JP2015218220A - ポリカーボネート樹脂および光学フィルム - Google Patents

ポリカーボネート樹脂および光学フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】光弾性定数が低く、流動性が良好で、熱安定性に優れ、安全性が良好であり、位相差フィルムや偏光板の保護フィルム等の光学用途に適した波長分散性を発現できるポリカーボネート樹脂および光学フィルムの提供。
【解決手段】(A)で表される繰り返し単位を含むポリカーボネート樹脂であって、繰り返し単位(A)を誘導するジヒドロキシフルオレンをホスト化合物としたホストゲスト錯体を含むジヒドロキシ成分と炭酸ジエステルとを重合触媒の存在下溶融重合して得られる、比粘度が0.20〜1.50であるポリカーボネート樹脂。
Figure 2015218220

【選択図】なし

Description

本発明は、光弾性定数が低く、流動性が良好で、熱安定性に優れ、安全性の良好なポリカーボネート樹脂および所望の波長分散特性を有する光学フィルムに関するものである。
従来、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)にカーボネート前駆物質を反応させて得られるポリカーボネート樹脂(以下、PC−Aという)は透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性が優れているがゆえにエンジニアリングプラスチックとして多くの分野に広く使用されてきた。さらに近年その透明性を生かして光ディスク、フィルム、レンズ等の分野への光学用材料としての利用が展開されている。
しかしながら、PC−Aを用いた場合、正の複屈折が高く、光弾性定数が高いことから、光学用途として用いる時に、光学歪みが起こり、様々な問題が起きている。例えば、光学レンズに用いた場合、成形品の複屈折が大きくなるという欠点がある。また、位相差フィルムとして用いた場合、応力による複屈折の変化が大きく光抜けが起こることや、λ/4板、λ/2板として機能しうる波長が特定の波長に限られるという問題があった。
そこで、上記問題への対策として様々な手法が検討されている。その一つとして、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンにカーボネート前駆物質を反応させ、ポリカーボネート樹脂を得る方法が提案されている(特許文献1、2)。しかしながら、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンは人体への安全性に課題があり、皮膚がかぶれる問題があった。そのため、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンからなるポリカーボネート樹脂が提案されている(例えば特許文献3、4参照)。しかしながら、このポリカーボネート樹脂は、ベンジル位のメチル基が酸化されやすいため、射出成形時に着色したり、溶融製膜での製造時に分解による気泡やゲルなどが発生したりする問題があった。また、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類モノマーの製造方法が提案されている(特許文献5)。しかしながら、精製に大量の溶剤を使用するため、環境に好ましくないという問題があった。
その為、低い光弾性定数と成形に適した流動性と優れた熱安定性を高度に具備し、位相差フィルムや偏光板の保護フィルム等の光学用途に適した波長分散性を実現できるポリカーボネート樹脂およびそれを用いてなる光学フィルムは未だ提供されていなかった。
特開昭63−182336号公報 特開平6−145327号公報 特開平11−80529号公報 特許第5119250号公報 特許第4219643号公報
本発明の目的は、光弾性定数が低く、流動性が良好で、熱安定性に優れ、安全性が良好であり、しかもフィルムにしたときに位相差フィルムや偏光板の保護フィルム等の光学用途に適した波長分散性を発現できるポリカーボネート樹脂およびそれを用いた光学フィルムを提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ジヒドロキシフルオレン類のホストゲスト錯体を含むジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆物質を反応させることによって、低い光弾性定数と優れた熱安定性を高度に具備するポリカーボネート樹脂が得られることを究明した。一般的に高度に精製された原料を用いて樹脂を重合することが当業者にとって常識だが、本発明においては不純物であるゲスト化合物を含む状態で重合することで、安全性に優れた方法でポリカーボネート樹脂を重合することができ、さらに品質に優れる樹脂が得られたことは驚くべきことである。この樹脂をフィルムにすることで位相差フィルムや偏光板の保護フィルム等の光学用途に適した波長分散を発現できることを究明し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.下記式(A)で表される繰り返し単位(A)を含むポリカーボネート樹脂であって、繰り返し単位(A)を誘導するジヒドロキシフルオレンをホスト化合物としたホストゲスト錯体を含むジヒドロキシ成分と炭酸ジエステルとを重合触媒の存在下溶融重合して得られる、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20〜1.50であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
Figure 2015218220
[式中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示し、pおよびqは夫々独立して0以上の整数を示す。]
2.繰り返し単位(A)を誘導するジヒドロキシフルオレンが、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンおよび9,9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である上記1記載のポリカーボネート樹脂。
