以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るプリントシステム1000の構成を示すブロック図である。図1を参照して、プリントシステム1000は、プリンタ100と、制御装置200とを含む。プリンタ100は、一例として、熱転写型プリンタである。
制御装置200は、プリンタ100を制御する装置である。制御装置200は、例えば、PC(Personal Computer)である。制御装置200は、ユーザによって操作される。ユーザが、制御装置200に対し、印画実行操作を行った場合、制御装置200は、印画指示および印画データD1を、プリンタ100へ送信する。当該印画実行操作は、印画処理をプリンタ100に実行させるための操作である。また、当該印画指示は、プリンタ100に印画処理を実行させるための指示である。印画データD1は、後述の記録用紙5に印画される画像を含むデータである。
図2は、プリンタ100に取り付けられるインクリボン8rを説明するための図である。図2(a)は、インクリボン8rの斜視図である。図3は、プリンタ100に取り付けられるロール紙5rの斜視図である。ロール紙5rは、長尺状の記録用紙5がロール状に巻かれて構成される。プリンタ100は、詳細は後述するが、インクシート8を用いて記録用紙5に印画を行う印画処理を実行する。
以下においては、記録用紙5に関する情報を、用紙情報ともいう。また、以下においては、インクシート8に関する情報を、インク情報ともいう。また、以下においては、印画に関する特性を印画特性ともいう。
図1、図2および図3を参照して、プリンタ100にはインクリボン8rが取り付けられる。プリンタ100は、当該プリンタ100に対し、インクリボン8rが着脱自在なように、構成される。インクリボン8rは、長尺状のインクシート8がロール状に巻かれて構成される。
図4は、インクリボン8rを構成するインクシート8の一部を示す図である。図4(a)は、インクシート8の平面図である。図4(b)は、インクシート8の側面図である。なお、図4(b)には、後述のシートセンサ7が示される。
図4(a)および図4(b)を参照して、インクシート8には、染料8y,8m,8c,8opから構成される転写領域が、当該インクシート8の長手方向に沿って複数組、形成される。すなわち、インクシート8は、染料8y,8m,8c,8opを有する。染料8y,8m,8cの各々は、転写の対象物である記録用紙5に転写するための色を示す。具体的には、染料8y,8m,8cは、それぞれ、イエロー、マゼンタおよびシアンの色を示す。
以下においては、イエロー、マゼンタおよびシアンを、それぞれ、Y、MおよびCともいう。また、以下においては、染料8y,8m,8cの各々を、色染料ともいう。また、以下においては、インクシート8のうち、色染料が形成されている領域を、色染料領域ともいう。
また、以下においては、色染料である染料8yが形成されている色染料領域を、色染料領域RYともいう。また、以下においては、色染料である染料8mが形成されている色染料領域を、色染料領域RMともいう。また、以下においては、色染料である染料8cが形成されている色染料領域を、色染料領域RCともいう。
染料8opは、記録用紙5に形成された画像を保護するための保護材料である。以下においては、保護材料である染料8opを、OPともいう。
再び、図2を参照して、インクリボン8rの側面部には、RFIDタグ8eが設けられる。図2(b)は、RFIDタグ8eの構成の一例を示す図である。
RFIDタグ8eには、インク情報が記録される。インク情報は、インクシート8の製造時における当該インクシート8の印画特性、インクシート8の製造日時等を示す。
再び、図3を参照して、プリンタ100にはロール紙5rが取り付けられる。プリンタ100は、当該プリンタ100に対し、ロール紙5rが着脱自在なように、構成される。前述したように、ロール紙5rは、長尺状の記録用紙5がロール状に巻かれて構成される。記録用紙5の端部には、ラベル50が貼り付けられる。ラベル50には、用紙情報が付加される。
具体的には、記録用紙5に貼り付けられるラベル50にはバーコード51が印刷されている。バーコード51は、例えば、白および黒を利用した2値情報により表現される。バーコード51は、2値情報で表現される用紙情報により構成される。用紙情報は、例えば、記録用紙5の製造時における当該記録用紙5の印画特性、記録用紙5の製造日時等を示す。
再び、図1を参照して、プリンタ100は、情報取得部10と、演算部20と、加熱制御部30と、サーマルヘッド41と、バーコードセンサ4と、センサ6と、シートセンサ7と、巻取りローラ8raと、搬送ローラ対9とを備える。演算部20、加熱制御部30等により、印画のための動作を制御する印画制御部が構成される。また、サーマルヘッド41、搬送ローラ対9等により、印画処理を行うための印画機構が構成される。
サーマルヘッド41は、詳細は後述するが、加熱制御部30の制御に従い、インクシート8に与えるための熱を発生する。すなわち、サーマルヘッド41は、インクシート8に対し加熱を行う。以下においては、サーマルヘッド41がインクシート8に対し行う加熱の量を、加熱量HTともいう。
加熱制御部30は、サーマルヘッド41を制御する。具体的には、加熱制御部30は、サーマルヘッド41が発生する熱の量を制御する。すなわち、加熱制御部30は、サーマルヘッド41を介して、加熱量HTを制御する。これにより、サーマルヘッド41が、インクシート8に対し加熱を行うことにより、インクシート8の色染料が、記録用紙5に転写される。情報取得部10は、詳細は後述するが、各種の情報を取得する。
演算部20は、各種の演算を行う機能を有する。演算部20は、記憶部21を含む。なお、記憶部21は、演算部20の外部に設けられてもよい。
