JP2015196801A - 熱硬化性芳香族エステル組成物、その硬化物、及びその硬化物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 比較的低温にて、硬化可能な熱硬化性芳香族エステル組成物を提供する。また、耐熱性等の物性に優れた熱硬化性芳香族エステルの硬化物を提供する。【解決手段】 下記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルと、金属触媒及び/又は硬化促進剤を含む熱硬化性芳香族エステル組成物である。【化1】[上記式(I)中のLは、芳香族エステル骨格を表し、D及びD’は、同一又は異なって、単結合又は連結基を表し、R1及びR2は、同一又は異なって、置換基であって、それぞれC1-6アルキル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、又はハロゲン原子を表し、n1及びn2は、それぞれ0以上の整数を表し、n1及びn2が2以上である場合は、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい]【選択図】なし
Description
本発明は、熱硬化性芳香族エステル組成物、その硬化物、及びその硬化物の製造方法に関する。
液晶ポリエステルに代表される液晶ポリマーは、耐熱性、成形性、耐薬品性、機械強度等の各種特性に優れるため、電気・電子部品、自動車部品等の様々な用途に使用されている。近年、特に、加熱により硬化させることによって非常に高い耐熱性を有する硬化物を形成できる熱硬化性液晶ポリマー材料に注目が集められている。
液晶ポリエステルの製造方法としては、モノマーをアセチル化及び脱アセチル化を伴う、エステル交換反応による方法が知られている。また、熱硬化性液晶ポリエステルの製造方法として、液晶ポリエステルに熱硬化剤などの硬化剤を加えて、溶融混合する方法が知られている。半導体の封止技術として、トランスファー成形が知られている。
熱硬化性液晶ポリマー材料としては、例えば、主鎖サーモトロピック液晶エステル等の液晶オリゴマーをフェニルアセチレン、フェニルマレイミド、ナジイミド反応性末端基でエンドキャップした材料が知られている(特許文献1〜3参照)。また、主鎖に一つ以上の可溶性構造単位を有し且つ主鎖の末端の一つ以上に熱硬化性基を有する熱硬化性液晶オリゴマーと特定のフッ素化合物とを反応させて得られる材料(特許文献4参照)、上記熱硬化性液晶オリゴマーとアルコキシド金属化合物で表面を置換したナノ充填剤とを反応させて得られる材料が知られている(特許文献5参照)。
熱硬化性液晶ポリマー材料としては、例えば、液晶ポリマーの末端にスペーサー単位を介して熱重合性官能基が結合した材料も知られている(特許文献6参照)。また、液晶ポリエステルの両末端に、無置換又は置換マレイミド、無置換又は置換ナジイミド、エチニル、ベンゾシクロブテンなどのラジカル重合性基を有する材料も知られている(特許文献7参照)。
分子末端にフェニルエチニル基などの熱重合性官能基を有する液晶ポリエステル等の熱硬化性芳香族ポリエステルは、耐熱性などの物性に非常に優れた硬化物が得られる。しかしながら、分子末端にフェニルエチニル基などの熱重合性官能基を有する熱硬化性芳香族ポリエステルは、熱硬化開始温度が350℃以上と高温であるため、硬化物を得るためには、非常に高温(380〜450℃)にて完全に硬化させる必要がある。
従って、本発明の目的は、比較的低温(例えば、280℃以下)にて、硬化可能な熱硬化性芳香族エステル組成物を提供することである。また、本発明の他の目的は、簡便な方法で生産性良く、硬化物を得ることができる熱硬化性芳香族エステル硬化物の製造方法を提供することである。さらに、本発明の他の目的は、耐熱性などの物性に優れた熱硬化性芳香族エステルの硬化物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、熱重合性官能基としてフェニルエチニル基を有する熱硬化性芳香族エステルと、硬化促進剤及び/又は金属触媒を含む熱硬化性芳香族エステル組成物が、比較的低温(例えば、280℃以下)にて、硬化可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルと、金属触媒及び/又は硬化促進剤を含む熱硬化性芳香族エステル組成物を提供する。
[上記式(I)中のLは、芳香族エステル骨格を表し、D及びD’は、同一又は異なって、単結合又は連結基を表し、R1及びR2は、同一又は異なって、置換基であって、それぞれC1-6アルキル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、又はハロゲン原子を表し、n1及びn2は、それぞれ0以上の整数を表し、n1及びn2が2以上である場合は、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい]
さらに、本発明は、式(I)中の前記連結基が、2価の炭化水素基、2価の複素環式基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、又はこれらが複数個連結した基である前記の熱硬化性芳香族エステル組成物を提供する。
さらに、本発明は、金属触媒が、ニッケロセン、塩化ニオブ、塩化タンタル、塩化モリブデン、塩化タングステン及びこれらの共触媒からなる群より選択される少なくとも1つの金属触媒である前記の熱硬化性芳香族エステル組成物を提供する。
さらに、本発明は、硬化促進剤が、ラジカル発生剤である前記の熱硬化性芳香族エステル組成物を提供する。
さらに、本発明は、熱硬化性芳香族エステル中の芳香族エステル骨格Lの平均重合度が、1〜50である前記の熱硬化性芳香族エステル組成物を提供する。
さらに、本発明は、熱硬化性芳香族エステルの融点が250℃以下である前記の熱硬化性芳香族エステル組成物を提供する。
また、本発明は、前記の熱硬化性芳香族エステル組成物を硬化させることを特徴とする芳香族エステル硬化物の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、硬化させる際の熱硬化開始温度が280℃以下である前記の芳香族エステル硬化物の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記の熱硬化性芳香族エステル組成物を硬化させることにより得られる硬化物を提供する。
さらに、本発明は、昇温温度10℃/分(空気中)で測定される5%重量減少温度が350℃以上であり、空気中における熱分解反応の活性化エネルギーが150kJ/mol以上である前記の硬化物を提供する。
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、上記構成を有するため、熱硬化開始温度が低く、比較的低温(例えば、280℃以下)にて硬化可能であり、また、硬化させることにより得られる硬化物は、耐熱性などの物性に優れる。また、本発明の熱硬化性芳香族エステル硬化物の製造方法は、簡便な方法で生産性良く硬化物を得ることができる。また、本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物を硬化することにより得られる硬化物は、芳香族エステルを必須の構成要素とし、フェニルエチニル基を有するため、耐熱性、加工性、寸法安定性、低線膨張、高熱伝導、低吸湿性及び誘電特性などの物性に優れる。
[熱硬化性芳香族エステル組成物]
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、下記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルと、金属触媒及び/又は硬化促進剤を含むことを特徴とする。
[上記式(I)中のLは、芳香族エステル骨格を表し、D及びD’は、同一又は異なって、単結合又は連結基を表し、R1及びR2は、同一又は異なって、置換基であって、それぞれC1-6アルキル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、又はハロゲン原子を表し、n1及びn2は、それぞれ0以上の整数を表し、n1及びn2が2以上である場合は、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい]
なお、上記の「金属触媒及び/又は硬化促進剤」とは、金属触媒のみでもよく、硬化促進剤のみであってもよく、金属触媒と硬化促進剤でもよいという意味である。
