JP6468427B2 - コイル封入圧粉磁芯 - Google Patents

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本発明は軟磁性金属圧粉コアに関するものである。
近年、電気、電子機器の小型化が進み、小型や低背形状で大電流に対応した圧粉磁芯が要求されている。圧粉磁芯の材料としては、フェライトコア、積層電磁鋼板、軟磁性金属コアなどが用いられる。積層電磁鋼板は飽和磁束密度が高いものの、電源回路の駆動周波数が数十kHzを超えると鉄損が大きくなり、効率の低下を招いてしまう。フェライトコアは高周波損失が小さいものの、飽和磁束密度が小さく直流重畳特性に劣る。一方、軟磁性金属コアはフェライトコアに比較して飽和磁束密度が大きく、直流重畳特性が高磁界まで保たれる。よって、大電流に対応した圧粉磁芯を作製する際には、圧粉磁芯の材料として軟磁性金属コアを用いることが主流となってきている。また、更なる小型化、低背化のために、コイルと軟磁性金属粒子が一体的に加圧成形されたコイルが提案されている。このような構造のインダクタを本明細書では、「コイル封入圧粉磁芯」と呼ぶことにする。
軟磁性金属コアの高周波での損失は積層電磁鋼板よりも小さいが、フェライトコアほど低損失であるとはいえず、コイル封入圧粉磁芯の損失低減が望まれている。
軟磁性金属コアの損失を低減するために、コアを構成する軟磁性金属粉末の保磁力を低減することが知られている。コアの損失はヒステリシス損失と渦電流損失に分けられ、ヒステリシス損失は保磁力に依存するため、保磁力を低減することでコアの損失が低減できる。
軟磁性金属コアの保磁力を低減するために、結晶粒径が大きくなるような高い温度で軟磁性金属粉末を熱処理することが試みられている。例えば特許文献1では、鉄粉に対して、焼結防止のための無機物粉末を混合して高温で熱処理する技術が開示されている。特許文献2では、軟磁性合金粉末に対して、無機絶縁物を混合して粉末の固着を抑えながら高温で熱処理する技術が開示されている。
特開平9−260126号公報 特開2002−57020号公報
特許文献1や特許文献2の技術では、軟磁性金属粉末に焼結防止のために多量の無機物粉末を混合して高温で熱処理するが、軟磁性金属粒子の表面に均一に隙間なく無機物粉末で覆うことは不可能であるため、1000℃以上の熱処理により粉末が固着することは不可避である。固着した粉末を解すには解砕処理が必要となるが、これによって粉末に歪が入るため、結果得られる粉末の保磁力は十分に小さくならない。熱処理で固着しない処理温度は950℃が上限温度になるが、この温度では結晶粒の成長が不十分である。すなわち、従来の技術では、結晶粒径の増大に対する効果が不十分であり、したがって、得られる軟磁性金属粉末の保磁力は十分に低減されないので、これらを用いて作製される軟磁性金属コアの損失も大きくなるという問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するために案出されたものであって、損失の低いコイル封入圧粉磁芯を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に係るコイル封入圧粉磁芯は、Feを主成分とする軟磁性金属粉末と結合剤とを混合した圧粉体と、圧粉体に埋設されたコイルと、圧粉体の外側に設けたリード線と端子とで構成されていることを特徴とする。
本発明において軟磁性金属粉末のFe含有量は98質量%以上であり、前記軟磁性金属粉末の金属粒子内のB含有量が10〜150ppmであることが好ましい。
また本発明において、圧粉体内の結合剤内には窒化ホウ素が混在している、内部構造であることが好ましい。
上記の構成のコイル封入圧粉磁芯は、損失が極めて小さいものとなる。
請求項2に係るコイル封入圧粉磁芯は、請求項1に記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末を構成する粒子のうち90%以上の粒子の断面の円形度が0.80以上であることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末を用いたコイル封入圧粉磁芯は、より損失を低減することができる。
請求項3に係るコイル封入圧粉磁芯は、請求項1または2のいずれかに記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末を構成する粒子の90%以上が一個の結晶粒からなることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末を用いたコイル封入圧粉磁芯は、より損失を低減することができる。
請求項4に係るコイル封入圧粉磁芯は、請求項1〜3のいずれかに記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末の粒子内に含まれる酸素量が500ppm以下であることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末を用いたコイル封入圧粉磁芯は、より損失を低減することができる。
請求項5に係るコイル封入圧粉磁芯は、請求項1〜4のいずれかに記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末の粒子内に含まれる窒素の含有量が2000ppm以下であることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末を用いたコイル封入圧粉磁芯は、極めて小さい損失を有すると共に、透磁率を調整することができる。
請求項6に係るコイル封入圧粉磁芯は、請求項1〜5のいずれかに記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、圧粉体内の窒化ホウ素が45〜33000質量%であることを特徴とする。
上記の構成の軟磁性金属粉末を用いたコイル封入圧粉磁芯は、極めて小さい損失を有すると共に、透磁率を調整することができる。
