以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施の形態>
<1.システムブロック図>
図1は、本実施形態に係る車両制御システム10の構成を示す図である。車両制御システム10は、例えば自動車などの車両に設けられている。以下、車両制御システム10が設けられる車両を「自車両」という。また、自車両の進行方向を「前方」、進行方向と逆方向を「後方」という。図に示すように、車両制御システム10は、レーダ装置1と、車両制御装置2とを備えている。
本実施の形態のレーダ装置1は、周波数変調した連続波であるFM−CW(Frequency Modulated Continuous Wave)を用いて、自車両の周辺に存在する移動物や静止物の物標に係る物標データを導出する。ここで移動物とはある速度で移動し、自車両の速度とは異なる相対速度を有する物標である。また静止物とは、自車両の速度と略同一の相対速度を有する物標である。
またレーダ装置1は、物標から反射した反射波がレーダ装置1の受信アンテナに受信されるまでの距離(以下、「縦距離」という。)(m)、自車両に対する物標の相対速度(km/h)、自車両の左右方向(車幅方向)における物標の距離(以下、「横距離」という。)(m)などのパラメータを有する物標データを導出し、
導出した物標データを車両制御装置2に出力する。なお横距離は、自車両の中心位置を0(ゼロ)とし、自車両の右側では正の値、自車両の左側では負の値で表現される
車両制御装置2は自車両のブレーキおよびスロットル等に接続され、レーダ装置1から出力された物標データに基づき自車両の挙動を制御する。例えば車両制御装置2は、先行車との所定の車間距離を保持しつつ、先行車を追従する制御を行う。先行車は、例えば自車線内の物標のうち最も縦距離が小さい移動物である。これにより本実施の形態の車両制御システム10は、ACC(Adaptive Cruise Control)システムとして機能する。
<2.レーダ装置ブロック図>
図2は、レーダ装置1の構成を示す図である。レーダ装置1は、例えば車両のフロントバンパー内に設けられ、車両外部に送信波を出力し物標からの反射波を受信する。またレーダ装置1は、送信部4と、受信部5と、信号処理装置6とを主に備える。
送信部4は信号生成部41と、発振器42とを備えている。信号生成部41は三角波状に電圧が変化する変調信号を生成し、発振器42に供給する。発振器42は、信号生成部41で生成された変調信号に基づいて連続波の信号を周波数変調し、時間の経過に従って周波数が変化する送信信号を生成し、送信アンテナ40に出力する。
送信アンテナ40は、発振器42からの送信信号に基づいて、送信波TWを自車両の外部に出力する。送信アンテナ40が出力する送信波TWは、所定の周期で周波数が上下するFM−CWとなる。送信アンテナ40から自車両の前方に送信された送信波TWは、他の車両などの物標で反射されて反射波RWとなる。
受信部5は、アレーアンテナを形成する複数の受信アンテナ51と、その複数の受信アンテナ51に接続された複数の個別受信部52とを備えている。本実施の形態では受信部5は、例えば4つの受信アンテナ51と、4つの個別受信部52とを備えている。4つの個別受信部52は、4つの受信アンテナ51にそれぞれ対応している。各受信アンテナ51は物標からの反射波RWを受信し、各個別受信部52は対応する受信アンテナ51で得られた受信信号を処理する。
各個別受信部52は、ミキサ53と、A/D変換器54とを備えている。受信アンテナ51で受信された反射波RWから得られた受信信号は、ローノイズアンプ(図示省略)で増幅された後にミキサ53に送られる。ミキサ53には送信部4の発振器42からの送信信号が入力され、ミキサ53において送信信号と受信信号とがそれぞれミキシングされる。これにより送信信号の周波数と、受信信号の周波数との差となるビート周波数を示すビート信号が生成される。ミキサ53で生成されたビート信号は、A/D変換器54でデジタルの信号に変換された後に信号処理装置6に出力される。
信号処理装置6は、CPUおよびメモリ63などを含むマイクロコンピュータを備えている。信号処理装置6は、演算の対象とする各種のデータを、記憶装置であるメモリ63に記憶する。信号処理装置6は、マイクロコンピュータでソフトウェア的に実現される機能として、送信制御部61、フーリエ変換部62、および、データ処理部7を備えている。送信制御部61は、送信部4の信号生成部41を制御する。
フーリエ変換部62は、複数の個別受信部52のそれぞれから出力されるビート信号を対象に、高速フーリエ変換(FFT)を実行する。これによりフーリエ変換部62は、複数の受信アンテナ51の各受信信号に係るビート信号を、周波数領域のデータである周波数スペクトラムに変換する。フーリエ変換部62で得られた周波数スペクトラムは、データ処理部7に対して出力される。
データ処理部7は、複数の受信アンテナ51それぞれの周波数スペクトラムに基づいて、自車両の周辺(例えば、前方)に存在する物標に係る物標データを導出する。データ処理部7は、導出した物標データを車両制御装置2に出力する。
またデータ処理部7は、主な機能として物標データ導出部71、物標データ処理部72、および、物標データ出力部73を備えている。物標データ導出部71は、フーリエ変換部62で得られた周波数スペクトラムに基づいて物標に係る物標データを導出する。物標データ処理部72は、導出された物標データを対象にして連続性判定処理、および、フィルタ処理などの各種の処理を行う。
具体的には物標データ処理部72は、後述する物標データのフィルタ処理において、先行車に係る物標データの位置が、先行車の側方に存在する側方静止物(例えば、トンネル内の側壁)に係る物標データの影響により、側方静止物の位置に近づけられ、先行車の実際の位置とは異なる位置に導出される吸い寄せ現象を防止する処理(以下、「吸い寄せ防止処理」という。)を実行する。また物標データ処理部72は、この吸い寄せ防止処理の処理内容を緩和する処理(以下、「吸い寄せ防止緩和処理」という。)を実行する。物標データ処理部72が実行する「吸い寄せ防止処理」、および、「吸い寄せ防止緩和処理」については後に詳述する。
物標データ出力部73は、物標データ処理部72により処理された物標データを車両制御装置2に出力する。
なおデータ処理部7には、自車両に設けられた車速センサ81、および、ステアリングセンサ82などの各種センサからの情報が、車両制御装置2を介して入力される。データ処理部7は、車速センサ81から車両制御装置2に入力される自車両の速度、および、ステアリングセンサ82から車両制御装置2に入力される自車両の舵角などを処理に用いることができる。
<3.物標データのパラメータ導出>
次に、レーダ装置1が物標データのパラメータ(縦距離、横距離、および、相対速度)を導出する手法(原理)を説明する。図3は、送信波TWと反射波RWとの関係を示す図である。説明を簡単にするため、図3に示す反射波RWは理想的な一つの物標のみからの反射波としている。図3においては送信波TWを実線で示し、反射波RWを破線で示す。また図3の上部において、縦軸は周波数[GHz]横軸は時間[msec]を示している。
