JP2015214132A - フィブロイン複合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィブロイン多孔質体、とりわけシルクフィブロイン多孔質体の優れた吸水性、柔軟性、質感等の長所を損なうことなく、機械的強度にも優れるフィブロイン複合体、及び該複合体の製造方法を提供する。【解決手段】不織布、織布、フェルト、及びメッシュから選ばれる、繊維支持体11とフィブロイン多孔質体12とを備え、該繊維支持体11と該フィブロイン多孔質体12とが少なくともフィブロインにより接合されてなるフィブロイン複合体10である。【選択図】図1

Description

本発明は、フィブロイン複合体、より具体的には繊維支持体とフィブロイン多孔質体とを備えるフィブロイン複合体に関する。
タンパク質、糖類等の生物由来物質を利用して作製可能である多孔質体は、エステティックサロン又は個人での使用による保湿等を目的とした化粧品・エステ分野、創傷被覆材、薬剤徐放担体等の医療分野、紙おむつ、生理用品等の生活日用品分野、微生物、細菌等の住処になる支持体として活用しうる浄水分野、細胞培養支持体(足場材料)、組織再生支持体等として活用しうる組織工学・再生医工学分野など、産業上幅広い分野で利用される。
これら多孔質体を構成する生体由来物質としては、セルロース、キチン等の糖類、コラーゲン、ケラチン、フィブロイン等のタンパク質群などが知られている。
これらの生体由来物質のうち、タンパク質としては、コラーゲンがよく利用されてきたが、BSE問題が発生してから牛由来のコラーゲンを利用することが非常に難しくなってきた。また、ケラチンは、羊毛、羽毛等から得ることができる。しかし羊毛は、原料価格が非常に高騰しており、また、羽毛に関しては市場が少ないため、原料を入手することが難しく、工業的に利用することは難しい。一方、フィブロイン、とりわけシルクフィブロインは、原料入手の観点からは、安定に供給されることが期待でき、さらに価格も安定しているので、工業的に利用することが容易であるという特長を有している。
シルクフィブロインは、衣類用途以外に、手術用縫合糸として長く使用されてきた実績があり、現在では食品及び化粧品の添加物としても利用され、人体に対する安全性にも問題がないことから、上記のような多孔質体の利用分野に利用することが可能である。
シルクフィブロイン多孔質体を作製する手法に関しては、いくつか報告がある。
例えば、シルクフィブロイン水溶液を急速冷凍したのち結晶化溶媒に浸漬し、融解と結晶化を同時進行することによって得る方法がある(特許文献1)。しかしながら、この方法は結晶化溶媒である有機溶媒を大量に使用する必要があり、さらに溶媒の残留の可能性も否定できず、化粧品・エステ分野等の上記した応用分野での使用には問題がある。
次に、シルクフィブロイン水溶液のpHを6以下に保持してゲル化させるか又はその水溶液に貧溶媒を添加してゲル化させ、得られたゲルを凍結乾燥して多孔質体を作製する方法がある(特許文献2)。しかしながら、この方法は十分な強度をもった多孔質体を得ることはできない。他に、シルクフィブロイン水溶液を冷凍した後に長時間凍結状態を維持することで多孔質体を作製する手法が報告されている(特許文献3)。しかしながら、発明者らの検討ではこの手法は再現性が乏しく、多孔質体が作製できないことが多いことが分かった。
上記したシルクフィブロイン多孔質体の作製手法と比較すると、確実で簡便な手法が報告されている(特許文献4及び非特許文献1)。シルクフィブロイン水溶液に対して少量の水溶性液状有機溶媒を添加した後に、一定時間冷凍して融解することによってシルクフィブロイン多孔質体が得られる手法である。また、シルクフィブロイン水溶液に対して少量のカルボン酸類を添加した後に、一定時間凍結させて、その後融解することで、上記の特許文献4、非特許文献1に記載される手法よりもさらに高強度のシルクフィブロイン多孔質体を製造する方法が提案されている(特許文献5)。
特開平8−41097号公報 特公平6−94518号公報 特開2006−249115号公報 特許第3412014号公報 国際公開第2010/116994号パンフレット
Tamada.Y,"New Process to form a silk fibroin porous 3−D structure.",Biomacromolecules,6,3100−3106(2005)
ところで、例えば、化粧品・エステ分野におけるフェイスマスク、アイマスク等のスキンケア部材、医療分野における指、肘、膝等の人体の稼動部への貼り付けが想定される創傷被覆材、組織工学・再生医工学の分野における細胞培養支持体などの用途においては、シルクフィブロイン多孔質体を薄くして用いる場合が多く、とりわけ該多孔質体に対して引張強さ、引裂き強さといった機械的強度が要求される。しかし、特許文献5に開示される製法によって得られるシルクフィブロイン多孔質体によっても十分に対応できない場合があった。
上記のような厚さを薄くしても種々の用途に応じて十分に対応しようとする場合、シルクフィブロイン多孔質体自体の機械的強度を向上させて対応する手法がある。しかし、そのような手法では該多孔質体の構造、質感の変化を伴うことがほとんどであり、人体に直接接触する用途に適さないため、機械的強度を劇的に向上させることは望めないという問題がある。
そこで、本発明は、フィブロイン多孔質体、とりわけシルクフィブロイン多孔質体の優れた吸水性、柔軟性、肌触り等の質感などの長所を損なうことなく、機械的強度にも優れるフィブロイン複合体、及び該複合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
1.繊維支持体とフィブロイン多孔質体とを備え、該支持体と該多孔質体とが少なくともフィブロインにより接合されてなるフィブロイン複合体。
2.繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方を、フィブロイン水溶液と、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、の混合物に浸漬し、該繊維支持体と該フィブロイン多孔質体とを重ね合わせた後、凍結することを特徴とするフィブロイン複合体の製造方法。
3.フィブロイン水溶液と、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、の混合物に、繊維支持体を浸漬し、凍結することを特徴とするフィブロイン複合体の製造方法。
4.繊維支持体及びフィブロイン多孔質体を水及び水溶性液状有機物質から選ばれる少なくとも一種に浸漬し、該繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方の、少なくとも片面にフィブロイン水溶液と、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、の混合物を塗布し、塗布した面を挟むようにして積層した後、凍結することを特徴とするフィブロイン複合体の製造方法。
本発明によれば、フィブロイン多孔質体、とりわけシルクフィブロイン多孔質体の優れた吸水性、柔軟性、肌触り等の質感の長所を損なうことなく、機械的強度にも優れるシルクフィブロイン複合体を得ることができる。
本発明のフィブロイン複合体の構造を示す模式図である。 引裂き力の中央値の求め方を示す図である。 本発明の比較例1で製造されるシルクフィブロイン多孔質体の内部構造の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例11で製造されるシルクフィブロイン複合体の断面の構造の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の複合体に使用するフィブロイン多孔質層の全反射赤外吸収スペクトルの一例である。
〔フィブロイン複合体〕
本発明のフィブロイン複合体は、繊維支持体とフィブロイン多孔質体とを備え、該支持体と該多孔質体とが少なくともフィブロインにより接合されてなるものである。図1は本発明のフィブロイン複合体の構造の一例を示す模式図であり、繊維支持体11とフィブロイン多孔質体12とが接合されてなるフィブロイン複合体10が示されている。そして、繊維支持体11とフィブロイン多孔質体12とは、フィブロインにより接合されている。すなわち、本発明のフィブロイン複合体は、別個の接着剤を用いることなく、フィブロインにより接合されてなるため、異素材の使用を低減でき、フィブロイン多孔質体、とりわけシルクフィブロイン多孔質体の優れた吸水性、柔軟性、肌触り等の質感の長所を損なうことなく、良好な接合力を得ることを可能としている。
