JP2015218381A - プラズマcvd装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】プラズマCVD装置において、プラズマの分布の偏りの発生を抑制する。
【解決手段】プラズマCVD装置は、チャンバと、チャンバの外部に配置された磁場形成部と、チャンバの内部においてワークと対向し、かつ、チャンバを挟んで磁場形成部と対向する位置に配置され、第1の支持部材によりチャンバに支持されている板状の陽極であって第1の支持部材が挿入される第1の穴が形成されている陽極と、を備え、第1の穴に第1の支持部材が挿入された状態において、第1の穴には、陽極におけるワークと対向する対向面と平行な方向に第1の支持部材と隣接する空隙が形成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により成膜を行なうプラズマCVD装置に関する。
真空状態のチャンバにおいて、原料ガスをプラズマ化して得られる金属イオンを、ワーク表面に吸着させて成膜するプラズマCVD装置が知られている。また、発生したプラズマを高密度化するために、あるいは、プラズマの分布を制御するために、陽極の近傍に永久磁石を配置したプラズマCVD装置が提案されている(下記特許文献1参照)。
特開2010−7126号公報
プラズマCVD装置を用いた成膜時に、陽極の温度は、例えば摂氏200度以上の高温となるため、陽極が熱膨張して陽極と永久磁石との間の距離が変化し得る。かかる距離が変化すると、陽極における陰極と対向する面(以下、「対向面」と呼ぶ)において磁束密度が変化するために、対向面において均一の磁束密度が得られず、プラズマの分布が不均一になるという問題があった。その他、従来のプラズマCVD装置においては、その小型化や、低コスト化、省資源化、製造の容易化、使い勝手の向上等が望まれていた。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、プラズマCVD装置が提供される。このプラズマCVD装置は、チャンバと;前記チャンバの外部に配置された磁場形成部と;前記チャンバの内部において陰極として機能する処理対象のワークと対向し、かつ、前記チャンバを挟んで前記磁場形成部と対向する位置に配置され、第1の支持部材により前記チャンバに支持されている板状の陽極であって、前記第1の支持部材が挿入される第1の穴が形成されている陽極と;を備え、前記第1の穴に前記第1の支持部材が挿入された状態において、前記第1の穴には、前記陽極における前記ワークと対向する対向面と平行な方向に前記第1の支持部材と隣接する空隙が形成されている。この形態のプラズマCVD装置によれば、第1の穴に、陽極における対向面と平行な方向に第1の支持部材と隣接する空隙が形成されているので、昇温に伴い陽極が膨張する際に、膨張した体積の一部をかかる空隙を利用して吸収することができる。このため、対向面と平行な方向への陽極の膨張が支持部材によって規制されてしまうことを抑制できるので、陽極がワークに向かう方向およびその反対方向(すなわち、磁場形成部に向かう方向)に膨張して変形することを抑制できる。したがって、陽極と磁場形成部との間の距離の変化を抑制できるので、陽極の対向面における磁束密度の変化を抑制してプラズマの分布が不均一となることを抑制できる。加えて、磁場形成部をチャンバの外部に配置するので、磁場形成部をチャンバの内部に配置する構成に比べて磁場形成部の昇温に伴う劣化(減磁)を抑制できる。
(2)上記形態のプラズマCVD装置において、前記対向面にスリットが形成されていてもよい。この形態のプラズマCVD装置によれば、かかるスリットを利用して膨張した陽極の体積の少なくとも一部を吸収できるため、ワークに向かう方向およびその反対方向への陽極の膨張を抑制できる。
(3)上記形態のプラズマCVD装置において、前記陽極には、前記スリットと前記第1の穴との間に、第2の支持部材が挿入される第2の穴が形成されており、前記第2の穴に前記第2の支持部材が挿入された状態において、前記第2の穴には、前記第1の支持部材が挿入された状態における前記第1の穴に形成されている空隙よりも小さな空隙が形成されていてもよい。この形態のプラズマCVD装置によれば、第2の穴に挿入される第2の支持部材により、チャンバに対する陽極の位置ずれを抑制できる。また、スリットと第1の穴との間に第2の支持部材が配置されているので、第2の支持部材よりもスリット側における膨張した体積の少なくとも一部をスリットによって吸収すると共に、第2の支持部材よりも第1の穴側における膨張した体積の少なくとも一部を第1の穴によって吸収することができる。このため、ワークに向かう方向およびその反対方向への陽極の膨張をより抑制できる。
