JP2015227485A - フェライト系球状黒鉛鋳鉄 - Google Patents

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遼太 八塚
Ryota Yatsuduka
遼太 八塚
大槻 敬
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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Abstract

【課題】耐熱性および耐酸化性に優れ、さらには、機械物性にも優れるフェライト系球状黒鉛鋳鉄を提供すること。
【解決手段】ケイ素と、炭素と、銅およびスズの少なくともいずれかと、鉄とを含有する溶湯を、冷却することによりパーライト組織を形成し、次いで、パーライト組織をフェライト化処理することにより、ケイ素4.8〜8.0質量%と、炭素2.5〜4.0質量%と、銅1.0〜3.0質量%、および、スズ0.1〜0.5質量%の少なくともいずれかと、残部の鉄とからなるフェライト系球状黒鉛鋳鉄を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、フェライト系球状黒鉛鋳鉄に関する。
フェライト系球状黒鉛鋳鉄は、球状化黒鉛(炭素)、ケイ素および鉄を含有し、フェライト組織を有する鋳鉄であって、加工性、耐熱性および耐酸化性に優れ、また、比較的安価な金属材料であることから、各種産業分野における耐熱材料として、よく用いられている。
より具体的には、例えば、自動車エンジンのエキゾーストマニホールド、ターボチャージャーなどの排気系部品は、比較的高温の排ガスに曝露され、また、加熱および冷却が繰り返されることから、優れた耐熱性が要求される。そのため、これら自動車の排気系部品として、フェライト系球状黒鉛鋳鉄を用いることが、広く知られている。
また、フェライト系球状黒鉛鋳鉄は、通常、ケイ素を4.0〜4.5質量%程度含有しているが、ケイ素の含有量を増加させることにより、耐熱性が向上することも、知られている。
このようなフェライト系球状黒鉛鋳鉄としては、例えば、炭素2.82〜3.20%、ケイ素4.27〜5.19%、マンガン0.11〜0.25%、リン0.015〜0.04%、硫黄0.009〜0.017%、モリブデン0〜0.30%、および、マグネシウム0.03〜0.04%、および、残部の鉄からなる高Siフェライト球状黒鉛鋳鉄が、提案されている(例えば、特許文献1(試験例)参照。)。
特開昭61−133362号公報
一方、自動車エンジンにおいては、近年の環境規制などに伴って、燃焼温度や排ガス温度が上昇する傾向にある。そのため、フェライト系球状黒鉛鋳鉄としては、耐熱性および耐酸化性の向上が要求されている。
しかしながら、耐熱性および耐酸化性の向上を図るため、単にケイ素の含有量を増加させるだけでは、機械物性(伸びなど)に劣る場合がある。
本発明の目的は、耐熱性および耐酸化性に優れ、さらには、機械物性にも優れるフェライト系球状黒鉛鋳鉄を提供することにある。
本発明のフェライト系球状黒鉛鋳鉄は、ケイ素4.8〜8.0質量%と、炭素2.5〜4.0質量%と、銅1.0〜3.0質量%、および、スズ0.1〜0.5質量%の少なくともいずれかと、残部の鉄とからなるフェライト系球状黒鉛鋳鉄であって、前記ケイ素と、前記炭素と、前記銅および前記スズの少なくともいずれかと、前記鉄とを含有する溶湯を、冷却することによりパーライト組織を形成し、次いで、前記パーライト組織をフェライト化処理することにより得られることを特徴としている。
本発明のフェライト系球状黒鉛鋳鉄は、耐熱性および耐酸化性に優れ、さらには、機械物性にも優れる。
球状黒鉛、フェライト組織およびパーライト組織を含有する鋳鉄(フェライト化処理前)を示す模式図である。 図1に示す鋳鉄のフェライト化処理後を示す模式図である。
本発明のフェライト系球状黒鉛鋳鉄は、必須成分として、ケイ素(Si)、炭素(C)、パーライト化元素(後述)および鉄(Fe)を含んでおり、実質的には、ケイ素、炭素、パーライト化元素および鉄からなる。なお、実質的とは、微量の不純物(不可避的混入物)の含有を許容する。換言すれば、フェライト系球状黒鉛鋳鉄は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、微量の不純物(不可避的混入物)を含有することができる。
