JP2015189880A - 繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法 - Google Patents

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貴也 杉本
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Abstract

【課題】 発泡により軽量化され、常温及び低温雰囲気の耐衝撃性が高く、且つ常温時の剛性に比べて高温時の剛性低下が少なく、十分な発泡倍率を達成可能であるので板厚が維持され最大曲げ力の変化も少なく、外観悪化も少ない射出発泡体を得るための、繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法を提供する【解決手段】 特定の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物に、化学発泡剤(ウ)を添加し溶融する溶融工程(A)と、特定の射出工程(B)と、特定の発泡工程(C)とを有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、発泡による軽量化を実施しているにも拘らず、発泡成形体の耐衝撃性が高く、且つ常温時の剛性に対する高温時の剛性低下が少ない発泡成形体を得ることが可能な、繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
自動車用分野の樹脂製品において安全対応内装部材などに要求される性能から、プロピレン系樹脂にゴム成分とタルクや各種繊維に代表される種々の充填剤とを配合し、前者で耐衝撃性を、後者で剛性を付与することが従来から行われている。この方法には、常温使用条件において延性破壊し得ること、良好な成形品外観が得られること等の特性に加え、原料が比較的安価なため製造される製品も安価であること等の利点が有るので、これらの成形材料による内装部品が多く使用されている。また、本分野においても近年軽量化のニーズが高く種々の検討がなされている。
自動車用分野の樹脂製品における軽量化手法として、薄肉化は一般によく用いられる方法である。しかしながら、ドアトリム、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス等他と比べて比較的面積の大きい内装部品は平面部分も大きく、このような大きな平面部で厚みを薄くすると、剛性(最大曲げ力)が大きく低下してしまうという問題が生じる。剛性の低下を補うため、補強用のタルクを増量して使用する材料の弾性率を向上させると、衝撃性と外観性能(特にフローマーク)が低下し、更には材料比重が大きくなって充分な軽量化が達成できないといった問題もある。また、ゴム成分の添加によって耐衝撃性は向上するものの、一方で剛性が低下する要因となることも知られている。ここで剛性の低下を防ぐ為にゴム成分の添加量を減少させると、当然のことながら、衝撃性が低下し、低温での部品試験で脆性破壊によって破片が飛散してしまうという問題がある。
この様に薄肉化を行うことが困難な場合、軽量化に対するポリプロピレン系樹脂の重要な別の成形加工法の一つとして、射出発泡成形がある。特に近年は、環境負荷低減の観点から発泡成形体が使われる技術領域が広がる傾向に有る。
一般のポリプロピレン系樹脂は溶融張力が低い為、射出発泡成形において高発泡倍率を得るために、過去に様々な技術開発がなされてきた。ポリプロピレン系樹脂を高発泡化させる技術としては、型開き可能に保持された金型の空間内に発泡剤を含む樹脂を射出成形した後、金型を開くことにより前記空間を拡大して樹脂を発泡させるいわゆる型開き射出発泡成形法(コアバック法、Moving Cavity法、金型キャビティ拡張発泡成形法)がある(例えば、特許文献1)。しかし、この技術に一般的なポリプロピレン系樹脂を適用すると、耐衝撃性が低い上に、更に常温時の剛性に対する高温時の剛性低下という問題が発生する。
一方、射出発泡成形による発泡成形体は、軽量化が可能であるにもかかわらず、製品肉厚はそのまま維持されているので、常温に於いて剛性の低下が少ない。しかし未発泡部材に比べると、発泡部材は常温、低温時ともに耐衝撃性が大きく低下するので、安全対応部品などに適用する際にはこれが課題となっていた。その対応のため、発泡倍率を小さく且つプロピレン系樹脂にゴム成分を多くして配合し対応しているのが現状である(特許文献2)。しかしこの方法では、軽量化不足及び成形体の剛性低下につながってしまう。またこの方法では、室内温度は季節により大きく変化することから、室内が高温雰囲気となった際の熱垂れ変形など、常温時の剛性に対する高温時の剛性低下も問題となる高温時の剛性低下を補うための方法としてタルク等の充填剤をさらに配合することが知られているが、このような方法を実施すると、軽量化の効果が限定的となる。
更に、耐衝撃性改良の為、ポリオレフィン樹脂と有機繊維とを含有する繊維強化ポリオレフィン樹脂組成物を溶融状態とし、物理発泡剤を加えて型開き射出発泡成形方法を用いる自動車部品用の発泡成形体の製造方法が開示されている(特許文献3)。しかしながら、ここで物理発泡剤を使用する為には、種々のガスを高圧に、好ましくは超臨界状態にまでする必要が有り、非常に大掛かりな装置が必要となる。また、成形機自身もこのような高圧に耐え得るような設備が必要である。更に、この物理発泡剤を使用するに際し重量で制御を行っているが、このような高圧状態や超臨界状態のガス重量を測定・制御するのは非常に難しく、安定した品質の製品が得られないばかりか、工業レベルでの生産に適した方法であるとは言い難いのが実情である。
こうした状況下に、剛性・衝撃などの機械物性が良好で、かつ軽量化を兼ね備えたより簡便な成形体が得られる製造方法の開発が望まれていた。
国際公開2005/026255号パンフレット 特開2012−001655号公報 特開2011−189557号公報
本発明の課題は、従来技術の現状に鑑み、発泡による軽量化を実施しているにも拘らず、常温及び低温雰囲気の耐衝撃性が高く、且つ常温時の剛性に比べて高温時の剛性低下が少なく、十分な発泡倍率を達成可能であるので板厚が維持され最大曲げ力の変化も少なく、外観悪化も少ないという従来の技術では達成困難であった射出発泡体を得るための、繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のポリプロピレン系樹脂に特定の有機繊維を配合し、化学発泡剤を用いて特定の条件で射出成形機の片開き機能を利用した型開き射出発泡成形法を行うことにより、従来の技術では達成困難であった発泡による耐衝撃性の低下や、常温時の剛性に対する高温時の剛性低下という欠点を抑制し、発泡により軽量化したまま板厚を維持することにより曲げ剛性が良好で、且つ繊維による外観悪化も少なく安定した発泡形状の製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記条件(1)を満足する発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物に、化学発泡剤(ウ)を添加し溶融する溶融工程(A)と、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を金型キャビティに射出充填する射出工程(B)と、発泡工程(C)とを有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法であって、当該製造方法が型開き射出発泡成形法であり、溶融工程(A)が下記条件(A−i)を満足し、射出工程(B)が下記条件(B−i)〜(B−ii)を満足し、かつ発泡工程(C)が下記条件(C−i)を満足することを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法が提供される。
条件(1)
発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物が、下記の条件(ア−i)〜(ア−ii)を満足するポリプロピレン系樹脂(ア)50〜95重量%と、下記の条件(イ−i)を満足する有機繊維(イ)5〜50重量%とを含有する(但し、ポリプロピレン系樹脂(ア)と有機繊維(イ)との合計を100重量%とする)。
条件(ア−i)
ポリプロピレン系樹脂(ア)がチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂であり、かつポリプロピレン系樹脂(ア)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が25〜200g/10分である。
条件(ア−ii)
DSC法により測定されたポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)が140〜170℃である。
条件(イ−i)
有機繊維(イ)の融点が245℃以上である。
条件(A−i)
溶融工程(A)において、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して化学発泡剤(ウ)0.005〜8重量部を添加し溶融する。
条件(B−i)
射出工程(B)において用いられる金型が、固定型と前進及び後退が可能な可動型とから構成され、得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)よりも小さい金型キャビティ・クリアランス(T0)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を金型キャビティに射出充填する。
条件(B−ii)
射出工程(B)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の温度が、[ポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)]以上、[有機繊維(イ)の融点−10℃]以下である。
条件(C−i)
