JP2015194929A - 工作機械の制御方法及び制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】直交しない2軸以上の並進軸を備えた工作機械での幾何誤差を補正し並進軸の指令値を算出する工作機械の制御方法を提供する。
【解決手段】工具を装着する主軸と工作物を保持するテーブルとが、直交しない2軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とにより相対移動し、工具により工作物を加工する工作機械にて、幾何誤差による工作物に対する工具の位置誤差を補正し並進軸を制御する指令値を算出する工作機械の制御方法であって、工作物座標系から2軸以上の並進軸が直交するように仮想的に設定された仮想直交座標系への同次座標変換により、位置誤差及び位置誤差を補正する補正値を仮想直交座標系に変換する変換ステップS40と、変換ステップにより仮想直交座標系に変換した補正値を、仮想直交座標系から並進軸の指令値座標系へ同次座標変換し、指令値座標系における補正値を算出する補正値算出ステップS50とを実行する。
【選択図】図4
【解決手段】工具を装着する主軸と工作物を保持するテーブルとが、直交しない2軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とにより相対移動し、工具により工作物を加工する工作機械にて、幾何誤差による工作物に対する工具の位置誤差を補正し並進軸を制御する指令値を算出する工作機械の制御方法であって、工作物座標系から2軸以上の並進軸が直交するように仮想的に設定された仮想直交座標系への同次座標変換により、位置誤差及び位置誤差を補正する補正値を仮想直交座標系に変換する変換ステップS40と、変換ステップにより仮想直交座標系に変換した補正値を、仮想直交座標系から並進軸の指令値座標系へ同次座標変換し、指令値座標系における補正値を算出する補正値算出ステップS50とを実行する。
【選択図】図4
Description
この発明は、工具を装着する主軸と、工作物を保持するテーブルとが、互いに直交しない2軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とによって相対移動することにより、前記工具によって前記工作物を加工する工作機械において、幾何学的な誤差による前記工作物に対する前記工具の位置の誤差を補正して、前記並進軸を制御するための指令値を算出する工作機械の制御方法及び制御装置に関する。
図6は、当該工作機械の一例であり、3つの並進軸と2つの回転軸とを有する5軸制御マシニングセンタ101の模式図である。主軸頭102は、並進軸であり互いに直交するX軸・Z軸によって、ベッド103に対して並進2自由度の運動が可能である。テーブル104は、回転軸であるC軸によってクレードル105に対して回転1自由度の運動が可能である。クレードル105は、回転軸であるA軸によって、トラニオン106に対して回転1自由度の運動が可能であり、A軸とC軸とは互いに直交している。トラニオン106は、並進軸でありX軸・Z軸に直交するY軸により、ベッド103に対して並進1自由度の運動が可能である。各軸は数値制御装置(図示せず。)により制御されるサーボモータ(図示せず。)により駆動され、工作物をテーブル104に固定し、主軸頭102に工具(図示せず。)を装着して回転させ、工作物と工具との相対位置を制御して工作物の加工を行う。
前記5軸制御マシニングセンタ101の運動精度に影響を及ぼす要因として、例えば、回転軸の中心位置の誤差(想定されている位置からのズレ)や回転軸の傾き誤差(軸間の直角度や平行度)等の各軸間の幾何学的な誤差(幾何誤差)がある。幾何誤差が存在すると5軸制御マシニングセンタ101としての運動精度が悪化し、工作物の加工精度が悪化する。そのため、調整により幾何誤差を小さくする必要があるが、ゼロにすることは困難であり、幾何誤差を補正する制御を行うことで高精度な加工を行うことができる。
幾何誤差を補正する手段として、特許文献1に記載されるような方法が提案されている。特許文献1に記載の方法では、工作機械の幾何誤差を考慮して工具先端点の位置を各並進軸の位置に変換し、それらを並進軸を制御するための指令値とすることで幾何誤差による工具先端点の位置誤差を補正することができる。
また、特許文献2には、工作機械の動作に伴う変形誤差と、並進軸の指令位置に対応して発生する位置決め誤差と、工作機械の各要素の発熱等に起因する熱変位による誤差と、を前記幾何誤差とみなし、この幾何誤差を基にして算出した並進軸の補正値を、該並進軸の指令値に加算することで、並進軸を制御するための指令値を算出する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1,2に記載の方法は、並進軸であるX軸・Y軸・Z軸が互いに直交する工作機械を対象とするものであるため、この方法では、互いに直交しない2軸以上の並進軸を備えた工作機械での幾何誤差を補正して該並進軸の指令値を算出できないという不都合があった。
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、互いに直交しない2軸以上の並進軸を備えた工作機械での幾何誤差を補正して該並進軸の指令値を算出できる工作機械の制御方法及び制御装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明に係る工作機械の制御方法は、工具を装着する主軸と、工作物を保持するテーブルとが、互いに直交しない2軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とによって相対移動することにより、前記工具によって前記工作物を加工する工作機械において、幾何学的な誤差による前記工作物に対する前記工具の位置の誤差を、前記幾何学的な誤差を考慮した工具座標系から工作物座標系への同次座標変換により求めた前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と、前記幾何学的な誤差を考慮しない工具座標系から工作物座標系への同次座標変換により求めた理想的な前記工具の位置と、から算出し、前記誤差を補正して前記並進軸を制御するための指令値を算出する工作機械の制御方法であって、前記工作物座標系から前記2