以下に添付図面を参照して、本実施の形態にかかる13族窒化物結晶の製造方法、13族窒化物結晶、13族窒化物結晶基板の製造方法、及び13族窒化物結晶基板について説明する。なお、以下の説明において、図には発明が理解できる程度に構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎず、これにより本発明が特に限定されるものではない。また、複数の図に示される同様の構成要素については同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合がある。
(第1の実施の形態)
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法は、反応容器内に保持された少なくともアルカリ金属及び13族金属を含む混合融液中に、気相から窒素を溶解し、混合融液中において窒化物結晶を結晶成長させる13族窒化物結晶の製造方法である。すなわち、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法は、フラックス法を用いた製造方法である。
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法に用いる反応容器は、該反応容器の内側の底部に、第1方向に長く、且つ該第1方向に直交する直交方向の断面がV字状の溝部を有する。第1方向は、反応容器の内側の底面に沿った方向であればよく、ある一つの方向に限定されない。
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程と、をこの順に少なくとも含む。第1工程は、13族窒化物結晶がc軸配向して結晶成長する結晶面を主面とし、長手方向が成長する13族窒化物結晶のa軸と略平行になる短冊状の第1種結晶を準備する工程である。第2工程は、第1種結晶における主面の対向面が、V字状の溝部を構成する2面の内の1面に接し、且つ、溝部の第1方向と第1種結晶の長手方向とが一致するように、第1種結晶を溝部内に配置する工程である。第3工程は、混合融液中において、溝部内に配置された第1種結晶の主面から13族窒化物結晶の結晶成長を開始させる工程である。第4工程は、主面から結晶成長を開始した13族窒化物結晶の{10−11}面を主成長面として{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長を継続させる工程である。
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法では、上記特有の反応容器を用い、上記第1工程、第2工程、第3工程、及び第4工程をこの順に含むことによって、インクルージョンの抑制された半極性基板または無極性基板の製造に用いる13族窒化物結晶を得ることができると考えられる。
上記効果が奏される理由は明らかとなっていないが、以下のように推測される。しかしながら下記推測によって本発明は限定されない。
本実施の形態では、第1種結晶における主面の対向面が、V字状の溝部を構成する2面の内の1面に接し、且つ、溝部の第1方向と第1種結晶の長手方向とが一致するように、第1種結晶を溝部内に配置する。このため、短冊状の第1種結晶における、主面と対向面との対向方向、及び該第1種結晶の長手方向、の双方に直交する方向に対向する2面の内、溝部の開口側の1面が混合融液に接して{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長する。また、該2面の内の他方の1面は、V字状の溝部の面(壁面)に接しながら成長し、面積を拡大させる。
{10−11}面は平坦な結晶面となりやすい。このため、結晶中にインクルージョンが取り込まれることが抑制されると考えられる。このため、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法では、c面を主な成長面として結晶成長する従来のフラックス法液相エピタキシャル成長で必要とされた攪拌などの手段による融液の精密制御をせずとも、インクルージョンの低減した13族窒化物結晶を製造することができると考えられる。
従って、本実施の形態では、フラックス法を用いて、インクルージョンの抑制された13族窒化物結晶基板の製造に用いる13族窒化物結晶を製造することができると推測される。
また、本実施の形態では、第1種結晶として、長尺な短冊状の結晶を用いる。このため、より大きな13族窒化物結晶を得るための結晶成長に要する時間の短縮を図ることができる。
また、本実施の形態では、基板上に複数の結晶開始領域を形成し、そこから成長した隣接する結晶を合体させて大型化する結晶製造方法とは異なり、ひとつの第1種結晶から結晶成長させることで、13族窒化物結晶を製造する。このため、歪や欠陥の発生が無く、品質の高い13族窒化物結晶を製造することができる。
また、第1種結晶の(10−11)面あるいは(−1011)面が優先的に成長する面(すなわち、主成長面)となるように、第1種結晶をV字状の溝部内に設置して結晶成長させるので、[10−11]方向あるいは[−1101]方向へ成長した結晶領域(セクター)をより大きくすることができる。
また、結晶成長時に、気液界面側に{10−11}面が拡大する場合に比べて、反応容器の径方向に{10−11}面を拡大させることができる。このため、混合融液の深さを浅くすることができる。
また、本実施の形態の製造方法によって得られる13族窒化物結晶は、基板上に複数の結晶開始領域を形成し、そこから成長した隣接する結晶を合体させて大型化させた13族窒化物結晶とは異なり、ひとつの第1種結晶から結晶成長させることで得られた結晶である。このため、インクルージョンが抑制され、歪や欠陥の発生が無く、品質の高い13族窒化物単結晶となる。
また、本実施の形態の製造方法によって得られる13族窒化物結晶は、[10−11]方向あるいは[−1101]方向へ成長した結晶領域(セクター)の大きい結晶となる。
以下、詳細を説明する。
まず、反応容器について説明する。本実施の形態では、反応容器は、内側の底部にV字状の溝部を備える。この溝部は、反応容器の内側の底部に直接形成してもよいし、反応容器の内側の底部に、V字状の溝部を形成した下地基板を設置してもよい。また、任意の形状の治具を組み合わせて、V字状の溝部を構成してもよい。
本実施の形態では、一例として、V字状の溝部を形成した下地基板を反応容器の内側の底部に設置する場合を説明する。
図1は、溝部27Aの形成された下地基板27の一例を示す説明図である。図1(a)に示すように、下地基板27には、第1方向(図1(a)中、Y方向)に長い溝部27Aが形成されている。溝部27Aは、下地基板27にV字状の2つの面(面27B、面27C)を形成することで作製される。
図1(b)に示すように、この溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の内の一面に接するように、第1種結晶100の主面100Aに対向する対向面100Bが接して配置される(詳細後述)。
溝部27Aの深さは、第1種結晶100から結晶成長した13族窒化物結晶の(000−1)面が、溝部27Aの外部に突出しない程度の深さであればよい。このため、溝部27Aの深さは、製造対象の13族窒化物結晶の大きさに応じて、予め調整すればよい。なお、溝部27Aの深さとは、溝部27Aにおける面27Bと面27Cとの交点を重力方向に通る直線における、該交点から溝部27Aの開口までの長さを示す。
溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の成す角度(図1(b)中、θA参照)は限定されないが、小さすぎると、融液に接して成長する{10−11}面の面積が小さくなる。第1種結晶100として窒化ガリウムを用いた場合、(000−1)面(窒素面)と{10−11}面とのなす角度は、おおよそ62°であるので、θAを62°とすると面27Cに接して成長する結晶面を{10−11}面とすることができる。また、{10−11}面を気液界面に対して平行にして結晶成長を行う場合に、θAが118°より大きいと第1種結晶が面27Bから面27Cへずれやすくなる。この理由から、溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の成す角度(図1(b)中、θA参照)は、62°以上118°以下であることが好ましく、90°であることが特に好ましい。
溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の成す角度(図1(b)中、θA参照)が90°であると、溝部27A内に配置される後述する第1種結晶100における、溝部27Aを構成する面(面27B、面27C)に接する対向面の結晶成長が効果的に抑制される。また、第1種結晶100における、溝部27Aの開口側に面した、混合融液(後述)に接する側の{10−11}面の成長は、阻害されることなく効果的に成長する。このため、該角度は90°であることが特に好ましい。
溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の内、第1種結晶100における後述する対向面が接して配置される1面(図1に示す例では、面27B)は、これらの2面の交点を通る鉛直方向に延びる直線Zに対して0°以上90°以下傾いて配置されている(図1(b)中、θB参照)。なお、第1種結晶100の対向面が接して配置される面27Bと直線Zとの成す角度θBは、該範囲であればよいが、0°以上62°以下であることが更に好ましく、28°であることが特に好ましい。
例えば、第1種結晶100として窒化ガリウムを用いた場合、(000−1)面(窒素面)と{10−11}面とのなす角度は、おおよそ62°である。このため、第1種結晶100の対向面100Bが接して配置される面27Bと直線Zとの成す角度θBを28°とすると、この28°傾いた面(例えば面27B)に第1種結晶100の(000−1)面を接して設置することで、{10−11}面が気液界面に対して平行となる。
このような設置条件に第1種結晶100を設置し、結晶成長を行うと、気液界面に平行な{10−11}面は気液界面に平行に面積が拡大する。すなわち、反応容器の径方向に{10−11}面が拡大する。このため、気液界面側に{10−11}面が拡大する場合に比べて、反応容器に貯留させる混合融液の深さを浅くすることができる。
溝部27Aの設けられる下地基板27の材質は、13族窒化物が核発生しにくい材質であればよい。また、溝部27Aを反応容器の内側の底部に直接設ける場合については、反応容器の内側の底部が、該材質であればよい。下地基板27や反応容器の内側の底部の材質は、例えば、BN焼結体、P−BN等の窒化物、アルミナ、YAG等の酸化物、SiC、TaC等の炭化物等を使用する。
溝部27Aは、反応容器内の底部(または底部に配置した下地基板27)に、1つ形成してもよいし、複数形成してもよい。溝部27Aを複数形成する場合、溝部27Aは、溝部27Aの長尺方向である第1方向に交差する方向に配列させることが好ましい。この場合、各溝部27Aの配列方向の間隔は、各溝部27A内で結晶成長させた13族窒化物結晶が結晶成長中に互いに接することの無いように、結晶成長させる13族窒化物結晶の大きさに応じて調整すればよい。
