以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1は普通型コンバインの左側面図、図2は同右側面図、図3は同平面図である。まず、図1〜図3を参照しながら、普通型コンバインの概略構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
図1〜図3に示す如く、実施形態における普通型コンバインは、走行部としてのゴムクローラ製の左右一対の履帯2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、稲(又は麦又は大豆又はトーモロコシ)等の未刈り穀稈を刈取りながら取込む刈取装置3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
走行機体1の左側には、刈取装置3から供給された刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀装置9を搭載する。脱穀装置9の下部には、揺動選別及び風選別を行うための穀粒選別機構10を配置する。走行機体1の前部右側には、オペレータが搭乗する運転台5を搭載する。動力源としてのエンジン7を、運転台5(運転座席42の下方)に配置する。運転台5の後方(走行機体1の右側)には、脱穀装置9から穀粒を取出すグレンタンク6と、トラック荷台(またはコンテナなど)に向けてグレンタンク6内の穀粒を排出する穀粒排出コンベヤ8を配置する。穀粒排出コンベヤ8を機外側方に傾倒させて、グレンタンク6内の穀粒を穀粒排出コンベヤ8にて搬出するように構成している。
刈取装置3は、脱穀装置9前部の扱口9aに連通したフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状の穀物ヘッダー12とを備える。穀物ヘッダー12内に掻込みオーガ13(プラットホームオーガ)を回転可能に軸支する。掻込みオーガ13の前部上方にタインバー付き掻込みリール14を配置する。穀物ヘッダー12の前部にバリカン状の刈刃15を配置する。穀物ヘッダー12前部の左右両側に左右の分草体16を突設する。また、フィーダハウス11に供給コンベヤ17を内設する。供給コンベヤ17の送り終端側(扱口9a)に刈取り穀稈投入用ビータ18(フロントロータ)を設ける。なお、フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが昇降用油圧シリンダ4を介して連結され、後述する刈取入力軸89(フィーダハウスコンベヤ軸)を昇降支点として、刈取装置3が昇降用油圧シリンダ4にて昇降動する。
上記の構成により、左右の分草体16間の未刈り穀稈の穂先側が掻込みリール14にて掻込まれ、未刈り穀稈の稈元側が刈刃15にて刈取られ、掻込みオーガ13の回転駆動によって、穀物ヘッダー12の左右幅の中央部寄りのフィーダハウス11入口付近に刈取穀稈が集められる。穀物ヘッダー12の刈取穀稈の全量は、供給コンベヤ17によって搬送され、ビータ18によって脱穀装置9の扱口9aに投入されるように構成している。なお、穀物ヘッダー12を水平制御支点軸回りに回動させる水平制御用油圧シリンダ(図示省略)を備え、穀物ヘッダー12の左右方向の傾斜を前記水平制御用油圧シリンダにて調節して、穀物ヘッダー12、及び刈刃15、及び掻込みリール14を圃場面に対して水平に支持することも可能である。
また、図1、図3に示す如く、脱穀装置9の扱室内に扱胴21を回転可能に設ける。走行機体1の前後方向に延長させた扱胴軸20に扱胴21を軸支する。扱胴21の下方側には、穀粒を漏下させる受網24を張設する。なお、扱胴21前部の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根状の取込み羽根25が半径方向外向きに突設されている。
上記の構成により、ビータ18によって扱口9aから投入された刈取穀稈は、扱胴21の回転によって走行機体1の後方に向けて搬送されながら、扱胴21と受網24との間などにて混練されて脱穀される。受網24の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は受網24から漏下する。受網24から漏下しない藁屑等は、扱胴21の搬送作用によって、脱穀装置9後部の排塵口23から圃場に排出される。