本発明によれば、極めて小さい損失を有するコイル封入圧粉磁芯を得ることがでる。さらに、上記コイル封入圧粉磁芯を構成する軟磁性金属粉末を制御することで、より損失を低減することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明に係るコイル部品の好適な実施形態について説明する。
本実施形態に係るコイル部品は、例えば、ノート型パーソナルコンピューター等の電子機器のCPU周辺回路に適用され、所定の周波数(例えば数百Hz)の交流電流が印加されるものである。図1は、本実施形態に係るコイル封入圧粉磁芯Cの斜視図である。図1に示すように、コイル封入圧粉磁芯Cは、軟磁性金属圧粉コア10と、コイル導体20と、端子金具30、32とを備えている。
軟磁性金属圧粉コア10は、実装基板上に載置される実装面101と、実装面101に対向する対向面102と、実装面101に直行する側面104、105と、側面104、105に対向する側面108、109と、を有している。側面104と側面105との間は面取りがなされており、これによって側面104と側面105との間に側面106が形成されている。側面108と側面109との間は面取りがなされており、これによって側面108と側面109との間に側面110が形成されている。
軟磁性金属圧粉コア10の対向面102には、凹部103、107が形成されている、凹部103は、側面104と対向面102とによって形成される稜線から対向面102の中心に向かって形成されている。凹部107は、側面108と対向面102とによって形成される稜線から対向面102の中心に向かって形成される。
軟磁性金属圧粉コア10には、端子金具30、32が取り付けられている。端子金具30は、基部301と、接合部302と、一方の挟持部303と、他方の挟持部304とを有している。基部301は軟磁性金属圧粉コア10の側面104に沿って配置されている。接合部302が、基部301から延び、軟磁性金属圧粉コア10の側面106に沿って配置されている。接合部302には融合部302aが形成されており、この融合部302aにおいて後述する導体20の一方の引き出し部202と端子金具30とが溶接接合されている。挟持部303は、基部301から延び、軟磁性金属圧粉コア10の対向面102に形成された凹部103に沿って配置されている。挟持部304は、基部301から延び、実装面101に沿って配置されている。
端子金具32は、端子金具30と同様に、基部(図示せず)と、接合部(図示せず)と、一方の挟持部323と、他方の挟持部(図示せず)とを有している。端子金具32の基部は軟磁性圧粉コア10の側面108に沿って配置されている。端子金具32の接合部は、端子金具32の基部から延び、軟磁性圧粉コア10の側面110に沿って配置されている。接合部には融合部(図示せず)が形成されており、この融合部において後述する導体20の他方の引き出し部203と端子金具32とが溶接接合されている。端子金具32の一方の挟持部323は、端子金具32の基部から延び、軟磁性金属圧粉コア10の対向面102に形成された凹部107に沿って配置されている。端子金具32の他方の挟持部は、基部301から延び、実装面101に沿って配置されている。
軟磁性金属圧粉コア10には、導体20が埋設されている。導体20は、樹脂の皮膜で覆われた銅線からなる丸線であり、円形状の断面を有している。皮膜に用いる樹脂としては、エポキシ変性アクリル樹脂等が挙げられる。
図2(a)はコイル部25の平面図であり、図2(b)はコイル部25の断面図である。図1、2に示すように、コイル部25は空芯コイル部であって、導体20を径方向および軸方向に複数層となるように巻回することによって形成される。コイル部25は、軟磁性金属圧粉コア10の略中心に配置されると共に、軸方向(図2(b)に示すX方向)が側面104〜106、108〜110に対して平行になるよう配置されている。
図3はコイル部25の巻回状態を説明するための図である。図3に示すように、コイル部25は、導体20をアルファ巻きすることにより形成されている。そのため、コイル部25は巻き終わりを2つ有することになる。コイル部25の一対の巻き終わりは、コイル部25の外周部分であってコイル部25の軸方向での中央部にそれぞれ位置しており、一方の巻き終わりから導体20の一方の引き出し部202がコイル部25の径方向に引き出され、他方の巻き終わりから他方の引き出し部203がコイル部25の径方向に引き出されている。ここで、コイル部25の軸方向での中央部とは、コイル部25の軸方向での両端201a、201bを除く部分をいう。導体20の一方の引き出し部202および他方の引き出し部203のコイル部25からの引き出し位置は、コイル部25の軸方向での中央に完全に一致しなくても良く、また、軸方向において互いに多少ずれていても良い。ただし、ずれ量は導体20の直径の1.5倍以下であることが好ましい。本実施形態では、図2(b)に示すように、一方の引き出し部202と他方の引き出し部203とにおける引き出し位置のずれ量は、導体20の直径の0.5倍程度になっている。
図2、3に示すように、コイル部25の内部部分は、導体20を軸方向に複数ターン(本実施形態では3ターン)巻回することによって形成されている。また、コイル部25の外周部分は、導体20を軸方向におけるコイル部25のいったん201a側から軸方向におけるコイル部25の中央に向かって螺旋状に巻回し、かつ、軸方向におけるコイル部25の他端201b側から軸方向におけるコイル部25の中央に向かって螺旋状に巻回することによって形成されている。
導体20の一方の引き出し部202と他方の引き出し部203とは、それぞれ段差等のない直線状であって、軟磁性金属圧粉コア10実装面101および対向面102に対して略平行に延びている。一方の引き出し部202は軟磁性金属圧粉コア10の側面106から露出し、他方の引き出し部203は軟磁性金属圧粉コア10の側面110から露出している。導体10の一方の引き出し部202および他方の引き出し部203の露出位置は、側面106、110の高さ方向における中心部となっている。
