JP5556742B2 - 電池端子の接合方法 - Google Patents

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Description

本発明は、車載用電池に使用する電池端子の接合方法に関する。
近年、地球環境問題に対応するためハイブリッド車や電気自動車などが注目されているが、その駆動用回転電機に用いる小型で、高性能なリチウムイオン2次電池が開発されている。リチウムイオン2次電池は正極、負極、電解質等によって構成される。通常、正極は、アルミニウム箔の両面にコバルト酸リチウムなどの活物質溶液を塗布・乾燥して製作し、負極は、銅箔に炭素材料などの溶液を塗布・乾燥して製作する。そして、正極及び負極には、電力を入出力するための電池端子が接続されている。この電池端子は、一般に、正極及び負極の各電極に接続される板状の内部端子と外部に接続される柱状の外部端子とを別々に製作して、抵抗溶接等によって接合している。
ところが、板状部材と柱状部材をただ単に抵抗溶接しても、通電する電流が分散して強い接合強度を得られにくい。また、内部端子は電食防止等の観点から電極材料と同材質の材料を使用しているが、外部端子は強度等の関係から高強度部材を使用しているため、溶融温度が異なる。溶融温度が異なる材質である内部端子と外部端子とを抵抗溶接によって接合することは容易ではない。
そのため、一方又は双方の端子にプロジェクション(突起)を形成して接触面積を狭くすることによって、局部的に電流密度を高めて抵抗溶接している。
プロジェクションを形成して接合する技術は、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されている。
特許文献1の技術は、長手方向の断面形状が略T字形であり、ヘッド側端部に溶接用のプロジェクションが一体に形成されたピン端子であって、ピン端子の胴部の径、鍔部の径、鍔部の厚み、プロジェクションの径、プロジェクションの突起高さについて所定の関係を満たすピン端子を、少なくとも一方の電極に溶接する技術である。この技術によれば、ピン端子を倒す方向に外力が加わったとしても、鍔部の存在が抵抗力となり溶接部が破壊されにくくなるとともに、プロジェクションを形成することにより抵抗溶接する際の電流が集中して安定した溶接ができ、溶接部の信頼性を向上することができるという利点がある。
また、特許文献2の技術は、抵抗溶接ではないが、第1と第2の被溶接物品の双方に形成されたプロジェクションの頂部同士を突合せると共に加圧し、その加圧した状態で、パルス状の電流を第1、第2の被溶接物品のプロジェクション間に流してプロジェクション同士を拡散接合する技術である。この技術によれば、プロジェクションの頂部同士を突き合わせた状態で加圧し、パルス電流を流すことによりプロジェクション同士の接合部を流動塑性化させ、プロジェクションの頂部に挟まれた酸化被膜や汚れをその接合面から周囲に押出すことにより、ナゲットを形成せず前処理や後処理が不要となる利点がある。
特開2010−86732号公報 特開2002−103056号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、プロジェクションに溶接電流が集中して局部的に温度上昇するため、溶融金属が爆飛しやすい。電池端子の一部に爆飛した溶融金属がスパッタとして付着すると、電池端子を電池内に収納したときスパッタが異物として混入し、電池性能を低下させる恐れがある。一方、スパッタを抑制するためプロジェクションの形状をリング状にする方法も考えられるが、接触面積が増加するため電流密度が低下して接合強度が向上しない問題が生じる。さらに、接合強度を強めるため、強引に加圧力を上げると、板状部材である内部端子が変形し、溶接後における電池端子の寸法精度が安定しないという問題があった。
また、特許文献2の技術では、プロジェクションの頂部同士を突き合わせた状態で加圧しパルス状電流を流すことにより、プロジェクション同士が軟化して、双方のプロジェクションは潰れて接合される。そのため、接合後のプロジェクションは、平らに潰されてしまうので、せっかく形成したプロジェクションによるアンカー効果を期待できない。したがって、特に、走行振動が絶えず加わる車載用電池の電池端子において、必ずしも十分な接合強度を確保できない。
また、特許文献2の技術において示されているように、プロジェクションを包囲する包囲壁を設ければ、溶接時や拡散接合時に発生するチリ(スパッタに相当)を閉じ込めることが可能であるが、電池端子の外径が大きくなり、電池の小型化、高性能化の要請に反する。
