JP2015220244A - 軟磁性金属粉末および軟磁性金属圧粉コア - Google Patents
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Abstract
【課題】軟磁性金属粉末の保磁力を改善し、ならびにそれを用いた軟磁性金属圧粉コアの損失を改善する。
【解決手段】SiとAlとを含む、Feを主成分とする軟磁性金属粉末4であって、軟磁性金属粉末4の金属粒子内のSiの含有量が1〜15質量%、Alの含有量が0.1〜1質量%であり、軟磁性金属粉末4の粒子表面に窒化アルミニウム皮膜5を有する。この軟磁性金属粉末4を用いて軟磁性金属圧粉コアを製造する。
【選択図】図2
【解決手段】SiとAlとを含む、Feを主成分とする軟磁性金属粉末4であって、軟磁性金属粉末4の金属粒子内のSiの含有量が1〜15質量%、Alの含有量が0.1〜1質量%であり、軟磁性金属粉末4の粒子表面に窒化アルミニウム皮膜5を有する。この軟磁性金属粉末4を用いて軟磁性金属圧粉コアを製造する。
【選択図】図2
Description
本発明は、圧粉コア等に用いられる軟磁性金属粉末、軟磁性金属圧粉コアに関するものである。
大電流を印加する用途で使用されるリアクトルやインダクタ用の磁心材料として、フェライトコア、積層電磁鋼板、軟磁性金属圧粉コア(金型成形、射出成形、シート成形などで作られたコア)などが用いられる。積層電磁鋼板は飽和磁束密度が高いものの、電源回路の駆動周波数が数十kHzを超えると鉄損が大きくなり、効率の低下を招くという問題があった。一方、フェライトコアは高周波損失の小さい磁心材料であるが、飽和磁束密度が低いことから、形状が大型化するという問題があった。
軟磁性金属圧粉コアは高周波の鉄損が積層電磁鋼板よりも小さく、飽和磁束密度がフェライトコアよりも大きいことから、広く用いられるようになっている。しかしその損失は積層電磁鋼板よりも優れるものの、フェライトほど低損失であるとはいえず、損失の低減が望まれている。
軟磁性金属圧粉コアの損失を低減するために、コアを構成する軟磁性金属粉末の保磁力を低減することが知られている。コアの損失はヒステリシス損失と渦電流損失に分けられ、ヒステリシス損失は保磁力に依存するため、保磁力を低減すればコアの損失を低減できる。
軟磁性金属粉末の保磁力を低減するために、結晶粒径が大きくなるような高い温度で軟磁性金属粉末を熱処理することが試みられている。例えば特許文献1では、鉄粉に対して、焼結防止のための無機物粉末を混合して高温で熱処理する技術が開示されている。特許文献2では、軟磁性合金粉末に対して、無機絶縁物を混合して粉末の固着を抑えながら高温で熱処理する技術が開示されている。
特許文献1や特許文献2の技術では、軟磁性金属粉末に焼結防止のために多量の無機物粉末を混合して高温で熱処理するが、軟磁性金属粒子の表面に均一に隙間なく無機物粉末で覆うことは不可能であるため、1000℃以上で熱処理を行うと、粉末が固着することは不可避である。固着してしまった粉末に対しては解砕処理が必要となり、歪が入ってしまうため、結局得られる粉末の保磁力は十分に小さいものではない。固着させずに熱処理するには950℃が限界であり、この熱処理温度では結晶粒の成長が不十分である。すなわち、従来の技術では、結晶粒径の増大に対する効果が不十分であり、したがって、得られる軟磁性金属粉末の保磁力は十分に低減されているとはいえず、それを用いて作製される軟磁性金属圧粉コアの損失も大きくなってしまうという問題があった。
本発明では、上記の問題を解決するために案出されたものであって、軟磁性金属粉末の保磁力を改善すること、ならびにそれを用いた軟磁性金属圧粉コアの損失を改善することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明の軟磁性金属粉末は、SiとAlとを含む、Feを主成分とする軟磁性金属粉末であって、前記軟磁性金属粉末においてSiの含有量が1〜15質量%であり、前記軟磁性金属粉末の金属粒子内のAlの含有量が0.1〜1質量%であり、前記軟磁性金属粉末の金属粒子表面に窒化アルミニウム皮膜を有することを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末とすることにより、保磁力を低減することができる。
本発明の軟磁性金属粉末は、さらに好ましくは、前記軟磁性金属粉末において、Crの含有量が1〜10質量%であることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末とすることにより、保磁力は低く保ちながら、電気抵抗を高めたり、防錆性を付与したりすることができる。
本発明の軟磁性金属粉末は、さらに好ましくは、前記軟磁性金属粉末を構成する粒子のうち、90%以上の粒子の断面の円形度が0.80以上であることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末とすることにより、より保磁力を低減することができる。
本発明の軟磁性金属粉末は、さらに好ましくは、前記軟磁性金属粉末を構成する粒子の90%以上が一個の結晶粒からなることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末とすることにより、より保磁力を低減することができる。