(フィブロイン多孔質体)
フィブロイン多孔質体は、フィブロインにより構成される多孔質体であれば特に制限はなく、優れた吸水性、柔軟性、肌触り等の質感を得る観点からシルクフィブロイン多孔質体であることが好ましい。フィブロイン多孔質体は、例えば、フィブロイン水溶液に水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤を添加したフィブロイン水溶液を凍結して凍結体を得て、次いで該凍結体中の凍結した水分を溶解して得る手法が挙げられる。この手法によれば、形状安定性及び強度に優れるフィブロイン多孔質体が得られる傾向がある。
フィブロインとしては、例えば家蚕、野蚕、天蚕等の天然蚕、トランスジェニック蚕等から産生されるシルクフィブロインなどが挙げられる。特に製造工程の簡便性を考え、家蚕の繭から得られるシルクフィブロインが好ましい。
以下、フィブロインとして好ましいシルクフィブロインを例にとって説明する。
シルクフィブロインを水に溶解させる手法については特に制限はなく、例えば、シルクフィブロインは水への溶解性が低いため、高濃度の臭化リチウム水溶液にシルクフィブロインを溶解後、透析により脱塩し、シルクフィブロイン水溶液を得る方法が好適に挙げられる。また、水溶液中のシルクフィブロインの濃度調整の方法としては、風乾による濃縮を経る手法が簡便で好ましい。
シルクフィブロインの含有量は、添加剤を加えた場合、シルクフィブロイン水溶液中で0.5〜40wt/vol%であることが好ましく、1〜20wt/vol%であることがより好ましく、1〜10wt/vol%であることがさらに好ましい。フィブロインの含有量が上記の範囲内であると、質感に優れた多孔質体が得られる傾向がある。
本発明で用いられる添加剤は、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。水溶性液状有機物質とは、常温(20℃)で液状であり、常温(20℃)で水と混合した際に、分離せずに溶解又は混和するものをいう。水溶性液状有機物質としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類;ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、アセトン、アセトニトリルなどが好ましく挙げられる。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。人体への安全性を考慮すると、エタノール、グリセリンがより好ましい。
カルボン酸類としては、少なくとも分子中に一つのカルボキシ基を有する有機酸であれば特に制限はないが、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等が挙げられる。カルボン酸類としては、炭素数1〜6の脂肪族カルボン酸が好ましく、炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸がより好ましい。これらの脂肪族カルボン酸は飽和であってもよく、不飽和であってもよい。このようなカルボン酸として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸、2−ブテン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸等のジカルボン酸などが好ましく挙げられる。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。人体への安全性を考慮すると、酢酸、乳酸、コハク酸がより好ましい。
シルクフィブロイン水溶液中の添加剤の含有量は、水溶液がゲル化せず、また十分な強度を持った多孔質体を製造する観点から、0.01〜18体積%であることが好ましく、0.1〜5体積%であることがより好ましく、0.5〜3体積%であることがさらに好ましい。
シルクフィブロイン水溶液の凍結は、シルクフィブロイン水溶液に添加剤を加えた溶液を容器に流し込み、該容器を液冷式の低温恒温槽中に入れることで行うことが好ましい。
凍結温度としては、添加剤を加えたシルクフィブロイン水溶液が凍結する温度であれば特に制限はないが、−5〜−40℃程度が好ましく、−10〜−30℃程度がより好ましく、−15〜−25℃がさらに好ましい。凍結時間としては、添加剤を加えたシルクフィブロイン水溶液が十分に凍結し、かつ凍結状態を一定時間保持できるよう、2時間以上であることが好ましく、4時間以上であることがさらに好ましい。また、特に−15〜−25℃の温度条件下、1時間から100時間保持して凍結することが好ましい。
ここで、添加剤を加えたシルクフィブロイン水溶液を一気に凍結温度まで下げて凍結してもよいが、凍結の前に過冷却状態を経ることが、均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得る上で好ましい。例えば、添加剤を加えたシルクフィブロイン水溶液を一旦、−5℃程度で2時間程度保持して、その後、凍結温度まで下げて凍結することで、均一な構造のシルクフィブロイン多孔質体を得ることができる。
上記の手法でシルクフィブロイン水溶液を凍結させた後、次いで凍結した水分を融解することによって、シルクフィブロイン多孔質体が得られる。融解の方法としては、特に制限はなく、自然融解、恒温槽等で保管することで融解する方法などが挙げられる。
上記のようにして得られたシルクフィブロイン多孔質体には添加剤が残存する。残存する添加剤は用途に応じてそのままの状態としてもよいし、除去してもよい。添加剤をシルクフィブロイン多孔質体から除去する方法としては、例えば、シルクフィブロイン多孔質体を、純水中に浸漬して除去することが最も簡便な方法として挙げられる。
このようにして得られたシルクフィブロイン多孔質体は吸水した状態である。本発明において、複合体を得るにあたり乾燥したシルクフィブロイン多孔質体を使用する場合には、吸水状態のシルクフィブロイン多孔質体を乾燥すればよい。シルクフィブロイン多孔質体の乾燥の手法としては特に制限はないが、収縮を抑える観点で凍結乾燥が好ましい。凍結乾燥の場合、残った氷が融解して水になり、その表面張力の影響で空孔が潰れないようにする観点から、水分が完全に昇華するまで乾燥することが好ましい。例えば、温度条件として−5〜−80℃程度であることが好ましい。
また、凍結乾燥の際、予めシルクフィブロイン多孔質体をグリセリン水溶液に浸漬する又はシルクフィブロイン水溶液に混合する添加剤の水溶性液状有機物質としてグリセリンを採用することが、乾燥時のひび割れを防止すると共に、乾燥後にも柔軟な複合体が得られる観点から好ましい。
この場合、シルクフィブロイン多孔質体を浸漬するグリセリン水溶液におけるグリセリンの濃度は、シルクフィブロイン多孔質体を形成する際に使用したシルクフィブロイン水溶液中で、0.2〜2.5体積%であることが好ましく、0.25〜2体積%であることがより好ましく、0.25〜1.2体積%であることがさらに好ましい。この範囲にグリセリン濃度を設定することで質感が良く、ひび割れの無い乾燥シルクフィブロイン多孔質体を得ることができ、結果として質感が良く、ひび割れの無いシルクフィブロイン複合体が得られる。このようにして得られる乾燥シルクフィブロイン多孔質体はグリセリンを含有することを特徴とする。
上記のようにして乾燥したシルクフィブロイン多孔質体(乾燥シルクフィブロイン多孔質体)は、水分が実質的に含まれないものである。シルクフィブロイン多孔質体は、シルクフィブロイン水溶液を凍結し、融解して得られるので、通常、細孔部に水分等が存在した状態となっている。通常のシルクフィブロイン多孔質体と乾燥シルクフィブロイン多孔質体とは、細孔部に水等が存在する量の点で状態は異なるものとなる。
シルクフィブロイン多孔質体は、添加剤を加えたシルクフィブロイン水溶液を流し込む容器を適宜選択することにより、シート状、ブロック状、管状等、目的に応じた形状とすることができる。
また、原料として用いるシルクフィブロイン、添加剤の種類、添加剤の添加量等を調節することで、シルクフィブロイン多孔質体の内部構造と固さを調整することができる。