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車載用電池に使用する電池端子において、接合強度を確保するとともに接合時に発生するスパッタを低減する電池端子の接合方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る電池端子の接合方法は、次のような構成を有している。
(1)外部端子と内部端子とを加圧通電して接合する電池端子の接合方法において、
前記外部端子の下端部には突起部を形成するともに、前記内部端子の上端部には前記突起部に対応する位置であって前記突起部の輪郭線より内側へ窪部を形成すること、前記突起部が前記窪部の周辺部に食い込んで接合することを特徴とする。
ここで、突起部の輪郭線とは、突起部の先端面と外壁面とが交差する線をいう。
(2)(1)に記載された電池端子の接合方法において、
前記窪部は、貫通孔であることを特徴とする。
(3)(1)又は(2)に記載された電池端子の接合方法において、
前記突起部は、内方に傾斜する傾斜内壁を有する環状突起であることを特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された電池端子の接合方法において、
前記内部端子は、電池の電極と同材質である板状体であること、前記外部端子は、前記内部端子より引張り強さの大きい柱状体であることを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された電池端子の接合方法において、
前記接合は、拡散接合であることを特徴とする。
このような特徴を有する本発明に係る電池端子の接合方法は、以下のような作用効果を奏する。
(1)の発明は、外部端子の下端部には突起部を形成するともに、内部端子の上端部には突起部に対応する位置であって突起部の輪郭線より内側へ窪部を形成し、突起部が窪部の周辺部に食い込んで接合するので、接合強度を確保するとともに接合時に発生するスパッタを低減することができる。
具体的には、外部端子の下端部には突起部を形成するともに、内部端子の上端部には突起部に対応する位置であって突起部の輪郭線より内側へ窪部を形成しているので、外部端子と内部端子とを加圧したとき、突起部の先端側が窪部の周辺部を押圧する。
ここで、内部端子において、窪部の外周側は中実状態であるので変形しにくいが、窪部の内周側は中空状態であるので変形しやすい。
したがって、窪部の周辺部が押圧されると、押圧された箇所の肉は、変形しやすい窪部の内周側に塑性流動しながら移動する。
この加圧された状態で、外部端子と内部端子とは通電されるので、押圧された箇所では抵抗発熱が生じる。抵抗発熱によって窪部の周辺部は、軟化していっそう変形しやすくなるので、突起部は潰れることなく窪部の周辺部に食い込むことができる。
窪部の周辺部が塑性流動するときに、突起部と窪部の周辺部との接触面を被覆する酸化被膜を押し出すので、突起部が窪部の周辺部に食い込んだ接合部では、突起部と窪部の周辺部とに金属新生面が形成される。
この接合部での金属新生面の形成効果と、突起部が窪部の周辺部に食い込むことによるアンカー効果との相乗作用によって、走行振動にも耐えうる強固な接合強度を確保できるのである。また、強固な接合強度を確保できるので、必要以上に電流値を上げる必要はなく、接合時に発生するスパッタを大幅に低減することもできる。
よって、車載用電池に使用する電池端子において、接合強度を確保するとともに接合時に発生するスパッタを低減する電池端子の接合方法を提供することができる。
(2)の発明は、(1)に記載された電池端子の接合方法において、窪部は、貫通孔であるので、押圧された箇所の変形できる逃げ場が多い。そのため、貫通孔の周辺部が押圧されると、押圧された箇所の肉は、よりいっそう内周側に移動しやすくなる。したがって、窪部に底板があるときに比較してより小さい加圧力で、押圧された箇所の肉は貫通孔の内周側に塑性流動しながら移動するので、電池端子の寸法精度を維持しやすいことになる。
また、貫通孔の周辺部における塑性流動量は多くなるので、接合部で金属新生面が形成されやすい。さらに、突起部の食い込み量も多くなり、アンカー効果が生じやすい。
よって、電池端子の寸法精度を維持しながら、よりいっそう接合強度を確保することができる。
