以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
[診断方法の構成例]
本発明に係る診断方法は、診断対象となる機器またはシステムの故障部位を特定可能とする方法であって、その具体的な構成は特に限定されない。本実施の形態1では、代表的な診断方法の一例について、図1〜図6を参照して具体的に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る診断方法は、少なくとも五つのステップを有する構成となっている。図1では、各処理を長方形の枠で図示し、各処理で用いられる情報等または各処理により得られる情報等を略楕円状の枠で図示している。図1に示す診断方法を実施するに当たり、診断対象(機器またはシステム)は、予め複数の単位部位に区分されている。診断対象に対しての診断試験を予め行うことにより複数の診断結果を得てもよいし、後述する、想定される試験結果に対する記入版星取表を得た後に、診断結果を得てもよい。
診断対象を区分した単位部位について説明すると、まず、図2に示すように、診断対象30は、上位の単位部位である複数の故障特定単位部位31に区分される。この故障特定単位部位31は、診断対象30についての故障を特定するための基本的な単位部位として区分される。図2に示す模式的な例では、診断対象30は、第一の故障特定単位部位31Aと第二の故障特定単位部位31Bとの2つの故障特定単位部位31に区分される。
さらに、それぞれの故障特定単位部位31は、少なくとも一つの判定単位部位32に区分される。判定単位部位32は、故障特定単位部位31から見て下位の単位部位であって、当該故障特定単位部位31を種々の条件に基づいて区分した単位部位である。また、故障特定単位部位31は、区分の条件に応じて二つ以上(複数)に区分されてもよいし、故障特定単位部位31そのものが判定単位部位32であってもよい。つまり、故障特定単位部位31は複数に区分されずに、判定単位部位32として取り扱われてもよい。
図2に示す模式的な例では、第一の故障特定単位部位31Aは、三つの判定単位部位32A,32B,32Cに区分されているが、第二の故障特定単位部位31Bは、一つの判定単位部位32Dとして区分(すなわち第二の故障特定単位部位31Bが判定単位部位32Dに相当)する。
故障特定単位部位31を判定単位部位32に区分する条件は特に限定されず、診断対象30の種類、ハードウェア構成、診断試験の内容等に応じて適宜設定される。本実施の形態では、故障特定単位部位31の機能が区分の条件であるので、判定単位部位32は、故障特定単位部位31が有する機能に基づいた単位部位として区分されている。
このように診断対象30が、複数の故障特定単位部位31に区分され、これら故障特定単位部位31が判定単位部位32に区分されていれば、それぞれの判定単位部位32に関する診断試験(例えば、当該診断対象30が有する複数の機能についての試験等)が行われる。これにより、個々の判定単位部位32について少なくとも一つの試験結果が取得される。具体的な診断試験の内容(診断項目)については特に限定されず、診断対象30の種類、用途、ハードウェア構成等に応じて適宜設定される。
本実施の形態に係る診断方法では、前記の通り、診断対象30を複数の単位部位に予め区分するとともに、各単位部位について試験結果を想定し、図1に示すように単位部位と想定される試験結果とを関連付ける関連化処理(ステップS101)を行う。
具体的には、図2に示す例であれば、診断対象30に対して三つの診断項目(項目A,B,C)で診断試験が行われるとしたときに、各診断項目について想定し得る全ての試験結果(想定試験結果)を導き出す。例えば、項目Aについての診断試験では、想定試験結果として結果A1およびA2が導き出され、項目Bについての診断試験では、想定試験結果として結果B1およびB2が導き出され、項目Cについての診断試験では、想定試験結果として結果C1,C2,およびC3が導き出されるとする。ここで、診断対象30は、二つの故障特定単位部位31に区分され、四つの判定単位部位32に区分されている。そこで、四つの判定単位部位32に対して、各想定試験結果を関連付ける。
本実施の形態では、図1および図2に示すように、試験結果−単位部位対応表を用いて、想定試験結果と判定単位部位32とが関連付けられる。なお、説明の便宜上、試験結果−単位部位対応表を以下「星取表(score table)」と称する。また、関連化処理で得られる星取表は、図2に示すように、判定結果の記入欄は空欄となっている。このような星取表を便宜上「未記入版星取表」と称する。
次に、図1に示すように、それぞれの判定単位部位32に対して関連付けられた試験結果に基づいて、当該判定単位部位32の故障状態を予備的に判定する予備的判定処理(ステップS102)を行う。本実施の形態では、予備的な判定を行うために、故障状態の可能性に基づいて複数の状態が予め設定されている。本実施の形態では、複数の状態としては、図3に示すように、少なくとも、故障している状態(記号:×)、故障していない状態(記号:OK)、故障している可能性がある状態(記号:△)、および、情報無しまたは不十分の状態(記号:−)という四つの状態が設定されている。
故障している状態とは、対象となる判定単位部位32が確実に故障していることを意味し、故障していない状態とは、対象となる判定単位部位32が確実に故障していない(すなわち正常に動作する)ことを意味する。以下の説明では、故障している状態、故障していない状態、故障している可能性がある状態、および、情報無しまたは不十分の状態のいずれも、基本的には記号(“×”、“OK”、“△”、および“−”)で略記する。
さらに、本実施の形態では“△”(故障している可能性がある状態)を、故障発生確度に応じた複数の段階に区分している。具体的には、図3に示すように、“△”は、故障発生確度が高い状態である“△H”、故障発生確度が中程度の状態である“△M”、故障発生確度が低い状態である“△L”、および故障発生確度が極めて低い状態である“△VL”の四つの状態に区分している。なお、“△”の区分は、この四段階に限定されず、三段階以下であってもよいし、五段階以上であってもよい。
予備的判定処理の詳細について模式的な一例を挙げて説明する。前述した関連化処理によって、想定試験結果を判定単位部位に関連付けた未記入版星取表が得られる(図2参照)ので、各判定単位部位についての想定試験結果がどのような状態となるか、予備的な判定を行い、図3に示すように未記入版星取表の空欄を埋めていく。なお、図4に示す例では、説明の便宜上、“△”を前記のように四段階で区分せずに図示している。また、空欄が埋められた星取表を便宜上「記入版星取表」と称する。
図4に示す想定される試験結果に対応する記入版星取表のうち、試験項目Aについて見ると、想定試験結果A1およびA2があり得るが、試験結果A1における予備的判定処理では、判定単位部位32Aが“−”と判定され、判定単位部位32Bが“OK”と判定され、判定単位部位32Cが“−”と判定され、判定単位部位32Dが“×”と判定される。また、試験結果A2における予備的判定処理では、判定単位部位32Aが“−”と判定され、判定単位部位32Bが“OK”と判定され、判定単位部位32Cが“−”と判定され、判定単位部位32Dが“−”と判定される。なお、記入版星取表において、試験項目Bおよび試験項目Cについては詳細な説明を省略する。
このような予備的判定処理により未記入版星取表が埋められて記入版星取表が完成することで、全ての判定単位部位32について、全ての想定試験結果の予備的判定が完了する。これにより、図4に示すように、想定される試験結果に対応する記入版星取表の予備的判定結果が得られる。
次に、図3および図4に示すように、実際に得られた試験結果と想定される試験結果に対応する記入版星取表の予備的判定結果から、実際に得られた試験結果に該当する予備的判定結果を抽出する予備的判定結果抽出処理(ステップS103)を行う。なお、抽出される予備的判定結果のみで構成される星取表を便宜上「抽出版星取表」と称する。
図4に示す例では、図中左上にまとめているように、項目Aについて実際に得られた試験結果が結果A1であり、項目Bについて実際に得られた試験結果が結果B1であり、項目Cについて実際に得られた試験結果が結果C3である。そこで、図中右上に示す記入版星取表から結果A1、結果B1、および結果C3の予備的判定結果を抽出し、抽出版星取表(実際に得られた試験結果部分を全て抽出した予備的判定結果)を取得する。
このようにして得られた、実際に得られた試験結果部分を抽出した記入版星取表の予備的判定結果に基づいて、図1に示すように、第一段階の論理判定処理(ステップS104)が行われる。この第一段階の論理判定処理では、予備的判定結果が得られた判定単位部位32についての故障を判定する。本実施の形態では、便宜上、この論理判定処理を「判定単位部位別論理判定処理」と称する。
