WO2018101444A1 - マグネトロンスパッタリング装置、及び、磁場形成装置 - Google Patents
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Abstract
マグネトロンスパッタリング装置の構成を簡略化する。 マグネトロンスパッタリング装置は、真空チャンバ、スパッタリングターゲット、内環状磁石、外環状磁石およびヨークを具備する。スパッタリングターゲットは、真空チャンバ内に配置される。内環状磁石は、スパッタリングターゲットの裏面側に配置されてスパッタリングターゲットの中央部および外縁部の近傍においてそれぞれ異なる極性の磁極を備えることによりスパッタリングターゲットの中央部および外縁部と交差してスパッタリングターゲットの表面側に膨出するループ状磁束を形成する。外環状磁石は、スパッタリングターゲットの裏面側における内環状磁石の外側に配置されてスパッタリングターゲットの外縁近傍におけるループ状磁束を調整する。ヨークは、内環状磁石および外環状磁石を保持する。
Description
本技術は、マグネトロンスパッタリング装置、及び、磁場形成装置に関する。
スパッタリング現象を利用した成膜法では、電極上に配置されたターゲット材料に、真空中で荷電粒子の陽イオン(Arイオン等)を衝突させ、ターゲット材料をスパッタリングさせ、基板上に堆積させる。スパッタリング現象を利用した成膜法の1つであるマグネトロンスパッタ法では、ターゲット裏面側に配設した磁場発生装置を用いてターゲット表面側に磁界(磁場)を形成し、プラズマ中の一次電子又はターゲット表面からスパッタリングされた二次電子をローレンツ力で捉えて周回ドリフト運動させることによりスパッタガス(Arガス等)とのイオン化衝突の頻度を増大させ、ターゲット付近に高密度プラズマを生成させることで、成膜速度の高速化を可能にする。
しかしながら、マグネトロンスパッタ法では、一次及び二次電子を捕捉する磁気トンネルがターゲット表面側のごく一部に局在するためプラズマ生成領域の局在を招き、ターゲットのごく一部領域(面積にして約10~20%)が選択的に侵食される。特に磁性材料では、選択的に浸食(エロージョン)された部位から磁力線漏れが発生して放電状態が変化することから、使用率15%以下でターゲットの交換を行わざるを得ず、ターゲット交換頻度の増大によるメンテナンス費用が嵩み、ランニングコスト悪化の要因となっていた。
このような課題を解決するべく、各種の技術が提案されている。
例えば特許文献1には、マグネトロン電極の磁場発生装置を、ターゲットの中央部から外周部に向かって順に、中心垂直磁石、内側平行磁石、外側平行磁石及び外周垂直磁石を配置した構成とし、内側平行磁石をターゲットに近づけて配置する技術が開示されている。この技術によれば、ターゲット表面の近傍上空の広範囲にプラズマを発生することが可能となり、ターゲット材料の利用効率を向上することが可能となる。
また、例えば特許文献2には、ターゲットの背面に配置され、ターゲットの表面に磁力線に基づく磁場を発生させる磁場発生装置であって、ターゲットの面に対して平行な方向に極軸を持つ環状の第1の磁石体と、第1の磁石体の内側に配置され、第1の磁石体の極軸の方向と平行な方向に極軸を持つ第2の磁石体と、第1の磁石体及び第2の磁石体を背面から支持する透磁性の基盤と、ターゲットの表面の磁界分布を変動させる磁界分布変動部材とを有し、磁界分布変動部材は、第1の磁石体及び第2の磁石体の間に、かつ基盤によって背面から支持されるように配置されている磁場発生装置について開示されている。この磁場発生装置によれば、第1の磁石体と第2の磁石体とが双方とも、ターゲットの面に対して平行な方向(横方向)に磁極が向くように透磁性の基盤の表面に支持され、ターゲットの表面上に漏洩する磁力線の浸食領域の幅を拡げてターゲットの外周部分の利用率を向上することができる。
しかしながら上述した技術は、浸食領域の拡大によるターゲット材料の利用効率の向上は実現されるものの、磁場発生装置の構造が複雑になるという問題があった。
本技術は、上述した課題に鑑みてなされたもので、マグネトロンスパッタ法を用いたスパッタリング装置を簡略化することを目的とする。
本技術の態様の1つは、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に配置されるスパッタリングターゲットと、前記スパッタリングターゲットの裏面側に配置されて上記スパッタリングターゲットの中央部および外縁部の近傍においてそれぞれ異なる極性の磁極を備えることにより上記スパッタリングターゲットの中央部および外縁部と交差して上記スパッタリングターゲットの表面側に膨出するループ状磁束を形成する内環状磁石と、上記スパッタリングターゲットの裏面側における上記内環状磁石の外側に配置されて上記スパッタリングターゲットの外縁近傍における上記ループ状磁束を調整する外環状磁石と、上記内環状磁石および上記外環状磁石を保持するヨークとを具備するマグネトロンスパッタリング装置である。この態様により、スパッタリングターゲットの表面にループ状磁束が形成されるとともにスパッタリングターゲットの外縁近傍におけるループ状磁束が調整されるという作用をもたらす。ループ状磁束によるミラー磁場の形成が想定される。
本技術の他の態様は、スパッタリングターゲットの裏面側に配置されて上記スパッタリングターゲットの中央部および外縁部の近傍においてそれぞれ異なる極性の磁極を備えることにより上記スパッタリングターゲットの中央部および外縁部と交差して上記スパッタリングターゲットの表面側に膨出するループ状磁束を形成する内環状磁石と、上記スパッタリングターゲットの裏面側における上記内環状磁石の外側に配置されて上記スパッタリングターゲットの外縁近傍における上記ループ状磁束を調整する外環状磁石と、上記内環状磁石および上記外環状磁石を保持するヨークとを具備する磁場形成装置である。この態様により、スパッタリングターゲットの表面にループ状磁束が形成されるとともにスパッタリングターゲットの外縁近傍におけるループ状磁束が調整されるという作用をもたらす。ループ状磁束によるミラー磁場の形成が想定される。
以上説明したマグネトロンスパッタリング装置や磁場形成装置は、他の機器に組み込まれた状態における実施や他の方法とともに実施される等の各種の態様を含む。
本技術によれば、ターゲット表面の広範囲にプラズマを発生させるマグネトロンスパッタリング装置の構成を簡略化するという優れた効果を奏する。
以下、図面を参照しつつ本技術の実施の形態について説明する。
<1.第1の実施の形態>
図1は、本技術の実施の形態に係るマグネトロンスパッタリング装置の概略構成を示す模式的な図である。以下、マグネトロンスパッタリング装置を単にスパッタリング装置と記載する。
図1は、本技術の実施の形態に係るマグネトロンスパッタリング装置の概略構成を示す模式的な図である。以下、マグネトロンスパッタリング装置を単にスパッタリング装置と記載する。
図1に示すように、スパッタリング装置100は、概略、真空チャンバ10、真空チャンバ10の内部に配置された基板支持部20、基板支持部20に対向して配置されたカソードとしてのターゲット保持装置30、及び、電圧印加部としてのDC電源40を有する。
真空チャンバ10には、真空排気配管13及びガス配管11が連結される。真空排気配管13には真空ポンプ12が接続され、真空チャンバ10の内部を真空雰囲気に排気可能となっている。真空排気配管13の途中にはバルブ14が設けられる。ガス配管11にはスパッタガス(水素、酸素、又は窒素、アルゴン等の不活性ガス、反応ガス等)のタンク等のガス導入装置15が接続され、ガス配管11を通して真空チャンバ10の内部にスパッタガス(水素、酸素、又は窒素、アルゴン等の不活性ガス、反応ガス等)が導入される。
基板支持部20は、成膜処理の対象となる半導体ウェハやガラス基板等の基板Sを支持する。図1に示すように、基板支持部20は、DC電源40の正極に接続される。基板支持部20及び真空チャンバ10はグランド電位に接続されている。
