本発明は、空調ダクトを通じて建物内に水が浸入するのを防止する空調ダクトの止水ダンパに係り、詳しくは浸水時に流路を閉止する閉止板の閉止動作時に緩衝機能を持たせて衝撃を緩和するとともに、閉止後は高い水密性が得られるようにした空調ダクトの止水ダンパに関する。
従来より、豪雨や洪水、津波などの水害時に建物内への浸水を防止する装置として、浸水の浮力を利用して堰止め板が上昇する機構を有するものなどが知られている。前記堰止め板は、例えば建物の躯体開口部に設置され、主に躯体開口からの浸水を防止するものである。
ところが、水害時の建物内への浸水は、躯体開口部以外からも発生することがある。躯体開口部以外からの浸水経路としては、建物内部に新鮮空気を導入する外気ダクト、建物内の汚れた空気を排気する排気ダクトなどが指摘されている。前記外気ダクトは、外気ガラリなどを介して建物外部と連通するとともに、建物内で分岐して各室に連通するように配設され、外気が各室に分配供給されるようになっている。また、前記排気ダクトも同様に、建物内部の各室に連通するとともに、建物内で合流して排気ガラリなどを介して建物外部に連通するように配設され、室内の空気が建物外部に排気されるようになっている。
ここで、豪雨時や台風などによる極端な横方向からの降雨時、或いは地震に伴う津波の発生時などにおいては、前記外気ダクトや排気ダクトなどの建物外部に連通する部分からダクト系内に水が浸入すると、このダクト系が建物内部への新たな浸水経路となり、建物内の広範囲に浸水被害が及んでしまうことが懸念される。特に、建築設備や電気設備が集約された機械室や電気室、更にはコンピューターのサーバーエリアなどに浸水すると、建物全体の機能が停止し、甚大な被害に繋がるリスクがある。
出願人等は、空調ダクトを通じた建物内への浸水を防止する止水ダンパとして、既に下記特許文献1などを提案している。下記特許文献1では、閉止板が重力落下によって流路を閉止した反動で回動を開始し、前記閉止板とほぼ垂直になる位置で、流路に配置されたストッパー受け台に他端が係合するストッパーアームを設けたり、閉止板によって閉止される流路の下部に、閉止直前で前記閉止板の他方側の端縁が摺接しながら乗り越えて閉止状態になるとともに、乗り越え後は該閉止板を閉止状態で停止させる跳ね返り防止部材を備えたりすることにより、重力落下によって流路を閉止する閉止板の跳ね返りを防止するようにしている。
一方、浸水を防止する他の技術として、下記特許文献2においては、洞道に連通する通気孔内に軸受により支持された閉鎖蓋が回動自在に取り付けられており、該閉鎖蓋の下面周縁にはゴム弾性体からなるシールが設けられ、一方その上面には固定係合爪が取り付けられており、該固定係合爪と相対応する通気孔側壁には可動係合爪が取り付けられ、豪雨時に可動係合爪と固定係合爪との掛合をはずすように作動し、閉鎖蓋が傾倒し通気孔を閉鎖する浸水防止装置が開示されている。
更に、下記特許文献3においては、水田側から排水路側に連通する排水管体と、排水管体の水田側開口端に対して上下方向に回動し当該水田側開口部を開閉する止水蓋と、止水蓋を上方から支持する止水蓋支持杆と、雨水を受けるための雨水受けとを備え、雨水受けに所定量の雨水が溜まると、その重さにて当該雨水受けが支持スプリングに抗して下方に移動することで止水蓋の係止が解除され、止水蓋が自重で回動し、排水管体の水田側開口部を塞ぐ装置が開示されている。
特願2013−82628号
特公昭57−15280号公報
実用新案登録第3147536号公報
しかしながら、上記特許文献2記載の装置は、洞道と地上とを連通する路面に垂直な通気孔に設置されるものであり、豪雨の場合には閉鎖蓋が通気孔を閉鎖するように作動するが、通常の降雨の場合は閉鎖蓋が作動せず、通気孔が閉鎖されないようになっている。また、上記特許文献3記載の装置においても、雨水受けに所定量の雨水が貯まらないと、止水蓋が開口部を塞ぐように作動しないようになっている。このように、上記特許文献2、3記載の装置では止水する条件が限定されているが、上述の外気ダクトや排気ダクトを通じた浸水においては、室内側への浸水を完全に防止する観点から、その条件に至らない場合でも浸水を防止することが望まれていた。
一方、空調ダクトを通じた浸水では、空調ダクトが地下室に接続する場合など、鉛直方向に長い経路で配置される場合、流路を閉止する閉止板に高い水圧がかかるようになるため、このような高い水圧に耐えられるように閉止板を頑丈な構造にする必要があった。このような閉止板が重力落下のみによって流路を閉止する場合、閉止時に過大な衝撃力が加わり、パッキンや空調ダクトが破損して止水性が損なわれるおそれがあった。また、水平流路を閉止板で閉止する場合、閉止板と空調ダクトとの間の水密性が保持しにくく、止水性が低下する場合があった。
そこで本発明の主たる課題は、室内側への浸水を完全に防止するとともに、閉止時の閉止板と空調ダクトとの衝撃を緩和し、閉止後は水密性を高めることができるようにした空調ダクトの止水ダンパを提供することにある。
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、空調ダクト内に浸入した水が流れ込む検知槽と、前記検知槽に流れ込んだ水の自重に連動して留め具による掛止が解除され、重力落下によって流路を閉止するとともに浸水側と止水側に仕切る閉止板と、一方端が前記閉止板に接続され、前記閉止板の閉止動作に連動して動作するアーム部材とが備えられ、
前記アーム部材は、前記閉止板の閉止動作時に前記閉止板の重力落下を緩和する緩衝装置が接続されるとともに、前記閉止板による流路の閉止後に前記閉止板を前記止水側に付勢する付勢装置が接続されていることを特徴とする空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項1記載の発明では、浸水時に、前記閉止板が、空調ダクト内に浸入し検知槽に流れ込んだ水の自重に連動して留め具による掛止が解除され、重力落下によって流路を閉止するとともに浸水側と止水側に仕切るので、室内側への浸水が完全に防止でき、少しの浸水でも甚大な被害となる機械室や電気室、コンピューター室などへの浸水が完全に防止できるようになる。
また、本止水ダンパでは、前記閉止板の閉止動作に連動して動作するアーム部材が備えられている。このアーム部材は、前記閉止板の閉止動作時に閉止板の重力落下による衝撃を緩和するための緩衝装置に接続されるとともに、前記閉止板による流路の閉止後に前記閉止板を止水側に付勢する付勢装置が接続されている。このため、前記緩衝装置によって閉止時の閉止板と空調ダクトとの衝撃が緩和でき、閉止時の閉止板の跳ね返りが防止できるとともに、前記付勢装置によって閉止後に前記閉止板が止水側に付勢されるため前記閉止板による水密性を高めることができるようになる。
また、前記付勢装置によって、流路内部が満水状態の場合に加え、検知槽に浸水して閉止板が流路を閉止してから流路内部が満水になるまでの間や、満水状態から流路内の水が減少していく過程においても、前記閉止板が閉止状態にあるときは止水側に常に付勢されているため、止水側への浸水が完全に防止できるようになる。
請求項2に係る本発明として、流路の周囲に沿って閉止時に前記閉止板の止水側の周縁部を受け止める受け縁が備えられ、