なお、扱胴21の上方側には、扱室内の脱穀物の搬送速度を調節する複数の送塵弁(図示省略)を回動可能に枢着する。前記送塵弁の角度調整によって、扱室内の脱穀物の搬送速度(滞留時間)を、刈取穀稈の品種や性状に応じて調節できる。一方、脱穀装置9の下方に配置された穀粒選別機構10として、グレンパン及びチャフシーブ及びグレンシーブ及びストローラック等を有する比重選別用の揺動選別盤26を備える。
また、穀粒選別機構10として、揺動選別盤26に選別風を供給する唐箕ファン29等を備える。扱胴21にて脱穀されて受網24から漏下した脱穀物は、揺動選別盤26の比重選別作用と唐箕ファン29の風選別作用とにより、穀粒(精粒等の一番物)、穀粒と藁の混合物(枝梗付き穀粒等の二番物)、及び藁屑等に選別されて取出されるように構成する。
揺動選別盤26の下側方には、穀粒選別機構10として、一番コンベヤ機構30及び二番コンベヤ機構31を備える。揺動選別盤26及び唐箕ファン29の選別によって、揺動選別盤26から落下した穀粒(一番物)は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ32によってグレンタンク6に収集される。穀粒と藁の混合物(二番物)は、二番コンベヤ機構31及び二番還元コンベヤ33等を介して揺動選別盤26の選別始端側に戻され、揺動選別盤26によって再選別される。藁屑等は、走行機体1後部の排塵口23から圃場に排出されるように構成する。
さらに、図1〜図3に示す如く、運転台5には、操縦コラム41と、オペレータが座乗する運転座席42とを配置している。操縦コラム41には、エンジン5の回転数を調節するアクセルレバー40と、走行機体1の進路を変更する操縦レバー43と、走行機体1の移動速度を切換える主変速レバー44及び副変速レバー45と、刈取装置3を駆動または停止操作する刈取クラッチレバー46と、脱穀装置9を駆動または停止操作する脱穀クラッチレバー47が配置されている。また、運転台5の上方側にサンバイザー支柱48を介して日除け用の屋根体49を取付けている。
図1、図2に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム50を配置している。トラックフレーム50には、履帯2にエンジン7の動力を伝える駆動スプロケット51と、履帯2のテンションを維持するテンションローラ52と、履帯2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ53と、履帯2の非接地側を保持する中間ローラ54とを設けている。駆動スプロケット51によって履帯2の前側を支持させ、テンションローラ23によって履帯2の後側を支持させ、トラックローラ53によって履帯2の接地側を支持させ、中間ローラ54によって履帯2の非接地側を支持させるように構成する。
次に、図4を参照してコンバインの駆動構造を説明する。図4、図18に示す如く、走行油圧ポンプ36及び走行油圧モータ37を有する走行変速用の油圧無段変速機64をミッションケース63に設けている。走行機体1前部の右側上面にエンジン7を搭載し、エンジン7左側の走行機体1前部にミッションケース63を配置している。また、エンジン7から左側方に突出させた出力軸65と、ミッションケース63から左側方に突出させた入力軸66を、エンジン出力ベルト67を介して連結している。なお、昇降用油圧シリンダ4等を駆動する作業油圧ポンプ68と、冷却ファン69をエンジン7に配置し、作業油圧ポンプ68及び冷却ファン69をエンジン7にて駆動するように構成している。
さらに、扱胴軸20の前端側を軸支する扱胴駆動ケース71(カウンタケース)を備えている。脱穀装置9の前面壁体に扱胴駆動ケース71を設けている。また、前記刈取装置3と扱胴21を駆動するためのカウンタ軸72を扱胴駆動ケース71に軸支している。唐箕ファン29を軸支した唐箕軸76の右側端部に、唐箕入力プーリ83を設けている。エンジン7の出力軸65に、テンションローラを兼用した脱穀クラッチ84と脱穀駆動ベルト85を介して、唐箕軸76右側端部の唐箕入力プーリ83を連結している。即ち、エンジン7の出力軸65に脱穀駆動ベルト85を介して唐箕軸76を連結している。そして、エンジン7から離れた側の唐箕軸76の左側端部に扱胴駆動プーリ86を設ける。
