<熱硬化性液晶ポリエステル組成物>
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、以下の成分(A)及び成分(B)を混合することにより得られる熱硬化性組成物(熱硬化性樹脂組成物)である。
成分(A):分子鎖末端に水酸基を有し、総末端数aが1000〜3000mmol/kgであり、総末端数aに対する水酸基末端数bの割合b/aが0.8〜1である液晶ポリエステル(「液晶ポリエステル(A)」と称する場合がある)
成分(B):水酸基と反応する官能基並びに熱重合性官能基を分子内に有する化合物(「化合物(B)」と称する場合がある)
[液晶ポリエステル(A)]
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を構成するための液晶ポリエステル(A)は、上述のように、分子鎖末端に水酸基を有し、総末端数aが1000〜3000mmol/kgであり、総末端数aに対する水酸基末端数bの割合b/aが0.8〜1である液晶ポリエステルである。液晶ポリエステル(A)は、ポリエステル構造を有する重合体(ポリマー又はオリゴマー)であって、その溶融体(例えば、450℃以下における溶融体)が光学的異方性を示す液晶ポリエステル(サーモトロピック液晶ポリマー)である。
液晶ポリエステル(A)において、総末端数aは、1000〜3000mmol/kgであり、好ましくは1200〜2000mmol/kgである。総末端数aが1000mmol/kg未満であると、液晶ポリエステル(A)の平均重合度が大きくなりやすく、融点が上がりやすいため、硬化時の反応温度が高くなる場合がある。総末端数aが3000mmol/kgを超えると、液晶ポリエステル(A)の平均重合度が小さくなりやすいため、硬化反応性が低下する場合があり、また、硬化物の耐熱性や機械物性が低下しやすい。
液晶ポリエステル(A)において、総末端数aに対する水酸基末端数bの割合b/aは、0.8〜1である。割合b/aが0.8未満であると、得られる熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、速硬化性に劣る場合がある。
液晶ポリエステル(A)は、特に限定されないが、分子鎖の一方の末端(片末端)のみに水酸基を有していてもよいし、分子鎖の両方の末端(両末端)に水酸基を有していてもよい。また、液晶ポリエステル(A)は、分子鎖末端以外の部分に水酸基を有するものであってもよい。
液晶ポリエステル(A)が分子鎖末端に有する水酸基は、フェノール性水酸基であってもよいし、アルコール性水酸基であってもよい。中でも、硬化物の耐熱性の観点で、液晶ポリエステル(A)が分子鎖末端に有する水酸基は、フェノール性水酸基であることが好ましい。なお、本明細書における「フェノール性水酸基」には、置換又は無置換ベンゼン環に結合した水酸基に加え、その他の芳香族環(ナフタレン環、アントラセン環等)に結合した水酸基も含まれるものとする。
液晶ポリエステル(A)は、特に限定されないが、分子鎖の一方の末端(片末端)のみに芳香族環を有するものであってもよいし、分子鎖の両方の末端(両末端)に芳香族環を有するものであってもよい。また、液晶ポリエステル(A)は、分子鎖末端以外の部分に芳香族環を有するものであってもよい。なお、液晶ポリエステル(A)が分子鎖末端に芳香族環を有する場合、当該芳香族環には、環1個あたり1以上の置換基が結合していてもよい。上記置換基としては、公知乃至慣用の置換基が挙げられ、特に限定されないが、例えば、後述の芳香族ヒドロキシカルボン酸が有していてもよい置換基として例示したもの等が挙げられる。
液晶ポリエステル(A)が分子鎖末端にフェノール性水酸基を有する場合、該液晶ポリエステル(A)は、分子鎖末端に水酸基を有する液晶ポリエステルでもあるし、分子鎖末端に芳香族環を有する液晶ポリエステルでもある。
液晶ポリエステル(A)としては、溶融体の光学的異方性の観点で、芳香族化合物(芳香族化合物単量体)に由来する構成単位(繰り返し構成単位)を少なくとも有する液晶ポリエステルが好ましい。具体的には、液晶ポリエステル(A)は、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び芳香族ジオールからなる群より選択された少なくとも1種の芳香族化合物由来の構成単位を少なくとも含む液晶ポリエステルであることが好ましい。
上記芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシ[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸、及びこれらの誘導体等が挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記芳香族ヒドロキシカルボン酸の芳香環(芳香族環)に、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物等が挙げられる。上記置換基としては、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基等];アルケニル基[例えば、ビニル基、アリル基等];アルキニル基[例えば、エチニル基、プロピニル基等];ハロゲン原子[例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等];ヒドロキシル基;アルコキシ基[例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のC1−6アルコキシ基(好ましくはC1−4アルコキシ基)等];アルケニルオキシ基[例えば、アリルオキシ基等のC2−6アルケニルオキシ基(好ましくはC2−4アルケニルオキシ基)等];アリールオキシ基[例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1−4アルキル基、C2−4アルケニル基、ハロゲン原子、C1−4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6−14アリールオキシ基等];アラルキルオキシ基[例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のC7−18アラルキルオキシ基等];アシルオキシ基[例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のC1−12アシルオキシ基等];メルカプト基;アルキルチオ基[例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等のC1−6アルキルチオ基(好ましくはC1−4アルキルチオ基)等];アルケニルチオ基[例えば、アリルチオ基等のC2−6アルケニルチオ基(好ましくはC2−4アルケニルチオ基)等];アリールチオ基[例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1−4アルキル基、C2−4アルケニル基、ハロゲン原子、C1−4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC6−14アリールチオ基等];アラルキルチオ基[例えば、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のC7−18アラルキルチオ基等];カルボキシル基;アルコキシカルボニル基[例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のC1−6アルコキシ−カルボニル基等];アリールオキシカルボニル基[例えば、フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のC6−14アリールオキシ−カルボニル基等];アラルキルオキシカルボニル基[例えば、ベンジルオキシカルボニル基等のC7−18アラルキルオキシ−カルボニル基等];アミノ基;モノ又はジアルキルアミノ基[例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジ−C1−6アルキルアミノ基等];モノ又はジフェニルアミノ基[例えば、フェニルアミノ基等];アシルアミノ基[例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のC1−11アシルアミノ基等];エポキシ基含有基[例えば、グリシジル基、グリシジルオキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基等];オキセタニル基含有基[例えば、エチルオキセタニルオキシ基等];アシル基[例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等];オキソ基;イソシアネート基;これらの2以上が必要に応じてC1−6アルキレン基を介して結合した基等が挙げられる。なお、液晶ポリエステル(A)は、芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