カソードとしてのターゲット保持装置30は、スパッタリングターゲット50を保持するとともに、当該スパッタリングターゲット50の上面付近に所定形状の磁場Mを形成する。このターゲット保持装置30が形成する磁場Mは、ターゲット保持装置30に保持されたスパッタリングターゲット50の上面51付近に、当該スパッタリングターゲット50と略同心円のリング状のプラズマ保持空間Rを形成する。
スパッタリングターゲット50は、金属製のバッキングプレート60に固定されてターゲット保持装置30に固定される。バッキングプレート60は、磁性体等で構成されるターゲット保持装置30を介して、DC電源40の負極に接続される。これにより、DC電圧印加時には、スパッタリングターゲット50の上面から略垂直に基板Sに向かう電場Eが形成される。なお、電圧印加部として、DC電源40以外を用いてもよい。
このようなスパッタリング装置100において、バッキングプレート60に負の高電圧が印加されると、スパッタリングターゲット50の表面付近にスパッタガスより生成された荷電粒子(陽イオンと電子)を含むプラズマが発生する。荷電粒子は、磁力線に巻きつくラーマー運動を行いつつ、電場Eとスパッタリングターゲット50表面の磁場Mの水平成分によるローレンツ力及び磁場発生装置により生じる磁場勾配及び磁力線の曲率などの磁場配位の影響によりスパッタリングターゲット50の上空で周回ドリフト運動を行う。
[ターゲット保持装置の構成]
図2は、本技術の第1の実施の形態に係るターゲット保持装置の概略構成を示す模式的な図である。図2を参照しつつ、ターゲット保持装置30がスパッタリングターゲット50の表面側に形成する磁場Mについて説明する。図2(a)はターゲット保持装置30の断面構造を模式的に示した図であり、図2(b)は図2(a)のターゲット保持装置30の一例を上方より見て示した図である。なお、以下では、スパッタリングターゲット50の上面51の中央部51a付近を上面中央部、上面51の外縁部51bを上面外縁部とし、上面中央部と上面外縁部の略中間を通るスパッタリングターゲット50と同心円の小円リング状部分を同心半円部と呼ぶ場合がある。
図2は、本技術の第1の実施の形態に係るターゲット保持装置の概略構成を示す模式的な図である。図2を参照しつつ、ターゲット保持装置30がスパッタリングターゲット50の表面側に形成する磁場Mについて説明する。図2(a)はターゲット保持装置30の断面構造を模式的に示した図であり、図2(b)は図2(a)のターゲット保持装置30の一例を上方より見て示した図である。なお、以下では、スパッタリングターゲット50の上面51の中央部51a付近を上面中央部、上面51の外縁部51bを上面外縁部とし、上面中央部と上面外縁部の略中間を通るスパッタリングターゲット50と同心円の小円リング状部分を同心半円部と呼ぶ場合がある。
ターゲット保持装置30が上面51付近に形成する磁場Mは、中央収束磁場M1と、外縁収束磁場M2と、中間磁場M3とを有する。
中央収束磁場M1は、スパッタリングターゲット50の上面51の中央部51a付近に形成される。外縁収束磁場M2は、スパッタリングターゲット50の上面51の外縁部51b付近に外縁部51bに沿って外縁部51b全体に亘って連続的に形成される。中間磁場M3は、スパッタリングターゲット50の上面51上方において、中央収束磁場M1と外縁収束磁場M2の間に形成される。
磁場M中の複数の磁力線により構成されるループ状磁束の、ある磁力線に沿う磁束密度を考えると、中間磁場M3中の磁束密度と比較して両側の中央収束磁場M1及び外縁収束磁場M2中の磁束密度の方が高い、いわゆるミラー磁場の構造を有する。すなわち、中間磁場M3中の磁束は、中央収束磁場M1と外縁収束磁場M2中の磁束に比べて密度が低い。中間磁場M3は、中央収束磁場M1を構成する磁力線と外縁収束磁場M2を構成する磁力線とを繋ぐ磁力線の集合であり、スパッタリングターゲット50の上面51と略平行に延びる磁力線の集合により形成される。
中央収束磁場M1の磁力線と外縁収束磁場M2の磁力線は、それぞれスパッタリングターゲット50の上面51(又は上面51を延長した仮想平面)と交差している。中間磁場M3の磁束は、スパッタリングターゲット50の上面51と交差しない。
磁場Mを構成する磁力線は、中央収束磁場M1と外縁収束磁場M2においてスパッタリングターゲット50の上面51(又は上面51を延長した仮想平面)と交差し中間磁場M3で互いに接続されて、スパッタリングターゲット50の表面51から遠ざかる方向に凸の山なりに膨出するループ状の磁束を形成する。また、磁場Mを構成する磁力線は、中央収束磁場M1において中央部51a付近に収束し、外縁収束磁場M2において外縁部51b付近に収束する。一方、磁場Mを構成する磁力線は、中間磁場M3において発散し、磁力線の密度が低下している。磁場Mは、スパッタリングターゲット50の上面付近における、スパッタリングターゲット50の中央部51a付近及び外縁部51b付近において強い磁場強度となっている。一方、磁場Mは、スパッタリングターゲット50の中央部51a付近及び外縁部51b付近を結ぶ磁力線に沿い、中央部51a及び外縁部51bから同心半円部に近づくにつれて徐々に弱い磁場強度となっている。
ここで、中央収束磁場M1および外縁収束磁場M2を構成する磁力線の本数は略等しい値になる。一方、図2(b)や後述する図20において明らかなように、外縁収束磁場M2はスパッタリングターゲット50の外縁部51bの全体を通る磁力線により構成されるため、外縁収束磁場M2の面積は中央収束磁場M1より大きくなる。このため、中央収束磁場M1に対して外縁収束磁場M2の磁束密度(磁場強度)が低下する。外環状磁石32を配置することにより、外縁収束磁場M2の磁束密度を高くすることができ、外縁収束磁場M2の磁束密度が中央収束磁場M1に比べて低下しないように調整することができる。
上述したループ状磁束において、中間磁場M3の最も磁束密度の低い箇所(磁場最弱部)の磁場強度と中央収束磁場M1及び外縁収束磁場M2の磁場強度との磁場強度比(磁気ミラー比)は2以上であり、より望ましくは5以上とする。磁気ミラー比が2の場合、ミラー磁場に入れた等方的な荷電粒子がミラー磁場から逃げ出す確率は約30%であり、磁気ミラー比が5の場合、ミラー磁場に入れた等方的な荷電粒子がミラー磁場から逃げ出す確率は約10%である。
このため、中央収束磁場M1と外縁収束磁場M2の間に挟まれたリング状の中間磁場M3においては、中央収束磁場M1側へ移動する荷電粒子に対しては磁気ミラー効果により中間磁場M3側へ押し戻す力が働き、外縁収束磁場M2側へ移動する荷電粒子に対しては磁気ミラー効果により中間磁場M3側へ押し戻す力が働くことになる。このように、中央収束磁場M1および外縁収束磁場M2が形成される領域は、荷電粒子を中間磁場M3に反射する領域である磁気ミラー領域を形成する。プラズマ保持空間R中の荷電粒子は、中間磁場M3を通り中央収束磁場M1と外縁収束磁場M2に連続する磁力線に沿って巻き付くようにラーマー運動を行い、スパッタリングターゲット50の半径方向へ移動する。しかし、プラズマ保持空間R中の荷電粒子は、磁気ミラー効果によって、荷電粒子がプラズマ保持空間Rから逃げ出す確率が低くなる。このため、プラズマ保持空間Rにおける荷電粒子閉じ込め効果が向上する。このプラズマ保持空間Rに閉じ込められる荷電粒子は主に電子であるが、表面51付近に一定(例えば、イオン温度が0.3eVの窒素分子(分子量28)の場合、数kG)以上の強度の磁場を形成すればイオンのラーマー運動の旋回半径が小さくなり、陽イオンのプラズマ保持空間Rへの閉じ込めも実効的に発生する。
このように、本実施形態に係るターゲット保持装置30においては、スパッタリングターゲット50の中央部51aと外縁部51bに挟まれたリング状の範囲全体がプラズマ保持空間Rとなるため、スパッタリングターゲット50の浸食領域を広く確保できる。また、プラズマ保持空間Rの外縁側の全周が外縁収束磁場M2で囲われており、プラズマ保持空間R内の荷電粒子の脱出路がほぼ遮蔽されているため、プラズマ保持空間Rから離脱する荷電粒子量が減少し、プラズマ空間形成に要するエネルギー投入効果を高めることができる。
図3は、本技術の第1の実施の形態に係るターゲット保持装置の構成例を示す図である。図3を参照して、上述した磁場Mを実現するターゲット保持装置30の具体的な一例を説明する。以下では、特にターゲット保持装置30を構成する磁石とヨークの形状及び配置について説明する。