隣接する溝部27A間の間隔を、上記間隔を隔てるように調整することで、隣接して結晶成長した13族窒化物結晶が結晶成長時に接することによる歪や欠陥の発生を抑制できる。
次に、第1工程について説明する。第1工程では、13族窒化物結晶がc軸配向して結晶成長する結晶面を主面とし、長手方向が主面のa軸と略平行な短冊状の第1種結晶100を準備する。
図2は、第1種結晶100の説明図である。図2(a)は、第1種結晶100を主面100A側から見た模式図である。図2(b)は、図2(a)のA−A’断面図である。第1種結晶100は、窒化物結晶がc軸配向して結晶成長する結晶面を主面100Aとしている。
図2に示すように、第1種結晶100は、a軸方向に長い短冊状である。すなわち、第1種結晶100の長手方向は、第1種結晶100の主面100Aから結晶成長する13族窒化物結晶のa軸と平行、あるいは略平行である。言い換えると、第1種結晶100の主面100Aにおける、長手方向に直交する直交方向は、m軸と平行、あるいは略平行である。なお、略平行である、とは、±2°のズレを含むことを示す。
第1種結晶100の長手方向の長さは、特に限定されない。第1種結晶100の長手方向の長さが長いほど、短時間で大きな13族窒化物結晶を製造することができる。このため、目的とする製造時間等に応じて、第1種結晶100の長手方向の長さを予め調整すればよい。
第1種結晶100の主面100Aにおける、上記長手方向に直交する直交方向の長さ(以下、幅と称する)は、適宜調整すればよい。なお、この第1種結晶100の主面100Aにおける幅が大きくなるほど、13族窒化物結晶のc面が形成されやすくなる。このため、第1種結晶100の主面100Aにおける幅が大きくなるほど、c面の成長に原料が使われるため、結晶成長速度が遅くなる。また、c面には、凹凸が形成されやすいことから、インクルージョン(金属ガリウム、金属ナトリウム、それらの化合物等)が入りやすくなる。このため、第1種結晶100の主面100Aの幅は、必要以上に大きくしないことが好ましく、具体的には、以下の範囲とすることが好ましい。
具体的には、第1種結晶100の主面100Aにおける幅は、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることが更に好ましく、1mm以下であることが特に好ましい。この幅の下限値は、第1種結晶100の取り扱いのし易さに応じて適宜調整すればよい。例えば、第1種結晶を固定しない場合には、幅が第1種結晶の厚さよりも短くなると、第1種結晶が倒れやすくなるため、第1種結晶に厚さ以上にすることが好ましい。
第1種結晶100の材質は、窒化物結晶がc軸配向して結晶成長する結晶面を主面100Aとするものであれば、特に限定されない。なお、第1種結晶100における主面100Aは、短冊状の第1種結晶100におけるa軸方向に沿って長い4面の内、面積の広い対向する2面の内の1面であればよい。
第1種結晶100は、上記条件を満たすものであればよく、全体が同一材質の単結晶であってもよいし、主面100Aが上記条件を満たすように積層した積層体であってもよい。
なお、第1種結晶100の主面100Aの表面は、窒化ガリウムの(0001)面であることが特に好ましい。
第1種結晶100の形成方法は、特に限定されず、適宜選択することができる。例えば、異種基板の主面に13族窒化物結晶をエピタキシャル成長させたテンプレート基板を作製する。そして、このテンプレート基板を短冊状に切出すことで、第1種結晶100としてもよい。
なお、図2(b)は、積層体として構成された第1種結晶100の一例を示している。図2(b)に示す例では、第1種結晶100は、異種基板101上に、13族窒化物結晶102を積層させた積層体である。
異種基板101の材質は、特に限定されない。異種基板101には、例えば、13族窒化物が核発生しにくい材質を用いる。具体的には、異種基板101には、サファイア、SiC,ZnO,MgAl2O4等の単結晶基板を用いる。
なお、第1種結晶100には、異種基板101を取り除いた13族窒化物結晶102の自立基板を短冊状に切出し、この切出した結晶を用いることが好ましい。これは、後述する第3工程及び第4工程において、第1種結晶100に結晶成長させる13族窒化物結晶と、第1種結晶100と、の熱膨張係数を考慮したためである。
また、上記テンプレ−ト基板や、13族窒化物結晶102の自立基板上に、Na Flux法でLPEして製造した13族窒化物結晶を短冊状に切り出し、この切出した結晶を第1種結晶100として利用することが好ましい。
更には、後述する第3工程及び第4工程における結晶成長と同じ条件(例えば、アルカリ金属にNaを使用したNa Flux法)で結晶成長させてバルク結晶を作製し、このバルク結晶を短冊状に加工することで、第1種結晶100を製造してもよい。
次に、第2工程を説明する。
図1に戻り、第2工程は、第1種結晶100における主面100Aの対向面100Bが溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の内の1面に接し、且つ、第1方向Yと第1種結晶100の長手方向(a軸方向)とが略一致するように、第1種結晶100を溝部27A内に配置する。なお、2方向が略一致する、とは、±5°のズレを含むことを示す。なお、本実施の形態では、一例として、溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の内、面27Bに対向面100Bが接するように第1種結晶100を配置する場合を説明する。
このように、対向面100B側を面27Bに接触させると共に主面100Aを上側にして第1種結晶100を設置することで、対向面100B側、すなわち(000−1)面である窒素極性面が、溝部27Aの斜面に接する側(面27B側)を向くことになる。(000−1)面は、多結晶化しやすいため、単結晶を成長させるには、(000−1)面側の成長を継続させないことが望まれる。
本実施の形態では、(000−1)面が溝部27Aの斜面側(面27B側)に向くように第1種結晶100を設置するので、第1種結晶100の(000−1)面側の成長が継続されず、多結晶化を抑制することができる。
なお、1つの溝部27A内に、複数の第1種結晶100を設置してもよい。この場合には、1つの溝部27A内に、該溝部27Aの長尺方向である第1方向に沿って間隔を隔てて、複数の第1種結晶100を溝部27A内に設置すればよい。この間隔は、各第1種結晶100から結晶成長した13族窒化物結晶が互いに接することの無いように、予め調整すればよい。
次に、第3工程を説明する。
第3工程は、混合融液中において、溝部27A内に配置された第1種結晶100の主面100Aから13族窒化物結晶の結晶成長を開始させる。
図3は、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造工程の説明図である。また、図3では、一例として、下地基板27における面27Bと面27Cとの成す角度(図3中、θA参照)が90°であり、面27Bと直線Zとの成す角度(図3中、θB参照)が30°である場合を示した。
上記第2工程によって、第1種結晶100は、対向面100Bが溝部27Aの面27Bに接するように配置されている(図3(a)参照)。
図3(b)に示すように、第3の工程では、反応容器内に混合融液24を形成し、気相から窒素を溶解して、混合融液24中において、第1種結晶100の主面100Aから13族窒化物結晶103の結晶成長を開始させる。
混合融液24は、フラックスと、13族金属等の原料と、を含む。
フラックスには、ナトリウム、あるいはナトリウム化合物(例えば、アジ化ナトリウム)を用いるが、その他の例として、リチウムや、カリウム等のその他のアルカリ金属や、当該アルカリ金属の化合物を用いてもよい。また、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属や、当該アルカリ土類金属の化合物をフラックスとして用いてもよい。なお、フラックスとして、複数種類のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を混合して用いてもよい。
原料として用いる13族金属には、ガリウムを用いることが好ましいが、その他の例として、ホウ素、アルミニウム、インジウム等のその他の13族金属や、これらの混合物を用いてもよい。
なお、混合融液24中には、Ge,Mg,Fe,Mn等のドーパント物質(単体あるいはB2O3等の化合物)やCa,Ba,Sr等のフラックスとなるアルカリ土類金属、雑結晶の低減効果を有する炭素等を混合してもよい。
気相中の窒素は、一般的には窒素ガスが使用されるが、アンモニアその他の窒素を含むガスを使用することができる。気相には、窒素を含むガスの他に、Ar等の不活性ガスやその他のガスを混合することもできる。
第3工程では、第1種結晶100の設置された反応容器内に、フラックスと原料としての13族金属が入れられ、圧力容器中で結晶成長温度にまで昇温する。
この昇温過程では、反応容器内に窒素原料ガスが充填されていなくても良いが、第1種結晶100の溶解を極力防止するため、窒素原料ガスを充填して昇温することが望ましい。そして、この昇温過程で、フラックス(例えば、アルカリ金属)と13族金属は溶解し、混合融液24を形成する。
そして、所定の結晶成長温度、所定の窒素原料ガス圧力下で、気相から混合融液24中に溶解する窒素と、混合融液中24の13族金属と、が反応し、第1種結晶100の主面100Aから13族窒化物結晶の結晶成長が開始される。
この結晶成長の開始は、窒素分圧、混合融液の温度、原料とフラックスとのモル比等を、13族窒化物結晶の結晶成長が開始される条件に調整することで、結晶成長が開始される。
具体的には、第2工程では、窒素分圧を1MPa〜6MPaの範囲内とすることが好ましい。また、第2工程では、混合融液の温度(結晶成長温度)は、800℃〜900℃の範囲内とすることが好ましい。
例えば、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率を50%〜90%の範囲内とし、混合融液の結晶成長温度を850℃〜900℃の範囲内とし、窒素分圧を1.5MPa〜6MPaの範囲内とすることが好ましい。
さらに好適な実施形態としては、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率を60%〜75%の範囲内とし、結晶成長温度を860℃〜870℃の範囲とし、窒素分圧を2MPa〜3.5MPaの範囲とすることがより好ましい。
第1種結晶100の主面100Aから成長する13族窒化物結晶103は、c軸配向した単結晶である。
次に、第4工程について説明する。
図3(c)〜図3(f)は、第4工程の説明図である。
第4工程では、第3工程によって、第1種結晶100の主面100Aから結晶成長を介した13族窒化物結晶103の、{10−11}面を主成長面として{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長を継続させる。また、上述したように、第1種結晶100は、溝部27Aの面27Bに、主面100Aに対向する対向面100Bを接するように配置されている。
