JP2015215244A - 免疫測定における抗htlv抗体の検出感度を向上させる方法 - Google Patents

免疫測定における抗htlv抗体の検出感度を向上させる方法 Download PDF

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Abstract

【課題】現行のHTLV抗体検出試薬・キットよりも高い検出感度と高い特異性を両立できる手段を提供すること。
【解決手段】本発明では、検体中の抗HTLV抗体を検出する免疫測定における抗原として、HTLV gp21の特定の領域を含む部分ペプチドのN末端にパイロコッカス・フリオサス由来のフェレドキシン(FDX)タンパク質を連結した融合タンパク質を用いる。gp21部分ペプチドのN末端にFDXを付加することで、抗HTLV抗体検出の感度が飛躍的に向上し、さらには特異性も向上して非特異反応が低減する。
【選択図】図4−2

Description

本発明は、感度及び特異度を改善させたHTLV gp21由来組換え抗原、および該抗原の利用により抗HTLV抗体の検出感度を向上させる方法に関する。
HTLV(ヒトT細胞白血病ウイルス、又はヒトTリンパ球向性ウイルス)は、Tリンパ球に感染するレトロウイルスであり、現在までにタイプ1〜タイプ4が報告されている。このうちタイプ1(HTLV-1)は成人T細胞白血病の原因ウイルスとして知られており、HTLV-1抗体陽性者のおよそ0.3%が該疾患を発症するといわれている。発症頻度は高くはないものの、HTLV-1の抗体検査は臨床上重要である。市販のキットとしては、HTLV-1のみを対象とするキットの他、HTLV-1及びHTLV-2の両者を対象とするものがある。
HTLV抗体検出のための抗原として、いくつかのウイルスタンパク質の組換え体の利用が検討されている(非特許文献1)。エンベロープタンパク質gp21も抗原としての利用が検討されているが、HTLV gp21組換え抗原は全長では大腸菌にて発現できないか、もしくは発現量が極めて少なく、商業レベルでの製造は困難である。
HTLV gp21抗原では配列由来の非特異反応がしばしば見られるため、その部位を除いて特異性を高めたgp21断片からなるペプチドが特許文献1に開示されている。しかしながら、このペプチドも組換え体調製時の発現量が非常に低く、免疫測定における感度も要求される感度に満たない。
現行の試薬・キットよりも高い検出感度と高い特異性を両立できる免疫測定系の確立が必要である。
特許第3470899号
Journal of Clinical Microbiology, 1995, Vol. 33, No. 12, p.3239-3244
従って、本発明の目的は、現行のHTLV抗体検出試薬・キットよりも高い検出感度と高い特異性を両立できる手段を提供することを目的とする。
本願発明者らは、先行技術に基づき、HTLV-I gp21の特定の領域からなる組換えタンパク質(gp21d)を大腸菌にて発現させ、免疫測定系を構築したが、感度が低かった。この問題を解決するために鋭意検討を行なった結果、タグタンパク質として知られるパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のフェレドキシン(FDX、特許第3360557号)を融合したgp21d抗原は、タグ付加していないgp21dよりも免疫反応性が向上すること、さらに、gp21dのN末端側にFDXを付加させることで、C末端側にFDX付加した組換え体よりも抗HTLV抗体検出の感度および特異性が向上することを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、検体中の抗HTLV抗体を検出する免疫測定における抗原として、HTLV gp21タンパク質の部分領域に由来するポリペプチドのN末端にパイロコッカス・フリオサス由来フェレドキシンタンパク質が直接又は間接的に付加された構造を有する融合タンパク質を用いることを含む、抗HTLV抗体の検出感度を向上させる方法であって、前記ポリペプチドは、HTLV-1 gp62の第372番〜第404番アミノ酸の領域に相当する領域を含み、サイズが60残基以下である、HTLV gp21タンパク質の部分領域からなるポリペプチド、又は該ポリペプチドにおいて数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである、方法を提供する。また、本発明は、検体中の抗HTLV抗体を検出する免疫測定における抗原として、HTLV gp21タンパク質の部分領域に由来するポリペプチドのN末端にパイロコッカス・フリオサス由来フェレドキシンタンパク質が直接又は間接的に付加された構造を有する融合タンパク質を用いることを含む、gp21組換え抗原の免疫反応性を向上させる方法であって、前記ポリペプチドは、HTLV-1 gp62の第372番〜第404番アミノ酸の領域に相当する領域を含み、サイズが60残基以下である、HTLV gp21タンパク質の部分領域からなるポリペプチド、又は該ポリペプチドにおいて数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである、方法を提供する。さらに、本発明は、HTLV gp21タンパク質の部分領域に由来するポリペプチドのN末端に直接又は間接的にパイロコッカス・フリオサス由来フェレドキシンタンパク質が付加された構造を有する融合タンパク質からなる、抗HTLV抗体の免疫測定用の抗原であって、前記ポリペプチドは、HTLV-1 gp62の第372番〜第404番アミノ酸の領域に相当する領域を含み、サイズが60残基以下である、HTLV gp21タンパク質の部分領域からなるポリペプチド、又は該ポリペプチドにおいて数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである、抗原を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の抗原を含む、抗HTLV抗体の免疫測定試薬を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の免疫測定試薬を含む、抗HTLV抗体の免疫測定キットを提供する。
