JP2015186824A - 鋳造製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】応力を抑制できる鋳造製品を提供すること。
【解決手段】相手側部材3の複数箇所とそれぞれ接合される複数の接合チップ10が、鋳造金属材2に鋳包まれる。鋳造金属材2は、相手側部材3とは異種の金属材料から構成されるので、鋳造後、鋳造金属材2の冷却に伴う収縮によって鋳造金属材2に応力が生じる。しかし、鋳造金属材2に分散されて鋳包まれる複数の接合チップ10は、相手側部材3の複数箇所とそれぞれ接合されるので、接合チップ10の大きさを小さくできる。その結果、鋳造金属材2の冷却に伴う収縮によって鋳造金属材2に生じる応力を抑制できる。
【選択図】図1

Description

本発明は相手側部材と一部もしくは全部が重なる形態で接合される鋳造製品に関し、特に接合チップと鋳造金属材との熱膨張差を要因とする応力を抑制できる鋳造製品に関するものである。
従来より、例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の非鉄金属製の部材と、鉄系金属(鉄鋼)製の部材とを接合する場合、溶接により両部材同士を直接接合すると、それらは異種金属なので、接合界面に脆い金属間化合物が生成される。その結果、接合強度のばらつきが大きくなり接合の信頼性が低いものになることが知られている。
そこで、非鉄金属製の鋳造金属材で鉄系金属製の接合用素材の一部を鋳包むことにより、鋳造金属材と接合用素材とを一体化した鋳造製品を製造し、接合用素材を介して、異種金属である鋳造金属材と相手側部材とを接合する技術がある(特許文献1)。以下、図6を参照して特許文献1に開示される技術について説明する。図6(a)は従来の鋳造製品300に相手側部材303が接合された構造物の平面図であり、図6(b)は図6(a)のVIb−VIb線における構造物の断面図である。
図6(a)に示すように鋳造製品300は、鋳造金属材301に平板状の接合用素材302が鋳包まれている。鋳造金属材301は非鉄金属製であり、接合用素材302は鉄系金属製(鋼板)である。図6(b)に示すように鋳造金属材301は、第1面301a、第2面301b及び端面301cに囲まれた板状の部材であり、第1面301a及び第2面301bに沿って接合用素材302(鋼板)の一部が鋳包まれ、厚さの小さい端面301cから接合用素材302の残部が突設される。重ね抵抗溶接によりナゲットNを接合用素材302と相手側部材303との間の複数箇所(図6では3箇所)に形成することで、接合用素材302を介して鋳造金属材301と相手側部材303とが接合される。
特開2006−312192号公報
しかしながら上記従来の技術では、鋳造金属材301の端面301cの長手方向に亘る大きさの一体化された接合用素材302(鋼板)を鋳造金属材301に鋳包むので、鋳造後、鋳造金属材301の冷却に伴う収縮により、鋳造金属材301と接合用素材302との熱膨脹差が原因で、鋳造金属材301(特に接合用素材302の境界部A,B)に大きな応力が発生する。その結果、大きな残留応力が生じるという問題がある。残留応力が大きいと繰り返し外力を受けるときの破壊強度低下の原因となるおそれがある。また、発生する応力により鋳造製品が変形するおそれもある。
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、応力を抑制できる鋳造製品を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために請求項1記載の鋳造製品によれば、相手側部材と接合されるものにおいて、相手側部材の複数箇所と接合面がそれぞれ接合される複数の接合チップが、鋳造金属材に分散されつつそれぞれの接合面を少なくとも一面露出させて鋳包まれる。鋳造金属材は、相手側部材とは異種の金属材料から構成されるので、熱膨脹差のために、鋳造後、鋳造金属材の冷却に伴う収縮によって鋳造金属材に応力が生じる。しかし、鋳造金属材に分散されて鋳包まれる複数の接合チップは相手側部材の複数箇所とそれぞれ接合されるので、個々の接合チップの大きさを、従来の接合用素材に比べて小さくできる。その結果、鋳造金属材の冷却に伴う収縮によって接合チップが鋳造金属材に与える影響を小さくできるので、鋳造金属材に生じる応力を抑制できる効果がある。