第一段階の論理判定処理によって、図1に示すように、判定単位部位32の判定結果が得られるので、この判定結果に基づいて、図1に示すように、第二段階の論理判定処理(ステップS105)が行われる。この第二段階の論理判定処理では、故障特定単位部位31に属する全て判定単位部位32の判定結果に基づいて、当該故障特定単位部位31の故障が判定される。本実施の形態では、便宜上、この論理判定処理を「故障特定単位部位別論理判定処理」と称する。言い換えると、本実施の形態では、予備的判定処理の後には、判定単位部位32を対象とする第一段階の論理判定処理が行われ、さらにその後には、故障特定単位部位31を対象とする第二段階の論理判定処理が行われる。
第一段階および第二段階の論理判定処理について具体的に説明する。まず、判定単位部位別論理判定処理(第一段階の論理判定処理)では、前記の各状態の優先順位に基づいて、それぞれの判定単位部位32について判定が行われる。本実施の形態では、図5に示すように、前記四つの状態のうち、“×”が最も優先度が高く、次いで“OK”の優先度が高く、次いで“△”の優先度が高く、“−”の優先度が最も低い(×>OK>△>−)。
したがって、任意の判定単位部位32について得られた全ての予備的判定結果の中に少なくとも一つの“×”の予備的判定結果が含まれているときには、その判定単位部位32が故障部位であると判定される。例えば、図4に示す例では、判定単位部位32Dの予備的判定結果のうち結果A1が“×”と判定されているので、判定端部位32Dは故障部位であると判定される。
これに対して、任意の判定単位部位32の全ての予備的判定結果の中に“×”の予備的判定結果が含まれておらず、かつ、“OK”の予備的判定結果が含まれているときには、その判定単位部位32が正常であると判定される。例えば、図4に示す例では、判定単位部位32Bの予備的判定結果には“×”が含まれておらず、結果A1および結果B1が“OK”と判定されているので、判定単位部位32Bは正常であると判定される。同様に判定単位部位32Cの予備的判定結果には“×”が含まれておらず、結果C3が“OK”と判定されているので、判定単位部位32Cは正常であると判定される。
さらに、任意の判定単位部位32の全ての予備的判定結果の中に“×”および“OK”の予備的判定結果がいずれも含まれておらず、かつ、“△”の予備的判定結果が含まれているときには、その判定単位部位32が故障の可能性がある疑故障部位であると判定される。例えば、図4に示す例では、判定単位部位32Aの予備的判定結果には、“×”も“OK”も含まれておらず、結果B1が“△”と判定されているので、判定単位部位32Aは疑故障部位であると判定される。
また、図3に示すように、本実施の形態では、“△”は複数の段階に区分されているが、これら複数の段階の“△”は、故障発生確度を基準として優先順位が設定され、論理判定処理では、優先順位の上位となる段階の“△”に基づいて判定がなされればよい。例えば、本実施の形態では、故障発生確度の高い段階の状態が優先されるように優先順位が設定されている。したがって、本実施の形態における四段階の“△”の優先度は、上から順に“△H”、“△M”、“△L”および“△VL”となる(△H>△M>△L>△VL)。
したがって、本実施の形態では、任意の判定単位部位32の全ての予備的判定結果に“×”および“OK”の予備的判定結果がなく“△”の予備的判定結果が複数含まれている場合には、その判定単位部位32が疑故障部位であることを判定する際に、故障発生確度の高い段階に分類された予備的判定結果が優先される。
具体的には、例えば、全ての予備的判定結果に“△H”の予備的判定結果が一つ含まれ、“△M”の予備的判定結果が二つ含まれている場合には、“△H”の予備的判定結果が優先される。それゆえ、当該判定単位部位32は、疑故障部位である可能性が高いと判定される。また、例えば、全ての予備的判定結果に“△L”が一つのみ含まれ、“△VL”が多数含まれている場合でも、“△L”の予備的判定結果が優先される。それゆえ、当該判定単位部位32は、可能性は低いものの疑故障部位であると判定され、疑故障部位の可能性が極めて低いとは判定されない。なお、図4では、“△”が区分されていない簡単な例を図示しているので、この“△”の判定に関しては、後述するように、より具体的な例を挙げて説明する。
次に、故障特定単位部位別論理判定処理(第二段階の論理判定処理)では、前述した第一段階の論理判定処理により得られた判定単位部位32の判定結果に基づいて、故障特定単位部位31の故障について判定を行う。第一段階の論理判定処理により得られる判定結果を、便宜上「第一判定結果」とし、一つの故障特定単位部位31に属する全ての判定単位部位32の判定結果を、便宜上、「全第一判定結果」と略せば、全第一判定結果に“×”の第一判定結果が含まれているときには、当該故障特定単位部位31が故障部位であると判定する。この“×”を含む場合は、第一段階の論理判定処理と同様である。
一方、全第一判定結果に“×”の第一判定結果が含まれていない場合には、第一段階とは異なる判定を行う。すなわち、“×”の第一判定結果が含まれておらず“△”の第一判定結果が含まれていれば、その故障特定単位部位31が疑故障部位であると判定する。また、全第一判定結果が“OK”である場合には、その故障特定単位部位31が正常部位であると判定する。したがって、第一段階の論理判定処理では“△”よりも“OK”が優先されるが、第二段階の論理判定処理では“OK”よりも“△”が優先されることになる。
このような第二段階の論理判定処理の具体的な一例としては、図6に示すフローチャートの構成を挙げることができる。ここで、第一段階の論理判定処理の判定結果を、便宜上「第一判定結果」と称することに伴い、第二段階の論理判定処理の判定結果を、便宜上「第二判定結果」と称する。図6に示すように、まず、判定の対象となる故障特定単位部位31における全第一判定結果に“×”の第一判定結果が含まれているか否か(第一判定結果が“×”の判定単位部位32が含まれているか否か)を判定する(ステップS201)。“×”の第一判定結果が含まれていれば(ステップS201でYES)、当該故障特定単位部位31の判定結果(第二判定結果)が“×”である(すなわち故障部位である)と判定され(ステップS202)、この処理を終了する。
一方、全第一判定結果に“×”の第一判定結果が含まれていない場合には(ステップS201でNO)、“△”の第一判定結果が含まれているか否かを判定する(ステップS203)。“△”の第一判定結果が含まれていれば(ステップS203でYES)、当該故障特定単位部位31の判定結果(第二判定結果)が“△”(すなわち疑故障部位である)と判定され(ステップS204)、この処理を終了する。
さらに、全第一判定結果に“×”の第一判定結果も“△”の第一判定結果も含まれていない場合には(ステップS203でNO)、故障特定単位部位31の全第一判定結果が“OK”であるか否かを判定する(ステップS205)。全て“OK”であれば、当該故障特定単位部位31の判定結果(第二判定結果)が“OK”である(すなわち正常部位である)と判定され(ステップS206)、この処理を終了する。一方、全第一判定結果が“OK”でなければ(ステップS205でNO)、当該故障特定単位部位31の判定結果(第二判定結果)が“−”である(すなわち情報無しまたは不十分の状態である)と判定され(ステップS207)、この処理を終了する。
なお、図6に示す第二段階の論理判定処理では、ステップS205において、全ての判定単位部位32の判定結果(全第一判定結果)が“OK”であるか否かを判定しているが、このステップS205の判定は、判定単位部位32の機能喪失に対する判定結果である場合を指している。後述するように、判定単位部位32の故障には、機能喪失だけでなく異常作動も含まれる。ステップS205の判定において、基準となる第一判定結果が機能喪失であれば、全第一判定結果が“OK”であるか否かを判定すればよいが、基準となる第一判定結果が異常作動であれば、全第一判定結果が“−”であるか否かを判定すればよい。つまり、図6のステップS205においては、説明の便宜上、判定単位部位32の第一判定結果が機能喪失である場合の判定例を示しているが、このステップの判定には、判定単位部位32の第一判定結果が異常作動である場合も含まれる。
このように本実施の形態では、関連化処理(ステップS101)において、試験項目に基づいて想定される複数の想定試験結果(診断項目)は、各判定単位部位32に対応して関連付けられ、星取表(試験結果−単位部位対応表)にまとめられる。その後、それぞれの判定単位部位32において、想定試験結果についての予備的判定処理(ステップS102)が行われた後に、実際に得られた試験結果に該当する予備的判定結果抽出処理(ステップS103)が行われることによって、各判定単位部位32について実際の試験結果に対応する予備的判定結果が得られる。その後、予備的判定結果に基づいて、第一段階として、判定単位部位32についての論理判定処理(ステップS104)が行われ、第一判定結果が得られる。さらにその後、第二段階として、判定単位部位32から見て上位の単位部位に当たる、故障特定単位部位31について論理判定処理が行われ、第二判定結果が得られる。そして、図1に示すように、診断対象30に属する全ての故障特定単位部位31について第二判定結果が得られれば、診断対象30の診断結果が得られることになる。