前記受け縁は、流路方向に対して上方が前記止水側に傾斜して配置されている請求項1記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項2記載の発明では、流路の周囲に沿って閉止時に前記閉止板の止水側の周縁部を受け止める受け縁を設け、この受け縁が、流路方向に対して上方が止水側に傾斜するように配置してあるため、前記閉止板が受け縁によって受け止められた閉止状態において、前記閉止板は流路方向に対して上方が止水側に傾斜した状態で配置されるようになる。このため、閉止板の自重によって閉止板が受け縁側に圧接される力が付加されるとともに、浸水側に溜まった水の圧力によって閉止板が受け縁側に圧接される力が付加されるため、より一層水密性を高めることができる。
請求項3に係る本発明として、前記アーム部材は、一方端が前記閉止板に回動自在に接続され、他方端が流路と直交する水平方向に沿う回動軸に固定されることにより回動自在に支持されるとともに、前記回動軸の回動に連動して減衰力を作用させる前記緩衝装置に接続されている請求項1、2いずれかに記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項3記載の発明では、前記アーム部材の取付けと、このアーム部材に接続される前記緩衝装置の取付けについて規定している。具体的には、前記アーム部材の他方端が流路と直交する水平方向に沿う回動軸に固定されることにより回動自在に支持されるとともに、このアーム部材の他方端に前記回動軸の回動に連動して減衰力を作用させる緩衝装置が接続されている。前記緩衝装置としては、シリンダーダンパーなどを用いることが可能である。
請求項4に係る本発明として、前記アーム部材は、一方端が前記閉止板に回動自在に接続され、他方端が流路と直交する水平方向に沿う回動軸に固定されることにより回動自在に支持され、前記回動軸に前記付勢装置が取り付けられている請求項1〜3いずれかに記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項4記載の発明では、前記アーム部材の取付けと、このアーム部材に接続される前記付勢装置の取付けについて規定している。具体的には、前記アーム部材の他方端が流路と直交する水平方向に沿う回動軸に固定されることにより回動自在に支持され、この回動軸に付勢装置が取り付けられている。すなわち、前記アーム部材は、回動軸を介して付勢装置が接続されている。
請求項5に係る本発明として、前記付勢装置として渦巻きばねを用いている請求項1〜5いずれかに記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項5記載の発明では、前記付勢装置として渦巻きばねを用いることにより、閉止板に止水側への付勢力を作用させ水密性を向上させるようにしている。
請求項6に係る本発明として、前記閉止板は、上方が流路と直交する水平軸周りに回動自在に支持されるとともに、前記浸水側の面の下端部に前記留め具に掛止する掛止部材が備えられ、
前記検知槽は、流れ込んだ水の自重によって傾斜するように設けられるとともに、この傾斜する側に接続された作動ワイヤを介して前記留め具と連設され、
前記検知槽の傾斜に伴って前記作動ワイヤを介して前記留め具が動作し、前記留め具と掛止部材との掛止が解除され、前記閉止板が前記水平軸を中心として重力落下する請求項1〜5いずれかに記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項6記載の発明では、空調ダクトに浸水した水が検知槽に流れ込んでから閉止板によって流路が閉止されるまでの閉止板、検知槽及び留め具の各機構について詳しく説明している。前記閉止板として、上方が流路と直交する水平軸周りに回動自在に支持され、且つ閉止状態で浸水側となる面の下端部に前記留め具に掛止する掛止部材を備えた構造のものとしている。前記検知槽として、流れ込んだ水の自重によって傾斜するように設けるとともに、この傾斜する側に接続された作動ワイヤを介して前記留め具と連設された構造のものとしている。浸水時には、前記検知槽の傾斜に伴って前記作動ワイヤを介して前記留め具が動作し、前記留め具と掛止部材との掛止が解除されることによって、前記閉止板が前記水平軸を中心として重力落下する。なお、本止水ダンパでは、検知槽に水が流れ込んでから閉止板が流路を閉止するまでに、電気などの駆動源を一切用いることなく、空調ダクトの止水が完了できるようになる。
請求項7に係る本発明として、前記検知槽は、一方端が水平軸周りに回動自在に支持されるとともに、他方端が垂直方向に変位可能なスプリングに支持され、
前記検知槽に流れ込んだ水の自重によって、一方端が前記水平軸周りに回動するとともに、他方端が前記スプリングの付勢力に抗して下方に移動することにより傾斜するように設けられている請求項1〜6いずれかに記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項7記載の発明では、前記検知槽の構造についてより詳細に規定している。前記検知槽として、一方端が水平軸周りに回動自在に支持されるとともに、他方端が垂直方向に変位可能なスプリングに支持された構造としている。これにより、前記検知槽は、流れ込んだ水の自重によって、一方端が前記水平軸周りに回動するとともに、他方端が前記スプリングの付勢力に抗して下方に移動することにより、一方向に傾斜するように設けられている。
以上詳説のとおり本発明によれば、室内側への浸水が完全に防止できるとともに、閉止時の閉止板と空調ダクトとの衝撃が緩和でき、閉止後は水密性を高めることができるようになる。
本発明に係る止水ダンパ1の縦断面図である。
止水ダンパ1の側面図である。
留め具11による閉止板12の(A)は掛止状態、(B)は解除状態を示す拡大図である。
(A)〜(C)は、緩衝装置21の動作説明図である。
付勢装置22の正面図である。
止水ダンパ1の動作要領(その1)を示す縦断面図である。
止水ダンパ1の動作要領(その2)を示す縦断面図である。
止水ダンパ1の動作要領(その3)を示す縦断面図である。
止水ダンパ1の動作要領(その4)を示す縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。本発明に係る空調ダクトの止水ダンパ1は、図1及び図2に示されるように、水平方向に沿って配設された空調ダクトの流路の途中に水平方向に沿って配置されるものであり、外形がほぼ矩形状に形成された本体部分の両側にそれぞれ前記空調ダクトと連結するためのフランジ3、4が備えられている。
空調ダクト内に浸入した水が流れる方向としては、図1の左側から右側の方向に設定されている。すなわち、左側のフランジ3が外部に連通する空調ダクトに接続され、右側のフランジ4が室内に連通する空調ダクトに接続されるようになっている。
前記止水ダンパ1の内部は、接続する空調ダクトからの空気が流通し、空調ダクトとほぼ同じサイズの流路断面を有する流路空間2と、前記流路空間2の下側に該流路空間2に連通するとともに、後述する検知槽10が収容される下部収容空間6とを有している。
前記流路空間2は、上板2a、下板2b及び側板2c、2cによって区画された水平方向の両端が開放した略四角筒体からなるものである。前記上板2a、下板2b及び側板2cの外面側にはそれぞれ、浸水時の水圧に耐えるように、適宜の位置にL型アングルなどの補強材を設けることが好ましい。前記下板2bの浸水側(後段で詳述する受け縁14より浸水側)には、前記下部収容空間6に連通するとともに通水可能な開口が設けられている。