(3)の発明は、(1)又は(2)に記載された電池端子の接合方法において、突起部は、内方に傾斜する傾斜内壁を有する環状突起であるので、突起部によって窪部の周辺部が押圧されると、押圧された箇所の肉は、傾斜内壁に沿って窪部の内周側に塑性流動しながら移動する。そのため、環状突起が窪部の周辺部に食い込んだときに、押圧された箇所の肉が環状突起の根元方向に回り込んで、アンカー効果がよりいっそう生じやすい。
(4)の発明は、(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された電池端子の接合方法において、内部端子は、電池の電極と同材質である板状体であり、外部端子は、内部端子より引張り強さの大きい柱状体であるので、アルミニウムや銅等の柔らかい板状体である内部端子は塑性流動しやすく、引張り強さの大きい柱状体である外部端子の突起は潰れにくい。そのため、突起部の食い込み量も多くなり、アンカー効果が生じやすいとともに、電流値を下げても所定の接合強度を確保できるので、結果としてスパッタも発生にくい。
よって、よりいっそう接合強度を確保するとともに接合時に発生するスパッタを低減することができる。
(5)の発明は、(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された電池端子の接合方法において、接合は、拡散接合であるので、突起部と窪部の周辺部とは溶融されることがない。そのため、抵抗溶接したときのように、溶融金属の爆飛現象が起こらないので、スパッタもほとんど発生しない。また、拡散接合であるので、抵抗溶接に比べて接合部にお
ける金属元素の熱影響範囲が狭く、残留する内部応力も少ない。
したがって、接合時にスパッタを発生させることがなく、走行振動等に対しても安定した接合強度が得られる。
(a)はリチウムイオン2次電池の蓋アッシー部品を分解した斜視図であり、(b)は電池端子の斜視図である。 は電池端子の接合工程を説明する断面図であって、(a)は端子セット工程、(b)は加圧工程、(c)は通電工程、(d)は取り出し工程を示す。 外部端子と内部端子との接合部のトルク強度を測定した結果を示すグラフであって、(a)は貫通孔なしの場合、(b)は貫通孔ありの場合である。 外部端子と内部端子との接合時に発生するスパッタを評価した結果を示すグラフであって、(a)は貫通孔なしの場合、(b)は貫通孔ありの場合である。 第1の変形例である内部端子に貫通孔を設け、外部端子に突起形状を設ける断面図であって、(a)は突起部を内側に山型の環状突起とした場合、(b)は突起部を外側に山型の環状突起とした場合、(c)は突起部を柱状突起とした場合を示す。 第2の変形例である内部端子の窪部を示す断面図であって、(a)は有底ボスなし型、(b)は有底ボスあり型を示す。 外部端子と内部端子との接合部の切断面を顕微鏡写真に基づき作製した図であって、(a)は貫通孔なしの場合、(b)は貫通孔ありの場合である。
次に、本発明に係る電池端子の接合方法の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここでは、はじめに本発明に係る電池端子の構造とその接合方法のメカニズムを工程順に説明し、その効果を実験結果に基づいて説明した上で、これを変形した変形例について説明する。
<電池端子の構造>
はじめに、本発明に係る電池端子の構造について説明する。図1(a)に、車載用リチウムイオン2次電池の蓋アッシー部品を分解した斜視図を示し、(b)に、電池端子の斜視図を示す。
図1(a)(b)に示すように、車載用リチウムイオン2次電池の蓋アッシー部品6は、電池端子1、2と、樹脂ガスケット3、3と、アルミ蓋4と、拘束リング5、5とを備えている。
電池端子1、2は、板状体からなる内部端子11、12と、柱状体からなる外部端子21、22とを備えている。電池端子は、正極用の電池端子1と負極用の電池端子2とに分かれている。図1(b)は、代表として正極用の電池端子1の細部を表示する。以後は、特にことわらない限り、正極用の電池端子1について説明するが、負極用の電池端子2についても同様である。