請求項2記載の鋳造製品によれば、接合チップは、相手側部材に接触する接合面が接合され、その接合面を取り囲む稜を介して接合面に側面が交わる。側面に係止部が凸設または凹設され、少なくともその係止部が鋳造金属材に鋳包まれるので、請求項1の効果に加え、鋳造金属材と接合チップとの密着強度を向上できる効果がある。
(a)は本発明の実施の形態1における鋳造製品に相手側部材が接合された構造物の平面図であり、(b)は図1のIb−Ib線における構造物の断面図であり、(c)は接合チップの斜視図である。 (a)は接合チップがセットされた鋳包み用金型の断面図であり、(b)は相手側部材が接合された鋳造製品の断面図である。 (a)は接合チップがセットされた鋳包み用金型の断面図であり、(b)は相手側部材が接合された第2実施の形態における鋳造製品の断面図である。 (a)は接合チップがセットされた鋳包み用金型の断面図であり、(b)は相手側部材が接合された第3実施の形態における鋳造製品の断面図である。 (a)は第4実施の形態における鋳造製品の断面図であり、(b)は第5実施の形態における鋳造製品の断面図であり、(c)は第6実施の形態における鋳造製品の断面図であり、(d)は第7実施の形態における鋳造製品の断面図であり、(e)は第8実施の形態における鋳造製品の断面図であり、(f)は第9実施の形態における鋳造製品の断面図である。 (a)は従来の鋳造製品に相手側部材が接合された構造物の平面図であり、(b)は図6(a)のVIb−VIb線における構造物の断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態における鋳造製品1に相手側部材3が接合された構造物Aの平面図であり、図1(b)は図1のIb−Ib線における構造物Aの断面図であり、図1(c)は接合チップ10の斜視図である。
図1(a)及び図1(b)に示すように鋳造製品1は、鋳造金属材2に複数個(本実施の形態では4個)の接合チップ10が鋳包まれている。鋳造金属材2は非鉄金属製であり、接合チップ10は鋳造金属材2とは異種の金属材料であって、相手側部材3と同種ないし同系統の金属材料から構成されている。本実施の形態では、鋳造金属材2はアルミニウム又はアルミニウム合金製であり、相手側部材3及び接合チップ10は鉄系金属製である。
接合チップ10は、本体部11と、その本体部11から張り出す係止部12とを備え、それらが一体に形成される。係止部12は鋳造金属材2に囲まれ、本体部11の一部が、接合される相手側部材3に面する鋳造金属材2の第1面2aから露出する。重ね抵抗溶接により接合チップ10の本体部11と相手側部材3との間にナゲットNが形成される。
図1(c)に示すように接合チップ10は、本体部11が棒状(本実施の形態では円柱状)に形成され、係止部12が、本体部11の軸方向一端から全周に亘って径方向外側にフランジ状(円環状)に凸設される。本体部11は、相手側部材3に接触し界面にナゲットN(図1(b)参照)が形成される接合面11aと、接合面11aを取り囲む稜11bを介して接合面11aに交わる側面11cとを備えている。側面11cは鋳造金属材2に囲まれる面であり、係止部12は、鋳造金属材2の第1面2aと第2面2bとの間に内設される部位である。係止部12は、鋳造金属材2に囲まれることで接合チップ10を軸方向(図1(b)左右方向)に移動不能に拘束する。よって、係止部12により鋳造金属材2に対する接合チップ10の密着強度を確保できる。
なお、係止部12は、C面取りやR面取り等の面取り加工が、係止部12(フランジ)の稜に施されることが好ましい。係止部12の周りの鋳造金属材2に発生する応力が局所的に集中することを抑制するためである。
次に図2を参照して鋳造製品1の製造方法、及び、鋳造製品1の接合方法について説明する。図2(a)は接合チップ10がセットされた鋳包み用金型B1の断面図であり、図2(b)は相手側部材3が接合された鋳造製品1の断面図である。
図2(a)に示すように鋳包み用金型B1は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、亜鉛合金等の非鉄金属の溶融金属が鋳込まれるように構成されたダイカスト金型であり、固定型4と、その固定型4に対して型締め及び型開き可能な可動型5とを備えている。可動型5の固定型4に対する型締めによってキャビティ5aが形成される。固定型4は、接合チップ10の本体部11(接合面11a側)が嵌入される保持部4aが、複数箇所に凹設されている。保持部4aはキャビティ5a内に接合チップ10を保持するための部位であり、固定型4に対して型締めされた可動型5が、保持部4aに保持された接合チップ10に接触しないように、キャビティ5aの厚さ方向(図2(a)左右方向)に対する接合チップ10(本体部11)の長さが設定される。なお、可動型5側に保持部4aを設けることは当然可能である。