上記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−オキシビス(安息香酸)、4,4’−チオビス(安息香酸)、4−[2−(4−カルボキシフェノキシ)エトキシ]安息香酸、及びこれらの誘導体等が挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記芳香族ジカルボン酸の芳香環に、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物等が挙げられる。上記置換基としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様のものが例示される。なお、液晶ポリエステル(A)は、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
上記芳香族ジオールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオール、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、(フェニルスルホニル)ベンゼン、[1,1’−ビフェニル]−2,5−ジオール、及びこれらの誘導体等が挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記芳香族ジオールの芳香環に、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物等が挙げられる。上記置換基としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様のものが例示される。なお、液晶ポリエステル(A)は、芳香族ジオール由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
上述の芳香族化合物(芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール)の、液晶ポリエステル(A)を構成する単量体全量(100重量%)に対する割合(2種以上を含む場合にはこれら総量の割合)は、特に限定されないが、60〜100重量%が好ましく、より好ましくは80〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%である。特に、液晶ポリエステル(A)が実質的に上述の芳香族化合物(芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール)由来の構成単位のみからなることが好ましい。上記割合が60重量%以上であると、導入される他の単量体由来の構成単位によらず、液晶ポリエステル(A)が溶融状態で液晶性を発現しやすくなり、硬化物の耐熱性や耐湿性(耐加水分解性)が低下しにくい。
液晶ポリエステル(A)は、上述の構成単位(芳香族ヒドロキシカルボン酸由来の構成単位、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位、芳香族ジオール由来の構成単位)以外の構成単位(「その他の構成単位」と称する場合がある)を有していてもよく、上記その他の構成単位としては、例えば、芳香族ジアミン由来の構成単位、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構成単位等が挙げられる。
上記芳香族ジアミンとしては、例えば、1,4−ベンゼンジアミン、1,3−ベンゼンジアミン、4−メチル−1,3−ベンゼンジアミン、4−(4−アミノベンジル)フェニルアミン、4−(4−アミノフェノキシ)フェニルアミン、3−(4−アミノフェノキシ)フェニルアミン、4’−アミノ−3,3’−ジメチル[1,1’−ビフェニル]−4−イルアミン、4’−アミノ−3,3’−ビス(トリフルオロメチル)[1,1’−ビフェニル]−4−イルアミン、4−アミノ−N−(4−アミノフェニル)ベンズアミド、4−[(4−アミノフェニル)スルホニル]フェニルアミン、ビス(4−アミノフェニル)メタノン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記芳香族ジアミンの芳香環に、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物等が挙げられる。上記置換基としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様のものが例示される。なお、液晶ポリエステル(A)は、芳香族ジアミン由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
上記フェノール性水酸基を有する芳香族アミンとしては、例えば、4−アミノフェノール、4−アセトアミドフェノール、3−アミノフェノール、3−アセトアミドフェノール、6−アミノ−2−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、4’−ヒドロキシ−[1,1’−ビフェニル]−4−アミン、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルメタン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。上記誘導体としては、例えば、上記フェノール性水酸基を有する芳香族アミンの芳香環に、炭素数0〜20(好ましくは炭素数0〜10)の置換基が置換した化合物等が挙げられる。上記置換基としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様のものが例示される。なお、液晶ポリエステル(A)は、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン由来の構成単位の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
上述の芳香族化合物(芳香族ジアミン、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン)の、液晶ポリエステル(A)を構成する単量体全量(100重量%)に対する割合(2種以上を含む場合にはこれら総量の割合)は、特に限定されないが、30重量%以下(例えば、0〜30重量%)が好ましく、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。上記割合が30重量%以下であると、硬化物の耐吸湿性(耐加水分解性)が低下しにくい。
液晶ポリエステル(A)は、上述の芳香族化合物(単量体)を公知乃至慣用の方法により重合することにより製造でき、その製造方法は特に限定されない。具体的には、例えば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール、フェノール性水酸基を有する芳香族アミン、芳香族ジアミン等のヒドロキシル基やアミノ基を有する芳香族化合物を過剰量の脂肪酸無水物によりアシル化し、得られたアシル化物と、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸等のカルボキシル基を有する芳香族化合物とを反応(エステル交換反応、アミド交換反応)させることにより製造できる。より具体的には、例えば、特開2007−119610号公報に記載の方法等により製造できる。また、液晶ポリエステル(A)としては、市販品を使用することも可能である。