図に示すように、送信波TWは、所定の周波数を中心として所定の周期で周波数が上下する連続波となっている。送信波TWの周波数は、時間に対して線形的に変化する。以下では、送信波TWの周波数が上昇する区間を「アップ区間」といい、下降する区間を「ダウン区間」という。また送信波TWの中心周波数をfo、送信波TWの周波数の変位幅をΔF、送信波TWの周波数が上下する一周期の逆数をfmとする。
反射波RWは、送信波TWが物標で反射されたものであるため、送信波TWと同様に、所定の周波数を中心として所定の周期で周波数が上下する連続波となる。ただし反射波RWには、送信波TWに対して時間Tの時間遅延が生じる。この遅延する時間Tは、自車両に対する物標の距離(縦距離)Rに応じたものとなり、光速(電波の速度)をcとして次の数1で表される。
また、反射波RWには、自車両に対する物標の相対速度Vに応じたドップラー効果により、送信波TWに対して周波数fdの周波数偏移が生じる。
このように、反射波RWには、送信波TWに対して、縦距離に応じた時間遅延とともに相対速度に応じた周波数偏移が生じる。このため図3の下部に示すように、ミキサ53で生成されるビート信号のビート周波数(送信波TWの周波数と反射波RWの周波数との差の周波数)は、アップ区間とダウン区間とで異なる値となる。以下、アップ区間のビート周波数をfup、ダウン区間のビート周波数をfdnとする。なお、図3の下部において、縦軸は周波数[kHz]、横軸は時間[msec]を示している。
ここで物標の相対速度が0(ゼロ)の場合(ドップラー効果による周波数偏移がない場合)のビート周波数をfrとすると、この周波数frは次の数2で表される。
この周波数frは上述した遅延する時間Tに応じた値となる。このため、物標の縦距離Rは、周波数frを用いて次の数3で求めることができる。
また、ドップラー効果により偏移する周波数fdは、次の数4で表される。
物標の相対速度Vは、この周波数fdを用いて次の数5で求めることができる。
以上の説明では、理想的な一つの物標の縦距離および相対速度を求めたが、実際には、レーダ装置1は、自車両の前方に存在する複数の物標からの反射波RWを同時に受信する。このためフーリエ変換部62が、受信信号から得たビート信号をFFT処理した周波数スペクトラムには、それら複数の物標それぞれに対応する物標情報が含まれている。
<4.周波数スペクトラム>
図4は、このような周波数スペクトラムの例を示す図である。図4の上部はアップ区間における周波数スペクトラムを示し、図4の下部はダウン区間における周波数スペクトラムを示している。図中において、縦軸は信号のパワー[dB]、横軸は周波数[kHz]を示している。
図4の上部に示すアップ区間の周波数スペクトラムにおいては、3つの周波数fup1,fup2,fup3の位置にそれぞれピークPuが表れている。また、図4の下部に示すダウン区間の周波数スペクトラムにおいては、3つの周波数fdn1,fdn2,fdn3の位置にそれぞれピークPdが表れている。なお、以下では周波数を別の単位のbin(ビン)と呼ぶことがある。1binは約467Hzに相当する。
相対速度を考慮しなければ、このように周波数スペクトラムにおいてピークが表れる位置の周波数は、物標の縦距離に対応する。1binは、縦距離約0.36mに相当する。そして例えば、アップ区間の周波数スペクトラムに注目すると、ピークPuが表れる3つの周波数fup1,fup2,fup3に対応する縦距離の位置それぞれに、物標が存在していることになる。
このため、物標データ導出部71(図2参照。)は、アップ区間およびダウン区間の双方の周波数スペクトラムに関して、所定の閾値を超えるパワーを有するピークPu,Pdが表れる周波数を抽出する。以下、このように抽出される周波数を「ピーク周波数」という。
図4に示すようなアップ区間およびダウン区間の双方の周波数スペクトラムは、一つの受信アンテナ51の受信信号から得られる。したがって、フーリエ変換部62は、4つの受信アンテナ51の受信信号のそれぞれから、図4と同様のアップ区間およびダウン区間の双方の周波数スペクトラムを導出する。
4つの受信アンテナ51は同一の物標からの反射波RWを受信しているため、4つの受信アンテナ51の周波数スペクトラムの相互間において、抽出されるピーク周波数は同一となる。ただし、4つの受信アンテナ51の位置は互いに異なるため、受信アンテナ51ごとに反射波RWの位相は異なる。このため、同一binとなる受信信号の位相情報は、受信アンテナ51ごとに異なっている。
また、同一binの異なる角度に複数の物標が存在する場合は、周波数スペクトラムにおける一つのピーク周波数の信号に、それら複数の物標についての情報が含まれる。このため、物標データ導出部71は、方位演算処理により、一つのピーク周波数の信号から、同一binに存在する複数の物標についての情報を分離し、それら複数の物標それぞれの角度を推定する。同一binに存在する物標は、それぞれの縦距離が略同一となる物標である。
物標データ導出部71は、4つの受信アンテナ51の全ての周波数スペクトラムにおいて同一binの受信信号に注目し、それら受信信号の位相情報に基づいて物標の角度を推定する。
このような物標の角度を推定する手法としては、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、および、PRISM(Panchromatic Remotesensing Instrument for Stereo Mapping)などの周知の角度推定方式を用いることができる。これにより、物標データ導出部71は、一つのピーク周波数の信号から、複数の角度、および、それら複数の角度それぞれの信号パワーを導出する。
<5.角度スペクトラム>
図5は、方位演算処理により推定された角度を、角度スペクトラムとして概念的に示す図である。図中において、縦軸は信号のパワー[dB],横軸は角度[deg]を示している。角度スペクトラムにおいて、方位演算処理により推定された角度はピークPaとして表れる。以下、方位演算処理により推定された角度を「ピーク角度」という。このように一つのピーク周波数の信号から同時に導出された複数のピーク角度は、同一binに存在する複数の物標の角度を示す。
物標データ導出部71は、このようなピーク角度の導出を、アップ区間およびダウン区間の双方の周波数スペクトラムにおける全てのピーク周波数に関して実行する。
このような処理により、物標データ導出部71は、自車両の前方に存在する複数の物標それぞれに対応するピークデータを導出する。ピークデータは、上述したピーク周波数、ピーク角度、および、ピーク角度の信号パワー(以下、「信号パワー」という。)等のパラメータを有している。データ処理部7は、アップ区間およびダウン区間の双方で、このピークデータを導出する。
物標データ導出部71は、さらに、このように導出したアップ区間のピークデータとダウン区間のピークデータとをペアリング処理により対応付ける。物標データ導出部71は、例えば、それぞれの区間のピーク角度と信号パワーとを用いて、マハラノビス距離MDを数6により算出する。
数6のθdは、アップ区間のピーク角度とダウン区間のピーク角度との角度差を示し、θpはアップ区間の信号パワーとダウン区間の信号パワーとのパワー差を示す。また、aおよびbは係数を示す。
物標データ導出部71は、マハラノビス距離MDが最小値となるアップ区間およびダウン区間の2つのピークデータを対応付ける。このように物標データ導出部71は、同一の物標に関するピークデータ同士を対応付ける。これにより、物標データ導出部71は、自車両の前方に存在する複数の物標それぞれに係る物標データを導出する。この物標データは、2つのピークデータを対応付けて得られるため「ペアデータ」とも呼ばれる。