複数の保持部4aに係止される複数の接合チップ10は、それぞれ同一の形状および大きさに設定されている。ロボットハンド等の搬入装置(図示せず)を用いて接合チップ10を鋳包み用金型B1にセットするが、接合チップ10が互いに同一の形状および大きさに設定されているので、接合チップ10を把持して鋳包み用金型B1にセットするためのコンポーネント(図示せず)を共通化または規格化し易くできる。搬入装置(図示せず)により接合チップ10を鋳包み用金型B1にセットした後、キャビティ5aに溶融金属が鋳込まれることで、接合チップ10の側面11c及び係止部12(図1(c)参照)が、鋳造金属材2(冷却した溶融金属)に鋳包まれた鋳造製品1が製造される。接合チップ10は、接合面11a(図1(c)参照)側の本体部11の一部(少なくとも一面)が、鋳造金属材2の第1面2aの複数箇所に露出され、接合面11a側以外の残部が、鋳造金属材2に包まれている。
ここで、従来(図6(b)参照)、鋳造金属材301に平板状の接合用素材302(鋼板)を鋳包んで鋳造製品300を製造する場合、鋳造金属材301の第1面301a及び第2面301bに接合用素材302を沿わせる必要があるので、接合用素材302は、鋳造金属材301の端面301cから突設される。そのため、接合用素材302の位置が制約されるので、接合用素材302を配置する設計の自由度が低下する。また、鋳造金属材301の第1面301a及び第2面301bに接合用素材302を沿わせるので、鋳造金属材301の厚さ(図6(b)左右方向)を増やすことができない場合には、鋳造金属材301の機械的強度が低下する。
さらに、鋳造製品300の鋳包み用金型(図示せず)では、鋳造金属材301の端面301cに鋳造時のガス抜き部(図示せず)を配置する必要があるが、端面301cには接合用素材302が配置されるので、ガス抜き部の配置が困難である。加えて、鋳造製品300を製造する場合に、鋳造金属材301の形状や大きさ等に応じて接合用素材302を個別に準備しなければならないので、接合用素材302の作成および在庫管理が煩雑化する。
これに対し本実施の形態によれば、接合チップ10の接合面11a(図1(c)参照)を、鋳造金属材2の端面2a(図1(b)参照)に限らず、鋳造金属材2の第1面2aの複数箇所に露出させることができるので、鋳造金属材2に接合チップ10を配置する設計の自由度を向上できる。そのため、鋳造金属材2の第1面2aが相手側部材3に面するように鋳造金属材2と相手側部材3とを重ねて、接合チップ10と相手側部材3とを抵抗溶接により接合できる。また、鋳造金属材2の端面2c以外の箇所に接合チップ10を鋳包むことができるので、鋳包み用金型B1に設けるガス抜き部やオーバーフロー等の配置の自由度を向上できると共に、相手側部材3へ鋳造金属材2を接合できる部位を拡大できる。
さらに、接合チップ10を互いに同一の形状および大きさに設定することで、鋳造金属材2や相手側部材3の形状や大きさ等に応じて種々の接合チップを準備することを不要にできる。その結果、鋳造金属材2や相手側部材3の形状等に関わらずに接合チップ10を汎用化(共通部品化)することができ、接合チップ10の在庫管理を容易にできる。
図2(b)に示すように、鋳造製品1を相手方部材3に接合するときには、相手側部材3を鋳造金属材2に重ね、接合チップ10の接合面11a(図1(c)参照)を相手側部材3に接触させる。次いで、スポット溶接の電極6の先端面を鋳造金属材2及び相手側部材3に押し付けると共に通電して、接合チップ10毎にナゲットN(接合部)を一つずつ形成する。接合チップ10毎にナゲットNを形成することで、接合チップ10を介して相手側部材3の複数箇所と鋳造金属材2とを接合する。
ここで、鋳造金属材2は、相手側部材3とは異種の金属材料から構成されるので、熱膨張差のために、鋳造金属材2の鋳造後、鋳造金属材2の冷却に伴う収縮によって鋳造金属材3に応力が生じる。しかし、鋳造金属材2に分散して鋳包まれる複数の接合チップ10は、相手側部材3の複数箇所とそれぞれ接合されるので、個々の接合チップ10の大きさを従来(特許文献1)の接合用素材に比べて小さくできる。
その結果、鋳造金属材2の冷却に伴う収縮によって接合チップ10が鋳造金属材2に与える影響を小さくできる。即ち、鋳造金属材2に生じる応力を抑制できる。その結果、残留応力を抑制し、繰り返し外力をうけるときの破壊強度の低下を抑制できる。また、応力により生じる鋳造製品の変形も抑制できる。