ここで、本実施の形態に係る診断方法を実施するに当たって、関連化処理および予備的判定処理は事前に行っておけばよい。したがって、診断対象30を診断するに当たって毎回必ず実施されるステップは、少なくとも、実際の試験、予備的判定結果抽出処理、第一段階の論理判定処理(判定単位部位別論理判定処理)および第二段階の論理判定処理(故障特定単位部位別論理判定処理)であればよい。関連化処理および予備的判定処理を事前に行ってから、実際の試験、予備的判定結果抽出処理、並びに、第一段階および第二段階の論理判定処理を行うことで、診断対象30について網羅的な判断が可能になる。
[診断対象および単位部位の具体例]
次に、本実施の形態において、診断対象30を単位部位(故障特定単位部位31および判定単位部位32)に区分した場合の具体例について、図7を参照して具体的に説明する。本実施の形態では、例えば、診断対象30となる機器が、図7に模式的に示す構成の制御パネル50であるとする。
この制御パネル50は、ディスプレイ51、CPUモジュール52、キー53、および電源モジュール54、並びに、各種配線等を備えている。ディスプレイ51、CPUモジュール52、キー53、電源モジュール54および各種配線は、いずれも制御パネル50のハードウェアに基づく構成であるとともに、制御パネル50の機能単位となっている。そこで、本実施の形態では、ディスプレイ51、CPUモジュール52、キー53、電源モジュール54および各種配線等を、制御パネル50の故障特定単位部位31として区分する。
これら故障特定単位部位31は、前述したように、少なくとも一つの判定単位部位32に区分される。まず、ディスプレイ51は、図7に示すように、個別チャネル511とディスプレイ共通部512とに区分することができる。したがって、故障特定単位部位31であるディスプレイ51は、個別チャネル511およびディスプレイ共通部512という、二つの判定単位部位32に区分される。
ここで、本実施の形態では、故障特定単位部位31に複数の機能が含まれている場合には、複数の同種の機能に共通する要素をまとめて一つの判定単位部位32として区分することができる。また、複数の同種の機能それぞれに個別の要素もまとめて一つの判定単位部位32として区分することができる。前者の判定単位部位32を、便宜上「共通機能部」と称し、後者の判定単位部位32を、便宜上「個別機能部」と称する。
図7に示すディスプレイ51の例では、このディスプレイ51の表示画面を構成する複数の画素(ドット)に共通する要素(例えば、表示用ドライバ等)がディスプレイ共通部512としてまとめられている。したがって、ディスプレイ共通部512は「共通機能部」に相当する。一方、ディスプレイ51の表示画面を構成する複数の画素そのものは、それぞれ独自の要素であるため、個別チャネル511としてまとめられている。したがって、個別チャネル511は「個別機能部」に相当する。
これにより、多数の画素(表示機能)に共通する診断試験は、「共通機能部」であるディスプレイ共通部512のみに対して設定すればよいので、多数の画素それぞれに対して診断試験を設定して実行する必要がない。それゆえ、表示機能に対して設定される診断項目数を最小レベルにすることが可能となる。また、多数の画素それぞれに独自の要素は、個別チャネル511という「個別機能部」に集約されているので、一つの「個別機能部」に対してまとめて同種の診断項目を設定することが可能となる。それゆえ、一つの故障特定部位単位31当たりの判定単位部位32の数が増加することを有効に抑制することができる。
また、CPUモジュール52は、図7に示すように、CPUモジュール共通部521、画面出力部522、キー入力部523、およびバス通信部524に区分することができる。したがって、故障特定単位部位31であるCPUモジュール52は、CPUモジュール共通部521、画面出力部522、キー入力部523、およびバス通信部524という、四つの判定単位部位32に区分される。また、画面出力部522およびバス通信部524は、いずれも独立した判定単位部位32であるが、キー入力部523は、複数のキー53に対応する入力機能をまとめた判定単位部位32であるので、「個別機能部」に相当する。さらに、CPUモジュール共通部521は、CPUモジュール52そのものの動作に共通する機能で構成される判定単位部位32であるので、「共通機能部」に相当する。
また、制御パネル50の各種配線等は、図7に示す構成例では、画面バス551、キー信号配線552、外部バス553、内部電源配線554、および外部電源配線555により構成される。それゆえ、故障特定単位部位31である各種配線等は、画面バス551、キー信号配線552、外部バス553、内部電源配線554、および外部電源配線555という、五つの判定単位部位32に区分される。また、画面バス551、外部バス553、内部電源配線554、および外部電源配線555は、いずれも独立した判定単位部位32と見なせるが、キー信号配線552は、キー53の数に応じた複数の配線をまとめた判定単位部位32であるので、「個別機能部」に相当する。
ここで、故障特定単位部位31のうち、ディスプレイ51、CPUモジュール52、および各種配線等は、いずれも複数の判定単位部位32に区分されるが、キー53および電源モジュール54は、故障特定単位部位31であるとともに、それ自体が独立した判定単位部位32である。そのため、キー53および電源モジュール54は、単一の判定単位部位32からなる故障特定単位部位31である。なお、キー53は、制御パネル50が備える複数のキー53をまとめた故障特定単位部位31(判定単位部位32)であるので、「個別機能部」に相当する。
制御パネル50を構成するディスプレイ51、CPUモジュール52、および電源モジュール54は、図7では、それぞれ模式的な一つのブロックとして示しているが、実際には多数の部品等で構成されている。また、キー53も、図7では一つのブロックとして示しているが、実際には多数のキーを包括したものであって、多種の部品等で構成されている。さらに、各種配線等も、その機能に応じて多数かつ多種類の配線で構成されている。それゆえ、これら多くの部品または配線それぞれについて診断項目を設定して診断試験を行うと、診断項目数が増加して、故障部位を容易に特定できなくなる。
これに対して、本実施の形態では、診断対象30を複数の故障特定単位部位31に区分し、各故障特定単位部位31をさらに判定単位部位32に区分した上で、例えば故障特定単位部位31の機能に対応して診断項目を設定している。これにより、診断項目数の大幅な増加を有効に回避した上で、診断試験を行うことができる。しかも、診断対象30の具体的なハードウェア構成を把握していなくても、診断対象30の機能を把握していれば診断項目を設定できる。そのため、診断項目の設定が容易となり、かつ、診断項目の漏れが生じる可能性も抑制することができる。
なお、本実施の形態における制御パネル50は、公知の構成であればよく、また、制御パネル50が備えるディスプレイ51、CPUモジュール52、キー53、電源モジュール54、および各種配線等も公知の構成であればよい。それゆえ、制御パネル50に関する具体的な説明は省略する。また、制御パネル50は、ディスプレイ51、CPUモジュール52、キー53、電源モジュール54、および各種配線等以外の故障特定単位部位31を備えてもよい。また、本実施の形態における診断対象30は、制御パネル50に限定されず、公知の様々な機器またはシステムであってもよいことはいうまでもない。
[論理判定処理の例]
次に、図7に示す制御パネル50に対して診断試験を行い、前述した診断方法により故障部位を特定する具体的な一例について、図8を参照して説明する。
本実施の形態では、診断対象30である制御パネル50が、ディスプレイ51、CPUモジュール52、キー53、電源モジュール54、および各種配線等という複数の故障特定単位部位31を含む。本実施の形態では、関連化処理において、それぞれの想定試験結果(診断項目)をそれぞれの判定単位部位32に関連付けてまとめた未記入版星取表(試験結果−単位部位対応表)が作成され、予備的判定処理は、この未記入版星取表の空欄を埋めて記入版星取表を完成することで行われるが、さらに、論理判定処理も、前記の通り、記入版星取表に予備的判定結果抽出処理を行うことにより抽出された抽出版星取表に基づいて行われる。
まず、記入版星取表の一例としては、具体的には、図8に示すように、縦側に診断項目および試験結果を列挙し、横側に、故障特定単位部位31別に判定単位部位32を列挙したマトリクス状の構成を挙げることができる。この星取表は、所定のサイズの紙に印刷されたものであってもよいし、表示画面上に表示されたものであってもよい。
ここで、図8に示す星取表では、各診断試験について得られる可能性のある試験項目および試験結果を網羅的に記載している。例えば、試験項目として「1.バス機能確認試験」を行った場合、「a.異常作動」、「b.機能喪失」または「c.正常」のいずれかの試験結果が得られることになる。また、図8に示す星取表では、第一判定結果および第二判定結果は記載しておらず、予備的判定結果のみを記載している。