本発明で用いられるシルクフィブロイン多孔質体の平均細孔径は、1〜500μmであることが好ましく、5〜300μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましい。平均細孔径が上記範囲内であると、肌触りが良好となる傾向がある。また再生医療向けの細胞培養支持体(足場材料)としての用途を考慮した場合、細胞が細孔内に入りやすい傾向がある。
ここで、多孔質体の平均細孔径は、多孔質体断面の走査型電子顕微鏡写真を5枚撮影し、さらに異なる日に作製した多孔質体断面の走査型電子顕微鏡写真を5枚撮影し、それら10枚の走査型電子顕微鏡写真について、画像解析ソフトを用いて画像処理し、算出した細孔径の平均値である。
本発明で用いられるシルクフィブロイン多孔質体の空孔率は、80〜99%であることが好ましく、90〜99%であることがより好ましく、94〜98%であることがさらに好ましい。空孔率が上記範囲内であると、多孔質体が適度な硬さを有するため肌あたりが良好となる傾向がある。また、機械的強度が良好となり、ハンドリングが容易となる傾向がある。
ここで空孔率は、得られた多孔質体を純水中に1日静置し吸水させ、秤量した質量を湿質量とし、凍結乾燥して多孔質体中の水分を除去し、再度秤量した質量を乾燥質量とし、水の密度を1g/cm3、フィブロインの密度を1.2g/cm3、含水状態のフィブロイン多孔質体の密度を1g/cm3と仮定し、次式に従って得られた値である。
空孔率=(湿質量−乾燥質量/1.2)/湿質量×100
以上、フィブロインの中でも好ましいシルクフィブロインを例にとって説明してきたが、他のフィブロインを用いても同様の方法によってフィブロイン多孔質体が得られ、該多孔質体は本発明において使用することができるものである。
(繊維支持体)
本発明で用いられる繊維支持体は、繊維により構成される支持体であれば特に制限はなく、例えば、不織布、織布、フェルト、メッシュ等が挙げられる。
繊維支持体の繊維としては特に制限はないが、フェイスマスク、アイマスク等のスキンケア材料;創傷被覆材、再生医療用の細胞培養支持体(足場材料)等の吸水性(吸液性)が求められる材料などの応用の観点からは、シルク繊維、コットン繊維、レーヨン繊維等を使用することが好ましい。なかでもシルク繊維を素材とする繊維支持体は、生体親和性、安全性に優れる点で好ましい。シルク繊維を素材とする繊維支持体として、シルク不織布、シルク織布、シルクメッシュ等が挙げられる。
繊維支持体の目付けに特に制限はないが、強度と柔軟性とを両立する観点から、10〜200g/mであることが好ましく、10〜100g/mであることがより好ましく、10〜75g/mであることがさらに好ましい。支持体の目付けが上記範囲内であると、シルクフィブロイン多孔質体との良好な接合性が得られる傾向がある。ここで、目付けとは、繊維支持体の単位面積当たりの質量を意味する。
繊維支持体の厚さは特に制限はなく、用途に応じて適切な厚さのものを使用すればよい。機械的強度に優れ、複合体の質量が用途に応じた適切な範囲内となり、かつ曲げ易く使用感が良好となる観点から、繊維支持体の厚さは、1〜2000μmであることが好ましく、10〜1000μmがより好ましく、50〜700μmであることがさらに好ましい。
本発明において、繊維支持体は少なくともフィブロイン多孔質体の片面に接合して設けられていればよく、フィブロイン多孔質体の両面に接合して設けられていてもよい。フィブロイン多孔質体の両面に繊維支持体が設けられる場合、繊維支持体を形成する素材は同一であってもよいし、異なっていてもよく、フィブロイン複合体の用途に応じて適宜選択すればよい。
(支持体と多孔質体との接合)
本発明のフィブロイン複合体において、繊維支持体とフィブロイン多孔質体とは少なくともフィブロインにより接合されていればよく、フィブロインは、少なくとも繊維支持体とフィブロイン多孔質体との間に存在することで接合力を発現する。ここで、繊維支持体とフィブロイン多孔質体との間に存在するフィブロインは、多孔質体を形成していてもよいし、形成していなくてもよい。
接合力を発現するフィブロインは、フィブロイン複合体の製造工程のいずれかの段階において供給され、その少なくとも一部が繊維支持体とフィブロイン多孔質体との間に存在して接合力を発現していれば、その残りが例えば繊維支持体の一部又は全体にわたって、その繊維間の隙間(空隙)部分に存在していてもよく、またフィブロイン多孔質体の一部又は全体にわたって、その細孔内に存在していてもよい。
本発明のフィブロイン複合体は、繊維支持体とフィブロイン多孔質体とが接合されてなるものであり、一枚ずつの繊維支持体及びフィブロイン多孔質体が接合されてなるものでもよいし、複数枚の繊維支持体、フィブロイン多孔質体が接合されてなるものであってもよい。本発明のフィブロイン複合体の最も単純な構成は、繊維支持体/フィブロイン多孔質体であり、本発明のフィブロイン複合体は、例えば、繊維支持体/フィブロイン多孔質体/繊維支持体からなる三層構成、繊維支持体/フィブロイン多孔質体/繊維支持体/フィブロイン多孔質体からなる四層構成、また、繊維支持体/繊維支持体/フィブロイン多孔質体、繊維支持体/フィブロイン多孔質体/フィブロイン多孔質体といった変則的な層構成をとってもよく、上記の層構成に限らず、用途に応じて種々の層構成を取り得る。例えば、上記の変則的な層構成として例示した層構成において、繊維支持体/繊維支持体、又は、フィブロイン多孔質体/フィブロイン多孔質体といった同種の層も、フィブロインにより接合すればよい。
また、フィブロイン複合体中に複数の繊維支持体及び/又は複数のフィブロイン多孔質体を有する場合、これらの繊維支持体、フィブロイン多孔質体は同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよく、用途に応じて適宜選択することができる。
本発明のフィブロイン複合体は、繊維支持体とフィブロイン多孔質体という異素材のものを接合してなる複合体であり、接合力を発現する成分としてフィブロインを採用している。複合体において異素材が増えるほど、柔軟性、肌触り等の質感が低減してしまうのが一般的である。しかし、本発明では、接合力を発現する成分としてフィブロインを採用し、市販される樹脂等の有機化合物ベースの接着剤という異素材を使用しないことにより、優れた接合力を得ると同時に、柔軟性、肌触り等の質感を維持することを可能としている。
(複合体の諸性状)
本発明のフィブロイン複合体の引張強さは、用途に応じたハンドリング性、耐久性を有していれば特に制限はないが、70〜2000kPaであることが好ましく、80〜1500kPaであることがより好ましく、100〜1500kPaであることがさらに好ましい。また、スパンレース不織布、織布等の繊維に配向がみられる繊維支持体を使用する場合には、繊維配向方向の引張強さは400〜2000kPaであることが好ましく、500〜1500kPaであることがより好ましく、600〜900kPaであることがさらに好ましい。繊維配向方向に対して垂直方向の引張強さは70〜300kPaであることが好ましく、80〜280kPaであることがより好ましい。引張強さが上記範囲内であると、肌触りが良好であり、曲げ易く使用感が良好となる傾向があり、また、様々な用途において好適に用いることができる傾向がある。
ここで、引張強さは、50mm×5mmの大きさに切削したフィブロイン複合体の試験片について、万能試験機(「EZ−(N)S(型番)」、(株)島津製作所製)を用い、ロードセルは50N、つかみ具は引張試験用の冶具を用い、引張速度5mm/min、初期つかみ具間距離30mm、室温22℃の条件下で、破断した時点でのロード(N)を測定し、以下の式により算出した値である。
引張強さ(kPa)=破断時ロード(N)÷複合体厚さ(mm)÷5×1000
測定したものである。
また、本発明のフィブロイン複合体の引裂き強さは、用途に応じたハンドリング性、耐久性を有していれば特に制限はないが、250〜5000N/mであることが好ましく、300〜2500N/mであることがより好ましく、400〜2000N/mであることがさらに好ましい。また、スパンレース不織布、織布等の繊維に配向がみられる繊維支持体を使用する場合には、繊維配向方向の引裂き強さは250〜1500N/mであることが好ましく、300〜1250N/mであることがより好ましく、400〜1000N/mであることがさらに好ましい。繊維配向方向に対して垂直方向の引裂き強さは250〜5000kPaであることが好ましく、300〜2500kPaであることがより好ましく、400〜2000N/mであることがさらに好ましい。引裂き強さが上記範囲内であると、肌触りが良好であり、曲げ易く使用感が良好となる傾向があり、また、様々な用途において好適に用いることができる傾向がある。