(4)上記形態のプラズマCVD装置において、前記第1の穴に形成されている前記空隙は、前記第1の穴に挿入された前記第1の支持部材に対して、前記対向面の中央部から前記陽極の外周縁に向かう方向と平行な方向に隣接して配置されていてもよい。この形態のプラズマCVD装置によれば、陽極における温度分布が陽極の中央部が高く外周縁に向かうにつれて低くなる分布であるために陽極の面内の膨張の方向が中央から外周縁に向かう方向となる場合に、第1の穴に形成された空隙を利用して、対向面と平行な方向への陽極の膨張をより効率的に吸収させることができる。
(5)上記形態のプラズマCVD装置において、前記陽極と前記チャンバとの間、および前記チャンバと前記磁場形成部との間に空隙が形成されていてもよい。この形態のプラズマCVD装置によれば、陽極の熱がチャンバを介して磁場形成部に伝導することを抑制できる。このため、磁場形成部の昇温に伴う劣化(減磁)を抑制できる。
(6)上記形態のプラズマCVD装置において、前記陽極と前記チャンバとの間に空隙が形成されており、該空隙に前記陽極に接して配置されているヒーターを備えてもよい。この形態のプラズマCVD装置によれば、ヒーターを利用して陽極の温度を制御することができる。
(7)上記形態のプラズマCVD装置において、前記磁場形成部は、前記チャンバと対向して配置されている永久磁石を有してもよい。この形態のプラズマCVD装置によれば、例えば、磁場形成部を電磁石により構成する場合に比べて、配線やコイル等が不要となるために磁場形成部を簡易な構成で実現できる。
(8)上記形態のプラズマCVD装置において、前記永久磁石は、ネオジム磁石であってもよい。この形態のプラズマCVD装置によれば、例えば、永久磁石としてフェライト磁石を用いる構成に比べて、陽極の対向面における磁束密度を高めてプラズマの強度を高めることができる。
(9)上記形態のプラズマCVD装置において、前記第1の支持部材の挿入方向に見た前記第1の穴の形状は、前記対向面と平行な方向に沿って延伸している形状であってもよい。この形態のプラズマCVD装置によれば、支持部材の断面が円形または正方形といった長手方向と短手方向とを有しない形状である場合に、第1の穴において支持部材に隣接する空隙を形成することができる。
本発明は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、プラズマCVD装置に用いられる陽極や、その陽極の製造方法や、プラズマCVD装置を用いた成膜方法等の形態で実現することができる。
本発明の一実施形態としてのプラズマCVD装置の概略構成を示す断面図である。 陽極20の構成を示す平面図である。 プラズマCVD装置100を用いた成膜処理の手順を示すフローチャートである。 第2実施形態のプラズマCVD装置の概略構成を示す断面図である。 第3実施形態における陽極の構成を示す平面図である。
A.第1実施形態:
A1.装置構成:
図1は、本発明の一実施形態としてのプラズマCVD装置の概略構成を示す断面図である。図1では、プラズマCVD装置100が載置された状態における水平面(X−Y平面)でのプラズマCVD装置100の断面を示している。なお、図1では、+Z方向が鉛直上方を示す。プラズマCVD装置100は、プラズマCVD(plasma CVD: plasma-enhanced chemical vapor deposition)法によりワーク50の表面に薄膜を形成する。本実施形態では、ワーク50として、燃料電池用セパレータに用いられる金属製の薄板状の基板が用いられる。なお、セパレータ用の基板に限らず、プラズマCVD法により成膜可能な任意の基板をワークとして採用することができる。また、本実施形態では、ワーク50に形成される薄膜として、炭素薄膜が用いられる。炭素薄膜の構造としては、アモルファス構造や、グラファイト構造を採用することができる。
