JP2018051570A - 異材接合用スポット溶接法、接合補助部材、及び、異材溶接継手 - Google Patents
異材接合用スポット溶接法、接合補助部材、及び、異材溶接継手 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金と、鋼との異材を、高能率に、強固かつ信頼性の高い品質で接合でき、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる、異材接合用スポット溶接法、接合補助部材、及び、異材溶接継手を提供する。【解決手段】異材溶接継手1は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の上板10と、上板10にスポット溶接された、鋼製の下板20と、を備え、上板10は、下板20との重ね合わせ面に臨む穴11を有し、上板10に設けられた穴11に挿入される挿入部31と、非挿入部32と、を持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に非挿入部32から挿入部31に向かって凹んだ凹部33を有する鋼製の接合補助部材30をさらに備え、下板20及び接合補助部材30の挿入部31によって溶接部Wが形成される。【選択図】図1A
Description
本発明は、異材接合用スポット溶接法、接合補助部材、及び、異材溶接継手に関する。
自動車を代表とする輸送機器には、(a)有限資源である石油燃料消費、(b)燃焼に伴って発生する地球温暖化ガスであるCO2、(c)走行コストといった各種の抑制を目的として、走行燃費の向上が常に求められている。その手段としては、電気駆動の利用など動力系技術の改善の他に、車体重量の軽量化も改善策の一つである。軽量化には現在の主要材料となっている鋼を、軽量素材であるアルミニウム合金、マグネシウム合金、炭素繊維などに置換する手段がある。しかし、全てをこれら軽量素材に置換するには、高コスト化や強度不足になる、といった課題があり、解決策として鋼と軽量素材を適材適所に組み合わせた、いわゆるマルチマテリアルと呼ばれる設計手法が注目を浴びている。
鋼と上記軽量素材を組み合わせるには、必然的にこれらを接合する箇所が出てくる。鋼同士やアルミニウム合金同士、マグネシウム合金同士では容易である溶接が、異材では極めて困難であることが知られている。この理由として、鋼とアルミニウムあるいはマグネシウムの溶融混合部には極めて脆い性質である金属間化合物(IMC)が生成し、引張や衝撃といった外部応力で溶融混合部が容易に破壊してしまうことにある。このため、抵抗スポット溶接法やアーク溶接法といった溶接法が異材接合には採用できず、他の接合法を用いるのが一般的である。鋼と炭素繊維の接合も、後者が金属ではないことから溶接を用いることができない。
従来の異材接合技術の例としては、鋼素材と軽量素材の両方に貫通穴を設けてボルトとナットで上下から拘束する手段があげられる。また、他の例としては、かしめ部材を強力な圧力をかけて片側から挿入し、かしめ効果によって拘束する手段が知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、他の例としては、アルミ合金素材に鋼製の接合部材をポンチとして押し込むことで穴あけと接合部材を仮拘束し、次に鋼素材と重ね合わせ、上下両方から銅電極にて挟み込んで、圧力と高電流を瞬間的に与えて鋼素材と接合部材を抵抗溶接する手段が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、他の例としては、摩擦攪拌接合ツールを用いてアルミ合金と鋼の素材同士を直接接合する手段も開発されている。(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、ボルトとナットによる接合法は、鋼素材と軽量素材が閉断面構造を構成するような場合(図23A参照)、ナットを入れることができず適用できない。また、適用可能な開断面構造の継手の場合(図23B、図23C参照)でも、ナットを回し入れるのに時間を要し能率が悪いという課題がある。
また、特許文献1に記載の接合法は、比較的容易な方法ではあるが、鋼の強度が高い場合には挿入できない問題があり、且つ、接合強度は摩擦力とかしめ部材の剛性に依存するので、高い接合強度が得られないという問題がある。また、挿入に際しては表・裏両側から治具で押さえ込む必要があるため、閉断面構造には適用できないという課題もある。
さらに、特許文献2に記載の接合法も、閉断面構造には適用できないという課題がある。
特許文献3に記載の接合法は、アルミ合金素材を低温領域で塑性流動させながら鋼素材面に圧力をかけることで、両素材が溶融し合うことがなく、金属間化合物の生成を防止しながら金属結合力が得られるとされ、鋼と炭素繊維も接合可能という研究成果もある。しかしながら、本接合法も閉断面構造には適用できず、また高い圧力を必要とするので機械的に大型となり、高価であるという問題がある。また、接合力としてもそれほど高くならない。さらに、施工速度が遅いという課題も存在する。
したがって、既存の異材接合技術は、(i)部材や開先形状が開断面構造に限定される、(ii)接合強度が低い、(iii)施工速度が遅いといった一つ以上の問題を持っている。このため、種々の素材を組み合わせたマルチマテリアル設計を普及させるためには、(i’)開断面構造と閉断面構造の両方に適用できる、(ii’)接合強度が十分に高く、かつ信頼性も高い、(iii’)高速度であるという全ての要素を兼ね備えた、使いやすい新技術が求められている。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アルミニウム合金(以下「Al合金」とも言う)もしくはマグネシウム合金(以下、「Mg合金」とも言う)と鋼の異材を、高能率に、強固かつ信頼性の高い品質で接合でき、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる、異材接合用スポット溶接法、接合補助部材、及び、異材溶接継手を提供することにある。
ここで、Al合金もしくはMg合金と鋼を溶融接合させようとすると、上述したように金属間化合物(IMC)の生成が避けられない。一方、鋼同士の溶接は最も高い接合強度と信頼性を示すことは、科学的にも実績的にも自明である。
そこで、本発明者らは、鋼同士の溶接を結合力として用い、一方、Al合金やMg合金を溶融させず、拘束力で鋼との接合を達成する手段を考案した。
そこで、本発明者らは、鋼同士の溶接を結合力として用い、一方、Al合金やMg合金を溶融させず、拘束力で鋼との接合を達成する手段を考案した。
従って、本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、鋼製の第2の板と、を接合する異材接合用スポット溶接法であって、
前記第1の板に穴を空ける工程と、
前記第1の板と前記第2の板を重ね合わせる工程と、
挿入部と非挿入部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する鋼製の接合補助部材を、前記第1の板に設けられた穴に挿入する工程と、
レーザ光を前記接合補助部材の前記凹部に照射し、前記第2の板及び前記接合補助部材を接合する工程と、
を備える異材接合用スポット溶接法。
(2) アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、鋼製の第2の板と、を接合する異材接合用スポット溶接法であって、
前記第1の板に穴を空ける工程と、
前記第1の板と前記第2の板を重ね合わせる工程と、
挿入部と非挿入部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する鋼製の接合補助部材を、前記第1の板に設けられた穴に挿入する工程と、
前記接合補助部材の前記凹部にレーザ光を照射し、且つ、前記レーザ光の照射と同時、前記レーザ光の照射中、及び前記レーザ光の照射後のいずれかにおいて、以下の(a)〜(c)のいずれかの手法によってアーク溶接を行い、記第2の板及び前記接合補助部材を接合すると共に、前記接合補助部材の凹部の少なくとも一部を溶接金属で充填する工程と、
を備える、(1)に記載の異材接合用スポット溶接法。
(a)鉄合金、または、Ni合金の前記溶接金属が得られる溶接ワイヤを溶極として用いるガスシールドアーク溶接法。
(b)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるガスタングステンアーク溶接法。
(c)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるプラズマアーク溶接法。
(3) 前記第2の板には、絞り加工により膨出部が形成されており、
前記重ね合わせ工程において、前記第2の板の膨出部が、前記第1の板の穴内に配置される、(1)又は(2)に記載の異材接合用スポット溶接法。
(4) 前記重ね合わせ工程の前に、前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って接着剤を塗布する工程を、さらに備える、(1)〜(3)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(5) 前記挿入工程において、前記接合補助部材の非挿入部と、該非挿入部と対向する前記第1の板との間の少なくとも一方の対向面に、接着剤を塗布する、(1)〜(4)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(6) 前記挿入工程の際、又は、前記溶接工程後に、前記接合補助部材の非挿入部と、前記第1の板の表面との境界部に接着剤を塗布する、(1)〜(5)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(7) 前記接合補助部材の挿入部の底部の高さPH1は、0.5mm以上であり、且つ、2.5mm以下と前記第1の板の板厚BHの125%とのいずれか小さい値以下である、(1)〜(6)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(8) 前記挿入部の外壁面が、水平方向となす角度θは、80〜95°である、(1)〜(7)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(9) 前記接合補助部材の挿入部と非挿入部との境界部の直径PD1は、前記第1の板の穴の直径BDに対し80%以上105%以下である、(1)〜(8)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(10) 前記接合補助部材の非挿入部の直径PD2は、前記第1の板の穴の直径BDに対し105%以上である、(1)〜(9)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(11) 前記接合補助部材の非挿入部の高さPH2は、前記第1の板の板厚BHの50%以上150%以下である、(1)〜(10)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(1) アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、鋼製の第2の板と、を接合する異材接合用スポット溶接法であって、
前記第1の板に穴を空ける工程と、
前記第1の板と前記第2の板を重ね合わせる工程と、
挿入部と非挿入部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する鋼製の接合補助部材を、前記第1の板に設けられた穴に挿入する工程と、
レーザ光を前記接合補助部材の前記凹部に照射し、前記第2の板及び前記接合補助部材を接合する工程と、
を備える異材接合用スポット溶接法。
(2) アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、鋼製の第2の板と、を接合する異材接合用スポット溶接法であって、
前記第1の板に穴を空ける工程と、
前記第1の板と前記第2の板を重ね合わせる工程と、
挿入部と非挿入部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する鋼製の接合補助部材を、前記第1の板に設けられた穴に挿入する工程と、
前記接合補助部材の前記凹部にレーザ光を照射し、且つ、前記レーザ光の照射と同時、前記レーザ光の照射中、及び前記レーザ光の照射後のいずれかにおいて、以下の(a)〜(c)のいずれかの手法によってアーク溶接を行い、記第2の板及び前記接合補助部材を接合すると共に、前記接合補助部材の凹部の少なくとも一部を溶接金属で充填する工程と、
を備える、(1)に記載の異材接合用スポット溶接法。
(a)鉄合金、または、Ni合金の前記溶接金属が得られる溶接ワイヤを溶極として用いるガスシールドアーク溶接法。