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定された仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差を前記仮想直交座標系に変換すると共に、該誤差を補正する補正値を該仮想直交座標系に変換する変換ステップと、前記変換ステップによって前記仮想直交座標系に変換した前記補正値を、前記仮想直交座標系から前記並進軸の指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出する補正値算出ステップと、前記補正値算出ステップによって算出した前記補正値を、前記並進軸を制御するための指令値に加算することにより、前記指令値を更新する更新ステップと、を実行することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記変換ステップでは、前記互いに直交しない2軸以上の並進軸に含まれる並進軸が所定の基準方向に対してなす傾き角度を考慮して、前記誤差及び前記補正値を、前記工作物座標系から前記仮想直交座標系へ同次座標変換することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記2軸以上の並進軸に含まれる任意の並進軸及び前記1軸以上の回転軸に含まれる任意の回転軸を有する任意の軸構成を選択可能な選択ステップを実行し、前記変換ステップでは、前記工作物座標系から前記選択ステップによって選択した前記任意の軸構成に含まれる任意の2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定された任意の前記仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差及び前記補正値を前記任意の仮想直交座標系に変換し、前記補正値算出ステップでは、前記変換ステップによって前記任意の仮想直交座標系に変換した前記補正値を、該任意の仮想直交座標系から前記指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3において、前記任意の並進軸を前記工作物の加工に実際に使用する前記並進軸とし、前記任意の回転軸を該加工に実際に使用する前記回転軸として、前記選択ステップでは、前記工作物の加工に実際に使用する並進軸及び前記加工に実際に使用する回転軸を有する使用軸構成を判別する判別情報に基づいて、前記2軸以上の並進軸に含まれる該並進軸及び前記1軸以上の回転軸に含まれる該回転軸を有する軸構成の中に前記使用軸構成が存在するか否かを判別して、該判別した使用軸構成を前記任意の軸構成として選択し、前記変換ステップでは、前記工作物座標系から前記選択ステップによって選択した前記使用軸構成に含まれる2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定されて前記任意の仮想直交座標系に含まれる一の仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差及び前記補正値を前記一の仮想直交座標系に変換し、前記補正値算出ステップでは、該変換ステップによって前記一の仮想直交座標系に変換した前記補正値を、該一の仮想直交座標系から前記指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4において、前記選択ステップにより、前記軸構成の中に前記工作物の加工に使用しない前記軸構成が存在すると判別したときに、前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と前記理想的な前記工具の位置とから算出する前記誤差が、前回の誤差を保持あるいは零に設定するように決定される誤差決定ステップを実行することを特徴とする。
請求項6の発明に係る工作機械の制御装置は、工具を装着する主軸と、工作物を保持するテーブルとが、互いに直交しない2軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とによって相対移動することにより、前記工具によって前記工作物を加工する工作機械において、幾何学的な誤差による前記工作物に対する前記工具の位置の誤差を、前記幾何学的な誤差を考慮した工具座標系から工作物座標系への同次座標変換により求めた前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と、前記幾何学的な誤差を考慮しない工具座標系から工作物座標系への同次座標変換により求めた理想的な前記工具の位置と、から算出し、前記誤差を補正して前記並進軸を制御するための指令値を算出する工作機械の制御装置であって、前記工作物座標系から前記2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定された仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差を前記仮想直交座標系に変換すると共に、該誤差を補正する補正値を該仮想直交座標系に変換する変換手段と、前記変換手段によって前記仮想直交座標系に変換した前記補正値を、前記仮想直交座標系から前記並進軸の指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出する補正値算出手段と、前記補正値算出手段によって算出した前記補正値を、前記並進軸を制御するための指令値に加算することにより、前記指令値を更新する更新手段と、を備えることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6において、前記変換手段は、前記互いに直交しない2軸以上の並進軸に含まれる並進軸が所定の基準方向に対してなす傾き角度を考慮して、前記誤差及び前記補正値を、前記工作物座標系から前記仮想直交座標系へ同次座標変換することを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項6又は7において、前記2軸以上の並進軸に含まれる任意の並進軸及び前記1軸以上の回転軸に含まれる任意の回転軸を有する任意の軸構成を選択可能な選択手段を備え、前記変換手段は、前記工作物座標系から前記選択手段によって選択した前記任意の軸構成に含まれる任意の2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