前記下部収容空間6は、周囲の四面が側板6a、6a…で囲われるとともに、底面に底板6bが配置された上部が開放した略直方体状に形成され、開放した上部の一部又は全部が前記流路空間2に連通している。前記側板6a及び底板6bの外面側にもそれぞれ、浸水時の水圧に耐えるように、適宜の位置にL型アングルなどの補強材を設けることが可能である。また、前記底板6bには水抜き用の排水栓26を設けることができる。
前記下部収容空間6部分の外形はそれぞれ、本止水ダンパ1が既存のダクト経路上に容易に追加設置できるように、接続する空調ダクトの外形から200mm以上突出しない寸法で形成されている。
前記止水ダンパ1に接続されるダクトとしては、前記フランジ3、4の形状を適宜変更することにより、角ダクト(図示例)や丸ダクトなど、種々の形状のものに対応させることができる。
前記止水ダンパ1は、図1及び図2に示されるように、空調ダクト内に浸入した水が流れ込む検知槽10と、前記検知槽10に流れ込んだ水の自重に連動して留め具11による掛止が解除され、重力落下によって流路を閉止し、流路の閉止後は流路を流路方向に対して浸水側と止水側とに仕切る閉止板12と、一方端が前記閉止板12に接続され、前記閉止板12の止水側に配置されるとともに、前記閉止板12の閉止動作に連動して動作するアーム部材13と、流路の周囲に沿って設けられ、前記閉止板12の閉止時に前記閉止板12の止水側の周縁部を受け止める受け縁14と、前記閉止板12の閉止時に前記閉止板12と受け縁14との間に配設されるゴムやプラスチックなどからなるパッキン15と、前記検知槽10と前記留め具11とを繋ぐ作動ワイヤ16とを備えている。
さらに詳細に各構成部材について説明すると、前記検知槽10は、図1及び図2に示されるように、上部が開放した平面視で方形のトレイ状に形成されたものであり、前記下部収容空間6内において、流路空間2の下板2bに設けられた開口から流出する水を内部に受けるように配置されている。前記検知槽10は、流路方向の止水側の端縁が流路方向と直交する水平軸24周りに回動自在に支持され、流路方向の浸水側端縁が下部収容空間6の底板6bに対し垂直方向に変位可能なスプリング25によって上方に向けて付勢支持されている。前記検知槽10は、浸水がない通常時には、前記検知槽10の自重と前記スプリング25の上方への付勢力とが均衡して、ほぼ水平に保持されるようになっている。前記検知槽10は、検知槽10内に流れ込んだ水の自重によって、前記水平軸24を回転中心として、前記スプリング25支持側が前記スプリング25の付勢力に抗して下方に移動することにより、流路方向に傾斜可能に設けられている。
前記検知槽10は、スプリング25支持側の端縁が、前記作動ワイヤ16を介して前記留め具11と連設されている。前記作動ワイヤ16は、下端が前記検知槽10の浸水側の端縁の幅方向中央部に固定され、上端が前記留め具11に固定されている。すなわち、前記作動ワイヤ16は、流路断面の幅方向中央部を上下に延びるように配置されている。前記作動ワイヤ16としては、鋼線などを撚り合わせたワイヤやロープなどの索材を用いることが好ましいが、鋼棒などの棒材を用いてもよい。
前記留め具11は、図1に示されるように、流路空間2の浸水側であって、前記上板2aの幅方向中央部に固設されている。前記留め具11は、詳細には図3に示されるように、流路空間2の上板2aに固設されるケーシング11aと、中間部がこのケーシング11aに回動自在に支持されるとともに、この支持部より一方側が前記作動ワイヤ16の上端に接続し、他方側が前記閉止板12の掛止部材17が掛止可能とされる留め具本体11bとから主に構成されている。
前記留め具本体11bは、ほぼ中央部においてケーシング11aに回動自在に支持され、この支持部より一方側に延びる部分の外側に前記作動ワイヤ16が接続され、他方側に延びる部分に内側に突出したツメ部11cが設けられている。前記ツメ部11cには、前記閉止板12の掛止部材17に設けられた開孔が掛止可能となっている。
前記留め具11の動作は、図3(A)に示されるように、閉止板12の掛止部材17が留め具本体11bのツメ部11cに掛止した掛止状態から、作動ワイヤ16が下方に引っ張られると、図3(B)に示されるように、留め具本体11bがケーシング11aとの支持部を中心に回動し、留め具本体11bのツメ部11cから閉止板12の掛止部材17が外れる。これによって、閉止板12が重力落下を開始する。
次に、前記閉止板12について説明すると、前記閉止板12は、流路空間2に収容可能で且つ閉止時に流路空間2を閉止可能な大きさで形成された四角形の鋼板などからなる板状体であり、浸水時の水圧に耐えられるように、その止水側面及び浸水側面がそれぞれL型アングルなどの補強材によって補強されている。また、前記閉止板12は、閉止時に上方となる側の端部が流路と直交する水平軸18周りに回動自在に支持されるとともに、他方側の端縁が自由端とされている。他方側の端部には、閉止時に浸水側となる面の幅方向中央部に、前記留め具11に掛止される掛止部材17が備えられている。前記閉止板12は、前記掛止部材17を留め具11に掛止した状態で、流路空間2の上部に流路に対して平行に設置される。流路に平行に設置されるとは、完全に平行な場合の他、若干の傾斜角、具体的には±12°程度の傾斜角を有する場合も含んでいる。
前記閉止板12は、前記水平軸18周りに回動自在に支持されることによって、前記掛止部材17を留め具11に掛止した掛止状態と、この掛止状態から前記水平軸18周りに重力落下によって回動し、前記受け縁14に受け止められた閉止状態とが切り替え可能になっている。
前記受け縁14は、閉止板12の閉止時に、閉止板12の止水側面の周縁部を押さえ可能に設けられるとともに、閉止板12の周縁部より外側に形成される流路空間2の上板2a、下板2b及び側板2c、2cまでの間の隙間から水が漏れないように、これら上板2a、下板2b及び側板2c、2cに対し水密可能に固定されている。
前記受け縁14は、流路方向に対して直交する面内に配置することにより、閉止板12が該受け縁14に受け止められた閉止状態で流路方向に対して垂直になるようにしてもよいが、流路方向に対して上方が止水側に傾斜する面内に配置することにより、閉止板12が閉止状態で流路方向に対して上方が止水側に傾斜するようにするのが好ましい。これにより、閉止板12の閉止状態で閉止板12の自重によって閉止板12が受け縁14側に圧接される力が作用するため、閉止板12による水密性を高めることができるようになる。また、浸水側に溜まった水の圧力によって、流路方向に対して垂直に配置した場合より、閉止板12が受け縁14側に圧接される方向の力が大きく作用するようになるため、閉止板12の水密性をより一層高めることができるようになる。前記受け縁14の取付け位置は、前記閉止板12の閉止状態での傾斜角度を規定するものであるが、閉止板12の傾斜角度を大きくすると閉止板12の面積がダクト開口面積に比べて増加するため閉止板12の水圧に対する強度を上げる必要性が生じたりする。従って、前記受け縁14の取付け位置は、前記閉止板12の傾斜角度が8〜14°、好ましくは9〜12°となる位置に取り付けるのが望ましい。