(b)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるガスタングステンアーク溶接法。
(c)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるプラズマアーク溶接法。
(3) 前記第2の板には、絞り加工により膨出部が形成されており、
前記重ね合わせ工程において、前記第2の板の膨出部が、前記第1の板の穴内に配置される、(1)又は(2)に記載の異材接合用スポット溶接法。
(4) 前記重ね合わせ工程の前に、前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って接着剤を塗布する工程を、さらに備える、(1)〜(3)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(5) 前記挿入工程において、前記接合補助部材の非挿入部と、該非挿入部と対向する前記第1の板との間の少なくとも一方の対向面に、接着剤を塗布する、(1)〜(4)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(6) 前記挿入工程の際、又は、前記溶接工程後に、前記接合補助部材の非挿入部と、前記第1の板の表面との境界部に接着剤を塗布する、(1)〜(5)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(7) 前記接合補助部材の挿入部の底部の高さPH1は、0.5mm以上であり、且つ、2.5mm以下と前記第1の板の板厚BHの125%とのいずれか小さい値以下である、(1)〜(6)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(8) 前記挿入部の外壁面が、水平方向となす角度θは、80〜95°である、(1)〜(7)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(9) 前記接合補助部材の挿入部と非挿入部との境界部の直径PD1は、前記第1の板の穴の直径BDに対し80%以上105%以下である、(1)〜(8)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(10) 前記接合補助部材の非挿入部の直径PD2は、前記第1の板の穴の直径BDに対し105%以上である、(1)〜(9)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(11) 前記接合補助部材の非挿入部の高さPH2は、前記第1の板の板厚BHの50%以上150%以下である、(1)〜(10)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
(12) (1)〜(11)のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法に用いられ、
鋼製で、挿入部と非挿入部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する、接合補助部材。
鋼製で、挿入部と非挿入部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する、接合補助部材。
(13) アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、該第1の板にスポット溶接された、鋼製の第2の板と、を備える異材溶接継手であって、
前記第1の板は、前記第2の板との重ね合わせ面に臨む穴を有し、
前記第1の板に設けられた穴に挿入される挿入部と、非挿入部と、を持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する鋼製の接合補助部材をさらに備え、
前記第2の板と前記接合補助部材の挿入部との界面には、前記第2の板及び前記接合補助部材とによって溶接部が形成される、異材溶接継手。
(14) 前記溶接部は、前記接合補助部材の凹部の少なくとも一部をさらに充填している、(13)に記載の異材溶接継手。
(15) 前記第1の板の穴内には、前記第2の板に形成された膨出部が配置される、(13)又は(14)に記載の異材溶接継手。
(16) 前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の前記重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って設けられた接着剤を備える、(13)〜(15)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(17) 前記接合補助部材の非挿入部と、該非挿入部と対向する前記第1の板との間の少なくとも一方の対向面に設けられた接着剤を備える、(13)〜(16)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(18) 前記接合補助部材の非挿入部と、前記第1の板の表面との境界部に設けられた接着剤を備える、(13)〜(17)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(19) 前記接合補助部材の挿入部の底部の高さPH1は、0.5mm以上であり、且つ、2.5mm以下と前記第1の板の板厚BHの125%とのいずれか小さい値以下である、(13)〜(18)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(20) 前記挿入部の外壁面が、水平方向となす角度θは、80〜95°である、(13)〜(19)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(21) 前記接合補助部材の挿入部と非挿入部との境界部の直径PD1は、前記第1の板の穴の直径BDに対し80%以上105%以下である、(13)〜(20)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(22) 前記接合補助部材の非挿入部の直径PD2は、前記第1の板の穴の直径BDに対し105%以上である、(13)〜(21)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(23) 前記接合補助部材の非挿入部の高さPH2は、前記第1の板の板厚BHの50%以上150%以下である、(13)〜(22)のいずれかに記載の異材溶接継手。
前記第1の板は、前記第2の板との重ね合わせ面に臨む穴を有し、
前記第1の板に設けられた穴に挿入される挿入部と、非挿入部と、を持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する鋼製の接合補助部材をさらに備え、
前記第2の板と前記接合補助部材の挿入部との界面には、前記第2の板及び前記接合補助部材とによって溶接部が形成される、異材溶接継手。
(14) 前記溶接部は、前記接合補助部材の凹部の少なくとも一部をさらに充填している、(13)に記載の異材溶接継手。
(15) 前記第1の板の穴内には、前記第2の板に形成された膨出部が配置される、(13)又は(14)に記載の異材溶接継手。
(16) 前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の前記重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って設けられた接着剤を備える、(13)〜(15)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(17) 前記接合補助部材の非挿入部と、該非挿入部と対向する前記第1の板との間の少なくとも一方の対向面に設けられた接着剤を備える、(13)〜(16)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(18) 前記接合補助部材の非挿入部と、前記第1の板の表面との境界部に設けられた接着剤を備える、(13)〜(17)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(19) 前記接合補助部材の挿入部の底部の高さPH1は、0.5mm以上であり、且つ、2.5mm以下と前記第1の板の板厚BHの125%とのいずれか小さい値以下である、(13)〜(18)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(20) 前記挿入部の外壁面が、水平方向となす角度θは、80〜95°である、(13)〜(19)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(21) 前記接合補助部材の挿入部と非挿入部との境界部の直径PD1は、前記第1の板の穴の直径BDに対し80%以上105%以下である、(13)〜(20)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(22) 前記接合補助部材の非挿入部の直径PD2は、前記第1の板の穴の直径BDに対し105%以上である、(13)〜(21)のいずれかに記載の異材溶接継手。
(23) 前記接合補助部材の非挿入部の高さPH2は、前記第1の板の板厚BHの50%以上150%以下である、(13)〜(22)のいずれかに記載の異材溶接継手。
本発明によれば、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金と、鋼との異材を、高能率に、強固かつ信頼性の高い品質で接合でき、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる。
以下、本発明の各実施形態に係る異材接合用スポット溶接法、接合補助部材、及び、異材溶接継手を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の異材接合用スポット溶接法は、互いに重ね合わせされる、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の上板10(第1の板)と、鋼製の下板20(第2の板)とを、鋼製の接合補助部材30を介して、後述するレーザスポット溶接法によって接合することで、図1A及び図1Bに示すような異材溶接継手1を得るものである。
上板10には、板厚方向に貫通して、下板20の重ね合わせ面に臨む穴11が設けられており、この穴11に接合補助部材30が挿入される。
接合補助部材30は、図3に示すように、上板10の穴11に挿入される挿入部31と、上板10の上面に配置されるフランジ形状で、円形の非挿入部32と、を持った段付きの外形形状を有する。また、接合補助部材30には、中央部に非挿入部32から挿入部31に向かって凹んだ、上面視円形の凹部33が形成される。
なお、非挿入部32の外形形状は、円形に限定されず、溶接後に上板10の穴11を塞ぐものであれば、任意の形状とすることができる。例えば、図4Aに示す楕円形や、図4Bに示す正方形、図4Cに示す角丸の正方形、図4Dに示す六角形、図4Eに示す八角形、図4Fに示す角丸の長方形でもよい。
また、非挿入部32が非円形の場合、後述する非挿入部32の直径PD2は、最も短い対向距離間として規定する。
さらに、凹部33の底面33aの高さは、非挿入部32の下面の高さと略等しくてもよく、或いは、非挿入部32の下面の高さより高くてもよいし、非挿入部32の下面の高さより低くてもよい。
さらに、凹部33の底面33aの高さは、非挿入部32の下面の高さと略等しくてもよく、或いは、非挿入部32の下面の高さより高くてもよいし、非挿入部32の下面の高さより低くてもよい。
また、レーザ光Lを接合補助部材30の凹部33に照射することで(図2D参照)、下板20及び接合補助部材30の挿入部31との界面には、下板20及び接合補助部材30とが溶融した溶接金属40によって溶接部Wが形成される。この場合、溶接部Wは、接合補助部材30の凹部33の底面33aから、上記界面を越えて、該底面33aの下方に位置する下板20の一部に形成される。
以下、異材溶接継手1を構成する異材接合用スポット溶接法について、図2A〜図2Dを参照して説明する。
まず、図2Aに示すように、上板10に穴11を空ける穴開け作業を行う(ステップS1)。次に、図2Bに示すように、上板10と下板20を重ね合わせる重ね合わせ作業を行う(ステップS2)。さらに、図2Cに示すように、接合補助部材30の挿入部31を、上板10の上面から、上板10の穴11に挿入する(ステップS3)。そして、図2Dに示すように、レーザ光Lを接合補助部材30の凹部33に照射し、形成された溶接金属40によって下板20及び接合補助部材30をレーザ溶接する(ステップS4)。
