JP2015215219A - 放射性汚染土壌の浄化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストで大量に、かつ、効率良く浄化できる放射性汚染土壌の浄化方法を提供する。【解決手段】放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌に土壌の溶融温度を高める土壌改質剤を添加、混合する第1工程と、1100℃以上の温度に加熱し、放射性セシウムを土壌から気化分離する第2工程との2段階で処理する放射性汚染土壌の浄化方法である。また、放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌に還元剤、または、還元剤および土壌改質剤を添加し、600℃以上1100℃未満の温度域、かつ酸素分圧が0.1atm以下の雰囲気で土壌中酸化鉄の還元処理を行い土壌の溶融温度を高める第1工程と、1100℃以上の温度域で放射性セシウムを土壌から気化分離する第2工程との2段階で処理する放射性汚染土壌の浄化方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌から放射性セシウムを気化して分離することにより除去する方法、および、気化して分離した放射性セシウムを濃縮して回収する放射性汚染土壌の浄化方法に関する。
20世紀に大きく進歩した核利用技術は、原子力発電等のエネルギー利用を目的とした極めて重要な技術であり、化石燃料を必要としないことから、地球温暖化ガスである二酸化炭素の発生を伴わず、かつ、低コストな手段として、広く利用されていることは周知の通りである。この原子力エネルギー利用に伴って発生する有害な放射性物質が外部環境に漏洩しないように、放射性物質を外部環境から隔離することが必須であり、さまざまな安全対策が採られている。
しかし、原子力発電の利用においては、2011年の津波により被害を受けた発電所から大量の放射性物質が外部に漏洩したように、外部環境への放射性物質の漏洩を完全に防止することが難しい場合もあり得る。
このような事態が発生した際には、放射性物質が広範囲に飛散するため、極めて広い地域における土壌汚染などの問題を招き、農地としての使用制限や、半永久的な立ち入り禁止区域を設定しなければならない等の諸問題を招くことになる。
特に、放射性セシウムは半減期が約30年といわれていることに加えて、通常は、高濃度に汚染された土壌の量も甚大である。従って、例えば地表50mmまでの汚染土壌を除去できた場合でも、保管量が少なくとも数千万tレベルに達すると想定される。
ちなみに、放射能に汚染された物質の管理技術としては、例えば活性化炭素質材料で形成されて廃棄物(放射性汚染物)を収容する第一容器と、ゼオライトで形成されて第一容器を包囲する第二容器と、この第二容器を覆う土壌とからなる地下式廃棄物貯蔵施設(特許文献1参照)等のように、厳格な管理施設が要求されるが、上述した甚大な量に対する管理には、用地や管理設備などの面で極めて困難な問題を有している。しかも、これらの放射性汚染物は、単に土壌だけではなく、焼却灰やスラッジ等にも及び、このような放射性汚染物を大量に、かつ、経済的に浄化することは極めて困難な問題である。
一方、放射能によって汚染された放射性汚染物の浄化方法としては、例えば、高温蒸気をパイプによって土中に吹き込む方法(特許文献2参照)や、微生物を利用した方法(特許文献3参照)等が提案されている。しかし、特許文献2に記載の方法では、吹き込んだ高温水蒸気が土中ですぐに冷却されてしまうため、極めて限定された領域での除去であり、実用的ではない。また、特許文献3に記載の方法では、微生物を利用するものであるため、その処理速度が遅く、大量の放射性汚染物の処理には適用が困難であると考えられる。
また、特許文献4には、セシウム沸点以上の温度の過熱水蒸気を、放射性セシウム汚染土壌に接触させて放射性セシウムを気化させる方法が開示されている。本発明者らも、600〜1450℃の温度域、酸素分圧が0.03atm以下の雰囲気で還元処理し、放射性元素を気化して分離することを特徴とする放射性汚染物の浄化方法(特許文献5参照)や、600〜1450℃の温度域、かつ水蒸気分圧が0.1atm以上の雰囲気で水蒸気処理し、放射性元素を気化させて分離することを特徴とする放射性汚染物の浄化方法(特許文献6参照)を提案した。これらの方法により、放射性汚染物を、低コストで大量に、かつ、効率良く分離して除去し、汚染原因の放射性物質を濃縮して回収することが可能となった。
特開昭62−269098号公報 特開2004−243195号公報 特開平4−204295号公報 特開2013−101032号公報 特開2013−164410号公報 特開2013−178218号公報
特許文献4〜6の方法では、熱力学的には高温で処理するほど放射性元素の気化がより迅速に、かつ、効率良く進行するが、放射線汚染土壌を1100℃以上の処理しようとする場合、土壌の種類によっては、その一部が溶融し、放射性元素の液相土壌への拡散による活量低下による気化速度の低下や、土壌の処理容器への融着による操業面の障害といった課題が生じる傾向があることが判明した。