定された任意の前記仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差及び前記補正値を前記任意の仮想直交座標系に変換し、前記補正値算出手段は、前記変換手段によって前記任意の仮想直交座標系に変換した前記補正値を、該任意の仮想直交座標系から前記指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出することを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項8において、前記任意の並進軸を前記工作物の加工に実際に使用する前記並進軸とし、前記任意の回転軸を該加工に実際に使用する前記回転軸として、前記加工に実際に使用する並進軸及び前記加工に実際に使用する回転軸を有する使用軸構成を判別する判別情報を記憶する記憶手段を備え、前記選択手段は、前記記憶手段に記憶された前記判別情報に基づいて、前記2軸以上の並進軸に含まれる該並進軸及び前記1軸以上の回転軸に含まれる該回転軸を有する軸構成の中に前記使用軸構成が存在するか否かを判別して、該判別した使用軸構成を前記任意の軸構成として選択し、前記変換手段は、前記工作物座標系から前記選択手段によって選択した前記使用軸構成に含まれる2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定されて前記任意の仮想直交座標系に含まれる一の仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差及び前記補正値を前記一の仮想直交座標系に変換し、前記補正値算出手段は、前記変換手段によって前記一の仮想直交座標系に変換した前記補正値を、該一の仮想直交座標系から前記指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出することを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項9において、前記選択手段が、前記軸構成の中に前記工作物の加工に使用しない前記軸構成が存在すると判別したときに、前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と前記理想的な前記工具の位置とから算出する前記誤差が、前回の誤差を保持あるいは零に設定するように決定される誤差決定手段を備えることを特徴とする。
請求項1の発明に係る工作機械の制御方法及び請求項6の発明に係る工作機械の制御装置によれば、幾何学的な誤差による工作物に対する工具の位置の誤差及びこの誤差を補正する補正値を、工作物座標系から一旦仮想直交座標系に同次座標変換した後に、この仮想直交座標系に同次座標変換した前記補正値を並進軸の指令値座標系に同次座標変換するだけの簡単な手法により、指令値座標系において前記誤差を補正する補正値を算出できる。そのうえで、該算出した補正値を、並進軸を制御するための指令値に加算するという簡単な手法によって、前記指令値を更新できる。よって、これらの簡単な手法を組み合わせることにより、互いに直交しない2軸以上の並進軸を備えた工作機械での幾何誤差を補正して該並進軸の指令値を算出することが可能になる。
請求項2及び7の発明によれば、互いに直交しない2軸以上の並進軸に含まれる並進軸が所定の基準方向に対してなす傾き角度を特定したうえで、工作物座標系から仮想直交座標系に、工具の位置の誤差及びこの誤差を補正する補正値を同次座標変換することが可能になる。
請求項3及び8の発明によれば、任意の並進軸及び任意の回転軸を有する軸構成に対応させて、幾何学的な誤差による工作物に対する工具の位置の誤差を補正する補正値を算出することが可能になる。
請求項4及び9の発明によれば、工作物の加工に実際に使用する並進軸及び回転軸を有する使用軸構成に対応させて、幾何学的な誤差による工作物に対する工具の位置の誤差を補正する補正値を算出することが可能になる。
請求項5及び10の発明によれば、工作物の加工に使用しない軸構成に関しては、幾何学的な誤差による工作物に対する工具の位置の誤差の算出を省略できる。よって、この誤差を算出する際の計算負荷を下げることができる。
請求項2及び7の発明によれば、互いに直交しない2軸以上の並進軸に含まれる並進軸が所定の基準方向に対してなす傾き角度を特定したうえで、工作物座標系から仮想直交座標系に、工具の位置の誤差及びこの誤差を補正する補正値を同次座標変換することが可能になる。
請求項3及び8の発明によれば、任意の並進軸及び任意の回転軸を有する軸構成に対応させて、幾何学的な誤差による工作物に対する工具の位置の誤差を補正する補正値を算出することが可能になる。
請求項4及び9の発明によれば、工作物の加工に実際に使用する並進軸及び回転軸を有する使用軸構成に対応させて、幾何学的な誤差による工作物に対する工具の位置の誤差を補正する補正値を算出することが可能になる。
請求項5及び10の発明によれば、工作物の加工に使用しない軸構成に関しては、幾何学的な誤差による工作物に対する工具の位置の誤差の算出を省略できる。よって、この誤差を算出する際の計算負荷を下げることができる。
本発明の実施形態を図1ないし図5を参照しつつ説明する。図1に示す複合加工旋盤1は、本発明の工作機械の一例であり、4つの並進軸(X軸・Ys軸・Z軸・W軸)と、3つの回転軸(B軸・C1軸・C2軸)とを有する。主軸頭2は、互いに直交していない並進軸であるX軸・Ys軸・Z軸によって、ベッド3に対して並進3自由度の運動が可能である。本実施形態では、図2に示すように、X軸とYs軸とが直交しておらず、Y軸に対してYs軸が角度θだけ傾いている。加えて主軸頭2は、刃物台4に内蔵された回転軸であるB軸によって、回転1自由度の運動が可能である。
また第1主軸台6は、ベッド3に固定されて回転軸C1により、回転1自由度の運動が可能である。この第1主軸台6が備える第1主軸部7は回転軸C1回りで回転可能であり、第1主軸部7には工作物(図示せず。)が取り付け可能とされている。さらに第2主軸台8は、並進軸であってZ軸と平行なW軸によって、ベッド3に対して並進1自由度の運動が可能である。これに加えて第2主軸台8は、回転軸であるC2軸によって、回転1自由度の運度が可能である。この第2主軸台8が備える第2主軸部9は回転軸C2回りで回転可能であり、第2主軸部9にも工作物(図示せず。)が取り付け可能とされている。各並進軸(X軸・Ys軸・Z軸・W軸)及び各回転軸(B軸・C1軸・C2軸)は、後述する数値制御装置20により制御されるサーボモータ25a〜25g(図3参照。)により駆動され、主軸頭2に装着される工具10(図1参照。)と工作物との相対位置を制御しながら、工具10によって前記工作物を任意の形状に加工する。なお、第1主軸台6及び第2主軸台8は、本発明のテーブルの一例である。