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、下記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルと、金属触媒及び/又は硬化促進剤を含むことを特徴とする。
なお、上記の「金属触媒及び/又は硬化促進剤」とは、金属触媒のみでもよく、硬化促進剤のみであってもよく、金属触媒と硬化促進剤でもよいという意味である。
上記式(I)中のD及びD’である連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、2価の複素環式基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、又はこれらが複数個連結した基等が挙げられる。上記2価の炭化水素基としては、アリーレン基、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜8の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などが挙げられる。上記2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキデン基を含む)等が挙げられる。上記アリーレン基としては、炭素数6〜18のアリーレン基が挙げられる。炭素数6〜18のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。中でも、硬化物としたときの耐熱性等の物性に優れる点から、単結合又は、連結基としては、アミド結合、エーテル結合、フェニレン基、ビフェニレン基及びナフチレン基が好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
上記式(I)中のLである芳香族エステル骨格としては、特に制限されないが、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(「成分(A)」と称する場合がある)由来の構成単位(繰り返し構成単位)を少なくとも含む芳香族エステルなどが挙げられる。
上記芳香族エステル骨格が、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、及び芳香族ヒドロキシカルボン酸からなる群より選択された少なくとも1種の化合物(「成分(A)」)由来の構成単位Uを含む芳香族エステルであって、前記構成単位Uの、芳香族エステル骨格(L)を構成する全構成単位に対する割合(前記構成単位が2種以上の場合は、それらの総量の割合)は、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。特に、芳香族エステル骨格が実質的に上述の芳香族化合物(芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール)由来の構成単位のみからなることが好ましい。割合が上記範囲であると、導入される他の単量体由来の構成単位により、芳香族エステルが溶融状態で液晶性を発現しにくくなることがなく、硬化物の耐熱性や耐湿性(耐加水分解性)の低下が起きにくい。
上記成分(A)由来の構成単位(芳香族ジオール由来の構成単位、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構成単位、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位)以外の構成単位(「その他の構成単位」と称する場合がある)を有していてもよく、上記その他の構成単位としては、例えば、芳香族ジアミン由来の構成単位、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン又は芳香族アミド由来の構成単位などが挙げられる。
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルと、金属触媒及び/又は硬化促進剤を含むが、これら以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、後述する上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル以外の芳香族エステルや添加剤(例えば、無機フィラー)などが挙げられる。上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル、金属触媒及び硬化促進剤の総量は、特に制限されないが、本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物全量(100重量%)に対して、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物では、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルの芳香族エステル(「その他の芳香族エステル」と称する場合がある)を含んでもよい。その他の芳香族エステルとしては、上記芳香族エステル骨格(L)の両方又は片方の分子末端基が、水酸基、アシルオキシ基、アリール基、アルキル基、カルボキシル基、又はこれらが複数結合した基などである芳香族エステルなどが挙げられる。
上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルの割合は、特に制限されないが、その他の芳香族エステルを含むすべての芳香族エステル全量(100重量%)に対して、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
[熱硬化性芳香族エステル]
本発明における上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルは、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(「成分(A)」)などと、分子内(一分子中)に水酸基と反応する官能基及びフェニルエチニル基を有する化合物(「成分(B)」と称する場合がある)とを反応させることにより得られる。
本発明における上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルは、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(「成分(A)」)などと、分子内(一分子中)に水酸基と反応する官能基及びフェニルエチニル基を有する化合物(「成分(B)」と称する場合がある)とを反応させることにより得られる。
[成分(A)]
成分(A)である上記芳香族ジオールとしては、例えば、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジオール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、(フェニルスルホニル)ベンゼン、[1,1'−ビフェニル]−2,5−ジオール、及びこれらの誘導体などが挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記芳香族ジオールの芳香環に、カルボキシル基及びエステル基を除く、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物などが挙げられる。中でも、芳香族ジオールとしては、硬化物としたときに耐熱性等の物性に優れる点から、4,4'−ジヒドロキシビフェニルなどのビフェニル構造を有するものが好ましい。
成分(A)である上記芳香族ジオールとしては、例えば、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジオール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、(フェニルスルホニル)ベンゼン、[1,1'−ビフェニル]−2,5−ジオール、及びこれらの誘導体などが挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記芳香族ジオールの芳香環に、カルボキシル基及びエステル基を除く、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物などが挙げられる。中でも、芳香族ジオールとしては、硬化物としたときに耐熱性等の物性に優れる点から、4,4'−ジヒドロキシビフェニルなどのビフェニル構造を有するものが好ましい。