本発明により、抗HTLV抗体検出の感度及び特異性が改善された、抗HTLV抗体の免疫測定用のgp21由来組換え抗原が提供される。FDXは組換えタンパク質の発現量を増大させる効果があることが知られているタグタンパク質であるが(特許第3360557号)、gp21の特定領域を含む部分ペプチドのN末端にFDXを付加することで、抗HTLV抗体検出の感度が飛躍的に向上し、さらには特異性も向上して非特異反応が低減する。ウエスタンブロットでは抗原タンパク質が完全に変性された状態で検体との反応が行われるが、N末端FDX付加したgp21部分ペプチド抗原はウエスタンブロット法においても感度と特異性を向上する効果を奏する。抗原タンパク質にタグタンパク質を付加する目的は主として、可溶性の向上、発現量の向上、精製の容易さ、タグターゲットでの免疫学的検出の汎用性であるが、抗原タンパク質自体の免疫反応性を向上させるためにタグタンパク質を付加することはこれまでに全く知られていない。N末端に付加したFDXがgp21部分ペプチド抗原の免疫反応性を高める原理の詳細は不明であるが、本発明によれば、高い感度と高い特異性を両立した抗HTLV抗体の免疫測定試薬・キットを提供することが可能になる。
各組換えタンパク質をSDS-PAGE後、ゲルをCBB染色した結果である。レーン1:I-gp21d、レーン2:FDX-I-gp21d、レーン3:GST-I-gp21d、レーン4:TRX-I-gp21d、レーン5:II-gp21d、レーン6:FDX-II-gp21d、レーン7:I-gp21d-FDX、レーン8:FDX。 図1−1のバンド強度を測定して数値化したグラフである。 ウエスタンブロット法により、各組換えタンパク質と抗gp21モノクローナル抗体との反応性を調べた結果である。各レーンのサンプルは図1−1と同じ。 図2−1のバンド強度を測定して数値化したグラフである。 ウエスタンブロット法により、各組換えタンパク質とHTLV陽性患者由来血清#1との反応性を調べた結果である。各レーンのサンプルは図1−1と同じ。 図3−1のバンド強度を測定して数値化したグラフである。 ウエスタンブロット法により、各組換えタンパク質とHTLV陽性患者由来血清#3との反応性を調べた結果である。各レーンのサンプルは図1−1と同じ。 図4−1のバンド強度を測定して数値化したグラフである。 FDXの付加がHTLV-I及びHTLV-IIのgp21dの免疫反応性に及ぼす影響をウエスタンブロット法により調べた結果である。 図5−1のバンド強度を測定して数値化したグラフである。 HTLV-Iのgp21dを用いて、GSTタグ及びTRXタグがgp21dの免疫反応性に及ぼす影響をウエスタンブロット法により調べた結果である。 図6−1のバンド強度を測定して数値化したグラフである。 N末端へのFDX付加がgp21dの置換変異体及び欠失変異体の免疫反応性に及ぼす影響をウエスタンブロット法により調べた結果である。 図7−1のバンド強度を測定して数値化したグラフである。
本発明では、検体中の抗HTLV抗体を免疫測定により検出するためのgp21抗原として、gp21の部分領域に由来するポリペプチドのN末側に超好熱細菌パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のフェレドキシン(FDX)タンパク質が直接又は間接的に付加された構造を有する融合タンパク質を用いる。以下、本明細書において、gp21の部分領域に由来するポリペプチドを「gp21部分ペプチド」と呼ぶことがある。また、FDXとgp21部分ペプチドの融合タンパク質を「FDX-gp21部分ペプチド」と呼ぶことがある。
gp21は、HTLVのenv遺伝子から発現されるenv前駆タンパク質に糖が結合してgp62になった後、表面タンパク質gp46と膜貫通タンパク質gp21とに切断されて生じる。配列番号1及び2に示す配列は、NCBIのGenBankにX56949のアクセッション番号で登録されているHTLV-1 MT-2株のenv遺伝子及びこれにコードされるenvタンパク質(gp62)のアミノ酸配列であるが、第313番〜第488番アミノ酸(aa313-488)がgp21となる領域である。このうちのaa361-404の領域を配列番号3に示すが、当該部分領域からなる組換えペプチドは、抗原性に優れ、HTLV抗体検査における抗原として好ましく使用できることが知られている(特許第3470899号)。
本発明で用いる「gp21の部分領域に由来するポリペプチド」(gp21部分ペプチド)とは、上記した配列番号2に示すHTLV-1 gp62のaa372-404に相当する領域を含み、サイズが60残基以下である、gp21の部分領域からなるポリペプチド、又は、該ポリペプチドにおいて数個以下(例えば5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、又は1個)のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。後者のポリペプチドは、もとのgp21の部分領域との配列同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であり得る。HTLV-1 gp62のaa372-404の領域のアミノ酸配列を配列番号5に示す。HTLV-2においては、配列番号2中のaa372-404に相当する領域とは、HTLV-2 gp62(配列番号14、15)のaa368-400の領域である。このaa368-400の領域のアミノ酸配列を配列番号6に示す。なお、配列番号14、15に示した配列は、NCBIのGenBankにNC_001488のアクセッション番号で登録されているHTLV-2 Mo株のゲノム配列のうちのenv遺伝子領域の配列である。gp62の配列はウイルス株間でも若干の相違があるが、当業者であれば、配列番号2に示したHTLV-1 MT-2株のgp62のアミノ酸配列と任意のgp62のアミノ酸配列を適宜整列化し、当該任意のgp62のアミノ酸配列における配列番号2中のaa372-404領域に相当する部分領域(「相同領域」と呼ぶこともある)を容易に特定することができる。