そこで、本発明は、放射線汚染土壌をより高温で処理可能にする方法を見出し、工業的に大量の放射性汚染土壌から放射性元素を迅速に、かつ、効率的に分離除去して、浄化する技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、原子力発電所から漏えいして飛散した放射性元素を含む土壌を浄化する方法に関する詳しい調査研究を行うことで、より効率的な放射性元素の浄化技術を開発するに至り、その要旨は次のとおりである。
(1)放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌を加熱処理して、放射性セシウムを気化させ分離する放射性汚染土壌の浄化方法であって、放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌に対して、該土壌の溶融温度を高める土壌改質剤を所定量添加し、混合して、次工程の加熱処理での予め決定された処理温度における液相率を50%以下にする第1工程と、1100℃以上の処理温度で加熱して、放射性セシウムを放射性汚染土壌から気化分離する第2工程とを備えて、2段階で放射性汚染土壌を処理することを特徴とする放射性汚染土壌の浄化方法。
(2)放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌を加熱処理して、放射性セシウムを気化させ分離する放射性汚染土壌の浄化方法であって、放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌に還元剤、又は、還元剤および土壌改質剤を所定量添加し、600℃以上1100℃未満の温度域で、かつ酸素分圧が0.1atm以下の雰囲気で該土壌に含まれる酸化鉄の還元処理を行って、該土壌の溶融温度を高めて、次工程の加熱処理での予め決定された処理温度における液相率を50%以下にする第1工程と、1100℃以上の処理温度で加熱して、放射性セシウムを放射性汚染土壌から気化分離する第2工程とを備えて、2段階で放射性汚染土壌を処理することを特徴とする放射性汚染土壌の浄化方法。
(3)土壌改質剤として酸化アルミニウムを主成分とする物質を用い、酸化アルミニウムの添加質量が、処理する放射性汚染土壌の土壌質量の10%以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
(4)第1工程で添加する還元剤が、処理する放射性汚染土壌の土壌質量の1%以上の質量の炭素を含む炭材であることを特徴とする(2)に記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
(5)第1工程で添加する還元剤が、処理する放射性汚染土壌の土壌質量の1%以上の質量の金属アルミニウムを含む金属アルミニウム含有物であることを特徴とする(2)に記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
(6)第2工程において、酸素分圧が0.03atm以下の雰囲気で土壌中のセシウム酸化物を還元処理することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
(7)第2工程において、水蒸気分圧が0.1atm以上の雰囲気で土壌中のセシウム酸化物を水蒸気処理することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
(8)第1工程後に、土壌から還元された金属鉄を磁選分離し、磁選分離後の土壌のみを第2工程で処理することを特徴とする(2)〜(7)のいずれかに記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
(9)1100℃での液相率が60%以上となる放射性汚染土壌を処理することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の放射性汚染物の浄化方法。
(10)気化分離された放射性セシウムを濃縮して回収することを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の放射性汚染物の浄化方法。
本発明によれば、放射性物質の飛散などによって発生し、放射性元素を含む大量の放射性汚染土壌を、大量に、迅速、かつ経済的に浄化処理を行うことできる。また、除去された放射性物質は高濃度に濃縮して回収することができ、これにより減容化して保管できることから、保管のための用地や設備等の負荷を大幅に低減できるほか、長期間に亘る保管のための監視や管理も容易にすることができる。
本発明の放射性汚染物の浄化方法について、ロータリーキルンを用いて行う汚染土壌を清浄化処理するプロセスを説明する図である。 実験と熱力学計算により求めた、代表的な組成の土壌における温度と土壌の液相率の関係を示す図である。 熱力学計算により求めた、酸化アルミニウムの添加量と所定温度まで加熱した場合の土壌液相率の関係を示す図である。 熱力学計算により求めた、炭素の添加量と、炭素によって土壌中の酸化鉄が還元された後に所定温度まで加熱した場合の土壌液相率の関係を示す図である。 熱力学計算により求めた、金属アルミニウムの添加量と、金属アルミニウムによって土壌中の酸化鉄が還元された後に所定温度まで加熱した場合の土壌液相率の関係を示す図である。