軟磁性金属圧粉コア10は、軟磁性金属粒子を加圧成形したものである。軟磁性金属粒子の詳細な説明は後述する。
軟磁性金属圧粉コア10は、軟磁性金属粒子に絶縁性を有する結合剤を添加、混合し、しかる後に所定の条件で加圧することにより作製される。そのために、軟磁性金属圧粉コア10において、軟磁性金属粒子は結合剤でコーティングされる。また、結合剤を添加した軟磁性金属粒子を乾燥した後、さらに潤滑剤を添加、混合することが好ましい。
軟磁性金属圧粉コア10を構成する軟磁性金属粒子は、結合剤によってその表面がコーティングされる。結合剤は、必要とされる圧粉磁芯の特性に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、各種有機高分子樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、水ガラス等を結合剤として用いることができ、さらにこれらの樹脂と無機物を組み合わせて使用してもよい。必要とされる圧粉磁芯の特性に応じて結合剤の添加量は異なるが、1〜10質量%程度を添加することができる。結合剤の添加量が10質量%を超えると透磁率が低下し、損失が大きくなる傾向にある。一方で、結合剤の添加量が1質量%未満の場合には、絶縁不良の可能性がでてくる。結合剤の好ましい添加量は1.5〜5質量%である。
潤滑剤は、その添加量を0.1〜1質量%程度とすることができ、好ましい潤滑剤の添加量は0.2〜0.8質量%、さらに好ましい添加量は0.3〜0.8質量%である。潤滑剤の添加量が0.1質量%未満の場合には、成形後の脱型がしにくく、成形クラックが生じやすい。一方で、潤滑剤が1質量%を超えると、密度の低下を招き、透磁率が減少してしまう。潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸ストロンチウム等から適宜選択すればよい。スプリングバックが小さいという点から、潤滑剤としてステアリン酸アルミニウムを用いることが好ましい。
結合剤によってコーティングされた軟磁性金属粒子には所定量の架橋剤を添加することができる。架橋剤を添加することにより、軟磁性金属圧粉コア10の磁気特性を劣化することなく、強度を増加させることができる。架橋剤の好ましい添加量は、シリコーン樹脂等の結合剤に対して10〜40質量%である。架橋剤としては、有機チタン系のものを用いることができる。
次に、本実施形態に係るコイル封入圧粉磁芯の製造方法について、図3、図4を用いて説明する。
図3は、本実施形態によるコイル封入圧粉磁芯の製造方法を示すフローチャートである。なお、コイル部25を有する導体20はあらかじめ作製しておくものとする。
(秤量工程、混合工程、乾燥工程、解砕工程、潤滑剤添加工程)
軟磁性金属粒子と結合剤とをそれぞれ秤量する(ステップS201)。ここで、架橋剤を添加する場合は、ステップS201において秤量しておく。
秤量後、軟磁性金属粒子と結合剤とを混合する(ステップS202)。また、架橋剤を添加する場合は、ステップS202において軟磁性金属粒子と結合剤と架橋剤とを混合する。混合は加圧ニーダー等を用い、好ましくは室温で20〜60分間混合する。
得られた混合物を、好ましくは100〜300℃程度で20〜60分間乾燥する(ステップS203)。
乾燥後の混合物は造粒されて凝集体となっているため、乾燥した混合物を整粒して圧粉磁粉用の軟磁性金属粒子を得る(ステップS204)。整粒はメッシュ等を用いて解砕して得られる。
圧粉磁芯を成形する際に潤滑剤が必要な場合、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子に潤滑剤を添加する(ステップS205)。潤滑剤を添加した後、好ましくは10〜40分間混合する。混合はVミキサー等の混合気を用いることができる。
(成形工程)
成形工程で、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子と、埋設するコイル部25とを一体成形することでコイル封入圧粉磁芯を形成する(ステップS206)。ここで、図4を用いて成形工程の詳細を説明する。
図4(A)では、型枠5および下パンチ7により形成される成形型内に、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子を充填する。
図4(B)では、成形型内において、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子の上に導体20を載置する。ここで、導体20を型枠5に固定することが好ましい。これにより、成形中で導体20が動かなくなり安定するため、導体20の位置ばらつきが低減される。また、導体20の位置が所定位置から外れてしまうと、コイル封入圧粉磁芯の外表面にクラックが生じてしまうため、導体20を枠型5の一定位置に固定することでクラックを防ぐことができる。例えば、上部枠型5Aと下部枠型5Bとに分割した枠型5を用い、上部枠型5Aと下部枠型5Bとの間に導体20の端部を挟むことで固定することができる。さらに、導体20のコイル部25の径方向(図2(b)に示すY方向)が、下パンチ7および上パンチ6と平行になるように固定することが好ましい。これによって、加圧成形による導体20の歪みが小さくなり性能劣化を抑えることができる。
図4(C)では、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子を、導体1が埋まるように成形型内に再び充填する。
図4(D)では、上パンチ6を下降することにより、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子と導体20とが積層された方向に圧力を加えて加圧成形し、成形体が得られる。
加圧成形工程における成形条件は特に限定されず、軟磁性金属粒子の形状および寸法や、コイル封入圧粉磁芯の形状、寸法および密度等に応じて適宜決定すればよいが、通常は最大圧力を100〜2000MPa程度、好ましくは100〜1000MPa程度とし、最大圧力に保持する時間を0.1〜1分間程度とする。成形圧力が低すぎると十分な特性および機械的強度が得られにくい。一方で、成形圧力が高すぎると導体20に断線およびショートなどの不具合が生じてしまい、特性が得られなくなる恐れがある。
