以下に添付図面を参照して、本実施の形態にかかる13族窒化物結晶の製造方法、及び13族窒化物結晶について説明する。なお、以下の説明において、図には、発明が理解できる程度に構成要素の形状、大きさ及び配置を概略的に示した。このため、図面に記載された内容により、本発明が特に限定されるものではない。また、複数の図に示される同様の構成要素には、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法は、反応容器内に保持された少なくともアルカリ金属及び13族金属を含む混合融液中に、気相から窒素を溶解し、混合融液中において窒化物結晶を結晶成長させる13族窒化物結晶の製造方法である。すなわち、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法は、フラックス法を用いた製造方法である。
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法に用いる反応容器は、該反応容器の内側における混合融液に接する第1領域に、第1方向に長い溝部を有する。第1方向は、反応容器の内側における任意の方向であればよく、一つの方向に限定されない。
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程と、をこの順に少なくとも含む。第1工程は、第1種結晶を準備する工程である。第1種結晶は、13族窒化物結晶がc軸配向して結晶成長する結晶面である(0001)面を主面とし、長手方向が成長する13族窒化物結晶のa軸と略平行になる短冊状の結晶である。
第2工程は、第1種結晶の主面が、溝部の開口側を向くように、第1種結晶を溝部内に配置する工程である。第3工程は、混合融液中において、溝部内に配置された第1種結晶の主面から13族窒化物結晶の結晶成長を開始させる工程である。第4工程は、第1種結晶の主面から結晶成長を開始した13族窒化物結晶の{10−11}面を主成長面として、{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長を継続させる工程である。
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法では、上記特有の反応容器を用い、上記第1工程、第2工程、第3工程、及び第4工程をこの順に含むことによって、インクルージョンの抑制された半極性基板または無極性基板の製造に用いる13族窒化物結晶を得ることができると考えられる。
上記効果が奏される理由は明らかとなっていないが、以下のように推測される。しかしながら下記推測によって本発明は限定されない。
本実施の形態では、第1種結晶の主面が溝部の開口側を向くように、第1種結晶を溝部内に配置する。このため、第1種結晶における、主面である(0001)面の対向面である(000−1)面は、溝部の底側(反開口側)を向いた状態となる。すなわち、反応容器内の混合融液の保持された空間における、第1種結晶の(000−1)面側に接する空間に比べて、第1種結晶の(0001)面側に接する空間の方が大きくなる。
このため、本実施の形態では、第1種結晶の[000−1]軸方向への結晶成長が、[0001]軸方向への結晶成長に比べて制限される。
すなわち、本実施の形態では、溝部は、第1種結晶の、[000−1]軸方向への結晶成長を制限する機能を備える。そして、第1種結晶の主面である(0001)面から結晶成長を開始した13族窒化物結晶は、{10−11}面を主成長面として、{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長を継続する。
{10−11}面は平坦な結晶面となりやすい。このため、結晶中にインクルージョンが取り込まれることが抑制されると考えられる。
また、窒素極性面である(000−1)面は、極性反転や微結晶の付着などにより多結晶化しやすいと考えられる。このため、(000−1)面側の結晶成長が進行すると、{10−11}面の荒れなどの原因となる場合がある。すなわち、反応容器内の混合融液の保持された空間における、第1種結晶の(000−1)面側に接する空間に比べて、第1種結晶の(0001)面側に接する空間の方が狭いと、結晶成長した13族窒化物結晶の{10−11}面の荒れ等の原因になる場合がある。
一方、本実施の形態では、反応容器内の混合融液の保持された空間における、第1種結晶の(000−1)面側に接する空間に比べて、第1種結晶の(0001)面側に接する空間の方が大きい。このため、本実施の形態では、第1種結晶の[000−1]軸方向への結晶成長が、[0001]軸方向への結晶成長に比べて制限される。このため、(000−1)面側の結晶成長を抑制することができる。また、本実施の形態では、(000−1)面の形成そのものも抑制することができるので、極性反転や微結晶の付着などによる多結晶化が起こらず、連続する{10−11}面の荒れを抑制することができる。
以上の理由から、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法では、c面を主な成長面として結晶成長する従来のフラックス法液相エピタキシャル成長で必要とされた攪拌などの手段による融液の精密制御をせずとも、インクルージョンの低減した13族窒化物結晶を製造することができると考えられる。
従って、本実施の形態では、フラックス法を用いて、インクルージョンの抑制された13族窒化物結晶を製造することができると推測される。
また、本実施の形態では、第1種結晶として、長尺な短冊状の結晶を用いる。このため、より大きな13族窒化物結晶を得るための結晶成長に要する時間の短縮を図ることができる。
また、本実施の形態では、基板上に複数の結晶開始領域を形成し、そこから成長した隣接する結晶を合体させて大型化する結晶製造方法とは異なり、ひとつの第1種結晶から結晶成長させることで、13族窒化物結晶を製造する。このため、歪や欠陥の発生が無く、品質の高い13族窒化物結晶を製造することができる。
また、第1種結晶を、上記溝部内に設置し、(0001)面である主面から結晶成長を開始させる。このため、[10−11]方向あるいは[−1101]方向へ成長した結晶領域(セクター)をより大きくすることができる。
また、本実施の形態の製造方法によって得られる13族窒化物結晶は、基板上に複数の結晶開始領域を形成し、そこから成長した隣接する結晶を合体させて大型化させた13族窒化物結晶とは異なり、ひとつの第1種結晶から結晶成長させることで得られた結晶である。このため、インクルージョンが抑制され、歪や欠陥の発生が無く、品質の高い13族窒化物単結晶となる。
なお、本実施の形態においては、六方晶構造(ウルツ鉱型結晶構造)を有する周期表第13族金属窒化物結晶の結晶軸を示すa軸、c軸において、各結晶軸の正方向と逆向きを示す表記に関して、「−」の表記を用いる。例えば、c軸における[000−1]軸は、[0001]軸の逆向を示す。このように、本実施の形態では、逆向きを示す場合、数字(例えば「1」)の前に負号を付する「−1」を用いる。
以下、詳細を説明する。
まず、反応容器について説明する。本実施の形態では、反応容器は、反応容器の内側における混合融液に接する第1領域に、第1方向に長い溝部を備える。この溝部は、反応容器の内側の内壁に直接形成してもよいし、反応容器の内壁に、溝部を形成した下地基板を設置してもよい。また、任意の形状の治具を組み合わせて、溝部を構成してもよい。
溝部は、反応容器の内側に開口し、第1方向に長い形状であればよい。但し、溝部、及び第1領域における溝部に連続する領域の少なくとも一方は、溝部内に配置された第1種結晶の主面から結晶成長した13族窒化物結晶の、{10−11}面の面積を拡大させながらの結晶成長を可能とする形状である。すなわち、溝部、および第1領域における溝部に連続する領域の少なくとも一方は、第4工程において、主面から結晶成長を開始した13族窒化物結晶が、溝部内、または溝部内から溝部外に向かって結晶成長した該溝部外において{10−11}面の面積を拡大させながらの結晶成長を可能とする形状である。
すなわち、溝部は、この特性を満たす範囲の形状に調整される。すなわち、溝部の形状は、この特性を満たすように、形状(すなわち、溝部を構成する面の角度や、深さ、大きさなど)を予め調整する。また、第1領域における、溝部に連続する領域についても、上記特性を満たすように、予め調整する。例えば、溝部は、第1方向に直交する直交方向の断面形状が、円弧状、V字状、矩形状、円弧と矩形を組み合わせた形状、などの何れであってもよい。また、第1領域における溝部に連続する領域は、例えば、13族窒化物結晶の(0001)面に平行となるように、予め調整されていることが好ましい。
なお、溝部は、1つの部材によって構成された形態に限定されない。溝部は、複数の部材から構成された形態であってもよい。例えば、溝部は、底面と、底面に連続する2つの壁面と、が連続して一体的に構成された形態に限定されず、3つの部材(底面と、底面に連続する2つの壁面)から構成された形態であってもよい。なお、本実施の形態では、一例として、溝部は、1つの部材によって構成された形態である場合を説明する。
反応容器内における、溝部の位置は、保持された混合融液に接する第一領域であれば何れであってもよい。例えば、溝部は、反応容器の内壁に形成された形態であってもよいし、反応容器の内側の底部に形成された形態であってもよいし、反応容器内に設置された各種支持部材上に形成された形態であってもよい。
本実施の形態では、一例として、第1方向に直交する直交方向の断面形状がV字状の溝部を有する下地基板を、反応容器の内側の底部に設置する場合を説明する。
図1は、溝部27Aの形成された下地基板27の一例を示す説明図である。図1(a)に示すように、下地基板27には、第1方向(図1(a)中、Y方向)に長い溝部27Aが形成されている。溝部27Aは、下地基板27にV字状の2つの面(面27B、面27C)を形成することで作製される。
図1(a)及び図1(b)に示すように、第1種結晶100は、第1種結晶100の主面100Aが溝部27Aの開口側を向くように、溝部27A内に配置される(詳細後述)。
溝部27Aの深さは、第1種結晶100の厚みより大きいことが好ましい。溝部27Aの深さとは、溝部27Aにおける面27Bと面27Cとの接線を垂直方向に通る直線における、該接線の位置から溝部27Aの開口までの長さを示す。第1種結晶100の厚みは、第1種結晶100の主面と対向面との長さを示す。第1種結晶100については詳細を後述する。
溝部27Aの、第1方向Yの長さは、溝部27A内に配置された第1種結晶100の長手方向の長さより長いことが好ましい。
溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の成す角度(図1(b)中、θA、参照)は限定されないが、小さすぎると、混合融液に接して成長する{10−11}面の面積が小さくなる。溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の成す角度(図1(b)中、θA、参照)は、成長する結晶の(000−1)面への微結晶の付着抑制と、{10−11}面の面積が小さくなりすぎないようにするため、56°以上164°以下の範囲であることが好ましく、118°以上146°以下の範囲であることがより好ましい。
図1に示す例では、一例として、溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の成す角度(図1(b)中、θA、参照)が、120°である場合を示した。
溝部27Aを有する下地基板27の材質は、13族窒化物が核発生しにくい材質であればよい。また、溝部27Aを反応容器の内壁に直接設ける場合については、反応容器の内壁が、該材質であればよい。下地基板27や反応容器の内壁の材質は、例えば、BN焼結体、P−BN等の窒化物、アルミナ、YAG等の酸化物、SiC、TaC等の炭化物等を用いる。
溝部27Aは、反応容器内に、1つ形成してもよいし、複数形成してもよい。溝部27Aを複数形成する場合、溝部27Aは、溝部27Aの長手方向である第1方向に交差する方向に配列させることが好ましい。この場合、各溝部27Aの配列方向の間隔は、各溝部27A内に設置された第1種結晶100から結晶成長させた13族窒化物結晶が、結晶成長中に互いに接することの無いように、結晶成長させる13族窒化物結晶の大きさに応じて調整すればよい。
隣接する溝部27A間の間隔を、上記間隔を隔てるように調整することで、隣接して結晶成長した13族窒化物結晶が結晶成長時に接することによる歪や欠陥の発生を抑制できる。