前記パッキン15は、閉止板12と受け縁14との間に配置され、閉止板12の閉止状態で閉止板12の前後の水密性を確保している。前記パッキン15は、図1に示されるように受け縁14側に固定してもよいし、閉止板12の止水側面の周縁部に沿って固定してもよい。
前記アーム部材13は、図1に示されるように、2本のアームの端部同士が回動自在に連設されたリンク機構からなり、一方端が前記閉止板12の止水側面のほぼ中央部に流路と直交する水平軸周りに回動自在に接続され、他方端が流路と直交する水平方向に沿って配置された回動軸19に固定されるようにするのが好ましい。前記回動軸19は、図1及び図2に示されるように、閉止板12より止水側において、両側板2c、2cに設けられた軸受20、20によって回動自在に支持されている。
前記アーム部材13は、図1及び図2に示されるように、閉止板12の閉止動作時に閉止板12の重力落下を緩和する緩衝装置21が接続されるとともに、前記閉止板12による流路の閉止後に閉止板12を止水側に付勢する付勢装置22が接続されている。
前記緩衝装置21は、詳細には図4に示されるように、アーム部材13に接続するシリンダーダンパーを用いることができる。具体的には、前記アーム部材13の他方端から所定角度で延在する連結部材13aが設けられるとともに、この連結部材13aの先端部に前記シリンダーダンパー(緩衝装置21)の一方端が回動自在に接続されている。また、前記シリンダーダンパーの他方端は、流路空間2の下板2b又は上板2aに対し、回動自在に支持されている。前記シリンダーダンパーは、シリンダー内にガスやオイルが封入され、その粘性によって抵抗力を発生させるダンパーである。前記連結部材13aは、他方端側のアーム部材13と一定の角度を保持したまま前記回動軸19を中心に回動するように構成されている。前記連結部材13aは、長さや他方端側のアーム部材13との角度が、図4(C)に示される閉止板12の閉止状態で、緩衝装置21が回動軸19に当接しない範囲で設定されている。
前記緩衝装置21を備えた閉止板12の閉止動作について説明すると、図4に示されるように、閉止板12が留め具11に掛止された掛止状態では、図4(A)に示されるように、シリンダーダンパー(緩衝装置21)が収縮した状態で取り付けられている。留め具11による掛止が解除され、閉止板12が重力落下し始めた状態では、図4(B)に示されるように、閉止板12に連動してアーム部材13が動作するとともに、前記連結部材13aが回動軸19を中心に回動し、この連結部材13aの先端部に接続された緩衝装置21を伸長させるように動作する。このとき、緩衝装置21内に封入されたガスやオイルなどの粘性によって抵抗力が発生し、アーム部材13の回動が抑制されるとともに、閉止板12の重力落下速度が低減し、閉止板12が受け縁14に当接する際の衝撃が緩和される。閉止板12の閉止状態では、図4(C)に示されるように、受け縁14に当接して閉止板12の回動が停止することによって、アーム部材13の動作が停止し、緩衝装置21が伸長状態で停止する。なお、前記閉止板12を元の状態に戻すには、前記回動軸19にハンドルを取り付けて、手動によって回すことで前記アーム部材13を介して閉止板12を持ち上げ、掛止部材17を止め具11に掛止させて復帰させるようにする。
前記緩衝装置21として、図示例のシリンダーダンパーに代えて、ロータリーダンパーを回動軸19に設けるようにしてもよい。このロータリーダンパーを回動軸19に設けることにより、アーム部材13の動作に伴って回動する回動軸19の回動が抑制されるため、アーム部材13の動作及び閉止板12の閉止動作が抑えられるようになる。
前記付勢装置22は、詳細には図5に示されるように、渦巻きばねを用いるのが望ましい。この渦巻きばねは、渦巻き状に巻回したばねの復元力を利用して回転力を発生させるものである。この付勢装置22を前記回動軸19に取り付けることにより、閉止板12を止水側に引き込む方向にアーム部材13が動作するように前記回動軸19に回転力を発生させることが可能となる。
前記付勢装置22は、図2に示されるように、一方側の側板2cの外側に備えられた付勢装置収容函23内に収容されている。前記回動軸19は、一方端が付勢装置収容函23内に延在して設けられ、この延在した端部が前記付勢装置22に接続されている。
本止水ダンパ1では前記緩衝装置21を備えているため、閉止板12が重力落下する閉止動作時に、閉止板12と受け縁14との衝撃が緩和でき、閉止板12の跳ね返りが防止できるとともに、受け縁14やパッキン15などの破損が防止できる。更に、前記付勢装置22を備えているため、閉止後に閉止板12が止水側に引き込まれる付勢力が常時作用するので、閉止板12がパッキン15により強く密着するようになり、水密性が向上して、止水側への浸水が完全に防止できるようになる。
次に、前記本止水ダンパ1の動作要領について図6〜図9に基づいて説明する。図6は、掛止部材17を留め具11に掛止した閉止板12の掛止状態を示したものである。通常は、この掛止状態で使用することにより、空気が流通できるようになっている。
この掛止状態から、図7に示されるように、水害時に空調ダクト内に水が浸入すると、流路空間2の下板2bに設けられた開口を通じて検知槽10内に水が流れ込む。
検知槽10内に流れ込んだ水の量が所定量に達すると、図8に示されるように、検知槽10が水平軸24周りに傾斜し、スプリング25によって支持された側がスプリング25の付勢力に抗して下方に沈み込む。すると、このスプリング25支持側の端縁に接続された作動ワイヤ16を介して留め具11が動作し、留め具11と掛止部材17との掛止が解除され、閉止板12が流路を閉止するように重力落下を開始する。
前記閉止板12の重力落下に伴って動作するアーム部材13が前記緩衝装置21に接続しているため、閉止板12の重力落下速度が低減され、受け縁14に対する衝撃力が緩和される。また、閉止後は、アーム部材13の回動軸19が付勢装置22に接続しているため、閉止板12が止水側に常時付勢され、閉止板12とパッキン15との密着性が向上して止水性が確保できる。
更に、受け縁14が流路方向に対して傾斜して配置されているため、閉止板12の自重によって閉止板12を止水側(受け縁14側)に押し付ける力が作用するようになり、閉止板12とパッキン15との密着性が向上して止水性が高められる。また、図9に示されるように、閉止板12の閉止後に浸水量が増した場合においても、閉止板12が流路方向に対して傾斜しているため、浸水による水圧が閉止板12を止水側に押し付ける力となり、閉止板12とパッキン15との密着性が向上して止水性が高められる。
上記の構造からなる本止水ダンパ1では、空調ダクト内に浸入した水が検知槽10に流れ込んでから、閉止板12と留め具11との掛止状態が解除され閉止板12が重力落下して流路を閉止し、その後の浸水深さが増した状態から排水や水抜きを行うまでの全ての工程において、電気などの駆動源を一切必要とせずに空調ダクトの止水が完了する。
1…止水ダンパ、2…流路空間、3・4…フランジ、6…下部収容空間、10…検知槽、11…留め具、12…閉止板、13…アーム部材、14…受け縁、15…パッキン、16…作動ワイヤ、17…掛止部材、21…緩衝装置、22…付勢装置
本発明は、空調ダクトを通じて建物内に水が浸入するのを防止する空調ダクトの止水ダンパに係り、詳しくは浸水時に流路を閉止する閉止板の閉止動作時に緩衝機能を持たせて衝撃を緩和するとともに、閉止後は高い水密性が得られるようにした空調ダクトの止水ダンパに関する。
