JP2015224354A - 銅合金材及びその製造方法 - Google Patents
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(1)Crを0.10〜0.50質量%と、Mgを0.01〜0.50質量%含み、Zr、Tiのうち少なくとも一種を合計で0.00〜0.20質量%含有する第1添加元素群、およびZn、Fe、Sn、Ag、Si、Niのうち少なくとも一種を合計で0.00〜0.50質量%含有する第2添加元素群からなる群から選ばれる一種を含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる銅合金材であって、
材料表面への初期負荷応力を0.2%耐力の80%とし、150℃中で1000時間放置後の応力緩和率が30%以下であり、
引張強度と0.2%耐力の差が15MPa以下である銅合金材。
(2)Zr、Tiのうち少なくとも一種を合計で0.01〜0.20質量%含有する第1添加元素群、およびZn、Fe、Sn、Ag、Si、Niのうち少なくとも一種を合計で0.01〜0.50質量%含有する第2添加元素群からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、(1)に記載の銅合金材。
(3)引張強度と0.2%耐力の差が10MPa以下で(1)または(2)に記載の銅合金材。
(4)導電率が60%IACS以上である(1)〜(3)のいずれか1に記載の銅合金材。
(5)(1)〜(4)のいずれか1に記載の銅合金材を製造する銅合金材の製造方法であって、
(a)前記銅合金材を与える組成から成る銅合金を溶解鋳造、
(b)850〜1050℃で0.5〜12時間の均質加熱処理、
(c)700〜1000℃での熱間加工および冷却、
(d)冷間加工、
(e)350〜650℃で10分〜24時間の熱処理後、冷却速度2℃/分以下で300℃まで冷却、
(f)加工率10〜50%の仕上げ冷間加工、
(g)昇温速度が50℃/秒以上で、冷却速度が50℃/秒以上であり、300〜550℃で2〜60秒の歪取り焼鈍、
をこの順で有する銅合金材の製造方法。
(6)(1)〜(4)のいずれか1に記載の銅合金材からなる電気電子部品。
<Cr>
Crは、銅合金母相中に析出させることで、導電性を損なうことなく、強度、耐応力緩和特性を向上させることができる。本発明において、Crは0.10〜0.50質量%、好ましくは0.15〜0.40質量%、さらに好ましくは0.20〜0.35質量%含まれる。Cr量が0.10質量%未満になると、銅母相中のCrまたはCrを含む化合物の量が少なくなるため、所望の強度、耐応力緩和特性が得られない。また0.50質量%より大きくなると、導電性の低下、銅母相中における粗大な化合物の発生による強度の低下、加工性への悪影響といった問題が生じる。
Mgは、上記の含有量で銅母相中に固溶元素として作用することで、強度、耐応力緩和特性を向上させることができる。本発明において、Mgを0.01〜0.50質量%、好ましくは0.05〜0.40質量%、さらに好ましくは0.10〜0.30質量%含有させても良い。含有量が0.01質量%未満では特性改善効果が十分に得られず、0.50質量%より大きくなると、導電性の低下、加工性への悪影響といった問題が生じる。Mgは、銅母相中に固溶元素として作用することで耐応力緩和特性を向上させるため、PのようにMgと化合物を形成し析出させる元素を同時に添加することは、好ましくない。
本発明において、任意添加成分として添加できる、第1添加元素のTi、Zrは、銅母相中に析出させることで、強度、耐応力緩和特性を向上させることができる。本発明のこの態様において、Ti、Zrのうち少なくとも1種類を合計で0.01〜0.20質量%、好ましくは0.05〜0.15質量%、さらに好ましくは0.10〜0.15質量%含有させても良い。含有量が0.01質量%未満ではその添加の効果が十分でなく、0.20質量%より大きくなると、導電性の低下、加工性への悪影響といった問題が生じる。
本発明の好ましい態様として、任意添加成分として、第2添加元素のZn、Fe、Sn、Ag、Si、Niを添加することで、強度、耐応力緩和特性、プレス性、めっき性といった材料特性を向上させることができる。この場合、Zn、Fe、Sn、Ag、Siのうち少なくとも一種類を合計で0.01〜0.50質量%、好ましくは0.05〜0.40質量%、さらに好ましくは0.10〜0.30質量%含有させても良い。含有量が0.01質量%未満では、第2添加元素の添加の効果が十分でなく、0.50質量%より多すぎると、導電性の低下、加工性への悪影響、原料費の増加といった問題が生じることがある。