このようなフェライト系球状黒鉛鋳鉄において、鉄の含有割合は、後述する各成分の残余の割合であって、各成分の配合量に応じて、適宜設定される。
ケイ素は、炭素を黒鉛として晶出させ、また、耐熱性および耐酸化性の向上を図るために配合される。
ケイ素の含有割合は、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の総量に対して、4.8質量%以上、好ましくは、5.0質量%以上、より好ましくは、5.5質量%以上であり、8.0質量%以下、好ましくは、7.0質量%以下、より好ましくは、6.0質量%以下である。
ケイ素の含有割合が上記範囲であれば、耐熱性および耐酸化性の向上を図ることができる。
炭素は、後述する球状化剤により球状化された黒鉛(球状黒鉛)として、フェライト系球状黒鉛鋳鉄に含有される。
炭素の含有割合は、下記式で示される炭素当量(CE値)が、例えば、4以上、好ましくは、4.5以上、例えば、6以下、好ましくは、5.5以下となるように、ケイ素の含有量に応じて設定される。
CE値 = 炭素含有量(質量%)+1/3×ケイ素含有量(質量%)
より具体的には、炭素の含有割合は、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の総量に対して、2.5質量%以上、好ましくは、2.6質量%以上、より好ましくは、2.7質量%以上であり、4.0質量%以下、好ましくは、3.5質量%以下、より好ましくは、3.0質量%以下である。
炭素の含有量が上記範囲であれば、黒鉛を良好に晶出させ、ヒケ欠陥などを抑制できるとともに、優れた強度を確保することができる。
パーライト化元素は、後述するようにフェライト系球状黒鉛鋳鉄の原料である溶湯を冷却するときに、パーライト組織を形成するために配合される。
パーライト化元素としては、銅(Cu)、スズ(Sn)が挙げられる。これらパーライト化元素は、単独使用または2種類以上併用することができる。
パーライト化元素として銅が含有される場合、その含有割合は、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の総量に対して、1.0質量%以上、好ましくは、1.01質量%以上、より好ましくは、1.02質量%以上であり、3.0質量%以下、好ましくは、2.0質量%以下、より好ましくは、1.5質量%以下である。
また、ケイ素の含有量に対する銅の含有量の質量比(Cu/Si)は、例えば、0.12以上、好ましくは、0.15以上であり、例えば、0.65以下、好ましくは、0.3以下である。
銅の含有割合が上記範囲であれば、良好にパーライト組織を形成することができる。
パーライト化元素としてスズが含有される場合、その含有割合は、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の総量に対して、0.1質量%以上、好ましくは、0.105質量%以上、より好ましくは、0.11質量%以上であり、例えば、0.5質量%以下、好ましくは、0.3質量%以下、より好ましくは、0.15質量%以下である。
また、ケイ素の含有量に対するスズの含有量の質量比(Sn/Si)は、例えば、0.012以上、好ましくは、0.05以上であり、例えば、0.15以下、好ましくは、0.1以下である。
スズの含有割合が上記範囲であれば、良好にパーライト組織を形成することができる。
また、パーライト化元素としては、上記割合の銅、および、上記割合のスズの少なくともいずれかが含有されていればよく、それら両方が含有されていてもよい。
なお、銅およびスズの含有割合が、いずれも上記の範囲に満たない場合には、パーライト組織を形成することができない。
すなわち、銅の含有割合が1.0質量%以下であり、かつ、スズの含有割合が0.1質量%以下である場合には、パーライト組織は形成されず、フェライト組織のみが形成される。
