JP6394037B2 - 点火制御システム - Google Patents
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Description
特にアルコール混合燃料を用いるフレキシブルフューエルビークル(以下、「FFV車両」という)では、アルコールはガソリンに比べ同一温度での揮発性が低いため、着火性が悪い。そこで、燃料を加熱することで、低温時の始動性の向上を図っている。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温での内燃機関の始動性を向上させる点火制御システムを提供することにある。
点火コイルは、直流電源から供給される一次電流が流れる一次コイル、及び、点火プラグの電極に接続され、一次電流の通電及び遮断による二次電圧が発生し二次電流が流れる二次コイルを有する。
点火スイッチは、一次コイルの直流電源と反対側である接地側に接続され、点火信号に従って一次電流の通電と遮断とを切り替える。
ここで、「点火スイッチにより一次電流を遮断して発生させた二次電流による点火」を「通常点火」という。すなわち、本発明のエネルギ投入手段は、通常点火後のエネルギ投入期間に、エネルギを投入する。
また、一次コイルの接地側には、接地に向かう電流を遮断し、接地から一次コイルの接地側に向かう電流を通流する整流素子が接続されている。
燃料加熱装置は、内燃機関に供給される燃料が収容される燃料供給流路の燃料を加熱可能である。ここで、「燃料が収容される燃料供給流路」には、燃料を貯留する燃料タンクや燃料が圧送される燃料ポンプ、及び、それらを接続する配管等、内燃機関に供給される燃料が収容される流路のどの部分も含まれる。一例としては、各気筒のインジェクタに燃料を分配する燃料レールが燃料供給流路に相当する。
そして、投入エネルギ設定手段は、燃料加熱装置の燃料温度に応じて、投入エネルギを設定することを特徴とする。
これにより、燃料温度が低く霧化能力が低下した状態であっても着火性を確保し、内燃機関を良好に始動させることができる。また、投入エネルギにより着火性を向上させるため、燃料加熱装置による加熱時間を短縮することができる。したがって、揮発性の低いアルコール混合燃料を極低温で使用する場合に特に効果がある。
これにより、燃料温度に依存する混合燃料の霧化能力に応じて、適切な投入エネルギを設定することができる。
燃料加熱装置の燃料温度が所定の温度閾値を超える領域では通常点火によって十分に良好な着火が可能であるため、エネルギ投入制御を停止することで消費電力を低減することができる。
本発明の各実施形態による点火制御システムは、車両等に搭載されるエンジンシステムに適用される。以下の実施形態の説明では、特許請求の範囲に記載の「内燃機関」を「エンジン」という。
まず、エンジンシステムの概略構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、エンジンシステム10は火花点火式のエンジン13を備えている。エンジン13は、例えば4気筒等の多気筒エンジンであり、図1では1気筒の断面のみを図示する。以下に説明する構成は、図示しない他の気筒にも同様に設けられている。
なお、図1のエンジンシステム10は、EGR(排気還流)システムを有していないものとする。或いは、EGRシステムを有している場合でも、本実施形態の特徴とは関連性が低いため、図示を省略する。さらに、排気通路に設けられる触媒の図示も省略する。
点火プラグ7は、エンジン13の燃焼室17で所定のギャップを隔てて対向する一対の電極(図2参照)を有し、上記ギャップで絶縁破壊が生じるだけの高電圧が一対の電極間に印加されると放電を発生させる。以下の説明において、「高電圧」とは、点火プラグ7の一対の電極間で放電が発生し得るほどの電圧をいう。
破線矢印で示すように、電子制御ユニット32は、クランク位置センサ35、カム位置センサ36、水温センサ37、スロットル開度センサ38、及び吸気圧センサ39等の各種センサからの検出信号が入力される。電子制御ユニット32は、これらの各種センサからの検出信号に基づき、実線矢印で示すように、スロットル弁14、インジェクタ16、及び点火回路ユニット31等を駆動してエンジン13の運転状態を制御する。
次に、点火制御システム300の構成について図2を参照して説明する。
図2に示すように、点火制御システム300は、点火コイル40、点火回路ユニット31、及び、電子制御ユニット32、及び燃料加熱装置80を含む。
一次コイル41は、一端が、一定の直流電圧を供給可能な「直流電源」としてのバッテリ6の正極に接続されており、他端が点火スイッチ45を介して接地されている。以下、一次コイル41のバッテリ6と反対側を「接地側」という。