プラズマCVD装置100は、チャンバ10と、2つの陽極20と、2つのヨーク40と、各ヨーク40に接して配置されている多数の永久磁石30と、バイアス電源60とを備えている。なお、図1では、チャンバ10内にワーク50が配置された状態のプラズマCVD装置100を示している。後述するように、ワーク50は、陰極として機能する。したがって、ワーク50は、プラズマCVD装置100の一部として機能すると共に、プラズマCVD装置100による成膜処理の対象物としても機能する。
チャンバ10は、高い気密性を有し、成膜室として機能する。チャンバ10内は、ポンプを有する図示しないガス排出機構により真空状態に維持されている。チャンバ10は、比透磁率が低い材料で形成されており、本実施形態では、ステンレス鋼(SUS)により形成されている。なお、ステンレス鋼に代えて、チタン(Ti)やアルミニウム(Al)など、比透磁率が比較的低い任意の材料を用いてもよい。本実施形態では、チャンバ10は、図示しない冷却機構により昇温が抑制されている。かかる冷却機構として、例えば、水冷式の冷却機構を採用してもよい。
チャンバ10内部の中央には、図示しない支持部によりワーク50が配置されている。本実施形態では、ワーク50は、ワーク50の両面が、鉛直方向(Z軸方向)と平行となるように配置されている。ワーク50にはバイアス電源60が接続されている。
図1に示すように、プラズマCVD装置100において、ワーク50の一方の面に対向する側の構成と、他方の面に対向する側の構成とは、ワーク50を中心として対称である。それゆえ、両側の構成において互いに同じ種類の構成要素には同じ符号を付し、以下、ワーク50の一方の面に対向する側の構成のみを述べ、他方側の構成についてはその詳細な説明を省略する。
陽極20は、平面視矩形の板状の外観形状を有し、比透磁率が低く、かつ、熱膨張係数の小さな材料により形成されている。本実施形態では、陽極20は、チタン(Ti)により形成されているが、チタンに代えて、ステンレス鋼(SUS)など、比透磁率が低く、かつ、熱膨張係数の小さな任意の材料により形成してもよい。図1に示すように、陽極20は、ワーク50とチャンバ10の壁との間においてワーク50の一方の面と対向するように配置されている。陽極20は、複数の支持部材21によりチャンバ10の壁に支持されている。より具体的には、支持部材21の一端はチャンバ10に溶接されており、支持部材21の他端が陽極20に形成されている貫通孔(後述する逃がし穴210および固定穴220)に挿入されることにより、陽極20は、チャンバ10に支持(固定)される。図2に示すように、陽極20が支持部材21によりチャンバ10に支持されることにより、陽極20とチャンバ10との間(X軸方向に沿った間)には、空隙が形成されている。
本実施形態では、支持部材21は、棒状の外観形状を有し、上述のように一端部がチャンバ10に溶接されている。なお、棒状に限らず任意の外観形状を有し、かつ、一端がチャンバ10に溶接され他端が陽極20に形成されている貫通孔に挿入される任意の部材を、支持部材21として採用してもよい。本実施形態では、支持部材21は、ステンレス鋼(SUS)により形成されている。なお、ステンレス鋼(SUS)に代えて、チタンなど、陽極20の形成材料と同様に、比透磁率が低く、かつ、熱膨張係数の小さな任意の材料により、支持部材21を形成してもよい。
図2は、陽極20の構成を示す平面図である。なお、図2では、図1に示す2つの陽極20のうち、右側の陽極20を、ワーク50側から見た図を表している。図2に示すように、陽極20において、ワーク50と対向する面(以下、「対向面」と呼ぶ)には、4つの逃がし穴210と、スリット230と、4つの固定穴220とが形成されている。
陽極20の四隅近傍には、それぞれ一つずつ逃がし穴210が形成されている。各逃がし穴210は、水平方向(Y軸方向)に延伸した形状を有する。本実施形態では、逃がし穴210は、陽極20を厚さ方向(X軸方向)に貫く貫通孔として形成されている。各逃がし穴210の長手方向(Y軸方向)の中央部には、支持部材21が配置(挿入)されている。本実施形態では、支持部材21のうちのチャンバ10の壁から突出している部分のX軸方向に沿った長さは、陽極20の厚さ(X軸方向の長さ)とほぼ等しい。したがって、図1に示すように、支持部材21は、陽極20の対向面からワーク50側へと突出していない。なお、図2に示すように、本実施形態では、支持部材21の断面形状は円形である。