次に、第1工程について説明する。第1工程では、第1種結晶100を準備する。第1種結晶100は、13族窒化物結晶がc軸配向して結晶成長する結晶面である(0001)面を主面とし、長手方向が成長する13族窒化物結晶のa軸と略平行になる短冊状の結晶である。
図2は、第1種結晶100の説明図である。図2(a)は、第1種結晶100を主面100A側から見た模式図である。図2(b)は、図2(a)のA−A’断面図である。第1種結晶100は、窒化物結晶がc軸配向して結晶成長する結晶面を主面100Aとしている。
図2に示すように、第1種結晶100は、a軸方向に長い短冊状である。すなわち、第1種結晶100の長手方向は、第1種結晶100の主面100Aから結晶成長する13族窒化物結晶のa軸と平行、あるいは略平行である。言い換えると、第1種結晶100の主面100Aにおける、長手方向に直交する直交方向は、m軸と平行、あるいは略平行である。なお、略平行である、とは、±2°のズレを含むことを示す。
第1種結晶100の長手方向の長さは、溝部27A内に設置可能な長さであればよく、特に限定されない。第1種結晶100の長手方向の長さが長いほど、短時間で大きな13族窒化物結晶を製造することができる。このため、溝部27A内に設置可能な長さで、目的とする製造時間等に応じて、第1種結晶100の長手方向の長さを予め調整すればよい。
第1種結晶100の主面100Aにおける、上記長手方向に直交する直交方向の長さ(以下、幅と称する)は、溝部27A内に設置可能な大きさであればよく、適宜調整すればよい。なお、この第1種結晶100の主面100Aにおける幅が大きくなるほど、13族窒化物結晶のc面が形成されやすくなる。このため、第1種結晶100の主面100Aにおける幅が大きくなるほど、c面の成長に原料が使われるため、結晶成長速度が遅くなる。また、c面には、凹凸が形成されやすいことから、インクルージョン(金属ガリウム、金属ナトリウム、それらの化合物等)が入りやすくなる。このため、第1種結晶100の主面100Aの幅は、必要以上に大きくしないことが好ましく、具体的には、以下の範囲とすることが好ましい。
具体的には、第1種結晶100の主面100Aにおける幅は、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることが更に好ましく、1mm以下であることが特に好ましい。この幅の下限値は、第1種結晶100の取り扱いのし易さに応じて適宜調整すればよい。
第1種結晶100の材質は、窒化物結晶がc軸配向して結晶成長する結晶面を主面100Aとするものであれば、特に限定されない。なお、第1種結晶100における主面100Aは、短冊状の第1種結晶100におけるa軸方向に沿って長い4面の内、(0001)面である。
第1種結晶100は、上記条件を満たすものであればよく、全体が同一材質の単結晶であってもよいし、主面100Aが上記条件を満たすように積層した積層体であってもよい。
第1種結晶100の形成方法は、特に限定されず、適宜選択することができる。例えば、異種基板の主面に13族窒化物結晶をエピタキシャル成長させたテンプレート基板を作製する。そして、このテンプレート基板を短冊状に切出すことで、第1種結晶100としてもよい。
なお、図2(b)は、積層体として構成された第1種結晶100の一例を示している。図2(b)に示す例では、第1種結晶100は、異種基板101上に、13族窒化物結晶102を積層させた積層体である。
異種基板101の材質は、特に限定されない。異種基板101には、例えば、13族窒化物が核発生しにくい材質を用いる。具体的には、異種基板101には、サファイア、SiC,ZnO,MgAl2O4等の単結晶基板を用いる。
なお、第1種結晶100には、異種基板101を取り除いた13族窒化物結晶102の自立基板を短冊状に切出し、この切出した結晶を用いることが好ましい。これは、後述する第3工程及び第4工程において、第1種結晶100に結晶成長させる13族窒化物結晶と、第1種結晶100と、の熱膨張係数を考慮したためである。
また、上記テンプレ−ト基板や、13族窒化物結晶102の自立基板上に、Na Flux法でLPEして製造した13族窒化物結晶を短冊状に切り出し、この切出した結晶を第1種結晶100として利用することが好ましい。
更には、後述する第3工程及び第4工程における結晶成長と同じ条件(例えば、アルカリ金属にNaを使用したNa Flux法)で結晶成長させてバルク結晶を作製し、このバルク結晶を短冊状に加工することで、第1種結晶100を製造してもよい。この製造方法で作製した第1種結晶100は、異種基板を使用せずに結晶最長させたものであることから、残留応力やそりが小さい。また、この製造方法で作製した第1種結晶100は、曲率半径が大きく、c軸やa軸がそろっている。また、主面であるc面の転位密度も、小さい。このため、より高品質の13族窒化物結晶を結晶成長させる観点から、この製造方法で作製した第1種結晶100を用いることが好ましい。
次に、第2工程を説明する。
図1に戻り、第2工程は、第1種結晶100における主面100Aが、溝部27Aの開口側を向くように、第1種結晶100を溝部27A内に配置する工程である。
このとき、第1種結晶100の長手方向(a軸方向)が溝部27Aの第1方向Yと略一致するように、溝部27A内に第1種結晶100を設置することが好ましい。
なお、2方向が略一致する、とは、±5°のズレを含むことを示す。なお、本実施の形態では、主面100Aを溝部27Aの開口側を向けて、溝部27A内に第1種結晶100を設置することで、溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の接線を跨ぐように第1種結晶100を配置する場合を説明する。このため、第1種結晶100は、第1種結晶100の対向面100Bにおけるm軸方向の両端部を介して、面27B及び面27Cによって支持された状態となる(図1参照)。
また、本実施の形態では、第1種結晶100の長手方向(a軸方向)と、溝部27Aの第1方向Yと、溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の接線27Dと、が同じ方向である場合を説明する。
次に、第3工程を説明する。
第3工程は、混合融液中において、溝部27A内に配置された第1種結晶100の主面100Aから13族窒化物結晶の結晶成長を開始させる。
図3は、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造工程の説明図である。また、図3では、一例として、下地基板27における面27Bと面27Cとの成す角度(図3中、θA参照)が120°であり、面27B及び面27Cの各々と直線Zとの成す角度(図3中、θB参照)が60°である場合を示した。
上記第2工程によって、第1種結晶100は、主面100Aが溝部27Aの開口側を向くように、溝部27A内に配置されている(図3(a)参照)。
図3(b)に示すように、第3の工程では、反応容器(図示省略)内に混合融液24を形成し、気相から窒素を溶解して、混合融液24中において、第1種結晶100の主面100Aから13族窒化物結晶103の結晶成長を開始させる。
混合融液24は、フラックスと、13族金属等の原料と、を含む。
フラックスには、ナトリウム、あるいはナトリウム化合物(例えば、アジ化ナトリウム)を用いるが、その他の例として、リチウムや、カリウム等のその他のアルカリ金属や、当該アルカリ金属の化合物を用いてもよい。また、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属や、当該アルカリ土類金属の化合物をフラックスとして用いてもよい。なお、フラックスとして、複数種類のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を混合して用いてもよい。
原料として用いる13族金属には、ガリウムを用いることが好ましいが、その他の例として、ホウ素、アルミニウム、インジウム等のその他の13族金属や、これらの混合物を用いてもよい。
なお、混合融液24中には、Ge,Mg,Fe,Mn,O等のドーパント物質(単体あるいはB2O3等の化合物)やCa,Ba,Sr等のフラックスとなるアルカリ土類金属、雑結晶の低減効果を有する炭素等を混合してもよい。
気相中の窒素は、一般的には窒素ガスが使用されるが、アンモニアその他の窒素を含むガスを使用することができる。気相には、窒素を含むガスの他に、Ar等の不活性ガスやその他のガスを混合することもできる。
第3工程では、第1種結晶100の設置された反応容器内に、フラックスと原料としての13族金属が入れられ、圧力容器中で結晶成長温度にまで昇温する。
この昇温過程では、反応容器内に窒素原料ガスが充填されていなくても良いが、第1種結晶100の溶解を極力防止するため、窒素原料ガスを充填して昇温することが望ましい。そして、この昇温過程で、フラックス(例えば、アルカリ金属)と13族金属は溶解し、混合融液24を形成する。
そして、所定の結晶成長温度、所定の窒素原料ガス圧力下で、気相から混合融液24中に溶解する窒素と、混合融液中24の13族金属と、が反応し、第1種結晶100の主面100Aから13族窒化物結晶の結晶成長が開始される。
この結晶成長の開始は、窒素分圧、混合融液の温度、原料とフラックスとのモル比等を、13族窒化物結晶の結晶成長が開始される条件に調整することで、結晶成長が開始される。
具体的には、第2工程では、窒素分圧を1MPa〜6MPaの範囲内とすることが好ましい。また、第2工程では、混合融液の温度(結晶成長温度)は、800℃〜900℃の範囲内とすることが好ましい。
例えば、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率を50%〜90%の範囲内とし、混合融液の結晶成長温度を850℃〜900℃の範囲内とし、窒素分圧を1.5MPa〜6MPaの範囲内とすることが好ましい。
さらに好適な実施形態としては、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率を60%〜75%の範囲内とし、結晶成長温度を860℃〜870℃の範囲とし、窒素分圧を2MPa〜3.5MPaの範囲とすることがより好ましい。
第1種結晶100の主面100Aから成長する13族窒化物結晶103は、c軸配向した単結晶である。
次に、第4工程について説明する。
図3(c)〜図3(e)は、第4工程の説明図である。
第4工程では、第3工程によって、第1種結晶100の主面100Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶103の、{10−11}面を主成長面として{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長を継続させる。
第1種結晶100の主面100Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶103の、{10−11}面は、混合融液24に接して結晶成長する。そして、{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長する(図3(c)〜図3(e)参照)。
ここで、第1種結晶100から結晶成長した結晶における、溝部27Aの開口の反対側に面した面は、(000−1)面となる。(000−1)面は、多結晶化しやすい。このため、(000−1)面側の成長は、(000−1)面に連続する{10−11}面が荒れるなど、{10−11}面の成長に悪影響を及ぼす場合がある。すなわち、単結晶を成長させるには、(000−1)面側の成長を継続させないことが望まれる。
本実施の形態では、第1種結晶100の主面100Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶103では、第1方向Yに直交する直交方向の断面形状がV字状の溝部27Aの、2つの壁面(図3では、面27C、面27B)に到達するまでは、(000−1)面が形成されて成長する。しかし、溝部27Aの壁面(図3では、面27C、面27B)に到達した後は、これらの壁面によって結晶成長が制限される。このため、13族窒化物結晶103は、(000−1)面の形成が抑制され、[000−1]軸方向への成長も制限される。
このように、本実施の形態では、13族窒化物結晶103における、(000−1)面の結晶成長が抑制されるので、(000−1)面における多結晶化が抑制される。この結果、{10−11}面の荒れなどが抑制され、平坦な{10−11}面を有する13族窒化物結晶103を得ることができる。図3に示す例では、{10−11}面を主成長面とし、また、c面もわずかに形成しながら、結晶成長を継続させた場合を示した(図3(c)〜図3(e)参照)。