前記射出工程(B)を行った後、発泡工程(C)において可動型を得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)まで後退させ、発泡剤による膨張圧力によって金型キャビティの空隙を充填する。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、有機繊維(イ)が、ポリエステル繊維及びポリアミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機繊維である繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明又は第2の発明において、ポリプロピレン系樹脂(ア)が、プロピレン単独重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂である繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明乃至第3の発明の何れか1つの発明において、有機繊維(イ)が、ポリエチレンテレフタレート繊維である繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明の何れか1つの発明において、射出工程(B)における金型キャビティ・クリアランス(T0)に対する得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)の比(発泡倍率:T1/T0)が、1.05〜3.0の範囲にある繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法が提供される。
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法によれば、従来の技術では達成困難であった発泡による耐衝撃性の低下や、常温時の剛性に対する高温時の剛性低下という欠点を抑制し、発泡により軽量化したまま板厚を維持することにより曲げ剛性が良好で、且つ繊維による外観悪化も少なく、安定した発泡形状の製品を得ることが可能である。
本発明は、特定のポリプロピレン系樹脂(ア)、有機繊維(イ)を特定の割合で含有してなる発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物に、特定重量部の化学発泡剤(ウ)を添加して溶融する溶融工程(A)と、前記溶融工程(A)から得られる特定温度範囲の溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物が、固定型と前進及び後退が可能な可動型とから構成され、得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)よりも小さい金型キャビティ・クリアランス(T0)において金型キャビティに射出充填される射出工程(B)と、可動型を得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)まで後退させ、発泡剤による膨張圧力によって金型キャビティの空隙を充填する発泡工程(C)とを有する型開き射出発泡成形法である繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法に関する。
以下、本願発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法を詳細に説明する。
1. ポリプロピレン系樹脂(ア)
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(ア)は次の条件(ア−i)〜(ア−ii)を満足する。
条件(ア−i)
ポリプロピレン系樹脂(ア)がチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂であり、かつポリプロピレン系樹脂(ア)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が25〜200g/10分である。
条件(ア−ii)
DSC法により測定されたポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)が140〜170℃である。
(1)各要件
(ア−i)メルトフローレート(MFR)
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(ア)全体のメルトフローレート(以下、MFRと略記することがある)(230℃、2.16kg荷重)は、25〜200g/10分であり、好ましくは40〜200g/10分、より好ましくは50〜150g/10分である。MFRをこの様な範囲とすることにより、本発明に用いられる発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は良好な成形性を発現すると共に、良好な外観の発泡成形体が得られることとなる。即ち、ポリプロピレン系樹脂(ア)全体のMFRが25g/10分未満であると有機繊維(イ)を配合した場合、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の流れ性が小さくなることから、成形性が著しく低下するおそれがある。その場合、得られる発泡成形体にショートショットが生じたり、大型の発泡成形体が得られなくなったりするおそれがある。一方、ポリプロピレン系樹脂(ア)全体のMFRが200g/10分を超えると、有機繊維(イ)の凝集による外観不具合が出現する蓋然性が高くなる。ポリプロピレン系樹脂(ア)全体のMFRは重合条件(重合温度、水素添加量等)を調整することや分子量降下剤を用いるなどして制御することができる。
なお、MFRは、JIS K7210に準拠し、試験温度=230℃、荷重=2.16kgで測定した値である。
(ア−ii)融解ピーク温度(Tm)
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(ア)のDSC(示差走査熱量計)法により測定された融解ピーク温度(Tm)は、140℃〜170℃であり、好ましくは155℃〜168℃、より好ましくは160℃〜165℃である。ポリプロピレン系樹脂(ア)のTmをこの様な範囲とすることにより、本発明により得られる発泡成形体のシャルピー衝撃強度や面衝撃エネルギについての良好な衝撃性を維持したまま、剛性や高温剛性が良好になる。即ち、ポリプロピレン系樹脂(ア)のTmが140℃未満であると、発泡成形体の剛性及び高温剛性が低下するおそれがある。また、ポリプロピレン系樹脂(ア)のTmが170℃を超える場合、製造が困難で実用的ではない。ポリプロピレン系樹脂(ア)のTmは、使用する触媒や、ポリプロピレン系樹脂(ア)としてプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体を使用する場合は、プロピレンと共重合するα−オレフィンの含有量を調節することにより制御することができる。
なお、Tmの測定は、示差走査熱量計(本願実施例ではセイコー・インスツルメンツ社製DSC6200型)を用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときのピーク温度により決定した。なお、その他の同等の示差走査熱量計を使用して決定することも可能である。
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(ア)は、好ましくはプロピレン単独重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂である。ポリプロピレン系樹脂(ア)は、2種以上を併用することもできる。プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体はプロピレンを主成分とした、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等、炭素数が2〜8程度のプロピレン以外のα−オレフィン1種または2種以上との共重合体などが挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいが、より好ましいのは剛性、高温時剛性、衝撃性のバランスに優れたブロック共重合体である。なお、上記の「主成分」とは、プロピレン系樹脂中に50重量%以上、好ましくは60重量%以上含まれるものを指す。
(3)製造方法
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(ア)の製造は、チーグラー・ナッタ触媒を使用して得られるものが発泡成形体の剛性、高温時剛性、衝撃性のバランスに優れる。
(i)チーグラー・ナッタ触媒
ポリプロピレン系樹脂(ア)の製造は、チーグラー・ナッタ触媒(以下、チーグラー触媒と略記することがある)を用いて実施する。チーグラー触媒としては、四塩化チタンを有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば特開昭47−34478号、特開昭58−23806号、特開昭63−146906号)、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルとからなる触媒(特開昭56―100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体からなる担持型触媒(特開昭57−63310号、特開昭58−157808号、特開昭58−83006号、特開昭58−5310号、特開昭61−218606号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等を例示することができる。
(ii)重合プロセス
経時的な運転手法としては、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエンなどの不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、これらの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる
。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることが
できる。
重合圧力は、選択するプロセスによって最適な圧力には差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、大気圧に対する相対圧力で0MPaより大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
また、分子量調整剤として水素を用いる場合は、プロピレンに対するモル比で1.0×10−6以上、1.0×10−2以下の範囲で用いることができる。好ましくは、1.0×10−5以上、0.9×10−2以下である。
チーグラー触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂(ア)は市販品を使用することもでき、例えば、日本ポリプロ社製ノバテックシリーズ等が好適に使用できる。これらの市販の樹脂の中から所望の物性を有する製品を入手し、使用してもよい。
2.有機繊維(イ)
本発明で使用される有機繊維(イ)は、以下の条件(イ−i)を満足する。
条件(イ−i)
有機繊維(イ)の融点が245℃以上である。
(1)条件(イ−i)
プロピレン系樹脂の標準的な射出成形温度条件範囲として190〜230℃程度が考えられ、その成形加工時に有機繊維(イ)が溶融可塑化せず繊維状充填材として分散されることが求められる。その為、有機繊維(イ)として融点(融点の無いものについては軟化点)は、245℃以上が必要である。ここで融点は、DSC測定によって求められる値である。DSC測定によって融点が観測されない場合、軟化点(ビカット軟化点)が245℃以上であることが好ましい。なお、有機繊維(イ)の融点(融点の無いものについては軟化点)について、上限は特にないが、一般的には400℃程度である。
本発明で使用する有機繊維(イ)は、有機合成繊維であり、ポリエステル繊維(代表例 ポリエチレンテレフタレート;融点約260℃ 熱可塑性)、ポリアミド繊維(代表例 ナイロン6−6;融点約268℃ 熱可塑性)、アクリル繊維(代表例 ポリアクリロニトリル ;融点約317℃ 熱可塑性)等から選択することができる。中でも本発明において取り扱いが容易であり、得られる成形体においては耐衝撃性や剛性などの各種機械物性が良好で、かつ工業規模での入手の容易さや原料コストなども考慮すると、ポリエステル繊維及びポリアミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機繊維が好適である。特にポリエチレンテレフタレート繊維(融点260℃、ガラス転移温度67℃)は、タイヤコード等種々の用途に用いられているので、様々な物性の製品が数多く市販されている。その為、その技術目的に応じて、所望の物性を有する製品を選択し、その目的を達成することが容易に可能となる。また、これらは工業規模での入手も容易であり、原料コストの観点からも好ましい。また複数種を選択し混合して用いてもよい。
有機繊維(イ)の長さは、有機繊維(イ)が長繊維の場合は通常4〜20mmであり、特には7〜13mmが好適である。長繊維である有機繊維(イ)の長さが、この範囲にあれば成形品中に分散した繊維が互いに絡まり、その結果該成形品が十分なシャルピー衝撃強度や面衝撃エネルギ等の耐衝撃性や比曲げ弾性率残存率等の高温剛性を発現する。また、成形原料としてのペレットが肥大化しすぎたりアスペクト比が大きくなりすぎず、成形機へ安定連続供給することができ、かつ得られる成形品表面外観の繊維凝集不具合が出現しにくい。一方、有機繊維(イ)が短繊維の場合の長さは通常0.1〜4mmであり、好ましくは1〜4mmである。短繊維である有機繊維(イ)の長さをこの様な範囲とすることにより、優れたシャルピー衝撃強度や面衝撃エネルギーの耐衝撃性を達成すると共に、繊維凝集による外観不具合が長繊維よりも出現しにくくなるという効果が得られる。
なお、有機繊維(イ)が短繊維の場合、その長さは原料として使用する有機繊維(イ)の長さのことを示している。また、有機繊維(イ)が長繊維の場合、例えば特開2001−049012号公報に記載の所謂プルトリュージョン法によって有機繊維含有ペレットが製造される場合は、ストランドをペレタイズする時のカット長、即ち有機繊維(イ)を含有するペレットの長さが有機繊維(イ)の長さとなる。
有機繊維(イ)の引張強度は、特に制限されるわけではないが、JIS L1013に準拠して測定した値が3cN/dtex以上、特には5cN/dtex以上であるものが好適である。また、有機繊維(イ)の引張強度は、50cN/dtex以下、さらには30cN/dtex以下、特に10cN/dtex以下であるものが好ましい。引張強度がこの範囲にあれば、成形機シリンダー内でペレットを可塑化させるときに繊維が延伸破断したりせず、得られる成形品が衝撃を受けて破壊したときに繊維の抜けより引張破断が優先して起こることがないので、該成形品に十分な耐衝撃性を発現させることができる。
本発明においては、高強度の有機繊維として、タイヤコード、テント、シート、コンクリート補強繊維等の用途で一般に市販されているものを好適に用いることが出来る。特にタイヤコード向け有機繊維には、ゴムマトリクスとの接着性を向上させる目的で極性樹脂を付着させているものがある。例えば有機繊維にエポキシ基を有する樹脂を付着させたもの、該繊維に更にゴムラテックス乃至イソシアネート化合物を付着させたもの、等が提案されている(特開平7−3566、特開平8−13346、特開2001−19927など参照)。本発明にはこうした極性樹脂が付着した有機繊維も好適に用いることが出来る。
上記、有機繊維に付着させる極性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール(レゾール型)樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリイミド、ウレタン樹脂、これらの共重合体、変性体などの熱硬化性樹脂が挙げられる。また、飽和ポリエステル、ポリアミド、アクリル系樹脂、これらの共重合体、変性体などの熱可塑性樹脂も挙げられる。極性樹脂としては、特に取扱・加工性や力学特性の観点から、熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂あるいはウレタン樹脂が好ましい。さらに好ましくは、エポキシ樹脂である。
上記エポキシ樹脂(エポキシ化合物を含む)の具体例としては、ジグリシジルエーテル化合物では、エチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類などが挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物では、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類などが挙げられる。好ましくは、反応性の高いグリシジル基を有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物である。さらに好ましくは、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、アルカンジオールジグリシジルエーテル類などが好ましい。
有機繊維の具体的な例としてはポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート:PET)繊維(帝人ファイバー社製、単糸繊度6.68dtex、引張強度7cN/dtex、融解ピーク温度(Tm)260℃)等が挙げられる。
3.含有割合(条件(1))
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(ア)と有機繊維(イ)の含有割合はポリプロピレン系樹脂(ア)と有機繊維(イ)との合計100重量%に対し、ポリプロピレン系樹脂(ア)が50〜95重量%、有機繊維(イ)が5〜50重量%である。特に有機繊維(イ)は5〜40重量%が好ましく、5〜30重量%が更に好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。なお、有機繊維(イ)をこの様な範囲とする場合、100重量%に対する残部はポリプロピレン系樹脂(ア)となる。有機繊維(イ)の含有割合をこの様な範囲とすることにより、シャルピー衝撃強度や面衝撃エネルギといった耐衝撃性が良好で、比曲げ弾性率残存率で示される良好な高温剛性を維持したまま、高い発泡倍率と良好な外観を達成することが可能となる。即ち、有機繊維(イ)の含有割合が5重量%未満では上記耐衝撃性や高温剛性が悪化することが有り、50重量%を超えると、繊維凝集による外観不具合が悪化する場合が有る。
4.任意添加成分
本発明で用いられる発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で熱可塑性樹脂の1種または2種以上を補助的に少量併用することも可能である。
また、一般に熱可塑性樹脂に添加される公知の物質として、分子量降下剤、滑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料や顔料などの着色剤や顔料MB、可塑剤、結晶化促進剤、結晶核剤、変性ポリオレフィンなどがあり、それらを配合することも可能である。それらは2種以上を併用してもよく、樹脂組成物に添加してもよいし、ポリプロピレン系樹脂(ア)の成分に予め添加されていてもよく、それぞれの成分においても2種以上併用することもできる。本発明において、任意添加成分の含有割合は特に限定されないが、通常、樹脂組成物100重量部において、0.01〜0.5重量部程度であり、その目的に応じて適宜選択される。
以下、代表的な任意添加成分について述べる。
(1)変性ポリオレフィン
変性ポリオレフィンは、酸変性ポリオレフィン及び/またはヒドロキシ変性ポリオレフィンであり、これらの変性ポリオレフィンを添加することによってポリプロピレン系樹脂(ア)と有機繊維(イ)との界面強度が向上することにより、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体において、剛性・衝撃強度などの物性などの向上などに有効である。