内部端子11の上端部111は平板状に形成され、外部端子21の下端に形成された突起部211と接合されている。内部端子11の上端部111には、突起部211と対応する位置に突起部211より内側へ窪部113が形成されている。この窪部113は、貫通孔でも有底溝でもよいが、ここでは貫通孔の例で説明する。また、突起部211は、環状突起でも柱状突起でもよいが、ここでは、図2(a)に示すように、内方に傾斜する傾斜内壁207が形成されている環状突起の例で説明する。環状突起の先端には、環状の平坦な先端面208が形成され、外周には垂直壁209が形成されている。この場合、垂直壁209と先端面208とが交差する線が、突起部211の輪郭線210を形成し、窪部である貫通孔113は、輪郭線210の内側に来るよう形成されている。内部端子11の上端部111であって貫通孔113の周辺部114には、外部端子21の突起部211が食い込んで接合される。
図1(a)に示すように、アルミ蓋4の左右端には、挿通孔が形成されている。この左右端に形成された挿通孔から、外部端子21の上端に形成された外部接続部212が上方に突出している。外部接続部212は、図示しないバスバーによって他の外部接続部と連結されている。アルミ蓋4の挿通孔と外部端子21との間には、樹脂ガスケット3が介装され、電気的絶縁性と気密性とを保持している。また、上方から樹脂ガスケット3に嵌合する拘束リング5によって、樹脂ガスケット3及び外部端子21をアルミ蓋4に拘束している。図1(b)に示すように、内部端子11には、垂直方向に延びる電極接続部112が、外部端子21が接合される平板状の上端部111から折り曲げられて形成されている。電極接続部112には、図示しない正極及び負極の電極が接続されている。
なお、正極には、一般にアルミ箔を用いているので、正極用の内部端子11には、電食防止等のために正極と同材質である純アルミを使用している。一方、正極用の外部端子21には、他の外部端子からバスバーを通じて車両走行時の振動、衝撃等が伝わってくるので、高強度部材である超超ジュラルミンを使用している。
これに対して、負極には、一般に銅箔を用いているので、負極用の内部端子12には、電食防止等のために負極と同材質であるタフピッチ銅を使用している。一方、負極用の外部端子22には、他の外部端子からバスバーを通じて車両走行時の振動、衝撃等が伝わってくるので、高強度部材であるボロン鋼を使用している。
<接合方法のメカニズム>
次に、上述した電池端子における外部端子21と内部端子11との接合方法を工程順に説明する。図2に、電池端子1の接合工程を説明する断面図を示し、(a)は端子セット工程、(b)は加圧工程、(c)は通電工程、(d)は取り出し工程である。
図2(a)に示すように、端子セット工程にて外部端子21と内部端子11とを、それぞれ上部電極7と下部電極8とにセットする。上部電極7の下端には、外部端子21の中間付近に形成された鍔部206を上方から加圧するリング状のボス部71が形成されている。上部電極7に外部端子21をセットした状態では、ボス部71に当接する鍔部206と下端に形成された突起部211とが下方に突出している。下部電極8は矩形状に形成され、下部電極8の上端には、内部端子11の上端部111が載置されている。上端部111に形成された貫通孔113は、外部端子21の下端に形成された突起部211と対応する位置であって突起部211の輪郭線210より内側に位置するので、貫通孔113の周辺部114の上方に突起部211の先端面208が位置することになる。
図2(b)に示すように、加圧工程にて、図示しない駆動装置によって上部電極7を下方に移動させ、固定している下部電極8との間で外部端子21と内部端子11とを加圧する。加圧力Pは、30〜50N(ニュートン)程度である。貫通孔113の周辺部114の上方から突起部211の先端が下降して、貫通孔113の周辺部114を突起部211の先端が押圧する。貫通孔113の内周側は、中空状態であり逃げ場が多いので、突起部211の先端によって押された箇所の肉115は、貫通孔113の内周側に塑性流動して移動する。突起部211は、内方に傾斜する傾斜内壁207を有する環状突起であるので、突起部211によって貫通孔113の周辺部114が押圧されると、押圧された箇所の肉115は、傾斜内壁207に沿って貫通孔113の内周側に塑性流動しながら移動する。そのため、環状突起が貫通孔113の周辺部114に食い込んだときに、押圧された箇所の肉114が環状突起の根元方向に回り込んで、アンカー効果が生じる。
図2(c)に示すように、通電工程にて、上部電極7と下部電極8との間で通電されるので、外部端子21と内部端子11との接触面を電流が流れ、接触面(押圧された箇所)では抵抗発熱が生じる。電流値は40KA(キロアンペア)程度で、電圧は8〜12V(ボルト)程度で、通電時間は4〜8ms(ミリ秒)程度である。抵抗発熱によって貫通