3.繰り返し単位(A)を誘導するジヒドロキシフルオレンのゲスト化合物がアセトニトリル、アセトンおよび炭素数1〜4の炭化水素アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である上記1記載のポリカーボネート樹脂。
4.上記1記載のポリカーボネート樹脂から形成される光学レンズ。
5.上記1記載のポリカーボネート樹脂から形成される未延伸フィルム。
6.上記5記載の未延伸フィルムを延伸してなり、下記式(1)を満たす光学フィルム。
R(450)<R(550)<R(650) (1)
[但し、R(450)、R(550)およびR(650)は夫々、波長450nm、550nm、650nmにおけるフィルム面内の位相差値を示す。]
7.上記6記載の光学フィルムと偏光層からなる円偏光フィルム。
8.上記6記載の光学フィルムを具備した液晶表示装置。
9.上記7記載の円偏光フィルムを反射防止フィルムとして用いた表示素子。
10.下記式(A)で表される繰り返し単位(A)を含むポリカーボネート樹脂の製造方法であって、繰り返し単位(A)を誘導するジヒドロキシフルオレンをホスト化合物としたホストゲスト錯体を含むジヒドロキシ成分と炭酸ジエステルとを重合触媒の存在下溶融重合することを特徴とする20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20〜1.50であるポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2015218220
11.重合工程の一つの工程で、その工程の最終真空度が50kPa以下2kPa以上の範囲で、最終樹脂温度が160℃以上250℃以下の範囲であり、減圧速度20kPa/min以下0.5kPa/min以上の範囲である工程を含む上記10記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明のポリカーボネート樹脂は、ホストゲスト錯体であるジヒドロキシフルオレンを含むジヒドロキシ化合物にカーボネート前駆物質を反応させることによって、低い光弾性定数と成形に適した流動性と優れた熱安定性を有することが可能となった。
さらに、本発明のポリカーボネート樹脂を用いることで、光弾性定数が低く、熱安定性に優れ、しかも位相差フィルムや偏光板の保護フィルム等の光学用途に適した波長分散性を示す光学フィルムを提供することが可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、繰り返し単位(A)を含む。繰り返し単位(A)は全繰り返し単位中10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましい。
(繰り返し単位(A))
本発明で用いられる繰り返し単位(A)は、上記式(A)で表される繰返し単位であって、このR、Rは水素、炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、またはハロゲン基(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)が好ましい。さらに好ましくは、水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、またはハロゲン基(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)である。
式(A)で表される繰返し単位を誘導するジヒドロキシフルオレンとして、具体的には、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。なかでも9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましく、特に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが好ましい。
本発明において、ホストゲスト錯体に含まれるゲスト化合物は、ジヒドロキシフルオレン類をホスト化合物としてホストゲスト錯体を形成する化合物であれば特に制限されない。好ましくは、ジヒドロキシフルオレン類と良好なホストゲスト錯体を形成し、かつ後の重合反応で蒸留が容易なものがよい。そのような化合物としては、低沸点で、酸素や窒素などのヘテロ原子あるいはハロゲン原子を構造中に含む低分子化合物が望ましい。上記例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4のアルコール類、フェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール類、ピリジン、ピコリンなどのピリジン類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミルなどのエステル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。これらの中でも、アセトニトリル、アセトンおよびメタノールは、ジヒドロキシフルオレン類と良好なホストゲスト錯体を形成するために特に好ましい。
本発明におけるホストゲスト錯体は、ホスト化合物となるジヒドロキシフルオレン類と、ゲスト化合物とを接触させて得ることができる。この接触方法の例としては、何らかの工程でジヒドロキシフルオレン類が生成した反応混合物と、ゲスト化合物あるいはゲスト化合物を含む溶媒とを混合する方法、何らかの方法で回収したジヒドロキシフルオレン類またはその粗生成物を、ゲスト化合物あるいはゲスト化合物を含む溶媒とを混合する方法、ジヒドロキシフルオレン類またはその粗生成物を、ゲスト化合物あるいはゲスト化合物を含む溶媒中で再結晶する方法などを挙げることができる。また、このようにして得られるジヒドロキシフルオレン類のホストゲスト錯体は、通常、ジヒドロキシフルオレン類1分子に対して、ゲスト分子1分子あるいはゲスト分子2分子などの単純な整数比率の組成を持つため、組成比のコントロールも容易である。
(繰り返し単位(B))