分子鎖末端に水酸基を有する液晶ポリエステル(A)を生成させる方法としては、例えば、水酸基が過剰となるように単量体組成を制御する方法(例えば、単量体成分として芳香族ジオールを過剰に使用する方法等)等が挙げられる。具体的には、液晶ポリエステル(A)を製造する際に使用する液晶ポリエステル(A)を構成する単量体における、水酸基と該水酸基と縮合反応する官能基(カルボキシル基、カルボキシル基より誘導される基(エステル基、酸無水物基、酸ハロゲン化物基等)、アミノ基等)との割合は、特に限定されないが、水酸基と縮合反応する官能基1モルに対して水酸基が1.02モル以上(例えば、1.02〜100モル)が好ましく、より好ましくは1.05モル以上、さらに好ましくは1.10モル以上である。水酸基が1.02モル以上であると、分子量が高くなりすぎず、熱硬化反応に時間を要しにくい。より具体的には、液晶ポリエステル(A)を構成する単量体の全量(100モル%)に対する芳香族ジオールの割合は、特に限定されないが、3〜25モル%が好ましく、より好ましくは4〜25モル%である。
分子鎖末端に芳香族環を有する液晶ポリエステル(A)を生成させる方法としては、例えば、単量体として実質的に芳香族化合物(例えば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール等)のみを使用する方法や、ヒドロキシル基やカルボキシル基等の反応性基を分子鎖末端に有する液晶ポリエステルの末端の当該反応性基に対して、芳香族化合物を付加反応させて分子鎖末端に芳香族環を形成する方法等が挙げられる。
液晶ポリエステル(A)の平均重合度は、特に限定されないが、5〜13が好ましく、より好ましくは6〜12、さらに好ましくは7〜11である。平均重合度が5以上であると、硬化反応性が低下しにくく、硬化物の耐熱性や機械物性が低下しにくい。一方、平均重合度が13以下であると、硬化時の反応温度が高くなりにくい。なお、液晶ポリエステル(A)の平均重合度は、例えば、GPC測定により求めることができる。
液晶ポリエステル(A)のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、30〜150℃が好ましく、より好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜100℃である。ガラス転移温度が30℃以上であると、硬化物の耐熱性に劣りにくい。一方、ガラス転移温度が150℃以下であると、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)の混合を高温で実施する必要が生じにくく、混合時に化合物(B)の熱重合性官能基が重合反応を起こしにくい。なお、液晶ポリエステル(A)のガラス転移温度は、例えば、DSC、TGA等の熱分析や動的粘弾性測定により測定できる。
液晶ポリエステル(A)の融点(Tm)は、特に限定されないが、200℃以下(例えば、40〜200℃)が好ましく、より好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは120〜200℃である。融点が200℃以下であると、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)の混合を高温で実施する必要が生じにくく、混合時に化合物(B)の熱重合性官能基が重合反応を起こしにくい。なお、液晶ポリエステル(A)の融点は、例えば、DSC、TGA等の熱分析や動的粘弾性測定により測定できる。
[化合物(B)]
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を構成するための化合物(B)は、上述のように、分子内(一分子中)に、液晶ポリエステル(A)が分子鎖末端に有する水酸基と反応する官能基(「付加反応性基(b)」と称する場合がある)と、熱重合性官能基(熱硬化性官能基)とを少なくとも有する化合物である。
上記付加反応性基(b)としては、液晶ポリエステル(A)の水酸基と反応し得る官能基であればよく、特に限定されないが、上記反応が進行する温度の観点で、例えば、α,β−不飽和カルボニル基(例えば、カルボニル炭素のα位とβ位の間に炭素−炭素不飽和結合を有するケトン基、カルボニル炭素のα位とβ位の間に炭素−炭素不飽和結合を有するエステル基、カルボニル炭素のα位とβ位の間に炭素−炭素不飽和結合を有するアミド基、カルボニル炭素のα位とβ位の間に炭素−炭素不飽和結合を有するイミド基等);エポキシ基;マレイミド基;エステル基;酸無水物基(例えば、マレイン酸無水物基等);カルボキシル基等が挙げられる。なお、化合物(B)は、上記付加反応性基(b)の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
化合物(B)における付加反応性基(b)の数は、1個以上であればよく、特に限定されないが、1〜10個が好ましく、より好ましくは1〜5個である。
上記熱重合性官能基としては、加熱により重合し得る官能基であればよく、特に限定されないが、重合反応が進行する温度の観点で、例えば、マレイミド基、ナジイミド基、シアネート基、ニトリル基、フタロニトリル基、エチニル基、プロパルギルエーテル基、ベンゾシクロブタン基、ビフェニレン基、及びこれらの置換体又は誘導体等が挙げられる。なお、上記置換体又は誘導体としては、上記熱重合性官能基に置換基(例えば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基等)が結合した熱重合性官能基等が挙げられる。中でも、構造の一部又は全部が上記付加反応性基(b)としても機能する点で、マレイミド基が好ましい。なお、化合物(B)は、上記熱重合性官能基の1種を有するものであってもよいし、2種以上を有するものであってもよい。
化合物(B)における熱重合性官能基の数は、1個以上であればよく、特に限定されないが、1〜10個が好ましく、より好ましくは1〜5個である。
なお、化合物(B)は、付加反応性基(b)を1個以上と熱重合性官能基を1個以上有する必要がある。例えば、化合物(B)が付加反応性基(b)としても熱重合性官能基としても機能するマレイミド基を有する場合には、マレイミド基を2個以上有する必要がある。当該マレイミド基におけるα炭素−β炭素二重結合は、液晶ポリエステル(A)の水酸基と反応することにより消失し、もはや熱重合性官能基としては機能できなくなるためである。
化合物(B)としては、例えば、分子内に1以上の付加反応性基(b)と1以上の熱重合性官能基とを有し、かつ炭素数が100以下(好ましくは10〜50)の化合物が挙げられる。このような化合物(B)としては、例えば、炭化水素基、複素環式基、又はこれらの2以上が連結基(1以上の原子を有する2価の基)の1以上を介して結合した基により形成された化合物等が挙げられる。上記炭化水素基、複素環式基、これらの2以上が連結基の1以上を介して結合した基としては、例えば、下記式(i)中のX1、X2として例示した基(有機基)等が挙げられる。
具体的には、化合物(B)としては、下記式(i)で表される化合物(α,β−不飽和カルボニル基(不飽和基が二重結合の場合)及び熱重合性官能基を有する化合物)が挙げられる。
上記式(i)中のX1、X2は、同一又は異なって有機基を示す。上記有機基としては、特に限定されないが、置換又は無置換の炭化水素基、置換又は無置換の複素環式基、これらの基の2以上が1以上の連結基を介して結合した基等が挙げられる。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等のC1−20アルキル基(好ましくはC1−10アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基)等が挙げられる。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のC2−20アルケニル基(好ましくはC2−10アルケニル基、さらに好ましくはC2−4アルケニル基)等が挙げられる。上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等のC2−20アルキニル基(好ましくはC2−10アルキニル基、さらに好ましくはC2−4アルキニル基)等が挙げられる。
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等のC3−12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のC3−12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等のC4−15の架橋環式炭化水素基等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6−14アリール基(特に、C6−10アリール基)等が挙げられる。
