JP2015208738A - 排煙脱硫装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】排ガスの流入量を大容量化でき、簡素な構成で、低コスト化が図れるガス混合器を設けた排煙脱硫装置の提供である。
【解決手段】ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスの一部を導入して排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する吸収塔1と、吸収塔1をバイパスして、排ガスの残りが導入されるバイパスダクト4と、バイパスダクト4の側面に設けられ、吸収塔1で硫黄酸化物が吸収除去された排ガスが導入される開口部4aと、バイパスダクト4内であって開口部4a近傍の排ガス流れ上流側に、頂点12aを排ガス上流側に有し、開口部4a側に偏心して設けられた錐体の排ガス混合器12を備える。簡素な構造の排ガス混合器12で吸収塔1を通過した被処理ガスと未処理ガスとを混合させることができ、且つバイパスダクト4の内壁温度を高く維持することができるため、内壁の硫酸腐食を抑制できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、火力発電所や工場等に設置されるボイラ等の燃焼装置から発生する排ガス中の硫黄酸化物を除去する排煙処理装置に係わり、特に、排ガスの一部のみを脱硫する低脱硫率の排煙脱硫装置に関する。
排煙脱硫装置として、排ガスに吸収液を噴霧して排ガス中の有害物質である硫黄酸化物を吸収除去する吸収塔を備えた湿式排煙脱硫装置がある。要求される脱硫率が低い場合には、排ガスの一部のみを脱硫して残りの排ガスは脱硫後の排ガスと共に大気に排出するシステムとした湿式排煙脱硫装置が知られており、図11には、このシステムの従来の排煙脱硫装置の系統を示す。
この排煙脱硫装置は、主に、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)を吸収除去する吸収塔1と、吸収塔1への排ガス導入口となる入口ダクト2と、吸収塔1からの排ガス排出口となる出口ダクト3と、吸収塔1を迂回するバイパスダクト4と、脱硫処理された排ガスと未処理の排ガスとが混合される混合器5と、混合後の排ガスを大気に排出するための煙突6と、吸収塔1内の吸収液の循環ポンプ7と、吸収塔1内に吸収液を供給するための石灰石供給設備8と、吸収塔1内の吸収液を抜き出すための抜出ポンプ9と、抜出ポンプ9により抜き出された吸収液から石膏を回収するための石膏脱水設備10と、使用された吸収液を処理する排水処理設備11等から構成される。
図示しないボイラから排出される排ガスは、図示しない脱硫ファンにより入口ダクト2から吸収塔1に導入される。吸収塔1では石灰石供給設備8から送られた石灰石(炭酸カルシウム)又は石灰を含むスラリ等の吸収剤を含んだ吸収液が吸収液循環ポンプ7によって汲み上げられ、吸収塔1内のスプレノズル15から噴射される。そして、排ガスと吸収液との気液接触により、排ガス中の煤塵や塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)等の酸性ガスと共に、排ガス中のSOx(主にSO2)が吸収除去される。脱硫処理された排ガスは吸収塔1の塔頂部に設けられた出口ダクト3から排出される。
この間、SO2を吸収した吸収液は、吸収塔1下部の循環タンク17に溜まり、タンク17に吹き込まれる空気中の酸素により酸化されて硫酸カルシウム(石膏)を生成する。
炭酸カルシウム及び石膏が共存する循環タンク17内の吸収液の一部は、吸収液抜出ポンプ9によって抜き出され、石膏脱水設備10で脱水される。石膏脱水設備10で石膏と分離される濾液の一部は排水処理設備11に送られ、残りの濾液は石灰石供給設備8を経由して吸収塔1に戻される。また、吸収塔1や石膏脱水設備10には蒸発する水分を補給するために補給水が供給される。
要求される脱硫率が低い場合には、図11に示すように排ガスの全量を吸収塔1に通さず、その一部のみを処理し、バイパスダクト4を流れる未処理ガスと合流させた後、煙突6から排出させることで十分対応できる。これにより吸収塔1のコンパクト化が図られ、脱硫システム全体のコストを低減できる。