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の好ましい一態様として、上記繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)を含み、単位(A)と単位(B)との合計は全繰り返し単位中70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上が特に好ましい。
繰り返し単位(B)は、脂肪族ジオール化合物、脂環族ジオール化合物または芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されるカーボネート単位(B)である。脂肪族ジオール化合物および脂環式ジオール化合物としては、国際公開第2004/111106号パンフレット、国際公開第2011/021720号パンフレットに記載のジオール化合物やジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類が挙げられる。
脂肪族ジオール化合物は、好ましくは炭素原子数2〜30、より好ましくは炭素原子数4〜20の脂肪族ジオール化合物が使用される。
前記脂肪族ジオール化合物としては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1.9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサングリコール、1,2−オクチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,3−ジイソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジイソアミル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
前記脂環式ジオール化合物としては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオールなどのシクロヘキサンジオール類、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサンジメタノール類、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノールなどのノルボルナンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、2,2−アダマンタンジオール、デカリンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、イソソルビドなどが挙げられ、シクロヘキサンジメタノール類、3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、イソソルビドが好ましく使用される。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどが例示される。なかでも、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールMが耐熱性、流動性の観点から好ましく、特にビスフェノールAが高流動、入手容易性の観点から好ましい。
これらの脂肪族ジオール化合物、脂環族ジオール化合物、芳香族ジヒドロキシ化合物は1種もしくは2種類以上併用して用いてもよい。
(組成)
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、単位(A)を含み、さらに単位(B)を含むことが好ましい。それら単位(A)と単位(B)とのモル比(A/B)は好ましくは10/90〜90/10である。モル比(A/B)が10/90〜90/10の範囲では、光弾性定数が低く、流動性が良好で、熱安定性に優れるポリカーボネート樹脂が得られ、且つ所望の波長分散特性を有する光学フィルムが得られる。単位(A)と単位(B)とのモル比(A/B)は、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは25/75〜70/30、特に好ましくは30/70〜60/40である。各繰り返し単位のモル比は、日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明のポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。本発明のポリカーボネート樹脂は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよい。
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法は以下に示すA工程、B工程を含む製造方法であることが好ましい。
A工程は、最終真空度が50kPa以下2kPa以上の範囲で、最終樹脂温度が160℃以上250℃以下の範囲であり、仕込んだ全ジオールのモル数を基準として、残存モノマーのモル数が1mol%以上30mol%以下となるまでエステル交換させる工程である。最終真空度は、35kPa以下1kPa以上の範囲がより好ましい。また、減圧速度は20kPa/min以下0.5kPa/min以上が好ましい。昇温速度は0.1℃/min以下5℃/min以上が好ましい。20kPa/min以下で減圧した場合や5℃/min以上で昇温した場合、低沸点物であるゲスト化合物の突沸が起こり難く、生産安定性に優れる。最終樹脂温度は、180℃〜240℃の範囲がより好ましい。160℃以上では反応が進行しやすく生産性が良好である。この工程でホストゲスト錯体を分解し、ゲスト化合物の量をホストゲスト化合物の量に対して0mol%以上20mol%以下にすることが好ましい。ゲスト化合物の量が30%以下で次工程に移ることにより重合中に突沸が起こり難く、生産安定性に優れる。
