以下、本発明の実施形態では、化学蓄熱システムに本発明の熱輸送装置を適用した場合を例に説明する。
(第1実施形態)
本発明の化学蓄熱システムの第1実施形態を、図1〜図5を参照して説明する。本実施形態では、第1の熱交換型反応器の物理吸着材として活性炭を、第2の熱交換型反応器の化学蓄熱材として塩化マグネシウム(MgCl2)を、圧力制御用反応器の物理吸着材として活性炭を用い、第1の熱交換型反応器、第2の熱交換型反応器、及び圧力制御用反応器の熱媒体流路に供給される熱媒体として、各反応器で相変化しない熱媒を用いた化学蓄熱システムを一例に詳細に説明する。
本実施形態の化学蓄熱システム100は、図1に示すように、物理吸着材を有する第1の熱交換型反応器20と、化学蓄熱材を有する第2の熱交換型反応器30と、物理吸着材を有する圧力制御用反応器50と、を備えている。なお、第1の熱交換型反応器20が、本発明のアンモニアバッファ容器の一例であり、第2の熱交換型反応器30が、本発明の反応器の一例であり、圧力制御用反応器50が、本発明の圧力制御部の一例である。
流通配管12、45が、熱媒を循環させて供給可能に、第1の熱交換型反応器20と接続されている。流通配管14、37Bが、熱媒を循環させて供給可能に、第2の熱交換型反応器30と接続されている。流通配管16、17が、熱媒を循環させて供給可能に、圧力制御用反応器50と接続されている。具体的には、バルブV1を有する流通配管12とバルブV2を有する流通配管45とが第1の熱交換型反応器20に連通されており、バルブV5を有する流通配管14とバルブV8を有する流通配管37Bとが第2の熱交換型反応器30に連通されており、バルブV7を有する流通配管16とバルブV9を有する流通配管17とが圧力制御用反応器50に連通されている。
第1の熱交換型反応器20は、バルブV3、V4を有するアンモニア配管42を介して、第2の熱交換型反応器30と接続されている。アンモニア配管42は、バルブV3、V4の間で、バルブV6を有する流通配管46の一端と接続されており、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30は、アンモニア配管42及び流通配管46を介して圧力制御用反応器50と連通されている。
図2は、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30の構成を模式的に示した図である。また、図3は、図2における第1の熱交換型反応器20を模式的に示した図である。
図3に示すように、第1の熱交換型反応器20は、筐体22と、筐体22に設けられた複数の熱媒体流路26と、筐体22に設けられた複数の反応室24と、各反応室24内に収納され、蓄熱材を含む積層体25と、を有して構成されている。
筐体22内では、反応室24と熱媒体流路26とが交互に配置され、かつ、2つの熱媒体流路26が最も外側となるように配置されている。反応室24と熱媒体流路26とは隔壁を隔てて互いに分離されている。これらの構成により、外部から供給される熱媒体M1と反応室24内の蓄熱材成形体との間で熱交換を行えるようになっている。この実施形態では、反応室24、熱媒体流路26は、それぞれ扁平矩形状の開口端を有する角柱状空間とされている。この実施形態では、第1の熱交換型反応器20は、反応室24の開口方向(アンモニアの流れ方向)と熱媒体流路26の開口方向(熱媒体の流れ方向)とが側面視で直交する、直交流型の熱交換型反応器として構成されている。
本発明における反応器は、第1の熱交換型反応器20の例のように、前記蓄熱材が収納された反応室を2つ以上有し、前記熱媒体流路が少なくとも前記反応室間に配置された構成であることが好ましく、2つ以上の反応室と2つ以上の熱媒体流路とを有し、反応室と熱媒体流路とが交互に配置された構成であることがより好ましい。
第1の熱交換型反応器20における反応室24や熱媒体流路26の個数には特に限定はなく、第1の熱交換型反応器20に対し入出力する熱量や、蓄熱材成形体の伝熱面の面積(反応室内壁との接触面積)を考慮して適宜設定できる。
また、筐体22の材質としては、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、等)等の熱伝導性の高く、アンモニア耐食性のある材質が好適である。
図3に示すように、積層体25は、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが固定化されるときに放熱する2枚の蓄熱材成形体(蓄熱材成形体21A及び蓄熱材成形体21B;以下、これらをまとめて「蓄熱材成形体21A及び21B」ともいう)と、蓄熱材成形体21A及び21Bに挟持された支持体23と、から構成されている。図3では、積層体25の構成を見やすくするために、蓄熱材成形体21Aと、支持体23と、蓄熱材成形体21Bと、を分離して図示している。