また、図8に示す記入版星取表(並びに、後述する図9〜図13に示す星取表)においては、説明の便宜上、横側の並びを「行」と称し、縦側の並びを「列」と称するものとする。また、行の序数については、最も上の行を「第一行」と称し、以下、下に向かって「第二行」、「第三行」等と称する。一方、列の序数については、最も左側の列を「第一列」と称し、以下、右に向かって「第二列」、「第三列」等と称する。
本実施の形態における故障特定単位部位31としては、前記の通り、ディスプレイ51、CPUモジュール52、キー53、電源モジュール54、および各種配線等が挙げられ、これら故障特定単位部位31のうち、ディスプレイ51、CPUモジュール52および各種配線等は、複数の判定単位部位32で構成され、キー53および電源モジュール54は、一つの判定単位部位32で構成されている。そこで、図8に示す記入版星取表では、第一行で、判定単位部位32を具体的に列挙するとともに、これら判定単位部位32が特定の上位の単位部位である故障特定単位部位31に属することを明記している。
例えば、星取表の第一行において最も左側に記載される判定単位部位32は、個別チャネル511であり、その右横にはディスプレイ共通部512(図7のブロック図では単に「共通部」と略記)が記載されている。これら判定単位部位32はディスプレイ51という故障特定単位部位31を構成しているので、図8に示す記入版星取表では、第一行の上方において、これら二つの判定単位部位32の各列にまたがるように「ディスプレイ」の項目が追記されている。同様に、図8に示す記入版星取表では、CPUモジュール52および各種配線等についても、複数の判定単位部位32の列にまたがるように第一行の上方において「CPUモジュール」および「各種配線等」の項目(すなわち故障特定単位部位31の項目)が追記されている。
なお、図8に示す記入版星取表(並びに、後述する図9〜図13に示す星取表)の第一行では、前記のディスプレイ共通部512だけでなくCPUモジュール共通部521も表中「共通部」と略記している。また、星取表の第一行における「配線・外部電源」は、外部電源配線555を指し、「配線・内部電源」は、内部電源配線554を指し、「配線・外部バス」は、外部バス553を指し、「配線・画面バス」は、画面バス551を指し、「配線・キー信号」は、キー信号配線552を指す。
本実施の形態における診断試験は、星取表の第一列に示すように、「1.バス機能確認試験」、「2.画面表示確認試験」、および「3.キー機能確認試験」の三つの項目について行われている。そして、これらの診断試験を行うことにより、それぞれの試験項目について試験結果が得られる。
図8に示す記入版星取表では、第二列に各試験項目に対する試験結果のバリエーションを記載しており、第二行では、試験結果を予備的に判定するための「故障の種類」を記載している。例えば、「1.バス機能確認試験」を行うことによって、星取表の第二列に示すように、「a.異常作動」、「b.機能喪失」および「c.正常」のいずれかの試験結果が得られ、「2.画面表示確認試験」を行うことによって、「a.異常作動/一部喪失」、「b.全機能喪失」および「c.正常」のいずれかの試験結果が得られ、「3.キー機能確認試験」を行うことによって、「a.異常作動」、「b.全機能喪失」、「c.1個機能喪失」および「d.正常」のいずれかの試験結果が得られる。
具体的には、例えば、星取表の第二列の第三行および第四行に示すように、「1.バス機能確認試験」を行った結果、バスによる通信機能が喪失している状態(b.機能喪失)だけでなく、バスによる通信に異常が発生している状態(a.異常作動)の場合もあり得る。同様に、星取表の第二列の第六行および第七行に示すように、「2.画面表示確認試験」を行った結果、ディスプレイ51の表示が全て喪失している状態(b.全機能喪失)だけでなく、異常な図像が表示されたり、画面上の一部の表示が喪失したりしている状態(a.異常作動/一部喪失)の場合もあり得る。また、星取表の第二列の第九行〜第十一行に示すように、「3.キー機能確認試験」を行った結果、複数のキー53の全ての機能が喪失している状態(b.全機能喪失)、個々のキー53の機能が喪失している状態(c.1個機能喪失)だけでなく、任意のキー53を操作したときに異常な操作結果が得られる状態(a.異常作動)の場合もあり得る。このように、診断結果としては、正常以外の状態として異常作動および機能喪失が評価される。
また、星取表の第二行の「失」は、機能喪失の試験結果を意味し、「異」は、異常作動の試験結果を意味する。機能喪失は、診断対象30が有する機能の作動が停止する状態であるが、機能の種類によっては、故障としては、機能喪失だけでなく、異常な状態のまま作動を継続する状態である異常作動も含まれる。機能喪失および異常作動は互いに原因およびその影響が異なるため、本実施の形態では、予備的判定処理を行うに際して、「故障の種類」として機能喪失と異常作動とを明確に区別して取り扱う。
図8に示すように、各判定単位部位32の故障の種類は、基本的には、機能喪失であるが、CPUモジュール52に属するCPUモジュール共通部521については、機能喪失だけでなく異常作動もあり得る。つまり、CPUモジュール共通部521は、CPUモジュール52における演算処理の中心となる機能であるため、単に機能喪失となる故障以外に、CPUモジュール52が異常な演算を行う故障(異常作動)も発生し得る。一方、他の判定単位部位32は、いずれも異常作動の可能性が無いか、異常作動についてほぼ無視できるか、あるいは、異常作動についてはCPUモジュール共通部521の異常作動に集約することができるので、機能喪失のみが判定される。
図8に示す記入版星取表では、第三行以降かつ第三列以降のマトリクスが、各判定単位部位32に関しての予備的判定結果を示す。具体的には、記入版星取表の第三行〜第五行が「1.バス機能確認試験」の予備的判定結果の例であり、第六行〜第八行が「2.画面表示確認試験」の予備的判定結果の例であり、第九行〜第十二行が「3.キー機能確認試験」の予備的判定結果の例である。また、第三列および第四列がディスプレイ51の予備的判定結果の例であり、第五列がキー53の予備的判定結果の例であり、第六列〜第十列がCPUモジュール52の予備的判定結果の例であり、第十一列が電源モジュール54の予備的判定結果の例であり、第十二列〜第十六列が各種配線等の予備的判定結果の例である。
このように、本発明に係る診断方法では、判定単位部位32の機能喪失を診断する診断試験のみが行われてもよいが、判定単位部位32の種類によっては異常作動を診断する診断試験も併せて行われてもよい。また、予備的判定処理では、機能喪失および異常作動のそれぞれが、“×”、“OK”、“△”または“−”等の各状態に判定されればよい。
[論理判定処理の具体例]
次に、図9〜図13を参照して、図8の記入版星取表に例示した試験項目、試験結果、および故障の種類に基づいて、本実施の形態における予備的判定処理、予備的判定結果抽出処理、論理判定処理、並びに、故障部位の特定(診断結果の取得)について具体的に説明する。
図8に示す記入版星取表は、3項目の診断試験で得られる、想定される全ての試験結果を判定単位部位32(および故障特定単位部位31)に関連付けて網羅的にまとめたものであるが、図9〜図13に示す星取表は、それぞれ、図8に示す記入版星取表から予備的判定結果抽出処理により得られた抽出版星取表であって、3項目の診断試験により得られる実際の試験結果に基づく、具体的な予備的判定結果の例である。そこで、これら具体的な予備的判定結果の例に基づいて、論理判定処理を説明する。
まず、図9に示す抽出版星取表では、「1.バス機能確認試験」および「2.画面表示確認試験」による試験結果は「c.正常」であるが、「3.キー機能確認試験」による試験結果は、「b.全機能喪失」である場合に、図8に示す記入版星取表から予備的判定結果抽出処理により抽出された状態を示している。なお、事前に「1.バス機能確認試験」、「2.画面表示確認試験」および「3.キー機能確認試験」の想定される全ての試験結果と各判定単位部位32とを関連付ける関連化処理を行った後に(図1および図2のステップS101参照)、予備的判定処理を行っている(図1および図3のステップS102参照)。
具体的には、「1.バス機能確認試験」の診断試験を行った結果に対して、ディスプレイ51に属する個別チャネル511およびディスプレイ共通部512(いずれも判定単位部位32)、キー53(故障特定単位部位31かつ判定単位部位32)、CPUモジュール52に属する画面出力部522、キー入力部523、およびCPUモジュール共通部521の異常作動区分(いずれも判定単位部位32)、各種配線等に属する画面バス551およびキー信号配線552(いずれも判定単位部位32)のいずれの予備的判定結果も“−”として判定されているが、CPUモジュール52に属するバス通信部524およびCPUモジュール共通部521の機能喪失区分(いずれも判定単位部位32)、電源モジュール54(故障特定単位部位31かつ判定単位部位32)、各種配線等に属する外部電源配線555、内部電源配線554、および外部バス553(いずれも判定単位部位32)のいずれの予備的判定結果も“OK”として判定されている。