図4及び図5は、結晶成長した13族窒化物結晶103の模式図である。図4は、結晶成長した13族窒化物結晶103の斜視図を示す模式図である。図5(a)は、結晶成長した13族窒化物結晶103をc面側から見た模式図である。図5(b)は、図5(a)のA−A’断面図である。
結晶成長した13族窒化物結晶103は、底面がa軸方向に長い(000−1)面であり、底面に連続する2面が{10−11}面である。
図4及び図5に示す例では、13族窒化物結晶103には、6つの{10−11}面が形成されており、第1種結晶100の長手方向に平行で、且つ、底面に連続する2面が、平坦で且つ面積の大きい{10−11}面である場合を示した。
また、13族窒化物結晶103を構成する面の内、第1種結晶100の主面100Aに接する底面に対して非平行で、且つ該底面に対して非直角な面は、平坦な{10−11}面である。言い換えると、13族窒化物結晶103を構成する面の内、混合融液24中で結晶成長した最も面積の大きな結晶面が、{10−11}面である。
また、結晶成長した13族窒化物結晶103は、13族窒化物結晶103における、第1種結晶100の長手方向に垂直な断面の形状が、第1種結晶100側を底辺とする台形状である場合には、上辺側の面はc面となる。
すなわち、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法で製造した13族窒化物結晶103は、底面がa軸方向に長い(000−1)面であり、底面に連続する2面が{10−11}面である。
このような第4工程の結晶成長の条件は、窒素分圧、混合融液の温度、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率等の調整により実現できる。
具体的には、第4工程では、窒素分圧を、混合融液24中の窒素が比較的低い過飽和度となる分圧に調整する。具体的には、2MPa〜3.5MPaの範囲内とすることが好ましい。また、第4工程では、混合融液24の温度(結晶成長温度)は、YAGやアルミナ等の材質の反応容器が融液に溶解したり反応したりして結晶が成長するのに問題となることのない温度に調整する。具体的には、860℃〜870℃の範囲内とすることが好ましい。さらに高温においても安定な材質の反応容器を使用する場合には温度を上げることもできる。
また、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率は、前述の窒素、温度の条件で{10−11}面が形成されやすい、50%〜80%の範囲内、さらに好適には60%〜75%とすることが好ましい。
なお、第3工程を、第4工程と同じ結晶成長条件(温度、分圧、アルカリ金属のモル比等の条件)とすることで、第3工程と第4工程とを同じ条件で継続して進行させることができる。
図6は、本実施の形態における第3工程及び第4工程を実施するための製造装置1の模式図である。
図6に示すように、製造装置1は、ステンレス製の閉じた形状の耐圧容器11を備える。耐圧容器11はバルブ21部分で製造装置1から取り外すことが可能であり、耐圧容器11部分のみをグローブボックスに入れて作業することができる構成となっている。
耐圧容器11内には、反応容器12が設けられている。反応容器12は、混合融液24を保持する。また、反応容器12の内側の底部には、下地基板27が設置されている。下地基板27には、溝部27Aが形成されており、上記第1工程及び第2工程によって、第1種結晶100が設置されている。
反応容器12の材質は適宜選択できる。例えば、反応容器12には、BN焼結体、P−BN等の窒化物、アルミナ、YAG等の酸化物、SiC等の炭化物等を使用することができる。また、反応容器12は、耐圧容器11から取り外すことができる。
また、耐圧容器11には、13族窒化物結晶の原料である窒素(N2)ガスおよび全圧調整用の希釈ガスを供給するガス供給管14が接続されている。ガス供給管14は窒素供給管17とガス供給管20に分岐しており、それぞれバルブ15、18で分離することが可能となっている。
希釈ガスとしては、不活性ガスのアルゴン(Ar)ガスを用いることが望ましいが、これに限定されず、その他のヘリウム(He)等の不活性ガスを希釈ガスとして用いてもよい。
窒素ガスは、窒素ガスのガスボンベ等と接続された窒素供給管17から供給されて、圧力制御装置16で圧力を調整された後、バルブ15を介してガス供給管14に供給される。一方、希釈ガス(例えば、アルゴンガス)は、希釈ガスのガスボンベ等と接続されたガス供給管20から供給されて、圧力制御装置19で圧力を調整された後、バルブ18を介してガス供給管14に供給される。このようにして圧力を調整された窒素ガスと希釈ガスは、ガス供給管14にそれぞれ供給されて混合される。
そして、窒素および希釈ガスの混合ガスは、ガス供給管14からバルブ21を経て耐圧容器11に供給される。
また、ガス供給管14には、圧力計22が設けられており、圧力計22によって耐圧容器11内の全圧をモニターしながら耐圧容器11内の圧力を調整できるようになっている。
なお、窒素ガスは窒化ガリウムの原料であり、これに不活性ガスであるアルゴンを混合するのは、全圧を高くしナトリウムの蒸発を抑制しつつ、窒素ガスの圧力を独立して制御するためである。これにより、制御性の高い結晶成長が可能となる。
本実施の形態では、このように窒素ガスおよび希釈ガスの圧力をバルブ15、18と圧力制御装置16、19とによって調整することにより、窒素分圧を調整することができる。また、耐圧容器11の全圧を調整できるので、耐圧容器11内の全圧を高くして、反応容器12内のアルカリ金属(例えばナトリウム)の蒸発を抑制することができる。即ち、窒化ガリウムの結晶成長条件に影響を与える窒素原料となる窒素分圧と、ナトリウム(フラックス)の蒸発抑制に影響を与える全圧を、別々に制御する事が可能となっている。
また、耐圧容器11の外側にはヒーター13が配置されており、耐圧容器11および反応容器12を加熱して、混合融液24の温度を調整することができる。
第3工程及び第4工程を実施する場合には、まず、反応容器12に、フラックスとして用いられる物質と、原料とを投入する。そして、原料等をセッティングした後に、ヒーター13に通電して、耐圧容器11およびその内部の反応容器12を結晶成長温度まで加熱する。すると、反応容器12内においてフラックスとして用いられる物質と、原料等が溶融し、混合融液24が形成される。また、この混合融液24に上記分圧の窒素を接触させて混合融液24中に溶解させることにより、原料である窒素を混合融液24中に供給することができる。
そして、所定の結晶成長温度、所定の窒素分圧下で、気相から混合融液24中に溶解する窒素と、混合融液24中の13族金属と、が反応して、混合融液24内に設置された第1種結晶100の主面100Aから13族窒化物結晶の結晶成長が開始される(第3工程)。
そして、更に、第4工程の結晶成長条件に維持することで、結晶成長を開始した13族窒化物結晶103が、{10−11}面を主成長面とした結晶成長を継続する。
上記第1工程〜第4工程を経ることによって、13族窒化物結晶103が製造される。
そして、第4工程によって結晶成長した13族窒化物結晶103を、室温まで冷却する。その後、下地基板27または反応容器12から、13族窒化物結晶103を分離する。
上記工程によって、13族窒化物結晶103を製造することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、反応容器の内側における混合融液に接する第1領域に、断面形状がV字状の溝部に代えて、実施の形態1とは異なる形状の溝部を設けた構成を説明する。
図7及び図8は、本実施の形態の溝部270Aの形成された下地基板270の一例を示す説明図である。詳細には、図7は、下地基板270の溝部270A内に第1種結晶200を配置した状態を示す斜視図である。図8(a)は、下地基板270の溝部270A内に第1種結晶200を配置した状態を示す上面図である。図8(b)は、図8(a)のA−A’断面図である。
なお、本実施の形態では、実施の形態1で説明した第1種結晶100に代えて、第1種結晶200を用いる場合を説明する。第1種結晶200は、窒化物結晶がc軸配向して結晶成長する結晶面を主面200Aとする、単一の13族窒化物結晶からなる。なお、第1種結晶200は、単層の13族窒化物結晶である以外は、第1種結晶100と同様である。なお、実施の形態1と同様に、第1種結晶100を用いても良い。
図7及び図8に示すように、溝部270Aは、第1方向Yに長い。溝部270Aは、底面270Dと、壁面270Bと、壁面270Cと、を有する。第1種結晶200は、実施の形態1と同様に、第1種結晶200の主面200Aが溝部270Aの開口側を向くように、溝部270A内に配置される。
溝部270Aの底面270Dは、溝部270A内に設置された第1種結晶200における、主面200の対向面200Bに対向する、第1方向Yに長い面である。溝部270Aの壁面270B及び壁面270Cは、底面270Dと、溝部270Aの第1方向Yに沿った2つの開口縁270Eの各々と、を結ぶ壁面の各々である。
本実施の形態では、一例として、2つの壁面(壁面270B、壁面270C)の双方が、底面270Dから離れるほど互いに離れる方向に、傾斜して配置されている場合を説明する。
なお、2つの壁面(壁面270B、壁面270C)の少なくとも一方が、底面270Dから離れるほど互いに離れる方向に、傾斜して配置されていてもよい。
溝部270Aの深さは、第1種結晶200の厚みより大きいことが好ましい。溝部270Aの深さとは、溝部270Aの底面270Dの垂線Zにおける、底面270Dに相当する位置から、開口縁270Eに相当する位置、までの長さを示す。第1種結晶200の厚みは、第1種結晶200の主面200Aと対向面200Bとの長さを示す。
溝部270Aの、第1方向Yの長さは、溝部270A内に配置された第1種結晶200の長手方向の長さより長いことが好ましい。
壁面270B及び壁面270Cの、底面270Dの垂線Zに対する傾き(図9中、θA、θB参照)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、壁面270B及び壁面270Cの、底面270Dの垂線Zに対する傾き(図8中、θC、θD参照)は、0°(垂線Zと一致)より大きく、且つ180°(第1種結晶200の対向面200Bと一致)未満の範囲であればよく、特に限定されない。例えば、壁面270B及び壁面270Cの、底面270Dの垂線Zに対する傾き(図8中、θC、θD参照)は、成長する結晶の(000−1)面への微結晶の付着抑制と、{10−11}面の面積が小さくなりすぎないようにするため、28°以上82°以下の範囲であることが好ましく、59°以上78°以下の範囲であることがより好ましい。
図7〜図9には、一例として、壁面270B及び壁面270Cの、底面270Dの垂線Zに対する傾き(図8中、θC、θD参照)が、60°である場合を示した。
溝部270Aを有する下地基板270の材質は、実施の形態1の下地基板27と同様である。また、実施の形態1と同様に、溝部270Aは、反応容器の内壁に直接設けてもよい。また、溝部270Aは、反応容器内に、1つ形成してもよいし、複数形成してもよい。溝部270Aを複数形成する場合、溝部270Aは、溝部270Aの長手方向である第1方向Yに交差する方向に配列させることが好ましい。この場合、各溝部270Aの配列方向の間隔は、各溝部270A内に設置された第1種結晶200から結晶成長させた13族窒化物結晶が、結晶成長中に互いに接することの無いように、結晶成長させる13族窒化物結晶の大きさに応じて調整すればよい。
次に、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法を説明する。
本実施の形態では、実施の形態1で説明した溝部27Aに代えて、溝部270Aを有する反応容器を用いる以外は、実施の形態1で説明した、第1工程、第2工程、第3工程、及び第4工程を経ることで、13族窒化物結晶を製造する。
第1工程では、本実施の形態では、第1種結晶100に代えて、第1種結晶200を準備する。
次に、第2工程〜第4工程を説明する。
図9は、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造工程の説明図である。
第2工程では、第1種結晶200における主面200Aが、溝部270Aの開口側を向くように、第1種結晶200を溝部270A内に配置する工程である(図9(a)参照)。
