JP2015200270A - 点火装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 点火装置は、点火スイッチにより一次電流を遮断し、二次電圧による点火プラグの放電を発生させた後の所定のエネルギ投入期間において、二次電流を同じ方向に且つ所定の目標値を維持するように発生させるためのエネルギを一次コイルの接地側に投入する。投入エネルギ設定手段は、アルコール濃度検出手段から取得したアルコール濃度の情報に基づいて、投入エネルギの制御値を設定する。具体的には、燃料中のアルコール濃度が高いほど、目標二次電流I2*を高く設定するか、又は、エネルギ投入期間IGWを長く設定する。二次電流を交番させる従来技術のように電流がゼロクロスしないので、吹き消えの発生を防止することができ、アルコール濃度が高く霧化能力が低下した状態であっても良好な着火性を確保することができる。
【選択図】図4
Description
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、FFV車両において、燃料中のアルコール濃度が変化した場合に着火性を向上させる点火装置を提供することにある。
点火コイルは、直流電源から供給される一次電流が流れる一次コイル、及び、点火プラグの電極に接続され、一次電流の通電及び遮断による二次電圧が発生し二次電流が流れる二次コイルを有する。
点火スイッチは、一次コイルの直流電源と反対側である接地側に接続され、点火信号に従って一次電流の通電と遮断とを切り替える。
特に本発明の好ましい態様のエネルギ投入手段は、二次電流を放電電流と同じ方向に、且つ所定の目標値(I2*)を維持するように発生させるためのエネルギを一次コイルの接地側に投入する。
ここで、「点火スイッチにより一次電流を遮断して発生させた二次電流による点火」を「通常点火」という。すなわち、本発明の好ましいエネルギ投入手段は、通常点火後のエネルギ投入期間に、エネルギを一次コイルの接地側に投入する。
また、二次電流を「所定の目標値を維持する」とは、厳密に一定値を維持するという意味に限らず、「所定の目標値を基準とした制御範囲内に収める」という意味を含む。
そして、投入エネルギ設定手段は、燃料中のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段から取得したアルコール濃度の情報に基づいて、投入エネルギを設定することを特徴とする。
ここで、アルコール濃度の「検出」には、例えば排気の空燃比に基づいてアルコール濃度を「推定」する場合を含む。
したがって、従来技術の点火装置のように、交番する二次電流がゼロ付近で火花が弱まることを回避することができる。よって、着火性を向上させることができる。
これにより、アルコール濃度に依存する混合燃料の霧化能力に応じて、適切な投入エネルギを設定することができる。したがって、アルコール濃度が高く霧化能力が低下した状態であっても、良好な着火性を確保することができる。
アルコール濃度が所定の濃度閾値未満の領域では通常点火によって十分に良好な着火が可能であるため、エネルギ投入制御を停止することで消費電力を低減することができる。
本発明の各実施形態による点火装置は、車両等に搭載されるエンジンシステムに適用される。以下の実施形態の説明では、特許請求の範囲に記載の「内燃機関」を「エンジン」という。
まず、エンジンシステムの概略構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、エンジンシステム10は火花点火式のエンジン13を備えている。エンジン13は、例えば4気筒等の多気筒エンジンであり、図1では1気筒の断面のみを図示する。以下に説明する構成は、図示しない他の気筒にも同様に設けられている。
なお、図1のエンジンシステム10は、EGR(排気還流)システムを有していないものとする。或いは、EGRシステムを有している場合でも、本実施形態の特徴とは関連性が低いため、図示を省略する。さらに、排気通路に設けられる触媒の図示も省略する。
点火プラグ7は、エンジン13の燃焼室17で所定のギャップを隔てて対向する一対の電極(図2参照)を有し、上記ギャップで絶縁破壊が生じるだけの高電圧が一対の電極間に印加されると放電を発生させる。以下の説明において、「高電圧」とは、点火プラグ7の一対の電極間で放電が発生し得るほどの電圧をいう。