このため、短冊状の第1種結晶100におけるa軸方向に沿った(長い)4面の内、主面100Aと対向面100B以外の2面(面100C、面100D)の内の、溝部27Aの開口側の一面(面100C)が、混合融液24に接して結晶成長する。そして、この面100Cは、{10−11}面の面積を拡大させながら結晶成長する。一方、第1種結晶100における、該面100Cに対向する面100Dは、溝部27Aを構成する面(面27C)に接しながら成長し、面積を拡大させる(図3(c)〜図3(f)参照)。
図4及び図5は、結晶成長した13族窒化物結晶103を示す模式図である。図4は、結晶成長した13族窒化物結晶103の斜視図を示す模式図である。図5(a)は、結晶成長した13族窒化物結晶103をc面側から見た模式図である。図5(b)は、図5(a)のA−A’断面図である。
結晶成長した13族窒化物結晶103は、第1種結晶100の長手方向に垂直な断面の形状が、第1種結晶100側を底辺とする、三角形状、または台形状である。なお、図3〜図5に示す例では、この断面の形状が、台形状である場合を示した。
台形状とは、上辺と、上辺に平行な底辺と、上辺と底辺とを結ぶ2辺と、からなる形状である。なお、上辺と底辺とを結ぶ2辺の内の少なくとも一方は、複数の辺により構成されていてもよい。この場合、厳密には多角形であるが、本発明では、上辺と底辺が平行であれば台形状と定義する。三角形状とは、各辺が互いに非平行な3辺からなる三角形の形状であればよく、正三角形に限定されない。また、3辺の内の少なくとも1辺が、複数の辺により構成されていてもよい。この場合、厳密には多角形であるが、本発明では、三角形状を構成する複数の辺の内の3辺が、他の辺の2倍以上の長さであれば三角形と定義する。なお、三角形状を構成する辺の内の1辺が、底辺となる。なお、台形状の底辺、及び三角形状の底辺は、何れも、13族窒化物結晶103における、第1種結晶100の主面100Aに接する底面の一部を構成する辺である。
また、13族窒化物結晶103を構成する面の内、第1種結晶100の主面100Aに接する底面に対して非平行で、且つ該底面に対して非直角な面は、平坦な{10−11}面である。言い換えると、13族窒化物結晶103を構成する面の内、結晶成長時に溝部27Aの開口側に面し、該13族窒化物結晶103の底面に連続し、且つ、混合融液24中で結晶成長した最も面積の大きな結晶面が、{10−11}面である。
また、結晶成長した13族窒化物結晶103は、13族窒化物結晶103における、第1種結晶100の長手方向に垂直な断面の形状が、第1種結晶100側を底辺とする台形状である場合には、上辺側の面はc面となる。
すなわち、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法で製造した13族窒化物結晶103は、第1種結晶100側を底部とした場合、底部に対向する結晶上部側に比べて底部側が大きく、混合融液24に接して成長した、該底部に非平行で且つ非直角な面が{10−11}面である。
このような第4工程の結晶成長の条件は、窒素分圧、混合融液の温度、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率等の調整により実現できる。
具体的には、第4工程では、窒素分圧を、混合融液24中の窒素が比較的低い過飽和度となる分圧に調整する。具体的には、2MPa〜3.5MPaの範囲内とすることが好ましい。また、第4工程では、混合融液24の温度(結晶成長温度)は、YAGやアルミナ等の材質の反応容器が融液に溶解したり反応したりして結晶が成長するのに問題となることのない温度に調整する。具体的には、860℃〜870℃の範囲内とすることが好ましい。さらに高温においても安定な材質の反応容器を使用する場合には温度を上げることもできる。
また、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率は、前述の窒素、温度の条件で{10−11}面が形成されやすい、50%〜80%の範囲内、さらに好適には60%〜75%とすることが好ましい。
なお、第3工程を、第4工程と同じ結晶成長条件(温度、分圧、アルカリ金属のモル比等の条件)とすることで、第3工程と第4工程とを同じ条件で継続して進行させることができる。
図6は、本実施の形態における第3工程及び第4工程を実施するための製造装置1の模式図である。
図6に示すように、製造装置1は、ステンレス製の閉じた形状の耐圧容器11を備える。耐圧容器11はバルブ21部分で製造装置1から取り外すことが可能であり、耐圧容器11部分のみをグローブボックスに入れて作業することができる構成となっている。
耐圧容器11内には、反応容器12が設けられている。反応容器12は、混合融液24を保持する。また、反応容器12の内側の底部には、下地基板27が設置されている。下地基板27には、溝部27Aが形成されており、上記第1工程及び第2工程によって、第1種結晶100が設置されている。
反応容器12の材質は適宜選択できる。例えば、反応容器12には、BN焼結体、P−BN等の窒化物、アルミナ、YAG等の酸化物、SiC等の炭化物等を使用することができる。また、反応容器12は、耐圧容器11から取り外すことができる。
また、耐圧容器11には、13族窒化物結晶の原料である窒素(N2)ガスおよび全圧調整用の希釈ガスを供給するガス供給管14が接続されている。ガス供給管14は窒素供給管17とガス供給管20に分岐しており、それぞれバルブ15、18で分離することが可能となっている。
希釈ガスとしては、不活性ガスのアルゴン(Ar)ガスを用いることが望ましいが、これに限定されず、その他のヘリウム(He)等の不活性ガスを希釈ガスとして用いてもよい。
窒素ガスは、窒素ガスのガスボンベ等と接続された窒素供給管17から供給されて、圧力制御装置16で圧力を調整された後、バルブ15を介してガス供給管14に供給される。一方、希釈ガス(例えば、アルゴンガス)は、希釈ガスのガスボンベ等と接続されたガス供給管20から供給されて、圧力制御装置19で圧力を調整された後、バルブ18を介してガス供給管14に供給される。このようにして圧力を調整された窒素ガスと希釈ガスは、ガス供給管14にそれぞれ供給されて混合される。
そして、窒素および希釈ガスの混合ガスは、ガス供給管14からバルブ21を経て耐圧容器11に供給される。
また、ガス供給管14には、圧力計22が設けられており、圧力計22によって耐圧容器11内の全圧をモニターしながら耐圧容器11内の圧力を調整できるようになっている。
なお、窒素ガスは窒化ガリウムの原料であり、これに不活性ガスであるアルゴンを混合するのは、全圧を高くしナトリウムの蒸発を抑制しつつ、窒素ガスの圧力を独立して制御するためである。これにより、制御性の高い結晶成長が可能となる。
本実施の形態では、このように窒素ガスおよび希釈ガスの圧力をバルブ15、18と圧力制御装置16、19とによって調整することにより、窒素分圧を調整することができる。また、耐圧容器11の全圧を調整できるので、耐圧容器11内の全圧を高くして、反応容器12内のアルカリ金属(例えばナトリウム)の蒸発を抑制することができる。即ち、窒化ガリウムの結晶成長条件に影響を与える窒素原料となる窒素分圧と、ナトリウム(フラックス)の蒸発抑制に影響を与える全圧を、別々に制御する事が可能となっている。
また、耐圧容器11の外側にはヒーター13が配置されており、耐圧容器11および反応容器12を加熱して、混合融液24の温度を調整することができる。
第3工程及び第4工程を実施する場合には、まず、反応容器12に、フラックスとして用いられる物質と、原料とを投入する。そして、原料等をセッティングした後に、ヒーター13に通電して、耐圧容器11およびその内部の反応容器12を結晶成長温度まで加熱する。すると、反応容器12内においてフラックスとして用いられる物質と、原料等が溶融し、混合融液24が形成される。また、この混合融液24に上記分圧の窒素を接触させて混合融液24中に溶解させることにより、原料である窒素を混合融液24中に供給することができる。
そして、所定の結晶成長温度、所定の窒素分圧下で、気相から混合融液24中に溶解する窒素と、混合融液24中の13族金属と、が反応して、混合融液24内に設置された第1種結晶100の主面100Aから13族窒化物結晶の結晶成長が開始される(第3工程)。
そして、更に、第4工程の結晶成長条件に維持することで、結晶成長を開始した13族窒化物結晶103が、{10−11}面を主成長面とした結晶成長を継続する。
上記第1工程〜第4工程を経ることによって、13族窒化物結晶103が製造される。
そして、第4工程によって結晶成長した13族窒化物結晶103を、室温まで冷却する。その後、下地基板27または反応容器12から、13族窒化物結晶103を分離する。
なお、13族窒化物結晶103の冷却過程で、反応容器12または下地基板27と、13族窒化物結晶103と、の熱膨張係数差により、第1種結晶100の主面100Aあるいはその近傍の結晶が破断して、反応容器12または下地基板27と、13族窒化物結晶103と、がすでに分離している場合もある。
上記工程によって、13族窒化物結晶103を製造することができる。
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、上記実施の形態で用いた第1種結晶100に代えて、第2種結晶を用いて、13族窒化物結晶を製造する場合を説明する。
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法で用いる反応容器は、第1の実施の形態と同様に、内側の底部にV字状の溝部を有する。なお、この反応容器及びV字状の溝部は、第1の実施の形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法は、第5工程と、第6工程と、第7工程と、をこの順に少なくとも含む。第5工程は、第2種結晶を準備する工程である。第2種結晶は、13族窒化物結晶であって、前記13族窒化物結晶の3方向のa軸のうちの1つのa軸方向に長く、且つ該a軸方向に直交する断面を構成する3辺の各々に連続する3面の内、底面が該a軸方向に長い(000−1)面であり、該底面に連続する2面の少なくとも一方が(10−11)面または(−1011)面である。
すなわち、13族窒化物結晶303における{10−11}面の内、結晶成長時に溝部27Aの開口側に面し、該13族窒化物結晶303の底面に連続し、且つ、混合融液24中で結晶成長した最も面積の大きな結晶面は、(−1011)面または(−1011)面である。
第6工程は、混合融液中において、第2種結晶における底面が溝部を構成する2面の内の1面に接し、且つ、第2種結晶の底面のa軸方向と、溝部の第1方向と、が一致するように、第2種結晶を溝部内に配置する工程である。第7工程は、第2種結晶の(10−11)面または(−1011)面から窒化物結晶の結晶成長を開始させ、結晶成長を開始した13族窒化物結晶の(10−11)面または(−1011)面を拡大させながらの結晶成長を継続させる工程である。
以下、各工程について、詳細に説明する。
第5工程は、第2種結晶を準備する工程である。図7は、第2種結晶300の説明図である。図7(a)は、第2種結晶300をc軸方向側から見た平面図であり、図7(b)は、図7(a)のA−A’断面図である。
図7に示すように、第2種結晶300は、13族窒化物結晶であって、13族窒化物結晶の3方向のa軸のうちの1つのa軸方向に長く、且つ該a軸方向に直交する直交方向の断面が三角形状である。第2種結晶300は、この三角形状の断面を構成する3辺の各々に該a軸方向に連続する3面の内、底面が該a軸方向に長い(000−1)面であり、該底面にa軸方向に連続する他の2面の少なくとも一方が、(10−11)面または(−1011)面である。