本発明の軟磁性金属粉末は、さらに好ましくは、粒子内に含まれる酸素量が500ppm以下であることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末とすることにより、より保磁力を低減することができる。
本発明の軟磁性金属粉末は、さらに好ましくは、前記軟磁性金属粉末中の粒子表面に酸化アルミニウム粒子および水酸化アルミニウム粒子の少なくとも一方を有することを特徴とすることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末とすることにより、保磁力を低く保ちながら、軟磁性金属圧粉コアを安定に作製することができる。
本発明の軟磁性金属圧粉コアは、本発明の軟磁性金属粉末を用いて作製された軟磁性金属圧粉コアである。
本発明の軟磁性金属粉末を用いて作製された軟磁性金属圧粉コアは、コアの損失が極めて小さいものとなる。
本発明によれば、低い保磁力を有する軟磁性金属粉末を得ることができ、この軟磁性金属粉末を用いることで軟磁性金属圧粉コアの損失を改善することができる。
まず、本発明の軟磁性金属粉末が低保磁力になるメカニズムについて説明する。
従来の技術では、高温熱処理時の焼結防止のために混合する酸化物、窒化物の微粒子が、金属粒子の表面を覆いきれずに不均一に分布する、あるいは高温で不安定であるため、1000℃以上の高温の熱処理では粒子同士が固着して、粉末が得られないという問題があった。そこで、これを改善するために、高融点であり高温でも金属との反応性が極めて低い窒化アルミニウムの皮膜を軟磁性金属粉末粒子の表面全体に被覆させる技術を検討し、本発明にいたった。
従来の技術の根本的な問題点は、軟磁性金属粉末に対してその外に焼結防止用の部材(粉末や皮膜)を構成するものであって、この方法では表面に焼結防止材の分布が不均一になってしまうのは不可避である。よって、粒子内部に含有させる成分を表面に拡散、析出させて雰囲気と反応させることで、均一かつ安定な焼結防止層を形成できると考えた。そこで、本発明では、Feを主成分とし、SiとAlとを含む原料粉末を準備し、この原料粉末に対して、窒素を含む非酸化雰囲気中で高温熱処理を行う。この高温熱処理により、前記原料粉末粒子中のAlが粒子表面まで拡散し、粒子表面部で窒素と反応し、窒化アルミニウムを形成する。その窒化アルミニウム析出物が粒子間に介在するため効果で高温熱処理が可能となり、さらにAlの拡散により結晶粒成長が促進されて低保磁力になった。
原料粉末粒子の断面の形態を図1に、軟磁性金属粉末粒子の断面の形態を図2に例示した。図1の原料粉末粒子は、微細な結晶粒から成る多結晶体であり、Alは金属母相中に固溶している。図2の軟磁性金属粉末粒子の表面には、粒子表面全体を均一に覆うように、窒化アルミニウムの皮膜が形成されている。結晶粒の大きさが大きくなるとともに、粒子内部のAlは減少し、金属母相中には0.1〜1質量%のAlが固溶している。
原料粉末粒子中に十分な量のAlを含有させて、そのAlを窒化して、窒化アルミニウムを粒子表面に析出させることで、均一で隙間が無い皮膜を形成することができる。SiO2やAl2O3、B2O3などの酸化物粉末や窒化ホウ素などの窒化物粉末を原料粉末中に混合するだけでは、大量の酸化物粉末や窒化物粉末を混合したとしても、原料粉末粒子の表面同士の接触は避けがたいが、均一で隙間が無い皮膜とすることで、原料粉末粒子の表面同士の接触を防ぐことができる。また、窒化アルミニウムは窒素雰囲気中において安定であり、さらに窒化アルミニウム自体が難焼結性の物質である。そのため、高温熱処理を行う場合に、酸化物皮膜では、金属粒子同士が酸化物を介して固着してしまうが、窒化アルミニウム皮膜では固着することはない。窒化アルミニウムは、金属である原料粉末よりも密度が低いため、原料粉末粒子の表面部に窒化アルミニウムが形成されれば、隣接する原料粉末の金属部の表面どうしの距離を押し広げる効果がある。この作用も、原料粉末粒子同士の焼結を防ぐのに効果がある。以上の効果により、従来では不可能であった1000℃以上の高温での熱処理を行うことが可能になり、保磁力を低減することができる。
原料粉末粒子内にAlを含有させることによる保磁力に対する効果はもうひとつ考えられる。それは、原料粉末粒子内部のAlの、原料粉末粒子表面方向への拡散が、結晶粒界の原料粉末粒子表面方向への移動を容易にし、結晶粒成長を促進させる効果である。原料粉末粒子内にAlを含有させることで、高温に耐える良好な焼結防止皮膜を形成する効果と、結晶粒成長を促進する効果と、二重の効果が得られ、極めて低保磁力な軟磁性金属粉末を得ることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(本発明の軟磁性金属粉末の特徴について)