出口ダクト3から排出される排ガスは低温で水分飽和の状態であり腐食性が強いため、通常は煙突6までの排ガスダクトに耐食性の高い材料が適用される。しかし、脱硫処理された排ガスとバイパスダクト4を流れる高温の未処理ガスとを素早く混合させて水分飽和状態から解くことで、排ガスダクトの腐食性を緩和でき、耐腐食性の高級材料を適用する部分を少なくすることが可能となる。
その方法として、一般的にはガス混合器5が用いられ、例えば、下記特許文献1等に開示されている。これらの構造を有するガス混合器を用いれば、脱硫処理されたガスと未処理ガスとを素早く均一に混合することができる。
特許文献1によれば、ダクト内に別の気体を吹き込む流入部に、複数の吹込通路を接続し、各吹込通路の吹込口を、ダクト内のガス流に沿って気体が吹き込まれるようにダクト内に配置したガス混合装置が開示されている。
また、特許文献2によれば、脱硫処理されたガスと未処理ガスとをガス混合器で混合した後、この混合ガスに、更に未処理ガスを流入させることで効率よく混合させている。
更に、ガス混合装置としては、下記特許文献3に、排ガス脱硝装置において、排ガス中に吹き込まれたアンモニアガスを均一に混合分散させるように、還元剤(アンモニア)を吹き込む注入ノズルと、その下流の流路を絞るレジューサーと、レジューサーの出口が開口された分散空間と、レジューサー出口に対向配置された撹拌部材と、撹拌部材の背面側の混合空間とを設けた構成が開示されている。
特開平8−215553号公報 特開2001−38146号公報 特開2009−136716号公報
特許文献1記載のガス混合装置では、吹込通路がダクト内部に組み込まれており、ダクトに対する吹込通路の排ガス処理効率を考慮すると、断面積比率を考慮しても、例えば全体の排ガス量の50%以上もの多量の排ガスをガス混合器内に吹き込むことはできない。
また、特許文献2に記載のガス混合器では、ガス混合器内に未処理ガスを流入させ、更に未処理ガスのガス混合器への流入をバイパスさせる工夫をすることでその問題を克服している。しかし、ガス混合器をバイパスするための排ガス流路が必要となり、装置全体の構造が複雑となる。そして、ガス混合器における未処理ガスの流入量は、一部がバイパスされる分、少なくなるため、いずれにしてもガス混合器に高級材料を適用せざるを得ないことからガス混合器や装置全体のコストを抑えることは難しい。
更に、特許文献3に記載のガス混合器では、レジューサーや撹拌部材などの様々な部材を設けており、その設置空間を確保する必要もある。従って、ガス混合器の構造が複雑になると共に、排ガスダクトや引いては装置全体の大型化を招く。
本発明の課題は、排ガス量の一部を脱硫する部分脱硫システムにおいて、流入する排ガス量を大容量化でき、簡素な構成で、低コスト化が図れるガス混合器を設けた排煙脱硫装置を提供することである。また、本発明の課題は、低温の脱硫処理された排ガスと高温の未処理ガスの合流部における排ガスの温度分布のいち早い均一化が図れるガス混合器を設けた排煙脱硫装置を提供することである。
上記本発明の課題は、下記の構成を採用することにより達成できる。
請求項1記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスの一部を導入して排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する吸収塔(1)と、該吸収塔(1)をバイパスして、前記排ガスの残りが導入されるバイパスダクト(4)と、該バイパスダクト(4)の側面に設けられ、前記吸収塔(1)で硫黄酸化物が吸収除去された排ガスが導入される開口部(4a)と、バイパスダクト(4)内であって開口部(4a)近傍の排ガス流れ上流側に、頂点(12a)を排ガス上流側に有し、開口部(4a)の設置部側に偏心して設けられた錐体の排ガス混合器(12)とを備えた排煙脱硫装置である。
請求項2記載の発明は、前記バイパスダクト(4)は断面が正方形であり、前記排ガス混合器(12)は、断面が長方形の四角錐形であって、且つ前記開口部(4a)からの排ガス導入方向の底辺Wm1と排ガス導入方向に直交する方向の底辺Wm2との関係が、Wm2/Wm1=0.7〜1.25であり、開口部(4a)のある側面の隣接面間の中央に配置される請求項1記載の排煙脱硫装置である。
請求項3記載の発明は、前記排ガス混合器(12)は、その側面又は一辺が前記バイパスダクト(4)の開口部(4a)の設置部側側面に接して、バイパスダクト(4)内に設けられている請求項1又は請求項2に記載の排煙脱硫装置である。