詳細には、図7に示すように、第2種結晶300は、上記断面が三角形状であり、底面が六角形状である。また、第2種結晶300は、一つのa軸(例えば、<11−20>)方向に伸びた、長尺状の単結晶である。第2種結晶300の底面は、(000−1)面である。また、図7に示す例では、該底面に対して、m軸方向に連続する2面の一方が(10−11)面であり、他方が(−1011)面である場合を示した。
第2種結晶300の製造方法は、特に限定されず、第1種結晶100と同様の製造方法で製造してもよい。第2種結晶300の長手方向の長さは、特に限定されない。第2種結晶300の長手方向の長さが長いほど、短時間で大きな13族窒化物結晶を製造することができる。このため、目的とする製造時間等に応じて、第2種結晶300の長手方向の長さを予め調整すればよい。
次に、第6工程〜第7工程について説明する。
図8は、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造工程の説明図である。
図8(a)に示すように、第6工程では、混合融液24中において、第2種結晶300における底面としての(000−1)面が、溝部27Aを構成する2面(面27B、面27C)の内の1面に接し、且つ、第2種結晶300の長尺方向であるa軸方向と、溝部27Aの長尺方向である第1方向と、が一致するように、第2種結晶300を溝部27A内に配置する。図8(a)には、第2種結晶300の(000−1)面を、溝部27Aの面27Bに接するように配置した例を示した。
これにより、第2種結晶300における、(10−11)面及び(−1011)面の何れか一方の面が、溝部27Aの開口側で混合融液24に接した状態となる。図8(a)に示す例では、第2種結晶300における(−1011)面が、溝部27Aの開口側で混合融液24に接する状態となるように、第2種結晶300を配置した例を示した。
なお、1つの溝部27A内に、複数の第1種結晶300を設置してもよい。この場合には、1つの溝部27A内に、該溝部27Aの第1方向に間隔を隔てて、複数の第2種結晶300を溝部27A内に設置すればよい。この間隔は、各第2種結晶300から結晶成長した13族窒化物結晶が互いに接することの無いように、予め調整すればよい。
次に、第7工程について説明する。第7工程では、第2種結晶300の(10−11)面及び(−1011)面の内、混合融液24に接している面(すなわち、溝部27Aの開口側の面)から13族窒化物結晶の結晶成長を開始させ、結晶成長を開始した13族窒化物結晶の(10−11)面または(−1011)面を拡大させながらの結晶成長を継続させる。
第7工程では、第2種結晶300の設置された反応容器内に、上記第3工程(第1の実施の形態)と同様に、フラックスと原料としての13族金属が入れられ、圧力容器中で結晶成長温度にまで昇温する。この昇温過程で、フラックス(例えば、アルカリ金属)と13族金属は溶解し、混合融液24を形成する。
そして、所定の結晶成長温度、所定の窒素原料ガス圧力下で、気相から混合融液24中に溶解する窒素と、混合融液中24の13族金属と、が反応し、第2種結晶300における混合融液24に接する側の面(図8では、(−1011)面)で、13族窒化物結晶の結晶成長が開始される。そして、この面((図8では、(−1011)面)の面積を拡大させながら結晶成長させる(図8(a)〜図8(f)参照)。
一方、混合融液24に接しない側の面(図8では、10−11)面)は、溝部27Aの面27Cに接しながら成長し面積を拡大する(図8(a)〜図8(f)参照)。
図9及び図10は、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法によって製造された13族窒化物結晶303の一例を示す図である。図9は、13族窒化物結晶303の斜視図である。図10(a)は、13族窒化物結晶303をc軸方向から見た平面図である。図19(b)は、図10(a)のA−A’断面図である。
図9及び図10に示すように、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法によって製造された13族窒化物結晶303は、第2種結晶300の長手方向であるa軸方向に垂直な断面の形状が、第2種結晶300側(すなわち、(000−1)面側)を底辺とする、三角形状、または台形状である。なお、図8〜図10に示す例では、この断面の形状が、三角形状である場合を示した。
台形状及び三角形状の定義は、第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態では、台形状の底辺、及び三角形状の底辺は、何れも、13族窒化物結晶303における、第2種結晶300に接する底面の一部を構成する辺である。
また、13族窒化物結晶303を構成する面の内、混合融液24側に接して成長した面が平坦な{10−11}面である。
また、結晶成長した13族窒化物結晶303は、13族窒化物結晶303における、第2種結晶300の長手方向であるa軸方向に垂直な断面の形状が、第2種結晶300側を底辺とする台形状である場合には、上辺側の面はc面となる。また、13族窒化物結晶303の底面の端部には、第2種結晶300が位置している。
すなわち、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法で製造した13族窒化物結晶303は、第2種結晶300側を底部とした場合、底部に対向する結晶上部側に比べて底部側が大きく、混合融液24に接して成長した、該底部に非平行な面が{10−11}面である。
第7工程では、窒素分圧、混合融液の温度、原料とフラックスとのモル比等を、13族窒化物結晶の結晶成長が開始される条件に調整することで、上記結晶成長が開始される。
具体的には、第7工程では、窒素分圧を混合融液24中の窒素が比較的低い過飽和度となる分圧に調整する。具体的には、第7工程では、窒素分圧を、2MPa〜3.5MPaの範囲内とすることが好ましい。また、第7工程では、混合融液24の温度(結晶成長温度)は、YAGやアルミナ等の材質の反応容器が融液に溶解したり反応したりして結晶が成長するのに問題となることのない温度に調整する。具体的には、第7工程では、混合融液24の温度を、860℃〜870℃の範囲内とすることが好ましい。さらに高温においても安定な材質の反応容器を使用する場合には温度を上げることもできる。
また、第7工程では、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率は、前述の窒素、温度の条件で{10−11}面が形成されやすい、50%〜80%の範囲内、さらに好適には60%〜75%とすることが好ましい。
本実施の形態における第6工程及び第7工程は、第1の実施の形態で説明した製造装置1を用いて実施すればよい。
但し、第1種結晶100に代えて第2種結晶300を用いると共に、結晶成長条件を、本実施の形態の結晶成長条件となるように調整すればよい。
そして、上記工程を得ることによって、結晶成長した13族窒化物結晶303が製造される。この結晶成長した13族窒化物結晶303を、室温まで冷却した後に、下地基板27または反応容器12から分離する。これによって、本実施の形態の13族窒化物結晶303を製造することができる。
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、上記実施の形態で製造された13族窒化物結晶から、13族窒化物結晶基板を製造する方法について説明する。
本実施の形態の製造方法は、上記実施の形態で製造された13族窒化物結晶を、c面、無極性面、または半極性面を主面とするように加工する加工工程を含む。
無極性面とは、六方晶の結晶構造の13族窒化物結晶において、結晶面内で13族原子と窒素原子の数が同数で電荷に偏りがなく結晶軸方向に極性を持たない結晶面である。具体的には、無極性面は、六方晶の結晶のm面やa面等である。
半極性面とは、結晶面が13族原子だけ、あるいは窒素原子だけで構成される極性面であるc面と無極性面を除いた結晶面である。半極性面は、13族原子と窒素原子の数が等しくないため、電荷のバランスが崩れており極性を有するが、その度合いがc面極性面と無極性面の間であるため半極性と定義されている。具体的には、六方晶の結晶の{10−11}面や{20−21}面や{11−22}面や{−1103}面等がある(その他、c面と無極性面以外の結晶面はいずれも半極性面である)。
加工工程で用いる加工方法は、公知の方法を用いればよく、限定されない。
例えば、加工工程では、13族窒化物結晶における{10−11}面に対して、該13族窒化物結晶を平行にスライスする。次に、スライスした後の13族窒化物結晶である13族窒化物結晶基板の各々の表面を研磨した後に、CMP処理(Chemical Mechanical Polishing)を施す。これにより、半極性面である{10−11}面を主面とする13族窒化物結晶基板が得られる。
13族窒化物結晶基板は、主成長面が{10−11}面である13族窒化物結晶203を加工することによって得られた基板であるので、この13族窒化物結晶基板には、{10−11}面に平行な成長縞が形成されている。
この成長縞は結晶成長中の成長速度の揺らぎ等に起因して形成される。ここで、結晶成長速度の揺らぎは、不純物の取り込みの揺らぎを生じさせるため、成長縞は、蛍光顕微鏡で観察することにより、発光強度や発光色の違いとして観察される。
また、13族窒化物結晶が成長した混合融液にはアルカリ金属が含まれているので、本発明の13族窒化物基板の結晶中には不純物としてアルカリ金属が微量ながら含まれている。アルカリ金属にナトリウムを使用して結晶成長したGaN結晶中には、SIMS分析で、1014〜1015cm−3台のナトリウムが検出される。また、本実施の形態の13族窒化物結晶基板は、主成長面が{10−11}面である13族窒化物結晶を加工することによって得られた基板であるので、金属ナトリウムや金属ガリウム、これらの混合物がそのままのかたちで結晶内に取り込まれるインクルージョンが抑制されている。
図11は、13族窒化物結晶基板の製造方法の一例を示す説明図である。図11に示す例では、第1の実施の形態で作製した13族窒化物結晶103の加工方法を示した。
なお、図11には、一例として、結晶成長時に溝部27Aの開口側に面し、混合融液24中で結晶成長した最も面積の大きな結晶面が(−1011)面である13族窒化物結晶103を示した。図11に示す13族窒化物結晶103は、第1種結晶100から6面の{10−11}面が成長面として成長した6つの領域(セクター)と、(0001)面が成長面として成長した領域(セクター)と、からなる単結晶になっている。詳細には、図11中、符号103Aは、(−1011)面が成長面として成長したセクターを示し、符号103Bは、(0001)面が成長面として成長したセクターを示し、符号103Cは、(10−11)面が成長面として成長したセクターを示す。
なお、(10−11)面あるいは(−1011)面は、ガリウム原子に対して窒素原子の数が多い窒素極性面であり、(10−1−1)面あるいは(−101−1)面は、窒素原子に対してガリウム原子の数が多いガリウム極性面である。
