JP2015208260A - エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ - Google Patents

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Abstract

【課題】ラクトコッカス・ラクティスに由来する新規なエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼとして発現させるベクターを構築し、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを大腸菌内で発現させることにより、効率よく生産する方法の提供。
【解決手段】ラクトコッカス属に属する微生物ラクトコッカス・ラクティス由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼをコードする遺伝子を取り出し、該遺伝子を含有する組換えベクターを作成し、該ベクターで形質転換した形質転換体を培養する事によって、新規なエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを発現させ、精製する。
【選択図】なし

Description

本発明は新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼに関するものである。詳しくはラクトコッカス属由来のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼに関するものである。更に本発明は、微生物ラクトコッカス・ラクティスに由来するエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含む組換えプラスミド、該プラスミドにより形質転換された生物、該形質転換体を用いた新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの製造法に関するものである。
糖タンパク質は動植物の組織、真核微生物の細胞膜、壁などに広く存在している。近年、糖タンパク質の糖鎖が、細胞の分化、癌化、細胞間の認識などの機構に重要な役割を果たしていることが明らかになり、その機構解明のため糖鎖の構造と機能との相関について研究が進められている。その目的達成のための手段として、糖タンパク質から糖鎖を切り出す際、あるいは糖鎖の構造の同定の際に様々なグリコシダーゼが用いられている。その中でも、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、糖タンパク質に存在するアスパラギン結合型糖鎖(N−結合型糖鎖、N型糖鎖)に作用して、糖鎖中に存在するジアセチルキトビオース部分を切断し糖鎖を遊離する作用を有する。
エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、糖タンパク質の糖鎖部分の還元末端側のN-アセチルグルコサミン部分をタンパク質に残した形で切断することができるため、糖タンパク質中の糖鎖結合部位同定や糖鎖構造、糖鎖の機能の解明に役立つと考えられる。アスパラギン結合型糖鎖は、その構造から大きく高マンノース型(マンナン型糖鎖)、ハイブリッド型及びコンプレックス型の3つに分類されるが、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼで切断できる糖鎖構造と出来ないものが存在する。
従来知られているエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼとしては、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼH(EndoH,Endo−H,endo−H)(非特許文献1)、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼF(Endo F)(非特許文献2)、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼA(EndoA)(非特許文献3)、EndoM(非特許文献4、特許文献1)、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼD(EndoD,Endo−D,endo−D)(非特許文献5)、エンドグリコシダーゼS(EndoS,Endo−S,endo−S)(非特許文献6)等が挙げられるが、これらの酵素は基質特異性を持っている為、特定の糖鎖構造に対して作用し、すべての糖鎖構造を網羅的に切断できるエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは報告されていない。 乳酸菌は、効率的な糖代謝を行う為に様々なグリコシダーゼを有している事が知られており、近年、β−ガラクトシダーゼやエキソ−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、アミラーゼ等が発見され、クローニングされている。
乳酸菌の菌体を用いた従来の育種法により酵素生産性の向上を目指すことも考えられる。しかし、従来の育種方法は、主として、紫外線や変異誘発剤によって得られる変異株から選択する方法に限られていたため、安定な変異体を単離するのが困難であった。また、従来法による育種の場合、好まざる形質変化を伴うことも多い。更に、一般的に乳酸菌は様々なタンパク質分解酵素を生成するため、糖変換を目的とした酵素を生産するには好ましいものではない。従って、これらの問題点を除去するには多段の精製ステップを踏まねばならないため、作業が繁雑となり、かつ酵素の収量も少ない。例えば、乳酸菌の一種であるラクトコッカス属に属する微生物を培養し、その培養上清より酵素の精製を行っても、プロテアーゼの混入を除くことができず、かつ菌体の酵素生産性が低いため大量調製をすることが困難であり、実用上の価値は少なかった。
