JP7523929B2 - 発泡成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、発泡成形体の製造方法に関する。
自動車部品用の射出発泡成形体は、一般的に二酸化炭素を発生させる重曹系の発泡剤を用いて製造されることが多い。しかしながら、外装用途では耐水テストがあり、重曹系発泡剤を用いて製造された成形体の場合、発泡剤残渣が水と反応し大量のブリスタ(膨れ)を発生することが問題であった。
一方、耐水テストでブリスタを発生しない発泡剤として、アゾジカルボン酸アミド(ADCA)が知られている。しかしながら、ADCAを用いた場合、発生した発泡ガスの樹脂への溶解度が低く、発泡成形体表面にディンプルやスワールマークが発生しやすいため、成形条件の幅が非常に狭いという問題があり、また、人体に対して有害であると考えられている窒素含有化合物等のガスが発生するという作業環境上の問題もある。
特許文献1には、炭酸水素ナトリウム(重曹)等の熱分解型発泡剤と、炭素数12~20の飽和脂肪酸塩と、クエン酸塩と、気泡核剤とを含む発泡剤組成物を用いて発泡成形体を製造する方法が開示されている。しかながら、重曹を僅かでも用いると、耐水テストでのブリスタ発生を防ぐことが困難である。
また、特許文献2には、熱可塑性樹脂に対して、ADCA等の有機系発泡剤のみからなる化学発泡剤を少量配合するとともに、物理系発泡剤も用いて発泡成形体を製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2の方法では、有機系発泡剤は、その添加量から発泡核剤として用いられており、また、射出時の樹脂温度も低めである(実施例で190℃)ため、物理発泡剤が必須となっている。
特開2004-323726号公報 特開2009-202527号公報
本発明の課題は、ブリスタの発生が抑制された外観良好な発泡成形体を、作業環境を悪化させることなく製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、炭酸水素塩を含まず、かつ、二酸化炭素を発生する発泡剤を樹脂に対して特定の量で配合し、特定の条件で溶融混錬して射出して発泡成形することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の態様の例としては、以下の[1]~[5]が挙げられる。
[1] ポリプロピレン系樹脂100質量部と、二酸化炭素を発生し、炭酸水素塩を含まない発泡剤0.5~5.0質量部とを含む樹脂組成物を、前記発泡剤のガス発生温度より10℃以上高い温度で溶融混錬する工程(1)と、
前記工程(1)で溶融混錬した樹脂組成物を金型に射出して発泡成形する工程(2)と
を含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
[2] 前記発泡剤が、カルボン酸またはカルボン酸塩である、項[1]に記載の発泡成形体の製造方法。
[3] 前記発泡剤が、クエン酸またはクエン酸塩である、項[1]または[2]に記載の発泡成形体の製造方法。
[4] 前記工程(2)において、前記樹脂組成物を射出する際の該樹脂組成物の温度が210~270℃の範囲である、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の発泡成形体の製造方法。
[5] 前記工程(2)において、金型のキャビティ内のガス圧力を0.1MPa以上1.0MPa未満に調整し、次いで前記樹脂組成物をキャビティ内に射出充填してキャビティ内ガスを排気した後、発泡させる、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の発泡成形体の製造方法。
本発明によれば、ブリスタの発生が抑制された外観良好な発泡成形体を、作業環境を悪化させることなく製造することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の発泡成形体の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂100質量部と、炭酸水素塩を含まず、二酸化炭素を発生する発泡剤0.5~5.0質量部とを含む樹脂組成物を、前記発泡剤のガス発生温度より10℃以上高い温度で溶融混錬する工程(1)と、前記工程(1)で溶融混錬した樹脂組成物を金型に射出して発泡成形する工程(2)とを含むことを特徴とする。
<ポリプロピレン系樹脂>
