JP2015202979A - 前駆体膜の作製方法 - Google Patents

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正浩 田橋
英雄 後藤
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【課題】CZTS系太陽電池の光吸収層を作製するためのCu−Zn−Sn系前駆体膜の作製方法であって、組成ずれが少なく、基板との接着性に優れた前駆体膜を簡単な操作で作製するための前駆体膜の作製方法を提供する。
【解決手段】
Cu−Zn−Sn系前駆体膜の作製方法であって、Cu、Zn、Snのナフテン酸塩溶液またはオクチル酸塩溶液を用意し、目標組成に合わせた分量を混合した混合溶液を作製する混合溶液作製工程と、混合溶液を基板に塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜を焼成することにより前駆体膜を成膜する焼成工程と、を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、Cu−Zn−Sn−(S,Se)系太陽電池(CZTS系太陽電池)の光吸収層を作製するためのCu−Zn−Sn系前駆体膜の作製方法に関する。
近年、自然エネルギーへの関心が高まっている中、安全かつ再生可能であるエネルギー源として、太陽電池の需要が増大している。現在、太陽電池はシリコン系太陽電池が主流であるが、太陽電池の需要に対して原料となる高純度なシリコンの供給が不足しており、価格が高騰している。そこで、半導体層を薄膜化した薄膜太陽電池が注目されている。薄膜太陽電池として、発電効率の面からはCuInSe太陽電池(CIS系太陽電池)やCu(In,Ga)Se太陽電池(CIGS系太陽電池)が注目されているが、希少金属であるInやGaが使用されているため、希少金属を使用しない低コストが期待できる太陽電池であるCuZnSnS太陽電池(CZTS系太陽電池)の実用化が期待されている。
図5にCZTS系太陽電池の基本構造を示す。CZTS系太陽電池は、ガラス基板上に裏面電極、光吸収層、バッファ層、高抵抗バッファ層、透明導電膜の順に薄膜を積層して構成される。
光吸収層の作製方法として、例えば、特許文献1には、ガラス基板にZn膜、Sn膜、Cu膜を積層したプリカーサ膜を形成し、このプリカーサ膜を硫化することにより光吸収層を形成する技術が開示されている。
また、別の作製方法として、非特許文献1などには、酢酸銅、酢酸亜鉛、塩化すず、溶媒に水またはエタノールなどのアルコール、添加剤として粘性調整剤と安定剤を使用した溶液をガラス基板に塗布して乾燥させることによりプリカーサ膜を形成し、このプリカーサ膜を硫化することにより光吸収層を形成する技術が開示されている。
特開2009−135316号公報
大貫雅俊: 「ゾルゲル・硫化法によるCu2ZnSnS4薄膜太陽電池の作製」, 長岡技術科学大学 電気電子情報工学専攻, 社団法人 電子情報通信学会, (2007)p.79
しかし、特許文献1では、プリカーサ膜をZn膜、Sn膜、Cu膜を積層して形成しているため、全体が均一になりにくく組成ずれを起こしやすく、また、組成の調整が困難であるという問題があった。また、非特許文献1などの溶液塗布法では、目標とする膜厚(例えば、1μm)を得るためには、10回程度繰り返し塗布する必要がある。そして、粘性調整剤等を添加しないと基板との十分な接着性が得られず、また、前駆体膜に凹凸が生じてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、組成ずれが少なく、基板との接着性に優れた前駆体膜を簡単な操作で作製するための前駆体膜の作製方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、Cu−Zn−Sn−(S,Se)系太陽電池(CZTS系太陽電池)の光吸収層を作製するためのCu−Zn−Sn系前駆体膜の作製方法であって、Cu、Zn、Snのナフテン酸塩溶液またはオクチル酸塩溶液を用意し、目標組成に合わせた分量を混合した混合溶液を作製する混合溶液作製工程と、前記混合溶液を基板に塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜を焼成することにより前駆体膜を成膜する焼成工程と、を備えた、という技術的手段を用いる。