ここで、引裂き強さは、複合体の引裂き力の中央値を該複合体の厚さ(m)で割って得られた値である。より具体的には、100mm×15mmの大きさに切削し、かつ長さ40mmの切込みを入れた、トラウザ形に打ち抜いたシルクフィブロイン複合体の試験片について、万能試験機(「EZ−(N)S(型番)」、(株)島津製作所製)を用い、ロードセルは5N、つかみ具は引張試験用の冶具を用い、引裂き速度200mm/min、初期つかみ具間距離40mm、室温22℃の条件下で、垂直方向(TD方向)及び流れ方向(MD方向)について図2に示されるように、引裂き力の中央値を測定し、以下の式により算出した値である。
引裂き強さ=引裂き力の中央値(N)/試験片の厚さ(m)
(複合体の用途)
本発明のフィブロイン複合体は、フィブロイン多孔質体、とりわけシルクフィブロイン多孔質体の優れた吸水性、柔軟性、肌触り等の質感の長所を損なうことなく、引張強さ、引裂き強さといった機械的強度にも優れている。また、生体に対する安全性も高いことから、エステティックサロン又は個人での使用による化粧品・エステ分野、とりわけフェイスマスク、アイマスク等のスキンケア部材として極めて有用である。
また、本発明のフィブロイン複合体は、細胞増殖性にも優れるため、再生医療における細胞培養支持体(足場材料)としても極めて有用である。
さらに、生体親和性にも優れるため、指、肘、膝等の人体の稼動部への貼り付けが想定される創傷被覆材、薬剤徐放担体、癒着防止剤等の医療分野の他、紙おむつ、生理用品等の生活日用品分野での使用にも極めて有用である。
〔フィブロイン複合体の製造方法〕
本発明のフィブロイン複合体の第一の製造方法は、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方を、フィブロイン水溶液と、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、の混合物(以下、単に混合物と称することがある。)に浸漬し、該繊維支持体と該フィブロイン多孔質体とを重ね合わせた後、凍結することを特徴とするものである。
ここで、繊維支持体は上記の(繊維支持体)の項で説明したものと同じであり、フィブロイン多孔質体は上記の(フィブロイン多孔質体)の項で説明したものと同じである。
フィブロイン水溶液としては、フィブロイン多孔質体を得るために用いたフィブロイン水溶液の好ましい一例として説明したシルクフィブロイン水溶液として上記に記載したものを好ましく用いることができる。シルクフィブロイン水溶液中のシルクフィブロインの含有量は、1〜10wt/vol%であることが好ましく、1〜5wt/vol%であることがより好ましく、さらに1〜3wt/vol%であることが好ましい。シルクフィブロインの含有量が上記範囲内であると、複合体が硬くなりすぎず良好な質感が得られ、また良好な接合力が得られる傾向がある。
水溶性液状有機物質及びカルボン酸類は、上記で説明したものと同じである。
また、シルクフィブロイン水溶液中の添加剤の含有量も、上記で説明したものと同じであり、0.01〜18体積%であることが好ましく、0.1〜5体積%であることがより好ましく、0.5〜3体積%であることがさらに好ましい。添加剤の含有量が上記範囲内であると、良好な接合力が得られる傾向がある。
繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の、混合物への浸漬は、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方の少なくとも接合しようとする面に行えばよく、より優れた接合力を得る観点から、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも接合しようとする面に行うことが好ましい。また、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方の全体を混合物に浸漬する、さらには、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の両方の全体を混合物に浸漬することも優れた接合力を得る観点から好ましい。
繊維支持体及びフィブロイン多孔質体のいずれか一方のみをフィブロイン水溶液と添加剤との混合物に浸漬する場合、接合性とフィブロイン多孔質体の収縮抑制の観点から、他方は水、水溶性液状有機物質、及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の液組成物浸漬することが好ましい。
例えば、繊維支持体のみを混合物に浸漬する場合、フィブロイン多孔質体は水、水溶性液状有機物質、及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の液組成物に浸漬することが好ましい。一方、フィブロイン多孔質体のみを混合液に浸漬する場合、繊維支持体は水、水溶性液状有機物質、及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の液組成物に浸漬することが好ましい。ここで、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類は水と混合した水溶液であることが好ましい。この場合の、水溶液中の水溶性液状有機物質及びカルボン酸類の濃度は0.01〜18体積%であることが好ましく、0.1〜5体積%であることがより好ましく、0.5〜3体積%であることがさらに好ましい。これらの濃度が上記範囲内であると、良好な接合力が得られる傾向がある。また、この場合の水溶性液状有機物質は、グリセリンであることが、質感に優れるフィブロイン複合体を得る観点から好ましい。
また、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体を混合物に浸漬する場合、混合物に含まれる水溶性液状有機物質がグリセリンであることが質感に優れるフィブロイン複合体を得る観点から好ましい。
繊維支持体及びフィブロイン多孔質体を混合物、又は、水、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の液組成物に浸漬する際、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の構造内部に存在する空気を除去しておくことが好ましい。空気を除去することにより、複合体の構造にむらが生じにくくなるとともに、接合力に優れる複合体が得られる傾向がある。空気の除去方法としては、例えば、混合物、又は水、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の液組成物に浸漬する際に、構造内部の空気を押し出すように押圧しながら浸漬する方法が挙げられる。
繊維支持体とフィブロイン多孔質体とを重ね合わせる方法としては特に制限はなく、手作業、ローラー等を用いることで容易に重ね合わせることができる。繊維支持体とフィブロイン多孔質体との重ね合わせは、繊維支持体とシルクフィブロイン多孔質体を予め混合物、又は、水、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の液組成物に浸漬した後でもよいし、予め重ね合わせてから混合物、又は、水、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の液組成物に浸漬してもよい。
また、繊維支持体とフィブロイン多孔質体との間に空気が混入すると、その部分に気泡が生じてしまい接合力が低下する場合があるので、空気が混入しないようにすることが好ましい。
本発明のフィブロイン複合体の第一の製造方法は、上記のように繊維支持体とフィブロイン多孔質体を混合物等に浸漬し、両者を重ね合わせた後、凍結する。優れた接合力を得る観点から、両者を重ね合わせた後、凍結する前に10分程度静置することが好ましい。