破線矢印で示すように、電子制御ユニット32は、クランク位置センサ35、カム位置センサ36、水温センサ37、スロットル開度センサ38、及び吸気圧センサ39等の各種センサからの検出信号が入力される。電子制御ユニット32は、これらの各種センサからの検出信号に基づき、実線矢印で示すように、スロットル弁14、インジェクタ16、及び点火回路ユニット31等を駆動してエンジン13の運転状態を制御する。
次に、点火装置30の構成について図2を参照して説明する。
図2に示すように、点火装置30は、点火コイル40、点火回路ユニット31、及び、電子制御ユニット32の点火制御部33を含む。
一次コイル41は、一端が、一定の直流電圧を供給可能な「直流電源」としてのバッテリ6の正極に接続されており、他端が点火スイッチ45を介して接地されている。以下、一次コイル41のバッテリ6と反対側を「接地側」という。
二次コイル42は、一次コイル41と磁気的に結合されており、一端が点火プラグ7の一対の電極を介して接地されており、他端が整流素子43及び二次電流検出抵抗47を介して接地されている。
整流素子43は、ダイオードで構成されており、二次電流I2を整流する。
点火コイル40は、一次コイル41を流れる電流の変化に応じて電磁誘導の相互誘導作用により二次コイル42に高電圧を発生させ、この高電圧を点火プラグ7に印加する。本実施形態では、1つの点火プラグ7に対し1つの点火コイル40が設けられている。
点火スイッチ45は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)で構成されており、コレクタが点火コイル40の一次コイル41の接地側に接続され、エミッタが接地され、ゲートが電子制御ユニット32に接続されている。エミッタは、整流素子46を介してコレクタに接続されている。
点火スイッチ45は、ゲートに入力される点火信号IGTに応じてオンオフ動作する。詳しくは、点火スイッチ45は、点火信号IGTの立ち上がり時にオンとなり、点火信号IGTの立ち下がり時にオフとなる。一次コイル41における一次電流I1は、点火スイッチ45により点火信号IGTに従って通電及び遮断が切り替えられる。
エネルギ蓄積コイル52は、一端がバッテリ6に接続され、他端が充電スイッチ53を介して接地されている。充電スイッチ53は、例えばMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)で構成されており、ドレインがエネルギ蓄積コイル52に接続され、ソースが接地され、ゲートがドライバ回路54に接続されている。ドライバ回路54は、充電スイッチ53をオンオフ駆動可能である。
整流素子55は、ダイオードで構成されており、コンデンサ56からエネルギ蓄積コイル52及び充電スイッチ53側への電流の逆流を防止する。
コンデンサ56は、一方の電極が整流素子55を介してエネルギ蓄積コイル52の接地側に接続され、他方の電極が接地されている。コンデンサ56は、DCDCコンバータ51によって昇圧された電圧を蓄電する。
整流素子59は、ダイオードで構成されており、点火コイル40からコンデンサ56への電流の逆流を防止している。
なお、図2では1気筒に対する構成のみを示しているが、現実には、放電スイッチ57以降の構成は気筒数分が並列して設けられており、放電スイッチ57の手前で電流経路が気筒毎に分岐され、コンデンサ56に蓄積されたエネルギが各経路に分配される。
以上が点火回路ユニット31の構成である。
また、ドライバ回路58には、目標二次電流I2*を指示するための目標二次電流信号IGAが入力される。
次に、点火装置30によるエネルギ投入の作動について図3のタイムチャートを参照して説明する。図3のタイムチャートは、共通の時間軸を横軸とし、縦軸に上から順に、点火信号IGT、エネルギ投入期間信号IGW、コンデンサ電圧Vdc、一次電流I1、二次電流I2、投入エネルギP、充電スイッチ信号SWc、放電スイッチ信号SWdの時間変化を示している。
