JP2007197747A - 球状黒鉛鋳鉄 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼入れ前(鋳放し状態)の良好な被削性と、焼入れ処理時の良好な焼入れ性とを併せ持った球状黒鉛鋳鉄を提供する。
【解決手段】FCD450相当の球状黒鉛鋳鉄の溶湯に銅(Cu)及びニッケル(Ni)を添加することにより得られる球状黒鉛鋳鉄である。この球状黒鉛鋳鉄は少なくとも、Cuの含有量が0.2〜0.4質量%であり、Niの含有量が0.4〜0.8質量%であり、FCD600相当の機械的性質を有する。更に、この球状黒鉛鋳鉄は基地組織の大部分がパーライト及びフェライトで構成され、球状黒鉛を除いた基地組織の面積割合においてパーライトが50〜90%を占めている。
【選択図】なし

Description

本発明は、焼入れ前(鋳放し状態)の被削性に優れると共に、焼入れ処理時の焼入れ性にも優れた(鋳放し)球状黒鉛鋳鉄に関する。特に、焼入れ前の被削性及び焼入れ性に優れたFCD600相当の球状黒鉛鋳鉄に関するものである。
鋳物製の自動車用部品にあっては、軽量性、高強度性、加工性(加工し易さ)などといった背反的特性を同時に満たすことが求められる傾向にあるが、強度と加工性との両立を図ることは一般に難しい。それ故、一般的な解決策として、比較的加工し易い状態の鋳放し品に対し切削加工等を施した後、焼入れを行って強度の確保を図ることが通例となっている。
鋳物製の自動車用部品の素材としては、球状黒鉛鋳鉄が多用されている。球状黒鉛鋳鉄はその機械的性質により日本工業規格(JIS)において、FCD370、400、450、500、600、700、800の7種類が規定されている。例えば、汎用の球状黒鉛鋳鉄であるFCD450は、基地組織のほとんどが軟らかいフェライト組織であることから、加工性(例えば被削性)に優れるが、強度、硬度及び焼入れ性に劣るという欠点がある。これに対し、FCD600、700及び800は、基地組織の大半がパーライト組織であることから、強度及び硬度に優れ、良好な焼入れ性も有するが、その硬さゆえに加工性(例えば被削性)が悪いという欠点がある。このように、既存の球状黒鉛鋳鉄にあっては、焼入れ前(鋳放し状態)の良好な被削性と、焼入れ処理時の良好な焼入れ性とを両立させることが難しかった。
ちなみに特許文献1は、球状黒鉛鋳鉄の高周波焼入れ方法を開示する。この高周波焼入れ方法では、素材単価が安く被削性がよいFCD500材を焼入れ処理することにより、FCD700の鋳放し材と同程度の強度を得ている。より具体的には、冷却剤濃度を10%前後に調整した冷却剤を使用して、パーライト率が65%前後のFCD500素材を所定回数繰り返し高周波焼入れし、焼入れ層内におけるパーライト部だけでなく、球状黒鉛周囲のフェライト部もマルテンサイトに変態させている。しかしながら、球状黒鉛周囲のフェライトリングをマルテンサイトに変態させるまで高周波による急加熱と冷却剤による急冷とを複数回繰り返すものであるため、例えば製品に歪みや割れを生じ易いなど、実施に際しては解決すべき問題点も多いものである。
特開平11−12646号公報
本発明の目的は、焼入れ前(鋳放し状態)の良好な被削性と、焼入れ処理時の良好な焼入れ性とを併せ持った球状黒鉛鋳鉄を提供することにある。
本発明は、FCD450相当の球状黒鉛鋳鉄の溶湯に銅(Cu)及びニッケル(Ni)を添加することにより得られるFCD600相当の球状黒鉛鋳鉄である。本発明の球状黒鉛鋳鉄にあっては、Cuの含有量が0.2〜0.4質量%であり、Niの含有量が0.4〜0.8質量%である。より好ましくは、質量比で、C:3.5〜3.9%、Si:2〜3%、Mn:0.8%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Mg:0.03〜0.05%、Cu:0.2〜0.4%、Ni:0.4〜0.8%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる球状黒鉛鋳鉄である。
更に好ましくは、本発明の球状黒鉛鋳鉄は、基地組織の大部分がパーライト及びフェライトで構成され、球状黒鉛を除いた基地組織の面積割合においてパーライトが50〜90%を占めるものである。そして、FCD600相当の機械的性質を有すると共に、焼入れ前の被削性及び焼入れ性に優れた球状黒鉛鋳鉄である。