本発明の軟磁性金属粉末は、SiとAlとを含む、Feを主成分とする軟磁性金属粉末であって、軟磁性金属粉末粒子内のAlの含有量が0.1〜1質量%であり、軟磁性金属粒子表面に窒化アルミニウムの皮膜を有する。軟磁性金属粉末粒子のAlの含有量を0.1〜1質量%とすることによって、保磁力が十分に小さくなる。窒素を含む非酸化性雰囲気で高温熱処理を行うと、原料粉末粒子内のAlが粒子表面で窒化して窒化アルミニウムとなるので、原料粉末中のAl含有量と粒子表面に析出した窒化アルミニウムの量とのバランスによって金属粒子内のAl含有量が変化する。Alは金属粒子の母相(bcc)への固溶限が広く、金属粒子内には一定量のAlが残留するため、金属粒子内のAl含有量を0.1質量%未満とするのは困難である。一方、1質量%以上のAlが金属粒子中に存在すると、磁歪が大きくなるため、保磁力悪化の原因となる。
本発明の軟磁性金属粉末は、SiとAlとを含む、Feを主成分とする軟磁性金属粉末であって、軟磁性金属粉末粒子内のAlの含有量が0.1〜1質量%であり、軟磁性金属粒子表面に窒化アルミニウムの皮膜を有する。軟磁性金属粉末粒子のAlの含有量を0.1〜1質量%とすることによって、保磁力が十分に小さくなる。窒素を含む非酸化性雰囲気で高温熱処理を行うと、原料粉末粒子内のAlが粒子表面で窒化して窒化アルミニウムとなるので、原料粉末中のAl含有量と粒子表面に析出した窒化アルミニウムの量とのバランスによって金属粒子内のAl含有量が変化する。Alは金属粒子の母相(bcc)への固溶限が広く、金属粒子内には一定量のAlが残留するため、金属粒子内のAl含有量を0.1質量%未満とするのは困難である。一方、1質量%以上のAlが金属粒子中に存在すると、磁歪が大きくなるため、保磁力悪化の原因となる。
軟磁性金属粉末のSiの含有量は1〜15質量%となるように調整する。Siの含有量が1%未満であると、結晶磁気異方性や磁歪定数が大きく、良好な軟磁気特性を得ることができない。Siの含有量が15%より大きいと、保磁力が増大することや、軟磁性金属粉末の硬度が高くなり過ぎて、軟磁性金属圧粉コアとしたときに、圧粉体の密度が低くなりすぎ、良好な軟磁性金属圧粉コアを得ることができない。
本発明の軟磁性金属粉末は、より好ましくは、その組成に、Crを1〜10%添加する。Crを1〜10%添加することによって、保磁力を損なうことなく、良好な防錆性を軟磁性金属粉末に付与することができ、そして、軟磁性金属粉末の電気抵抗を高くする効果もあり、それによって、軟磁性金属圧粉コアとしたときに、渦電流損失を低減することができる。Cr添加量が1%未満だと、防錆性と電気抵抗向上の効果が小さい。Cr添加量を10%より大きくしても防錆性に与える効果は変わらず、Crを添加する分だけ飽和磁化が小さくなってしまうため、Cr添加量の上限は10%とする。
本発明の軟磁性金属粉末の金属粒子内のSi、Cr、Al含有量は、たとえば、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて定量することができる。軟磁性金属粉末を冷間埋め込み樹脂にて固定し、切り出したものを研磨し、粒子断面を露出させ、金属粒子内部の組成をEPMAにて定量する。
本発明の軟磁性金属粉末は、前記軟磁性金属粉末を構成する金属粒子のうち、90%以上の金属粒子の断面の円形度が0.80以上とすることで、さらに保磁力が小さい軟磁性金属粉末を得ることができる。得られた軟磁性金属粉末を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨することで、金属粒子の断面形状を観察することができる。このように準備された金属粒子の断面を少なくともランダムに20個、好ましくは100個以上観察し、各粒子の円形度を求める。円形度の一例としてはWadellの円形度を用いることができ、粒子断面に外接する円の直径に対する粒子断面の投影面積に等しい円の直径の比で定義される。真円の場合にはWadellの円形度は1となり、1に近いほど真円度が高く、0.80以上であれば外観状ほぼ真球とみなすことができる。観察には光学顕微鏡やSEMを用い、円形度の算出には画像解析を用いることができる。
本発明の軟磁性金属粉末は、前記軟磁性金属粉末を構成する金属粒子の90%以上が一個の結晶粒からなる軟磁性金属粉末とすることで、さらに保磁力が小さい軟磁性金属粉末を得ることができる。1200℃を超える高温熱処理を行う事で、軟磁性金属粉末を構成する金属粒子の90%以上が一個の結晶粒からなる軟磁性金属粉末とすることができる。得られた軟磁性金属粉末を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨した後、ナイタール(エタノール+1%硝酸)でエッチングすることで、結晶粒界を観察することができる。このように準備された粒子の断面を少なくともランダムに20個、好ましくは100個以上観察し、結晶粒界が観察されない粒子の数を1個の結晶粒からなる粒子としてカウントする。一部に結晶粒成長が不完全な粒子も存在することから、全ての粒子が1個の結晶粒からなることはない。観察には光学顕微鏡やSEM(走査型電子顕微鏡)を用いることができる。
本発明の軟磁性金属粉末は、金属粒子内に含まれる酸素量が500ppm以下とすることで、さらに保磁力が小さい軟磁性金属粉末を得ることができる。還元雰囲気中で熱処理を行うことで金属粒子内に含まれる酸素量を500ppm以下とすることができる。