但し、積層体の構成としては、このような蓄熱材成形体/支持体/蓄熱材成形体の3層構成を少なくとも有する構成であればよく、3層構成以外にも、例えば、蓄熱材成形体と支持体とが交互に配置され、かつ、最外層が蓄熱材成形体であるその他の構成(例えば、蓄熱材成形体/支持体/蓄熱材成形体/支持体/蓄熱材成形体の5層構成、等)であってもよい。
蓄熱材成形体21A及び21Bは、それぞれ、吸熱反応によりアンモニアが脱離するときに蓄熱し、発熱反応によってアンモニアが固定化されるときに放熱する蓄熱材を含む。
なお、本発明において反応器に収納される蓄熱材としては、蓄熱材成形体(例えば、蓄熱材成形体21A及び21B)に限定されるものではなく粉末の蓄熱材を用いることもできるが、反応器における熱交換の効率をより向上させる観点からは、蓄熱材成形体であることが好ましい。
第1の熱交換型反応器20の蓄熱材は、物理吸着によりアンモニアを固定化する物理吸着材である。一方、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材は、配位反応によりアンモニアを固定化する化学蓄熱材である。なお、第1の熱交換型反応器20の蓄熱材は、配位反応によりアンモニアを固定化する化学蓄熱材であってもよい。
本発明における蓄熱材の好ましい形態の詳細については後述する。
支持体23としては、支持体23の面に沿った方向(例えば、図3中の白抜き矢印の方向)にアンモニアガスを流通させることができる支持体を用いることが好ましい。これにより、2枚の蓄熱材成形体間にアンモニア蒸気の流路を確保することができるので、アンモニア配管42から供給されたアンモニアガス(NH3)を、蓄熱材成形体21A及び21Bの広い範囲に供給できる。更に、蓄熱材成形体21A及び21Bの広い範囲に吸着したアンモニアを支持体23を介してアンモニア配管42に向けて放出することができる。
このような支持体23として、具体的には、波型プレート又は多孔体プレートを用いることが好ましい。
支持体23として多孔体プレートを用いた場合には、多孔体プレート内をアンモニアが通過する。
支持体23として波型プレートを用いた場合には、波型プレートとの蓄熱材成形体との間に生じる隙間をアンモニアガスが通過する。
図4は、特に、支持体23として波型プレートを用いた場合における第1の熱交換型反応器20及び第1の熱交換型反応器20内に収納される積層体25を概念的に示した図である。支持体23である波型プレート以外の構成は図3と同様である。
支持体23として波型プレートを用いた場合は、積層体25における波型プレートと蓄熱材成形体21A及び21Bとの間に生じる隙間をアンモニアが通過する(図4中の白抜き矢印の方向)。
また、図2に示すように、第1の熱交換型反応器20とアンモニア配管42とは、第1の熱交換型反応器20中の複数の反応室24とアンモニア配管42とを気密状態で連通するヘッダ部材28(例えば、マニホールド等)を介して接続されている。これにより、複数の反応室24とアンモニア配管42との間で気密状態でアンモニアを流通できるようになっている。
なお、図2では、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30の構成を見やすくするために、前記ヘッダ部材28、下記ヘッダ部材29A、下記ヘッダ部材29B、下記ヘッダ部材38、下記ヘッダ部材39A、下記ヘッダ部材39B、下記流通配管12、下記流通配管45、下記流通配管14、及び下記熱媒体配管37Bを、二点鎖線で表している。
また、図2に示すように、第1の熱交換型反応器20は、ヘッダ部材29A(例えば、マニホールド等)を介して流通配管12に接続されるとともに、ヘッダ部材29B(例えば、マニホールド等)を介して流通配管45に接続されている。第1の熱交換型反応器20内の複数の熱媒体流路26は、該ヘッダ部材29Aにより気密状態で流通配管12に連通されるとともに、該ヘッダ部材29Bにより気密状態で流通配管45に連通されている。これにより、流通配管12及び流通配管45を通じ、第1の熱交換型反応器20内の熱媒体流路26に熱媒体M1を流通させることができるようになっている。
熱媒体M1としては、エタノール、メタノール等のアルコール、水、油類、これらの混合物等、熱媒体として通常用いられる流体を用いることができる。本実施の形態では、熱媒体M1として、排熱源からの排熱により加熱された水を用いる場合を例に説明する。
図2に示すように、アンモニア配管42にはバルブV3、V4(弁)が設けられており、バルブV3、V4の開閉によりアンモニア圧の差を調節できるようになっている。これにより、第1の熱交換型反応器20側のアンモニア圧と第2の熱交換型反応器30側のアンモニア圧との差をより効果的に保持できる。即ち、バルブV3、V4を閉じた状態を維持することによりアンモニア圧の差を長時間保持することができ、その後バルブV3、V4を開くことにより一方の熱交換型反応器側から他方の熱交換型反応器側にアンモニアを輸送できる。このようにして、一方の熱交換型反応器側に蓄熱された熱を、他方の熱交換型反応器側で効率よく利用することができる。