(キュア工程、防錆工程)
成形工程(ステップS206)で得られた成形体を150〜300℃の温度で15〜60分間程度の保持を行う(ステップS207)。これにより、成形体中の結合剤が硬化する。
加熱処理した後、防錆処理を行う(ステップS208)。防錆処理は、例えば、エポキシ樹脂等を成形体にスプレーコートすることによって行う。スプレーコートによる膜厚は15μm程度である。スプレーコートを施した後、120〜200℃で10〜60分間熱処理を行うことが望ましい。
(サンドブラスト工程)
上述の通り、本実施形態に係るコイル封入圧粉磁芯では、導体20の一部を融合部(302a、302b)としている。ところが、そもそも導体20に用いられる銅線にはエナメル等の絶縁皮膜が表面に形成されている。そして、キュア工程(ステップS207)では、この絶縁皮膜の直下に銅の酸化皮膜が形成され、さらに、防錆処理工程(ステップS208)で、絶縁皮膜が形成されるので、3層の皮膜が形成されている。この3層の皮膜は次工程のはんだ付けの際に、十分なはんだ溶接が行われない恐れがあるため、3層の皮膜を除去する必要がある。
融合部(302a、302b)に形成した3層の皮膜を除去する方法として、薬品によって腐食除去する方法、機械的に除去する方法またはサンドブラスト方法等が挙げられるが、本実施形態に係るコイル封入圧粉磁芯の融合部(302a、302b)の厚さは5mm以下(0.1〜0.3mm程度)と薄いことから、本実施形態ではサンドブラスト方法を採用する(ステップS209)。
(はんだ付け工程)
融合部302aと金具30とは、はんだ付けが施されて溶接される(ステップS
210)。その後、つぶし加工がなされ、凹部103に沿って折り曲げ加工が施される。同様に、融合部302bと金具32とは、はんだ付けが施されて溶接された後、つぶし加工がなされ、凹部107に沿って折り曲げ加工が施される。
次に、本実施形態のコイル封入圧粉磁芯の構成成分である軟磁性金属粉末について説明する。
コイル封入圧粉磁芯の損失を低減するには、前記コイル封入圧粉磁芯を構成する軟磁性金属粒子の保磁力を低減することが知られている。そして、軟磁性金属粒子内の結晶粒径が大きいほど、低保磁力であることが知られている。このような結晶粒径の大きい軟磁性金属粒子を作製する手法として、例えば、熱処理を行って結晶粒径を粒成長する方法がある。十分な大きさの結晶粒径を得るには、金属粒子の組成にもよるが、例えば、1200℃以上の高温で熱処理する必要がある。しかし、1000℃以上で熱処理を行うと、処理中に隣接する金属粒子同士が固着して焼結反応を起こす問題があった。
これに対して、例えば、高温熱処理時の焼結防止材を添加する手法があるが、この場合、混合する酸化物、窒化物の微粒子が金属粒子の表面を覆いきれずに不均一に分布されず、1000℃以上の高温の熱処理では金属粒子同士が固着して、粉末が得られないという問題があった。そこで、これを改善するために、高融点であり、高温で金属との反応性が極めて低い窒化ホウ素の皮膜を軟磁性金属粉末粒子の表面全体に被覆させる技術を検討し、本発明にいたった。
軟磁性金属粒子の表面全体に被覆することの問題点は、軟磁性金属粉末に対してその外側に窒化ホウ素(粉末や皮膜)を構成する手法であって、窒化ホウ素粉末を軟磁性金属粉末の表面に付着する方法や、窒化ホウ素粉末によって皮膜を形成する方法では、窒化ホウ素の分布が不均一になってしまうことは不可避である。そこで、軟磁性金属粉末の粒子外側に直接生成することで、均一かつ安定な焼結防止層を形成できると考え、検討を行った。
本発明では、Feを主成分とし、Bを含む原料粉末を準備し、この原料粉末に対して、窒素を含む非酸化雰囲気中で高温熱処理を行う。この高温熱処理により、前記原料粉末粒子中のBが粒子表面まで拡散し、粒子表面部で窒素と反応し、窒化ホウ素を形成する。高温熱処理後、粒子表面部に窒化ホウ素の薄片を有し、粒子内部(表面部の窒化ホウ素を除いた金属部分)に10〜150ppmのBを含有する構造の軟磁性金属粉末となる。
Feを主成分とする軟磁性金属材料の中では、Bは非晶質形成元素として知られており、アモルファス金属材料を作製する場合では、Feを含む軟磁性金属材料に対して3質量%以上の多量のBの添加が行われている。また、ナノ結晶組織の軟磁性金属材料を作製する場合では、製法上、一度アモルファス組織にする必要があることから、多量のBの添加が行われている。しかし、アモルファス金属材料やナノ結晶組織の軟磁性金属材料ではない、一般的な結晶質のFeを含む軟磁性金属材料に対してBを添加すると、FeB、FeBなどの結晶磁気異方性の大きい異相を形成して保磁力を増大させてしまうため、B添加は避けられていた。しかしながら、本発明では、結晶質のFeを含む軟磁性金属材料に対してBを添加することで、低保磁力の軟磁性金属粉末が得られることを見出した。
Feを含む原料粉末に対してBを添加して、窒素雰囲気中で熱処理することで、薄片状の窒化ホウ素が原料粉末の粒子表面全体に皮膜状に形成される。その窒化ホウ素薄片の皮膜の効果で高温熱処理が可能となり、さらに、原料粉末粒子内部のB含有量を10〜150ppmとすることで結晶粒成長が促進されて低保磁力が得られた。その理由として想定されることを述べる。
窒素雰囲気中で熱処理を行うと、原料粉末の表面近傍に存在するBが窒化されて窒化ホウ素薄片の皮膜が形成されるので、原料粉末の粒子表面には均一で隙間の無い皮膜が形成される。これによって、高温熱処理中に原料粉末粒子の表面同士の接触を防ぐ効果がある。窒化ホウ素は金属に対する化学的な安定性が高く、窒化ホウ素自体が難焼結性の物質であるため、高温熱処理を行っても窒化ホウ素同士が固着反応することはないので、原料粉末粒子同士が窒化ホウ素を介して固着することはない。さらに、窒化ホウ素は金属である原料粉末よりも密度が低いため、原料粉末粒子の表面部に窒化ホウ素薄片が形成されることで、隣接する原料粉末との表面距離を押し広げる効果がある。この作用でも、原料粉末の粒子同士の焼結を防ぐ効果がある。以上の効果により、従来では不可能であった1000℃以上の高温で熱処理を行うことが可能となり、保磁力を低減することができる。