まず、上記実施の形態で製造した13族窒化物結晶103の長手方向両端部と、第1種結晶100側に付着している微結晶104と、を切断し、該長手方向に長い柱状に切断する。次に、この端部の切断後の13族窒化物結晶103を、(0001)面に平行にスライスする(図11(a)参照)。
ここで、上述したように、上記実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法で製造した13族窒化物結晶103は、第1種結晶100側を底部とした場合、底部に対向する結晶上部側に比べて底部側が大きく、混合融液24に接して成長した、該底部に非平行で且つ非直角な面が{10−11}面である。このため、13族窒化物結晶103の上記スライスによって得られた複数の板状の結晶のサイズは様々な大きさとなる(図11(b)、(c)参照)。
次に、スライスした13族窒化物結晶103である、サイズの異なる板状の結晶(例えば、結晶110、結晶111)を、さらに所望の大きさに成型加工した後に、得られた結晶120の表面を研磨する(図11(d)参照)。そしてさらに、CMP処理を施す(図11(d)参照)。
これにより、(0001)面、または(000−1)面を主面とする13族窒化物結晶基板130、140が得られる(図11(e)参照)。
得られた13族窒化物結晶基板130、140は、c面あるいは無極性面あるいは半極性面を主面とし、主面が複数のセクターからなり、結晶内部に{10−11}面に平行な成長縞が形成されている13族窒化物単結晶基板である。セクターとは、略同じ方向に結晶成長した領域を意味する。
13族窒化物結晶基板130、140は、少なくとも[10−11]方向あるいは[−1101]方向へ成長した結晶領域が存在し、その他、[1−101]方向、[01−11]方向、[−1011]方向、[0−111]方向、[0001]方向へ成長した領域が存在する場合もある。
また、得られた13族窒化物結晶基板130、140は、主成長面が{10−11}面である13族窒化物結晶103を加工することによって得られた基板であるので、この13族窒化物結晶基板130、140の内部(断面)には、{10−11}面に平行な成長縞が観察される。
成長縞が観察された領域は、(−1011)面が成長したセクターであり、成長縞が観察されない領域は(0001)面が成長したセクターである。
この成長縞は、上記と同様にして観察することができる。また、13族窒化物結晶基板130、140は、主成長面が{10−11}面である13族窒化物結晶103を加工することによって得られた基板であるので、インクルージョンの取り込みが抑制されている。
図12は、第1の実施の形態の製造方法で製造した13族窒化物結晶を、無極性面を主面とするよう加工する場合を示す説明図である。
なお、第1の実施の形態では、一例として、第1種結晶100の長手方向に垂直な断面の形状が、第1種結晶100側を底辺とする台形状である場合を例示して説明した(図3〜図5参照)。一方、図12では、第1の実施の形態の製造方法で製造した13族窒化物結晶として、三角形状の13族窒化物結晶203を加工する場合を示した。
図12に示す13族窒化物結晶203は、第1種結晶200から6面の{10−11}面が成長面として成長した6つの領域(セクター)からなる単結晶になっている。なお、第1種結晶200は、第1種結晶100として、全体が同一材質の単結晶を用いたものである。なお、図12には、一例として、結晶成長時に溝部27Aの開口側に面し、混合融液24中で結晶成長した最も面積の大きな結晶面が、(−1011)面である13族窒化物結晶203を示した。
まず、13族窒化物結晶203の長手方向両端部と、第1種結晶200側に付着している微結晶204と、を切断し、該長手方向に長い柱状に切断する。次に、この端部の切断後の13族窒化物結晶203を、{20−21}面に平行にスライスする(図12(a)参照)。
ここで、上述したように、上記実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法で製造した13族窒化物結晶は、第1種結晶200側を底部とした場合、底部に対向する結晶上部側に比べて底部側が大きい。また、混合融液24に接して成長した、該底部に非平行で且つ非直角な面が{10−11}面である。このため、13族窒化物結晶203の上記スライスによって得られた複数の板状の結晶のサイズは、様々な大きさとなる(図12(b)、(c)参照)。
次に、スライスした13族窒化物結晶203である、サイズの異なる板状の結晶(例えば、結晶210、結晶211)を、さらに所望の大きさに成型加工した後に、得られた結晶220の表面を研磨する(図12(d)参照)。そしてさらに、CMP処理を施す(図12(d)参照)。
これにより、{20−21}面を主面とする13族窒化物結晶基板230が得られる(図12(e)参照)。
得られた13族窒化物結晶基板230は、主成長面が(−1011)面である13族窒化物結晶203を加工することによって得られた基板である。このため、この13族窒化物結晶基板230の内部(断面)には、(−1011)面または(10−11)面に平行な成長縞が観察される。すなわち、13族窒化物結晶基板230の主面は、(−1011)面が結晶成長面として結晶成長した単一のセクターからなる。
この成長縞は、上記と同様にして観察することができる。また、13族窒化物結晶基板230は、主成長面が{10−11}面である13族窒化物結晶203を加工することによって得られた基板であるので、インクルージョンの取り込みが抑制されている。
図13は、上記13族窒化物結晶203を、{10−10}面を主面とするよう加工する場合を示す説明図である。
まず、13族窒化物結晶203の長手方向両端部と、第1種結晶200側に付着している微結晶204と、を切断し、該長手方向に長い柱状に切断する。次に、この端部の切断後の13族窒化物結晶203を、{10−10}面に平行にスライスする(図13(a)参照)。
次に、スライスした13族窒化物結晶203である、サイズの異なる板状の結晶(例えば、結晶250、結晶251)(図13(b)、(c)参照)を、さらに所望の大きさに成型加工した後に、得られた結晶260の表面を研磨する(図13(d)参照)。そしてさらに、CMP処理を施す(図13(d)参照)。
これにより、{10−10}面を主面とする13族窒化物結晶基板270が得られる(図13(e)参照)。
得られた13族窒化物結晶基板270は、主成長面が(−1011)面である13族窒化物結晶203を加工することによって得られた基板であるので、この13族窒化物結晶基板270の内部(断面)には、(−1011)面に平行な成長縞が観察される。
この成長縞は、上記と同様にして観察することができる。また、13族窒化物結晶基板270は、主成長面が{10−11}面である13族窒化物結晶203を加工することによって得られた基板であるので、インクルージョンの取り込みが抑制されている。
また、成長縞が観察された領域は、(−1011)面が成長したセクターである。すなわち、13族窒化物結晶基板270の主面は、(−1011)面が成長面として成長した単一のセクターからなっている。
ここで、セクターは、ほぼ同じ方向に結晶成長した領域を意味する。なお、隣接するセクター同士の境界面は、セクターバウンダリーと呼ばれる。このようなセクターにおいては、それぞれのセクター同士の光学特性が異なる場合がある。また、セクターバウンダリーにおいても、反射率、吸収率、透過率、屈折率等の光学特性が他の結晶部分と異なることとなる。
一方、本13族窒化物結晶基板270の主面は、(−1011)面が成長面として成長した単一のセクターからなっている。このため、本実施の形態では、13族窒化物結晶基板270の主面における、セクターを抑制することができる。
図14は、第2の実施の形態で製造した13族窒化物結晶303を、半極性面として、(−1011)面、または(−101−1)面を主面とするように加工する場合を示す説明図である。
なお、図14には、一例として、結晶成長時に溝部27Aの開口側に面し、混合融液24中で結晶成長した最も面積の大きな結晶面が(−1011)面である13族窒化物結晶303を示した。図14に示す13族窒化物結晶303は、第2種結晶300から3面の{10−11}面が成長面として成長した3つの領域(セクター)からなる単結晶になっている。
まず、図14(a)に示すように、13族窒化物結晶303の長手方向両端部を切断し、該長手方向に長い柱状に切断する。次に、この端部切断後の13族窒化物結晶303を、(−1011)面に平行にスライスする(図14(a)参照)。
次に、スライスした13族窒化物結晶303である、サイズの異なる板状の結晶(例えば、結晶310、結晶311)(図14(b)、(c)参照)を、さらに所望の大きさに成型加工した後に、得られた結晶320の(−1011)面または(−101−1)面を研磨する(図14(d)参照)。そしてさらに、CMP処理を施す(図14(d)参照)。
これにより、(−1011)面を主面とする13族窒化物結晶基板330、または(−101−1)面を主面とする13族窒化物結晶基板340が得られる(図14(e)参照)。
得られた13族窒化物結晶基板330、340は、主成長面が(−1011)面である13族窒化物結晶303を加工することによって得られた基板である。このため、この13族窒化物結晶基板330、340の内部(断面)には、{10−11}面に平行な成長縞が観察される。この成長縞は、上記と同様にして観察することができる。なお、この13族窒化物結晶基板330、340の主面には、成長縞が観察されない。また、13族窒化物結晶基板330、340の主面は、(−1011)面を成長面として結晶成長した単一セクターからなる。
また、13族窒化物結晶基板330、340は、主成長面が{10−11}面である13族窒化物結晶303を加工することによって得られた基板であるので、インクルージョンの取り込みが抑制されている。
以上説明したように、本実施の形態では、上記実施の形態で製造された13族窒化物結晶103、203、303から、13族窒化物結晶基板130、140、230、270、330、340を製造する。
従って、インクルージョンの低減された13族窒化物結晶基板130、140、230、270、330、340を製造することができる。
また、製造した13族窒化物結晶基板130、140、230、270、330、340は、c面、無極性面、あるいは半極性面を主面とし、基板内部に、{10−11}面に平行な成長縞が形成されている基板である。
このため、これらの13族窒化物結晶基板130、140、230、270、330、340は、上記第1の実施の形態1〜第2の実施の形態で製造した13族窒化物結晶103、203、303を用いて製造した基板を加工したものであるといえる。従って、これらの13族窒化物結晶基板130、140、230、270、330、340は、インクルージョンの低減された13族窒化物基板であるといえる。
また、これらの13族窒化物結晶基板130、140、230、270、330、340は、主面が、c面、無極性面、あるいは半極性面であるので、これらの基板を用いてInGaN活性層を有する発光デバイスを製造することで、高いIn組成のInGaN活性層の発光効率低下やブルーシフトを抑制することができる。その結果、緑色波長領域で発振する半導体レーザーや、高出力のLEDを製造することができる。
