以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態によるガス警報器100の構成について説明する。
図1に示す第1実施形態によるガス警報器100は、燃料ガス(都市ガス)に主成分として含まれるメタンガスを検出するとともに、警報を出力することによって、ガス漏れをユーザに対して報知するガス警報器である。このガス警報器100は、ガス検出部1と、制御部2と、記憶部3と、出力部4とを備えている。出力部4は、スピーカ4aおよびランプ4bを含んでいる。なお、制御部2および出力部4は、それぞれ、本発明の「補正手段」および「警報手段」の一例である。
制御部2は、CPUからなり、記憶部3に記憶された動作プログラムを実行することにより、ガス警報器100全体を制御するように構成されている。また、制御部2は、約30秒毎に、ガス検出部1から計測出力値(電圧値)を取得するとともに、計測出力値が警報しきい値に達したと判断した場合(警報時)に、警報を出力する制御(警報出力制御)を行うように構成されている。なお、制御部2は、警報時に、メタンガスが所定の濃度を超えたことを報知する警報を出力部4から出力させるように構成されている。具体的には、制御部2は、警報時において、出力部4のスピーカ4aから所定のブザー音を出力させるとともに、出力部4のランプ4bにおいて所定の色のランプを点灯させることによって、ユーザに対して警報を報知するように構成されている。なお、警報時に、制御部2は、スピーカ4aから、所定のブザー音のほか、各種の音声メッセージを出力させるように構成してもよい。
記憶部3には、制御部2を駆動させるための動作プログラムが記憶されている。さらに、記憶部3は、後述する基準出力値および警報しきい値の更新に関する制御処理の際に、一時的に情報が記憶されるように構成されている。
ガス検出部1は、半導体表面でのメタンガスの吸着に応じて電気伝導度が変化することを利用して、メタンガス濃度を検出する半導体式ガス検知素子から構成されている。このガス検出部1は、制御部2の制御により、約0.1秒だけ約500℃に加熱されるように構成されており、制御部2は、この際のガス検出部1からの出力電圧を計測出力値として取得するように構成されている。なお、ガス検出部1に、メタンガスを検出するガスセンサ以外に、COガスやプロパンガスなどを検出するガスセンサを設けてもよい。また、ガス検出部1を、複数のガスの検出が可能な半導体式ガス検知素子から構成することによって、メタンガスとメタンガス以外のガスとの検出を行うように構成してもよい。
また、ガス検出部1は、図2に示すような出力特性を有している。つまり、ガス検出部1は、メタンガス濃度が大きくなるのに伴い、半導体の電気伝導度が対数関数的に大きくなるように構成されていることによって、ガス検出部1から出力される計測出力値(電圧値)が対数関数的に増加するような出力特性を有している。なお、「メタンガス濃度が1ppmである」とは、空気1立方メートル(1m3)あたりのメタンガスの体積が1×10−6m3であることを意味する。
ここで、ガス警報器100では、工場出荷時などの初期設定時に、メタンガスが存在しない状態(メタンガス濃度が略0ppm)での計測出力値が初期出力値として設定されている。また、ガス警報器100では、初期設定時に、警報が出力されるメタンガス濃度の下限値(約3000ppm)のメタンガスを含む空気雰囲気にガス警報器100が置かれるとともに、その際の計測出力値が初期警報しきい値として設定されている。なお、第1実施形態のガス警報器100では、初期出力値が0mVになるとともに、初期警報しきい値が100mVになるように設定されている。
また、ガス警報器100が配置される環境には、メタンガス以外に、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)ガスが存在する場合がある。そして、VOCガスのうち、有機シロキサンやハロゲン系ガスなどのある種のVOCガスにガス検出部1が長期間晒された場合には、VOCガスやVOCガスの分解生成物がガス検出部1の表面に吸着または固着してしまう。そして、吸着または固着したVOCガスなどに起因して、メタンガス濃度に対するガス検出部1の計測出力値が上昇または低下してしまう。また、ガス検出部1が高湿雰囲気下に長期間晒された場合にも、水分がガス検出部1に吸着することに起因して、メタンガス濃度に対するガス検出部1の計測出力値が低下してしまう。この結果、ガス警報器100の検出精度が低下してしまう。
たとえば、図2に一点鎖線で示す場合のように、有機シロキサンがガス検出部1に吸着または固着することによりメタンガス濃度に対するガス検出部1の計測出力値が初期設定時と比べて相対的に上昇することによって、基準出力値が初期出力値よりも上昇した場合には、初期警報しきい値である100mVに対応するメタンガス濃度は約2200ppmになり、警報が出力されるメタンガス濃度の下限値(約3000ppm)よりも小さくなってしまう。この結果、ガス警報器100において、本来警報を出力すべきでないメタンガス濃度で警報(誤報)が出力されてしまう。
一方、図2に破線で示す場合のように、ハロゲン系ガスや水分がガス検出部1に吸着または固着することによりメタンガス濃度に対するガス検出部1の計測出力値が初期設定時と比べて相対的に低下することによって、基準出力値が初期出力値よりも低下した場合には、初期警報しきい値である100mVに対応するメタンガス濃度は約3800ppmになり、警報が出力されるメタンガス濃度の下限値(約3000ppm)よりも大きくなってしまう。この結果、ガス警報器100において、本来警報を出力すべきであるメタンガス濃度であっても警報が出力されなくなってしまう。
そこで、第1実施形態では、制御部2は、計測出力値の増加傾向または減少傾向を判断するための基準となる基準出力値に対して、計測出力値が増加傾向または減少傾向(変化傾向)を示しているか否かを判断するとともに、計測出力値が変化傾向を示していると判断した場合に、基準出力値および警報しきい値の両方の補正を行うように構成されている。これにより、ガス検出部1の計測出力値が基準出力値に対して増加傾向を示している場合には、メタンガス濃度に対するガス検出部1の計測出力値が相対的に上昇していると考えられるため、基準出力値および警報しきい値の両方を増加させるように補正を行うことによって、誤報が出力されにくくなる。また、ガス検出部1の計測出力値が基準出力値に対して減少傾向を示している場合には、メタンガス濃度に対するガス検出部1の計測出力値が相対的に上昇していると考えられるため、基準出力値および警報しきい値の両方を減少させるように補正を行うことによって、警報が出力されなくなるのが抑制される。この結果、警報が出力されるメタンガス濃度の下限値(約3000ppm)から離れたメタンガス濃度で警報が出力されるのを抑制することが可能である。
具体的な制御としては、制御部2は、3日間(72時間)の判断期間(所定の判断期間)において、1時間(計測間隔)毎に計測される計測出力値が基準出力値に対して増加または減少しているか否かを判断することによって、計測される計測出力値が基準出力値に対して増加または減少しているか否かの判断を72回(所定の判断回数)行うように構成されている。また、制御部2は、所定の判断回数(72回)に対して、計測出力値が基準出力値に対して7.5mV(所定の増加量)以上の増加量で増加していると判断した回数の割合が、60/72(約83%)(第1の割合)以上であるか否かを判断するように構成されている。そして、増加していると判断した回数の割合が60/72以上である場合に、制御部2は、計測出力値が増加傾向を示していると判断して、基準出力値および警報しきい値の両方に2.5mV(増加更新値)を加算することによって、基準出力値および警報しきい値の両方を増加させるように補正(上方更新)を行うように構成されている。