このとき、第1種結晶200の長手方向(a軸方向)が溝部270Aの第1方向Yと略一致するように、溝部270A内に第1種結晶200を設置することが好ましい。
なお、溝部270Aの底面270Dにおける、第1方向Yに直交する方向の幅は、第1種結晶200の長手方向及びc軸方向の双方に対して直交する方向の幅より大きい、ことが好ましい。この条件を満たすと、第1種結晶200の対向面200Bが底面270Dに接するように、第1種結晶200を溝部270A内に配置することができる。
この場合、反応容器内の混合融液の保持された空間における、第1種結晶200の(000−1)面側(対向面200B側)に接する空間に比べて、第1種結晶200の(0001)面側に接する空間を、効果的に大きくすることができる。このため、更に、(000−1)面側の結晶成長を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、一例として、第1種結晶200の長手方向(a軸方向)と、溝部270Aの第1方向Yと、が同じ方向である場合を説明する。
次に、第3工程を説明する。
第3工程は、混合融液中において、溝部270A内に配置された第1種結晶200の主面200Aから13族窒化物結晶の結晶成長を開始させる。
図9(b)に示すように、第3の工程では、反応容器(図示省略)内に混合融液24を形成し、気相から窒素を溶解して、混合融液24中において、第1種結晶200の主面200Aから13族窒化物結晶203の結晶成長を開始させる。なお、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長する13族窒化物結晶203は、c軸配向した単結晶である。
混合融液24や、フラックスや、13族金属は、実施の形態1で説明したので、省略する。また、第3工程における、結晶成長温度、窒素原料ガス圧力などの結晶成長条件は、実施の形態1と同様である。
次に、第4工程について説明する。
図9(c)〜図9(e)は、第4工程の説明図である。
第4工程では、第3工程によって、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶203の、{10−11}面を主成長面として{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長を継続させる。
第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶203の、{10−11}面は、混合融液24に接して結晶成長する。そして、{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長する(図9(c)〜図9(e)参照)。
ここで、本実施の形態では、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶203では、溝部270Aにおける、底面270Dに連続する2つの壁面(壁面270B、壁面270C)に到達するまでは、(000−1)面が形成されて成長する。しかし、溝部270Aの壁面(図9では、壁面270C、壁面270B)に到達した後は、これらの壁面によって結晶成長が制限される。このため、13族窒化物結晶203では、(000−1)面の形成が抑制され、[000−1]軸方向への成長も制限される。
このように、本実施の形態では、13族窒化物結晶203における、(000−1)面の結晶成長が抑制されるので、(000−1)面における多結晶化が抑制される。この結果、{10−11}面の荒れなどが抑制され、平坦な{10−11}面を有する13族窒化物結晶203を得ることができる(図9(c)〜図9(e)参照)。
図10及び図11は、結晶成長した13族窒化物結晶203を示す模式図である。図10は、結晶成長した13族窒化物結晶203の斜視図を示す模式図である。図11(a)は、結晶成長した13族窒化物結晶203をc面側から見た模式図である。図11(b)は、図11(a)のA−A’断面図である。
結晶成長した13族窒化物結晶203は、底面がa軸方向に長い(000−1)面であり、底面に連続する2面が{10−11}面である。
図10及び図11に示す例では、13族窒化物結晶203には、6つの{10−11}面が形成されており、第1種結晶200の長手方向に平行で、且つ、底面に連続する2面が、平坦で且つ面積の大きい{10−11}面である。
第4工程の結晶成長の条件は、窒素分圧、混合融液の温度、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率等の調整により実現できる。これらの条件は、実施の形態1の第4工程と同様である。
また、本実施の形態における第3工程及び第4工程は、実施の形態1で説明した製造装置1を用いることで、実行することができる。
上記工程によって、13族窒化物結晶203を製造することができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、反応容器の内側における混合融液に接する第1領域に、上記実施の形態とは異なる形状の溝部を設けた構成を説明する。
なお、本実施の形態では、実施の形態2と同様に、第1種結晶として、第1種結晶200を用いる場合を説明する。なお、実施の形態1と同様に、第1種結晶100を用いても良い。
図12及び図13は、本実施の形態の溝部272Aの形成された下地基板272の一例を示す説明図である。詳細には、図12は、下地基板272の溝部272A内に第1種結晶200を配置した状態を示す斜視図である。図13(a)は、下地基板272の溝部272A内に第1種結晶200を配置した状態を示す上面図である。図13(b)は、図13(a)のA−A’断面図である。
図12及び図13に示すように、溝部272Aは、第1方向Yに長い。溝部272Aは、底面272Dと、2つの壁面272Bと、を有する。第1種結晶200は、実施の形態1と同様に、第1種結晶200の主面200Aが溝部272Aの開口側を向くように、溝部272A内に配置される。
溝部272Aの底面272Dは、溝部272A内に設置された第1種結晶200における、主面200Aの対向面200Bに対向する、第1方向Yに長い面である。溝部272Aの2つの壁面272Bは、底面272Dと、溝部272Aの第1方向Yに沿った2つの開口縁272Eの各々と、を結ぶ壁面の各々である。
本実施の形態では、一例として、2つの壁面(壁面272B)の双方が、底面272Dに対して垂直に配置されている場合を説明する。すなわち、本実施の形態では、2つの壁面(壁面272B)の対向面の各々が、底面272Dに対して垂直な方向(図12中、Z方向参照)に配置されている。
なお、2つの壁面(壁面272B)の一方が、底面272Dに対して垂直に配置されていてもよい。
溝部272Aの深さは、溝部272A内に配置された第1種結晶200の主面から結晶成長した13族窒化物結晶の、{10−11}面の面積を拡大させながらの結晶成長を可能とする深さである。このため、溝部272Aの深さの最大値は、この特性を満たす値に調整される。なお、溝部272Aの深さの下限値は、第1種結晶200の厚みより大きいことが好ましい。
なお、溝部272Aの深さとは、溝部272Aの底面272Dの垂線Zにおける、底面272Dに相当する位置から、開口縁272Eに相当する位置、までの長さを示す。第1種結晶200の厚みは、第1種結晶200の主面200Aと対向面200Bとの長さを示す。
溝部272Aの、第1方向Yの長さは、溝部272A内に配置された第1種結晶200の長手方向の長さより長いことが好ましい。
溝部272Aの底面272Dにおける、第1方向Yに直交する方向の幅は、第1種結晶200の長手方向及びc軸方向の双方に対して直交する方向の幅より大きい。この条件を満たすことで、第1種結晶200の対向面200Bが底面272Dに接するように、第1種結晶200を溝部272A内に配置することができる。
底面272Dの幅は、この条件を満たす範囲であれば限定されないが、反応容器内の混合融液の保持された空間における、第1種結晶200の(000−1)面側に接する空間に比べて、第1種結晶200の(0001)面側に接する空間の方が大きい、といった条件を満たすように、予め調整すればよい。
また、溝部272Aの、反応容器内の混合融液24に接する第1領域における、溝部272Aに連続する領域(図14の、下地基板272の表面272E参照)は、溝部272A内に配置された第1種結晶200の主面200Aから結晶成長した13族窒化物結晶302の、{10−11}面の面積を拡大させながらの結晶成長を可能とする形状である。図14に示す例では、この表面272Eは、結晶成長した13族窒化物結晶303の(0001)面に平行な平面状となるように、予め調整されている場合を示した。なお、この表面272Eの形状は、上記特性を満たす形状であればよく、(0001)面に平行な形状に限定されない。
溝部272Aを有する下地基板272の材質は、実施の形態1の下地基板27と同様である。また、実施の形態1と同様に、溝部272Aは、反応容器の内壁に直接設けてもよい。また、溝部272Aは、反応容器内に、1つ形成してもよいし、複数形成してもよい。溝部272Aを複数形成する場合、溝部272Aは、溝部272Aの長手方向である第1方向Yに交差する方向に配列させることが好ましい。この場合、各溝部272Aの配列方向の間隔は、各溝部272A内に設置された第1種結晶200から結晶成長させた13族窒化物結晶が、結晶成長中に互いに接することの無いように、結晶成長させる13族窒化物結晶の大きさに応じて調整すればよい。
次に、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法を説明する。
本実施の形態では、実施の形態1で説明した溝部27Aに代えて、溝部272Aを有する反応容器を用いる以外は、実施の形態1で説明した、第1工程、第2工程、第3工程、及び第4工程を経ることで、13族窒化物結晶を製造する。
第1工程では、本実施の形態では、第1種結晶100に代えて、第1種結晶200を準備する。
次に、第2工程〜第4工程を説明する。
図14は、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造工程の説明図である。
第2工程では、第1種結晶200における主面200Aが、溝部272Aの開口側を向くように、第1種結晶200を溝部272A内に配置する工程である(図14(a)参照)。
このとき、第1種結晶200の長手方向(a軸方向)が溝部272Aの第1方向Yと略一致するように、溝部272A内に第1種結晶200を設置することが好ましい(図13参照)。
なお、本実施の形態では、一例として、第1種結晶200の長手方向(a軸方向)と、溝部272Aの第1方向Yと、が同じ方向である場合を説明する。
次に、第3工程を説明する。
第3工程は、混合融液中において、溝部272A内に配置された第1種結晶200の主面200Aから13族窒化物結晶の結晶成長を開始させる。
図14(b)に示すように、第3の工程では、反応容器(図示省略)内に混合融液24を形成し、気相から窒素を溶解して、混合融液24中において、第1種結晶200の主面200Aから13族窒化物結晶303の結晶成長を開始させる。なお、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長する13族窒化物結晶303は、c軸配向した単結晶である。
混合融液24や、フラックスや、13族金属は、実施の形態1で説明したので、省略する。また、第3工程における、結晶成長温度、窒素原料ガス圧力などの結晶成長条件は、実施の形態1と同様である。
次に、第4工程について説明する。
図14(c)〜図14(e)は、第4工程の説明図である。
第4工程では、第3工程によって、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶303の、{10−11}面を主成長面として{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長を継続させる。
第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶303の、{10−11}面は、混合融液24に接して結晶成長する。そして、{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長する(図14(c)〜図14(e)参照)。