さらに、個々の接合チップ10の大きさを従来(特許文献1)の接合用素材に比較して小さくできるので、従来(特許文献1)と比較して、溶接(接合)時の入熱による熱膨張の影響を小さくできる。その結果、入熱に起因する鋳造製品1の変形を抑制できる。
好適には、各接合チップ10が、相手側部材3と各1箇所でスポット溶接されるのが望ましい。その場合には、各接合チップ10が複数箇所で相手側部材3とスポット溶接される場合と比較して、接合チップ10の先端面11aの面積を小さくできる。それに伴い、本体部11及び係止部12を含む接合チップ10の全体を小さくできるので、鋳造金属材2に生じる応力をさらに抑制できる。
なお、接合チップ10の先端面11aの大きさは、スポット溶接により相手側部材3と接合チップ10とを各1箇所で接合する場合、電極6の先端面の形状にもよるが、電極6の先端径と同一か先端径より少し大きめに設定される。電極6の先端径は得られる最大ナゲット径にほぼ一致するので、電極6の先端径に基づいて接合チップ10の先端面11aの大きさを定めることにより、接合強度を確保できるからである。また、本体部11が円柱状に形成されると共に、係止部12が円環状に形成されるので、本体部11及び係止部12の周りの鋳造金属材2に発生する応力が局所的に集中することを抑制できる。
なお、接合チップ10は、本体部11(図1(c)参照)が鋳造金属材2の第1面2aから突出しているので、接合チップ10の接合面11aと相手側部材3とが接合されたときに、相手側部材3と鋳造金属材2との間に、本体部11の突出量に等しい隙間が形成される。鋳造金属材2と相手側部材3とが接合された構造物Aが雨水に曝されるような環境で使用される場合に、接合チップ10によって相手側部材3と鋳造金属材2との間に隙間を設け、その隙間に充填材やガスケット等のシール材を挟み込むことができる。これによりシール材の内側(接合チップ10側)への水分の浸入を防ぎ、電食を生じ難くできる。また、接合面11aが鋳造金属材2から露出しているので、非鉄金属等の異材を挟み込まずに、同じ材質同士の鋳造金属材2と相手側部材3との間を接合できる。その結果、品質の良い抵抗溶接を行うことができる。
また、従来の接合用素材302(鋼板、図6(a)参照)を鋳包む場合と比較して、接合チップ10を鋳包む場合は、接合チップ10の本体部11(図1(c)参照)の周りに形成される鋳造金属材2の開口長さを小さくできる。これにより、鋳造金属材2の機械的強度が、鋳包みにより形成される開口によって低下することを抑制できる。
接合チップ10は、接合面11a(図1(c)参照)を取り囲む稜11bを介して接合面11aに交差する側面11c及び係止部12が鋳造金属材2に囲まれるので、鋳造金属材2に接合チップ10を保持する保持強度を確保できる。また、接合チップ10は、相手側部材3と各1箇所で接合できる程度の大きさなので、鋳造金属材2の体積を相対的に大きくすることができ、接合チップ10が鋳包まれたことによる鋳造金属材2の機械的強度の低下を抑制できる。
さらに、鋳造金属材2の体積と比較して、接合チップ10の体積を相対的に小さくできるので、接合チップ10を鋳造金属材2に比較的自由に配置できる。その結果、鋳造金属材2の形状設計(リブ形成等)の自由度を向上できる。また、鋳造金属材2に対して相対的に小さい複数の接合チップ10を、互いに間隔をあけた状態で鋳造金属材2に分散配置することで、鋳造金属材2に生じる応力を抑制できる。
次に図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、接合チップ10の接合面11a(図1(c)参照)側の本体部11の一部が、鋳造金属材2の第1面2aに露出され、接合面11a側以外の残部が、鋳造金属材2に包まれる場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、接合チップ10の接合面11a(図1(c)参照)側の本体部11の一部が、鋳造金属材2の第1面2aに露出されるのに加え、本体部11の一部(接合面11aの反対に位置する面)が第2面2b側に露出される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3(a)は接合チップ10がセットされた鋳包み用金型B2の断面図であり、図3(b)は相手側部材3が接合された第2実施の形態における鋳造製品21の断面図である。