また、このフェライト系球状黒鉛鋳鉄においては、銅およびスズの少なくともいずれか一方が、上記割合で含有されていれば、他方が上記割合未満で含有されていてもよい。
より具体的には、パーライト化元素として、上記割合(1.0〜3.0質量%)の銅が含有される場合には、スズが上記範囲未満の割合で含有されていてもよい。このような場合、スズの含有割合は、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の総量に対して、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.02質量%以上、例えば、0.05質量%以下、好ましくは、0.04質量%以下である。これにより、さらに良好にパーライト組織を形成することができる。
また、パーライト化元素として、上記割合(0.1〜0.5質量%)のスズが含有される場合には、銅が上記範囲未満の割合で含有されていてもよい。このような場合、銅の含有割合は、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、例えば、0.5質量%以下、好ましくは、0.4質量%以下である。これにより、さらに良好にパーライト組織を形成することができる。
また、フェライト系球状黒鉛鋳鉄は、不可避的混入物として、さらに、マグネシウム(Mg)を含有することができる。
マグネシウムは、例えば、黒鉛の球状化剤(後述)に含有されており、フェライト系球状黒鉛鋳鉄中に残留する場合がある。
このような場合、マグネシウムの含有割合は、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の総量に対して、例えば、0.02質量%以上、好ましくは、0.03質量%以上、例えば、0.06質量%以下、好ましくは、0.05質量%以下である。
また、炭素の含有量に対するマグネシウムの含有量の質量比(Mg/C)は、例えば、0.005以上、好ましくは、0.01以上であり、例えば、0.025以下、好ましくは、0.02以下である。
マグネシウムの含有割合が上記範囲であれば、黒鉛を良好に球状化することができる。
さらに、フェライト系球状黒鉛鋳鉄は、上記したように、不純物(不可避的混入物)を含有する場合がある。不可避的混入物は、積極的に配合されず、例えば、鉄などに混入することによって、フェライト系球状黒鉛鋳鉄に混入される。不可避的混入物としては、例えば、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)などが挙げられる。
なお、これら不可避的混入物の含有割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲であれば、特に制限されない。
以下において、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の製造方法について、詳述する。
この方法では、まず、鉄および炭素を溶融させ、溶湯を得る。
鉄としては、例えば、各種産業分野で得られる鉄スクラップや銑鉄などが挙げられる。好ましくは、不可避的混入物の含有量が比較的低い鉄スクラップが挙げられる。
炭素としては、特に制限されず、公知の黒鉛粉末などが挙げられる。また、鉄として用いられる鉄スクラップや銑鉄などに炭素が含有されている場合には、その炭素をそのまま用いることができる。
鉄と炭素との配合割合は、得られるフェライト系球状黒鉛鋳鉄における炭素の含有割合が上記範囲となるよう、適宜設定される。
溶融方法としては、特に制限されず、例えば、高周波溶解炉などの電気炉が用いられる。溶融温度は、例えば、1400℃以上、好ましくは、1500℃以上であり、例えば、2000℃以下である。
また、この方法では、球状黒鉛を効率よく晶出させ、また、優れた鋳鉄を得る観点から、必要により、脱硫処理、フラックス処理、溶湯精錬処理などにより、溶湯中の不純物量を低減することができる。
次いで、この方法では、溶融した鉄および炭素(溶湯)の中に、ケイ素と、銅および/またはスズからなるパーライト化剤と、球状化剤とを添加し、混合する。