また、制御部2は、所定の判断回数(72回)に対して、計測出力値が基準出力値に対して7.5mV(所定の減少量)以上の減少量で減少していると判断した回数が、60/72(約83%)(第2の割合)以上であるか否かを判断するように構成されている。そして、減少していると判断した回数の割合が60/72以上である場合に、制御部2は、計測出力値が減少傾向を示していると判断して、基準出力値および警報しきい値の両方から2.5mV(減少更新値)を減算することによって、基準出力値および警報しきい値の両方を減少させるように補正(下方更新)を行うように構成されている。
さらに、第1実施形態では、制御部2は、初期出力値(0mV)に戻す側に基準出力値を変化させる補正を行う場合には、計測出力値が増加傾向を示していると判断する条件および計測出力値が減少傾向を示していると判断する条件を緩和した状態で、基準出力値および警報しきい値の両方の補正を行うように構成されている。
具体的な制御としては、制御部2は、初期出力値に戻す側に基準出力値を増加させる補正を行う場合には、2日間(48時間)に短縮された判断期間(緩和判断期間)において、1時間毎に計測される計測出力値が基準出力値に対して増加または減少しているか否かを判断することによって、計測される計測出力値が基準出力値に対して増加または減少しているか否かの判断を48回(緩和判断回数)行うように構成されている。また、制御部2は、緩和判断回数(48回)に対して、計測出力値が基準出力値に対して7.5mV以上の増加量で増加していると判断した回数の割合が、24/48(50%)(第1の緩和割合)以上であるか否かを判断するように構成されている。そして、増加していると判断した回数の割合が24/48以上である場合に、制御部2は、計測出力値が初期出力値に戻す側に増加傾向を示していると判断して、基準出力値および警報しきい値の両方に2.5mVを加算する補正を行うように構成されている。
また、制御部2は、初期出力値に戻す側に基準出力値を減少させる補正を行う場合には、緩和判断回数(48回)に対して、計測出力値が基準出力値に対して7.5mV以上の減少量で減少していると判断した回数が、24/48(50%)(第2の緩和割合)以上であるか否かを判断するように構成されている。そして、減少していると判断した回数の割合が24/48以上である場合に、制御部2は、計測出力値が初期出力値に戻す側に減少傾向を示していると判断して、基準出力値および警報しきい値の両方から2.5mVを減算する補正を行うように構成されている。
つまり、初期出力値(0mV)に戻す側に基準出力値を変化させる補正を行う場合には、判断期間が3日間から2日間に短縮されることにより、判断回数が72回から48回に少なくなる点と、増加傾向または減少傾向であると判断する際の割合が60/72(=約83%)から24/48(=50%)に小さくなる点との2点において判断条件が緩和されることによって、基準出力値および警報しきい値の補正が行われやすい状態になっている。
次に、図3および図4を参照して、第1実施形態によるガス警報器100の基準出力値および警報しきい値の更新に関する制御処理について説明する。なお、図3および図4のフロー図では、「基準出力値」を「基準値」とし、「計測出力値」を「計測値」とし、「警報しきい値」を「警報値」とし、「初期出力値」を「初期値」としてそれぞれ省略して記載している。また、制御部2は、基準出力値および警報しきい値の更新処理と並行して、約30秒毎にガス検出部1からの計測出力値を取得するとともに、警報しきい値に基づいて警報を出力するか否かを判断して必要に応じて警報を出力する警報出力制御を行うように構成されている。
まず、図3に示すように、ステップS1において、制御部2は、ガス検出部1を0.1秒だけ約500℃に加熱させて計測出力値を取得する。ステップS2では、取得した計測出力値が現在設定されている警報しきい値(または初期警報しきい値)以上であるか否かを判断し、計測出力値が警報しきい値未満である場合には、ステップS6に進む。計測出力値が警報しきい値以上である場合には、ステップS3において、制御部2は、メタンガスが所定の濃度を超えたことを報知する警報として、出力部4のスピーカ4aから所定のブザー音として出力させるとともに、出力部4のランプ4bにおいて所定の色のランプを点灯させる。
そして、ステップS4では、制御部2は、判断回数のカウントを0にすることによって、計測回数をリセットする。その後、ステップS5では、制御部2は、前回の計測出力値の取得から1時間(計測間隔)経過したか否かを判断するとともに、1時間経過するまでこの判断を継続する。そして、制御部2は、1時間経過したと判断した場合には、ステップS1に戻り、再度、計測出力値を取得する。
ステップS2において、計測出力値が警報しきい値未満である場合には、ステップS6において、制御部2は、判断回数に1を加算する。そして、ステップS7では、取得した計測出力値が現在設定されている基準出力値(または初期出力値)よりも大きいか否かを判断する。
計測出力値が基準出力値よりも大きい場合には、ステップS8において、制御部2は、計測出力値が現在の基準出力値に所定の増加量を加算した値(基準出力値+7.5mV)以上であるか否かを判断する。計測出力値が(基準出力値+7.5mV)以上である場合には、ステップS9においてカウントAに1を加算してステップS10に進み、制御部2により、図4に示す基準出力値および警報しきい値の補正処理が行われる。また、ステップS8において、計測出力値が(基準出力値+7.5mV)未満である場合には、カウントAに1を加算せずに、ステップS10に進む。この結果、1時間後毎に、計測出力値が基準出力値に対して所定の増加量以上の増加量で増加していると判断した回数(増加回数)が、カウントAとして計測される。
ステップS7において、計測出力値が基準出力値以下である場合には、ステップS11において、制御部2は、計測出力値が現在の基準出力値から所定の減少量を減算した値(基準出力値−7.5mV)以下であるか否かを判断する。計測出力値が(基準出力値−7.5mV)以下である場合には、ステップS12においてカウントBに1を加算して、ステップS10に進む。また、ステップS11において、計測出力値が(基準出力値−7.5mV)より大きい場合には、カウントBに1を加算せずに、ステップS10に進む。この結果、1時間後毎に、計測出力値が基準出力値に対して所定の減少量以上の減少量で減少していると判断した回数(減少回数)が、カウントBとして計測される。
ステップS10における基準出力値および警報しきい値の補正処理としては、図4に示すように、まず、ステップS21において、制御部2は、ステップS6(図3参照)で計測された判断回数が72回であるか否かを判断し、判断回数が72回でない場合には、ステップS29に進む。