まず、図2Aに示すように、上板10に穴11を空ける穴開け作業を行う(ステップS1)。次に、図2Bに示すように、上板10と下板20を重ね合わせる重ね合わせ作業を行う(ステップS2)。さらに、図2Cに示すように、接合補助部材30の挿入部31を、上板10の上面から、上板10の穴11に挿入する(ステップS3)。そして、図2Dに示すように、レーザ光Lを接合補助部材30の凹部33に照射し、形成された溶接金属40によって下板20及び接合補助部材30をレーザ溶接する(ステップS4)。
ステップS1の穴開け作業の具体的な手法としては、a)電動ドリルやボール盤といった回転工具を用いた切削、b)ポンチを用いた打抜き、c)金型を用いたプレス型抜きがあげられる。
また、特殊な手法としては、図5A〜図5Cに示すように、接合補助部材30自体をポンチとして、上板10が配置された下台座50に対して、接合補助部材30が固定された上台座51を接近させ、打抜き加工を施すことで、ステップS1の穴開け作業とステップS3の接合補助部材30の挿入作業とが同時に行なわれる。
したがって、この手法の場合には、ステップS2の重ね合わせ作業とステップS3の接合補助部材30の挿入作業とは、工程順が入れ替わる。
また、特殊な手法としては、図5A〜図5Cに示すように、接合補助部材30自体をポンチとして、上板10が配置された下台座50に対して、接合補助部材30が固定された上台座51を接近させ、打抜き加工を施すことで、ステップS1の穴開け作業とステップS3の接合補助部材30の挿入作業とが同時に行なわれる。
したがって、この手法の場合には、ステップS2の重ね合わせ作業とステップS3の接合補助部材30の挿入作業とは、工程順が入れ替わる。
また、ステップS4で使用される溶接用レーザでは、発振器として、炭酸ガスレーザ、半導体レーザ(ダイオードレーザとも言う)、YAGレーザ、ディスクレーザ、ファイバーレーザといった種類があるが、いずれも本施工法に適用可能である。また、レーザ照射の方法については、狙い位置固定では溶融範囲が狭く、溶接金属を広く形成させることが困難なので、ガルバノスキャナと呼ばれるレンズ系動作や、溶接ロボットの機械的移動により、図6Aに示すように、渦巻き状に狙い位置を高速移動させるスクリュー運動や、図6Bに示すように、往復運動などをさせて適当な面積の溶込み範囲を得る方法を用いる。
なお、レーザ溶接による溶込みは、図7Aに示すように、下板20を適度に溶融していることが必要である。なお、図7Bに示すように、下板20の板厚を超えて溶接金属40が形成される、いわゆる裏波が出る状態にまで溶けても問題はない。
ただし、下板20が溶けずに、溶接金属40が乗っかっているだけであると、高い強度は得られない。また、溶接金属40が深く溶け込みすぎて、溶接金属40と下板20が溶け落ちてしまわないように溶接する必要がある。
レーザ溶接の条件は、接合補助部材30の挿入部31の底部31a(図3参照)の板厚、下板20の板厚、それぞれの材質などを考慮して選定される。
ただし、下板20が溶けずに、溶接金属40が乗っかっているだけであると、高い強度は得られない。また、溶接金属40が深く溶け込みすぎて、溶接金属40と下板20が溶け落ちてしまわないように溶接する必要がある。
レーザ溶接の条件は、接合補助部材30の挿入部31の底部31a(図3参照)の板厚、下板20の板厚、それぞれの材質などを考慮して選定される。
以上の作業によって、Al合金やMg合金製の上板10と鋼製の下板20は高い強度で接合される。
以下、上記レーザスポット溶接法において使用される鋼製の接合補助部材30の役割について説明する。
まず、接合補助部材を使用せず、図8A及び図8Bに示すように、単純にアルミ製の上板10と鋼製の下板20を重ね、レーザを直上から照射して両板10、20を部分的に溶融して一体化するレーザスポット溶接を行った場合、形成される溶接金属40aはアルミと鋼の合金となる。この合金はアルミ含有量が多いので脆性的特性である金属間化合物(IMC)を呈している。このような異材溶接継手100aは、一見接合されている様に見えても、横方向に引張応力がかかる(せん断引張)と、図9A及び図9Bに示すように、溶接金属が容易に破壊して、外れてしまう。また、縦方向に引張応力がかかる(剥離引張)場合でも、図10A及び図10Bに示すように、溶接金属40aが破断するか、もしくは溶接金属40aと上板10の境界部あるいは溶接金属40と下板20の境界部が破断し、上板10が抜けてしまうようにして接合が外れてしまう。
このように単にアルミニウム製やマグネシウム製の上板10と鋼製の下板20を重ねて、貫通溶接しようとしても、溶接金属40aは全部分が金属間化合物になってしまうので、せん断引張にも剥離引張にも弱く、溶接継手としては実用にならない。
このように単にアルミニウム製やマグネシウム製の上板10と鋼製の下板20を重ねて、貫通溶接しようとしても、溶接金属40aは全部分が金属間化合物になってしまうので、せん断引張にも剥離引張にも弱く、溶接継手としては実用にならない。
上記異材溶接継手100aにおける課題から、金属間化合物を形成させず、且つ、せん断、上下剥離の両方向の応力にも耐えるように、本実施形態の接合補助部材30が使用される。つまり、図2A〜図2Dに示すように、上板10に穴開けを施し、次に、接合補助部材30の挿入部31を上板10に設けられた穴11に挿入して、凹部33の底面33aにレーザを照射して接合補助部材30と下板20との界面に溶接金属40による溶接部Wを形成する。このようにすると、断面としては接合補助部材30、溶接金属40、下板20が強固な金属結合によって溶接接合されている状態になる。
上板10に設けられた穴11よりも幅広である接合補助部材30の非挿入部32の役割は、上下剥離応力に対する抵抗である。図11に示すように、適切なサイズの接合補助部材30を適用することにより、上板10と溶接金属40の界面が剥離して抜けてしまう現象を防止することが可能となる。一般的には、溶接金属40は、十分に塑性変形した後、破断する。
一方、接合補助部材30の挿入部31の役割は、上述の健全なる溶接部Wの形成だけでなく、せん断方向の応力に対する初期期間の抵抗体の役目を持つ。すなわち、図12Aに示すように、上板10の穴11に挿入された接合補助部材30の挿入部31の外壁面31bが物理的障害となり、上板10の水平移動を妨げる。なお、せん断方向の応力が強いと終局期間では母材が変形し、図12Bに示すように、接合部が90°近く傾斜すると上下剥離引張と同じ状態になる。このようになれば、既に述べた上下剥離応力に対する抵抗体として接合補助部材30の非挿入部32が作用しはじめ、さらに強い抵抗力を発揮する。
また、接合補助部材30には継手強度を高める以外に、上板10と下板20の重ね合わせ面に生じる空隙(ギャップ)gを縮小させる効果もある(図13A参照)。溶接工程では溶接金属40が熱収縮するため、下板20と接合補助部材30が共に近づく方向に力が作用する。それによって、溶接前に多少の空隙gがあっても、図13Bに示すように、溶接後には空隙gは減少し、接合部の設計精度が高まる。
次に、接合補助部材30に凹部33を設ける理由について述べる。挿入部31と非挿入部32の2段階形状を有すれば、上述の上下剥離応力、せん断引張応力、空隙縮小効果は得られ、必ずしも中央部を凹ませる必要性は生じない。しかしながら、図14Bに示すように、溶接部の板厚が大きければ、それを貫通し、下板20まで溶融させるに必要なエネルギーが大きくなる。レーザ溶接法は出力を高めると、それを発生するレーザ発振器の価格が増大する。したがって、コスト面で不利になる。また、高出力レーザは掘り下げる力が大きいが、それは溶融池を大きく外周に吹き飛ばす短所も発生させ、スパッタを増大して製造物品質を劣化させるだけでなく、レーザ溶接装置の保護ガラスやレンズに付着して汚し、集光の阻害要因となって長時間運転性も劣化させる。低出力レーザで長時間かけて溶接すれば、これらの問題は生じにくくなるが、能率は低下し、レーザ溶接の長所は消失する。これらの理由から、図14Aに示すように、レーザを照射し、溶接部を形成する面は、適度に凹ますことが必要となる。形状的にも、凹部33にレーザを照射し、スパッタが発生しても凹部33部の壁面がスパッタをキャッチする効果があり、周囲にまき散らさない効果がある。
なお、鋼製の接合補助部材30の材質は、純鉄および鉄合金であれば、特に制限されるものでなく、例えば、軟鋼、炭素鋼、ステンレス鋼などがあげられる。接合補助部材30の製造手段としては、鍛造や鋳造、切削で製造することが可能である。なお、深絞りでも類似の形状を製造することが可能であるが、後述するとおり、挿入部壁面角度θを大きくすることが技術的に難しく、製造方法として望ましくない。
また、接合補助部材30の各種寸法は、図15A及び図15Bに示すように、上板10との関係で次のように設定される。
・挿入部の底部の高さPH1
挿入部31の底部31aの高さPH1は、0.5mm以上であり、且つ、2.5mm以下と上板10の板厚BHの125%とのいずれか小さい方の値以下に設計される。挿入部31の底部31aはレーザ溶接によって下板20の一部と共に溶融し、一体化する箇所である。底部の厚みが薄いほど低出力レーザを用いてかつ高速に溶融させることができるが、継手引張性能は小さくなる。そのため、アーク溶接を組み合わせなければならなくなり、結果的に能率が悪くなる。これらのバランスから、最低0.5mmが望ましい。一方、底部の板厚を厚くすると、アーク溶接を組み合わせなくとも、部材剛性が向上して継手引張性能も向上する。ただし、板厚が厚くなるに応じて高い出力性能を持つレーザを必要とする。コスト面で工業的実用性が失われる。また、スパッタも多く発生する。低出力レーザでは下板20を溶融させることが出来なくなる場合もある。普及度の高い6kW出力のレーザ発振器を用いて高能率に溶接できる板厚上限が2.5mmであるため、これを絶対値としての上限とする。ただし、上板10の板厚BHに対し125%を超えても継手強度としてはこれ以上高くならず、重量増要因になるだけなので、BH×1.25が2.5mmより小さい場合は、BH×1.25を上限とする。
挿入部31の底部31aの高さPH1は、0.5mm以上であり、且つ、2.5mm以下と上板10の板厚BHの125%とのいずれか小さい方の値以下に設計される。挿入部31の底部31aはレーザ溶接によって下板20の一部と共に溶融し、一体化する箇所である。底部の厚みが薄いほど低出力レーザを用いてかつ高速に溶融させることができるが、継手引張性能は小さくなる。そのため、アーク溶接を組み合わせなければならなくなり、結果的に能率が悪くなる。これらのバランスから、最低0.5mmが望ましい。一方、底部の板厚を厚くすると、アーク溶接を組み合わせなくとも、部材剛性が向上して継手引張性能も向上する。ただし、板厚が厚くなるに応じて高い出力性能を持つレーザを必要とする。コスト面で工業的実用性が失われる。また、スパッタも多く発生する。低出力レーザでは下板20を溶融させることが出来なくなる場合もある。普及度の高い6kW出力のレーザ発振器を用いて高能率に溶接できる板厚上限が2.5mmであるため、これを絶対値としての上限とする。ただし、上板10の板厚BHに対し125%を超えても継手強度としてはこれ以上高くならず、重量増要因になるだけなので、BH×1.25が2.5mmより小さい場合は、BH×1.25を上限とする。
・挿入部の外壁面が水平方向となす角度θ
挿入部31の外壁面31bが水平方向となす角度θ(図15B参照)は、80〜95°に設計される。上板10に穴開けする場合、一般に切削、打抜き、型抜きといった普及手段では板面に対し垂直に壁面が形成される。これに対し、接合補助部材30が接触してせん断方向の応力への抵抗力となるのは挿入部31の外壁面31bである。接合補助部材30の挿入部31の外壁面31bに角度が付くと、断面で捉えた場合、点接触となる。一方、垂直になっていれば面接触となる。点接触では応力に対し応力集中することから、接合補助部材30の変形が起きやすく、強度的に低くなる。また、同じ溶接面積を取ろうとすると外壁面31bの角度θが小さいほど、接合補助部材30の非挿入部32の外径PD2が大きくなる。これは、重量増要因でもあり、無駄である。接合しようとする箇所により大きな面積を必要とするので、狭隘箇所への適用性も悪くなる。これらのことから、接合補助部材30の挿入部31の外壁面31bは、垂直に近いほど望ましく、角度θの下限を80°とする。なお、この角度θを得るためには、接合補助部材30の製造法は、鍛造や鋳造、切削加工に限定され、深絞り加工では当該角度θを得ることは困難である。一方、90°超とするのは、鋼製接合補助部材の製造面で難しくなるが、95°までは工業的誤差分含めて許容される。