[作用]
本発明によれば、FCD450相当の球状黒鉛鋳鉄の溶湯に銅(Cu)及びニッケル(Ni)を添加することにより、少なくとも、Cuの含有量が0.2〜0.4質量%であり且つNiの含有量が0.4〜0.8質量%であるFCD600相当の球状黒鉛鋳鉄を得ている。その結果、基地組織の大部分がパーライト及びフェライトで構成され、球状黒鉛を除いた基地組織の面積割合においてパーライトが50〜90%を占めるFCD600相当の球状黒鉛鋳鉄となっている。
本発明の球状黒鉛鋳鉄では、溶湯の段階でニッケル含有量が0.4〜0.8質量%となるようにニッケルを添加分散させたため、鋳放し時にはパーライトの微細化及び黒鉛化の促進が図られ、鋳放し状態の金属組織は切削等の機械加工に対する一定の柔軟性を備えている。また、基地組織中のパーライトを安定させるための添加元素である銅の含有量を0.2〜0.4質量%の範囲にとどめることで、鋳放し状態の金属組織が過度に硬化することを防止している。このため、本発明の球状黒鉛鋳鉄は、その素材硬度が従来の一般的なFCD600材(ビッカース硬度でHV190〜270)と同等であるにもかかわらず、従来の一般的なFCD600材よりも被削性に優れており、FCD450材に近い良好な被削性を備えている。
更に、本発明の球状黒鉛鋳鉄では、焼入れ性を改善する元素であるニッケルを0.4〜0.8質量%添加分散させたことで、この球状黒鉛鋳鉄を焼入れのために急加熱した場合(例えば高周波による数秒での短時間急加熱を行った場合)でも、金属組織のオーステナイト固溶状態時に、パーライト組織の変態及びC(黒鉛)の拡散が十分に行われる。その結果、残存するフェライト組織が解消してマルテンサイト化がすすみ、効果的な焼入れが可能になる。
本発明の球状黒鉛鋳鉄によれば、鋳放し状態でFCD600相当の硬度及び強度を有するにもかかわらず、従来の一般的なFCD600材よりも被削性に優れており、焼入れ性にも優れている。すなわち、硬度、機械的強度及び焼入れ性に劣る従来のFCD450や、焼入れ前の被削性に劣る従来のFCD600、700及び800などとは異なり、本発明の球状黒鉛鋳鉄は、硬度、機械的強度、焼入れ前の被削性及び焼入れ性のいずれにおいてもバランスのよい性能を発揮する。
本発明の好ましい実施形態や追加的構成要件について以下に説明する。
本発明の球状黒鉛鋳鉄は、FCD450相当の球状黒鉛鋳鉄を出発材料とし、このFCD450材の溶湯(溶融金属)中に銅(Cu)及びニッケル(Ni)を添加することにより得られる新たな球状黒鉛鋳鉄であり、鋳放し状態でFCD600相当の機械的性質を有する球状黒鉛鋳鉄である。
出発材料となるFCD450材は、Fe以外に少量のC,Si,Mn,P,S,Mg等の添加元素を含有する球状黒鉛鋳鉄である。FCD450材の溶湯中にCu及びNiを添加する際、これらの金属は純金属又は合金のいずれであってもよく、又、小塊状あるいは粒状などどのような形態であってもよい。なお、FCD450材中のMgを添加する際のタイミングについては、フェイディングを考慮すると、溶湯中にCu及びNiを添加した後にMgを添加することが好ましい。
Cu及びNiを添加(好ましくはCu及びNiの添加後にMgを添加)して均一に分散させた後に溶湯を冷却して得られる鋳放し状態の球状黒鉛鋳鉄は、最も好ましくは、質量比で、C:3.5〜3.9%、Si:2〜3%、Mn:0.8%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Mg:0.03〜0.05%、Cu:0.2〜0.4%、Ni:0.4〜0.8%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるものである。それぞれの添加元素は、球状黒鉛鋳鉄に種々の特性を付与する等、以下に述べるような技術的意義を有している。
C(炭素)は組織中に黒鉛及び炭化物を生成するための元素である。Cの含有量を3.5〜3.9質量%としているのは、3.5質量%未満の場合、鋳造性が悪化して、湯廻り不良、引け巣又は黒鉛球状化不良などの鋳造欠陥が発生し易くなるからであり、3.9質量%を超える場合、粗大な初晶黒鉛が晶出してカーボンドロスが発生し易くなるからである。