上記置換基としては、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基など];アルケニル基[例えば、ビニル基、アリル基など];アルキニル基[例えば、エチニル基、プロピニル基など];ハロゲン原子[例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子];ヒドロキシル基;アルコキシ基[例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のC1-6アルコキシ基(好ましくはC1-4アルコキシ基)など];アルケニルオキシ基[例えば、アリルオキシ基等のC2-6アルケニルオキシ基(好ましくはC2-4アルケニルオキシ基)など];アリールオキシ基[例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシ基など];アラルキルオキシ基[例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基など];アシルオキシ基[例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のC1-12アシルオキシ基など];メルカプト基;アルキルチオ基[例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基(好ましくはC1-4アルキルチオ基)など];アルケニルチオ基[例えば、アリールチオ基等のC2-6アルケニルチオ基(好ましくはC2-4アルケニルチオ基)など];アリールチオ基[例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6-14アリールチオ基など];アラルキルチオ基[例えば、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のC7-18アラルキルチオ基など];カルボキシル基;アルコキシカルボニル基[例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基など];アリールオキシカルボニル基[例えば、フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシ−カルボニル基など];アラルキルオキシカルボニル基[例えば、ベンジルオキシカルボニル基などのC7-18アラルキルオキシ−カルボニル基など];アミノ基;モノ又はジアルキルアミノ基[例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジ−C1-6アルキルアミノ基など];モノ又はジフェニルアミノ基[例えば、フェニルアミノ基など];アシルアミノ基[例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のC1-11アシルアミノ基など];エポキシ基含有基[例えば、グリシジル基、グリシジルオキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基など];オキセタニル基含有基[例えば、エチルオキセタニルオキシ基など];アシル基[例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基など];オキソ基;イソシアネート基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基などが挙げられる。なお、成分(A)は、芳香族ジオール由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
成分(A)である上記芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、4'−ヒドロキシ[1,1'−ビフェニル]−4−カルボン酸、及びこれらの誘導体などが挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記芳香族ヒドロキシカルボン酸の芳香環(芳香族環)に、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物等が挙げられる。上記置換基としては、芳香族ジオールにおける置換基と同様のものが例示される。なお、成分(A)は、芳香族ヒドロキシカルボン酸を1種有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
成分(A)である上記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、[1,1'−ビフェニル]−4,4'−ジカルボン酸、4,4'−オキシビス(安息香酸)、4,4'−チオビス(安息香酸)、4−[2−(4−カルボキシフェノキシ)エトキシ]安息香酸、及びこれらの誘導体などが挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記芳香族ジカルボン酸の芳香環に、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物などが挙げられる。上記置換基としては、芳香族ジオールにおける置換基と同様のものが例示される。なお、成分(A)は、芳香族ジカルボンを1種有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
上記芳香族ジアミンとしては、例えば、1,4−ベンゼンジアミン、1,3−ベンゼンジアミン、4−メチル−1,3−ベンゼンジアミン、4−(4−アミノベンジル)フェニルアミン、4−(4−アミノフェノキシ)フェニルアミン、3−(4−アミノフェノキシ)フェニルアミン、4'−アミノ−3,3'−ジメチル[1,1'−ビフェニル]−4−イルアミン、4'−アミノ−3,3'−ビス(トリフルオロメチル)[1,1'−ビフェニル]−4−イルアミン、4−アミノ−N−(4−アミノフェニル)ベンズアミド、4−[(4−アミノフェニル)スルホニル]フェニルアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタノン、及びこれらの誘導体などが挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記芳香族ジアミンの芳香環に、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物などが挙げられる。上記置換基としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様のものが例示される。なお、芳香族エステルは、芳香族ジアミン由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
上記フェノール性水酸基を有する芳香族アミン又は芳香族アミドとしては、例えば、4−アミノフェノール、4−アセトアミドフェノール、3−アミノフェノール、3−アセトアミドフェノール、6−アミノ−2−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、4'−ヒドロキシ−[1,1'−ビフェニル]−4−アミン、4−アミノ−4'−ヒドロキシジフェニルメタン、及びこれらの誘導体などが挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記フェノール性水酸基を有する芳香族アミンの芳香環に、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物などが挙げられる。上記置換基としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様のものが例示される。なお、芳香族エステル(A)は、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン又は芳香族アミド由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
上述の芳香族化合物(芳香族ジアミン、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン又は芳香族アミド)の、芳香族エステルを構成する全構成単位に対する割合(上記構成単位が2種以上の場合は、それらの総量の割合)は、特に限定されないが、30重量%以下(例えば、0〜30重量%)が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。上記割合が30重量%以下であると、硬化物の耐吸湿性(耐加水分解性)が低下しにくい。
[成分(B)]
上記の水酸基と反応する官能基及びフェニルエチニル基を有する化合物(「成分(B)」)としては、具体的には、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(II)中のRは、上記の水酸基と反応する官能基である。