gp21部分ペプチドのサイズは上記の通り60残基以下であり、特に限定されないが、例えば55残基以下、又は50残基以下、又は45残基以下であり得る。
gp21の部分領域に由来するポリペプチドは、例えば、配列番号5若しくは配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチドであり得る。あるいは、配列番号3若しくは配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含むポリペプチドであり得る。配列番号3に示したアミノ酸配列はHTLV-1 gp62のaa361-404の領域のアミノ酸配列であり、配列番号4に示したアミノ酸配列は、HTLV-2 gp62のaa357-400の領域のアミノ酸配列である。配列番号4に示したアミノ酸配列は、配列番号3に示したアミノ酸配列の相同領域ということができる。上記した通り、gp62やその一部であるgp21の配列はウイルス株間でも若干の相違があり得るので、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号6と一部が相違する配列からなるポリペプチドでも、天然に存在するHTLV株が有するgp21の部分領域からなるポリペプチドに該当する場合がある。もっとも、天然のHTLV株には見出されない変異を含むアミノ酸配列のポリペプチドであっても、ごく少数のアミノ酸が置換された配列からなるポリペプチドであれば、同様にFDX-gp21部分ペプチドに採用可能である。
gp21の部分領域に由来するポリペプチドとしては、gp21の部分領域からなるポリペプチドを好ましく用いることができ、具体例としては、配列番号5若しくは配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、例えば配列番号5若しくは配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいは配列番号3若しくは配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、例えば配列番号3若しくは配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを挙げることができるが、これらに限定されない。
なお、本発明において、「ポリペプチド」と「ペプチド」は同義であり、いずれも2以上のアミノ酸残基がペプチド結合により結合した分子を指す。
また、本発明において、単に「gp21」といった場合には、HTLV-1のgp21及びHTLV-2のgp21の両者が包含される。
P. furiosus由来FDXは、大腸菌内での組換えタンパク質の発現量を増大させるタグタンパク質として知られている(特許第3360557号)。配列番号7に示す塩基配列は、NCBIのGenBankにX79502のアクセッション番号で登録されているP. furiosusフェレドキシン遺伝子の塩基配列であり、配列番号8に示すアミノ酸配列は、この塩基配列にコードされるFDXタンパク質のアミノ酸配列である。本発明では、配列番号8に示すアミノ酸配列のFDXを好ましく用いることができる。もっとも、FDXの配列にはP. furiosusの株間で若干の相違があり得るので、配列番号8と完全に同一のアミノ酸配列のFDXのみならず、数個以下(例えば5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、又は1個)のアミノ酸が置換された配列からなるFDXも本発明において使用可能である。
FDXは、gp21部分ペプチドのN末端に直接連結されていてもよいし、1以上の任意のアミノ酸残基を介して間接的に連結されていてもよい。そのような任意のアミノ酸残基は、例えば、リンカー配列や、必要に応じてFDXを容易に切断可能にする、酵素等により切断を受けるアミノ酸配列であり得る。
gp21部分ペプチドのN末端に「FDXを付加させる」又は「FDXを連結する」といった場合、通常は、gp21部分ペプチドのN末端に直接又は間接的にFDXが融合された構造の融合タンパク質として発現されるように、該融合タンパク質の全長をコードするDNAを設計して該融合タンパク質を調製することをいい、gp21部分ペプチドとFDXタンパク質を別個に調製してから両者を結合させるという限定を加える意図はない。
gp21部分ペプチドのN末端側にFDXを付加させた融合タンパク質は、周知の遺伝子工学的手法により製造することができる。まず、FDXをコードするポリヌクレオチド及びgp21部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドをそれぞれ調製し、gp21部分ペプチドコード配列の上流側にFDXコード配列が位置するよう、適当な発現ベクターのマルチクローニングサイトに組み込み、適当な発現系を用いて発現させる。発現させた融合タンパク質を回収・精製することにより、目的とする融合タンパク質を組換えタンパク質として得ることができる。回収した融合タンパク質の精製は、下記実施例に記載されるように陰イオン交換カラムとゲルろ過カラムを用いて行なうことができる。
FDXタンパク質をコードするDNAは、P. furiosusのゲノムからPCRにより増幅させて調製することができる。あるいは、P. furiosusのフェレドキシン遺伝子の配列はデータベースに登録され公知であるので、公知の遺伝子配列に基づいて複数のDNA断片(プライマー)を化学合成し、公知のアセンブルPCR法ないしはfusion PCR法と呼ばれる手法により各断片をつなぎ合わせて合成することもできる。