Si(珪素)は黒鉛の晶出を容易にし、鋳造性を良好にするための元素である。Siの含有量を2〜3質量%としているのは、2質量%未満の場合、黒鉛化が不十分となってチルが晶出し易くなり、被削性に悪影響を及ぼすだけでなく、鋳造性も悪化してしまうからであり、3質量%を超える場合、黒鉛の晶出量が過多になると共に、フェライト化が促進されることで所望の強度が得られなくなるおそれがあるからである。なお、Si含有量を2.3〜2.8質量%の範囲とすることは更に好ましい。
Mn(マンガン)は基地組織中のパーライトを安定させ、引張強さ、耐力及び疲労強度を向上させるのに必要な元素である。Mnの含有量を0.8%以下としているのは、0.8質量%を超えると、被削性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
P(リン)の含有量を0.1質量%以下としているのは、0.1質量%を超えると、鋳造性が悪化して鋳造欠陥が発生したり、チルが晶出して被削性に悪影響を及ぼしたりするからである。
S(イオウ)の含有量を0.03質量%以下としているのは、0.03質量%を超えると、黒鉛の球状化が悪化するからである。
Mg(マグネシウム)は、黒鉛を球状化させるのに必要な元素である。Mg(マグネシウム)の含有量を0.03〜0.05質量%としているのは、0.03質量%未満の場合、黒鉛球状化不良が発生するおそれがあるからであり、0.05質量%を超える場合、チルが晶出して被削性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
Cu(銅)は基地組織中のパーライトを安定させ、引張強さを高めるのに必要な元素である。Cuの含有量を0.2〜0.4質量%としているのは、0.2質量%未満の場合、引張強さを高める効果が低いからであり、0.4質量%を超えた場合、基地組織が硬化し過ぎて被削性が大幅に低下するからである。
Ni(ニッケル)は基地組織を強化すると共に、被削性及び焼入れ性を向上させるのに必要な元素である。特にNiの添加によって、鋳放し時にはパーライトの微細化及び黒鉛化の促進が図られ、鋳放し状態の金属組織は切削等の機械加工に対する一定の柔軟性を有するに到る。Niの含有量を0.4〜0.8質量%としているのは、この範囲内の含有量であれば、球状黒鉛鋳鉄を焼入れのために急加熱した場合(例えば高周波による数秒での短時間急加熱を行った場合)でも、金属組織のオーステナイト固溶状態時に、パーライト組織の変態及びC(黒鉛)の拡散が十分に行われ、効果的な焼入れが可能になるからである。仮に、Niの含有量が0.4質量%未満の場合、基地組織強化及び被削性向上の効果を期待できず、0.8質量%を超えた場合、引け性や湯流性が悪化するおそれがある。
上述のようにして得られる本発明の球状黒鉛鋳鉄は、その基地組織の大部分がパーライト及びフェライトで構成され、球状黒鉛を除いた基地組織の面積割合においてパーライトが50〜90%、好ましくは50〜70%、更に好ましくは50〜65%、最も好ましくは50〜60%を占めるものである。パーライトの割合が上記範囲の下限値未満になると、少なくとも焼入れ性が悪化し、焼入れ性に関して、出発材料であるFCD450材との有意差を見出せなくなるおそれがある。他方、パーライトの割合が上記範囲の上限値を超えると、少なくとも焼入れ前の被削性が低下し、被削性に関して、従来の一般的なFCD600、700及び800の各素材との有意差を見出せなくなるおそれがある。
以下、本発明に従う実施例1及び2、並びに、比較例1及び2について説明する。
[実施例1]
FCD450の球状黒鉛鋳鉄(Fe以外の元素として、C,Si,Mn,P,S,Mgを含有する)を1500〜1600℃の溶湯として準備し、そこへ少量の純銅及び少量の純ニッケルを添加して溶解させる(但し、FCD450球状黒鉛鋳鉄中のMgについては純銅及び純ニッケルの添加後に溶湯中に添加した)ことにより、Fe以外の元素の最終組成が質量比で、C:3.7%、Si:2.4%、Mn:0.25%、P:0.02%、S:0.01%、Mg:0.04%、Cu:0.3%、Ni:0.6%となる新たな球状黒鉛鋳鉄が得られた。この球状黒鉛鋳鉄の金属組織を顕微鏡(倍率100倍)で観察したところ、図1の顕微鏡写真に示すように、球状黒鉛の周囲にフェライトリング(写真中白っぽいリング部分)がみられ、その他の残りの基地にパーライト(写真中灰色の部分)がみられた。実施例1の球状黒鉛鋳鉄では、球状黒鉛を除いた基地組織の面積割合においてパーライトが約50%を占めていた。