次に、「2.画面表示確認試験」の診断試験を行った結果に対して、ディスプレイ51に属する個別チャネル511およびディスプレイ共通部512、CPUモジュール52に属する画面出力部522、バス通信部524、CPUモジュール共通部521の機能喪失区分、電源モジュール54、各種配線等に属する外部電源配線555、内部電源配線554、外部バス553、および画面バス551のいずれの予備的判定結果も“OK”として判定されているが、キー53、CPUモジュール52に属するキー入力部523、およびCPUモジュール共通部521の異常作動区分、各種配線等に属するキー信号配線552のいずれの予備的判定結果も“−”として判定されている。
次に、「3.キー機能確認試験」の診断試験を行った結果に対して、ディスプレイ51に属する個別チャネル511およびディスプレイ共通部512、CPUモジュール52に属する画面出力部522、各種配線等に属する画面バス551のいずれの予備的判定結果も“−”として判定されているが、キー53、CPUモジュール共通部521の異常作動区分、各種配線等に属するキー信号配線552の予備的判定結果は、いずれも“△VL”として判定されており、各種配線等に属する外部電源配線555、内部電源配線554、および外部バス553の予備的判定結果は、いずれも“△L”として判定されており、CPUモジュール52に属するキー入力部523、バス通信部524、CPUモジュール共通部521の機能喪失区分、電源モジュール54の予備的判定結果は、いずれも“△M”として判定されている。
このようにして取得された予備的判定結果について第一段階の論理判定処理(すなわち、判定単位部位別論理判定処理)を行う(図1および図5のステップS104参照)。まず、ディスプレイ51は上位の単位部位(故障特定単位部位31)であるため、当該ディスプレイ51に属する下位の単位部位(判定単位部位32、すなわち、個別チャネル511およびディスプレイ共通部512)についてそれぞれ判定を行う。個別チャネル511およびディスプレイ共通部512のいずれにおいても、三つの予備的判定結果のうち一つが“OK”(2.画面表示確認試験の予備的判定結果)であり、残りの二つは“−”である。それゆえ、個別チャネル511およびディスプレイ共通部512は、いずれも“OK”と判定される。
次に、キー53は故障特定単位部位31であるとともに判定単位部位32であり、三つの予備的判定結果に基づいて第一段階の論理判定処理(すなわち判定単位部位別論理判定処理)を行う(図1および図5のステップS104参照)。三つの予備的判定結果のうち一つの予備的判定結果(3.キー機能確認試験)が“△VL”で、残りの二つは“−”である。それゆえ、キー53は“△VL”と判定される。
次に、CPUモジュール52は上位の単位部位(故障特定単位部位31)であるため、当該CPUモジュール52に属する下位の単位部位(判定単位部位32、すなわち、画面出力部522、キー入力部523、バス通信部524、CPUモジュール共通部521の機能喪失および異常作動)について判定を行う。画面出力部522については、三つの予備的判定結果のうち一つが“OK”(2.画面表示確認試験の予備的判定結果)であり、残りの二つは“−”である。それゆえ、画面出力部522は“OK”と判定される。キー入力部523については、三つの予備的判定結果のうち一つが“△M”(3.キー機能確認試験の予備的判定結果)であり、残りの二つは“−”である。それゆえ、キー入力部523は“△M”と判定される。
バス通信部524およびCPUモジュール共通部521の機能喪失については、いずれも、三つの予備的判定結果のうち二つが“OK”であり、残りの一つは“△M”(3.キー機能確認試験の予備的判定結果)である。第一段階では“△”よりも“OK”が優先されるので、バス通信部524およびCPUモジュール共通部521の機能喪失はいずれも“OK”と判定される。また、CPUモジュール共通部521の異常作動については、三つの予備的判定結果のうち一つが“△VL”(3.キー機能確認試験の予備的判定結果)であり、残りの二つは“−”である。それゆえ、CPUモジュール共通部521の異常作動は“△VL”と判定される。
次に、電源モジュール54は故障特定単位部位31であるとともに判定単位部位32であり、三つの予備的判定結果のうち二つが“OK”で、残りの一つが“△M”(3.キー機能確認試験の予備的判定結果)である。それゆえ、電源モジュール54は“OK”と判定される。
次に、各種配線等は上位の単位部位(故障特定単位部位31)であるため、当該各種配線等に含まれる下位の単位部位(判定単位部位32、すなわち、外部電源配線555、内部電源配線554、外部バス553、画面バス551およびキー信号配線552)について判定を行う。外部電源配線555、内部電源配線554および外部バス553については、いずれも三つの予備的判定結果のうち二つが“OK”であり、残りの一つが“△L”(3.キー機能確認試験の予備的判定結果)である。それゆえ、これらはいずれも“OK”と判定される。画面バス551については、三つの予備的判定結果のうち一つが“OK”(2.画面表示確認試験)であり、残りの一つが“−”である。それゆえ、画面バス551は“OK”と判定される。キー信号配線552については、三つの予備的判定結果のうち一つが“△VL”であり、残りの二つが“−”である。それゆえ、キー信号配線552は“△VL”と判定される。
このような第一段階の論理判定処理により、全ての判定単位部位32について判定結果(第一判定結果)が得られる。なお、これら判定単位部位32のうち、キー53および電源モジュール54は、故障特定単位部位31でもあるため、他の故障特定単位部位31のように上位の単位部位および下位の単位部位からなる二階層となっていない。それゆえ、判定単位部位32の判定結果(第一判定結果)が、最終的な故障特定単位部位31の判定(第二判定結果)となる。したがって、図9に示す抽出版星取表に示すように、キー53は“△VL”と判定され、電源モジュール54は“OK”と判定される。
一方、他の故障特定単位部位31であるディスプレイ51、CPUモジュール52、および各種配線等は二階層となっており、第一段階の論理判定処理が終了した時点では、判定単位部位32それぞれの判定結果(第一判定結果)しか得られていないことになる。そこで、故障特定単位部位31について、第二段階の論理判定処理(すなわち、故障特定単位部位別論理判定処理)を行う(図1および図5のステップS105および図6参照)。まず、ディスプレイ51については、いずれの判定単位部位32(個別チャネル511およびディスプレイ共通部512)も“OK”と判定されている。そこで、ディスプレイ51は最終的に“OK”と判定される。
次に、CPUモジュール52については、画面出力部522、バス通信部524、およびCPUモジュール共通部521の機能喪失はいずれも“OK”と判定されているが、キー入力部523は“△M”と判定され、CPUモジュール共通部521の異常作動は“△VL”と判定されている。第二段階の論理判定処理では、“OK”よりも“△”が優先され、“△”については故障発生確度の高い状態が優先される。そこで、CPUモジュール52は最終的に“△M”と判定される。
次に、各種配線等については、外部電源配線555、内部電源配線554、外部バス553および画面バス551がいずれも“OK”と判定されているが、キー信号配線552は“△VL”と判定されている。それゆえ、各種配線等は最終的に“△VL”と判定される。
これら判定結果(第二判定結果)をまとめると、図9に示す例では、キー53の機能が全て喪失した故障が発生している状態であって、診断対象30である制御パネル50の五つの故障特定単位部位31のうち、ディスプレイ51および電源モジュール54については故障していない(正常部位)が、キー53、CPUモジュール52、および各種配線等に故障している可能性がある(疑故障部位)。
これらの疑故障部位の中でも、CPUモジュール52が故障している可能性が比較的高い。そこで、CPUモジュール52に属する五つの判定単位部位32について見れば、キー入力部523が“△M”と判定され、CPUモジュール共通部521の異常作動が“△VL”と判定されている。それゆえ、キー入力部523の故障の可能性が高く、可能性としては低いが、CPUモジュール共通部521も故障している可能性がある、と判定される。このように、図9に示す例では、五つの故障特定単位部位31のうちCPUモジュール52が、最も故障している可能性が高い疑故障部位であるという診断結果が得られる。
次に、図10に示す抽出版星取表では、「1.バス機能確認試験」および「2.画面表示確認試験」による試験結果は「c.正常」であるが、「3.キー機能確認試験」による試験結果は、「c.1個機能喪失」である場合を示している。これら試験結果は前述した関連化処理、予備的判定処理、および予備的判定結果抽出処理により判定されているので、その具体的な説明は省略する。