物標データ導出部71は、物標データ(ペアデータ)の元となったアップ区間、および、ダウン区間の2つのピークデータのパラメータを用いることで、当該物標データのパラメータ(縦距離、横距離、および、相対速度)を導出できる。
物標データ導出部71は、アップ区間のピーク周波数を上述した周波数fupとして用い、ダウン区間のピーク周波数を上述した周波数fdnとして用いる。そして、物標データ導出部71は、上述した数2および数3を用いて物標の縦距離Rを求めることができ、上述した数4及び数5を用いて物標の相対速度Vを求めることができる。
さらに、物標データ導出部71は、アップ区間のピーク角度をθup、ダウン区間のピーク角度をθdnとして、次の数7により物標の角度θを求める。そして、物標データ導出部71は、この物標の角度θと縦距離Rとに基づいて、三角関数を用いた演算により物標の横距離を求めることができる。
<6.物標データ取得処理>
次に、データ処理部7が、物標データを導出して車両制御装置2に出力する物標データの取得処理の全体的な流れについて説明する。図6は、物標データ取得処理の流れを示す図である。データ処理部7は、物標データ取得処理を、一定時間(例えば、1/20秒)ごとに周期的に繰り返す。物標データ取得処理の開始時点では、4つの受信アンテナ51の全てに関してアップ区間、および、ダウン区間の双方の周波数スペクトラムが、フーリエ変換部62からデータ処理部7に入力されている。
まずデータ処理部7の物標データ導出部71が、周波数スペクトラムを対象に、ピーク周波数を抽出する(ステップS11)。物標データ導出部71は、アップ区間およびダウン区間のそれぞれの区間における周波数スペクトラムのうち、所定の閾値を超えるパワーを有するピークが現れる周波数をピーク周波数として抽出する。
次に、物標データ導出部71は、方位演算処理により、抽出したピーク周波数の信号に係る物標の角度を推定する。物標データ導出部71は、同一binに存在する複数の物標それぞれの角度と、信号パワーとを導出する(ステップS12)。
これにより、物標データ導出部71は、自車両の前方に存在する複数の物標それぞれに対応するピークデータを導出する。物標データ導出部71は、アップ区間およびダウン区間の双方で、ピーク周波数、ピーク角度、および、信号パワーのパラメータを有するピークデータを導出する。
物標データ導出部71は、アップ区間のピークデータと、ダウン区間のピークデータとの全ての組み合わせに基づくマハラノビス距離MDを算出し、マハラノビス距離MDが最小値となる2つのピークデータを対応付けるペアリングの処理を行う(ステップS13)。
物標データ導出部71は、アップ区間およびダウン区間の2つのピークデータの対応付けができた場合は、それら2つのピークデータに基づくペアデータを導出する。物標データ導出部71は、導出したペアデータのそれぞれに関して、上述した演算によりパラメータ(縦距離、横距離、および、相対速度)を導出する。
次に、物標データ導出部71は、導出したペアデータのうちから物標に係る物標データを確定する(ステップS14)。物標データ導出部71が導出したペアデータには、ノイズなどの不要なデータが含まれることがある。このため、物標データ導出部71は、導出したペアデータのうち物標に係るペアデータのみを物標データとして確定する。
物標データ導出部71は、パラメータに基づいて、導出したペアデータのそれぞれを過去の物標データ取得処理(以下、「過去処理」という。)で確定した物標データと対応付ける。物標データ導出部71は、類似のパラメータ(縦距離、横距離、および、相対速度)を有するペアデータと過去処理で確定した物標データとを対応付ける。そして物標データ導出部71は、過去処理で確定した物標データと対応付けができたペアデータを物標に係る物標データとして確定する。
また、対応付けができなかったペアデータには、直近の物標データ取得処理(以下、「直近処理」という。)で新規に表れた物標に係る物標データも含まれている。このため、物標データ導出部71は、対応付けができなかったペアデータについては、次回以降の物標データ取得処理において所定回数(例えば、3回)以上連続して対応付けができた場合に、直近処理で新規に現れた物標に係る物標データとして確定する。
このような処理により、物標データ導出部71は、自車両の周辺の物標に係る物標データを導出する。物標データ取得処理は一定時間(例えば、1/20秒)ごとに周期的に繰り返されることから、物標データ導出部71は、物標に係る物標データを一定時間ごとに導出することになる。
次に、物標データ処理部72は、連続性判定処理を行う(ステップS15)。物標データ処理部72は、過去処理で取得された物標データと、直近処理で取得された物標データとの時間的な連続性を判定する。換言すれば、物標データ処理部72は、過去処理で取得された物標データと、直近処理で取得された物標データとが同一の物標を示しているか否かを判定する。例えば、過去処理は前回の物標データ取得処理であり、直近処理は今回の物標データ取得処理である。
なお、物標データ処理部72は、過去処理で取得された物標データに関して直近処理で取得された物標データと連続性があると判定できない場合は、過去処理で取得された物標データに基づく予測データを導入する処理である「外挿」を行う。
次に、物標データ処理部72は、過去処理および直近処理のそれぞれの処理で取得された2つの物標データのパラメータ(縦距離、横距離、および、相対速度)を時間軸方向に平滑化するフィルタ処理(ステップS16)を行なう。このようなフィルタ処理後の物標データは、瞬時値を表すペアデータに対して「フィルタデータ」とも呼ばれる。このフィルタ処理の詳細については後述する。
次に物標データ処理部72は、移動物判定処理を行い、各物標データの移動物フラグ、および、前方車フラグを設定する(ステップS17)。移動物フラグは、当該物標データが示す物標が移動中であるか否かを示している。一方、前方車フラグは、当該物標データが示す物標が自車両と同一方向に過去に一度でも移動したか否かを示す。移動物フラグは、物標データ取得処理ごとに設定され、現時点の物標の状態をリアルタイムに表す。これに対して、前方車フラグは、時間的に連続する物標データ同士(同一の物標に係る物標データ同士)で値が順次に引き継がれる。
物標データ処理部72は、物標データの相対速度と、車速センサ81から得られる自車両の速度とに基づいて、物標データに係る物標の対地速度(絶対速度)と、走行方向とを導出する。そして、物標データ処理部72は、導出した対地速度と走行方向とに基づいて、移動物フラグおよび前方車フラグを設定する。
次に、物標データ出力部73が、物標データを車両制御装置2に出力する(ステップS18)。物標データ出力部73は、導出された複数の物標データから所定数(例えば、10個)の物標データを出力対象として選択し、選択した物標データのみを出力する。物標データ出力部73は、物標データの縦距離と横距離とを考慮して、自車線内に存在し、かつ、自車両に近い物標に係る物標データを優先的に選択する。
以上のような物標データ取得処理で導出された物標データはメモリ63に記憶され、次回以降の物標データ取得処理において過去処理で取得された物標データとして用いられることになる。
<7.フィルタ処理>
<7−1.吸い寄せ防止処理>