図2に示すように、逃がし穴210の長手方向(Y軸方向)の長さは、支持部材21の直径よりも長い。このため、逃がし穴210に支持部材21が挿入された状態において、逃がし穴210には、陽極20における対向面と平行な方向(以下、「面方向」と呼ぶ)に、支持部材21と隣接して空隙211が形成されている。このように、逃がし穴210には支持部材21に隣接して空隙211が形成されているため、成膜処理時に陽極20が昇温して膨張する際に、かかる空隙211を利用して膨張した体積の少なくとも一部を吸収できる。このため、陽極20の面方向への膨張が支持部材21によって規制されることを抑制できる。したがって、陽極20の面方向への膨張が規制されるために陽極20が厚さ方向(X軸方向)に膨張や変形することを抑制できるので、陽極20と各永久磁石30との間の距離が変化することを抑制できる。なお、本実施形態において、逃がし穴210に形成されている空隙211のY軸方向の長さの合計は、熱膨張に伴う陽極20の外周近傍におけるY軸方向の寸法変化分よりも大きい。
逃がし穴210の短手方向(Z軸方向)の長さは、支持部材21の直径とほぼ等しい。したがって、逃がし穴210に支持部材21が挿入されることにより、陽極20の上下方向(Z軸方向)への位置ずれが抑制される。
陽極20の中央部には、スリット230が形成されている。スリット230は、水平方向(Y軸と平行な方向)に沿って形成された直線状のスリット部と、垂直方向(Z軸と平行な方向)に沿って形成された直線状のスリット部とが、陽極20の面内の中央部分において交差した構成(換言すると平面視形状が十字形の構成)を有する。スリット230は、陽極20を厚さ方向(X軸方向)貫通して形成されている。スリット230は、陽極20が昇温して膨張する際に、膨張した陽極20の少なくとも一部の体積を逃がす(吸収する)。本実施形態において、成膜処理の際における陽極20の面内の温度分布は、中央部分が高く外周縁に向かうにつれて低くなる分布であるため、陽極20は、中央部分においてより大きく膨張する。このため、本実施形態では、スリット230を陽極20の面内の中央部分に設けている。
図2に示すように、スリット230の中央(すなわち、陽極20の中央)と、各逃がし穴210との間において、スリット230の中央に寄った位置に、固定穴220が形成されている。固定穴220の断面形状は円形であり、その直径は、支持部材21の直径よりも若干大きい。したがって、本実施形態では、支持部材21は、固定穴220に圧入されている。このような構成により、陽極20の面方向の位置ずれが抑制される。換言すると、固定穴220に挿入されている支持部材21により、陽極20は、チャンバ10の壁に固定される。なお、上述した空隙211のY軸方向の長さの合計は、例えば、支持部材21の断面の直径の2倍程度の大きさなど、支持部材21を固定穴220に圧入させるために予め設けられている径方向の若干のクリアランスに比べて明らかに大きい。
ここで、上述した逃がし穴210、固定穴220、スリット230のそれぞれの配置位置とその効果、およびこれら穴210,220およびスリット230の位置関係とその効果について説明する。逃がし穴210を陽極20の四隅に配置することにより、陽極20を安定して支持できると共に、膨張の端部に相当する外周縁付近に膨張の規制を抑制可能な逃がし穴210を設けることにより、陽極20全体として膨張が規制されてしまうことを抑制できる。したがって、陽極20全体として厚さ方向(X軸方向)への膨張や変形を抑制できる。また、固定穴220を設けることにより陽極20の位置ずれを規制しつつ、固定穴220を、陽極20全体の膨張や変形に対する影響がより少ない中央部分(スリット230寄りの部分)に配置している。また、スリット230を、陽極20の中央部分に配置することにより、陽極20においてより昇温してより膨張し易い部分において膨張分を吸収させることができる。また、このスリット230の配置位置は、主として4つの固定穴220で囲まれた領域に含まれる位置である。このため、4つの固定穴220により膨張が規制され易い陽極20の中央部分において、陽極20の膨張を吸収することができる。したがって、陽極20の中央部分における厚さ方向(X軸方向)の膨張や変位を抑制できる。このように、プラズマCVD装置100では、陽極20において、逃がし穴210、固定穴220、およびスリット230を設けることにより、陽極20の厚さ方向(Y軸方向)への膨張や変形を抑制している。