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと少量のエチレン、1-ブテンなどのα-オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンの単独重合体またはランダム共重合体と、非晶性または低結晶性のエチレン・プロピレン共重合体(製造条件によっては少量のポリエチレンを含有)とからなるブロック共重合体などが挙げられる。ポリプロピレン系樹脂を原料として用いて発泡成形することにより、外観がより良好で、かつ良好な発泡セルを有し、しかも軽量で剛性により優れた発泡成形体を容易に効率よく製造することができる。
<発泡剤>
本発明で用いられる発泡剤は、プロピレン系樹脂が溶融する温度で分解して発泡ガスとして二酸化炭素を発生し、炭酸水素塩を含まない有機系発泡剤である。このような発泡剤を用いると、発泡ガスが二酸化炭素であるため、成形時の作業環境を悪化させず、また、ポリプロピレン系樹脂への溶解度が比較的高いため、成形体の外観が良好となる。また、重曹(炭酸水素ナトリウム)等の炭酸塩を用いないことから、ブリスタの発生を抑制することができ、自動車外装部品に適用可能な発泡成形体を得ることができる。
上記発泡剤としては、例えば、カルボン酸およびカルボン酸塩などが挙げられ、具体的には、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、ショウノウ酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸およびニトリロ酸等のポリカルボン酸、ならびに、クエン酸二水素ナトリウムおよびシュウ酸カリウム等のポリカルボン酸の塩などが挙げられる。これらの中でもクエン酸およびクエン酸塩が好ましい。クエン酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム(クエン酸モノナトリウム、クエン酸ジナトリウム、クエン酸トリナトリウム)、クエン酸モノカリウム、クエン酸リチウムなどが挙げられる。
上記発泡剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。上記発泡剤の樹脂への配合量は、プロピレン系樹脂100質量部に対して、0.5~5質量部、好ましくは0.5~4質量部、より好ましくは0.6~3質量部である。発泡剤の配合量が前記範囲内であることにより、外観が良好な発泡成形体が得られる。
<他の成分>
本発明で用いられる樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、発泡成形体の用途に応じて、上述したプロピレン系樹脂および発泡剤以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、公知のゴム・エラストマー、無機充填剤、添加剤などが挙げられる。
ゴム・エラストマーとしては、具体的には、ポリブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、天然ゴム、熱可塑性ポリウレタン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-ブテンゴム、エチレン-オクテンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。
無機充填剤としては、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、ワラスナイト、ケイ酸カルシウム繊維、炭素繊維、マグネシウムオキシサルフェート繊維、チタン酸カリウム繊維、酸化チタン、亜硫酸カルシウム、ホワイトカーボン、クレー、硫酸カルシウムなどが挙げられる。これら無機充填剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
添加剤としては、結晶化核剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックスなどの公知の添加剤が挙げられる。また、上述した発泡剤以外の発泡剤(例えば、ADCA等の有機系発泡剤など)や物理発泡剤(例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の不活性ガス、および微小な外殻樹脂内に液状の炭化水素等を内包し加熱により発泡を行う熱膨張性マイクロカプセルなど)を、本発明の効果を損なわない範囲で用いてもよい。
<工程(1)>
本発明の製造方法における工程(1)では、上述したポリプロピレン系樹脂と、二酸化炭素を発生し、炭酸水素塩を含まない発泡剤とを含む樹脂組成物を、該発泡剤のガス発生温度より10℃以上高い温度で溶融混錬する。
