JP2015225693A - 放電ランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】発光管内の陰極にトリウム以外のエミッタを添加してなる放電ランプにおいて、陰極先端からエミッタが過剰に蒸発して早期に枯渇してしまうことを防止するとともに、陰極先端への円滑なエミッタ供給ができるようにし、更には、当初点灯時にも円滑な点灯ができるようにした構造を提供する。【解決手段】陰極3における本体部31は、トリウムを含まない高融点金属材料から構成され、先端部32は、エミッタ(トリウムを除く)が含有された高融点金属材料から構成されるとともに、その先端面にはレニウム−タングステン合金部が形成されており、本体部および/または先端部の内部に形成された密閉空間内33に、前記先端部に含有されたエミッタ濃度よりも高濃度のエミッタ(トリウムを除く)が含有された焼結体34が埋設される。【選択図】図2

Description

この発明は、陰極に電子放射を良好にするためのエミッタを含有してなる放電ランプに関するものであり、特に、トリウム以外のエミッタを含有してなる放電ランプに係わるものである。
一般に、高入力で高輝度な放電ランプなどにおいては、その陰極には、電子放射を容易にするためにエミッタが添加されており、そのエミッタとして酸化トリウム(ThO)を含有させたものが多用されていた。
しかしながら、トリウムは放射性物質として法的規制の対象であり、その管理や取り扱いに慎重な配慮が必要であって、そのためにトリウムに代わる代替物質が要望されている。
上記酸化トリウムの代替物質として希土類元素やその化合物をエミッタとして用いた電極が提案されている。
希土類元素は、仕事関数(一般的に、物質表面から外方へ電子が飛び出す際に必要なエネルギー量を指す)が低く、電子放射に優れた物質であり、トリウムの代替物質として期待されている。
特表2005−519435号号公報(特許文献1)には、陰極の材料であるタングステンにエミッタとして付加的に酸化ランタン(La)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ジルコニウム(ZrO)などを含有させた放電ランプが開示されている。
しかしながら、酸化ランタン(La)のような希土類酸化物は、ランプ電力が1kWを超えるような高入力の領域では、実用に耐えるものはなかった。
つまり、希土類酸化物は、酸化トリウム(ThO)より蒸気圧が高いために比較的蒸発しやすい。そのため、陰極に含有させるエミッタとして酸化トリウムに代えて希土類酸化物を用いた場合、当該希土類酸化物が過度に蒸発してしまい、早期に枯渇してしまうという事態が発生する。このエミッタの枯渇により、陰極における電子放射機能が低下してしまい、フリッカーが生じてしまってランプ寿命が短くなるという問題がある。
また、電子放射特性に寄与するエミッタは陰極の先端に存在するものだけであり、陰極後端から先端に向けての運搬が迅速に行われないことも一因といえる。
更には、陰極の内部に酸化物の状態で含有されているエミッタは、放電ランプの点灯中に温度が上昇することにより金属の状態に還元されてエミッタとして供給される。酸化物を還元するにはある程度の温度上昇が必要であるが、そうすると点灯始動時のエミッタ供給には時間がかかり、エミッタの枯渇の原因となる。
このように、トリウム以外のエミッタ物質を使った放電ランプにおいては、点灯が早期に不安定になるなどの問題がいまだ残るというのが実情である。特に、1kW以上の高入力の放電ランプにあっては、希土類元素の蒸気は、放電ランプを不安定な点灯に導くことが顕著である。
以上のように、従来用いられていたトリウムがエミッタとしては優れた物質であったために、その代替物として希土類元素を用いた放電ランプでは、トリウムを用いたものと同等の性能を備えるというところまでには至っていないというのが現状である。
特表2005−519435号公報
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、発光管の内部に、陰極と陽極とが対向配置された放電ランプにおいて、陰極にトリウム以外のエミッタを添加しても、当該エミッタの早期の枯渇を防止して、電子放出機能を長時間維持し、ランプのフリッカー寿命の長期化を図るようにするとともに、陰極後方から先端面へのエミッタの供給を円滑にし、かつ、当初の点灯時の点灯始動性に優れた構造を提供し、トリウム以外のエミッタを用いた放電ランプの実現を図ろうとするものである。