記憶部21は、メモリである。記憶部21は、日時記憶領域21aと、インク情報記憶領域21bと、用紙情報記憶領域21cと、テーブル記憶領域21dとを含む。テーブル記憶領域21dには、補正テーブルT10が記憶されている。
図5は、補正テーブルT10の一例を示す図である。以下においては、インクシート8の製造時から経過した時間を、経過時間Tともいう。補正テーブルT10において、「経過時間」とは、経過時間Tである。経過時間Tは、1日単位で示される。例えば、補正テーブルT10が示す経過時間Tの欄の“3”は、経過時間Tが3日であることを示す。
補正テーブルT10は、経過時間Tに対応する各補正値を示す。当該各補正値は、Y、MおよびCのいずれかを示す色染料に対応する値である。具体的には、当該各補正値は、色染料領域RY,RM,RCのいずれかに対応する値である。
以下においては、色染料領域RYに対応する補正値を、補正値hYともいう。また、以下においては、色染料領域RMに対応する補正値を、補正値hMともいう。また、以下においては、色染料領域RCに対応する補正値を、補正値hCともいう。また、以下においては、補正値hY、補正値hMおよび補正値hCの各々を、補正値hともいう。当該補正値hは、加熱量HTを制御するための値である。
なお、経過時間Tが長くなるほど、一般的に、各色染料領域の濃度は、薄くなる。すなわち、経過時間Tが長くなるほど、各色染料領域の透過率は、大きくなる。補正値hは、インクシート8の製造時における各色染料領域の濃度の低下(変化)により生じる、色染料の転写量の低下分を、ほぼ0にするための値である。当該色染料の転写量とは、サーマルヘッド41による加熱により、記録用紙5に転写される色染料の量である。
なお、経過時間Tに伴う、各色染料の濃度の低下度合いは異なる。すなわち、経過時間Tに伴う、各色染料の透過率の変化度合いは異なる。そのため、補正値hは、経過時間Tの長さに応じて、各色染料(例えば、Y)毎に、最適な値が設定される。そのため、各色染料に対応する補正値hは、実験等が行われることにより、あらかじめ最適な値が決定される。なお、各補正値hは、経過時間Tのみに基づいて決定される値である。
ここで、例えば、経過時間Tが1日であるとする。また、インクシート8の特性が、当該インクシート8の製造時の特性と全く同じであるとする。この場合、色染料領域RYに対応する染料8y、および、色染料領域RMに対応する染料8mを、記録用紙5に転写する際、加熱量HTが、初期状態の1.01倍になるように、サーマルヘッド41は制御される。
再び、図1を参照して、バーコードセンサ4は、バーコード51(用紙情報)を読み取る機能を有するセンサである。バーコードセンサ4は、例えば、レーザー光、赤外線等の光を利用した反射型のセンサである。バーコードセンサ4は、バーコード51に光を照射し、当該バーコード51からの反射光を利用して、バーコード51を読み取る。
センサ6は、RFIDタグ8eに記録された情報を読み取る機能を有する無線通信センサである。
シートセンサ7は、光を利用して、インクシート8の光の透過率を測定する測定部(センサ)である。具体的には、シートセンサ7は、発光部7aと受光部7bとから構成される。発光部7aおよび受光部7bは、インクシート8を挟むように、設けられる。以下においては、インクシート8の印画特性を、シート印画特性ともいう。
発光部7aは、インクシート8の色染料(例えば、染料8y)が形成された色染料領域に対し光を出射する。受光部7bは、発光部7aが出射した光のうち、インクシート8(色染料)の色染料領域を透過した光を受ける。以下においては、発光部7aが出射した光の量に対する、受光部7bが受けた光の量の割合を、透過率Trまたは透過率ともいう。
受光部7bは、発光部7aが出射した光の量に対する、当該受光部7bが受けた光の量の割合である透過率を算出する。以上により、シートセンサ7は、透過率を測定する。当該透過率は、インクシート8の使用状態を示す。透過率が大きい程、インクシート8の色染料領域に形成された色染料(例えば、染料8y)の濃度は小さい。すなわち、当該透過率は、インクシート8の印画特性(シート印画特性)である。
以下においては、インクシート8の製造時における当該インクシート8の色染料領域の透過率Trを、透過率FTともいう。また、以下においては、シートセンサ7が、インクシート8の色染料領域(色染料)の透過率を測定可能な位置を、測定位置L1ともいう。
巻取りローラ8raは、図示しないモータ等により回転(駆動)する。巻取りローラ8raは、インクシート8を巻き取るように駆動する。
搬送ローラ対9は、記録用紙5を搬送するためのローラ対である。
次に、プリンタ100が行う初期化処理について説明する。初期化処理は、以下の状況Aにおいて実行される。状況Aは、ユーザにより前述の印画実行操作が行われたという状況である。すなわち、状況Aは、プリンタ100が、印画指示および印画データD1を、制御装置200から受信した場合である。プリンタ100が印画指示を受信した場合、演算部20は、印画指示を受信した日時(以下、印画指示日時ともいう)を、記憶部21の日時記憶領域21aに記憶させる。
なお、状況Aは、例えば、プリンタ100に、インクリボン8rおよびロール紙5rが取り付けられた状況であってもよい。
ここで、RFIDタグ8eに記録されているインク情報は、インクシート8の製造時における当該インクシート8の印画特性(シート印画特性)、インクシート8の製造日時を示すとする。以下においては、インクシート8の製造時における当該インクシート8の印画特性を、シート印画特性FTともいう。すなわち、シート印画特性FTは、インクシート8の製造時の印画に関する特性である。なお、シート印画特性FTは、各色染料領域の透過率FTであるとする。
また、バーコード51を構成する用紙情報は、記録用紙5の製造時における当該記録用紙5の印画特性、記録用紙5の製造日時を示すとする。
図6は、初期化処理のフローチャートである。まず、ステップS110の処理が行われる。