図3に示すターゲット保持装置30は、内環状磁石31及び外環状磁石32、並びに、これら及びスパッタリングターゲット50を所定の相対的位置関係で容器状の内部に収容固定する磁性体33を有する。この磁性体33は、上述のヨークを構成する。磁性体33の外側は、金属板で形成されるグランドプレーン70によりスパッタリングターゲット50の上面の上方を除いて覆われており、電気的・磁気的に外部から遮蔽されている。なお、内環状磁石31、外環状磁石32およびヨークは、磁場形成装置を構成する。
スパッタリングターゲット50は、その側面の一部又は全部に突出部52を有する。突出部52は、表面51よりも裏面側にオフセットした面である段下がり面53を有する。スパッタリングターゲット50は、段下がり面53をスパッタリングターゲット50に向けて押圧するステンレス等の金属製の係止突起81によってバッキングプレート60に固定される。段下がり面53には押え金具80の爪状の係止突起81が当接され、押え金具80の基部82がバッキングプレート60にネジ止め等で固定される。係止突起81は、表面51の縁部51bに接しないように離間して固定されており、表面51の縁部51bと係止突起81との間に隙間が設けられている。これにより、表面51の外縁部51bに外縁収束磁場M2を形成しつつもスパッタリング材料でない係止突起81に浸食が及ばないように調整することが可能となる。また、係止突起81がバッキングプレート60とスパッタリングターゲット50とを固定する構造にすることにより、スパッタリングターゲット50とバッキングプレート60との間の接着用材料を省略することができる。この場合、アルミニウムやインジウム等の熱伝導率および電気伝導率が高く展延性に富む金属シートを挿入することにより(ターゲットとバッキングプレート間の空隙を隙間なく埋めるため柔らかい金属シートを使用する必要がある)、ターゲットの冷却効果及び電気伝導性を向上させることができる。なお、スパッタリングターゲット50に段下がり面53を設けない場合は、スパッタリングターゲット50の表面51に係止突起81の係止突起81が当接することになる。この場合には、磁場M全体を中央開口51aに向けて縮小して外縁収束磁場M2を中央開口51a寄りにオフセットさせることで係止突起81への浸食を抑制できる。
内環状磁石31及び外環状磁石32は、スパッタリングターゲット50と同心円状に配置された永久磁石であり、スパッタリングターゲット50の下方に配設される。磁性体33は上方開口の容器状であり、スパッタリングターゲット50並びに内環状磁石31及び外環状磁石32の下方及び側方を覆うように配設される。内環状磁石31とスパッタリングターゲット50との距離は、本実施形態では、バッキングプレート60の厚さで規定されるが、スパッタリングターゲット50の上面に適切な強度の磁場を発生出来れば様々に変更可能である。
外環状磁石32の内径(中央開口の径)は、内環状磁石31の外径よりも大きく、磁性体33の容器状の内部で外環状磁石32と内環状磁石31とが同心円状に配置されている。すなわち、内環状磁石31は、平面視、外環状磁石32の中央開口の内側に入れ子状に配設されている。
内環状磁石31は、所定の厚さを有する円環形状に構成されて、外環状磁石32よりもスパッタリングターゲット50寄りの位置関係で配設されている。すなわち、内環状磁石31の上面とスパッタリングターゲット50の下面との距離は、外環状磁石32の上面とスパッタリングターゲット50の下面との距離に比べて近くなるように配設してある。これは、図中上下方向の距離だけでなく、図中左右方向の距離についても同様である。このため、スパッタリングターゲット50の上面51側に形成する磁場Mの形状に対する寄与は、内環状磁石31の形成磁場が支配的であり、外環状磁石32の形成磁場が補助的である。
内環状磁石31は、中央開口31a側の端部である内端部31cが第一磁極(N極とS極の一方。図3にはN極を例示)を構成し、外側面31b側の端部である外端部31dが第二磁極(N極とS極の他方。図3にはS極を例示)を構成する。内環状磁石31において、第一磁極と第二磁極を結ぶ方向は、スパッタリングターゲット50の上面51の面方向と略平行に配向されている。内環状磁石31において、中央開口31a側に露出する面は全て同じ第一極性(第一磁極の極性)であり、外側面31b側に露出する面は全て同じ第二極性(第二磁極の極性)である。なお、中央開口31aは、請求の範囲に記載の開口部の一例である。
内環状磁石31の中央開口31aの径は可能な限り小さくすることが望ましい。中央開口31aの径を小さくするほど、中間磁場M3の磁場最弱部に対する中央収束磁場M1の磁場強度の比率である磁気ミラー比が大きくなり、プラズマ保持空間Rにおいて、中央収束磁場M1側のミラー効果が高まり、荷電粒子閉じ込め効果が向上する。なお、中央開口31aには、バッキングプレート60の裏面から突出する突起61を挿通してある。図3に示す内環状磁石31下部の空洞部分は冷却部(循環する冷却水を滞留させる冷却水溜め等)として使用可能であり、この冷却部に向けてバッキングプレート60から突起61を伝熱路として延設することでスパッタリングターゲット50の冷却効率を向上できる。むろん、突起61は、冷却部に達する程度に長く形成してもよい。
なお、内環状磁石31は、全体を一体的に形成して着磁された円環形状の永久磁石で構成する必要は無く、複数の永久磁石を組み合わせて円環形状に形成してもよい。複数の永久磁石を組み合わせて形成された内環状磁石31については後述する。
外環状磁石32は、円筒形状に構成され、円筒形状の中心軸に沿う方向の一方の端部である上端部32cが第二磁極(図3に示す例ではS極)を構成し、一方の端部である下端部32dが第一磁極(図3に示す例ではN極)を構成する。外環状磁石32は、第一磁極と第二磁極を結ぶ方向がスパッタリングターゲット50の上面51の面と略垂直な方向に配向されている。外環状磁石32において、上側面32a側に露出する面は全て同じ第二極性であり、下側面32b側に露出する面は全て同じ第一極性である。
外環状磁石32の内径は、スパッタリングターゲット50の外径と略同等であることが望ましい。この場合、内環状磁石31の外径は、スパッタリングターゲット50の外径よりもやや小さい程度に調整する。このように、平面視、内環状磁石31と外環状磁石32の隙間を、スパッタリングターゲット50の外縁部に位置させることにより、外縁収束磁場M2の磁場収束領域をスパッタリングターゲット50の外縁付近に位置するよう調整することができる。
外環状磁石32の外径は、後述する壁部33aの内径よりも著しく小さくすると、スパッタリングターゲット50上の磁場Mが、後述する壁部33aやフランジ状突起34よりも外側に張り出すように大きく湾曲した形状になる可能性が生じる。このため、磁場Mの大きな湾曲を防ぎながら外縁収束磁場M2の磁束密度が増加するように、適切な外径を設定する。
なお、外環状磁石32についても、内環状磁石31と同様、全体を一体的に形成して着磁された円筒形状の磁石で構成する必要は無く、複数の磁石を組み合わせて円筒形状に形成してもよい。例えば、第一磁極と第二磁極を結ぶ方向がいずれもスパッタリングターゲット50の上面に対して略垂直な方向に沿うように、複数の棒状磁石を円筒形状に配設して同様の磁気構造を実現してもよい。むろん、組み合わせる磁石の形状は棒状に限らず、その他、様々な形状の磁石を組み合わせることもできる。
外環状磁石32の極性は、下端部32dに比べて内環状磁石31の外端部31dに近づけて配設される上端部32cの極性を、内環状磁石31の外端部31dの極性と一致させる。すなわち、内環状磁石31の外端部31dと外環状磁石32の上端部32cとの間には斥力が働き、内環状磁石31の外端部31dが形成する磁場は、外環状磁石32の上端部32cの形成する磁場との斥力により、外環状磁石32が無い場合に比べて、外縁収束磁場M2の磁力線がターゲット表面と略垂直に近づき、且つ外縁収束磁場M2の磁束密度が高められる。このように、外環状磁石32は、スパッタリングターゲット51の外縁近傍におけるループ状磁束を調整する。