また、エンジン7から離れた側のカウンタ軸72の左側端部にカウンタ入力プーリ88を配置する。扱胴駆動プーリ86に、常張り状の扱胴駆動ベルト87を介して、カウンタ軸72左側端部のカウンタ入力プーリ88を連結する。左右方向に延設したカウンタ軸72の右側端部に、ベベルギヤ機構75を介して扱胴軸20の前端側を連結する。唐箕軸76からカウンタ軸72を介して扱胴軸20の前端側にエンジン7の動力を伝達させ、扱胴21を一方向に回転駆動させるように構成している。
即ち、オペレータの脱穀クラッチレバー47操作によって、脱穀クラッチ84が入り切り制御される。脱穀クラッチ84の入り操作によって、カウンタ軸72を介して扱胴21が駆動されて、ビータ18から投入された穀稈が扱胴21によって連続的に脱穀されるように構成している。
さらに、一番コンベヤ機構30の一番コンベヤ軸77の左側端部と、二番コンベヤ機構31の二番コンベヤ軸78の左側端部とに、コンベヤ駆動ベルト101を介して唐箕軸76の左側端部を連結している。揺動選別盤26後部を軸支したクランク状の揺動駆動軸79の左側端部に揺動選別ベルト102を介して二番コンベヤ軸78の左側端部を連結している。なお、一番コンベヤ軸77を介して揚穀コンベヤ32が駆動されて、一番コンベヤ機構30の一番選別穀粒がグレンタンク6に収集される。また、二番コンベヤ軸78を介して二番還元コンベヤ33が駆動されて、二番コンベヤ機構31の藁屑が混在した二番選別穀粒(二番物)が揺動選別盤26の上面側に戻される。
一方、ビータ18を軸支するビータ軸82を備える。刈取り駆動ベルト104及び刈取クラッチ105(テンションプーリ)を介して、カウンタ軸72の左側端部にビータ軸82の左側端部を連結する。供給コンベヤ17の送り終端側を軸支するコンベヤ入力軸としての刈取入力軸89を備える。また、ビータ軸82に刈取駆動チェン106及びスプロケット107,108を介して刈取入力軸89の左側端部を連結している。
図4に示す如く、穀物ヘッダー12の右側部背面側にヘッダー駆動軸91を回転自在に軸支する。左右方向に延設したヘッダー駆動軸91の左側端部に、ヘッダー駆動チェン90を介して刈取入力軸89の右側端部を連結する。掻込みオーガ13を軸支する掻込み軸93を備える。掻込み軸93の右側端部に、掻込み駆動チェン92を介してヘッダー駆動軸91の中間部を連結している。
また、掻込みリール14を軸支するリール軸94を備える。リール軸94の右側端部に、中間軸95及びリール駆動チェン96,97を介してヘッダー駆動軸91の中間部を連結している。ヘッダー駆動軸91の右側端部には、刈刃駆動クランク機構98を介して刈刃15が連結されている。刈取クラッチ105の入り切り操作によって、供給コンベヤ17と、掻込みオーガ13と、掻込みリール14と、刈刃15が駆動制御されて、圃場の未刈り穀稈の穂先側を連続的に刈取るように構成している。
さらに、図4に示す如く、エンジン7の出力軸65にテンションプーリ状のオーガクラッチ56及びオーガ駆動ベルト57を介してオーガ駆動軸58の右側端部を連結する。オーガ駆動軸58の左側端部にベベルギヤ機構59を介してグレンタンク6底部の横送りオーガ60前端側を連結する。横送りオーガ60の後端側にベベルギヤ機構61を介して穀粒排出コンベヤ8の縦送りオーガ62を連結している。また、前記オーガクラッチ56を入り切り操作する穀粒排出レバー55を備えている。グレンタンク6前面のうち運転座席42後方の前面に穀粒排出レバー55を取付け、運転座席42側からオペレータが穀粒排出レバー55を操作可能に構成している。
上記の構成により、刈取クラッチ105の入り操作によって刈取装置3を駆動することにより、刈刃15が作動し、刈刃15によって圃場の未刈り穀稈の穂先側を刈取り、その穀稈の穂先側をフィーダハウス11から脱穀装置9に搬入し、穀粒選別機構10からグレンタンク6に穀粒を取出す。
次いで、図5〜図6を参照して、ミッションケース51構造を説明する。図5〜図6に示す如く、エンジン20の出力軸65にエンジン出力ベルト67などを介して連結する入力プーリ111及び入力軸112と、入力軸112の回転力を無段階に変速する油圧ポンプ及び油圧モータを有する油圧無段変速機64と、油圧無段変速機64の変速出力軸114にアイドル軸115を介して連結する副変速軸116と、副変速軸116に副変速ギヤ117を介して連結するカウンタ軸118と、カウンタ軸118に設けるパーキングブレーキ119と、噛合いクラッチ爪形(ドグクラッチ形)の左右サイドクラッチ121を軸支するサイドクラッチ軸122と、サイドクラッチ軸122に設ける左右サイドブレーキ123と、サイドクラッチ軸122に連結する減速軸124と、減速軸124に連結する左右の車軸125を、ミッションケース51に設けている。