前述したように、ディスプレイ51、CPUモジュール52、および各種配線等が、二階層の故障特定単位部位31(すなわち、複数の判定単位部位32で構成されている故障特定単位部位31)であり、キー53および電源モジュール54が、一階層の故障特定単位部位31(すなわち、一つの判定単位部位32で構成されている故障特定単位部位31)である。そして、これら故障特定単位部位31を構成する複数の判定単位部位32については、予備的判定処理および予備的判定結果抽出処理が行われている。そこで、全ての判定単位部位32の予備的判定結果に基づいて、第一段階の論理判定処理の判定を行う。この判定の詳細な説明は省略するが、図10に示す例では、二階層の故障特定単位部位31に属する判定単位部位32それぞれが図10に示すように判定されるとともに、故障特定単位部位31かつ判定単位部位32であるキー53は“△H”と最終判定され、電源モジュール54は“OK”と最終判定される。
その後、判定単位部位32の判定結果(第一判定結果)に基づいて、二階層の故障特定単位部位31について第二段階の論理判定処理を行う。まず、ディスプレイ51については、当該ディスプレイ51に属する判定単位部位32のいずれも“OK”と判定されている。それゆえ、ディスプレイ51は最終的に“OK”と判定される。また、CPUモジュール52については、CPUモジュール共通部521の異常作動のみが“△VL”と判定され、残りの判定単位部位32が“OK”と判定されている。それゆえ、CPUモジュール52は最終的に“△VL”と判定される。また、各種配線等については、キー信号配線552のみが“△L”と判定され、残りの判定単位部位32が“OK”と判定されている。それゆえ、各種配線等は最終的に“△L”と判定される。
このような第二判定結果から、次のような診断結果を得ることが可能となる。すなわち、キー53のうち1個の機能が喪失した場合、3項目の診断試験の結果、キー53、CPUモジュール52、および各種配線等が疑故障部位として判定される。これら疑故障部位の中でも、キー53そのものが故障している可能性が最も高いが、各種配線等が故障している可能性もある。また、CPUモジュール共通部521が故障(異常作動)している可能性もわずかながらある。
次に、図11に示す抽出版星取表では、「1.バス機能確認試験」および「3.キー機能確認試験」による試験結果は「c.正常」であるが、「2.画面表示確認試験」による試験結果は、「b.全機能喪失」である場合を示している。これら試験結果は前述した関連化処理、予備的判定処理、および予備的判定結果抽出処理により判定されているので、その具体的な説明は省略する。そして、全ての判定単位部位32の抽出済み予備的判定結果に基づいて、第一段階の論理判定処理を行う。この判定の具体的な説明は省略するが、図11に示す例では、二階層の故障特定単位部位31に属する判定単位部位32それぞれが図11に示すように判定されるとともに、故障特定単位部位31かつ判定単位部位32であるキー53および電源モジュール54は、いずれも“OK”と最終判定される。
その後、判定単位部位32の判定結果(第一判定結果)に基づいて、二階層の故障特定単位部位31について第二段階の論理判定処理を行う。まず、ディスプレイ51については、個別チャネル511が“△VL”と判定され、ディスプレイ共通部512が“△M”と判定されている。それゆえ、ディスプレイ51は最終的に“△M”と判定される。また、CPUモジュール52については、画面出力部522が“△M”と判定されるとともに、CPUモジュール共通部521の異常作動が“△VL”と判定され、残りの判定単位部位32が“OK”と判定されている。それゆえ、CPUモジュール52は最終的に“△M”と判定される。また、各種配線等については、画面バス551のみが“△L”と判定され、残りの判定単位部位32が“OK”と判定されている。それゆえ、各種配線等は最終的に“△L”と判定される。
このような第二判定結果から、次のような診断結果を得ることが可能となる。すなわち、ディスプレイ51の画面表示機能が全喪失した場合、3項目の診断試験の結果、ディスプレイ51、CPUモジュール52、および各種配線等が疑故障部位として判定される。これら疑故障部位の中でも、ディスプレイ51またはCPUモジュール52が同等の故障発生確度で故障している可能性がある。また、これら疑故障部位に比べて故障発生確度はより低いものの、各種配線等が故障している可能性がある。
次に、図12に示す抽出版星取表では、「1.バス機能確認試験」による試験結果が「b.機能喪失」となっており、「2.画面表示確認試験」および「3.キー機能確認試験」による試験結果が「b.全機能喪失」となっている場合を示している。これら試験結果は前述した関連化処理、予備的判定処理、および予備的判定結果抽出処理により判定され(具体的な説明は省略)、全ての判定単位部位32の抽出済み予備的判定結果について、第一段階の論理判定処理を行う(具体的な説明は省略)。図12に示す例では、二階層の故障特定単位部位31に属する判定単位部位32それぞれが図12に示すように判定されるとともに、故障特定単位部位31かつ判定単位部位32であるキー53は“△VL”と最終判定され、電源モジュール54は“△M”と最終判定される。
その後、判定単位部位32の判定結果(第一判定結果)に基づいて、二階層の故障特定単位部位31について第二段階の論理判定処理を行う。まず、ディスプレイ51については、個別チャネル511が“△VL”と判定され、ディスプレイ共通部512が“△M”と判定されている。それゆえ、ディスプレイ51は最終的に“△M”と判定される。また、CPUモジュール52については、CPUモジュール共通部521の異常作動の予備的判定結果が全て“△VL”であるため、この異常作動のみが“△VL”と判定されているが、CPUモジュール共通部521の機能喪失を含めて、残りの判定単位部位32が“△M”と判定されている。それゆえ、CPUモジュール52は最終的に“△M”と判定される。また、各種配線等については、キー信号配線552のみが“△VL”と判定され、残りの判定単位部位32が“△L”と判定されている。それゆえ、各種配線等は最終的に“△L”と判定される。
このような第二判定結果から、次のような診断結果を得ることが可能となる。すなわち、診断対象30である制御パネル50の全ての機能が喪失した場合、3項目の診断試験の結果、五つの故障特定単位部位31全てが疑故障部位として判定されるが、これらの中でも、ディスプレイ51、CPUモジュール52および電源モジュール54が、いずれも同等の故障発生確度で故障している可能性がある。また、これら疑故障部位に比べて故障発生確度は低いものの、各種配線等が故障している可能性があり、さらに故障発生確度がより低いもののキー53が故障している可能性もある。
次に、図13に示す抽出版星取表では、「1.バス機能確認試験」、「2.画面表示確認試験」および「3.キー機能確認試験」による試験結果が全て「正常」となっている場合を示している。それゆえ、予備的判定処理および予備的判定結果抽出処理では、いずれの判定単位部位32についても“OK”として判定されるので、第一段階の論理判定処理でも全ての判定単位部位32の機能喪失が“OK”と判定され、第二段階の論理判定処理でも、全ての故障特定単位部位31が“OK”と判定される。
特に、図13に示す例では、CPUモジュール共通部521の異常作動は“−”と判定されているが、CPUモジュール共通部521の機能喪失を含む他の判定単位部位32が全て“OK”と判定されているので、第二段階の論理判定処理では、CPUモジュール52も“OK”と判定される。それゆえ、制御パネル50の五つの故障特定単位部位31の全てが“OK”であると最終判定されるので、異常なしという診断結果が得られる。
このように、本実施の形態によれば、診断対象30を複数の故障特定単位部位31に区分するとともに、それぞれの故障特定単位部位31を、さらに一つ以上の判定単位部位32に区分する。そして、それぞれの判定単位部位32に関する診断試験を行うことになる。それゆえ、診断項目(試験結果)の組合せの爆発を有効に抑制することができる。また、各判定単位部位32と診断試験との対比を明確化できるので、診断項目と故障部位または疑故障部位との因果関係も明確化することができる。これにより、診断項目の抜けの発見が容易となり、診断項目の網羅性を容易に検証することができる。
また、予備的判定処理および論理判定処理の判定結果に“OK”が含まれるので、正常な故障特定単位部位31(正常部位)と故障部位または疑故障部位とを有効に選別することができる。それゆえ、故障部位の特定を効率化することができる。さらに、正常部位以外の故障特定単位部位31は、第二段階の論理判定処理により故障部位または疑故障部位であると判定される。そのため、論理的に適切な診断結果が得られるだけでなく、故障部位または疑故障部位を特定する過程を追跡しやすくすることができる。それゆえ、診断項目が多くなったとしても論理判定処理の欠陥を容易に見つけ出すことが可能となる。
特に、本実施の形態では、関連化処理により、判定単位部位32と試験結果とが星取表(試験結果−単位部位対応表)に基づいて関連付けられてまとめられている。それゆえ、診断項目(試験結果)の抜けの発見が容易となり、診断項目の網羅性を容易に検証することができるとともに、故障部位の特定を効率化することができる。さらに、星取表を参照することによって、故障部位または疑故障部位を特定する過程を追跡しやすくすることができる。それゆえ、診断項目が多くなったとしても論理判定処理の欠陥を容易に見つけ出すことが可能となる。