外環状磁石32の高さは、内環状磁石31の厚さと同程度かそれ以上とする。また、外環状磁石32の上端部32cと内環状磁石31の外端部31dとは、少なくともその一部が高さ方向において重複する位置関係であり、外環状磁石32の第二磁極が内環状磁石31の第二磁極の外側方に位置するように配設されている。より好ましくは、上端部32cの上面が外端部31dの高さ方向略半分以上に位置するように配設する。これにより、外環状磁石32において、内環状磁石31の外側面31d(第二磁極)に対面する部位が、第二磁極と同極性に帯磁した部位のみとなる。同極性の外環状磁石32と内環状磁石31との形成する磁場との斥力により、外縁収束磁場M2の磁力線が内環状磁石31の外端部31d付近においてスパッタリングターゲット50の上面に略垂直に延びる形状になるとともに高い収束性を得ることができる。なお、内環状磁石31および外環状磁石32の厚さとは、2つの磁極を通る面に垂直な方向に沿う大きさである。図3の断面図においては、内環状磁石31の厚さは垂直方向の大きさに該当し、外環状磁石32の厚さは水平方向の大きさに該当する。
このように、互いに反発する同極性の外環状磁石32の上端部32cと内環状磁石31の外端部31dとを近接配置するべく、内環状磁石31と外環状磁石32は、容器状の磁性体33の中で、上述した押え金具80やバッキングプレート60を含む各種の部材を用いてネジ止め等することで所定の位置関係を維持するように固定されている。
内環状磁石31と外環状磁石32には、保磁力が大きく耐熱性の高い、例えば、サマリウムコバルト磁石を用いることが望ましい。内環状磁石31の外径と外環状磁石32の内径の距離が短いため、保持力の大きい磁石を用いることにより、目的の磁場配位を得やすくなる。なお、ネオジム磁石を用いる場合は、水冷機構等の冷却装置を設けて冷却しながら使えばよい。
磁性体33は、スパッタリングターゲット50の側方を、スパッタリングターゲット50の上面と略垂直方向に延びて、外環状磁石32の外側方を囲うように設けた磁性体の壁部33aを有している。壁部33aの内壁面は、外環状磁石32の外側を上下に延びるように設けられており、スパッタリングターゲット50の上面よりも上方まで延びている。壁部33aがスパッタリングターゲット50の上面よりも上方まで延設されることにより、プラズマ保持空間Rを形成する磁場Mの磁力線が外方へ屈曲して膨出することを防ぐことができる。これにより、磁場配位を調整することができ、スパッタリングターゲット50の上面からの荷電粒子の逃げやスパッタリングターゲット50の上面以外における荷電粒子の周回ドリフト運動の発生を防止することができる。磁性体33は、内環状磁石31に隣接する底部を備える。また、この磁性体33の底部には、外環状磁石32がさらに隣接する。
壁部33aの上端には、内側に突出するフランジ状突起34が設けられている。フランジ状突起34の突出長は、平面視、スパッタリングターゲット50の外縁に達しない範囲とする。これにより、外縁収束磁場M2より外側の磁力線がフランジ状突起34に誘引され、外縁収束磁場M2と中間磁場M3の間に延びる磁束における磁場傾斜を急峻化させることができる。また、スパッタリングされたターゲット材料物質がスパッタリングターゲット50の上面から基板Sに向かって飛ぶ際に、フランジ状突起34が妨げとなることを防止することができる。
[内環状磁石の他の例]
図4は、本技術の第1の実施の形態に係る内環状磁石の構成例を示す図である。図4(a)に示すように、内環状磁石31は、第一磁極と第二磁極を結ぶ方向が内環状磁石31の径方向に沿うように複数の棒状磁石を中央開口31aから外側面31bに向かう放射状に配設して構成することも可能である。これにより、図2の内環状磁石31と同様の磁気構造を実現することができる。また、図4(b)に示すように、複数の扇形柱体状の磁石を組み合わせて同様の磁気構造を実現してもよい。その他、様々な形状の磁石を組み合わせて構成することもできる。
図4は、本技術の第1の実施の形態に係る内環状磁石の構成例を示す図である。図4(a)に示すように、内環状磁石31は、第一磁極と第二磁極を結ぶ方向が内環状磁石31の径方向に沿うように複数の棒状磁石を中央開口31aから外側面31bに向かう放射状に配設して構成することも可能である。これにより、図2の内環状磁石31と同様の磁気構造を実現することができる。また、図4(b)に示すように、複数の扇形柱体状の磁石を組み合わせて同様の磁気構造を実現してもよい。その他、様々な形状の磁石を組み合わせて構成することもできる。
[シミュレーション結果]
以下、ターゲット保持装置30のパラメータを各種調整して行った磁場シミュレーションの結果を説明する。
以下、ターゲット保持装置30のパラメータを各種調整して行った磁場シミュレーションの結果を説明する。
図5は、本技術の第1の実施の形態に係る第1の磁場シミュレーション結果を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、以下の条件において行ったものである。内環状磁石31の内径は4mm、外径は32mm、厚さは10mmである。外環状磁石32の内径は36mm、外径は56mm、厚さは10mm、高さは20mmである。フランジ状突起34上面とターゲット50の上面との距離は10mmであり、フランジ状突起34の幅は12mmである。なお、以下の全てのシミュレーションにおいて、内環状磁石31および外環状磁石32にはサマリウムコバルト磁石(残留磁束密度1.075T、保持力0.84T)を適用した。同図に示す結果では、中央収束磁場M1、外縁収束磁場M2にミラー磁場が形成されており、中央収束磁場M1と外縁収束磁場M2の間にスパッタリングターゲット50の上面と略平行な方向に延びる磁力線が接続する適切な磁場Mが形成されている。
図6は、本技術の第1の実施の形態に係る第2の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の内径を10mmに変更して行ったものである。同図に示すように、内環状磁石31の内径を拡大すると、中央収束磁場M1に形成される磁場の収束率が低下し、必要なミラー比が得られなくなる可能性が有る。逆に、内環状磁石31の内径は、小さくすればするほどミラー比の高いミラー磁場が形成され、浸食領域が中央部まで伸長することが分かる。
図7は、本技術の第1の実施の形態に係る第3の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の外径を20mmに変更して行ったものである。同図に示す磁場シミュレーションによれば、内環状磁石31の外径は、スパッタリングターゲット50の外径よりやや小さめの方が外縁収束磁場M2の磁束密度を高められることが分かる。むろん、内環状磁石31や外環状磁石32の保持力を維持しつつ、内環状磁石31の外径と外環状磁石32の内径とを一致可能であれば、そのようにしても構わない。
図8は、本技術の第1の実施の形態に係る第4の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示すシミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の厚さを20mmに変更して行ったものである。
図9は、本技術の第1の実施の形態に係る第5の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の厚さを30mmに変更して行ったものである。
図8および9に示す磁場シミュレーションによれば、内環状磁石31の厚さはスパッタリングターゲット50の外径に合わせて設定する必要があることが分かる。すなわち、内環状磁石31は、プラズマ保持空間Rを形成する磁力線がフランジ状突起34に掛からない程度の磁力線を発生する厚さにすることが望ましい。外縁収束磁場M2の磁束密度を高めることができるためである。
図10は、本技術の第1の実施の形態に係る第6の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、外環状磁石32の内径を46mmに変更して行ったものである(外環状磁石32の厚さは5mm)。同図に示す結果では、スパッタリングターゲット50の上面外縁部での磁場が十分に収束せず磁気ミラー比が不十分になっており、外環状磁石32の内径は、内環状磁石31の外径と同程度であることが望ましいことが分かる。