以上のことから、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを大量生産するためには、該酵素の遺伝子を取得し、遺伝子工学的にそれを生産することが望まれている。さらに、遺伝子を取得出来れば、蛋白工学の技術を用いて、耐熱性、耐pH性の向上、反応速度が増大された酵素を得ることも期待できる。
ラクトコッカス・ラクティスのゲノムDNAの塩基配列において、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼと推定されるアミノ酸配列をコードする遺伝子は数種類知られている。既知のEndo−Mの部分アミノ酸配列と同一性が25%であるアミノ酸配列をもつラクトコッカス・ラクティスのタンパク質をNCBI blastpで検索すると、アライメントスコアの高い6つの配列が得られる。ラクティス亜種(subsp.lactis)に属するKF147株(Accession YP003354031.1)、Il1403株(Accession NP267648.1)、IO−1株(Accession YP007508732.1)、CV56株(Accession YP005868766.1)、亜種と株が不明のAccession WP017864703.1、およびクレモリス亜種(subsp.cremoris)に属するCNCM I−1631株(Accession WP003130095.1)である。しかしながら、これらは塩基配列から推定されたタンパク質であり、タンパク質を発現させて酵素活性を確認した報告はこれまでにない。
特開平11−332568号公報
A.L.Tarentino and F. Maley,J. Biol. Chem., 249, 811−817 (1974) J.H. Elder, S.Alexander,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79, 4540−4544 (1982) K. Takegawa, et al.,Appl. Environ. Microbiol.,55, 3107−3112 (1989) S. Kadowaki, et al.,Agric. Biol. Chem.,54, 97−106 (1990) S. Ito, et al.,Biochem. Biophys. Res.Commun.,63, 938−944 (1975) Collin,M.and Olsen,A.,EMBO J.,20, 3046−3055 (2001) Hanahan,D. J. Mol. Biol. 166,557-580(1983) Cohen, S.N. et al.,Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69,2110-2114 (1972) Becker, D.M. et al.,Methods. Enzymol., 194, 182-187 (1990) Hinnen, A.et al.:Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929-1933 (1978) Itoh, H.,J. Bacteriol., 153,163-168 (1983) Inoue H,et al., Gene, 96, 23−28(1990)
本発明は、ラクトコッカス・ラクティスに由来する新規なエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、該エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体及び該エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、公知エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの部分アミノ酸配列情報をもとに、当該酵素の生産菌であるラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)から調製したgDNAより当該酵素をコードする新規な遺伝子を取得することに成功した。詳細には、農業生物資源研究所に受託番号MAFF 516032の番号のもとに寄託されているラクトコッカス・ラクティスから調製したgDNAより、当該酵素をコードする遺伝子をクローニングしたところ、公知の6つの塩基配列とは異なっており、新規な遺伝子を取得することができた。さらに当該新規な酵素の大腸菌での発現および精製にも成功し、当該酵素の基質特異性も試験して、本発明を完成するに至った。本発明で取得したエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼLL(EndoLL,Endo−LL)と命名する。
すなわち、本発明は、以下の(a)、(b)又は(c)の組換えタンパク質である。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号2に示されるアミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質
(c) 配列番号2に記載のアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質
さらに、本発明は、前記タンパク質の組換えタンパク質を有する融合タンパク質である。
さらに、本発明は、ラクトコッカス属に属する微生物ラクトコッカス・ラクティスに由来するエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードする配列表配列番号1に示される塩基配列からなる遺伝子である。
さらに、本発明は、前記遺伝子を含有する組換えベクターである。
さらに、本発明は、前記組換えベクターを含む形質転換体である。
さらに、本発明は、前記形質転換体を培養し、得られる培養物からエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを採取することを特徴とするエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの製造方法である。