挿入部31の外壁面31bが水平方向となす角度θ(図15B参照)は、80〜95°に設計される。上板10に穴開けする場合、一般に切削、打抜き、型抜きといった普及手段では板面に対し垂直に壁面が形成される。これに対し、接合補助部材30が接触してせん断方向の応力への抵抗力となるのは挿入部31の外壁面31bである。接合補助部材30の挿入部31の外壁面31bに角度が付くと、断面で捉えた場合、点接触となる。一方、垂直になっていれば面接触となる。点接触では応力に対し応力集中することから、接合補助部材30の変形が起きやすく、強度的に低くなる。また、同じ溶接面積を取ろうとすると外壁面31bの角度θが小さいほど、接合補助部材30の非挿入部32の外径PD2が大きくなる。これは、重量増要因でもあり、無駄である。接合しようとする箇所により大きな面積を必要とするので、狭隘箇所への適用性も悪くなる。これらのことから、接合補助部材30の挿入部31の外壁面31bは、垂直に近いほど望ましく、角度θの下限を80°とする。なお、この角度θを得るためには、接合補助部材30の製造法は、鍛造や鋳造、切削加工に限定され、深絞り加工では当該角度θを得ることは困難である。一方、90°超とするのは、鋼製接合補助部材の製造面で難しくなるが、95°までは工業的誤差分含めて許容される。
・挿入部と非挿入部との境界部の直径PD1
挿入部と非挿入部との境界部の直径PD1は、上板10の穴11の直径BDに対し80%以上105%以下に設計される。上板10の横方向(二次元方向)の移動への主な抵抗力は、上板10に設けられた穴11の壁面と接合補助部材30の挿入部31の物理的接触である。したがって、接合状態で接合補助部材30の挿入部31と上板10の穴11に隙間が無い状態が、即ち、挿入部31の直径PD1と穴11の直径BDとが同一(100%)であるのが最善である。ただし、接合補助部材30の挿入部31の径が多少大きくても、上板10の穴11まわりの弾性変形分を強引に押し込むことができるので問題は無い。挿入部直径PD1の実用的な上限は穴11の直径BDに対し105%である。一方、隙間が生じていると容易に横方向の力に対してずれが生じやすくなるので、望ましくないが、隙間分移動した後は、双方接触して大きな抵抗力を発揮する。また、後述するとおり、近接して複数箇所に本実施形態の溶接法を適用すると、個々の溶接部における隙間が一様の方向性を持つことはほとんどなく、確率論的には数が増えるほど隙間の方向は分散され、ある方向の引張応力に対して、いずれかが抵抗力になり、容易にずれることはない。したがって設計精度に応じてある程度の隙間は一般的に許容される。挿入部直径PD1の下限は、穴11の直径BDに対し80%とするが、精度の観点では下限は90%がより好ましい。
挿入部と非挿入部との境界部の直径PD1は、上板10の穴11の直径BDに対し80%以上105%以下に設計される。上板10の横方向(二次元方向)の移動への主な抵抗力は、上板10に設けられた穴11の壁面と接合補助部材30の挿入部31の物理的接触である。したがって、接合状態で接合補助部材30の挿入部31と上板10の穴11に隙間が無い状態が、即ち、挿入部31の直径PD1と穴11の直径BDとが同一(100%)であるのが最善である。ただし、接合補助部材30の挿入部31の径が多少大きくても、上板10の穴11まわりの弾性変形分を強引に押し込むことができるので問題は無い。挿入部直径PD1の実用的な上限は穴11の直径BDに対し105%である。一方、隙間が生じていると容易に横方向の力に対してずれが生じやすくなるので、望ましくないが、隙間分移動した後は、双方接触して大きな抵抗力を発揮する。また、後述するとおり、近接して複数箇所に本実施形態の溶接法を適用すると、個々の溶接部における隙間が一様の方向性を持つことはほとんどなく、確率論的には数が増えるほど隙間の方向は分散され、ある方向の引張応力に対して、いずれかが抵抗力になり、容易にずれることはない。したがって設計精度に応じてある程度の隙間は一般的に許容される。挿入部直径PD1の下限は、穴11の直径BDに対し80%とするが、精度の観点では下限は90%がより好ましい。
・非挿入部直径PD2
非挿入部直径PD2は、上板10の穴11の直径BDに対し105%以上に設計される。接合補助部材30の非挿入部32は、板厚方向への外部応力、言い換えれば引き剥がす応力が働いた際への抵抗力としての主体的役割を果たす。非挿入部32は直径PD2が大きく、かつ厚さが大きいほど板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して強度を増すため、望ましい。非挿入部直径PD2が穴11の直径BDに対し105%未満では、非挿入部32が板厚方向への外部応力に対して弾塑性変形した場合に、上板10の穴11の直径BD以下の見かけ直径に容易になりやすく、さすれば上板10が抜けてしまいやすくなる。つまり、非挿入部32が高い抵抗力を示さない。したがって、非挿入部直径PD2は、穴11の直径BDの105%を下限とする。より好ましくは、非挿入部直径PD2は、穴11の直径BDの120%を下限とするとよい。一方、接合部強度の観点では上限を設ける必要は無い。
非挿入部直径PD2は、上板10の穴11の直径BDに対し105%以上に設計される。接合補助部材30の非挿入部32は、板厚方向への外部応力、言い換えれば引き剥がす応力が働いた際への抵抗力としての主体的役割を果たす。非挿入部32は直径PD2が大きく、かつ厚さが大きいほど板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して強度を増すため、望ましい。非挿入部直径PD2が穴11の直径BDに対し105%未満では、非挿入部32が板厚方向への外部応力に対して弾塑性変形した場合に、上板10の穴11の直径BD以下の見かけ直径に容易になりやすく、さすれば上板10が抜けてしまいやすくなる。つまり、非挿入部32が高い抵抗力を示さない。したがって、非挿入部直径PD2は、穴11の直径BDの105%を下限とする。より好ましくは、非挿入部直径PD2は、穴11の直径BDの120%を下限とするとよい。一方、接合部強度の観点では上限を設ける必要は無い。
・非挿入部高さPH2
非挿入部高さPH2は、上板10の板厚BHの50%以上150%以下に設計される。上記で述べたとおり、非挿入部32は直径が大きく、かつ高さ(厚さ)PH2が大きいほど板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して強度を増すため、望ましい。この非挿入部高さPH2は継手の上板10の板厚BHに応じて大きくすることで高い抵抗力を発揮する。非挿入部高さPH2が上板10の板厚BHの50%未満では、非挿入部32の外周部が板厚方向への外部応力に対して容易に弾塑性変形を生じ、上板10の穴11の直径BD以下の見かけ直径になると、抜けやすくなる。つまり、非挿入部32が高い抵抗力を示さない。したがって、非挿入部高さPH2は上板10の板厚BHの50%を下限とする。一方、非挿入部高さPH2が上板10の板厚BHの150%を超えて大きくすると、継手強度的には問題ないが、過剰に張り出した形状となって外観が悪いだけでなく、重量も重くなる。したがって、非挿入部高さPH2は、上板10の板厚BHの150%以下にすることが必要である。
非挿入部高さPH2は、上板10の板厚BHの50%以上150%以下に設計される。上記で述べたとおり、非挿入部32は直径が大きく、かつ高さ(厚さ)PH2が大きいほど板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して強度を増すため、望ましい。この非挿入部高さPH2は継手の上板10の板厚BHに応じて大きくすることで高い抵抗力を発揮する。非挿入部高さPH2が上板10の板厚BHの50%未満では、非挿入部32の外周部が板厚方向への外部応力に対して容易に弾塑性変形を生じ、上板10の穴11の直径BD以下の見かけ直径になると、抜けやすくなる。つまり、非挿入部32が高い抵抗力を示さない。したがって、非挿入部高さPH2は上板10の板厚BHの50%を下限とする。一方、非挿入部高さPH2が上板10の板厚BHの150%を超えて大きくすると、継手強度的には問題ないが、過剰に張り出した形状となって外観が悪いだけでなく、重量も重くなる。したがって、非挿入部高さPH2は、上板10の板厚BHの150%以下にすることが必要である。
なお、上板10及び下板20の板厚については、限定される必要は必ずしもないが、施工能率と、重ね溶接としての形状を考慮すると、上板10の板厚は、4.0mm以下であることが望ましい。一方、レーザ溶接の入熱を考慮すると、板厚が過度に薄いと溶接時に溶け落ちてしまい、溶接が困難であることから、上板10、下板20共に0.3mm以上とすることが望ましい。
以上の構成により、上板10がアルミニウム合金もしくはマグネシウム合金、下板20が鋼の素材を強固に接合することができる。
ここで、異種金属同士を直接接合する場合の課題としては、IMCの形成という課題以外に、もう一つの課題が知られている。それは、異種金属同士が接すると、ガルバニ電池を形成する為に腐食を加速する原因になる。この原因(電池の陽極反応)による腐食は電食と呼ばれている。異種金属同士が接する面に水があると腐食が進むので、接合箇所として水が入りやすい場所に本実施形態が適用される場合は、電食防止を目的として、水の浸入を防ぐためのシーリング処理を施す必要がある。本接合法でもAl合金やMg合金と鋼が接する面は複数形成されるので、樹脂系の接着剤をさらなる継手強度向上の目的のみならず、シーリング材として用いることが好ましい。
例えば、図16A及び図16Bに示す第1変形例のように、上板10及び下板20の接合面で、溶接部周囲に接着剤60を全周に亘って環状に塗布してもよい。なお、接着剤60を上板10及び下板20の接合面で、溶接部周囲に全周に亘って塗布する方法としては、図17A及び図17Bに示す第2変形例のように、溶接箇所を除いた接合面の全面に塗布する場合も含まれる、これにより、上板10、下板20、及び溶接金属40の電食速度を下げることができる。
また、図18A及び図18Bに示す第3変形例のように、上板10の穴11の周囲と接合補助部材30の非挿入部32の下面との間に接着剤60を塗布してもよい。これにより、上板10、接合補助部材30、及び溶接金属40の電食速度を下げることができる。
この場合、副次的効果として、レーザ溶接前に接合補助部材30を上板10に仮止めしておく作用がある。特に、図19に示すように、レーザ溶接が、横向や上向姿勢になる場合、接着剤60を塗布しておくことで、接合補助部材30が重力によって落下するのを防ぐことができ、溶接を適切に施工することができる。
この場合、副次的効果として、レーザ溶接前に接合補助部材30を上板10に仮止めしておく作用がある。特に、図19に示すように、レーザ溶接が、横向や上向姿勢になる場合、接着剤60を塗布しておくことで、接合補助部材30が重力によって落下するのを防ぐことができ、溶接を適切に施工することができる。
さらに、図20A及び図20Bに示す第4変形例のように、接合補助部材30の非挿入部32と上板10の表面との境界部に接着剤60を塗布してもよい。これにより、電食速度低下の効果が得られると共に、接着剤塗布をレーザ溶接前に行えば、接合補助部材30を上板10に仮止めしておく作用が得られる。なお、図18A及び図18Bに示す第3変形例では、塗布は溶接工程前にしか実施できないが、図20A及び図20Bに示す第4変形例では、塗布は溶接工程前でも溶接工程後でも可能である。
なお、接合補助部材30において、非挿入部32の上板10との接触面は、図3に示すように、必ずしも平坦な面である必要はない。即ち、非挿入部32の上板10との接触面は、図21A及び図21Bに示すように、必要に応じてスリット34a、34bを設けて良い。特に、上板10との接触面側に円周状のスリット34a又は放射状のスリット34bを設けると、接着剤60の塗布がスリット34a、34bの隙間に入り込んで逃げなくなるため、安定した接着が行なわれ、シーリングの効果も確実となる。このような平坦ではない面の場合の非挿入部高さPH2の定義は、高さの最も大きな部分とする。
また、図22に示すように、接合補助部材30の辺に当たる箇所には、使用時の安全性や鍛造時の制限などの点から、曲面部Rを持たせることには何ら問題がない。
また、本実施形態の溶接法は、接合面積が小さい点溶接と言えるので、ある程度の接合面積を有する実用部材同士の重ね合わせ部分Jを接合する場合は、本溶接法を図23A〜図23Cに示すように、複数実施すればよい。これにより、重ね合わせ部分Jにおいて強固な接合が行われる。本実施形態は、図23B及び図23Cに示すような開断面構造にも使用できるが、特に、図23Aに示すような閉断面構造において好適に使用することができる。
以上説明したように、本実施形態の異材接合用スポット溶接法によれば、上板10に穴11を空ける工程と、上板10と下板20を重ね合わせる工程と、挿入部31と非挿入部32とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に非挿入部32から挿入部31に向かって凹んだ凹部33を有する鋼製の接合補助部材30を、上板10に設けられた穴11に挿入する工程と、レーザ光Lを接合補助部材30の凹部33に照射し、形成された溶接金属40によって下板20及び接合補助部材30の挿入部31を接合する工程と、を備える。
これにより、Al合金もしくはMg合金の上板10と鋼の下板20を、高能率に、強固かつ信頼性の高い品質で接合でき、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる。