図2に示すように、第2の熱交換型反応器30も第1の熱交換型反応器20と同様に、筐体32に、複数の反応室34と、各反応室34内に収納された積層体35と、複数の熱媒体流路36と、が設けられた熱交換型反応器となっている。積層体35の構成及び第2の熱交換型反応器30内の構成については、それぞれ、積層体25の構成及び第1の熱交換型反応器20内の構成と同様である。
また、第2の熱交換型反応器30は、ヘッダ部材39Aを介して流通配管14に接続されるとともに、ヘッダ部材39Bを介して熱媒体配管37Bに接続されている。第2の熱交換型反応器30内の複数の熱媒体流路36は、該ヘッダ部材39Aにより気密状態で流通配管14に連通されるとともに、該ヘッダ部材39Bにより気密状態で熱媒体配管37Bに連通されている。これにより、流通配管14及び熱媒体配管37Bを通じ、第2の熱交換型反応器30内の熱媒体流路36に熱媒体M2を流通させることができるようになっている。
熱媒体M2としては、エタノール等のアルコール、水、油類、これらの混合物等、熱媒体として通常用いられる流体を用いることができる。本実施の形態では、熱媒体M2として、排熱源からの排熱により加熱された水を用いる場合を例に説明する。また、熱媒体M1の流通経路と熱媒体M2の流通経路とは、互いに独立している。
圧力制御用反応器50も第1の熱交換型反応器20と同様に、筐体に、複数の反応室と、各反応室内に収納された積層体と、複数の熱媒体流路と、が設けられた反応器となっている。積層体の構成及び圧力制御用反応器50内の構成については、それぞれ、積層体25の構成及び第1の熱交換型反応器20内の構成と同様であり、圧力制御用反応器50中の複数の反応室と流通配管46とが、気密状態で連通するヘッダ部材(例えば、マニホールド等)を介して接続されている。
また、圧力制御用反応器50は、ヘッダ部材を介して流通配管16に接続されている。圧力制御用反応器50内の複数の熱媒体流路は、該ヘッダ部材により気密状態で流通配管16に連通されている。これにより、流通配管16を通じ、圧力制御用反応器50内に熱媒体を流通させることができるようになっている。本実施の形態では、熱媒体として、排熱源からの排熱により加熱された水を用いる場合を例に説明する。
また、圧力制御用反応器50は、第2の熱交換型反応器30におけるアンモニア圧力の制御に必要な投入エネルギーが、第1の熱交換型反応器20によるアンモニアの昇圧又は降圧に必要な投入エネルギーより小さくなるように、第1の熱交換型反応器20より小型及び低熱容量に構成されている。
また、化学蓄熱システム100には、装置内にアンモニアを供給するためのアンモニア供給手段(不図示)や、装置内を排気するための排気手段(不図示)、装置内のアンモニア圧を測定するための圧力測定手段(不図示)等が接続されていてもよい。
次に、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30との間で行われる熱輸送の例について説明する。
(放熱モード)
まず、第1の熱交換型反応器20に供給された熱を第2の熱交換型反応器30に輸送し、輸送された熱を第2の熱交換型反応器30から外部に放熱する熱利用の一例について説明する。この一例では、第1の熱交換型反応器20を熱入力側の反応器とし、第2の熱交換型反応器30を熱出力側の反応器としている。
この一例では、まず初期状態として、アンモニアを第1の熱交換型反応器20側に集め、第1の熱交換型反応器20における蓄熱材にアンモニアが固定化された状態にし、その後バルブV3を閉じる。初期状態とする具体的な方法の例は、後述する「再生」の方法と同様である。
そして、バルブV3、V6を開き、アンモニアを圧力制御用反応器50側に吸蔵させて、圧力制御用反応器50における蓄熱材にアンモニアが固定化された状態にし、その後バルブV3、V6を閉じる。
そして、バルブV7、V9を開き、圧力制御用反応器50に、高温の熱媒体を流通させることにより、熱を供給する。その後、バルブV4、V6を開く。
この状態では、圧力制御用反応器50側のアンモニア圧が第2の熱交換型反応器30側のアンモニア圧よりも高くなり、第2の熱交換型反応器30のアンモニア圧力を昇圧するため、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応を加速させる。このように、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応が遅くなる期間、すなわち、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応を開始する時点から予め定められた期間において、吸着反応を加速させる。
そして、バルブV6を閉じると共に、バルブV3を開く。このときに、バルブV1を開き、第1の熱交換型反応器20に、高温の熱媒体M1を流通させることにより、熱を供給する。