二次コイル42は、一次コイル41と磁気的に結合されており、一端が点火プラグ7の一対の電極を介して接地されており、他端が整流素子43及び二次電流検出抵抗47を介して接地されている。
整流素子43は、ダイオードで構成されており、二次電流I2を整流する。
点火コイル40は、一次コイル41を流れる電流の変化に応じて電磁誘導の相互誘導作用により二次コイル42に高電圧を発生させ、この高電圧を点火プラグ7に印加する。本実施形態では、1つの点火プラグ7に対し1つの点火コイル40が設けられている。
点火スイッチ45は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)で構成されており、コレクタが点火コイル40の一次コイル41の接地側に接続され、エミッタが接地され、ゲートが電子制御ユニット32に接続されている。エミッタは、整流素子46を介してコレクタに接続されている。
点火スイッチ45は、ゲートに入力される点火信号IGTに応じてオンオフ動作する。詳しくは、点火スイッチ45は、点火信号IGTの立ち上がり時にオンとなり、点火信号IGTの立ち下がり時にオフとなる。一次コイル41における一次電流I1は、点火スイッチ45により点火信号IGTに従って通電及び遮断が切り替えられる。
エネルギ蓄積コイル52は、一端がバッテリ6に接続され、他端が充電スイッチ53を介して接地されている。充電スイッチ53は、例えばMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)で構成されており、ドレインがエネルギ蓄積コイル52に接続され、ソースが接地され、ゲートがドライバ回路54に接続されている。ドライバ回路54は、充電スイッチ53をオンオフ駆動可能である。
整流素子55は、ダイオードで構成されており、コンデンサ56からエネルギ蓄積コイル52及び充電スイッチ53側への電流の逆流を防止する。
コンデンサ56は、一方の電極が整流素子55を介してエネルギ蓄積コイル52の接地側に接続され、他方の電極が接地されている。コンデンサ56は、DCDCコンバータ51によって昇圧された電圧を蓄電する。
整流素子59は、ダイオードで構成されており、点火コイル40からコンデンサ56への電流の逆流を防止している。
なお、図2では1気筒に対する構成のみを示しているが、現実には、放電スイッチ57以降の構成は気筒数分が並列して設けられており、放電スイッチ57の手前で電流経路が気筒毎に分岐され、コンデンサ56に蓄積されたエネルギが各経路に分配される。
以上が点火回路ユニット31の構成である。
電子制御ユニット32の点火制御部33は、クランク位置センサ35等の各種センサから取得したエンジン13の運転情報に基づいて、点火信号IGT及びエネルギ投入期間信号IGWを生成し、点火回路ユニット31に出力する。また、点火制御部33は、燃料加熱装置80の燃料温度に応じて、投入エネルギを設定することを特徴とする。
また、ドライバ回路58には、目標二次電流I2*を指示するための目標二次電流信号IGAが入力される。
ヒータ81は、例えば電熱線等の電気ヒータである。ヒータスイッチ82は、例えばMOSFET等の半導体スイッチング素子で構成されており、バッテリ6からヒータ81への通電を開閉する。制御回路83は、ヒータスイッチ82のスイッチ動作を制御するヒータスイッチ信号SWhを出力する。
電子制御ユニット32は、例えば温度センサ84から取得した温度検出値に基づき、検出温度が目標温度に一致するようにPI演算等によるフィードバック制御によって制御回路83を介してヒータ81への通電を制御する。或いは、フィードフォワード制御により通電等を制御してもよい。
次に、点火制御システム300によるエネルギ投入の作動について図3のタイムチャートを参照して説明する。図3のタイムチャートは、共通の時間軸を横軸とし、縦軸に上から順に、点火信号IGT、エネルギ投入期間信号IGW、コンデンサ電圧Vdc、一次電流I1、二次電流I2、投入エネルギP、充電スイッチ信号SWc、放電スイッチ信号SWdの時間変化を示している。
ここで、「コンデンサ電圧Vdc」はコンデンサ56に蓄電された電圧を意味する。また、「投入エネルギP」は、コンデンサ56から放出され、一次コイル41の低電圧側端子側から点火コイル40に供給されるエネルギを意味し、1回の点火タイミング中における供給開始(最初の放電スイッチ信号SWdの立ち上がり)からの積算値を示す。
このようにして、点火信号IGTがHレベルに立ち上がっている時刻t1−t2間に、点火コイル40が充電されるとともに、DCDCコンバータ51の出力によってコンデンサ56にエネルギが蓄積される。このエネルギの蓄積は、時刻t2までに終了する。