ここで、発泡剤のガス発生温度は、発泡剤0.5gを2℃/minで昇温させ、発生ガス量の積算値を測定し、5mlのガスが発生した時の温度とする。ガス発生量は、例えば、特開2001-270956号公報に記載の方法など、公知の方法で測定することができる。
溶融混錬は、公知の方法で行うことができる。例えば、プロピレン系樹脂と発泡剤とをドライブレンドした樹脂組成物をホッパーから供給し、射出成形機のシリンダ内にて該樹脂組成物を上記温度条件で可塑化・混錬して溶融状態(以下「溶融樹脂」ともいう。)にする。
<工程(2)>
本発明の製造方法における工程(2)では、前記工程(1)で溶融混錬した樹脂組成物を、射出成形機に取り付けた型締状態の金型キャビティ内に射出して発泡させる。射出成型機は公知のものを用いることができる。
前記工程(2)では、樹脂組成物を射出する際の該樹脂組成物の温度が210~270℃の範囲であることが好ましい。これにより、外観の良好な発泡成形体を得ることができる。
上記発泡方法としては、キャビティ容積を変化させないショートショット発泡やヒケ防止発泡などの発泡方法でもよいが、キャビティ容積を増大させて発泡させる発泡方法(コアバック)が発泡倍率の高い射出発泡成形体が得られるため好ましい。
上記キャビティ容積を増大させて発泡させる方法(コアバック)においては、金型キャビティ内に溶融樹脂を射出した後、適度な時間を置き、キャビティ容積を増大させることが好ましい。キャビティ容積を増大させる好適な方法としては、金型キャビティの壁を構成する金属板を油圧シリンダもしくは空圧シリンダ、またはモータなどを使用した機構を用い移動させる方法や、射出成形機の可動側金型取り付け盤自体を型開方向に微小移動する方法などが挙げられる。
なお、射出開始時のキャビティの空間厚み(T0)が、好ましくは1.0~3.0mm、より好ましくは1.0~2.5mm、さらに好ましくは1.0~2.0mmの範囲にあると、成形体の外観が良好となる。また、射出開始時のキャビティの空間厚み(T0)と可動型後退後のキャビティの空間厚み(T1)との比(T1/T0)は、好ましくは1.2~3.0、より好ましくは1.2~2.5、さらに好ましくは1.3~2.0の範囲にある。
また、上記のように金型キャビティ内に一度に溶融樹脂を射出することにより、金型と接する溶融樹脂表面は内部に比べ早く固化し、成形体表面に未発泡のスキン層を形成することができる。これにより、固い製品形状を形成・維持することができ、内部の発泡状態が均一で、高剛性の成形体を得ることができる。前記スキン層の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上である。
上記スキン層を形成するためのコアバック開始のタイミングは、プロピレン系樹脂の種類、発泡剤の種類や量、金型温度、溶融樹脂温度により異なるが、たとえば発泡剤としてクエン酸ナトリウムを用い、通常のポリプロピレン樹脂を用いた場合には、射出完了後から0.5~4秒程度が好ましい。射出完了後からコアバック開始までの時間が短すぎると、溶融樹脂の先端はまだ流動しており、流動先端にスワールマークが発現し、外観の悪化の原因となったり、十分な厚みのスキン層が形成されないことがある。また、射出完了後からコアバック開始までの時間が長すぎると溶融樹脂の固化が進行して、コアバックしても十分な発泡倍率が得られない。なお、このコアバック開始のタイミングは装置の設定値ではなく、実際に金型が開くタイミングとなる。ただし、通常の射出成形機においては、射出完了後からコアバック開始までの時間をたとえ0秒に設定しても、射出時の型締め圧力が低下する時間が0.5~1秒程度存在するため、設定上は射出完了と同時に型開きをする設定を行ってもショートショットやスワールマーク発生の問題はほとんど起こらない。
コアバック時の可動型移動速度も、成形体厚み、プロピレン系樹脂の種類、発泡剤の種類、金型温度、溶融樹脂温度により異なるが、たとえば発泡剤としてクエン酸ナトリウムを用い、通常のポリプロピレン樹脂を用いた場合、0.01~100mm/秒程度が好ましい。可動型移動の速度が遅過ぎると、コアバックの途中で溶融樹脂が固化し、十分な発泡倍率が得られないことが有る。また、可動型移動の速度が速すぎると発泡セルの発生・成長が型の移動に追随せず、発泡セルが破壊し良好な成形体が得られないことがある。
また、コアバックは、数段階に分けて行うことも可能であり、これにより高発泡、微細発泡セルを有する成形体が得られる。
金型温度は、使用するプロピレン系樹脂の成形に通常用いられる金型温度で成形するが、厚みが薄い成形体や、発泡倍率が高い成形体を得る場合は、通常の金型温度より高めに設定するとよい。たとえば、発泡剤としてクエン酸ナトリウムを用い、通常のポリプロピレン樹脂を用いた場合、金型温度は好ましくは10~80℃程度、より好ましくは20~60℃程度の範囲にある。