酸変性ポリオレフィンとしては、特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。酸変性ポリオレフィンは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン化合物共重合体(EPDMなど)、エチレン−芳香族モノビニル化合物−共役ジエン化合物共重合ゴムなどのポリオレフィンを、例えば、マレイン酸または無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸を用いてグラフト共重合し、変性したものである。このグラフト共重合は、例えば上記ポリオレフィンを適当な溶媒中において、ベンゾイルパーオキシドなどのラジカル発生剤を用いて、不飽和カルボン酸と反応させることにより行われる。また、不飽和カルボン酸またはその誘導体の成分は、ポリオレフィン用モノマーとのランダムもしくはブロック共重合によりポリマー鎖中に導入することもできる。
また、ヒドロキシ変性ポリオレフィンは、ヒドロキシル基を含有する変性ポリオレフィンである。該変性ポリオレフィンは、ヒドロキシル基を適当な部位、例えば、主鎖の末端や側鎖に有していてもよい。ヒドロキシ変性ポリオレフィンを構成するオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、4−メチルペンテン−1、ヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセンなどのα−オレフィンの単独または共重合体、前記α−オレフィンと共重合性単量体との共重合体などが例示できる。ヒドロキシ変性ポリオレフィンとして、ヒドロキシ変性ポリエチレン(例えば、低密度、中密度または高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ヒドロキシ変性ポリプロピレン(例えば、アイソタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレンホモポリマー、プロピレンとα−オレフィン(例えば、エチレン、ブテン、ヘキサンなど)とのランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体など)、ヒドロキシ変性ポリ(4−メチルペンテン−1)などを挙げることができる。
(2)分子量降下剤
分子量降下剤は、成形性(流動性)などの付与、向上に有効である。分子量降下剤は、例えば、各種の有機過酸化物や、分解(酸化)促進剤と称されるものなどが使用でき、有機過酸化物が好適である。
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチル−ジ−パーアジペート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、メチル−エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシブタン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラ−メチルブチルハイドロパーオキサイド及び2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ハイドロパーオキシ)ヘキサンのグループから選ばれる1種または2種以上からなるものを挙げることができる。
(3)滑材
滑材は、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の成形時の離型性などの付与、向上に有効である。滑材としては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸ブチル、シリコーンオイルなどを挙げることができる。
(4)酸化防止剤
酸化防止剤は、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物及びその成形体の品質劣化の防止に有効である。酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系やイオウ系の酸化防止剤などを挙げることができる。
(5)その他
また、本発明で使用される発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、ポリプロピレン系樹脂(ア)、有機繊維(イ)以外のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂やポリステル樹脂などの熱可塑性樹脂、エラストマー(ゴム成分)、タルクなどの無機フィラーなど従来公知の成分を配合させることが出来る。
5.発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明で使用される発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法は特に制限されず、例えば、有機繊維(イ)が短繊維の場合はポリプロピレン系樹脂(ア)とミキサー等で予めドライブレンドを行い二軸押出機(例えば日本製鋼所(株)製TEX30等)等にて溶融可塑化し引き取ったストランドを冷却後、ペレタイズする方法等で製造することが可能であり、有機繊維(イ)が長繊維の場合は、所謂プルトリュージョン法と呼ばれる方法を用いて製造することが可能である。なお、本明細書に記載の実施例に於いては、二軸押出機(日本製鋼所(株)製TEX30)にてポリプロピレン系樹脂(ア)を溶融可塑化し、押出機先端に接続した含浸槽を有するクロスヘッドダイに有機繊維(イ)を導入し、プルトルージョン法にて溶融PPを連続有機繊維に含浸被覆させ、引き取ったストランドを冷却後、有機繊維(イ)導入方向と直角にカット長10mmで切断し、ペレタイズした。得られるペレットでは、ペレットの長さ方向に有機繊維(イ)が同一長さで平行配列している。
有機繊維(イ)が長繊維である場合に用いられるプルトルージョン法は、基本的には連続した強化用繊維束を引き抜きながら樹脂を含浸するものであり、上記クロスヘッドの中に繊維束を通しながら押出機などからクロスヘッドに樹脂を供給し含浸するクロスヘッド方法のほか、樹脂のエマルジョンやサスペンジョンあるいは溶液を入れた含浸浴の中に繊維束を通し含浸する方法、樹脂の粉末を繊維束に吹きつけるかあるいは樹脂の粉末を入れた槽の中に繊維束を通し繊維に樹脂粉末を付着させたのち樹脂を溶融し含浸する方法などが知られている。本発明では何れの態様も利用できるが、特に好ましいのはクロスヘッド方法である。また、これらのプルトルージョン法における樹脂の含浸操作は、1段で行うのが一般的であるが、2段以上に分けてもよく、更に、含浸方法を異にして行ってもよい。
加工の際、有機繊維(イ)が溶融可塑化しない様な加工温度でポリプロピレン系樹脂(ア)と複合化されることが求められる。加工温度は、有機繊維(イ)が供される部位においてポリプロピレン系樹脂(ア)が溶融するように、ポリプロピレン系樹脂(ア)の溶融ピーク温度(Tm)以上であり、特に170℃以上が好適である。加工温度の上限は、有機繊維(イ)の融点(融点の無いものについては軟化点)が320℃以下の場合はそれより20℃低い温度とし、該融点が320℃以上の場合、及び有機繊維(イ)が加熱しても溶融可塑化しない場合は300℃とすることが好適である。加工温度が300℃以下であれば、ポリプロピレン系樹脂(ア)が著しく熱分解劣化せず、引火または発火する恐れもない。
溶融含浸物は、加熱溶融後、押出されてストランドとなり、切断可能な温度まで冷却され、カッターで切断されてペレットとなる。ペレットの形状は特に限定されず、具体的には円柱状、角柱状、板状、さいころ状などが挙げられる。このようにして得られたペレットでは、有機繊維は実質的に同じ長さで、各繊維の方向が押し出された方向、すなわちペレットの長さ方向に揃っている。
また、上記ペレットは、2種類以上の異なる有機繊維の種類や濃度、異なるポリプロピレン系樹脂(ア)の混合物であってもよい。
なお、本発明のペレットは、上記狭義のペレットの他に、ストランド状、シート状、平板状なども含む広義の意味でも用いられる。
本発明の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物からなるペレットの寸法は、通常は4〜20mmであり、特には7〜13mmが好適である。有機繊維(イ)が長繊維でプルトリュージョン法によってペレットとされる場合、有機繊維(イ)の長さがこの範囲となるので、成形品中に分散した繊維が互いに絡まり、その結果該成形品が十分な耐衝撃性を発現する。また、成形原料としてのペレットが肥大化しすぎたりアスペクト比が大きくなりすぎず、成形機へ安定連続供給することができ、かつ得られる成形品表面外観の繊維凝集不具合が出現しにくい。一方、有機繊維(イ)として短繊維を用いる場合も、ペレットサイズをこの様な範囲とすることにより、成形機へ安定連続供給することができるという効果が得られる。
本発明では、この様にして得られた各種ペレットを成形に供するに際し、有機繊維(イ)の含有割合を所望の割合に調整することが可能である。例えば、得られた発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットに於ける有機繊維(イ)の含有割合を40重量%としておき、成形に供する際には所望の設定繊維重量含有割合(例えば10、20、30重量%)になるように、ポリプロピレン系樹脂(ア)を希釈用の成分として加えることができる。このような方法としては、各成分をヘンシェルミキサーで5分間混合した後、二軸混錬機(例えば日本製鋼所(株)製TEX30等)等にて設定温度(例えば210℃)で混錬造粒する方法を例示することができる。又この際に、顔料マスターバッチ等の任意成分を添加することも可能である。
一方、前記の方法にてペレットを得るに際し、ペレット自身を設定繊維重量含有割合(例えば10、20、30重量%)とし、得られたペレットをそのまま成形に使用してもよい。またその際に顔料を予め配合してもよい。
6.発泡成形体の製造方法および発泡剤の特性