FDXタグを付加したタンパク質は、大腸菌内での発現量が増大することが知られている(特許第3360557号)。FDX-gp21部分ペプチド融合タンパク質の製造においても、大腸菌発現系を好ましく使用することができる。例えば、配列番号1に示したHTLV-1のenv遺伝子配列のうち、配列番号5に示したaa372-404の領域をコードする領域は第1114位〜第1212位の領域であるから、この領域をPCR等によりHTVL-1ゲノムから増幅することで、HTLV-1由来のgp21部分ペプチドをコードするDNAを得ることができる。あるいは、env遺伝子配列情報に基づいて複数のDNA断片(プライマー)を化学合成し、公知のアセンブルPCR法(fusion PCR法)により各断片をつなぎ合わせて合成することもできる。なお、配列番号14に示したHTLV-2 Mo株のenv遺伝子配列のうち、配列番号6に示したaa368-400の領域をコードする領域は、第1102位〜第1200位の領域である。gp21部分ペプチドをコードするDNAとしては、所望により、大腸菌細胞内でのgp21部分ペプチドの発現効率がさらに高まるよう、大腸菌の翻訳コドンに最適化したDNAを用いてもよい。そのような改変された塩基配列を有するDNAは、常法の化学合成により、あるいは上述のアセンブルPCR法(fusion PCR法)により合成することができる。
FDXとgp21部分ペプチドの間に任意のアミノ酸配列を含ませる場合には、FDXタンパク質のC末側に当該任意のアミノ酸配列が連結するように、FDXコード配列の3'末側に当該任意のアミノ酸配列をコードする塩基配列を付加したDNAを調製し、発現ベクターに組み込めばよい。あるいは、gp21部分ペプチドのN末側に当該任意のアミノ酸配列が連結するように、gp21部分ペプチドコード配列の5'末側に当該任意のアミノ酸配列をコードする塩基配列を付加したDNAを調製し、発現ベクターに組み込めばよい。
FDX-gp21部分ペプチドは、gp21部分ペプチドのN末端側に直接又は間接的にFDXが付加された構造を含んでいる限り、その一方又は両方の末端に任意の1以上のアミノ酸残基が付加されていてもよい。そのような残基の付加は、通常、ペプチド製造過程での便宜や固相支持体上への固定化の便宜等のために行なわれ得るか、あるいは、クローニングの過程でベクターやプライマーに由来する残基として生じ得る。
例えば、配列番号5に示したHTLV-1由来のgp21部分ペプチドのN末端にトロンビン開裂部位(配列番号10)を介してFDXが融合された融合タンパク質をコードするDNAとしては、配列番号9に示す塩基配列を有するDNAを例示することができる。このようなDNAは、例えば、FDXをコードするDNAと、配列番号5の領域をコードするDNAとを調製して適当な発現ベクターに順次クローニングすることにより調製できる。トロンビン開裂部位は、該部位をコードするDNAがFDXコードDNAの3'側に、又はgp21部分ペプチドをコードするDNAの5'側に連結するように適当なプライマー配列を設計してDNA断片を調製することにより、FDXとgp21部分ペプチドとの間に挿入することができる。
上記定義の通りのgp21部分ペプチドと、そのN末端に直接又は間接的に付加されたFDXタンパク質とを含む融合タンパク質は、FDXを付加しないgp21部分ペプチドと比較して抗gp21抗体との反応性が大幅に向上されている。抗gp21モノクローナル抗体のみならず、抗体分布が多様な臨床検体との反応においても、該融合タンパク質は高い免疫反応性を示す。従って、該融合タンパク質を検体中のHTLV抗体を検出するための免疫測定系で抗原として用いることで、抗HTLV抗体(より具体的には、gp21に対する抗体)の検出感度を向上させることができる。さらに、該融合タンパク質を抗原として用いると、FDXを付加しないgp21部分ペプチドを抗原とした場合よりも非特異反応が低減され、検出の特異性をも向上させることができる。
FDX-gp21部分ペプチド抗原は、HTLV-1由来のFDX-gp21部分ペプチド抗原及びHTLV-2由来のgp21部分ペプチド抗原のいずれか一方のみからなるものであってもよいし、また、両者を組み合わせたものであってもよい。例えば、免疫測定の抗原として両者の混合物を用いてもよいし、また、2種類以上の抗原を用いる手法においては、1種類の抗原として一方を、もう1種類の抗原として他方を用いてもよい。さらにまた、FDX-gp21部分ペプチド抗原は、gp21部分ペプチドを複数含んだ構造でもよい。例えば、HTVL-1由来のgp21部分ペプチドとHTLV-2由来のgp21部分ペプチドとの融合タンパク質のN末端にFDXを付加した構造のものであってもよい。また、HTLV-1由来のgp21部分ペプチドを複数含んだ構造でもよく、HTLV-2由来のgp21部分ペプチドを複数含んだ構造でもよい。さらにまた、FDX-gp21部分ペプチド抗原は、所望により、FDX-gp21部分ペプチド抗原以外の少なくとも1種の他のHTLV抗原と組み合わせて用いることができる。「他のHTLV抗原」には、ネイティブ抗原(すなわち、HTLV-1感染細胞からウイルスタンパク質を抽出したもの)、及びHTLVタンパク質のアミノ酸配列に基づいて設計された人工のペプチド抗原が包含される。「人工のペプチド抗原」には、FDXを付加しないgp21全長又はその部分領域に由来するポリペプチド抗原、並びにgp21以外(例えばp19、gp46、p24、p15など)の天然型配列又は変異型配列のHTLVタンパク質又はその部分ペプチドが包含される。また、FDX-gp21部分ペプチド抗原は、少なくとも1種の他のHTLV抗原(人工のペプチド抗原)を含む融合タンパク質であってもよい。