本発明の実施の形態を、図1を参照しながら説明する。なお、本発明は、図1に示されるようなロータリーキルン方式に限られるものではなく、放射性汚染土壌に対して電気を利用した加熱を行ったり、雰囲気制御を減圧容器内で処理するなど適宜応用することができるものである。
図1において、ロータリーキルン1内には、その上部の出口フード9の近傍から放射性セシウムを含む汚染土壌3が装入され、還元剤や土壌改質剤4はホッパー2を介して添加される。汚染土壌と還元剤や土壌改質剤は予めミキサー等で混合しておいても良い。この装入された汚染土壌3と還元剤や土壌改質剤4とはキルン1の回転によって混合され、このキルン1内を移動する間に土壌が処理されて、キルン1の下部から土壌容器6内へと移動し、その所定量がこの土壌容器6内に蓄積された後に系外へと搬出される。キルン1の傾きにより、汚染土壌3の下方への移動速度は変化し、水平に近くしておけば長時間土壌はキルン内に滞留し、傾き角を増加すれば高速に排出することもできる。
また、ロータリーキルン1の下部には、ロータリーキルン1内の温度を上昇させるためのバーナー7が設けられており、汚染土壌3は燃焼ガスにより所定の温度まで加熱されたロータリーキルン1内で高温処理される。ロータリーキルン内部を還元性の雰囲気にする場合には、入口フード8からロータリーキルン1内に還元性のガス、例えば窒素ガスを導入する。導入された窒素ガスはバーナー7により加熱され、バーナー7の燃焼ガスと共にロータリーキルン1内を通過し、キルン1内を所定の温度にまで加熱すると共に、キルン1内を通過してキルン1上部の出口フード9から外部へと排出される。
本発明では、放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌の溶融温度を高める第1工程と、溶融温度が上昇した汚染土壌を加熱処理して放射性セシウムを気化除去する第2工程との2段階で処理される。
土壌の代表的な組成を表1に示す。
Figure 2015215219
本発明者らは市販の熱力学計算ソフト(FactSage)による熱力学計算により、上記の代表組成での土壌の温度と溶融した部分の液相率との関係を図2のように見出した。土壌の温度が1000℃を超えると溶融し始め、1100℃では液相率は60%を超える。本発明者らの実験的知見によれば、汚染土壌を本発明における第2工程の1段階で加熱処理する場合、液相率が約50%を超えると、放射性セシウムが液相土壌中に拡散してセシウムの活量が低下して気化効率が低下する傾向となると共に、一部溶融した土壌全体が処理容器の壁面に付着し、加熱処理を継続することができにくくなる。そこで、事前に土壌の溶融温度を上昇させる第1工程を設けることが、本発明を実施するための形態である。なお、特に断りのない限り、本発明における熱力学計算ソフトは、上記のものを使用した。
本発明者らは、土壌の主成分であるSiO、Fe、及びAlについて、土壌の融点に及ぼす影響を熱力学計算ソフトによって検討した。その結果、土壌の溶融温度を上昇させるためには、土壌中のAl濃度を増加すること、及び、土壌中のFe濃度を低減することが有効であると知見した。
本発明における第1工程を実施するための一つの形態としては、放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌の溶融温度を高める土壌改質剤を土壌に添加し、混合する。Al濃度を増加するために、酸化アルミニウムを主成分とする物質を土壌改質剤として用いるのが好ましい形態である。ここで、酸化アルミニウムを主成分とする物質とは、酸化アルミニウムを50質量%以上含有する物質であって、例えば、アルミ灰、アルミドロス、ボーキサイト、アルミナ系レンガ屑等が挙げられる。また、土壌改質剤としては、上記のような酸化アルミニウムを主成分とする物質以外にも、例えば、フライアッシュ等の酸化ケイ素と酸化アルミニウムを含む物質や珪石、珪砂等の酸化ケイ素を主成分とする物質等を用いることができるが、酸化アルミニウムを主成分とする物質よりも土壌の融点上昇効果が小さく、多量の添加を必要とする。
上述したように、図1において、ロータリーキルン1内には、出口フード9の近傍から放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌3が装入され、土壌改質剤4がホッパー2を介して添加される。汚染土壌と土壌改質剤は予めミキサー等で混合しておいても良い。この装入された汚染土壌3と土壌改質剤4とはロータリーキルン1を所定時間回転することによって均一に混合される。ロータリーキルン1内で混合する場合には、ロータリーキルン1を水平に近くし、均一に混合される前に汚染土壌3が排出されないようにする。その後、第2工程として、バーナー7によりロータリーキルン1内を高温まで加熱し、汚染土壌3から放射性セシウムが気化除去される。このとき、本発明者らの実験的知見によると、土壌の液相率が50%以下の場合には、土壌の処理温度が1100℃以上で放射性セシウムの気化速度が急速に増加し、放射能除去率を向上させることができる。また、土壌の液相率が50%以下であれば、できるだけ高温にするほど放射能除去率が向上する。ただし、処理温度が1400℃を超えると、バーナーの燃料コストが過大となるとともに、ロータリーキルン1の耐火物の損耗が激しく、現実的なプロセスでなくなるため、実質的に第2工程の処理温度の上限は1400℃である。