これにより、Al合金もしくはMg合金の上板10と鋼の下板20を、高能率に、強固かつ信頼性の高い品質で接合でき、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる。
また、重ね合わせ工程の前に、上板10と下板20の少なくとも一方の重ね合せ面には、穴11の周囲に、全周に亘って接着剤60を塗布する工程を、さらに備える。これにより、接着剤は、継手強度向上の他、シーリング材として作用し、上板10、下板20及び溶接金属40の電食速度を下げることができる。
また、挿入工程において、接合補助部材30の非挿入部32と、該非挿入部32と対向する上板10との間の少なくとも一方の対向面に、接着剤60を塗布する。これにより、上板10、接合補助部材30及び溶接金属40の電食速度を下げることができる。
また、挿入工程の際、又は、溶接工程後に、接合補助部材30の非挿入部32と、上板10の表面との境界部に接着剤60を塗布する。これにより、上板10と接合補助部材30の接合強度を向上することができる。なお、挿入工程の際に、接着剤60を塗布すれば、接合補助部材30を仮止めできる作用が得られる。
また、接合補助部材30の挿入部31の底部31aの高さPH1は、0.5mm以上であり、且つ、2.5mm以下と前記第1の板の板厚BHの125%とのいずれか小さい方の値以下であるので、継手強度を確保しつつ、高能率にレーザ溶接を行うことができる。
さらに、挿入部31の外壁面31bが水平方向となす角度θは、80〜95°であるので、せん断方向への応力に対する強度を有し、且つ、非挿入部32の外径を大きくすることなく、溶接面積を確保できる接合補助部材30を得ることができる。
また、接合補助部材30の挿入部31と非挿入部32との境界部の直径PD1は、上板10の穴11の直径BDに対し80%以上105%以下であるので、上板10の板幅方向の外部応力への抵抗力、及び、接合補助部材30の挿入性を両立することができる。
また、接合補助部材30の非挿入部32の直径PD2は、上板10の穴11の直径BDに対し105%以上であるので、非挿入部32は、板厚方向の外部応力への抵抗力として機能することができる。
また、接合補助部材30の非挿入部32の高さPH2は、前記第1の板の板厚BHの50%以上150%以下であるので、非挿入部32は、外観性及び重量増を考慮しつつ、板厚方向の外部応力への抵抗力として機能することができる。
また、本実施形態の接合補助部材30は、鋼製で、挿入部31と非挿入部32とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に非挿入部32から挿入部31に向かって凹んだ凹部33を有する。これにより、接合補助部材30は、上述したレーザ溶接による異材接合用スポット溶接法に好適に用いられる。
また、本実施形態の異材溶接継手1は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の上板10と、上板10にスポット溶接された、鋼製の下板20と、を備え、上板10は、下板20との重ね合わせ面に臨む穴11を有し、上板10に設けられた穴11に挿入される挿入部31と、非挿入部32と、を持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に非挿入部32から挿入部31に向かって凹んだ凹部33を有する鋼製の接合補助部材30をさらに備え、下板20と前記接合補助部材30の挿入部31との界面には、下板20及び接合補助部材30によって溶接部Wが形成される。
これにより、Al合金もしくはMg合金の上板10と鋼の下板20とを備えた異材溶接継手1は、高効率に、強固かつ信頼性の高い品質で接合され、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる。
これにより、Al合金もしくはMg合金の上板10と鋼の下板20とを備えた異材溶接継手1は、高効率に、強固かつ信頼性の高い品質で接合され、かつ開断面構造にも閉断面構造にも制限無く適用できる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る異材接合用スポット溶接法、接合補助部材、及び、異材溶接継手を図面に基づいて詳細に説明する。
次に、本発明の第2実施形態に係る異材接合用スポット溶接法、接合補助部材、及び、異材溶接継手を図面に基づいて詳細に説明する。
第1実施形態で述べたように、基本的には、レーザ溶接だけで、健全なAl合金又はMg合金製の上板10と鋼製の下板20とは溶接接合されるが、板厚が大きくなる、あるいは母材強度が高くなると、レーザ溶接による溶接金属形成だけでは、継手強度が不足することがある。その理由は、接合補助部材30の中央部を凹ませることで剛性が低下するため、剥離方向への強い応力によって変形し、接合補助部材30から上板10が抜けやすくなるためである。
このような現象が生じて継手強度が不足すると判断される場合は、接合補助部材30の板厚を高めることでも改善が図れるが、本実施形態では、レーザ溶接と合わせて、溶接材料(後述する溶接ワイヤ又はフィラー)を用いるアーク溶接を加えたレーザ・アークハイブリッド溶接を行うことで、凹部33を溶接金属40で充填し、接合部の剛性を高めている。
具体的には、第1実施形態の異材接合用スポット溶接法と同様に、ステップS1の穴開け作業、ステップS2の重ね合わせ作業、及びステップS3の接合補助部材30の挿入作業を行うと共に、上述したレーザ溶接とアーク溶接とが図27に示すいずれかのパターンのタイミングで行なわれる(ステップS4)。
したがって、図24A及び図24Bに示すように、異材接合継手1aにおいて、溶接部Wを形成する溶接金属40は、鋼製の接合補助部材30、鋼製の下板20、及び、鉄合金、または、Ni合金となる溶接材料が溶融混合したものとなり、接合補助部材30の凹部33内を充填する。
特に、図24Bに示すように、溶接金属40は接合補助部材30の凹部33を充填し、さらに接合補助部材30の表面に余盛りWaを形成するのが望ましい。余盛りWaを形成することで、図25に示すように、板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して、高い強度が得られる。
特に、図24Bに示すように、溶接金属40は接合補助部材30の凹部33を充填し、さらに接合補助部材30の表面に余盛りWaを形成するのが望ましい。余盛りWaを形成することで、図25に示すように、板厚方向(3次元方向)の外部応力に対して、高い強度が得られる。
なお、レーザと組み合わせることが可能、かつ溶接材料が溶融して溶接金属が形成される具体的なアーク溶接法として、(a)溶極式ガスシールドアーク溶接法(マグ・ミグ法)、(b)ガスタングステンアーク溶接法、(c)プラズマアーク溶接法があげられる。
図26Aは、レーザ溶接と、マグ溶接又はミグ溶接が行われている状態を示し、図26Bは、レーザ溶接と、ティグ溶接又はプラズマ溶接が行われている状態を示す。
図26Aは、レーザ溶接と、マグ溶接又はミグ溶接が行われている状態を示し、図26Bは、レーザ溶接と、ティグ溶接又はプラズマ溶接が行われている状態を示す。
(a)溶極式ガスシールドアーク溶接法は、一般的にMAG(マグ)やMIG(ミグ)と呼ばれる溶接法であり、ソリッドワイヤもしくはフラックス入りワイヤをフィラー兼アーク発生溶極として用い、CO2,O2,Ar,Heといったシールドガスで溶接部を大気から遮断して健全な溶接部を形成する手法である。
(b)ガスタングステンアーク溶接法は、ガスシールドアーク溶接法の一種であるが非溶極式であり、一般的にTIG(ティグ)とも呼ばれる。シールドガスは、ArまたはHeの不活性ガスが用いられる。タングステン電極と母材との間にはアークが発生し、フィラーワイヤFはアークに横から送給される。
一般的に、フィラーワイヤは通電されないが、通電させて溶融速度を高めるホットワイヤ方式TIGもある。この場合、フィラーワイヤにはアークは発生しない。
一般的に、フィラーワイヤは通電されないが、通電させて溶融速度を高めるホットワイヤ方式TIGもある。この場合、フィラーワイヤにはアークは発生しない。
(c)プラズマアーク溶接法はTIGと原理は同じであるが、ガスの2重系統化と高速化によってアークを緊縮させ、アーク力を高めた溶接法である。
溶接材料の材質については、溶接金属40がFe合金となるものであれば、一般的に用いられる溶接用ワイヤが適用可能である。なお、Ni合金でも鉄との溶接には不具合を生じないので適用可能である。
具体的には、JISとして(a)Z3312,Z3313,Z3317,Z3318,Z3321,Z3323,Z3334、(b)Z3313、(c)Z3316,Z3321,Z3334,(d)Z3211,Z3221,Z3223,Z3224、AWS(American Welding Society)として、(a)A5.9,A5.14,A5.18,A5.20,A5.22,A5.28,A5.29,A5.34、(b)A5.20、(c)A5.9,A5.14,A5.18,A5.28,(d)A5.1,A5.4,A5.5,A5.11といった規格材が流通している。
具体的には、JISとして(a)Z3312,Z3313,Z3317,Z3318,Z3321,Z3323,Z3334、(b)Z3313、(c)Z3316,Z3321,Z3334,(d)Z3211,Z3221,Z3223,Z3224、AWS(American Welding Society)として、(a)A5.9,A5.14,A5.18,A5.20,A5.22,A5.28,A5.29,A5.34、(b)A5.20、(c)A5.9,A5.14,A5.18,A5.28,(d)A5.1,A5.4,A5.5,A5.11といった規格材が流通している。
これらのアーク溶接法を用いて接合補助部材30の凹部33を溶接材料で充填するが、一般的に溶接材料の狙い位置は移動させる必要がなく、適切な送給時間を経てアークを切って溶接を終了させれば良い。
レーザ溶接とアーク溶接のタイミングについては、図27に示すとおり、レーザ光照射後(パターン1)、レーザ光照射と同時(パターン3)、またはレーザ光照射中のアーク発生(パターン2)のいずれかが選択できる。いずれもレーザ光Lによる深い溶込み作用を阻害しない。一方、アーク溶接後あるいはアーク溶接中にレーザ光Lを照射すると、形成されたフィラーワイヤによる溶融池がレーザ光Lによる強い溶込み作用を阻害し、溶込み不足となる。なお、図26A及び図26Bは、アーク溶接がレーザ光照射と同時に開始、またはレーザ光照射中に開始した場合を示している。
以上説明したように、本実施形態の異材接合用スポット溶接法によれば、上板10に穴11を空ける工程と、上板10と下板20を重ね合わせる工程と、挿入部31と非挿入部32とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に非挿入部32から挿入部31に向かって凹んだ凹部33を有する鋼製の接合補助部材30を、上板10に設けられた穴11に挿入する工程と、接合補助部材30の凹部33にレーザ光を照射し、且つ、レーザ光Lの照射と同時、レーザ光Lの照射中、及びレーザ光Lの照射後のいずれかにおいて、以下の(a)〜(c)のいずれかの手法によってアーク溶接を行い、下板20及び接合補助部材30を接合すると共に、接合補助部材30の凹部33の少なくとも一部を溶接金属40で充填する工程をさらに備える。
(a)鉄合金、または、Ni合金の溶接金属40が得られる溶接ワイヤを溶極として用いるガスシールドアーク溶接法。
(b)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるガスタングステンアーク溶接法。
(c)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるプラズマアーク溶接法。
これにより、接合補助部材30の凹部33を溶接金属40で充填して、接合部の剛性を高めることができる。
(a)鉄合金、または、Ni合金の溶接金属40が得られる溶接ワイヤを溶極として用いるガスシールドアーク溶接法。
(b)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるガスタングステンアーク溶接法。
(c)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるプラズマアーク溶接法。
これにより、接合補助部材30の凹部33を溶接金属40で充填して、接合部の剛性を高めることができる。
なお、図28に示す変形例のように、下板20に膨出部21を設けてもよい。Al合金やMg合金製の上板10の板厚が比較的薄い場合には、下板20は無加工とし、上板10は穴開けして、接合時に接合補助部材30を穴11に挿入するだけで良好な溶接が可能となる。しかし、上板10の板厚が大きいと、レーザ溶接とアーク溶接を組み合わせると、接合補助部材30の凹部33を充填するのに時間がかかり、能率が悪くなる。また、熱量が過大となって、溶け落ち不良が発生したり、大きな熱歪みが発生しやすくなる。このため、下板20について絞り加工で膨出部21を設ければ、凹部33の体積が小さくなるので、溶接能率が向上し、溶け落ち不良を減らすことができる。