B工程は、最終真空度が4kPa未満で、最終樹脂温度235℃以上300℃以下の範囲で、ポリカーボネート樹脂の比粘度が0.2以上0.6以下にエステル交換させる工程である。B工程では、A工程で重合せしめたポリカーボネート樹脂をさらに重合せしめる。最終真空度が1kPa未満では、生成するフェノール類が系内に残存しづらく、樹脂の色相、分解反応が抑制され好ましい。最終真空度は0.5kPa以下がより好ましい。235℃以上では溶融粘度が高くなりすぎず、収率低下や吐出できないといった問題が起こりにくい。また、300℃以下では残存するモノマー類のオリゴマーが分解しづらく、ゲルが発生しにくいことが推測される。最終樹脂温度は、240℃以上280℃以下の範囲がより好ましく、245℃以上275℃以下の範囲がさらに好ましい。ポリカーボネート樹脂の比粘度は、0.25以上0.5以下にエステル交換させることがより好ましい。温度はA工程の温度から除々に加熱して行き、最終温度を途中越えないようにすることが好ましい。樹脂中のゲスト化合物の量をホストゲスト化合物の量に対して0.1mol%以下にすることが好ましい。
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm−クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97〜1.10モル、より好ましは1.00〜1.06モルである。
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
アルカリ土類金属化合物としては、具体的に、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。
含窒素化合物としては、具体的に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が例示される。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が例示される。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
金属化合物としては、亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2当量、好ましくは1×10−8〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−3当量の範囲で選ばれる。
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、なかでもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
またスルホン酸のエステルとして、具体的に、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が例示される。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が特に好ましい。
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5〜50モルの割合で、より好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
(比粘度:ηSP
本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)としては、0.20〜1.50の範囲である。0.20以上であると強度等が向上し、1.50以下であると成形加工特性が優れる。好ましくは、0.25〜1.20の範囲であり、特に好ましくは、0.30〜1.00の範囲である。
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
なお、本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度を測定する場合は、次の要領で行うことができる。すなわち、ポリカーボネート樹脂をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度をオストワルド粘度計を用いて求める。
(ガラス転移温度:Tg)
本発明のポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは130〜220℃、より好ましくは140〜200℃、特に好ましくは140〜160℃の範囲である。Tgが下限以上であると耐熱安定性が良好となり、位相差フィルムとして使用した際に、位相差値の変化が起こりづらく好ましい。またTgが上限を超えない範囲では、フィルムの延伸加工に高い温度は必要なく、従来と異なる特別な加工設備を必要としないため好ましい。Tgは、アルキル基の導入により低くなると推定される。Tgはティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
(光弾性定数)
本発明のポリカーボネート樹脂の光弾性定数の絶対値は、好ましくは50×10−12Pa−1以下、より好ましくは45×10−12Pa−1以下、さらに好ましくは40×10−12Pa−1以下、特に好ましくは30×10−12Pa−1以下、もっとも好ましくは20×10−12Pa−1以下である。絶対値が50×10−12Pa−1を超えると、応力による複屈折が大きく、位相差フィルム等に使用する場合に光抜けが起こる場合がある。光弾性定数は未延伸フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用し測定する。
(添加剤)
また、本発明のポリカーボネート樹脂には、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
<光学成形品>
本発明のポリカーボネート樹脂から光学成形品を形成することができる。かかる光学成形品は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。本発明のポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、延伸により所望の波長分散性を実現することができるため特に光学フィルムとして有利に使用することができる。もちろん本発明のポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、しかも成形性にも優れているので、光ディスク基板、光学レンズ、液晶パネル、光カード、シート、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレーなどの光学部品の構造材料または機能材料用途に適した光学用成形品としても有利に使用することができる。特に光学レンズとして好適に使用される。