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法は、前記方法で製造された発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物に化学発泡剤(ウ)を添加して行う型開き射出発泡成形法である。
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法について以下記載する。
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法は、下記条件(1)を満足する発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物に、化学発泡剤(ウ)を添加し溶融する溶融工程(A)と、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を金型キャビティに射出充填する射出工程(B)と、発泡工程(C)とを有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法であって、当該製造方法が型開き射出発泡成形法であり、溶融工程(A)が下記条件(A−i)を満足し、射出工程(B)が下記条件(B−i)〜(B−ii)を満足し、かつ発泡工程(C)が下記条件(C−i)を満足することを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法である。
条件(1)
発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物が、下記の条件(ア−i)〜(ア−ii)を満足するポリプロピレン系樹脂(ア)50~95重量%と、下記の条件(イ−i)を満足する有機繊維(イ)5~50重量%とを含有する(但し、ポリプロピレン系樹脂(ア)と有機繊維(イ)との合計を100重量%とする)。
条件(ア−i)
ポリプロピレン系樹脂(ア)がチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂であり、かつポリプロピレン系樹脂(ア)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が25~200g/10分である。
条件(ア−ii)
DSC法により測定されたポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)が140〜170℃である。
条件(イ−i)
有機繊維(イ)の融点が245℃以上である。
条件(A−i)
溶融工程(A)において、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して化学発泡剤(ウ)0.005〜8重量部を添加し溶融する。
条件(B−i)
射出工程(B)において用いられる金型が、固定型と前進及び後退が可能な可動型とから構成され、得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)よりも小さい金型キャビティ・クリアランス(T0)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を金型キャビティに射出充填する。
条件(B−ii)
射出工程(B)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の温度が、[ポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)]以上、[有機繊維(イ)の融点−10℃]以下である。
条件(C−i)
前記射出工程(B)を行った後、発泡工程(C)において可動型を得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)まで後退させ、発泡剤による膨張圧力によって金型キャビティの空隙を充填する。
射出成形機を用いた射出発泡成形体の製造方法には、ショートショット発泡成形法と型開き射出発泡成形法(コアバック法、Moving Cavity法、金型キャビティ拡張発泡成形法)が知られている。なかでも型開き射出発泡成形法は、得られる発泡成形体の表面の複雑なシボ形状の表面品質が均一であること、偏肉などの製品寸法精度に優れていること及び量産時の生産安定性に優れていることから、特にこのような特徴が求められる自動車内装部品等の製造には、有利である。しかし、従来は発泡を行うと、シャルピー衝撃強度や面衝撃エネルギ等の耐衝撃性が発泡前と比較し低下するという不具合が有った。本発明の製造方法では、特定のポリプロピレン系樹脂(ア)と特定の有機繊維(イ)とを所定の割合で含有する発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を、以下に示す各工程に供することにより、これらの不具合を解消することに成功した。
本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法は、溶融工程(A)、射出工程(B)及び発泡工程(C)を有している。以下、順にこれらの各工程について説明する。
(1)条件(A−i)
溶融工程(A)は、下記条件(A−i)を満足する。
条件(A−i)
溶融工程(A)において、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して化学発泡剤(ウ)0.005〜8重量部を添加し溶融する。
発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対する化学発泡剤(ウ)のより好ましい配合量は、0.01〜5重量部である。化学発泡剤(ウ)の配合量をこの様な範囲とすることにより、所望の発泡倍率を達成し得るだけの発泡が可能であり、ガスによる表面外観不具合が小さく、シャルピー衝撃強度や面衝撃エネルギ等の耐衝撃性が良好となる、という効果が得られる。即ち、配合量が0.005重量部未満であると、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物が充分に発泡しない場合があり、一方、配合割合が8重量部を超えると、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物および射出発泡成形体の衝撃強度などの機械的強度が低下したり、二次発泡現象(過剰に残存した発泡ガスによって射出発泡成形体の表面が火膨れ状に膨れる現象)を生じたりする場合が有る。また、ポリプロピレン系樹脂に比べて、一般的に化学発泡剤は合成に要する工程が多く、かつ少量での生産となる為、主材のポリプロピレン系樹脂よりもコストが高く、配合量が増えすぎると経済的にも不利な傾向となる。なお、化学発泡剤(ウ)については、後に詳述する。
(2)条件(B−i)
射出工程(B)は、下記条件(B−i)を満足する。
条件(B−i)
射出工程(B)において用いられる金型が、固定型と前進及び後退が可能な可動型とから構成され、得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)よりも小さい金型キャビティ・クリアランス(T0)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を金型キャビティに射出充填する。
射出工程(B)において用いられる金型は固定型と前進及び後退が可能な可動型とから構成されるが、これは固定型は射出成形機の固定ダイプレートに固定され、溶融状態の樹脂を射出シリンダー先端より供給するランナ部分を有する。ランナはキャビティー入口のゲート迄繋がっている。製品形状によりゲート及びキャビティーの形状等を有する。可動型は射出成形機の移動ダイプレートに固定される。そのためダイプレートと同時に移動する。製品形状によりゲート及びキャビティーの形状等を有する。
初期肉厚T0として通常は1.0mm〜5.0mm、好ましくは1.0〜3.0mmである。また発泡倍率:T1/T0は、1.05〜3.0であることが好ましく、1.5〜3.0がより好ましい。初期肉厚T0をこの様な範囲とすることにより、例えば自動車内装部品のドアトリム等の大きな製品でも射出充填が可能となり、十分に発泡した成形体を得ることが可能となる。即ち、T1/T0が1.05未満であると発泡成形自身の特性である軽量化が発現され難く、また、3.0を超えるためには多くの発泡剤添加が必要となり、発泡成形品の厚みが不均一になるおそれがある。
本発明の製造方法では、金型キャビティ・クリアランス(T0)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を金型キャビティに射出充填する。ここで溶融状態とはポリプロピレン系樹脂が溶融し且つ含有する有機繊維が(A)工程内でせん断発熱から一部が溶融分散した状態であることを言い、半溶融状態とはポリプロピレン系樹脂が溶融し、含有する有機繊維が溶融はしていないが常温に比べ軟化している状態であることを言う。ここで、射出充填時の充填時間が長いと、充填した発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の冷却固化により、発泡工程(C)において十分に発泡できないという悪影響が懸念される為、充填時間が短い事が望まれる。射出充填時間は製品形状の大きさや成形機の能力、成形条件等の影響もあるが、一般的な自動車内装部品における射出充填時間は、通常10.0秒以内、好ましくは6.0秒以内である。射出充填時間をこの様な範囲とすることにより、製品全体に均一な発泡性が得られるという効果が得られる。
(3)条件(B−ii)
射出工程(B)は、下記条件(B−ii)を満足する。
条件(B−ii)
射出工程(B)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の温度が、ポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)以上、有機繊維(イ)の融点−10℃以下である。