また、上記炭化水素基としては、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等の脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基;ベンジル基、フェネチル基等のC7−18アラルキル基(特に、C7−10アラルキル基)、シンナミル基等のC6−10アリール−C2−6アルケニル基、トリル基等のC1−4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2−4アルケニル置換アリール基等の脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基等が挙げられる。上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様の基が挙げられる。
上記複素環式基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。上記複素環式基が有していてもよい置換基としては、例えば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様の基が挙げられる。
上記炭化水素基としては、例えば、2以上の炭化水素基が1以上の連結基[1以上の原子を有する2価の基;例えば、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、アミド結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、−NR−(Rは水酸基又はアルキル基を示す)、イミド結合、これらの2以上が結合した基等]で連結された基等も挙げられる。また、上記複素環式基としては、2以上の複素環式基が直接結合した基等も挙げられる。また、上記有機基(X1、X2)は、上記炭化水素基の1以上と上記複素環式基の1以上とが、直接及び/又は1以上の連結基を介して結合した基であってもよい。
上記式(i)中のX1、X2は、互いに結合して式中に示される3つの炭素原子とともに環を形成していてもよい。具体的には、X1及びX2と式中に示される3つの炭素原子とで形成される環構造としては、例えば、シクロアルケノン環、シクロアルケンジオン環、フランジオン環(マレイン酸無水物環)、ピロールジオン環(マレイミド環)、カルボニル炭素のα位とβ位の間に炭素−炭素不飽和結合を有するラクトン環、カルボニル炭素のα位とβ位の間に炭素−炭素不飽和結合を有するラクタム環等が挙げられる。
上記式(i)中のR1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。上記アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸における置換基と同様の基(但し、アルキル基は除く)が挙げられる。
上記式(i)中のY1、Y2は、同一又は異なって、熱重合性官能基を示す。上記熱重合性官能基としては、上述の熱重合性官能基が例示される。また、上記式(i)中のn1、n2は、同一又は異なって、0以上の整数を示す。但し、n1とn2の合計(n1+n2)は1以上の整数を示す(即ち、上記式(i)で表される化合物は、分子内に1以上の熱重合性官能基を有する)。n1とn2の合計としては、例えば、1〜10の整数(より好ましくは1〜5の整数)が好ましい。また、Y1、Y2のX1、X2に対する結合位置は、特に限定されない。なお、n1(又はn2)が2以上の整数である場合、複数のY1(又はY2)は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、化合物(B)としては、下記式(ii)で表される化合物(α,β−不飽和カルボニル基(不飽和基が三重結合の場合)及び熱重合性官能基を有する化合物)が挙げられる。
上記式(ii)中のX3、X4は、同一又は異なって有機基を示す。上記有機基としては、式(i)中のX1、X2として例示したものと同様の有機基が挙げられる。また、上記式(i)中のX1、X2と同様に、上記式(ii)中のX3、X4は、互いに結合して式中に示される3つの炭素原子とともに環を形成していてもよい。
上記式(ii)中のY3、Y4は、同一又は異なって、熱重合性官能基を示す。上記熱重合性官能基としては、上述の熱重合性官能基が例示される。また、上記式(ii)中のn3、n4は、同一又は異なって、0以上の整数を示す。但し、n3とn4の合計(n3+n4)は1以上の整数を示す(即ち、上記式(ii)で表される化合物は、分子内に1以上の熱重合性官能基を有する)。n3とn4の合計としては、例えば、1〜10の整数(より好ましくは1〜5の整数)が好ましい。また、Y3、Y4のX3、X4に対する結合位置は、特に限定されない。なお、n3(又はn4)が2以上の整数である場合、複数のY3(又はY4)は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、化合物(B)としては、下記式(iii)で表される化合物(熱重合性官能基を有するカルボン酸又はその誘導体)が挙げられる。
上記式(iii)中のR
aは、水酸基(−OH)、アルコキシ基、ハロゲン原子、又はアシルオキシ基を示す。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、及びその誘導体等が挙げられる。上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。上記アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、下記式で表される基等が挙げられる。なお、下記式におけるX
5、Y
5、n5は、上記式(iii)におけるものと同じである。
上記式(iii)中のX5は有機基を示す。上記有機基としては、式(i)中のX1、X2として例示したものと同様の有機基が挙げられる。上記式(iii)中のY5は熱重合性官能基を示す。上記熱重合性官能基としては、上述の熱重合性官能基が例示される。また、上記式(iii)中のn5は1以上の整数を示す。n5としては、例えば、1〜10の整数(より好ましくは1〜5の整数)が好ましい。また、Y5のX5に対する結合位置は、特に限定されない。なお、n5が2以上の整数である場合、複数のY5は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、化合物(B)としては、下記式(iv)で表される化合物(熱重合性官能基を有するエポキシ化合物)が挙げられる。
上記式(iv)中のX6は有機基を示す。上記有機基としては、式(i)中のX1、X2として例示したものと同様の有機基が挙げられる。上記式(iv)中のY6は熱重合性官能基を示す。上記熱重合性官能基としては、上述の熱重合性官能基が例示される。また、上記式(iv)中のn6は1以上の整数を示す。n6としては、例えば、1〜10の整数(より好ましくは1〜5の整数)が好ましい。また、Y6のX6に対する結合位置は、特に限定されない。なお、n6が2以上の整数である場合、複数のY6は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記式(iv)中のR3〜R5は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。上記置換基を有していてもよいアルキル基としては、上記式(i)中のR1、R2として例示したものと同様の基が挙げられる。
化合物(B)としては、より具体的には、例えば、メチレンビスマレイミド(4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド)、m−フェニレンビスマレイミド、2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、エチレンビスマレイミド、o−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、m−トルイレンビスマレイミド、4,4’−ビフェニレンビスマレイミド、4,4’−[3,3’−ジメチル−ビフェニレン]ビスマレイミド、4,4’−[3,3’−ジメチルジフェニルメタン]ビスマレイミド、4,4’−[3,3’−ジエチルジフェニルメタン]ビスマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルプロパンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド等のビスマレイミド化合物;4−マレイミド安息香酸;4−マレイミド安息香酸メチル;4−マレイミド安息香酸エチル等が挙げられる。
[熱硬化性液晶ポリエステル組成物の製造方法]