上記課題を解決するために、この発明では、前記陰極が、本体部とその先端側に接合された先端部とからなり、前記本体部は、トリウムを含まない高融点金属材料から構成され、前記先端部は、エミッタ(トリウムを除く)が含有された高融点金属材料から構成されるとともに、前記本体部および/または先端部の内部に形成された密閉空間内に、前記先端部に含有されたエミッタ濃度よりも高濃度のエミッタ(トリウムを除く)が含有された焼結体が埋設されていて、前記先端部の前記陽極と対向する先端面に、レニウム−タングステン合金部が形成されていることを特徴とする。
また、前記レニウム−タングステン合金部の厚みが少なくとも0.5mm以上であることを特徴とする。
本発明によれば、トリウムを含まない本体部の先端に、トリウム以外のエミッタが含有された先端部が接合され、前記本体部および/または先端部の内部に形成された密閉空間内に、前記先端部に含有されたエミッタ濃度よりも高濃度のエミッタ(トリウムを除く)が含有された焼結体が埋設されているので、放電ランプを当初に点灯する際には、先端部に含まれたエミッタ(トリウムを除く)が先端部を被覆することにより良好な点灯性がもたらされる。
点灯時間に応じて、先端部に当初含有されたエミッタは消費されるが、陰極内部の高濃度エミッタが含有された焼結体から、エミッタが先端部側に拡散供給されてくるので、先端部でエミッタが枯渇することなく、良好な点灯性は安定的に長期間維持される。
この焼結体は、陰極内部に埋設されているため、放電アークに直接曝されることがなく、アークによって加熱されることが抑制されるので、過度に蒸発してエミッタが早期に枯渇してしまうようなことがない。
また、所定時間の点灯後に消灯し、陰極が冷却された際には、点灯時に焼結体から拡散してくるエミッタが先端部内で留まるために、その後の再点灯時には、この先端部内のエミッタがその点灯性を良好なものとしてくれるものである。
そして、極めて高温になる先端部では結晶粒の再結晶化が進行して粒界が消失することが時に発生するが、その先端部の陽極と対向する先端面にレニウム−タングステン合金部を設けてあることにより、通常のタングステンより再結晶化する温度が高いレニウム−タングステン合金部では、高温の状態においても再結晶化することが抑制されて結晶粒界を保つことができるので、焼結体からのエミッタの粒界拡散が阻害されることがない。
本発明に係る陰極構造を有する放電ランプの全体図 本発明の実施例を表す陰極構造図 その作用説明図で、(A)は本発明、(B)は比較例 本発明の陰極の製造工程図 他の実施例
図1は、この発明の陰極構造を有する放電ランプの全体構造を示し、放電ランプ1は発光管2の内部に陰極3と陽極4とが対向配置されている。
図2に示されるように、陰極3は、本体部31と、その先端に接合された先端部32とからなる。
前記本体部31は、トリウムを含まない、タングステンやモリブデンなどの高融点金属材料からなる。
そして、前記先端部32は、前記本体部31の先端側、即ち、陽極4と対向する面に固相接合、溶接などの適宜な接合手段により接合されている。当該先端部32には、トリウム以外のエミッタが適宜含有量で含有されている(以下、先端部に含まれるエミッタを第1エミッタともいう)。
このトリウム以外の第1エミッタとしては、例えば、酸化ランタン(La)、酸化セリウム(CeO)、酸化ガドリニウム(Gd)、酸化サマリウム(Sm)、酸化プラセオジム(Pr11)、酸化ネオジム(Nd)、酸化イットリウム(Y)などが単体、もしくはその組み合わせで用いられる。
ここで、第1エミッタの含有量は、例えば、0.5重量%〜5.0重量%、さらに望ましくは0.5〜2.5重量%と低めに設定される。この第1エミッタは、ランプの当初の点灯時における始動性を確保するためのものであって、濃度が低めに設定されるのは、放電アークに曝されてエミッタが過度に蒸発することを防止するためである。
つまり、第1エミッタの含有量が、0.5重量%未満の場合、点灯初期において電子放出に必要となるエミッタ濃度を確保できず、ランプ電圧の上昇や変動の増大が、発生する。また、含有量が、5.0重量%を超えてしまうと、タングステン材料等の製造の際に、焼結体が脆くなってしまい、焼結工程やスウェージ工程での割れに起因する破損が発生しやすくなるだけでなく、仮に、製造できた場合でも、先端部に使用した場合に、エミッタの蒸発が顕著になり、バルブの黒化(白濁)を促進してしまうため好ましくない。
さらに、先端部32にはタングステン粒の再結晶化による粒成長を抑制するための粒安定剤が添加されていてもよい。この粒安定剤は、具体的には例えば酸化ジルコニウム(ZrO)である。