射出工程(B)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の温度が、ポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)以上、有機繊維(イ)の融点−10℃以下であり、好ましくはポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)+10℃以上、有機繊維(イ)の融点−15℃以下、更に好ましくはポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)+20℃以上、有機繊維(イ)の融点−30℃以下、特に好ましくはポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)+30℃以上、有機繊維(イ)の融点−40℃以下である。射出工程(B)における、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の温度をこの様な温度範囲とすることにより、有機繊維の金型内流動中のせん断発熱による融解が少ないので、繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体においてシャルピー衝撃強度や面衝撃エネルギ等の耐衝撃性が高く、比曲げ弾性率残存率で示される高温時の剛性低下が少ない、という効果が得られる。また、ポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度以下であると流動性の低下及び発泡倍率が低下する傾向となる。なお、ここでいう発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の温度とは、溶融工程(A)の射出シリンダー内の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を熱電対で測定した温度、又は射出した直後の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を熱電対で測定した温度のことをいう。また、射出シリンダー設定温度を発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の温度と見なしてもよい。制御方法としては、例えば溶融工程(A)における射出シリンダー温度設定により決定することができる。
(4)条件(C−i)
発泡工程(C)は、下記条件(C−i)を満足する。
条件(C−i)
前記射出工程(B)を行った後、発泡工程(C)において可動型を得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)まで後退させ、発泡剤による膨張圧力によって金型キャビティの空隙を充填する。
発泡工程(C)における得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランスT1は通常は1.5mm〜8mm、好ましくは1.5mm〜5.0mm、2.0mm〜4.0mmがより好ましい。このような範囲にすることにより現行重量からの軽量化が可能であり、面に対して均一な発泡性が得られるという効果がある。金型キャビティ・クリアランス(T1)は、得られる発泡成形体の形状位置に相当、即ち得られる発泡成形体の厚さに相当する。
発泡工程(C)において可動型を後退(移動)させるに際し、「油圧式の可動型」を使用するよりも、「電動式の可動型」を使用するのが好ましい。電動式の可動型を使用することにより、可動型の移動において作業環境温度や稼働時間による差異が生じにくく、油圧式の可動型を使用するよりも精度良い製品が継続して得られる、という利点を有する。
本発明の製造方法である化学発泡剤を用いる型開き射出発泡成形法の射出工程(B)において、溶融樹脂からのガス発散防止による更なる製品外観向上を狙って、金型キャビティへ予めガスを注入した状態で溶融樹脂を射出充填する金型カウンタープレッシャー法を追加してもよい。注入するガスの種類は空気、N、CO等を用いることができ、それらの混合ガスであってもよい。また化学発泡剤を用いるので溶融樹脂中の発泡ガス圧は0.4〜0.5MPaと物理発泡剤を用いる場合に比べ低く、金型キャビティへ注入する必要ガス圧は、0.4〜0.5MPaより高く1MPa以下の安全な低圧ガスで対応可能である。
本発明の製造方法において、製品意匠性を高めるため表皮加飾成形法、多層成形法、サンドイッチ成形法のいずれかの1つを組み合わせてもよい。
(5)化学発泡剤(ウ)
本発明では、化学発泡剤(ウ)を使用することを必須要件とする。
(i)種類、機能等
本願では化学発泡剤を使うことが必須である。その他の発泡剤としては物理発泡剤やマイクロカプセル等が知られている。
物理発泡剤は高圧のガスや超臨界流体などを発泡剤として取り扱うことから、ガス注入に際して、専用の流量制御機器を用いるとともに、射出成形機の射出シリンダーに専用のインジェクターを設けることが必要となる。設備の耐圧を確保する為に流量制御機器が大掛かりで且つ射出シリンダー複雑になり、工業的規模での製造が現実的ではない。併せて設備投資も巨額になるので工業的規模での生産には不向きな技術である。また、高圧がゆえにガス量の制御やガス注入量の安定性に関しても、本発明の方法と比較して難しいことから、量が多すぎる場合製品表面にのガス痕が目立ち外観品質や生産安定性が課題となる。ガス量の制御のやガス注入量の安定性では注入ガス量が設定に対し大きくなれば表面外観の悪化や局所的に発泡セルが巨大化等し、衝撃等の物性低下が懸念される。注入ガス量が設定に対し小さくなれば偏肉等により均一な発泡厚みを持った製品が得られない。普及についても化学発泡剤に比べてまだ少ないと考えられる。
マイクロカプセルは外観の良い製品が得られることが一般に知られている。しかし、化学発泡剤と比較すると高い発泡倍率が得られにくく、発泡倍率を高くしようとするとその添加量が増えてしまい、得られる発泡成形体の各種物性への影響が出てくることが懸念されるなど、多くの課題がある。併せて、マイクロカプセルは製品の選択幅が狭く、所望の物性に対して必要な製品の入手が困難な場合が有り、また、工業規模で使用する為に大量の入手も困難な場合が有る。このような事情から、化学発泡剤と比較し、工業的規模で大量に生産するには不向きな技術である。
化学発泡剤(ウ)は粉末として入手可能であり、使用樹脂材料にドライブレンドして使用することができる。また、化学発泡剤(ウ)は発泡剤をPE等樹脂に練りこんだマスターバッチとして手に入れることも可能である。その場合、このマスターバッチを使用樹脂材料にドライブレンドすることによって容易に使用することができる。型開き射出発泡成形法の場合、型開き機構を持った射出成形機であれば特別な設備の追加を行うことなく、上記のドライブレンドを行った材料を用いて発泡成形を実施することが可能である。また化学発泡剤(ウ)は多くの会社から種々の製品が市販されているので、用途・目的によって発泡剤の種類を選択することもできる。
前述のように、化学発泡剤(ウ)は、本願の射出成形機で安全に使用できる。無臭で分解残渣も製品品質に影響を与えにくく、廃棄した場合にも無害である事から無機系が好ましい。
化学発泡剤(ウ)としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−ジフェニルジスルホニルアジドなどの有機系化学発泡剤が挙げられる。
これらの化学発泡剤には必要に応じて、他の添加剤を使用することができる。例えば、発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするなどのために、気体の発生を促すクエン酸の様な有機酸や、クエン酸ナトリウムの様な有機酸金属塩などを使用、併用添加することもでき、また、タルク、炭酸リチウムのような無機微粒子等の造核剤を添加することもできる。とりわけ好ましいものとして、重炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムとクエン酸ナトリウムの組み合わせ、重炭酸ナトリウムとクエン酸の組み合わせが挙げられる。
これら化学発泡剤(ウ)は、粉末状の粒子では、射出発泡成形時に、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物などにドライブレンドしてから射出成形機などに供給されたり、射出成形する際に、射出成形機のシリンダーの途中から注入したりして、シリンダー内などで分解して炭酸ガスなどの気体を発生するものである。これら化学発泡剤(ウ)の平均粒径は、1〜100μm程度のものが取り扱いや混合の観点から好ましく用いられる。
化学発泡剤(ウ)を使用するに際し、ポリオレフィン系樹脂を基材としたマスターバッチとして造粒加工したものを使用することもできる。このようなマスターバッチは、取扱性、貯蔵安定性、ポリプロピレン系樹脂への分散性に優れており、使用樹脂材料にドライブレンドして使用することによって、成形機のホッパーの汚染、成形体表面への粉の付着を抑制することができる。この場合、ポリオレフィン系樹脂を基材とし化学発泡剤(ウ)を10〜50重量%濃度のマスターバッチとして使用されるのが好ましい。
本発明により得られる発泡成形体は、耐衝撃性が高く且つ常温に対する高温時の剛性低下が少ないが特徴である。そのため、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス、ドアトリム、肘掛け、グリップノブ、各種トリム類、天井部品、ハウジング類、ピラー類、マッドガード、バンパー、フェンダー、バックドアー、ファンシュラウドなどの自動車用内外装及びエンジンルーム内部品をはじめ、テレビ・掃除機などの電気電子機器部品、各種工業部品、便座などの住宅設備機器部品、建材部品などの用途に、好適に用いることができる。特に、自動車部品、特に内装用部品に好適である。
上記製品に対し今まで発泡倍率を落として軽量化率を下げて衝撃等の欠点に対応していた製品や発泡以外の手法で軽量化していた製品の更なる軽量化などに適用が期待できる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、ポリプロピレン系樹脂組成物またはその構成成分についての諸物性は、下記の評価方法に従って測定、評価した。
1.評価方法
後述する方法によって得られた、発泡成形試験片の同一個所から、以下のサイズの短冊型試験片を切削加工し、下記試験を実施した。