原料粉末粒子内にBを含有させて低保磁力が得られる、別の効果について説明する。
原料粉末粒子の内部に存在するBは、熱処理中に原料粉末の粒子表面の方向へ拡散する。このBの拡散が、結晶粒界の原料粉末の粒子表面方向への移動を容易にするので、結晶粒成長を促進させる効果がある。しかし、原料粉末の粒子内部にFeBなどの金属間化合物がある場合は、FeBなどの金属間化合物は結晶粒界に偏在しているので、Bの粒子表面方向への拡散に伴った結晶粒界の移動が阻害されてしまい、結晶粒成長はあまり進まない。軟磁性金属粉末の粒子中のB含有量が10〜150ppmでは、この結晶粒成長の促進効果を確認することができることから、FeBなどの金属間化合物が形成しないごく微量のB含有量において顕著に生じる効果であると考えられる。粒子表面に移動したBは窒化され、新たに窒化ホウ素薄片を形成する。
以上から、原料粉末の粒子内にBを含有させることで、高温に耐える良好な焼結防止皮膜を形成する効果と、結晶粒成長を促進する効果との、二重の効果が得られるため、極めて低保磁力な軟磁性金属粉末を得ることが可能となる。
(本実施形態の軟磁性金属粉末の特徴について)
本実施形態の軟磁性金属粉末は、Bを含む、Feを主成分とする軟磁性金属粉末であって、軟磁性金属粉末の粒子内のB含有量が10〜150ppmであり、軟磁性金属の粒子表面に薄片状の窒化ホウ素を有する。軟磁性金属粉末粒子のB含有量を10〜150ppmとすることによって、保磁力が十分に小さくなる。150ppm以上のBが金属粒子中に存在すると、FeBなどの結晶磁気異方性が大きい強磁性相を形成することと、結晶粒成長を阻害するため、保磁力増大の原因となる。軟磁性金属粉末粒子の母相のbcc相に対して数ppm程度のBは固溶することと、粒子内のB濃度が低くなると拡散速度が低下することなどから、軟磁性金属粉末粒子内のBを10ppm以下とするのは困難である。
軟磁性金属粉末の粒子内のB含有量は、ICP発光分光分析法(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)を用いて定量することができる。このとき、軟磁性金属粉末の表面に付着した窒化ホウ素を完全に取り除くことで、正確に粒内のB量を定量することができる。そこで、B含有量を測定する場合、ボールミルなどを用いて軟磁性金属粉末表面に付着した窒化ホウ素を削り取る、または、酸で軟磁性金属粉末の表面を僅かに溶かすことで粉末表面に付着した窒化ホウ素を遊離させた後に、洗い流すことで窒化ホウ素を軟磁性金属粉末から分離し、残った軟磁性金属粉末をICPにて定量する。
本実施形態の軟磁性金属粉末は、軟磁性金属粉末を構成する粒子のうち、90%以上の粒子の断面の円形度が0.80以上とすることで、さらに保磁力が小さい軟磁性金属粉末を得ることができる。得られた軟磁性金属粉末を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨することで、粒子の断面形状を観察することができる。このように準備された粒子の断面を少なくともランダムに20個、好ましくは100個以上観察し、各粒子の円形度を求める。円形度の一例としてはWadellの円形度を用いることができ、粒子断面に外接する円の直径に対する粒子断面の投影面積に等しい円の直径の比で定義される。真円の場合にはWadellの円形度は1となり、1に近いほど真円度が高く、0.80以上であれば外観状ほぼ真球とみなすことができる。観察には光学顕微鏡やSEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)を用い、円形度の算出には画像解析を用いることができる。
本実施形態の軟磁性金属粉末は、軟磁性金属粉末を構成する粒子の90%以上が一個の結晶粒からなる軟磁性金属粉末とすることで、さらに保磁力が小さい軟磁性金属粉末を得ることができる。1000℃を超える高温熱処理を行うことで、軟磁性金属粉末を構成する粒子の90%以上が一個の結晶粒からなる軟磁性金属粉末とすることができる。得られた軟磁性金属粉末を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨した後、ナイタール(エタノール+1%硝酸)でエッチングすることで、結晶粒界を観察することができる。このように準備された粒子の断面を少なくともランダムに20個、好ましくは100個以上観察し、結晶粒界が観察されない粒子の数を1個の結晶粒からなる粒子としてカウントすると、観察した粒子の90%以上が1個の結晶粒からなる。一部には熱処理による粒成長が不完全な粒子が存在することから、全ての粒子が1個の結晶粒からなることはない。観察には光学顕微鏡やSEMを用いることができる。
本実施形態の軟磁性金属粉末は、粒子内に含まれる酸素量を500ppm以下とすることで、さらに保磁力が小さい軟磁性金属粉末を得ることができる。還元雰囲気中で熱処理を行うことで粒子内に含まれる酸素量を500ppm以下とすることができる。
本実施形態の軟磁性金属粉末は、粒子内に含まれる窒素量を2000ppm以下とすることで、さらに保磁力が小さい軟磁性金属粉末を得ることができる。窒素雰囲気中で熱処理を行うと粒子内のBと反応するので、窒素は粒子内に侵入しないが、過剰に窒化処理を行うと粒子内にFeNなどの異相が生成して特性劣化が生じるため、窒素量は2000ppm以下とする。
本実施形態の軟磁性金属粉末の平均粒径は、1〜200μmであることが好ましい。平均粒径が1μm未満であると、軟磁性金属圧粉コアの透磁率が低下する。一方、平均粒径が200μmを超えると、軟磁性金属圧粉コアの粒内渦電流損失が増大してしまう。
(原料粉末について)