次に、本発明の銅合金材の製造方法の好ましい一例について説明する。本発明の銅合金材は、通常、溶解鋳造、均質化熱処理、熱間加工、冷間加工、熱処理、仕上げ加工、歪取り焼鈍を順に行なうことで製造される。さらに熱間加工後、冷間加工前に面削を行ってもよい。この製造方法は、従来と同程度の工程数でありながら、それぞれの工程条件を適切に調整することで、材料特性の向上を実現する。本発明の製造方法においては、最終的に仕上げ加工と歪取り焼鈍を実施することが重要であり、その前工程である冷間加工や熱処理は、複数回実施しても良い。また熱処理工程の前に溶体化熱処理を実施することで、熱間加工で銅母相中に析出した化合物を固溶させ、最終的に得られる材料において、添加成分の効果を得易くすることができる。
銅合金素材を溶解炉により溶解鋳造を実施し、冷却して所定の成分を持つ鋳塊を得る。溶解鋳造は、公知の方法で行うことができる。
均質化熱処理は、鋳塊に含まれる化合物を銅母相中に固溶させ、鋳塊の成分を均質化するために実施する。これにより、添加した成分の効果が十分に得られるようになり、また材料中の特性のばらつきを小さくすることができる。本発明においては、好ましくは850〜1050℃の温度で0.5〜12時間、より好ましくは900〜1050℃、さらに好ましくは950〜1050℃での均質化熱処理を行う。
均質化熱処理した直後の鋳塊を熱間加工(好ましくは700〜1000℃熱間圧延など)して板厚を薄くし、その後冷却する。冷却は、例えば水冷で行う。冷却速度が遅すぎると冷却中に添加元素の一部が析出し、目標とする最終特性が得られないことになる。
熱間加工後の材料表面に形成された酸化皮膜を面削により取り除く。面削工程は任意で行ってよい。面削は、公知の方法で行うことができる。
面削後の材料を、冷間加工(冷間圧延など)して板厚を薄くする。
冷間加工後の材料に対して、好ましくは350〜650℃で、10分〜24時間、より好ましくは400〜600℃で1〜10時間の時効析出熱処理を行なう。この熱処理により、銅母相中に微細な析出物が析出し、強度、導電性、耐応力緩和特性が向上する。低温で短時間処理する場合、析出量が少なく、また析出する化合物の粒子径が微細すぎるため、強度、導電性、耐応力緩和特性の向上は望めない。また高温で長時間処理する場合、析出する化合物が粗大化し、導電性は向上するものの、強度、耐応力緩和特性の向上は望めない。また、時効熱処理後の300℃までの冷却速度は、好ましくは2℃/分以下とする。300℃までの冷却速度をこの範囲とすることで、強度、導電性、耐応力緩和特性をより向上させることができる。
熱処理後の材料に、好ましくは10〜50%、より好ましくは10〜40%の加工率で、仕上げ冷間加工(冷間圧延など)を行なう。仕上げ加工により、強度が向上し、またTSとYSの差が小さくなる。しかし、導電性、耐応力緩和特性は低下する。仕上げ加工率が10%より小さい場合、十分な強度の向上は望めず、またTSとYSの差が大きくなる。総加工率が50%より大きい場合、導電性、耐応力緩和特性、曲げ加工性が著しく低下し、後の歪取り焼鈍工程で、これらの特性の回復と強度の維持を両立することが困難となる。
仕上げ加工後の材料に歪取り焼鈍を行なうことで、強度が低下し、TSとYSの差が大きくなる。しかし導電性、耐応力緩和特性、曲げ加工性が改善される。本発明では、300〜550℃の温度で、2〜60秒の歪取り焼鈍を行う。温度は、350〜500℃の範囲であることがより好ましい。時間は、3〜20sの範囲であることがより好ましい。この際、昇温速度と冷却速度は50℃/s以上であることが好ましく、100℃/s以上であることがより好ましい。低温で短時間処理した場合、強度、導電性、耐応力緩和特性、曲げ加工性の変化はほとんど起こらない。また高温で長時間処理すると、強度が著しく低下し、TSとYSの差も大きくなる。昇温速度と冷却速度が規定の範囲を満たさない場合、TS、EC、SRRで狙いの値が得られたとしても、TSとYSの差が大きくなる。
(引張強度:TS)
引張方向が圧延方向と平行になるように切り出した、試験片を、JIS Z2241に準拠して引張試験を行い、引張強度を求めた。試験は3回実施し、その平均値を試験結果として示した。