本発明により、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ、エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体及びエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの製造方法が提供される。本発明の遺伝子を含有するベクターを宿主に導入し、遺伝子を発現させることによってエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを効率的、大量に生産することができる。本発明の酵素は、糖鎖の分析、解析、及び糖鎖の改変を行う上で産業上重要な酵素であり、本発明によって得られた形質転換体は本酵素を大量に生産し、これら酵素を用いる産業界に大いに貢献することができる。
新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼLL遺伝子の全長を含むプラスミドEndoLL/pGEX−6P−1のマップである。 発現したGST−EndoLLのSDS−PAGE像である。 EndoLL,Endo−M,Endo−D,Endo−H,Endo−S処理又は未処理のカイコ絹糸線産生マウスIgG1のSDS−PAGE像である。 カイコ絹糸線から産生されたマウスIgG1の糖ペプチド断片(Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Phe−Arg)のMSスペクトルである。 EndoLL,Endo−M,Endo−D,Endo−H,Endo−S処理又は未処理のカイコ絹糸線産生マウスIgG1の糖ペプチド断片(Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Phe−Arg)のMSスペクトルである。 EndoLL,Endo−M,Endo−D,Endo−H,Endo−S処理又は未処理のカイコ絹糸線産生マウスIgG1 10μg当たりの各糖鎖構造の抗体結合糖鎖の量(pmol)を示すグラフである。
<エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ>
本発明のタンパク質であるエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、配列番号2から選択されるアミノ酸配列を含む、もしくは該アミノ酸配列と実質的に同等なアミノ配列を含んでいる。
本発明において「実質的に同等なアミノ酸配列」とは、例えば、1個又は複数のアミノ酸の欠失、置換、挿入若しくは付加による改変を有するが、ポリペプチドの活性に影響を受けないアミノ酸配列や、70%以上の同一性を有するが、ポリペプチドの活性に影響を受けないアミノ酸配列を意味する。
改変されるアミノ酸残基の数は、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜数個、更に好ましくは1〜8個、最も好ましくは1〜4個である。本発明でいう「活性に影響を与えない改変されるアミノ酸残基の数は、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜数個、更に好ましくは1〜8個、最も好ましくは1〜4個である。本発明でいう「活性に影響を与えない改変」の例としては、保存的置換が挙げられる。「保存的置換」とは、ポリペプチドの活性を実質的に変化しないように1若しくは複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置き換えることを意味する。例えば、ある疎水性アミノ酸残基を別の疎水性アミノ酸残基によって置換する場合、ある極性アミノ酸残基を同じ電荷を有する別の極性アミノ酸残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似したアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン等が挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システイン等が挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸 としては、アルギニン、ヒスチジン、リジン等が挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
本明細書における「同一性(identity)」とは、当該技術分野において公知の相同性検索プログラムであるFASTA3[Science,227,1435(1985);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,2444(1988);http://www.ddbj.nig.ac.jp]においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いて算出される数値である。前記同一性としては、好ましくは80%以上の同一性、より好ましくは90%以上の同一性、更に好ましくは95%以上の同一性、最も好ましくは98%以上の同一性である事ができる。
本発明のタンパク質は、成熟タンパク質部分に対応する各アミノ酸配列、又はそれらと実質的に同等なアミノ酸配列のN末端、C末端及びアミノ酸の側鎖に、酵素活性に影響を与えない範囲で、任意のポリペプチド配列を付与する事ができる。このようなポリペプチド配列としては、例えば、シグナル配列、検出用マーカー(例えば、Mycタグ)、精製用ポリペプチド[例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GSTタグ)やHisタグ、FLAGタグ]を挙げる事が出来る。
<エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子>
本発明のポリヌクレオチドであるエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子は、前記の本発明のタンパク質をコードする塩基配列を含む事ができ、また配列番号1に記載の塩基配列、あるいは、該塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列を含む事ができる。本発明において「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後のメンブレンの洗浄操作を、高温度低塩濃度溶液中で行う事を意味し、例えば、ナトリウム濃度が50〜300mM、好ましくは150mMであり、温度が50〜68℃、好ましくは65℃での条件をいう。
なお、「実質的に同等なアミノ酸配列」をコードする塩基配列は、部位特異的突然変異誘発法などを利用して調製することができる。すなわち、Kunkel法若しくは Gapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant−K(TAKARA社製)、Mutant−G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入される。
<エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子の取得>
本発明のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子は、例えば、以下の方法によりラクトコッカス・ラクティス又はその変異株から単離する事ができる。また、本発明に開示するように塩基配列が明らかとなっているため、人工的に化学合成することも可能である。
1.エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを生産する乳酸菌の培養
エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを生産する乳酸菌としては、ラクトコッカス属(Lactococcus属)に属する菌体、好ましくはラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、より好ましくは農業生物資源研究所(茨城県つくば市観音台2丁目1−2)に寄託されているLactococcus lactis(受託番号MAFF516032)が挙げられる。
これらの菌株の培養に用いる培地組成は通常の微生物の培養に用いられるものであればどのようなものでもよい。炭素源としては、例えばグルコース、シュークロース、マンノース、ガラクトース、マルトース、可溶性デンプン、デキストリン等の糖質、窒素源としては酵母エキス、トリプトン等が挙げられる。無機塩としては上記の窒素源に含有する無機塩の他に、各種ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩等の塩類が用いられ、場合によってはビタミン類などを添加してもよい。
培養は培地を通常の方法で滅菌し、菌株を接種後、25〜30℃、pH6〜8で3〜4日間静置又は嫌気撹拌培養を行う。本発明においては、温度が27〜30℃、pHが7、培地はGAMブイヨン「ニッスイ」(日本製薬株式会社)を用いた。
2.gDNAの精製
GAMブイヨン「ニッスイ」培地10mLで嫌気培養したラクトコッカス・ラクティス株を9500g、3分間で遠心し、培地をデカンテーションで除去し、菌体を集めた。集めた菌体はミニプレップ用solI 300μl に懸濁し、更に3μlの組換えライソザイム溶液(30kU/μL)を加えて、室温で1時間半インキュベーションした。この溶液をー80℃のフリーザーに移し5分静置して凍結させた後、室温に戻して融解した。次いで、100mM Tris−HCl pH9.0、1% SDS 300μlを加え、60℃、10分インキュベーションしてから急冷した。
次いで、5M NaClを25分の1量加えてフェノール/クロロホルム抽出を2回、クロロホルム抽出を2回行った後に、2−Propanol 600μlを加えて穏やかに懸濁し、室温で10分静置した。糸状に析出したgDNAを70% EtOHで洗浄し、30μg/mlのRNaseを含む100μlのTE溶液で溶解して37℃、1時間インキュベーションした。この溶液にPEG溶液(1.6M NaCl、13%(w/v)PEG8000)を等量加え、4℃で一晩静置した後に4℃、17900gで遠心し、得られたペレットを70% EtOHで洗浄し、TE100μlに溶解させてゲノムDNA溶液を得た。
3.エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子の単離
このようにして得られたgDNAを鋳型として、設計したプライマーでPCRを行う事により所望のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子を単離する事が出来る。
<組換え発現ベクター及び形質転換された生物の作製>
本発明においては、配列番号2に記載されるアミノ酸配列、又はその改変アミノ酸配列をコードする塩基配列を含んだDNA分子を、宿主生物内で複製可能で、かつそのDNA分子がコードするタンパク質を発現可能な状態で含む発現ベクターが提供される。本発現ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の独立体として存在し、その複製が染色体の複製に依存しない。例えば、プラスミドを基本に構築する事ができる。また、本発現ベクターは、宿主生物に導入された時、その宿主生物のゲノム中に組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであってもよい。
(1)組換えベクターの作製