判断回数が72回である場合には、ステップS22において、制御部2は、判断回数(72回)に対して、ステップS9(図3参照)で計測されたカウントA(増加回数)の割合が60/72(第1の割合)以上であるか否かを判断する。判断回数に対するカウントAの割合が60/72以上である場合には、制御部2は、計測出力値が増加傾向にあると判断して、ステップS23において、現在の基準出力値に2.5mV(増加更新値)を加算するとともに、ステップS24において、現在の警報しきい値に2.5mVを加算する。これにより、計測出力値が増加傾向である場合には、基準出力値および警報しきい値が共に上方に更新(補正)される。
そして、ステップS25では、制御部2は、計測回数をリセットする。これにより、3日間の判断期間(72回の判断回数)における基準出力値および警報しきい値の補正処理が終了して、図3のステップS5に進み、次回の判断期間に移行し、1時間経過後に再度計測出力値が取得される。この結果、次回の判断期間においては、制御部2により、上方に更新された補正後の基準出力値に基づいて、再度、計測出力値が増加傾向または減少傾向であるかが判断される。また、ステップS2の警報出力判断処理や基準出力値および警報しきい値の更新処理と並行して行われる警報出力制御において、上方に更新された補正後の警報しきい値(警報値)が用いられる。
ステップS22において、判断回数に対するカウントA(増加回数)の割合が60/72未満である場合には、ステップS26において、制御部2は、判断回数(72回)に対して、ステップS12(図3参照)で計測されたカウントB(減少回数)の割合が60/72(第2の割合)以上であるか否かを判断する。判断回数に対するカウントBの割合が60/72以上である場合には、制御部2は、計測出力値が減少傾向にあると判断して、ステップS27において、現在の基準出力値から2.5mV(減少更新値)を減算するとともに、ステップS28において、現在の警報しきい値から2.5mVを減算する。これにより、計測出力値が減少傾向である場合には、基準出力値および警報しきい値が共に下方に更新(補正)される。そして、ステップS25に進む。この結果、次回の判断期間においては、制御部2により、下方に更新された補正後の基準出力値に基づいて、再度、計測出力値が増加傾向または減少傾向であるかが判断される。また、ステップS2の警報出力判断処理や警報出力制御において、下方に更新された補正後の警報しきい値(警報値)が用いられる。
また、ステップS26において、判断回数に対するカウントB(減少回数)の割合が60/72未満である場合には、基準出力値および警報しきい値が共に補正されずに、ステップS25に進む。そして、次回の判断期間においては、制御部2により、前回の判断期間において用いられた基準出力値と同じ基準出力値に基づいて、再度、計測出力値が増加傾向または減少傾向であるかが判断される。また、ステップS2の警報出力判断処理や警報出力制御において、前回の判断期間において用いられた警報しきい値と同じ警報しきい値が用いられる。
上記ステップS21〜S24およびS26〜S28においては、通常の場合の補正処理として、計測出力値の変化傾向の判断条件が緩和されずに基準出力値および警報しきい値の補正処理が行われる。一方、以下のステップS29〜S36においては、初期出力値(0mV)に戻す側に基準出力値を変化させる補正を行う場合の補正処理として、判断条件が緩和されて基準出力値および警報しきい値の補正処理が行われる。
すなわち、ステップS21において、判断回数が72回でないと判断された場合には、ステップS29において、制御部2は、ステップS6で計測された判断回数が48回(緩和判断回数)であるか否かを判断する。判断回数が48回でない場合には、基準出力値および警報しきい値の補正処理が終了して、ステップS5に進み、1時間経過後に再度計測出力値が取得される。
ステップS29において、判断回数が48回である場合には、ステップS30において、制御部2は、基準出力値が初期出力値よりも小さいか否かを判断し、基準出力値が初期出力値以上である場合には、ステップS34に進む。基準出力値が初期出力値よりも小さい場合には、ステップS31に進み、制御部2は、緩和判断回数(48回)に対して、ステップS9で計測されたカウントA(増加回数)の割合が24/48(第1の緩和割合)以上であるか否かを判断する。緩和判断回数に対するカウントAの割合が24/48未満である場合には、制御部2により緩和された判断条件であっても計測出力値が増加傾向にないと判断されて、基準出力値および警報しきい値の補正処理が終了する。そして、ステップS5に進む。
また、緩和判断回数に対するカウントAの割合が24/48以上である場合には、制御部2は、計測出力値が初期出力値に戻す側に増加傾向にあると判断して、ステップS32において、現在の基準出力値に2.5mVを加算するとともに、ステップS33において、現在の警報しきい値に2.5mVを加算する。これにより、基準出力値を初期出力値に戻す側に大きくする場合で、かつ、制御部2により緩和された判断条件に基づいて計測出力値が増加傾向であると判断された場合には、基準出力値および警報しきい値が共に上方に更新(補正)される。そして、ステップS25において計測回数がリセットされることによって、2日間の緩和判断期間(48回の緩和判断回数)における基準出力値および警報しきい値の補正処理が終了して、ステップS5に進む。
ステップS30において、基準出力値が初期出力値以上である場合には、ステップS34において、制御部2は、緩和判断回数(48回)に対して、ステップS12で計測されたカウントB(減少回数)の割合が24/48(第2の緩和割合)以上であるか否かを判断する。緩和判断回数に対するカウントBの割合が24/48未満である場合には、制御部2により緩和された判断条件であっても計測出力値が減少傾向にないと判断されて、基準出力値および警報しきい値の補正処理が終了する。そして、ステップS5に進む。
緩和判断回数に対するカウントBの割合が24/48以上である場合には、制御部2は、計測出力値が初期出力値に戻す側に減少傾向にあると判断して、ステップS35において、現在の基準出力値から2.5mVを減算するとともに、ステップS36において、現在の警報しきい値から2.5mVを減算する。これにより、基準出力値を初期出力値に戻す側に小さくする場合で、かつ、制御部2により緩和された判断条件に基づいて計測出力値が減少傾向であると判断された場合には、基準出力値および警報しきい値が共に下方に更新(補正)される。そして、ステップS25に進む。
このように、ステップS29〜S36において、判断条件を緩和する場合の基準出力値および警報しきい値の補正が行われる。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、計測出力値が基準出力値に対して増加傾向を示している場合に、基準出力値および警報しきい値の両方を増加させるとともに、計測出力値が基準出力値に対して減少傾向を示している場合に、基準出力値および警報しきい値の両方を減少させるように補正を行う制御部2を設ける。これにより、計測出力値と、計測出力値の増加傾向または減少傾向(変化傾向)が反映された基準出力値とに基づいて、基準出力値および警報しきい値の補正が必要か否かが判断されるので、一時的な計測出力値の変動があったとしても、計測出力値が変化傾向を示さなければ、警報しきい値の補正が行われることはない。この結果、一時的な変動に起因して警報しきい値の補正の要否が左右されるのを抑制することができるので、計測出力値の一時的な変動による影響を小さくした状態で警報しきい値の補正を行うことができる。また、警報しきい値だけでなく、計測出力値の変化傾向を判断するための基準となる基準出力値も補正により変化(増減)させることによって、計測出力値の変化傾向が反映された基準出力値に基づいて、計測出力値の変化傾向を新たに判断することができる。これにより、計測出力値の変化傾向を正確に把握することができるので、計測出力値の変化傾向に基づく基準出力値および警報しきい値の両方の補正をより正確に行うことができる。これらの結果、計測出力値の一時的な変動による影響を小さくして警報しきい値の正確な補正を行うことができる。また、正確に補正された警報しきい値に基づいて適切に警報を出力することができる。なお、警報しきい値だけでなく基準出力値も変化(増減)させる補正を行うことは、計測対象のガス以外のガスや水分の影響により、計測出力値が変動しやすい半導体式ガス検知素子からなるガス検出部1において、特に有効である。