図2に示されるように、陰極3の内部には、密閉空間33が形成されていて、該密閉空間33内には、トリウム以外のエミッタ(以下、焼結体34に含有されるエミッタを第2エミッタともいう)が含有された焼結体34が埋設されている。
この焼結体34に含有される第2エミッタは、例えば、前記した先端部32に有されるものと同様に、タングステン等の構成材料に、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジムあるいは酸化イットリウムの単体もしくはその組み合わせを混入して、焼結したものが使われる。
そして、この焼結体34に含有される第2エミッタの濃度は、前記先端部32に含有される第1エミッタの濃度よりも高濃度に設定されていて、その濃度は、例えば、10重量%〜80重量%である。
この第2エミッタの濃度が、10重量%未満であると、陰極3内部に格納できる焼結体34のサイズの関係から、陰極先端部32に供給するエミッタ量を確保することが難しくなってしまう。また、80重量%を超えてしまうと、焼結体34のタングステン等の構成材料の割合が減少してしまい、酸化物の還元による生成物が減少してしまうため、いずれの場合も、陰極の寿命を短くしてしまうことになる。
このような陰極構造において、前記陰極3の先端部32における前記陽極4と対向する先端面には、レニウムとタングステンの合金(Re−W)によって構成されたレニウム−タングステン合金部35が形成されている。
前述したように、前記焼結体34は陰極3内部に埋設されているので、放電アークに直接曝されることがなく、必要以上に加熱されることがないので、該焼結体34中に含有される第2エミッタは、過度に蒸発することがない。また、焼結体34はランプ点灯に伴い適宜に加熱され、該焼結体34中の第2エミッタは濃度拡散によって先端部32側に移動供給されていく。これにより、先端部32ではエミッタとしての希土類酸化物が枯渇することがなく、安定的な点灯性が持続されるという効果がもたらされる。
さらに、前記レニウム−タングステン合金部35を含めた陰極3の先端と前記焼結体34の前端との距離が1.5mm乃至5.0mmとなる位置に焼結体34が埋設されることにより、陰極先端からのエミッタの蒸発による脱離に対して過不足のない第2エミッタの供給が維持される。
しかしながら、点灯時には陰極3の先端は非常に高温(2400K以上)となるものであり、図3(B)に示すように、先端部32のタングステン結晶粒は熱によって再結晶化してしまうことがある。この再結晶化が進むと、結晶粒の粒界が消失してしまい、粒界拡散による焼結体34からの第2エミッタの供給路が閉ざされてしまって、先端面への第2エミッタの供給が円滑に行われないことがある。
本発明においては、このような事態を防ぐために、図3(A)に示すように、先端部32の先端面にはレニウム(Re)とタングステン(W)の合金(Re−W)からなるレニウム−タングステン合金部35が設けられている。
レニウム−タングステン合金は、通常のタングステンと比較して再結晶化する温度が高いので、点灯時の高温の状態においても殆ど再結晶化することがなく、結晶粒界を保ち、第2エミッタの供給路が維持されるものである。
このようなレニウム−タングステン合金部35は、先端部32の先端面に設けられていればよい。具体的には先端から根元側に向かって0.5mm以上の厚みで設けられていれば十分である。
その理由は、本発明が適用されるショートアーク型放電ランプでは、陰極先端における温度勾配は著しく大きく、先端から距離が離れるごとに温度が一気に低下してタングステン結晶粒が再結晶化する温度を下回るようになるからである。
なお、このレニウム−タングステン合金部35にも、前記先端部32に含有させたと第1エミッタと同様のエミッタを含有させてもよい。
また、先に述べたように、レニウム−タングステン合金部35は0.5mm以上の厚みで十分ではあるが、先端部32全体をレニウム−タングステン合金として、これに第1エミッタを含有させる形態として本体部31に接合するようにしてもよい。
以上の構成により、先端部32には、電子放出を行う先端面にエミッタを輸送する拡散経路が構成されており初期、ランプの初期点灯時には、この先端部32に含有されている第1エミッタが先端面に輸送されて電子放出を行い、確実な初期点灯がなされる。
この点灯により先端部32に当初含まれていた第1エミッタは消費されるが、そのエミッタが枯渇するまでに、陰極3内に埋設された焼結体34中の第2エミッタが、先端部32の結晶粒界からなる拡散経路を通って、先端面に供給されていくことにより、先端面でのエミッタの枯渇が生じることがない。