また、これらの13族窒化物結晶基板130、140、230、270、330、340の内、主面が単一のセクターからなり、結晶内部に(10−11)面あるいは(−1011)面に平行な成長縞が形成されている基板は、複数のセクターが結合するセクター境界が無く、成長方向の違いによる不純物濃度の違いや、発光特性の違いが無い均一な主面を有する基板である。
また、これらの13族窒化物結晶基板130、140、230、270、330、340の内、主面が半極性である(10−11)面、(−1011)面、(10−1−1)面、または(−101−1)面である基板は、この基板を用いてInGaN活性層を有する発光デバイスを製造することで、高いIn組成のInGaN活性層の発光効率低下やブルーシフトを抑制することができる。その結果、緑色波長領域で発振する半導体レーザーや、高出力のLEDを製造することができる。
以下に本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、符号は、上記に図を参照して説明した各構成に対応している。
(実施例1)
本実施例では、図3に示す工程に沿って、製造装置1(図6参照)を用いて結晶成長を行い、13族窒化物結晶103を製造した。なお、本実施例では、アルカリ金属としてナトリウムを用い、13族金属としてガリウムを用いて、13族窒化物結晶103としてGaN(窒化ガリウム)を製造した。
―第1工程―
まず、第1種結晶100を準備した。本実施例では、第1種結晶100として、異種基板101としてのサファイア基板上に、13族窒化物結晶103として、MOCVDによりGaNをエピタキシャル成長させた。これにより、φ2インチのテンプレート基板を作製し、短冊状に切り出すことによって、第1種結晶100を作製した。
なお、切出し時には、第1種結晶100の長手方向が、13族窒化物結晶103であるGaNのa軸に略平行になるように切り出した。詳細には、ダイシング装置を用いて、異種基板101としてのサファイア基板のm軸に沿って、該基板の裏面側から該基板の途中まで切り込みを入れて溝を何本か形成した後、圧力をかけて分割した。このようにして、長手方向がサファイア基板のm軸に沿った、すなわち、長手方向が13族窒化物結晶102としてのGaNのa軸に略平行な、短冊状の第1種結晶100を作製した。
作製した第1種結晶100の主面100A(GaN側の面)における、長手方向の長さは45mm、該主面100Aにおける幅(短手方向の長さ)は1mmであった。
次に、図6に示す製造装置1を用いて、第2工程〜第4工程を行った。
まず、反応容器12として、YAGを材質とする容器を用意した。そして、反応容器12の内部の底部に、V字状の溝部27Aの設けられた下地基板27を設置した。本実施例では、下地基板27の材質として、アルミナを用いた。溝部27Aにおける2面(図3中、面27B、面27C参照)の成す角度(図3中、θA参照)は、90°であった。また、これらの2面の内の1面(図3中、面27B)は、これらの2面の交点を通る鉛直方向に延びる直線Zに対して30°傾くように形成した(図3中、θB参照)。また、溝部27Aの深さは、15mmであった。
この反応容器12を内部に備えた耐圧容器11を、バルブ21部分で製造装置1から分離し、酸素1ppm以下、露点−80℃以下の高純度のAr雰囲気のグローブボックスに入れた。
―第2工程―
次に、YAGからなる内径92mmの反応容器12内の底部に設置された、V溝の形成された下地基板27に、第1工程で準備した第1種結晶100を設置した(図3(a))。第1種結晶100は、主面100A側(GaN側)を上にし、対向面100B側(サファイア基板側)を下地基板27の面27Bに接して、溝部27A内に配置した。また、このとき、第1種結晶100を、第1種結晶100の長手方向を、溝部27Aの長尺方向である第1方向と一致させ、溝部27Aの底部(面27Bと面27Cとの接線)の方に設置した。
―第3工程―
次に、13族金属原料であるガリウム(Ga)を90gと、フラックスであるナトリウム(Na)を88gと、を反応容器12内に投入した。なお、ガリウムとナトリウムのモル比は、0.25:0.75とした。更に、反応容器12内に、カーボンを0.37g添加した。なお、ナトリウムは溶解させて液体状態とした後に反応容器12内に入れ、固化させた後にガリウムとカーボンを入れた。
次に、反応容器12に蓋25をした後に、耐圧容器11内に設置した。
次に、耐圧容器11を密閉し、バルブ21を閉じ、反応容器内部を外部雰囲気と遮断した。なお、製造装置1におけるこれらの一連の作業は、高純度のArガス雰囲気のグローブボックス内で行った。このため、耐圧容器11内部には、Arガスが充填された状態であった。
次に、耐圧容器11をグローブボックスから出し、製造装置1に組み込んだ。詳細には、耐圧容器11を、ヒーター13のある所定の位置に設置し、バルブ21部分で窒素とアルゴンのガス供給管14に接続した。次に、バルブ21とバルブ18を開け、ガス供給管20からArガスを入れ、耐圧容器11の内部空間23をArガスで満たした。このとき、反応容器12と蓋25の隙間からガスが入るため、反応容器12内の内部空間28もArガスで満たされた。次に、圧力制御装置19で圧力を調整して、耐圧容器11内の全圧を2.5MPaにしてバルブ18を閉じた。
次に、窒素供給管17から窒素ガスを入れ、圧力制御装置16で圧力を調整してバルブ15を開け、耐圧容器11内の全圧を4MPaにした。すなわち、耐圧容器11の内部空間23の窒素の分圧は、1.5MPaであった。その後、バルブ15を閉じ、圧力制御装置16を8MPaに設定した。
次に、ヒーター13に通電し、反応容器12を結晶成長温度にまで昇温させた。結晶成長温度は、870℃とした。結晶成長温度では、反応容器12内のガリウムとナトリウムは融解し、混合融液24を形成した。なお、混合融液24の温度は、反応容器12の温度と同温になる。また、この温度まで昇温すると、本実施例の製造装置1では、耐圧容器11内の気体が熱せられ全圧は、8MPaであった。すなわち、窒素分圧は3MPaであった。
次に、バルブ15を開け、窒素ガス圧力を8MPaかけた。これは、窒素が窒化ガリウムの結晶成長で消費されても、耐圧容器11内の窒素分圧を3MPaに維持するためである。
このようにして、窒素を混合融液24中に溶解させ、第1種結晶100の主面100AのGaNから、13族窒化物結晶103としてのGaNの結晶成長を開始させた(図3(b))。
―第4工程―
次に、反応容器12内の温度を870℃、窒素ガス分圧を3MPaに保持して、300時間結晶成長を継続した。13族窒化物結晶103であるGaN単結晶は、第1種結晶100の主面100Aから結晶成長を開始し、結晶成長を継続させると、混合融液24と接している結晶領域が第1種結晶100の主面100Aからはみ出して結晶成長した。
本実施例では、{10−11}面が主な結晶成長面となり、{10−11}面の面積を拡大させながら、また、c面もわずかに形成しながら結晶成長を継続することが観察された(図3(c)〜図3(e))。そして、300時間の結晶成長を継続した後、ヒーター13の通電を止め、混合融液24の温度を室温まで降温した。
耐圧容器11内のガスの圧力を下げた後、耐圧容器11を開けると、反応容器12内の第1種結晶100上に、13族窒化物結晶103として、GaN単結晶が溝部27Aの上部(開口側)からはみ出すことなく、溝部27Aの内部で結晶成長していた(図3(f)参照)。
―13族窒化物結晶の評価―
この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶103としてのGaNは、図4及び図5に示す形状であった。具体的には、この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶は、13族窒化物結晶103における対向面100B側(第1種結晶100側)を底面とした場合、底面と、底面に平行な上面と、を有する形状であった(図4参照)。この底面は、第1種結晶100の長手方向に長い平行な2辺を有する台形状であった。また、13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶の上面には、c面のGa極性面が形成されていた(図4参照)。
また、13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶における、第1種結晶100の長手方向に垂直な断面の形状は、第1種結晶100側を底辺とする台形状であった(図5(b)参照)。また、13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶を構成する面(外側の面)の内、結晶成長時に溝部27Aの開口側に面し、該13族窒化物結晶103の底面に連続し、且つ、混合融液24中で結晶成長した最も面積の大きな結晶面は、比較的平坦な{10−11}面であった。
また、13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶の底面には、c面の窒素極性面(000−1)面が形成されていた。この面には、わずかに微結晶104が付着していたが(図3参照)、反応容器12の底面に結晶成長が制限されていた。第1種結晶100における異種基板101としてのサファイア基板には、クラックが入っていた。
結晶成長によって得られた13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶のサイズは、底面における長尺方向の長さが約55mm、断面台形形状の底辺側に相当する底面の長さ(幅)が5mm、断面台形形状の上辺側に相当する上面における長尺方向の長さが約45mm、高さ(底面と上面との最短距離)が約8mmであった。
また、本実施例で作製した13族窒化物結晶103としてのGaN結晶を、(0001)面に平行にスライスし、この断面を蛍光顕微鏡で観察したところ、図11(a)に示すように、{10−11}面に平行な、成長縞が観察された。
異なる方向に形成される成長縞はその領域の結晶が成長した方向が異なることを表している。13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶は、第1種結晶100から6面の{10−11}面が成長面として成長した6つの領域(セクター)と、(0001)面が成長面として成長した領域(セクター)と、からなる単結晶になっていた。なお、(0001)面をGa極性面、(000−1)面を窒素極性面と定義する。
また、13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶について、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析を行った結果、1014〜1015cm−3のナトリウムが検出された。また、13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。
(実施例2)
本実施例では、実施例1で用いた第1種結晶100に代えて、第1種結晶200を用いて13族窒化物結晶を製造する。また、溝部27Aを構成する2面の内、第1種結晶200を接触させる側の面(ここでは面27Bとする)と、これらの2面の交点を通る鉛直方向に延びる直線Zと、の成す角度が28°とした。
―第1工程―