請求項1に記載の発明によれば、混合溶液作製工程においてCu、Zn、Snのナフテン酸塩溶液またはオクチル酸塩溶液を用意し、目標組成に合わせた分量を混合した混合溶液を作製し、塗布工程において混合溶液を基板に塗布し塗布膜を形成し、焼成工程において塗布膜を焼成することにより前駆体膜を成膜することができる。ここで、ナフテン酸塩溶液またはオクチル酸塩溶液という有機金属塩溶液は、塗料、接着剤などに用いられ、適度な粘性と基板への付着力を有しているため、少ない塗布回数で所望の膜厚に成膜することができるとともに、平滑な前駆体膜を得ることができる。また、混合溶液を用いるため、組成の調整が容易であり、不均一性に起因する組成ずれも少なくすることができる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の前駆体膜の作製方法において、前記混合溶液をナフテン酸銅溶液、ナフテン酸亜鉛溶液及びオクチル酸すず溶液により作製する、という技術的手段を用いる。
請求項2に記載の発明にように、混合溶液をナフテン酸銅溶液、ナフテン酸亜鉛溶液及びオクチル酸すず溶液により作製すると、混合溶液の粘性やガラス基板への接着性が良好であるので、好適に用いることができる。
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の前駆体膜の作製方法において、前記塗布工程は、スピンコート法により行う、という技術的手段を用いる。
請求項3に記載の発明のように、塗布工程としてスピンコート法を採用すると、厚さが均一な平滑な前駆体膜を容易に形成することができ、好適である。
本発明の前駆体膜の作製方法の工程を示す説明図である。 混合溶液の熱分析結果を示す説明図である。 X線回折による前駆体膜の結晶構造分析結果を示す説明図である。 図4(A)は、3回塗布を行った基板の断面のSEM写真であり、図4(B)は、5回塗布を行った基板の断面のSEM写真である。 CZTS系太陽電池の基本構造を示す説明図である。
本発明に係るCZTS系太陽電池の光吸収膜を作製するための前駆体膜の作製方法について説明する。
まず、Cu、Zn、Snのナフテン酸塩溶液またはオクチル酸塩溶液を用意する。本実施形態では、ナフテン酸銅溶液、ナフテン酸亜鉛溶液及びオクチル酸すず溶液とした。これらは適度な粘性と基板への付着力を有しているため、前駆体膜の作製に好適に用いることができる。また、混合溶液を用いるため、組成の調整が容易であり、不均一性に起因する組成ずれも少なくすることができる。分子式、基本特性を表1に示す。
次に、図1に示す混合溶液作製工程において、目標組成に合わせた分量を混合した混合溶液を作製する。CuZnSn組成の前駆体膜を作製するため、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸すずの混合溶液をそれぞれのモル比がCu:Zn:Sn=2:1:1になるように作製する。混合溶液は、焼成工程における揮発、分解などによる組成ずれを考慮し、混合比を調整することもできる。
続く塗布工程では、混合溶液を基板に塗布し塗布膜を形成する。ここで、基板として、例えば、Mo電極が形成されたソーダライムガラス基板(以下、SLG基板)を用いることができる。混合溶液の塗布方法としては、刷毛などによる塗布、スプレー法、浸漬法など各種塗布方法を用いることができるが、本実施形態では、スピンコート法を採用した。スピンコート法によると、厚さが均一な平滑な塗布膜を容易に形成することができ、好適である。
続く焼成工程では、塗布工程により形成された塗布膜を仮焼して前駆体膜を形成する。ここで、仮焼は、酸化を防ぐために不活性または還元雰囲気において、所定の温度、例えば450℃に加熱し、一定時間保持した後に冷却することにより行う。特に、加熱を急速に行うと、混合溶液から有機物のみを飛ばして膜をSLG基板に固着させることができるので、組成ずれを防ぐことができる。ここで、焼成条件は組成ずれを起こさない範囲内で適宜設定することができる。
以下、塗布工程と焼成工程とを繰り返して所定の膜厚の前駆体膜を形成する。例えば、厚さ1μmの前駆体膜を形成するためには、前記工程を2、3回繰り返せばよく、従来の溶液塗布法に比べ、はるかに少ない回数で成膜することができる。
このように作製された前駆体膜を、公知の硫化、セレン化方法により処理して、光吸収膜を作製することができる。
(実施形態の効果)
本発明の前駆体膜の作製方法によれば、混合溶液作製工程においてCu、Zn、Snのナフテン酸塩溶液またはオクチル酸塩溶液を用意し、目標組成に合わせた分量を混合した混合溶液を作製し、塗布工程において混合溶液を基板に塗布し塗布膜を形成し、焼成工程において塗布膜を焼成することにより前駆体膜を成膜することができる。ここで、ナフテン酸塩溶液またはオクチル酸塩溶液という有機金属塩溶液は、塗料などに用いられ、適度な粘性と基板への付着力を有しているため、少ない塗布回数で所望の膜厚に成膜することができるとともに、平滑な前駆体膜を得ることができる。また、混合溶液を用いるため、組成の調整が容易であり、不均一性に起因する組成ずれも少なくすることができる。