ステップS110では、インク情報取得処理が行われる。インク情報取得処理では、センサ6が、インクリボン8rに設けられたRFIDタグ8eに記録されたインク情報を読み取る。そして、センサ6は、インク情報を、インク情報取得部12へ送信する。これにより、インク情報取得部12は、インク情報を取得する。インク情報取得部12は、取得した当該インク情報を、記憶部21のインク情報記憶領域21bに記憶させる。
ステップS120では、シート印画特性測定処理が行われる。シート印画特性測定処理では、色染料が形成されている各色染料領域に対し、インクシート搬送処理および特性測定処理が行われる。
まず、染料8yが形成されている色染料領域RYに対し行われるインクシート搬送処理および特性測定処理について説明する。インクシート搬送処理では、図4(b)のように、色染料領域RYの位置が測定位置L1となるように、巻取りローラ8raがインクシート8を巻き取る。
次に、特性測定処理では、測定部としてのシートセンサ7が、シート印画特性を測定する。具体的には、演算部20が、シートセンサ7がシート印画特性を測定するように、当該シートセンサ7を制御する。発光部7aは、演算部20による制御に従い、インクシート8のうち、染料8yが形成されている色染料領域RYに対し光を出射する。受光部7bは、発光部7aが出射した光のうち、インクシート8(色染料領域)を透過した光を受ける。
そして、受光部7bは、発光部7aが出射した光の量に対する、当該受光部7bが受けた光の量の割合である透過率Trを算出する。これにより、シートセンサ7により透過率(シート印画特性)が測定される。
そして、受光部7bは、算出した透過率Trを、シート特性取得部13へ送信する。シート特性取得部13は、受信した透過率Trを、演算部20へ送信する。以上により、色染料領域RY(染料8y)に対する特性測定処理は終了する。
色染料領域RM,RCの各々に対し行われるインクシート搬送処理および特性測定処理は、色染料領域RYに対し行われるインクシート搬送処理および特性測定処理と同様であるので詳細な説明は行わない。色染料領域RY,RM,RCの各々に対するインクシート搬送処理および特性測定処理が終了すると、このシート印画特性測定処理は終了する。
これにより、演算部20は、色染料領域RY,RM,RCの各々の透過率Tr(シート印画特性)を受信する。すなわち、演算部20は、各色染料領域の透過率(シート印画特性)を受信する。
以下においては、前述のシート印画特性測定処理(S120)により得られた、各色染料領域の透過率Trを、透過率PTともいう。透過率PTは、プリンタ100が印画指示を受信した際、すなわち、プリンタ100が印画処理を実行する際におけるシート印画特性である。
以下においては、プリンタ100が印画処理を実行する際におけるシート印画特性を、シート印画特性PTともいう。すなわち、シート印画特性PTは、シート印画特性測定処理(S120)においてシートセンサ7により測定された透過率PTである。換言すれば、特性測定処理において、測定部としてのシートセンサ7は、シート印画特性PTとして透過率PTを測定する。
なお、シート印画特性PTは、透過率に限定されず、インクシート8に関する他の特性であってもよい。また、ステップS120では、センサにより、用紙の印画特性が取得されてもよい。
ステップS130では、用紙搬送処理が行われる。用紙搬送処理では、バーコードセンサ4がバーコード51(用紙情報)を読み取るために、搬送ローラ対9が記録用紙5を必要な距離だけ搬送する。
ステップS140では、用紙情報取得処理が行われる。用紙情報取得処理では、バーコードセンサ4が、用紙情報としてのバーコード51を読み取る。これにより、バーコードセンサ4は、用紙情報を取得する。そして、バーコードセンサ4は、用紙情報を、用紙情報取得部11へ送信する。用紙情報取得部11は、受信した用紙情報を、記憶部21の用紙情報記憶領域21cに記憶させる。
なお、インク情報および用紙情報の一方または両方の読み取り(取得)が失敗する場合もある。
そこで、ステップS150では、情報取得部10が、情報取得が成功したか否かを判定される。具体的には、情報取得部10が、インク情報および用紙情報の両方が取得されたか否かを判定する。ステップS150においてYESならば、この初期化処理は終了する。一方、ステップS150においてNOならば、処理はステップS151へ移行する。
なお、情報取得部10は、インク情報および用紙情報の各々のデフォルト情報を、予め記憶している。当該インク情報のデフォルト情報とは、インク情報が示す各情報のデフォルトとなる情報である。当該用紙情報のデフォルト情報とは、用紙情報が示す各情報のデフォルトとなる情報である。
ステップS151では、デフォルト情報取得処理が行われる。デフォルト情報取得処理では、情報取得部10が、情報としてのインク情報および用紙情報のうち、取得されなかった情報のデフォルト情報を、当該情報取得部10から読み取る。これにより、デフォルト情報が取得される。そして、情報取得部10は、当該デフォルト情報を、記憶部21のインク情報記憶領域21bまたは用紙情報記憶領域21cに記憶させる。
例えば、デフォルト情報が用紙情報のデフォルト情報である場合、情報取得部10は、当該デフォルト情報を、用紙情報として、記憶部21の用紙情報記憶領域21cに記憶させる。
以下においては、サーマルヘッド41による加熱対象となる色染料領域を、対象色染料領域ともいう。対象色染料領域は、色染料領域RY,RM,RCのいずれかである。また、以下においては、サーマルヘッド41が、インクシート8に対し加熱を行うことにより、記録用紙5に色染料を転写する処理を、印画処理ともいう。
また、以下においては、シート印画特性PTを有するインクシート8を用いた印画処理により得られる印画の品質を、品質Q1ともいう。品質Q1は、記録用紙5に転写された色染料の品質(例えば、濃度)である。また、以下においては、シート印画特性FTを有する当該インクシート8を用いた印画処理により得られる印画の品質を、品質Q2ともいう。品質Q2は、記録用紙5に転写された色染料の品質(例えば、濃度)である。