ここで、本実施の形態では、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶303では、溝部272Aにおける、底面272Dに連続する2つの壁面(壁面272B)に到達するまでは、(000−1)面が形成されて成長する。しかし、溝部272Aの壁面272Bに到達した後は、これらの壁面によって結晶成長が制限される。このため、13族窒化物結晶303では、(000−1)面の形成が抑制され、[000−1]軸方向への成長も制限される。
また、図12〜図14に示すように、第1種結晶200が溝部272A内に隙間無くはまるように、第1種結晶200の幅と、溝部272Aの幅と、を予め調整することが好ましい。この条件を満たすように、第1種結晶200の幅と、溝部272Aの幅と、を予め調整することで、[000−1]軸方向への成長を、効果的に抑制することができる。
また、図12〜図14に示すように、第1種結晶200の厚みと溝部272Aの深さと、が略同じとなるように、予め調整することが好ましい。第1種結晶200の厚みと溝部272Aの深さと、が略同じであると、第1種結晶200の主面200A側から結晶成長を開始した13族窒化物結晶303は、結晶成長により溝部272Aから出た後は、下地基板272の表面272Eに沿って成長する。ここで、第1種結晶200の主面200Aと、下地基板272の表面272Eと、が平行である場合には、(000−1)面が形成される。しかし、下地基板272と、結晶成長した13族窒化物結晶303との間には、隙間が無いことから、[000−1]軸方向への結晶成長は制限される。
このように、本実施の形態では、13族窒化物結晶203における、(000−1)面の結晶成長が抑制されるので、(000−1)面における多結晶化が抑制される。また、(000−1)面側に結晶成長することで極性反転を起こすことや、微結晶の付着などによる多結晶化が発生することを抑制することができる。この結果、{10−11}面の荒れなどが抑制され、平坦な{10−11}面を有する13族窒化物結晶203を得ることができる(図14(c)〜図14(e)参照)。
図15及び図16は、結晶成長した13族窒化物結晶303を示す模式図である。図15は、結晶成長した13族窒化物結晶303の斜視図を示す模式図である。図16(a)は、結晶成長した13族窒化物結晶303をc面側から見た模式図である。図16(b)は、図16(a)のA−A’断面図である。
結晶成長した13族窒化物結晶303は、底面がa軸方向に長い(000−1)面であり、底面に連続する2面が{10−11}面である。
図15及び図16に示す例では、13族窒化物結晶303には、6つの{10−11}面が形成されており、第1種結晶200の長手方向に平行で、且つ、底面に連続する2面が、平坦で且つ面積の大きい{10−11}面である。
第4工程の結晶成長の条件は、窒素分圧、混合融液の温度、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率等の調整により実現できる。これらの条件は、実施の形態1の第4工程と同様である。
また、本実施の形態における第3工程及び第4工程は、実施の形態1で説明した製造装置1を用いることで、実行することができる。
上記工程によって、13族窒化物結晶303を製造することができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、反応容器の内側における混合融液に接する第1領域に、上記実施の形態とは異なる形状の溝部を設けた構成を説明する。
なお、本実施の形態では、実施の形態2と同様に、第1種結晶として、第1種結晶200を用いる場合を説明する。なお、実施の形態1と同様に、第1種結晶100を用いてもよい。
図17及び図18は、本実施の形態の溝部274Aの形成された下地基板274の一例を示す説明図である。詳細には、図17は、下地基板274の溝部274A内に第1種結晶200を配置した状態を示す斜視図である。図18(a)は、下地基板274の溝部274A内に第1種結晶200を配置した状態を示す上面図である。図18(b)は、図18(a)のA−A’断面図である。
図17及び図18に示すように、溝部274Aは、第1方向Yに長い。溝部274Aは、底面274Dと、底面274に連続する2つの壁面274B及び壁面274Cと、を有する。第1種結晶200は、実施の形態1と同様に、第1種結晶200の主面200Aが溝部274Aの開口側を向くように、溝部274A内に配置される。
溝部274Aの底面274Dは、溝部274A内に設置された第1種結晶200における、主面200Aの対向面200Bに対向する、第1方向Yに長い面である。溝部274Aの2つの壁面274B及び壁面274Cは、底面274Dと、溝部274Aの第1方向Yに沿った2つの開口縁274Eの各々と、を結ぶ壁面の各々である。また、これらの2つの壁面(壁面274B、壁面274C)における、溝部274Aの深さ方向の少なくとも一部の領域は、底面274Dから遠いほど、互いに離れる方向に向かって、傾斜している。
本実施の形態では、溝部274Aの壁面274B及び壁面274Cの少なくとも一方が、溝部274Aの深さ方向に複数の領域に分割され、底面274Dに離れる位置に配置された領域ほど、底面274Dの垂線(図17及び図18中、矢印Z方向参照)に対する傾きが大きい。
本実施の形態では、一例として、壁面274B及び壁面274Cの双方が、溝部274Aの深さ方向に複数の領域に分割されている場合を説明する。また、本実施の形態では、壁面274Bが、溝部274Aの深さ方向に、底面274D側から開口縁274E側に向かって順に、領域274F、領域274G、の2つの領域に分割されている。また、本実施の形態では、壁面274Cが、溝部274Aの深さ方向に、底面274D側から開口縁274E側に向かって順に、領域274H、領域274I、の2つの領域に分割されている。
そして、本実施の形態では、これらの複数の領域(領域274F、領域274G、領域274H、領域274I)の内、底面274Dに連続する領域(領域274F及び領域274H)の、垂線(Z方向参照)に対する傾きが0°である場合を説明する。また、本実施の形態では、これらの複数の領域(領域274F、領域274G、領域274H、領域274I)の内、開口縁274E側の領域(領域274G及び領域274I)の、垂線(矢印Z方向参照)に対する傾き(図18中、θG、θI参照)が、87°である場合を説明する。
なお、上述したように、溝部274Aの壁面274B及び壁面274Cの少なくとも一方が、溝部274Aの深さ方向に複数の領域に分割され、底面274Dに離れる位置に配置された領域ほど、底面274Dの垂線(図17及び図18中、Z方向参照)に対する傾きが大きい、といった上記条件を満たせばよい。すなわち、壁面274B及び壁面274Cの分割数は、2つに限定されない。また、各領域の傾きは、上記0°と87°の組合せに限定されない。
溝部274Aの深さは、第1種結晶200の厚みより大きいことが好ましい。溝部274Aの深さとは、溝部274Aの底面274Dの垂線Zにおける、底面274Dに相当する位置から、開口縁274Eに相当する位置、までの長さを示す。
さらに、溝部274Aの壁面274B及び壁面274Cの各々における、底面274Dに連続する領域の高さ(垂線Z方向の長さ)が、第1種結晶200の厚み以上であることが好ましく、第1種結晶200の厚みと略同一であることが更に好ましい。
溝部274Aの、第1方向Yの長さは、溝部274A内に配置された第1種結晶200の長手方向の長さより長いことが好ましい。
溝部274Aの底面274Dにおける、第1方向Yに直交する方向の幅は、第1種結晶200の長手方向及びc軸方向の双方に対して直交する方向の幅より大きいことが好ましい。この条件を満たすことで、第1種結晶200の対向面200Bが底面274Dに接するように、第1種結晶200を溝部274A内に配置することができる。
底面274Dの幅は、この条件を満たす範囲であれば限定されないが、反応容器内の混合融液の保持された空間における、第1種結晶200の(000−1)面側に接する空間に比べて、第1種結晶200の(0001)面側に接する空間の方が大きい、といった条件を満たすように、予め調整すればよい。
溝部274Aを有する下地基板274の材質は、実施の形態1の下地基板27と同様である。また、実施の形態1と同様に、溝部274Aは、反応容器の内壁に直接設けてもよい。また、溝部274Aは、反応容器内に、1つ形成してもよいし、複数形成してもよい。溝部274Aを複数形成する場合、溝部274Aは、溝部274Aの長手方向である第1方向Yに交差する方向に配列させることが好ましい。この場合、各溝部274Aの配列方向の間隔は、各溝部274A内に設置された第1種結晶200から結晶成長させた13族窒化物結晶が、結晶成長中に互いに接することの無いように、結晶成長させる13族窒化物結晶の大きさに応じて調整すればよい。
次に、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法を説明する。
本実施の形態では、実施の形態1で説明した溝部27Aに代えて、溝部274Aを有する反応容器を用いる以外は、実施の形態1で説明した、第1工程、第2工程、第3工程、及び第4工程を経ることで、13族窒化物結晶を製造する。
第1工程では、本実施の形態では、第1種結晶100に代えて、第1種結晶200を準備する。
次に、第2工程〜第4工程を説明する。
図19は、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造工程の説明図である。
第2工程では、第1種結晶200における主面200Aが、溝部274Aの開口側を向くように、第1種結晶200を溝部274A内に配置する工程である(図19(a)参照)。
このとき、第1種結晶200の長手方向(a軸方向)が溝部274Aの第1方向Yと略一致するように、溝部274A内に第1種結晶200を設置することが好ましい(図18参照)。
なお、本実施の形態では、一例として、第1種結晶200の長手方向(a軸方向)と、溝部274Aの第1方向Yと、が同じ方向である場合を説明する。
次に、第3工程を説明する。
第3工程は、混合融液中において、溝部274A内に配置された第1種結晶200の主面200Aから13族窒化物結晶の結晶成長を開始させる。
図19(b)に示すように、第3の工程では、反応容器(図示省略)内に混合融液24を形成し、気相から窒素を溶解して、混合融液24中において、第1種結晶200の主面200Aから13族窒化物結晶403の結晶成長を開始させる。なお、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長する13族窒化物結晶403は、c軸配向した単結晶である。
混合融液24や、フラックスや、13族金属は、実施の形態1で説明したので、省略する。また、第3工程における、結晶成長温度、窒素原料ガス圧力などの結晶成長条件は、実施の形態1と同様である。
次に、第4工程について説明する。
図19(c)〜図19(e)は、第4工程の説明図である。
第4工程では、第3工程によって、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶403の、{10−11}面を主成長面として{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長を継続させる。
第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶403の、{10−11}面は、混合融液24に接して結晶成長する。そして、{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長する(図19(c)〜図19(e)参照)。
ここで、本実施の形態では、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶403では、溝部274Aにおける、底面274Dに連続する2つの壁面(壁面274B、壁面274C)における、最も底面274Dに近い領域(領域274F、領域274H)に到達するまでは、(000−1)面が形成されて成長する。しかし、溝部272Aの壁面272B)における、最も底面274Dに近い領域(274F、領域274H)に到達した後は、これらの領域(領域274F、領域274H)によって結晶成長が制限される。そして更に、開口縁274Eに近い側の領域(領域274G、領域274I)に沿って、結晶成長する。
このため、13族窒化物結晶403では、(000−1)面の形成が抑制され、[000−1]軸方向への成長も制限される。