図11は、本技術の第1の実施の形態に係る第7の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、外環状磁石32の外形を46mmに変更して行ったものである(外環状磁石32の厚さは5mm)。同図に示す磁場シミュレーションによれば、外環状磁石32の外径を小さくすると、スパッタリングターゲット50の上面付近に形成される中間磁場M3を構成する磁力線が外方に膨出してフランジ状突起34や壁部33a等に掛かってしまうこととなる。このため、中間磁場M3を構成する磁力線が外方に膨出しない程度に外環状磁石32の外径を設定し、外縁収束磁場M2の磁束密度を高める必要が有ることが分かる。
図12は、本技術の第1の実施の形態に係る第8の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示すシミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、外環状磁石32の高さを10mmに変更して行ったものである。
図13は、本技術の第1の実施の形態に係る第9の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、外環状磁石32の高さを30mmに変更して行ったものである。
図12および13に示す磁場シミュレーションによれば、外環状磁石32の高さは、内環状磁石31の厚さと同程度以上であれば、外縁収束磁場M2の磁束密度を高められることが分かる。
図14は、本技術の第1の実施の形態に係る第10の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図の磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、フランジ状突起34の上面とスパッタリングターゲット50の上面との距離を0mmに変更して行ったものである。
図15は、本技術の第1の実施の形態に係る第11の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、フランジ状突起34の上面とスパッタリングターゲット50の上面との距離を20mmに変更して行ったものである。
図14および15に示す磁場シミュレーションによれば、壁部33aは、スパッタリングターゲット50の上面よりも上方に位置している方が外縁収束磁場M2の磁力線がターゲット表面と略垂直に近づくことが分かる。
図16は、本技術の第1の実施の形態に係る第12の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示すシミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、フランジ状突起34の幅を7mmに変更して行ったものである。この場合、磁性体33の壁部の上端部の厚さとフランジ状突起34が形成される部分の厚さが等しくなり、フランジ状突起34が存在しない状態になる。
図17は、本技術の第1の実施の形態に係る第13の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、フランジ状突起34の幅を17mmに変更して行ったものである。
図16に示す磁場シミュレーションによれば、フランジ状突起34を設けない場合は壁部33a付近にプラズマ閉じ込めが発生して壁部33a付近でスパッタリングが行われ、スパッタリングされる物質中に不純物が混入する可能性が有る。フランジ状突起34を設けることにより、壁部33a付近におけるスパッタリングを防止することができる。一方、図17に示す磁場シミュレーションによれば、フランジ状突起34の張り出し長がスパッタリングターゲット50の外縁部に近づく程、中間磁場M3を構成する磁力線がフランジ状突起34に掛かりやすくなる。フランジ状突起34の長さを調整し、磁場Mの形状を最適化する必要がある。また、スパッタリングターゲット50の上面からスパッタリングされるターゲット材料物質の飛行を阻害しない程度の長さに調整する観点も必要である。
図18は、本技術の第1の実施の形態に係る第14の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示すシミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、磁性体33における外環状磁石32の取り付け位置を高さ方向に5mm下げて行ったものである。
図19は、本技術の第1の実施の形態に係る第15の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、磁性体33における外環状磁石32の取り付け位置を高さ方向に5mm上げて行ったものである。
図18および19に示す磁場シミュレーションによれば、内環状磁石31と外環状磁石32の位置関係は、外環状磁石32の上面を、内環状磁石31の上面よりも低く、内環状磁石31の下面よりも高くすれば良いことが分かる。また、外環状磁石32の上面を、内環状磁石31の厚さ方向の略半分の深さ方向位置に、外環状磁石32の上面が来る程度に調整すると外縁収束磁場M2の磁力線がターゲット表面と略垂直に近づき、好適であることが分かる。
図20は、本技術の第1の実施の形態に係る第16の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、フランジ状突起34を設けず壁部33aの高さをスパッタリングターゲット50の下面に揃えてスパッタリングターゲット50の外径と磁性体33の外径とを一致させて行ったものである。これ以外のシミュレーション条件は、図5において説明したシミュレーションと同様である。この場合、内環状磁石31の略上方にループ状磁束が形成され、しかも、内環状磁石31の外縁よりも外方へ伸長したスパッタリングターゲット50の上方にもループ状磁束が形成される。すなわち、内環状磁石31の略上方に形成されたループ状磁束の外側を囲うもう一つのループ状磁束が形成される。図20に示す磁場シミュレーションの条件下では、内環状磁石31と外環状磁石32の間の略上方に形成される第1外縁収束磁場(スパッタリングターゲット50を外方へ伸長する前の外縁収束磁場M2に対応)の磁場強度が0.1T、外方へ伸長したスパッタリングターゲット50の外縁部に形成される第2外縁収束磁場の磁場強度が0.02T、これらの略中間の磁場である磁場最弱部の磁場強度が0.035Tであり、この磁場最弱部に対する第2収束磁場の磁気ミラー比は約1.75、磁場最弱部に対する第1収束磁場の磁気ミラー比は約2.8であった。なお、中間磁場M3の磁場最弱部の磁場強度と中央収束磁場M1及び第1収束磁場の磁場強度との磁気ミラー比は2以上である。このようにループ状磁束を内外2重に形成するとターゲット径の拡張が容易であり、内側のループ状磁束における荷電粒子の閉じ込め効率を向上することができる。
なお、図20に示すような壁部33aの高さをスパッタリングターゲット50の下面以下とした上面平坦なスパッタリング装置100の場合、スパッタリングターゲットに比べて小面積のスパッタリング装置100を複数並設し、大面積のスパッタリングターゲットのスパッタリングを行うことも可能である。逆に言えば、スパッタリングターゲットの形状やサイズに合わせてスパッタリング装置100の並設数や並設レイアウトを適宜変更可能であり、ターゲットに最適な形の浸食領域(ターゲット利用効率がより増大する形状等)を形成することが可能である。
[プラズマ放電の例]
図21は、本技術の第1の実施の形態に係るプラズマ放電の一例を示す図である。図21は、図3において説明したターゲット保持装置30を使用してスパッタリングを行った際のプラズマ放電の様子を表したものであり、スパッタリングターゲット50の表面のプラズマ放電をスパッタリングターゲット50の上方から観察した際の画像である。図21の円形状のスパッタリングターゲット50の上方にリング形状のプラズマが生成していることがわかる。スパッタリングターゲットの比較的広い範囲にプラズマが生成しており、スパッタリングターゲットの選択的浸食を軽減することができる。