このとき、コンデンサ電圧Vdc、すなわちコンデンサ56のエネルギ蓄積量は、充電スイッチ信号SWcのオンデューティ比及びオンオフ回数によって制御可能である。
時刻t2で点火放電を発生させた後にエネルギ投入を行わない場合、二次電流I2は、破線で示すように、時間経過とともに0[A]に近づき、放電を維持できない程度まで減衰すると放電は終了する。このような放電による点火方式を「通常点火」という。
すなわち、放電スイッチ信号SWdがオンになる毎に、コンデンサ56の蓄積エネルギにより一次電流I1が順次追加され、これに対応して、二次電流I2が順次追加される。二次電流I2が所定値になると放電スイッチ57がオフされ一次電流I1への重畳投入が停止し、I2が低下していき所定値になると再度放電スイッチ57がオンされる。これにより、二次電流I2は、目標二次電流I2*に一致するように維持される。
時刻t4でエネルギ投入期間信号IGWがLレベルに立ち下げられると、放電スイッチ信号SWdのオンオフ動作が停止し、一次電流I1、二次電流I2ともにゼロとなる。以下、電流について「ゼロ」と記載する場合、厳密な0[A]に限らず、実質的に0[A]と同等の微少電流範囲を含むものとする。
一方、周知の多重放電方式のように、一次コイル41のバッテリ6側、或いは二次コイル42の点火プラグ7と反対側から点火コイル40にエネルギを投入する方式を包括して「従来のエネルギ投入制御」という。本出願人が開発したエネルギ投入制御では、従来の方式に比べ、低電圧側からエネルギを投入することで最低限のエネルギを効率良く投入しつつ、点火可能な状態を一定期間持続させることができる。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による投入エネルギの設定について、図4を参照して説明する。
ここで、エネルギ投入制御において目標二次電流I2*を高くすることとエネルギ投入期間IGWを長くすることとは、放電を強くするか、放電の機会を増やすかという詳細な作用効果に違いはあるものの、「エネルギ投入をより増進させて火花着火性を高める」方向に変化させるという点で共通している。逆に、目標二次電流I2*を低くすることとエネルギ投入期間IGWを短くすることとは、「エネルギ投入をより軽減する」方向に変化させるという点で共通している。
図4(b)に示す例では、点火制御部33は、加熱開始時点における燃料の初期温度を温度センサ84から取得する。或いは、エンジン水温等の情報に基づいて燃料の初期温度を推定してもよい。また、ヒータ81への通電時間、すなわち制御回路83がヒータスイッチ82をオンした時間から燃料加熱時間を算出し、燃料の初期温度及び燃料加熱時間に基づいて現在の燃料温度を推定する。そして、燃料加熱時間の全範囲にわたって、燃料加熱時間が短いほど目標二次電流I2*を高く、又は、エネルギ投入期間IGWを長く設定する。
(1)本実施形態の点火制御システム300は、低温時に燃料加熱装置80において燃料を加熱すると共に、点火プラグ7の放電時に燃焼室17における着火性を向上させるように積極的にエネルギ投入を行うことを特徴とする。
これにより、燃料温度が低く霧化能力が低下した状態であっても着火性を確保し、エンジン13を良好に始動させることができる。また、投入エネルギにより着火性を向上させるため、燃料加熱装置80による加熱時間を短縮することができる。したがって、揮発性の低いアルコール混合燃料を極低温で使用する場合に特に効果がある。
これにより、燃料温度に依存する混合燃料の霧化能力に応じて、適切な投入エネルギを設定することができる。
また、エネルギ投入期間IGW中、二次電流I2は、常に負の値となりゼロクロスしないため、火花が消えることを回避することができる。よって、着火性を向上させることができる。
温度センサ84から燃料温度の検出値を取得する場合、推定演算が不要なので処理が単純になる。一方、初期温度を含めて燃料温度の検出値を用いず推定する場合には温度センサ84を廃止することができる。また、温度センサ84を設ける場合であっても、実際の温度変化に対して温度センサ84の追従が遅れる場合、燃料温度を推定することで処理の応答性が向上する。
本発明の第2実施形態について、図5、図6を参照して説明する。図5、図6における各記号は、図3、図4で用いた記号を援用する。第2実施形態の点火制御システムの構成は、図2に示す第1実施形態の点火制御システム300と同一であり、点火制御部33による投入エネルギの設定の仕方のみが異なる。
図5のタイムチャートは、図3のエネルギ投入制御を実行しない場合の点火制御システム300の作動を示す。
