JP6307909B2 - ガスバリア性積層フィルム及び透明基板 - Google Patents

ガスバリア性積層フィルム及び透明基板 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、太陽電池、有機系太陽電池、フレキシブルディスプレイ、有機EL照明、タッチパネルなどの基板材料として用いることができるガスバリア性積層フィルムに関する。詳しくは、ガスバリア性を備えると共に、例えば、回路形成や各種素子を該フィルムに配置する際などに加熱を行った時の寸法安定性に優れたガスバリア性積層フィルムや、このガスバリア性積層フィルムを基材として有する透明基板に関する。
照明や表示部材、太陽電池など光を利用する分野において、特にフレキシブルディスプレイ、有機系太陽電池、有機EL照明など薄型かつ軽量である用途に関し、その基板やフロントシート、バックシートなどには、高い耐熱性や透明性、軽量性、フレキシブル性、酸素や水蒸気バリア性など、様々な性質が求められている。
従来、有機ELなどの各種表示素子や、太陽電池などの基板材料として、ガラスが用いられてきた。しかしながら、ガラスは、割れやすい、重い、薄型化困難などの欠点があったばかりか、近年のディスプレイの薄型化及び軽量化や、ディスプレイのフレキシブル化に関して、十分な材質とはいえなかった。
そのため、ガラスに代わる代替材料として、薄型でかつ軽量の透明樹脂製のフィルム状基板が検討されている。
このような用途に用いる場合、樹脂製フィルムには高い耐熱性とガスバリア性が求められるが、従来のポリエステルフィルムは、150℃以上の高温雰囲気下における熱寸法安定性が不十分であるため、ガスバリア加工用フィルムとして用いる場合には、機能層にひびが入る又はシワがよる結果、機能層が破壊されて、ガスバリア性を含む機能が十分に発現しないなどの問題があった。
さらに、フィルム上にTFTなどの回路を形成する場合、回路形成時にパターンずれを起こさないために、樹脂フィルムにはTFTの熱処理温度である200℃前後での高い寸法安定性が必要となる。
2軸延伸フィルムに対し高温下における寸法安定性を付与する手段として、フィルム製造工程の最終工程として熱弛緩処理(アニール処理)を付加する手法(例えば、特許文献1参照)と、通常の工程によって製造したフィルムの表面に各種塗膜を形成する手法(例えば、特許文献2参照)とが採られており、高い寸法安定性を有する2軸延伸ポリエステルフィルムが開示されている。
また特許文献3には、高温時の寸法安定性が高く、透明性の高いポリイミドやポリアミド等が開示されている。これらは流延法によって製膜させていることから配向が殆ど存在しない為、加熱を行った際の収縮は発生しない。
特許文献4には、ポリマー基板及び平坦化コーティング層を含むフィルムであって、かかるコーティング層の表面上に形成されたバリア層を有する複合フィルムについて開示されている。かかる複合フィルムは、ポリマー基板がヒートセット及び熱安定化されているので、高い寸法安定性を有する。
さらに特許文献5には、平均線膨張係数が50ppm/K以下である層(A層)と、引張弾性率が1GPa以下である層(B層)とを備えた透明多層シートについて開示されている。より具体的には、B層/A層/B層の3層からなる透明多層シートなどが開示され、かかる多層シートは、全光線透過率が91%及び平均線膨張係数が43ppm/Kであって、透明性と寸法安定性に優れることが開示されている。
一方、ガスバリア性を向上する方法として、ポリエステルフィルムに対して酸化ケイ素等の無機透明膜を真空蒸着やスパッタによって極薄に積層させる事により、酸素や水蒸気透過性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
特開2008−265318号公報 特開2001−277455号公報 特開昭61−141738号公報 特表2011−518055号公報 特開2007−298732号公報 特開2006−96046号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱弛緩処理(アニール処理)を付加する手法は、十分な寸法安定性を付与するためには、フィルム自体の製造コストが高くなってしまうなどの問題がある。
また上記特許文献2に記載の硬化塗膜を塗布する製造方法は、加工処理スピードが速く、トータルコスト的に安価になるが、硬化性材料の耐熱性が十分に吟味されておらず、200℃前後での高い寸法安定性を求められている用途には不十分である。
さらに、上記特許文献3に記載の耐熱性透明フィルムは、原材料ワニスが高価であり、また製膜方法も高価である。
また、ガスバリア性向上方法を用いた従来のガスバリアフィルムを使用する場合、このフィルム上に透明電極や素子を形成する際に必要な加熱アニール工程に於いて、基材であるポリエステルフィルムが収縮してしまうことでガスバリア性が失われてしまうという欠点があった。
このように、より簡易な製造工程によって製造することができるだけでなく、今後の使用環境下においては、耐熱性が高く、かつガスバリア性に優れたフィルムの開発が求められる。
そこで本発明は、上記従来技術の問題を鑑み、ガスバリア性及び高温(例えば、180℃以上)における熱寸法安定性に優れた、ガスバリア性積層フィルムを提供せんとするものである。
本発明は、基材フィルム、該基材フィルムの両面に硬化層、及び、該硬化層の少なくとも一方の面にガスバリア層を備えた構成を有する積層フィルムであって、該硬化層が、光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び微粒子(C)を含有する硬化性組成物を用いて形成され、かつ微粒子(C)の平均粒径が1nm〜50nmの範囲にあることを第1の特徴とし、該ガスバリア層の厚みが、5〜100nmの範囲にあることを第2の特徴とし、フィルム全体の水蒸気透過率が1.0×10−2g/m/day以下であることを第3の特徴とする、ガスバリア性積層フィルムを提案する。