[上記式(II)中のRは水酸基、アシルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、Dは単結合又は連結基を表し、R1は置換基であって、C1-6アルキル基、C6-10アリール基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、又はハロゲン原子を表し、n1は0以上の整数を表し、2以上である場合のR1は、それぞれ同一又は異なっていてもよい]
上記の水酸基と反応する官能基及びフェニルエチニル基を有する化合物(「成分(B)」)としては、具体的には、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(II)中のRは、上記の水酸基と反応する官能基である。
上記式(II)中のDで表される連結基としては、上記式(I)において挙げたものと同様のものが挙げられる。中でも、硬化物としたときの耐熱性等の物性に優れる点から、単結合又は、連結基としては、エーテル結合、フェニレン基、ビフェニレン基及びナフチレン基が好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
成分(B)としては、例えば、4−フェニルエチニル安息香酸、3‐フェニルエチニル安息香酸、2‐フェニルエチニル安息香酸、4‐フェニルエチニル安息香酸クロリド、4‐(4‐メチルフェニルエチニル)安息香酸、4‐フェニルエチニル‐1,3‐ベンゾジオキソール‐5‐カルボン酸、3‐フェニルエチニルピリジン‐2‐カルボン酸、フェニルエチニルジピコリン酸、4‐(4‐アミノフェニルエチニル)ピリジン‐2,6‐ジカルボン酸、3‐フェニルエチニルアズレン‐1‐カルボン酸、1‐フェニル‐3‐(フェニルエチニル)‐1H‐ピラゾール‐5‐カルボン酸、2‐フェニルエチニルビフェニル‐4,4’‐ジカルボン酸、5‐ブチル‐6‐フェニルエチニルインダン‐4,7‐ジカルボン酸、2‐フェニル‐5‐フェニルエチニルチアゾール‐4‐カルボン酸、2‐フェニル‐5‐フェニルエチニルオキサゾール‐4‐カルボン酸、4‐フェニルエチニル‐6,7‐ジヒドロベンゾフラン‐5‐カルボン酸、2‐フェニルエチニル‐1‐シクロペンテン‐1‐カルボン酸、2‐フェニルエチニル‐1‐シクロヘキセン‐1‐カルボン酸、1‐フェニルエチニル‐1H‐インドール‐3‐カルボン酸、3‐フェニルエチニルナフタレン‐2‐カルボン酸、6‐フェニルエチニルピリジン‐3‐カルボン酸、3‐フェニルエチニルインドリジン‐1‐カルボン酸、1‐フェニルエチニル‐1H‐イミダゾール‐2‐カルボン酸などが挙げられる。中でも、4−フェニルエチニル安息香酸が好ましい。
成分(B)の熱硬化開始温度は、特に制限されないが、250℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましい。熱硬化開始温度が250℃以上であると、芳香族エステルを合成する時の温度で硬化反応を起こしにくい。
成分(A)と成分(B)の配合割合(配合量)は、特に制限されないが、成分(A)100重量部に対して、成分(B)の配合量は、5〜100重量部が好ましく、10〜80重量部がより好ましく、20〜60重量部がさらに好ましい。成分(B)の配合量が上記範囲であると、硬化物の物性に悪影響を与えず、硬化性に優れた熱硬化性芳香族エステルが得られる。
また、成分(A)と成分(B)の総量(合計モル量100モル%)に対する成分(A)の割合は、特に制限されないが、40〜97モル%が好ましく、50〜95モル%がより好ましく、60〜90モル%がさらに好ましい。また、成分(A)と成分(B)の総量(合計モル量100モル%)に対する成分(B)の割合は、特に制限されないが、3〜30モル%が好ましく、5〜25モル%がより好ましく、10〜20モル%がさらに好ましい。成分(B)の割合が上記範囲であると、硬化物の物性に悪影響を与えず、硬化性に優れた熱硬化性芳香族エステルが得られる。
上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルの合成方法としては、特に限定されないが、溶融重合、溶液重合などが挙げられる。中でも、生産性に優れることから溶融重合が好ましい。また、成分(A)を先に重合し、その後、成分(B)を反応させて、多段階で末端に成分(B)を付加させても良いし、成分(A)と成分(B)を同時に加えて1段階で反応させても良い。
上記熱硬化性芳香族エステルの合成の際には、主に次の反応が進行する。まず、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(「成分(A)」)の反応(例えば、縮重合)により、上記芳香族エステル骨格を有する芳香族エステルが得られる。次に、得られた芳香族エステルと、水酸基と反応する官能基及びフェニルエチニル基を有する化合物(「成分(B)」)の反応により、分子鎖末端にフェニルエチニル基を有する、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルが得られる。上記の成分(A)の反応と、芳香族エステルと成分(B)の反応は、成分(A)と成分(B)を溶融させた状態で同時に反応を進行させることができる。
上記合成の際の加熱温度は、特に制限されないが、250〜400℃が好ましく、270〜380℃がより好ましく、290〜360℃がさらに好ましい。加熱温度が上記範囲であると、成分(A)の合成反応を十分に進行することができる。なお、加熱温度は、加熱する間一定となるように制御することもできるし、段階的又は連続的に変動するように制御することもできる。
上記合成の際の加熱時間は、特に制限されないが、20〜240分が好ましく、40〜120分がより好ましい。加熱時間が上記範囲であると、生産性が低下せず、分子鎖末端にフェニルエチニル基を有する熱硬化性芳香族エステルが得られる。
上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルを製造する際には、特に制限されないが、簡便に熱硬化性芳香族エステルが得られる点から、重合を一つの反応器中で行い、途中で単離や精製などを行なわず、反応温度を変化させることにより連続的に反応を行うことが好ましい。本発明の上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルは、反応完了後、反応に用いた溶剤などを留去することにより得られる。
上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル中の芳香族エステル骨格Lの平均重合度は、特に限定されないが、1〜50が好ましく、2〜40がより好ましく、3〜30がさらに好ましい。平均重合度が上記範囲であると、溶融温度が比較的低く抑えられるため、成形時の取扱が容易になる。また、架橋密度も高くなるため、機械特性に優れた硬化物が得られる。特に、平均重合度が2以上の場合、本発明における熱硬化性芳香族エステルを熱硬化性芳香族ポリエステルと呼ぶことができる。なお、平均重合度は、例えば、特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法により求めることができる。
上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルの分子量は、特に制限されないが、500〜20000であることが好ましく、700〜15000がより好ましく、800〜10000がさらに好ましい。分子量が、上記範囲であると、溶融温度が比較的低く抑えられるため、成形時の取扱が容易になる。また、架橋密度も高くなるため、機械特性に優れた硬化物が得られる。なお、芳香族エステルの分子量は、例えば、GPC測定により求めることができる。
上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルの融点(Tm)は、特に限定されないが、250℃以下(例えば、80〜250℃)が好ましく、220℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましく、180℃以下が特に好ましい。融点が250℃以下であると、比較的低い温度で溶融でき、混合がしやすい。なお、上記融点は、例えば、DSC、TGA等の熱分析や動的粘弾性測定により測定できる。
[金属触媒]
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、フェニルエチニル基を有する熱硬化性芳香族エステルの重合反応(硬化反応)の硬化開始温度を下げるために、金属触媒を用いることが好ましい。金属触媒は、フェニルエチニル基の三重結合に作用し、硬化開始温度(硬化可能温度)を下げる働きをする。