また、金型温度に関しては、プロピレン系樹脂として結晶性樹脂を使用する場合、射出する時の金型キャビティの表面温度を、該結晶性樹脂の結晶化温度から溶融温度の間にすると、成形体の表面にスワールマークが発現しない高外観で高発泡の成形体を得ることができる。また、プロピレン系樹脂として非結晶性樹脂を使用する場合においても、同様に、該非結晶性樹脂の軟化点から溶融温度の間がスワールマーク抑制の温度となる。ただし金型キャビティの表面温度を高くすると冷却が阻害され、金型キャビティの表面に接する溶融樹脂の表面温度を結晶化温度または軟化点以下に低下させないと成形体として金型から取り出すことが困難となる。このため成形サイクルが長くなるという問題や、金型温度を成形サイクル中に昇降させる温度制御装置を必要とするという問題がある。なお、このような金型温度を昇降させる機構を備え付けた金型も、本発明の成形体の製造方法に用いることができる。
他方、金型温度を昇降させるかわりに、金型キャビティ周囲を円形状、板状、チューブ、ホース状、矩形、台形など各種形状の断面を持つゴムシールにてシールして、金型キャビティ内にエア、二酸化炭素、窒素などのガスを注入して圧力を掛けた状態で射出を行う、ガスカウンタプレッシャ法を用いて成形を行う方法も、本発明の製造方法に適用することができる。例えば、金型のキャビティ内のガス圧力を0.1MPa以上1.0MPa未満に調整し、次いで前記樹脂組成物をキャビティ内に射出充填してキャビティ内ガスを排気した後に、発泡させることが好ましい。
また、本発明では、通常の射出成形で用いられるホットランナやシャットオフノズル、バルブゲートなどを利用することもできる。ホットランナやシャットオフノズル、バルブゲートは、ランナなど廃樹脂の発生を押さえるだけでなく、発泡剤を含有する樹脂組成物がランナからキャビティに漏れ出し、次サイクルの発泡成形体の外観不良や発泡不良を防止する効果がある。
<発泡成形体>
本発明の発泡成形体の製造方法によれば、成形体内部のセル形状、セル密度、発泡倍率に多少の分布が発生しても、スキン層の平滑性、剛性、耐湿性、軽量性、および外観に優れた発泡成形体が得られる。
本発明の製造方法では、発泡倍率および外観性能は、上述の射出される溶融樹脂の温度、射出速度、射出終了からコアバック開始までの待ち時間、コアバック量、コアバック速度、コアバック終了後の冷却時間などによって適宜制御することができる。
上記発泡成形体が独立気泡を有する製品の場合は、平均セル径は、0.1~1.0mm程度である。また、製品形状や製品の用途によっては、平均セル径が数mmでありそのセルの一部が連通したものが一部存在しても、成形体表面に内部セルのサイズまたは連通化による凹凸が生じなく、かつ成形体をある程度湾曲した時に成形体の表面と裏面との厚み変化がほとんど無ければ、成形体として問題は生じない。
高発泡製品の場合、発泡セルは共に会合・連通化し、発泡製品は一種の中空に近い状態になるが、空洞化した中に柱として樹脂の延伸された支柱が存在するため、高度に軽量化され、強固な剛性を有する製品を製造することが可能である。これら高発泡製品はダンボールなどの代替え品などに最適である。
本発明の製造方法で得られる発泡成形体の密度は、好ましくは0.2~0.8g/cm3の範囲、より好ましくは0.4~0.8g/cm3の範囲にある。本発明の製造方法で得られる発泡成形体の密度は通常前記範囲にあるため、軽量であり、自動車などの外装部品に好適に用いることができる。
本発明の製造方法で得られる発泡成形体は、水中または多湿環境下においても外観が悪化しないため、たとえばバンパー、モール、アンダーカバーなどの自動車外装材への適用、またパレット、コンテナなどの産業用用途への適用、その他にキッチン、トイレ、浴室などの水周り製品、たとえば洗濯機の洗濯槽や蓋、浴室の椅子などへの適用も可能となる。また、印刷、塗装または加飾加工が加えられた自動車外装材としても好適に用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例で得られた発泡成形体の評価方法は以下の通りである。
<デフォーム/ディンプル確認方法>
成形体の反突出し面に、蛍光灯の光等を反射させ像のゆがみを確認することで、凹み、変形の有無を確認した。デフォーム/ディンプルの評価としては、下記のディンプル、デフォームおよび成形体の厚み(板厚)のそれぞれを評価し、3つの項目全てが「〇」の場合を合格(表1中では「〇」)とし、3つの項目のうち1つでも「×」がある場合を不合格(表1中では「×」)とした。