本発明は、硬化層とガスバリア層を特定の構成で有する積層フィルムにおいて、硬化層材料とガスバリア層厚みを調整することによって、透明性を維持しつつガスバリア性と高温(例えば180℃以上)における寸法安定性が高く、後の熱処理でも収縮などが発生しにくいという性質を有する。
また本発明のガスバリア性積層フィルムは、基材フィルムの両面に熱寸法安定性を向上させる硬化層、及びガスバリア層を備えることにより、高い透明性を発揮しつつ、加熱処理による寸法変化が少なく、更にガスバリア性も有するという利点を備える。したがって、本発明のガスバリア性積層フィルムは、例えば、液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネル、カラーフィルター、バックライトなどのディスプレイ材料の基板や、太陽電池の基板のほか、光電素子基板などに好適に使用することができる。
また、本発明が提案するガスバリア性積層フィルムは、前記のような利点を備えることから、高温での寸法安定性が要求される用途、特に包装用フィルム、電子部品用フィルムのほか、有機ELなどの半導体デバイスや、液晶表示素子、太陽電池用途にも好適に使用することができる。
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明が下記実施形態に限定されるものではない。
<ガスバリア性積層フィルム>
本発明の実施形態の一例に係るガスバリア性積層フィルム(以下、「本積層フィルム」と称する。)は、基材フィルムの両面に所定の硬化層を有し、かつ、該硬化層の少なくとも一方の面に所定のガスバリア層を備えた構成を有するため、高温領域における基材フィルムの収縮応力に当該硬化層が対抗して収縮を緩和することができる。そのため、高温時の収縮に対する本積層フィルムの寸法安定性を向上させることができる。
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両面に硬化層を直接重ねて積層してもよいし、また、基材フィルムと当該硬化層との間に他の層を介在させてもよい。例えば、基材フィルムと当該硬化層との間にアンカーコート層などを介在させることができる。
<硬化層>
硬化層は、少なくとも、光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び平均粒径が1nm〜50nmの範囲にある微粒子(C)を含有する硬化性組成物を用いて形成された層である。
なお、本積層フィルムの「硬化層」は、基材フィルムの表裏両側に、硬化性組成物を塗布し“硬化”させて形成するのが通常であるため、“硬化層”という名称とした。但し、硬化層の形成方法をそのような方法に限定するものではない。
<硬化性組成物>
(光重合性化合物(A))
上記光重合性化合物(A)としては、重合性不飽和結合を有する化合物、具体的にはエチレン性不飽和結合を有するモノマー又はオリゴマーを挙げることができ、より具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーのほか、単官能或いは多官能の(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーなどを挙げることができる。これらは、1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、モノマーとは、重合性官能基を有する構造単位の繰り返しがないものを表し、オリゴマーとは、重合性官能基を有する構造単位の繰り返し数が2以上であって、かつ末端に重合性官能基を有するものを表す。
上記単官能又は多官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートモノマーや、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の2官能(メタ)アクリレートモノマーや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレートモノマーや、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレートモノマーや、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレートモノマーや、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレートモノマーなどを挙げることができる。なお、これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、1分子内に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーを使用することが好ましい。これらの官能基を2個以上有することにより、分子の対称性が高くなり、その結果、分子の双極子モーメントが低下し、微粒子(特に無機微粒子)同士の凝集を抑制することが可能となる。
光重合性化合物(A)の分子量は、215〜4000の範囲にあることが好ましく、250〜3000の範囲にあることがより好ましく、300〜2000の範囲にあることが更に好ましい。このような分子量範囲の光重合性化合物(A)を用いることで、分子量が低すぎて、乾燥工程などでモノマーが無機微粒子へ吸着されてしまうなどの虞がなく、また分子量が高すぎて、硬化性樹脂組成物の粘度が過度に大きくなり、微粒子の分散が抑制され、微粒子同士が凝集してしまうなどの問題がなく、結果として、硬化層が基材フィルムの高温時の収縮を効果的に抑え込むことができる。なお、本明細書において、光重合性化合物の分子量が1500を超える場合には、重量平均分子量(Mw)としての分子量を表すものとする。
上記の他にも、例えば、硬化層の硬化性、吸水性及び硬度などの物性を調整するために、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等のポリマー成分を、上記硬化性組成物に対して任意で添加することができる。なお、これらは1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