[変形例]
本発明に係る診断方法の代表的な実施の形態を、前記の通り説明したが、本発明は、本実施の形態に限定されない。例えば、本実施の形態の代表的な変形例について、図14〜図16を参照して具体的に説明する。
例えば、本実施の形態では、予備的判定処理で分類される状態の種類は、少なくとも“×”、“OK”および“△”の3種類であればよく、本実施の形態で例示した“−”の状態は必須ではない。したがって、例えば、図14に示すように、判定単位部位32を“×”、“OK”または“△”に判定する予備的判定処理が行われてもよく、第一段階の論理判定処理では、×>OK>△の順で優先順位が設定された上で論理判定処理が行われ、第二段階の論理判定処理では、×>△>OKの順で優先順位が設定された上で論理判定処理が行われてもよい。
さらに、図14に示すように、“△”は、本実施の形態のように、複数の段階に区分されていなくてもよい。また“△”の複数の段階の優先度についても、必ずしも△H>△M>△L>△VLでなくてもよく、例えば、この逆の順で優先度が設定されてもよい。また、“△”の段階を設定する手法についても特に限定されず、例えば、各段階を数値に置き換えて複数の結果の平均値を算出する等の手法を採用することもできる。
また、本実施の形態では、図8〜図13に例示したような星取表(試験結果−単位部位対応表)を用いて、判定単位部位32と試験結果との関連付けを行うとともに、各種の判定処理を行っているが、本発明はこれに限定されず、星取表を用いずに関連付けおよび判定処理を行ってもよい。
例えば、図15に示すように、予備的判定処理の予備的判定結果と第一段階および第二段階の論理判定処理の判定結果とを、制御パネル50を示すブロック図の上に記載する手法が挙げられる。このようなブロック図上の記載によって、判定単位部位32と試験結果とをブロック構成に基づいて関連付けられるとともに、ブロック構成に基づいて予備的判定処理および論理判定処理を行うことができる。
図15に示す例では、図7と実質的に同一のブロック図が図示されており、判定単位部位32のブロック内に、予備的判定結果と第一判定結果とが図示されている(図15の左から順に「1.バス機能確認試験」、「2.画面表示確認試験」および「3.キー機能確認試験」の抽出済み予備的判定結果を示し、最も右には第一判定結果が示される)。また、複数の判定単位部位32で構成される故障特定単位部位31のブロックについては、当該ブロックの名称の右横に第二判定結果を示している。このようなブロック図および判定結果は、星取表の場合と同様に、所定のサイズの紙に印刷されたものであってもよいし、表示画面上に表示されたものであってもよい。
図15に示す論理判定処理について簡単に説明する。例えば、故障特定単位部位31の一つであるディスプレイ51を例示すると、当該ディスプレイ51を構成する一方の判定単位部位32である個別チャネル511のブロックでは、「1.バス機能確認試験」の抽出済み予備的判定結果が“−”であり、「2.画面表示確認試験」の抽出済み予備的判定結果が“OK”であり、「3.キー機能確認試験」の抽出済み予備的判定結果が“−”であることが図示されているとともに、第一段階の論理判定処理により個別チャネル511が“OK”と判定された結果も図示されている。また、ディスプレイ51を構成する他方の判定単位部位32であるディスプレイ共通部512のブロックも、個別チャネル511と同様の抽出済み予備的判定結果と第一判定結果(“OK”との判定)とが図示されている。それゆえ、ディスプレイ51のブロックでは、ディスプレイ51が“OK”と判定された第二判定結果が図示されている。
また、故障特定単位部位31の一つであるキー53を例示すると、このキー53のブロックには、「1.バス機能確認試験」の抽出済み予備的判定結果が“−”であり、「2.画面表示確認試験」の抽出済み予備的判定結果が“−”であり、「3.キー機能確認試験」の抽出済み予備的判定結果が“△VL”であることが図示されているとともに、キー53が“△VL”と判定された第一判定結果も図示されている。キー53は、単一の判定単位部位32で構成されているので、判定単位部位32の第一判定結果である“△VL”が、故障特定単位部位31であるキー53の第二判定結果となる。
なお、図15に示す論理判定処理の結果は、図9に示す抽出版星取表の結果と同一であるので、他の故障特定単位部位31(CPUモジュール52、電源モジュール54、各種配線等)については、その説明を省略する。また、図15(および図7)では、各種配線等は、太線で図示されておりブロックとしては図示されていないので、図15においては、各種配線等(画面バス551、キー信号配線552、外部バス553、内部電源配線554、および外部電源配線555)の結果を示す吹出しタイプの枠を別途設け、さらに、これら吹出しタイプの枠を点線で囲んで、故障特定単位部位31である各種配線等の判定結果を示している。
ここで、本実施の形態では、本発明を説明する便宜上、診断対象30として、比較的簡素な構成である制御パネル50を例示したが、もちろん本発明はこれに限定されず、より一層複雑な構成を有する様々な機器、または、複数の機器により構成されるシステムを診断対象30とすることができる。また、制御パネル50は、一つの機器であるとともに、他の機器に実装可能な「部品」として位置付けることができる。したがって、本発明において診断対象30となる機器は、「完成品」として流通する機器に限定されず、「部品」として流通する機器も含まれる。
さらに、本実施の形態では、制御パネル50に対して設定される診断試験(設定される診断項目)は、前述した「1.バス機能確認試験」、「2.画面表示確認試験」および「3.キー機能確認試験」という3項目とした場合を例示しているが、この診断試験の例示は、本発明を限定するものではない。診断対象30が、本実施の形態で例示した制御パネル50に相当する公知の機器であったとしても、実際に行われる診断試験(設定される診断項目)は、診断対象30である具体的な機器の種類、用途、機能等の条件に応じて適宜選択される。
また、本実施の形態では、予備的判定結果である“×”、“OK”、“△”および“−”の各状態について、第一段階の論理判定処理では、×>OK>△>−の順で優先順位を設定しており、第二段階の論理判定処理では、×>△>OK>−の順で優先順位を設定している。しかしながら、本発明で実施される論理判定処理においては、第一段階および第二段階のいずれであっても、その優先順位は本実施の形態の例に限定されない。本発明では、予備的判定結果に“OK”が含まれているので、複数の故障特定単位部位31の中から正常部位を見出すことができ、これにより、故障部位または疑故障部位を絞り込むことが可能である。それゆえ、“×”、“OK”、“△”および“−”の各状態の優先順位については、例えば、故障部位または疑故障部位の絞り込みを有効に行うことができるように適宜設定することができる。
さらに、本実施の形態では、前述したように想定試験結果と各単位部位とを関連付ける構成の診断方法を例示している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば、図16に示すように、実際に得られた試験結果を単位部位に関連付ける構成であってもよい。
図16に示す診断方法の例では、少なくとも四つのステップを有する構成となっている。具体的には、診断対象30を複数の判定単位部位32(および故障特定単位部位31)に予め区分するとともに、診断対象30に対して実際に診断試験を行った上で、実際に得られた試験結果と判定単位部位32(および故障特定単位部位31)とを関連付ける関連化処理(ステップS111)を行う。この関連化処理は、前述した関連化処理(図1のステップS101)と基本的に同様であり、本実施の形態では、好ましくは星取表を用いて関連化処理を行えばよい。この関連化処理で得られる星取表は、例えば、実際に得られた試験結果に対応する欄のみ記入され、その他の欄は記入されない星取表となる。
その後、それぞれの判定単位部位32に対して関連付けられた想定試験結果に基づいて、当該判定単位部位32の故障状態を予備的に判定する予備的判定処理(ステップS112)を行う。この予備的判定処理も、前述した予備的判定処理(図1のステップS102)と基本的に同様であり、各判定単位部位32における実際に得られた試験結果の全てについて予備的な判定を行って予備的判定結果を取得すればよい。
なお、図16に示すように、予備的判定処理(S112)の後に行われる第一段階の論理判定処理(S113)および第二段階の論理判定処理(S114)は、図1に示す診断方法における第一段階の論理判定処理(S104)および第二段階の論理判定処理(S105)と同様であるため、その説明は省略する。このように、本発明では、実際に得られた試験結果のみを用いて関連化処理および予備的判定処理を行ってもよい。
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、本発明に係る診断方法の代表的な一例について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されず、本実施の形態2では、前述した診断方法を実施可能とする診断装置の一例について、図17〜図19を参照して具体的に説明する。