次に、プリンタ100が印画処理を実行するための処理(以下、印画制御処理ともいう)について説明する。印画制御処理は、プリンタ100が制御装置200から印画指示および印画データD1を受信した場合に実行される。具体的には、印画制御処理は、前述の初期化処理が終了した直後に行われる。
図7は、印画制御処理のフローチャートである。印画制御処理では、まず、ステップS210の処理が行われる。
ステップS210では、印画指示日時取得処理が行われる。印画指示日時取得処理では、演算部20が、記憶部21の日時記憶領域21aに記憶されている印画指示日時を読み出すことにより、当該印画指示日時を取得する。
ステップS220では、シート製造日時取得処理が行われる。シート製造日時取得処理では、インクシート8の製造日時が取得される。具体的には、演算部20が、記憶部21のインク情報記憶領域21bに記憶されているインク情報を読み出すことにより、当該インク情報が示す、インクシート8の製造日時を取得する。
以下においては、インクシート8が製造された日時(製造日時)から、シート印画特性PTを有するインクシート8を使用した印画処理を実行するための印画指示をプリンタ100が受信するまでの時間を、経過時間Tfpともいう。すなわち、経過時間Tfpは、インクシート8の製造時から、シート印画特性PTを有するインクシート8を使用した印画処理を実行するための印画指示をプリンタ100が受信するまでの時間である。
ステップS230では、経過時間算出処理が行われる。経過時間算出処理では、経過時間Tfpが算出される。具体的には、演算部20が、取得した印画指示日時が示す日付から、取得したインクシート8の製造日時が示す日付までの日数を、経過時間Tfpとして算出する。
ステップS240では、補正係数算出処理が行われる。補正係数算出処理では、詳細は後述するが、演算部20が、各色染料領域に対応する補正係数Hを算出する。補正係数Hは、必要に応じて、前述の補正テーブルT10が示す補正値hを補正するための係数である。
前述の補正テーブルT10の各補正値hは、経過時間Tのみに基づいた値である。しかしながら、色染料の透過率(濃度)は、経過時間T以外の要因(以下、特性変化要因Aともいう)により、当該経過時間Tから想定される値と大きく異なる場合がある。特性変化要因Aは、例えば、インクシート8の製造ばらつき等によるインクシート8の特性のばらつきである。すなわち、特性変化要因Aは、例えば、シート印画特性FT(透過率FT)の製造ばらつきである。
そのため、経過時間Tのみに基づいた各補正値hにより加熱量HTを制御した場合、特性変化要因Aによっては、品質Q1が品質Q2と大きく異なる場合がある。
そこで、本実施の形態では、経過時間Tおよび特性変化要因Aを考慮して、補正値hを補正係数Hにより補正した値を、加熱量HTの制御に使用する。すなわち、補正係数Hは、経過時間Tおよび特性変化要因Aを考慮して、品質Q1を、品質Q2と同等の品質にするための係数である。
以下においては、色染料領域RYに対応する補正係数Hを、補正係数HYともいう。また、以下においては、色染料領域RMに対応する補正係数Hを、補正係数HMともいう。また、以下においては、色染料領域RCに対応する補正係数Hを、補正係数HCともいう。
また、以下においては、インク情報記憶領域21bに記憶されているインク情報が示す透過率FTと、透過率PTとの差を、透過率変化量ともいう。透過率変化量が0である場合、プリンタ100が印画処理を実行する際における、インクシート8の色染料領域の透過率は、インクシート8の製造時における色染料領域の透過率と同じである。
なお、演算部20は、経過時間に伴い変化する、各色染料領域の透過率を示す透過率テーブルT20を予め記憶している。
図8は、透過率テーブルT20の一例を示す図である。透過率テーブルT20において、「経過時間」とは、図5の経過時間Tと同じであるので詳細な説明は繰り返さない。透過率テーブルT20は、経過時間Tに対応する、各色染料領域の透過率を示す。
透過率テーブルT20において、「Y」の項目は、経過時間Tに対応する、色染料領域RYの透過率(Try1〜Try365)を示す。「M」の項目は、経過時間Tに対応する、色染料領域RMの透過率(Trm1〜Trm365)を示す。「C」の項目は、経過時間Tに対応する、色染料領域RCの透過率(Trc1〜Trc365)を示す。透過率テーブルT20において、例えば、“3”を示す経過時間Tに対応する、色染料領域RMの透過率は、Trm3である。
透過率テーブルT20が示す各透過率は、実験等により得られた値を利用して設定される。具体的には、透過率テーブルT20が示す各透過率は、シート印画特性FTである透過率FTの製造ばらつきを考慮して設定される。透過率テーブルT20が示す各透過率は、例えば、実験等により、複数のインクシート8を利用して得られた、各色染料領域の透過率の平均値である。
まず、染料8yが形成されている色染料領域RYに対応する補正係数HYの算出方法について説明する。演算部20は、算出した経過時間Tfpが示す日数と同じ日数を示す、図8の透過率テーブルT20の経過時間に対応する、色染料領域RYの透過率を特定する。以下においては、特定された透過率を、特定透過率ともいう。例えば、経過時間Tが365日である場合、特定される色染料領域RYの透過率は、Try365である。
そして、演算部20は、測定された色染料領域RYの透過率PTと、特定透過率とを使用して、補正係数HYを算出する。具体的には、演算部20は、色染料領域RYの透過率PTを、特定透過率で除算することにより得られた値を、補正係数HYとして算出する。