(光重合開始剤(B))
上記光重合開始剤(B)としては、例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系、フォスフィンオキシド系及びパーオキシド系等を挙げることができる。
上記の光重合開始剤(B)の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、メチルベンゾイルホルメート等を例示することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
(微粒子(C))
上記微粒子(C)は、平均粒径が1nm〜50nmの範囲にあることを要し、中でも平均粒径が1nm以上或いは40nm以下、その中でも4nm以上或いは30nm以下の範囲にあることが特に好ましい。平均粒径が、かかる範囲にある微粒子を使用することで、ミー散乱現象によって入射する光に対して散乱現象を起こすことがなく、本積層フィルムの透明性を確保することができると共に、硬化層表面に露出した場合にも表面の平滑性を損なうことが少なくなる。
本積層フィルムの硬化層は、光の散乱が少ないナノレベルの粒径を有し、且つ隣接する粒子との距離が限りなく小さい値となるような最密充填構造(空間充填率74%)に近い充填状態で含有されるのが特に好ましい。
ここで「平均粒径」とは、数平均粒子径の意味であり、微粒子の形状が球状の場合には、「測定粒子の円相当径の総和/測定粒子の数」で算出することができ、また、微粒子の形状が球状でない場合には、「短径と長径の総和/測定粒子の数」で算出することができる。
また、2種類以上の微粒子を含有する場合には、それら混合粒子の平均粒径が前記の「平均粒径」となる。
上記微粒子(C)としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ソーダガラス、ダイヤモンド等の透明性を有する無機微粒子を挙げることができる。これらの中でも、硬化層の貯蔵弾性率を向上させることができる点、比重や価格等の点から、酸化ケイ素微粒子が好ましい。
酸化ケイ素微粒子は、表面修飾されたものが多数開発されており、表面修飾されたものを用いることで、硬化性組成物中での分散性が向上し、均一な硬化膜を形成することができる。酸化ケイ素微粒子の具体例としては、乾燥された粉末状の酸化ケイ素微粒子、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)等を挙げることができる。これらの中でも、分散性の点で、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いるのが好ましい。
分散性を向上させる目的であれば、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を極端に損なうことのない範囲で、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等によって表面処理された酸化ケイ素微粒子や、表面に対して易分散処理をされた酸化ケイ素微粒子であってもよい。
上記微粒子(C)は、硬化性組成物中での分散性又は塗料としてコーティングする際の溶媒との分散性の観点から、表面修飾処理されたものを用いてもよい。
特に硬化性組成物及び有機溶媒との分散性の面に於いて、疎水性の表面処理剤にて表面処理された微粒子を用いることが好ましい。
また特にその中でもシランカップリング剤、更にその中でもメタクリルシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤によって処理された微粒子を用いることが好ましい。
メタクリルシラン系カップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
ビニルシラン系カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、フェニルシラン系カップリング剤としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
これらの中でも、メタクリルシラン系カップリング剤によって処理された微粒子は、特にバインダーとの親和性が高いため最も好ましい。
微粒子に対して表面処理を行う場合、理論的な表面処理量は以下の式で計算される。
添加量(g)=充てん材の重量(g)×比表面積(m/g)/シランカップリング剤の最小被覆面積(m/g)
ここでいう最小被覆面積とは、以下の式で計算されるものである。
最小被覆面積(m/g)=6.02×1023×13×10−20/シランカップリング剤の分子量
上記の式より導き出される添加量より表面処理剤の量が少ない場合、粒子同士の凝集等が起こり適切に分散しない虞がある。また、添加量に対して過剰に表面処理剤が存在する場合、溶媒等に分散させた場合液粘度の急激な上昇や気泡の発生等の問題が発生する虞があるため、理論的な表面処理量の3倍以内が望ましい。
上記の表面処理された微粒子を用いることで、硬化層中に高濃度、且つ均一に微粒子を分散させることができ、結果的に散乱現象の発生を防ぐと共に、熱寸法安定性の偏りを防ぐことも可能になる。
また、硬化層に入射する屈折光の量を低減させるためには、微粒子の屈折率が1.6未満であることが好ましい。中でも、透明性向上の観点から、硬化性組成物を重合・硬化した後の反応物である樹脂、特に主成分をなす樹脂と微粒子(フィラー)との屈折率差が0.2未満である微粒子を用いるのが好ましい。
硬化層全体を基準とした微粒子の含有率としては、50体積%以上であることが好ましく、中でも50体積%以上或いは90体積%以下であることがより好ましく、さらにその中でも55体積%以上或いは75体積%以下であることがさらに好ましい。
上記微粒子を50体積%以上硬化層に含ませると、当該微粒子は最密充填により近い状態で充填されることになり、72体積%以上となると理論的に最密充填となる。このような範囲で微粒子を含有することにより、加熱時に基材フィルムの配向などに由来し発生する収縮による寸法変化を硬化層の弾性率によって低減させることが可能となる。