次に、物標データ取得処理において行われるフィルタ処理(ステップS16)について、図7を用いて説明する。図7は、フィルタ処理の流れを示す図である。最初に物標データ処理部72は、過去処理で取得された物標データのパラメータ(過去値)と、直近処理で取得された物標データのパラメータ(直近値)とを時間軸方向に平滑化する場合の基準割合を設定する。物標データ処理部72は、例えば過去値の割合を0.75とし、今回値の割合を0.25する基準割合を設定する(ステップS101)。この基準割合は、メモリ63に予め記憶されており、物標データ処理部72がフィルタ処理を行う場合にメモリ63から読み出す。
次に、物標データ処理部72は、吸い寄せ防止処理の処理内容を緩和するか否かを判定する吸い寄せ緩和判定処理(ステップS102)と、吸い寄せ緩和フラグのオン/オフの判定処理(ステップS103)とを行う。これらの処理については後述する。以下では、吸い寄せ緩和フラグがオフ(ステップS103でNo)の場合、即ち吸い寄せ防止処理の緩和が不要となった場合を前提に説明を続ける。
物標データ処理部72は、自車両の周辺に側方静止物が存在するか否かを判定する(ステップS104)。側方静止物とは移動物の移動方向に複数存在する静止物であり、例えばトンネル内の側壁や車線の側壁等の物標である。この処理により吸い寄せ現象の発生原因となる物標が存在するか否かが判定される。
この処理の具体的な処理内容を以下で説明する。物標データ処理部72は、物標データに対し、以下の(a1)〜(a5)の条件を満たすか否かを判定する。
(a1)移動物フラグ=オフ
(a2)前方車フラグ=オフ
(a3)20m≦縦距離≦110m
(a4)|角度|≦15deg
(a5)横距離≦−1.8m
(a6)横距離≧1.8m
(a1)および(a2)の条件により、判定の対象となる物標の物標データ(以下、「対象物標データ」という。)が静止物であることが判定される。(a3)の条件により、対象物標データが自車両の前方に存在する物標に係る物標データであることが判定される。(a4)の条件により、対象物標データが自車両の側方に存在する物標に係る物標データであることが判定される。
そして、対象物標データが(a1)〜(a4)の条件を全て満足し、かつ、(a5)の対象物標データに係る物標が自車線左側の位置に存在すると判定される条件を満足することで、物標データ処理部72は、対象物標データを左側の側方静止物の候補として分類する。また、対象物標データが(a1)〜(a4)の条件を全て満足し、かつ、(a6)の対象物標データに係る物標が自車線右側の位置に存在すると判定される条件を満足することで、物標データ処理部72は、対象物標データを右側の側方静止物の候補として分類する。
そして、少なくとも左右いずれかに側方静止物の候補の物標データが複数導出された場合(ステップS104でYes)、物標データ処理部72は先行車の左右側方の少なくとも一側方に壁等の側方静止物が存在すると判定する。そして物標データ処理部72は、左側および右側のいずれかに分類された静止物の横距離の平均値を側方静止物の代表の横距離(以下、「代表横距離」という。)として導出する(ステップS105)。
なお、(a1)〜(a4)の条件を一つでも満足しない場合や、(a1)〜(a4)の条件は全て満足するが(a5)および(a6)のいずれの条件も満足しない場合(ステップS104でNo)、物標データ処理部72は、側方静止物が存在しないと判定し、基準割合に基づいて、物標データのパラメータである横距離の過去値と直近値とを平滑化するフィルタ処理を実行する(ステップS108)。なお、物標データの縦距離等の他のパラメータについてもそれぞれの基準割合に基づきフィルタ処理が行われる。以下の処理では物標データの横距離を例にして説明を続ける。
次に物標データ処理部72は、吸い寄せ防止処理の実行条件が成立しているか否かを判定する(ステップS106)。具体的には物標データ処理部72は、物標データのうち前方車フラグがオンの物標データに対し以下の(b1)〜(b4)の条件を満たすか否かを判定する。
(b1)縦距離≧30m
(b2)衝突余裕時間≧2sec
(b3)左側方の代表横距離≦横距離≦右側方の代表横距離
(b4)横距離‐左側方の代表横距離≦2.2m
(b5)右側方の代表横距離−横距離≦2.2m
(b6)|過去値|<|直近値|
(b1)の条件により、ACCの制御対象とはならない対象物標データが排除される。追従対象となる移動物は、自車両との車間距離がある程度確保された物標となるためである。
(b2)の条件により、自車両との衝突の可能性の高い対象物標データが排除される。衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)は、対象物標データに係る物標に対して自車両が衝突するまでの時間であり、対象物標データの縦距離を相対速度で除算することで導出される。
(b3)の条件により、対象物標データに係る物標が左右の側方静止物に挟まれた位置に存在することが判定される。なお、側方静止物が左側および右側のいずれか一方にのみ存在する場合は、この条件により対象物標データに係る物標が、片方の側方静止物の内側(自車両に近い側)の位置に存在することが判定される。
(b4)の条件により、対象物標データに係る物標が左側の側方静止物の近傍位置に存在することが判定される。
(b5)の条件により、対象物標データに係る物標が右側の側方静止物の近傍位置に存在することが判定される。
(b6)の条件により、直近処理で導出された物標データの位置が、過去処理で導出された物標データの位置よりも側方静止物に対して近い位置に存在することが判定される。つまりこの条件により対象物標データが、側方静止物に近づいていることを判定する。
そしてこれらの判定条件の対象となる対象物標データが(b1)〜(b3)および(b6)の条件を満足し、かつ、(b4)および(b5)のうちいずれか一方の条件を満足する場合(ステップS106でYes)、物標データ処理部72は、対象物標データの吸い寄せ防止処理の実行条件が成立したと判定する。
その結果、物標データ処理部72は、対象物標データのフィルタ処理における吸い寄せ防止割合を設定する。即ち物標データ処理部72は、基準割合よりも過去値の割合が大きい割合を設定する(ステップS107)。例えば、対象物標データの横距離の過去値の割合を0.95とし、直近値の割合を0.05とする値が設定される。
そして物標データ処理部72は、吸い寄せ防止割合に基づいて対象物標データの横距離の過去値と直近値とを平滑化するフィルタ処理を実行する(ステップS108)。これによりレーダ装置1は、時間的に連続する物標データ取得処理において対象物標データに係る移動物の位置が側方静止物の位置に近づく位置に導出される吸い寄せ現象の発生を防止でき、車両制御装置2に対して実際に移動物が存在する位置を示す正確な物標データを出力できる。その結果、車両制御装置2は移動物に係る物標データの正確なパラメータの値に基づき、適正な車両制御を行える。
なお、対象物標データが(b1)〜(b3)および(b6)の条件を一つでも満足しない場合や、(b4)および(b5)のいずれの条件も満足しない場合(ステップS106でNo)、物標データ処理部72は、吸い寄せ防止処理の実行が不要であるとして、基準割合に基づいて物標データの横距離の過去値と直近値とを平滑化するフィルタ処理を実行する(ステップS108)。