図3(a)に示すように鋳包み用金型B2は、非鉄金属の溶融金属が鋳込まれるように構成されたダイカスト金型であり、固定型4に対して型締め及び型開き可能な可動型5に当接部7が設けられている。当接部7は、可動型5が固定型4に型締めされるときに、固定型4の保持部4aに係止された接合チップ10の本体部11の端面11d(図3(b)参照)に当接して、固定型4と当接部7との間で接合チップ10を圧接保持するための部位である。当接部7は、先端径が、電極6の先端径より小さく設定されている。
固定型4に対して可動型5が型締めされ、固定型4と当接部7との間で接合チップ10が圧接保持された後、キャビティ5aに溶融金属が鋳込まれることで、接合チップ10の側面11c(図1(c)参照)及び係止部12が鋳造金属材2に鋳包まれた鋳造製品21が製造される。鋳造金属材2は、当接部7によって、本体部11の端面11dの一部が露出する孔部22が形成される。
鋳造製品21は、以上のように製造されるので、鋳込み時、固定型4と可動型5との間に接合チップ10を圧接保持することができる。その結果、キャビティ5aに鋳込まれた溶融金属に煽られて接合チップ10がずれた位置に鋳包まれてしまうことを防止できる。これに対し従来の鋳造製品300を製造する場合(図6(b)参照)、鋳造製品300の鋳包み用金型(図示せず)に配置された接合用素材302(鋼板)が、鋳込まれた溶融金属に煽られて鋳造金属材301に偏って鋳包まれることがある。本実施の形態によればこれを防止することができ、接合チップ10の位置精度を向上させて、鋳造製品21の品質の安定性を向上できる。
次に図4を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、先端径が電極6の先端径より小さく設定された当接部7を用いて、固定型4と可動型5との間で接合チップ10を圧接保持する場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、先端径が電極6の先端径より大きく設定された当接部8を用いて、固定型4と可動型5との間で接合チップ10を圧接保持する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4(a)は接合チップ10がセットされた鋳包み用金型B3の断面図であり、図4(b)は相手側部材3が接合された第3実施の形態における鋳造製品31の断面図である。
図4(a)に示すように鋳包み用金型B3は、固定型4に対して型締め及び型開き可能な可動型5に当接部8が設けられたダイカスト金型である。当接部8は、可動型5が固定型4に型締めされるときに、固定型4の保持部4aに係止された接合チップ10の本体部11の端面11d(図4(b)参照)に当接して、固定型4と当接部7との間で接合チップ10を圧接保持するための部位である。当接部8は、先端径が、電極6の先端径より大きく設定されており、先端側から基端側に向かって拡径する円錐台状に形成されている。
固定型4に対して可動型5が型締めされ、固定型4と当接部8との間で接合チップ10が圧接保持された後、キャビティ5aに溶融金属が鋳込まれることで、接合チップ10の側面11c(図1(c)参照)及び係止部12が、鋳造金属材2に鋳包まれた鋳造製品31が製造される。鋳造金属材2は、当接部8によって、本体部11の端面11dの一部が露出する擂鉢状の孔部32が形成される。
鋳造製品31は、以上のように製造されるので、鋳込み時、固定型4と可動型5との間に接合チップ10を圧接保持し、接合チップ10がずれた位置に鋳包まれてしまうことを防止できる。さらに、抵抗溶接を行う場合には、一方の電極6を孔部32に挿入して電極6の先端面を接合チップ10の本体部11の端面11dに接触させることができる。電極6と接合チップ10との間に非鉄金属等の異材が挟み込まれないようにできるので、接合チップ10の接合面11a(図1(c)参照)と電極6との間の障壁を減らすことができ、品質の良い抵抗溶接を行うことができる。
次に図5を参照して、他の実施の形態について説明する。図5(a)は第4実施の形態における鋳造製品41の断面図であり、図5(b)は第5実施の形態における鋳造製品61の断面図であり、図5(c)は第6実施の形態における鋳造製品71の断面図であり、図5(d)は第7実施の形態における鋳造製品91の断面図であり、図5(e)は第8実施の形態における鋳造製品111の断面図であり、図5(f)は第9実施の形態における鋳造製品121の断面図である。なお、第4実施の形態から第9実施の形態では、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、以下の説明を省略する。また、図5(a)〜図5(f)では、鋳造金属材2,72及び相手側部材3の一部の図示を省略する。