軟磁性金属粉末の原料粉末の作製方法は特に制限されないが、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、鋳造粉砕法などの方法を用いることができる。ガスアトマイズ法で製造された原料粉末を用いると、軟磁性金属粉末を構成する粒子の90%以上の粒子の断面の円形度が0.80以上である軟磁性金属粉末を得ることが容易となり、好ましい。
原料粉末は、Feを主成分とするFe合金からなる金属粉末であって、Bを含む。原料粉末のB含有量は0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であるとB含有量が少なすぎて、均一で隙間がない窒化ホウ素皮膜を形成できなくなり、高温熱処理を行ったときに粒子同士が焼結してしまうためである。原料粉末のB含有量が多いほど、軟磁性金属粉末粒子内のB含有量を150ppm以下にするための熱処理の負荷が大きくなるため、2.0質量%以下とする。
(熱処理について)
Bを含有した原料粉末に対して窒素を含む非酸化雰囲気中で高温熱処理を行う。この熱処理により歪が開放され、結晶粒径が増大する。十分に低い保磁力を得るために、熱処理は、窒素を含む非酸化雰囲気中で、昇温速度は5℃/min以下、温度は1000〜1500℃、保持時間は30〜600minとする。この熱処理を行うことで、雰囲気中の窒素と原料粉末中のBが反応して、窒化ホウ素の薄片の皮膜を粒子表面に形成するとともに、原料粉末粒子の結晶粒を粒成長させる。この熱処理を行うことで得られた軟磁性金属粉末は、軟磁性金属粉末を構成する粒子の95%以上が一個の結晶粒からなる、つまり、低保磁力化には理想的である単結晶粒子の状態になる。熱処理温度が1000℃に満たない場合には原料粉末中のBの窒化反応が不十分となり、FeBなどの強磁性相が残留して保磁力が十分に低くならない。さらに、原料粉末の結晶粒成長が不十分となる。熱処理温度が1500℃を超えると、窒化が速やかに進行して反応が完了するとともに、結晶粒成長も速やかに進行して単結晶化するので、温度をそれ以上上げても効果がない。高温熱処理は、窒素を含む非酸化性雰囲気で行う。非酸化性雰囲気で熱処理を行うのは軟磁性金属粉末の酸化を防ぐためである。昇温速度が速すぎると、十分な量の窒化ホウ素が生成される前に原料粉末粒子が焼結する温度に到達し、原料粉末が焼結してしまうため、昇温速度は5℃/min以下とする。
原料粉末は、るつぼや匣鉢といった容器に装填される。容器の材質は1500℃の高温で変形しないこと、また、金属と反応しないことが必要であり、一例としてアルミナを使用することができる。熱処理炉はプッシャー炉やローラーハース炉などの連続炉、箱型炉、あるいは、管状炉、真空炉などのバッチ炉を用いることができる。
(軟磁性金属圧粉コアについて)
本実施形態で得られた軟磁性金属粉末は低い保磁力を示すことから、これを軟磁性金属圧粉コアに用いた場合には損失が小さくなる。よって、コイル導体と一体化したコイル封入圧粉磁芯としても損失が小さくなる。
本実施形態の軟磁性金属粉末を用いて軟磁性圧粉コアを作製する際、軟磁性金属粉末の表面に皮膜された窒化ホウ素薄片の一部が脱落する。これによってコイル封入圧粉磁芯としての性能に問題は生じないが、絶縁性を有する窒化ホウ素薄片が結合剤の中に拡散されることで、結合剤の絶縁性がより向上するため、軟磁性金属コアの特性向上に寄与する。また、焼結防止剤を粒子外側から付着する方法と異なり、軟磁性金属粉末の粒子表面から生成した窒化ホウ素薄片は粒子表面と強く結合しているため、軟磁性金属コアを作製する際に軟磁性金属粒子の表面から金属面が露出することがない。よって、隣接する軟磁性金属粒子同士の間に絶縁部が形成できるので、軟磁性金属コアの直流重畳特性が向上する。
本実施形態のコイル封入圧粉磁芯に含まれる窒化ホウ素は、45〜33000ppmであることが好ましい。窒化ホウ素が33000ppmを超えると樹脂の結着力が低下して成形体強度が下がり、割れ欠けが生じやすくなる。また、ボールミルなどを用いて軟磁性金属粉末表面に付着した窒化ホウ素を削り取ることができるが、45ppm未満にするためには膨大な時間を必要となりコスト高になることと、削り取ることで生じる歪によって保磁力が増大することから、45ppmを下限とする。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
<実施例1―1〜6、比較例1−1>
アトマイズ法で作製した表1に示すそれぞれの原料粉末を準備した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を75μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下で60minの高温熱処理を行った。得られた軟磁性金属粉末の金属粒子内のB含有量はICPを用いて定量した。また、平均粒径はレーザー回折式粒度測定装置(HELOS、JEOL社製)により測定した数値である。
Figure 0006468427
<比較例1−2〜5>
アトマイズ法で作製した表1に示すそれぞれの原料粉末を準備した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を75μmとした。この粉末に、表1に示すように、焼結防止剤を1.5質量%添加した後にVミキサーで30分間混合した。次に、原料粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下で60minの高温熱処理を行った。なお、焼結防止剤は平均粒径1μmの窒化ホウ素粉末を用いた。
<比較例1−6>
アトマイズ法で作製した表1に示す原料粉末を準備した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を75μmとした。原料粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下1300℃で60minの高温熱処理を行った。
<比較例1−7>
アトマイズ法で作製した表1に示す原料粉末を準備した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を75μmとした。