ここで、「コンデンサ電圧Vdc」はコンデンサ56に蓄電された電圧を意味する。また、「投入エネルギP」は、コンデンサ56から放出され、一次コイル41の低電圧側端子側から点火コイル40に供給されるエネルギを意味し、1回の点火タイミング中における供給開始(最初の放電スイッチ信号SWdの立ち上がり)からの積算値を示す。
このようにして、点火信号IGTがHレベルに立ち上がっている時刻t1−t2間に、点火コイル40が充電されるとともに、DCDCコンバータ51の出力によってコンデンサ56にエネルギが蓄積される。このエネルギの蓄積は、時刻t2までに終了する。
このとき、コンデンサ電圧Vdc、すなわちコンデンサ56のエネルギ蓄積量は、充電スイッチ信号SWcのオンデューティ比及びオンオフ回数によって制御可能である。
時刻t2で点火放電を発生させた後にエネルギ投入を行わない場合、二次電流I2は、破線で示すように、時間経過とともに0[A]に近づき、放電を維持できない程度まで減衰すると放電は終了する。このような放電による点火方式を「通常点火」という。
すなわち、放電スイッチ信号SWdがオンになる毎に、コンデンサ56の蓄積エネルギにより一次電流I1が順次追加され、これに対応して、二次電流I2が順次追加される。二次電流I2が所定値になると放電スイッチ57がオフされ一次電流I1への重畳投入が停止し、I2が低下していき所定値になると再度放電スイッチ57がオンされる。これにより、二次電流I2は、目標二次電流I2*に一致するように維持される。
時刻t4でエネルギ投入期間信号IGWがLレベルに立ち下げられると、放電スイッチ信号SWdのオンオフ動作が停止し、一次電流I1、二次電流I2ともにゼロとなる。以下、電流について「ゼロ」と記載する場合、厳密な0[A]に限らず、実質的に0[A]と同等の微少電流範囲を含むものとする。
一方、特許文献1、2の従来技術に用いられる方式では、一次コイル41のバッテリ6側から点火コイル40に流入する一次電流I1の通電及び遮断に伴って二次電流I2の方向が交番し、ゼロクロスする。そのため、二次電流I2がゼロ付近となったとき火花が弱くなり着火させることが困難となりやすい
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるエネルギ投入条件の設定について、図4を参照して説明する。図4では、アルコール濃度として、エタノール濃度を例示する。
図4(a)に示すように、第1実施形態では、エタノール濃度検出値が0%から100%の範囲にわたって、エタノール濃度が高いほど目標二次電流I2*を高く設定する。
或いは、図4(b)に示すように、エタノール濃度検出値が0%から100%の範囲にわたって、エタノール濃度が高いほどエネルギ投入期間IGWを長く設定する。
(1)本実施形態の点火装置30の点火制御部33は、アルコール濃度検出部34から取得したアルコール濃度の情報に基づいて、投入エネルギの設定値として目標二次電流I2*及びエネルギ投入期間IGWを設定する。具体的には、アルコール濃度が高いほど、目標二次電流I2*を高く設定するか、又は、エネルギ投入期間IGWを長く設定する。これにより、アルコール濃度に依存する混合燃料の霧化能力に応じて、適切な投入エネルギを設定することができる。したがって、アルコール濃度が高く霧化能力が低下した状態であっても、良好な着火性を確保することができる。
また、エネルギ投入期間IGW中、二次電流I2は、常に負の値となり、交番電流を用いる特許文献1、2の従来技術の方式のようにゼロクロスしないため、火花が弱まることを回避することができる。よって、着火性を向上させることができる。
本発明の第2実施形態について、図5、図6を参照して説明する。図5、図6における各記号は、図3、図4で用いた記号を援用する。第2実施形態の点火装置の構成は、図2に示す第1実施形態の点火装置30と同一であり、点火制御部33による投入エネルギの設定の仕方のみが異なる。
図5のタイムチャートは、図3のエネルギ投入制御を実行しない場合の点火装置30の作動を示す。
或いは、図6(b)に示すように、エタノール濃度検出値が所定の濃度閾値β未満の領域Iではエネルギ投入期間IGWをゼロで一定とし、通常点火を行う。一方、エタノール濃度検出値が濃度閾値β以上の領域IIでは、第1実施形態の図4(b)と同様に、エタノール濃度が高いほどエネルギ投入期間IGWを長く設定する。
図6(a)の濃度閾値αと図6(b)の濃度閾値βとは同じでもよく異なってもよい。