孔113の周辺部114は温度が上昇し、軟化していっそう変形しやすくなるので、突起部211は潰れることなく貫通孔113の周辺部114に食い込むことができる。
貫通孔113の周辺部114が塑性流動するときに、突起部211と貫通孔113の周辺部114との接触面を被覆する酸化被膜を押し出すので、突起部211が貫通孔113の周辺部114に食い込んだ接合部では、突起部211と貫通孔113の周辺部114とに金属新生面が形成される。このとき、金属新生面同士が近接することによって拡散接合とすることができる。拡散接合であれば、突起部211と貫通孔113の周辺部114とは溶融されることがない。そのため、抵抗溶接したときのように、溶融金属の爆飛現象が起こらない。そのため、スパッタもほとんど発生しない。また、拡散接合であるので、抵抗溶接に比べて接合部における金属元素の熱影響範囲が狭く、残留する内部応力も少ない。
したがって、接合時にスパッタを発生させることがなく、走行振動等に対しても安定した強固な接合強度が得られる。
図2(d)に示すように、取り出し工程にて、図示しない駆動装置にて上部電極7を上方に移動させてから、接合後の電池端子1を取り出す。
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、外部端子21の下端部には内方に傾斜する傾斜内壁207が形成されている環状突起である突起部211を形成するともに、内部端子11の上端部111には突起部211に対応する位置であって突起部211の輪郭線210より内側へ貫通孔113である窪部を形成し、突起部211が貫通孔113である窪部の周辺部114に食い込んで接合するので、接合強度を確保するとともに接合時に発生するスパッタを低減することができる。
ここでは、接合強度とスパッタ量とを本発明者等が行った実験結果に基づいて説明する。図3に、外部端子21と内部端子11との接合部のトルク強度を測定した結果のグラフを示す。(a)は貫通孔なしの場合、(b)は貫通孔ありの場合である。図4に、外部端子21と内部端子11との接合時に発生するスパッタを評価した結果のグラフを示す。(a)は貫通孔なしの場合、(b)は貫通孔ありの場合である。
まず、通電時における変動因子である「電圧」と「時間」とを、3水準に割り振ったときの接合強度をトルクレンチを用いて測定した。測定方法は、内部端子11を万力等によって固定した上で、外部端子21の外部接続部212にねじを切ってナットを締結し、ナットにトルクレンチのソケットを嵌合して測定する方法である。トルクレンチはプレセット型で、設定トルクを5Nm(ニュートン・メータ)とした。したがって、測定トルクが、5Nm(ニュートン・メータ)以上であるときは○印を表示し、5Nm(ニュートン・メータ)未満であるときは△印を表示し、接合していなかったときは×印を表示している。5Nm(ニュートン・メータ)を目安としたのは、所定の基準トルクをクリアできるからである。なお、加圧力は39.2N(ニュートン)とし、電流値は40KA(キロアンペア)とした。
図3(a)に示すように、内部端子11の上端部111に貫通孔113が形成されていない場合には、通電「電圧」が12V(ボルト)で、通電「時間」が8ms(ミリ秒)のときのみ、測定トルクが、5Nm(ニュートン・メータ)以上であった。これに対して、図3(b)に示すように、内部端子11の上端部111に貫通孔113が形成されている場合には、通電「電圧」が12V(ボルト)で、通電「時間」が8ms(ミリ秒)のときのみならず、通電「電圧」が12V(ボルト)で、通電「時間」が4、6、8ms(ミリ秒)のとき、通電「電圧」が10V(ボルト)で、通電「時間」が6、8ms(ミリ秒)のとき、通電「電圧」が8V(ボルト)で、通電「時間」が8ms(ミリ秒)のときについても、測定トルクが、5Nm(ニュートン・メータ)以上であった。このように、内部端子11の上端部111に貫通孔113を形成することによって、必要なトルク強度を確保できる「電圧」と「時間」の変動範囲を大幅に拡大できることが確認できた。
その理由は、前述したように、接合部での金属新生面の形成効果と、突起部211が窪部である貫通孔113の周辺部114に食い込むことによるアンカー効果との相乗作用によるものと考えられる。図7に、外部端子21と内部端子11との接合部の切断面を顕微鏡写真に基づき作製した図を示す。(a)は貫通孔なしの場合、(b)は貫通孔ありの場合である。これらの図からも、貫通孔113がある場合にはアンカー効果が生じていることは明らかである。