また、図6に示す如く、左右サイドクラッチ121を介してサイドクラッチ軸122に減速軸124を連結する左右の第1減速ギヤ126と、減速軸124に左右の車軸125を連結する左右の第2減速ギヤ127を設けると共に、左右サイドクラッチ121をそれぞれ継続維持する左右の戻りバネ体128と、ミッションケース51の前壁に回動可能に軸支する左右のサイドクラッチ軸129と、左右のサイドクラッチ軸129に一体的に形成する左右のサイドクラッチフォーク130を備えている。
上記の構成により、左右の戻りバネ体128にて左右サイドブレーキ123を切り作動し、左右サイドクラッチ121を入り維持して、左右の車軸125に設けた駆動スプロケット22を介して走行クローラ2を正転または逆転駆動し、走行機体1を直進(前進または後進)移動させる。一方、左右の戻りバネ体128にて継続状態に弾圧支持される左右サイドクラッチ121のいずれかを、操縦レバー14の左右いずれかの傾動操作にて択一的に切断操作して、左右サイドクラッチ121を択一的に切り作動し、左右いずれかの走行クローラ2の駆動を中断し、左右いずれかに旋回移動させ、走行進路を変更する。
また、オペレータが操縦レバー14を左右いずれかに傾動操作した場合、操縦レバー14の所定以下の傾動操作にて左または右のサイドクラッチ121が切り作動して、大きな旋回半径で走行機体1の進路を左方向または右方向に修正する緩旋回制御が実行される。その状態下で、操縦レバー14を同一方向に所定以上に傾動操作した場合、左または右のサイドクラッチ121が切り維持され、左または右のサイドブレーキ123が入り作動して、旋回内側の走行クローラ2を制動して、小さな旋回半径で走行機体1の進路を左方向または右方向に修正する急旋回制御が実行される。なお、緩旋回制御(サイドブレーキ123切り状態)または急旋回制御(サイドブレーキ123入り状態)のいずれにおいても、オペレータが操縦レバー14から手を離した場合、戻りバネ体128のバネ力などにて左または右のサイドクラッチ121が入り復帰して、直進(前進または後進)移動する。
次いで、図7〜図18を参照して、左右のサイドクラッチ121の操作構造を説明する。図7、図8、図18に示す如く、運転台5底部の走行機体1に油圧ユニットケース131を固設する。昇降用油圧シリンダ4を作動制御する刈取り昇降バルブ132と、左右のサイドクラッチ121を切り作動制御するサイドクラッチバルブ133を、油圧ユニットケース131に配設する。刈取り昇降バルブ132に昇降切換ロッド134を介して操縦レバー14を連結させ、操縦レバー14の前後傾動操作にて昇降切換ロッド134を上下動させて、刈取り昇降バルブ132を切換える一方、サイドクラッチバルブ133にクラッチ切換ロッド135を介して操縦レバー14を連結させ、操縦レバー14の左右傾動操作にてクラッチ切換ロッド135を上下動させ、サイドクラッチバルブ133を切換えて操縦するように構成している。
図7、図8、図17、図18に示す如く、左右のサイドクラッチ121を切り作動させる左右のサイドクラッチアーム136と、左右のサイドクラッチシリンダ137を有するサイドクラッチ油圧切換体138を備える。ミッションケース63の前面から前方に向けて左右のサイドクラッチ軸129を突設させ、左右のサイドクラッチ軸129の突設前端部に左右のサイドクラッチアーム136をそれぞれ固着すると共に、ミッションケース63の前面外側に油圧切換ブラケット139を着脱可能にボルト締結させ、油圧切換ブラケット139の前面側にサイドクラッチ油圧切換体138をボルト締結している。なお、サイドクラッチ油圧切換体138の鋳造加工にて左右のサイドクラッチシリンダ137が形成される。