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、上述のように、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを混合することにより得られる。混合の形態は特に限定されず、例えば、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを溶融混合してもよいし、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを溶媒(C)の存在下で混合してもよい。溶媒(C)は、特に限定されず、例えば、その沸点(Tv)と、液晶ポリエステル(A)の融点(Tm)との差(Tv−Tm)が、−30℃以上30℃以下である溶媒であってもよい。溶媒(C)の具体例としては、特に限定されないが、ペンタフルオロフェノール(PFP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、o−ジクロロベンゼン等が挙げられる。
液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを混合する際には、液晶ポリエステル(A)、化合物(B)以外の成分(「その他の成分」と称する場合がある;例えば、後述の無機フィラー等)をともに混合してもよい。後述のように、混合によって主に液晶ポリエステル(A)の水酸基と、化合物(B)の付加反応性基(b)との反応(付加反応)が主に進行し、熱硬化性を有する液晶ポリエステル組成物が得られる。なお、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を製造するにあたり、液晶ポリエステル(A)は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。同様に、化合物(B)は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を構成する液晶ポリエステル(A)と化合物(B)の割合(配合割合)は、液晶ポリエステル(A)や化合物(B)の種類等により異なり、特に限定されないが、液晶ポリエステル(A)100重量部に対する化合物(B)の割合(配合量)として、10〜300重量部が好ましく、より好ましくは20〜250重量部、さらに好ましくは30〜200重量部である。化合物(B)の割合が10重量部以上であると、熱硬化性液晶ポリエステル組成物の硬化性が低下しにくい。一方、化合物(B)の含有量が300重量部以下であると、熱硬化性液晶ポリエステル組成物中に化合物(B)が多量に残存しにくく、硬化物の物性に悪影響が及びにくい。
なお、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを溶媒(C)の存在下で混合する場合、溶媒の使用量は、特に限定されず、水酸基と反応する官能基並びに熱重合性官能基を分子内に有する化合物(B)の使用量との関係で調整してもよい。具体的には、化合物(B)の量が、溶媒(C)100質量部に対して10質量部以上200質量部以下となるように調整してもよい。
上記混合時の温度は、特に限定されない。例えば、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを溶融混合する場合、上記溶融混合時の温度は、液晶ポリエステル(A)及び化合物(B)を溶融させることができる温度(特に、液晶ポリエステル(A)の融点以上)であればよく、特に限定されないが、200℃以下(例えば、80〜200℃)が好ましく、より好ましくは120〜180℃である。溶融混合の温度が200℃以下であると、化合物(B)に由来する熱重合性官能基の重合反応が進行しにくい。また、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを溶媒(C)の存在下で混合する場合、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)との混合時の温度条件は、液晶ポリエステル(A)の融点(Tm)よりも5℃以上30℃以下高くなるように調整する。混合時の温度条件が、液晶ポリエステル(A)の融点(Tm)よりも5℃以上、好ましくは10℃以上高いと、液晶ポリエステル(A)と、化合物(B)との混合を十分に行うことができる。混合時の温度条件が、液晶ポリエステル(A)の融点(Tm)よりも30℃以下、好ましくは20℃以下高いと、化合物(B)に由来する熱重合性官能基の重合反応を抑制できる。混合時の温度条件は、具体的には、200℃以下(例えば、80〜200℃)であってもよい。なお、溶融混合の場合も、溶媒(C)の存在下での混合の場合も、混合時の温度は、混合する間一定となるように制御することもできるし、段階的又は連続的に変動するように制御することもできる。
上記混合の時間は、特に限定されない。例えば、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを溶融混合する場合、上記溶融混合の時間は、特に限定されないが、5〜600分が好ましく、より好ましくは60〜480分である。溶融混合の時間が5分以上であると、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)の反応進行が十分となりやすく、硬化物の物性が低下しにくい。一方、溶融混合の時間が600分以下であると、硬化物の生産性が低下しにくい。また、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを溶媒(C)の存在下で混合する場合、混合の時間は、特に限定されないが、30〜600分が好ましく、より好ましくは60〜480分である。溶媒(C)の存在下での混合の時間が30分以上であると、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)の反応進行が十分となりやすく、硬化物の物性が低下しにくい。一方、溶媒(C)の存在下での混合の時間が600分以下であると、硬化物の生産性が低下しにくい。
上記混合は、常圧下で行うこともできるし、減圧下又は加圧下で行うこともできる。また、上記混合は、一段階で行うこともできるし、二段階以上の多段階に分けて行うこともできる。
上記混合は、公知乃至慣用の装置(混合装置)を使用して実施することができる。上記混合装置としては、特に限定されないが、一軸押出機、二軸押出機等の押出機;バドルミキサー、高速流動式ミキサー、リボンミキサー、バンバリーミキサー、ハーケミキサー、スタティックミキサー等のミキサー;ニーダー等が挙げられる。
なお、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを溶媒(C)の存在下で混合する場合、混合後は、溶媒(C)を5torr以上30torr以下の真空下で除去してもよい。かかる工程を設けることにより、熱硬化性液晶ポリエステル組成物から溶媒(C)を効果的に除去できる。除去時間は、除去しようとする溶媒(C)の種類や量によって適宜調整でき、1〜30分間であってもよい。
液晶ポリエステル(A)と化合物(B)とを混合することにより、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物が得られる。本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル(A)の分子鎖末端の水酸基と、化合物(B)の付加反応性基(b)とが混合時に反応することにより形成される付加物を必須成分として含む組成物である。上記付加物は、液晶ポリエステル(A)の1以上と化合物(B)の1以上とが上述の付加反応により結合したものである。
具体的には、上述の液晶ポリエステル(A)と化合物(B)との付加物は、例えば、化合物(B)として上記式(i)で表される化合物を用いた場合には、下記式(1)で表される。
上記式(1)におけるL1は、液晶ポリエステル骨格を示す。当該液晶ポリエステル骨格としては、例えば、液晶ポリエステル(A)から1つの水酸基(分子鎖末端の水酸基)を除いた骨格、2以上の液晶ポリエステル(A)が1以上の化合物(B)(式(i)で表される化合物)と付加して連結することにより形成されたもの(付加物)から1つの水酸基(分子鎖末端の水酸基)を除いた骨格等が挙げられる。
上記式(1)におけるX1、X2、R1、R2、Y1、Y2、n1、n2は、上記式(i)におけるものと同じである。
また、上述の液晶ポリエステル(A)と化合物(B)との付加物は、例えば、化合物(B)として上記式(ii)で表される化合物を用いた場合には、下記式(2)で表される。