抗体の測定方法自体は周知の常法である。免疫測定を反応様式で分類すると、サンドイッチ法、競合法、凝集法、イムノクロマト法、ウエスタンブロット法等があり、標識で分類すると、放射免疫測定、蛍光免疫測定、酵素免疫測定(EIA)、ビオチン免疫測定等がある。また、抗原を用いた抗体検査法の具体例としては、これらに限定されないが、EIA法(ELISA、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)、ウエスタンブロット等)、化学発光免疫測定法(CLIA法)、凝集法(ラテックス凝集法等)、補体結合反応(CF)等が挙げられる。本発明が対象とする抗HTLV抗体の免疫測定は、検体中の抗HTLV抗体を特異的に測定することができる方法であれば、いかなる手法を用いてもよい。ウエスタンブロッティング等の、抗原が完全に変性された状態で抗原抗体反応が行われる免疫測定系でもよいし、また、ELISAやCLEIA等の、抗原がある程度立体構造を保持している非変性条件下で抗原抗体反応が行われる免疫測定系でもよい。いずれの場合でも、FDX-gp21部分ペプチド抗原は向上された免疫反応性を示すので、抗HTLV抗体の検出感度及び特異性を高めることができる。
なお、本発明において、「測定」という語には、定性的検出、定量及び半定量が包含される。また、単に「検出」といった場合には、定性的検出、定量的検出、及び半定量的検出が包含される。
検体は、一般的なHTLV抗体検査で用いられる検体と同じであってよく、通常、全血、血漿、血清等の血液検体である。検体は適宜希釈して用いられる。
検体中の抗体の免疫測定においては、B/F分離の便宜のため、しばしば、固相支持体上に固定化した抗原が用いられる。FDX-gp21部分ペプチドは、そのような固相支持体上に固定化された状態で用いることができる。FDX-gp21部分ペプチド抗原を、FDX-gp21部分ペプチド抗原以外の少なくとも1種の他のHTLV抗原と組み合わせて用いる場合、FDX-gp21部分ペプチドは、当該少なくとも1種の他のHTLV抗原と組み合わせて固相支持体上に固定化された状態で用いることができる。固相支持体が磁性粒子やラテックス粒子等の粒子の場合、「組み合わせて固定化」との語には、FDX-gp21部分ペプチドと他のHTLV抗原を同一の粒子に固定化すること、及び、FDX-gp21部分ペプチドと他のHTLV抗原を別々に粒子に固定化し、その後に各固定化粒子を混合すること、の両者が包含される。FDX-gp21部分ペプチド抗原としてHTLV-1由来のものとHTLV-2由来のものの両者を組み合わせて用いる場合も同様に、それらの両者を同一粒子に固定化してもよいし、別々の粒子に固定化してから各固定化粒子を混合してもよい。
固相支持体は、免疫測定用に従来用いられているものであってよく、特に限定されない。例えば、プラスチックプレート、微粒子、繊維状物質等を用いることができる。これら支持体の材質としては、従来公知のものを用いることができ、特に限定されないが、微粒子であれば、例えば、ガラスビーズ、ポリスチレン等の各種プラスチックビーズ、ラテックス粒子、ゼラチン粒子及び各種フェライト粒子(例えば、特開平3−115862号公報参照)等を挙げることができる。また、繊維状物質としては、例えば、セルロース、ニトロセルロース、キトサン、ポリエチレングリコール重合体、シラン重合体等を構成成分とするものを挙げることができる。ウエスタンブロット法において抗原タンパク質を転写するニトロセルロース膜等のメンブレンも、固相支持体の一例である。
これら支持体へのFDX-gp21部分ペプチド抗原の固定化は、物理吸着、架橋剤を用いた化学結合等、公知の方法を適宜用いることができる。
あるいは、FDX-gp21部分ペプチド抗原は、標識物質で標識された形態で使用され得る。検体中の抗体の免疫測定においては、固相上に捕捉された検体中の抗体と、標識物質を結合した標識抗原とを反応させ、検出反応を行なう手法も知られている。FDX-gp21部分ペプチド抗原も、標識物質を結合させた形態で用いることができる。この場合も、FDX-gp21部分ペプチドのみを標識抗原として用いてもよいし、少なくとも1種の他のHTLV抗原を標識したものと組み合わせて用いてもよい。HTLV-1由来のFDX-gp21部分ペプチド抗原とHTLV-2由来のFDX-gp21部分ペプチド抗原を組み合わせて用いる場合には、一方のみを標識抗原として用いてもよいし、両者を組み合わせて標識抗原として用いてもよい。
標識物質は、公知の免疫測定系で使用されている標識物質と同様のものを用いることができ、特に限定されない。具体例としては、酵素、蛍光物質、化学発光物質、染色物質、放射性物質などが挙げられる。酵素としては、アルカリホスファターゼ(ALP)、パーオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ等、公知のものを用いることができるが、これに限定されるものではない。高い検出感度の測定系を提供するためには、ALPを用いることが望ましい。
標識物質として酵素を用いる場合、該酵素に対応した発色基質、蛍光基質又は発光基質等の基質を該酵素と反応させ、その結果発生するシグナルを測定することにより、酵素活性を求め測定対象物を測定することができる。例えば、標識物質としてALPを用いる場合、3−(4−メトキシスピロ(1,2−ジオキセタン−3,2’−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)−4−イル)フェニルホスフェート2ナトリウム(例えば商品名AMPPD)などの発光基質を用いることができる。
標識物質としてビオチン又はハプテンが用いられる場合には、酵素、蛍光物質、化学発光物質、染色物質又は放射性物質などを結合したストレプトアビジン又はハプテン抗体などを用いて測定することができる。
