JP2015187964A - 非水電解液蓄電素子及びそれを備えた蓄電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属元素または半金属元素を含有する物質を負極活物質として用いた非水電解液蓄電素子において、微小短絡を抑制し、安全性の高い非水電解液蓄電素子を提供する。【解決手段】金属元素または半金属元素を含有する物質を負極活物質として含む負極と非水電解液を備え、前記非水電解液は、リチウムイオン(Li+)とビスオキサレートボラートイオン(B(C2O4)2−)及びホウフッ化物イオン(BF4−)を含有している非水電解液蓄電素子とする。【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解液蓄電素子及びそれを備えた蓄電装置に関する。
現在、リチウムイオン二次電池等に代表される非水電解液蓄電素子に使用されている負極活物質は、主に黒鉛系炭素質材料である。黒鉛質炭素材料は、炭素6原子に対してリチウム1原子を可逆的に挿入・脱離することが可能であり、その理論電気量は372mAh/gである。
近年、非水電解液蓄電素子は電気自動車の電源として用いられるようになり、電気自動車の航続距離向上のために、高容量化が求められている。
非水電解液蓄電素子の更なる高容量化のためには、従来の黒鉛質炭素材料に代わる、高容量材料の開発が必要である。この様な高容量材料の例として、金属元素または半金属元素を含有する物質があり、代表的な物質として、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、ケイ素酸化物(SiO、xは0<x≦2)、スズ酸化物(SnO)、ケイ素合金、スズ合金等を挙げることができる。
この様な金属元素または半金属元素を含有する物質を活物質として用いた非水電解液蓄電素子の性能を向上させるべく、活物質を含む電極だけに止まることなく、非水電解液の検討も盛んに行われている。
特許文献1には、「電池セル内部に正極と、シリコン系負極活物質を含有する負極ペーストを用いて作製された負極と、非水電解液とを有する非水電解質二次電池であって、下記一般式(1)で示されるイオン性化合物が、前記電池セル内部に含有されたものであることを特徴とする非水電解質二次電池。」(請求項1)とすることで、「本発明の非水電解質二次電池であれば、高温放置前後でのリカバリ特性が向上したものとなる。」(段落0019)という技術が開示されている。
また、「LiPFをエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶液に1.0mol/Lとなるよう溶解させた溶液を調製した(電解液Aとする)。次に、LiBOBをエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶液に1.0mol/Lとなるよう溶解させた溶液を調製した(電解液Bとする)。」(実施例1)、この2種類の電解液を種々の体積比で混合した実施例が記載されている。
特許文献2には、「正極合剤を含む正極、負極合剤を含む負極、ならびに非水溶媒および前記非水溶媒に溶解された第1リチウム塩と第2リチウム塩とを含む非水電解質を備え、前記負極合剤は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な材料とカーボンナノファイバを含み、前記リチウムイオンを吸蔵および放出可能な材料は、放電状態における体積Bに対する充電状態における体積Aの比A/Bが、1.2以上であり、前記第1リチウム塩は、LiBFおよびLiB(Cよりなる群から選択される少なくとも1種であり、前記第2リチウム塩は、前記第1リチウム塩以外の塩であり、前記非水電解質に含まれる前記第1リチウム塩の量は、前記カーボンナノファイバに対して、重量比で10−4以上であり、前記非水電解質に含まれる前記第1リチウム塩の濃度は、0.05mol/dm以下である非水電解質二次電池。」(請求項1)とすることにより、「非水電解質には、LiBFおよびLiB(Cよりなる群から選択される少なくとも1種が含まれているため、カーボンナノファイバの表面に、そのリチウム塩に由来する保護膜が形成される。これにより、充電時に非水電解質の構成成分に由来する被膜が、カーボンナノファイバの表面に形成されることが抑制される。さらに、カーボンナノファイバの絡み合いによって形成される空間が保たれ、負極合剤と負極集電体との集電性が維持できる。このため、高容量でサイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供することが可能となる。」(段落0009)という技術が開示されている。
また、「エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2:3で含む非水溶媒の混合物に、LiPFを1mol/Lの濃度で溶解し、非水電解質b−0を得た。」(段落0041)、「非水電解質b−0に、LiBFを、CNFに対するLiBFの割合が1.0×10−2となるように、LiB(Cを、CNFに対するLiB(Cの割合が1.0×10−2となるように溶解して、非水電解質b−28を得た。」(段落0051)という実施例が記載されている。