本発明の軟磁性金属粉末の平均粒径は、1〜200μmである。平均粒径が1μm未満であると、軟磁性金属圧粉コアの透磁率が低下する。一方、平均粒径が200μmを超えると、軟磁性金属圧粉コアの粒内渦電流損失が増大してしまう。
(原料粉末について)
軟磁性金属粉末の原料粉の作製方法はとくに制限されないが、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、鋳造粉砕法などの方法を用いることができる。ガスアトマイズ法で製造された原料粉末を用いれば、軟磁性金属粉末を構成する金属粒子の90%以上の金属粒子の断面の円形度が0.80以上である軟磁性金属粉末を得ることが容易なため、好ましい。
軟磁性金属粉末の原料粉の作製方法はとくに制限されないが、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、鋳造粉砕法などの方法を用いることができる。ガスアトマイズ法で製造された原料粉末を用いれば、軟磁性金属粉末を構成する金属粒子の90%以上の金属粒子の断面の円形度が0.80以上である軟磁性金属粉末を得ることが容易なため、好ましい。
原料粉末は、Feを主成分とする鉄合金からなる金属粉末であって、SiとAlを含む。原料粉末のSiの含有量は1〜15質量%となるように調整する。原料粉末のAlの含有量は、1.0質量%以上3.0質量%以下である。1.0質量%未満であると、Alの含有量が少なすぎて、窒化アルミニウムの析出量が不十分となり、均一な皮膜が形成できないため、高温熱処理を行ったときに金属粒子同士が焼結してしまう。原料粉末のAlの含有量が多い程、軟磁性金属粉末の金属粒子内に残留するAlが増加し磁歪定数が大きくなることから、3.0質量%以下とする。
(熱処理について)
Alを含有した原料粉末に対して窒素を含む非酸化雰囲気中で高温熱処理を行う。この熱処理により歪が開放され、結晶粒径が増大する。十分に保磁力を低減するために、熱処理は、窒素を含む非酸化雰囲気中、昇温速度は5℃/min以下、温度は1000〜1300℃で、保持時間は30〜600minとする。この熱処理を行うことで、雰囲気中の窒素と、原料粉末中のAlが反応して、窒化アルミニウムの皮膜を金属粒子の表面に形成するとともに、金属粒子の結晶粒を成長させ、保磁力を低減させる。特に熱処理温度を1200℃以上にすることで、得られた軟磁性金属粉末は、軟磁性金属粉末を構成する金属粒子の90%以上が一個の結晶粒からなる、つまり、低保磁力化には理想的である単結晶粒子の状態になる。熱処理温度が1000℃に満たない場合には、原料粉末の結晶粒成長が不十分となる。熱処理温度が1300℃を超えると、窒化が速やかに進行して反応が完了するとともに、結晶粒成長も速やかに進行して単結晶化するので、温度をそれ以上上げても効果がない。高温熱処理は、窒素を含む非酸化性雰囲気で行う。非酸化性雰囲気で熱処理を行うのは、軟磁性金属粉末の酸化を防ぐためである。昇温速度が速すぎると、十分な量の窒化アルミニウムが生成される前に原料粉末粒子が焼結する温度に到達し、原料粉末が焼結してしまうため、昇温速度は5℃/min以下とする。
Alを含有した原料粉末に対して窒素を含む非酸化雰囲気中で高温熱処理を行う。この熱処理により歪が開放され、結晶粒径が増大する。十分に保磁力を低減するために、熱処理は、窒素を含む非酸化雰囲気中、昇温速度は5℃/min以下、温度は1000〜1300℃で、保持時間は30〜600minとする。この熱処理を行うことで、雰囲気中の窒素と、原料粉末中のAlが反応して、窒化アルミニウムの皮膜を金属粒子の表面に形成するとともに、金属粒子の結晶粒を成長させ、保磁力を低減させる。特に熱処理温度を1200℃以上にすることで、得られた軟磁性金属粉末は、軟磁性金属粉末を構成する金属粒子の90%以上が一個の結晶粒からなる、つまり、低保磁力化には理想的である単結晶粒子の状態になる。熱処理温度が1000℃に満たない場合には、原料粉末の結晶粒成長が不十分となる。熱処理温度が1300℃を超えると、窒化が速やかに進行して反応が完了するとともに、結晶粒成長も速やかに進行して単結晶化するので、温度をそれ以上上げても効果がない。高温熱処理は、窒素を含む非酸化性雰囲気で行う。非酸化性雰囲気で熱処理を行うのは、軟磁性金属粉末の酸化を防ぐためである。昇温速度が速すぎると、十分な量の窒化アルミニウムが生成される前に原料粉末粒子が焼結する温度に到達し、原料粉末が焼結してしまうため、昇温速度は5℃/min以下とする。
原料粉末は、るつぼや匣鉢といった容器に装填される。容器の材質は1300℃の高温で変形しないことが求められ、また金属と反応しないことが必要であり、一例としてアルミナを使用することができる。熱処理炉はプッシャー炉やローラーハース炉などの連続炉や箱型炉や管状炉、真空炉などのバッチ炉を用いることができる。
(窒化アルミニウムの分解について)