図3には本実施形態の制御を行うための数値制御装置20の一例を示した。この数値制御装置20は、指令値生成手段22とサーボ指令値変換手段23とを備えている。指令値生成手段22は、工作物に加工を行う際に工具10を該加工を行う位置に移動させる指令として該工具10の先端位置の指令座標値が記述された加工プログラム21が入力されると、各軸(B軸・C1軸・C2軸・X軸・Ys軸・Z軸・W軸)の指令値を生成する。この指令値はサーボ指令値変換手段23に送られる。この指令値を受けたサーボ指令値変換手段23は、前記各軸のサーボ指令値を演算して、各軸のサーボアンプ24a〜24gへ送る。各軸のサーボアンプ24a〜24gはそれぞれサーボモータ25a〜25gを駆動し、第1主軸台6や第2主軸台8に対する工具10の相対位置および姿勢を制御する。なお、図3中の符号27は、数値制御装置20に備えられて、加工プログラム21や後述の実測により求めた幾何誤差を記憶する記憶手段である。
本実施形態では幾何誤差を、隣り合う軸間の相対並進誤差3方向及び相対回転誤差3方向の合計6成分(δx,δy,δz,α,β,γ)であると定義する。本実施形態の複合加工旋盤1では、工作物から工具10への軸構成(以下、軸構成1という。)が、C1軸−Z軸−Ys軸−X軸−B軸となっている。この軸構成1では13個の幾何誤差が存在する。また、他の軸構成(以下、軸構成2という。)が、C2軸−W軸−Z軸−Ys軸−X軸−B軸となっている。この軸構成2では15個の幾何誤差が存在する。
軸構成1における13個の幾何誤差は、各軸名に加えて、軸構成番号を第1添え字、工具10から工作物に向けた順番を第2添え字として、δx11、δz11、α11、β11、α12、γ12、β13、γ13、α14、δx15、δy15、α15、β15のように表される。これらの幾何誤差は、順に、それぞれ、B軸中心位置X方向誤差、B軸中心位置Z方向誤差、第1主軸台6−Y軸間直角度、B軸原点誤差、B−Z軸間直角度、B−X軸間直角度、Z−X軸間直角度、X−Y軸間直角度、Y−Z軸間直角度、C1軸中心位置X方向誤差、C1軸中心位置Y方向誤差、C1−Y軸間直角度、C1−X軸間直角度を意味する。軸構成1における13個の幾何誤差は、実測によって予め求めておき、記憶手段27に記憶されている。
また軸構成2における15個の幾何誤差は、軸構成1における幾何誤差と同様な方法により、δx21、δz21、α21、β21、α22、γ22、β23、γ23、α24、α25、β25、δx26、δy26、α26、β26のように表される。これらの幾何誤差は、順に、それぞれ、B軸中心位置X方向誤差、B軸中心位置Z方向誤差、第2主軸台8−Y軸間直角度、B軸原点誤差、B−Z軸間直角度、B−X軸間直角度、Z−X軸間直角度、X−Y軸間直角度、Y−Z軸間直角度、W−Y軸間直角度、W−X軸間直角度、C2軸中心位置X方向誤差、C2軸中心位置Y方向誤差、C2−Y軸間直角度、C2−X軸間直角度を意味する。軸構成2における15個の幾何誤差も、実測によって予め求めておき、記憶手段27に記憶されている。
続いて、数値制御装置20によって実行される並進軸及び回転軸の各指令値の算出方法を図4及び図5を用いて説明する。この数値制御装置20(指令値生成手段22)は、記憶手段27に記憶された計算プログラムにより、上述の幾何誤差や角度θ(図2参照。)を考慮して、前記各指令値を算出可能としている。
図4中のステップS10では、指令値生成手段22が、各軸(並進軸及び回転軸)の指令値を取得する。ステップS10では、加工プログラム21(図3参照。)から並進軸(X軸・Ys軸・Z軸・W軸)の指令値や回転軸(B軸・C1軸・C2軸)の指令値を取得する。その後指令値生成手段22は、前記取得した各指令値を記憶手段27に記憶する。
ステップS10の後には、指令値生成手段22が、ステップS20において以下に説明するように、工作物座標系での工具先端点位置の誤差を算出する工具先端点位置の誤差算出処理を実行する。ステップS20では、図5に示すステップS21〜ステップS24を実行する。指令値生成手段22は、ステップS21において、工作物の加工に実際に使用する並進軸・回転軸の判別情報を取得する。ステップS21では、一例として、実際に使用する並進軸・回転軸毎に記憶手段27(図3参照。)に記憶された加工プログラム21のプログラム名を取得する。本実施形態では、実際に使用する並進軸・回転軸毎に加工プログラム21のプログラム名を異ならせた。一例として、プログラム名が「A」の場合には、軸構成1(C1軸−Z軸−Ys軸−X軸−B軸)により、工具10が第1主軸台6(第1主軸部7)に取り付けられた工作物を加工する。また、プログラム名が「B」の場合には、軸構成2(C2軸−W軸−Z軸−Ys軸−X軸−B軸)により、工具10が第2主軸台8(第2主軸部9)に取り付けられた工作物を加工する。さらに、プログラム名が「C」の場合には、軸構成1及び2により、工具10が第1主軸台6及び第2主軸台8に取り付けられた工作物を加工することとした。
ステップS21の後には、指令値生成手段22が、ステップS22において軸構成1,2を使用するか否かを判別する。ステップS22では、ステップS21によって取得したプログラム名が「A」の場合には軸構成1を使用すると判別し、前記取得したプログラム名が「B」の場合には軸構成2を使用すると判別する。また、前記取得したプログラム名が「C」の場合には軸構成1,2の双方を使用すると判別する。なお、軸構成1,2は本発明の任意の軸構成の一例ある。また、使用すると判別された軸構成1,2は、本発明の使用軸構成の一例である。使用すると判別された軸構成1におけるZ軸・Ys軸・X軸及び軸構成2におけるW軸・Z軸・Ys軸・X軸は、本発明の工作物の加工に実際に使用する並進軸の一例であり、使用すると判別された軸構成1におけるC1軸・B軸及び使用すると判別された軸構成2におけるC2軸・B軸は本発明の加工に実際に使用する回転軸の一例である。また、プログラム名は本発明の判別情報の一例である。さらに、ステップ22は本発明の選択ステップの一例であり、指令値生成手段22は本発明の選択手段の一例である。