図17に示す診断装置10Aは、入力器11、関連化処理器12、予備的判定処理器13、論理判定処理器14、および出力器15を備え、入力器11に対しては、試験装置20から試験結果が入力可能となっている。
入力器11は、診断対象30(機器またはシステム)について診断試験が行われることにより取得される複数の試験結果を入力するものであり、その具体的な構成は特に限定されない。代表的には、例えば、複数の入力キーとして診断装置10Aに一体化された構成であってもよいし、診断装置10Aとは独立したキーボードまたはマウス等のような入力装置であってもよいし、タッチパネル等のように表示装置(出力器15)と一体化した構成であってもよい。
関連化処理器12は、入力器11から入力された試験結果を、診断対象30の判定単位部位32に関連付ける。また、予備的判定処理器13は、関連付けられた試験結果に基づき、各判定単位部位32を、少なくとも“×”、“OK”、または“△”として判定(あるいは、“×”、“OK”、“△”、または“−”として判定)し、予備的判定結果を生成する。また、論理判定処理器14は、予備的判定処理器13で判定された予備的判定結果に基づいて論理判定処理を行い、第一判定結果および第二判定結果を生成する。つまり、関連化処理器12、予備的判定処理器13および論理判定処理器14は、前記実施の形態1で説明した診断方法における、関連化処理、予備的判定処理および論理判定処理を行う構成となっている。
なお、論理判定処理器14による論理判定処理について簡単に説明する。前記実施の形態1の第一段階の論理判定処理であれば、論理判定処理器14は、“×”の予備的判定結果が含まれているときには、その判定単位部位32が故障部位であると判定する。さらに、“×”の予備的判定結果が含まれていない場合には、“△”の予備的判定結果または“OK”の予備的判定結果を優先させることによって、その判定単位部位32が故障の可能性がある疑故障部位であるか、または、正常部位であることを判定する。
次に、前記実施の形態1の第二段階の論理判定処理であれば、論理判定処理器14は、第一段階の論理判定処理で得られた、一つの故障特定単位部位31を構成する判定単位部位32の全ての判定結果(全第一判定結果)に“×”の第一判定結果が含まれているときには、当該故障特定単位部位31が故障部位であると判定する。さらに全第一判定結果に“×”の第一判定結果が含まれておらず“△”の第一判定結果が含まれていれば、その故障特定単位部位31が疑故障部位であると判定する。また、全第一判定結果が“OK”である場合には、その故障特定単位部位31が正常部位であると判定する。
関連化処理器12、予備的判定処理器13および論理判定処理器14は、いずれも公知の演算素子の機能構成であってもよいし、公知の論理回路として構成されてもよい。つまり、関連化処理器12、予備的判定処理器13および論理判定処理器14は、図示しない演算素子としてのCPUが図示しない記憶装置に格納されるプログラムに従って動作することにより実現される構成であってもよいし、公知のスイッチング素子、減算器、比較器等による論理回路等として構成されてもよい。したがって、本発明には、CPU等の演算素子を備えるコンピュータを機能させることにより、本実施の形態に係る診断装置10Aを実現することによって、前記実施の形態1で説明した診断方法を実行させるプログラムが含まれてもよく、さらには、当該プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も本発明に含まれてもよい。
出力器15は、可視情報を出力可能とするものであり、本実施の形態では、論理判定処理器14の処理結果すなわち診断結果(故障特定単位部位31の故障判定の結果)を可視情報として出力可能とする。その具体的な構成は特に限定されず、例えば、一般的な表示器(ディスプレイ)、インクジェットプリンターまたは電子写真方式のプリンター等の印刷装置、あるいは、タッチパネル等のように入力器11と一体化された構成等を挙げることができる。
本発明に係る診断装置は、前述した図17に示す診断装置10Aに限定されず、前記実施の形態1で説明した、本発明に係る診断方法を実施できる構成であればよい。具体的には、例えば、図18に示す診断装置10B、または、図19に示す診断装置10Cを挙げることができる。
図18に示す診断装置10Bは、入力器11、関連化処理器12、予備的判定処理器13、論理判定処理器14、および出力器15に加えて、試験器16を備えている。試験器16は、診断対象30に対して診断試験を行うことにより試験結果を取得する構成であり、図18に示すように、試験器16は、診断対象30に対して入力信号を直接入力し、診断対象30からの出力信号を直接取得する構成となっている。このように、図18に示す診断装置10Bは、図17に示す診断装置10Aに試験装置20が一体化したような構成となっている。なお、診断装置10Bにおいては、入力器11は、診断試験または診断方法等の実行を指示するための操作器として用いることになる。
このような診断装置10Bであれば、試験結果を入力器11ではなく試験器16から直接取得できるため、診断装置10Bとは別に試験装置20を準備する必要がない。それゆえ、一つの診断装置10Bにより診断試験から故障判定(診断結果の取得)までを実行することができる。なお、試験器16の具体的な構成は特に限定されず、図17に示す試験装置20と同様の構成であればよい。具体的には、公知の電気回路、電子回路、演算素子、コンピュータ、当該コンピュータで実行されるプログラム、または、これらを組み合わせた機器もしくはシステムを挙げることができる。
また、図19に示す診断装置10Cは、入力器11、関連化処理器12、予備的判定処理器13、論理判定処理器14、および出力器15に加えて、さらに外部機器との間で通信を行う通信器17を備えている。これにより、試験結果を入力器11ではなく通信器17から取得することができるとともに、故障判定の結果を出力器15で出力するだけでなく通信器17から外部に送信することができる。通信器17の具体的な構成は特に限定されず、公知の有線または無線の通信機器を挙げることができる。
本実施の形態において、試験装置20から入力器11に入力される試験結果、もしくは、試験器16から直接取得される試験結果は、前記実施の形態1で説明したように、診断対象30を区分した複数の故障特定単位部位31のそれぞれに関して種々の診断試験が行われて取得されるものである。したがって、本発明においては、診断対象30について行われる診断試験の試験結果を取得する試験結果取得器として、入力器11または試験器16を備えていればよい。また、本発明においては、試験結果取得器は、入力器11および試験器16以外の構成であってもよい。
また、関連化処理器12、予備的判定処理器13および論理判定処理器14の処理対象となる試験結果は、入力または取得された試験結果のうち、故障特定単位部位31に関する全ての試験結果である。このとき、故障特定単位部位31は、単一の判定単位部位32で構成されてもよいし、複数の判定単位部位32で構成されてもよい。これら判定単位部位32並びに試験結果に関しては、前記実施の形態1において詳細に説明済であるので、本実施の形態では省略する。
また、図17〜図19においては、第一段階の論理判定処理および第二段階の論理判定処理は、いずれも単一の論理判定処理器14で行われるように図示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第一段階および第二段階の論理判定処理をまとめて実行する一つの論理回路またはプログラム等が用いられてもよいし、第一段階の論理判定処理を実行する論理回路またはプログラム等と、第二段階の論理判定処理を実行する論理回路またはプログラム等とが併用されてもよい。
ここで、図17〜図19に示すいずれの診断装置10A〜10Cにおいても、関連化処理器12は、前記実施の形態1と同様に、星取表(試験項目−単位部位対応表)を用いて、各試験項目に試験結果を当てはめることにより、当該試験結果と当該判定単位部位32との関連付けを行うことが好ましい。この星取表は、関連化処理器12により随時作成される電子情報であればよい。この場合、予備的判定処理器13は、星取表に基づいて予備的判定処理を行い、予備的判定結果を生成すればよく、論理判定処理器14は、星取表に基づいて第一段階および第二段階の論理判定処理を行って、第一判定結果および第二判定結果を生成すればよい。
このように、本発明においては、前記実施の形態1で説明した診断方法を、図17〜図19に示す診断装置10A〜10Cを用いて実施することができる。このような診断装置10A〜10Cは、専用のハードウェアを有する機器またはシステムとして構成されてもよいし、公知のコンピュータおよび周辺機器を利用して構成されてもよいし、これらを組み合わせて構成されてもよい。
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。