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、フェニルエチニル基を有する熱硬化性芳香族エステルの重合反応(硬化反応)の硬化開始温度を下げるために、金属触媒を用いることが好ましい。金属触媒は、フェニルエチニル基の三重結合に作用し、硬化開始温度(硬化可能温度)を下げる働きをする。
上記金属触媒としては、金属化合物、例えば、遷移金属化合物やホウ素化合物などのような周期表13族元素(ホウ素B、アルミニウムAlなど)を含む化合物が含まれる。なお、反応混合物中の金属触媒成分は、金属触媒(金属化合物)が、イオン化した金属イオンなどであってもよい。これらの金属触媒は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記遷移金属の元素としては、例えば、5族元素(バナジウムV、ニオブNb、タンタルTaなど)、6族元素(クロムCr、モリブデンMo、タングステンWなど)などが挙げられる。通常、金属触媒は、上記元素を含む金属塩化物、上記金属元素を含む有機金属化合物などである場合が多い。
上記金属触媒としては、前述の金属元素を含み、触媒能を有するものであれば特に限定されないが、具体的には、ニッケロセン、フェロセン、コバルトセン、ルテノセンなどのメタロセン;塩化ニオブ、塩化タンタル、塩化モリブデン、塩化タングステンなどの金属塩化物;テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ、オクチル酸スズなどの有機スズ化合物、オクチル酸亜鉛などの有機亜鉛化合物などが挙げられる。中でも金属触媒の安定性や熱硬化開始温度を下げる働きが大きい点から、ニッケロセン、塩化ニオブ、塩化タンタル、塩化モリブデン、塩化タングステンが好ましく、特に、ニッケロセンが好ましい。また、金属塩化物を使用する場合は、共触媒としてテトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズを用いることが好ましい。
上記金属触媒を用いたときの上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルの熱硬化開始温度は、特に制限されないが、280℃以下(例えば、200〜280℃)が好ましく、260℃以下がより好ましく、240℃以下がさらに好ましい。硬化開始温度が280℃以下であると、実用的な温度範囲で硬化させることができる。
上記金属触媒の配合量は、特に制限されないが、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜5重量部がより好ましい。配合量が少なすぎると触媒の効果が不十分となる場合がある。
[硬化促進剤]
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、フェニルエチニル基の重合反応(硬化反応)を促進し、熱硬化開始温度を下げるために、硬化促進剤を用いても良い。
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、フェニルエチニル基の重合反応(硬化反応)を促進し、熱硬化開始温度を下げるために、硬化促進剤を用いても良い。
上記硬化促進剤は、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、及びその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、及びその塩(例えば、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、4級アンモニウム塩、ヨードニウム塩);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体;リン酸エステル、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物などが挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。中でも、硬化促進剤としては、上記イミダゾール誘導体が好ましい。
また、上記硬化促進剤としては、U−CAT SA 506、U−CAT SA 102、U−CAT 5003、U−CAT 18X(以上、サンアプロ(株)製)、TPP−K、TPP−MK(以上、北興化学工業(株)製)、PX−4ET(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
上記硬化促進剤の配合量は、特に制限されないが、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル100重量部に対して、0.05〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい配合量が上記範囲であると、硬化促進効果が不十分とならず、硬化樹脂の色相が悪化しにくい。
上記硬化促進剤としては、ラジカル発生剤を用いることが好ましい。ラジカル発生剤は、ラジカルを発生させて、重合(硬化)反応を開始させ、また、重合(硬化)反応を促進し、熱硬化開始温度を下げる働きをする。硬化促進剤として、ラジカル発生剤のみを使用することもでき、上記金属触媒とともにラジカル発生剤を使用することもできる。ラジカル発生剤としては、光又は熱ラジカル発生剤として下記のものを用いることができる。
上記光ラジカル発生剤としては、例えば、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ジフェニルジサルファイト、オルトベンゾイル安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬(株)製 カヤキュアEPA等)、2,4−ジエチルチオキサンソン(日本化薬(株)製 カヤキュアDETX等)、2−メチル−1−[4−(メチル)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(チバガイギ−(株)製 イルガキュア907等)、2−ジメチルアミノ−2−(4−モルホリノ)ベンゾイル−1−フェニルプロパン等の2−アミノ−2−ベンゾイル−1−フェニルアルカン化合物、テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゼン誘導体、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾ−ル(保土谷化学(株)製 B−CIM等)等のイミダゾール化合物、2,6−ビス(トリクロロメチル)−4−(4−メトキシナフタレン−1−イル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル化トリアジン化合物、2−トリクロロメチル−5−(2−ベンゾフラン2−イル−エテニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物などが挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、光増感剤を加えることができる。上記光ラジカル重合開始剤としては、式(1)で表される化合物が波長400nm以下の光に対する吸収を持つことがあるため、例えば、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドのように、波長400nm付近の光で活性化するものが好ましい。
上記熱ラジカル発生剤としては、例えば、有機過酸化物類などが挙げられる。上記有機過酸化物類としては、例えば、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシエステル等を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジーt−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。その他のラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが挙げられる。中でも、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが好ましい。これらのラジカル発生剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