特許文献3には、「正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、前記負極は、リチウム(Li)を吸蔵および放出することが可能な金属元素または半金属元素の単体,合金および化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含み、前記電解質は、化1で表されるリチウム塩の少なくとも1種よりなる第1のリチウム塩と、LiPF,LiBF,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiClOおよびLiAsFのうちの少なくとも1種よりなる第2のリチウム塩とを含むことを特徴とする電池。」(請求項1)とすることにより、「高い導電率を保持しつつ、負極に安定な被膜を生成することができ、サイクル特性を向上させることができる。」(段落0013)という技術が開示されている。
また、実施例2−3には、第1のリチウム塩としてLiB(Cを0.4mol/dm、第2のリチウム塩としてLiBFを1mol/dm含む非水電解液、実施例2−8には、第1のリチウム塩としてLiB(Cを0.2mol/dm、第2のリチウム塩としてLiBFとLiPFを0.5mol/dmずつ含む非水電解液、が記載されている。
特開2013−105649号公報 特開2007−207465号公報 特開2005−79057号公報
本発明者らは、金属元素または半金属元素を含有する物質を負極活物質として用いた非水電解液蓄電素子について、検討を行った。その結果、非水電解液蓄電素子内において、金属元素または半金属元素を含有する物質が何らかの理由により正極と同等またはそれより貴な電位にさらされると、金属元素または半金属元素を含有する物質が非水電解液中に溶解し、溶解により生じた金属元素または半金属元素のイオンが負極の電気化学反応場において還元されることで金属または半金属単体として析出し、これに起因する非水電解液蓄電素子の微小短絡(ソフトショート)が生じる虞があることが判明した。
特許文献1〜3には、非水電解液蓄電素子に用いられる非水電解液に含有される種々の非水電解質の組み合わせが記載されているが、上記の様な微小短絡を抑制する非水電解質の組み合わせについては言及されていない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属元素または半金属元素を含有する物質を負極活物質として用いた非水電解液蓄電素子において、微小短絡を抑制し、安全性の高い非水電解液蓄電素子を提供することにある。
本発明の構成及び効果について、技術思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、後述の実施の形態若しくは実験例は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
本発明は、金属元素または半金属元素を含有する物質を負極活物質として含む負極と非水電解液を備え、前記非水電解液は、リチウムイオン(Li)とビスオキサレートボラートイオン(B(C )及びホウフッ化物イオン(BF )を含有している非水電解液蓄電素子である。
本発明によれば、微小短絡を抑制し、安全性の高い非水電解液蓄電素子を提供することができる。
本発明に係る非水電解液蓄電素子の一実施形態を示す外観斜視図 本発明に係る非水電解液蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置を示す 概略図
本発明は、非水電解液蓄電素子の負極活物質として、金属元素または半金属元素を含有する物質を用いる。負極活物質として金属元素または半金属元素を含有する物質を用いることにより、放電容量の大きい、高エネルギー密度の非水電解液蓄電素子を得ることができる。金属元素または半金属元素を含有する物質を含む物質は、Liイオンと固溶体や金属間化合物を形成することにより、Liイオンを多量に貯蔵することができる。金属元素または半金属元素を含有する物質としては、ケイ素を含有する物質が好ましい。具体的には、SiやSi合金或いはSiとOとを構成元素に含む一般式SiO(0≦x<2)で表される物質が挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、少量のB、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を含有することを排除するものではない。
金属元素または半金属元素を含有する物質の平均粒子径は、非水電解質蓄電素子の充放電サイクル特性を向上する観点から5μm以下であることが好ましい。さらに、1μm以下であることがより好ましい。
一般式SiO(0≦x<2)で表される物質においては、SiOおよびSiの両相を含む材料を使用することが好ましい。SiOのマトリックス中のSiにリチウムが吸蔵・放出されることで、体積膨張が小さく、充放電サイクル特性に優れており、両者を最適な比率で混合することにより、放電容量が大きく、しかも充放電サイクル特性に優れた物質が得られるためである。