また、第1実施形態では、上記のように、制御部2を、3日(所定の判断期間)毎に計測出力値が基準出力値に対して増加傾向または減少傾向を示しているか否かを判断することによって、所定の判断期間単位で基準出力値および警報しきい値の補正を行うように構成する。これにより、所定の判断期間を設けずに、計測の都度計測出力値の変化傾向を判断する場合と異なり、一時的な計測出力値の変動によって計測出力値の変化傾向が判断されてしまうのを効果的に抑制することができる。これにより、計測出力値の一時的な変動による影響をより小さくすることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、制御部2を、3日(所定の判断期間)内で、計測出力値が基準出力値に対して増加または減少しているか否かを判断した所定の判断回数(72回)に対して、計測出力値が基準出力値に対して所定の増加量(7.5mV)以上の増加量で増加していると判断した回数の割合が第1の割合(60/72)以上である場合に、計測出力値が増加傾向を示していると判断して、基準出力値および警報しきい値の両方を増加させるように補正を行うように構成する。また、制御部2を、計測出力値が基準出力値に対して所定の減少量(7.5mV)以上の減少量で減少していると判断した回数が所定の判断回数に対して第2の割合(60/72)以上である場合に、計測出力値が減少傾向を示していると判断して、基準出力値および警報しきい値の両方を減少させるように補正を行うように構成する。これにより、所定の判断期間内で計測出力値が増加傾向または減少傾向を示していると容易に判断することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1の割合および第2の割合(60/72)に基づいて計測出力値の増加傾向および減少傾向をそれぞれ判断することによって、計測出力値にある程度の一時的な変動があったとしても、その一時的な変動を除いた計測出力値が第1の割合および第2の割合以上であれば、計測出力値が増加傾向および減少傾向であるとそれぞれ判断されるので、計測出力値の一時的な変動のみに起因して計測出力値が増加傾向および減少傾向であると判断されてしまうのをより確実に抑制することができる。この結果、より確実に計測出力値の一時的な変動による影響を小さくして警報しきい値の正確な補正を行うことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、制御部2を、初期出力値に戻す側に基準出力値を変化させる補正を行う場合には、計測出力値が増加傾向を示していると判断する条件および計測出力値が減少傾向を示していると判断する条件を緩和した状態で、基準出力値および警報しきい値の補正を行うように構成する。これにより、初期出力値に戻す側に基準出力値を変化させる補正を行う場合のような、基準出力値および警報しきい値の補正を行う必要性が高い場合において、基準出力値および警報しきい値の補正が行われやすくすることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、増加更新値および減少更新値(2.5mV)を、所定の増加量および所定の減少量(7.5mV)よりもそれぞれ小さくすることによって、基準出力値および警報しきい値の両方に対する補正を徐々に行うことができるので、計測出力値の変化傾向に緩やかに対応させることができる。
(第2実施形態)
次に、図1、図5および図6を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、初期出力値に戻す側に基準出力値を変化させる補正を行う場合に判断条件を緩和した第1実施形態とは異なり、計測出力値が初期出力値に対して所定の変化量以上変化した場合に判断条件を緩和する場合について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
図1に示すように、第2実施形態によるガス警報器200は、制御部202を備えている。なお、制御部202は、本発明の「補正手段」の一例である。
ここで、半導体式ガス検知素子から構成されるガス検出部1は、計測出力値が初期出力値に対して所定の変化量以上大きくなった場合に、ガス検出部1の計測出力値のみならず、ガス検出部1の検出感度(計測出力値の変化率)も上昇するような出力特性を有している。また、ガス検出部1は、計測出力値が初期出力値に対して所定の変化量以上小さくなった場合には、ガス検出部1の計測出力値のみならず、ガス検出部1の検出感度も低下するような出力特性を有している。
そこで、第2実施形態では、制御部202は、計測出力値が初期出力値に対して所定の変化量以上変化する場合には、計測出力値が増加傾向を示していると判断する条件および計測出力値が減少傾向を示していると判断する条件を緩和した状態で、基準出力値および警報しきい値の両方の補正を行うように構成されている。
具体的な制御としては、計測出力値が初期出力値に対して30mV(所定の変化量)以上50mV以下で大きく((初期出力値+30mV)≦計測出力値≦(初期出力値+50mV))、かつ、計測出力値が基準出力値に対して2.5mV(緩和増加量)以上の増加量で増加していると判断した回数の割合が、判断回数(72回)に対して36/72(50%)(第3の緩和割合)以上である場合には、制御部202は計測出力値が増加傾向を示していると判断するように構成されている。そして、制御部202は、計測出力値が増加傾向を示していると判断した場合には、基準出力値および警報しきい値の両方に2.5mVを加算することによって、基準出力値および警報しきい値の両方を増加させるように補正(上方更新)を行うように構成されている。
また、計測出力値が初期出力値に対して30mV(所定の変化量)以上50mV以下で小さく((初期出力値−50mV)≦計測出力値≦(初期出力値−30mV))、かつ、計測出力値が基準出力値に対して2.5mV(緩和減少量)以上の減少量で減少していると判断した回数の割合が、判断回数(72回)に対して36/72(50%)(第4の緩和割合)以上である場合には、制御部202は計測出力値が減少傾向を示していると判断するように構成されている。そして、制御部202は、計測出力値が減少傾向を示していると判断した場合には、基準出力値および警報しきい値の両方から2.5mVを減算することによって、基準出力値および警報しきい値の両方を減少させるように補正(下方更新)を行うように構成されている。
つまり、計測出力値が初期出力値に対して所定の変化量(30mV)以上変化した場合には、所定の増加量および所定の減少量が7.5mVから2.5mVに小さくなる点と、増加傾向または減少傾向であると判断する際の割合が60/72(=約83%)から36/72(=50%)に小さくなる点との2点において判断条件が緩和されることによって、基準出力値および警報しきい値の補正が行われやすい状態になっている。