ケイ素の添加では、例えば、Si金属単体や、Fe−Si系接種剤などのSi含有接種剤が添加される。好ましくは、Fe−Si系接種剤が添加される。
Fe−Si系接種剤において、鉄(Fe)の含有割合は、Fe−Si系接種剤の総量に対して、例えば、35〜55質量%である。また、ケイ素(Si)の含有割合は、Fe−Si系接種剤の総量に対して、例えば、45〜65質量%である。
溶湯に対するケイ素の配合割合は、得られるフェライト系球状黒鉛鋳鉄におけるケイ素の含有割合が上記の範囲となるよう、適宜設定される。
パーライト化剤の添加では、例えば、Cu金属単体、Sn金属単体などの金属単体や、例えば、Cu−Sn系接種剤などのCuおよび/またはSn含有接種剤が添加される。好ましくは、Cu金属単体、Cu−Sn系接種剤が添加される。
Cu−Sn系接種剤において、銅(Cu)の含有割合は、Cu−Sn系接種剤の総量に対して、例えば、10〜30質量%である。また、スズ(Sn)の含有割合は、Cu−Sn系接種剤の総量に対して、例えば、10〜30質量%である。なお、残部は、通常、鉄(Fe)である。
溶湯に対するパーライト化剤の配合割合は、得られるフェライト系球状黒鉛鋳鉄における銅およびスズの含有割合が上記範囲となるよう、適宜設定される。
球状化剤は、炭素(黒鉛)を球状化させるために、溶湯に添加される。
球状化剤の添加では、例えば、Fe−Si−Mg系球状化剤などのMg含有球状化剤が添加される。
Fe−Si−Mg系球状化剤において、鉄(Fe)の含有割合は、Fe−Si−Mg系球状化剤の総量に対して、例えば、30〜60質量%である。また、ケイ素(Si)の含有割合は、Fe−Si−Mg系球状化剤の総量に対して、例えば、40〜60質量%である。また、マグネシウム(Mg)の含有割合は、Fe−Si−Mg系球状化剤の総量に対して、例えば、3〜10質量%である。
Fe−Si−Mg系球状化剤が用いられる場合において、その配合割合は、得られるフェライト系球状黒鉛鋳鉄におけるケイ素およびマグネシウムの含有割合が上記範囲となるよう、適宜設定される。
添加順序は、特に制限されないが、例えば、溶融した鉄および炭素(溶湯)に対して、まず、パーライト化剤(Cu−Sn系接種剤など)が添加され、次いで、球状化剤(Fe−Si−Mg系球状化剤など)が添加され、その後、ケイ素(Fe−Si系接種剤など)が添加される。
上記の順序で添加すれば、後述する鋳込みの直前に、ケイ素(Fe−Si系接種剤など)を添加することができ、ケイ素の劣化を抑制することができるため、ケイ素の添加による効果(耐熱性および耐酸化性)を、より良好に発現することができる。
そして、このようにして溶湯にケイ素、パーライト化剤および球状化剤を添加することにより、ケイ素と、炭素と、銅およびスズの少なくともいずれかのパーライト化元素と、鉄と、さらに、球状化剤とを含有する溶湯が得られる。
その後、この方法では、上記により得られた溶湯を冷却し、パーライト組織を形成する。
より具体的には、この方法では、上記により得られた溶湯を、所定の形状の鋳型に流し入れる(鋳込む)。
鋳込み時の溶湯の温度は、例えば、1300℃以上、好ましくは、1350℃以上であり、例えば、1500℃以下、好ましくは、1400℃以下である。
次いで、この方法では、鋳型内において、溶湯を冷却する。
冷却温度(到達温度)は、例えば、900℃以下、好ましくは、800℃以下であり、例えば、700℃以上、好ましくは、750℃以上である。
また、冷却速度は、例えば、12℃/min以下、好ましくは、10℃/min以下であり、より好ましくは、8℃/min以上、さらに好ましくは、6℃/min以下である。
このような冷却により、図1に示すように、球状黒鉛1、フェライト組織2およびパーライト組織3を含有する鋳鉄(フェライト化処理前)4aが得られる。
より具体的には、上記の冷却に伴って、溶湯中に含まれる炭素が球状化され、球状黒鉛1が形成される。なお、このとき、球状化剤は、溶湯(およびその冷却により得られる鋳鉄)から脱離するが、球状化剤に含まれるマグネシウムが、一部残存する。
また、炭素が球状黒鉛1側に吸収されるため、その球状黒鉛1の周囲において、炭素を含まない組織であるフェライト組織2が形成される。