さらに、一般式SiO(0≦x<2)で表される物質の中では、CuKα線を用いて測定されたX線回折測定(XRD)のプロファイルにおいて、2θ=46°〜49°の範囲に現れるピークの半値幅が3°未満であると、充放電サイクル特性が優れているので好ましい。
また、ケイ素を含有する物質の結晶性は、高結晶性のものからアモルファスなものまで使用することができるが、高結晶性のものが充放電サイクルによってアモルファスになると可逆電位が変化する虞があるため、アモルファスのものを用いることが好ましい。
さらに、ケイ素を含有する物質が、フッ酸、硫酸などの酸で洗浄されているものや水素で還元されているものも使用することが可能である。
また、負極活物質として、金属元素または半金属元素を含有する物質が導電性物質で被覆された活物質を用いることが好ましい。この場合、負極活物質粒子の表面の少なくとも一部が導電性物質によって被覆されていれば良い。金属元素または半金属元素を含有する物質を導電性物質で被覆することにより、充放電に伴う金属元素または半金属元素を含有する物質の粒子の体積変化による粒子と導電性物質との乖離を抑制することができるため、良好な充放電サイクル特性を得ることができるので好ましい。
金属元素または半金属元素を含有する物質を被覆する導電性物質としては、金属元素または半金属元素を含有する物質よりも電気伝導性に優れる物質であれば特に限定されるものではない。例えば、Cu、Ni、Ti、Sn、Al、Co、Fe、Zn、Ag若しくはこれらの二種以上の合金又は炭素材料が挙げられるが、これらの中では炭素材料を用いることが好ましい。
炭素材料には、カーボンナノチューブ、非結晶性炭素、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカーが挙げられる。また、カーボンあるいは非水電解質蓄電素子の特性向上を目的として、ホウ素等の異種元素が添加されていてもよい。
金属元素または半金属元素を含有する物質を、炭素材料で被覆する方法としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メタンなどを炭素源として気相中で分解し、粒子の表面に化学的に蒸着させるCVD方法、ピッチ、タールあるいはフルフリルアルコールなどの熱可塑性樹脂を粒子の表面に塗布した後に焼成する方法、あるいは粒子と炭素材料との間に機械的エネルギーを作用させて複合体を形成するメカニカルミリング法等を用いることができる。中でも、より均一に炭素材料を被覆できることからCVD法を用いることが好ましい。
また、金属元素または半金属元素を含有する物質が導電性物質で被覆された活物質において、活物質に対する導電性物質の割合は、1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは、2〜10質量%である。導電性物質の被覆量が1質量%未満の場合、金属元素または半金属元素を含有する物質の電子伝導性を補助する導電性物質が少なすぎるために、充放電容量が低下するので好ましくない。また導電性物質の被覆量が30質量%を超える場合、金属元素または半金属元素を含有する物質と非水電解質の間のイオン伝導が導電性物質により阻害されるために、充放電容量が低下するので好ましくない。
金属元素または半金属元素を含有する物質が導電性物質で被覆された活物質は、さらに炭素材料と混合することが好ましい。炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維などが挙げられる。中でも、導電性を充分に確保できることから、平均粒径(D50)が1〜15μmの鱗片状黒鉛を含有することが好ましい。金属元素または半金属元素を含有する物質が導電性物質で被覆された活物質:炭素材料の比は、1:9〜10:0とすることが好ましい。
負極に用いる結着剤としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル樹脂等を挙げることができる。
中でも、ポリイミド系の結着剤を用いることにより、金属元素または半金属元素を含有する物質の充放電サイクルに伴う体積変化に起因する合剤層の厚み方向の膨張を抑制することができるので好ましい。
負極合剤層中における結着剤の含有量は、負極合剤層の総質量に対して1〜50質量%が好ましく、特に2〜30質量%が好ましい。
正極活物質としては、負極活物質よりも充放電による可逆電位が貴であるものであれば特に限定されるものではない。一例としては、LiCoO、LiMn、LiNiCoO、LiNiMnCoO、Li(Ni0.5Mn1.5)O、LiTi12、LiV等のリチウム遷移金属複合酸化物、Li[LiNiMnCo]O等のリチウム過剰型遷移金属複合酸化物、LiFePO、LiMnPO、Li(PO、LiMnSiO等のポリアニオン化合物、硫化鉄、フッ化鉄、硫黄等を挙げることができる。