第2の熱交換型反応器30には、外部の熱利用対象に向けて熱を放出するための熱媒体M2を流通させる。
この状態では、第1の熱交換型反応器20側のアンモニア圧が第2の熱交換型反応器30側のアンモニア圧よりも高くなっており、アンモニア圧が高い第1の熱交換型反応器20から、相対的にアンモニア圧が低い第2の熱交換型反応器30に向けてアンモニアの輸送が行われる。このとき、第1の熱交換型反応器20では、吸熱反応によって第1の熱交換型反応器20中の蓄熱材からアンモニアが脱離する。この吸熱反応の維持は、第1の熱交換型反応器20への上記高温の熱媒体M1の流通を維持することにより(即ち、第1の熱交換型反応器20への熱の供給を維持することにより)行われる。
上記アンモニアの輸送により第2の熱交換型反応器30に到達したアンモニアは、第2の熱交換型反応器30における反応室34内の蓄熱材に、発熱反応により固定化される。この発熱反応により熱媒体M2が加熱され、加熱された熱媒体M2が外部の加熱対象に向けて放熱される。
以上のようにして、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材のアンモニア吸着反応の開始時点から予め定められた期間に、圧力制御用反応器50からのアンモニアを第2の熱交換型反応器30へ供給し、吸着反応を加速させる。その後、第1の熱交換型反応器20から第2の熱交換型反応器30へのアンモニアの輸送に伴い、第1の熱交換型反応器20に供給された熱が、第2の熱交換型反応器30側に輸送され、第2の熱交換型反応器30から放熱される。
(蓄熱モード)
上記の放熱が継続されて第1の熱交換型反応器20内のアンモニアが減少した場合には、系内のアンモニアを再び第1の熱交換型反応器20側に集め、第1の熱交換型反応器20における蓄熱材成形体21A及び21Bにアンモニアを固定化させることにより、初期状態に再生させる。
再生の具体的な方法の例としては、まず、バルブV3を閉じた状態で、バルブV4、V6を開き、第2の熱交換型反応器30における熱媒体流路36に高温(例えば、160℃)に維持された熱媒体M2を流通させる。
これにより、吸熱反応によって第2の熱交換型反応器30からアンモニアが脱離するとともに、第2の熱交換型反応器30から供給されるアンモニアが、圧力制御用反応器50の蓄熱材に吸着されることにより、第2の熱交換型反応器30のアンモニア圧力を降圧するため、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の脱離反応を加速させる。このように、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の脱離反応が遅くなる期間、すなわち、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の脱離反応を開始する時点から予め定められた期間において、脱離反応を加速させる。
そして、バルブV6を閉じると共に、バルブV3を開く。このときに、第2の熱交換型反応器30における熱媒体流路36に高温(例えば、160℃)に維持された熱媒体M2を流通させる。
これにより、吸熱反応によって第2の熱交換型反応器30からアンモニアが脱離するとともに、第2の熱交換型反応器30側から第1の熱交換型反応器20側にアンモニアが輸送される。
第1の熱交換型反応器20に到達したアンモニアは、第1の熱交換型反応器20における反応室24内の蓄熱材成形体21A及び21Bに発熱反応により固定化される。
この発熱反応の維持は、例えば、第1の熱交換型反応器20への外気の供給を維持することにより行われる。
以上のようにして、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材のアンモニア脱離反応の開始時点から予め定められた期間に、圧力制御用反応器50がアンモニアを第2の熱交換型反応器30から吸蔵し、脱離反応を加速させる。その後、第2の熱交換型反応器30から第1の熱交換型反応器20へのアンモニアの輸送に伴い、第2の熱交換型反応器30が蓄熱される。
化学蓄熱システム100では、上記の放熱モード及び蓄熱モードを繰り返し行うことができる。
以上の実施形態の例で説明したように、本発明の化学蓄熱システム100は、2つの反応器間に生じたアンモニア圧の差を利用してアンモニアを一方から他方に輸送することにより熱を輸送する装置である。
(蓄熱材)
次に、第1、第2の熱交換型反応器に収納される蓄熱材の好ましい範囲について説明する。
第2の熱交換型反応器に収納される蓄熱材は、配位反応によりアンモニアを固定化する化学蓄熱材含むことが好ましい。