従来より、豪雨や洪水、津波などの水害時に建物内への浸水を防止する装置として、浸水の浮力を利用して堰止め板が上昇する機構を有するものなどが知られている。前記堰止め板は、例えば建物の躯体開口部に設置され、主に躯体開口からの浸水を防止するものである。
ところが、水害時の建物内への浸水は、躯体開口部以外からも発生することがある。躯体開口部以外からの浸水経路としては、建物内部に新鮮空気を導入する外気ダクト、建物内の汚れた空気を排気する排気ダクトなどが指摘されている。前記外気ダクトは、外気ガラリなどを介して建物外部と連通するとともに、建物内で分岐して各室に連通するように配設され、外気が各室に分配供給されるようになっている。また、前記排気ダクトも同様に、建物内部の各室に連通するとともに、建物内で合流して排気ガラリなどを介して建物外部に連通するように配設され、室内の空気が建物外部に排気されるようになっている。
ここで、豪雨時や台風などによる極端な横方向からの降雨時、或いは地震に伴う津波の発生時などにおいては、前記外気ダクトや排気ダクトなどの建物外部に連通する部分からダクト系内に水が浸入すると、このダクト系が建物内部への新たな浸水経路となり、建物内の広範囲に浸水被害が及んでしまうことが懸念される。特に、建築設備や電気設備が集約された機械室や電気室、更にはコンピューターのサーバーエリアなどに浸水すると、建物全体の機能が停止し、甚大な被害に繋がるリスクがある。
出願人等は、空調ダクトを通じた建物内への浸水を防止する止水ダンパとして、既に下記特許文献1などを提案している。下記特許文献1では、閉止板が重力落下によって流路を閉止した反動で回動を開始し、前記閉止板とほぼ垂直になる位置で、流路に配置されたストッパー受け台に他端が係合するストッパーアームを設けたり、閉止板によって閉止される流路の下部に、閉止直前で前記閉止板の他方側の端縁が摺接しながら乗り越えて閉止状態になるとともに、乗り越え後は該閉止板を閉止状態で停止させる跳ね返り防止部材を備えたりすることにより、重力落下によって流路を閉止する閉止板の跳ね返りを防止するようにしている。
一方、浸水を防止する他の技術として、下記特許文献2においては、洞道に連通する通気孔内に軸受により支持された閉鎖蓋が回動自在に取り付けられており、該閉鎖蓋の下面周縁にはゴム弾性体からなるシールが設けられ、一方その上面には固定係合爪が取り付けられており、該固定係合爪と相対応する通気孔側壁には可動係合爪が取り付けられ、豪雨時に可動係合爪と固定係合爪との掛合をはずすように作動し、閉鎖蓋が傾倒し通気孔を閉鎖する浸水防止装置が開示されている。
更に、下記特許文献3においては、水田側から排水路側に連通する排水管体と、排水管体の水田側開口端に対して上下方向に回動し当該水田側開口部を開閉する止水蓋と、止水蓋を上方から支持する止水蓋支持杆と、雨水を受けるための雨水受けとを備え、雨水受けに所定量の雨水が溜まると、その重さにて当該雨水受けが支持スプリングに抗して下方に移動することで止水蓋の係止が解除され、止水蓋が自重で回動し、排水管体の水田側開口部を塞ぐ装置が開示されている。
特願2013−82628号
特公昭57−15280号公報
実用新案登録第3147536号公報
しかしながら、上記特許文献2記載の装置は、洞道と地上とを連通する路面に垂直な通気孔に設置されるものであり、豪雨の場合には閉鎖蓋が通気孔を閉鎖するように作動するが、通常の降雨の場合は閉鎖蓋が作動せず、通気孔が閉鎖されないようになっている。また、上記特許文献3記載の装置においても、雨水受けに所定量の雨水が貯まらないと、止水蓋が開口部を塞ぐように作動しないようになっている。このように、上記特許文献2、3記載の装置では止水する条件が限定されているが、上述の外気ダクトや排気ダクトを通じた浸水においては、室内側への浸水を完全に防止する観点から、その条件に至らない場合でも浸水を防止することが望まれていた。
一方、空調ダクトを通じた浸水では、空調ダクトが地下室に接続する場合など、鉛直方向に長い経路で配置される場合、流路を閉止する閉止板に高い水圧がかかるようになるため、このような高い水圧に耐えられるように閉止板を頑丈な構造にする必要があった。このような閉止板が重力落下のみによって流路を閉止する場合、閉止時に過大な衝撃力が加わり、パッキンや空調ダクトが破損して止水性が損なわれるおそれがあった。また、水平流路を閉止板で閉止する場合、閉止板と空調ダクトとの間の水密性が保持しにくく、止水性が低下する場合があった。
そこで本発明の主たる課題は、室内側への浸水を完全に防止するとともに、閉止時の閉止板と空調ダクトとの衝撃を緩和し、閉止後は水密性を高めることができるようにした空調ダクトの止水ダンパを提供することにある。
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、水平方向に沿って配設された空調ダクトの流路の途中に配置される空調ダクトの止水ダンパであって、
前記止水ダンパは、空調ダクト内に浸入した水が流れ込む検知槽と、前記検知槽に流れ込んだ水の自重に連動して留め具による掛止が解除され、重力落下によって流路を閉止するとともに浸水側と止水側に仕切る閉止板と、一方端が前記閉止板に接続され、前記閉止板の閉止動作に連動して動作するアーム部材と、流路の周囲に沿って設けられ、前記閉止板の閉止時に前記閉止板の止水側の周縁部を受け止める受け縁と、前記閉止板の閉止時に前記閉止板と受け縁との間に配設されるパッキンと、前記検知槽と前記留め具とを繋ぐ作動ワイヤ又は棒材とを備え、
前記止水ダンパの内部は、接続する空調ダクトからの空気が流通し、空調ダクトとほぼ同じサイズの流路断面を有する流路空間と、前記流路空間の下側に該流路空間に連通するとともに、前記検知槽が収容される下部収容空間とを有し、
前記閉止板は、上方が流路と直交する水平軸回りに回動自在に支持されるとともに、前記浸水側の面の下端部に前記留め具に掛止する掛止部材が備えられ、前記検知槽は、流れ込んだ水の自重によって傾斜するように設けられるとともに、この傾斜する側に接続された作動ワイヤ又は棒材を介して前記留め具と連設され、前記検知槽の傾斜に伴って前記作動ワイヤ又は棒材を介して前記留め具が動作し、前記留め具と掛止部材との掛止が解除され、前記閉止板が前記水平軸を中心として重力落下するようになっており、
前記アーム部材は、前記閉止板の閉止動作時に前記閉止板の重力落下を緩和する緩衝装置が接続され、かつ前記閉止板の閉止動作時に止水側に引き込む方向に前記アーム部材が動作するよう回転力を発生させるとともに、前記閉止板による流路の閉止後に前記閉止板を前記止水側に付勢する付勢装置が接続されていることを特徴とする空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項1記載の発明では、浸水時に、前記閉止板が、空調ダクト内に浸入し検知槽に流れ込んだ水の自重に連動して留め具による掛止が解除され、重力落下によって流路を閉止するとともに浸水側と止水側に仕切るので、室内側への浸水が完全に防止でき、少しの浸水でも甚大な被害となる機械室や電気室、コンピューター室などへの浸水が完全に防止できるようになる。