本発明の軟磁性金属粉末は、金属粒子の表面に形成された窒化アルミニウムの一部が水酸化アルミニウムあるいは酸化アルミニウムに変性してもその効果には影響しない。窒化アルミニウムは空気中の水分と容易に反応して水酸化アルミニウムを生成するが、粉の保磁力に対してなんら影響を与えることはない。また、本発明の軟磁性金属粉末を用いて作製した圧粉磁心を熱処理する際には、水酸化アルミニウムが分解して酸化アルミニウムとなる場合があるが、粉の保磁力に対してなんら影響を与えることはない。窒化アルミニウムは水分に対して不安定であるため、一部の窒化アルミニウムを水酸化アルミニウムあるいは酸化アルミニウムの形態とすることにより、軟磁性金属圧粉コアの特性を安定化させることができる。
本発明の軟磁性金属粉末は、金属粒子の表面に形成された窒化アルミニウムの一部が水酸化アルミニウムあるいは酸化アルミニウムに変性してもその効果には影響しない。窒化アルミニウムは空気中の水分と容易に反応して水酸化アルミニウムを生成するが、粉の保磁力に対してなんら影響を与えることはない。また、本発明の軟磁性金属粉末を用いて作製した圧粉磁心を熱処理する際には、水酸化アルミニウムが分解して酸化アルミニウムとなる場合があるが、粉の保磁力に対してなんら影響を与えることはない。窒化アルミニウムは水分に対して不安定であるため、一部の窒化アルミニウムを水酸化アルミニウムあるいは酸化アルミニウムの形態とすることにより、軟磁性金属圧粉コアの特性を安定化させることができる。
(軟磁性金属圧粉コアについて)
本発明で得られた軟磁性金属粉末は低い保磁力を示すことから、これを軟磁性金属圧粉コアに用いた場合には、損失が小さくなる。軟磁性金属圧粉コアの作製方法は、軟磁性金属粉末として本発明で得られた軟磁性金属粉末を使用すること以外は、一般的な製造方法で作製することができるが、一例を示す。
本発明で得られた軟磁性金属粉末は低い保磁力を示すことから、これを軟磁性金属圧粉コアに用いた場合には、損失が小さくなる。軟磁性金属圧粉コアの作製方法は、軟磁性金属粉末として本発明で得られた軟磁性金属粉末を使用すること以外は、一般的な製造方法で作製することができるが、一例を示す。
本発明の軟磁性金属粉末に対し、樹脂を混合して顆粒を作製する。樹脂にはエポキシ樹脂やシリコーン樹脂を用いることができ、成形時の保形性と電気的な絶縁性を有するもので、軟磁性金属粉末表面に均一に塗布できるものが好ましい。得られた顆粒を所望の形状の金型に充填し、加圧成形して成形体を得る。成形圧力は軟磁性金属粉末の組成や所望の成形密度により適宜選択することができるが、概ね600〜1600MPaの範囲である。必要に応じて潤滑剤を用いてもよい。得られた成形体は、熱硬化させて圧粉コアとする。あるいは成形時の歪を除去するために熱処理を行って、軟磁性金属圧粉コアとする。熱処理の温度は500〜800℃で、窒素雰囲気やアルゴン雰囲気などの非酸化性雰囲気中で行うことが望ましい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
<実施例1>Al量について
主組成がFe−6.5%Si−2.0%Alの組成の原料粉末を水アトマイズ法にて作製した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を70μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下1100℃で高温熱処理を行い、軟磁性金属粉末を得た。熱処理時の1100℃の保持時間を表1に示す時間として、軟磁性金属粉末の金属粒子中のAl含有量を調整した。(実施例1−1〜1−3、比較例1−4〜1−5)
Fe−6.5%Si組成に対して表1に示す量のAlを添加した原料粉末を水アトマイズ法にて作製した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を70μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下1100℃で300minの高温熱処理を行い、軟磁性金属粉末を得た。(実施例1−7〜1−10、比較例1−6、1−11)
主組成がFe−6.5%Siとなるよう水アトマイズ法にて原料粉末を作製した。粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を70μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下で900℃、300minの高温熱処理を行い、軟磁性金属粉末を得た。熱処理温度は、粉末が焼結しない、なるべく高い温度を検討し、その結果、900℃とした。(比較例1−12)
主組成がFe−6.5%Siとなるよう水アトマイズ法にて原料粉末を作製した。粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を70μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下1100℃で5minの高温熱処理を行った。(比較例1−13)
実施例1−1〜1−3、1−7〜1−10および比較例1−4〜1−6、1−11〜1−13について、軟磁性金属粉末の金属粒子内のAl含有量を定量した。熱処理を行った後の軟磁性金属粉末を冷間埋め込み樹脂にて固定したものを切断し、切断面を鏡面研磨した。次に、電子線マイクロアナライザ(EPMA)にて粒子内部のAl含有量を定量し、結果を表1に示した。