このように、本実施の形態では、13族窒化物結晶403における、(000−1)面の結晶成長が抑制されるので、(000−1)面における多結晶化が抑制される。また、(000−1)面側に結晶成長することで極性反転を起こすことや、微結晶の付着などによる多結晶化が発生することを抑制することができる。この結果、{10−11}面の荒れなどが抑制され、平坦な{10−11}面を有する13族窒化物結晶403を得ることができる(図19(e)参照)。
図20及び図21は、結晶成長した13族窒化物結晶403を示す模式図である。図20は、結晶成長した13族窒化物結晶403の斜視図を示す模式図である。図21(a)は、結晶成長した13族窒化物結晶403をc面側から見た模式図である。図21(b)は、図21(a)のA−A’断面図である。
結晶成長した13族窒化物結晶403は、底面がa軸方向に長い(000−1)面であり、底面に連続する2面が{10−11}面である。
図20及び図21に示す例では、13族窒化物結晶403には、6つの{10−11}面が形成されており、第1種結晶200の長手方向に平行で、且つ、底面に連続する2面が、平坦で且つ面積の大きい{10−11}面である。
第4工程の結晶成長の条件は、窒素分圧、混合融液の温度、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率等の調整により実現できる。これらの条件は、実施の形態1の第4工程と同様である。
また、本実施の形態における第3工程及び第4工程は、実施の形態1で説明した製造装置1を用いることで、実行することができる。
上記工程によって、13族窒化物結晶403を製造することができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で製造された13族窒化物結晶から、13族窒化物結晶基板を製造する方法について説明する。
本実施の形態の製造方法は、上記実施の形態で製造された13族窒化物結晶を、c面、無極性面、または半極性面を主面とするように加工する加工工程を含む。
無極性面とは、六方晶の結晶構造の13族窒化物結晶において、結晶面内で13族原子と窒素原子の数が同数で電荷に偏りがなく結晶軸方向に極性を持たない結晶面である。具体的には、無極性面は、六方晶の結晶のm面やa面等である。
半極性面とは、結晶面が13族原子だけ、あるいは窒素原子だけで構成される極性面であるc面と無極性面を除いた結晶面である。半極性面は、13族原子と窒素原子の数が等しくないため、電荷のバランスが崩れており極性を有するが、その度合いがc面極性面と無極性面の間であるため半極性と定義されている。具体的には、六方晶の結晶の{10−11}面や{20−21}面や{11−22}面や{−1103}面等がある(その他、c面と無極性面以外の結晶面はいずれも半極性面である)。
加工工程で用いる加工方法は、公知の方法を用いればよく、限定されない。
13族窒化物結晶が成長した混合融液24にはアルカリ金属が含まれているので、本実施の形態の13族窒化物基板の結晶中には不純物としてアルカリ金属が微量ながら含まれている。アルカリ金属にナトリウムを使用して結晶成長したGaN結晶中には、SIMS分析で、1014〜1015cm−3台のナトリウムが検出される。また、本実施の形態の13族窒化物結晶基板は、主成長面が{10−11}面である13族窒化物結晶を加工することによって得られた基板である。このため、本実施の形態の13族窒化物結晶基板は、金属ナトリウムや金属ガリウム、これらの混合物がそのままのかたちで結晶内に取り込まれるインクルージョンが抑制される。
また、本実施の形態の13族窒化物結晶基板は、主面が、c面、無極性面、あるいは半極性面であるので、これらの基板を用いてInGaN活性層を有する発光デバイスを製造することで、高いIn組成のInGaN活性層の発光効率低下やブルーシフトを抑制することができる。その結果、緑色波長領域で発振する半導体レーザーや、高出力のLEDを製造することができる。
また、本実施の形態の13族窒化物結晶基板の内、主面が半極性である(10−11)面、(−1011)面、(10−1−1)面、または(−101−1)面である基板は、この基板を用いてInGaN活性層を有する発光デバイスを製造することで、高いIn組成のInGaN活性層の発光効率低下やブルーシフトを抑制することができる。その結果、緑色波長領域で発振する半導体レーザーや、高出力のLEDを製造することができる。
以下に本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、符号は、上記に図を参照して説明した各構成に対応している。
(実施例1)
本実施例では、図3に示す工程に沿って、製造装置1(図6参照)を用いて結晶成長を行い、13族窒化物結晶103を製造した。なお、本実施例では、アルカリ金属としてナトリウムを用い、13族金属としてガリウムを用いて、13族窒化物結晶103としてGaN(窒化ガリウム)を製造した。
―第1工程―
まず、第1種結晶100を準備した。本実施例では、第1種結晶100として、異種基板101としてのサファイア基板上に、13族窒化物結晶103として、MOCVDによりGaNを15μmエピタキシャル成長させた。これにより、φ2インチのテンプレート基板を作製し、短冊状に切り出すことによって、第1種結晶100を作製した。
なお、切出し時には、第1種結晶100の長手方向が、13族窒化物結晶103であるGaNのa軸に略平行になるように切り出した。詳細には、ダイシング装置を用いて、異種基板101としてのサファイア基板のm軸に沿って、該基板の裏面側から該基板の途中まで切り込みを入れて溝を何本か形成した後、圧力をかけて分割した。このようにして、長手方向がサファイア基板のm軸に沿った、すなわち、長手方向が13族窒化物結晶102としてのGaNのa軸に略平行な、短冊状の第1種結晶100を作製した。
作製した第1種結晶100の主面100A(GaN側の面)における、長手方向の長さは45mm、該主面100Aにおける幅(短手方向の長さ)は1mmであった。また、厚み(主面100Aと対向面100Bとの長さ)は、約350μmであった。
次に、図6に示す製造装置1を用いて、第2工程〜第4工程を行った。
まず、反応容器12として、YAGを材質とする容器を用意した。そして、反応容器12の内部の底部に、V字状の溝部27Aの設けられた下地基板27を設置した。本実施例では、下地基板27の材質として、純度99.99%のアルミナを用いた。溝部27Aにおける2つの壁面(図3中、面27B、面27C参照)の成す角度(図3中、θA参照)は、120°であった。また、溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)は、これらの2面の接線27Dを通る垂線Zに対して、各々、互いに離れる方向に60°傾くように形成した。
この反応容器12を内部に備えた耐圧容器11を、バルブ21部分で製造装置1から分離し、酸素1ppm以下、露点−80℃以下の高純度のAr雰囲気のグローブボックスに入れた。
―第2工程―
次に、YAGからなる内径92mmの反応容器12内の底部に設置された、下地基板27の溝部27A内に、第1種結晶100の主面100Aが溝部27Aの開口側を向くように配置した。なお、第1種結晶100の長手方向と、溝部27Aの第1方向Yと、が一致するように、第1種結晶100を溝部27A内に配置した。
このため、第1種結晶100は、溝部27Aを構成する2つの壁面(図3中、面27B、面27C参照)の接線27Dを跨ぐように配置された。また、第1種結晶100は、第1種結晶100における対向面100Bの、m軸方向の両端部が、溝部27Aを構成する2つの壁面(図3中、面27B、面27C参照)によって支持された状態となった。また、第1種結晶100の主面100Aが、溝部27Aの底部側を向くように配置された。
このように、第1種結晶100を溝部27A内に配置することで、第1種結晶100の主面100Aから結晶成長した13族窒化物結晶103の、裏面側、すなわち、(000−1)面の窒素極性面が、溝部27Aの底部側を向いた状態となる。
―第3工程―
次に、13族金属原料であるガリウム(Ga)を100gと、フラックスであるナトリウム(Na)を77gと、を反応容器12内に投入した。なお、ガリウムとナトリウムのモル比は、0.3:0.7とした。更に、反応容器12内に、カーボンを0.34g添加した。なお、ナトリウムは溶解させて液体状態とした後に反応容器12内に入れ、固化させた後にガリウムとカーボンを入れた。
次に、反応容器12に蓋25をした後に、耐圧容器11内に設置した。
次に、耐圧容器11を密閉し、バルブ21を閉じ、反応容器12内部を外部雰囲気と遮断した。なお、製造装置1におけるこれらの一連の作業は、高純度のArガス雰囲気のグローブボックス内で行った。このため、耐圧容器11内部には、Arガスが充填された状態であった。
次に、耐圧容器11をグローブボックスから出し、製造装置1に組み込んだ。詳細には、耐圧容器11を、ヒーター13のある所定の位置に設置し、バルブ21部分で窒素とアルゴンのガス供給管14に接続した。次に、バルブ21とバルブ18を開け、ガス供給管20からArガスを入れ、耐圧容器11の内部空間23をArガスで満たした。このとき、反応容器12と蓋25の隙間からガスが入るため、反応容器12内の内部空間28もArガスで満たされた。次に、圧力制御装置19で圧力を調整して、耐圧容器11内の全圧を2.5MPaにしてバルブ18を閉じた。
次に、窒素供給管17から窒素ガスを入れ、圧力制御装置16で圧力を調整してバルブ15を開け、耐圧容器11内の全圧を4MPaにした。すなわち、耐圧容器11の内部空間23の窒素の分圧は、1.5MPaであった。その後、バルブ15を閉じ、圧力制御装置16を8MPaに設定した。
次に、ヒーター13に通電し、反応容器12を結晶成長温度にまで昇温させた。結晶成長温度は、870℃とした。結晶成長温度では、反応容器12内のガリウムとナトリウムは融解し、混合融液24を形成した。なお、混合融液24の温度は、反応容器12の温度と同温になる。また、この温度まで昇温すると、本実施例の製造装置1では、耐圧容器11内の気体が熱せられ全圧は、8MPaであった。すなわち、窒素分圧は3MPaであった。
次に、バルブ15を開け、窒素ガス圧力を8MPaかけた。これは、窒素が窒化ガリウムの結晶成長で消費されても、耐圧容器11内の窒素分圧を3MPaに維持するためである。
このようにして、窒素を混合融液24中に溶解させ、第1種結晶100の主面100AのGaNから、13族窒化物結晶103としてのGaNの結晶成長を開始させた(図3(b))。
―第4工程―
次に、反応容器12内の温度を870℃、窒素ガス分圧を3MPaに保持して、300時間結晶成長を継続した。13族窒化物結晶103であるGaN単結晶は、第1種結晶100の主面100Aから結晶成長を開始し、結晶成長を継続させると、混合融液24と接している結晶領域が第1種結晶100の主面100Aからはみ出して結晶成長した。
本実施例では、{10−11}面が主な結晶成長面となり、{10−11}面の面積を拡大させながら、また、c面もわずかに形成しながら結晶成長を継続することが観察された(図3(c)〜図3(e))。
詳細には、第1種結晶100の主面100Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶103は、溝部27Aの2つの壁面(図3では、面27C、面27B)に到達するまでは、(000−1)面が形成されて成長した。そして、溝部27Aの壁面(図3では、面27C、面27B)に到達した後は、これらの壁面によって結晶成長が制限された。このため、13族窒化物結晶103における、(000−1)面の形成が抑制され、[000−1]軸方向への成長も制限されたことが確認できた。
そして、300時間の結晶成長を継続した後、ヒーター13の通電を止め、混合融液24の温度を室温まで降温した。
耐圧容器11内のガスの圧力を下げた後、耐圧容器11を開けると、反応容器12内の第1種結晶100上に、13族窒化物結晶103が結晶成長していた(図3(e)参照)。
―13族窒化物結晶の評価―
この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶103としてのGaNは、図4及び図5に示す形状であった。具体的には、この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶は、底面がa軸方向に長い(000−1)面であり、底面に連続する2面が{10−11}面であった(図4、図5参照)。