<光学フィルム>
本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学フィルムは、具体的には、位相差フィルム、プラセル基板フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、輝度上昇フィルム、光ディスクの保護フィルム、拡散フィルム等の用途が挙げられる、なかでも位相差フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルムが好ましい。
光学フィルムの製造方法としては、例えば、溶液キャスト法、溶融押出法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法を挙げることが出来る。なかでも、溶液キャスト法、溶融押出法が好ましく、特に生産性の点から溶融押出法が特に好ましい。
溶融押出法においては、Tダイを用いて樹脂を押出冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。このときの溶融押出温度はポリカーボネート樹脂の分子量、Tg、溶融流動特性等から決められるが、180〜350℃の範囲であり、200℃〜320℃の範囲がより好ましい。180℃より低いと粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすく好ましくない。また、350℃より高いと熱劣化、着色、Tダイからのダイライン(筋)等の問題が起きやすい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、有機溶媒に対する溶解性が良好なので、溶液キャスト法も適用することが出来る。溶液キャスト法の場合は、溶媒としては塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジオキソラン、ジオキサン等が好適に用いられる。溶液キャスト法で得られるフィルム中の残留溶媒量は2重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。残留溶媒量が2重量%を超えるとフィルムのガラス転移温度の低下が著しくなり耐熱性の点で好ましくない。
本発明のポリカーボネートを用いてなる未延伸フィルムの厚みとしては、30〜400μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜300μmの範囲である。かかる未延伸フィルムをさらに延伸して位相差フィルムとする場合は、目的とする位相差値と関連するが20〜200μmの範囲であり、より好ましくは20〜150μmである。この範囲であれば、延伸による所望する位相差値が得やすく、製膜も容易で好ましい。未延伸フィルムは、偏光板保護フィルムや光ディスク用透過層フィルムとして好適に用いられる。
本発明のポリカーボネートを用いてなる未延伸フィルムは延伸配向することにより位相差フィルムとなる。なお、フィルムの製膜する機械軸方向を製膜方向または縦方向と称し、製膜方向とフィルムの厚み方向に直交する方向を横方向または幅方向と称する。延伸方法は、縦一軸延伸、テンター等を用いる横一軸延伸、あるいはそれらを組み合わせた同時二軸延伸、逐次二軸延伸等公知の方法を用いることが出来る。また連続で行うことが生産性の点で好ましいが、バッチ式で行っても良い。延伸温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg+50℃)の範囲、より好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+30℃)の範囲である。この温度範囲であれば、ポリマーの分子運動が適度であり、延伸による緩和が起こり難く、配向制御が容易になり所望する面内位相差が得られ易いため好ましい。延伸温度が低いと位相差が発現しやすくなる傾向がある。
延伸倍率は目的とする位相差値により決められるが、縦、横、それぞれ、1.05〜5倍、より好ましくは1.1〜4倍である。この延伸は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。なお、溶液キャスト法により得た未延伸フィルムを延伸する場合の上記Tgとは、該未延伸フィルム中の微量の溶媒を含むガラス転移温度を言う。
また延伸後のフィルムの厚みは、好ましくは20〜200μm、より好ましくは20〜150μmの範囲である。この範囲であれば、延伸による所望する位相差値が得やすく、製膜も容易で好ましい。
(波長分散性)
本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる未延伸フィルムを延伸することで、波長400〜800nmの可視光領域において、フィルム面内の位相差が短波長になるほど小さくなるという特徴を有する。即ち、下記式(1)
R(450)<R(550)<R(650) (1)
を満たす。但し、R(450)、R(550)およびR(650)は夫々、波長450nm、550nm、650nmにおけるフィルム面内の位相差値を示す。
ここで面内の位相差値Rとは下記式で定義されるものであり、フィルムに垂直方向に透過する光のX方向とそれと垂直のY方向との位相の遅れを現す特性である。
R=(n−n)×d
但し、nはフィルム面内の主延伸方向の屈折率であり、nはフィルム面内の主延伸方向と垂直方向の屈折率であり、dはフィルムの厚みである。ここで、主延伸方向とは一軸延伸の場合には延伸方向、二軸延伸の場合にはより配向度があがるように延伸した方向を意味しており、化学構造的には高分子主鎖の配向方向を指す。
本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学フィルムの好ましい波長分散性の範囲として以下のフィルム(I)が挙げられる。