このとき、高温となる先端部32の先端面にレニウム−タングステン合金部35が形成されていることにより、結晶粒の再結晶化が抑制されて、前述した第2エミッタの供給路が確保され先端面への供給が円滑に行われる。
なお、第1エミッタと第2エミッタとは、同材料であってもよいし、別材料であってもよい。例えば、第1エミッタと第2エミッタがともに酸化ランタンと同一材料であったり、また、第1エミッタが酸化ランタンと酸化ジルコニウムからなり、第2エミッタが酸化セリウムと別材料であったりというように、その組み合わせは任意である。
また、前述のとおり、本体部31はトリウムを含まないタングステンなどの高融点金属からなるものであるが、トリウム以外のエミッタを含むことを排除するものではない。その場合、高濃度エミッタを含む焼結体34が存在するので、エミッタを先端部32に供給するという点については、本体部31にトリウム以外のエミッタを含むことに特段の利点は存在しないかもしれないが、本体部31と先端部32が同一の材料から構成されることで両者が接合後も同じ熱的物性を有するので点灯時の高温に曝されても一体物の熱的特性と変わらず接合部の不具合の発生が生じにくいなどの別の利点を有する。
本発明の陰極構造について一寸法例を示すと以下の通りである。
陰極の外径:φ12mm、軸方向の長さ:21mm
先端部の寸法:軸方向長さ2mm、材料例:酸化ランタン(エミッタ)、酸化ジルコニウム(タングステン粒子粗大化抑制剤)をドープしたタングステン
本体部の寸法:軸方向長さ19mm、材料例:純タングステン(不純物濃度が0.1重量%未満であるタングステン)
焼結体の寸法:φ2mm、軸方向長さ:6mm、材料例:酸化セリウム、タングステンを(W:CeO2:ZrO2=1:0.45:0.18)の混合比で、混合し、加圧プレスにより成型、脱脂・仮焼結を水素中1000℃で行った上で、真空中の本焼結を1700〜2000℃で焼結したもの。
なお、先端部32に酸化ジルコニウムを添加しているが、この酸化ジルコニウムは、タングステンの粒界に主に存在している。酸化ジルコニウムは、非酸化雰囲気においては、2700K付近まで、タングステンとの反応が生じないことが確認されている。このことから、酸化ジルコニウムは、高温まで、化学的に安定して、タングステン粒界にいることで、再結晶温度を上げていると推定できる。これに対して、レニウムの場合、タングステンとの合金を形成している。しかし、タングステンの粒子中で、タングステン(融点3380℃)に次ぐ高融点金属であるレニウム(融点3160℃)の原子が結晶中に存在することで、高温まで、結晶中での再配列が生じにくくなることで、再結晶温度が上昇する。このため、Re−Wの2次再結晶温度は、2500K以上となる。
このように、酸化ジルコニウムとレニウム−タングステン合金とでは、その役割分担が相違し、本発明の陰極構造においては、必要に応じて先端部に酸化ジルコニウムを添加することができる。
次いで、本発明に係る図2の構造の陰極の製造工程を、図4を用いて説明する。
先ず図4(A)に示すように、本体部31を構成する本体部材31aの先端側に密閉空間33を構成する穴33aを形成し、該穴33a内に焼結体34を挿入する。次いで、先端部32を構成する先端部材32aを焼結体34に当接する。
この時、(B)に示すように、焼結体34の先端は、本体部31の表面より0.5mm程度の若干量だけ突出している。
先端部材32aを押圧して、焼結体34を圧縮し、先端部材32aと本体部材31aとを当接する。この際、焼結体34は、本体部31や先端部32の焼結温度よりも低い温度で焼結してあるので、押圧による縮み代は大きく、本体部材31aと先端部材32aの当接により、若干量だけ縮み、焼結体34は先端部材32aと当接した状態となる。
この状態で、拡散接合や抵抗溶接等により本体部材31aと先端部材32aを接合する。
次いで、(C)に示すように、先端部材32aと本体部材31aの接合後に、陰極3の先端を切削加工する。
そして、(D)に示すように、切削加工された先端部32の先端面に、レニウムの粉末をニトロセルロースと酢酸ブチルに分散させた液を塗布する。
これを、(E)に示すように、2200〜2400℃で真空加熱処理(焼成処理)をすることでレニウムをタングステンに固溶させ、レニウム−タングステン合金部35を形成して最終製品とする。
また、レニウム−タングステン合金部35を形成する他の方法を説明する。