上記の硬化性組成物には、上記以外の成分として、上記例示以外の他の硬化性オリゴマー・モノマーや光開始剤の他、増感剤、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、充填材、熱可塑性樹脂等を、硬化性や透明性、吸水性等の物性に支障とならない範囲で含有することができる。
(溶剤)
また上記硬化性組成物は、必要によって溶剤を添加して使用することができる。すなわち、上記硬化性組成物を含む溶液として使用することができ、この溶液を基材フィルムに塗布・硬化して硬化層を硬化塗布層として形成することができる。後述する種々のコーティング方式に応じて、溶剤の種類や添加量は適宜選択することができる。
上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、さらにシクロヘキサノン、イソプロパノール等を例示することができる。
これら溶剤の使用量は、特に制限されるものではない。通常、硬化性組成物の固形分全体量100質量部に対して0〜300質量部である。
(混合割合)
上記硬化性組成物中に含まれる光重合性化合物(A)の含有量としては、硬化性組成物全体に対して、9〜50質量%とすることが好ましく、15質量%〜45質量%とすることがより好ましい。このような範囲とすることによって、硬化時の架橋密度が増大し、高温時に高い剛性を付与することが可能となる。
上記硬化性組成物中に含まれる上記光硬化剤(B)の含有量としては、硬化性組成物全体に対して、0.1質量%〜10質量%とすることが好ましく、0.5質量%〜5質量%とすることがより好ましい。このような範囲とすることによって、硬化反応を確実に効率よく進めることが可能となる。
(硬化層の厚み)
硬化層の厚みは、表裏両側の硬化層の厚みの合計を基材フィルムの厚みの5%よりも大きくするのが好ましい。表裏両側の硬化層の厚みの合計を基材フィルムの厚みの5%よりも大きくすれば、本積層フィルムの高温時の貯蔵弾性率を高く保持することができ、高い寸法安定性を本積層フィルムに持たせることができる。
硬化層の厚みが薄いと、本積層フィルム全体としての剛性が小さくなり、高温時の基材フィルムの収縮を抑制することが困難になる。一方、硬化層の厚みが過剰に厚いと、ひびや割れが発生しやすくなり好ましくない。
かかる観点から、前記硬化層の厚み合計は、基材フィルムの厚みの8%以上であることが好ましく、基材フィルムの厚みの10%以上であることが好ましく、特に15%以上或いは50%以下であることがより一層好ましく、中でも特に20%以上或いは45%以下であることがさらに好ましく、30%を越え45%以下であることが最も好ましい。
さらに上述のように、基材フィルムの厚みが100μm以下であって、且つ、硬化層の表裏両側の厚み合計が基材フィルムの厚みの8%以上であれば、柔軟なフレキシブル性を維持しつつ、基材フィルムに対して良好な熱耐性を付与することが可能となる。また、フィルム全体の厚みが薄いことで、質量当たりの面積が増加するため、後述するバリア性を付与する際、一度により多くのバリア層を付与させることができるため、より安価にガスバリアフィルムを製造することが可能となり、特に好ましい。
<基材フィルム>
本積層フィルムに用いる基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、透明ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状オレフィンホモポリマーや環状オレフィンコポリマー等の環状オレフィン系樹脂などからなるフィルムを挙げることができる。
これらの中でも、透明であり且つ融点が220℃以上であるか、又はガラス転移温度(Tg)が200℃以上であるという観点から、ポリエチレンテレフタレート樹脂(Tg85℃、融点266℃)、ポリエーテルイミド樹脂(Tg234℃、融点275℃)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(Tg223℃、融点280℃)、ポリエーテルサルフォン樹脂(Tg225℃)、ポリエチレンナフタレート樹脂(Tg155℃、融点270℃)、透明ポリイミド樹脂(Tg250℃以上)などの樹脂からなるフィルムを該基材フィルムとして使用するのが好ましい。
これらは一種類または二種類以上の樹脂を組み合わせて含有するフィルムを使用することができる。
なお、上記の透明ポリイミド樹脂として、ポリイミド樹脂の主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン結合を導入したものや、ポリイミド中の水素をフッ素に置換したフッ素化ポリイミドの他、ポリイミド樹脂の構造中に含まれる環状不飽和有機化合物を水添した脂環式ポリイミドなどを挙げることができる。例えば特開昭61−141738号公報、特開2000−292635号公報等に記載されたものを使用することもできる。
(ヒートセット処理)
本積層フィルムは、基材フィルムの表裏両側に所定の硬化層を設けることにより、基材フィルムに対してヒートセット処理を行わなくても、透明性及び高温(例えば180℃以上)における熱寸法安定性に優れた耐熱性透明バリアフィルムとなる。しかしながら、本積層フィルムでは、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされた基材フィルムを使用することも可能である。
基材フィルム上に硬化性組成物を塗布する前に、予め基材フィルムにヒートセット処理を施すことにより、基材フィルム及び本積層フィルムの寸法安定性をさらに向上させることができる。
中でも、収縮を緩和するためのヒートセット処理がなされた2軸延伸ポリエステルフィルムは、基材フィルムとして好ましい一例である。
基材フィルムのヒートセット処理は、該基材フィルムのガラス転移温度をTgとした際、Tg〜Tg+100℃の温度で0.1〜180分間、該基材フィルムを加熱処理するのが好ましい。