正極及び負極は、正極活物質又は負極活物質、導電剤、結着剤及びN−メチルピロリドン、トルエン等の有機溶媒又は水を加えて混練してペーストとした後、このペーストを銅箔、アルミ箔等の集電体の上に塗布して、50〜250℃程度の温度で加熱処理することにより好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
本発明に係る非水電解液蓄電素子に用いる非水電解液には、リチウムイオン(Li)とビスオキサレートボラートイオン(B(C )及びホウフッ化物イオン(BF )が含有されている。
後述する実施例に記載している様に、電解質塩としてLiBFとLiB(Cを用いると、非水電解液蓄電素子において微小短絡抑制効果が得られるため好ましい。
金属元素または半金属元素を含有する物質が3.0V(vs.Li/Li)より貴な電位状態にあるとき、HFの存在は、前記金属元素または半金属元素を含有する物質を非水電解液中に溶解させる原因となると考えられる。本発明によれば、B(C とBF が共存することにより、非水電解液中の含有水分によるフッ化水素(HF)の発生が抑制される。従って、非水電解液蓄電素子内において、金属元素または半金属元素を含有する物質が何らかの理由により正極と同等またはそれより貴な電位にさらされたとしても、非水電解液中への溶解が抑えられることで、微小短絡が抑制されているものと考えられる。
また、本発明においては、非水電解液中に含まれるビスオキサレートボラートイオン(B(C )のモル数(X)とホウフッ化物イオン(BF )のモル数(Y)の合計に対するビスオキサレートボラートイオン(B(C )の割合(X/(X+Y))が0.44以上0.98以下であることが好ましい。
B(C とBF の割合を上記範囲内とすることで、より優れた微小短絡抑制効果が得られるため好ましい。さらに好ましくは、0.71以上0.98以下である。
さらに、ホウフッ化物イオン(BF )の割合がビスオキサレートボラートイオン(B(C )のモル数とホウフッ化物イオン(BF )のモル数の合計に対して、0.02以上であると、ビスオキサレートボラートイオンの解離性の低さに起因する非水電解液蓄電素子の高率充放電特性の低下を抑制することができるので好ましい。
また、非水電解液蓄電素子の電気化学的特性等を向上させる目的で、他の電解質塩を含有させても良い。
他の電解質としては、LiClO,LiAsF,LiPF,LiSCN,LiBr,LiI,LiSO,Li10Cl10,NaClO,NaI,NaSCN,NaBr,KClO,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO),LiC(CFSO,LiC(CSO,(CHNBF,(CHNBr,(CNClO,(CNI,(CNBr,(n−C、NClO,(n−CNI,(CN−maleate,(CN−benzoate,(CN−phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられる。
但し、LiPFについては、微小短絡抑制効果を阻害する傾向があることから、非水電解液中に含まれる(PF6)イオンのモル数(Z)割合を、B(C のモル数とBF のモル数とPF6のモル数の合計に対するPF6の割合(Z/(X+Y+Z))を0.29未満とすることが必要である。好ましくは0.15未満、より好ましくは0.05未満、特に好ましくは0.02未満である。
非水電解液における電解質塩の濃度としては、高い蓄電素子特性を有する非水電解液蓄電素子を得るために、0.1mol/l〜5mol/lが好ましく、さらに好ましくは、0.5mol/l〜2.5mol/lであり、特に好ましくは、0.8mol/l〜1.0mol/lである。
本発明に係る非水電解液蓄電素子に用いる非水電解液の非水溶媒としては、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。
例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、非水電解液蓄電素子に用いる非水電解液に、負極の電気化学反応場において還元分解されやすい添加剤を添加することが好ましい。
本発明では、非水電解液中にホウフッ化物イオン(BF )を含有している。この様に、BF が含まれる非水電解液を用いると、負極上に安定な被膜が形成されにくい傾向がある。そこで、還元分解されやすい添加剤を含有させることにより、負極上に安定な被膜が形成されることで、非水電解液蓄電素子の充放電特性の向上に寄与するものと考えられる。
上記添加剤としては、フッ素化エチレンカーボネート(FEC)、1,3−プロペンスルトン(PRS)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジグリコールサルフェート(DGLST)、ペンチルグリコールサルフェート(PEGLST)、硫酸プロピレン(PGLST)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミド(LiTFSA)及びリチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(LiFOP)等が挙げられる。中でも、非水電解液蓄電素子の充放電特性の向上への寄与度の観点から、フッ素化エチレンカーボネートが好ましい。
セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
セパレータの空孔率は強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
また、セパレータは、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタアクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。非水電解質を上記のようにゲル状態で用いると、漏液を防止する効果がある点で好ましい。
さらに、セパレータは、上述したような多孔膜や不織布等とポリマーゲルを併用して用いると、電解質の保液性が向上するため望ましい。即ち、ポリエチレン微孔膜の表面及び微孔壁面に厚さ数μm以下の親溶媒性ポリマーを被覆したフィルムを形成し、前記フィルムの微孔内に電解質を保持させることで、前記親溶媒性ポリマーがゲル化する。
前記親溶媒性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンの他、エチレンオキシド基やエステル基等を有するアクリレートモノマー、エポキシモノマー、イソシアナート基を有するモノマー等が架橋したポリマー等が挙げられる。該モノマーは、ラジカル開始剤を併用して加熱や紫外線(UV)を用いたり、電子線(EB)等の活性光線等を用いて架橋反応を行わせることが可能である。
図1に、本発明に係る非水電解液蓄電素子の一実施形態である矩形状の非水電解液蓄電素子1の概略図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解液蓄電素子1は、電極群2が外装体3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。そして、外装体内部やセパレーターに、リチウムイオン(Li)とビスオキサレートボラートイオン(B(C )及びホウフッ化物イオン(BF )が含有されている非水電解液が保持されている。
本発明に係る非水電解液蓄電素子の構成については特に限定されるものではなく、円筒型、角型(矩形状)、扁平型等の蓄電素子が一例として挙げられる。
本発明は、上記の非水電解液蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解液蓄電素子1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
(実施例1)
(作用極の作製)
活物質として活物質としてカーボンで被覆された酸化ケイ素(カーボン含有率5.9質量%、D50=4.5μm)、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び非水系溶媒としてNMPを用いて作用極ペーストを作製した。ここで、前記PVDFは13%NMP溶液(株式会社クレハ製#9130)を用いた。なお、活物質と結着剤の質量比率は90:10(固形分換算)とした。
作用極ペーストは、前記非水系溶媒の量を調整することにより、固形分(質量%)を調整し、マルチブレンダーミルを用いた混練工程を経て作製した。本実施例においては、この作用極ペーストの固形分濃度は30質量%に調整した。アルミニウム端子を取り付けたアルミニウムメッシュ集電体(6cm×1.5cm)の長辺の半分の両面に塗布し、80℃でNMPを除去した後、塗布部分同士を二重に重ね、塗布部分の投影面積が半分になるように折り曲げ、折り曲げた後の厚みが400μmになるようにプレス加工を行い、作用極とした。折り曲げた後の活物質の塗布面積は2.25cm、塗布質量は0.099gである。上記作用極は150℃で5時間以上の減圧乾燥を行って後述するセルに使用した。
(対極)
ステンレス鋼(品名:SUS316)製の端子を取り付けたステンレス鋼(品名:SUS316)製のメッシュ集電体の両面に、厚さ300μmのリチウム金属箔を貼り合わせてプレス加工したものを対極とした。
(参照極)
リチウム金属片をステンレス鋼(品名:SUS316)製の集電棒の先端に貼り付けたものを参照極とした。
(非水電解液)
まず、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、ホウフッ化リチウム(LiBF)を溶解させ、1.0mol/lのLiBF電解液を作製した。次に、同じ混合溶媒に、ビスオキサレートボラートリチウム(LiB(C)を溶解させ、0.8mol/lのLiB(C電解液を作製した。
そして、前記LiBF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で2:98の割合で混合することにより、非水電解液を調製した。なお、該非水電解液中の水分量は50ppm未満とした。この非水電解液中に含有される、ビスオキサレートボラートイオン(B(C )のモル数(X)とホウフッ化物イオン(BF )のモル数(Y)の合計に対するビスオキサレートボラートイオン(B(C )の割合(X/(X+Y))は、0.98である。