図4(F)に示すように、本体部材31aと先端部材32aとが接合された形態の先端面に、レミウム−タングステン合金板35aを接合する。
これを、(G)に示すように、陰極3の先端部を切削加工する。
これにより、(H)に示すように、本体部31の先端に先端部32が接合されるとともに、この先端部32の先端面にレニウム−タングステン合金部35が形成され、内部の密閉空間33内に焼結体34が密閉埋設された陰極3の最終形状が得られる。
本発明のショートアーク型放電ランプを用いて電圧変動の評価を行った。
実験に用いたランプにおいては、本発明の実施例として用いた陰極は、上記した内容の陰極を用いたものであり、比較例としての陰極は、レニウム−タングステン合金部を形成していないこと以外は本発明の実施例と同様である。
対象ランプ:キセノンランプ
入力:4.9kW
陰極の外径:φ12mm、軸方向の長さ:21mm
テーパ角:40°
その結果を表1に示す。
<表1>
Figure 2015225693
表1で明らかなように、比較例(Re−Wなし)では、点灯開始から1時間程度で初期からの電圧変動は0.8Vであり、100時間経過後には1.2Vを超えてしまった。
これに対して、本発明(Re−Wあり)では、点灯開始後100時間を経過しても0.8Vであり、初期の0.6Vとほぼ同等のレベルに保たれている。
このことから、Re−W合金部は、陰極からの電子放出特性を安定にすることに有効であることが解る。ここでは、WにReが含有されていることで、Wの結晶成長を抑制するため、Reなしの場合より先端部において、焼結体からの第2エミッタの拡散が円滑に行われるため、電圧変動が抑制されたと推定される。
なお、図2の実施例では、焼結体34が陰極3の本体部31内に埋設されているものであるが、これに限られない。
図5にそうした他の実施例が示されていて、図5(A)は、焼結体34が本端部31と先端部32に跨って形成された密閉空間33内に埋設された例であり、図5(B)は、焼結体34が先端部32に形成された密閉空間33内に埋設された例である。
これらいずれの実施例においても、焼結体34の前端と陰極3先端との距離1.5mm乃至5.0mmの範囲にあることが好ましい。
以上説明したように、本発明においては、陰極にトリウム以外のエミッタを添加した放電ランプにおいて、本体部に接合される先端部にエミッタを含有させてあるので、ランプの当初の始動時にこのエミッタが始動性を確保して確実な点灯が行われる。
そして、陰極内部に密封埋設した焼結体には、前記先端部の第1エミッタよりも高濃度の第2エミッタが含有されているので、ランプ点灯に伴ってこの第2エミッタが拡散して、先端部側に移動して供給されるので、先端部でエミッタが枯渇するという心配がなく、継続的なエミッタ供給による安定的な点灯が確保される。
このとき、先端部の陽極と対向する先端面にはレニウム−タングステン合金部が形成されているので、高温になる陰極先端にあっても結晶粒の再結晶化が抑制され、結晶粒界が保たれて焼結体からの第2エミッタの拡散経路が維持されて、先端への第2エミッタの拡散が円滑に行われる。
また、この焼結体は陰極内部に密封埋設されていて、直接放電アークに曝されることがないので、トリウム以外の蒸気圧の低いエミッタが、過度に蒸発して短時間で枯渇してしまうこともない。
1 放電ランプ
2 発光管
3 陰極
31 本体部
32 先端部
33 密閉空間
34 焼結体
35 レニウム−タングステン合金部
4 陽極


Claims (2)

  1. 発光管の内部に陰極と陽極とが対向配置された放電ランプにおいて、
    前記陰極は、本体部とその先端側に接合された先端部とからなり、
    前記本体部は、トリウムを含まない高融点金属材料から構成され、
    前記先端部は、エミッタ(トリウムを除く)が含有されたタングステンから構成されるとともに、
    前記本体部および/または先端部の内部には密閉空間が形成され、
    前記密閉空間内に、前記先端部に含有されたエミッタ濃度よりも高濃度のエミッタ(トリウムを除く)が含有された焼結体が埋設されており、
    前記先端部の前記陽極と対向する先端面には、レニウム−タングステン合金部が形成されていることを特徴とする放電ランプ。
  2. 前記レニウム−タングステン合金部の厚みが少なくとも0.5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型放電ランプ。


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