ヒートセット処理の具体的手法は、必要な温度、時間を維持できる方法であれば特に限定されない。例えば、必要な温度に設定したオーブンや恒温室で保管する方法、熱風を吹き付ける方法、赤外線ヒーターで加熱する方法、ランプで光を照射する方法、熱ロールや熱板と接触させて直接的に熱を付与する方法、マイクロ波を照射する方法などが使用できる。また、取扱が容易な大きさに基材フィルムを切断してから加熱処理しても、フィルムロールのままで加熱処理してもよい。さらに、必要な時間と温度を得ることができる限りにおいては、コーター、スリッター等のフィルム製造装置の一部分に加熱装置を組み込み、製造過程で加熱を行うこともできる。
(基材フィルムの厚み)
基材フィルムの厚みは、1μm〜200μmであるのが好ましく、5μm以上或いは150μm以下であることがより好ましく、7μm以上或いは100μm以下であることがより好ましく、10μm以上125μm以下であることがさらに好ましく、12μm以上100μm以下とすることが最も好ましい。このような範囲とすることで、光線透過率の向上、ハンドリング性能が高いなどの利点を得ることができる。
<ガスバリア層>
本積層フィルムは、金属酸化物などの無機物質や有機物などのガスバリア性の高い材料からなるガスバリア層を硬化層の少なくとも一方の面に有する。
この際、ガスバリア層を構成するガスバリア性の高い材料としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、或いはこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸化炭化物、酸化窒化物、酸化炭化窒化物、ダイヤモンドライクカーボン又はこれらの混合物等が挙げられるが、太陽電池等に使用した場合に電流がリークする等の恐れがない点から、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム及び酸化窒化アルミニウム等の無機酸化物、窒化珪素及び窒化アルミニウム等の窒化物、ダイヤモンドライクカーボン並びにこれらの混合物が好ましい。特に、酸化珪素、酸化炭化珪素、酸化窒化珪素、酸化炭化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化炭化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化アルミニウム及びこれらの混合物は、高いガスバリア性が安定に維持できる点で好ましい。
その中でも、珪素又はアルミニウムの酸化物、窒化物、酸化窒化物のうちのいずれか一種又は二種以上からなる無機化合物から形成するのが特に好ましい。
上記材料を用いて本積層フィルムにガスバリア層を形成する手法としては、蒸着法、コーティング法などの方法をいずれも採用可能である。ガスバリア性の高い均一な薄膜を得ることができるという点で蒸着法が好ましい。
この蒸着法には、物理気相蒸着(PVD)、或いは化学気相蒸着(CVD)等の方法が含まれる。
物理気相蒸着法としては、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等が挙げられる。
化学気相蒸着法としては、プラズマを利用したプラズマCVD、加熱触媒体を用いて材料ガスを接触熱分解する触媒化学気相成長法(Cat−CVD)等が挙げられる。
(ガスバリア層の厚み)
ガスバリア層の厚みは、安定なガスバリア性の発現と透明性の点から、5〜1000nmであることが好ましく、5〜800nmがより好ましく、5〜100nmがさらに好ましい。
また、ガスバリア層は単層であっても多層であってもよい。ガスバリア層が多層の場合、各層は同じ材料からなっていても、異なる材料からなっていてもよい。
当該硬化層とガスバリア層の間にアンカーコート層を設ける場合、その目的は表面の平滑化、及び硬化層とガスバリア層の密着性を向上させることが目的であるが、その厚さはフィルム全体の熱安定性を損なわない範囲が好ましい。具体的には20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。
<本積層フィルムの物性>
次に、本積層フィルムが備えることができる各種物性について説明する。
(全光線透過率)
本積層フィルムは、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。本積層フィルムがかかる範囲の全光線透過率を有することで、照明やディスプレイ等では光の減衰を抑えることができ、より明るくなる。また、太陽電池部材としてはより多くの光を取り込めるなどの利点を得ることができる。なお、硬化層における樹脂の種類、微粒子の種類と粒径、微粒子の含有量などを調整することで、本積層フィルムの光線透過率を調整することができる。
(熱収縮率)
本積層フィルムは、180℃で30分間熱処理をした際の収縮率が1.0%以下であるのが好ましく、中でも0.7%以下、その中でも0.5%以下であるのがさらに好ましい。
さらに本積層フィルムは、180℃で30分間加熱した際の縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)のいずれか一方向の収縮率が、同条件で測定される基材フィルムの熱収縮率の70%以下であることが好ましい。
またさらに、150℃で90分間加熱した際の縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)のいずれか一方向の収縮率が、同条件で測定される基材フィルムの熱収縮率の70%以下であることがより好ましい。
本積層フィルムが上記範囲の収縮率を有することで、回路や素子を形成する際の寸法ズレを少なくし、また無機バリア層を積層させる際にもより高いバリア性を得られる利点を有する。
特に二軸延伸フィルムなどでは、製膜工程中に横方向の施緩処理によって収縮率を低減することが可能であるが、縦方向の施緩処理は別工程が必要である場合が多く、一般的に縦方向の収縮率が相対的に大きくなる。そのため、本積層フィルムでは特に縦方向の収縮率を低減させることが好ましい。
(水蒸気透過率)