実施例1−1〜1−3、1−7〜1−10および比較例1−4〜1−5、1−11〜1−12について軟磁性金属粉末を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行った。金属粒子の断面をランダムに100個観察し、各粒子のWadellの円形度を測定し、円形度が0.80以上である金属粒子の割合を算出した。結果を表1に示した。また、鏡面研磨した金属粒子断面をナイタール(エタノール+1%硝酸)でエッチングし、ランダムに選んだ100個の粒子の結晶粒界を観察し、一個の結晶粒からなる粒子の割合を算出した。結果を表1に示した。さらに、軟磁性金属粉末の酸素含有量を酸素分析装置(LECO社製TC600)にて定量した。結果を表1に示した。
実施例1−1〜1−3、1−7〜1−10および比較例1−4〜1−6、1−11では、軟磁性金属粉末の金属粒子の表面に窒化アルミニウムが形成されていた。比較例1−13では、Alを全く含有していないため、焼結防止の役割を果たす皮膜が粒子表面に形成されず、粉末全体が焼結してしまった。比較例1−6では原料粉末にAlが含有されるものの、Al含有量が少ないため、粉末が一部焼結してしまい、粉末が得られなかった。金属粒子中のAlが0.1質量%未満に低下してしまうほどAl含有量が少ない場合には、粒子表面に形成される窒化アルミニウムの量が不足するためと考えられる。
粉末として得られた、実施例1−1〜1−3、1−7〜1−10および比較例1−4〜1−5、1−11、1−12について、粉末の保磁力を測定した。粉末の保磁力は、φ6mmx5mmのプラスチックケースに20mgの粉末を入れ、パラフィンを融解、凝固させて固定したものを保磁力計(東北特殊鋼社製、K−HC1000型)にて測定した。測定磁界は150kA/mである。測定結果を表1に示した。
実施例1−1〜1−3、1−7〜1−10では、金属粒子内のAl含有量を0.1〜1質量%とすることで200A/m未満の低い保磁力が得られている。金属粒子中のAl含有量が少ないほど一個の結晶粒から成る金属粒子の割合が増加しており、金属粒子内のAlが窒化して表面に移動するとともに結晶粒成長が進むことがわかる。一方、比較例1−4〜1−5および比較例1−11では金属粒子内のAl含有量が1質量%を超えるため、250A/m以上の大きな保磁力しか得られない。
なお、比較例1−12では、Al無添加で熱処理を試みた場合であるが、粉末で回収できる熱処理温度が900℃と低いため、保磁力は560A/mと大きなものしか得られない。
これらの結果から、軟磁性金属粉末の金属粒子内のAl量を0.1〜1質量%に制御することで保磁力の低い軟磁性金属粉末を得ることができることがわかる。
粉末として得られた、実施例1−1〜1−3、1−7〜1−10および比較例1−4〜1−5、1−11、1−12の軟磁性金属粉末を用いて圧粉コアを作製した。金属粉末100質量%に対し、シリコーン樹脂を2.4質量%加え、ニーダーで混練したものを、355μmのメッシュで整粒して顆粒を作製した。これを外径17.5mm、内径11.0mmのトロイダル形状の金型に充填し、成形圧980MPaで加圧し成形体を得た。コア重量は5gとした。得られた成形体をベルト炉にて750℃で30min、窒素雰囲気中で熱処理して圧粉コアとした。なお、実施例1−1〜1−3、1−7〜1−10および比較例1−4〜1−6、1−11の混練時にはアンモニア臭があり、少なくとも一部の窒化アルミニウムが空気中の水分と反応して水酸化アルミニウムとアンモニアに分解したものと考えられ、これを加熱することによって酸化アルミニウムが生成していると考えられる。
実施例1−1〜1−3、1−7〜1−10と比較例1−12のコアロスを比較すると、本発明の軟磁性金属粉末を用いた軟磁性金属圧粉コアは、コアの損失を20%以上低減できることがわかる。
<実施例2>Si量とCr量
Si量とCr量が表2に示す量で、Al添加量が1.5質量%の組成の原料粉末を水アトマイズ法にてそれぞれ作製した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を70μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下1200℃で60minの高温熱処理を行い、軟磁性金属粉末を得た。(実施例2−2〜2−6、2−8〜2−11、比較例2−1、2−7)得られた軟磁性金属粉末粒子中のAl含有量は、実施例1と同様の手順で定量した。
実施例2−2〜2−6、2−8〜2−11および比較例2−1、2−7について、粉末の保磁力を実施例1と同様に測定し、結果を表2に示した。
実施例2−2〜2−6、2−8〜2−11および比較例2−1、2−7について、防請性の試験を行った。粉末を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行った。その後、金属粒子の断面をランダムに20個観察し、発錆している粒子の割合を算出し、結果を表2に示した。
実施例2−2〜2−6は、200A/m未満の低い保磁力が得られているが、比較例2−1ではSi含有量が1%未満のため、比較例2−7ではSi含有量が15%を超えるため保磁力が200A/m以上に増大している。