表1に示すそれぞれ軟磁性金属粉末について、窒化ホウ素薄片の減量処理を行うことができる。窒化ホウ素薄片の減量処理は、軟磁性金属粉末をポリビンに入れ、3mm径のジルコニアボールとエタノールを加えて、ボールミルで5〜1200min処理して粒子表面の窒化ホウ素を削り取り、ポリビンから粉末を取り出して、粒子表面から剥がれた窒化ホウ素をエタノールで洗い流す、という処理とした。窒化ホウ素薄片を減量することで、コイル封入圧粉磁芯の特性を任意に調整することができるので、有効である。
表1に示すそれぞれの軟磁性金属粉末100質量%に対し、シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコーン社製SR2414LV)を2.4質量%加え、これらを加圧ニーダーで30min混合した後、大気中において110℃で30min乾燥した。乾燥した圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子を355μmのメッシュで整粒を行い、続いて、0.2質量%のステアリン酸アルミニウム(堺化学工業社製SA−1000)を添加してVミキサーにより15min混合した。これを、図4に示す手順により成形を行い、100mm角、高さ60mmの成形体を作製した。成形圧は980MPaで成形を行った。なお、コイルは7mm径の円形状の銅線を3巻回したものを用いた。得られた成形体はベルト炉にてキュアを行った。キュア条件は、160℃で30min、窒素雰囲気中とした。得られたコイル封入圧粉磁芯について、透磁率、損失とインダクタンスを評価した。透磁率と損失はLCRメーター(アジデントテクノロジー社製4285A)を用いて周波数10kHz,測定磁束密度100mTの条件で測定した。インダクタンスはLCRメーターを用いて計測した。結果を表1に示す。なお、表1のL0は直流電流を重畳しない状態のインダクタンス、L15は15Aの直流電流を重畳した状態のインダクタンスを示す。
表1から、実施例1〜6のように、Bを添加した原料粉末を1000℃以上の温度で熱処理した場合、軟磁性金属粉末のB量は150ppm以下であり、比較例1−7に比べて十分に小さい保磁力であった。
比較例1−1は、実施例1と同じBを添加した原料粉末を用いたが、熱処理温度が低いために軟磁性金属粉末の粒子内の結晶粒径が大きくならず、十分な保磁力が得られなかった。
比較例1−2〜5は、焼結防止剤を軟磁性金属粉末の粒子表面に付着した方法で行ったが、隣接するいくつかの粒子で固着が発生したため、解砕が必要となり、保磁力は実施例1〜6と比べて十分に小さくならなかった。
比較例1−6は、焼結防止剤またはBの添加を行っていないため、熱処理後の軟磁性金属粉末は粉体全体が焼結され、粉体を得ることができなかった。
比較例1−7は、熱処理を行っていないため保磁力が大きい。
表1から、実施例1−1〜6の損失は比較例1−7に比べて十分に低い。同様に、実施例1−1〜6は透磁率が高く、直流重畳特性が優れることがわかる。また、比較例1−1〜6の損失と比べても、実施例1−1〜6の損失は十分に低いことがわかる。
次に、実施例1−6のコイル封入圧粉磁芯について、冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行った。その後、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて組織観察と、EPMA(Electron Prove Micro Analyzer)による元素マッピングを行った。図6に(a)SEM像、(b)窒素と(c)Bのマッピングデータを示す。
マッピングデータから、軟磁性金属粉末と空孔とは異なる部位から窒素とBが強く検出され、画像解析から窒素とBの両方が検出された部分は窒化ホウ素と判断した。図6から、軟磁性金属粒子の部位には窒素とBが検出されていない。よって、結合剤に窒化ホウ素が混在していることがわかる。表1の、圧粉体内の窒化ホウ素量はEPMAで検出した値から算出した。
実施例1−1〜5のコイル封入圧粉磁芯についても同様な評価を行ったところ、いずれも結合剤に窒化ホウ素が混在していることが確認できた。比較例2−7のコイル封入圧粉磁芯についても同様な評価を行ったところ、結合剤には窒化ホウ素が確認できなかった。
<実施例2−1〜6>
続いて、表2に示すそれぞれのコイル封入圧粉磁芯を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行った。粒子の断面をランダムに100個観察し、各粒子のWadellの円形度を測定し、円形度が0.80以上である粒子の割合を算出した。結果を表2に示す。
さらに、鏡面研磨した粒子断面をナイタール(エタノール+1%硝酸)でエッチングした後、ランダムに選んだ100個の粒子の結晶粒界を観察し、一個の結晶粒からなる粒子の割合を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0006468427
表2の結果より、粒子の断面の円形度が0.80以上である粒子の割合が90%以上であると、また、軟磁性金属粉末を構成する粒子の90%以上が一個の結晶粒からなると、コイル封入圧粉磁芯の損失が小さくなる。これは、コイル封入圧粉磁芯を構成する、軟磁性金属粉末の保磁力が十分に小さいことによる。
<実施例3−1〜4、比較例3−1〜4>
熱処理時間を変更した以外は実施例1−1と同様にして、軟磁性金属粉末を作製した。熱処理温度は1300℃で行った。得られた軟磁性金属粉末について、B含有量と保磁力を測定した。次に、実施例1−1と同様にしてコイル封入圧粉磁芯を作製した。得られたコイル封入圧粉磁芯について、透磁率と損失を評価した。さらに、コイル封入圧粉磁芯を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行い、円形度が0.80以上である粒子の割合と、一個の結晶粒からなる粒子の割合の算出を行った。結果を表3に示す。
Figure 0006468427