例えば、測定された色染料領域RYの透過率PTが、特定透過率の1.1倍である場合、算出される補正係数HYは、1.1である。なお、色染料領域RYの透過率PTと、特定透過率とが等しい場合、算出される補正係数HYは、1である。
なお、補正係数の算出方法は、上記の方法に限定されず他の算出方法により算出されてもよい。
補正係数H(例えば、補正係数HY)は、透過率PT(シート印画特性PT)の値に応じた係数である。すなわち、補正係数Hは、シート印画特性PTに基づいた係数である。
なお、補正係数HM,HCは、補正係数HYの算出方法と同様にして算出される。
ステップS250では、対象補正値特定処理が行われる。対象補正値特定処理では、演算部20が、算出した経過時間Tfpが示す日数と同じ日数を示す、図5の補正テーブルT10の経過時間に対応する各補正値hを特定する。対象補正値特定処理により特定される各補正値は、経過時間Tfpに対応する、補正テーブルT10が示す値である。
ここで、一例として、経過時間Tfpが3日であるとする。この場合、対象補正値特定処理により特定される各補正値は、補正テーブルT10において、3を示す経過時間に対応する、補正値hY(1.01)、補正値hM(1.01)、補正値hC(1.00)である。
ステップS260では、制御補正係数算出処理が行われる。制御補正係数算出処理では、詳細は後述するが、演算部20が、補正値hと、補正係数Hとに基づいて、制御補正係数CHY,CHM,CHCを算出する。
制御補正係数CHYとは、色染料領域RYに対応する制御補正係数である。制御補正係数CHMとは、色染料領域RMに対応する制御補正係数である。制御補正係数CHCとは、色染料領域RCに対応する制御補正係数である。以下においては、制御補正係数CHY,CHM,CHCの各々を、制御補正係数CHともいう。
制御補正係数CHは、経過時間Tおよび特性変化要因Aの両方を考慮して、加熱量HTを制御するための係数である。すなわち、制御補正係数CHは、補正値hのみを用いた加熱量の制御よりもさらに、品質Q1を品質Q2に近づけるための係数である。少し具体的には、制御補正係数CHは、品質Q1を品質Q2と同等の品質にするための係数である。
具体的には、制御補正係数算出処理では、演算部20が、以下の式1により、色染料領域RY,RM,RCの各々に対応する制御補正係数CHを算出する。
式1の補正値hは、対象補正値特定処理(S250)により特定された補正値hY,hM,hCのいずれかである。式1の補正係数Hは、補正係数算出処理(S240)により算出された補正係数HY,HM,HCのいずれかである。
制御補正係数CHYは、式(補正値hY×補正係数HY)により算出される。制御補正係数CHMは、式(補正値hM×補正係数HM)により算出される。制御補正係数CHCは、式(補正値hC×補正係数HC)により算出される。そして、この制御補正係数算出処理は終了する。
ステップS270では、加熱制御処理Nが行われる。加熱制御処理Nでは、詳細は後述するが、加熱制御部30が、測定されたシート印画特性PTと、シート印画特性FTとに基づいて、品質Q1が品質Q2に近づくように、加熱量HTを制御する。少し具体的には、加熱制御部30が、シート印画特性PTと、シート印画特性FTとに基づいて、品質Q1が品質Q2と同等の品質になるように、加熱量HTを制御する。
以下においては、シート印画特性FTを有する各色染料領域(対象色染料領域)に対する加熱量HTを、加熱量HT0ともいう。当該各色染料領域は、色染料領域RY,RM,RCのいずれかである。加熱量HT0は、使用されるインクシート8が、当該インクシート8の製造時の特性であるシート印画特性FTを有する場合、記録用紙5に色染料が最もよく転写される熱量である。加熱量HT0は、実験等により予め決定された値である。各色染料領域に対する加熱量HT0は、加熱制御部30があらかじめ記憶している。
具体的には、加熱制御処理Nでは、加熱制御処理NY、加熱制御処理NMおよび加熱制御処理NCが順に行われる。
まず、加熱制御処理NYについて説明する。加熱制御処理NYの対象色染料領域は、色染料領域RYである。加熱制御処理NYでは、色染料領域RYに対応する加熱量算出処理N、インクシート搬送処理Nおよび加熱処理Nが行われる。加熱量算出処理Nでは、加熱制御部30が、以下の式2により、制御熱量HT1を算出する。
式2において、加熱量HT0は、対象色染料領域に対する加熱量である。式2において、制御補正係数CHは、対象色染料領域に対応する、算出された制御補正係数CH(例えば、制御補正係数CHY)である。なお、制御補正係数CHは、補正値hおよび補正係数Hを用いて算出された係数である。
当該補正係数Hは、シート印画特性PT(透過率PT)と、シート印画特性FT(透過率FT)の製造ばらつきを考慮して設定された、透過率テーブルT20が示す透過率とを用いて算出された係数である。すなわち、補正係数Hを用いて算出された制御補正係数CHを用いて算出された制御熱量HT1は、シート印画特性PTとシート印画特性FTとに基づいた熱量である。
具体的には、加熱制御部30が、色染料領域RYに対する加熱量HT0と、制御補正係数CHYとを用いて、式2より、制御熱量HT1を算出する。
以下においては、サーマルヘッド41が、対象色染料領域に対し加熱を行うことが可能な当該対象色染料領域の位置を、加熱対象位置L2ともいう。また、以下においては、記録用紙5のうち、対象色染料領域の染料が転写される対象となる領域を転写対象領域ともいう。
インクシート搬送処理Nでは、対象色染料領域(色染料領域RY)の位置が加熱対象位置L2となるように、巻取りローラ8raがインクシート8を巻き取る。また、対象色染料領域の移動に伴い、搬送ローラ対9は、転写対象領域の位置が加熱対象位置L2となるように、記録用紙5を搬送する。
次に、加熱処理Nが行われる。加熱処理Nは、サーマルヘッド41がインクシート8に対し加熱を行うことにより、記録用紙5に印画を行う印画処理である。少し具体的には、加熱処理Nでは、加熱制御部30が、制御補正係数CHに基づいて、加熱量HTを制御する。具体的には、加熱制御部30が、加熱量HTが制御熱量HT1となるように、サーマルヘッド41を制御する。