(0.2%耐力:YS)
引張方向が圧延方向と平行になるように切り出した試験片を、JIS Z2241に準拠して引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。試験は3回実施し、その平均値を試験結果として示した。
(導電率:EC)
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温漕中で、四端子法により比抵抗を計測し、導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
日本伸銅協会 JCBA T309:2004「銅及び銅合金薄板条の曲げによる応力緩和試験方法」に準じ、片持ちはり法(片持ちはりブロック式ジグ使用)により、材料表面への初期負荷応力を0.2%耐力の80%とし、150℃で1000時間保持の条件で測定した。試験片は幅10mmの短冊形とし、圧延平行方向と試験片の長さ方向を一致させた。応力緩和率の算出方法は、特許第5307305号に記載された算出方法による。すなわち、熱処理前、試験台に片持ちで保持した試験片に、耐力の80%の初期応力を付与した時の試験片の先端の位置は、基準位置から距離δ0の高さにある。これを150℃の恒温槽に1000時間保持(初期応力を付与した状態で上記試験片を熱処理)し、負荷を除いた後の試験片の先端の位置は、上記基準位置から距離Htの高さにある。また応力を負荷しなかった場合の試験片に対して上記の熱処理を行った場合の試験片の先端の位置は、上記基準位置から距離H1の高さにある。これらの関係から、応力緩和率(%)は(Ht−H1)/(δ0―H1)×100と算出した。
Claims (6)
- Crを0.10〜0.50質量%と、Mgを0.01〜0.50質量%含み、Zr、Tiのうち少なくとも一種を合計で0.00〜0.20質量%含有する第1添加元素群、およびZn、Fe、Sn、Ag、Si、Niのうち少なくとも一種を合計で0.00〜0.50質量%含有する第2添加元素群からなる群から選ばれる一種を含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる銅合金材であって、
材料表面への初期負荷応力を0.2%耐力の80%として、150℃中で1000時間放置した時の応力緩和率が30%以下であり、
引張強度と0.2%耐力の差が15MPa以下であることを特徴とする銅合金材。 - Zr、Tiのうち少なくとも一種を合計で0.01〜0.20質量%含有する第1添加元素群、およびZn、Fe、Sn、Ag、Si、Niのうち少なくとも一種を合計で0.01〜0.50質量%含有する第2添加元素群からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する、請求項1に記載の銅合金材。
- 引張強度と0.2%耐力の差が10MPa以下である、請求項1または2に記載の銅合金材。
- 導電率が60%IACS以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の銅合金材。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金材を製造する銅合金材の製造方法であって、
(a)前記銅合金材を与える組成から成る銅合金を溶解鋳造、
(b)850〜1050℃で0.5〜12時間の均質加熱処理、
(c)700〜1000℃での熱間加工および冷却、
(d)冷間加工、
(e)350〜650℃で10分〜24時間の熱処理後、冷却速度2℃/分以下で300℃まで冷却、
(f)加工率10〜50%の仕上げ冷間加工、
(g)昇温速度が50℃/秒以上で、冷却速度が50℃/秒以上であり、300〜550℃で2〜60秒の歪取り焼鈍、
をこの順で有することを特徴とする、銅合金材の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金材からなる電気電子部品。
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JP2016141878A (ja) * | 2015-02-04 | 2016-08-08 | Jx金属株式会社 | 銅合金条およびそれを備える大電流用電子部品及び放熱用電子部品 |
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