また、第2実施形態では、制御部202は、計測出力値が初期出力値に対して故障変化量よりも大きく変化する場合には、ガス検出部1が異常であると判断して、故障警報を出力するように構成されている。
具体的な制御としては、制御部202は、計測出力値が初期出力値に対して故障変化量(50mV)よりも大きい(計測出力値>(初期出力値+50mV))と判断した回数の割合が、判断回数(72回)に対して36/72(50%)(第1の故障割合)以上であると判断した場合には、ガス検出部1が異常であると判断して、故障警報を出力するように構成されている。また、制御部202は、計測出力値が初期出力値に対して故障変化量よりも小さい(計測出力値<(初期出力値−50mV))と判断した回数の割合が、判断回数(72回)に対して36/72(50%)(第2の故障割合)以上であると判断した場合には、ガス検出部1が異常であると判断して、故障警報を出力するように構成されている。
なお、第2実施形態におけるガス警報器200のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。
次に、図5および図6を参照して、第2実施形態によるガス警報器200の基準出力値および警報しきい値の更新に関する制御処理について説明する。なお、図5および図6のフロー図では、「基準出力値」を「基準値」とし、「計測出力値」を「計測値」とし、「警報しきい値」を「警報値」としてそれぞれ省略して記載している。
まず、図5に示すように、ステップS31〜S37において、上記第1実施形態のステップS1〜S7(図3参照)と同様の処理が行われる。そして、ステップS37において、計測出力値が基準出力値よりも大きい場合には、ステップS38に進み、制御部202は、計測出力値が初期出力値に故障変化量(50mV)を加算した値(初期出力値+50mV)よりも大きいか否かを判断する。計測出力値が(初期出力値+50mV)よりも大きい場合には、ステップS39において、制御部202は、カウントa1に1を加算して、図6に示すステップS61に進み、基準出力値および警報しきい値の補正処理が行われる。この結果、1時間後毎に、計測出力値が初期出力値に故障変化量を加算した値よりも大きいと判断した回数が、カウントa1として計測される。
また、計測出力値が(初期出力値+50mV)以下の場合には、ステップS40において、制御部202は、計測出力値が初期出力値に所定の変化量(30mV)を加算した値以上((初期出力値+30mV)≦計測出力値≦(初期出力値+50mV))であるか否かを判断する。計測出力値が(初期出力値+30mV)≦計測出力値≦(初期出力値+50mV)を満たす場合には、ステップS41において、制御部202は、計測出力値が基準出力値に緩和増加量(2.5mV)を加算した値(基準出力値+2.5mV)以上であるか否かを判断する。計測出力値が(基準出力値+2.5mV)以上である場合には、ステップS42において、制御部202は、カウントa2に1を加算して、ステップS61に進む。また、計測出力値が(基準出力値+2.5mV)未満である場合には、カウントa2に1を加算せずに、ステップS61に進む。この結果、1時間後毎に、計測出力値が初期出力値に対して所定の変化量(30mV)以上で大きく、かつ、計測出力値が基準出力値に対して緩和増加量以上の増加量で増加していると判断した回数が、カウントa2として計測される。
また、計測出力値が(初期出力値+30mV)未満の場合には、ステップS43およびS44において、上記第1実施形態のステップS8およびS9(図3参照)と同様に、1時間後毎に、計測出力値が基準出力値に対して所定の増加量(7.5mV)以上の増加量で増加していると判断した回数が、カウントAとして計測されて、ステップS61に進む。
ステップS37において、計測出力値が基準出力値以下の場合には、図6に示すステップS45において、制御部202は、計測出力値が初期出力値から故障変化量(50mV)を減算した値(初期出力値−50mV)よりも小さいか否かを判断する。計測出力値が(初期出力値−50mV)よりも小さい場合には、ステップS46において、制御部202は、カウントb1に1を加算して、ステップS61に進む。この結果、1時間後毎に、計測出力値が初期出力値から故障変化量を減算した値よりも小さいと判断した回数が、カウントb1として計測される。
また、計測出力値が(初期出力値−50mV)以上の場合には、ステップS47において、制御部202は、計測出力値が初期出力値から所定の変化量(30mV)を減算した値以下((初期出力値−50mV)≦計測出力値≦(初期出力値−30mV))であるか否かを判断する。計測出力値が(初期出力値−50mV)≦計測出力値≦(初期出力値−30mV)を満たす場合には、ステップS48において、制御部202は、計測出力値が基準出力値から緩和減少量(2.5mV)を減算した値(基準出力値−2.5mV)以下であるか否かを判断する。計測出力値が(基準出力値−2.5mV)以下である場合には、ステップS49において、制御部202は、カウントb2に1を加算して、ステップS61に進む。また、計測出力値が(基準出力値−2.5mV)より大きい場合には、カウントb2に1を加算せずに、ステップS61に進む。この結果、1時間後毎に、計測出力値が初期出力値に対して所定の変化量(30mV)以上で小さく、かつ、計測出力値が基準出力値に対して緩和減少量以上の減少量で減少していると判断した回数が、カウントb2として計測される。
また、計測出力値が(初期出力値−30mV)よりも大きい場合には、ステップS50およびS51において、上記第1実施形態のステップS11およびS12(図3参照)と同様に、1時間後毎に、計測出力値が基準出力値に対して所定の減少量(7.5mV)以上の減少量で減少していると判断した回数が、カウントBとして計測されて、ステップS61に進む。
第2実施形態の基準出力値および警報しきい値の補正処理としては、まず、ステップS61において、上記第1実施形態のステップS21(図4参照)と同様の処理が行われる。そして、判断回数が72回でない場合には、基準出力値および警報しきい値の補正処理が終了して、図5に示すステップS35(上記第1実施形態のステップS5(図3参照)と同様)に進み、制御部202により、1時間経過後に再度計測出力値が取得される。
また、判断回数が72回である場合には、ステップS62において、制御部202は、判断回数(72回)に対して、ステップS39(図5参照)で計測されたカウントa1の割合が36/72(第1の故障割合)以上であるか否かを判断する。判断回数に対するカウントa1の割合が36/72以上である場合には、制御部202は、ガス検出部1が異常であると判断して、ステップS63において、故障警報を出力して、本更新処理を終了する。
また、判断回数に対するカウントa1の割合が36/72未満である場合には、制御部202は、ステップS64において、判断回数(72回)に対して、ステップS42(図5参照)で計測されたカウントa2の割合が36/72(第3の緩和割合)以上であるか否かを判断する。判断回数に対するカウントa2の割合が36/72未満である場合には、ステップS65において、制御部202は、上記第1実施形態のステップS22(図4参照)と同様に、判断回数に対するカウントAの割合が60/72以上であるか否かを判断する。そして、ステップS64において、判断回数に対するカウントa2の割合が36/72以上である場合、および、ステップS65において、判断回数に対するカウントAの割合が60/72以上である場合には、制御部202は、計測出力値が増加傾向にあると判断して、ステップS66およびS67において、上記第1実施形態のステップS23およびS24(図4参照)と同様の処理がそれぞれ行われる。これにより、計測出力値が増加傾向である場合には、基準出力値および警報しきい値が共に上方に更新(補正)される。