図1に示すヨーク40は、板状の外観形状を有し、チャンバ10の外部において、チャンバ10を挟んで陽極20(対向面とは反対側の面)と対向して配置されている。ヨーク40は、チャンバ10の外壁から所定の距離だけ離れた位置において、チャンバ10の外壁と平行に配置され、固定部材41によりチャンバ10に固定されている。
ヨーク40におけるチャンバ10と対向する面には、多数の永久磁石30が配置されている。永久磁石30をチャンバ10の外部に配置することにより、チャンバ10の内部に配置する構成に比べて成膜処理時の永久磁石30の昇温を抑制して、昇温に伴う永久磁石30の劣化を抑制している。これにより、永久磁石30により形成される磁束密度の低下(減磁)を抑制している。各永久磁石30はいずれも棒状の外観形状を有し、本実施形態では、ネオジム磁石により構成されている。一般に、ネオジム磁石は、高い磁力を有する一方、耐熱性が低く、高温環境下において減磁し易い。しかしながら、上述のように、永久磁石30をチャンバ10の外部に配置することにより永久磁石30の昇温を抑制するので、永久磁石30(ネオジム磁石)の昇温に伴う磁束密度の低下を抑制しつつ、高い磁束密度を得ることができる。
図1に示すように、各永久磁石30は、長手方向がZ軸方向と平行となるように配置されている。本実施形態では、ヨーク40におけるチャンバ10と対向する面に、Y軸方向に沿ってN極の永久磁石30とS極の永久磁石30とが交互に配置されている。各永久磁石30と陽極20との間の距離は、初期状態において互いに略一定となるように設定されている。これにより、陽極20の対向面において磁束密度が略均一となるため、陽極20とワーク50との間の空間において発生するプラズマPの分布に偏りが生じることを抑制できる。図1に示すように、各永久磁石30は、チャンバ10の外壁と接しておらず、各永久磁石30とチャンバ10の外壁との間には空隙が設けられている。また、上述のように、陽極20とチャンバ10との間にも空隙が設けられている。これらの構成により、陽極20の熱がチャンバ10を介して永久磁石30に伝導することを抑制できる。
図1に示すバイアス電源60は、ワーク50に接続されており、ワーク50に所定の電圧を印加する。なお、2つの陽極20はいずれも接地されている。
上述した各構成要素に加えて、プラズマCVD装置100は、チャンバ10内に原料ガスを供給するためのガス供給機構と、原料ガスの流量を制御するマスフローコントローラと、チャンバ10内からガスを排出するためのガス排出機構(ドライポンプ)と、チャンバ10に隣接する予備真空室と、予備真空室とチャンバ10との間に配置されているゲートバルブと、ワーク50を搬送するための搬送機構と、チャンバ10内においてワーク50を支持する支持部と、チャンバ10内部を昇温させるヒーターとを備えている。図1では、図示の便宜上、上述したガス供給機構、マスフローコントローラ、ガス排出機構、予備真空室、ゲートバルブ、搬送機構、支持部およびヒーターを省略している。
上述した永久磁石30は、請求項における磁場形成部に相当する。また、支持部材21は請求項における第1の支持部材および第2の支持部材に、逃がし穴210は請求項における第1の穴に、固定穴220は請求項における第2の穴に、それぞれ相当する。
A2.成膜処理:
図3は、プラズマCVD装置100を用いた成膜処理の手順を示すフローチャートである。まず、予備真空室にワーク50がセットされる(ステップS105)。予備真空室が真空状態にされる(ステップS110)。ゲートバルブが開かれ、チャンバ10内にワーク50が搬入されて所定位置にセットされる(ステップS115)。また、その後ゲートバルブが閉じられる。
続いて、チャンバ10の内部に原料ガスとキャリアガスが導入されつつ、ガス排出機構によりチャンバ10内部が真空状態に維持される(ステップS120)。本実施形態では、原料ガスとして、炭化水素ガスが用いられる。また、キャリアガスとして窒素ガスおよびアルゴンガスが用いられる。前述のステップS120が実行される際に、ヒーターによりチャンバ10内部が加熱されている。本実施形態では、ワーク50の表面温度が摂氏300度となり、陽極20の表面温度が摂氏200度となるようにヒーターが制御される。このように、陽極20の表面が高温となり陽極20が膨張しても、上述したとおり、陽極20の厚さ方向(X軸方向)への膨張や変形が抑制される。