上記式(2)におけるL2は、液晶ポリエステル骨格を示す。当該液晶ポリエステル骨格としては、例えば、液晶ポリエステル(A)から1つの水酸基(分子鎖末端の水酸基)を除いた骨格、2以上の液晶ポリエステル(A)が1以上の化合物(B)(式(ii)で表される化合物)と付加して連結することにより形成されたもの(付加物)から1つの水酸基(分子鎖末端の水酸基)を除いた骨格等が挙げられる。また、上記式(2)におけるX3、X4、Y3、Y4、n3、n4は、上記式(ii)におけるものと同じである。
また、上述の液晶ポリエステル(A)と化合物(B)との付加物は、例えば、化合物(B)として上記式(iii)で表される化合物を用いた場合には、下記式(3)で表される。
上記式(3)におけるL3は、液晶ポリエステル骨格を示す。当該液晶ポリエステル骨格としては、例えば、液晶ポリエステル(A)から1つの水酸基(分子鎖末端の水酸基)を除いた骨格、2以上の液晶ポリエステル(A)が1以上の化合物(B)(式(iii)で表される化合物)と付加して連結することにより形成されたもの(付加物)から1つの水酸基(分子鎖末端の水酸基)を除いた骨格等が挙げられる。また、上記式(3)におけるX5、Y5、n5は、上記式(iii)におけるものと同じである。
また、上述の液晶ポリエステル(A)と化合物(B)との付加物は、例えば、化合物(B)として上記式(iv)で表される化合物を用いた場合には、下記式(4)又は下記式(5)で表される。
上記式(4)及び式(5)におけるL4は、液晶ポリエステル骨格を示す。当該液晶ポリエステル骨格としては、例えば、液晶ポリエステル(A)から1つの水酸基(分子鎖末端の水酸基)を除いた骨格、2以上の液晶ポリエステル(A)が1以上の化合物(B)(式(iv)で表される化合物)と付加して連結することにより形成されたもの(付加物)から1つの水酸基(分子鎖末端の水酸基)を除いた骨格等が挙げられる。また、上記式(4)及び式(5)におけるX6、Y6、R3〜R5、n6は、上記式(iv)におけるものと同じである。
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、無機フィラーを含有していてもよい。無機フィラーを含有させることにより、硬化物の性能を目的(用途)に応じて調整することが可能となる。上記無機フィラーとしては、公知乃至慣用の無機フィラーを使用することができ、特に限定されないが、例えば、シリカ(例えば、天然シリカ、合成シリカ等)、酸化アルミニウム(例えば、α−アルミナ等)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物;水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;マイカ、タルク、カオリン、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ウォラストナイト、セピオライト、ゾノライト、ゼオライト、ハイドロタルサイト、フライアッシュ、脱水汚泥、ガラス、ケイ藻土、ケイ砂、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、水和石膏、ミョウバン、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、シリコンカーバイド、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、燐酸マグネシウム、銅、鉄等が挙げられる。上記無機フィラーは、中実構造、中空構造、多孔質構造等のいずれの構造を有していてもよい。また、上記無機フィラーは、例えば、オルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物等の周知の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。なお、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物において無機フィラーは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。中でも、特に、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を半導体封止材用に使用する場合には、シリカ(シリカフィラー)等を使用することが好ましく、硬化物の熱伝導性や放熱特性を調整する場合には、アルミナ(アルミナ微粒子)等を使用することが好ましい。
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物における無機フィラーの含有量は、特に限定されないが、熱硬化性液晶ポリエステル組成物を構成する液晶ポリエステル(A)と化合物(B)の合計量(総量)100重量部に対して、0〜500重量部が好ましく、より好ましくは0〜300重量部である。なお、上記「熱硬化性液晶ポリエステル組成物を構成する液晶ポリエステル(A)と化合物(B)」には、熱硬化性液晶ポリエステル組成物中に存在する液晶ポリエステル(A)と化合物(B)に加え、上記付加物を構成する液晶ポリエステル(A)と化合物(B)の量も含むものとし、当段落以外についても同様である。
上記無機フィラーは、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を調製する際(液晶ポリエステル(A)及び化合物(B)を混合する際)にともに配合することもできるし、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物をいったん調製した後に配合することもできる。
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、硬化反応を促進したり制御するための添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ジアミノ化合物[例えば、ジアミノジフェニルメタン等]、ジアリル化合物[ジアリルビスフェノールA等]、トリアジン類[例えば、1,3,5−トリ−2−プロペニル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(2−メチル−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等]等が挙げられる。なお、上記添加剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記添加剤の含有量(配合量)は、特に限定されないが、熱硬化性液晶ポリエステル組成物を構成する液晶ポリエステル(A)と化合物(B)の合計量100重量部に対して、0〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。
上記添加剤は、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を調製する際(液晶ポリエステル(A)及び化合物(B)を混合する際)にともに配合することもできるし、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物をいったん調製した後に配合することもできる。
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含んでいてもよい。上記その他の添加剤としては、公知乃至慣用の添加剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂;溶剤;安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤等);難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等);難燃助剤;補強材;核剤;カップリング剤;滑剤;ワックス;可塑剤;離型剤;耐衝撃性改良剤;色相改良剤;流動性改良剤;着色剤(染料、顔料等);分散剤;消泡剤;脱泡剤;抗菌剤;防腐剤;粘度調整剤;増粘剤等の慣用の添加剤が挙げられる。上記その他の添加剤は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。上記その他の添加剤の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性液晶ポリエステル組成物の全量(100重量%)に対して、0〜5重量%が好ましく、より好ましくは0〜2重量%である。上記その他の添加剤は、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を調製する際(液晶ポリエステル(A)及び化合物(B)を混合する際)にともに配合することもできるし、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物をいったん調製した後に配合することもできる。