図3は、熱力学計算ソフトを用いて計算した酸化アルミニウムの添加量と所定温度まで加熱した場合の土壌液相率の関係を示す。土壌質量の10%以上の酸化アルミニウムを添加すると、第2工程で土壌を1100℃まで加熱しても土壌の液相率は50%を超えないため、高い放射性セシウム除去率を得ることができる。一方、酸化アルミニウムの添加量の上限は特にないが、土壌質量の80%の酸化アルミニウム添加量では1400℃まで加熱しても土壌の液相率は50%未満であり、それ以上の酸化アルミニウム添加は効果が無い。したがって、酸化アルミニウムを主成分とする物質を土壌の溶融温度を増加する土壌改質剤として使用する場合、土壌質量の10%以上80%未満の添加量が好ましい添加量の範囲である。この範囲の中で、図3を基に、第2工程の処理温度での温度を予め決定し、その温度での土壌の液相率が50%を超えないように、酸化アルミニウムの添加量を決定する。なお、この図3を得るにあたって使用した土壌は、表1に示した組成を有するものである。汚染土壌や土壌改質剤の組成が異なる場合も同様にして土壌改質剤の添加量を決定できる。すなわち、事前に浄化対象の土壌を10グラム以上の所定量をサンプリングして分析に供し、土壌と土壌改質剤の組成から、第2工程の処理温度における改質剤添加量と添加後の土壌の液相率の関係を市販の熱力学計算ソフトを用いて計算することで、土壌改質剤の添加量を決定する。
また、放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌の溶融温度は、土壌中の酸化鉄を還元してFe濃度を低減することによっても高めることができる。そのため、第1工程において、放射性汚染土壌に還元剤を添加してもよい。このような還元剤としては、炭材、金属アルミニウム、金属シリコン、水素ガスなどの各種還元剤が使用可能である。図1において、ロータリーキルン1内に、出口フード9の近傍から汚染土壌または土壌改質剤を予め混合した汚染土壌3が装入され、還元剤4がホッパー2を介して添加される。ロータリーキルン1内の汚染土壌3は、バーナー7により所定の温度に加熱され、入口フード8から導入された窒素ガス等の不活性ガスまたは還元性ガスにより還元性雰囲気となったロータリーキルン1内で汚染土壌3中の酸化鉄が還元される。このとき、還元反応を進行させるために600℃以上に土壌を加熱するが、加熱温度は1100℃未満とし、土壌の液相率が50%を超えない温度に制御する。加熱温度を1100℃未満とする理由は、1100℃以上になると土壌の液相率がほぼ確実に50%を超え、放射性セシウムが液相土壌中に拡散してセシウムの活量が低下して気化効率が低下するとともに、一部溶融した土壌全体が処理容器の壁面に付着し、加熱処理を継続することができなくなるからである。
また、本発明者らの実験的知見から、ロータリーキルン1内の酸素分圧が0.1atmを超えると酸化鉄の還元が不十分となるため、還元剤を添加した場合の第1工程では、雰囲気の酸素分圧は0.1atm以下となるように導入する不活性ガスまたは還元性ガスの流量を調節する。引き続き第2工程で還元処理を行ってもよく、第2工程で還元処理する場合には、第1工程での土壌中における酸化鉄の還元が充分進行する前に汚染土壌3が排出されてしまわないように、ロータリーキルン1の傾き角を調整する。第2工程前に一度汚染土壌3を排出する場合には、ロータリーキルン1の傾き角を増加し、土壌を排出する。
炭材は安価な還元剤であり、炭素を含む炭材を第1工程の還元剤として使用することは、本発明の好ましい実施の形態の一つである。図4は、熱力学計算ソフトを用いて計算した、炭素の添加量と、炭素によって放射性汚染土壌中の酸化鉄が還元された後に所定温度まで加熱した場合の土壌液相率の関係を示す。土壌質量の1%以上の炭素を添加して土壌中の酸化鉄を還元すると、1100℃まで土壌を加熱しても、土壌の液相率は50%未満であり、高い放射性セシウム除去率を得ることができる。一方、炭素添加量の上限は特にないが、土壌質量の3%以上の炭素を添加しても、土壌中の酸化鉄は全て還元され、それ以上の土壌溶融温度の増加効果は無い。したがって、炭素を含む炭材を土壌の溶融温度を増加する還元剤として使用する場合、土壌質量の1%以上3%未満の炭素添加量が好ましい添加量の範囲である。この範囲の中で、図4を基に、第2工程の処理温度(予め決定する)での土壌の液相率が50%を超えないように、炭素の添加量を決定する。ただし、図4は、添加した炭素が全て還元反応に寄与した場合の検討であり、還元反応への炭素の利用効率を考慮して、添加量を増加するのが望ましい。また、第2工程を還元処理により放射性セシウムを気化する場合には、炭素も還元剤として寄与するため、第1工程で予め過剰量の炭材を添加しておいても良い。なお、この図4を得るにあたって使用した土壌は、表1に示した組成を有するものである。土壌の事前サンプリングによる分析で土壌組成が表1と異なる場合は、炭素の利用効率を考慮した還元後の土壌組成変化を推定し、熱力学計算ソフトを用いて炭素による還元後の土壌液相率を計算して炭素の添加量を決定する。