(セルの組み立て)
露点−40℃以下のArボックス中においてガラス製のセルを組み立てた。予め容器の蓋部分に導線部を固定した金メッキクリップに作用極と対極と参照極とを各1枚ずつ挟んだ後、作用極と対極が対向するように固定した。参照極は対極から見て作用極の裏側となる位置に固定した。次に、ポリプロピレン製カップに上記の様に調製した非水電解液を一定量入れたものをガラス容器内に設置し、そこに作用極、対極及び参照極が浸かるように蓋をすることでセルを組み立てた。
(実施例2)
前記LiBF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で5:95の割合で混合することにより、非水電解液を調製したことを除いては、実施例1と同様にして実施例2のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Y)は、0.94である。
(実施例3)
前記LiBF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で10:90の割合で混合することにより、非水電解液を調製したことを除いては、実施例1と同様にして実施例3のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Y)は、0.88である。
(実施例4)
前記LiBF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で25:75の割合で混合することにより、非水電解液を調製したことを除いては、実施例1と同様にして実施例4のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Y)は、0.71である。
(実施例5)
前記LiBF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で50:50の割合で混合することにより、非水電解液を調製したことを除いては、実施例1と同様にして実施例5のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Y)は、0.44である。
(実施例6)
前記LiBF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で75:25の割合で混合することにより、非水電解液を調製したことを除いては、実施例1と同様にして実施例6のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Y)は、0.21である。
(実施例7)
前記LiBF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で90:10の割合で混合することにより、非水電解液を調製したことを除いては、実施例1と同様にして実施例7のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Y)は、0.08である。
(比較例1)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、ホウフッ化リチウム(LiBF)を溶解させ、1.0mol/lのLiBF電解液を作製した。これを非水電解液として用いたことを除いては、実施例1と同様にして比較例1のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Y)は、0である。
(比較例2)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解させ、1.0mol/lのLiPF電解液を作製した。前記LiPF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で2:98の割合で混合することにより、非水電解液を調製したことを除いては、実施例1と同様にして比較例2のセルを作製した。この非水電解液中に含有される、ビスオキサレートボラートイオン(B(C )のモル数(X)と六フッ化リン酸イオン(PF )のモル数(Z)の合計に対する六フッ化リン酸イオン(PF )のモル数(Z)の割合(X/(X+Z))は、0.98である。
(比較例3)
前記LiPF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で25:75の割合で混合することにより、非水電解液を調製したことを除いては、実施例1と同様にして比較例3のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Z)は、0.71である。
(比較例4)
前記LiPF電解液と前記LiB(C電解液を質量比率で50:50の割合で混合することにより、非水電解液を調製したことを除いては、実施例1と同様にして比較例4のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Z)は、0.44である。