ここで、吸い寄せ防止処理の実行条件を満足する場合、即ち対象物標データに吸い寄せ防止割合が設定される場合の具体例について図8を用いて説明する。図8の自車線R1を走行する自車両CAは、レーダ装置1を備えている。レーダ装置1は自車両CAの前方に送信波TWを出力する。この送信波TWの送信範囲には、複数の物標が含まれている。具体的には、自車線R1上で自車両CAの前方を走行する先行車101と、先行車101の左側方に存在する左側壁WLが含まれている。なお、自車線R1に隣接する隣接車線R2の右側、即ち先行車101の右側方に存在する右側壁WRは、送信波TWの送信範囲に含まれていない。
そして、吸い寄せ防止処理の実行条件において、先行車101に係る物標データT1の縦距離L1が30m以上の場合に(b1)の条件が満足する。また物標データT1の縦距離L1と先行車101の相対速度からTTCが2sec以上の場合に(b2)の条件が満足する。
次に自車両CAの前方に延伸し、送信波TWの左右方向の略中央に位置し、前方に延伸する仮想的な軸CL(以下、「送信軸CL」という。)を物標データの横距離の基準値(±0m)とすると、物標データT1の横距離(例えば、±0m)は、代表ラインALで示す左側壁WLの代表横距離(例えば、−1.8m)よりも大きい。つまり物標データT1は、左側の側方静止物の内側の位置に存在することとなり、(b3)の条件が満足する。
そして、物標データT1の横距離S1から左側壁WLの代表横距離を減算した値が2.2m以下の場合は(b4)の条件が満足する。図8では、自車線R1と隣接車線R2との境に設けられた中央線MLから左側壁WLの代表横距離までの距離を約3.6mとした場合、物標データT1は、自車線R1の略中央の自車両CAの送信軸CL上に位置している。そのため、横距離S1から代表横距離を減算した(0−(−1.8))値は1.8mとなり、(b4)の条件が満足する。
また、過去処理で導出した物標データT1の横距離(過去値)の絶対値と、直近処理で導出した物標データT1の横距離S1(直近値)の絶対値との比較により、過去値が大きい場合は(b5)の条件が満足する。この条件を満足することで、物標データT1が過去処理のときよりも直近処理のほうが、左側壁WLに近づいていることを意味する。
その結果、物標データ処理部72は、物標データT1の過去値の割合を0.95とし、直近値の割合を0.05とする吸い寄せ防止割合を設定する。ここで、例えば過去値は、前回処理のフィルタデータに基づき予測した今回処理のペアデータの横距離(予測値)であり、直近値は今回処理のペアデータに関する横距離(実測値)である。
そして物標データ処理部72は、吸い寄せ防止割合に基づいて物標データの横距離の過去値と直近値とを平滑化するフィルタ処理を実行する(ステップS108)。
このように吸い寄せ防止処理を実行する理由は、先行車101に係る物標データT1の位置が左側壁WLの側方静止物の位置に近づくことで、先行車101に係るピークデータが、同じ区間(例えば、アップ区間)で抽出された左側壁WLに係るピークデータの信号パワーの影響を受け、ペアリング処理において例えば、アップ区間の先行車101の物標データT1のピークデータと、ダウン区間の左側壁WLの物標データのピークデータとが誤って対応付けられ、物標データT1の位置が実際の位置よりも左側壁WL寄りの位置に導出されることがあるためである。
そして、このような誤った対応付けが複数回の物標データ取得処理で継続して行われると、物標データT1の位置が左側壁WLの位置に益々近づくこととなり、物標データT1が左側壁WLにあたかも吸い寄せられるような吸い寄せ現象が生じる。
その結果、車両制御装置2が先行車101をACC制御における追従対象として走行する場合、自車両が左側壁WL寄りを走行する等、適正な車両制御が実行されない可能性があった。
そのため、物標データ処理部72は基準割合よりも過去値の割合を大きくした吸い寄せ防止割合を物標データT1に対して設定する。これによりフィルタ処理における過去値の割合が基準割合よりも大きくなり、物標データ処理部72は基準割合に基づいて導出される物標データT1よりも、左側壁WLから離れた位置に物標データT1を導出できる。したがって誤った対応付けによる吸い寄せの影響を低減でき、車両制御の制御対象となる物標の正確な位置を導出できる。
<7−2.吸い寄せ防止緩和処理>
上述のように吸い寄せ防止処理の実行条件を満足する場合、物標データ処理部72は、吸い寄せ防止処理を実行していた。しかしながら、物標データ処理部72が対象物標データに対して吸い寄せ防止割合に基づきフィルタ処理を実行した場合、対象物標データに係る物標が自車線R1から右折および左折のいずれかの進路で移動したとき、即ち、対象物標データに係る物標がレーダ装置1の送信波TWの送信範囲外の位置に移動したとき、対象物標データに係る物標が実際には自車線R1上には存在しないにもかかわらず、対象物標データが自車線R1上の位置に導出されることがあった。
このように直近処理で導出されていない対象物標データが、フィルタ処理により導出される理由は、吸い寄せ防止割合における過去値の割合が例えば0.95で、直近値の割合が例えば0.05となり、過去値の割合が全体割合のほとんどを占めているためである。
そのため、物標データ処理部72は、対象物標データが吸い寄せ防止処理の実行条件を満足した場合に、その対象物標データが右折および左折のいずれかの進路で移動する可能性が有る場合は、対象物標データに対して実行される吸い寄せ防止処理の処理内容を緩和する。
具体的には物標データ処理部72は、対象物標データの過去値の割合を0.95から0.82に減少させ、直近値の割合を0.05から0.18に増加させた吸い寄せ防止緩和割合を設定する。そして物標データ処理部72は、この吸い寄せ防止緩和割合に基づいて物標データの横距離の過去値と直近値とを平滑化するフィルタ処理を実行する。
以下では、吸い寄せ防止緩和割合の設定に関する判定条件について説明する。図7に戻り、物標データ処理部72は、基準割合を設定した(ステップS101)後、吸い寄せ防止緩和の判定処理を行う(ステップS102)。
吸い寄せ防止緩和の判定の具体的な処理について図9を用いて説明する。吸い寄せ防止緩和の判定は、4つの判定条件に基づき行われるため、4つの判定条件を順に説明する。1つ目の条件では、物標データ処理部は、対象物標データに係る物標が比較的低速で移動しているか否かを判定する(ステップS201)。具体的には対象物標データに対し以下の(c1)〜(c3)の条件を満たすか否かが判定される。
(c1)前方車フラグ=オン
(c2)移動物フラグ=オン
(c3)絶対速度≦30km/h
(c1)および(c2)の条件により、対象物標データが静止物であることが判定される。(c3)の条件により、対象物標データが比較的低速で移動していることが判定される。
そして、対象物標データが(c1)〜(c3)の条件を全て満足する(ステップS201でYes)ことで、物標データ処理部72は対象物標データが右折および左折のいずれかの進路で移動する可能性があると判定し、2つ目の条件について判断する。車両等の移動物が交差点等で自車線から別の車線に右左折する場合、減速した後に移動することからこのような1つ目の条件について判断する。