図5(a)に示すように鋳造製品41は、接合チップ50が鋳造金属材2に鋳包まれている。接合チップ50は、接合面11a(相手側部材3に当接する面、図1(c)参照)の略中心に、本体部11の端面11d側に向かうにつれて縮径する擂鉢状の凹欠部51が凹設されている。凹欠部51は、接合面11aの面積を縮小するための部位である。鋳包み用金型(図示せず)にセットされた接合チップ50は、鋳包み用金型に設けられた当接部(図示せず)が本体部11の端面11dに圧接されることで、鋳包み用金型に固定される。端面11dに当接部(図示せず)が圧接された状態で溶融金属が鋳込まれることで、鋳造金属材2に孔部42が形成される。接合チップ50は本体部11に凹欠部51が形成されて接合面11aの面積が縮小されると共に凹欠部51の周囲が凸起状になるので、凸起状の結合面11aを使って、接合チップ50と相手側部材3とをプロジェクション溶接により接合するのに適している。
図5(b)に示すように鋳造製品61は、接合チップ50が鋳造金属材2に鋳包まれている。鋳造金属材2は、接合チップ50の本体部11の側面11c(図1(c)参照)を包み込む被覆部62が設けられている。被覆部62は、鋳造製品61が相手側部材3に接合されると相手側部材3に接触する。鋳造製品61は、鋳造金属材2の一部(被覆部62)を相手側部材3に接触させる必要がある場合に適している。
図5(c)に示すように鋳造製品71は、接合チップ80が鋳造金属材72に鋳包まれている。接合チップ80は、鉄系金属材により一体に形成される部材であり、鋳造金属材72の厚さ(図5(c)左右方向寸法)と軸方向長さが同一に設定される棒状の本体部81と、本体部81の軸方向略中央から径方向外側に張り出して鍔状に形成される係止部82とを備えている。接合チップ80は、固定型および可動型(いずれも図示せず)に本体部81が軸方向に圧接されて鋳包み用金型(図示せず)に保持される。接合チップ80は鋳造金属材72に係止部82が取り囲まれるので、鋳造金属材72から接合チップ80が脱落することを防止できる。
図5(d)に示すように鋳造製品91は、接合チップ100が鋳造金属材2に鋳包まれている。接合チップ100は、鉄系金属材により一体に形成される部材であり、棒状に形成される本体部101の側面に、ローレット状の凹凸やスパイク状の凸起からなる係止部102が形成されている。鋳包み用金型(図示せず)にセットされた接合チップ100は、鋳包み用金型に設けられた当接部(図示せず)が本体部101の端面に圧接されることで、鋳包み用金型に固定され、その状態で溶融金属が鋳込まれることで、鋳造金属材2に孔部92が形成される。接合チップ100は、係止部102のアンカー効果により鋳造金属材2からの脱落を防止できる。
また、接合チップ100(図5(d)参照)は、相手側部材3に当接する接合面11a(本体部101)の略中心に擂鉢状の凹欠部103が凹設されている。接合チップ100は本体部101に凹欠部103が形成されて凹欠部103の周囲が凸起状になるので、凸起状の結合面11aを使って、接合チップ100と相手側部材3とをプロジェクション溶接により接合するのに適している。
図5(e)に示すように鋳造製品111は、接合チップ100が鋳造金属材2に鋳包まれている。鋳造金属材2は、接合チップ100の本体部101の側面を包み込む被覆部112が設けられている。被覆部112は、鋳造製品111が相手側部材3に接合されると相手側部材3に接触する。鋳造製品111は、鋳造金属材2の一部(被覆部112)を相手側部材3に接触させる必要がある場合に適している。
図5(f)に示すように鋳造製品121は、接合チップ130が鋳造金属材72に鋳包まれている。接合チップ130は、鉄系金属材により一体に形成される部材であり、鋳造金属材72の厚さ(図5(f)左右方向寸法)と軸方向長さが同一に設定される棒状の本体部131の側面に、ローレット状の凹凸やスパイク状の凸起からなる係止部132が形成されている。接合チップ130は、固定型および可動型(いずれも図示せず)に本体部131が軸方向に圧接されて鋳包み用金型(図示せず)に保持される。接合チップ130は、係止部132のアンカー効果により鋳造金属材72からの脱落を防止できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、第1実施の形態では鋳造金属材2に4個の接合チップ10が等間隔に埋設される場合について説明したが、これに限定するものではなく、接合チップ10を埋設する数や間隔は、鋳造金属材2や相手側部材3との関係で適宜設定できる。