さらに、それらフェライト組織2の周囲において、フェライト層とセメンタイト層(FeCなど)とが交互に積層されたパーライト組織3が形成される。
その後、この方法では、パーライト組織3をフェライト化処理する。
より具体的には、フェライト化処理では、得られた鋳鉄4aを加熱炉において熱処理(焼き鈍し)する。
熱処理条件としては、熱処理温度(到達温度)が、例えば、900℃以上、好ましくは、950℃以上であり、例えば、1200℃以下、好ましくは、1100℃以下である。
また、昇温速度は、例えば、2.0℃/min以上、好ましくは、2.2℃/min以上であり、例えば、2.7℃/min以下、好ましくは、2.5℃/min以下である。
また、好ましくは、上記の温度において、所定時間保持する。保持時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、5時間以下、好ましくは、4時間以下である。
このような熱処理によって、図2に示すように、パーライト組織3がフェライト化され、球状黒鉛1およびフェライト組織2からなるフェライト系球状黒鉛鋳鉄4bが得られる。
そして、この方法では、得られたフェライト系球状黒鉛鋳鉄を、例えば、加熱炉内において冷却する。
冷却温度(到達温度)は、例えば、300℃以下、好ましくは、280℃以下であり、例えば、200℃以上、好ましくは、250℃以上である。
また、冷却速度は、例えば、1.2℃/min以上、好ましくは、1.3℃/min以上であり、例えば、1.5℃/min以下、好ましくは、1.4℃/min以下である。
その後、この方法では、得られたフェライト系球状黒鉛鋳鉄を、加熱炉から取り出し、空冷する。
このようにして得られるフェライト系球状黒鉛鋳鉄4bは、ケイ素の含有割合が上記割合(4.8〜8.0質量%)に調整されているため、ケイ素の含有割合が4.0〜4.5質量%である場合に比べ、耐熱性および耐酸化性に優れる。
一方、ケイ素は、フェライト組織に均一に固溶され、フェライト組織を硬くすることにより、延性(伸び)を低下させる作用を有する。そのため、通常、ケイ素の含有割合が上記の範囲(4.8〜8.0質量%)である場合には、ケイ素の含有割合が4.0〜4.5質量%である場合などに比べ、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の延性(伸び)に劣る。
しかしながら、上記の方法で得られるフェライト系球状黒鉛鋳鉄は、ケイ素が偏在するように分布しているため、延性(伸び)にも優れる。
すなわち、図1が参照されるように、上記の方法では、溶湯が冷却されるときに、フェライト組織2とパーライト組織3とが形成される。このような場合、溶湯中のケイ素は、フェライト組織2中には固溶する一方、パーライト組織3のセメンタイト層(FeCなど)には固溶しない。そのため、パーライト組織3におけるケイ素の固溶量は比較的少なくなり、フェライト組織2におけるケイ素の固溶量は比較的多くなる。
その後、この方法では、図2が参照されるように、熱処理により、パーライト組織3がフェライト化される。
このような場合、パーライト組織3からフェライト組織2に変化した部分2aにおけるケイ素の固溶量は比較的少なくなり、熱処理前からフェライト組織2であった部分2bにおけるケイ素の固溶量は比較的多くなる。
そして、フェライト系球状黒鉛鋳鉄4bにおいて、ケイ素の固溶量が比較的少ない部分は、比較的軟らかくなり、また、ケイ素の固溶量が比較的多い部分は、比較的硬くなる。そのため、上記のように、ケイ素が偏在するように分布していれば、ケイ素が一様に分布している場合に比べ、延性(伸び)に優れる。
なお、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の分野においては、ケイ素の含有割合が上記の範囲(4.8〜8.0質量%)である場合には、ケイ素の含有割合が4.0〜4.5質量%である場合に比べて、硬度が増加することにより脆化し、また、延性(伸び)が低下することが知られている。
また、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の分野においては、通常、パーライト組織を形成することによって、硬度が増加することにより脆化し、延性(伸び)が低下することも知られている。