また、本止水ダンパでは、前記閉止板の閉止動作に連動して動作するアーム部材が備えられている。このアーム部材は、前記閉止板の閉止動作時に閉止板の重力落下による衝撃を緩和するための緩衝装置に接続されるとともに、前記閉止板による流路の閉止後に前記閉止板を止水側に付勢する付勢装置が接続されている。このため、前記緩衝装置によって閉止時の閉止板と空調ダクトとの衝撃が緩和でき、閉止時の閉止板の跳ね返りが防止できるとともに、前記付勢装置によって閉止後に前記閉止板が止水側に付勢されるため前記閉止板による水密性を高めることができるようになる。
また、前記付勢装置によって、流路内部が満水状態の場合に加え、検知槽に浸水して閉止板が流路を閉止してから流路内部が満水になるまでの間や、満水状態から流路内の水が減少していく過程においても、前記閉止板が閉止状態にあるときは止水側に常に付勢されているため、止水側への浸水が完全に防止できるようになる。
また、上記請求項1記載の発明では、空調ダクトに浸水した水が検知槽に流れ込んでから閉止板によって流路が閉止されるまでの閉止板、検知槽及び留め具の各機構について詳しく説明している。前記閉止板として、上方が流路と直交する水平軸周りに回動自在に支持され、且つ閉止状態で浸水側となる面の下端部に前記留め具に掛止する掛止部材を備えた構造のものとしている。前記検知槽として、流れ込んだ水の自重によって傾斜するように設けるとともに、この傾斜する側に接続された作動ワイヤ又は棒材を介して前記留め具と連設された構造のものとしている。浸水時には、前記検知槽の傾斜に伴って前記作動ワイヤ又は棒材を介して前記留め具が動作し、前記留め具と掛止部材との掛止が解除されることによって、前記閉止板が前記水平軸を中心として重力落下する。なお、本止水ダンパでは、検知槽に水が流れ込んでから閉止板が流路を閉止するまでに、電気などの駆動源を一切用いることなく、空調ダクトの止水が完了できるようになる。
請求項2に係る本発明として、前記受け縁は、流路方向に対して上方が前記止水側に傾斜して配置されている請求項1記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項2記載の発明では、流路の周囲に沿って閉止時に前記閉止板の止水側の周縁部を受け止める受け縁を設け、この受け縁が、流路方向に対して上方が止水側に傾斜するように配置してあるため、前記閉止板が受け縁によって受け止められた閉止状態において、前記閉止板は流路方向に対して上方が止水側に傾斜した状態で配置されるようになる。このため、閉止板の自重によって閉止板が受け縁側に圧接される力が付加されるとともに、浸水側に溜まった水の圧力によって閉止板が受け縁側に圧接される力が付加されるため、より一層水密性を高めることができる。
請求項3に係る本発明として、前記アーム部材は、一方端が前記閉止板に回動自在に接続され、他方端が流路と直交する水平方向に沿う回動軸に固定されることにより回動自在に支持されるとともに、前記回動軸の回動に連動して減衰力を作用させる前記緩衝装置に接続されている請求項1、2いずれかに記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項3記載の発明では、前記アーム部材の取付けと、このアーム部材に接続される前記緩衝装置の取付けについて規定している。具体的には、前記アーム部材の他方端が流路と直交する水平方向に沿う回動軸に固定されることにより回動自在に支持されるとともに、このアーム部材の他方端に前記回動軸の回動に連動して減衰力を作用させる緩衝装置が接続されている。前記緩衝装置としては、シリンダーダンパーなどを用いることが可能である。
請求項4に係る本発明として、前記アーム部材は、一方端が前記閉止板に回動自在に接続され、他方端が流路と直交する水平方向に沿う回動軸に固定されることにより回動自在に支持され、前記回動軸に前記付勢装置が取り付けられている請求項1〜3いずれかに記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項4記載の発明では、前記アーム部材の取付けと、このアーム部材に接続される前記付勢装置の取付けについて規定している。具体的には、前記アーム部材の他方端が流路と直交する水平方向に沿う回動軸に固定されることにより回動自在に支持され、この回動軸に付勢装置が取り付けられている。すなわち、前記アーム部材は、回動軸を介して付勢装置が接続されている。
請求項5に係る本発明として、前記付勢装置として渦巻きばねを用いている請求項1〜4いずれかに記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項5記載の発明では、前記付勢装置として渦巻きばねを用いることにより、閉止板に止水側への付勢力を作用させ水密性を向上させるようにしている。
請求項6に係る本発明として、前記検知槽は、一方端が水平軸周りに回動自在に支持されるとともに、他方端が垂直方向に変位可能なスプリングに支持され、
前記検知槽に流れ込んだ水の自重によって、一方端が前記水平軸周りに回動するとともに、他方端が前記スプリングの付勢力に抗して下方に移動することにより傾斜するように設けられている請求項1〜5いずれかに記載の空調ダクトの止水ダンパが提供される。
上記請求項6記載の発明では、前記検知槽の構造についてより詳細に規定している。前記検知槽として、一方端が水平軸周りに回動自在に支持されるとともに、他方端が垂直方向に変位可能なスプリングに支持された構造としている。これにより、前記検知槽は、流れ込んだ水の自重によって、一方端が前記水平軸周りに回動するとともに、他方端が前記スプリングの付勢力に抗して下方に移動することにより、一方向に傾斜するように設けられている。
以上詳説のとおり本発明によれば、室内側への浸水が完全に防止できるとともに、閉止時の閉止板と空調ダクトとの衝撃が緩和でき、閉止後は水密性を高めることができるようになる。
本発明に係る止水ダンパ1の縦断面図である。
止水ダンパ1の側面図である。
留め具11による閉止板12の(A)は掛止状態、(B)は解除状態を示す拡大図である。
(A)〜(C)は、緩衝装置21の動作説明図である。
付勢装置22の正面図である。
止水ダンパ1の動作要領(その1)を示す縦断面図である。
止水ダンパ1の動作要領(その2)を示す縦断面図である。
止水ダンパ1の動作要領(その3)を示す縦断面図である。
止水ダンパ1の動作要領(その4)を示す縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。本発明に係る空調ダクトの止水ダンパ1は、図1及び図2に示されるように、水平方向に沿って配設された空調ダクトの流路の途中に水平方向に沿って配置されるものであり、外形がほぼ矩形状に形成された本体部分の両側にそれぞれ前記空調ダクトと連結するためのフランジ3、4が備えられている。
空調ダクト内に浸入した水が流れる方向としては、図1の左側から右側の方向に設定されている。すなわち、左側のフランジ3が外部に連通する空調ダクトに接続され、右側のフランジ4が室内に連通する空調ダクトに接続されるようになっている。
前記止水ダンパ1の内部は、接続する空調ダクトからの空気が流通し、空調ダクトとほぼ同じサイズの流路断面を有する流路空間2と、前記流路空間2の下側に該流路空間2に連通するとともに、後述する検知槽10が収容される下部収容空間6とを有している。