(フィルム(I))
フィルム(I)は、下記式(2)および(3)を満たすいわゆる逆波長分散性を示すフィルムである。
0<R(450)/R(550)<1.00 (2)
1.01<R(650)/R(550)<2.00 (3)
フィルム(I)は、より好ましくは下記式(2−1)および(3−1)を満たす。
0.60<R(450)/R(550)<1 (2−1)
1.01<R(650)/R(550)<1.40 (3−1)
さらに好ましくは下記式(2−2)および(3−2)を満たす。
0.65<R(450)/R(550)<0.92 (2−2)
1.01<R(650)/R(550)<1.30 (3−2)
特に好ましくは下記式(2−3)および(3−3)を満たす。
0.70<R(450)/R(550)<0.91 (2−3)
1.03<R(650)/R(550)<1.20 (3−3)
フィルム(I)は、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)のモル比(A/B)を10/90以上60/40以下の範囲で製造した本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる未延伸フィルムを延伸することにより得られる。
フィルム(I)は、逆波長分散性を示すので、積層することなく1枚で液晶表示装置や有機EL表示装置等の位相差フィルムに好適に用いられる。かかる用途では、λ/4板の場合は100nm<R(550)<180nm、λ/2板の場合は220nm<R(550)<330nmであることが望ましい。
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用した使用樹脂及び評価方法は以下のとおりである。
1.ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
2.比粘度測定
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
3.ガラス転移温度測定
ポリカーボネート樹脂8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC−2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
4.ペレットb値
日本電色(株)製モデルZ−1001DPを用いて、ペレットのb値を測定した。
5.光弾性定数測定
未延伸フィルムを製膜方向に50mm、それと直交する幅方向に10mmサイズに切り出し、そのサンプルを用いて光弾性定数を測定した。日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用して測定した。
6.位相差、波長分散性測定
延伸した光学フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用して測定した。
7.ゲル数
厚さ50μmのフィルム状物をカラー3Dレーザ顕微鏡を用いて、500mm×1000mmに存在する長軸の直径が300μm以上の干渉縞を有するゲル数をフィルム1m中に換算して求めた。ゲル数は15個/m以下が好ましく、10個/m以下がより好ましく、6個/m以下が特に好ましい。
8.皮膚かぶれ
ポリマー重合時に実験者に皮膚かぶれが発生した場合は×、発生しなかった場合は○とした。
[参考例1]
還流冷却器、滴下漏斗および温度計を備えた反応釜に、フルオレノン360部、フェノール1318部およびβメルカプトプロピオン酸4部を仕込み、55℃で加熱撹拌して溶融した。反応温度を55℃に保ちながら、35%塩酸270部を、2時間かけて滴下し、さらに55℃で6時間撹拌し、縮合反応を行った。反応液に水270部を加えた後、フェノールの一部とともに塩酸水を減圧留去した。蒸留残分に、アセトニトリル1000部を加え、撹拌しながら室温まで冷却して、ビスフェノールフルオレン・アセトニトリルホストゲスト錯体結晶を析出させた。得られた結晶を吸引ろ過し、アセトニトリルで十分に洗浄した後、室温で減圧乾燥して、ジヒドロキシフルオレン・アセトニトリルホストゲスト錯体結晶516部を得た。この結晶をガスクロマトグラフで分析したところ、アセトニトリルの含有量は10.5重量%であり、ビスフェノールフルオレン((9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン)、以下BPFLと略す)1分子に対し、アセトニトリル1分子を含む錯体であった。
[参考例2]
参考例1においてアセトニトリルの代わりにメタノール1000部を加えた以外は実施例1と同様の操作を行い、BPFL・メタノールホストゲスト錯体結晶469重量部を得た。この結晶をガスクロマトグラフで分析したところ、メタノールの含有量は4.4重量%であり、BPFL2分子に対し、メタノール1分子を含む錯体であった。
[参考例3]
参考例1においてフェノールの代わりにクレゾール1512部、アセトニトリルの代わりにアセトン1000部を加えた以外は実施例1と同様の操作を行い、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略す)・メタノールホストゲスト錯体結晶469重量部を得た。この結晶をガスクロマトグラフで分析したところ、アセトンの含有量は24.4重量%であり、BCF1分子に対し、アセトン2分子を含む錯体であった。
[実施例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