また、還元力が強く、しかも、放射性汚染土壌中の酸化鉄の還元によりFe濃度を低減できるだけでなく自らが酸化されることで土壌のAl濃度も増加され、土壌の溶融温度の増加効果が高い、金属アルミニウム、金属アルミニウム合金、又は少なくともこれらのいずれかを含んだ金属アルミニウム含有物を第1工程の還元剤として使用することは、本発明のさらに好ましい実施の形態である。加えて、金属アルミニウムの融点は660℃であり、それ以上の温度では反応性の良い液体状態で土壌中酸化鉄を還元でき、より短時間での還元処理が可能である。
図5は、熱力学計算ソフトを用いて計算した、金属アルミニウムの添加量と、アルミニウムによって放射性汚染土壌中の酸化鉄が還元された後に所定温度まで加熱した場合の土壌液相率の関係を示す。土壌質量の1%以上の金属アルミニウムを添加して土壌中の酸化鉄を還元すると、1100℃まで土壌を加熱しても、土壌の液相率は50%未満であり、高い放射性セシウム除去率を得ることができる。一方、金属アルミニウム添加量の上限は特にないが、土壌質量の15%の金属アルミニウム添加量では1400℃まで加熱しても土壌の液相率は50%未満であり、それ以上の金属アルミニウム添加は不要である。したがって、金属アルミニウムを含む金属アルミニウム含有物を土壌の溶融温度を増加する還元剤として使用する場合、土壌質量の1%以上15%未満の金属アルミニウム添加量が好ましい添加量の範囲である。この範囲の中で、図5を基に、第2工程の処理温度での土壌の液相率が50%を超えないように、金属アルミニウムの添加量を決定する。ただし、図5は、添加した金属アルミニウムが全て還元反応に寄与した場合の検討であり、還元反応への金属アルミニウムの利用効率を考慮して、添加量を増加するのが望ましい。また、第2工程を還元処理により放射性セシウムを気化する場合には、金属アルミニウムも還元剤として寄与するため、第1工程で予め過剰量の金属アルミニウム含有物を添加しておいても良い。なお、この図5を得るにあたって使用した土壌は、表1に示した組成を有するものである。土壌の組成が表1と異なる場合も同様に、金属アルミニウムの還元に対する利用効率を考慮し、熱力学計算ソフトを用いて還元後の土壌の液相率を計算することで金属アルミニウムの添加量を決定する。
また、第1工程において、酸化アルミニウムなどの土壌改質剤と金属アルミニウムや炭材などの還元剤を適宜組み合わせて使用することもできる。事前に土壌改質剤を添加、混合した放射性汚染土壌をロータリーキルンに装入した後、還元剤を添加して還元処理を行っても良いし、ロータリーキルン内で土壌改質剤と還元剤を同時に添加して、改質還元処理を行っても良い。土壌改質剤と還元剤の添加量は、第2工程での処理温度で土壌の液相率が50%を超えないように、単独添加の場合と同様、予め熱力学計算により決定できる。処理コストと第2工程での放射性セシウムの除去効率の兼ね合いにより、土壌改質剤と還元剤の添加量は自由に決定できる。
次に、本発明における第2工程の実施の形態について図1を参照しながら説明する。第1工程において、ロータリーキルン1内で放射性汚染土壌3の溶融温度を高める処理を行った後、汚染土壌3を排出しなかった場合はそのままの状態で、汚染土壌3を排出した場合は、出口フード9の近傍から汚染土壌3を再装入し、バーナー7により所定の温度に加熱される。汚染土壌3中の放射性セシウムは、熱力学的に極めて安定なCs2O・4SiO2のような複合酸化物の形態で存在し、還元処理を行う場合には金属蒸気(Cs2)の形態で、後述する水蒸気処理を行う場合には水酸化物(CsOH)の形態で気化分離され、微細ダストの状態となってロータリーキルン1内のガスの流れに伴って出口フード9より排出される。排出された放射性セシウムを含む放射性物質は、図示はしていないが、湿式または乾式などの集塵方法によって捕集され、系外への排出を回避しつつ、濃縮して回収される。
第2工程で還元処理を行う場合、還元剤4はホッパー2を介してロータリーキルン1内に添加され、放射性汚染土壌3と混合されて(1)式に示す還元反応に利用される。汚染土壌3中の放射性セシウムは金属蒸気(Cs2)の形態で気化分離される。
3(Cs2O・4SiO2)+2Al→3Cs2↑+Al23+12SiO2 ……(1)
このとき、ロータリーキルン1内の酸素分圧が高い場合には(1)式の還元反応が阻害されるため、入口フード8から導入された窒素ガス等の不活性ガスまたは還元性ガスにより雰囲気の酸素分圧が0.03atm以下、好ましくは0.005atm以下となるように導入する不活性ガスまたは還元性ガスの流量を調節する。なお、酸素分圧の下限値は低いほど好ましく、特に限定されるものではない。
また、還元剤4としては、金属アルミニウム、金属アルミニウム合金、又は少なくともこれらのいずれかを含んだ金属アルミ含有物のほか、気体水素や固体炭素、金属シリコンなどの各種還元剤が使用可能であるが、還元処理の前後でも蒸気圧が低く、また、還元力が最も強く、しかも、融点が660℃であって反応性の良い液体状態で混合できる金属アルミニウム、金属アルミニウム合金、又は少なくともこれらのいずれかを含んだ金属アルミ含有物が還元剤として最も適している。特に、汚染土壌中のセシウム濃度は殆どの場合1ppm未満の微量濃度であるため、還元剤として必要とされる金属アルミニウム又は金属アルミニウム合金の量は少量でよく(例えば土壌1kgあたり金属アルミニウム20g)、安価な還元剤としてはアルミ灰などの適用が適している。