なお、対象物標データが(c1)〜(c3)の条件を一つでも満足しない場合(ステップS201でNo)、物標データ処理部72は、対象物標データの吸い寄せ緩和フラグをオフに設定する(ステップS206)。吸い寄せ緩和フラグがオフの場合(図7のステップS103でNo)は、上述した側方静止物の存在の有無を判定するステップS104の処理等が行われ、物標データが吸い寄せ防止処理の実行条件を満たすことで、吸い寄せ防止割合に基づくフィルタ処理が実行される(ステップS108)。
次に2つ目の条件では、物標データ処理部72は、対象物標データの近傍位置に静止物に係る物標データ(以下、「静止物データ」という。)が導出されているか否かを判定する(ステップS202)。具体的には物標データ処理部72は、対象物標データに対し以下の(d1)〜(d2)の条件を満たすか否かを判定する。
(d1)|静止物データの周波数−対象物標データの周波数|≦5bin
(d2)0deg≦|静止物データの角度−対象物標データの角度|≦3deg
(d1)および(d2)の条件により、対象物標データの位置に基づく所定範囲内に静止物に係る物標データが導出されているか否かを判定する。
そして、対象物標データが(d1)および(d2)の双方の条件を満足する場合、物標データ処理部72は、対象物標データに係る物標が存在する近傍位置に静止物データに係る物標が存在すると判定し(ステップS202でYes)、対象物標データの吸い寄せ緩和フラグをオフに設定する(ステップS206)。即ち(d1)および(d2)の双方の条件を満足する場合、対象物標データの吸い寄せ緩和フラグがオフに設定される。
対象物標データが(d1)および(d2)の条件を一つでも満足しない場合(ステップS202でNo)、物標データ処理部72は、対象物標データに係る物標が存在する近傍位置に静止物データに係る物標が存在しないと判定し、次の3つ目の条件について判断する。
ここで、上述の2つ目の条件を満足する場合と、満足しない場合の具体例について図10および図11を用いて説明する。
最初に2つ目の条件を満足する(ステップS202でYesの)場合について説明する。図10は、静止物データに係る物標が、対象物標データの位置に基づく所定範囲内で導出されている例を示す図である。
物標データ処理部72は、先行車101の物標データT1の位置に基づき、所定範囲DEの範囲内に静止物データT2が導出されるか否かを判定する。所定範囲DEの縦方向の距離Laの範囲は、(d1)の条件に相当する。また横方向の距離Saの範囲は、(d2)の条件に相当する。
図10に示すように所定範囲DEの範囲内に静止物データT2が導出されている場合、物標データ処理部72は、先行車101の側方に側方静止物が存在する可能性が比較的高く、先行車101が右折および左折のいずれかの進路で移動する可能性が比較的低いと判定する。側方静止物が存在する場合は、先行車101が自車線R1から右左折により移動できる別の車線が存在しないためである。したがって、物標データ処理部72は、物標データT1の吸い寄せ緩和フラグをオフに設定する。
次に2つ目の条件を満足しない(ステップS202でNoの)場合について説明する。図11は、静止物データに係る物標が、対象物標データの位置に基づく所定範囲内で導出されていない例を示す図である。
図11に示すように、先行車101が右折および左折のいずれかの進路で移動する場合、物標データT1に基づく所定範囲DEの範囲内には、静止物データT2は導出されない。先行車101が自車線R1から左折して別の車線である車線R3へと移動する進路上には左側壁WL等の側方静止物は存在しないためである。このような場合、物標データ処理部72は、先行車101が右折および左折のいずれかの進路で移動する可能性が比較的高いと判定し、3つ目の条件について判断する。
次に3つ目の条件について説明する。物標データ処理部72は、図9のステップS203の処理において、対象物標データのピークデータ(以下、「対象ピークデータ」という。)と同一binのパラメータを有し、かつ、対象ピークデータと別角度のパラメータを有するピークデータ(以下、「別ピークデータ」という。)が、側方静止物の近傍に導出されているか否かを判定する(ステップS203)。
具体的には、対象物標データに対し以下の(e1)の条件を満たすか否かが判定される。ここで、対象ピークデータとは、直近処理におけるペアリングの処理において対応付らえたアップ区間のピークデータおよびダウン区間のピークデータのいずれかである。また、別ピークデータとは、直近処理におけるアップ区間およびダウン区間のいずれかの区間のピークデータであり、ペアリングの処理において他の区間のピークデータと対応付けられていないピークデータである。
(e1)|側方静止物の代表横距離−別ピークデータの横距離|≦3m
(e1)の条件により、対象ピークデータと同一の周波数(同一bin)のパラメータを有し、かつ、対象ピークデータと別角度のパラメータを有するピークデータが、側方静止物に係る物標データの近傍に導出されているか否かが判定される。
そして、対象物標データが(e1)の条件を満足する場合(ステップS203でYes)、物標データ処理部72は、側方静止物に係る物標データの近傍に別ピークデータが導出されていると判定し、対象物標データの吸い寄せ緩和フラグをオフに設定する(ステップS206)。
対象物標データが(e1)の条件を満足しない場合(ステップS203でNo)、物標データ処理部72は、側方静止物に係る物標データの近傍に別ピークデータが導出されていないと判定し、次の4つ目の条件を判断する。
ここで、上述の3つ目の条件を満足する場合と、満足しない場合の具体例について図12および図13を用いて説明する。
最初に3つ目の条件を満足する(ステップS203でYesの)場合について説明する。図12は、側方静止物に係る物標データの近傍に別ピークデータが導出されている場合の例を示す図である。
物標データ処理部72は、側方静止物の代表横距離を示す代表ラインALと別ピークデータP2の横距離の差が所定値(例えば、3m)以下か否かを判定する。別ピークデータP2は、先行車101の物標データT1と同一binのパラメータを有し、かつ、物標データT1とは異なる別角度のパラメータを有するピークデータである。
そして代表ラインALから自車両CA側に横方向に伸びる横距離ラインDLの範囲内に、別ピークデータP2が導出されている。なお横距離ラインDLの範囲が、(e1)の条件に相当する。
このように横距離ラインDLの範囲内に別ピークデータが導出されることで、物標データ処理部72は、先行車101の側方に側方静止物が存在する可能性が比較的高いと判定する。側方静止物が存在する場合は、先行車101が自車線R1から右左折により移動できる別の車線が存在しないためである。したがって、物標データ処理部72は、物標データT1の吸い寄せ緩和フラグをオフに設定する。
次に3つ目の条件を満足しない(ステップS203でNoの)場合について説明する。図13は、側方静止物に係る物標データの近傍に別ピークデータが導出されていない場合の例を示す図である。
図13に示すように、先行車101が自車線R1から左折して車線R3に移動する場合、先行車101の物標データT1と略同一の縦距離の位置で、横距離ラインDLの範囲内に別ピークデータは導出されない。先行車101が自車線R1から左折して別の車線である車線R3へと移動する進路上には左側壁WL等の側方静止物は存在しないためである。このような場合、物標データ処理部72は、先行車101が右折および左折のいずれかの進路で移動する可能性が比較的高いと判定し、4つ目の条件について判断する。