また、通電時における変動因子である通電「電圧」と通電「時間」とを、3水準に割り振ったときのスパッタ量を目視にて測定した。スパッタが発生したときは×印を表示し、発生しなかったときは○印を表示している。微少でも発生した時は、×印を表示した。
図4(a)に示すように、内部端子11の上端部111に貫通孔113が形成されていない場合には、通電「電圧」が10V(ボルト)で、通電「時間」が4ms(ミリ秒)のとき、通電「電圧」が8V(ボルト)で、通電「時間」が4、6、8ms(ミリ秒)のときに、スパッタが、発生しなかった。これに対して、図4(b)に示すように、内部端子11の上端部111に貫通孔113が形成されている場合には、通電「電圧」が8、10、12V(ボルト)で、通電「時間」が4、6、8ms(ミリ秒)のときの全範囲で、スパッタが発生しなかった。このように、内部端子11の上端部111に貫通孔113を形成することによって、スパッタが発生しない「電圧」と「時間」の変動範囲を大幅に拡大できることが確認できた。
その理由は、前述したように、接合部において形成された金属新生面同士が近接することによって拡散接合しているからと考えられる。
以上のように、本実施形態によれば、車載用電池に使用する電池端子1、2において、接合強度を確保するとともに接合時に発生するスパッタを低減する電池端子の接合方法を提供することができる。
<第1の変形例>
次に、上述した本実施形態に対する第1の変形例を説明する。本変形例では、外部端子21に形成する突起部211の形状的特徴について説明する。図5に、第1の変形例である内部端子11に貫通孔113を設け、外部端子21に突起形状を設ける断面図であって、(a)に突起部を内側に山型の環状突起とした場合、(b)に突起部を外側に山型の環状突起とした場合、(c)に突起部を柱状突起とした場合を示す。
図5(a)に示すように、突起部211を内側に形成し、内方に傾斜する傾斜内壁213と外方に傾斜する傾斜外壁214とを有する山型の環状突起とすることができる。
この山型の環状突起の先端面208によって、貫通孔113の周辺部114が押圧されると、押圧された箇所の肉は、内外の傾斜壁213、214に沿って貫通孔113の内周側及び外周側に塑性流動しながら移動する。そのため、山型の環状突起が貫通孔113の周辺部114に食い込んだときに、押圧された箇所の肉が環状突起の内側及び外側の根元方向に回り込んで、より深く食い込むことができ、より大きなアンカー効果が生じる。
この場合、傾斜外壁214は傾斜内壁213より水平面に対する傾斜角が大きいことが、好ましい。例えば、傾斜内壁213の水平面に対する傾斜角が30〜45度であるとき、傾斜外壁214の水平面に対する傾斜角が60度以上であるとよい。もともと貫通孔113の外周側への塑性流動は生じにくいので、傾斜外壁214の傾斜が緩いと、加圧力を増加させる必要が生じて内部端子11の寸法精度を低下させる恐れがあるからである。
また、環状突起先端部の外径Φ2Aが、貫通孔の外径Φ1Aより大きいことは勿論であるが、環状突起先端部の内径Φ3Aも、貫通孔の外径Φ1Aより大きいことが好ましい。環状突起先端部の内径Φ3Aが貫通孔の外径Φ1Aより大きいことによって、貫通孔の内周側の肉が内傾斜壁213に沿って塑性流動し、環状突起の根元方向に回り込んで、より深く食い込むことができからである。
この場合、傾斜外壁214と先端面208とが交差する線が、突起部211の輪郭線210を形成する。
また、図5(b)に示すように、突起部211を外側に形成し、内方に傾斜する傾斜内壁215と外方に垂直に立設する垂直壁216とを有する山型の環状突起とすることができる。
この山型の環状突起によって、突起部211の外径を大きくでき、その分、突起部211の食い込み量を周方向で増加して接合強度を高めることができるからである。また、貫通孔113の外径を大きくすることができるため、貫通孔113の内周側への逃げ代を大きくでき、環状突起の先端面208によって貫通孔113の周辺部114を押圧されたとき、押圧された箇所の肉が塑性流動しやすくなる利点もある。
なお、環状突起先端部の外径Φ2Bが、貫通孔の外径Φ1Bより大きいことは勿論であるが、環状突起先端部の内径Φ3Bも、貫通孔の外径Φ1Bより大きいことが好ましいことは、図5(a)の場合と同様である。
この場合、垂直壁216と先端面208とが交差する線が、突起部211の輪郭線210を形成する。