また、この変形例では、下板20の膨出部21は、上板10と下板20とを位置合わせをするための目印となり、下板20の膨出部21と上板10の穴11を容易に合わせることができ、重ね合わせ作業の効率向上につながる。
なお、膨出部21の絞り加工は、図29Aに示すように、下板20の膨出部21が形成される部分の周辺部をダイ52で拘束する。そして、図29Bに示すように、膨出部21が形成される部分に圧力をかけてポンチ53を押し込むことで、膨出部21が成形される。また、ポンチ53の先端形状は、上板10に設けられた穴11と相似形状であることが望ましい。
また、下板20に膨出部21を形成するこの変形例は、上板10の板厚に関係なく、重ね合わせ作業の効率化の観点から、第1実施形態のレーザ溶接と組合せて適用することも可能である。
尚、本発明は、前述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
ここで、以下の実施例A〜Eを用いて、本実施形態の有効性を確認した。
<実施例A>
実施例Aでは、上板10を板厚1.6mmのアルミニウム合金A5083、下板20を板厚1.4mmの590MPa級高張力鋼板とした組合せの重ね継手とし、4kWのファイバーレーザ溶接を行って接合した。照射位置でのレーザビーム径は直径0.4mmとし、鋼製接合補助部材の有無にかかわらず直径5mmの円を塗りつぶすように渦巻き状に照射位置を動作させた。
実施例Aでは、上板10を板厚1.6mmのアルミニウム合金A5083、下板20を板厚1.4mmの590MPa級高張力鋼板とした組合せの重ね継手とし、4kWのファイバーレーザ溶接を行って接合した。照射位置でのレーザビーム径は直径0.4mmとし、鋼製接合補助部材の有無にかかわらず直径5mmの円を塗りつぶすように渦巻き状に照射位置を動作させた。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136「抵抗スポット及びプロジェクション 溶接継手のせん断試験に対する試験片寸法及び試験方法」、およびJIS Z3137「抵抗スポット及びプロジェクション溶接継手の十字引張試験」に従って、破壊試験を行った。ここでは、Z3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSとして表す。合否判定値として、TSS≧8kN、CTS≧5kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、溶接継手を塩水噴霧→乾燥→湿潤を繰り替えして加速腐食させるJASO−CCT(Japanese Automobile Standards Organization Cyclic Corrosion Test)を28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。また、溶接時のスパッタ発生量を母材付着状態で評価し、ほとんど付着がないものを○、多少付着があるが許容範囲と判断されるものを△、付着が多くて許容できないと判断するものを×とした。
表1では、比較例をNo.A1〜A6、本実施例をNo.A7〜A16に示す。
No.A1は、接合補助部材を用いず、上板10に穴も開けず、上板10に対して直接レーザ溶接を実施したものである。また、接着剤も用いていない。上板であるアルミ合金と下板である鋼が溶融混合するので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。アルミと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすのでスパッタも多かった。
No.A2は、穴開けをしていない上板10の上に一段形状である直径14.0mmの円板状の接合補助部材30を載せて、その上からレーザ溶接したものである。接合補助部材30の材質はJIS G3106 SM490Cである。(以降、実施例Aの材質は同じ)。この結果、上板であるアルミ合金と、鋼製の接合補助部材および下板の鋼の3つが溶融混合し、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。アルミと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすのでスパッタも多かった。
No.A3は、直径10mmの穴開けをした上板10の上に一段形状である直径14.0mmの円板状の接合補助部材30を載せて、その上からレーザ照射したものである。接合補助部材30と下板20の間には上板10の板厚分の隙間が生じているので、レーザ照射してもこれらを一体化することができず、溶接自体ができなかった。鉄とアルミの化学反応は起こさなかったものの、溶融池形成が不安定であり、かつレーザ照射面が平坦なためスパッタ飛散が多かった。
No.A4は、No.A3に対し、レーザ照射と同時に、直径1.2mmのJIS Z3312 YGW16の溶接ワイヤと、Ar80%+CO220%シールドガスを用いて溶極式ガスシールドアーク溶接(マグ溶接)を重畳させたものであるが、接合補助部材30と下板20の間の空隙を埋める役割は担ったが、下板20への溶込みを確保するには至らず、低いTSS,CTSとなった。
No.A5は、直径10mmの穴開けをした上板10に、挿入部31と非挿入部32の二段構造を持つ円形の接合補助部材30を挿入して、その上からレーザ照射したものである。ただし、接合補助部材30は、挿入部31の外径PD1が9.5mmであり、凹部を持たず、上面は平坦である。接合補助部材30と下板20が溶接され、継手強度も良好であったが、照射面が平坦であり、かつ照射時間が長いので、スパッタが多く発生かつ飛散し、周囲の母材に付着して製品品質を低下させた。
No.A6は、挿入部31と非挿入部32の二段構造を持ち、かつ上部に凹部33を有する円形の接合補助部材30を上板10に載置し、凹部33の円形の底面をレーザ照射したものである。接合補助部材30の挿入部31の外径PD1は、9.5mmであり、凹部33の内径は、5.5mmである。ただし、上板10には穴開けをしていない。そのため、上板10であるアルミ合金と、鋼製の接合補助部材30および下板20の鋼の3つが溶融混合し、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。アルミと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすので、照射面が凹にも係わらずスパッタが多かった。
一方、No.A7〜A16は、直径10mmの円形に穴開けをした上板10に、凹部33を設けた、二段階形状の円形の鋼製の接合補助部材30を挿入し、その上から凹部33の円形の面内をレーザ照射して下板20と溶接したものである。また、No.A11、No.A14は、さらにレーザ溶接終了と同時にアーク溶接法の一種であるマグ溶接法を行い、凹部33を余盛りが生じるまで充填した。マグ溶接の条件はNo.A4と同じである。
試験体No.A7〜A16では、形成される溶接金属へのアルミ流入がゼロとなり、高品質の溶接金属が形成されるうえ、接合補助部材30の非挿入部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。また、照射位置に凹みを持たせることでスパッタ飛散を減らすことが出来た。
さらにまた、適切な箇所に金属用常温速硬化型2液混合接着材を塗布した試験体(A8〜A11,A14,A16)では、アルミと鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、高い腐食後CTS,TSSを示した。具体的にはNo.A7に対して、No.A8、No.A9、No.A10と接着剤塗布箇所を増やすにつれ、腐食後TSSおよび腐食後CTSが順に高まっていることがわかる。また、No.A10に対し、アーク溶接を加えたNo.A11はCTS,TSS共にさらに継手強度が向上していることがわかる。
<実施例B>
実施例Bでは、上板10を板厚0.8mmのマグネシウム合金ASTM AZ31B、下板20を板厚1.0mmの780MPa級高張力鋼板とした組合せの重ね継手とし、3kWの半導体(ダイオード)レーザ溶接を行って接合した。照射位置でのレーザビーム径は、直径0.65mmとし、接合補助部材30の有無にかかわらず、直径3.5mmの円を塗りつぶすように渦巻き状に照射位置を動作させた。
実施例Bでは、上板10を板厚0.8mmのマグネシウム合金ASTM AZ31B、下板20を板厚1.0mmの780MPa級高張力鋼板とした組合せの重ね継手とし、3kWの半導体(ダイオード)レーザ溶接を行って接合した。照射位置でのレーザビーム径は、直径0.65mmとし、接合補助部材30の有無にかかわらず、直径3.5mmの円を塗りつぶすように渦巻き状に照射位置を動作させた。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136およびJIS Z3137に従って、破壊試験を行った。ここではZ3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSと表す。合否判定値として、TSS≧4kN、CTS≧3kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、実施例Aと同様に、溶接継手1に対してJASO−CCTを28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。また、溶接時のスパッタ発生量を母材付着状態で評価し、ほとんど付着がないものを○、多少付着があるが許容範囲と判断されるものを△、付着が多くて許容できないと判断するものを×とした。
表2では、比較例をNo.B1〜B5、本実施例をNo.B6〜B12に示す。
No.B1は、接合補助部材を用いず、上板10に穴も開けず、上板10に対して直接レーザ溶接を実施したものである。接着剤も用いていない。上板であるマグネシウム合金と下板である鋼が溶融混合するので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。マグネシウムと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすのでスパッタも多かった。
No.B2は、穴開けをしていない上板10の上に一段形状である直径7.8mmの円板状の接合補助部材30を載せて、その上からレーザ溶接したものである。接合補助部材30の材質はJIS G3101 SS400である。(以降、実施例Bの材質は同じ)。この結果、上板であるマグネシウム合金と、鋼製接合補助部材および下板の鋼の3つが溶融混合し、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。マグネシウムと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすのでスパッタも多かった。
No.B3は、直径6.5mmの穴開けをした上板10の上に一段形状である直径7.8mmの円板状の接合補助部材30を載せて、その上からレーザ照射したものである。接合補助部材30と下板20の間には上板10の板厚分の隙間が生じているので、レーザ照射してもこれらを一体化することができず、溶接自体ができなかった。鉄とマグネシウムの化学反応は起こさなかったものの、溶融池形成が不安定であり、かつレーザ照射面が平坦なためスパッタ飛散が多かった。
No.B4は、直径6.5mmの穴開けをした上板10に、挿入部31と非挿入部32の二段構造を持つ接合補助部材30を挿入して、その上からレーザ照射したものである。ただし、接合補助部材30は、挿入部31の外径PD1が6.5mmで、凹部を持たず、上面は平坦である。接合補助部材30と下板20が溶接され、継手強度も良好であったが、照射面が平坦であり、かつ照射時間が長いので、スパッタが多く発生かつ飛散し、周囲の母材に付着して製品品質を低下させた。
No.B5は、挿入部31と非挿入部32の二段構造を持ち、かつ上部に円形の凹部33を有する接合補助部材30を上板10に載置して凹部33の底面をレーザ照射したものである。接合補助部材30は、挿入部31の外径PD1が6.5mmで、凹部33の内径が3.8mmである。ただし、上板10には穴開けをしていない。そのため、上板10であるマグネシウム合金と、鋼製の接合補助部材30および下板20の鋼の3つが溶融混合し、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。マグネシウムと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすので、照射面が凹にも係わらずスパッタが多かった。