本発明において利用されるベクターは、使用する宿主細胞の種類を勘案しながら、ウイルス、プラスミド、コスミドベクターなどから適宜選択できる。例えば、宿主細胞が大腸菌の場合はλファージ系のバクテリオファージ、pBR系(pBR322, pBR325等)、pUC系(pUC118, pUC119等)のプラスミド、枯草菌の場合はpUB系のプラスミド(pUB110等)、酵母の場合はYEp、YCp系のベクター(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。本発明の遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、形質転換体の選択マーカーを含むのが好ましく、選択マーカーとしては薬剤耐性マーカー、栄養要求マーカー遺伝子を使用することができる。さらに、本発明の発現ベクターとしてのDNA分子は、新規エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、転写開始信号、リボゾーム結合部位、翻訳停止シグナル、転写終結シグナルなどの転写調節信号、翻訳調節信号などを有しているものが好ましい。
(2)形質転換体の作製
本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属に属する細菌が挙げられ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、キャンディダ・ボイジニイ(Candida boidinii)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母が挙げられる。
宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母以外に、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞が挙げられ、あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)BL21、BL21(DE3)DH5α、JM109などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)MI 114、207-21などが挙げられる。枯草菌にはタンパク質を菌体外へ分泌する株が存在することが知られている。またプロテアーゼを殆ど分泌しない株も知られており、このような株を宿主として用いることも好ましい。
プロモーターとしては、挿入断片に含まれる宿主中でも機能することができるプロモーターはもちろんのこと、大腸菌においてはラクトースオペロン(lac)、トリプトファンオペロン(trp)等のプロモーターが挙げられる。細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法[非特許文献8]、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomycescerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ・ウティリス(Candida utilis)などが用いられる。この場合、プロモーターとしては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、酸性フォスファターゼ(PHO)、ガラクトース遺伝子(GAL)、グリセルアルデビド3リン酸脱水素酵素遺伝子(GAPDH)等のプロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、AOX1プロモーター等を好ましく用いることができる。
酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法[非特許文献9]、スフェロプラスト法[非特許文献10]、酢酸リチウム法[非特許文献11]等が挙げられる。動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。プロモーターとしてSRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター等が用いられ、また、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。
動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞などが用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが用いられる。
<エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの生産>
本発明のタンパク質は、本発明の遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を有するもの、または該アミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸に前記変異が導入されたアミノ酸配列を有し、かつエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するものである。本発明のタンパク質は、前記形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、培養上清、あるいは培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で12〜72時間行う。培養期間中、pHは4〜7.5に保持する。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。培養は、通常、5%CO存在下、37℃で2〜10日行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。培養後、本発明のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより本発明のタンパク質を抽出する。また、本発明のタンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。
組換え新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの精製は、公知の分離、精製方法を適当に組み合わせて行なうことができる。例えば、GSTタグ、Hisタグなどのタグを付加させて発現させた上でのアフィニティークロマトグラフィー、塩沈殿、溶媒沈殿のような溶解性の差を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過およびSDS-ポリアクリル電気泳動のような分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーのような疎水性の差を利用する方法、さらに等電点電気泳動のような等電点の差を利用する方法等が挙げられる。