前記化学蓄熱材を含む蓄熱材を用いることで、第2の熱交換型反応器における蓄熱密度をより高くすることができるので、熱輸送装置全体としての蓄熱密度をより高くすることができる。また、化学蓄熱材は物理吸着材と比較して種類による蓄熱温度の差が大きいことから、化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された第2の熱交換型反応器を用いることで、化学蓄熱材の種類の選定により熱輸送装置の作動温度や作動アンモニア圧等の動作条件の選択の幅を広げることができる。従って、熱利用の対象に合わせ、作動アンモニア圧や作動温度を広い範囲から選定できる。
一方、第1の熱交換型反応器では、物理吸着材を含む蓄熱材を用いることで、反応器において、アンモニアの固定化及び脱離に要する熱量をより小さくすることができるので、熱輸送装置全体としての熱輸送の制御性がより向上する。
このように、第1の熱交換型反応器及び第2の熱交換型反応器における蓄熱材の組み合わせの選択により、反応器間での反応熱量の差により、小さな熱入力で大きな熱出力を得ることができる。
物理吸着材を含む第1の熱交換型反応器と、化学吸着材を含む第2の熱交換型反応器とを組み合わせた構成では、装置全体としては、化学蓄熱材を含む第2の熱交換型反応器によってより高い蓄熱密度が得られるとともに、物理吸着材を含む第1の熱交換型反応器によってアンモニアの固定化及び脱離の制御をより容易とすることができる。
更に、上記の組み合わせた構成では、物理吸着材と比較してアンモニアの固定化及び脱離に要する熱量が大きい性質を有する化学蓄熱材と、化学蓄熱材と比較してアンモニアの固定化及び脱離に要する熱量が小さい性質を有する物理吸着材と、を用いる。このため、反応器間での反応熱量の差を利用して、物理吸着材を含む第1の熱交換型反応器側に小さい熱量の熱を供給する場合においても、化学蓄熱材を含む第2の熱交換型反応器側でより大きな熱量を放熱することができる。
例えば、アンモニア1molの固定化及び脱離に要する熱量は、化学蓄熱材(例えば、LiCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、MnCl2、CoCl2、NiCl2、等)では40kJ/mol〜60kJ/molであるのに対し、物理吸着材(例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物、等)では、20kJ/mol〜30kJ/molである。
−化学蓄熱材−
次に、前記化学蓄熱材の好ましい形態について更に詳細に説明する。
前記化学蓄熱材としては、反応器における蓄熱密度をより高くする観点からは、金属ハロゲン化物が好ましく、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、又は遷移金属の塩化物がより好ましく、LiCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、MnCl2、CoCl2、又はNiCl2が特に好ましい。
前記金属ハロゲン化物は、一種単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
本発明における蓄熱材が前記化学蓄熱材を含む場合、該化学蓄熱材は蓄熱材中に、一種含まれていてもよいし二種以上含まれていてもよい。
本発明における蓄熱材が前記化学蓄熱材を含む場合、該蓄熱材は前記化学蓄熱材以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、アルミナ、シリカ等のバインダー成分、カーボンファイバー等の熱伝導補助材、等が挙げられる。
但し、本発明における蓄熱材が前記化学蓄熱材を含む場合において、蓄熱密度をより向上させる観点からは、蓄熱材中における前記化学蓄熱材の含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
また、化学蓄熱材を含む蓄熱材を蓄熱材成形体に成形する場合、その成形方法については特に限定はなく、例えば、化学蓄熱材(及び必要に応じバインダー等のその他の成分)を含む蓄熱材(又は該蓄熱材を含むスラリー)を、加圧成形、押し出し成形、等の公知の成形手段により成形する方法が挙げられる。
前記成形の圧力としては、例えば、20MPa〜100MPaが挙げられ、20MPa〜40MPaが好ましい。
−物理吸着材−
次に、前記物理吸着材の好ましい形態について更に詳しく説明する。
前記物理吸着材としては、多孔体を用いることができる。
前記多孔体としては、物理吸着によるアンモニアの固定化及び脱離の反応性をより向上させる観点からは、10nm以下の細孔を持つ多孔体が好ましい。
前記細孔のサイズの下限としては、製造適性等の観点から、0.5nmが好ましい。
前記多孔体としては、同様の観点より、平均1次粒子径50μm以下の1次粒子が凝集して得られた1次粒子凝集体である多孔体が好ましい。
前記平均1次粒子径の下限としては、製造適性等の観点から、1μmが好ましい。
前記多孔体の具体例としては、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等が挙げられる。