請求項4記載の発明は、前記排ガス混合器(12)は、開口部側の側面又は一辺が前記バイパスダクト(4)の開口部(4a)の設置部側側面から所定間隔空けて、バイパスダクト(4)内に設けられている請求項1又は請求項2に記載の排煙脱硫装置である。
(作用)
従来技術のガス混合器における問題点は、脱硫処理された排ガス(以下、被処理ガスと言う)と未処理ガスの二種類のガスを完全に混合することに主眼を置いているため、ガス混合器の構造が複雑であり、ガス混合器への流入ガス量の大容量化やガス混合器の簡素化及び低コスト化に関しては十分考慮されていない点にある。従って、排ガス量の一部を脱硫する部分脱硫システムには適用できない、あるいはコストが高くなるなどの問題がある。
しかし、本発明においては、バイパスダクトの側面に設けた開口部に吸収塔の出口ダクトを接続して、バイパスダクトの開口部近傍の排ガス流れ上流側に、頂点を排ガス上流側に有し、バイパスダクトの開口部の設置部側に偏心した錐体の排ガス混合器を設けている。
従来技術では二種類のガスを完全に混合しようとしているのに対して、本発明は、ある程度ガスの混合は促進させるものの、基本的にガス合流部以降のダクト内壁面近傍のガス温度を高めることでダクトの腐食を抑制するものである。ダクトの内壁温度が低いと、水分飽和状態でダクト内面は常に濡れた状態であり、排ガス中のSO2が吸収されて硫酸になるため、ダクトの腐食を促進させてしまう。しかし、ある程度ダクトの内壁温度を上げることで、硫酸腐食を抑制できる。
そして、ダクトの内壁温度を高めるために、本発明によれば、バイパスダクトを流れる高温の未処理ガスを、脱硫処理された排ガスとの合流部の下流側の内壁近傍に流れやすくすることで、ダクト内壁近傍のガス温度を高く維持できる。
錐体の排ガス混合器をバイパスダクトの上流側から見た場合、排ガス混合器は開口部側に偏心しているため、開口部設置面以外のダクト壁面と排ガス混合器との間には十分な隙間が形成されている。従って、バイパスダクトを流れる未処理ガスはダクトの内壁近傍側に誘導される。これにより、温度の高い未処理ガスは、吸収塔出口からの低温の被処理ガスを包むように内壁近傍側に集中的に多く流れるようになる。
更に、錐体の排ガス混合器の存在によって、排ガスは排ガス混合器の頂部から側面に沿って流れ、排ガス混合器の下端部での剥離によって下流側に渦(縦渦)が流れ方向に生じるため、その渦によってバイパスダクトを流れる未処理ガスと吸収塔出口ダクトからの被処理ガスとの混合が促進される。従って、低温の脱硫処理された排ガスと高温の未処理ガスの合流部における排ガスの温度分布をいち早く均一にできる。
尚、特許文献3には、ガス混合装置内に、頂部から下流側外方に傾斜する4枚の案内板からなる撹拌部材が開示されているが、これはガス合流位置である注入ノズルの位置よりもずっと離れた下流側に配置されている。本発明による排ガス混合器は開口部より排ガス流れ下流側、すなわち排ガスの合流部より下流側に設置しても、開口部から吹き込まれる低温の被処理ガスを周囲から包み込む作用はない。従って、本発明によれば、排ガス混合器をバイパスダクトの開口部近傍の排ガス流れ上流側に設置することに意味があり、前記作用を奏することができる。
したがって、請求項1記載の発明によれば、排ガス混合器によって温度の高い未処理ガスをダクトの内壁近傍側に多く流してダクトの内壁温度を上げることで、内壁の腐食を抑制できると共に、渦流を発生させることで高温の未処理ガスと脱硫処理された排ガスとの混合も促進できる。
また、バイパスダクトと排ガス混合器の形状を変更することで、ダクトの内壁温度やこの温度の変動率は変わってくる。バイパスダクトを断面正方形とし、排ガス混合器を断面が長方形の四角錐形として、排ガス混合器を開口部のある側面の隣接面間の中央に配置する場合に、排ガス混合器の底辺のうち開口部からの被処理ガスの導入方向の底辺Wm1と被処理ガス導入方向に直交する方向の底辺Wm2との比が大きすぎたり小さすぎたりすると、バイパスダクトの内壁と排ガス混合器の底辺間の距離が長すぎたり短すぎたりして、ダクトの内壁温度が高く維持されないことや温度変動の要因となる。
そこで、請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の作用に加えて、ダクトの内壁温度を比較的高く維持でき、また温度変動率を抑えられるように排ガス混合器の底辺比(Wm2/Wm1)を適切な値に設定することで、より一層、ダクト内壁の腐食の抑制や排ガスの混合の促進が達成される。