12mm角のSLG基板を用意し、前駆体膜の成膜を行った。
混合溶液作製工程では、Cuの含有量が5wt%のナフテン酸銅溶液(キシダ化学株式会社)、Znの含有量が8wt%のナフテン酸亜鉛溶液(和光純薬工業株式会社)及びSnの含有量が26wt%のオクチル酸すず(2−エチルヘンキサン酸すず(II))溶液(和光純薬工業株式会社)を用い、モル比がCu:Zn:Sn=2:1:1になるようにナフテン酸銅溶液を19.064g、ナフテン酸亜鉛溶液を6.129g、オクチル酸すず溶液を3.424gを混合して混合溶液を作製した。
上記混合溶液の粘度を測定した。粘度の測定は、粘度計HBDV−II+Pro CP(Brookfield)、スピンドルCPE−40を用い、測定温度23℃で行った。 混合溶液の粘度は約9mPa・sであった。従来の溶液塗布法で用いられる溶液の粘度は約1mPa・sであり、本発明で用いる混合溶液の粘性が高いことが確認された。
成膜に先立ち、焼成工程での仮焼温度を検討するため、混合溶液の熱分析を行った。熱分析は、TG/DTA6200(セイコーインスツル株式会社)を用い、混合溶液重量約10mg、窒素雰囲気で昇温速度2℃/minの条件で行った。結果を図2に示す。試料重量の減少がほぼなくなり、重量が安定した温度が450℃近傍であったため、焼成工程での仮焼温度を450℃とした。
塗布工程はスピンコート法により行った。混合溶液を基板全面を覆うように塗布した後に、回転数800rpmで10秒間、回転数1400rpmで10秒間回転させて成膜した。低回転数でコートしてから高回転でコートすることにより膜厚を均一に成膜することができる。
焼成工程は、誘導加熱炉を用い、昇温速度100℃/minで仮焼温度まで昇温する急速加熱により行った。キャリアガスとして窒素ガスを用い、仮焼温度で30分間保持した後に炉冷した。
上記塗布工程及び焼成工程を1、3、5回行った3水準の基板を作製した。いずれの条件においても、作製した前駆体膜は、光沢のある銅と黒との中間色を呈し、平滑であることがわかった。
自動X線回折装置RINT−2100(理学電機株式会社)を用い、X線回折による結晶構造分析を行った。3回塗布、5回塗布を行った基板の分析結果を図3に示す。純金属としてのCuのピークが検出され、酸化物などのピークは検出されず、良好な金属膜が形成されていることがわかった。
3回塗布、5回塗布を行った基板の断面を走査型電子顕微鏡により観察した。結果を図4に示す。前駆体膜の膜厚は、3回塗布で1.3μm、5回塗布で1.6μmと少ない塗布回数で1μm以上の膜厚が得られている。また、平滑度が高く、良好な前駆体膜が得られたことが確認された。
また、エネルギー分散X線分光装置(EDX)により3回塗布により作製した前駆体膜表面の組成分析を行った。分析結果はCu:20.5at%、Zn:11.8at%、Sn:13.6at%(残りはC,Oなど)であった。Cu:Zn:Snは約2:1:1となっており、組成ずれが少ないことが確認された。また、組成像からは、Cu、Zn、Snのいずれも均一に分散し、偏析が認められないことが確認された。
以上のように、本発明の前駆体膜の作製方法により、少ない塗布回数で所望の膜厚に成膜することができるとともに、平滑な前駆体膜を得ることができることが確認された。また、組成の調整が容易であり、不均一性に起因する組成ずれも少なくすることができることが確認された。

Claims (3)

  1. Cu−Zn−Sn−(S,Se)系太陽電池(CZTS系太陽電池)の光吸収層を作製するためのCu−Zn−Sn系前駆体膜の作製方法であって、
    Cu、Zn、Snのナフテン酸塩溶液またはオクチル酸塩溶液を用意し、
    目標組成に合わせた分量を混合した混合溶液を作製する混合溶液作製工程と、
    前記混合溶液を基板に塗布し塗布膜を形成する塗布工程と、
    前記塗布膜を焼成することにより前駆体膜を成膜する焼成工程と、を備えたことを特徴とする前駆体膜の作製方法。
  2. 前記混合溶液をナフテン酸銅溶液、ナフテン酸亜鉛溶液及びオクチル酸すず溶液により作製することを特徴とする請求項1に記載の前駆体膜の作製方法。
  3. 前記塗布工程は、スピンコート法により行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の前駆体膜の作製方法。
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