図9、図10、図17、図18に示す如く、サイドクラッチシリンダ137は、サイドクラッチ油圧切換体138の下面側にシリンダヘッド141を介して突出させる縦長状のピストン142を有する。サイドクラッチ油圧切換体138下面から下向きにピストン142の下端側を出入可能に突設させ、サイドクラッチアーム136にピストン142の下端部を当接させると共に、サイドクラッチシリンダ137の背圧室137aに内挿させるピストン142の上端側にリターンバネ143を巻装させ、リターンバネ143にてピストン142を上動(退入)支持するように構成している。
また、左右のサイドクラッチ121を切換える左右の旋回操作アーム144を備える。油圧切換ブラケット139の高位置(上端部)に支点軸145を介して左右の旋回操作アーム144を回動可能に配置する。一方、サイドクラッチ油圧切換体138の上面側(左右の旋回操作アーム144の下方)にバネケース146を介して突出させる縦長状の旋回操作スプール147を備える。サイドクラッチ油圧切換体138の上面側からサイドクラッチシリンダ137の圧力室137b内部に旋回操作スプール147の下端側を出入可能に挿入させる。サイドクラッチシリンダ137の縦長状ピストン142の上方に旋回操作スプール147を直列状に設ける。旋回操作スプール147の上端側のうち、バネケース146内部に貫通させる上端側に復帰バネ148を巻装させ、復帰バネ148にて旋回操作スプール147を上昇支持する。
加えて、ピストン142の上端部(サイドクラッチシリンダ137の圧力室137b側の端部)に軸心孔142aを形成し、圧力室137b側に開口させる絞り弁孔142cを軸心孔142a上端側に形成すると共に、ピストン142上端の軸心孔142aに旋回操作スプール147の下端側を出入可能に挿入させ、旋回操作スプール147の下方にサイドクラッチシリンダ137の縦長状ピストン142を直列状に設ける。さらに、旋回操作スプール147の下端側に絞り弁通路147aを形成し、絞り弁孔142cと絞り弁通路147aを介して圧力室137bと軸心孔142aを連通可能に構成する。ピストン142中間部の上下2ヶ所に上下アンロード通路142bを形成し、下または上アンロード通路142bを介して背圧室137aと軸心孔142aを連通可能に構成する。
上記の構成により、操縦レバー43の左または右傾動操作にて、クラッチ切換ロッド135を介してサイドクラッチバルブ133を切換え、左または右のサイドクラッチシリンダ137の圧力室137bの高圧作動油を供給したとき、その高圧作動油にてピストン142がリターンバネ143に抗して下動(進出)し、左または右のサイドクラッチアーム136を押下げ回動させる。即ち、左または右のサイドクラッチ121を戻りバネ体128に抗して切り作動させ、左または右の走行クローラ2の駆動を中断させ、左または右方向に移動進路を変更して、左または右方向に旋回する。
また、ピストン142がリターンバネ143に抗して下動(進出)した場合、絞り弁孔142cと絞り弁通路147aを介して圧力室137bと軸心孔142aが連通し、圧力室137bの高圧作動油が下または上のアンロード通路142bを介して背圧室137aに移動したとき、ピストン142が下動した位置に支持され、旋回内側の走行クローラ2が連れ回り回転する緩旋回制御が実行される。なお、左右のサイドクラッチシリンダ137の各圧力室137bに各高圧ホース149を介してサイドクラッチバルブ133が接続されると共に、左右のサイドクラッチシリンダ137の各背圧室137aに戻り油ホース150を介してサイドクラッチバルブ133が接続される。
次いで、図7、図8、図11〜図16を参照して、ブレーキ旋回制御の操作構造を説明する。図7、図8、図11、図12、図15、図16に示す如く、操縦レバー43が配置されるフロントコラム151の前面カバー背面側にベースフレーム152を溶接固定する。ベースフレーム152の背面側に支点フレーム153を締結固定する。フロントコラム151上部の背面フレーム151aと支点フレーム153の間に左右傾動支点軸154を設ける。左右傾動支点軸154に前後傾動支点ブラケット155を固着し、前後傾動支点ブラケット155に前後傾動支点軸156を回動可能に軸支する。前後傾動支点軸156に操縦レバー43下端側を固着し、操縦レバー43を中立復帰バネ157にて起立支持させる。
また、前後傾動支点軸156に昇降レバー161を固着し、昇降レバー161に昇降リンク162などを介して昇降切換ロッド134の上端側を連結させ、前後傾動支点軸156回りに操縦レバー43を前後傾動操作したとき、昇降切換ロッド134が昇降動して、刈取り昇降バルブ132を切換え、刈取装置3を昇降させるように構成している。