例えば、ELISAやCLEIAの場合には、HTLV抗原をプレート又は粒子等の固相支持体に固定化(感作)し、これを検体と反応させて検体中の抗HTLV抗体を支持体上に捕捉し、洗浄後、標識された抗免疫グロブリン抗体又は標識されたHTLV抗原と反応させる。さらに洗浄後、標識物質からのシグナルを、シグナルの種類(発色、蛍光、発光、放射線など)に応じ適当な検出器を用いて測定する。これらの手法において、FDX-gp21部分ペプチドは、固相抗原及び標識抗原の少なくとも一方として使用することができる。両者に使用する場合、HTLV-1由来のFDX-gp21部分ペプチド及びHTLV-2由来のFDX-gp21部分ペプチドを組み合わせたものを固相抗原と標識抗原の両者に採用してもよいし、あるいは、固相抗原及び標識抗原のうちの一方をHTLV-1由来のFDX-gp21部分ペプチドとし、他方をHTLV-2由来のFDX-gp21部分ペプチドとしてもよい。あるいはまた、固相抗原及び標識抗原のうちの一方をHTLV-1由来のFDX-gp21部分ペプチド抗原とHTLV-2由来のFDX-gp21部分ペプチド抗原との組み合わせとし、他方をHTLV-1由来のもの及びHTLV-2由来のもののうちのいずれか一方としてもよい。
ウエスタンブロットの場合には、例えば、HTLV抗原を電気泳動後、メンブレンに転写し、このメンブレンを検体と反応させた後、標識された抗免疫グロブリン抗体又は標識されたHTLV抗原と反応させればよい。この手法においても、FDX-gp21部分ペプチドは、メンブレンに転写するHTLV抗原(本発明の定義に従えば、固相抗原に該当する)及び標識抗原の少なくとも一方として使用することができる。
凝集法の場合には、例えば、FDX-gp21部分ペプチドを所望により少なくとも1種の他のHTLV抗原と組み合わせてゼラチン粒子やラテックス粒子等に固定化し、これを検体と反応させ、粒子の凝集量を吸光度等により測定すればよい。
測定対象となる検体中の抗HTLV抗体のサブクラスは特に限定されないため、標識された抗免疫グロブリン抗体を用いる場合の抗免疫グロブリン抗体の種類は特に限定されず、例えば抗IgG抗体及び抗IgM抗体のいずれか一方又は両者を混合して用いることができる。
FDX-gp21部分ペプチド抗原は、抗HTLV抗体の免疫測定試薬として提供することができる。該試薬は、FDX-gp21部分ペプチドを含み、さらに、例えば該ペプチドの安定化等に有用な他の成分を含んでいてよい。また、該免疫測定試薬は、他の試薬類等と適宜に組み合わせて、抗HTLV抗体の免疫測定キットとして提供することができる。免疫測定に必要な他の試薬類は周知である。例えば、本発明のキットには、上記した免疫測定試薬のほか、検体希釈液、洗浄液、及び、標識抗体又は標識抗原に使用されている標識物質が酵素の場合には該酵素の基質液等がさらに含まれ得る。免疫測定試薬及び免疫測定キットは、いずれも、FDX-gp21部分ペプチド抗原が固相支持体に固定化された形態で、又は標識物質と結合された形態で、該抗原を含み得る。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
1.タグタンパク質をgp21抗原ペプチドに付加した融合タンパク質の調製
(1) FDX-gp21d融合タンパク質の調製
フェレドキシン(FDX、配列番号8)をコードするDNA(配列番号7)は、特許第3360557号の記載に従い、データベースに登録されているPyrococcus furiosus由来FDXの既知のDNA配列をもとに設計した8個のプライマーをアセンブルPCR法によりつなぎ合わせて合成した。gp21dとFDXとの間にトロンビン開裂部位が含まれるよう、FDXコードDNAの5'末又は3'末にトロンビン開裂部位をコードする配列(配列番号10)を付加した。
HTLV-I gp21の部分領域(HTLV-I gp62におけるaa361-404)からなるgp21d抗原(配列番号3)をコードするDNA、及びHTLV-IIのgp21d抗原(HTLV-II gp62におけるaa357-400、配列番号4)をコードするDNAも、上記と同様に、データベースに登録されている既知のenv遺伝子の配列情報を参考にそれぞれ複数のプライマーを設計し、アセンブルPCR法によりつなぎ合わせて合成した。HTLV-I gp21d抗原についてはHTLV-I MT-2株のenv遺伝子の配列情報(配列番号1、2)を、HTLV-II gp21d抗原についてはHTLV-II Mo株のenv遺伝子の配列情報(配列番号14、15)を利用した。
HTLV-I gp21d又はHTLV-II gp21dをコードするDNA、及びFDXをコードするDNAを、公知の発現ベクターpW6A(特許第3360557号)のマルチクローニングサイトに挿入し、gp21dのN末側又はC末側にトロンビン開裂部位を介してFDXが付加された融合タンパク質を発現するベクターを調製した。
各ベクターを宿主大腸菌に導入後、LB培地37℃の条件下で培養した。培養液の大腸菌濃度を予備培養として波長660nmで吸光度約1.0の濁度とした後、1mM IPTGを添加し発現誘導を行った。IPTG添加3時間後、遠心を行い菌の回収を行った。回収した大腸菌をトリス−塩酸緩衝液に再懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理を行った。遠心を行って不溶体(inclusion body)の回収を行った。この不溶体をリゾチームやDNaseによる処理、1%トライトンX100による洗浄を行い、さらに低濃度の尿素溶液で洗浄した。最終的に8M尿素−10mMジチオスレイトール(DTT)溶液で不溶体を可溶化した。pH10.5のトリス塩酸緩衝液で平衡化したQセファロース(GEヘルスケア・ジャパン社製)カラムにて可溶化物を精製し、さらにSuperdex 200 (GEヘルスケア・ジャパン社製)カラムにて溶出物を精製した。イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーの溶出画分のメインピークに融合タンパク質FDX-I-gp21d(HTLV-I gp21dのN末側にFDX付加、配列番号11)、I-gp21d-FDX(HTLV-I gp21dのC末側にFDX付加)、FDX-II-gp21d(HTLV-II gp21dのN末側にFDX付加、配列番号12)、及びII-gp21d-FDX(HTLV-II gp21dのC末側にFDX付加)を回収した。上記に示した条件はgp21融合タンパク質の代表的な精製方法であり、融合タンパク質ごとに最適な条件は異なる場合がある。