凍結温度としては、添加剤を加えたフィブロイン水溶液が凍結する温度であれば特に制限はないが、−5〜−40℃程度が好ましく、−10〜−30℃程度がより好ましく、−15〜−25℃がさらに好ましい。凍結時間としては、添加剤を加えたフィブロイン水溶液が十分に凍結し、かつ凍結状態を一定時間保持できるよう、2時間以上であることが好ましく、4時間以上であることがさらに好ましい。また、特に−15〜−25℃の温度条件下、1時間から100時間保持して凍結することが優れた接合力を得る観点から好ましい。
本発明の第一の製造方法において、凍結した後、融解する、及び/又は凍結乾燥することが好ましい。融解、及び/又は凍結乾燥することにより、各種の用途に容易に適用することができるようになる。
融解は、上記のフィブロイン多孔質体を製造する際のフィブロイン水溶液を凍結した後の融解と同じであり、特に制限はなく、自然融解、恒温槽での保管等により行うことができる。
このようにして得られたフィブロイン複合体には、この時点では製造過程で使用したフィブロイン水溶液の一部及び添加剤が繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の細孔中に含まれている。フィブロイン水溶液及び添加剤を含むフィブロイン複合体はそのまま使用することもでき、また用途に応じて、フィブロイン水溶液及び添加剤等を除去する必要がある場合は、例えば該複合体を純水中に浸漬して除去すればよい。
本発明のフィブロイン複合体の製造方法において、乾燥フィブロイン複合体を得る場合、凍結乾燥を行う。凍結乾燥は、融解を経て行うこともできるし、凍結の後に融解を経ることなく、直ちに行うこともできる。乾燥フィブロイン複合体を得るための工程を減らし、より簡便にする観点から、凍結乾燥は、融解を経ることなく、凍結の後に直ちに行うことが好ましい。
ここで、凍結後直ちに凍結乾燥をする場合には、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方を浸漬する混合物に加える添加剤はグリセリンであることが好ましい。グリセリンを添加することで複合体に柔軟性を付与することができるとともに、乾燥による割れを防止することができる。混合物中でのグリセリンの濃度は、フィブロイン多孔質体を形成する際にしようしたフィブロイン水溶液中で、0.2〜2.5体積%であることが好ましく、0.25〜2体積%であることがより好ましく、0.25〜1.2体積%であることがさらに好ましい。
凍結乾燥の方法は、上記のフィブロイン多孔質体を製造する際の凍結乾燥の方法と同じであり、凍結乾燥することでフィブロイン多孔質体の収縮を抑えて乾燥することができる。凍結乾燥の場合、残った氷が融解して水になり、その表面張力の影響で空孔が潰れないようにする観点から、水分が完全に昇華するまで乾燥することが好ましい。
また、凍結乾燥の処理を行う前に、フィブロイン複合体をグリセリン水溶液に浸漬することが好ましいことも、上記のフィブロイン多孔質体の製造方法における凍結乾燥と同じである。グリセリン水溶液におけるグリセリンの濃度は、フィブロイン多孔質体を形成する際に使用したフィブロイン水溶液中で、0.2〜2.5体積%であることが好ましく、0.25〜2体積%であることがより好ましく、0.25〜1.2体積%であることがさらに好ましい。この範囲にグリセリン濃度を設定することで質感が良く、ひび割れの無い乾燥フィブロイン複合体を得ることができる。このようにして得られる乾燥フィブロイン複合体は、乾燥後にも繊維支持体及びフィブロイン多孔質体にグリセリンを含有することを特徴とする。
本発明の第二のフィブロイン複合体の製造方法は、フィブロイン水溶液と、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、の混合物に、繊維支持体を浸漬し、凍結することを特徴とするものである。この製造方法は、フィブロイン多孔質体を製造する際に用いるフィブロイン水溶液中に繊維支持体を浸漬し、合わせて凍結することで、フィブロイン多孔質体と同時に該繊維支持体と該多孔質体とが接合されてなるフィブロイン複合体を製造することができる。
ここで、繊維支持体、フィブロイン多孔質体は上記のフィブロイン多孔質体の製造において説明したものと同じであり、フィブロイン水溶液と水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤との混合物も、上記のフィブロイン多孔質体の製造において説明したものと同じである。また、浸漬、凍結、さらには凍結後の融解、凍結乾燥も上記のフィブロイン多孔質体の製造において説明したものと同じである。
混合物に繊維支持体を浸漬する際、フィブロイン水溶液を流し込む容器内に設置することになる。当該容器に繊維支持体を固定しない場合、凍結する過程で繊維支持体が容器内で浮き上がる、移動する等により、波を打ったような形状となってしまい、所望の形状の複合体を安定して得られないことがあるため、繊維支持体を固定しておくことが好ましい。例えば、繊維支持体を容器の底面、又は表面に固定すると、繊維支持体/フィブロイン多孔質体という層構成を有する複合体が得られ、繊維支持体を容器の底面と表面との間に固定すると、フィブロイン多孔質体/繊維支持体/フィブロイン多孔質体という層構成を有する複合体が得られる。繊維支持体を容器内に設ける態様を調整することにより、所望する層構成に応じた複合体を得ることができる。
繊維支持体を固定する方法に特に制限はなく、例えば、容器に挟み込む、容器にテープで貼り付けて固定する等の方法が挙げられる。
本発明の第三のフィブロイン複合体の製造方法は、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体を水及び水溶性液状有機物質から選ばれる少なくとも一種に浸漬し、該繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方の、少なくとも片面にフィブロイン水溶液と、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、の混合物を塗布し、塗布した面を挟むようにして積層した後、凍結することを特徴とする。
ここで、繊維支持体、フィブロイン多孔質体は上記のフィブロイン多孔質体の製造において説明したものと同じであり、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類も、上記のフィブロイン多孔質体の製造において説明したものと同じである。
フィブロイン水溶液中のフィブロインの含有量は、2〜10wt/vol%であることが好ましく、2〜8wt/vol%であることがより好ましく、さらにwt/vol%であることが好ましい。フィブロインの含有量が上記範囲内であると、複合体が硬くなりすぎず良好な質感が得られ、また良好な接合力が得られる。
フィブロイン水溶液中の添加剤の含有量は、0.1〜18体積%であることが好ましく、0.5〜6体積%であることがより好ましく、2〜5体積%であることがさらに好ましい。添加剤の含有量が上記範囲内であると、良好な接合力が得られる。
混合物の塗布は、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方の、少なくとも片面に行う。得られるフィブロイン複合体の良好な質感を得る観点から、繊維支持体に混合物を塗布することが好ましい。
また、塗布する方法としては、特に制限はないが、例えば、刷毛、スプレーで塗布することが好ましい。
混合物の塗布の後、塗布した面を挟むようにして積層した後、凍結する。積層は、上記のフィブロイン多孔質体の製造において説明したものと同じである。
優れた接合力を得る観点から、積層した後、凍結する前に10分程度静置することが好ましい。
その後の凍結温度としては、添加剤を加えたシルクフィブロイン水溶液が凍結する温度であれば特に制限はないが、−5〜−40℃程度が好ましく、−10〜−30℃程度がより好ましく、−15〜−25℃がさらに好ましい。凍結時間としては、添加剤を加えたシルクフィブロイン水溶液が十分に凍結し、かつ凍結状態を一定時間保持できるよう、2時間以上であることが好ましく、4時間以上であることがさらに好ましい。また、特に−15〜−25℃の温度条件下、1時間から100時間保持して行うことが優れた接合力を得る観点から好ましい。さらに、凍結後の融解は、上記のフィブロイン多孔質体を製造する際のフィブロイン水溶液の凍結と同じである。