そして、ステップS68では、制御部202は、上記第1実施形態のステップS25(図4参照)と同様に、計測回数をリセットする。これにより、基準出力値および警報しきい値の補正処理が終了して、図5のステップS35に進む。
ステップS65において、判断回数に対するカウントAの割合が第1の割合(60/72)未満であると判断した場合には、ステップS69において、制御部202は、判断回数(72回)に対して、ステップS46で計測されたカウントb1の割合が36/72(第2の故障割合)以上であるか否かを判断する。判断回数に対するカウントb1の割合が36/72以上である場合には、制御部202は、ガス検出部1が異常であると判断して、ステップS63において、故障警報を出力して、本更新処理を終了する。
また、判断回数に対するカウントb1の割合が36/72未満である場合には、制御部202は、ステップS70において、判断回数(72回)に対して、ステップS49で計測されたカウントb2の割合が36/72(第4の緩和割合)以上であるか否かを判断する。判断回数に対するカウントb2の割合が36/72未満である場合には、ステップS71において、制御部202は、上記第1実施形態のステップS26(図4参照)と同様に、判断回数に対するカウントBの割合が60/72以上であるか否かを判断する。そして、ステップS70において、判断回数に対するカウントb2の割合が36/72以上である場合、および、ステップS71において、判断回数に対するカウントBの割合が60/72以上である場合には、制御部202は、計測出力値が減少傾向にあると判断して、ステップS72およびS73において、上記第1実施形態のステップS27およびS28(図4参照)と同様の処理がそれぞれ行われる。これにより、計測出力値が減少傾向である場合には、基準出力値および警報しきい値が共に下方に更新(補正)される。そして、ステップS68に進む。
また、ステップS71において、判断回数に対するカウントBの割合が60/72未満である場合には、基準出力値および警報しきい値の更新が行われずに、ステップS68に進む。
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記のように、計測出力値が基準出力値に対して増加傾向を示している場合に、基準出力値および警報しきい値の両方を増加させるとともに、計測出力値が基準出力値に対して減少傾向を示している場合に、基準出力値および警報しきい値の両方を減少させるように補正を行う制御部202を設ける。これにより、上記第1実施形態と同様に、計測出力値の一時的な変動による影響を小さくして警報しきい値の正確な補正を行うことができる。
また、第2実施形態では、上記のように、制御部202を、計測出力値が初期設定された基準出力値である初期出力値に対して所定の変化量(30mV)以上変化した場合には、計測出力値が増加傾向を示していると判断する条件および計測出力値が減少傾向を示していると判断する条件を緩和した状態で、基準出力値および警報しきい値の補正を行うように構成する。これにより、計測出力値が初期出力値に対して所定の変化量以上変化する場合のような、基準出力値および警報しきい値の補正を行う必要性が高い場合において、基準出力値および警報しきい値の補正が行われやすくすることができる。
また、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、図1、図7および図8を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、現在の基準出力値および現在の警報しきい値に対して更新値(2.5mV)を加算または減算することによって補正した上記第1および第2実施形態とは異なり、初期出力値および初期警報しきい値に対して算出された変動値を加算することによって補正する場合について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して図示するとともに説明を省略する。
図1に示すように、第3実施形態によるガス警報器300は、制御部302を備えている。なお、制御部302は、本発明の「補正手段」の一例である。
第3実施形態では、制御部302は、計測出力値が増加傾向または減少傾向(変化傾向)にある場合に、基準出力値および警報しきい値を、計測出力値から初期出力値を減算した値(変動値)に基づいてそれぞれ算出(補正)するように構成されている。
具体的な制御としては、制御部302は、計測出力値が基準出力値に所定の増加量を加算した値(基準出力値+7.5mV)以上である場合に、計測出力値から初期出力値を減算した値△1(正の値または負の値)を算出するように構成されている。そして、計測出力値が増加傾向にあると判断した際に、初期出力値に△1の平均値を加算することによって、基準出力値を上方更新(補正)するとともに、初期警報しきい値に△1の平均値を加算することによって、警報しきい値を上方更新(補正)するように構成されている。この際、計測出力値の増加傾向による補正後の基準出力値および警報しきい値は、それぞれ、補正前の基準出力値および警報しきい値よりも大きくなる(増加する)。
同様に、制御部302は、計測出力値が基準出力値から所定の減少量を減算した値(基準出力値−7.5mV)以下である場合に、計測出力値から初期出力値を減算した値△2(正の値または負の値)を算出するように構成されている。そして、計測出力値が減少傾向にあると判断した際に、初期出力値に△2の平均値を加算することによって、基準出力値を下方更新するとともに、初期警報しきい値に△2の平均値を加算することによって、警報しきい値を下方更新するように構成されている。この際、計測出力値の減少傾向による補正後の基準出力値および警報しきい値は、それぞれ、補正前の基準出力値および警報しきい値よりも小さくなる(減少する)。
なお、第3実施形態におけるガス警報器300のその他の構成については、上記第1実施形態と同様である。
次に、図7および図8を参照して、第3実施形態によるガス警報器300の基準出力値および警報しきい値の更新に関する制御処理について説明する。なお、図7および図8のフロー図では、「基準出力値」を「基準値」とし、「計測出力値」を「計測値」とし、「警報しきい値」を「警報値」とし、「初期出力値」を「初期値」とし、「初期警報しきい値」を「初期警報値」としてそれぞれ省略して記載している。
まず、図7に示すように、上記第1実施形態のステップS1〜S9と同様の処理が行われる。そして、ステップS9(計測出力値が増加していると判断した場合)においてカウントAに1を加算した後に、ステップS9aにおいて、制御部302は、計測出力値から初期出力値を減算した値△1を算出する。そして、ステップS10aに進み、図8に示す基準出力値および警報しきい値の補正処理が行われる。また、上記第1実施形態のステップS11およびS12と同様の処理が行われる。そして、ステップS12(計測出力値が減少していると判断した場合)においてカウントBに1を加算した後に、ステップS12aにおいて、制御部302は、計測出力値から初期出力値を減算した値△2を算出する。そして、ステップS10aに進む。