上述のように、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル(A)と化合物(B)を混合することにより得られる熱硬化性組成物である。本発明の特徴的な設計思想の1つは、分子鎖末端に水酸基を有し、総末端数aが1000〜3000mmol/kgであり、総末端数aに対する水酸基末端数bの割合b/aが0.8〜1である液晶ポリエステル(A)、付加反応性基(b)及び熱重合性官能基を分子内に有する化合物(B)として、両成分の混合の際には、液晶ポリエステル(A)の水酸基と、化合物(B)の付加反応性基(b)との反応が主に進行し、一方で、化合物(B)の熱重合性官能基同士の反応は実質的に進行しないものを用いることにある。これにより、混合という簡便な作業によって、容易に熱硬化性を有する組成物(熱硬化性組成物)を得ることができ、このようにして得られた熱硬化性組成物は、例えば、250℃以下という比較的低温で硬化させることができ、耐熱性をはじめとする各種物性に優れた硬化物を形成するとともに、速硬化性に優れる。
<硬化物>
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を加熱によって硬化させる(硬化反応を進行させる)ことにより、硬化物(「本発明の硬化物」と称する場合がある)が得られる。加熱によって主に化合物(B)に起因する熱重合性官能基同士の反応(重合反応)が進行し、硬化物が形成される。加熱の手段としては、公知乃至慣用の手段を利用することができ、特に限定されない。
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を硬化させる際の加熱温度(硬化温度)は、特に限定されないが、170〜250℃が好ましく、より好ましくは210〜250℃、さらに好ましくは220〜250℃である。硬化温度が170℃以上であると、硬化反応の進行が十分となりやすく、硬化物の物性が低下しにくい。一方、硬化温度が250℃以下であると、硬化物を生成させる工程が煩雑となりにくく、生産性が低下しにくい。なお、硬化温度は、硬化させる間一定となるように制御することもできるし、段階的又は連続的に変動するように制御することもできる。
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を硬化させる際の加熱時間(硬化時間)は、特に限定されないが、1〜600分が好ましく、より好ましくは1〜480分、さらに好ましくは1〜360分である。硬化時間が1分以上であると、硬化反応の進行が十分となりやすく、硬化物の物性が低下しにくい。一方、硬化時間が600分以下であると、硬化物の生産性が低下しにくい。
本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物の硬化は、常圧下で行うこともできるし、減圧下又は加圧下で行うこともできる。また、上記硬化は、一段階で行うこともできるし、二段階以上の多段階に分けて行うこともできる。
本発明の硬化物の熱分解温度は、特に限定されないが、400℃以上(例えば、400〜600℃)が好ましく、より好ましくは420℃以上、さらに好ましくは430℃以上である。熱分解温度が400℃以上であると、本発明の硬化物の耐熱性が十分となりやすい。硬化物の熱分解温度は、例えば、TGA(熱重量分析装置)等により測定できる。
本発明の硬化物の、昇温速度10℃/分(空気中)で測定される5%重量減少温度(Td5)は、特に限定されないが、350℃以上(例えば、350〜500℃)が好ましく、より好ましくは380℃以上、さらに好ましくは400℃以上である。5%重量減少温度が350℃以上であると、本発明の硬化物の耐熱性が十分となりやすい。上記5%重量減少温度は、例えば、TG/DTA(示差熱・熱重量同時測定)等により測定できる。
本発明の硬化物の空気中における熱分解反応の活性化エネルギーは、特に限定されないが、150kJ/mol以上(例えば、150〜350kJ/mol)が好ましく、より好ましくは180kJ/mol以上、さらに好ましくは200kJ/mol以上である。上記活性化エネルギーが150kJ/mol以上であると、本発明の硬化物の耐熱性が十分となりやすい。なお、上記活性化エネルギーは、例えば、小沢法により算出することができる。小沢法とは、3種類以上の昇温速度でTG測定(熱重量測定)を行い、得られた熱重量減少のデータから熱分解反応の活性化エネルギーを算出する方法である。
本発明の硬化物は、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を硬化させることにより得られる硬化物であるため、優れた耐熱性を有し、また、優れた加工性、寸法安定性、低線膨張、高熱伝導性、低吸湿性、誘電特性を有する。さらに、本発明の硬化物は、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物を250℃以下の比較的低温で加熱することによって得られるため、生産性にも優れる。
本発明の硬化物は、各種部材や各種構造材等の種々の用途に使用することができる。特に、上述の各種特性に優れるため、フィルム、プリプレグ、プリント配線板、半導体封止材等の用途に好ましく使用できる。即ち、本発明の熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、特に、フィルム用熱硬化性組成物、プリプレグ用熱硬化性組成物、プリント配線板用熱硬化性組成物、半導体封止材用熱硬化性組成物等として好ましく使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[融点]
下記製造例にて得られた液晶ポリエステルの融点(Tm)は、示差走査熱量分析装置(「DSC6200」、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)にて、20℃/分の昇温条件(窒素気流下)で測定した。結果を表1に示す。
[半硬化時間]
下記実施例又は比較例にて得られた熱硬化性液晶ポリエステル組成物の半硬化時間は、以下の通りにして測定した。熱硬化性液晶ポリエステル組成物を250℃に加熱し、硬化反応を進行させた。硬化反応開始から硬化反応終了までの間、反応物の粘度を回転型粘度計(アントンパール社製MCR301)で測定した。硬化反応開始時の粘度をV0、硬化反応終了時の粘度をV1としたとき、反応物の粘度が(V1−V0)/2+V0となる反応時間を半硬化時間とした。結果を表2に示す。
[熱分解温度]
下記実施例又は比較例にて得られた硬化物の熱分解温度は、TGA(熱重量分析装置、ティー・エイ・インスツルメント社製Q500)で測定した。結果を表2に示す。
[溶融異方性]
下記製造例にて得られた液晶ポリエステルの溶融物が液晶性を有することを、以下の手順で確認した。なお、下記の確認では、直交偏光子間に等方性の溶融物を挿入した場合には光が透過しないが、光学的異方性を有する溶融物(液晶性ポリマー)を挿入した場合には光が透過する現象を利用した。
偏光顕微鏡(ライカマイクロシステムズ社製)を使用し、ホットステージ(メトラー・トレド社製)に下記製造例にて得られた液晶ポリエステルを載せて溶融させ、250倍の倍率で観察した。その結果、下記製造例にて得られた液晶ポリエステルの溶融物はいずれも、液晶性を有することが確認された。
比較製造例1
[液晶ポリエステルaの製造]
表1に示すように、コンデンサーと攪拌機を取り付けた500mLのフラスコに、4−ヒドロキシ安息香酸98.5g、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸92.9g、4,4’−ジヒドロキシビフェニル30.7g、無水酢酸160.0g、及び酢酸カリウム15.0mgを入れ、窒素雰囲気下で140℃まで徐々に温度を上げた後、温度を維持しながら3時間反応させてアセチル化反応を完結させた。次いで、0.8℃/分の速度で340℃まで昇温しながら酢酸及び未反応の無水酢酸を留去した。その後、フラスコ内を徐々に1torrまで減圧して揮発成分を留去することで、芳香族ユニット(芳香族化合物に由来する構成単位)のみからなる分子鎖の両末端に水酸基を有する液晶ポリエステルaを得た。得られた液晶ポリエステルaの熱分析結果[融点(Tm)]は、表1に示す通りであった。なお、得られた液晶ポリエステルaは、液晶ポリエステルaの末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)、及びGPC測定の結果、単量体の8.8量体であると見積もられた。また、液晶ポリエステルaの総末端数及び水酸基末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)の結果は、表1に示す通りであった。