また、得られた13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶には、6つの{10−11}面が形成されており、第1種結晶100の長手方向に平行で、且つ、底面に連続する2面が、平坦で且つ面積の大きい{10−11}面であった(図4、図5参照)。
また、得られた13族窒化物結晶103の上面には、c面のGa極性面が形成されていた。また、このc面には、第1種結晶100の長手方向に沿って、くぼみ105が形成されていた(図4、図5参照)。
また、得られた13族窒化物結晶103の底部は、下地基板27の溝部27Aの形状に沿った形状であった(図3(e)、図5(b)参照)。
また、13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶の底面には、第1種結晶100が位置していた。また、第1種結晶100の異種基板101には、クラックが入っていた。
結晶成長によって得られた13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶のサイズは、底面の長手方向の長さが約59mm、底面の最大幅が9mm、上部の長手方向の長さが約45mm、高さ(底面と上面との最短距離)が約10mmであった。
また、13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶について、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析を行った結果、1014〜1015cm−3のナトリウムが検出された。また、13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。
(実施例2)
本実施例では、実施例1で用いた第1種結晶100に代えて、単層の第1種結晶200を用いて13族窒化物結晶を製造する。また、本実施例では、実施例1で用いた下地基板27に代えて、溝部270Aを備えた下地基板270(図7参照)を用いた(詳細後述)。
―第1工程―
まず、第1種結晶200を準備した。本実施例では、主面が(0001)面のφ2インチのGaN自立基板(HVPE製)から、短冊状に切り出した結晶を、第1種結晶200として準備した。
詳細には、上記GaN自立基板(HVPE製)の裏面をGaNのa軸(m面)に沿って数回卦がくことで、短冊状に第1種結晶200を切り出した(図7〜図9参照)。
切出した第1種結晶200は、上述した第1種結晶200に相当し、全体が同一材質の単結晶である。この切出した第1種結晶200は、長手方向がGaNのa軸に略平行な(すなわち、長手方向がa軸に略一致する)短冊状であった。
この第1種結晶200の長手方向の長さは45mmであり、幅は0.8mm、高さ(主面200Aと対向面200Bとの距離)は0.4mmであった。
次に、図6に示す製造装置1を用いて、第2工程〜第4工程を行った。図9は、第2工程〜第4工程の説明図である。
なお、本実施例における第2工程〜第4工程は、実施例1と略同様である。このため、異なる部分を詳細に説明する。
まず、反応容器12として、内径92mm、純度99.99%のアルミナ製容器を用意した。また、反応容器12の内部の底部に、下地基板270を設置した。本実施例では、下地基板270の材料として、純度99.99%のアルミナを用いた。
下地基板270には、図7及び図8に示すように、溝部270Aが設けられている。溝部270Aは、底面270Dと、底面270Dに連続する2つの壁面(壁面270B、壁面270C)と、からなる。そして、これらの2つの壁面(壁面270B、壁面270C)は、底面270Dから離れるほど互いに離れる方向に、傾斜していた。
なお、2つの壁面(壁面270B、壁面270C)の少なくとも一方が、底面270Dから離れるほど互いに離れる方向に、傾斜して配置されていてもよい。本実施例では、壁面270B及び壁面270Cの、底面270Dの垂線Zに対する傾き(図8中、θC、θD参照)が、60°であった。
この反応容器12を内部に備えた耐圧容器11を、実施例1と同様にして、グローブボックスに入れた。
―第2工程―
次に、反応容器12内の底部に設置された、下地基板270に設けられた溝部270A内に、第1種結晶200の主面200Aが溝部270Aの開口側を向くように配置した。なお、第1種結晶200の長手方向と、溝部270Aの第1方向Yと、が一致するように、第1種結晶200を溝部270A内に配置した。
このため、第1種結晶200は、(0001)面である主面200Aを溝部270Aの開口側とし、(000−1)面である対向面200Bを溝部270Aの底面270Dに接するように、溝部270A内に配置された(図8参照)。
―第3工程、第4工程―
本実施例では、原料の仕込み量は、13族金属原料であるガリウム(Ga)を110gと、フラックスであるナトリウム(Na)を77gと、を反応容器12内に投入した。なお、ガリウムとナトリウムのモル比は、0.32:0.68とした。更に、反応容器12内に、カーボンを0.36g添加した。
結晶成長温度、及び窒素ガス分圧等の結晶成長条件は実施例1と同じとした。結晶成長時間についても、実施例1と同じとした。
これにより、第1種結晶200の主面200Aから、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶の結晶成長が開始され(図9(b))、結晶成長が継続された(図9(c)〜図9(e))。これにより、反応容器12内の第1種結晶200の主面200Aから結晶成長が開始され、結晶成長の継続により、混合融液24と接している結晶領域が第1種結晶200の主面200Aからはみ出して結晶成長した。
本実施例では、{10−11}面が主な結晶成長面となり、{10−11}面の面積を拡大させながら、また、c面もわずかに形成しながら結晶成長を継続することが観察された(図9(c)〜図9(e))。
詳細には、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶203は、溝部270Aの2つの壁面(図9では、面270C、面270B)に到達するまでは、(000−1)面が形成されて成長した。そして、溝部270Aの壁面(図9では、面270C、面270B)に到達した後は、これらの壁面によって結晶成長が制限された。このため、13族窒化物結晶203における、(000−1)面の形成が抑制され、[000−1]軸方向への成長も制限されたことが確認できた。
そして、300時間の結晶成長を継続した後、ヒーター13の通電を止め、混合融液24の温度を室温まで降温した。
耐圧容器11内のガスの圧力を下げた後、耐圧容器11を開けると、反応容器12内の第1種結晶200上に、13族窒化物結晶203が結晶成長していた(図9(e)参照)。
―13族窒化物結晶の評価―
この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶203としてのGaNは、図10及び図11に示す形状であった。具体的には、この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶は、底面がa軸方向に長い(000−1)面であり、底面に連続する2面が{10−11}面であった(図10、図11参照)。
また、得られた13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶には、6つの{10−11}面が形成されており、第1種結晶200の長手方向に平行で、且つ、底面に連続する2面が、平坦で且つ面積の大きい{10−11}面であった(図10、図11参照)。
また、得られた13族窒化物結晶203の上面には、c面のGa極性面が形成されていた。また、このc面には、第1種結晶200の長手方向に沿って、くぼみ205が形成されていた(図10、図11参照)。
また、得られた13族窒化物結晶203の底部は、下地基板270の溝部270Aの形状に沿った形状であった(図9(e)、図11(b)参照)。
また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶の底面には、第1種結晶200が位置していた。第1種結晶200には、クラックなどは見られなかった。
結晶成長によって得られた13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶のサイズは、底面の長手方向の長さが約59mm、底面の最大幅が9mm、上部の長手方向の長さが約45mm、高さ(底面と上面との最短距離)が約11mmであった。
また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶について、SIMS分析を行った結果、1014〜1015cm−3のナトリウムが検出された。また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。
(実施例3)
本実施例では、実施例1で用いた第1種結晶100に代えて、単層の第1種結晶200を用いて13族窒化物結晶を製造する。また、本実施例では、実施例1で用いた下地基板27に代えて、溝部272Aを備えた下地基板272(図12参照)を用いた(詳細後述)。
―第1工程―
まず、第1種結晶200を準備した。本実施例では、まず、主面が(0001)面のφ2インチのGaN自立基板(HVPE製)を用意した。そして、このGaN自立基板上に、NaFlux法で、LPE(液相エピタキシャル)して、自立基板を作製した。そして、この自立基板から、長手方向がGaNのa軸に略平行な、短冊状の第1種結晶200を切り出して使用した(図14(a)参照)。
切出した第1種結晶200は、全体が同一材質の単結晶である。この切出した第1種結晶200は、長手方向がGaNのa軸に略平行な(すなわち、長手方向がa軸に略一致する)短冊状であった。
この第1種結晶200の長手方向の長さは45mmであり、幅は0.8mm、高さ(主面200Aと対向面200Bとの距離)は0.4mmであった。
次に、図6に示す製造装置1を用いて、第2工程〜第4工程を行った。図14は、第2工程〜第4工程の説明図である。
なお、本実施例における第2工程〜第4工程は、実施例1と略同様である。このため、異なる部分を詳細に説明する。
まず、反応容器12として、内径92mm、純度99.99%のアルミナ製容器を用意した。また、反応容器12の内部の底部に、下地基板272を設置した。本実施例では、下地基板272の材料として、純度99.99%のアルミナを用いた。
下地基板272には、図12及び図13に示すように、溝部272Aが設けられている。溝部272Aは、底面272Dと、底面272Dに連続する2つの壁面(壁面272B)と、からなる。そして、これらの2つの壁面(壁面272B)の双方が、底面272Dに対して垂直に配置されていた。すなわち、下地基板272は、平板に、溝部272Aの形成された構成であった。
溝部272Aの深さは、第1種結晶200の高さと同じ、0.4mmであった。
この反応容器12を内部に備えた耐圧容器11を、実施例1と同様にして、グローブボックスに入れた。
―第2工程―
次に、反応容器12内の底部に設置された、下地基板272に設けられた溝部272A内に、第1種結晶200の主面200Aが溝部272Aの開口側を向くように配置した。なお、第1種結晶200の長手方向と、溝部272Aの第1方向Yと、が一致するように、第1種結晶200を溝部272A内に配置した。
このため、第1種結晶200は、(0001)面である主面200Aを溝部272Aの開口側とし、(000−1)面である対向面200Bを溝部272Aの底面272Dに接するように、溝部272A内に配置された(図12参照)。
―第3工程、第4工程―
本実施例では、原料の仕込み量は、13族金属原料であるガリウム(Ga)を110gと、フラックスであるナトリウム(Na)を77gと、を反応容器12内に投入した。なお、ガリウムとナトリウムのモル比は、0.32:0.68とした。更に、反応容器12内に、カーボンを0.36g添加した。
結晶成長温度、及び窒素ガス分圧等の結晶成長条件は実施例1と同じとした。結晶成長時間についても、実施例1と同じとした。
これにより、第1種結晶200の主面200Aから、13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶の結晶成長が開始され(図14(b))、結晶成長が継続された(図14(c)〜図14(e))。これにより、反応容器12内の第1種結晶200の主面200Aから結晶成長が開始され、結晶成長の継続により、混合融液24と接している結晶領域が第1種結晶200の主面200Aからはみ出して結晶成長した。