ステップS22において、軸構成1,2のいずれか一方又は双方を使用すると判別した場合には、指令値生成手段22が、ステップS23において以下に説明するように並進軸における工作物座標系での工具先端点位置の誤差を算出する。主軸頭2にある工具座標系上の工具先端点ベクトルTPを、第1主軸台6及び第2主軸台8にある工作物座標系に変換する場合には、工具10の長さをt(tX,tY,tZ)とし、B軸、C軸(C1軸・C2軸)、X軸、Y軸、Z軸、W軸の各指令位置をiとすると、各軸の変換行列は[数1]のようになる。この工具先端点ベクトルTPと、各軸の変換行列MB(i)、MC(i)、MX(i)、MY(i)、Mz(i)、MW(i)とを用いることにより、幾何誤差がない場合の工作物座標系での工具先端点ベクトルWPIを算出する。
本実施形態では、図2に示すようにY軸に対してYs軸が角度θだけ傾いている。このYs軸をZ軸回りでY軸に向けて角度θだけ回転させる回転変換行列は[数2]のようになる。そして、[数3]を用いることにより、幾何誤差がない場合の工具座標系から幾何誤差がない場合の軸構成1における工作物座標系への同次座標変換を行う。これにより、幾何誤差がない場合の軸構成1における工作物座標系での理想的な工具先端点ベクトルWPI1を算出する。また、[数4]を用いることにより、幾何誤差がない場合の工具座標系から幾何誤差がない場合の軸構成2における工作物座標系への同次座標変換を行う。これにより、幾何誤差がない場合の軸構成2における工作物座標系での理想的な工具先端点ベクトルWPI2を算出する。なお、[数3]のc1はC1軸の指令位置、zはZ軸の指令位置、ysはYs軸の指令位置、xはX軸の指令位置、bはB軸の指令位置である。加えて、[数4]のc2はC2軸の指令位置、wはW軸の指令位置、zはZ軸の指令位置、ysはYs軸の指令位置、xはX軸の指令位置、bはB軸の指令位置である。
さらにステップS23では、複合加工旋盤1に幾何誤差が存在する場合、各幾何誤差を各軸間の相対誤差と考え、記憶手段27に記憶されている各幾何誤差の並進誤差δx,δy,δzや回転誤差α,β,γを用いた[数5]のマトリックスεjkが、幾何誤差による変換行列になる。このマトリックスεjkを[数3]の各軸間に配置した[数6]を用いることにより、幾何誤差がある場合の工具座標系から幾何誤差がある場合の軸構成1における工作物座標系への同次座標変換を行う。これにより、幾何誤差がある場合の軸構成1における工作物座標系での工具先端点ベクトルWPG1を算出する。これに加えて、マトリックスεjkを[数4]の各軸間に配置した[数7]を用いることにより、幾何誤差がある場合の工具座標系から幾何誤差がある場合の軸構成2における工作物座標系への同次座標変換を行う。これにより、幾何誤差がある場合の軸構成2における工作物座標系での工具先端点ベクトルWPG2を算出する。なお、マトリックスεjkの第1添え字jは軸構成番号(ここでは1又は2)を示し、マトリックスεjkの第2添え字kは、幾何誤差が存在する軸間を工具10から工作物に向けた順番を示している。
続いてステップS23では、[数8]を用いることにより、工作物座標系での工具先端点の位置誤差Δejを算出する。上述のステップS22において、軸構成1を使用すると判別した場合には、ステップS23では、[数8]を用いることにより、[数6]により算出した工具先端点ベクトルWPG1と[数3]により算出した工具先端点ベクトルWPI1との差分から、軸構成1における工作物座標系での工具先端点の位置誤差Δe1を算出する。一方、ステップS22において、軸構成2を使用すると判別した場合には、ステップS23では、[数8]を用いることにより、[数7]により算出した工具先端点ベクトルWPG2と[数4]により算出した工具先端点ベクトルWPI2との差分から、軸構成2における工作物座標系での工具先端点の位置誤差Δe2を算出する。さらにステップS22において、軸構成1,2の双方を使用すると判別した場合には、ステップS23では、前記位置誤差Δe1及び前記位置誤差Δe2を算出する。ステップS23において算出した位置誤差Δe1及び位置誤差Δe2は、記憶手段27に記憶される。以上により、ステップS23が終了する。
また、上述のステップS22において、軸構成1,2のいずれか一方を使用しないと判別した場合には、指令値生成手段22は、ステップS24において、使用しない軸構成における工具先端点位置の誤差が零に設定あるいは前回の誤差を保持するように決定される。前回の誤差とは、ステップS22において軸構成1,2のいずれか一方を使用しないと判別した時点で記憶手段27に記憶されている位置誤差Δe1、位置誤差Δe2を意味する。このステップS24を行うことにより、工作物の加工に使用しない並進軸に関しては、工作物座標系での工具先端点の位置誤差Δejの算出を省略できる。なお、ステップS24は本発明の誤差決定ステップの一例である。また、指令値生成手段22は本発明の誤差決定手段の一例である。さらに、ステップS22において使用しないと判別された軸構成1,2は、本発明の工作物の加工に使用しない軸構成の一例である。
ステップS20の後には、指令値生成手段22が、ステップS30において、全ての軸構成での並進軸における工具先端点位置の誤差の算出が終了したか否かを判定する。ここでは、記憶手段27に、上述のステップS22において使用すると判別した軸構成に対応する位置誤差Δe1や位置誤差Δe2が記憶されているか否かを判定する。ステップS30において、記憶手段27に前記軸構成に対応する位置誤差Δe1や位置誤差Δe2が記憶されていないと判定して、全ての軸構成での工具先端点位置の誤差の算出が終了していない判定した場合には、ステップ20を実行する。