実施例2−8〜2−11の金属粉末組成は、実施例2−4の金属粉末組成に対してCrが添加されたものとなるが、Crが添加されても、粉の保磁力にはほとんど影響がないことが分かる。そして、Crを1.0質量%以上添加することで、発錆する粒子の割合を0%にすることが出来る。
<実施例3>円形度、結晶粒径、酸素量の効果
主組成がFe−6.5%Si−1.5%Alの組成の原料粉末を水アトマイズ法とガスアトマイズ法にてそれぞれ作製した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を70μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下で高温熱処理を行い、軟磁性金属粉末を得た。熱処理温度と熱処理時間は表3に示した。(実施例3−1〜3−4)
さらに、得られた軟磁性金属粉末を水雰囲気中、600℃で60minの還元処理を行い、酸素量を低減させた軟磁性金属粉末を得た。(実施例3−5〜3−8)
Fe−6.5%Si組成の原料粉末を水アトマイズ法とガスアトマイズ法によって作製した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を70μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下900℃で300minの熱処理を行い、軟磁性金属粉末を得た。(比較例3−9〜3−10)
実施例3−1〜3−8および比較例3−9、3−10について、金属粒子中のAl含有量を、実施例1と同様の手順で定量した。また、軟磁性金属粉末の酸素含有量、円形度が0.80以上である金属粒子の割合、一個の結晶粒からなる金属粒子の割合を実施例1と同様の手順で測定し、結果を表3に示した。
実施例3−1〜3−8ではいずれも200A/m未満の低い保磁力が得られている。実施例3−1と3−3、実施例3−2と3−4を比較すると、金属粒子の断面の円形度が0.80以上である金属粒子の割合を90%以上とすることにより、保磁力をより小さくできることがわかる。また、実施例3−1と3−2、実施例3−3と3−4を比較すると、軟磁性金属粉末を構成する金属粒子の90%以上を一個の結晶粒とすることにより、保磁力をより小さくできることがわかる。また、実施例3−1〜3−4と実施例3−5〜3−8を比較すると、軟磁性金属粉末に含まれる酸素量を500ppm以下とすることにより、保磁力がより小さくできることがわかる。
実施例3−1〜3−8および比較例3−9〜3−10を用いて圧粉コアを作製した。圧粉コアの作製条件は実施例1と同様とした。
得られた圧粉コアについてコアロスを評価した。コアロスはBHアナライザ(岩通計測社製SY−8258)を用いて周波数20kHz,測定磁束密度50mTの条件で測定した。結果を表3に示した。
実施例3−1〜3−8と比較例3−9、3−10のコアロスを比較すると、本発明の軟磁性金属粉末を用いた軟磁性金属圧粉コアは、コアの損失を20%以上低減できることがわかる。
以上説明した通り、本発明の軟磁性金属粉末は保磁力が低く、この軟磁性金属粉末を用いて軟磁性金属圧粉コアを作製することで低い損失のコアを得ることができる。この軟磁性金属粉末あるいは軟磁性金属圧粉コアは損失が低いことから、高効率化を実現できるので、電源回路などの電気・磁気デバイス等に広く且つ有効に利用可能である。
1…原料粉末粒子
2…母相中のAl
3…結晶粒界
4…軟磁性金属粉末粒子
5…窒化アルミニウムの皮膜
2…母相中のAl
3…結晶粒界
4…軟磁性金属粉末粒子
5…窒化アルミニウムの皮膜
主組成がFe−6.5%Si−2.0%Alの組成の原料粉末を水アトマイズ法にて作製した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を70μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下1100℃で高温熱処理を行い、軟磁性金属粉末を得た。熱処理時の1100℃の保持時間を表1に示す時間として、軟磁性金属粉末の金属粒子中のAl含有量を調整した。(実施例1−1、参考例1−2、1−3、比較例1−4〜1−5)
Fe−6.5%Si組成に対して表1に示す量のAlを添加した原料粉末を水アトマイズ法にて作製した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を70μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下1100℃で300minの高温熱処理を行い、軟磁性金属粉末を得た。(実施例1−7〜1−9、参考例1−10、比較例1−6、1−11)
実施例1−1、参考例1−2、1−3、実施例1−7〜1−9、参考例1−10、および比較例1−4〜1−6、1−11〜1−13について、軟磁性金属粉末の金属粒子内のAl含有量を定量した。熱処理を行った後の軟磁性金属粉末を冷間埋め込み樹脂にて固定したものを切断し、切断面を鏡面研磨した。次に、電子線マイクロアナライザ(EPMA)にて粒子内部のAl含有量を定量し、結果を表1に示した。