また、第1実施の形態では鋳造金属材2に複数の接合チップ10が一列に配列される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、鋳造金属材2、相手側部材3及び接合チップ10の形状や大きさ等に応じて、複数の接合チップ10を格子状や千鳥状等の2次元状や3次元状に配列することは当然可能である。
また、各接合チップ10が同一の形状および大きさに設定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、鋳造金属材2や相手側部材3の大きさや形状等に応じて、異なる形状や大きさに設定することは当然可能である。
上記各実施の形態では、各接合チップ10,50,80,100,130の接合面11aが平面の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、相手側部材3との関係で、接合面を湾曲面状や多面体状に形成することは当然可能である。接合面が多面体状に形成される場合でも、少なくとも1面が鋳造金属材から露出されていれば、接合面を相手側部材3に接触させて相手側部材3と接合できる。
上記第1実施の形態から第5実施の形態では、接合チップ10,50の本体部11が円柱状に形成された場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、本体部11を楕円柱状や多角柱状等にすることは当然可能である。また、接合チップ10,50の係止部12を円環状に形成した場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、軸方向視して楕円形状や多角形状等の種々の形状にすることは当然可能である。
また、係止部12を本体部11に凸設するものに限定するものではなく、本体部11の側面11cに係止部12を凹設することは当然可能である。係止部12に鋳造金属材2が進入することで、接合チップ10,50が鋳造金属材2から脱落することを防止できるからである。
また、上記第1実施の形態から第6実施の形態では、フランジ状の係止部12,82が本体部11,81に1つ設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、本体部11,81の軸方向に互いに間隔をあけて係止部(フランジ)を複数設けることは当然可能である。
また、上記第1実施の形態から第6実施の形態では、フランジ状の係止部12,82が本体部11,81の周方向に亘って一連に(連続して)形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。係止部12,82(凸起)を、本体部11,81の周方向に沿って断続的に、又は、本体部11の側面11cの1乃至複数箇所に設けることは当然可能である。この場合にも係止部によって、接合チップ50,80が軸方向に移動して鋳造金属材2,72から脱落することを抑制できる。
上記第1実施の形態から第3実施の形態では、鋳包み用金型B1,B2,B3の固定型4に接合チップ10を固定して、固定型4に対して可動型5を型締めする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、可動型5に接合チップ10を固定することは当然可能である。
上記第7実施の形態(図5(d)参照)、第9実施の形態(図5(f)参照)では、ローレット状等に形成された係止部102,132が、本体部101,131の軸方向に亘って鋳造金属材2,72に囲まれる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。係止部102,132は、本体部101,131の軸方向の一部が鋳造金属材2,72に鋳包まれていれば、鋳造金属材2,72からの接合チップ100,130の脱落を防止できるからである。
また、上記第7実施の形態(図5(d)参照)、第9実施の形態(図5(f)参照)では、ローレット状等に形成された係止部102,132が、本体部101,131の軸方向の一部に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。係止部102,132を、本体部101,131の軸方向の全長に亘って設けることは当然可能である。その場合に、係止部102,132の軸方向の全長を鋳造金属材2,72で鋳包むことは不要である(係止部102,132の一部が鋳造金属材2から露出していても良い)。係止部102,132の軸方向の一部が鋳包まれていれば、鋳造金属材2,72からの接合チップ100,130の脱落を防止できるからである。