一方、No.B6〜B12は、直径6.5mmの円形の穴開けをした上板10に、凹部33を設けた、二段階形状の円形の鋼製の接合補助部材30を挿入し、その上から凹部33の円形の面内をレーザ照射して下板20と溶接したものである。これらの試験体では形成される溶接金属へのマグネシウム流入がゼロとなり、高品質の溶接金属が形成されるうえ、接合補助部材30の非挿入部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。また、照射位置に凹みを持たせることでスパッタ飛散を減らすことが出来た。
さらにまた、適切な箇所に金属用常温速硬化型2液混合接着材を塗布した試験体(B7〜B12)では、マグネシウムと鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、高い腐食後CTS,TSSを示した。具体的にはNo.B6に対して、No.B7、No.B8、No.B9と接着剤塗布箇所を増やすにつれ、腐食後TSSおよび腐食後CTSが順に高まっていることがわかる。
<実施例C>
実施例Cでは、上板10が板厚2.6mmのアルミニウム合金A6061、下板20が板厚2.2mmの400MPa級鋼板とした組合せの重ね継手とし、5kWのYAGレーザ溶接を行って接合した。照射位置でのレーザビーム径は直径0.5mmとし、接合補助部材30の有無にかかわらず直径6mmの円を塗りつぶすように渦巻き状に照射位置を動作させた。
実施例Cでは、上板10が板厚2.6mmのアルミニウム合金A6061、下板20が板厚2.2mmの400MPa級鋼板とした組合せの重ね継手とし、5kWのYAGレーザ溶接を行って接合した。照射位置でのレーザビーム径は直径0.5mmとし、接合補助部材30の有無にかかわらず直径6mmの円を塗りつぶすように渦巻き状に照射位置を動作させた。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136およびJIS Z3137に従って、破壊試験を行った。ここではZ3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSと表す。合否判定値として、TSS≧9kN、CTS≧6kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、実施例A、Bと同様に、溶接継手1に対して、JASO−CCTを28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。また、溶接時のスパッタ発生量を母材付着状態で評価し、ほとんど付着がないものを○、多少付着があるが許容範囲と判断されるものを△、付着が多くて許容できないと判断するものを×とした。
表3では、比較例をNo.C1〜C8、本実施例をNo.C9〜C15に示す。
No.C1は、接合補助部材を用いず、上板10に穴も開けず、上板10に対して直接レーザ溶接を実施したものである。接着剤も用いていない。上板であるアルミ合金と下板である鋼が溶融混合するので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。アルミと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすのでスパッタも多かった。
No.C2は、穴開けをしていない上板10の上に一段形状である一辺14.3mmの角丸正方形の接合補助部材30を載せて、その上からレーザ溶接したものである。接合補助部材30の材質はJIS G4305 SUS304Lである(以降、実施例Cの材質は同じ)。この結果、上板10であるアルミ合金と、鋼製の接合補助部材30および下板20の鋼の3つが溶融混合し、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。アルミと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすのでスパッタも多かった。
No.C3は、直径11.0mmの円形の穴開けをした上板10の上に一段形状である一辺14.3mmの角丸正方形の接合補助部材30を載せて、その上からレーザ照射したものである。接合補助部材30と下板20の間には上板10の板厚分の隙間が生じているので、レーザ照射してもこれらを一体化することができず、溶接自体ができなかった。鉄とアルミの化学反応は起こさなかったものの、溶融池形成が不安定であり、かつレーザ照射面が平坦なためスパッタ飛散が多かった。
No.C4は、No.C3に対し、下板20を凸加工したものである。しかし、凸加工してもなお、上板の板厚である2.6mmの空隙を埋めることができず、レーザ照射してもこれらを一体化することができなかった。溶込み不足のため、低いTSS,CTSに留まった。
No.C5は、直径11.0mmの円形の穴開けをした上板10に、挿入部31と非挿入部32の二段構造を持つ一辺14.3mmの角丸正方形の接合補助部材30を挿入して、その上からレーザ照射したものである。ただし、接合補助部材30は、挿入部31の外径PD1が11.0mmで、凹部を持たず、上面は平坦である。凹部がないので、接合補助部材30の厚みが大きく、ゆえにレーザ照射では下板20への溶込みが浅く、CTS,TSS共に高い値は得られなかった。また、照射面が平坦であり、かつ照射時間が長いので、スパッタが多く発生かつ飛散し、周囲の母材に付着して製品品質を低下させた。
No.C6は、No.C5に対し、レーザ照射時間の中間時点からアーク溶接を同時に行ったものである。アーク溶接は、JIS Z3334 S Ni6625規格の直径1.2mmのNi合金ワイヤをフィラーとし、シールドガス組成をAr100%としたTIG溶接法とした。しかし、それでもなお下板20への溶込みを深くすることはできず、フィラーワイヤが溶けた溶接金属が接合補助部材30の周囲に流れ出てしまい、外観が著しく悪化した。
No.C7は、挿入部31と非挿入部32の二段構造を持ち、かつ上部に円形の凹部33を有する一辺14.3mmの角丸正方形の接合補助部材30を上板10に載置して、凹部33の底面をレーザ照射したものである。接合補助部材30は、挿入部31の外径PD1が11.0mmで、凹部33の内径が6.4mmである。ただし、上板10には穴開けをしていない。そのため、上板であるアルミ合金と、鋼製接合補助部材および下板の鋼の3つが溶融混合し、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。アルミと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすので、照射面が凹にも係わらずスパッタが多かった。
No.C8は、直径11.0mmの円形の穴開けをした上板10に、No.7と同様の、円形の凹部33を設けた二段階形状の一辺14.3mmの角丸正方形の接合補助部材30を挿入し、その上から凹部33の面内をアーク溶接にて接合補助部材30の非挿入部32の厚みPH2中央まで溶接金属を充填し、アークを切った後レーザ溶接したものである。レーザ溶接よりアークを先行させたため、レーザによる深い溶込み効果が消失し、接合補助部材30と下板20の溶込みが不足したことで低いTSS,CTSとなった。
一方、No.C9〜C15は、直径11.0mmの円形の穴開けをした上板10に、円形の凹部33を設けた、二段階形状で、非挿入部32の形状が角丸正方形の接合補助部材30を挿入し、その上から凹部33の面内をレーザ照射して下板20と溶接したものである。接合補助部材30は、挿入部31の外径PD1が11.0mmで、凹部33の内径が6.4mmである。これらの試験体では、形成される溶接金属へのアルミ流入がゼロとなり、高品質の溶接金属が形成されるうえ、接合補助部材30の非挿入部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。また、照射位置に凹みを持たせることでスパッタ飛散を減らすことが出来た。
さらに、No.C13,C14は、No.C10に対してさらにレーザ溶接照射時間の中間時点からアーク溶接を同時に行ったものである。アーク溶接の条件はNo.C6と同じである。No.C13は、接合補助部材30の非挿入部32の厚みPH2中央まで溶接金属を充填し、No.C14は、余盛りが出るまで充填した。溶接金属充填に伴ってCTS,TSSは共に向上することがわかる。
さらにまた、適切な箇所に金属用常温速硬化型2液混合接着材を塗布した試験体(C10〜C14)では、アルミと鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、高い腐食後CTS,TSSを示した。具体的にはNo.C9に対して、No.C10、No.C11、No.C12と接着剤塗布箇所を増やすにつれ、腐食後TSSおよび腐食後CTSが順に高まっていることがわかる。
<実施例D>
実施例Dでは、上板10が板厚1.2mmのアルミニウム合金A6N01、下板20が板厚1.2mmの1480MPa級熱処理済鋼板とした組合せの重ね継手とし、3kWのディスクレーザ溶接を行って接合した。照射位置でのレーザビーム径は直径0.5mmとし、接合補助部材の有無にかかわらず直径4.0mmの円を塗りつぶすように往復運動の照射位置動作をさせた。
実施例Dでは、上板10が板厚1.2mmのアルミニウム合金A6N01、下板20が板厚1.2mmの1480MPa級熱処理済鋼板とした組合せの重ね継手とし、3kWのディスクレーザ溶接を行って接合した。照射位置でのレーザビーム径は直径0.5mmとし、接合補助部材の有無にかかわらず直径4.0mmの円を塗りつぶすように往復運動の照射位置動作をさせた。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136およびJIS Z3137に従って、破壊試験を行った。ここではZ3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSと表す。合否判定値として、TSS≧6kN、CTS≧4kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、実施例A,B,Cと同様に、溶接継手1に対して、JASO−CCTを28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。また、溶接時のスパッタ発生量を母材付着状態で評価し、ほとんど付着がないものを○、多少付着があるが許容範囲と判断されるものを△、付着が多くて許容できないと判断するものを×とした。
表4では、比較例をNo.D1〜D2、本実施例をNo.D3〜D5に示す。
No.D1は、接合補助部材を用いず、上板10に穴も開けず、上板10に対して直接レーザ溶接を実施したものである。接着剤も用いていない。上板であるアルミ合金と下板である鋼が溶融混合するので、形成された溶接金属は極めて脆い金属間化合物となり、低いTSS,CTSとなった。アルミと鉄が溶融して混合する際に激しい化学反応を起こすのでスパッタも多かった。
No.D2は、直径6.5mmの円形の穴開けをした上板10の上に一段形状である直径9.75mmの正八角形の接合補助部材30を載せて、その上からレーザ照射したものである。接合補助部材30と下板20の間には上板10の板厚分の隙間が生じているので、レーザ照射してもこれらを一体化することができず、溶接自体ができなかった。鉄とアルミの化学反応は起こさなかったものの、溶融池形成が不安定であり、かつレーザ照射面が平坦なためスパッタ飛散が多かった。
一方、No.D3〜D5は、直径6.5mmの円形の穴開けをした上板10に、円形の凹部33を設けた、二段階形状で、非挿入部32の形状が直径9.75mmの正八角形の鋼製の接合補助部材30を挿入し、その上から凹部33の面内をレーザ照射して下板20と溶接したものである。接合補助部材30は、挿入部31の外径PD1が6.24mmであり、凹部33の内径が4.4mmである。これらの試験体では形成される溶接金属へのアルミ流入がゼロとなり、高品質の溶接金属が形成されるうえ、接合補助部材30の非挿入部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。また、照射位置に凹みを持たせることでスパッタ飛散を減らすことが出来た。
さらにまた、適切な箇所に接着材を塗布した試験体No.D4,D5では、アルミと鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、接着材無しの試験体No.D3に比べて接着剤を塗布したNo.D4は高い腐食後CTS,TSSを示した。
<実施例E>
実施例Eでは、上板10を板厚4.0mmのアルミニウム合金A7N01、下板20を板厚3.0mmの1180MPa級高張力鋼板とした組合せの重ね継手とし、鋼製の接合補助部材30を用いて7kWの炭酸ガスレーザ溶接とアーク溶接を併用して接合した。上板10には直径12.5mmの円形に穴開けをし、一方、下板20の溶接すべき箇所には、絞り加工によって高さ1.5mmの膨出部21を形成し、膨出部21を上板10の穴11に侵入させるように同軸上に重ねた。接合補助部材30には材質として780MPa級高張力鋼を用い、円形の凹部33を設けた二段階形状の円形形状とした。