また、図5(c)に示すように、突起部211を先端面208が平坦な柱状突起とすることもできる。図5(a)(b)のように内方に傾斜する傾斜内壁がないが、押された箇所の肉は、貫通孔113の内方に逃げることはできる。したがって、突起部211は貫通孔113の周辺部114に食い込むことができる。また、柱状突起が侵入することによって外方に押し出された貫通孔113の周辺部114の肉の一部が、逆に収縮することによって柱状突起の外壁217に喰い付くので、機械的な結合力が増加する。結果として、アンカー効果が生じて接合強度が向上する。
なお、柱状突起の外径Φ2Cが、貫通孔の外径Φ1Cより大きいことは勿論である。
この場合、外壁217と先端面208とが交差する線が、突起部211の輪郭線210を形成する。
<第2の変形例>
次に、上述した本実施形態に対する第2の変形例を説明する。本変形例では、内部端子11に形成する窪部113の形状的特徴について説明する。図6に、第2の変形例である内部端子の窪部を示す断面図であって、(a)に有底ボスなし型を示し、(b)に有底ボスあり型を示す。
図6(a)に示すように、内部端子11の上端部111に形成する窪部113を、底板116を有する筒状の溝形状とすることができる。筒状の溝形状であるため、窪部113の周辺部114が突起部211によって押圧されたとき、押された箇所の肉は溝形状の内側に逃げることができる。そのため、突起部211は潰れることなく、窪部113の周辺部114に食い込むことができる。また、窪部113は底板116を有するので、外部端子21の下端が電解質に接触するのを窪部113の底板116によって保護することができる。そのため、材質の異なる外部端子21と内部端子11との間で生じる恐れのある電食を防止する効果がある。
また、図6(b)に示すように、内部端子11の上端部111に形成する窪部113を、底板116を有する筒状の溝形状としつつ、筒形状を筒状リブ117として上面に突出させることができる。筒状リブ117として上面に突出させるので、窪部113の周辺部114が突起部211によって押圧されたとき、押された箇所の肉は溝形状の内側に、より多く逃げることができる。そのため、突起部211は潰れることなく、窪部113の周辺部114により多く食い込むことができる。なお、窪部113は底板116を有するので、電食防止効果があるのは、図6(a)と同様である。
本発明は、例えばハイブリッド車や電気自動車等に用いるリチウムイオン2次電池に好適な電池端子を接合する接合方法として利用できる。
1、2 電池端子
3 樹脂ガスケット
4 アルミ蓋
5 拘束リング
6 蓋アッシー部品
7 上部電極
8 下部電極
11、12 内部端子
21、22 外部端子
71 ボス部
111 上端部
112 電極接続部
113 窪部、貫通孔
114 周辺部
115 押圧された箇所の肉
116 底板
117 筒状リブ
206 鍔部
207 傾斜内壁
208 先端面
209 垂直壁
210 輪郭線
211 突起部
212 外部接続部
213、215 変形例の傾斜内壁
214 変形例の傾斜外壁
216 変形例の垂直壁
217 変形例の外壁

Claims (5)

  1. 外部端子と内部端子とを加圧通電して接合する電池端子の接合方法において、
    前記外部端子の下端には突起部を形成するともに、前記内部端子の上端部には前記突起部に対応する位置であって前記突起部の輪郭線より内側へ窪部を形成すること、
    前記突起部が前記窪部の周辺部に食い込んで接合することを特徴とする電池端子の接合方法。
  2. 請求項1に記載された電池端子の接合方法において、
    前記窪部は、貫通孔であることを特徴とする電池端子の接合方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載された電池端子の接合方法において、
    前記突起部は、内方に傾斜する傾斜内壁を有する環状突起であることを特徴とする電池端子の接合方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された電池端子の接合方法において、
    前記内部端子は、電池の電極と同材質である板状体であること、
    前記外部端子は、前記内部端子より引張り強さの大きい柱状体であることを特徴とする電池端子の接合方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された電池端子の接合方法において、
    前記接合は、拡散接合であることを特徴とする電池端子の接合方法。
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