図21は、本技術の第1の実施の形態に係るプラズマ放電の一例を示す図である。図21は、図3において説明したターゲット保持装置30を使用してスパッタリングを行った際のプラズマ放電の様子を表したものであり、スパッタリングターゲット50の表面のプラズマ放電をスパッタリングターゲット50の上方から観察した際の画像である。図21の円形状のスパッタリングターゲット50の上方にリング形状のプラズマが生成していることがわかる。スパッタリングターゲットの比較的広い範囲にプラズマが生成しており、スパッタリングターゲットの選択的浸食を軽減することができる。
この際、スパッタリング装置100において、スパッタリングターゲット50と基板との間の距離は280mmに設定した。また、ターゲットには直径50mmのアルミニウムを使用し、スパッタガスにはアルゴンを使用した。このようなスパッタリング装置100において、ガスの圧力:0.1Pa(流量:7.0sccm)、投入電力:15W(DC)の条件によりスパッタリングを行い、0.2nm/分の成膜速度が得られた。スパッタリングターゲットと基板との間が比較的離れている(280mm)ことを考慮すると、実用に足る成膜速度となった。この際の電力密度は、0.76W/cm2である。前述のように、スパッタリングターゲット50の中央部及び外縁部の間に形成されたループ状磁束がミラー磁場を構成し、スパッタリングターゲット50の中央部と外縁部とに荷電粒子を中間磁場M3側へ押し戻す磁気ミラー領域を形成する。図21に表したように、このミラー領域に挟まれた領域に荷電粒子が閉じ込められることとなり、高密度のプラズマが生成される。これにより、低電力および低ガス圧の条件であっても、スパッタリングを行うことができる。なお、プラズマ放電開始時のチャンバ内ガス圧力は0.7Paであり、通常より低い圧力において放電を開始させることができる。これも、荷電粒子の閉じ込め効果によるものである。
なお、図21は、直流電源によるスパッタリングの例であるが、高周波スパッタリングに適用可能であることは、言うまでもないことである。
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、円形状のターゲットを保持するターゲット保持装置を使用していた。これに対し、本技術の第2の実施の形態では、長方形の形状のターゲットを保持するターゲット保持装置を使用する点で第1の実施の形態と異なる。
上述の第1の実施の形態では、円形状のターゲットを保持するターゲット保持装置を使用していた。これに対し、本技術の第2の実施の形態では、長方形の形状のターゲットを保持するターゲット保持装置を使用する点で第1の実施の形態と異なる。
[ターゲット保持装置の構成]
図22は、本技術の第2の実施の形態に係るターゲット保持装置の概略構成を示す模式的な図である。この図22は、ターゲット保持装置30を上方より見た際の図である。図22のスパッタリングターゲット50は、長方形の形状を有する点で図2において説明したスパッタリングターゲット50と異なる。図22のターゲット保持装置においても、スパッタリングターゲット50の中央部51aと外縁部51bとの間に磁場Mが形成される。
図22は、本技術の第2の実施の形態に係るターゲット保持装置の概略構成を示す模式的な図である。この図22は、ターゲット保持装置30を上方より見た際の図である。図22のスパッタリングターゲット50は、長方形の形状を有する点で図2において説明したスパッタリングターゲット50と異なる。図22のターゲット保持装置においても、スパッタリングターゲット50の中央部51aと外縁部51bとの間に磁場Mが形成される。
[内環状磁石の他の例]
図23は、本技術の第2の実施の形態に係る内環状磁石の構成例を示す図である。また、図24は、本技術の第2の実施の形態に係る内環状磁石の他の構成例を示す図である。図23の内環状磁石は、複数の棒状磁石により内環状磁石を構成する場合の例である。図24は、一端が円弧形状に欠切された正方形の形状の磁石と長方形の形状の磁石とにより内環状磁石を構成する場合の例である。これらの内環状磁石は、何れも中央部に長円形状の開口部を備える。なお、内環状磁石の構成はこの例に限定されない。例えば、長方形の形状の開口部を備える構成にすることもできる。
図23は、本技術の第2の実施の形態に係る内環状磁石の構成例を示す図である。また、図24は、本技術の第2の実施の形態に係る内環状磁石の他の構成例を示す図である。図23の内環状磁石は、複数の棒状磁石により内環状磁石を構成する場合の例である。図24は、一端が円弧形状に欠切された正方形の形状の磁石と長方形の形状の磁石とにより内環状磁石を構成する場合の例である。これらの内環状磁石は、何れも中央部に長円形状の開口部を備える。なお、内環状磁石の構成はこの例に限定されない。例えば、長方形の形状の開口部を備える構成にすることもできる。
これ以外のスパッタリング装置100の構成は、図1において説明したスパッタリング装置100と同様であるため、説明を省略する。
<3.第3の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、一定の厚さに構成された内環状磁石31および外環状磁石32を使用していた。これに対し、本技術の第3の実施の形態では、2つの磁極の近傍における厚さが異なる内環状磁石31および外環状磁石32を使用する点で第1の実施の形態と異なる。
上述の第1の実施の形態では、一定の厚さに構成された内環状磁石31および外環状磁石32を使用していた。これに対し、本技術の第3の実施の形態では、2つの磁極の近傍における厚さが異なる内環状磁石31および外環状磁石32を使用する点で第1の実施の形態と異なる。
[磁石の構成]
第3の実施の形態における内環状磁石31は、内端部31cおよび外端部31dにおいて同じ厚さに構成されていた。また、外環状磁石32は、上端部32cおよび下端部32dにおいて同じ厚さに構成されていた。これら内端部31cおよび外端部31dならびに上端部32cおよび下端部32dにはそれぞれ磁極が形成されているため、これらをそれぞれ異なる厚さに構成することにより、これらの近傍の磁束密度を変更することができる。これにより、ループ状磁束を調整することが可能となる。以下、シミュレーションの結果の一例を示す。
第3の実施の形態における内環状磁石31は、内端部31cおよび外端部31dにおいて同じ厚さに構成されていた。また、外環状磁石32は、上端部32cおよび下端部32dにおいて同じ厚さに構成されていた。これら内端部31cおよび外端部31dならびに上端部32cおよび下端部32dにはそれぞれ磁極が形成されているため、これらをそれぞれ異なる厚さに構成することにより、これらの近傍の磁束密度を変更することができる。これにより、ループ状磁束を調整することが可能となる。以下、シミュレーションの結果の一例を示す。
[シミュレーション]
図25は、本技術の第3の実施の形態に係る第1の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の外縁部の厚さを5mmに変更して行ったものである。なお、内環状磁石31の中央開口51a近傍の厚さは10mmである。同図のシミュレーションは、図5おいて説明したシミュレーションにおいて外端部31dの大きさを内端部31cより小さくした場合を想定したものである。
図25は、本技術の第3の実施の形態に係る第1の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の外縁部の厚さを5mmに変更して行ったものである。なお、内環状磁石31の中央開口51a近傍の厚さは10mmである。同図のシミュレーションは、図5おいて説明したシミュレーションにおいて外端部31dの大きさを内端部31cより小さくした場合を想定したものである。
図26は、本技術の第3の実施の形態に係る第2の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図25において説明したシミュレーションに対し、外環状磁石32の上方厚さを10mm、下方厚さを5mmに変更して行ったものである。同図のシミュレーションは、外環状磁石32の下端部32dの大きさを上端部32cより小さくした場合を想定したものである。