照射位置でのレーザビーム径は直径0.7mmとし、接合補助部材30の凹部33の底面を円状に塗りつぶすように渦巻き状に照射位置を動作させた。アーク溶接は、具体的にはプラズマガス:Ar100%、シールドガス:Ar99%+H21%としたプラズマアーク溶接法とし、フィラーには、直径が1.2mmのJIS Z3312 G78A4MN5CM3Tの鋼製溶接ワイヤを用いた。
実施例Eでは、上板10を板厚4.0mmのアルミニウム合金A7N01、下板20を板厚3.0mmの1180MPa級高張力鋼板とした組合せの重ね継手とし、鋼製の接合補助部材30を用いて7kWの炭酸ガスレーザ溶接とアーク溶接を併用して接合した。上板10には直径12.5mmの円形に穴開けをし、一方、下板20の溶接すべき箇所には、絞り加工によって高さ1.5mmの膨出部21を形成し、膨出部21を上板10の穴11に侵入させるように同軸上に重ねた。接合補助部材30には材質として780MPa級高張力鋼を用い、円形の凹部33を設けた二段階形状の円形形状とした。
照射位置でのレーザビーム径は直径0.7mmとし、接合補助部材30の凹部33の底面を円状に塗りつぶすように渦巻き状に照射位置を動作させた。アーク溶接は、具体的にはプラズマガス:Ar100%、シールドガス:Ar99%+H21%としたプラズマアーク溶接法とし、フィラーには、直径が1.2mmのJIS Z3312 G78A4MN5CM3Tの鋼製溶接ワイヤを用いた。
この溶接継手1に対して、JIS Z3136「抵抗スポット及びプロジェクション
溶接継手のせん断試験に対する試験片寸法及び試験方法」、およびJIS Z3137「抵抗スポット及びプロジェクション溶接継手の十字引張試験」に従って、破壊試験を行った。ここでは、Z3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSとして表す。合否判定値として、TSS≧10kN、CTS≧8kNとした。
溶接継手のせん断試験に対する試験片寸法及び試験方法」、およびJIS Z3137「抵抗スポット及びプロジェクション溶接継手の十字引張試験」に従って、破壊試験を行った。ここでは、Z3136の引張強度をTSSとして表し、Z3137の引張強度をCTSとして表す。合否判定値として、TSS≧10kN、CTS≧8kNとした。
さらに、必須ではないが好ましい性能値として、実施例A〜Dと同様に、溶接継手1に対してJASO−CCTを28日間実施し、その後同様に破壊試験を実施して、腐食後TSSおよび腐食後CTSを取得した。これら好ましい性能値の合格判定値は腐食無し試験の値に対し80%以上とした。また、溶接時のスパッタ発生量を母材付着状態で評価し、ほとんど付着がないものを○、多少付着があるが許容範囲と判断されるものを△、付着が多くて許容できないと判断するものを×とした。
表5では、比較例をNo.E1、本実施例をNo.E2〜E4に示す。
No.E1はレーザとアークの併用に際し、アークを先行させて溶接金属で接合補助部材30の凹部33を満たし、その中間地点からレーザを照射してアーク終了と同時にレーザも照射終了させたものである。溶接金属が凹部33の底部に溜まることで、レーザ照射による深い溶込み効果が得られなかったため、接合補助部材30と下板鋼板の接合が不十分となり、TSS,CTS共に低い値となった。また、溶接金属が接合補助部材30の凹部33を満たしたため、レーザによって発生するスパッタを接合補助部材30の凹部33の内壁面がキャッチする効果が消失し、スパッタが周囲に多く飛散した。
一方、No.E2〜E4はレーザを先行照射し、十分に接合補助部材30と下板20を溶融、一体化してから、アークを照射した。形成される溶接金属へのアルミ流入がゼロとなり、高品質の溶接金属が形成されるうえ、接合補助部材30の非挿入部32が上板10の穴11に対して広い面積を有する構造となっているため、十字引張試験ではすっぽ抜けが防げて高いCTSも得られた。アークは接合補助部材30の凹部33を満たすまで発生させたが、レーザはその途中段階で照射終了した。したがって、レーザ溶接で発生するスパッタは、接合補助部材30の凹部33の壁面でキャッチされ、周囲への飛散が無かった。下板20の膨出部21の形成は、上板10と下板20の合わせ作業を容易にするだけでなく、溶接断面積を減少させ、高能率化に貢献した。
さらにまた、適切な箇所に接着材を塗布した試験体No.E3,E4では、アルミと鋼界面の電食を防ぐ作用があり、腐食によるCTSやTSSの低下が抑制されて、接着材無しの試験体No.E2に比べて接着剤を塗布したNo.E3は高い腐食後CTS,TSSを示した。
10 上板
11 穴
20 下板
30 接合補助部材
31 挿入部
32 非挿入部
33 凹部
40 溶接金属
W 溶接部
Wa 余盛り
11 穴
20 下板
30 接合補助部材
31 挿入部
32 非挿入部
33 凹部
40 溶接金属
W 溶接部
Wa 余盛り
Claims (23)
- アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、鋼製の第2の板と、を接合する異材接合用スポット溶接法であって、
前記第1の板に穴を空ける工程と、
前記第1の板と前記第2の板を重ね合わせる工程と、
挿入部と非挿入部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する鋼製の接合補助部材を、前記第1の板に設けられた穴に挿入する工程と、
レーザ光を前記接合補助部材の前記凹部に照射し、前記第2の板及び前記接合補助部材を接合する工程と、
を備える異材接合用スポット溶接法。 - アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、鋼製の第2の板と、を接合する異材接合用スポット溶接法であって、
前記第1の板に穴を空ける工程と、
前記第1の板と前記第2の板を重ね合わせる工程と、
挿入部と非挿入部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する鋼製の接合補助部材を、前記第1の板に設けられた穴に挿入する工程と、
前記接合補助部材の前記凹部にレーザ光を照射し、且つ、前記レーザ光の照射と同時、前記レーザ光の照射中、及び前記レーザ光の照射後のいずれかにおいて、以下の(a)〜(c)のいずれかの手法によってアーク溶接を行い、前記第2の板及び前記接合補助部材を接合すると共に、前記接合補助部材の凹部の少なくとも一部を溶接金属で充填する工程と、
を備える異材接合用スポット溶接法。
(a)鉄合金、または、Ni合金の前記溶接金属が得られる溶接ワイヤを溶極として用いるガスシールドアーク溶接法。
(b)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるガスタングステンアーク溶接法。
(c)前記溶接ワイヤを非溶極フィラーとして用いるプラズマアーク溶接法。 - 前記第2の板には、絞り加工により膨出部が形成されており、
前記重ね合わせ工程において、前記第2の板の膨出部が、前記第1の板の穴内に配置される、請求項1又は2に記載の異材接合用スポット溶接法。 - 前記重ね合わせ工程の前に、前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って接着剤を塗布する工程を、さらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の異材接合用スポット溶接法。
- 前記挿入工程において、前記接合補助部材の非挿入部と、該非挿入部と対向する前記第1の板との間の少なくとも一方の対向面に、接着剤を塗布する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異材接合用スポット溶接法。
- 前記挿入工程の際、又は、前記溶接工程後に、前記接合補助部材の非挿入部と、前記第1の板の表面との境界部に接着剤を塗布する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の異材接合用スポット溶接法。
- 前記接合補助部材の挿入部の底部の高さPH1は、0.5mm以上であり、且つ、2.5mm以下と前記第1の板の板厚BHの125%とのいずれか小さい方の値以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の異材接合用スポット溶接法。
- 前記挿入部の外壁面が水平方向となす角度θは、80〜95°である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の異材接合用スポット溶接法。
- 前記接合補助部材の挿入部と非挿入部との境界部の直径PD1は、前記第1の板の穴の直径BDに対し80%以上105%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の異材接合用スポット溶接法。
- 前記接合補助部材の非挿入部の直径PD2は、前記第1の板の穴の直径BDに対し105%以上である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の異材接合用スポット溶接法。
- 前記接合補助部材の非挿入部の高さPH2は、前記第1の板の板厚BHの50%以上150%以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の異材接合用スポット溶接法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の異材接合用スポット溶接法に用いられ、
鋼製で、挿入部と非挿入部とを持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する、接合補助部材。 - アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製の第1の板と、該第1の板にスポット溶接された、鋼製の第2の板と、を備える異材溶接継手であって、
前記第1の板は、前記第2の板との重ね合わせ面に臨む穴を有し、
前記第1の板に設けられた穴に挿入される挿入部と、非挿入部と、を持った段付きの外形形状を有し、且つ、中央部に前記非挿入部から前記挿入部に向かって凹んだ凹部を有する鋼製の接合補助部材をさらに備え、
前記第2の板と前記接合補助部材の挿入部との界面には、前記第2の板及び前記接合補助部材によって溶接部が形成される、異材溶接継手。 - 前記溶接部は、前記接合補助部材の凹部の少なくとも一部をさらに充填している、請求項13に記載の異材溶接継手。
- 前記第1の板の穴内には、前記第2の板に形成された膨出部が配置される、請求項13又は14に記載の異材溶接継手。
- 前記第1の板と前記第2の板の少なくとも一方の前記重ね合せ面には、前記穴の周囲に、全周に亘って設けられた接着剤を備える、請求項13〜15のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
- 前記接合補助部材の非挿入部と、該非挿入部と対向する前記第1の板との間の少なくとも一方の対向面に設けられた接着剤を備える、請求項13〜16のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
- 前記接合補助部材の非挿入部と、前記第1の板の表面との境界部に設けられた接着剤を備える、請求項13〜17のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
- 前記接合補助部材の挿入部の底部の高さPH1は、0.5mm以上であり、且つ、2.5mm以下と前記第1の板の板厚BHの125%とのいずれか小さい値以下である、請求項13〜18のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
- 前記挿入部の外壁面が、水平方向となす角度θは、80〜95°である、請求項13〜19のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
- 前記接合補助部材の挿入部と非挿入部との境界部の直径PD1は、前記第1の板の穴の直径BDに対し80%以上105%以下である、請求項13〜20のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
- 前記接合補助部材の非挿入部の直径PD2は、前記第1の板の穴の直径BDに対し105%以上である、請求項13〜21のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
- 前記接合補助部材の非挿入部の高さPH2は、前記第1の板の板厚BHの50%以上150%以下である、請求項13〜22のいずれか1項に記載の異材溶接継手。
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