更に、請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、排ガス混合器が、排ガス混合器の側面又は一辺がバイパスダクトの開口部側側面に接して設けられることで、低温の被処理ガスが流入してくる部分をマスキングできる。これにより、低温の被処理ガスがバイパスダクトの流入側と反対側の側面に到達しやすくなり、その結果、排ガス全体の混合が良好となる。
一方、請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、排ガス混合器の側面又は一辺がバイパスダクトの開口部側側面から所定間隔空けて設けられることで、未処理ガスが開口部側の側壁にも若干流れる。従って、脱硫処理された排ガスとの合流部でも開口部側側壁の排ガス温度の低下が抑制されるため、ダクトの内壁温度を全体的に高く維持できる作用がある。
請求項1記載の発明によれば、簡素な構造の排ガス混合器で吸収塔を通過した被処理ガスとバイパスダクトを流れる未処理ガスとを混合させることができ、且つダクトの内壁温度を高く維持することができるため、内壁の硫酸腐食を抑制できる。従って、流入する排ガス量の大容量化にも対応できると共に、耐腐食性の高級材料を適用する部分を少なくすることが可能となり、排ガス混合器や装置の低コスト化が図れる。更に、低温の脱硫処理された排ガスと高温の未処理ガスの合流部における排ガスの温度分布のいち早い均一化が可能となる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、ダクトの内壁温度やこの温度の変動率が適切となるようにバイパスダクトの形状及び排ガス混合器の底辺形状等を設定することで、より一層、ダクト内壁の腐食の抑制や排ガスの混合の促進が達成される。
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、低温の被処理ガスがバイパスダクトの流入側と反対側の側面に到達しやすくなり、排ガス全体の混合が良好となる。
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、ダクトの内壁温度を全体的に高く維持できることで、ダクト内壁の硫酸腐食の防止効果が向上する。
本発明の一実施例である排煙脱硫装置の系統を示す図である。 バイパスダクトと吸収塔出口ダクトとの接続部を示した図であり、バイパスダクトの混合器周辺の内部を示した斜視図である。 図3(a)は図2の平面図であり、図3(b)は図2の正面図であり、図3(c)は図2の側面図である。 排ガス混合器を設置しない場合(図4(a))と設置した場合(図4(b))の未処理ガスと被処理ガスの流れを模式的に示した図である。 バイパスダクト内のガス温度分布を示した図である。 バイパスダクト内の吸収塔出口ダクトの接続部からの距離と内壁の最低温度との関係を示した図である。 バイパスダクト内の吸収塔出口ダクトの接続部からの距離と内壁の排ガス温度変動率との関係を示した図である。 混合器の底面に位置する四角形のアスペクト比とダクト内壁最低温度並びに排ガス温度変動率との関係を示した図である。 混合器の他の例であり、一辺のみがバイパスダクトの開口部側壁面に接するように配置した混合器の図である。 混合器の他の例であり、バイパスダクトの開口部側壁面から所定間隔離して設置した場合の混合器の図である。 従来技術の排煙脱硫装置の系統を示す図である。
以下に、本発明の実施の形態を示す。
以下に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1には、本発明の一実施例である排煙脱硫装置の系統を示す。なお、図1の排煙脱硫装置において、図11の排煙脱硫装置と同じ符号の部材の説明は一部省略している。
また、図2には、バイパスダクトと吸収塔出口ダクトとの接続部付近の斜視図を示しており、バイパスダクトの内部を示している。尚、見やすいように、バイパスダクトと吸収塔出口ダクトを切断した図を示し、バイパスダクトの側面のうち一部の図示を省略している。また、図3(a)には図2の平面図を示し、図3(b)には図2の正面図(バイパスダクトの排ガス流れ上流側から下流側を見た図)を示し、図3(c)には図2の側面図を示している。