また、第2工程では、水蒸気処理を行うようにしてもよい。水蒸気処理を行う場合、第1工程を酸化アルミニウム等の土壌改質剤のみの添加により放射性汚染土壌の溶融温度を増加する処理を行うときには第1工程後に汚染土壌3を排出する必要はないが、第1工程を還元剤の添加により土壌中の酸化鉄を還元処理するときには還元された金属鉄分が第2工程で水蒸気により再酸化されるため、第1工程後に汚染土壌3を一度ロータリーキルン1から排出する。排出された汚染土壌3から磁力選別装置により金属鉄分を分離した後、出口フード9の近傍から汚染土壌3を再装入する。
放射性汚染土壌3中の放射性セシウムを含む複合酸化物はロータリーキルン1内の高温の水蒸気と(2)式に示す反応により、水酸化物(CsOH)の形態で気化分離される。
Cs2O・4SiO2+H2O→2CsOH↑+4SiO2 ……(2)
このとき、バーナー7の燃料には炭化水素もしくは水素を用い、高温の水蒸気を生成させる。予め、水蒸気を加熱して入口フード8からロータリーキルン1内に導入しても良い。本発明者らの実験的知見からロータリーキルン1内の雰囲気の水蒸気分圧が0.1atm未満となると(2)式の反応が阻害されるため、ロータリーキルン1内の雰囲気の水蒸気分圧は0.1atm以上となるように調整する。水蒸気分圧は高いほど望ましく、バーナー7の燃料に水素を用いると、水蒸気分圧をほぼ1atmにすることが可能であり、効率良く雰囲気も高温にしやすいため、最も好適な実施の形態である。
本発明においては、第1工程で放射性汚染土壌の溶融温度が増加されるため、第2工程の処理温度は1100℃以上であって、放射性汚染土壌の液相率が50%を超えない温度以下に設定される。本発明者らの実験的知見では、液相率が50%を超えない限りにおいては、処理温度が1100℃以上で急速に(1)式や(2)式の反応が進行し、短時間に効率良く放射性セシウムを土壌から気化分離することが可能となる。ただし、処理温度が1400℃を超えると、バーナーの燃料コストが過大となるとともに、ロータリーキルン1の耐火物の損耗が激しくなるため、1400℃以下の温度で第2工程を処理するのが好適である。このときの処理温度は、第1工程で必要な還元、改質処理のコスト、およびロータリーキルンの耐火物損耗量とを勘案し、放射性セシウムの除去効率と経済性の両面から決定する。尚、処理温度とは、処理対象となる汚染土壌のバルク温度を意味しており、熱電対や放射温度計などにより測定することができる。
なお、本発明の浄化方法を実施するための浄化装置については、放射性汚染土壌を処理する際の処理条件を実現できる装置であれば、特に制限されるものではなく、上述したようなロータリーキルンのほか、減圧下での電気加熱や水素含有ガスを利用したバーナー加熱が可能な電気炉、黒鉛などによる加熱方式を伴う雰囲気制御設備等の装置を例示することができる。このうち、大量の放射性汚染土壌を処理するという観点から、好ましくは図示された放射性汚染物の連続処理が可能なロータリーキルン等の装置であるのがよく、この場合、金属アルミニウム等のような還元剤と放射性汚染土壌とが適正温度で均一に混合されて効率よく反応を促進させることが可能であるため、最も好ましい形態である。
また、本発明の方法において、還元処理により放射性汚染土壌から気化して分離された放射性セシウムは、これを濃縮して回収するのがよく、好ましくは湿式または乾式などの集塵方法によって、濃縮して回収される。ここで、乾式集塵方法としては、気化して分離された放射性元素をゼオライトに吸着させて回収する方法が例示でき、一方、湿式集塵方法としては、気化して分離された放射性元素を水中に吹き込んで集塵捕集し、その後、水分を蒸発させて回収する方法が例示できる。いずれの集塵方法も、放射性物質が濃縮されて回収できるため、処理対象の放射性元素含有物の容積に対して、減容化することが可能である。
次に、本発明について、実施例を用いて更に詳しく説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例1〜6及び比較例1〜4)
本発明の効果を確認するために、浄化装置として3kg規模の試験ロータリーキルンを用い、全圧を大気圧条件で以下の実験(実施例1〜6及び比較例1〜4)を実施した。
浄化対象の汚染土壌としては、2011年3月の原発事故により汚染された福島県内から採取した土壌2kgを用いた。化学分析した土壌の組成は、表1と同じである。また、処理前に測定した土壌中放射性セシウム起因の放射能は土壌1kg当たり約3万ベクレルであった。浄化処理後に、再度土壌の放射能測定を行い、放射性セシウムの除去効果を評価した。
処理中のロータリーキルンの回転速度は全て50rpmで行った。土壌を排出しない場合は、ロータリーキルンの傾きは水平とし、土壌を排出する際には傾きを20°とした。また、バーナーで加熱する際の支燃ガスには全て酸素を使用した。ロータリーキルン内には、土壌と接触するように熱電対を設置し、土壌のバルク温度を測定した。ロータリーキルン内の雰囲気ガスは吸引され、ジルコニア型濃淡電池法を用いた酸素濃度分析に供し、酸素濃度を測定して酸素分圧に換算した。また、雰囲気ガス中の水蒸気分圧の確認は、吸引したガスを常温に冷却して液体の水として凝集した水の質量と、残留ガス体積を測定することにより行った。実施例と比較例の処理条件を表2に示す。