ここで、濃度閾値α、βは、例えばエンジン回転数、エンジン負荷、又は燃料温度等のパラメータにより、マップ等を用いて可変としてもよい。
(ア)上述の実施形態では、1つの点火プラグ7に対応して点火コイル40及び点火スイッチ45が1つずつ設けられ、エネルギ投入部50は、点火スイッチ45のオフにより発生する放電中に電気エネルギを重畳的に投入することにより放電を持続させる。
これに対し、本発明の他の実施形態では、1つの点火プラグに対応して点火コイル及び点火スイッチが2つずつ設けられ、エネルギ投入部は、一方の点火スイッチのオフにより発生する放電が途絶えた後に一方の点火コイルを介して点火プラグに電気エネルギを投入することにより放電を発生させてもよい。また、エネルギ投入部は、他方の点火スイッチのオフにより発生する放電が途絶えた後に他方の点火コイルを介して点火プラグに電気エネルギを投入することにより放電を発生させてもよい。そして、上記放電を連続させることによって、放電を持続させてもよい。
また、バイオ燃料の一種である脂肪酸メチルエステルは、化学式ではアルコール類ではないが、FFV車両に用いられる異種燃料という本発明の趣旨に照らして、アルコールと均等なものとして解釈する。
点火スイッチ45及びエネルギ投入部50は別々のハウジング内に収容されてもよい。例えば、点火コイル40を収容するハウジング内に点火スイッチ45が収容され、電子制御ユニット32を収容するハウジング内にエネルギ投入部50が収容されてもよい。
(カ)直流電源は、バッテリに限らず、例えば交流電源をスイッチングレギュレータ等によって安定化した直流安定化電源等で構成されてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
30 ・・・点火装置、
33 ・・・点火制御部(投入エネルギ設定手段)、
34 ・・・アルコール濃度検出部(アルコール濃度検出手段)、
40 ・・・点火コイル、
41 ・・・一次コイル、 42 ・・・二次コイル、
45 ・・・点火スイッチ、
50 ・・・エネルギ投入部(エネルギ投入手段)、
6 ・・・バッテリ(直流電源)、 7 ・・・点火プラグ。
Claims (4)
- 内燃機関(13)の燃焼室(17)において混合気に点火する点火プラグ(7)の動作を制御する点火装置(30)であって、
直流電源(6)から供給される一次電流が流れる一次コイル(41)、及び、前記点火プラグの電極に接続され、前記一次電流の通電及び遮断による二次電圧が発生し二次電流が流れる二次コイル(42)を有する点火コイル(40)と、
前記一次コイルの前記直流電源と反対側である接地側に接続され、点火信号(IGT)にしたがって前記一次電流の通電と遮断とを切り替える点火スイッチ(45)と、
前記点火スイッチにより前記一次電流を遮断し、前記二次電圧による前記点火プラグの放電を発生させた後の所定のエネルギ投入期間(IGW)において、前記二次電流が同じ方向に流れるようにエネルギを投入するエネルギ投入手段(50)と、
前記エネルギ投入手段による投入エネルギを設定する投入エネルギ設定手段(33)と、
を備え、
前記投入エネルギ設定手段は、
燃料中のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段(34)から取得したアルコール濃度の情報に基づいて、前記投入エネルギを設定することを特徴とする点火装置。 - 前記エネルギ投入手段は、
前記二次電流を同じ方向に、且つ所定の目標値(I2*)を維持するように発生させるためのエネルギを前記一次コイルの接地側に投入することを特徴とする請求項1に記載の点火装置。 - 前記投入エネルギ設定手段は、
燃料中のアルコール濃度が高いほど、前記エネルギ投入手段による前記二次電流の目標値を高く設定するか、又は、前記エネルギ投入期間を長く設定することを特徴とする請求項2に記載の点火装置。 - 前記投入エネルギ設定手段は、
燃料中のアルコール濃度が所定の濃度閾値未満のとき、
前記エネルギ投入手段による前記二次電流の目標値又は前記エネルギ投入期間をゼロに設定することを特徴とする請求項3に記載の点火装置。
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