図示しないボイラから排出される排ガスは、図示しない脱硫ファンにより入口ダクト2から吸収塔1に導入される。吸収塔1では石灰石供給設備8から送られた炭酸カルシウム又は石灰を含むスラリ等の吸収剤を含んだ吸収液が吸収液循環ポンプ7によって汲み上げられ、吸収塔1内のスプレノズル15から噴射される。そして、排ガスと吸収液との気液接触により、排ガス中の煤塵やHCl、HF等の酸性ガスと共に、排ガス中のSOx(主にSO2)が吸収除去される。脱硫処理された排ガスは吸収塔1の塔頂部に設けられた出口ダクト3から排出される。
この間、SO2を吸収した吸収液は、吸収塔1下部の循環タンク17に溜まり、タンク17に吹き込まれる空気中の酸素により酸化されて石膏を生成する。
炭酸カルシウム及び石膏が共存する循環タンク17内の吸収液の一部は、吸収液抜出ポンプ9によって抜き出され、石膏脱水設備10で脱水される。石膏脱水設備10で石膏と分離される濾液の一部は排水処理設備11に送られ、残りの濾液は石灰石供給設備8を経由して吸収塔1に戻される。また、吸収塔1や石膏脱水設備10には蒸発する水分を補給するために補給水が供給される。
本実施例では、バイパスダクト4内の吸収塔出口ダクト3との接続部近傍に錐体の排ガス混合器12を設けている。具体的には、図2に示すように、バイパスダクト4の一側面に設けた開口部4aに吸収塔1からの出口ダクト3を接続し、開口部4aの排ガス流れ上流側に、頂点12aが排ガス上流側を向くように四角錐形の排ガス混合器12を設けている。排ガス混合器12は、バイパスダクト4内の図示しない支持部材により支持したり、バイパスダクト4の内壁面に固着又は固定させたりすることで、容易に設置できる。
また、この排ガス混合器12は出口ダクト3が接続される開口部4aの設置部側に偏心しており、すなわち頂点12aが中心位置ではなく開口部4a側に偏っている。なお、この例では四角錐形の排ガス混合器12を用いているが、円錐形でも三角錐形などの角錐でも良く、底面の有無は問わない。
排ガス混合器12をバイパスダクト4の上流側から見た場合、排ガス混合器12は開口部4a側に偏心しているため、吸収塔出口ダクト3が接続される面以外の三面の内壁側には十分な隙間が形成されている。従って、バイパスダクト4を流れる未処理ガスは内壁近傍側に誘導される。これにより、温度の高い未処理ガスは、出口ダクト3から流入する低温の被処理ガスを包むように内壁近傍側に集中的に多く流れるようになる。
図4には、排ガス混合器12を設置しない場合(図4(a))と設置した場合(図4(b))の未処理ガスと被処理ガスの流れを模式的に示し、各ダクト内の未処理ガスの領域Aと被処理ガスの領域Bを示している。
排ガス混合器12を設置しない場合は、低温の被処理ガスがバイパスダクト4の流入側と反対側の側面に到達しにくく、未処理ガスと被処理ガスとが混合されにくい。しかし、バイパスダクト4内に、開口部4a側に偏心している排ガス混合器12を設けることで、排ガス混合器12によって出口ダクト3からバイパスダクト4内へ低温の被処理ガスが流入してくる部分を塞ぐこと(マスキング)ができる。本実施例では、図3に示すように四角錐形の排ガス混合器12の一面をバイパスダクト4の開口部4a側壁面に接するように配置していることで、上記マスキング効果が高く、低温の被処理ガスがバイパスダクト4の流入側と反対側の側面に到達しやすくなり、排ガス全体の混合が良好となる。
図5には、図2及び図3に示す排ガス混合器12をバイパスダクト4内に設置した場合のバイパスダクト4内のガス温度分布を示し、数値解析によってバイパスダクト内のガス温度分布を計算した結果を示している。排ガス混合器12は底面に位置する四角形の辺の長さWmがWm1=Wm2(図3)の正方形のものとし、開口部4aのある側面の隣接面間の中央(Z軸方向の中央)に、図2及び図3に示すように設置した。また、排ガス混合器12の高さHmは、その底辺Wmの半分程度の高さ、すなわちHm=(1/2)Wmとした。
図3に示すように、バイパスダクト4は断面が一辺の長さWbdの正方形であり、その一側面のZ軸方向の中央位置に一辺の長さWfdの正方形の開口部4aを設け、該開口部4aに断面形状が開口部4aと同じ形状である出口ガスダクト3を接続している。
測定条件としては、図1に示す装置を用いて、未処理ガスの温度を142℃とし、出口ダクト3を流れる被処理ガスの温度を58℃として、また、全排ガス流量の60%を吸収塔1で処理し、残りの40%の排ガスをバイパスダクト4に流して、被処理ガスと未処理ガスとの合流後に煙突6に流入する際の平均温度が90℃となる条件で、数値解析を行った。後述の図6〜図8における測定条件も同様とした。なお、各流路における条件を以下に示す。