本発明においては、後記する実施例に示すように、エッシェリヒア・コリを宿主としてlacプロモーターおよびtacプロモーターの支配下にN末端側にGSTタグを融合させてこの遺伝子を発現させたところ、細胞抽出液中に高い酵素活性が認められた。このことにより、組換え体において本発明の遺伝子を発現することによって活性型の新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを大量に生産可能であることが示された。
<エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの機能>
エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、糖タンパク質に存在するアスパラギン結合型糖鎖(N−結合型糖鎖、N型糖鎖)に作用して、糖鎖中に存在するジアセチルキトビオース部分を切断し、糖タンパク質・糖ペプチドの糖鎖部分の還元末端側のN-アセチルグルコサミン部分をタンパク質に残した形で切断することができるため、糖鎖結合部位の同定や糖鎖構造決定に有用である。本発明のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、カイコ絹糸線産生マウスIgG1に結合しているM4、M5、M6、M7、M8、M9の糖鎖を切断し、糖鎖の構造を改変する事ができた。
以下、本発明をより詳細に説明するため実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、操作手順は特に記載しない限りMolecular Cloning: A Laboratory Manual (Sambrook、 Maniatisら、 Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989))に記載の方法に従った。
<実施例1> 新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの調製
(1)新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼDNAのクローニング
既知のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの部分アミノ酸配列と相同性の高いアミノ酸配列をもつタンパク質を産生するラクトコッカス・ラクティスの該アミノ酸配列をNCBI blastpにて検索し、相当するゲノム配列を元にプライマーを設計した。以下にセンス、アンチセンスのプライマー配列を記す。
EndoLL−12F(センスプライマー)
5' ttggaggattttatgaaaaaatcg 3' (配列番号3)
EndoLL stopR(アンチセンスプライマー)
5' tcagctatttttttgtcctaatacttg 3' (配列番号4)
農業生物資源研究所に受託番号MAFF 516032の番号のもとに寄託されているラクトコッカス・ラクティスから抽出したgDNAをテンプレートにして上記プライマーでPCRを行い、増幅された2.8kbpsの断片を0.8%アガロースゲル電気泳動にて分離して切り出した後、Wizard SV Gel and PCR Clean−up System(Promega)を用いて精製した。このDNA断片をテンプレートとしてさらに以下のセンス、アンチセンスのプライマーでPCRを行った。
6P1−EndoLL−F(センスプライマー)
5' gggcccctgggatccaaaaaatcgaaaaaa 3' (配列番号5)
6P1−EndoLL−R(アンチセンスプライマー)
5' atgcggccgctcgagttagctatttttttg 3' (配列番号6)
増幅された2.8kbpsの断片を0.8%アガロースゲル電気泳動にて分離して切り出した後、Wizard SV Gel and PCR Clean−up System(Promega)を用いて精製した。この断片とBamHIおよびXhoIで切断した線状のpGEX−6P−1ベクターでIn−Fusion HD Cloning Kit(Clontech)にてプラスミドEndoLL/pGEX−6P−1を構築した(図1)。
本手法で作成された新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼは、自動塩基配列決定機(Applied Biosystems社製3730x1 DNA analyzer)を用いて配列決定を行い、その配列は配列表の配列番号1に示す。
<実施例2> 新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの大腸菌での発現
宿主としては大腸菌BL−21(DE3)株を用いた。形質転換は井上らの(非特許文献12)の方法に従った。選抜はカルベニシリンを50μg/mlとなるよう添加したLB寒天培地上で行い、生育したコロニーをカルベニシリンを50μg/mlとなるよう添加したLB液体培地に植菌して37℃で培養して、OD600が0.8に達した時点で培養液を急冷しIPTGを終濃度50μg/mlとなるよう加えた。培養液は20℃で一晩回転振盪培養を行った後に集菌した。
集菌した菌体をNETN緩衝液(50mMトリス緩衝液 pH8.0、150mM塩化ナトリウム、1mM EDTA、1% NP−40)に懸濁し、QSonica社 Q125(ワケンビーテック)にて超音波破砕した。破砕液を遠心分離し分離上清にGST−Accept(ナカライテスク)ゲルを加え、4℃で2時間回転振盪培養してアフィニティークロマトグラフィーによりGST融合EndoLLを回収した。GST融合EndoLLが吸着したゲルをNETN緩衝液で洗浄した後、NET緩衝液(50mMトリス緩衝液 pH8.0、150mM塩化ナトリウム、1mM EDTA)でさらに洗浄した。NET緩衝液を等量加えた洗浄後のゲルにTurbo3C proteaseを添加して4℃で一晩回転振盪培養し、樹脂に吸着させたまま酵素消化を行った。酵素消化後の上清を回収して精製EndoLLとした。