実施例1の球状黒鉛鋳鉄について、ビッカース硬度、引張強さ、耐力及び伸びをそれぞれ測定したところ、ビッカース硬度:HV190、引張強さ:630MPa、耐力:400MPa、伸び:6%であり、FCD600相当の機械的性質を有していた。また、実施例1の球状黒鉛鋳鉄は、従来のFCD450と同程度の被削性を示した(詳細は後述)。実施例1の球状黒鉛鋳鉄に対して高周波加熱(加熱温度:1100〜1200℃)を施し、次いで冷却水をかけるという手順で焼入れ処理を行った。この焼入れ処理後の鋳鉄のビッカース硬度を測定したところ、HV600程度であり、焼入れ処理による顕著な強度向上がみられた。また、焼入れ処理後の鋳鉄の金属組織を顕微鏡で観察したところ、基地にマルテンサイトがみられた。
[実施例2]
FCD450の球状黒鉛鋳鉄(Fe以外の元素として、C,Si,Mn,P,S,Mgを含有する)を1500〜1600℃の溶湯として準備し、そこへ少量の純銅及び少量の純ニッケルを添加して溶解させる(但し、FCD450球状黒鉛鋳鉄中のMgについては純銅及び純ニッケルの添加後に溶湯中に添加した)ことにより、Fe以外の元素の最終組成が質量比で、C:3.7%、Si:2.4%、Mn:0.25%、P:0.02%、S:0.01%、Mg:0.04%、Cu:0.3%、Ni:0.8%となる新たな球状黒鉛鋳鉄が得られた。この球状黒鉛鋳鉄の金属組織を顕微鏡(倍率100倍)で観察したところ、実施例1と同様、球状黒鉛の周囲にフェライトリングがみられ、その他の残りの基地にパーライトがみられた。実施例2の球状黒鉛鋳鉄では、球状黒鉛を除いた基地組織の面積割合においてパーライトが約60%を占めていた。
実施例2の球状黒鉛鋳鉄について、ビッカース硬度、引張強さ、耐力及び伸びをそれぞれ測定したところ、ビッカース硬度:HV200、引張強さ:650MPa、耐力:420MPa、伸び:8%であり、FCD600相当の機械的性質を有していた。また、実施例2の球状黒鉛鋳鉄は、従来のFCD450と同程度の被削性を示した(詳細は後述)。実施例2の球状黒鉛鋳鉄に対して高周波加熱(加熱温度:1100〜1200℃)を施し、次いで冷却水をかけるという手順で焼入れ処理を行った。この焼入れ処理後の鋳鉄のビッカース硬度を測定したところ、HV600程度であり、焼入れ処理による顕著な強度向上がみられた。また、焼入れ処理後の鋳鉄の金属組織を顕微鏡で観察したところ、実施例1と同様、基地にマルテンサイトがみられた。
[比較例1]
比較例1は、実施例1及び2で出発原料として使用した従来のFCD450の球状黒鉛鋳鉄である。比較例1の球状黒鉛鋳鉄は、Fe以外の元素の組成が質量比で、C:3.7%、Si:2.4%、Mn:0.25%、P:0.02%、S:0.01%、Mg:0.04%であり、Cu及びNiは含有されていない。比較例1の球状黒鉛鋳鉄では、球状黒鉛を除いた基地組織の面積割合においてパーライトが約5%を占めていた。また、ビッカース硬度:HV160、引張強さ:450MPa、耐力:280MPa、伸び:11%であった。比較例1の球状黒鉛鋳鉄の被削性については後述する。この比較例1の球状黒鉛鋳鉄に対して高周波加熱(加熱温度:1100〜1200℃)を施し、次いで冷却水をかけるという手順で焼入れ処理を行った。この焼入れ処理後の鋳鉄のビッカース硬度を測定したところ、HV300程度であり、焼入れ処理によってもさしたる強度向上はみられなかった。焼入れ処理後の鋳鉄の金属組織を顕微鏡で観察したところ、球状黒鉛の周囲にフェライトリングが残存していた。
[比較例2]
比較例2は、従来のFCD600の球状黒鉛鋳鉄である。比較例2の球状黒鉛鋳鉄は、Fe以外の元素の組成が質量比で、C:3.7%、Si:2.4%、Mn:0.6%、P:0.02%、S:0.01%、Mg:0.04%、Cu:0.5%であり、Niは含有されていない。比較例2の球状黒鉛鋳鉄では、球状黒鉛を除いた基地組織の面積割合においてパーライトが約90%を占めていた。また、ビッカース硬度:HV240、引張強さ:600MPa、耐力:380MPa、伸び:5%であった。比較例2の球状黒鉛鋳鉄の被削性については後述する。この比較例2の球状黒鉛鋳鉄に対して高周波加熱(加熱温度:1100〜1200℃)を施し、次いで冷却水をかけるという手順で焼入れ処理を行った。この焼入れ処理後の鋳鉄のビッカース硬度を測定したところ、HV600程度であり、焼入れ処理による顕著な強度向上がみられた。また、焼入れ処理後の鋳鉄の金属組織を顕微鏡で観察したところ、実施例1及び2と同様、基地にマルテンサイトがみられた。