図27は、本技術の第3の実施の形態に係る第3の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図25において説明したシミュレーションに対し、外環状磁石32の上方厚さを5mm、下方厚さを10mmに変更して行ったものである。同図のシミュレーションは、図26のシミュレーションとは逆に、外環状磁石32の上端部32cの大きさを下端部32dより小さくした場合を想定したものである。
図28は、本技術の第3の実施の形態に係る第4の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図25において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の中央開口51a近傍の厚さを5mm、外縁部の厚さを10mmに変更して行ったものである。同図のシミュレーションは、図25とは逆に、内環状磁石31の内端部31cの大きさを外端部31dより小さくした場合を想定したものである。
図29は、本技術の第3の実施の形態に係る第5の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図28において説明したシミュレーションに対し、外環状磁石32の上方厚さを10mm、下方厚さを5mmに変更して行ったものである。同図のシミュレーションは、図26のシミュレーションと同様に、外環状磁石32の下端部32dの大きさを上端部32cより小さくした場合を想定したものである。
図30は、本技術の第3の実施の形態に係る第6の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図28において説明したシミュレーションに対し、外環状磁石32の上方厚さを5mm、下方厚さを10mmに変更して行ったものである。同図のシミュレーションは、図27のシミュレーションと同様に、外環状磁石32の上端部32cの大きさを下端部32dより小さくした場合を想定したものである。
図25および28のシミュレーション結果により、内環状磁石31を内端部31cおよび外端部31dにおいて異なる厚さに構成することによりループ状磁束を調整可能なことが分かる。具体的には、ループ状磁束を調整することにより、スパッタリングターゲット50の中央部の磁場強度を高くすることができる。図28に表したように、内端部31cの厚さを外端部31dより小さくした場合には、内端部31cにおける磁力線を発生させる領域が縮小することとなる。しかし、内端部31cおよび外端部31dが同一の磁石により構成される場合には、これらの磁極における磁力線の本数が等しくなるため、内端部31cにおける磁束密度が高くなる。これは、例えば、図20において説明した長方形の形状のスパッタリングターゲット50を使用する場合における短辺近傍に配置される磁石に適用すると好適である。スパッタリングターゲット50の中央部に対して外縁部の領域が拡大されているためである。
一方、外端部31dの厚さを内端部31cより小さくした場合には、内環状磁石31の全周にわたる外端部31dの面積と内端部31cの面積との差が小さくなる。磁極の端面における磁束密度は、2つの磁極面において保存されるため、外端部31dに対する内端部31cの面積の増加に応じて内端部31c側の端面から発せられる磁力線が増加することとなる。このため、中央開口51aの磁束密度を高くすることができる。これは、例えば、図20において説明した長方形の形状のスパッタリングターゲット50を使用する場合における長辺中央部近傍に配置される磁石に適用することができる。
このように、内端部31cの厚さを外端部31dより小さくした場合および外端部31dの厚さを内端部31cより小さくした場合の何れにおいてもループ状磁束を調整することができる。スパッタリングターゲット50の形状に合わせて最適な内環状磁石31の構成を選択することにより、スパッタリングターゲット50の表面におけるミラー領域の磁場強度を向上させることができる。
また、外環状磁石32の上端部32cおよび下端部32dの厚さを変更することにより、ループ状磁束のスパッタリングターゲット50の外縁部の磁束を調整することができる。上端部32cおよび下端部32dの厚さを変更することにより、磁化ベクトルの方向を軸方向に対して垂直な方向から変更することが可能なためである。例えば、上端部32cより下端部32dの厚さを大きくした場合には、上端部32cの近傍の磁化ベクトルの方向をスパッタリングターゲット50に近接する方向に調整することができる。これにより、スパッタリングターゲット50の外縁部のループ状磁束をより垂直な方向に調整することが可能となり、スパッタリングターゲット50の外縁部のミラー領域の磁場強度を向上させることができる。また、スパッタリングターゲット50を固定する押さえ金具80等からループ状磁束を離すことができ、押え金具80等のスパッタリングを抑制することができる。
また、内環状磁石31と同様に、外環状磁石32の上端部32cおよび下端部32dの厚さを変更することにより、これらの磁極における磁束密度を調整することができる。すなわち、スパッタリングターゲット50の外縁部のループ状磁束をより垂直な方向に調整することが可能となる。
なお、ターゲット保持装置30の構成は、図25乃至30の構成に限定されない。例えば、内環状磁石31を一定の厚さに構成しながら外環状磁石32の上端部32cおよび下端部32dの厚さを変更する構成にすることができる。また、例えば、内環状磁石31および外環状磁石32の厚さを変更した箇所においても、磁性体33に接触させる構成にすることもできる。例えば、図25において、磁性体33の形状を変更することにより、内環状磁石31の底部全面を磁性体33に接触させる構成にすることもできる。
これ以外のスパッタリング装置100の構成は、図1において説明したスパッタリング装置100と同様であるため、説明を省略する。
<4.第4の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、磁化の方向に対して垂直に形成された中央開口51aを備える内環状磁石31を使用していた。これに対し、本技術の第4の実施の形態では、テーパ形状の断面を有する中央開口51aを備える外環状磁石32を使用する点で第1の実施の形態と異なる。
上述の第1の実施の形態では、磁化の方向に対して垂直に形成された中央開口51aを備える内環状磁石31を使用していた。これに対し、本技術の第4の実施の形態では、テーパ形状の断面を有する中央開口51aを備える外環状磁石32を使用する点で第1の実施の形態と異なる。
[磁石の構成]
第4の実施の形態における内環状磁石31は、中央開口51aの断面の形状を変更することにより、ループ状磁束を調整する。具体的には、スパッタリングターゲット50側から見た内環状磁石31の中央開口51aを順テーパおよび逆テーパの形状に構成する。これにより、内端部31cから発せられる磁束の方向を調整することができる。以下、シミュレーションの結果を示す。
第4の実施の形態における内環状磁石31は、中央開口51aの断面の形状を変更することにより、ループ状磁束を調整する。具体的には、スパッタリングターゲット50側から見た内環状磁石31の中央開口51aを順テーパおよび逆テーパの形状に構成する。これにより、内端部31cから発せられる磁束の方向を調整することができる。以下、シミュレーションの結果を示す。
[シミュレーション]
図31は、本技術の第4の実施の形態に係る第1の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の上方の内径を4mm、下方の内径を10mmに変更して行ったものである。この場合、内環状磁石31の中央開口51aは逆テーパの形状となる。同図に示すように、図5における磁場Mと同様の磁場が形成されることが分かる。すなわち、内環状磁石31の上方の内径が同じであれば、内環状磁石31の下方の内径に関わらず同等の磁場が形成され得る。
図31は、本技術の第4の実施の形態に係る第1の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の上方の内径を4mm、下方の内径を10mmに変更して行ったものである。この場合、内環状磁石31の中央開口51aは逆テーパの形状となる。同図に示すように、図5における磁場Mと同様の磁場が形成されることが分かる。すなわち、内環状磁石31の上方の内径が同じであれば、内環状磁石31の下方の内径に関わらず同等の磁場が形成され得る。