上記第1実施の形態から第3実施の形態では、鋳造製品1,21,31と相手側部材3とを重ね合わせた後、それらを電極6で挟み込むようにして溶接するダイレクト式のスポット溶接について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の方式のスポット溶接によって鋳造製品1,21,31と相手側部材3とを接合することは当然可能である。他の方式としては、インダイレクト式、シリーズ式、パラレル式等が例示される。
また、鋳造製品1,21,31と相手側部材3とをスポット溶接により接合するものに限定するものではなく、他の抵抗溶接によってそれらを接合することは当然可能である。他の抵抗溶接としては、プロジェクション溶接、加圧バット溶接、フラッシュバット溶接、シーム溶接等が例示される。
上記各実施の形態では、接合チップと相手側部材3との接合界面を溶融凝固させたナゲットNが接合部に形成される場合について説明したが、必ずしも接合界面を溶融凝固する必要はなく、固相接合(接合部)により(ナゲットNを形成せずに)接合チップと相手側部材3とを接合することは当然可能である。
また、上記各実施の形態では、重ね溶接によって各接合チップ10,50,80,100,130が相手側部材3とそれぞれ1箇所で接合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。各接合チップ10,50,80,100,130の接合面の面積を電極の先端の面積の複数倍に設定することで、各接合チップ10,50,80,100,130の接合面に、相手側部材3が接合される接合部を複数設けることは当然可能である。
また、上記各実施の形態では、抵抗溶接によって相手側部材3と鋳造製品1,21,31が接合される場合について説明した。しかし、接合手段を抵抗溶接に限定するものではない。他の接合手段によって鋳造製品1,21,31を相手側部材3と接合することは当然可能である。他の接合手段としては、例えばレーザ溶接、アーク溶接等の他の溶接手段や摩擦撹拌接合などの塑性流動による接合手段が挙げられる。
また、上記各実施の形態では、重ね溶接によって鋳造製品1,21,31と相手側部材3との間にスポット状(点状)の接合部が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、レーザ溶接、シーム溶接、摩擦撹拌接合等によって線状や環状の接合部を形成することは当然可能である。
上記実施の形態では、鋳造製品と相手側部材とを抵抗溶接により接合する場合に、接合チップの接合面をナゲット1個分程度(電極の先端面程度)の大きさにすることが好ましいことを説明した。しかしながら、鋳造製品と相手側部材とをレーザ溶接やアーク溶接等によって接合する場合には、接合チップの接合面は、形成される溶融池程度の大きさにすることができる。また、鋳造製品と相手側部材とを摩擦撹拌接合によって接合する場合には、接合チップの接合面は、回転工具のショルダ径程度の大きさにすることが好ましい。いずれも接合チップと鋳造金属材との熱膨脹差を要因とする応力を小さくするためである。
1,21,31,41,61,71,91,111,121 鋳造製品
2,72 鋳造金属材
3 相手側部材
10,50,80,100,130 接合チップ
11a 接合面
11b 稜
11c 側面
12,82,102,132 係止部

Claims (2)

  1. 相手側部材と接合される鋳造製品において、
    前記相手側部材の複数箇所と接合チップのそれぞれの接合面で接合される複数の接合チップと、
    前記相手側部材とは異種の金属材料から構成されると共に、前記複数の接合チップを分散させつつ、それぞれの前記接合面を少なくとも一面露出させて鋳包む鋳造金属材とを備えていることを特徴とする鋳造製品。
  2. 前記接合チップは、前記相手側部材に接触して接合される接合面と、
    その接合面を取り囲む稜を介して前記接合面に交わる側面と、
    その側面に凸設または凹設される係止部とを備え、
    少なくともその係止部が前記鋳造金属材に鋳包まれていることを特徴とする請求項1記載の鋳造製品。
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