JP2015203486A - ダイヤフラム式バルブ - Google Patents
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Description
従来のダイヤフラム式バルブでは、ダイヤフラムの貫通孔周辺がシーティングステムと溶接されることにより、閉鎖弁室の気密性が確保されていた。しかし、ダイヤフラムが溶接されると、溶接箇所から変形(溶接歪)が生じてしまう。溶接歪の生じたダイヤフラムが動作すると、溶接箇所の周辺が疲労破壊しやすくなる。また、ダイヤフラムのビーム溶接には、多大なる手間と費用とが掛かり、ビーム溶接は、ダイヤフラム式バルブの製造コストの少なくとも1割を超える。
従来のダイヤフラム式バルブは、ダイヤフラムの動作量で、単位時間当たりのガスの流量が決まる。通常、ダイヤフラムの動作量は0.5mm程度と極めて小さく、一般的に、ダイヤフラム式バルブは、単位時間当たりのガスの流量が少ない。ガスの流量を増大させる手段として、ダイヤフラムの動作量を大きくすることが考えられる。しかし、ダイヤフラムの動作量を大きくすると、上述した溶接箇所の周辺がより早く疲労破壊してしまう。
従来のダイヤフラム式バルブは、使い捨てを前提としていた。例えば、アンモニア、塩化水素又は塩素等の腐食性の液化ガスを対象とするダイヤフラム式バルブでは、腐食性ガスと接触する弁体(ディスク)及びダイヤフラムが劣化しやすい。このため、従来のダイヤフラム式バルブは、弁体又はダイヤフラムのいずれかが寿命に達したときに、全体を廃棄していた。
従来のダイヤフラム式バルブには、弁体に開方向の付勢力を生じさせるコイルスプリングを内蔵したものがあった(例えば、特許文献4の図1に示されたスプリング81)。しかし、コイルスプリングは、上下方向の平行を保ちにくく、その付勢力に偏荷重が生じやすい。このような偏荷重は、弁体の片当たりを生じさせ、ガス漏れの原因となる。
図1において、本実施形態に係るダイヤフラム式バルブ1は、主として、バルブ本体10と、スピンドル20と、ハンドル30と、グランドナット40と、スピンドル受け50と、ダイヤフラム60と、シーティングステム(第1保持部材)70と、ダイヤフラム固定ナット(第2保持部材)80と、グランドワッシャ90と、皿ばね100と、シートディスク(弁体)110とで構成される。
図1に示すように、バルブ本体10は、その胴部11内に断面円形の中空部11aを設けたハウジングである。バルブ本体10は、耐腐食性を有する金属材料、例えば、SUS316Lのステンレス鋼により形成される。胴部11には、下方及び側方に分岐された雄ねじ部12、13が設けられる。下方の雄ねじ部12内には、中空部11a内に通じるガスの流入路14が設けられる。また、側方の雄ねじ部13内には、中空11a内に通じるガスの流出路15が設けられる。
図1において、スピンドル20は、シートディスク110を開閉動作させるための軸部材である。スピンドル20は、例えば、耐腐食性を有するSUS304などのステンレス鋼により形成される。ここで、本実施形態では、スピンドル20の部位を特定するに際して、図1に示されたスピンドル20の最も下を「先端」とし、最も上を「後端」とする。
図1において、グランドナット40は、バルブ本体10の中空部11aの内壁面に設けられた雌ねじに螺合される。グランドナット40は、バルブ本体10の中空部11aを密閉するとともに、スピンドル20を回転自在に支持する。図2に示すように、グランドナット40は、バルブ本体10に螺合されたときに、その環状の下端面40aでグランドワッシャ90を押圧する。
図2において、スピンドル受け50は、平面座51と雄ねじ部52とを有する。平面座51は、スピンドル20の先端部22の凸曲面22aを受ける。平面座51の当接面はフラット面となっており、スピンドル20の先端部22の凸曲面22aと僅かに面接触する。スピンドル受け50は、例えば、耐腐食性を有するSUS304などのステンレス鋼により形成される。また、平面座51は、例えば、スピンドル受け50よりも高硬度を有するJIS SK5等の炭素工具工鋼を焼き入れ硬化処理したものにより形成される。平面座51を高硬度とすることで、スピンドル20の先端部22の凸曲面22aとの当接によるスピンドル受け50の摩損、変形、焼き付きを防止することができる。