長さ:80±2mm
幅:10±0.2mm、
厚さ:発泡無の時 2±0.2mm
発泡倍率1.5倍の時 3±0.2mm
発泡倍率2.0倍の時 4±0.2mm
1)比曲げ弾性率及び比曲げ弾性率残存率
曲げ弾性率をJIS−K7171に準拠し測定温度23℃で測定し、その値を下記で計算した「比重(発泡)」で除した値を23℃比曲げ弾性率とした。
比重(発泡)=未発泡時の比重/発泡倍率
(なお、未発泡時の比重はJISK7221に準拠し測定した。)
また、曲げ弾性率をJIS−K7171に準拠し測定温度80℃で測定し、その値を前述の方法で計算した「比重(発泡)」で除した値を80℃比曲げ弾性率とした。
こうして得られた23℃の比曲げ弾性率と80℃の比曲げ弾性率とから、以下の式に従って、23℃の比曲げ弾性率に対する80℃の比曲げ弾性率の残存率を求めた。
[23℃の比曲げ弾性率に対する80℃の比曲げ弾性率残存率]
=(80℃の比曲げ弾性率/23℃の比曲げ弾性率)×100 (%)
なお、当該残存率が30%以上であると、実用上温度変化に対して良好であると評価できる。
2)最大曲げ力(F
曲げ強さ(σfm)をJIS−K7171に準拠し測定温度23℃で測定し、下記、(式1)により求めたその際の力を最大曲げ力(F)とした。
Figure 2015189880
(式1)
ここで、各記号は以下の通りである。
L:支点間距離
h:試験片厚さ
b:試験片幅
なお、最大曲げ力が15N以上であれば、実用上曲げ剛性が良好であると評価できる。
3)シャルピー衝撃強度(測定温度−30℃)
シャルピー衝撃強度はJIS−K7111に準拠し、測定温度−30℃で測定した(エッジワイズ衝撃、シングルノッチ試験片)。なお、本試験の結果が5kJ/m以上であると、実用上良好であると評価できる。
また、後述する方法によって得られた、発泡成形試験片の同一個所から、以下のサイズの平板試験片を切削加工し下記試験を実施した。
長さ:100±2mm
幅:100±0.2mm、
厚さ:発泡無の時 2±0.2mm
発泡倍率1.5倍の時 3±0.2mm
発泡倍率2.0倍の時 4±0.2mm
4)−30℃面衝撃エネルギー
発泡成形体の衝撃エネルギーは、高速面衝撃試験機(ハイドロショットHITS−P10、島津製作所(株)製)を使用し、測定温度−30℃でダート径:5/8インチ、速度:2.25m/secで、内径が2インチのリングにより固定した平板試験片を打ち抜き、装置の付属計装化ソフトにより変位と荷重の波形を測定し、打抜きに要するエネルギー値をジュール単位で算出した。なお、本試験の結果が5J以上であると、実用上良好であると評価できる。
5)面に対する均一な発泡性
面に対する均一な発泡性は、平板試験片を用い、発泡成形体の板厚を目視により確認した。評価の基準は以下の通りである。
○:発泡成形体表面の全面に亘って、目視で薄い箇所が確認できない。
△:発泡成形体表面において、目視で部分的に薄い箇所が若干確認される。
×:発泡成形体表面において、目視で全体的に薄い事が確認されるか、全体的に薄い箇所が多々確認される。
なお、本評価において、○および△が実用性を有すると、判断されるレベルである。
6)繊維凝集による外観不具合
発泡成形体の表面の繊維の凝集による外観不良の程度を、平板試験片を用い、目視にて次の3段階で評価した。
○:表面に繊維の凝集が全く見受けられない
△:表面に繊維の凝集が部分的に若干存在する
×:表面に繊維の凝集が部分的に多数存在する、又は繊維の凝集が濃いので目立っている
なお、本評価において、○および△が実用性を有すると、判断されるレベルである。
7)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210に準拠し、試験温度=230℃、荷重=2.16kgで測定した。
8)融解ピーク温度(Tm)
示差走査熱量計(セイコー・インスツルメンツ社製DSC6200型)を用い、サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときのピーク温度を溶融ピーク温度(Tm)とした。
2.材料
1)ポリプロピレン系樹脂(ア):成分(ア)
(ア−I)
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたプロピレン−エチレンブロック共重合体[日本ポリプロ(株)製「ノバテックPP BC10HRF」、メルトフローレート100g/10分(230℃、2.16kg荷重)、融解ピーク温度(Tm)164℃]。
(ア−II)
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたプロピレン単独重合体[日本ポリプロ(株)製「ノバテックPP MA04」、メルトフローレート40g/10分(230℃、2.16kg荷重)、融解ピーク温度(Tm)164℃]。
(ア−III)
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたプロピレン単独重合体[日本ポリプロ(株)製「ノバテックPP MA3」、メルトフローレート10g/10分(230℃、2.16kg荷重)、融解ピーク温度(Tm)164℃] 100重量部に、分子量降下剤として、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.07重量部配合し、混練造粒(二軸混錬機使用、混練温度200℃)したものを用いた。
[メルトフローレート153g/10分(230℃、2.16kg荷重)〕、融解ピーク温度(Tm)163℃]
(ア−IV)
チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたプロピレン単独重合体[日本ポリプロ(株)製「ノバテックPP MA3」、メルトフローレート10g/10分(230℃、2.16kg荷重)〕、融解ピーク温度(Tm)164℃] 100重量部に、分子量降下剤として、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを0.145重量部配合し、混練造粒(二軸混錬機使用、混練温度200℃)したものを用いた。
[メルトフローレート291g/10分(230℃、2.16kg荷重)]、融解ピーク温度(Tm)161℃]
(ア−V)
メタロセン系触媒を用いて製造されたプロピレン−エチレンブロック共重合体[日本ポリプロ(株)製「ウェルネクスRMG02VC」、メルトフローレート20g/10分、(230℃、2.16kg荷重)、融解ピーク温度(Tm)130℃]。
なお、これらの特性を表1に纏めて示した。
Figure 2015189880
2)有機繊維(イ):成分(イ)
以下の市販の繊維を購入して使用した。記載した物性値はカタログに記載の値である。
(イ−I)
ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート:PET)繊維(帝人ファイバー社製、単糸繊度6.68dtex、引張強度7cN/dtex)、融解ピーク温度(Tm)260℃
(イ−II)
炭素繊維(三菱レーヨン社製、パイロフィルTR066A)
(イ−III)
ガラス繊維(日本電気硝子社製、T480H)
3)化学発泡剤(ウ):成分(ウ)
以下の市販のものを購入して使用した。記載した物性値はカタログに記載の値である。
(ウ−I)
化学発泡剤マスターバッチ(永和化成社製、ポリスレンEE25C、発泡剤濃度20%、発生ガス量75〜90ml/2.5g(220℃恒温下×20min))重炭酸ナトリウム・クエン酸系、低密度ポリエチレンベース。
3.実施例及び比較例
[実施例1〜11及び比較例1〜11]
(1)繊維含有ペレットの製造
二軸押出機(日本製鋼所(株)製TEX30)にて成分(ア)を溶融可塑化し、押出機先端に接続した含浸槽を有するクロスヘッドダイに、成分(イ)を導入し、プルトルージョン法にて溶融PPを連続有機繊維に含浸被覆させた。このとき成分(ア)と成分(イ)の重量比が60/40となるよう、成分(ア)の吐出量とストランド引取速度を調節した。引き取ったストランドはカット長10mmでペレタイズした。これを成分(エ)とする。
尚、成分(イ)として(イ−II)又は(イ−III)を使用する場合は、成分(ア)に無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三菱化学社製「MODEC P908」)を1重量部加えてドライブレンドを行い合計60重量部となるように調製した物を成分(ア)とした。
<成形用材料:規定繊維量の調整及び着色>
設定繊維重量濃度(10、20、30%)になるように、成分(エ)に成分(ア)を希釈用の成分として加え、また黒顔料マスターバッチ(ロンビック社製、顔料濃度(カーボンブラック)40wt%、低密度ポリエチレンベース)を成分(エ)と成分(ア)の合計100重量部に対して1重量部加えてドライブレンドを行い、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物とした。
(2)発泡成形試験片の成形方法
得られた発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、以下の通り型開き射出発泡成形法による射出発泡成形を行った。
射出成形機として、FANUC社製「α−300」、射出成形用金型として、発泡成形体を成形するための成形品部寸法が400mm×200mm、厚さが可変の平板形状を(今回は金型キャビティ・クリアランス(T0)を2.0mmtとした)有するものを用いて発泡成形を実施した。
なお、発泡成形は、次のようにして実施した。
溶融工程(A)において、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して(ウ−I)の化学発泡剤マスターバッチを3重量部(化学発泡剤(ウ)として0.6重量部)添加し、シリンダ温度200℃に設定し溶融した。
射出工程(B)において用いられる金型は、固定型と前進及び後退が可能な可動型とから構成され、初期の金型キャビティ・クリアランス(T0)を2mmとし、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物(温度は溶融工程(A)のシリンダ温度の200℃)を金型キャビティに射出充填した。なお、充填時間を1.0〜1.5秒とした。