本積層フィルムの水蒸気透過率は、1.0×10−2g/m/day以下であることを要し、また5×10−3g/m/day以下であることがより好ましい。
本積層フィルムが、かかる範囲の水蒸気透過率を有することで、本積層フィルムに透明電極や素子を形成した際、外気やその他部材に含まれる水分を十分に遮断することができるため、透明電極の性能低下や阻止の劣化を防ぐことができる等の利点を有する。
本積層フィルムの水蒸気透過率の測定方法は、JIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、次の手法で評価されるものである。
透湿面積10.0cm×10.0cm角の各ガスバリア積層フィルムを2枚用い、吸湿剤として無水塩化カルシウム約20gを入れ四辺を封じた袋を作製し、その袋を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿装置に入れ、48時間以上間隔で重量増加がほぼ一定になる目安として34.8日間まで、質量測定(0.1mg単位)し、水蒸気透過率を下記式から算出した。
水蒸気透過率(g/m/day)=(m/s)/t
m;試験期間最後2回の秤量間隔の増加質量(g)
s;透湿面積(m
t;試験期間最後2回の秤量間隔の時間(day)
(算術平均粗さ)
本積層フィルムの硬化層の少なくとも一方の面の算術平均粗さは、15nm以下であることが好ましく、また10nm以下であることがより好ましい。
硬化層が、かかる範囲の算術平均粗さを有することで、ガスバリア層を形成する際に欠点の少ない均一な膜を形成することができ、結果高いガスバリア性を有することができる。また、本積層フィルム上に有機EL等を形成する際の素子形成不良が少なくなる等の利点を有する。
硬化層の算術平均粗さは、硬化層の表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものであり、平均面をXY面、縦方向をZ軸とし、測定された表面形状曲線をZ=F(x、y)とする時、次式で定義されたものを指す。
Figure 0006307909
(L:x方向測定長、L:y方向測定長)
<本積層フィルムの製造方法>
本積層フィルムは、基材フィルムの両面に、硬化性組成物を塗布して硬化させて硬化層を形成し、その後、上述した方法によって、ガスバリア層を形成することにより製造することができる。
硬化性組成物などを塗工する方法としては、例えば、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ディップコートなどによって、硬化性組成物を基材フィルムに塗工する方法を挙げることができる。また、ガラスやポリエステルフィルム上で硬化層を成型した後、成型した硬化層を基材フィルムに転写させる方法も有効である。
以上のように硬化性組成物を基材フィルムに塗工した後、該硬化性組成物を硬化(架橋)させる方法としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化等の方法を単独又は組み合わせて用いることができる。中でも、短時間かつ比較的容易に硬化達成可能なことから、紫外線硬化による方法を用いることが好ましい。
紫外線により硬化させる場合、光源としてキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が使用され、必要に応じて光量、光源の配置などが調整される。
また、高圧水銀灯を使用する場合、80〜160W/cmの光量を有したランプ1灯に対して搬送速度5〜60m/分で硬化させるのが好ましい。
一方、電子線により硬化させる場合、100〜500eVのエネルギーを有する電子線加速装置の使用が好ましい。
<用途>
本積層フィルムは、上述のように、透明性を維持しつつ、加熱処理による寸法変化(熱寸法安定性)が少ないという利点を有するため、例えば、液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネル、カラーフィルター、バックライトなどのディスプレイ材料の基板や、太陽電池の基板のほか、光電素子基板などに好適に使用することができる。
<用語の説明>
本発明において「透明」とは、それを通してその先にあるものが透けて見えることを意味し、好ましくは全光線透過率が80%以上である。
また、本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明する。但し、本発明はこれらの実施例等により何ら制限を受けるものではない。
[実施例1]
(硬化性樹脂組成物Aの調製)
トリシクロデカン構造を有する、分子量が304の光硬化性2官能アクリレートモノマー・オリゴマー(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DCP」)21.8質量%、透明微粒子A(株式会社アドマテックス製、商品名「YA010C−SM1」、コロイダルシリカ、平均粒径10nm)77.5質量%、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)0.7質量%に、溶媒(荒川化学工業株式会社製、プロピレングリコールモノメチルエーテル)34.1質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物Aを得た(以下、「塗料A」と称する。組成物中の固形分量は66%であった。)。
(両面硬化層の作製)
基材フィルムとして、厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名「P100−T50」)を用い、このフィルムの片面に、上記で調製した塗料Aを、硬化後の厚みが10μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、2分間静置した後に100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は63.4体積%であった。
その後前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Aを塗布して硬化を行った。