得られたEndoLLのアミノ酸配列は、配列番号2になり、同じ反応メカニズムを持つエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼであるEndo−M,Endo−D,Endo−H,EndoSとEndoLLのアミノ酸配列の同一性を比較した結果、それぞれ25%(Expect value:5e−30),29%(Expect value:3e−79),0%,0%であった。
<実施例3> EndoLLによるカイコ絹糸線産生マウスIgG1の加水分解反応とSDS−PAGEによる確認
カイコ絹糸線産生のマウスIgG1(1mg、免疫生物研究所)とEndoLL(2μg)を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中に加え、総量500μlとして37℃で17時間静置した。この反応液に50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で平衡化したAb−Capcher ExTra(プロテノバ社)75μlを加えて室温で3時間回転振盪し、ゲル担体に抗体を吸着させた。450μlのPBSで5分間洗浄する作業を計3回行った担体に150μlの0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH2.7)を加え室温で5分間振盪し、溶出させ、溶出液に1Mトリス塩酸緩衝液(pH9.0)を2.5μl加えて中和した。この溶出作業を計3回行い、その溶出液をまとめてアミコンウルトラ−0.5(NMWL30kDa)で濃縮しPBSに置換した。得られた965μgのマウスIgG1のうち0.5μgを加水分解前のマウスIgG1同量と並べて10%SDS−PAGEにて泳動して分子量を確認した。EndoLLで加水分解を行った場合は切断された物と切断されない物が存在することが確認された(図3)。
<比較例1> Endo−M,Endo−D,Endo−H,EndoSによるカイコ絹糸線産生マウスIgG1の加水分解反応とSDS−PAGEによる確認
カイコ絹糸線から産生されるマウスIgG1(4μg)およびEndoS、Remove−iT Endo−D、Endo−H(NEB)またはEndo−M(東京化成)単体(1μg)を緩衝液中に加え、総量20μlとして37℃で6時間静置した。緩衝液はEndo−S、Remove−iT Endo−Dの場合、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を、Endo−Hの場合50mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を、Endo−Mの場合、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いた。反応後のマウスIgG1(0.5μg)を10%SDS−PAGEにて泳動して分子量を確認した(図3)。
<実施例4> マウスIgG1糖ペプチドGlu−Glu−Gln−Phe−Asn(Glycan)−Ser−Thr−Phe−Argの解析
カイコ絹糸線産生のマウスIgG1(15μg)を100mM炭酸水素アンモニウム水溶液(30μL)に溶かし、1.0%(w/v)RapiGest水溶液(3μL)、を加え、90℃で15分間加熱し、室温で30分間静置する。この溶液にシークエンスグレードのトリプシン(0.25mg/ml,5μL)を加え、37℃で12時間反応させる。反応溶液を90℃30分間、加熱する事により酵素を失活させ、G−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、濃縮する。これにDMF(5μL)を加え、60℃5分間、加熱し、200mM無水安息香酸−メタノール溶液(100μL)を加え、超音波洗浄機を用いて30分間超音波しながら反応を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液(60μL)を加え、室温にて30分間撹拌した。その後、水(200μL)を加え、EtOAc(400μL)にて3回洗浄した後に減圧濃縮を行った。この反応物をG−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、C18 Spinカラム(10mg)にロードし、水(2mL)で十分洗浄した後に、25%アセトニトリル水溶液(650μL)、50%アセトニトリル水溶液 (650μL)で回収し、減圧濃縮を行った。この試料に水(20μL)、Sepharose4B(wet50μL)、エタノール(100μL)、n−ブタノール(400μL)の順番で加え、室温で1時間、撹拌する。その後、溶液をエンプティカラムに移してn−ブタノール:エタノール:水=8:2:1(v/v/v)(2mL)で洗浄し、エタノール:水=1:2(v/v)(2mL)でマウスIgG1糖ペプチドを回収し、減圧濃縮した。
この試料を水(10μL)に溶かし、MALDIターゲットプレート上に0.5μL添加し、DHBA溶液(10mg/ml of 50%アセトニトリル水溶液)(1μL)と混合し、乾固させた。島津製作所製MALDI−QIT−TOF MS装置(AXIMA−Resonance)を用いてpositive modeでMS測定を行った。
結果を図4に示す。MS測定により、Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn−Ser−Thr−Phe−Argにパウチマンノース型M2、M3、M4の糖鎖が結合したm/z=1992.19、2154.28、2316.36と複合型GN1、GN2の糖鎖が結合したm/z=2357.39、2560.51とハイマンノース型M5、M6、M7、M8、M9の糖鎖が結合したm/z=2478.44、2640.53、2802.63、2964.72、3126.84を検出した。