そのため、通常、ケイ素の含有割合が上記の範囲(4.8〜8.0質量%)である場合に、敢えて、パーライト組織を形成することはない。
しかしながら、本発明では、上記したように、ケイ素の含有割合が上記の範囲(4.8〜8.0質量%)である場合に、まず、パーライト組織を形成し、その後、パーライト組織をフェライト化処理することにより、耐熱性および耐酸化性に優れ、さらには、機械物性(延性)にも優れるフェライト系球状黒鉛鋳鉄を得ることができる。
フェライト系球状黒鉛鋳鉄のA1変態点は、例えば、900℃以上、好ましくは、950℃以上であり、例えば、1100℃以下、好ましくは、1050℃以下である。
なお、A1変態点の測定方法は、後述する実施例に準拠する。
また、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の線膨張係数は、例えば、9×10−6以上、好ましくは、10×10−6以上であり、例えば、14×10−6以下、好ましくは、13×10−6以下である。
なお、線膨張係数の測定方法は、後述する実施例に準拠する。
また、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の耐力(JIS Z 2241(2012版に準拠)は、常温(25℃)において、例えば、400MPa以上、好ましくは、420MPa以上であり、例えば、700MPa以下、好ましくは、650MPa以下である。また、800℃において、例えば、20MPa以上、好ましくは、25MPa以上であり、例えば、50MPa以下、好ましくは、40MPa以下である。
フェライト系球状黒鉛鋳鉄の引張強度(JIS Z 2241(2012版に準拠)は、常温(25℃)において、例えば、490MPa以上、好ましくは、550MPa以上であり、例えば、750MPa以下、好ましくは、700MPa以下である。また、800℃において、例えば、25MPa以上、好ましくは、30MPa以上であり、例えば、60MPa以下、好ましくは、50MPa以下である。
また、フェライト系球状黒鉛鋳鉄の伸び(JIS Z 2241(2012版に準拠)は、常温(25℃)において、例えば、1%以上、好ましくは、1.5%以上であり、例えば、10%以下、好ましくは、8%以下である。
そして、このようなフェライト系球状黒鉛鋳鉄は、各種産業分野における耐熱材料として、広く用いることができる。とりわけ、フェライト系球状黒鉛鋳鉄は、比較的高温に曝露される自動車の排気系部品などにおいて、好適に用いることができる。具体的には、フェライト系球状黒鉛鋳鉄は、例えば、自動車エンジンのエキゾーストマニホールド、ターボチャージャーのハウジング、アウトレットパイプ、ターボハウジング一体型エキゾーストマニホールドなど、さらに、排ガス浄化触媒などが固定される触媒ケースなどにおいて、好適に用いることができる。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、以下の説明において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。なお、以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される対応する数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
実施例1
鉄スクラップ970kgと黒鉛30kgとを混合し、高周波溶解炉において1570℃に加熱し、溶湯を得た。得られた溶湯を取鍋に500kg取り出した。さらに、その取鍋から溶湯を150kg取り出した。
そして、パーライト化剤として、純銅1.6kgを添加した。次いで、Fe−Si−Mg系球状化剤(Fe−Si−4Mg球状化剤、大阪特殊合金製)4kgを添加した。次いで、Fe−Si系接種剤(大阪特殊合金製)5kgを添加した。
次いで、得られた溶湯を、1363℃において鋳込み、冷却速度6℃/minで、800℃まで冷却した。これにより、球状黒鉛、フェライト組織およびパーライト組織を含有する鋳鉄(フェライト化処理前)を得た。