さらに、上記熱ラジカル発生剤とともに、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛、オクテン酸コバルト等のナフテン酸やオクテン酸のコバルト、マンガン、鉛、亜鉛、バナジウムなどの金属塩を併用することができる。同様に、ジメチルアニリン等の3級アミンも使用することができる。
上記ラジカル発生剤の配合量は、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜4重量部がより好ましい。
また、これらの金属触媒や硬化促進剤とともに、熱硬化開始温度を下げる働きをする架橋剤を用いてもよい。上記架橋剤としては、熱硬化性芳香族エステルの分子末端基であるフェニルエチニル基と加熱により反応し得る官能基と熱硬化可能な官能基(熱硬化性官能基)を有する化合物であればよく、特に限定されないが、熱硬化性官能基としては、例えば、マレイミド基、ナジイミド基、フタルイミド基、シアネート基、ニトリル基、フタロニトリル基、スチリル基、エチニル基、プロパルギルエーテル基、ベンゾシクロブテン基、ビフェニレン基などが挙げられる。
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物には、硬化物の性能を目的(用途)に応じて調整するため、さらに、無機フィラーなどの充填材や離型剤などの各種の添加剤を含めることができる。中でも、添加剤としては、無機フィラーが好ましく用いられる。
上記無機フィラーとしては、公知乃至慣用の無機フィラーを使用することができ、特に限定されないが、例えば、シリカ(例えば、天然シリカ、合成シリカなど)、酸化アルミニウム(例えば、α−アルミナなど)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウムなどの硫酸塩;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素などの窒化物;水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;マイカ、タルク、カオリン、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、ゼオライト、ハイドロタルサイト、フライアッシュ、脱水汚泥、ガラスファイバー、ガラスビーズ、ケイ藻土、ケイ砂、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、水和石膏、ミョウバン、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、シリコンカーバイド、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、燐酸マグネシウム、銅、鉄などが挙げられる。上記無機フィラーは、中実構造、中空構造、多孔質構造等のいずれの構造を有していてもよい。また、上記無機フィラーは、例えば、オルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物などの周知の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。なお、本発明において無機フィラーは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。中でも、特に、本発明における熱硬化性芳香族エステルを半導体封止材用に使用する場合には、シリカ(シリカフィラー)等を使用することが好ましく、硬化物の熱伝導性や放熱特性を調整する場合には、アルミナ(アルミナ微粒子)等を使用することが好ましい。
本発明の熱硬化性芳香族エステル硬化物の製造方法における上記無機フィラーの添加量は、特に限定されないが、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル100重量部に対して、5〜500重量部が好ましく、より好ましくは10〜300重量部であり、さらに好ましくは30〜200重量部である。
上記無機フィラー以外の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアミノ化合物[例えば、ジアミノジフェニルメタンなど]、ジアリル化合物[ジアリルビスフェノールAなど]、トリアジン類[例えば、1,3,5−トリ−2−プロペニル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(2−メチル−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなど]などが挙げられる。
上記無機フィラー以外の添加剤としては、他にも本発明の効果を損なわない範囲で、公知乃至慣用の添加剤を使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂;溶剤;安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など);難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤など);難燃助剤;補強材;核剤;カップリング剤;滑剤;ワックス;可塑剤;離型剤;耐衝撃性改良剤;色相改良剤;流動性改良剤;着色剤(染料、顔料など);分散剤;消泡剤;脱泡剤;抗菌剤;防腐剤;粘度調整剤;増粘剤などが使用できる。なお、上記添加剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記無機フィラー以外の添加剤の配合量は、特に限定されないが、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル100重量部に対して、0〜30重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましい。
[熱硬化性芳香族エステル組成物の製造方法]
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、特に制限されないが、上述のように上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルを得た後、熱硬化性芳香族エステルに上記金属触媒及び/又は硬化促進剤、その他必要に応じて添加する上記添加剤を混合することにより得られる。混合する方法としては、特に制限されないが、溶液混合、溶融混合が好ましく、溶融混合がより好ましい。なお、上記金属触媒、硬化促進剤及び添加剤は、混合の途中や混合後(例えば、硬化物の製造の際)に加えることもできる。
本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、特に制限されないが、上述のように上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルを得た後、熱硬化性芳香族エステルに上記金属触媒及び/又は硬化促進剤、その他必要に応じて添加する上記添加剤を混合することにより得られる。混合する方法としては、特に制限されないが、溶液混合、溶融混合が好ましく、溶融混合がより好ましい。なお、上記金属触媒、硬化促進剤及び添加剤は、混合の途中や混合後(例えば、硬化物の製造の際)に加えることもできる。
上記溶液混合の際の混合順序は、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルと、上記金属触媒等との混合時に溶媒が存在する限り特に限定されないが、あらかじめ、上記金属触媒等を溶媒中に分散させた後に、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルと混合すると、金属触媒の凝集体が特に生じにくいため好ましい。あらかじめ、金属触媒を溶媒中に分散させる場合、該分散物を式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルの融点程度に加熱した後に式(I)で表される熱硬化性芳香族エステルと混合すると、効率的に混合できる点で好ましい。
上記溶液混合の際に用いる溶媒の具体例としては、特に限定されないが、ペンタフルオロフェノール(PFP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、o−ジクロロベンゼン等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記溶媒の使用量は、特に限定されないが、上記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル100重量部に対して、5〜1000重量部が好ましく、10〜800重量部がより好ましい。