≪ディンプル≫
凹み長さが10mm以下の小さな円形状凹みをディンプルとして評価した。一般的にはゲート近傍や成形体の中間から末端付近に発生することが多い。その凹みが成形体の5cm×5cm(=25cm2)に区分けした領域内に1つ以上存在した場合を「×」とし、それ以下の場合を「〇」とした。
≪デフォーム≫
ディンプルを除いた凹み長さが10mmを超える凹みや変形、もしくは大きなそり等をデフォームとして評価した。デフォームは成形体の流動末端近傍に発生しやすい。その蛍光灯反射像のゆがみ部とその周囲のゆがみの無い部分で板厚差が0.2mm未満の場合を「〇」とし、板厚差が0.2mm以上の場合を「×」とした。
≪板厚≫
板厚は、目標の3.0mm以上の場合を「〇」とし、3.0mm未満の場合を「×」とした。
<スワールマーク確認方法>
成形体の反突出し面を確認し、ゲートと末端の中間部で確認を行い、スワールマークが殆ど無い場合を「〇」とし、全面に明確に確認された場合を「×」とした。なお、今回の成形では射出前にキャビティ内に0.3MPaのエア圧力(ガスカウンタープレッシャ圧力)を掛けて発泡成形したものでスワールマークの評価を行った。また、成形体を塗装した場合、スワールマークの影響が見えなくなるため、評価は行わず合格(表1中では「-」)とした。
<ブリスタ確認方法>
「JIS K5600-6-2 水浸せき法」の試験方法に準拠し、「JIS D0202 自動車部品の塗膜通則」に記載の試験条件に基づいて、成形品を40℃の水槽内に240時間浸漬する試験を行った。試験後、「JIS K5600-8-2 膨れの等級」に準拠してブリスタの評価を行い、ブリスタの量と大きさが共に等級0もしくは1の場合を「〇」とし、等級2~5の場合を「×」とした。
<総合評価>
総合評価としては、上述したデフォーム/ディンプル、スワールマークおよびブリスタの評価において、1つでも「×」が存在した場合を不合格(表1中では「×」)とし、それ以外を合格(表1中では「〇」)とした。
[実施例1]
プロピレン系バンパー材樹脂(プライムポリマー(株)製、プライムポリプロ TSOP-PR6B)100質量部に、発泡剤としてクエン酸ナトリウムを含む化学発泡剤マスターバッチ(Adeka Polymer Additives Europe SAS製、商品名:ORGATER MB.BA.18)(以下、化学発泡剤マスターバッチを「発泡剤MB」と称する。)を3質量部(発泡剤成分で約0.8質量%)加えてドライブレンドすることで、発泡剤MBと樹脂ペレットの混合材料(混合ペレット)を調製した。
射出成形機のホッパーに上記の混合ペレットを供給し、シリンダ内にて樹脂温度220℃で溶融混錬した後に、射出発泡成形を行った。射出発泡成形の詳細は以下の通りである。
射出成形機として宇部興産機械(株)製の射出成形機(商品名:MD350S-III)を使用し、キャビティサイズが350mmx100mm、厚さが2.0mmの角板金型を使用して射出発泡成形を実施した。金型のゲートは流動長が最も長くなるように端部にサイドゲートを設けた。成形は、0.3MPaのエア圧力を掛けたキャビティ内に、発泡剤が溶解した220℃の溶融樹脂組成物を、表面温度が40℃の金型に0.6秒間でキャビティ内に射出充填すると同時にキャビティ内のエアを排気した。樹脂組成物の充填完了直後に可動型を1.0mmコアバックさせることで、キャビティの厚みを約3.0mmへと拡大し、縦350mm、横100mmの発泡成形体を得た。なお、射出時間は射出開始から樹脂組成物の全量を射出し終わるまでの時間とした。
得られた発泡成形体の表面はスワールマーク等の不良が無く外観は良好であった。また、成形体の厚み(板厚)の実測値および上記の方法で評価した結果を表1に示す。発泡成形体は発泡ガスの力により、可動型を押し開くことで設定されたキャビティ厚み(3.0mm)より0.1~0.4mm厚くなっていた。
[実施例2]
発泡剤をクエン酸に変更したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得て、評価を行った。クエン酸は、低密度ポリエチレンに20質量%の濃度で混錬し、マスターバッチ状に造粒して使用した。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