前記流路空間2は、上板2a、下板2b及び側板2c、2cによって区画された水平方向の両端が開放した略四角筒体からなるものである。前記上板2a、下板2b及び側板2cの外面側にはそれぞれ、浸水時の水圧に耐えるように、適宜の位置にL型アングルなどの補強材を設けることが好ましい。前記下板2bの浸水側(後段で詳述する受け縁14より浸水側)には、前記下部収容空間6に連通するとともに通水可能な開口が設けられている。
前記下部収容空間6は、周囲の四面が側板6a、6a…で囲われるとともに、底面に底板6bが配置された上部が開放した略直方体状に形成され、開放した上部の一部又は全部が前記流路空間2に連通している。前記側板6a及び底板6bの外面側にもそれぞれ、浸水時の水圧に耐えるように、適宜の位置にL型アングルなどの補強材を設けることが可能である。また、前記底板6bには水抜き用の排水栓26を設けることができる。
前記下部収容空間6部分の外形はそれぞれ、本止水ダンパ1が既存のダクト経路上に容易に追加設置できるように、接続する空調ダクトの外形から200mm以上突出しない寸法で形成されている。
前記止水ダンパ1に接続されるダクトとしては、前記フランジ3、4の形状を適宜変更することにより、角ダクト(図示例)や丸ダクトなど、種々の形状のものに対応させることができる。
前記止水ダンパ1は、図1及び図2に示されるように、空調ダクト内に浸入した水が流れ込む検知槽10と、前記検知槽10に流れ込んだ水の自重に連動して留め具11による掛止が解除され、重力落下によって流路を閉止し、流路の閉止後は流路を流路方向に対して浸水側と止水側とに仕切る閉止板12と、一方端が前記閉止板12に接続され、前記閉止板12の止水側に配置されるとともに、前記閉止板12の閉止動作に連動して動作するアーム部材13と、流路の周囲に沿って設けられ、前記閉止板12の閉止時に前記閉止板12の止水側の周縁部を受け止める受け縁14と、前記閉止板12の閉止時に前記閉止板12と受け縁14との間に配設されるゴムやプラスチックなどからなるパッキン15と、前記検知槽10と前記留め具11とを繋ぐ作動ワイヤ16とを備えている。
さらに詳細に各構成部材について説明すると、前記検知槽10は、図1及び図2に示されるように、上部が開放した平面視で方形のトレイ状に形成されたものであり、前記下部収容空間6内において、流路空間2の下板2bに設けられた開口から流出する水を内部に受けるように配置されている。前記検知槽10は、流路方向の止水側の端縁が流路方向と直交する水平軸24周りに回動自在に支持され、流路方向の浸水側端縁が下部収容空間6の底板6bに対し垂直方向に変位可能なスプリング25によって上方に向けて付勢支持されている。前記検知槽10は、浸水がない通常時には、前記検知槽10の自重と前記スプリング25の上方への付勢力とが均衡して、ほぼ水平に保持されるようになっている。前記検知槽10は、検知槽10内に流れ込んだ水の自重によって、前記水平軸24を回転中心として、前記スプリング25支持側が前記スプリング25の付勢力に抗して下方に移動することにより、流路方向に傾斜可能に設けられている。
前記検知槽10は、スプリング25支持側の端縁が、前記作動ワイヤ16を介して前記留め具11と連設されている。前記作動ワイヤ16は、下端が前記検知槽10の浸水側の端縁の幅方向中央部に固定され、上端が前記留め具11に固定されている。すなわち、前記作動ワイヤ16は、流路断面の幅方向中央部を上下に延びるように配置されている。前記作動ワイヤ16としては、鋼線などを撚り合わせたワイヤやロープなどの索材を用いることが好ましいが、鋼棒などの棒材を用いてもよい。
前記留め具11は、図1に示されるように、流路空間2の浸水側であって、前記上板2aの幅方向中央部に固設されている。前記留め具11は、詳細には図3に示されるように、流路空間2の上板2aに固設されるケーシング11aと、中間部がこのケーシング11aに回動自在に支持されるとともに、この支持部より一方側が前記作動ワイヤ16の上端に接続し、他方側が前記閉止板12の掛止部材17が掛止可能とされる留め具本体11bとから主に構成されている。
前記留め具本体11bは、ほぼ中央部においてケーシング11aに回動自在に支持され、この支持部より一方側に延びる部分の外側に前記作動ワイヤ16が接続され、他方側に延びる部分に内側に突出したツメ部11cが設けられている。前記ツメ部11cには、前記閉止板12の掛止部材17に設けられた開孔が掛止可能となっている。
前記留め具11の動作は、図3(A)に示されるように、閉止板12の掛止部材17が留め具本体11bのツメ部11cに掛止した掛止状態から、作動ワイヤ16が下方に引っ張られると、図3(B)に示されるように、留め具本体11bがケーシング11aとの支持部を中心に回動し、留め具本体11bのツメ部11cから閉止板12の掛止部材17が外れる。これによって、閉止板12が重力落下を開始する。
次に、前記閉止板12について説明すると、前記閉止板12は、流路空間2に収容可能で且つ閉止時に流路空間2を閉止可能な大きさで形成された四角形の鋼板などからなる板状体であり、浸水時の水圧に耐えられるように、その止水側面及び浸水側面がそれぞれL型アングルなどの補強材によって補強されている。また、前記閉止板12は、閉止時に上方となる側の端部が流路と直交する水平軸18周りに回動自在に支持されるとともに、他方側の端縁が自由端とされている。他方側の端部には、閉止時に浸水側となる面の幅方向中央部に、前記留め具11に掛止される掛止部材17が備えられている。前記閉止板12は、前記掛止部材17を留め具11に掛止した状態で、流路空間2の上部に流路に対して平行に設置される。流路に平行に設置されるとは、完全に平行な場合の他、若干の傾斜角、具体的には±12°程度の傾斜角を有する場合も含んでいる。
前記閉止板12は、前記水平軸18周りに回動自在に支持されることによって、前記掛止部材17を留め具11に掛止した掛止状態と、この掛止状態から前記水平軸18周りに重力落下によって回動し、前記受け縁14に受け止められた閉止状態とが切り替え可能になっている。
前記受け縁14は、閉止板12の閉止時に、閉止板12の止水側面の周縁部を押さえ可能に設けられるとともに、閉止板12の周縁部より外側に形成される流路空間2の上板2a、下板2b及び側板2c、2cまでの間の隙間から水が漏れないように、これら上板2a、下板2b及び側板2c、2cに対し水密可能に固定されている。
前記受け縁14は、流路方向に対して直交する面内に配置することにより、閉止板12が該受け縁14に受け止められた閉止状態で流路方向に対して垂直になるようにしてもよいが、流路方向に対して上方が止水側に傾斜する面内に配置することにより、閉止板12が閉止状態で流路方向に対して上方が止水側に傾斜するようにするのが好ましい。これにより、閉止板12の閉止状態で閉止板12の自重によって閉止板12が受け縁14側に圧接される力が作用するため、閉止板12による水密性を高めることができるようになる。また、浸水側に溜まった水の圧力によって、流路方向に対して垂直に配置した場合より、閉止板12が受け縁14側に圧接される方向の力が大きく作用するようになるため、閉止板12の水密性をより一層高めることができるようになる。前記受け縁14の取付け位置は、前記閉止板12の閉止状態での傾斜角度を規定するものであるが、閉止板12の傾斜角度を大きくすると閉止板12の面積がダクト開口面積に比べて増加するため閉止板12の水圧に対する強度を上げる必要性が生じたりする。従って、前記受け縁14の取付け位置は、前記閉止板12の傾斜角度が8〜14°、好ましくは9〜12°となる位置に取り付けるのが望ましい。