(2) TRX-I-gp21d融合タンパク質の調製
チオレドキシン(TRX)をコードするDNAは、適当な制限酵素サイトを付加したプライマーを用いてBL21(DE3)ゲノムDNAよりPCR増幅して得た。上記(1)と同様の手順により、TRXコードDNA及びI-gp21dコードDNAをpW6Aベクターに順次クローニングし、大腸菌細胞内に導入してタンパク質を発現させることにより、TRXがI-gp21dペプチドのN末側又はC末側に付加された融合タンパク質を得た。融合タンパク質を発現する大腸菌を超音波破砕し、15000rpmで5分間遠心した沈殿画分を希釈したものをTRX融合タンパク質試料としてウエスタンブロッティング解析に用いた。
(3) GST-I-gp21d融合タンパク質の調製
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)をコードするDNAは、適当な制限酵素サイトを付加したプライマーを用いてpGEXベクター(GEヘルスケア・ジャパン)よりPCR増幅して得た。上記(1)と同様の手順により、GSTコードDNA及びI-gp21dコードDNAをpW6Aベクターに順次クローニングし、大腸菌細胞内に導入してタンパク質を発現させることにより、GSTがI-gp21dペプチドのN末側又はC末側に付加された融合タンパク質を得た。融合タンパク質を発現する大腸菌を超音波破砕し、15000rpmで5分間遠心した沈殿画分を希釈したものをGST融合タンパク質試料としてウエスタンブロッティング解析に用いた。
2.各種タグタンパク質−gp21d融合組換えタンパク質の免疫反応性の検討
各タグタンパク質を付加したgp21d抗原試料は、タグ付加しないI-gp21dと泳動量に2倍以上の差が無いように量を調整してSDS-PAGEで数セット泳動した。ゲルのひとつをCBB染色し、バンドの染色強度を測定して泳動量に極端な差がないことを確認した(図1−1、1−2)。残りのゲルはニトロセルロースメンブレンにタンパク質を転写し、ウエスタンブロッティング(WB)解析に付した。
<WB解析>
メンブレンを1%スキムミルク/PBSでブロッキング後、抗gp21モノクローナル抗体又はHTLV陽性患者由来の検体(PBS/1%BSAで希釈)と室温で2時間インキュベートした。PBSTで5分間×3回洗浄後、抗Mig-POD抗体又は抗Hig-POD抗体 (DAKO、x3000、PBS/1%BSA)と室温2時間インキュベートした。PBSTで5分間×3回洗浄後、超純水で洗浄し、TMB(ATTO社)にて発色反応を行なった。発色後のメンブレンをGelDoc(Bio-Rad社製)にて撮影後、専用ソフトQuantity-Oneにて発色強度を数値化した。各バンドの強度をCBB染色での各バンドの強度でそれぞれ除することで標準化した。標準化された値をさらにI-gp21dの値で除することにより、I-gp21dに対する相対値(I-gp21dの標準化後の値を100とする)を求めた。
抗gp21モノクローナル抗体を1次反応に用いたWBの結果を図2−1、2−2に、陽性患者検体を1次反応に用いたWBの結果を図3−1、3−2及び図4−1、4−2にそれぞれ示す。I-gp21d及びII-gp21dのいずれも、FDXをN末側に付加した組換え融合タンパク質では、モノクローナル抗体及び陽性患者血清に対する免疫反応性がタグ付加しないgp21dの4倍(図3−2)〜50倍(図2−2のII-gp21d)以上に上昇していることが確認された。FDXをC末側に付加した融合タンパク質、及びGST又はTRXをN末側に付加した融合タンパク質では、免疫反応性の向上は認められなかった。
図5−1、5−2は、gp21dのN末にFDX付加した融合タンパク質とC末にFDX付加した融合タンパク質の免疫反応性をWBにより詳細に調べた結果である。1次反応には抗gp21モノクローナル抗体又はHTLV陽性患者由来の検体を用いた。I-gp21d、II-gp21dいずれも、CBBのバンド強度で標準化した後、N末付加体のバンドの値をC末付加体のバンドの値で除することで相対評価した(図5−2)。N末にFDX付加したgp21d抗原は、C末付加した抗原よりも免疫反応性が向上していることが確認された。
図6−1、6−2は、GSTタグとTRXタグについて、I-gp21dのN末付加体とC末付加体の免疫反応性をWBにより詳細に調べた結果である。これらのタグタンパク質は、図1−1〜図3−2に示される通り、gp21d抗原の免疫反応性を向上させる効果はなく、付加により抗原の免疫反応性は大きく損なわれるが、N末付加体とC末付加体との間でそれぞれ比較するとN末付加体の方が免疫反応性が高いことが確認された。
3.gp21d変異体におけるFDX付加の影響
I-gp21d(配列番号3)は、HTLV-IのMT-2株に由来する配列である。HTLV-IのATK株において、この44残基に相当する相同領域は、2残基が置換されている(配列番号13)。この変異型配列についても、N末端FDX付加体を調製し、免疫反応性をWBにて確認した。また、I-gp21dのN末側11残基を欠失させた変異体I-gp21d-Ndel(配列番号5)についても、N末端FDX付加体を調製して免疫反応性を調べた。WBの1次反応には、I-gp21d抗原の12-22番アミノ酸の領域内にエピトープを有する抗gp21マウスモノクローナル抗体を用いた。
結果を図7−1、7−2に示す。置換変異体及び欠失変異体のいずれも、N末端FDX付加体は極めて高いレベルで抗gp21モノクローナル抗体との反応性を示した。
4.CLEIAにおけるFDX付加gp21d抗原の有用性の検討
FDX付加したgp21d抗原の免疫反応性をCLEIA法により確認した。一連の反応は市販の全自動化学発光酵素免疫測定システム「ルミパルス」(登録商標)(富士レビオ社製)にて行なった。
<検討1>
磁性粒子にI-gp21d-FDXまたはFDX-I-gp21dを固定化したものと、市販のHTLV抗体検査キットに添付されているルミパルス用HTLV-I陽性コントロール、陰性コントロール及び陽性サンプル1例のいずれかとを反応させた。その後、アルカリフォスファターゼ結合I-gp21d-FDXまたはFDX-I-gp21dを洗浄後の粒子と反応させた。検出はAMPPDにて発光させそのカウントを測定した。