製造例1
[液晶ポリエステルbの製造]
表1に示すように、4−ヒドロキシ安息香酸の使用量を96.1g、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の使用量を89.9g、4,4’−ジヒドロキシビフェニルの使用量を13.8g、無水酢酸の使用量を162.0g、酢酸カリウムの使用量を15.0mgとしたこと以外は比較製造例1と同様の操作を行い、芳香族ユニット(芳香族化合物に由来する構成単位)のみからなる分子鎖の両末端に水酸基を有する液晶ポリエステルbを得た。得られた液晶ポリエステルbの熱分析結果は、表1に示す通りであった。なお、得られた液晶ポリエステルbは、液晶ポリエステルbの末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)、及びGPC測定の結果、単量体の8.0量体であると見積もられた。また、液晶ポリエステルbの総末端数及び水酸基末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)の結果は、表1に示す通りであった。
比較製造例2
[液晶ポリエステルcの製造]
表1に示すように、4−ヒドロキシ安息香酸の使用量を98.6g、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の使用量を95.6g、4,4’−ジヒドロキシビフェニルの使用量を28.1g、無水酢酸の使用量を158.7g、酢酸カリウムの使用量を15.0mgとしたこと以外は比較製造例1と同様の操作を行い、芳香族ユニット(芳香族化合物に由来する構成単位)のみからなる分子鎖の両末端に水酸基を有する液晶ポリエステルcを得た。得られた液晶ポリエステルcの熱分析結果は、表1に示す通りであった。なお、得られた液晶ポリエステルcは、液晶ポリエステルcの末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)、及びGPC測定の結果、単量体の9.7量体であると見積もられた。また、液晶ポリエステルcの総末端数及び水酸基末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)の結果は、表1に示す通りであった。
製造例2
[液晶ポリエステルdの製造]
表1に示すように、4−ヒドロキシ安息香酸の使用量を82.1g、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の使用量を87.2g、4,4’−ジヒドロキシビフェニルの使用量を24.4g、無水酢酸の使用量を151.0g、酢酸カリウムの使用量を15.0mgとしたこと以外は比較製造例1と同様の操作を行い、芳香族ユニット(芳香族化合物に由来する構成単位)のみからなる分子鎖の両末端に水酸基を有する液晶ポリエステルdを得た。得られた液晶ポリエステルdの熱分析結果は、表1に示す通りであった。なお、得られた液晶ポリエステルdは、液晶ポリエステルdの末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)、及びGPC測定の結果、単量体の10.0量体であると見積もられた。また、液晶ポリエステルdの総末端数及び水酸基末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)の結果は、表1に示す通りであった。
比較製造例3
[液晶ポリエステルeの製造]
表1に示すように、4−ヒドロキシ安息香酸の使用量を96.3g、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の使用量を95.2g、4,4’−ジヒドロキシビフェニルの使用量を30.5g、無水酢酸の使用量を159.4g、酢酸カリウムの使用量を15.0mgとしたこと以外は比較製造例1と同様の操作を行い、芳香族ユニット(芳香族化合物に由来する構成単位)のみからなる分子鎖の両末端に水酸基を有する液晶ポリエステルeを得た。得られた液晶ポリエステルeの熱分析結果は、表1に示す通りであった。なお、得られた液晶ポリエステルeは、液晶ポリエステルeの末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)、及びGPC測定の結果、単量体の9.4量体であると見積もられた。また、液晶ポリエステルeの総末端数及び水酸基末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)の結果は、表1に示す通りであった。
比較製造例4
[液晶ポリエステルfの製造]
表1に示すように、4−ヒドロキシ安息香酸の使用量を70.7g、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の使用量を69.8g、4,4’−ジヒドロキシビフェニルの使用量を31.6g、無水酢酸の使用量を177.2g、酢酸カリウムの使用量を15.0mgとしたこと以外は比較製造例1と同様の操作を行い、芳香族ユニット(芳香族化合物に由来する構成単位)のみからなる分子鎖の両末端に水酸基を有する液晶ポリエステルfを得た。得られた液晶ポリエステルfの熱分析結果は、表1に示す通りであった。なお、得られた液晶ポリエステルfは、液晶ポリエステルfの末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)、及びGPC測定の結果、単量体の3.1量体であると見積もられた。また、液晶ポリエステルfの総末端数及び水酸基末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)の結果は、表1に示す通りであった。
比較製造例5
[液晶ポリエステルgの製造]
表1に示すように、4−ヒドロキシ安息香酸の使用量を106.0g、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の使用量を105.0g、4,4’−ジヒドロキシビフェニルの使用量を13.0g、無水酢酸の使用量を152.6g、酢酸カリウムの使用量を15.0gとしたこと以外は比較製造例1と同様の操作を行い、芳香族ユニット(芳香族化合物に由来する構成単位)のみからなる分子鎖の両末端に水酸基を有する液晶ポリエステルgを得た。得られた液晶ポリエステルgの熱分析結果は、表1に示す通りであった。なお、得られた液晶ポリエステルgは、液晶ポリエステルgの末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)、及びGPC測定の結果、単量体の14.8量体であると見積もられた。また、液晶ポリエステルgの総末端数及び水酸基末端数の算出(特開平5−271394号公報に記載のアミン分解HPLC法による)の結果は、表1に示す通りであった。
表1における略語の意味は、以下の通りである。
HBA : 4−ヒドロキシ安息香酸
HNA : 6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
BP : 4,4’−ジヒドロキシビフェニル
実施例1及び2並びに比較例1〜5
[熱硬化性液晶ポリエステル組成物及びその硬化物の製造]
表2に示す種類及び量の液晶ポリエステルと表2に示す種類及び量のビスマレイミド化合物とを、170℃で6時間溶融混合し、溶融物(熱硬化性液晶ポリエステル組成物)を得た。その後、得られた溶融物をガラス板に挟んでホットプレートで240℃に加熱し、6時間硬化反応を進行させて、均一な硬化物を得た。上記溶融物の半硬化時間は、表2に示す通りであった。上記硬化物の熱分解温度は、表2に示す通りであった。
表2に示すように、実施例で得られた熱硬化性液晶ポリエステル組成物は、250℃以下の比較的低温で硬化(熱硬化)させることができるとともに、半硬化時間が短く、速硬化性に優れ、なおかつ、得られた硬化物は熱分解温度が高く、非常に優れた耐熱性を有していた。