その後、得られた鋳鉄を、フェライト化処理した。より具体的には、上記により得られた鋳鉄(フェライト化処理前)を、高温電気炉において昇温速度2.0〜2.7℃/minで6〜8時間かけて1000℃まで加熱し、3時間保持した。これにより、パーライト組織を熱処理(フェライト化処理)し、フェライト系球状黒鉛鋳鉄を得た。
なお、フェライト系球状黒鉛鋳鉄は、炉内において250〜300℃まで8〜10時間放冷し、その後、空冷した。
実施例2
パーライト化剤として、純銅1.6kgに代えて、Cu−Sn系接種剤(20Cu−20Sn接種剤、大阪特殊合金製)2.3kgを添加した以外は、実施例1と同様にしてフェライト系球状黒鉛鋳鉄を得た。なお、鋳込み時の温度は、1352℃であった。
比較例1
Fe−Si−Mg系球状化剤の配合量を5kgに変更し、また、Fe−Si系接種剤の配合量を1kgに変更し、また、純銅を添加せず、フェライト化処理しなかった以外は、実施例1と同様にしてフェライト系球状黒鉛鋳鉄を得た。なお、鋳込み時の温度は、1402℃であった。
比較例2
純銅を添加せず、また、熱処理しなかった以外は、実施例1と同様にしてフェライト系球状黒鉛鋳鉄を得た。なお、鋳込み時の温度は、1392℃であった。
比較例3
熱処理しなかった以外は、実施例1と同様にして、球状黒鉛鋳鉄を得た。
比較例4
熱処理しなかった以外は、実施例2と同様にして、球状黒鉛鋳鉄を得た。
比較例5
熱処理した以外は、比較例2と同様にして、球状黒鉛鋳鉄を得た。
<評価>
(1)成分分析
各実施例および各比較例において得られた球状黒鉛鋳鉄を、炭素、硫黄分析装置(EMIA−220V 堀場製作所製)、蛍光X線分析装置(RIX3000 リガク製)により分析した。その結果を、表1に示す。
Figure 2015227485
なお、表中において、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)およびマグネシウム(Mg)は、不可避的混入物である。
(2)耐力、伸び、引張強度(常温および800℃)
各実施例および各比較例の球状黒鉛鋳鉄の、常温および800℃のそれぞれの温度における耐力、伸びおよび引張強度を測定した。具体的には、JIS Z 2241(2012年)の金属材料引張試験方法に準拠して、引張試験を実施し、耐力、伸びおよび引張強度を測定した。その結果を、表2に示す。
(3)A1変態点(Ac1)、線膨張率
各実施例および各比較例において得られた球状黒鉛鋳鉄の、A1変態点(Ac1)および線膨張率を、熱機械分析装置(TMAリガク製)にて測定した。その結果を、表2に示す。
(4)耐酸化性(高温酸化増量)
各実施例および各比較例において得られた球状黒鉛鋳鉄の高温酸化増量を、下記の測定方法によって、測定した。
すなわち、示差熱天秤(TG−DTAリガク製)にて、100℃から1000℃までの昇温を5サイクル終了後、室温に戻ったときにおける、測定前からの質量変化量(g/mm)を測定した。その結果を、表2に示す。
Figure 2015227485
1 球状黒鉛
2 フェライト組織
3 パーライト組織
4a 鋳鉄
4b フェライト系球状黒鉛鋳鉄

Claims (1)

  1. ケイ素4.8〜8.0質量%と、
    炭素2.5〜4.0質量%と、
    銅1.0〜3.0質量%、および、スズ0.1〜0.5質量%の少なくともいずれかと、
    残部の鉄とからなるフェライト系球状黒鉛鋳鉄であって、
    前記ケイ素と、前記炭素と、前記銅および前記スズの少なくともいずれかと、前記鉄とを含有する溶湯を、冷却することによりパーライト組織を形成し、
    次いで、前記パーライト組織をフェライト化処理することにより得られることを特徴とする、フェライト系球状黒鉛鋳鉄。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106424572A (zh) * 2016-11-06 2017-02-22 薛献来 一种低温铁素体球墨铸铁附铸试块制备方法
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