入口ダクト2とバイパスダクト4に分岐前の未処理ガス(全排ガス)の条件:ガス量2,434,500m3N/h、ガス温度142℃、SO2濃度444ppm、ガス流速15m/s、8.28m四方のダクト
被処理ガスとの合流前のバイパスダクト4における条件:ガス量973,800m3N/h、ガス温度142℃、SO2濃度444ppm、ガス流速6m/s、8.28m四方のダクト
吸収塔出口ダクト3における条件:吸収塔脱硫率95%、ガス量1,556,900m3N/h(水分蒸発により若干増加)、ガス温度58℃、SO2濃度37ppm、ガス流速15m/s、5.91m四方のダクト
被処理ガスとの合流後のバイパスダクト4における条件:ガス量2,530,700m3N/h、ガス温度90℃、SO2濃度200ppm、ガス流速13.63m/s、8.28m四方のダクト
図5からも、排ガス混合器12の存在によって出口ダクト3から流入する低温の被処理ガスが、バイパスダクトを流れる高温の未処理ガスに包み込まれている様子が分かる。
更に、四角錐形の排ガス混合器12の存在によって、排ガスは排ガス混合器12の頂点12aから側面に沿って流れ、排ガス混合器12の下端部での剥離によって下流側に縦渦が生じるため、その渦の存在によってバイパスダクト4を流れる未処理ガスと出口ダクト3からの被処理ガスとの混合が促進される。これらの現象は、四角錐形に限らず、円錐形や他の角錐形でも同様である。
図6には、バイパスダクト4内の開口部4aからの距離と内壁の最低温度との関係を示し、図7には、バイパスダクト4内の開口部4aからの距離と内壁の排ガス温度変動率との関係を示す。図6における内壁の最低温度は、四面すべての温度のうち、最低温度を取ったものである。丸のプロットはバイパスダクト4内に四角錐形の排ガス混合器12を設置した場合を示し、四角のプロットは排ガス混合器12を設置しない場合を示している。
また、これらの図では、開口部4aの排ガス下流側端部からの距離(ガス流れ方向の長さ)をLとした場合のLとWbdの比(L/Wbd)を横軸とした。尚、排ガス混合器12の高さHmは(1/2)Wm程度が最適であるが、(1/4)Wm〜Wmの範囲でも効果がある。高さHmがこの範囲よりも低すぎると、平板を置くのと同じようになって排ガスの圧力損失が大きくなる傾向があり、逆に高すぎると排ガスの圧力損失は低くなるものの、渦流の効果が小さくなってしまうことから上記範囲で設定すると良い。
バイパスダクト4の内壁温度が低いと、水分飽和状態でダクト内面は常に濡れた状態であり、排ガス中のSO2が吸収されて硫酸になるため、ダクトの腐食を促進させてしまう。しかし、ある程度ダクトの内壁温度を上げることで、硫酸腐食を抑制できる。
ダクトの内壁温度を80℃以上に維持することで硫酸腐食を抑制できることが経験的に分かっている。一般的に燃焼排ガスの水露点は50〜60℃(水分濃度依存)であるが、実験による経験値から、これよりも高い80℃以上にすることで、水が凝縮せずダクト内面が濡れなくなる。吸収塔1出口にガスガスヒータ(GGH)がある場合は、腐食性は低くなるが、GGHがない場合の低温ガスでは煙突内面に耐酸処理をする必要がある。
バイパスダクト4内に排ガス混合器12を設置しない場合は未処理ガスと被処理ガスとの混合性が悪いため、バイパスダクト4の内壁における最低温度が80℃に到達することはない。これに対して本実施例による排ガス混合器12を設置した場合は、バイパスダクト4の内壁側に高温の未処理ガスが誘導されるため、図5及び図6に示すように、すぐにダクト内壁の最低温度は110℃まで上昇する。排ガスが下流側に流れるのに伴い内壁温度は低下する傾向にあるが、いずれにせよ80℃以上の温度が維持されている。
また、図5〜図7において、排ガス混合器12のダクト内の断面占有率(バイパスダクト4の断面積のうち排ガス混合器12の底面の断面積が占める割合)は40%とした。断面占有率が30%以下では、80℃以上の高温が保持されにくくなる一方、40%よりも大きくすると80℃以上の温度は保持されるものの、排ガスの圧力損失が高くなる。