次に4つ目の条件について説明する。物標データ処理部72は、図9のステップS204の処理において、対象物標データに基づく隣接領域内に他の移動物に係る物標データが導出されているか否かを判定する(ステップS204)。具体的には物標データ処理部72は、対象物標データに対し以下の(f1)〜(f3)の条件を満たすか否かを判定する。
(f1)|対象物標データの横距離|≦1.8m
(f2)対象物標データの自車線確率>50%
(f3)対象物標データの前方車フラグ=オン
(f1)〜(f3)の条件により、対象物標データに係る物標が自車線内を走行する先行車に係る物標データであるかが判定される。なお、自車線確率は物標データが自車線内に存在する確率を示す値であり、物標データ処理部72が、メモリ63に記憶された2次元マップを参照して値を導出する。この2次元マップは、物標データの縦距離と横距離に応じた自車線確率が予め示されているマップである。縦距離や横距離の値が大きくなるほど自車線確率の値は低下し、縦距離や横距離の値が小さくなるほど自車線確率の値は増加する。
次に、物標データ処理部72は、対象物標データ以外の他の物標データ(以下「別物標データ」という。)に対して(f4)〜(f9)の条件について判定する。
(f4)別物標データの前方車フラグ=オン
(f5)|対象物標データの周波数−別物標データの周波数|≦8bin
(f6)|対象物標データの相対速度−別物標データの相対速度|≦15km/h
(f7)1.8m≦別物標データの横距離≦8m
(f8)別物標データの自車線確率≦50%
(f9)|別物標データの横距離|≦8m
(f4)〜(f9)の条件により、先行車が走行する自車線に隣接する隣接車線内で、この先行車と並走する移動物に係る物標データが導出されているかが判定される。
そして、対象物標データが(f1)および(f2)のいずれかの条件と(f3)の条件とを満足するか否かが判定され、別物標データが(f4)〜(f6)の全ての条件を満足し、かつ、(f7)および(f8)のいずれかの条件と、(f9)の条件とが満足するか否かを判定される。このような(f1)〜(f3)の条件を満足し、かつ、(f4)〜(f9)の条件を満足する場合(ステップS204でYes)、物標データ処理部72は、対象物標データに係る物標データを先行車に係る物標データと判定し、隣接車線内を先行車と並走する移動物に係る物標データが導出されていると判定する。この判定により物標データ処理部72は、対象物標データの吸い寄せ緩和フラグをオフに設定する。
また、対象物標データが(f1)〜(f3)の条件を満足し、かつ、別物標データが(f4)〜(f9)の条件を満足しない場合(ステップS204でNo)、物標データ処理部72は、対象物標データに係る物標を先行車に係る物標データと判定し、隣接車線内を先行車と並走する移動物に係る物標データと判定する。
これにより物標データ処理部72は、対象物標データに係る物標が右折および左折のいずれかの進路で移動する可能性が比較的高いと判定し、対象物標データの吸い寄せ緩和フラグをオンに設定する(ステップS205)。このように吸い寄せ緩和フラグがオンに設定された対象物標データは、上述の図7のステップS103の処理で緩和フラグがオンと判定され(ステップS103でYes)、側方静止物が存在する場合は(ステップS109でYes)、代表横距離が導出される(ステップS110)。
そして、吸い寄せ緩和フラグがオンに設定された対象物標データが、吸い寄せ防止処理の実行条件を満足する(ステップS111でYes)ことで、対象物標データに吸い寄せ防止緩和割合が設定され(ステップS112)、この吸い寄せ防止緩和割合に基づきフィルタ処理が実行される(ステップS108)。なお、吸い寄せ防止緩和割合の過去値の割合は、吸い寄せ防止割合の過去値の割合よりも小さくなり(例えば、0.82)、直近値は、吸い寄せ防止割合の直近値の割合よりも大きくなる(例えば、0.18)。このように、吸い寄せ防止緩和割合とは、吸い寄せ防止割合の過去値の割合を緩和したものとなる。
これにより対象物標データの過去値および直近値をフィルタ処理する場合は、吸い寄せ緩和割合に基づくフィルタ処理が行われ、対象物標データに係る物標が右折および左折のいずれかの進路で移動した後に、実際には存在しない位置に対象物標データが導出されることを防止できる。そして、車両制御装置2がACCの制御等を行う場合に、自車両に対する急ブレーキ等の不要な制御を回避できる。
なお、吸い寄せ緩和フラグがオンの対象物標データの側方に側方静止物が存在しない場合(ステップS109でNo)や、この対象物標データが吸い寄せ防止処理の実行条件を満足しない場合(ステップS111でNo)の場合、ステップS101の処理で予め設定された基準割合に基づき、フィルタ処理が実行される(ステップS108)。
ここで、上述の4つ目の条件を満足する場合と、満足しない場合の具体例について図14および図15を用いて説明する。
最初に4つ目の条件を満足する(ステップS204でYesの)場合について説明する。図14は、先行車と並走する移動物に係る別物標データが導出されている場合の例を示す図である。
図14に示すように、先行車が走行する自車線R1に隣接する隣接車線R2内で、この先行車101と並走する移動物に係る物標データ
先行車101に係る物標データT1に隣接する位置には隣接領域NEが設けられている。この隣接領域NEは、物標データT1の位置を基準として±8bin(計16bin)の縦方向の距離Lbと、隣接車線R2の範囲を含む横距離1.8mから横距離8mまで(計6.2m)の横方向の距離Sbのとの範囲を有する。縦方向の距離Lbの範囲は、(f5)の条件に相当する。横方向の距離Sbの範囲は、(f7)の条件に相当する。
この隣接領域NEの領域内に隣接車線R2を走行する隣接車両102に係る別物標データT4が導出され、この別物標データT4と物標データT1との相対速度差が所定値(例えば、15km/h)以内の場合、即ち、隣接車線R2内を先行車101と並走する移動物に係る別物標データT4となる。なお、移動物であることは(f4)の条件に相当し、隣接車線R2内に存在することは(f8)または(f9)の条件に相当し、相対速度差の範囲は(f6)の条件に相当する。
先行車101が隣接車両102と並走している場合、別物標データT4のピークデータの信号パワーが大きいときは、この別物標データT4の信号パワーの影響で、左側壁WLに係るピークデータが別物標データT4と合成され、左側壁WLに係るピークデータが導出されないことがある。このように先行車101と並走する隣接車両102が存在する場合は、先行車101の側方に側方静止物が存在するか否かを正確に判定できないことがある。そのため、隣接車両102の物標データが4つ目の条件を満足する場合は、物標データ処理部72は、先行車101に係る対象物標データの吸い寄せ緩和フラグをオフに設定する。
次に4つ目の条件を満足しない(ステップS204でNoの)場合について説明する。図15は、先行車と並走する移動物に係る別物標データが導出されていない場合の例を示す図である。
図15に示すように、隣接車線R2には隣接車両102は存在しない場合は、隣接領域NEの領域内には隣接車両102に係る物標データは導出されない。即ち、先行車101と並走する隣接車両102は存在しないことから、物標データ処理部72が側方静止物を導出するときに別物標データの信号パワーによる影響はない。そのため、左側壁WL等の側方静止物が実際に存在する場合は、側方静止物に係る物標データが導出され、実際に存在しない場合は、側方静止物に係る物標データは導出されない。したがって、物標データ処理部72は、先行車101と並走する移動物に係る別物標データが導出されていない場合は、他の3つの条件の判定結果に応じて、吸い寄せ防止緩和フラグをオンに設定し、吸い寄せ防止緩和割合に基づきフィタ処理を行う。