本実施例では、{10−11}面が主な結晶成長面となり、{10−11}面の面積を拡大させながら、また、c面もわずかに形成しながら結晶成長を継続することが観察された(図14(c)〜図14(e))。
詳細には、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶303は、溝部272Aの2つの壁面(図14では、面272B)に到達するまでは、(000−1)面が形成されて成長した。そして、溝部272Aの壁面(図14では、面272B)に到達した後は、これらの壁面によって結晶成長が制限された。そして、結晶成長が進むにつれて、溝272からはみ出して、上面272E上を横方向にも拡大しながら成長する。溝からはみ出して成長した結晶の底部は、(000−1)面であるが、この面は、下地基板の上面272Eに密着して成長するので、極性反転や微結晶の付着がなく、連続する{10−11}面の荒れが生じなかった。
そして、300時間の結晶成長を継続した後、ヒーター13の通電を止め、混合融液24の温度を室温まで降温した。
耐圧容器11内のガスの圧力を下げた後、耐圧容器11を開けると、反応容器12内の第1種結晶200上に、13族窒化物結晶303が結晶成長していた(図14(e)参照)。
―13族窒化物結晶の評価―
この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶303としてのGaNは、図15及び図16に示す形状であった。具体的には、この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶は、底面がa軸方向に長い(000−1)面であり、底面に連続する2面が{10−11}面であった(図15、図16参照)。
また、得られた13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶には、6つの{10−11}面が形成されており、第1種結晶200の長手方向に平行で、且つ、底面に連続する2面が、平坦で且つ面積の大きい{10−11}面であった(図15、図16参照)。
また、得られた13族窒化物結晶303としてのGaNの、a軸に直交する断面形状は、略三角形状であった。また、13族窒化物結晶303の底面の形状は、a軸方向に長い、六角形状であった。
また、得られた13族窒化物結晶303の上面には、c面のGa極性面が形成されていた。また、このc面には、第1種結晶200の長手方向に沿って、くぼみ305が形成されていた(図15、図16参照)。
また、13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶の底面は、c面の窒素極性面(000−1)面であった。この(000−1)面は、下地基板270によって結晶成長が制限されることで、平坦であった(図15、図16参照)。
また、13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶の底面には、第1種結晶200が位置していた。第1種結晶200には、クラックなどは見られなかった。
結晶成長によって得られた13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶のサイズは、底面の長手方向の長さが約59mm、底面の最大幅が12mm、上部の長手方向の長さが約45mm、高さ(底面と上面との最短距離)が約11mmであった。
また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶について、SIMS分析を行った結果、1014〜1015cm−3のナトリウムが検出された。また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。
(実施例4)
本実施例では、実施例1で用いた第1種結晶100に代えて、単層の第1種結晶200を用いて13族窒化物結晶を製造する。また、本実施例では、実施例1で用いた下地基板27に代えて、溝部274Aを備えた下地基板274(図17参照)を用いた(詳細後述)。
―第1工程―
まず、第1種結晶200を準備した。本実施例では、まず、フラックス法で製造したバルクGaN結晶を加工し、主面が(0001)面のGaN基板を作製した。そして、このGaN基板から、短冊状に切り出した結晶を、第1種結晶200として使用した。短冊状の第1種結晶200は、ダイヤモンドペンで、GaN基板の裏面をGaNのa軸(m面)に沿って数回卦がくことで、切り出した。
本実施例で使用したGaN基板は、フラックス法で自発核成長したGaN結晶を種結晶として、結晶成長を行うことで、大型化した、バルク結晶を加工して製造されたものである。
このようにして製造したGaN基板は、HVPE製のGaN自立基板と異なり、異種基板を使用せずに結晶成長させたものである。このため、残留応力や反りが小さく、曲率半径が大きく、c軸やa軸が揃っている。また、主面であるc面の転位密度も、HVPE製の自立基板が106cm−2程度であるのに対し、102cm−2以下と4桁以上小さい。
本実施例では、このような高品質なGaN結晶を、第1種結晶200として用いる。
切出した第1種結晶200は、上述した、単層の第1種結晶200に相当し、全体が同一材質の単結晶である。この切出した第1種結晶200は、長手方向がGaNのa軸に略平行な(すなわち、長手方向がa軸に略一致する)短冊状であった。
この第1種結晶200の長手方向の長さは15mmであり、幅は0.8mm、高さ(主面200Aと対向面200Bとの距離)は0.4mmであった。
次に、図6に示す製造装置1を用いて、第2工程〜第4工程を行った。図19は、第2工程〜第4工程の説明図である。
なお、本実施例における第2工程〜第4工程は、実施例1と略同様である。このため、異なる部分を詳細に説明する。
まず、反応容器12として、内径92mm、純度99.99%のアルミナ製容器を用意した。また、反応容器12の内部の底部に、下地基板274を設置した。本実施例では、下地基板274の材料として、純度99.99%のアルミナを用いた。
下地基板274には、図17及び図18に示すように、溝部274Aが設けられている。溝部274Aは、底面274Dと、底面274Dに連続する2つの壁面(壁面274B、壁面274C)と、からなる(図17、図18参照)。また、これらの2つの壁面274B、壁面274C)における、溝部274Aの深さ方向の少なくとも一部の領域は、底面274Dから遠いほど、互いに離れる方向に向かって、傾斜している。
本実施例では、溝部274Aの壁面274B及び壁面274Cが、溝部274Aの深さ方向に複数の領域に分割され、底面274Dに離れる位置に配置された領域ほど、底面274Dの垂線(図17及び図18中、Z方向参照)に対する傾きが大きい。
詳細には、壁面274Bが、溝部274Aの深さ方向に、底面274D側から開口縁274E側に向かって順に、領域274F、領域274G、の2つの領域に分割されている。また、壁面274Cが、溝部274Aの深さ方向に、底面274D側から開口縁274E側に向かって順に、領域274H、領域274I、の2つの領域に分割されている。
そして、これらの複数の領域(領域274F、領域274G、領域274H、領域274I)の内、底面274Dに連続する領域(領域274F及び領域274H)の、垂線(Z方向参照)に対する傾きが0°であった。また、本実施の形態では、これらの複数の領域(領域274F、領域274G、領域274H、領域274I)の内、開口縁274E側の領域(領域274G及び領域274I)の、垂線(矢印Z方向参照)に対する傾き(図18中、θG、θI参照)が、87°であった。
また、底面274Dに連続する領域である、領域274F、及び領域274Hの各々の高さは、第1種結晶200の厚みと同じ、0.4mmであった。
この反応容器12を内部に備えた耐圧容器11を、実施例1と同様にして、グローブボックスに入れた。
―第2工程―
次に、反応容器12内の底部に設置された、下地基板274に設けられた溝部274A内に、第1種結晶200の主面200Aが溝部274Aの開口側を向くように配置した。なお、第1種結晶200の長手方向と、溝部274Aの第1方向Yと、が一致するように、第1種結晶200を溝部274A内に配置した。
このため、第1種結晶200は、(0001)面である主面200Aを溝部274Aの開口側とし、(000−1)面である対向面200Bを溝部274Aの底面274Dに接するように、溝部274A内に配置された(図18参照)。
―第3工程、第4工程―
本実施例では、原料の仕込み量は、13族金属原料であるガリウム(Ga)を110gと、フラックスであるナトリウム(Na)を77gと、を反応容器12内に投入した。なお、ガリウムとナトリウムのモル比は、0.32:0.68とした。更に、反応容器12内に、カーボンを0.36g添加した。
結晶成長温度、及び窒素ガス分圧等の結晶成長条件は実施例1と同じとした。結晶成長時間についても、実施例1と同じとした。
これにより、第1種結晶200の主面200Aから、13族窒化物結晶403としてのGaN単結晶の結晶成長が開始され(図19(b))、結晶成長が継続された(図19(c)〜図19(e))。これにより、反応容器12内の第1種結晶200の主面200Aから結晶成長が開始され、結晶成長の継続により、混合融液24と接している結晶領域が第1種結晶200の主面200Aからはみ出して結晶成長した。
本実施例では、{10−11}面が主な結晶成長面となり、{10−11}面の面積を拡大させながら、また、c面もわずかに形成しながら結晶成長を継続することが観察された(図19(c)〜図19(e))。
詳細には、第1種結晶200の主面200Aから結晶成長を開始した13族窒化物結晶403では、溝部274Aにおける、底面274Dに連続する2つの壁面(壁面274B、壁面274C)における、最も底面274Dに近い領域(領域274F、領域274H)に到達するまでは、(000−1)面が形成されて成長した。しかし、溝部272Aの壁面272Bに)における、最も底面274Dに近い領域(領域274F、領域274H)に到達した後は、これらの領域(274F、領域274H)によって結晶成長が制限されることが確認できた。そして更に、開口縁274Eに近い側の領域(領域274G、領域274I)に沿って、結晶成長することが確認できた。
このため、13族窒化物結晶403では、(000−1)面の形成が抑制され、[000−1]軸方向への成長も制限されることが確認できた。
そして、300時間の結晶成長を継続した後、ヒーター13の通電を止め、混合融液24の温度を室温まで降温した。
耐圧容器11内のガスの圧力を下げた後、耐圧容器11を開けると、反応容器12内の第1種結晶200上に、13族窒化物結晶403が結晶成長していた(図19(e)参照)。
―13族窒化物結晶の評価―
この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶403としてのGaNは、図20及び図21に示す形状であった。具体的には、この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶403としてのGaN単結晶は、底面がa軸方向に長い(000−1)面であり、底面に連続する2面が{10−11}面であった(図20、図21参照)。
また、得られた13族窒化物結晶403としてのGaN単結晶には、6つの{10−11}面が形成されており、第1種結晶200の長手方向に平行で、且つ、底面に連続する2面が、平坦で且つ面積の大きい{10−11}面であった(図20、図21参照)。
また、得られた13族窒化物結晶403の上面には、c面のGa極性面が形成されていた。また、このc面には、第1種結晶200の長手方向に沿って、くぼみ405が形成されていた(図21参照)。
また、得られた13族窒化物結晶403の底部は、下地基板274の形状に沿った形状であった(図19(e)、図21(b)参照)。
また、13族窒化物結晶403としてのGaN単結晶の底面には、第1種結晶200が位置していた。第1種結晶200には、クラックなどは見られなかった。
結晶成長によって得られた13族窒化物結晶403としてのGaN単結晶のサイズは、底面の長手方向の長さが約29mm、底面の最大幅が11mm、上部の長手方向の長さが約15mm、高さ(底面と上面との最短距離)が約11mmであった。
また、13族窒化物結晶403としてのGaN単結晶について、SIMS分析を行った結果、1014〜1015cm−3のナトリウムが検出された。また、13族窒化物結晶403としてのGaN単結晶には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。