なお、前述したように、制御熱量HT1は、シート印画特性PTとシート印画特性FTとに基づいた熱量である。すなわち、加熱制御部30は、シート印画特性PTとシート印画特性FTとに基づいて、加熱量HTを制御する。
以上により、対象色染料領域の色染料が、記録用紙5の転写対象領域に転写される。そして、この加熱制御処理NYは終了する。
なお、加熱制御処理NMおよび加熱制御処理NCも、加熱制御処理NYと同様な処理であるので詳細な説明は繰り返さない。加熱制御処理Nが行われることにより、記録用紙5の転写対象領域に画像が形成される。以下においては、記録用紙5のうち、画像が形成された部分を、印画物ともいう。
ステップS280では、保護材料転写処理Nが行われる。保護材料転写処理Nでは、保護材料である染料8opが、転写対象領域に転写される。染料8opを転写するための処理は、一般的な処理であるので詳細な説明は行わない。
以上により、この印画制御処理は終了する。なお、プリンタ100は、印画制御処理の終了後、記録用紙5のうち、画像が形成された部分を、印画物として、プリンタ100の外部に排出する。
この印画制御処理によれば、経過時間Tに加え、特性変化要因Aを考慮して算出された制御補正係数CHに基づく制御熱量HT1によりインクシート8に対し加熱が行われる。これにより、高い精度で、品質Q1を、品質Q2と同等の品質にすることができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、加熱制御部30が、プリンタ100が印画処理を実行する際におけるインクシート8の印画に関する特性であるシート印画特性PTと、インクシート8の製造時の印画に関する特性であるシート印画特性FTとに基づいて、加熱量HTを制御する。
すなわち、インクシート8の製造時の印画に関する特性に加え、プリンタが印画処理を実行する際におけるインクシート8の印画に関する特性に基づいて、加熱量HTを制御する。これにより、経過時間のみに基づいて加熱量を制御する関連技術Aよりも、適切な加熱量の制御を行うことができる。その結果、印画の品質の低下を抑制することができる。
また、本実施の形態によれば、経過時間Tに加え、特性変化要因Aを考慮して算出された制御補正係数CHに基づく制御熱量HT1によりインクシート8に対し加熱が行われる。これにより、高い精度で、品質Q1を、品質Q2と同等の品質にすることができる。
また、本実施の形態によれば、インクシート8の保存環境に起因する印画特性の変化に伴う、染料の転写量の変化も補正することができる。記録材料としてのインクシート8の保管環境に関わらず、品位の安定した画質を有する印画物を提供することができる。また、記録用紙およびインクシートの保存環境を起因とする、印画の特性変化が生じても、品位の安定した画質を有する印画物を提供することができる。
また、本実施の形態によれば、関連技術Bのように、印画の前に、色の校正を行う処理が不要である。そのため、関連技術Bよりも、簡単でコストの増加を抑えることができる。
なお、補正テーブルT10は、外部から補正値を変更自在なテーブルとしてもよい。具体的には、制御装置200が、補正テーブルT10の補正値を変更自在なように、記憶部21は構成されてもよい。例えば、記憶部21は、補正テーブルT10を記憶しているテーブル記憶領域21dに対する外部からのアクセスが可能なように構成されてもよい。この構成により、制御装置200は、補正テーブルT10の補正値を任意に変更できる。当該補正値は、例えば、プリンタ100が使用され地域ごとの環境、メディア(インクシート8)の種類等にあった適切な値に変更される。
これにより、印画環境、メディアの種類が変わっても、記録用紙5(印画物)に形成される画像は、安定した品質を保つことができる。また、補正テーブルT10の補正値を変更することにより、別の種類の記録材料(インクシート)を使用した印画処理にも対応できる。
なお、関連技術Aでは、記録用紙およびインクシートが製造されてから印画処理が行われるまでの時間(経過時間)を算出する。そして、その経過時間に応じた、LUTが示す補正係数を利用して、印画の際の加熱量が制御される。なお、このLUTの補正係数は、あくまで経過時間をもとに、印画特性の変化を予想して設定された係数である。そのため、関連技術Aでは、例えば、記録用紙およびインクシートの保存環境の影響による、印画特性の変化は考慮されていない。そのため、印画物の品質を、高水準に保てない。
また、関連技術Bでは、印画を行う前に、あらかじめ色の校正を行なう。そのため、印画特性の変化を確実に補正することができる。しかし、補正を行うたびに校正用のパッチパターンの印刷および計測が必要である。そのため、処理が煩雑となり、インクシートおよび記録用紙の消費によるコストが増加する。さらに、構成用の計測器が必要となるという問題がある。
そこで、本実施の形態は上記のように構成されるため、上記の各問題点を解決することができる。
<実施の形態2>
本実施の形態では、プリンタの設置環境をさらに考慮した加熱量の制御を行う。図9は、本発明の実施の形態2に係るプリントシステム1000Aの構成を示すブロック図である。図9を参照して、プリントシステム1000Aは、図1のプリントシステム1000と比較して、プリンタ100の代わりにプリンタ100Aを含む点が異なる。プリントシステム1000Aのそれ以外の構成は、プリントシステム1000と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
プリンタ100Aは、プリンタ100と比較して、演算部20の代わりに演算部20Aを備える点が異なる。プリンタ100Aのそれ以外の構成は、プリンタ100と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