溶融混錬および射出成形時の樹脂温度を260℃にしたこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1と同様にして得られた発泡成形体に塗装を実施し、スワールマークの確認以外の評価を行った。なお、塗装は、脱脂や表面調整等の塗装前処理を施した発泡成形体サンプルに対し、水系のアクリル樹脂系プライマーを7~12μmの膜厚(乾燥膜厚)となるように塗布し、80℃で10分間焼き付けた。そして、アクリルウレタン樹脂系ベース塗料を15~20μm(乾燥膜厚)となるように塗布し、次いで、ウエットオンウエットでアクリルウレタン樹脂系クリヤー塗料を30~35μm(乾燥膜厚)となるように塗布し、80℃で30分間焼き付けた。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
発泡剤MBの添加量を5質量部(発泡剤成分で1.3質量部)にしたこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得て、評価を行った。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
溶融混錬および射出成形時の樹脂温度を200℃にしたこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得て、評価を行った。得られた成形体は、ガスカウンタプレッシャ法を適用したものも、適用していないものもスワールマーク等は見られなかったが、発泡不良によるデフォームが確認された。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
発泡剤として重曹系の化学発泡剤マスターバッチ(永和化成工業株式会社製、ポリスレンEE25C)を3質量部(発泡剤成分で約0.9質量部)添加したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得て、評価を行った。得られた成形体の外観は比較的良好であったが、ブリスタ試験において大量のブリスタが確認された。評価結果を表1に示す。
[比較例3]
発泡剤として重曹系の化学発泡剤マスターバッチ(永和化成工業株式会社製、ポリスレンEE65C)を2質量部(発泡剤成分で約0.8質量部)添加したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得て、評価を行った。得られた成形体の外観は比較的良好であったが、ブリスタ試験において大量のブリスタが確認された。評価結果を表1に示す。
[比較例4]
比較例2と同様にして得られた発泡成形体に、実施例4と同様の塗装を実施し、スワールマークの確認以外の評価を行った。得られた成形体の外観は良好であったが、ブリスタ試験において大量のブリスタが確認された。評価結果を表1に示す。
Figure 0007523929000001
表1中、「部」はプロピレン系樹脂100質量部に対して添加した質量部を表し、発泡剤種における「クエン酸塩」は化学発泡剤マスターバッチ(Adeka Polymer Additives Europe SAS製、商品名:ORGATER MB.BA.18)であり、「重曹A」は化学発泡剤マスターバッチ(永和化成工業株式会社製、ポリスレンEE25C)であり、「重曹B」は化学発泡剤マスターバッチ(永和化成工業株式会社製、ポリスレンEE65C)である。

Claims (5)

  1. ポリプロピレン系樹脂100質量部と、二酸化炭素を発生し、炭酸水素塩を含まない発泡剤0.5~5.0質量部とを含む樹脂組成物を、前記発泡剤のガス発生温度より10℃以上高い温度で溶融混錬する工程(1)と、
    前記工程(1)で溶融混錬した樹脂組成物を金型キャビティ内に射出して発泡成形する工程(2)と
    を含み、前記工程(2)における発泡方法が、キャビティ容積を増大させて発泡させる方法であることを特徴とする発泡成形体の製造方法。
  2. 前記発泡剤が、カルボン酸またはカルボン酸塩である、請求項1に記載の発泡成形体の製造方法。
  3. 前記発泡剤が、クエン酸またはクエン酸塩である、請求項1または2に記載の発泡成形体の製造方法。
  4. 前記工程(2)において、前記樹脂組成物を射出する際の該樹脂組成物の温度が210~270℃の範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡成形体の製造方法。
  5. 前記工程(2)において、金型のキャビティ内のガス圧力を0.1MPa以上1.0MPa未満に調整し、次いで前記樹脂組成物をキャビティ内に射出充填してキャビティ内ガスを排気した後に、発泡させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡成形体の製造方法。
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