一方、燃料温度が温度閾値Tα以下、又は、燃料加熱時間が時間閾値X以下の領域IIでは、燃料温度又は燃料加熱時間に応じて目標二次電流I2*又はエネルギ投入期間IGWを変更することで、低温での始動時に良好な着火性を確保することができる。
ここで、温度閾値Tα、及び、ある初期温度に対応する時間閾値Xは、例えばエンジン回転数、エンジン負荷、又は燃料中のアルコール濃度等のパラメータにより、マップ等を用いて可変としてもよい。
(ア)上記実施形態では、本出願人が開発した「一次コイルの接地側からエネルギ投入する方式」における設定値を燃料加熱装置80の燃料温度に応じて設定している。この他、従来の多重放電方式や特開2012−167665号公報に開示された「DCO方式」等のエネルギ投入制御方式に対して、本発明を適用し、燃料温度に基づいて投入エネルギを設定するようにしてもよい。より、具体的には放電持続時間を延ばして放電時間を延ばせばよいし、電源電圧を上げて二次電流を増加させてもよい。
点火スイッチ45及びエネルギ投入部50は別々のハウジング内に収容されてもよい。例えば、点火コイル40を収容するハウジング内に点火スイッチ45が収容され、電子制御ユニット32を収容するハウジング内にエネルギ投入部50が収容されてもよい。
(オ)直流電源は、バッテリに限らず、例えば交流電源をスイッチングレギュレータ等によって安定化した直流安定化電源等で構成されてもよい。
(キ)電子制御ユニット32は、点火制御部33及びその他の機能部分が一つのユニットとして構成されてもよく、或いは、信号線等によって互いに通信される別体のユニットとして構成されてもよい。
また、加熱手段は、電気ヒータに限らず、エンジン13の排熱を利用した排熱ヒータ等を用いてもよい。
(ケ)ヒータ81への通電を開閉するヒータスイッチ82は、MOSFET等の半導体スイッチング素子に限らず、機械式スイッチ等を用いてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
300・・・点火制御システム、
33 ・・・点火制御部(投入エネルギ設定手段)、
40 ・・・点火コイル、
41 ・・・一次コイル、 42 ・・・二次コイル、
45 ・・・点火スイッチ、
50 ・・・エネルギ投入部(エネルギ投入手段)、
6 ・・・バッテリ(直流電源)、
7 ・・・点火プラグ、
80 ・・・燃料加熱装置、
85 ・・・燃料供給流路。
Claims (3)
- 内燃機関(13)において混合気への点火を制御する点火制御システム(300)であって、
直流電源(6)から供給される一次電流が流れる一次コイル(41)、及び、点火プラグ(7)の電極に接続され、前記一次電流の通電及び遮断による二次電圧が発生し二次電流が流れる二次コイル(42)を有する点火コイル(40)と、
前記一次コイルの前記直流電源と反対側である接地側に接続され、点火信号(IGT)にしたがって前記一次電流の通電と遮断とを切り替える点火スイッチ(45)と、
前記点火スイッチにより前記一次電流を遮断し、前記遮断による二次電圧で前記点火プラグの放電を発生させた後の所定のエネルギ投入期間(IGW)において、前記一次コイル側から前記点火コイルにエネルギを投入可能なエネルギ投入手段(50)と、
前記エネルギ投入手段による投入エネルギを設定する投入エネルギ設定手段(33)と、
前記内燃機関に供給される燃料が収容される燃料供給流路(85)の燃料を加熱可能な燃料加熱装置(80)と、
を備え、
前記一次コイルの接地側には、接地に向かう電流を遮断し、接地から前記一次コイルの接地側に向かう電流を通流する整流素子(46)が接続されており、
前記投入エネルギ設定手段は、
前記燃料加熱装置の燃料温度に応じて、前記燃料加熱装置の燃料温度が低いほど、前記二次電流の目標値を高く設定するか、かつ/又は、前記エネルギ投入期間を長く設定するように前記投入エネルギを設定し、
前記燃料加熱装置の燃料温度が所定の温度閾値を超えるとき、
前記二次電流の目標値又は前記エネルギ投入期間を、前記温度閾値において不連続に変化させつつゼロに設定することを特徴とする点火制御システム。 - 前記燃料加熱装置は、燃料を加熱可能な加熱手段(81)、及び、燃料温度を検出する温度検出手段(84)を有し、
前記投入エネルギ設定手段は、
前記温度検出手段が検出した燃料温度の検出値に応じて、前記投入エネルギを設定することを特徴とする請求項1に記載の点火制御システム。 - 前記エネルギ投入手段は、前記一次コイルの接地側から前記二次電流と同じ極性で重畳的に前記点火コイルにエネルギを投入可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の点火制御システム。
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