ステップS10aにおける基準出力値および警報しきい値の補正処理としては、図8に示すように、まず、上記第1実施形態のステップS21およびS22と同様の処理が行われる。そして、ステップS22において、判断回数(72回)に対するカウントAの割合が60/72以上である場合には、制御部302は、計測出力値が増加傾向にあると判断して、ステップS22aにおいて、△1の平均値(=(Σ△1/A))を算出する。その後、制御部302は、ステップS23aにおいて、初期出力値に△1の平均値を加算することにより基準出力値を上方更新するとともに、ステップS24aにおいて、初期警報しきい値に△1の平均値を加算することにより警報しきい値を上方更新する。そして、ステップS25に進み、上記第1実施形態の制御処理と同様の処理が行われる。
また、上記第1実施形態のステップS26と同様の処理が行われる。そして、ステップS26において、判断回数に対するカウントBの割合が60/72以上である場合には、制御部302は、計測出力値が減少傾向にあると判断して、ステップS26aにおいて、△2の平均値(=(Σ△2/B))を算出する。その後、制御部302は、ステップS27aにおいて、初期出力値に△2の平均値を加算することにより基準出力値を下方更新するとともに、ステップS28aにおいて、初期警報しきい値に△2の平均値を加算することにより警報しきい値を下方更新する。そして、ステップS25に進む。
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、上記のように、制御部302を、計測出力値が増加傾向または減少傾向にある場合に、基準出力値を、初期出力値と計測出力値から初期出力値を減算した値(△1または△2)の平均値とに基づいて算出(補正)するとともに、警報しきい値を、初期警報しきい値と、計測出力値と計測出力値から初期出力値を減算した値の平均値とに基づいて算出するように構成する。これにより、基準出力値および警報しきい値に対して、現状のガス検出部1の出力特性に合わせた補正をより正確に行うことができる。
また、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1実施形態では、制御部2が3日間(72時間)の判断期間(所定の判断期間)または2日間(48時間)の判断期間(緩和判断期間)で計測出力値の変化傾向を判断し、上記第2および第3実施形態では、制御部202(302)が3日間の判断期間で計測出力値の変化傾向を判断する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、所定の判断期間および緩和判断期間は、それぞれ、3日および2日に限られず、たとえば、半日、1日または4日以上でもよい。この際、緩和判断期間は所定の判断期間よりも短くなる。
また、上記第1実施形態では、制御部2が72回(所定の判断回数)または48回(緩和判断回数)に亘る計測出力値の変化傾向を判断し、上記第2および第3実施形態では、制御部202(302)が72回(所定の判断回数)に亘る計測出力値の変化傾向を判断する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、所定の判断回数および緩和判断回数は、それぞれ、72回および48回に限られない。この際、緩和判断回数は所定の判断回数よりも少なくなる。
また、上記第1〜第3実施形態では、制御部2(202、302)が、所定の判断回数(72回)に対して、計測出力値が基準出力値に対して7.5mV(所定の増加量)以上の増加量で増加していると判断した回数の割合が、60/72(第1の割合)以上である場合に、計測出力値が増加傾向を示していると判断し、計測出力値が基準出力値に対して7.5mV(所定の減少量)以上の減少量で減少していると判断した回数が、60/72(第2の割合)以上である場合に、計測出力値が減少傾向を示していると判断する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、所定の増加量および所定の減少量は、7.5mV以外でもよく、その際、所定の増加量と所定の減少量とを異ならせてもよい。また、第1の割合および第2の割合は、60/72以外でもよく、その際、第1の割合と第2の割合とを異ならせてもよい。同様に、第1実施形態における第1の緩和割合および第2の緩和割合は、24/48以外でもよく、その際、第1の緩和割合と第2の緩和割合とを異ならせてもよい。また、第2実施形態における第1の故障割合、第3の緩和割合、第2の故障割合および第4の緩和割合は、36/72以外でもよく、その際、それらを異ならせてもよい。この際、第1の緩和割合および第3の緩和割合は、第1の割合よりも小さくなるとともに、第2の緩和割合および第4の緩和割合は、第2の割合よりも小さくなる。さらに、第2実施形態における緩和増加量および緩和減少量は、2.5mV以外でもよく、その際、緩和増加量と緩和減少量とを異ならせてもよい。この際、緩和増加量および緩和減少量は、それぞれ、所定の増加量および所定の減少量よりも小さくなる。
また、上記第1および第2実施形態では、制御部2(202)が、計測出力値が増加傾向を示している場合に、基準出力値および警報しきい値の両方に2.5mV(増加更新値)を加算するとともに、計測出力値が減少傾向を示している場合に、基準出力値および警報しきい値の両方から2.5mV(減少更新値)を減算する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、増加更新値および減少更新値は、2.5mV以外でもよく、その際、増加更新値と減少更新値とを異ならせてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、基準出力値および警報しきい値の両方に同一の更新値(2.5mV)を加算または減算することによって、基準出力値および警報しきい値をそれぞれ補正する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基準出力値に加算または減算する更新値と、警報しきい値に加算または減算する更新値とを異ならせてもよい。また、上記第3実施形態では、初期出力値および初期警報しきい値の両方に同一の更新値(△1の平均値または△2の平均値)を加算することによって、基準出力値および警報しきい値をそれぞれ補正する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、初期出力値に加算する更新値と、初期警報しきい値に加算する更新値とを異ならせてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、増加更新値および減少更新値(2.5mV)を所定の増加量および所定の減少量(7.5mV)よりも小さくした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、増加更新値および減少更新値は、それぞれ、所定の増加量以上および所定の減少量以上であってもよい。なお、基準出力値および警報しきい値の両方が過度に補正されるのを抑制するためには、増加更新値および減少更新値は、それぞれ、所定の増加量以下および所定の減少量以下であるのが好ましい。