一方、支点フレーム153に固着する直進ストッパピン171と、前後傾動支点ブラケット155に固着する旋回操作ピン172を備えると共に、操縦レバーの左右傾動操作にて択一的に作動させる左旋回レバー173と右旋回レバー174を備える。左右傾動支点軸154に左旋回レバー173と右旋回レバー174の基端側を遊転(回転)自在に支持させる。直進ストッパピン171と旋回操作ピン172にそれらの下方側から左旋回レバー173の中間を当接させると共に、直進ストッパピン171と旋回操作ピン172にそれらの上方側から右旋回レバー174の中間を当接させる。
さらに、図12〜図16に示す如く、左右の旋回操作アーム144に左旋回レバー173及び右旋回レバー174をそれぞれ連結させる左サイドクラッチワイヤ175と右サイドクラッチワイヤ176を備える。支点フレーム153に設けたワイヤ受け153aに左サイドクラッチワイヤ175のインナ175aを連結させ、左旋回レバー173の先端側に左サイドクラッチワイヤ175のアウタ175bを連結させる。支点フレーム153に設けたワイヤ受け153bに右サイドクラッチワイヤ176のアウタ176bを連結させ、右旋回レバー174の先端側に右サイドクラッチワイヤ176のインナ176aを連結させる。
図9、図10に示す如く、油圧切換ブラケット139に設けた左右のワイヤ受け139aに、左サイドクラッチワイヤ175のアウタ175bと右サイドクラッチワイヤ176のアウタ176bをそれぞれ連結させる。左右の旋回操作アーム144に、左サイドクラッチワイヤ175のインナ175aと右サイドクラッチワイヤ176のインナ176aをそれぞれ連結させる。
上記の構成により、操縦レバー43の左または右傾動操作にてサイドクラッチバルブ133を切換え、絞り弁孔142cと絞り弁通路147aを介して圧力室137bと軸心孔142aが連通し、旋回内側の走行クローラ2が連れ回り回転する緩旋回制御が実行されているとき、オペレータが操縦レバー43をさらに左または右に傾動操作した場合、左サイドクラッチワイヤ175または右サイドクラッチワイヤ176を介して左または右の旋回操作アーム144を下向きに引張り、左または右の旋回操作スプール147を押下げ、圧力室137bの高圧作動油にてピストン142をリターンバネ143に抗してさらに下動(進出)させ、左または右のサイドクラッチアーム136をさらに押下げ回動させ、左または右のサイドブレーキ123を戻りバネ体128に抗して入り作動させ、旋回内側の走行クローラ2を制動するブレーキ旋回制御が実行される。即ち、操縦レバー43の左または右の傾動操作量に応じて、旋回内側の走行クローラ2が連れ回り回転する緩旋回制御と、旋回内側の走行クローラ2を制動するブレーキ旋回制御が実行される。
さらに、図9、図10に示す如く、左右のサイドクラッチアーム136にそれぞれ連結させる戻し操作用の圧縮バネ体181を備える。左右のサイドクラッチ軸129に左右のバネ座アーム182をそれぞれ設け、左右のサイドクラッチアーム136に左右のバネ座アーム182の基端側をそれぞれ一体的に連結すると共に、左右のバネ座アーム182の先端側に圧縮バネ体181の両端部をそれぞれ連結している。即ち、左右のサイドクラッチアーム136間に左右のバネ座アーム182を介して圧縮バネ体181の両端部を連結させると共に、ミッションケース63前面の外側のうち、油圧切換ブラケット139下端部とサイドクラッチ軸129間の外側に圧縮バネ体181を横向き姿勢に配置している。したがって、圧縮バネ体181の左右側部に左右のバネ座アーム182が配設され、ミッションケース63前面壁にて圧縮バネ体181の背面側が遮蔽され、左右のサイドクラッチシリンダ137のシリンダヘッド141とピストン142にて圧縮バネ体181の前面側が遮蔽されるから、収穫作業時、圃場の藁草などが圧縮バネ体181に巻き付くのを容易に阻止できると共に、圃場の泥土などが圧縮バネ体181に付着して乾燥固結するのを防止でき、藁草または泥土などが圧縮バネ体181に付着する動作不良原因を低減できる。