図2において、ダイヤフラム60は、シートディスク110の開閉動作を許容しつつ、バルブ本体10の閉鎖弁室16を密閉する。図2及び図3に示すように、ダイヤフラム60は、その半径方向と直交する方向に変形することができる。ダイヤフラム60の動作量(変形量)が大きいほど、シートディスク110と流入口14aとの距離が大きくなり、単位時間当たりのガスの流量が多くなる。
図2において、シーティングステム70は、ダイヤフラム60A、60Bを挟持し、ダイヤフラム固定ナット80で締め付けられる。シーティングステム70は、ダイヤフラム固定ナット80の強力な締め付けトルクに耐えられる機械強度があり、且つ耐食性を持つ材料、例えば、SUS630などのステンレス鋼により形成される。シーティングステム70の底面には、嵌合凹部72が形成される。嵌合凹部72内には、シートディスク110が加締め固定される。一方、シーティングステム70の上面中心には、雄ねじ部73が設けられる。雄ねじ部73は、ダイヤフラム60の貫通孔61に挿通され、ダイヤフラム固定ナット80の雌ねじに螺合される。シーティングステム70は、ダイヤフラム固定ナット80と共に、ダイヤフラム60の貫通孔61と膨出部62との間の領域を挟持する。
図2において、ダイヤフラム固定ナット80は、例えば、SUS304などのステンレス鋼により形成される。ダイヤフラム固定ナット80は、六角柱のナット本体81と、その下側に一体成形された突出部82とを有する。ナット本体81の外側には、グランドワッシャ90及び皿ばね100が装着される。ナット本体81に装着されたグランドワッシャ90は、突出部82の上面に係止される。
図2において、グランドワッシャ90は、例えば、SUS304などのステンレス鋼により形成される。グランドワッシャ90は、厚肉の円板状の部材であり、ダイヤフラム60とほぼ同じ直径を有する。このようなグランドワッシャ90は、Oリング91を介して、バルブ本体10の中空部11a内に密閉固定されている。グランドワッシャ90は、グランドナット40の環状の下端面40aにより押圧される。
図2において、皿ばね100は、例えば、SUS304などのステンレス鋼により形成される。本実施形態では、5枚の皿ばね100を、交互に裏表を逆にして重ね合わせている。5枚の皿ばね100は、スピンドル受け50とグランドワッシャ90との間で、図中の上方向(シートディスク110の開方向)の付勢力を生じさせる。
図2、図5(b)において、シートディスク110は、バルブ本体10のガスの流入口14aを開閉させて、ガスの流通を制御する。シートディスク110は、気密性に優れ、長年使用しても容易に変形しない樹脂材料により形成される。シートディスク110は、例えば、PCTFE、PVDF又はポリアミドなどにより形成される。シートディスク110の材料としては、特に、PCTFEが好適である。
次に、上述したダイヤフラム式バルブ1によって奏される種々の作用効果について、図面を参照しつつ説明する。
図6に示すように、本実施形態のダイヤフラム式バルブ1は、ダイヤフラム60の貫通孔61と膨出部62との間の領域が、ダイヤフラム固定ナット80のフラット面82aと、シーティングステム70のエッジ71aとで狭持される構成となっている。この構成により、エッジ71aが、下側のダイヤフラム60Bに噛み込んで、閉鎖弁室16の気密性が確保される。
図4に示すように、本実施形態のダイヤフラム式バルブ1は、ダイヤフラム60A、60Bに貫通孔61を取り囲む一連の膨出部62が形成された構成となっている。この構成により、ダイヤフラム60が、その半径方向と直交する方向に大きく変形することが可能となる。また、本実施形態のダイヤフラム式バルブ1は、皿ばね100の付勢力を利用して、シーティングステム70をシートディスク110の開方向へ大きく移動させる構成となっている。この結果、図2及び図3に示すように、ダイヤフラム60の動作量が大きくなり、単位時間当たりのガスの流量が増大される。