<実施例5> カイコ絹糸線産生マウスIgG1のEndoLLによる消化の解析
EndoLLによって処理が施されたカイコ絹糸線産生マウスIgG1(15μg)をそれぞれ100mM炭酸水素アンモニウム水溶液(30μL)に溶かし、1.0%(w/v)RapiGest水溶液(3μL)、を加え、90℃で15分間加熱し、室温で30分間静置する。この溶液にシークエンスグレードのトリプシン(0.25mg/ml,5μL)を加え、37℃で12時間反応させる。反応溶液を90℃30分間、加熱する事により酵素を失活させ、G−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、濃縮する。これにDMF(5μL)を加え、60℃5分間、加熱し、200mM無水安息香酸−メタノール溶液(100μL)を加え、超音波洗浄機を用いて30分間室温で超音波しながら反応を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液(60μL)を加え、室温にて30分間撹拌した。その後、水(200μL)を加え、EtOAc(400μL)にて3回洗浄した後に減圧濃縮を行った。この反応物をG−25カラム(0.8×6cm,3mL)で脱塩し、C18 Spinカラム(10mg)にロードし、水(2mL)で十分洗浄した後に、25%アセトニトリル水溶液(650μL)、50%アセトニトリル水溶液 (650μL)で回収し、減圧濃縮を行った。この試料に水(20μL)、Sepharose4B(wet50μL)、エタノール(100μL)、n−ブタノール(400μL)の順番で加え、室温で1時間、撹拌する。その後、溶液をエンプティカラムに移してn−ブタノール:エタノール:水=8:2:1(v/v/v)(2mL)で洗浄し、エタノール:水=1:2(v/v)(2mL)でマウスIgG1糖ペプチドを回収し、減圧濃縮した。
この試料を水(10μL)に溶かし、MALDIターゲットプレート上に0.5μL添加し、DHBA溶液(10mg/ml of 50%アセトニトリル水溶液)(1μL)と混合し、乾固させた。島津製作所製MALDI−QIT−TOF MS装置(AXIMA−Resonance)を用いてpositive modeでMS測定を行った。
MS測定では、Bz−Glu−Glu−Gln−Phe−Asn−Ser−Thr−Phe−Argにパウチマンノース型M2、M3、M4の糖鎖が結合したm/z=1992.19、2154.28、2316.36と複合型GN1、GN2の糖鎖が結合したm/z=2357.39、2560.51とハイマンノース型M5、M6、M7、M8、M9の糖鎖が結合したm/z=2478.44、2640.53、2802.63、2964.72、3126.8を検出した。
<比較例2> カイコ絹糸線産生マウスIgG1のEndo−M,Endo−D,Endo−H,EndoSによる消化の解析
Endo−M,Endo−D,Endo−H,EndoSによって処理が施されたカイコ絹糸線産生マウスIgG1(15μg)をそれぞれ実施例4と同じ手法を用いてMS測定を行い、解析した。
結果を図5に示す。また、EndoLLによる消化により得られた各糖鎖の強度比をエ処理していない抗体の糖鎖の強度比と重ね合わせて棒グラフを作成し、当該EndoLLによりどの糖鎖が切断できたかを分析した。分析の結果を図6に示す。これにより、当該EndoLLは、カイコ絹糸線産生マウスIgG1のM4、M5、M6、M7、M8、M9の糖鎖を切断する基質特異性を持つ事が判明した。また、アミノ酸配列の同一性の近いエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼであるEndo−M(25%),Endo−D(29%)よりも全く同一性の無いEndo−H(0%)と同等の基質特異性を持っている事が分かった。
本発明により得られた新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(EndoLL)は、糖ペプチド、糖タンパク質の糖鎖を切断、改変する製造工程に使用する事ができる。また、新規エンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ(EndoLL)の基質特異性を用いて糖ペプチド、糖タンパク質の糖鎖を解析する事が出来る。

Claims (6)

  1. 以下の(a)、(b)、又は(c)の組換えタンパク質。
    (a) 配列表配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質
    (b) 配列表配列番号2に記載のアミノ酸配列において1個又は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を含むエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質
    (c) 配列表配列番号2に記載のアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質
  2. 請求項1に記載の組換えタンパク質を有する融合タンパク質
  3. ラクトコッカス属に属する微生物ラクトコッカス・ラクティスに由来するエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ活性を有するタンパク質をコードする配列表配列番号1に示される塩基配列からなる遺伝子。
  4. 請求項3に記載の遺伝子を含有する組換えベクター。
  5. 請求項4記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  6. 請求項5記載の形質転換体を培養し、得られる培養物からエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼを採取することを特徴とするエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼの製造方法。
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