結果を表1に示す。N末FDX付加体では、C末付加体よりはるかに陽性コントロール及び陽性サンプルに対する反応性が上昇していることが確認された。
<検討2>
磁性粒子にII-gp21dまたはFDX-II-gp21dを固定化したものと、ルミパルスHTLV-I陽性コントロールまたは陰性コントロールとを反応させた。その後、アルカリフォスファターゼ結合I-gp21d-FDXを洗浄後の粒子と反応させた。検出はAMPPDにて発光させそのカウントを測定した。
結果を表2に示す。HTLV-II gp21dにおいても、FDXをN末につけたことにより、FDX付加しない抗原よりはるかに陽性コントロールに対する反応性が上昇していることが確認された。
<検討3>
磁性粒子にII-gp21d-FDXまたはFDX-II-gp21dを固定化したものと、ルミパルスHTLV-I陽性コントロール、陰性コントロール、及び陰性検体のうち予備検討によりII-gp21-FDXに対し高値となる非特異検体9例のいずれかとを反応させた。その後、アルカリフォスファターゼ結合I-gp21-FDXを洗浄後の粒子と反応させた。検出はAMPPDにて発光させそのカウントを測定した。
結果を表3に示す。HTLV-II gp21dにおいて、FDXをN末につけたことにより陽性コントロールに対する反応性がはるかに上昇し、かつ陰性検体に対する非特異性反応が抑制されていることが確認された。

Claims (15)

  1. 検体中の抗HTLV抗体を検出する免疫測定における抗原として、HTLV gp21タンパク質の部分領域に由来するポリペプチドのN末端にパイロコッカス・フリオサス由来フェレドキシンタンパク質が直接又は間接的に付加された構造を有する融合タンパク質を用いることを含む、抗HTLV抗体の検出感度を向上させる方法であって、前記ポリペプチドは、HTLV-1 gp62の第372番〜第404番アミノ酸の領域に相当する領域を含み、サイズが60残基以下である、HTLV gp21タンパク質の部分領域からなるポリペプチド、又は該ポリペプチドにおいて数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである、方法。
  2. 抗HTLV抗体の検出の感度及び特異性を向上させる方法である請求項1記載の方法。
  3. 前記ポリペプチドは、配列番号5若しくは配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む、請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記ポリペプチドは、配列番号5又は配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項3記載の方法。
  5. 前記ポリペプチドは、配列番号3若しくは配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含む、請求項1又は2記載の方法。
  6. 前記ポリペプチドは、配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む、請求項5記載の方法。
  7. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列である、請求項6記載の方法。
  8. フェレドキシンタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号8に示されるアミノ酸配列である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記融合タンパク質は、固相抗原及び標識抗原の少なくともいずれか一方として用いられる、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 検体中の抗HTLV抗体を検出する免疫測定における抗原として、HTLV gp21タンパク質の部分領域に由来するポリペプチドのN末端にパイロコッカス・フリオサス由来フェレドキシンタンパク質が直接又は間接的に付加された構造を有する融合タンパク質を用いることを含む、gp21組換え抗原の免疫反応性を向上させる方法であって、前記ポリペプチドは、HTLV-1 gp62の第372番〜第404番アミノ酸の領域に相当する領域を含み、サイズが60残基以下である、HTLV gp21タンパク質の部分領域からなるポリペプチド、又は該ポリペプチドにおいて数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである、方法。
  11. HTLV gp21タンパク質の部分領域に由来するポリペプチドのN末端に直接又は間接的にパイロコッカス・フリオサス由来フェレドキシンタンパク質が付加された構造を有する融合タンパク質からなる、抗HTLV抗体の免疫測定用の抗原であって、前記ポリペプチドは、HTLV-1 gp62の第372番〜第404番アミノ酸の領域に相当する領域を含み、サイズが60残基以下である、HTLV gp21タンパク質の部分領域からなるポリペプチド、又は該ポリペプチドにおいて数個以下のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである、抗原。
  12. 前記融合タンパク質が固相上に固定化された形態にある、請求項11記載の抗原。
  13. 前記融合タンパク質が標識物質と結合された形態にある、請求項11記載の抗原。
  14. 請求項11ないし13のいずれか1項に記載の抗原を含む、抗HTLV抗体の免疫測定試薬。
  15. 請求項14記載の免疫測定試薬を含む、抗HTLV抗体の免疫測定キット。
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