本実施形態のダイヤフラム式バルブ1は、ダイヤフラム60をシーティングステム70に溶接しないので、ダイヤフラム60の寿命が長くなる。また、本実施形態のダイヤフラム式バルブ1は、ダイヤフラム60がシーティングステム70のエッジ71aに狭持される構成となっている。この構成により、本実施形態のダイヤフラム式バルブ1は、寿命となったダイヤフラム60のみを交換することが可能である。したがって、本実施形態のダイヤフラム式バルブ1では、寿命に達したシートディスク110又はダイヤフラム60を個別に交換することで、バルブ本体10、スピンドル20、グランドナット40及びスピンドル受け50といった主要な構成部品を再利用することができる。
図2及び図3に示すように、本実施形態のダイヤフラム式バルブ1は、皿ばね100によってシートディスク110の開方向の付勢力を生じさせる。皿ばね100は、従来のダイヤフラム式バルブに用いられていたコイルばねと比較して、上下方向の平行を保ちやすく、その付勢力に偏荷重が生じにくい。偏荷重の極めて少ない皿ばね100の付勢力によって、シートディスク110の片当たりを効果的に防止することができ、ガス漏れの発生を阻止することが可能となる。
従来のダイヤフラム式バルブのコイルスプリング(例えば、特許文献4の図1に示されたスプリング81)と比較して、本実施形態のダイヤフラム式バルブ1の皿ばね100は、高さ方向にコンパクトでありながら、十分な付勢力を生じさせることができる。したがって、バルブ本体10における皿ばね100の収容スペースが小さくなり、ダイヤフラム式バルブ1全体の高さ方向の小型化を図ることができる。
10 バルブ本体
11 胴部
11a 中空部
12、13 雄ねじ部
14 流入路
14a 流入口
15 流出路
15a 流出口
16 閉鎖弁室
17 突起部
20 スピンドル
21 後端部
22 先端部
22a 凸曲面
23 ナット
30 ハンドル
40 グランドナット
40a 下端面
50 スピンドル受け
51 平面座
60、60A、60B ダイヤフラム
61 貫通孔
62 膨出部
63 外周部
70 シーティングステム(第1保持部材)
71 上面
71a エッジ
72 嵌合凹部
73 雄ねじ部
74 溝
75 Oリング
80 ダイヤフラム固定ナット(第2保持部材)
81 ナット本体
82 突出部
82a フラット面
82b テーパー面
90 グランドワッシャ
90a 押圧面
91 Oリング
100 皿ばね
110 シートディスク(弁体)
Claims (5)
- 高圧ガスの流通に用いられるダイヤフラム式バルブであって、
前記高圧ガスの流入路及び流出路が設けられた中空状のバルブ本体と、
前記バルブ本体内に、前記高圧ガスの流入路と流出路とを接続させる閉鎖弁室を形成するダイヤフラムと、
前記閉鎖弁室の内外から、前記ダイヤフラムの中央部を挟持する第1及び第2保持部材と、
前記第1及び第2保持部材に連動して、前記高圧ガスの流入路を開閉させる弁体と、
を備え、
前記閉鎖弁室内に位置する前記第1保持部材に、前記ダイヤフラムの中心軸を取り囲む一連のエッジからなる接触部が設けられた、ことを特徴とするダイヤフラム式バルブ。 - 前記ダイヤフラムに、その中央部を取り囲み、前記閉鎖弁室の外側に向かって膨らむ一連の膨出部が形成された、請求項1に記載のダイヤフラム式バルブ。
- 互いに積層される複数の前記ダイヤフラムを備え、これら複数の前記ダイヤフラムのうち、前記第1保持部材に接触する一のダイヤフラムが、他のタイヤフラムよりも低硬度の材料で形成された、請求項1又は2に記載のダイヤフラム式バルブ。
- 前記第1保持部材における前記接触部よりも内側に、前記ダイヤフラムの中心軸を取り囲むOリングが取り付けられた、請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイヤフラム式バルブ。
- 前記第1及び第2保持部材に対して、前記弁体の開方向の付勢力を生じさせる一又は複数の皿ばねを備えた、請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイヤフラム式バルブ。
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