(比較例5)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解させ、1.0mol/lのLiPF電解液を作製した。これを非水電解液として用いたことを除いては、実施例1と同様にして比較例5のセルを作製した。この非水電解液のX/(X+Z)は、0である。
(クロノアンペロメトリー)
上記のようにして作製されたセルを、25℃に設定した恒温槽に移し、クロノアンペロメトリーを実施した。設定電位は4.2V(vs.Li/Li)、とし、測定時間は8時間とした。クロノアンペロメトリーにより計測された積算電気量(クーロン:C)を表1に示す。
Figure 2015187964
クロノアンペロメトリーにおいて、積算電気量が大きいということは、通電中に作用極場において、電気を消費する反応が進行していることを意味する。そして、その反応とは、作用極中の活物質に含有されているシリコンの非水電解液中への溶解反応であると考えられる。事実、本発明者らは、最も積算電気量が大きい値を記録した比較例5のセルを、クロノアンペロメトリーを計測した後に解体して、取り出した非水電解液を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP)装置を用いて分析し、作用極から溶解したと考えられるシリコンが検出されることを確認している。
表1からわかるように、実施例1〜7のセルの積算電気量は比較例1〜5のセルの積算電気量よりも小さい。このことは、実施例1〜7の非水電解液では、作用極中の活物質に含有されているシリコンの非水電解液中への溶解が抑制されているものと考えられる。つまり、非水電解液中にリチウムイオン(Li)の他に、ビスオキサレートボラートイオン(B(C )とホウフッ化物イオン(BF )が含有されていることで、3.0V(vs.Li/Li)より貴な電位において、シリコンの非水電解液への溶解が抑制された。
実施例1〜5は実施例6及び実施例7と比較して、積算電気量が格段に小さい。従って、非水電解液中に含まれるビスオキサレートボラートイオン(B(C )のモル数(X)とホウフッ化物イオン(BF )のモル数(Y)の合計に対するビスオキサレートボラートイオン(B(C )の割合(X/(X+Y))が0.44以上であることが好ましい。
また、比較例2〜5の結果から、非水電解液中にビスオキサレートボラートイオン(B(C )と六フッ化リン酸イオン(PF )が一定割合以上含まれている場合には、シリコンの非水電解液中への溶解が抑制できないことがわかる。
以上の知見から、非水電解液中にリチウムイオン(Li)の他に、ビスオキサレートボラートイオン(B(C )とホウフッ化物イオン(BF )が含有されていることで、シリコン等の金属元素または半金属元素を含有する物質が4V(vs.Li/Li)付近の電位に曝されても、非水電解液への溶解が抑制されることがわかる。従って、金属元素または半金属元素を含有する物質を負極活物質として用いた非水電解液蓄電素子が過放電等により負極の電位が4V(vs.Li/Li)付近まで上昇した場合や、正極に金属粉末が誤って混入された場合でも、金属元素または半金属元素の溶解が抑制されるので、非水電解液蓄電素子の性能低下を抑制できる。さらには、金属元素または半金属元素の溶解に起因する微小短絡が抑制されるので、非水電解液蓄電素子の安全性が向上する。
本発明は、金属元素または半金属元素を含有する物質を負極活物質として用いた非水電解液蓄電素子において、微小短絡を抑制し、安全性の高い非水電解液蓄電素子を提供することができるので、電気自動車用電源、電子機器用電源、電力貯蔵用電源等の幅広い用途の非水電解液蓄電素子に有用である。
1 非水電解液蓄電素子
2 電極群
3 外装体
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (4)

  1. 金属元素または半金属元素を含有する物質を負極活物質として含む負極と非水電解液を備え、前記非水電解液は、リチウムイオン(Li)とビスオキサレートボラートイオン(B(C )及びホウフッ化物イオン(BF )を含有している非水電解液蓄電素子。
  2. 前記非水電解液中に含まれるビスオキサレートボラートイオン(B(C )のモル数(X)とホウフッ化物イオン(BF )のモル数(Y)の合計に対するビスオキサレートボラートイオン(B(C )の割合(X/(X+Y))が0.44以上0.98以下である、請求項1に記載の非水電解液蓄電素子。
  3. 前記非水電解液中に含まれるビスオキサレートボラートイオン(B(C )のモル数(X)とホウフッ化物イオン(BF )のモル数(Y)の合計に対するビスオキサレートボラートイオン(B(C )の割合(X/(X+Y))が0.71以上0.98以下である、請求項1に記載の非水電解液蓄電素子。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解液蓄電素子を備えた蓄電装置。
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