一方ステップS30において、全ての軸構成での並進軸における工具先端点位置の誤差の算出が終了したと判定した場合には、指令値生成手段22は、ステップS40において以下に説明するように、並進軸における工具先端点位置の誤差を工作物座標系から仮想直交座標系に変換すると共に、該誤差を補正する補正値を仮想直交座標系に変換する。仮想直交座標系とは、図2の例に示すように、2つの並進軸X軸・Z軸と仮想的に設定されたY軸とが互いに直交する座標系である。ステップS40では、[数2]に示した回転変換行列を含む[数9]を用いることにより、前記工作物座標系から仮想直交座標系への同次変換を行う。これにより、前記誤差を打ち消す仮想直交座標系での並進軸の補正値ベクトルΔCompj′を算出する。[数9]中のjは軸構成番号(ここでは1又は2)を示し、θは、Ys軸がY軸に対してなす傾き角度を示す。また、j=1の場合にはmは回転軸C1の指令位置を示し、j=2の場合にはmは回転軸C2の指令位置を示す。上述のステップS22において、軸構成1を使用すると判別した場合には、ステップS40では、[数9]を用いることにより、軸構成1における仮想直交座標系での並進軸の補正値ベクトルΔComp1′を算出する。一方、ステップS22において、軸構成2を使用すると判別した場合には、ステップ40では、[数9]を用いることにより、軸構成2における仮想直交座標系での並進軸の補正値ベクトルΔComp2′を算出する。さらにステップS22において、軸構成1,2の双方を使用すると判別した場合には、ステップ40では、前記補正値ベクトルΔComp1′及び前記補正値ベクトルΔComp2′を算出する。なお、図2に示すY軸の軸方向は本発明の所定の基準方向の一例であり、Ys軸は、本発明の互いに直交しない2軸以上の並進軸に含まれる並進軸の一例である。また図2に示す角度θは、本発明の傾き角度の一例であり、図2に示すXYZ座標系は、本発明の一の仮想直交座標系及び任意の仮想直交座標系の一例である。さらに、ステップS40は本発明の変換ステップの一例であり、指令値生成手段22は本発明の変換手段の一例である。
ステップS40の後には、指令値生成手段22は、ステップS50において以下に説明するように、ステップS40にて仮想直交座標系に変換した並進軸における補正値を、並進軸(X軸・Ys軸・Z軸)の指令値の座標系である指令値座標系に変換する。本実施形態の軸構成1では、工作物側の最初の回転軸であるC1軸と並進軸であるZ軸との間に指令値座標系があり、軸構成2では、工作物側の最初の回転軸であるC2軸と並進軸であるW軸との間に指令値座標系がある。ステップS50では、Y軸に対してYs軸が角度θだけ傾いた並進軸の関係を示す変換行列を含む[数10]を用いることにより、前記仮想直交座標系から指令値座標系への同次変換を行う。これにより、ステップS40にて算出した補正値ベクトルΔCompj′を指令値座標系に変換した補正値ベクトルΔCompjを算出する。上述のステップS22において、軸構成1を使用すると判別した場合には、ステップS50では、[数10]を用いることにより、軸構成1における指令値座標系での補正値ベクトルΔComp1を算出する。一方、ステップS22において、軸構成2を使用すると判別した場合には、ステップS50では、[数10]を用いることにより、軸構成2における指令値座標系での補正値ベクトルΔComp2を算出する。さらにステップS22において、軸構成1,2の双方を使用すると判別した場合には、ステップS50では、前記補正値ベクトルΔComp1及び前記補正値ベクトルΔComp2を算出する。なお、ステップS50は本発明の補正値算出ステップの一例であり、指令値生成手段22は本発明の補正値算出手段の一例である。
ステップS50の後には、指令値生成手段22が、ステップS60において、指令値座標系における回転軸であるC軸(C1軸・C2軸)・B軸の補正値を算出する。ステップS60では、[数11]を用いることにより、指令値座標系におけるC軸の補正値ΔCcj、指令値座標系におけるB軸の補正値ΔCbjをそれぞれ算出する。上述のステップS22において、軸構成1を使用すると判別した場合には、ステップS60では、[数11]を用いることにより、軸構成1における指令値座標系でのC1軸の補正値ΔCc1及びB軸の補正値ΔCb1を算出する。一方、ステップS22において、軸構成2を使用すると判別した場合には、ステップS60では、[数11]を用いることにより、軸構成2における指令値座標系でのC2軸の補正値ΔCc2及びB軸の補正値ΔCb2を算出する。さらにステップS22において、軸構成1,2の双方を使用すると判別した場合には、ステップS60では、前記補正値ΔCc1、ΔCc2及び前記補正値ΔCb1、ΔCb2を算出する。
ステップS60の後には、指令値生成手段22が、ステップS70において、ステップS50にて指令値座標系に変換した並進軸における補正値の良否、ステップS60にて算出した指令値座標系における回転軸の補正値の良否をそれぞれ確認する。ステップS70では、各補正値が予め設定した上限閾値を上回るか、あるいは各補正値が予め設定した下限閾値を下回るかを確認する。そして、各補正値が前記上限閾値を上回らず前記下限閾値を下回らないことを確認した後に、この各補正値を記憶手段27に記憶する。一方、各補正値が前記上限閾値を上回るあるいは前記下限閾値を下回ることを確認した場合には、この各補正値を記憶手段27に記憶しないと共に複合加工旋盤1に設けられたランプを発光させることにより、ユーザに補正値の異常を知らせるようにしている。
ステップS70の後には、指令値生成手段22が、ステップS80において、各軸(並進軸及び回転軸)の指令値を更新する。ステップS80では、ステップS10にて取得して記憶手段27に記憶された並進軸の指令値に、ステップS70にて記憶手段27に記憶された並進軸の補正値を加算する。このようにして、並進軸(X軸・Ys軸・Z軸・W軸)の指令値が更新される。これに加えてステップS80では、ステップS10にて取得して記憶手段27に記憶された回転軸の指令値に、ステップS70にて記憶手段27に記憶された回転軸の補正値を加算する。このようにして、回転軸(B軸・C1軸・C2軸)の指令値が更新される。なお、ステップS80は本発明の更新ステップの一例であり、指令値生成手段22は本発明の更新手段の一例である。
<本実施形態の効果>
本実施形態の複合加工旋盤1の制御方法及び制御装置では、指令値生成手段22が、ステップS40において、幾何誤差による並進軸における工作物に対する工具10の先端点の位置誤差Δej及びこの位置誤差Δejを補正する補正値ベクトルΔCompj′を、工作物座標系から一旦仮想直交座標系に同次座標変換した後に、ステップS50において、この仮想直交座標系に同次座標変換した補正値ベクトルΔCompj′を、並進軸の指令値座標系に同次変換変換するだけの簡単な手法により、指令値座標系において前記位置誤差Δejを補正する補正値(補正値ベクトルΔCompj)を算出できる。そのうえで、ステップS80において、該算出した補正値を、並進軸(X軸・Ys軸・Z軸・W軸)を制御するための指令値に加算するという簡単な手法によって、前記指令値を更新できる。よって、これらの簡単な手法を組み合わせることにより、互いに直交しない2軸以上の並進軸(X軸・Ys軸・Z軸)を備えた複合加工旋盤1での幾何誤差を補正して該並進軸の指令値を算出することが可能になる。