<まとめ>
以上のように、対象物標データに係る物標が側方静止物の近傍に存在する場合は、対象物標データの実際の位置が実際の位置とは異なり、側方静止物寄りの位置に導出される吸い寄せ現象が生じる可能性がある。そのため、物標データ処理部72は、対象物標データが吸い寄せ防止処理の実行条件を満足する場合は、この対象物標データのフィルタ処理を、基準割合よりも過去値の割合が大きい吸い寄せ防止割合に基づき、過去値と直近値とのフィルタ処理を行う。
しかし、対象物標データに係る物標が、右折および左折のいずれかの進路で移動した場合に、吸い寄せ防止割合に基づくフィルタ処理を行うと、実際には自車線上には存在しない物標に係る物標データが、自車線上の位置に導出されることがあった。吸い寄せ防止割合は、過去値の割合が全体割合のほとんどを占めており、物標データの過去値が直近値よりも大きく反映されるためである。そのため、物標データ処理部72は、対象物標データに係る物標が右折および左折のいずれかの進路で移動する可能性がある場合は、吸い寄せ防止割合の過去値の割合を減少させ、直近値の割合を増加させた吸い寄せ防止緩和割合に基づき、過去値と直近値とのフィタ処理を行う。これにより実際には存在しない位置に物標データが導出されることを防止でき、物標データに関して正確なパラメータの値を導出できる。そして、車両制御装置2がACCの制御等を行う場合は、自車両に対する急ブレーキ等の不要な制御を回避できる。
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような変形例について説明する。上記実施の形態及び以下で説明する形態を含む全ての形態は、適宜に組み合わせ可能である。
上記実施の形態では、物標データ処理部72が吸い寄せ防止処理を緩和する場合、吸い寄せ防止割合の過去値の割合を減少させ、直近値の割合を増加させた吸い寄せ防止緩和割合に基づき、フィタ処理を行うことについて説明した。これに対して、吸い寄せ防止割合を緩和する場合は、吸い寄せ防止割合ではなく基準割合に基づきフィタ処理を行うようにしてもよい。また、吸い寄せ防止処理の実行条件を満足する場合に、吸い寄せ防止処理を緩和するのではなく、吸い寄せ防止処理の実行を禁止してもよい。
また、上記実施の形態では、物標データ処理部72は、吸い寄せ防止緩和の判定処理(ステップS102)を実施した後に、吸い寄せ防止の判定処理(ステップS106)を実施することについて説明した。これに対して、2つの処理の順序を逆としてもよい。つまり、ステップ吸い寄せ防止の判定処理を実施した後に、吸い寄せ防止緩和の判定処理を実施してもよい。
また、上記実施の形態では、吸い寄せ防止緩和の判定処理において、対象物標データに係る物標が右折および左折のいずれかの進路で移動する物標か否かを判定する条件としてステップS201〜S204の4つの条件を説明した。これに対して、対象物標に係る物標が右折および左折のいずれかの進路で移動する物標か否かの判定は、この4つの条件の全てではなく、4つの条件のうちのいずれか一つ以上を用いて行ってもよいし、4つ以外の他の判定条件により行ってもよい。他の判定条件の例としては、自車両にカメラを備えて、そのカメラで撮影した先行車等の画像情報に基づく判定(例えば、先行車のウインカーの点灯状態を判定)を行う等がある。
また、上記実施の形態では、物標データは直近処理で導出されたペアデータおよびフィルタデータのいずれかとして説明した。これに対して、物標データは過去処理で導出されたペアデータ、および、フィタデータのいずれかや、フィルタデータから直近処理のペアデータを予測したデータ等であってもよい。
また、上記実施の形態では、フィルタ処理における基準割合、吸い寄せ防止割合、および、吸い寄せ防止緩和割合について、過去値と直近値の具体的な割合を説明した。これに対して各割合の値は一例であり、吸い寄せ防止割合の過去値が、基準割合の過去値よりも大きい条件や、吸い寄せ防止緩和割合の過去値が、吸い寄せ防止割合の過去値よりも小さい条件を満足すれば、各割合の値はその他の値でもよい。
また、上記実施の形態では、縦距離および横距離等を用いた各条件において、具体的な値に基づく判定について説明した。これに対して、各条件におけるこれらの値はその条件の目的を満足する値であればその他の値であってもよい。
また、上記実施の形態では、同一binの物標データについて説明したが、同一を含む所定の周波数範囲であってもよい。この場合、例えば所定の周波数範囲とは、物標データの位置を0(ゼロ)とする±0.9mに相当する周波数範囲であってもよい。言い換えると、物標データに係る物標が車線の略中央に存在する場合にその車線の幅に相当する範囲である。
また、上記実施の形態では、物標データの取得処理ごとに基準割合を設定し、吸い寄せ防止の判定処理、および、吸い寄せ防止緩和の判定処理の判定結果に応じて、フィルタ処理で用いる過去値と直近値の割合が設定されることを説明した。これに対して、ある物標データ取得処理で、対象物標データに対し吸い寄せ防止緩和フラグがオンに設定された場合は、次回以降の物標データの取得処理では、その対象物標データに対し吸い寄せ防止の判定処理や、吸い寄せ防止緩和の判定処理を行うことなく、吸い寄せ防止緩和割合に基づくフィルタ処理を継続的に行うようにしてもよい。
また上記実施の形態では、レーダ装置1の送信アンテナ40の本数は1本、受信アンテナ51の本数は4本として説明した。このようなレーダ装置1の送信アンテナ40および受信アンテナ51の本数は一例であり、複数の物標情報を検出できれば他の本数であってもよい。
また上記実施の形態では、レーダ装置1の角度推定方式は、ESPRITを例に説明したが、ESPRIT以外に、DBF(Digital Beam Forming)、PRISM(Propagator method based on an Improved Spatial-smoothing Matrix)、および、MUSIC(Multiple Signal Classification)等の角度推定方式を用いてもよい。
また上記実施の形態では、レーダ装置1は車両の前部(例えばフロントバンパー内)に設けられると説明した。これに対してレーダ装置1は、車両外部に送信波を出力できる箇所であれば、車両の後部(例えばリアバンパー)、左側部(例えば、左ドアミラー)、および、右側部(例えば、右ドアミラー)の少なくともいずれか1ヶ所に設けてもよい。
また上記実施の形態では、送信アンテナからの出力は、電波、超音波、光、および、レーザ等の物標情報を検出できる方法であればいずれを用いてもよい。
また上記実施の形態では、レーダ装置1は車両以外に用いられてもよい。例えばレーダ装置1は、航空機および船舶等に用いられてもよい。
また上記実施の形態では、プログラムに従ったCPUの演算処理によってソフトウェア的に各種の機能が実現されると説明したが、これら機能のうちの一部は電気的なハードウェア回路により実現されてもよい。また逆に、ハードウェア回路によって実現されるとした機能のうちの一部は、ソフトウェア的に実現されてもよい。