上記混合(特に、溶融混合)時の加熱温度は、特に制限されないが、50〜200℃が好ましく、80〜190℃がより好ましく、100〜180℃がさらに好ましい。加熱温度が上記範囲であると、熱硬化性芳香族エステルの硬化反応が進行せずに熱硬化性芳香族エステルと金属触媒などを均一に溶融混合することができ、得られる組成物の溶融粘度を低くすることができる。なお、加熱温度は、加熱する間一定となるように制御することもできるし、段階的又は連続的に変動するように制御することもできる。
上記混合(特に、溶融混合)時の加熱時間は、特に制限されないが、5〜180分が好ましく、10〜120分がより好ましい。加熱時間が上記範囲であると、生産性が低下せず、均一な組成物が得られる。
[芳香族エステル硬化物の製造方法]
本発明の芳香族エステル硬化物の製造方法は、本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物を硬化させることを特徴とする。熱硬化性芳香族エステル組成物を加熱することによって主にフェニルエチニル基同士の反応(重合反応)が進行し、硬化物が形成される。加熱の手段としては、公知乃至慣用の手段を利用することができ、特に限定されない。
本発明の芳香族エステル硬化物の製造方法は、本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物を硬化させることを特徴とする。熱硬化性芳香族エステル組成物を加熱することによって主にフェニルエチニル基同士の反応(重合反応)が進行し、硬化物が形成される。加熱の手段としては、公知乃至慣用の手段を利用することができ、特に限定されない。
上記の硬化させる際の熱硬化開始温度(加熱温度)は、280℃以下が好ましく、260℃以下がより好ましく、240℃以下がさらに好ましい。熱硬化開始温度が240℃以下であると、生産性が低下せず、硬化反応の進行が十分に進行し、物性の良い硬化物が得られる。なお、熱硬化開始温度は、硬化させる間一定となるように制御することもできるし、段階的又は連続的に変動するように制御することもできる。
上記硬化させる際の加熱時間(硬化時間)は、特に限定されないが、30秒〜600分が好ましく、30秒〜480分がより好ましく、30秒〜360分がさらに好ましい。硬化時間が上記範囲であると、硬化物の生産性が低下せず、硬化反応が十分に進行し、硬化物の物性が低下しにくい。
上記硬化は、常圧下で行うこともできるし、減圧下又は加圧下で行うこともできる。また、上記硬化は、一段階で行うこともできるし、二段階以上の多段階に分けて行うこともできる。
上述のように、本発明の芳香族エステル硬化物の製造方法は、比較的低温(例えば、280℃以下)で加熱することによって硬化できるため、生産性にも優れ、簡便な方法で硬化物を得ることができる。また、本発明で得られた熱硬化性芳香族エステルを硬化させることにより得られる硬化物は、優れた耐熱性を有し、また、優れた加工性、寸法安定性、低線膨張、高熱伝導性、低吸湿性、誘電特性を有する。
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物を硬化させることにより得られる硬化物である。また、本発明の芳香族エステル硬化物の製造方法により得ることができる。
本発明の硬化物は、本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物を硬化させることにより得られる硬化物である。また、本発明の芳香族エステル硬化物の製造方法により得ることができる。
本発明の硬化物の、昇温速度10℃/分(窒素中)で測定される5%重量減少温度(Td5)は、特に限定されないが、350℃以上(例えば、350〜500℃)が好ましく、380℃以上がより好ましく、400℃以上がさらに好ましい。5%重量減少温度が350℃未満であると、用途によっては耐熱性が不十分となる場合がある。上記5%重量減少温度は、例えば、TG/DTA(示差熱・熱重量同時測定)などにより測定できる。
本発明の硬化物の空気中における熱分解反応の活性化エネルギーは、特に限定されないが、150kJ/mol以上(例えば、150〜350kJ/mol)が好ましく、180kJ/mol以上がより好ましく、200kJ/mol以上がさらに好ましい。上記活性化エネルギーが150kJ/mol未満であると、用途によっては耐熱性が不十分となる場合がある。なお、上記活性化エネルギーは、例えば、小沢法により算出することができる。小沢法とは、3種類以上の昇温速度でTG測定(熱重量測定)を行い、得られた熱重量減少のデータから熱分解反応の活性化エネルギーを算出する方法である。
本発明の硬化物は、本発明の熱硬化性芳香族エステル硬化物の製造方法により得られる硬化物であるため、優れた耐熱性を有し、また、優れた加工性、寸法安定性、低線膨張、高熱伝導性、低吸湿性、誘電特性を有する。
本発明の硬化物は、各種部材や各種構造材等の種々の用途に使用することができる。特に、上述の各種特性に優れるため、フィルム、プリプレグ、プリント配線板、半導体封止材などの用途に好ましく使用できる。即ち、本発明の熱硬化性芳香族エステル組成物は、特に、フィルム用熱硬化性組成物、プリプレグ用熱硬化性組成物、プリント配線板用熱硬化性組成物、半導体封止材用熱硬化性組成物などとして好ましく使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
合成例1
[両末端にフェニルエチニル基を有する熱硬化性芳香族エステル(芳香族エステルE)の製造]
コンデンサーと攪拌機を取り付けた500mLのフラスコに、成分(A)として、4−ヒドロキシ安息香酸73.6g(0.533mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸80.3g(0.426mol)及び4,4'−ジヒドロキシビフェニル19.9g(0.107mol)、成分(B)として、4−フェニルエチニル安息香酸47.4g(0.213mol)、さらに無水酢酸122.1g(1.20mol)及び酢酸カリウム10.0mg(0.10mol)を加え、窒素雰囲気下で140℃まで徐々に温度を上げた後、温度を維持しながら3時間反応させてアセチル化反応を完結させた。次いで、0.8℃/分の速度で300℃まで昇温した後、温度を30分間維持しながら、酢酸及び未反応の無水酢酸を留去した。その後、フラスコ内を徐々に1Torrまで減圧して揮発成分を留去することで、芳香族ユニット(芳香族化合物に由来する構成単位)からなる分子鎖の両末端にフェニルエチニル基を有する熱硬化性芳香族エステル(芳香族エステルE)を得た。なお、得られた芳香族エステルEは、芳香族エステルEの末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)、及びGPC測定の結果、単量体の10量体であると見積もられた。
[両末端にフェニルエチニル基を有する熱硬化性芳香族エステル(芳香族エステルE)の製造]
コンデンサーと攪拌機を取り付けた500mLのフラスコに、成分(A)として、4−ヒドロキシ安息香酸73.6g(0.533mol)、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸80.3g(0.426mol)及び4,4'−ジヒドロキシビフェニル19.9g(0.107mol)、成分(B)として、4−フェニルエチニル安息香酸47.4g(0.213mol)、さらに無水酢酸122.1g(1.20mol)及び酢酸カリウム10.0mg(0.10mol)を加え、窒素雰囲気下で140℃まで徐々に温度を上げた後、温度を維持しながら3時間反応させてアセチル化反応を完結させた。次いで、0.8℃/分の速度で300℃まで昇温した後、温度を30分間維持しながら、酢酸及び未反応の無水酢酸を留去した。その後、フラスコ内を徐々に1Torrまで減圧して揮発成分を留去することで、芳香族ユニット(芳香族化合物に由来する構成単位)からなる分子鎖の両末端にフェニルエチニル基を有する熱硬化性芳香族エステル(芳香族エステルE)を得た。なお、得られた芳香族エステルEは、芳香族エステルEの末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)、及びGPC測定の結果、単量体の10量体であると見積もられた。
[熱硬化性芳香族エステル組成物及びその硬化物の製造]
実施例1