まず、第1種結晶200を準備した。本実施例では、主面が(0001)面のφ2インチのGaN自立基板(HVPE製)から、短冊状に切り出した結晶を、第1種結晶200として準備した。
詳細には、上記GaN自立基板(HVPE製)の裏面をGaNのa軸(m面)に沿って数回卦がくことで、短冊状に第1種結晶200を切り出した。図15は、第1種結晶200を示す説明図である。
切出した第1種結晶200は、上述した第1種結晶200に相当し、全体が同一材質の単結晶である。この切出した第1種結晶200は、長手方向がGaNのa軸に略平行な(すなわち、長手方向がa軸に略一致する)短冊状であった(図15(a)参照)。
この第1種結晶200の長手方向の長さは45mmであり、幅は0.8mmであった。
次に、図6に示す製造装置1を用いて、第2工程〜第4工程を行った。図16は、第2工程〜第4工程の説明図である。
なお、本実施例における第2工程〜第4工程は、実施例1と略同様である。このため、異なる部分を詳細に説明する。
まず、反応容器12として、内径92mm、純度99.99%のアルミナ製容器を用意した。また、反応容器12の内部の底部に、V字状の溝部27Aの設けられた下地基板27を設置した。本実施例では、下地基板27の材質として、アルミナを用いた。溝部27Aにおける2面(図16中、面27B、面27C参照)の成す角度(図16中、θA参照)は、90°であった。また、これらの2面の内の1面(図16中、面27B)は、これらの2面の交点を通る鉛直方向に延びる直線Zに対して28°傾くように形成した(図16中、θB参照)。また、溝部27Aの深さは、15mmであった。
この反応容器12を内部に備えた耐圧容器11を、実施の形態1と同様にして、グローブボックスに入れた。
―第2工程―
次に、反応容器12内の底部に設置された、本実施例のV溝の形成された下地基板27に、第1工程で準備した第1種結晶200を設置した(図16(a))。第1種結晶200は、主面200A側を上にし、対向面200B側を下地基板27の面27Bに接して、溝部27A内に配置した。また、このとき、第1種結晶200を、第1種結晶200の長手方向を、溝部27Aの長尺方向である第1方向と一致させ、溝部27Aの底部(面27Bと面27Cとの接線)の方に設置した。
―第3工程、第4工程―
本実施例では、原料の仕込み量は、13族金属原料であるガリウム(Ga)を110gと、フラックスであるナトリウム(Na)を77gと、を反応容器12内に投入した。なお、ガリウムとナトリウムのモル比は、0.32:0.68とした。更に、反応容器12内に、カーボンを0.36g添加した。
結晶成長温度、及び窒素ガス分圧等の結晶成長条件は実施例1と同じとした。なお、結晶成長時間は、600時間とした。
これにより、第1種結晶200の主面200Aから、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶の結晶成長が開始され(図16(b))、結晶成長が継続された(図16(c)〜図16(e))。これにより、反応容器12内の第1種結晶200上に、13族窒化物結晶203として、GaN単結晶が溝部27Aの上部(開口側)からはみ出すことなく、溝部27Aの内部で結晶成長していた(図16(f)参照)。
―13族窒化物結晶の評価―
図17及び図18は、本実施例の結晶成長によって得た13族窒化物結晶203を示す図である。具体的には、この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶は、13族窒化物結晶203の対向面200B側(第1種結晶200側)を底面とした場合、底面の形状が、第1種結晶200の長手方向に平行な上辺と下辺とを有する台形状であった(図18(a)参照)。また、13族窒化物結晶203における、第1種結晶200の長手方向に対して垂直な断面の形状は、直角三角形状であった(図17、図18(b)参照)。
また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶の上面には、c面のGa極性面が形成されていた(図17参照)。
また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶を構成する面(外側の面)の内、結晶成長時に溝部27Aの開口側に面し、該13族窒化物結晶203の底面に連続し、且つ、混合融液24中で結晶成長した最も面積の大きな結晶面は、比較的平坦な{10−11}面であった。
また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶の底面には、c面の窒素極性面(000−1)面が形成されていた。この面には、わずかに微結晶204が付着していたが(図16参照)、反応容器12の底面に結晶成長が制限されていた。また、第1種結晶200には、クラック等は見られなかった。
結晶成長した13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶のサイズは、底面における長尺方向の最大の長さが約67mm、底面の幅(台形形状の底面の上辺と下辺の最短長)が12mm、底面に対向する上面における長尺方向の最大の長さが約45mm、高さ(底面と上面との長さ)が約22mmであった。
また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶を、{20−21}面に平行にスライスし、蛍光顕微鏡により観察したところ、その断面には、{10−11}面に平行な成長縞が観察された(図12(a)参照)。
また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶は、第1種結晶200から6面の{10−11}面が成長面として成長した6つの領域(セクター)からなる単結晶になっていた。なお、この結晶の{10−11}面のうち、混合融液24側で成長した最も面積の大きな結晶面(図12(a)の左側の斜面)は、(−1011)面であった。
また、13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶について、SIMS分析を行った結果、1014〜1015cm−3台のナトリウムが検出された。また、13族窒化物結晶203としてのGaN結晶には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。
(実施例3)
本実施例では、実施例1及び実施例2で用いた第1種結晶100、第1種結晶200に代えて、上記実施の形態3で用いた第2種結晶300を、種結晶として用いた。
具体的には、本実施例では、図8に示す工程に沿って、製造装置1(図6参照)を用いて結晶成長を行い、第2種結晶300を用いて13族窒化物結晶303を製造した。なお、本実施例では、アルカリ金属としてナトリウムを用い、13族金属としてガリウムを用いて、13族窒化物結晶303としてGaN(窒化ガリウム)を製造した。
―第5工程―
まず、第2種結晶300を準備した。本実施例では、第2種結晶300として、Flux法で製造したGaNの単結晶を用意した。この第2種結晶300は、a軸方向に長く、且つ該a軸方向に直交する直交方向の断面が三角形状である13族窒化物結晶を用意した。この第2種結晶300としての13族窒化物結晶は、この三角形状の断面を構成する3辺の各々に該a軸方向に連続する3面の内、底面が該a軸方向に長い(000−1)面であり、該底面に連続する他の2面が、(10−11)面と(−1011)面であった。
すなわち、本実施例で用いた第2種結晶300は、図7で説明した第2種結晶300である。この第2種結晶300は、反応容器12の底に、短冊状のGaN単結晶を(0001)面を上にして、{10−11}面を形成させながら結晶成長させることで製造したものである。
作製した第2種結晶300の長尺方向の長さは50mm、上記三角形状の断面の底辺(底面300A(図8参照、(000−1)面)に連続する辺)の長さは5mm、高さ(該底辺から三角形状の断面の対向する頂点までの長さ)は4.7mmであった。
次に、図6に示す製造装置1を用いて、第6工程〜第7工程を行った。
本実施例では、実施例1と同様に製造装置1を用い、且つ、実施例1と同様の結晶条件で製造を行った。このため、実施例1と異なるところの詳細を説明する。
まず、本実施例では、反応容器12として内径92mmの純度99.99%のアルミナ製容器を用意した。そして、反応容器12の内部の底部に、V字状の溝部27Aの設けられた下地基板27を設置した。本実施例では、下地基板27の材質として、アルミナを用いた。溝部27Aにおける2面(図8中、面27B、面27C参照)の成す角度(図8中、θA参照)は、62°であった。また、これらの2面の内の1面(図8中、面27B)は、これらの2面の交点を通る鉛直方向に延びる直線Zに対して30°傾くように形成した(図8中、θB参照)。また、溝部27Aの深さは、19mmであった。
次に、この反応容器12を内部に備えた耐圧容器11を、実施例1と同様にして、グローブボックスに入れた。
―第6工程―
次に、この反応容器12内の底部に設置された、V溝の形成された下地基板27に、第5工程で準備した第2種結晶300を設置した(図8(a))。第2種結晶300は、混合融液24中において、第2種結晶300における底面300A((000−1)面)が溝部27Aを構成する2面の内の面27Bに接し、且つ、第2種結晶300の長尺方向であるa軸方向と溝部27Aの長尺方向である第1方向とが一致するように、第2種結晶300を溝部27A内に配置した。
また、このとき、第2種結晶300の長手方向を、溝部27Aの長尺方向である第1方向と一致させ、溝部27Aの底部(面27Bと面27Cとの接線)の方に設置した。このため、ここで、本実施例における溝部27Aを構成する2面のなす角は62°であり、第2種結晶300のc面と{10−11}面とがなす角度に等しい。このため、第2種結晶300は、溝部27Aの底部に安定して収まった。
―第7工程―
次に、13族金属原料であるガリウム(Ga)を100gと、フラックスであるナトリウム(Na)を77gと、を反応容器12内に投入した。なお、ガリウムとナトリウムのモル比は、0.3:0.7とした。更に、反応容器12内に、カーボンを0.34g添加した。なお、ナトリウムは溶解させて液体状態とした後に反応容器12内に入れ、固化させた後にガリウムとカーボンを入れた。
次に、反応容器12に蓋25をした後に、耐圧容器11内に設置し、実施例1と同じ結晶成長温度、及び窒素ガス分圧等の結晶成長条件で、結晶成長させた。なお、結晶成長時間は、600時間とした。
これにより、第2種結晶300の(−1011)面から13族窒化物結晶としてのGaNの結晶成長が開始される。そして、この(−1011)面の面積を拡大させながらの結晶成長を継続させた(図8(a)〜図8(f)参照)。
一方、混合融液24に接しない側の面(図8では、10−11)面)は、溝部27Aの面27Cに接しながら成長し面積を拡大させていった(図8(a)〜図8(f)参照)。
これにより、反応容器12内の第2種結晶300上に、13族窒化物結晶303として、GaN単結晶が溝部27Aの上部(開口側)からはみ出すことなく、溝部27Aの内部で結晶成長していた(図8(f)参照)。
―13族窒化物結晶の評価―