一方、排ガス温度変動率は、ダクト内壁のガス温度の標準偏差を平均ガス温度で除した値であるが、このガス温度変動率の目標値は経験的観点から25%としている。いくら内壁温度が高くても、両者のガスが混ざっていなければ中心部の低温ガスが壁側に達すると腐食の問題が発生する。排ガス温度変動率が25%以下の場合は水分飽和となる50〜60℃の領域は全体の5%以下であり、この程度であれば問題がないことを経験的に把握している。
図7に示したように排ガス混合器12を設置しない場合は目標とするガス温度変動率の25%を下回ることはないが、排ガス混合器12を設置することで容易に25%以下の状態に排ガスを混合することが可能となる。
ガス温度変動率とは、各L/Wbdにおけるダクト断面のガス温度を複数測定して、その測定結果の標準偏差と平均ガス温度から算出される。すなわち、例えばL/Wbd=1の地点の断面温度を数十点測定して、その標準偏差と平均値からL/Wbd=1の地点におけるガス温度変動率が求められ、L/Wbd=2やL/Wbd=3でも同様である。
また、バイパスダクト4と排ガス混合器12の形状を変更することで、ダクトの内壁温度やこの温度の変動率は変わってくる。ダクトの内壁温度が80℃以上になるように、また温度変動率が25%以下になるようにバイパスダクト4の形状及び排ガス混合器12の底辺形状を設定することで、より一層、ダクト内壁の腐食の抑制や排ガスの混合の促進が達成される。
図8には、図2及び図3に示すように四角錐形の排ガス混合器12を開口部4aのある側面のZ軸方向の中央に配置して、排ガス混合器12の底面に位置する四角形のアスペクト比(Wm2/Wm1)を変えた場合のアスペクト比とダクト内壁の最低温度との関係並びにアスペクト比とガス温度変動率との関係を示している。丸のプロットはダクト内壁の最低温度を示し、四角のプロットはガス温度変動率を示している。なお、アスペクト比は、Wm2×Wm1(面積)を変えずに両者の値を変えることで変更した。
横軸のWm2/Wm1は、バイパスダクト4に被処理ガスが流入する方向における排ガス混合器12の底辺をWm1(図3)、それに直交する方向における排ガス混合器12の底辺をWm2とした場合のそれぞれの比である。Wm2/Wm1の値が大きすぎたり小さすぎたりすると、バイパスダクト4の内壁と排ガス混合器12の底辺間の距離が長すぎたり短すぎたりして、ダクトの内壁温度が高く維持されないことや温度変動の要因となる。
本実施例では、図8に示すように、ダクト内壁の最低温度が80℃以上で、且つガス温度変動率が25%以下となる条件は、Wm2/Wm1が0.7〜1.25の時であった。従って、Wm2/Wm1、すなわち排ガス混合器12の底面に位置する四角形のアスペクト比としては0.7〜1.25の範囲に設定することが望ましい。
ここで、出口ダクト3の径(開口部4aの径)をWfdとした場合に、Wm2/Wm1が小さくなればWfd>Wm2となり、Wm2/Wm1が大きくなればWfd<Wm2となる。図3に示した図示例では、Wfd>Wm2となっているが、アスペクト比が1.25の場合はWfd<Wm2となる。つまり、アスペクト比が0.7〜1.25の範囲であれば、WfdとWm2との関係には特に限定はなく、すなわち開口部4aの大きさはあまり関係がなく、ほぼ同等の効果が得られることになる。
なお、Wfdは、吸収塔1で処理する排ガス流量比(本実施例では60%)によって決まる因子であり、前記測定条件より、下記式で求められる。
1556900×(273+58)/273/3600/15=Wfd2 (1)
また、本実施例の場合、排ガス混合器12の設置によるバイパスダクト4の遮蔽率を40%(バイパスダクト4の断面積(Wbd×Wbd)のうち、排ガス混合器12の底面部分の断面積(Wm1×Wm2)が40%を占める)とし、逆に言えば排ガス混合器12の設置部分ではバイパスダクト4の60%を未処理ガスの流路として確保することで、全排ガス流量のうちバイパスダクト4に流れるガス流量割合の40%よりも大きくなる。従って、その場合はバイパスダクト4を流れる未処理ガスにとって排ガス混合器12が抵抗になることはなく、圧力損失の増加を招くこともない。
図9には、排ガス混合器12の他の例を示す。図9に示す例では、排ガス混合器12の形状が異なる点、また排ガス混合器12の底辺の一辺のみをバイパスダクト4の開口部4a側壁面に接するように配置している点で図2及び図3に示した例とは異なるが、その他の点では実施例1と同様であるので詳細な説明は省略する。