フィブロイン複合体の乾燥が必要な場合、凍結乾燥は、融解を経て行うこともできるし、凍結の後に融解を経ることなく、直ちに行うこともできる。乾燥フィブロイン複合体を得るための工程を減らし、より簡便にする観点から、凍結乾燥は、融解を経ることなく、凍結の後に直ちに行うことが好ましい。
ここで、凍結後直ちに凍結乾燥をする場合には、繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方を浸漬する混合物に加える添加剤はグリセリンであることが好ましい。グリセリンを添加することで複合体に柔軟性を付与することができるとともに、乾燥による割れを防止することができる。混合物中でのグリセリンの濃度は、フィブロイン多孔質体を形成する際にしようしたフィブロイン水溶液中で、0.2〜2.5体積%であることが好ましく、0.25〜2体積%であることがより好ましく、0.25〜1.2体積%であることがさらに好ましい。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)接合力の評価
実施例及び比較例で得られたシルクフィブロイン複合体について、繊維支持体の端部のシルクフィブロイン多孔質体が無い部分を指でつまんで30秒間持ち上げて、繊維支持体とシルクフィブロイン多孔質体とが剥離しないか目視し、下記の基準で評価した。
○ :全く剥離することがなかった。
△ :ほとんど剥離することがなかった。
× :剥離が生じた。
(2)引張強さの測定
実施例及び比較例で得られたシルクフィブロイン複合体について、下記の方法で引張強さを測定した。
50mm×5mmの大きさに切削したシルクフィブロイン複合体の試験片について、万能試験機(「EZ−(N)S(型番)」、(株)島津製作所製)を用い、ロードセルは50N、つかみ具は引張試験用の冶具を用い、引張速度5mm/min、初期つかみ具間距離30mm、室温22℃の条件下で測定した。また、スパンレース不織布、織布を繊維支持体として使用する場合は、繊維配向方向、及び繊維配向方向に対して垂直方向についてそれぞれ引張強さを測定した。
(3)引裂き強さの測定
100mm×15mmの大きさに切削し、かつ長さ40mmの切込みを入れた、トラウザ形に打ち抜いたシルクフィブロイン複合体の試験片について、万能試験機(「EZ−(N)S(型番)」、(株)島津製作所製)を用い、ロードセルは5N、つかみ具は引張試験用の冶具を用い、引裂き速度200mm/min、初期つかみ具間距離40mm、室温22℃の条件下で、引裂き力の中央値を測定し、以下の式により算出した値である。また、スパンレース不織布、織布を繊維支持体として使用する場合は、繊維配向方向、及び繊維配向方向に対して垂直方向についてそれぞれ引裂き強さを測定した。
引裂き強さ=引裂き力の中央値(N)/試験片の厚さ(m)
(4)シルクフィブロイン複合体の断面の観察
実施例及び比較例で得られたシルクフィブロイン複合体の断面を、走査型電子顕微鏡(「Neo Scope JCM−5000(型番)」、日本電子(株)製)を使用して、高真空Pt蒸着モード、加速電圧10kVで観察した。
製造例1:シルクフィブロイン多孔質体の製造
(シルクフィブロイン水溶液の調製)
シルクフィブロイン水溶液は、高圧精錬済み切繭(ながすな繭(株)製)40gを9M臭化リチウム水溶液400mLに溶解し、常温で4時間攪拌して溶解した。次いで、遠心分離(回転速度:12,000rpm、5分間)して、デカンテーションで沈殿物を除去した後、透析チューブ(Spectra/PorR1 Dialysis Membrane、MWCO6,000−8,000、Spectrum Laboratories, Inc.製)に注入し、超純水製造装置(「PRO−0500(型番)」及び「FPC−0500(型番)」、オルガノ(株)製)から採水した超純水5Lに対して12時間の透析を5回繰り返し、シルクフィブロイン水溶液を得た。
得られたシルクフィブロイン水溶液2mLをポリスチレン製容器に分取し、秤量した後、庫内温度をあらかじめ−20℃程度に調整しておいたノンフロン冷蔵冷凍庫(「R−Y370(型番)」、(株)日立製作所製)の冷凍室で12時間かけて凍結し、凍結乾燥機(「FDU−1200(型番)」、東京理化器械(株)製)中で7時間凍結乾燥した。得られた乾燥物を凍結乾燥機から取り出して30秒以内に秤量し、重量減少からシルクフィブロイン水溶液中のシルクフィブロイン濃度(wt/vol%)を定量した。
(シルクフィブロイン多孔質体の製造)
濃度を測定したシルクフィブロイン水溶液に、酢酸及び超純水を加え、シルクフィブロイン濃度4wt/vol%、酢酸濃度2体積%のシルクフィブロイン水溶液を調製した。このシルクフィブロイン水溶液をアルミ製容器(内側サイズ:60mm×80mm×0.4mm、60mm×80mm×0.8mm、60mm×80mm×3mmの三種類)に流し込んで封入し、−5℃の低温恒温槽(「NCB−3300(型番)」、東京理化器械(株)製)に入れて2時間保持し、その後、低温恒温槽の温度を5時間かけて−20℃まで下げて、−20℃で5時間保持した。凍結した試料を室温で自然解凍してから、容器から取り出し、シルクフィブロイン多孔質体を得た。
容器から取り出したシルクフィブロイン多孔質体を10Lの超純水中で12hごとに水を換えて5日間静置し、酢酸を除去した。酢酸除去後のシルクフィブロイン多孔質体を3体積%のグリセリン水溶液10Lに3日間浸漬した後、−25℃に維持した冷凍庫中で6時間かけて凍結した。得られた凍結物を凍結乾燥機(「FD−550P(型番)」、東京理化器械(株)製)に入れて3日間かけて凍結乾燥した。得られた乾燥物を以下の実施例中でシルクフィブロイン多孔質体として使用した。このようにして得られたシルクフィブロイン多孔質体は、柔軟で肌触りがよく、質感に優れるものであった。
得られたシルクフィブロイン多孔質体について平均細孔径を求めたところ、68.3μmであることが分かった。ここで、平均細孔径は、多孔質体の走査型電子顕微鏡写真を5枚撮影し、さらに異なる日に作製した多孔質体の走査型電子顕微鏡写真を5枚撮影し、それら10枚の走査型電子顕微鏡写真を画像解析ソフト(「ImageJ(商品名)」、アメリカ国立衛生研究所製)を用いて画像処理し、算出した細孔径の平均値である。
得られたシルクフィブロイン多孔質体について空孔率を求めたところ、96.2%であることが分かった。ここで、空孔率は、得られた多孔質体を純水中に1日静置し完全に吸水させ、秤量した後(湿重量)、凍結乾燥して多孔質体中の水分を完全に除去し、再度秤量した(乾燥重量)。水の密度を1g/cm3、フィブロインの密度を1.2g/cm3、含水状態のフィブロイン多孔質体の密度を1g/cm3と仮定し、次式に従ってシルクフィブロイン多孔質体の空孔率の測定を行って得られた値である。
空孔率=(湿重量−乾燥重量/1.2)/湿重量×100
また、得られたシルクフィブロイン多孔質体にグリセリンが含まれているか否かを、全反射の赤外分光法で評価した。測定には、赤外分光装置(「FTS 6000 SPECTROMETER(型番)」、Bio−Rad社製)を用いた。この結果、図5に示されるように、C−O、O−Hの吸収が増大していることから、シルクフィブロイン多孔質体内にはグリセリンが含まれていることが分かった。
実施例1
シルクフィブロイン水溶液(シルクフィブロイン濃度:1質量%、グリセリン濃度:2体積%)を用意し、繊維支持体及び製造例1で得られたシルクフィブロイン多孔質体(厚さ:0.8mm)の全体を浸漬し、積層し、次いで−25℃に維持した冷蔵庫(ホシザキ電機(株)製)で凍結した後に、融解してシルクフィブロイン複合体を作製した。ここで、繊維支持体としてシルクのスパンレース不織布(目付け:30g/m、サイズ:70mm×90mm、(株)ユウホウ製)を用い、−25℃の冷蔵庫内で5時間保存して凍結を行い、23℃の部屋で静置して融解を行った。得られたシルクフィブロイン複合体について、接合力の評価を行った。評価の結果を第1表に示す。
実施例2〜11
実施例1において、多孔質層の厚さ、繊維支持体の種類、及び繊維支持体とシルクフィブロイン多孔質体との接合に用いるシルクフィブロイン水溶液の濃度、添加剤の種類とその濃度を第1表に記載のものにかえた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜10のシルクフィブロイン複合体を作製した。