合成例1で得られた芳香族エステルE100gに金属触媒として、ニッケロセン2.0gを加え、170℃で10分間溶融混合し、均一な熱硬化性芳香族エステル組成物を得た。得られた熱硬化性芳香族エステル組成物の溶融粘度及び発熱ピーク温度の結果は、表1に示す通りであった。そして、得られた熱硬化性芳香族エステル組成物をステンレス板に挟んでホットプレスで240℃にて3分間、圧縮加熱して硬化させたあと型枠から取り外し、対流式オーブンで240℃にて4時間加熱してさらに硬化反応を進行させ、金属板に挟んでホットプレスで240℃4時間圧縮加熱して硬化を進行させ、均一な硬化物を得た。得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)及び5%重量減少温度(Td5)、固体粘弾性の結果は、表1に示す通りであった。
実施例1
合成例1で得られた芳香族エステルE100gに金属触媒として、ニッケロセン2.0gを加え、170℃で10分間溶融混合し、均一な熱硬化性芳香族エステル組成物を得た。得られた熱硬化性芳香族エステル組成物の溶融粘度及び発熱ピーク温度の結果は、表1に示す通りであった。そして、得られた熱硬化性芳香族エステル組成物をステンレス板に挟んでホットプレスで240℃にて3分間、圧縮加熱して硬化させたあと型枠から取り外し、対流式オーブンで240℃にて4時間加熱してさらに硬化反応を進行させ、金属板に挟んでホットプレスで240℃4時間圧縮加熱して硬化を進行させ、均一な硬化物を得た。得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)及び5%重量減少温度(Td5)、固体粘弾性の結果は、表1に示す通りであった。
実施例2
合成例1で得られた芳香族エステルE100gに硬化促進剤(ラジカル発生剤)として、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン0.5gを加え、160℃で10分間溶融混合し、均一な熱硬化性芳香族エステル組成物を得た。得られた熱硬化性芳香族エステル組成物の溶融粘度及び発熱ピーク温度の結果は、表1に示す通りであった。そして、実施例1と同様にして、硬化物を得た。得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)及び、5%重量減少温度(Td5)、固体粘弾性の結果は、表1に示す通りであった。
合成例1で得られた芳香族エステルE100gに硬化促進剤(ラジカル発生剤)として、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン0.5gを加え、160℃で10分間溶融混合し、均一な熱硬化性芳香族エステル組成物を得た。得られた熱硬化性芳香族エステル組成物の溶融粘度及び発熱ピーク温度の結果は、表1に示す通りであった。そして、実施例1と同様にして、硬化物を得た。得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)及び、5%重量減少温度(Td5)、固体粘弾性の結果は、表1に示す通りであった。
比較例1
合成例1で得られた芳香族エステルEを実施例1と同様にして、均一な成形体を得た。ただし、ホットプレス後の樹脂が流動性を有しており型枠から取り外せなかったため、ステンレス板に挟んだ状態で後硬化を行った。得られた成形体の溶融粘度及び発熱ピーク温度、得られた硬化物の5%重量減少温度(Td5)及び固体粘弾性の結果は、表1に示す通りであった。
合成例1で得られた芳香族エステルEを実施例1と同様にして、均一な成形体を得た。ただし、ホットプレス後の樹脂が流動性を有しており型枠から取り外せなかったため、ステンレス板に挟んだ状態で後硬化を行った。得られた成形体の溶融粘度及び発熱ピーク温度、得られた硬化物の5%重量減少温度(Td5)及び固体粘弾性の結果は、表1に示す通りであった。
[溶融粘度]
レオメーター(粘弾性測定装置)(商品名「MCR−302」、アントンパール社製)を用い、試料を昇温温度20℃/分で加熱しながら溶融させ、溶融後、粘度が最低となったときの温度と粘度を測定した。
レオメーター(粘弾性測定装置)(商品名「MCR−302」、アントンパール社製)を用い、試料を昇温温度20℃/分で加熱しながら溶融させ、溶融後、粘度が最低となったときの温度と粘度を測定した。
[発熱ピーク温度・ガラス転移温度(Tg)]
DSC(示差走査熱量測定)装置(商品名「DSC6200」、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、窒素気流下(50ml/分)、昇温温度10℃/分にて、試料(5mg)を加熱して、ガラス転移温度(Tg)及び発熱ピーク温度を測定した。
DSC(示差走査熱量測定)装置(商品名「DSC6200」、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、窒素気流下(50ml/分)、昇温温度10℃/分にて、試料(5mg)を加熱して、ガラス転移温度(Tg)及び発熱ピーク温度を測定した。
[5%重量減少温度(Td5)]
TG−DTA(熱重量測定・示差熱分析)装置(商品名「EXSTAR6300」、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、窒素気流下(300ml/分)、昇温温度10℃/分にて、試料(約5mg)を加熱して、硬化物の5%重量減少温度(Td5)を測定した。なお、リファレンスには、アルミナを用いた。
TG−DTA(熱重量測定・示差熱分析)装置(商品名「EXSTAR6300」、エスアイアイナノテクノロジー社製)を用い、窒素気流下(300ml/分)、昇温温度10℃/分にて、試料(約5mg)を加熱して、硬化物の5%重量減少温度(Td5)を測定した。なお、リファレンスには、アルミナを用いた。
[固体粘弾性・ゴム状平坦領域の有無]
DMA(動的粘弾性測定)装置(商品名「RSA−III」、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、固体粘弾性及びゴム状平坦領域の有無を測定した。
DMA(動的粘弾性測定)装置(商品名「RSA−III」、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、固体粘弾性及びゴム状平坦領域の有無を測定した。
表1に示すように、実施例の熱硬化性芳香族エステルは、発熱ピーク温度が低く、熱硬化開始温度が低いため比較的低温で硬化させることができ、なおかつ得られた硬化物は、5%重量減少温度が高く、非常に優れた耐熱性を有していた。
Claims (10)
- 式(I)中の前記連結基が、2価の炭化水素基、2価の複素環式基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、又はこれらが複数個連結した基である請求項1に記載の熱硬化性芳香族エステル組成物。
- 前記金属触媒が、ニッケロセン、塩化ニオブ、塩化タンタル、塩化モリブデン、塩化タングステン及びこれらの共触媒からなる群より選択される少なくとも1つの金属触媒である請求項1又は2に記載の熱硬化性芳香族エステル組成物。
- 前記硬化促進剤が、ラジカル発生剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性芳香族エステル組成物。
- 前記式(I)で表される熱硬化性芳香族エステル中の芳香族エステル骨格Lの平均重合度が、1〜50である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性芳香族エステル組成物。
- 前記熱硬化性芳香族エステルの融点が250℃以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性芳香族エステル組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性芳香族エステル組成物を硬化させることを特徴とする芳香族エステル硬化物の製造方法。
- 硬化させる際の熱硬化開始温度が280℃以下である請求項7に記載の芳香族エステル硬化物の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性芳香族エステル組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
- 昇温温度10℃/分(空気中)で測定される5%重量減少温度が350℃以上であり、空気中における熱分解反応の活性化エネルギーが150kJ/mol以上である請求項9に記載の硬化物。
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JP2017179119A (ja) * | 2016-03-30 | 2017-10-05 | 株式会社ダイセル | 熱硬化性化合物 |
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