また、中央開口51aを逆テーパの形状にすることにより、内環状磁石31の内端部31cから発せられる磁力線の角度を下向きに微調整することが可能となる。また、内環状磁石31の上方の内径を4mmからさらに小さくすることにより、図3において前述した中央開口31aの径を小さくすることと同様の効果を得ることができる。このように、中央開口51aを逆テーパの形状に構成するとともにテーパの形状を調整することにより、スパッタリングターゲット50の中央部近傍のループ状磁束の磁束密度を高くすることができる。
図32は、本技術の第4の実施の形態に係る第2の磁場シミュレーション結果の一例を示す図である。同図に示す磁場シミュレーションは、図5において説明したシミュレーションに対し、内環状磁石31の上方の内径を10mm、下方の内径を4mmに変更して行ったものである。この場合、内環状磁石31の中央開口51aは順テーパの形状となる。図31のシミュレーション結果と比較すると、スパッタリングターゲット50の表面のループ状磁束がスパッタリングターゲット50の外縁部にシフトしていることが分かる。このように、中央開口51aを順テーパの形状に構成するとともにテーパの形状を調整することにより、スパッタリングターゲット50の表面のループ状磁束をスパッタリングターゲット50の径方向にシフトさせることができる。
以上説明したように、内環状磁石31の中央開口51aのテーパの形状を調整することにより、ループ状磁束を調整することが可能となる。
これ以外のスパッタリング装置100の構成は、図1において説明したスパッタリング装置100と同様であるため、説明を省略する。
なお、本技術は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また、本技術の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
10…真空チャンバ、11…ガス配管、12…真空ポンプ、13…真空排気配管、14…バルブ、15…ガス導入装置、20…基板支持部、30…ターゲット保持装置、31…内環状磁石、31a…中央開口、31b…外側面、31c…内端部、31d…外端部、32…外環状磁石、32a…上側面、32b…下側面、32c…上端部、32d…下端部、33…磁性体、33a…壁部、34…フランジ状突起、40…DC電源、50…スパッタリングターゲット、51…上面、51a…中央部、51b…外縁部、52…突出部、53…段下がり面、60…バッキングプレート、61…突起、70…グランドプレーン、80…押え金具、81…係止突起、82…基部、100…スパッタリング装置、E…電場、M…磁場、M1…中央収束磁場、M2…外縁収束磁場、M3…中間磁場、S…基板
Claims (15)
- 真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に配置されるスパッタリングターゲットと、
前記スパッタリングターゲットの裏面側に配置されて前記スパッタリングターゲットの中央部および外縁部の近傍においてそれぞれ異なる極性の磁極を備えることにより前記スパッタリングターゲットの中央部および外縁部と交差して前記スパッタリングターゲットの表面側に膨出するループ状磁束を形成する内環状磁石と、
前記スパッタリングターゲットの裏面側における前記内環状磁石の外側に配置されて前記スパッタリングターゲットの外縁近傍における前記ループ状磁束を調整する外環状磁石と、
前記内環状磁石および前記外環状磁石を保持するヨークと
を具備するマグネトロンスパッタリング装置。 - 前記外環状磁石は、前記内環状磁石における2つの前記磁極を含む面に対して略垂直方向に2つの磁極が配向されるとともに前記内環状磁石の外縁部における磁極と同じ極性の磁極を有する端面が前記内環状磁石の外縁部の近傍に配置されることにより前記ループ状磁束を調整する請求項1記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記外環状磁石は、前記ループ状磁束を調整することにより前記スパッタリングターゲットの外縁部における前記ループ状磁束を前記スパッタリングターゲットに対して略垂直に交差させる請求項2記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記外環状磁石は、前記スパッタリングターゲットの表面にミラー磁場を形成する請求項3記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記外環状磁石は、前記ループ状磁束における磁場強度最弱部に対して磁場強度比が2以上の磁気ミラー領域を有する前記ミラー磁場を形成する請求項4記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記内環状磁石は、所定の厚さに構成され、
前記外環状磁石は、前記内環状磁石の所定の厚さ以上の厚さを有する略円筒形状に構成されるとともに前記端面が前記内環状磁石の上端および下端の間に配置される
請求項2記載のマグネトロンスパッタリング装置。 - 前記外環状磁石は、前記端面を上面とする略円筒形状に構成されて前記上面に対向する下面と前記上面とにおける径方向の厚さが異なる請求項2記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記内環状磁石は、前記スパッタリングターゲットの中央部近傍に開口部を備える請求項1記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記内環状磁石は、前記開口部における厚さと周縁部における厚さとが異なる請求項8記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記内環状磁石は、テーパ形状に構成された前記開口部を備える請求項8記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記内環状磁石は、前記スパッタリングターゲットの裏面側に配置されて前記スパッタリングターゲットの中央部および外縁部の近傍においてそれぞれ異なる極性の磁極を備える複数の磁石による構成される請求項1記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記外環状磁石は、前記内環状磁石における2つの磁極を含む面に対して略垂直方向に2つの磁極が配向される複数の磁石により構成される請求項2記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記ヨークは、磁性材料により構成され、前記内環状磁石に隣接する底部と、前記外環状磁石の外縁に隣接するとともに前記スパッタリングターゲットの表面よりも前記真空チャンバ内に延在する壁部とを備える請求項1記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- 前記ヨークは、前記延在する壁部の端部において内周方向に配置されるフランジ状突起をさらに備える請求項13記載のマグネトロンスパッタリング装置。
- スパッタリングターゲットの裏面側に配置されて前記スパッタリングターゲットの中央部および外縁部の近傍においてそれぞれ異なる極性の磁極を備えることにより前記スパッタリングターゲットの中央部および外縁部と交差して前記スパッタリングターゲットの表面側に膨出するループ状磁束を形成する内環状磁石と、
前記スパッタリングターゲットの裏面側における前記内環状磁石の外側に配置されて前記スパッタリングターゲットの外縁近傍における前記ループ状磁束を調整する外環状磁石と、
前記内環状磁石および前記外環状磁石を保持するヨークと
を具備する磁場形成装置。
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- 2017-11-30 WO PCT/JP2017/043185 patent/WO2018101444A1/ja active Application Filing
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