(ガスバリア層の形成)
上記硬化層を形成したPETフィルムをスパッタ成膜装置に導入し、当該PETフィルムの片面の硬化層上に、Alターゲットを用いた反応スパッタ法にて、成膜圧力0.3Pa,Ar流量80sccm,酸素流量20sccm、投入電力4kWの条件で酸化アルミニウム層を20nm形成し、ガスバリア性積層フィルム1を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られたガスバリア性積層フィルム1の特性を評価した結果を表1に記載する。
[実施例2]
(両面硬化層の作製)
基材フィルムとして、厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名「P100−T50」)を用い、このフィルムの片面に、実施例1と同様の塗料Aを、硬化後の厚みが7.5μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、2分間静置した後に100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は63.4体積%であった。
その後前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Aを塗布して硬化を行った。
(ガスバリア層の形成)
上記硬化層を形成したPETフィルムをスパッタ成膜装置に導入し、当該PETフィルムの片面の硬化層上に、Alターゲットを用いた反応スパッタ法にて、成膜圧力0.3Pa,Ar流量80sccm,酸素流量20sccm、投入電力4kWの条件で酸化アルミニウム層を20nm形成し、ガスバリア性積層フィルム2を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られたガスバリア性積層フィルム2の特性を評価した結果を表1に記載する。
[比較例1]
(ガスバリア層の形成)
基材フィルムとして、厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名「P100−T50」)を用い、このフィルムの片面にAlターゲットを用いた反応スパッタ法にて、成膜圧力0.3Pa,Ar流量80sccm,酸素流量20sccm、投入電力4kWの条件で酸化アルミニウム層を20nm形成し、積層フィルム1を得た。
後述する測定方法に準拠して、得られた積層フィルム1の特性を評価した結果を表1に記載する。
[比較例2]
(硬化性樹脂組成物Bの調製)
ウレタンアクリレートの重合成樹脂組成物(第一工業製薬株式会社製、「ニューフロンティアR−1302」)を97質量%、光硬化剤(BASF製、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)3質量%に、溶媒(荒川化学工業株式会社製、メチルエチルケトン)34.1質量部を均一に混合し、硬化層形成用の硬化性樹脂組成物Bを得た(以下、「塗料B」と称する。組成物中の固形分量は60%であった。)。
(両面硬化層の形成)
基材フィルムとして、厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名「P100−T50」)を用い、このフィルムの片面に塗料Bを硬化後の厚みが2μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、2分間静置した後に100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。硬化層におけるコロイダルシリカの体積割合は0体積%であった。
その後前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Bを塗布して硬化を行った。
(ガスバリア層の形成)
上記硬化層を形成したPETフィルムをスパッタ成膜装置に導入し、当該PETフィルムの片面の硬化層上に、Alターゲットを用いた反応スパッタ法にて、成膜圧力0.3Pa,Ar流量80sccm,酸素流量20sccm、投入電力4kWの条件で酸化アルミニウム層を20nm形成し、積層フィルム2を得た。後述する測定方法に準拠して、得られた積層フィルム2の特性を評価した結果を表1に記載する。
[比較例3]
(両面硬化層の作製)
基材フィルムとして、厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名「P100−T50」)を用い、このフィルムの片面に、実施例1と同様の塗料Aを、硬化後の厚みが10μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、2分間静置した後に100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
その後、前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Aを塗布して硬化を行った。
(ガスバリア層の形成)
上記硬化層を形成したPETフィルムをスパッタ成膜装置に導入し、当該PETフィルムのいずれか片面の硬化層上に、Alターゲットを用いた反応スパッタ法にて、成膜圧力0.3Pa,Ar流量80sccm,酸素流量20sccm、投入電力4kWの条件で酸化アルミニウム層を4nmとなるよう形成し、積層フィルム3を得た。後述する測定方法に準拠して、得られた積層フィルム3の特性を評価した結果を表1に記載する。
[比較例4]
(両面硬化層の作製)
基材フィルムとして、厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、製品名「P100−T50」)を用い、このフィルムの片面に、実施例1と同様の塗料Aを、硬化後の厚みが10μmになるようにワイヤーバーコーターを用いて塗布した後、2分間静置した後に100℃に設定したオーブン中に10分間入れることで溶媒を乾燥、除去し、フィルムの端部を固定した状態でベルトコンベア装置に入れ、塗布面に高圧水銀ランプ(160W/cm)を照射し、片面に光硬化性の硬化層を有するフィルムを得た。