参考例1で得られたBPFL456部、市販の3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下SPGと略す)、ジフェニルカーボネート750部、および触媒として水酸化ナトリウム1.6×10−4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、4kPa/minの減圧速度で減圧度を20kPaに調整した。その後、30℃/hrの速度で240℃まで昇温を行い、4kPa/minの減圧速度で8kPaに調整した。その際のホストゲスト錯体はNMRで分析した結果、1mol%以下であった。その後、30℃/hrの速度で270℃まで昇温し、1時間かけて減圧度を1133Pa以下とした。合計4.5時間撹拌下で反応を行い、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度、熱分解温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に、(株)テクノベル製15mmφ二軸押出機に幅150mm、リップ幅500μmのTダイとフィルム引取り装置を取り付け、得られたポリカーボネート樹脂を280℃でフィルム成形することにより透明な押出未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムの光弾性係数、ゲル数を評価した。さらにTg+10℃にて2.0倍で一軸延伸し、波長分散性を測定した。結果を表1に示す。
[実施例2]
参考例2で得られたBPFL427部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を実施し、評価した。結果を表1に記載した。
[実施例3]
参考例3で得られたBCF544部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を実施し、評価した。結果を表1に記載した。
[実施例4]
参考例1で得られたBPFL402部、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略す)346部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を実施し、評価した。結果を表1に記載した。
[実施例5]
参考例1で得られたBPFL711部、ビスフェノールA(以下BPAと略す)367部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を実施し、評価した。結果を表1に記載した。
[比較例1]
市販のBCF441部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を実施し、評価した。結果を表1に記載した。
[比較例2]
市販のBPFL408部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を実施し、評価した。結果を表1に記載した。
Figure 2015218220
本発明のポリカーボネート樹脂は、液晶表示装置や有機EL表示装置用の位相差フィルムとして有用である。

Claims (11)

  1. 下記式(A)で表される繰り返し単位(A)を含むポリカーボネート樹脂であって、繰り返し単位(A)を誘導するジヒドロキシフルオレンをホスト化合物としたホストゲスト錯体を含むジヒドロキシ成分と炭酸ジエステルとを重合触媒の存在下溶融重合して得られる、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20〜1.50であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
    Figure 2015218220
    [式中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、RおよびRは夫々独立して、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基を示し、mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示し、pおよびqは夫々独立して0以上の整数を示す。]
  2. 繰り返し単位(A)を誘導するジヒドロキシフルオレンが、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンおよび9,9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
  3. 繰り返し単位(A)を誘導するジヒドロキシフルオレンのゲスト化合物がアセトニトリル、アセトンおよび炭素数1〜4の炭化水素アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
  4. 請求項1記載のポリカーボネート樹脂から形成される光学レンズ。
  5. 請求項1記載のポリカーボネート樹脂から形成される未延伸フィルム。
  6. 請求項5記載の未延伸フィルムを延伸してなり、下記式(1)を満たす光学フィルム。
    R(450)<R(550)<R(650) (1)
    [但し、R(450)、R(550)およびR(650)は夫々、波長450nm、550nm、650nmにおけるフィルム面内の位相差値を示す。]
  7. 請求項6記載の光学フィルムと偏光層からなる円偏光フィルム。
  8. 請求項6記載の光学フィルムを具備した液晶表示装置。
  9. 請求項7記載の円偏光フィルムを反射防止フィルムとして用いた表示素子。
  10. 下記式(A)で表される繰り返し単位(A)を含むポリカーボネート樹脂の製造方法であって、繰り返し単位(A)を誘導するジヒドロキシフルオレンをホスト化合物としたホストゲスト錯体を含むジヒドロキシ成分と炭酸ジエステルとを重合触媒の存在下溶融重合することを特徴とする20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20〜1.50であるポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2015218220
  11. 重合工程の一つの工程で、その工程の最終真空度が50kPa以下2kPa以上の範囲で、最終樹脂温度が160℃以上250℃以下の範囲であり、減圧速度20kPa/min以下0.5kPa/min以上の範囲である工程を含む請求項10記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
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