続いて、バイアス電源60によりバイアス電圧がワーク50に印加されることにより、ワーク50と陽極20との間においてプラズマ放電が実行される(ステップS125)。このステップS125により、炭素原子の陽イオンが陰極であるワーク50の表面に付着して、炭素薄膜が形成される。前述のように、陽極20の厚さ方向への膨張や変形が抑制されているため、各永久磁石30と陽極20との間の距離が変化することが抑制される。これにより、陽極20の表面における磁束密度に偏りが生じることが抑制されるため、ステップS125が実行される際に、プラズマの分布に偏りが生じることが抑制される。前述のステップS125が完了すると、ワーク50がチャンバ10から予備真空室に移動され(ステップS130)、予備真空室がベントされた後に成膜後のワーク50が予備真空室から取り出される(ステップS135)。
以上説明した第1実施形態のプラズマCVD装置100では、陽極20に逃がし穴210を設け、この逃がし穴210を、支持部材21が挿入された状態において面方向に支持部材21に隣接して空隙211が形成されるように構成している。このため、成膜処理時に陽極20が昇温して膨張しようとする際に、膨張した体積の一部をかかる空隙211を利用して吸収することができる。このため、陽極20の面方向の膨張を支持部材21によって規制されることを抑制できるので、面方向への膨張が規制されることに起因して陽極20が厚さ方向(X軸方向)に膨張や変形することを抑制できる。したがって、陽極20と各永久磁石30との間の距離が変化することを抑制できるので、陽極20におけるワーク50と対向する面における磁束密度が変化してプラズマPの分布が不均一となることを抑制できる。
また、逃がし穴210を陽極20の四隅に配置することにより、陽極20を安定して支持できると共に、面方向の膨張の端部に相当する外周縁の近傍において、面方向の膨張の規制を抑制できるので、陽極20全体として膨張が規制されてしまうことを抑制できる。また、固定穴220を陽極20の中央部分に配置することにより、陽極20全体の膨張や変形に対する影響を低減することができる。また、スリット230を、陽極20の中央部分に配置することにより、陽極20においてより昇温し易くより膨張し易い部分において膨張した体積の少なくとも一部を吸収させることができる。加えて、スリット230の配置位置は、主として4つの固定穴220で囲まれた領域に含まれる位置であるので、4つの固定穴220により膨張が規制され易い陽極20の中央部分において、膨張した陽極20の体積の少なくとも一部をスリット230により吸収することができる。したがって、陽極20の中央部分における厚さ方向(X軸方向)の膨張や変位を抑制できる。
また、永久磁石30をチャンバ10の外部に配置することにより、チャンバ10の内部に配置する構成に比べて、永久磁石30の昇温を抑制できる。このため、永久磁石30の昇温に伴う劣化(減磁)を抑制できる。また、陽極20とチャンバ10との間、およびチャンバ10と各永久磁石30との間にそれぞれ空隙を設けているので、陽極20の熱がチャンバ10を介して各永久磁石30に伝導することを抑制できる。また、永久磁石30をネオジム磁石により構成しているので、陽極20の表面における磁束密度を高めて、プラズマPの強度を高めることができる。
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態のプラズマCVD装置の概略構成を示す断面図である。第2実施形態のプラズマCVD装置100aは、陽極20とチャンバ10の内壁との間においてヒーター70が陽極20に接して配置されている点において、図1に示す第1実施形態のプラズマCVD装置100と異なる。第2実施形態のプラズマCVD装置100aにおける他の構成要素は、第1実施形態のプラズマCVD装置100における構成要素と同じであるので、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