演算部20Aは、演算部20と比較して、記憶部21の代わりに記憶部21Aを含む点が異なる。演算部20Aのそれ以外の構成は、演算部20と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
記憶部21Aは、記憶部21と比較して、さらに、環境情報記憶領域21eを含む点が異なる。記憶部21Aのそれ以外の構成は、記憶部21と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
環境情報記憶領域21eには、環境情報が記憶される。まず、環境情報が内部温度Tpである構成について説明する。プリンタ100Aは、実施の形態1と同様に、初期化処理および印画制御処理を行う。なお、本実施の形態では、印画制御処理の加熱制御処理N(S270)のみにおいて、実施の形態1と異なる処理が行われる。
以下においては、実施の形態1の加熱制御処理Nにおいて、さらに、内部温度Tpを考慮した構成を、変形構成A1ともいう。内部温度Tpは、プリンタ100Aの筐体(図示せず)の内部温度である。
変形構成A1の加熱制御処理Nでは、加熱制御部30が、シート印画特性PTと、シート印画特性FTと、内部温度Tpとに基づいて、品質Q1が品質Q2に近づくように、加熱量HTを制御する。内部温度Tpは、例えば、プリンタ100Aの筐体(図示せず)の内部に設けられる温度センサ(図示せず)により測定される。
ここで、基準温度Tbを定義する。基準温度Tbは、測定された内部温度Tpが基準温度Tbと同じである場合、加熱量HTを変化させる必要のない、基準となる温度である。
具体的には、変形構成A1の加熱制御処理Nに含まれる加熱処理Nでは、加熱制御部30は、内部温度Tpが、基準温度Tbより小さい程、当該加熱量HTを大きくする制御を行う。また、加熱制御部30は、内部温度Tpが、基準温度Tbより大きい程、当該加熱量HTを小さくする制御を行う。なお、変形構成A1において制御対象となる加熱量HTは、制御補正係数CHを使用して制御された後の加熱量である。
以下に、一例として、内部温度Tpが、基準温度Tbより大きい程、当該加熱量HTを小さくする制御の一例について説明する。ここで、基準温度Tbは、25度であるとする。また、内部温度Tpは、基準温度TbよりΔt度だけ大きいとする。この場合、変形構成A1の加熱制御処理Nに含まれる加熱処理Nでは、加熱制御部30は、加熱量HTをK1(実数)倍にする制御を行う。K1は、例えば、以下の式3により算出される係数である。
なお、係数K1は、例えば、実験等により測定されたデータを利用して予め作成された換算テーブルにより算出されてもよい。
次に、環境情報が内部湿度Huである構成について説明する。以下においては、実施の形態1の加熱制御処理Nにおいて、さらに、内部湿度Huを考慮した構成を、変形構成A2ともいう。内部湿度Huは、プリンタ100Aの筐体(図示せず)の内部湿度である。
変形構成A2の加熱制御処理Nでは、加熱制御部30が、シート印画特性PTと、シート印画特性FTと、内部湿度Huとに基づいて、品質Q1が品質Q2に近づくように、加熱量HTを制御する。内部湿度Huは、例えば、プリンタ100Aの筐体(図示せず)の内部に設けられる湿度センサ(図示せず)により測定される。
ここで、相対湿度として基準湿度Hbを定義する。基準湿度Hbは、測定された内部湿度Huが基準湿度Hbと同じである場合、加熱量HTを変化させる必要のない、基準となる湿度である。
具体的には、変形構成A2の加熱制御処理Nに含まれる加熱処理Nでは、加熱制御部30は、内部湿度Huが、基準湿度Hbより小さい程、当該加熱量HTを大きくする制御を行う。また、加熱制御部30は、内部湿度Huが、基準湿度Hbより大きい程、当該加熱量HTを小さくする制御を行う。なお、変形構成A2において制御対象となる加熱量HTは、制御補正係数CHを使用して制御された後の加熱量である。
以下に、一例として、内部湿度Huが、基準湿度Hbより大きい程、当該加熱量HTを小さくする制御の一例について説明する。ここで、基準湿度Hb(相対湿度)は、60%であるとする。また、内部湿度Huは、基準湿度HbよりΔh%だけ大きいとする。この場合、変形構成A2の加熱制御処理Nに含まれる加熱処理Nでは、加熱制御部30は、加熱量HTをK2(実数)倍にする制御を行う。K2は、例えば、以下の式4により算出される係数である。
なお、係数K2は、例えば、実験等により測定されたデータを利用して予め作成された換算テーブルにより算出されてもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、内部温度または内部湿度をさらに考慮した加熱量の制御を行う。これにより、本実施の形態では、実施の形態1の効果に加え、実施の形態1よりも温度または湿度の状態に適した、最適な加熱量の制御を行うことができる。その結果、温度または湿度の変化による、印画の品質の低下を抑制することができる。したがって、本実施の形態では、実施の形態1の構成よりも、さらに、高い精度で、品質Q1を、品質Q2と同等の品質にすることができる。すなわち、品位の安定した画質を有する印画物を提供することができる。
なお、本実施の形態では、変形構成A1および変形構成A2の両方が並列して行われてもよい。
<実施の形態3>
本実施の形態では、印画回数pnをさらに考慮した加熱量の制御を行う。印画回数pnとは、印画処理(前述の加熱処理N)が実行された回数である。図10は、本発明の実施の形態3に係るプリントシステム1000Bの構成を示すブロック図である。図10を参照して、プリントシステム1000Bは、図1のプリントシステム1000と比較して、プリンタ100の代わりにプリンタ100Bを含む点が異なる。プリントシステム1000Bのそれ以外の構成は、プリントシステム1000と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