また、上記第2実施形態では、カウントa1、a2、A、b1、b2およびBの各々を互いに関連付けない例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、カウントa1、a2、A、b1、b2およびBの各々を互いに関連付けてもよい。たとえば、カウントa1とa2との合計の割合が判断回数に対して所定の割合以上である場合に、制御部は計測出力値が増加傾向にあると判断し、カウントb1とb2との合計の割合が判断回数に対して所定の割合以上である場合に、制御部は計測出力値が減少傾向にあると判断するように構成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、制御部2(202、302)により計測出力値が増加傾向または減少傾向(変化傾向)にあると判断された場合には、常に基準出力値および警報しきい値を補正する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部により計測出力値が変化傾向にあると判断された場合であっても、基準出力値および警報しきい値を補正しない場合があってもよい。たとえば、制御部により、計測出力値が変化傾向にあると判断された場合で、かつ、初期出力値以下になるように基準出力値が補正される場合には、基準出力値および警報しきい値の両方が補正される一方、計測出力値が変化傾向にあると判断された場合であっても、初期出力値よりも大きくなるように基準出力値が補正される場合には、基準出力値および警報しきい値の両方が補正されないように構成してもよい。この場合、初期出力値以下になるように基準出力値が補正されることによって、初期警報しきい値以下になるように警報しきい値も補正されて警報が出力されやすくなる一方、初期出力値より大きくなるようには基準出力値が補正されないことによって、初期警報しきい値より大きくなるようには警報しきい値は補正されない。この結果、警報が出力されやすくなるようには補正される一方、警報が出力されにくくなるようには補正されないので、警報を出力すべきメタンガス濃度であるにもかかわらず、警報が出力されない場合が生じるのを確実に抑制することが可能である。
また、上記第1〜第3実施形態において、計測出力値の増加傾向または減少傾向(変化傾向)を判断する際に、ガス警報器100(200、300)が配置される環境の温度や湿度も考慮するように構成してもよい。たとえば、気温が約10℃以上約35℃以下の場合や、湿度が約2g/m3以上約20g/m3以下の場合にのみ、制御部がガス検出部から計測出力値を取得するとともに、取得した計測出力値を用いて、計測出力値の変化傾向を判断してもよい。これにより、温度や湿度により計測出力値が変動する半導体式ガス検知素子からなるガス検出部であっても、より正確に、計測出力値の変化傾向を判断することが可能である。また、たとえば、予め作成した温度−計測出力値テーブルや湿度−計測出力値テーブルを用いて、計測出力値自体を補正するとともに、補正された計測出力値を用いて、計測出力値の変化傾向を判断してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、制御部2(202、302)を、警報しきい値を超える計測出力値がガス検出部1から出力されたと判断した場合(警報時)に、警報を出力させるように構成した例のみを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、警報しきい値を超えないものの、警報しきい値に近い計測出力値がガス検出部から出力された場合には、警報よりも緊急性がないものの注意を要することをユーザに対して報知するための注意報をガス警報器から出力するように構成してもよい。この注意報が出力される基準となる注意報しきい値としては、たとえば、警報しきい値の2/3の値として設定してもよい。
また、上記第1実施形態では、制御部2を、初期出力値(0mV)に戻す側に基準出力値を変化させる補正を行う場合に、計測出力値が増加傾向を示していると判断する条件および計測出力値が減少傾向を示していると判断する条件を共に緩和するように構成し、上記第2実施形態では、制御部202を、計測出力値が初期出力値に対して所定の変化量以上変化した場合に、計測出力値が増加傾向を示していると判断する条件および計測出力値が減少傾向を示していると判断する条件を共に緩和するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、計測出力値が増加傾向を示していると判断する条件または計測出力値が減少傾向を示していると判断する条件のいずれか一方のみを緩和してもよい。
また、上記第2および第3実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、初期出力値に戻す側に基準出力値を変化させる補正を行う場合には、計測出力値が増加傾向を示していると判断する条件および計測出力値が減少傾向を示していると判断する条件を緩和してもよい。つまり、上記第2および第3実施形態において初期出力値に戻す側に基準出力値を変化させる補正を行う場合に、緩和判断回数を用いたり、第1の緩和割合および第2の緩和割合を用いてもよい。
また、上記第1実施形態では、判断回数と、増加傾向または減少傾向であると判断する際の割合との2つの判断条件を緩和し、上記第2実施形態では、所定の増加量および所定の減少量と、増加傾向または減少傾向であると判断する際の割合との2つの判断条件を緩和した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、判断回数と、所定の増加量および所定の減少量との2つの判断条件を緩和してもよい。さらに、判断回数と、所定の増加量および所定の減少量と、増加傾向または減少傾向であると判断する際の割合との3つの判断条件のうちの1つの判断条件のみを緩和してもよいし、3つの判断条件の全てを緩和してもよい。
また、上記第3実施形態では、初期出力値および初期警報しきい値に対して計測出力値から初期出力値を減算した値△1(△2)の平均値を加算することによって、基準出力値および警報しきい値の両方を更新(補正)する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、△1(△2)の平均値の代わりに、△1(△2)の最小値や、中間値、最大値などを用いてもよい。この際、基準出力値および警報しきい値が過度に補正されるのを抑制するために、△1(△2)の平均値か、または、△1(△2)の最小値を用いるのが好ましい。
また、上記第1〜第3実施形態では、メタンガスを検出する半導体式ガス検知素子(ガス検出部1)を備えるガス警報器100(200、300)に、本発明の補正手段(制御部2(202、302))を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、メタンガス以外のガスを検出する半導体式ガス検知素子を備えるガス警報器に、本発明の補正手段を適用してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、説明の便宜上、本発明の制御部2(202、302)の処理を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフロー図を用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント毎に処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。