本実施例でも、排ガス混合器12によって出口ダクト3からバイパスダクト4内の低温の被処理ガスが流入してくる部分をマスキングできることで、低温の被処理ガスがバイパスダクト4の流入側と反対側の側面に到達しやすくなり、排ガス全体の混合が良好となり、実施例1と同様の効果を奏することができる。
尚、本実施例は、四角錐形の排ガス混合器12の一面をバイパスダクト4の開口部4a側壁面に接するように配置した場合と比べて、開口部4a側壁面にも未処理ガスが若干流れることで、開口部4a設置面のダクト壁面近傍の排ガス温度も高く維持できる作用がある。
図10には、排ガス混合器12の他の例を示す。図10に示す例では、排ガス混合器12をバイパスダクト4の開口部4a側壁面から若干離して配置している点で図2及び図3に示した例とは異なるが、排ガス混合器12の形状など、その他の点では実施例1と同様であるので詳細な説明は省略する。
本実施例でも、排ガス混合器12によって出口ダクト3からバイパスダクト4内の低温の被処理ガスが流入してくる部分をマスキングできることで、低温の被処理ガスがバイパスダクト4の流入側と反対側の側面に到達しやすくなり、排ガス全体の混合が良好となり、実施例1と同様の効果を奏することができる。
バイパスダクト4の開口部4a側壁面と排ガス混合器12との間隔Mは、例えばM/Wbd=0.01〜0.1となるように、バイパスダクト4内の図示しない支持部材により排ガス混合器12を設置する。間隔Mを大きくしすぎると上記マスキング効果が小さくなるため、上記範囲で設定すると良い。
本実施例では、排ガス混合器12の開口部側側面がバイパスダクト4の側面と平行になるように配置しているが、斜めに配置しても良く、図9に示すような排ガス混合器12をバイパスダクト4の開口部4a側壁面から若干離して設けても良い。
尚、本実施例の場合も、四角錐形の排ガス混合器12の一面をバイパスダクト4の開口部4a側壁面に接するように配置した場合と比べて、開口部4a側壁面にも未処理ガスが若干流れることで、開口部4a設置面のダクト壁面近傍の排ガス温度も高く維持できる作用がある。また、実施例2の場合よりも、開口部4a側壁面に流れる未処理ガス量が多い分、ダクト壁面近傍の排ガス温度を全体的に高く維持できる。
排煙脱硫装置の他にも、腐食性の強いガスとそれ以外のガスとを混合させる方法として、利用可能性がある。
1 吸収塔 2 入口ダクト
3 出口ダクト 4 バイパスダクト
5 ガス混合器 6 煙突
7 吸収液循環ポンプ 8 石灰石供給設備
9 吸収液抜出ポンプ 10 石膏脱水設備
11 排水処理設備 12 排ガス混合器
15 スプレノズル 17 循環タンク

Claims (4)

  1. ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスの一部を導入して排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する吸収塔と、
    該吸収塔をバイパスして、前記排ガスの残りが導入されるバイパスダクトと、
    該バイパスダクトの側面に設けられ、前記吸収塔で硫黄酸化物が吸収除去された排ガスが導入される開口部と、
    バイパスダクト内であって開口部近傍の排ガス流れ上流側に、頂点を排ガス上流側に有し、開口部の設置部側に偏心して設けられた錐体の排ガス混合器と
    を備えたことを特徴とする排煙脱硫装置。
  2. 前記バイパスダクトは断面が正方形であり、
    前記排ガス混合器は、断面が長方形の四角錐形であって、且つ前記開口部からの排ガス導入方向の底辺Wm1と排ガス導入方向に直交する方向の底辺Wm2との関係が、Wm2/Wm1=0.7〜1.25であり、開口部のある側面の隣接面間の中央に配置されることを特徴とする請求項1記載の排煙脱硫装置。
  3. 前記排ガス混合器は、その側面又は一辺が前記バイパスダクトの開口部の設置部側側面に接して、バイパスダクト内に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排煙脱硫装置。
  4. 前記排ガス混合器は、開口部側の側面又は一辺が前記バイパスダクトの開口部の設置部側側面から所定間隔空けて、バイパスダクト内に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排煙脱硫装置。
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