表3より、熱処理時間が30minより短いとBの拡散が不十分となり、軟磁性金属粉末の粒子内のBが粒子表面まで到達できずに残存してしまう。また、粒子内の結晶成長が不十分のため、軟磁性金属粉末の保磁力が下がらない。よって、コイル封入圧粉磁芯の損失が下がらない。熱処理時間が30min以上になると軟磁性金属粉末中のB含有量が150ppm以下となり、十分に低い保磁力であった。また、この軟磁性金属粉末を用いて作製したコイル封入圧粉磁芯は、十分に低い損失が得られた。このコイル封入圧粉磁芯は、円形度が0.80以上である粒子の割合が90%以上で、かつ、一個の結晶粒からなる粒子の割合が90%以上で、構成していることが観察された。
<実施例4−1〜4、比較例4−1>
原料粉末へのB添加量を変更した以外は実施例3−1と同様にして軟磁性金属粉末を作製した。得られた軟磁性金属粉末について、B含有量と保磁力を測定した。次に、実施例1−1と同様にしてコイル封入圧粉磁芯を作製した。得られたコイル封入圧粉磁芯について、透磁率と損失を評価した。さらに、コイル封入圧粉磁芯を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行い、円形度が0.80以上である粒子の割合と、一個の結晶粒からなる粒子の割合の算出を行った。結果を表4に示す。
Figure 0006468427
表4より、Bを過剰に添加すると粒子内の結晶粒成長が不十分となり、軟磁性金属粉末の保磁力が下がらない。B含有量が150ppm以下になると粒子内の結晶が十分に粒成長するため、十分に低い保磁力であった。また、この軟磁性金属粉末を用いて作製したコイル封入圧粉磁芯は、十分に低い損失が得られた。このコイル封入圧粉磁芯は、円形度が0.80以上である粒子の割合が90%以上で、かつ、一個の結晶粒からなる粒子の割合が90%以上で、構成していることが観察された。
<実施例5−1〜6>
実施例3−1と同様にして軟磁性金属粉末を作製したが、熱処理の窒素雰囲気を調整することで、酸素量と窒素量を調整した。得られた軟磁性金属粉末を用いて、実施例1−1と同様にしてコイル封入圧粉磁芯を作製した。得られたコイル封入圧粉磁芯について、透磁率と損失を評価した。さらに、コイル封入圧粉磁芯を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行い、円形度が0.80以上である粒子の割合と、一個の結晶粒からなる粒子の割合の算出を行った。結果を表5に示す。なお、酸素量と窒素量は酸素窒素分析装置(LECO社製、TC600)を用いて定量した。
Figure 0006468427
表5より、酸素量が500ppm以下で、窒素量が2000ppm以下である軟磁性金属粉末は、保磁力が十分に低く、この軟磁性金属粉末を用いたコイル封入圧粉磁芯の損失も低い。さらに、これらのコイル封入圧粉磁芯は、円形度が0.80以上である粒子の割合が90%以上で、かつ、一個の結晶粒からなる粒子の割合が90%以上で、構成していることが観察された。酸素量が500ppmを超過したり、あるいは、窒素量が2000ppmを超過しても、軟磁性金属粉末の保磁力は低下するが、その効果は小さい。
以上説明した通り、本発明によれば極めて低い損失のコイル封入圧粉磁芯を得ることができる。よって、高効率化を実現できるので、電源回路などの電気・磁気デバイス等に広く且つ有効に利用可能である。
本実施形態におけるコイル封入圧粉磁芯の斜視図である。 図1に示すコイル封入圧粉磁芯が備えるコイルの平面図と断面図である。 図2に示すコイルの巻線状態を説明するための図である。 本実施形態におけるコイル封入圧粉磁芯の製造工程を示す工程図である。 本実施形態におけるコイル封入圧粉磁芯の成形工程を示す図である。 本実施形態におけるコイル封入圧粉磁芯の切断面のSEM像と元素マッピングデータである。
C…コイル封入圧粉磁芯、5…型枠、6…上パンチ、7…下パンチ、10…成形体、11…下部コア、12…上部コア、20…導体、101…実装面、102…対向面、104〜106、108〜110…側面、25…コイル部、202…一方の引き出し部、203…他方の引き出し部、

Claims (5)

  1. Feを主成分とする軟磁性金属粉末と結合剤を混合して加圧した圧粉体と、周囲が絶縁被覆された導体が巻回された、前記圧粉体に埋設されたコイルと、前記コイルから前記圧粉体の外側にそれぞれ引き出される一対のリード線と、 前記圧粉体の外側において前記リード線と接続される端子金具と、を備え、前記軟磁性金属粉末のFe含有量は98質量%以上であり、前記軟磁性金属粉末の金属粒子内のB含有量が10〜150ppmであり、前記圧粉体内の結合剤内には窒化ホウ素が混在する内部構造であり、前記軟磁性金属粉末を構成する粒子のうち、90%以上の粒子の断面の円形度が0.80以上である、ことを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
  2. 請求項に記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末を構成する粒子の90%以上が一個の結晶粒からなることを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
  3. 請求項1または2に記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末の粒子内に含まれる酸素量が500ppm以下であることを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末の粒子内に含まれる窒素量が2000ppm以下であることを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、圧粉体内の窒化ホウ素が45〜33000ppmであることを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
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