*1,以下の繊維支持体を使用した。
繊維支持体A:スパンレースシルク不織布(目付け:30g/m、サイズ:70mm×90mm、(株)ユウホウ製)
繊維支持体B:ニードルパンチシルク不織布(目付け:50g/m、サイズ:70mm×90mm、(株)田幸製)
繊維支持体C:スパンレースコットン不織布(目付け:30g/m、サイズ:70mm×90mm、丸三産業(株)製)
*2,以下の添加剤を使用した。
添加剤G:グリセリン
添加剤A:酢酸
添加剤E:エタノール
実施例12〜20
実施例1〜7、10及び11において、繊維支持体とシルクフィブロイン多孔質体を積層し、凍結した後に融解せず、そのまま凍結乾燥機(「FD−550P(型番)」、東京理化器械(株)製)に入れ、3日間かけて凍結乾燥した以外は実施例2と同様にして乾燥シルクフィブロイン複合体を作製した。得られた乾燥シルクフィブロイン複合体は、いずれも割れ等の発生が無く、柔軟な乾燥シルクフィブロイン複合体となった。
実施例21及び22
実施例8及び9で得られたシルクフィブロイン複合体を、5Lの純水中に浸漬し、洗浄を行った。洗浄は12時間ごとに純水を交換しながら3日間かけて行った。次いで、得られた洗浄済みシルクフィブロイン複合体を5Lの4体積%グリセリン水溶液に48時間浸漬し、−25℃の冷凍庫中で5時間保存して凍結した後、凍結乾燥機(「FD−550P(型番)」、東京理化器械(株)製)に入れ、3日間かけて凍結乾燥して、各々実施例21及び22の乾燥シルクフィブロイン複合体を作製した。これらの乾燥シルクフィブロイン複合体は、いずれも割れ等の発生が無く、柔軟な乾燥シルクフィブロイン複合体となった。
実施例23
シルクフィブロイン水溶液(シルクフィブロイン濃度:3wt/vol%、グリセリン濃度:2体積%)を用意し、シルクフィブロイン水溶液に繊維支持体の全体を浸漬し、シルクフィブロイン多孔質体の全体を水に浸漬し、積層し、次いで−25℃に維持した冷蔵庫(ホシザキ電機(株)製)で凍結した後に、融解してシルクフィブロイン複合体を作製した。ここで、繊維支持体としてシルクのスパンレース不織布(目付け:30g/m、サイズ:70mm×90mm、(株)ユウホウ社製)を用い、−25℃の冷蔵庫内で5時間保存して凍結を行い、23℃の部屋で静置して融解を行った。得られたシルクフィブロイン複合体について、接合力の評価を行った。評価の結果を第2表に示す。
実施例24〜32
実施例23において、多孔質層の厚さ、繊維支持体の種類、及び繊維支持体とシルクフィブロイン多孔質体との接合に用いるシルクフィブロイン水溶液の濃度、添加剤の種類とその濃度を第2表に記載のものにかえた以外は、実施例23と同様にして実施例24〜32のシルクフィブロイン複合体を作製した。
*1,以下の繊維支持体を使用した。
繊維支持体A:スパンレースシルク不織布(目付け:30g/m、サイズ:70mm×90mm、(株)ユウホウ製)
繊維支持体B:ニードルパンチシルク不織布(目付け:50g/m、サイズ:70mm×90mm、(株)田幸製)
*2,以下の添加剤を使用した。
添加剤G:グリセリン
添加剤A:酢酸
添加剤E:エタノール
実施例33
実施例24において、シルクフィブロイン多孔質体を水にかえてグリセリン水溶液(グリセリン濃度:4体積%)、繊維支持体とシルクフィブロイン多孔質体を積層し、凍結した後に融解せず、そのまま凍結乾燥機(「FD−550P(型番)」、東京理化器械(株)製)に入れ、3日間かけて凍結乾燥した以外は実施例24と同様にして乾燥シルクフィブロイン複合体を作製した。得られた乾燥シルクフィブロイン複合体は、割れ等の発生が無く、柔軟な乾燥シルクフィブロイン複合体となった。
実施例34
実施例30得られたシルクフィブロイン複合体を、5Lの純水中に浸漬し、洗浄を行った。洗浄は12時間ごとに純水を交換しながら3日間かけて行った。次いで、得られた洗浄済みシルクフィブロイン複合体を5Lの4体積%グリセリン水溶液に48時間浸漬し、−25℃の冷凍庫中で5時間保存して凍結した後、凍結乾燥機(「FD−550P(型番)」、東京理化器械(株)製)に入れ、3日間かけて凍結乾燥して乾燥シルクフィブロイン複合体を作製した。得られた乾燥シルクフィブロイン複合体は、割れ等の発生が無く、柔軟な乾燥シルクフィブロイン複合体となった。
実施例35
製造例1で作製したシルクフィブロイン水溶液にグリセリン及び超純水を加えて、シルクフィブロイン濃度を1wt/vol%とし、グリセリンの濃度を2体積%のシルクフィブロイン水溶液を用意した。このシルクフィブロイン水溶液を、繊維支持体を底部に敷いたアルミ製容器(内側サイズ:60mm×80mm×3mmの三種類)に流し込んで封入し、−5℃の低温恒温槽(「NCB−3300(型番)」、東京理化器械(株)社製)に入れて2時間保持し、その後、低温恒温槽の温度を5時間かけて−20℃まで下げて、−20℃で5時間保持した。凍結した試料を室温で自然解凍してから、容器から取り出し、シルクフィブロイン複合体を得た。ここで、繊維支持体としてシルクのスパンレース不織布(目付け:30g/m、(株)ユウホウ製)を用いた。得られたシルクフィブロイン複合体について、接合力の評価を行った。評価の結果を第3表に示す。
実施例36〜44
実施例35において、繊維支持体の種類、及び繊維支持体とシルクフィブロイン多孔質体との接合に用いるシルクフィブロイン水溶液の濃度、添加剤の種類とその濃度を第3表に記載のものにかえた以外は、実施例36と同様にして実施例36〜44のシルクフィブロイン複合体を作製した。
*1,以下の繊維支持体を使用した。
繊維支持体A:スパンレースシルク不織布(目付け:30g/m、サイズ:70mm×90mm、(株)ユウホウ製)
繊維支持体B:ニードルパンチシルク不織布(目付け:50g/m、サイズ:70mm×90mm、(株)田幸製)
繊維支持体C:スパンレースコットン不織布(目付け:30g/m、サイズ:70mm×90mm、丸三産業(株)製)
繊維支持体D:スパンレースレーヨン不織布(目付け:40g/m、サイズ:70mm×90mm、オーミケンシ(株)製)
*2,以下の添加剤を使用した。
添加剤G:グリセリン
添加剤A:酢酸
添加剤E:エタノール
実施例45
実施例36において、繊維支持体とシルクフィブロイン多孔質体を積層し、凍結した後に融解せず、そのまま凍結乾燥機(「FD−550P(型番)」、東京理化器械(株)製)に入れ、3日間かけて凍結乾燥した以外は実施例36と同様にして乾燥シルクフィブロイン複合体を作製した。得られた乾燥シルクフィブロイン複合体は、割れ等の発生が無く、柔軟な乾燥シルクフィブロイン複合体となった。
実施例46
実施例40で得られたシルクフィブロイン複合体を、5Lの純水中に浸漬し、洗浄を行った。洗浄は12時間ごとに純水を交換しながら3日間かけて行った。次いで、得られた洗浄済みシルクフィブロイン複合体を5Lの4体積%グリセリン水溶液に48時間浸漬し、−25℃の冷凍庫中で5時間保存して凍結した後、凍結乾燥機(「FD−550P(型番)」、東京理化器械(株)製)に入れ、3日間かけて凍結乾燥して乾燥シルクフィブロイン複合体を作製した。得られた乾燥シルクフィブロイン複合体は、割れ等の発生が無く、柔軟な乾燥シルクフィブロイン複合体となった。
実施例47〜49
製造例1において用いる酢酸にかえてエタノールを用いた以外は製造例1と同様にしてシルクフィブロイン多孔質体を作製し、該シルクフィブロイン多孔質体を実施例2、24、及び36において用いた以外は各実施例と同様にして、実施例47〜49のシルクフィブロイン複合体を得て、接合力を評価した。これらの実施例で得られたシルクフィブロイン複合体の接合力の評価は全て○であり、優れていることが確認された。
実施例50〜52
製造例1において用いる酢酸にかえてエタノールを用いた以外は製造例1と同様にしてシルクフィブロイン多孔質体を作製し、該シルクフィブロイン多孔質体を実施例12、33、及び44において用いた以外は各実施例と同様にして、実施例50〜52のシルクフィブロイン複合体を得て、接合力を評価した。これらの実施例で得られたシルクフィブロイン複合体の接合力の評価は全て○であり、優れていることが確認された。
実施例53〜55
製造例1において用いる酢酸にかえてジメチルスルホキシドを用いた以外は製造例1と同様にしてシルクフィブロイン多孔質体を作製し、該シルクフィブロイン多孔質体を実施例2、24、及び36において用いた以外は各実施例と同様にして、実施例53〜55のシルクフィブロイン複合体を得て、接合力を評価した。これらの実施例で得られたシルクフィブロイン複合体の接合力の評価は全て○であり、優れていることが確認された。