この結晶成長によって得た13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶は、図9及び図10に示す形状であった。具体的には、この結晶成長によって得られた13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶は、第2種結晶300の長手方向であるa軸方向に垂直な断面の形状が、第2種結晶300側(すなわち、(000−1)面側)を底辺とする、三角形状であった。
また、13族窒化物結晶303を構成する面(外側の面)の内、混合融液24に接して成長した面が比較的平坦な{10−11}面であった。また、底面(第2種結晶300側の面)には、c面の(000−1)面が形成されていた。また、底面の形状は、第1種結晶100に長い2辺が平行な底辺と下辺に相当する台形状であった。底面には、わずかに微結晶が付着していたが、反応容器12の底面に結晶成長が制限されていた。なお、第2種結晶300には、クラック等は見られなかった。
結晶成長した13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶のサイズは、底面における長尺方向の最大の長さが約74mm、底面の幅(台形形状の底面の上辺と下辺の最短長)が16mm、底面に対向する上面における長尺方向の最大の長さが約45mm、高さ(底面と上面との長さ)が約15mmであった。
また、結晶成長した13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶を、{10−11}面に対して垂直にスライスし、その断面を蛍光顕微鏡により観察したところ、{10−11}面に平行な成長縞が観察された。なお、結晶成長した13族窒化物結晶303の{10−11}面のうち、混合融液24側で成長した最も面積の大きな結晶面(図14(a)の左側の斜面)を(−1011)面と定義している。
また、結晶成長した13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶は、第2種結晶300から3面の{10−11}面が成長面として成長した3つの領域(セクター)が成長面として成長した3つの領域(セクター)からなる単結晶になっていた。
また、13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶について、SIMS分析を行った結果、1014〜1015cm−3台のナトリウムが検出された。また、13族窒化物結晶303としてのGaN結晶には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。
(実施例4)
―13族窒化物結晶基板の製造―
本実施例では、上記実施例1で製造した13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶を加工して、13族窒化物結晶基板を作製した。
本実施例における基板製造の一連の流れを、図11を用いて説明する。
まず、実施例1で作製した13族窒化物結晶103としてのGaN単結晶の長手方向の両端部と、第1種結晶100側の微結晶104と、を切断し、四角柱状に成型した。
次に、図11(a)に点線で示すように、(0001)面に平行に13族窒化物結晶103をスライスした。スライスされた結晶110、111のサイズは様々であった(図11(b)、(c))。なお、スライスされた結晶110、111の内、最大の結晶のサイズは、約45×5mm2であった(図11(c))。
次に、スライスした結晶110、111を、さらに所望の大きさに成型したGaN単結晶120の(0001)面または(000−1)面を研磨し、その後、CMP処理を施した(図11(d))。
このようにして、(0001)面または(000−1)面を主面とする四角形の13族窒化物結晶基板130、140として、GaN基板を製造した(図11(e))。
製造したGaN基板としての、13族窒化物結晶基板130、140の主面を蛍光顕微鏡で観察すると、成長縞が観察される領域と観察されない領域があった。成長縞は、{10−11}面に平行に形成されていた(図11(e))。なお、成長縞が観察された領域は、(−1011)面が成長したセクターであり、成長縞が観察されない領域は(0001)面が成長したセクターである。
また、GaN基板としての、13族窒化物結晶基板130,140中には、SIMS分析で、1014〜1015cm−3台のナトリウムが検出された。また、GaN基板としての、13族窒化物結晶基板130、140には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。
(実施例5)
―13族窒化物結晶基板の製造―
本実施例では、実施例2で作製した13族窒化物結晶203について、実施例4とは異なる切出し方をして、{20−21}面を主面とする四角形の半極性GaN単結晶基板を、13族単結晶基板230として作製した(図12参照)。
本実施例における基板製造の一連の流れを、図12を用いて説明する。
まず、実施例2で作製した13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶の長手方向の両端部と、第1種結晶200側の微結晶204と、を切断し、三角柱状に成型した。
次に、図12(a)に点線で示すように、三角柱形状結晶の第1種結晶200の長手方向に平行な{20−21}面に対して、平行に13族窒化物結晶203をスライスした。スライスされた結晶210、211のサイズは様々であった(図12(b)、(c))。なお、スライスされた結晶210、211の内、最大の結晶211のサイズは45×24mm2であった(図12(c))。
次いで、スライスしたGaN単結晶である結晶210、211を、さらに所望の大きさに成型し、この成型した後の結晶220の表面を研磨し、その後、CMP処理を施した(図12(d))。このようにして、{20−21}面を主面とする四角形の、13族窒化物結晶基板230としての、半極性GaN単結晶基板を製造した(図12(e))。
製造した13族窒化物結晶基板230としての、半極性GaN単結晶基板の主面を、蛍光顕微鏡で観察すると、成長縞が観察された。この成長縞は、(−1011)面に平行に形成されているもののみであった(図12(e))。すなわち、この13族窒化物結晶基板230の主面は、(−1011)面が成長面として成長した単一のセクターからなっていた。
また、13族窒化物結晶基板230としての、半極性GaN単結晶基板中には、SIMS分析で、1014〜1015cm−3台のナトリウムが検出された。また、13族窒化物結晶基板230としての、半極性GaN単結晶基板には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。
(実施例6)
本実施例では、実施例2で作製した13族窒化物結晶203について、実施例4及び実施例5とは異なる切出し方をして、{10−10}面(m面)を主面とする四角形の無極性GaN単結晶基板を、13族窒化物結晶基板270として作製した(図13参照)。
本実施例における基板製造の一連の流れを、図13を用いて説明する。
まず、実施例2で作製した13族窒化物結晶203としてのGaN単結晶の長手方向の両端部と、第1種結晶200側の微結晶204と、を切断し、三角柱状に成型した。
次に、図13(a)に点線で示すように、三角柱形状結晶の第1種結晶200の長手方向に平行な{10−10}面に対して、平行に13族窒化物結晶203をスライスした。スライスされた結晶250、251のサイズは様々であった(図13(b))。なお、スライスされた結晶250、251の内、最大の結晶251のサイズは21×45mm2であった(図13(c))。
次いで、スライスしたGaN単結晶である結晶250、251を、さらに所望の大きさに成型し、この成型した後の結晶260の表面を研磨し、その後、CMP処理を施した(図13(d))。このようにして、{10−10}面を主面とする四角形の、13族窒化物結晶基板270としての、無極性GaN単結晶基板を製造した(図13(e))。
製造した13族窒化物結晶基板270としての、無極性GaN単結晶基板の主面を、蛍光顕微鏡で観察すると、成長縞が観察された。この成長縞は、(−1011)面に平行に形成されているもののみであった(図13(e))。すなわち、この13族窒化物結晶基板270の主面は、(−1011)面が成長面として成長した単一のセクターからなっていた。
また、13族窒化物結晶基板270としての、無極性GaN単結晶基板中には、SIMS分析で、1014〜1015cm−3台のナトリウムが検出された。また、13族窒化物結晶基板270としての、無極性GaN単結晶基板には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。
(実施例7)
本実施例では、実施例3で作製した13族窒化物結晶303を加工し、(−1011)面、及び(−101−1)面の各々を主面とする四角形の半極性GaN単結晶基板を、13族単結晶基板330として作製した(図14参照)。
本実施例における基板製造の一連の流れを、図14を用いて説明する。
まず、実施例3で作製した13族窒化物結晶303としてのGaN単結晶の長手方向の両端部と、第2種結晶300側の微結晶と、を切断し、三角柱状に成型した。
次に、図14(a)に点線で示すように、三角柱形状結晶の13族窒化物結晶303を、(−1011)面に対して平行にスライスした。スライスされた結晶310、311のサイズは様々であった(図14(b)、(c))。なお、スライスされた結晶310、311の内、最大の結晶311のサイズは45×17mm2であった(図14(c))。
このスライス前の結晶表面を(−1011)面、スライスして現れる裏面を(−101−1)面と定義する。この(−1011)面は窒素極性面、(−101−1)面はGa極性面である。
次に、スライスした結晶310、311を、さらに所望の大きさに成型し、成型後のGaN単結晶としての13族窒化物結晶320の(−1011)面、または(−101−1)面を研磨し、その後、CMP処理を施した(図14(d))。
このようにして、(−1011)面、及び(−101−1)面の各々を主面とする、四角形の半極性GaN単結晶基板としての、13族窒化物結晶基板330、340を作製した(図14(e))。
製造した半極性GaN単結晶基板としての、13族窒化物結晶基板330、340を垂直方向に切断した断面を、蛍光顕微鏡で観察すると、成長縞が観察された。観察された成長縞は、基板主面である{10−11}面に平行なものだけであった(図14(e))。また、この13族窒化物結晶基板330、340の主面には、成長縞が観察されなかった。
また、製造した半極性GaN単結晶基板としての、13族窒化物結晶基板330、340の主面は、(−1011)面を成長面として結晶成長した単一セクターからなっていた。
また、製造した半極性GaN単結晶基板としての、13族窒化物結晶基板330、340について、SIMS分析を行ったところ、13族窒化物結晶基板330、340中には、1014〜1015cm−3台のナトリウムが検出された。
また、製造した半極性GaN単結晶基板としての、13族窒化物結晶基板330、340には、不純物レベルでナトリウムが含まれていたが、クラックやボイドの発生原因となるような金属ガリウムや、金属ナトリウム、あるいはガリウムとナトリウムの合金といったインクルージョンは無かった。