上記の構成により、旋回内側の走行クローラ2が連れ回り回転する緩旋回制御、または旋回内側の走行クローラ2を制動するブレーキ旋回制御において、左または右に傾動操作された操縦レバー43が直進位置に戻るとき、戻りバネ体128と圧縮バネ体181の両方のバネ力にて、左または右のサイドクラッチ121が俊敏に入り作動し、操縦レバー43の直進位置復帰と連動して旋回内側の走行クローラ2の強制駆動が遅滞なく再開される。即ち、収穫作業時、旋回内側の走行クローラ2が連れ回り回転する緩旋回制御にて、穀稈の刈取り条に沿って移動させる条刈り作業において、サイドクラッチ121切り動作状態からサイドクラッチ121入り状態に機敏に復帰できるものであり、操縦レバー43を操作したときの進路修正動作と、熟練したオペレータの運転操作を容易に一致させることができる。また、戻りバネ体128のバネ力を過度に増大させる必要がないから、サイドクラッチ121構造を小型化でき、かつ組付け作業性なども向上できる。
図1、図6、図9、図10に示す如く、左右の走行クローラ2を駆動するミッションケース63を備え、ミッションケース63内に設けた左右のサイドクラッチ121を介して左右の走行クローラ2に駆動力を伝達させると共に、左右のサイドクラッチ121を切り作動させる左右のサイドクラッチアーム136を備え、ミッションケース63に左右のサイドクラッチアーム136を設け、オペレータが左右に傾動操作する操縦レバー43操作にて左または右のサイドクラッチアーム136を切換えて左または右に旋回させるコンバインにおいて、左右のサイドクラッチシリンダ137を有するサイドクラッチ油圧切換体138を備え、ミッションケース63の外側に油圧切換ブラケット139を介してサイドクラッチ油圧切換体138を配設すると共に、左右のサイドクラッチアーム136の間に戻し操作用の圧縮バネ体181を連結させている。したがって、左右のサイドクラッチシリンダ137を、サイドクラッチ油圧切換体138としてユニット構成して、組み付け作業性を向上できる一方、戻りバネ体128に加えて圧縮バネ体181のバネ力にてサイドクラッチ121を俊敏に入り作動させることができ、操縦レバー43を戻す直進操作に対して、サイドクラッチ121の入り動作が遅れるのを防止でき、応答性を良好にして旋回性能を向上できる。単一の圧縮バネ体181にて左右のサイドクラッチアーム136に戻りバネ力を付勢でき、左右のサイドクラッチ121に単一の圧縮バネ体181を兼用して、コストを低減できる。
図9、図10に示す如く、左右のサイドクラッチアーム136を設ける左右のサイドクラッチ軸129を備え、ミッションケース63の外側面のうち、油圧切換ブラケット139下端部とサイドクラッチ軸129間の外側面に圧縮バネ体181を横向き姿勢に配置している。したがって、油圧切換ブラケット139下端部とサイドクラッチ軸129間で、ミッションケース63の一側面と左右のサイドクラッチアーム136にて閉塞された空間に圧縮バネ体181をコンパクトに取付けることができ、圧縮バネ体181に圃場の藁草などが絡まるのを容易に防止できる。
図9、図10、図17、図18に示す如く、左右のサイドクラッチ121を切換える左右の旋回操作アーム144を備え、油圧切換ブラケット139の高位置に左右の旋回操作アーム144を配置すると共に、左右の旋回操作アーム144の下方に縦長状の旋回操作スプール147を設け、旋回操作スプール147の下方にサイドクラッチシリンダ137の縦長状ピストン142を直列状に設けている。したがって、ミッションケース63の外側面に沿わせて旋回操作スプール147とサイドクラッチシリンダ137を縦長状にコンパクトに後付け配置できると共に、仕様の異なるミッションケース63にサイドクラッチ油圧切換体138を簡単に共用できる。
図9、図10、図12、図16に示す如く、操縦レバー43の左右傾動操作にて択一的に作動させる左旋回レバー173と右旋回レバー174を備え、左右の旋回操作アーム144に左右のサイドクラッチワイヤ175,176を介して左旋回レバー173及び右旋回レバー174をそれぞれ連結している。したがって、操縦レバー43の左右傾動角度を維持しながら、従来の一本のワイヤ(またはリンク)の兼用にて左右のサイドクラッチ121を入り切り操作する構造に比べ、左右のサイドクラッチワイヤ175,176の押し引き量を各別に設定でき、操縦レバー43の左右傾動操作力を容易に軽減でき、サイドクラッチ121切り操作性を向上できる。