プリンタ100Bは、プリンタ100と比較して、演算部20の代わりに演算部20Bを備える点が異なる。プリンタ100Bのそれ以外の構成は、プリンタ100と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
演算部20Bは、演算部20と比較して、記憶部21の代わりに記憶部21Bを含む点が異なる。演算部20Bのそれ以外の構成は、演算部20と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
記憶部21Bは、記憶部21と比較して、さらに、履歴情報記憶領域21fを含む点が異なる。記憶部21Aのそれ以外の構成は、記憶部21と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
履歴情報記憶領域21fには、履歴情報が記憶される。ここで、履歴情報が、印画回数pnである構成について説明する。印画回数pnとは、前述したように、印画処理(前述の加熱処理N)が実行された回数である。プリンタ100Bは、実施の形態1と同様に、初期化処理および印画制御処理を行う。なお、本実施の形態では、印画制御処理の加熱制御処理N(S270)のみにおいて、実施の形態1と異なる処理が行われる。
以下においては、実施の形態1の加熱制御処理Nにおいて、さらに、印画回数pnを考慮した構成を、変形構成B1ともいう。印画回数pnは、印画処理(加熱処理N)が実行される毎に、演算部20により、1インクリメントされる。
変形構成B1の加熱制御処理Nでは、加熱制御部30が、シート印画特性PTと、シート印画特性FTと、印画回数pnとに基づいて、品質Q1が品質Q2に近づくように、加熱量HTを制御する。
具体的には、変形構成B1の加熱制御処理Nに含まれる加熱処理Nでは、加熱制御部30は、印画回数pnの増加に伴い、加熱量HTを大きくする制御を行う。なお、変形構成B1において制御対象となる加熱量HTは、制御補正係数CHを使用して制御された後の加熱量である。
以下に、加熱量の制御の一例について説明する。変形構成B1の加熱制御処理Nに含まれる加熱処理Nでは、加熱制御部30は、加熱量HTをK3(実数)倍にする制御を行う。K3は、例えば、以下の式5により算出される係数である。
なお、係数K3は、例えば、実験等により測定されたデータを利用して予め作成された換算テーブルにより算出されてもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、印画回数pnをさらに考慮した加熱量の制御を行う。これにより、本実施の形態では、実施の形態1の効果に加え、実施の形態1よりも印画回数pnに適した、最適な加熱量の制御を行うことができる。その結果、印画回数pnの増加による、印画の品質の低下を抑制することができる。したがって、本実施の形態では、実施の形態1の構成よりも、さらに、高い精度で、品質Q1を、品質Q2と同等の品質にすることができる。
なお、実施の形態3の変形構成B1は、実施の形態2の変形構成A1および変形構成A2の両方または一方に適用してもよい。すなわち、実施の形態1に対して、変形構成A1および変形構成A2の両方または一方と、変形構成B1とを適用してもよい。
(その他の変形例)
以上、本発明に係るプリンタについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これら実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、当業者が思いつく変形を本実施の形態に施したものも、本発明に含まれる。つまり、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
また、例えば、プリンタ100は、図1に示される全ての構成要素を含まなくてもよい。すなわち、プリンタ100は、本発明の効果を実現できる最小限の構成要素のみを含めばよい。例えば、演算部20が、情報取得部10が行う処理も行うようにすれば、プリンタ100は、情報取得部10を備えなくてもよい。
また、本発明は、プリンタ100が備える特徴的な構成部の動作をステップとする加熱制御方法として実現してもよい。また、本発明は、当該加熱制御方法に含まれる各ステップをコンピュータが実行してもよい。また、本発明は、そのような加熱制御方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現してもよい。また、本発明は、そのようなプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現されてもよい。また、当該プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して配信されてもよい。
上記実施の形態で用いた全ての数値は、本発明を具体的に説明するための一例の数値である。すなわち、本発明は、上記実施の形態で用いた各数値に制限されない。
また、本発明に係る加熱制御方法は、図6の初期化処理および図7の印画制御処理に相当する。加熱制御方法における各処理の実行される順序は、本発明を具体的に説明するための一例であり、上記以外の順序であってもよい。また、加熱制御方法における処理の一部と、他の処理とは、互いに独立して並列に実行されてもよい。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
例えば、加熱量HTの制御は、サーマルヘッド41の印画に係る特性の変化を考慮して行われてもよい。例えば、加熱量HTの制御は、サーマルヘッド41が発する熱の変化の履歴を考慮して行われてもよい。また、例えば、加熱量HTの制御は、サーマルヘッド41が印画を行ったラインの数を考慮して行われてもよい。