ヒーター70は、略板状の外観形状を有し、陽極20におけるチャンバ10と対向する面に接して配置されている。ヒーター70は、成膜処理時において、陽極20の温度が所定温度(例えば、摂氏200度)を維持するように、陽極20を加熱する。
以上の構成を有する第2実施形態のプラズマCVD装置100aは、第1実施形態のプラズマCVD装置100と同様な効果を有する。加えて、ヒーター70を用いて陽極20の温度を制御することができる。
C.第3実施形態:
図5は、第3実施形態における陽極の構成を示す平面図である。第3実施形態の陽極20aは、逃がし穴210に代えて逃がし穴210aを備えている点において、第1実施形態のプラズマCVD装置100と異なる。第3実施形態のプラズマCVD装置における他の構成要素は、第1実施形態のプラズマCVD装置100における構成要素と同じであるので、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
陽極20aの四隅付近には、それぞれ一つずつ逃がし穴210aが形成されている。第3実施形態の逃がし穴210aは、長手方向が、陽極20aの中心から四隅に向かう方向と平行な方向である点において、第1実施形態の逃がし穴210と異なり、その大きさや形は、第1実施形態の逃がし穴210と同じである。逃がし穴210aがこのように配置されることにより、各逃がし穴210aにおいて、空隙211は、支持部材21に対して、陽極20aの中央部から隅に向かう方向に隣接する、或いは、陽極20aの隅から中央部に向かう方向に隣接することとなる。
上記構成を有する第3実施形態のプラズマCVD装置は、第1実施形態のプラズマCVD装置100と同様な効果を有する。加えて、逃がし穴210aは、長手方向が、陽極20aの中心から四隅に向かう方向と平行な方向になるように配置されているので、空隙211を、支持部材21に対して、陽極20aの中央部から隅に向かう方向、或いは、陽極20aの隅から中央部に向かう方向に隣接させることができる。陽極20aにおける温度分布は、陽極20aの中央が高く外周縁に向かうにつれて低くなる分布であるため、陽極20aの面内の膨張の方向は、中央から外周縁に向かう方向となる。したがって、空隙211を、支持部材21に対して、陽極20aの中央部から隅に向かう方向、或いは、陽極20aの隅から中央部に向かう方向に隣接させることにより、陽極20aの面内の膨張をより効率的に吸収させることができる。
D.変形例:
D1.変形例1:
各実施形態におけるプラズマCVD装置100,100aの構成は、あくまでも一例であり、種々変形可能である。例えば、各実施形態では、支持部材21は、チャンバ10に溶接により固定されていたが、溶接に代えて、ボルトを用いて固定する方法や、チャンバ10に穴を形成してかかる穴に支持部材21を圧入する方法など、任意の固定方法を採用してもよい。また、例えば、各実施形態では、固定穴220に挿入される支持部材21は、陽極20,20aと溶接されていなかったが、溶接されてもよい。また、例えば、各実施形態では、ワーク50は、ワーク50の両面が、鉛直方向(Z軸方向)と平行となるように配置されていたが、鉛直方向に代えて、水平方向(X軸方向)と平行となるように配置してもよい。また、例えば、各実施形態において、固定穴220の少なくとも一部を省略してもよい。また、各実施形態において、固定穴220の少なくとも一部を逃がし穴210に変更してもよい。また、各実施形態において、スリット230を省略してもよい。また、例えば、各実施形態では、固定穴220は、陽極20,20aの四隅に配置されていたが、四隅に代えて又は四隅に加えて、他の任意の位置に配置してもよい。また、例えば、各実施形態では、逃がし210,210aに挿入される支持部材21と、固定穴220に挿入される支持部材21とは同じ種類であったが、これらの支持部材を互いに異なる種類としてもよい。
D2.変形例2:
各実施形態におけるスリット230の形状および配置位置は、図2および図5に示す形状および配置位置に限定されるものではない。例えば、スリットの形状として、平面視で円周状の形状としてもよい。また、平面視で一本または互いに平行な多数の直線状の形状としてもよい。また、例えば、スリット230の配置位置として、スリット230の中心位置が陽極20,20aの中心位置からずれた位置となるような配置位置としてもよい。また、スリット230と同様な平面視形状のスリットを複数設けてもよい。
D3.変形例3:
各実施形態において、支持部材21の断面形状は円形であったが、円形に代えて矩形や台形など、任意の形状としてもよい。この場合であっても、支持部材21に対して、面方向に隣接して空隙211が形成されるように逃がし穴210を設けることにより、各実施形態と同様な効果を得ることができる。
D4.変形例4:
各実施形態において、永久磁石30は、ネオジム磁石により構成されていたが、ネオジム磁石に代えて、フェライト磁石やサマリウムコバルト磁石など、任意の永久磁石を用いて構成してもよい。また、各実施形態において、永久磁石30に代えて、電磁石など、陽極20におけるワーク50と対向する面において磁束密度を形成可能な任意の磁場形成部を、本発明のプラズマCVD装置に採用することができる。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10…チャンバ
20…陽極
20a…陽極
21…支持部材
30…永久磁石
40…ヨーク
41…固定部材
50…ワーク(陰極)
60…バイアス電源
70…ヒーター
210…逃がし穴
210a…逃がし穴
211…空隙
220…固定穴
230…スリット
100…プラズマCVD装置
100a…プラズマCVD装置
P…プラズマ

Claims (9)

  1. プラズマCVD装置であって、
    チャンバと、
    前記チャンバの外部に配置された磁場形成部と、
    前記チャンバの内部において陰極として機能する処理対象のワークと対向し、かつ、前記チャンバを挟んで前記磁場形成部と対向する位置に配置され、第1の支持部材により前記チャンバに支持されている板状の陽極であって、前記第1の支持部材が挿入される第1の穴が形成されている陽極と、
    を備え、
    前記第1の穴に前記第1の支持部材が挿入された状態において、前記第1の穴には、前記陽極における前記ワークと対向する対向面と平行な方向に前記第1の支持部材と隣接する空隙が形成されている、プラズマCVD装置。
  2. 請求項1に記載のプラズマCVD装置であって、
    前記対向面にスリットが形成されている、プラズマCVD装置。
  3. 請求項2に記載のプラズマCVD装置において、
    前記陽極には、前記スリットと前記第1の穴との間に、第2の支持部材が挿入される第2の穴が形成されており、
    前記第2の穴に前記第2の支持部材が挿入された状態において、前記第2の穴には、前記第1の支持部材が挿入された状態における前記第1の穴に形成されている空隙よりも小さな空隙が形成されている、プラズマCVD装置。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のプラズマCVD装置において、
    前記第1の穴に形成されている前記空隙は、前記第1の穴に挿入された前記第1の支持部材に対して、前記対向面の中央部から外周縁に向かう方向と平行な方向に隣接して配置されている、プラズマCVD装置。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のプラズマCVD装置において、
    前記陽極と前記チャンバとの間、および前記チャンバと前記磁場形成部との間に空隙が形成されている、プラズマCVD装置。
  6. 請求項5に記載のプラズマCVD装置において、
    前記陽極と前記チャンバとの間に空隙が形成されており、該空隙において前記陽極に接して配置されているヒーターを備える、プラズマCVD装置。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のプラズマCVD装置において、
    前記磁場形成部は、前記チャンバと対向して配置されている永久磁石を有する、プラズマCVD装置。
  8. 請求項7に記載のプラズマCVD装置において、
    前記永久磁石は、ネオジム磁石である、プラズマCVD装置。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のプラズマCVD装置において、
    前記第1の支持部材の挿入方向に見た前記第1の穴の形状は、前記対向面と平行な方向に沿って延伸している形状である、プラズマCVD装置。
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