前記活性炭としては、BET法による比表面積が800m2/g以上2500m2/g以下(より好ましくは1800m2/g以上2500m2/g以下)である活性炭が好ましい。
前記粘土鉱物としては、非架橋の粘土鉱物であっても、架橋された粘土鉱物(架橋粘土鉱物)であってもよい。前記粘土鉱物としてはセピオライト等が挙げられる。
本発明における蓄熱材が物理吸着材(好ましくは前記多孔体)を含む場合、該蓄熱材は、前記物理吸着材(好ましくは前記多孔体)を一種単独で含んでいてもよいし二種以上を含んでいてもよい。
本発明においては、作動アンモニア圧や作動温度に合わせて、物理吸着材(好ましくは前記多孔体)の種類を適宜選定することができる。
物理吸着によるアンモニアの固定化及び脱離の反応性をより向上させる観点からは、前記物理吸着材は活性炭を少なくとも含むことが好ましい。
本発明における蓄熱材が物理吸着材を含む場合において、前記蓄熱材中における物理吸着材の含有量は、アンモニアの固定化及び脱離の反応性をより高く維持する観点より、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。
また、本発明における物理吸着材を含む蓄熱材を成形体(蓄熱材成形体)として用いる場合、該蓄熱材は、前記物理吸着材に加えてバインダーを含むことが好ましい。前記蓄熱材がバインダーを含むことにより、前記蓄熱材成形体の形状がより効果的に維持されるので、物理吸着によるアンモニアの固定化及び脱離の反応性がより向上する。
前記バインダーとしては、水溶性バインダーの少なくとも1種であることが好ましい。
前記水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、トリメチルセルロース、等が挙げられる。
本発明における蓄熱材が物理吸着材及びバインダーを含む場合、該蓄熱材中におけるバインダーの含有量は、前記蓄熱材成形体の形状をより効果的に維持する観点より、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましい。
本発明における蓄熱材が物理吸着材及びバインダーを含む場合、必要に応じ、前記物理吸着材及び前記バインダー以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、カーボンファイバー等の熱伝導補助材、等が挙げられる。
また、物理吸着材を含む蓄熱材を蓄熱材成形体に成形する場合、その成形方法については特に限定はなく、例えば、物理吸着材(及び必要に応じバインダー等のその他の成分)を含む蓄熱材(又は該蓄熱材を含むスラリー)を、加圧成形、押し出し成形、等の公知の成形手段により成形する方法が挙げられる。
前記成形の圧力としては、例えば、20MPa〜100MPaが挙げられ、20MPa〜40MPaが好ましい。
(反応室の好ましい形態)
次に、第1、第2の熱交換型反応器における反応室(例えば、前記第1の熱交換型反応器20における反応室24、及び、前記第2の熱交換型反応器30における反応室34)の好ましい形態について、前記第1の熱交換型反応器20における反応室24を例として説明する。
前記第1の熱交換型反応器20における反応室24は、内壁が前記蓄熱材成形体21A及び21Bとの接触部分を有していることが好ましい。より好ましくは、反応室24の内壁と、前記蓄熱材成形体21A及び21Bにおける一方の主面と、が接触している形態(即ち、蓄熱材成形体が、反応室の内壁と、支持体表面と、によって挟持されている形態)である。
即ち、蓄熱材成形体21A及び21Bが、それぞれ、反応室24の内壁及び支持体23の表面との接触を保った状態となっていることが好ましい。
反応室24の内壁が前記蓄熱材成形体21A及び21Bとの接触部分を有する構成によれば、反応室24の内壁を通じ、第1の熱交換型反応器と蓄熱材成形体との間での熱交換をより効果的に行うことができる。また、一般に、蓄熱材成形体を繰り返し使用すると、アンモニアの固定化及び脱離により蓄熱材成形体が体積膨張収縮を繰り返し、蓄熱材成形体に割れ(クラックを含む)や微粉化が生じる場合があるが、上記構成によれば、この繰り返し使用時における蓄熱材成形体の割れ(クラックを含む)や微粉化をより効果的に抑制できる。
前記第2の熱交換型反応器30における反応室34の好ましい形態についても、前記第1の熱交換型反応器20における反応室24と同様である。
制御装置90は、化学蓄熱システム100の全制御を担う制御部であり、バルブV1〜V9、及び外部熱源などと電気的に接続されており、バルブ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
次に、本実施形態の化学蓄熱システムを制御する制御部である制御装置90による制御ルーチンのうち、第1の熱交換型反応器20に高温の水を供給して第2の熱交換型反応器30から放熱した後に蓄熱する放熱蓄熱サイクル制御ルーチンを中心に図5を参照して説明する。