Figure 2015215219
実施例1では、第1工程として、ロータリーキルン内に汚染土壌を入れ、酸化アルミニウム試薬を250g添加した後、常温下で5分間回転して、土壌と酸化アルミニウムを混合した。次に、第2工程での還元剤として金属アルミニウム粉末20gを添加し、燃料をLPGとしたバーナーにより、熱電対で測定した温度が1100℃になるまで回転させながら加熱し、1100℃到達後10分間加熱処理を行った。第2工程においては、ロータリーキルン内に窒素ガスを導入し、雰囲気の酸素分圧が0.01atmとなるように調整した。
実施例2では、酸化アルミニウム試薬の添加量を1.6kgとし、その他の条件は実施例1と同じとした第1工程の処理を行った。第2工程では、バーナーの燃料を水素とし、温度を1350℃になるまで加熱し、1350℃到達後10分間加熱処理を行った。吸引した雰囲気ガスの水蒸気分圧は1atmであった。
実施例3では、第1工程として、ロータリーキルン内に汚染土壌を入れ、バーナーの燃料をLPGとして、雰囲気の酸素分圧が0.09atmとなるよう窒素ガスを導入しつつ、温度1000℃まで加熱し、微粉炭(1mmアンダー品)を100g添加した後、10分間土壌中酸化鉄の還元処理を行った。次に、第2工程での還元剤として金属アルミニウム粉末20gを添加し、燃料をLPGとしたバーナーにより、温度が1200℃になるまで加熱し、1200℃到達後10分間加熱処理を行った。第2工程においては、ロータリーキルン内に窒素ガスを導入し、雰囲気の酸素分圧が0.02atmとなるように調整した。
実施例4では、第1工程として、ロータリーキルン内に汚染土壌を入れ、酸化アルミニウム試薬を50g添加した後、バーナーの燃料をLPGとして、雰囲気の酸素分圧が0.08atmとなるよう窒素ガスを導入しつつ、温度1000℃まで加熱し、微粉炭(1mmアンダー品)を100g添加した後、10分間土壌中酸化鉄の還元処理を行った。その後、土壌を一度ロータリーキルンから排出し、磁選処理により還元された金属鉄を土壌から分離した。次に、ロータリーキルン内に汚染土壌を再装入し、第2工程では、バーナーの燃料はLPGのままとしたが、ヒーターで150℃に加熱した水蒸気をロータリーキルン内に導入して吸引した雰囲気ガスの水蒸気分圧が0.7atmとなるように調整した。温度を1200℃になるまで加熱し、1200℃到達後10分間加熱処理を行った。
実施例5では、第1工程として、ロータリーキルン内に汚染土壌を入れ、バーナーの燃料をLPGとして、雰囲気の酸素分圧が0.02atmとなるよう窒素ガスを導入しつつ、温度1000℃まで加熱し、金属アルミニウム粒(1mmアンダー品)を60g添加した後、10分間土壌中酸化鉄の還元処理を行った。引き続き、第2工程では、窒素ガスの導入量を増やして雰囲気の酸素分圧を0.005atmまで低減し、温度も1200℃まで上昇させ、1200℃到達後10分間加熱処理を行った。尚、第1工程で添加した金属アルミニウム粒の量が十分であったので、第2工程では金属アルミニウム粒は添加しなかった。
実施例6では、第1工程として、ロータリーキルン内に汚染土壌を入れ、バーナーの燃料をLPGとして、雰囲気の酸素分圧が0.02atmとなるよう窒素ガスを導入しつつ、温度1000℃まで加熱し、金属アルミニウム粒(1mmアンダー品)を300g添加した後、10分間土壌中酸化鉄の還元処理を行った。その後、土壌を一度ロータリーキルンから排出し、磁選処理により還元された金属鉄を土壌から分離した。次に、ロータリーキルン内に汚染土壌を再装入し、第2工程でもバーナーの燃料はLPGのまま、温度を1390℃になるまで加熱し、1390℃到達後10分間加熱処理を行った。第2工程では窒素ガスの導入は停止し、吸引した雰囲気ガスの水蒸気分圧は0.5atmであった。
一方、比較例では、土壌の溶融温度を高めるための処理を行わず、1段の加熱処理を行った。比較例1では、土壌をロータリーキルン内に装入後、還元剤として金属アルミニウム粉末20gを添加し、燃料をLPGとしたバーナーにより、温度が1000℃になるまで加熱し、1000℃到達後20分間加熱処理を行った。ロータリーキルン内には窒素ガスを導入し、雰囲気の酸素分圧が0.005atmとなるように調整した。比較例2では、加熱温度を1100℃まで増加し、他の条件は比較例1と同じにして実施した。
比較例3では、土壌をロータリーキルン内に装入後、燃料を水素としたバーナーにより、雰囲気の水蒸気分圧を1atmに保持したまま、温度が1000℃になるまで加熱し、1000℃到達後20分間加熱処理を行った。比較例4では、加熱温度を1100℃まで増加し、他の条件は比較例3と同じにして実施した。
実施例1〜6と比較例1〜4の浄化処理後の土壌の放射能測定値を表2に併せて示す。実施例1〜6のいずれの場合でも、土壌は農地への利用が可能な500ベクレル/kg−土壌未満となっており、放射性セシウムが熱力学的に極めて安定な複合酸化物の形態で固定されている土壌からも、効率良く放射性セシウムを除去できることが確認された。