実施例1−1、参考例1−2、1−3、実施例1−7〜1−9、参考例1−10、および比較例1−4〜1−5、1−11〜1−12について軟磁性金属粉末を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行った。金属粒子の断面をランダムに100個観察し、各粒子のWadellの円形度を測定し、円形度が0.80以上である金属粒子の割合を算出した。結果を表1に示した。また、鏡面研磨した金属粒子断面をナイタール(エタノール+1%硝酸)でエッチングし、ランダムに選んだ100個の粒子の結晶粒界を観察し、一個の結晶粒からなる粒子の割合を算出した。結果を表1に示した。さらに、軟磁性金属粉末の酸素含有量を酸素分析装置(LECO社製TC600)にて定量した。結果を表1に示した。
実施例1−1、参考例1−2、1−3、実施例1−7〜1−9、参考例1−10、および比較例1−4〜1−6、1−11では、軟磁性金属粉末の金属粒子の表面に窒化アルミニウムが形成されていた。比較例1−13では、Alを全く含有していないため、焼結防止の役割を果たす皮膜が粒子表面に形成されず、粉末全体が焼結してしまった。比較例1−6では原料粉末にAlが含有されるものの、Al含有量が少ないため、粉末が一部焼結してしまい、粉末が得られなかった。金属粒子中のAlが0.1質量%未満に低下してしまうほどAl含有量が少ない場合には、粒子表面に形成される窒化アルミニウムの量が不足するためと考えられる。
粉末として得られた、実施例1−1、参考例1−2、1−3、実施例1−7〜1−9、参考例1−10、および比較例1−4〜1−5、1−11、1−12について、粉末の保磁力を測定した。粉末の保磁力は、φ6mmx5mmのプラスチックケースに20mgの粉末を入れ、パラフィンを融解、凝固させて固定したものを保磁力計(東北特殊鋼社製、K−HC1000型)にて測定した。測定磁界は150kA/mである。測定結果を表1に示した。
実施例1−1、参考例1−2、1−3、実施例1−7〜1−9、参考例1−10では、金属粒子内のAl含有量を0.1〜1質量%とすることで200A/m未満の低い保磁力が得られている。金属粒子中のAl含有量が少ないほど一個の結晶粒から成る金属粒子の割合が増加しており、金属粒子内のAlが窒化して表面に移動するとともに結晶粒成長が進むことがわかる。一方、比較例1−4〜1−5および比較例1−11では金属粒子内のAl含有量が1質量%を超えるため、250A/m以上の大きな保磁力しか得られない。
粉末として得られた、実施例1−1、参考例1−2、1−3、実施例1−7〜1−9、参考例1−10および比較例1−4〜1−5、1−11、1−12の軟磁性金属粉末を用いて圧粉コアを作製した。金属粉末100質量%に対し、シリコーン樹脂を2.4質量%加え、ニーダーで混練したものを、355μmのメッシュで整粒して顆粒を作製した。これを外径17.5mm、内径11.0mmのトロイダル形状の金型に充填し、成形圧980MPaで加圧し成形体を得た。コア重量は5gとした。得られた成形体をベルト炉にて750℃で30min、窒素雰囲気中で熱処理して圧粉コアとした。なお、実施例1−1、参考例1−2、1−3、実施例1−7〜1−9、参考例1−10および比較例1−4〜1−6、1−11の混練時にはアンモニア臭があり、少なくとも一部の窒化アルミニウムが空気中の水分と反応して水酸化アルミニウムとアンモニアに分解したものと考えられ、これを加熱することによって酸化アルミニウムが生成していると考えられる。
実施例1−1、参考例1−2、1−3、実施例1−7〜1−9、参考例1−10と比較例1−12のコアロスを比較すると、本発明の軟磁性金属粉末を用いた軟磁性金属圧粉コアは、コアの損失を20%以上低減できることがわかる。
Claims (7)
- SiとAlとを含む、Feを主成分とする軟磁性金属粉末であって、
前記軟磁性金属粉末において、Siの含有量が1〜15質量%であり、
前記軟磁性金属粉末の金属粒子内のAlの含有量が0.1〜1質量%であり、
前記軟磁性金属粉末の粒子表面に窒化アルミニウム皮膜を有することを特徴とする軟磁性金属粉末。 - 請求項1に記載された軟磁性金属粉末であって、
前記軟磁性金属粉末において、Crの含有量が1〜10質量%であることを特徴とする軟磁性金属粉末。 - 請求項1または2のいずれかに記載された軟磁性金属粉末であって、
前記軟磁性金属粉末を構成する金属粒子のうち、90%以上の金属粒子の断面の円形度が0.80以上であることを特徴とする軟磁性金属粉末。 - 請求項1〜3のいずれかに記載された軟磁性金属粉末であって、前記軟磁性金属粉末を構成する金属粒子の90%以上が一個の結晶粒からなることを特徴とする軟磁性金属粉末。
- 請求項1〜4のいずれかに記載された軟磁性金属粉末であって、金属粒子内に含まれる酸素量が500ppm以下であることを特徴とする軟磁性金属粉末。
- 請求項1〜5のいずれかに記載された軟磁性金属粉末であって、
前記軟磁性金属粉末中の金属粒子表面に酸化アルミニウム粒子および水酸化アルミニウム粒子の少なくとも一方を有することを特徴とする軟磁性金属粉末。 - 請求項1〜6のいずれかに記載された軟磁性金属粉末を用いて作製された軟磁性金属圧粉コア。
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