本実施形態の化学蓄熱システムの起動スイッチのオンにより制御装置90の電源がオンされると、システムが起動され、第2の熱交換型反応器30からの放熱が要求されると、ポンプPの稼動が開始されると共に、放熱蓄熱サイクル制御ルーチンが実行される。
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ100において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3及び流通配管46に取り付けられたバルブV6を開く。このとき、第1の熱交換型反応器20の蓄熱材から、圧力制御用反応器50へアンモニアが輸送され、圧力制御用反応器50の蓄熱材に固定化される。そして、ステップ102において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3及び流通配管46に取り付けられたバルブV6を閉じる。
そして、ステップ104において、流通配管16に取り付けられたバルブV7及び流通配管17に取り付けられたバルブV9を開き、圧力制御用反応器50の加熱を開始する。ステップ106では、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV4及び流通配管46に取り付けられたバルブV6を開く。このとき、圧力制御用反応器50から、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材へアンモニアが輸送され、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に固定化される反応が開始されると共に、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材にアンモニアが固定化される反応が加速される。そして、ステップ108において、上記ステップ106へ移行してから予め定められた期間経過すると、流通配管46に取り付けられたバルブV6、流通配管16に取り付けられたバルブV7、及び流通配管17に取り付けられたバルブV9を閉じ、圧力制御用反応器50の加熱を停止すると共に、加速モードを終了し、放熱モードに切り換えるため、ステップ110に移行する。
そして、ステップ110において、流通配管12、45に取り付けられたバルブV1、V2を開き、第1の熱交換型反応器20の加熱を開始する。そして、ステップ112において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3を開き、第1の熱交換型反応器20から、第2の熱交換型反応器30へアンモニアを輸送させる。このとき、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に、アンモニアが固定化され、生じた吸着熱が、熱媒体M2を介して放熱される。
次のステップ114において、ステップ110へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q1が経過していないと判定されたときは、第1の熱交換型反応器20の蓄熱材がアンモニアを脱離できる状態にあるため、ステップ110〜112を継続する。一方、時間Q1が経過したと判定されたときには、蓄熱モードに切り換えるため、ステップ116に移行する。
ステップ116において、流通配管12、45に取り付けられたバルブV1、V2を閉じて、第1の熱交換型反応器20の加熱を停止する。
そして、ステップ118において、流通配管46に取り付けられたバルブV6を開き、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3を閉じる。このとき、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材から、圧力制御用反応器50へアンモニアが輸送され、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材からアンモニアが脱離する反応が開始されると共に、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材からアンモニアが脱離する反応が加速される。そして、ステップ120において、上記ステップ118へ移行してから予め定められた期間経過すると、流通配管46に取り付けられたバルブV6を閉じ、加速モードを終了する。
そして、ステップ122において、流通配管14に取り付けられたバルブV5及び流通配管37Bに取り付けられたバルブV8を開き、第2の熱交換型反応器30の加熱を開始する。そして、ステップ124において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3を開き、第2の熱交換型反応器30から、第1の熱交換型反応器20へアンモニアを輸送させる。このとき、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材からアンモニアが脱離し、熱媒体M2の熱が蓄熱される。