一方、比較例1や比較例3では、処理温度が低いために放射性セシウムの気化効率が低く、埋め戻し等の土木材としては認められている5000ベクレル/kg−土壌未満とはなっているものの、農地などに安心して再利用可能なレベルまでは放射能が除去できていない。また、比較例2や比較例4のように処理温度を1100℃まで高めると、土壌の半分以上が溶融していると思われ、処理後に土壌が全てロータリーキルンの壁面に付着しており、剥がすだけでも大きな労力を必要とし、壁面耐火物の損耗も大きかった。また、放射性セシウムが液相部分に拡散してセシウム活量が低下したためと思われるが、処理後の放射能レベルもさらに高くなった。
以上の実施例と比較例から、土壌の溶融温度を高める処理を行った後に、高温での放射性セシウム気化処理を行うことで、極めて高い放射性セシウム除去効率が得られることが確認された。
また、処理中にロータリーキルンの出口フードから排出された排ガスを300ccの水(集塵水)中に吹き込み、排ガス中の塵等を捕集し、この集塵水中に溶け込んだセシウムの量を放射能測定から算出し、セシウムの回収効率を評価した。その結果、汚染土壌から気化して分離したセシウムを、系外に排出させることなく、効率良く濃縮して回収できることが確認された。
1:ロータリーキルン
2:ホッパー
3:汚染土壌
4:還元剤、土壌改質剤
5:浄化土壌
6:土壌容器
7:バーナー
8:入口フード
9:出口フード

Claims (10)

  1. 放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌を加熱処理して、放射性セシウムを気化させ分離する放射性汚染土壌の浄化方法であって、放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌に対して、該土壌の溶融温度を高める土壌改質剤を所定量添加し、混合して、次工程の加熱処理での予め決定された処理温度における液相率を50%以下にする第1工程と、1100℃以上の処理温度で加熱して、放射性セシウムを放射性汚染土壌から気化分離する第2工程とを備えて、2段階で放射性汚染土壌を処理することを特徴とする放射性汚染土壌の浄化方法。
  2. 放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌を加熱処理して、放射性セシウムを気化させ分離する放射性汚染土壌の浄化方法であって、放射性セシウムを含んだ放射性汚染土壌に還元剤、又は、還元剤および土壌改質剤を所定量添加し、600℃以上1100℃未満の温度域で、かつ酸素分圧が0.1atm以下の雰囲気で該土壌に含まれる酸化鉄の還元処理を行って、該土壌の溶融温度を高めて、次工程の加熱処理での予め決定された処理温度における液相率を50%以下にする第1工程と、1100℃以上の処理温度で加熱して、放射性セシウムを放射性汚染土壌から気化分離する第2工程とを備えて、2段階で放射性汚染土壌を処理することを特徴とする放射性汚染土壌の浄化方法。
  3. 土壌改質剤として酸化アルミニウムを主成分とする物質を用い、酸化アルミニウムの添加質量が、処理する放射性汚染土壌の土壌質量の10%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
  4. 第1工程で添加する還元剤が、処理する放射性汚染土壌の土壌質量の1%以上の質量の炭素を含む炭材であることを特徴とする請求項2に記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
  5. 第1工程で添加する還元剤が、処理する放射性汚染土壌の土壌質量の1%以上の質量の金属アルミニウムを含む金属アルミニウム含有物であることを特徴とする請求項2に記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
  6. 第2工程において、酸素分圧が0.03atm以下の雰囲気で土壌中のセシウム酸化物を還元処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
  7. 第2工程において、水蒸気分圧が0.1atm以上の雰囲気で土壌中のセシウム酸化物を水蒸気処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
  8. 第1工程後に、土壌から還元された金属鉄を磁選分離し、磁選分離後の土壌のみを第2工程で処理することを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の放射性汚染土壌の浄化方法。
  9. 1100℃での液相率が60%以上となる放射性汚染土壌を処理することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の放射性汚染物の浄化方法。
  10. 気化分離された放射性セシウムを濃縮して回収することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の放射性汚染物の浄化方法。
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