その後、前記フィルムの当該硬化層が形成されていない面に対し、上記同様に塗料Aを塗布して硬化を行った。
(ガスバリア層の形成)
上記硬化層を形成したPETフィルムをスパッタ成膜装置に導入し、当該PETフィルムのいずれか片面の硬化層上に、Alターゲットを用いた反応スパッタ法にて、成膜圧力0.3Pa,Ar流量80sccm,酸素流量20sccm、投入電力4kWの条件で酸化アルミニウム層を1nmとなるよう形成し、積層フィルム4を得た。後述する測定方法に準拠して、得られた積層フィルム4の特性を評価した結果を表1に記載する。
<特性評価及び測定条件>
上記実施例及び比較例において作製したフィルムについて、以下に記載の方法に準拠し、全光線透過率及び表面平滑性、加熱収縮率を測定した。
(全光線透過率、ヘーズの測定)
実施例及び比較例のフィルムの全光線透過率及びヘーズは、以下の装置を用い、JIS K7105に準拠する方法にて測定した。
装置:反射・透過率計:株式会社村上色彩技術研究所「HR−100」
(平均粒径)
微粒子の平均粒径は、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製TEM H−7650を用いて測定した。
具体的には、加速電圧を100Vに設定し、デジタル画像を取得後、得られた画像からランダムに200個の粒子の粒径を実測し、その平均を求めることで微粒子の平均粒径とした。
(表面平滑性)
表面平滑性、すなわち、フィルムの硬化層の算術平均粗さ(Sa)は、株式会社菱化システム社の「VertScan」(登録商標)を用い、光干渉法にて、469μm×352μmの領域における表面形状と面粗さの測定を行った。
(加熱収縮率)
フィルムの縦方向(MD方向)の収縮率は、JIS−C2330 7.4.6.1(収縮寸法変化率:A法)に準じて、温度150℃又は温度180℃に設定した恒温槽の中で、標線を記した短冊をそれぞれ90分間(150℃)又は30分間(180℃)懸垂させて、加熱前後の寸法変化率を測定し求めた。
具体的には、以下の方法により測定した。フィルム流れ方向を長辺とし、幅20mm、長さ150mmの短冊形試験片を5個用意し、各々の試験片の中央部を中心として、間隔100mmの標線を記した。標線間の間隔を0.01mmの精度でノギスを用いて読み取った。この試験片を、所定温度の恒温槽に所定の時間無荷重の状態で懸垂し、取り出した後、室温で、15分以上放冷し、先に読んだ標線間の間隔を測定した。加熱前後の標線間の間隔の変化率を求め、加熱前後の寸法変化率とした。
(水蒸気透過率)
水蒸気透過率は、JIS Z0222「防湿包装容器の透湿度試験方法」、JIS Z0208「防湿包装材量の透湿度試験方法(カップ法)」の諸条件に準じ、上述した手法で評価した。
Figure 0006307909
(考察)
実施例1及び2のガスバリア性積層フィルムは、基材の両面に所定の硬化層を有し、且つ、少なくともその片面に適切な厚みでガスバリア層を有しているため、高いバリア性を持ちつつ、加熱に対する寸法安定性を有する。
一方で比較例1は表面が荒れているため高いバリア性が発揮されておらず、且つ加熱に対して収縮が発生している。比較例2は両面に硬化層を設けており、比較例1に比べて表面平滑性が改善されているためバリア性を持つが、硬化層に粒子が充填されていない為、加熱時に基材の収縮応力に負け、フィルム全体に収縮が発生してしまい、結果的に性能が失われてしまった。
比較例3及び4はバリア膜の厚みが適切でない為、バリア性が発揮されなかった。
本発明のガスバリア性積層フィルムは、高温での寸法安定性及びガスバリア性が要求される用途、特に、包装用フィルム、液晶ディスプレイ、有機発光ディスプレイ(OLED)、電気泳動ディスプレイ(電子ペーパー)、タッチパネル、カラーフィルター、バックライトなどのディスプレイ材料の基板や、太陽電池の基板のような電子部品用フィルム等として好適に使用することができる。

Claims (8)

  1. 基材フィルム、該基材フィルムの両面に硬化層、及び、該硬化層の少なくとも一方の面にガスバリア層を備えた構成を有する積層フィルムであって、
    該硬化層が、光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)及び微粒子(C)を含有する硬化性組成物を用いて形成され、かつ微粒子(C)の平均粒径が1nm〜50nmの範囲にあることを第1の特徴とし、
    該ガスバリア層の厚みが、5〜100nmの範囲にあることを第2の特徴とし、
    フィルム全体の水蒸気透過率が1.0×10−2g/m/day以下であることを第3の特徴とし、
    微粒子(C)の含有率が、硬化層全体を基準として50〜75体積%であることを第4の特徴とする、ガスバリア性積層フィルム。
  2. 基材フィルムと硬化層の厚みが下記(a)及び(b)を満足する、請求項1記載のガスバリア性積層フィルム。
    (a)基材フィルムの厚みが100μm以下
    (b)硬化層の表裏両側の厚み合計が基材フィルムの厚みの8%以上
  3. ガスバリア層が、珪素(Si)又はアルミニウム(Al)の酸化物、窒化物、酸化窒化物のうちのいずれか一種以上からなる無機化合物により形成された、請求項1又は2記載のガスバリア性積層フィルム。
  4. 180℃で30分間熱処理をした際の収縮率が1.0%以下である、請求項1〜の何れか一項記載のガスバリア性積層フィルム。
  5. 硬化層の一方の面の算術平均粗さ(Sa)が15nm以下である、請求項1〜の何れか一項に記載のガスバリア性積層フィルム。
  6. 請求項1〜の何れか一項に記載のガスバリア性積層フィルムを基材として有する透明基板。
  7. 微粒子(C)が酸化ケイ素である、請求項1〜5の何れか一項に記載のガスバリア性積層フィルム
  8. 硬化層の表裏両側の厚み合計が、基材フィルムの厚みの20%以上50%以下である請求項1〜7の何れか一項に記載のガスバリア性積層フィルム。
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