本実施形態の複合加工旋盤1の制御方法及び制御装置では、指令値生成手段22が、ステップS40において、幾何誤差による並進軸における工作物に対する工具10の先端点の位置誤差Δej及びこの位置誤差Δejを補正する補正値ベクトルΔCompj′を、工作物座標系から一旦仮想直交座標系に同次座標変換した後に、ステップS50において、この仮想直交座標系に同次座標変換した補正値ベクトルΔCompj′を、並進軸の指令値座標系に同次変換変換するだけの簡単な手法により、指令値座標系において前記位置誤差Δejを補正する補正値(補正値ベクトルΔCompj)を算出できる。そのうえで、ステップS80において、該算出した補正値を、並進軸(X軸・Ys軸・Z軸・W軸)を制御するための指令値に加算するという簡単な手法によって、前記指令値を更新できる。よって、これらの簡単な手法を組み合わせることにより、互いに直交しない2軸以上の並進軸(X軸・Ys軸・Z軸)を備えた複合加工旋盤1での幾何誤差を補正して該並進軸の指令値を算出することが可能になる。
また指令値生成手段22は、ステップS40において、回転変換行列を含む[数9]を用いた計算を行うことにより、互いに直交しない2軸以上の並進軸(X軸・Ys軸・Z軸)に含まれる並進軸であるYs軸がY軸の軸方向に対してなす傾き角度θを特定したうえで、工作物座標系から仮想直交軸座標系に、工具10の先端点の位置誤差Δej及びこの位置誤差Δejを補正する補正値(補正値ベクトルΔCompj′)を同次座標変換することが可能になる。
さらに指令値生成手段22は、ステップS50において、ステップS22にて工作物の加工に実際に使用すると判別した軸構成1におけるZ軸・Ys軸・X軸や軸構成2におけるW軸・Z軸・Ys軸・X軸に対応させて、工具10の先端点の位置誤差Δejを補正する補正値(補正値ベクトルΔCompj)を算出することが可能になる。
加えて指令値生成手段22は、ステップS22にて工作物の加工に軸構成1,2のいずれか一方を使用しないと判別した場合には、ステップS24において、使用しない軸構成における工具10の先端点の位置誤差Δejが零に設定あるいは前回の誤差を保持するように決定される。これにより、工作物の加工に使用しない軸構成1又は2に関しては、工作物座標系での前記位置誤差Δejの算出を省略できる。よって、この位置誤差Δejを算出する際の計算負荷を下げることができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。上述した実施形態では、本発明を複合加工旋盤1に適用する例を示したが、これに限らず、例えば4軸以上のマシニングセンタや、複数の刃物台と複数の主軸台とを備えた複合加工旋盤に、本発明を適用してもよい。
1・・複合加工旋盤、2・・主軸頭、6・・第1主軸台、8・・第2主軸台、10・・工具、20・・数値制御装置、22・・指令値生成手段、27・・記憶手段。
Claims (10)
- 工具を装着する主軸と、工作物を保持するテーブルとが、互いに直交しない2軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とによって相対移動することにより、前記工具によって前記工作物を加工する工作機械において、幾何学的な誤差による前記工作物に対する前記工具の位置の誤差を、前記幾何学的な誤差を考慮した工具座標系から工作物座標系への同次座標変換により求めた前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と、前記幾何学的な誤差を考慮しない工具座標系から工作物座標系への同次座標変換により求めた理想的な前記工具の位置と、から算出し、前記誤差を補正して前記並進軸を制御するための指令値を算出する工作機械の制御方法であって、
前記工作物座標系から前記2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定された仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差を前記仮想直交座標系に変換すると共に、該誤差を補正する補正値を該仮想直交座標系に変換する変換ステップと、
前記変換ステップによって前記仮想直交座標系に変換した前記補正値を、前記仮想直交座標系から前記並進軸の指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出する補正値算出ステップと、
前記補正値算出ステップによって算出した前記補正値を、前記並進軸を制御するための指令値に加算することにより、前記指令値を更新する更新ステップと、
を実行することを特徴とする工作機械の制御方法。 - 前記変換ステップでは、前記互いに直交しない2軸以上の並進軸に含まれる並進軸が所定の基準方向に対してなす傾き角度を考慮して、前記誤差及び前記補正値を、前記工作物座標系から前記仮想直交座標系へ同次座標変換することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の制御方法。
- 前記2軸以上の並進軸に含まれる任意の並進軸及び前記1軸以上の回転軸に含まれる任意の回転軸を有する任意の軸構成を選択可能な選択ステップを実行し、
前記変換ステップでは、前記工作物座標系から前記選択ステップによって選択した前記任意の軸構成に含まれる任意の2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定された任意の前記仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差及び前記補正値を前記任意の仮想直交座標系に変換し、
前記補正値算出ステップでは、前記変換ステップによって前記任意の仮想直交座標系に変換した前記補正値を、該任意の仮想直交座標系から前記指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械の制御方法。 - 前記任意の並進軸を前記工作物の加工に実際に使用する前記並進軸とし、前記任意の回転軸を該加工に実際に使用する前記回転軸として、