実施例56〜58
製造例1において用いる酢酸にかえてジメチルスルホキシドを用いた以外は製造例1と同様にしてシルクフィブロイン多孔質体を作製し、該シルクフィブロイン多孔質体を実施例12、33、及び45において用いた以外は各実施例と同様にして、実施例56〜58のシルクフィブロイン複合体を得て、接合力を評価した。これらの実施例で得られたシルクフィブロイン複合体の接合力の評価は全て○であり、優れていることが確認された。
比較例1
製造例1で得られるシルクフィブロイン多孔質体を比較例1とした。比較例1のシルクフィブロイン多孔質体について、引張強さ、引裂き強さを上記の方法で測定した。測定値を第4表に示す。
また、実施例1及び24のシルクフィブロイン複合体について、引張強さ、引裂き強さを上記の方法で測定した。その測定値を第4表に示す。
実施例1及び24と比較例1との対比から、本発明のシルクフィブロイン複合体の引張強さと引裂き強さは非常に優れており、機械的強度に優れていることが確認された。また、シルクフィブロイン複合体を作製するにあたり、シルクフィブロイン多孔質体を水に浸漬することにより、より良好な機械的強度が得られることが確認された。
また、比較例1のシルクフィブロイン多孔質体の内部構造、及び実施例12で得られたシルクフィブロイン複合体の断面構造を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。具体的には、比較例1のシルクフィブロイン多孔質体を液体窒素中で凍結破砕して、その内部構造を、実施例12で得られたシルクフィブロイン複合体は、手術用メスで繊維支持体からシルクフィブロイン多孔質体に刃が通るように切断して得られた断面を、走査型電子顕微鏡(「Neo Scope JCM−5000(型番)」、日本電子(株)製)を用いて観察した。該顕微鏡の測定条件は、高真空Pt蒸着モード、加速電圧10kVとした。比較例1のシルクフィブロイン多孔質体の内部構造、及び実施例12で得られたシルクフィブロイン複合体の断面の走査型電子顕微鏡写真を、各々図3及び4に示す。
図3から、比較例1のシルクフィブロイン多孔質体の内部は多孔質体の構造を有するのみであるが、実施例12で得られたシルクフィブロイン複合体の断面の写真画像(図4)によれば、繊維支持体とシルクフィブロイン多孔質体からなるシルクフィブロイン複合体が得られていることが確認された。
本発明のフィブロイン多孔質体は、エステティックサロン又は個人での使用による化粧品・エステ分野、とりわけフェイスマスク、アイマスク等のスキンケア部材として極めて有用である。また、再生医療における細胞培養支持体(足場材料)、指、肘、膝等の人体の稼動部への貼り付けが想定される創傷被覆材、薬剤徐放担体、癒着防止剤等の医療分野の他、紙おむつ、生理用品等の生活日用品分野での使用にも極めて有用である。
10 フィブロイン複合体
11 繊維支持体
12 フィブロイン多孔質体
31 繊維支持体
32 シルクフィブロイン多孔質体

Claims (24)

  1. 繊維支持体とフィブロイン多孔質体とを備え、該支持体と該多孔質体とが少なくともフィブロインにより接合されてなるフィブロイン複合体。
  2. 繊維支持体が、不織布、織布、フェルト、及びメッシュから選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のフィブロイン複合体。
  3. 繊維支持体の目付けが10〜200g/mである請求項1又は2に記載のフィブロイン複合体。
  4. 繊維支持体の少なくとも一部にフィブロインを含む請求項1〜3のいずれかに記載のフィブロイン複合体。
  5. 繊維支持体、又は繊維支持体とフィブロイン多孔質体とが、グリセリンを含む請求項1〜4のいずれかに記載のフィブロイン複合体。
  6. フェイスマスク又はアイマスクに用いられる請求項1〜5のいずれかに記載のフィブロイン複合体。
  7. フィブロインがシルクフィブロインである請求項1〜6のいずれかに記載のフィブロイン複合体。
  8. 繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方を、フィブロイン水溶液と、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、の混合物に浸漬し、該繊維支持体と該フィブロイン多孔質体とを重ね合わせた後、凍結することを特徴とするフィブロイン複合体の製造方法。
  9. 繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の両方を混合物に浸漬する請求項8に記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  10. 繊維支持体を混合物に浸漬し、かつフィブロイン多孔質体を水に浸漬する請求項8に記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  11. 繊維支持体を水に浸漬し、かつフィブロイン多孔質体を混合物に浸漬する請求項8に記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  12. 混合物に含まれる水溶性液状有機物質がグリセリンである請求項8〜11のいずれかに記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  13. 凍結の後、融解する請求項8〜12のいずれかに記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  14. 凍結の後、凍結乾燥する請求項8〜12のいずれかに記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  15. フィブロイン水溶液と、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、の混合物に、繊維支持体を浸漬し、凍結することを特徴とするフィブロイン複合体の製造方法。
  16. 凍結の後、融解する請求項15に記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  17. 凍結の後、凍結乾燥する請求項15に記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  18. 繊維支持体及びフィブロイン多孔質体を水及び水溶性液状有機物質から選ばれる少なくとも一種に浸漬し、該繊維支持体及びフィブロイン多孔質体の少なくとも一方の、少なくとも片面にフィブロイン水溶液と、水溶性液状有機物質及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも一種の添加剤と、の混合物を塗布し、塗布した面を挟むようにして積層した後、凍結することを特徴とするフィブロイン複合体の製造方法。
  19. 水溶性液状有機物質が、グリセリンである請求項18に記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  20. 繊維支持体が、不織布、織布、フェルト、及びメッシュから選ばれる少なくとも一種からなる請求項8〜19のいずれかに記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  21. 繊維支持体の目付けが、10〜200g/mである請求項8〜20のいずれかに記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  22. 混合物中のフィブロインの濃度が1〜10wt/vol%である請求項8〜21のいずれかに記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  23. 混合物中の添加剤の濃度が0.1〜5体積%である請求項8〜22のいずれかに記載のフィブロイン複合体の製造方法。
  24. フィブロインがシルクフィブロインである請求項8〜23のいずれかに記載のフィブロイン複合体の製造方法。
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