[被削性評価試験]
実施例1及び2並びに比較例1及び2の球状黒鉛鋳鉄について、それぞれの溶湯を砂型内へ注湯して鋳造することにより円筒状のテストピース(外径145mm、内径100mm、長さ300mm)を作製し、各テストピースに対し被削性評価試験を行った。被削性評価試験では、超硬コーティングが施されたサンドビック製の刃部を備えた切削工具を用い、切削速度150m/min、送り量0.4mm/rev、切込量0.5mmという条件下、各テストピースの外周面において約7600mの切削距離に達するまで切削を行った。そして、計8つの通過点での距離ごとに切削動力(単位:N)の大きさをそれぞれ測定した。切削動力の大きさは切削抵抗の大きさの指標となるものである。図2のグラフは被削性評価試験の結果を示す。
図2のグラフからわかるように、比較例2(従来のFCD600)では、切削距離が増すに伴って切削動力もほぼ単調増加しており、切削が進むほどに切削抵抗が大きくなるという特性(即ち被削性の悪さ)を示した。これに対し、実施例1、実施例2及び比較例1(従来のFCD450)では、切削距離が増しても切削動力は横ばい状態でほぼ一定しており、切削が進んでも切削抵抗にさほどの変化が無いという特性(即ち被削性の良さ)を示した。また、実施例1及び2は、比較例1に比べて切削抵抗の絶対値がやや大きいものの、比較例1に近いレベルの切削抵抗の低さを示した。実施例1及び2の切削抵抗は、比較例2の切削抵抗の約半分程度に過ぎなかった。このように、実施例1及び2の球状黒鉛鋳鉄は、従来のFCD450に近いレベルの良好な被削性を示した。
本発明の球状黒鉛鋳鉄は、自動車用部品、中でも駆動部品の鋳造に利用可能である。例えば、車両用差動装置のデフケースを製造する場合の素材として適している。即ち、良好な被削性を利用して鋳放し状態のデフケースを適切な形状に切削加工しておき、次いで、そのデフケースのうちでも特に耐摩耗性が要求される箇所(例えばスプライン構造部)を部分的に高周波焼入れして耐久性を高めるといった用途に利用することができる。
実施例1の球状黒鉛鋳鉄の金属組織の顕微鏡写真(倍率100倍)。 被削性評価試験の結果を示すグラフ。

Claims (4)

  1. FCD450相当の球状黒鉛鋳鉄の溶湯に銅(Cu)及びニッケル(Ni)を添加することにより得られるFCD600相当の球状黒鉛鋳鉄であって、
    Cuの含有量が0.2〜0.4質量%であり、Niの含有量が0.4〜0.8質量%であるFCD600相当の球状黒鉛鋳鉄。
  2. FCD450相当の球状黒鉛鋳鉄の溶湯に銅(Cu)及びニッケル(Ni)を添加することにより得られるFCD600相当の球状黒鉛鋳鉄であって、
    質量比で、C:3.5〜3.9%、Si:2〜3%、Mn:0.8%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Mg:0.03〜0.05%、Cu:0.2〜0.4%、Ni:0.4〜0.8%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるFCD600相当の球状黒鉛鋳鉄。
  3. 基地組織の大部分がパーライト及びフェライトで構成され、球状黒鉛を除いた基地組織の面積割合においてパーライトが50〜90%を占めることを特徴とする請求項1又は2に記載のFCD600相当の球状黒鉛鋳鉄。
  4. 質量比で、C:3.5〜3.9%、Si:2〜3%、Mn:0.8%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Mg:0.03〜0.05%、Cu:0.2〜0.4%、Ni:0.4〜0.8%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする焼入れ前の被削性及び焼入れ性に優れた球状黒鉛鋳鉄。
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