前記パッキン15は、閉止板12と受け縁14との間に配置され、閉止板12の閉止状態で閉止板12の前後の水密性を確保している。前記パッキン15は、図1に示されるように受け縁14側に固定してもよいし、閉止板12の止水側面の周縁部に沿って固定してもよい。
前記アーム部材13は、図1に示されるように、2本のアームの端部同士が回動自在に連設されたリンク機構からなり、一方端が前記閉止板12の止水側面のほぼ中央部に流路と直交する水平軸周りに回動自在に接続され、他方端が流路と直交する水平方向に沿って配置された回動軸19に固定されるようにするのが好ましい。前記回動軸19は、図1及び図2に示されるように、閉止板12より止水側において、両側板2c、2cに設けられた軸受20、20によって回動自在に支持されている。
前記アーム部材13は、図1及び図2に示されるように、閉止板12の閉止動作時に閉止板12の重力落下を緩和する緩衝装置21が接続されるとともに、前記閉止板12による流路の閉止後に閉止板12を止水側に付勢する付勢装置22が接続されている。
前記緩衝装置21は、詳細には図4に示されるように、アーム部材13に接続するシリンダーダンパーを用いることができる。具体的には、前記アーム部材13の他方端から所定角度で延在する連結部材13aが設けられるとともに、この連結部材13aの先端部に前記シリンダーダンパー(緩衝装置21)の一方端が回動自在に接続されている。また、前記シリンダーダンパーの他方端は、流路空間2の下板2b又は上板2aに対し、回動自在に支持されている。前記シリンダーダンパーは、シリンダー内にガスやオイルが封入され、その粘性によって抵抗力を発生させるダンパーである。前記連結部材13aは、他方端側のアーム部材13と一定の角度を保持したまま前記回動軸19を中心に回動するように構成されている。前記連結部材13aは、長さや他方端側のアーム部材13との角度が、図4(C)に示される閉止板12の閉止状態で、緩衝装置21が回動軸19に当接しない範囲で設定されている。
前記緩衝装置21を備えた閉止板12の閉止動作について説明すると、図4に示されるように、閉止板12が留め具11に掛止された掛止状態では、図4(A)に示されるように、シリンダーダンパー(緩衝装置21)が収縮した状態で取り付けられている。留め具11による掛止が解除され、閉止板12が重力落下し始めた状態では、図4(B)に示されるように、閉止板12に連動してアーム部材13が動作するとともに、前記連結部材13aが回動軸19を中心に回動し、この連結部材13aの先端部に接続された緩衝装置21を伸長させるように動作する。このとき、緩衝装置21内に封入されたガスやオイルなどの粘性によって抵抗力が発生し、アーム部材13の回動が抑制されるとともに、閉止板12の重力落下速度が低減し、閉止板12が受け縁14に当接する際の衝撃が緩和される。閉止板12の閉止状態では、図4(C)に示されるように、受け縁14に当接して閉止板12の回動が停止することによって、アーム部材13の動作が停止し、緩衝装置21が伸長状態で停止する。なお、前記閉止板12を元の状態に戻すには、前記回動軸19にハンドルを取り付けて、手動によって回すことで前記アーム部材13を介して閉止板12を持ち上げ、掛止部材17を止め具11に掛止させて復帰させるようにする。
前記緩衝装置21として、図示例のシリンダーダンパーに代えて、ロータリーダンパーを回動軸19に設けるようにしてもよい。このロータリーダンパーを回動軸19に設けることにより、アーム部材13の動作に伴って回動する回動軸19の回動が抑制されるため、アーム部材13の動作及び閉止板12の閉止動作が抑えられるようになる。
前記付勢装置22は、詳細には図5に示されるように、渦巻きばねを用いるのが望ましい。この渦巻きばねは、渦巻き状に巻回したばねの復元力を利用して回転力を発生させるものである。この付勢装置22を前記回動軸19に取り付けることにより、閉止板12を止水側に引き込む方向にアーム部材13が動作するように前記回動軸19に回転力を発生させることが可能となる。
前記付勢装置22は、図2に示されるように、一方側の側板2cの外側に備えられた付勢装置収容函23内に収容されている。前記回動軸19は、一方端が付勢装置収容函23内に延在して設けられ、この延在した端部が前記付勢装置22に接続されている。
本止水ダンパ1では前記緩衝装置21を備えているため、閉止板12が重力落下する閉止動作時に、閉止板12と受け縁14との衝撃が緩和でき、閉止板12の跳ね返りが防止できるとともに、受け縁14やパッキン15などの破損が防止できる。更に、前記付勢装置22を備えているため、閉止後に閉止板12が止水側に引き込まれる付勢力が常時作用するので、閉止板12がパッキン15により強く密着するようになり、水密性が向上して、止水側への浸水が完全に防止できるようになる。
次に、前記本止水ダンパ1の動作要領について図6〜図9に基づいて説明する。図6は、掛止部材17を留め具11に掛止した閉止板12の掛止状態を示したものである。通常は、この掛止状態で使用することにより、空気が流通できるようになっている。
この掛止状態から、図7に示されるように、水害時に空調ダクト内に水が浸入すると、流路空間2の下板2bに設けられた開口を通じて検知槽10内に水が流れ込む。
検知槽10内に流れ込んだ水の量が所定量に達すると、図8に示されるように、検知槽10が水平軸24周りに傾斜し、スプリング25によって支持された側がスプリング25の付勢力に抗して下方に沈み込む。すると、このスプリング25支持側の端縁に接続された作動ワイヤ16を介して留め具11が動作し、留め具11と掛止部材17との掛止が解除され、閉止板12が流路を閉止するように重力落下を開始する。
前記閉止板12の重力落下に伴って動作するアーム部材13が前記緩衝装置21に接続しているため、閉止板12の重力落下速度が低減され、受け縁14に対する衝撃力が緩和される。また、閉止後は、アーム部材13の回動軸19が付勢装置22に接続しているため、閉止板12が止水側に常時付勢され、閉止板12とパッキン15との密着性が向上して止水性が確保できる。
更に、受け縁14が流路方向に対して傾斜して配置されているため、閉止板12の自重によって閉止板12を止水側(受け縁14側)に押し付ける力が作用するようになり、閉止板12とパッキン15との密着性が向上して止水性が高められる。また、図9に示されるように、閉止板12の閉止後に浸水量が増した場合においても、閉止板12が流路方向に対して傾斜しているため、浸水による水圧が閉止板12を止水側に押し付ける力となり、閉止板12とパッキン15との密着性が向上して止水性が高められる。
上記の構造からなる本止水ダンパ1では、空調ダクト内に浸入した水が検知槽10に流れ込んでから、閉止板12と留め具11との掛止状態が解除され閉止板12が重力落下して流路を閉止し、その後の浸水深さが増した状態から排水や水抜きを行うまでの全ての工程において、電気などの駆動源を一切必要とせずに空調ダクトの止水が完了する。
1…止水ダンパ、2…流路空間、3・4…フランジ、6…下部収容空間、10…検知槽、11…留め具、12…閉止板、13…アーム部材、14…受け縁、15…パッキン、16…作動ワイヤ、17…掛止部材、21…緩衝装置、22…付勢装置