]
(硬化性組成物の調製)
光硬化性6官能ウレタンアクリレート(分子量約800、新中村化学工業株式会社製、商品名「U−6LPA」)21.9質量%、微粒子(株式会社アドマテックス製、商品名「YA010C−SM1」、平均粒子径10nm)77.4質量%及び光硬化剤(BASF社製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.7質量%に対して、溶媒(荒川化学工業株式会社製、メチルエチルケトン)34.1質量部を均一に混合し、硬化樹脂層形成用の硬化性組成物の塗料Aを得た(組成物中の固形分量は66%であった。)。
(本積層フィルムの作製)
厚さ23μmの二軸延伸フィルム(三菱樹脂株式会社製、商品名「T602E25N−N」、ポリエチレンテレフタレートフィルム)の片面に、上記で調製した塗料Aを、硬化後の厚みが1.2μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化樹脂層(A層)を有する積層フィルムを得た。
該A層における微粒子の体積割合は63.4体積%であった。また光重合性化合物の体積割合は35.5体積%であり、光開始剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)の体積割合は1.1体積%であった。
前記積層フィルムのA層が形成されていない面に対し、塗料Aを厚み0.6μm〜2.4μmになるよう、塗布して硬化を行うことにより、他面に硬化樹脂層(B層)が形成され、基材フィルムの両面に硬化樹脂層を有する透明積層フィルムを得た。
得られた透明積層フィルムの特性を評価した。結果は表1に示す。なお、表1中の「巻き」評価とは、透明積層フィルムの反りが大きすぎて、該フィルムがくるくると巻いてしまう状況をいう。
Figure 2015229336
上記の実施例及び比較例の結果、基材フィルムの表裏両側に積層された硬化樹脂層の厚みが異なる構成の透明積層フィルムにおいては、一方の硬化樹脂層の厚みが、他方の硬化樹脂層の厚みの75%未満であるか、又は145%を超える(比較例1〜3参照)と、透明積層フィルムの製造時において、実用不可な反りが発生することがわかった。
また、硬化樹脂層の厚みを同一とすると、得られる透明積層フィルムの反りは発生しない(参考例参照)が、該透明積層フィルム上に別の機能層を積層させた後においては、厚みバランスが崩れることによる反りの発生が予測される。
一方で、予め特定の厚みバランスで非対称構成となるように制御された本積層フィルムであれば、透明積層フィルムの製造時においても実用可能な程度の反りの発生であって、例えば、これに別の機能層(線膨張係数が低い無機物(特にITO)など)を厚みの薄い層に積層させて使用すれば、該透明積層フィルムの使用段階時(ITOの場合、これを蒸着させた後の熱処理後)においては、厚みバランスが均一化されることで、既に発生している反りを低減することができる。

Claims (6)

  1. 基材フィルムの表裏両側に光又は熱硬化樹脂層を有する積層フィルムであって、
    一方の光又は熱硬化樹脂層(A層)は、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%含有し、かつ、基材フィルムの厚み(X)に対して0.04(X)〜0.15(X)の厚み(Y)を有する層であり、
    他方の光又は熱硬化樹脂層(B層)は、平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある微粒子を40〜70体積%含有し、かつ、該A層の厚み(Y)に対して0.75(Y)〜1.45(Y)の厚みを有する層であり、
    該A層と該B層との厚みが異なることを特徴とする、透明積層フィルム。
  2. 前記基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有するフィルムである、請求項1記載の透明積層フィルム。
  3. 前記硬化樹脂層(A層及びB層)の合計厚みが、基材フィルムの厚みの50%以下である請求項1又は2記載の透明積層フィルム。
  4. 前記微粒子が、酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の透明積層フィルム。
  5. 請求項1〜4の何れか一項記載の透明積層フィルムの表裏一側又は両側に、直接若しくは下塗り層を介して透明導電層を備える透明導電性フィルム。
  6. 請求項1〜4の何れか一項記載の透明積層フィルムを用いてなる透明基板。
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