前記選択ステップでは、前記工作物の加工に実際に使用する並進軸及び前記加工に実際に使用する回転軸を有する使用軸構成を判別する判別情報に基づいて、前記2軸以上の並進軸に含まれる該並進軸及び前記1軸以上の回転軸に含まれる該回転軸を有する軸構成の中に前記使用軸構成が存在するか否かを判別して、該判別した使用軸構成を前記任意の軸構成として選択し、
前記変換ステップでは、前記工作物座標系から前記選択ステップによって選択した前記使用軸構成に含まれる2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定されて前記任意の仮想直交座標系に含まれる一の仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差及び前記補正値を前記一の仮想直交座標系に変換し、
前記補正値算出ステップでは、該変換ステップによって前記一の仮想直交座標系に変換した前記補正値を、該一の仮想直交座標系から前記指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出することを特徴とする請求項3に記載の工作機械の制御方法。 - 前記選択ステップにより、前記軸構成の中に前記工作物の加工に使用しない前記軸構成が存在すると判別したときに、前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と前記理想的な前記工具の位置とから算出する前記誤差が、前回の誤差を保持あるいは零に設定するように決定される誤差決定ステップを実行することを特徴とする請求項4に記載の工作機械の制御方法。
- 工具を装着する主軸と、工作物を保持するテーブルとが、互いに直交しない2軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とによって相対移動することにより、前記工具によって前記工作物を加工する工作機械において、幾何学的な誤差による前記工作物に対する前記工具の位置の誤差を、前記幾何学的な誤差を考慮した工具座標系から工作物座標系への同次座標変換により求めた前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と、前記幾何学的な誤差を考慮しない工具座標系から工作物座標系への同次座標変換により求めた理想的な前記工具の位置と、から算出し、前記誤差を補正して前記並進軸を制御するための指令値を算出する工作機械の制御装置であって、
前記工作物座標系から前記2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定された仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差を前記仮想直交座標系に変換すると共に、該誤差を補正する補正値を該仮想直交座標系に変換する変換手段と、
前記変換手段によって前記仮想直交座標系に変換した前記補正値を、前記仮想直交座標系から前記並進軸の指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出する補正値算出手段と、
前記補正値算出手段によって算出した前記補正値を、前記並進軸を制御するための指令値に加算することにより、前記指令値を更新する更新手段と、
を備えることを特徴とする工作機械の制御装置。 - 前記変換手段は、前記互いに直交しない2軸以上の並進軸に含まれる並進軸が所定の基準方向に対してなす傾き角度を考慮して、前記誤差及び前記補正値を、前記工作物座標系から前記仮想直交座標系へ同次座標変換することを特徴とする請求項6に記載の工作機械の制御装置。
- 前記2軸以上の並進軸に含まれる任意の並進軸及び前記1軸以上の回転軸に含まれる任意の回転軸を有する任意の軸構成を選択可能な選択手段を備え、
前記変換手段は、前記工作物座標系から前記選択手段によって選択した前記任意の軸構成に含まれる任意の2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定された任意の前記仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差及び前記補正値を前記任意の仮想直交座標系に変換し、
前記補正値算出手段は、前記変換手段によって前記任意の仮想直交座標系に変換した前記補正値を、該任意の仮想直交座標系から前記指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出することを特徴とする請求項6又は7に記載の工作機械の制御装置。 - 前記任意の並進軸を前記工作物の加工に実際に使用する前記並進軸とし、前記任意の回転軸を該加工に実際に使用する前記回転軸として、
前記加工に実際に使用する並進軸及び前記加工に実際に使用する回転軸を有する使用軸構成を判別する判別情報を記憶する記憶手段を備え、
前記選択手段は、前記記憶手段に記憶された前記判別情報に基づいて、前記2軸以上の並進軸に含まれる該並進軸及び前記1軸以上の回転軸に含まれる該回転軸を有する軸構成の中に前記使用軸構成が存在するか否かを判別して、該判別した使用軸構成を前記任意の軸構成として選択し、
前記変換手段は、前記工作物座標系から前記選択手段によって選択した前記使用軸構成に含まれる2軸以上の並進軸が互いに直交するように仮想的に設定されて前記任意の仮想直交座標系に含まれる一の仮想直交座標系への同次座標変換により、前記誤差及び前記補正値を前記一の仮想直交座標系に変換し、
前記補正値算出手段は、前記変換手段によって前記一の仮想直交座標系に変換した前記補正値を、該一の仮想直交座標系から前記指令値座標系へ同次座標変換することにより、前記指令値座標系における補正値を算出することを特徴とする請求項8に記載の工作機械の制御装置。 - 前記選択手段が、前記軸構成の中に前記工作物の加工に使用しない前記軸構成が存在すると判別したときに、前記幾何学的な誤差がある場合の前記工具の位置と前記理想的な前記工具の位置とから算出する前記誤差が、前回の誤差を保持あるいは零に設定するように決定される誤差決定手段を備えることを特徴とする請求項9に記載の工作機械の制御装置。
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