射出工程(B)で充填後、1±0.5秒が経過後、発泡工程(C)において可動型を得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)まで後退させた。T1は発泡倍率1.5倍では3mm、2.0倍では4mmに設定した。その後発泡剤による膨張圧力によって金型キャビティの空隙を充填した製品を冷却し固化(金型キャビティ設定温度40℃、冷却設定時間20秒)させた。
なお、発泡無の場合は、発泡工程(C)において可動型を後退させず金型キャビティクリアランス(T1)を2mmのまま同様の操作を行った。
(3)評価
表2に示す組成のサンプルを、前記の射出発泡成形方法に従って成形し、評価を行った。結果を表2に示す。
なお比較例に於いて、発泡成形を行わなかった比較例1、3、6、8(発泡無)については、「面に対する均一な発泡性」の評価を行わなかった。また、比較例9では繊維凝集による外観不具合について、比較例10では面に対する均一な発泡性について、、比較例11では最大曲げ力について、明らかに劣るデータが得られたので、全ての評価は行わなかった。
Figure 2015189880
4.結果
表2に示す結果から、本発明の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法の発明要件をみたしている実施例1〜11の製造方法では、発泡による軽量化を実施しているにも拘らず、常温及び低温雰囲気の耐衝撃性が高く、且つ常温時の剛性に比べて高温時の剛性低下が少なく、十分な発泡倍率を達成可能であるので板厚が維持され最大曲げ力の変化も少なく、外観悪化も少ないという従来の技術では達成困難であった射出発泡体を得ることが可能であった。即ち、発泡倍率が良好で且つ低温時(−30℃)衝撃強度が高く、高温時の剛性低下が小さく、繊維凝集による外観不具合が小さく、均一な発泡性が得られ偏肉などがない。
一方、上記発明の特定事項を満たさない比較例1〜11においては、樹脂組成物およびその発泡成形体は、いずれかの評価項目において見劣りしている。
本願実施例では、発泡倍率が1.5倍以上、比曲げ弾性率残存率が30%以上、最大曲げ力が15N以上、−30℃のシャルピー衝撃強度が5kJ/m以上、−30℃面衝撃エネルギーが5J以上、面に均一な発泡性が得られ且つ繊維凝集による外観不具合が小さい、繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体が良好な評価結果を示していると評価した。実施例1〜11の製造方法ではすべてこのような条件を満足する繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体が得られている。
これに対して比較例1と比較例6はポリプロピレン系樹脂(ア)に有機繊維を添加せず、また発泡も行っていない、いわばポリプロピレン系樹脂(ア)自身の物性を示している。比較例1と比較例6を見ると各種物性のバランスが悪く、特に比曲げ弾性率残存率が不良である。
比較例2は発泡はしているものの有機繊維を使用していないことから、実施例1、2と比較して−30℃のシャルピー衝撃強度や面衝撃エネルギー、比曲げ弾性率残存率が不良である。また、ポリプロピレンケイ樹脂(ア)を変更した比較例7も発泡はしているものの、有機繊維を使用していないため実施例7〜8と比較して、−30℃のシャルピー衝撃強度や面衝撃エネルギが不良である。
比較例3はポリプロピレン系樹脂(ア)としてアーIを使用し、有機繊維を使用しているが発泡していないため、実施例2,4と比較し最大曲げ力が不良である。また、比較例8はポリプロピレン系樹脂(ア)としてアーIIを使用し、有機繊維を使用しているが発泡していないため、実施例8,10と比較し比曲げ弾性率残存率やし−30℃の面衝撃エネルギが不良である。
比較例9ではポリプロピレン系樹脂(ア)の流動性が高すぎるため繊維分散が悪い。その為、実施例5と比較して繊維凝集による外観不具合が多く見られ、明らかに外観に不具合が生じている。
比較例10ではポリプロピレン系樹脂(ア)としてメタロセン触媒で作られた非常に低結晶な樹脂組成の物を使用した為、化学発泡剤によって発生したガスが樹脂中から放出されやすく、実施例2や8と比較して、面に対する均一な発泡性が得られず、厚みが薄い箇所が全体的に見られた。また、メタロセン触媒で作られたポリプロピレン系樹脂は、非常に柔らかい樹脂組成であるため、実施例4や10と比較して比較例11では最大曲げ力が低く、不良であった。
本発明の発繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法は、低温時(−30℃)衝撃強度が高く、高温時の剛性低下が小さく、繊維凝集による外観や均一な発泡性に不具合が小さいことから軽量化且つ衝撃性などが要求される自動車内装部品、特にドアトリム類、ピラー類、各種トリム類、インストルメントパネル、グローブボックス、コンソールボックス、肘掛け、グリップノブ、などをはじめ、掃除機などの電気電子機器部品、各種工業部品、住宅設備機器部品などを製造する際に好適に用いることができ、産業上大いに有用である。

Claims (5)

  1. 下記条件(1)を満足する発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物に、化学発泡剤(ウ)を添加し溶融する溶融工程(A)と、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を金型キャビティに射出充填する射出工程(B)と、発泡工程(C)とを有する繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法であって、当該製造方法が型開き射出発泡成形法であり、溶融工程(A)が下記条件(A−i)を満足し、射出工程(B)が下記条件(B−i)〜(B−ii)を満足し、かつ発泡工程(C)が下記条件(C−i)を満足することを特徴とする繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
    条件(1)
    発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物が、下記の条件(ア−i)〜(ア−ii)を満足するポリプロピレン系樹脂(ア)50〜95重量%と、下記の条件(イ−i)を満足する有機繊維(イ)5〜50重量%とを含有する(但し、ポリプロピレン系樹脂(ア)と有機繊維(イ)との合計を100重量%とする)。
    条件(ア−i)
    ポリプロピレン系樹脂(ア)がチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリプロピレン系樹脂であり、かつポリプロピレン系樹脂(ア)全体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が25〜200g/10分である。
    条件(ア−ii)
    DSC法により測定されたポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)が140〜170℃である。
    条件(イ−i)
    有機繊維(イ)の融点が245℃以上である。
    条件(A−i)
    溶融工程(A)において、発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して化学発泡剤(ウ)0.005〜8重量部を添加し溶融する。
    条件(B−i)
    射出工程(B)において用いられる金型が、固定型と前進及び後退が可能な可動型とから構成され、得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)よりも小さい金型キャビティ・クリアランス(T0)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物を金型キャビティに射出充填する。
    条件(B−ii)
    射出工程(B)において、前記溶融工程(A)から得られる溶融状態又は半溶融状態の発泡成形用繊維強化ポリプロピレン系樹脂組成物の温度が、[ポリプロピレン系樹脂(ア)の融解ピーク温度(Tm)]以上、[有機繊維(イ)の融点−10℃]以下である。
    条件(C−i)
    前記射出工程(B)を行った後、発泡工程(C)において可動型を得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)まで後退させ、発泡剤による膨張圧力によって金型キャビティの空隙を充填する。
  2. 有機繊維(イ)が、ポリエステル繊維及びポリアミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機繊維である請求項1に記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
  3. ポリプロピレン系樹脂(ア)が、プロピレン単独重合体及びプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂である請求項1又は2に記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
  4. 有機繊維(イ)が、ポリエチレンテレフタレート繊維である請求項1乃至3の何れか1項に記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
  5. 射出工程(B)における金型キャビティ・クリアランス(T0)に対する得られる発泡成形体の形状位置に相当する金型キャビティ・クリアランス(T1)の比(発泡倍率:T1/T0)が、1.05〜3.0の範囲にある請求項1乃至4の何れか1項に記載の繊維強化ポリプロピレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
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