次のステップ126において、ステップ122へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q2が経過していないと判定されたときは、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に吸着したアンモニアをさらに脱離させて蓄熱材を再生するため、ステップ122、124を継続する。一方、時間Q2が経過したと判定されたときには、次のステップ128に移行して、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3、V4を閉じ、流通配管14に取り付けられたバルブV5及び流通配管37Bに取り付けられたバルブV8を閉じて、本ルーチンを終了する。これにより、第1の熱交換型反応器20と第2の熱交換型反応器30との圧力差が維持される。
以上説明したように、第1実施形態の化学蓄熱システムによれば、第2の熱交換型反応器がアンモニアを脱離するとき及びアンモニアを固定化するときに、圧力制御用反応器によって、第2の熱交換型反応器のアンモニア圧力を制御することにより、小さな投入エネルギーで、第2の熱交換型反応器におけるアンモニアの脱離又は固定化の反応速度を加速することができる。
また、第2の熱交換型反応器の蓄熱材(塩化金属)のアンモニア吸蔵/放出において、材料のマクロな伝熱/拡散が制御されている場合、平衡圧とアンモニアガス圧力の差が吸蔵/放出速度に対し、支配的となるため、差圧を大きくすることで、アンモニア脱離又は固定化の反応速度を加速することができる。また、第2の熱交換型反応器の蓄熱材(塩化金属)がアンモニア吸蔵/放出を開始する初期に、反応が遅くなる現象があり、その期間に、大きな差圧で、アンモニア脱離又は固定化の反応速度を加速させることができる。
また、第2の熱交換型反応器の蓄熱材のアンモニア吸蔵/放出の促進に必要なアンモニアガス量は、全吸蔵量、放出量に対して、少なくてもよいため、圧力制御用反応器を第1の熱交換型反応器に対して、小型、低熱容量に設計できるため、その温調に必要な熱エネルギーを抑えることができる。
また、大きな圧力差を与えるための圧力制御用反応器を第1の熱交換型反応器に対し、小さく設計することで、小さな投入エネルギーで圧力制御が可能である。
なお、上記の実施の形態では、圧力制御部として、圧力制御用反応器を用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、後述する第2の実施の形態と同様に、圧力制御部として、圧力ボンベを用いてもよい。この場合には、第2の実施の形態と同様に、温度調整部によって、圧力ボンベを加熱又は冷却するようにすればよい。
(第2実施形態)
本発明の化学蓄熱システムの第2実施形態について図6〜9を参照して説明する。本実施形態は、本実施形態では、第1の圧力ボンベと第2の熱交換型反応器との間でアンモニアの輸送を行い、第2の圧力ボンベによる圧力制御で、第2の熱交換型反応器の蓄熱材の反応を加速するシステム構成となっている。
なお、化学蓄熱システムの第2実施形態において、上記の第1実施形態と同様の構成要素となる部分については、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の化学蓄熱システム200は、図6に示すように、アンモニアの吸蔵及び放出が可能な第1の圧力ボンベ220と、第2の熱交換型反応器30と、アンモニアの吸蔵及び放出が可能な第2の圧力ボンベ250と、を備えている。なお、第1の圧力ボンベ220が、本発明のアンモニアバッファ容器の一例であり、第2の熱交換型反応器30が、本発明の反応器の一例であり、第2の圧力ボンベ250が、本発明の圧力制御部の一例である。
バルブV5を有する流通配管14とバルブV8を有する流通配管37Bとが第2の熱交換型反応器30に連通されている。
第1の圧力ボンベ220は、バルブV3、V4を有するアンモニア配管42を介して、第2の熱交換型反応器30と接続されている。アンモニア配管42は、バルブV3、V4の間で、バルブV6を有する流通配管46の一端と接続されており、第1の圧力ボンベ220及び第2の熱交換型反応器30は、アンモニア配管42及び流通配管46を介して第2の圧力ボンベ250と連通されている。
第1の圧力ボンベ220には、温度調整部222が取り付けられており、温度調整部222は、第1の圧力ボンベ220を加熱したり、冷却したりする。温度調整部222は、例えば、ヒータとペルチェ素子とで構成されている。
第2の圧力ボンベ250は、第1の圧力ボンベ220と同様に、温度調整部252が取り付けられており、温度調整部252は、第2の圧力ボンベ250を加熱したり、冷却したりする。
また、第2の圧力ボンベ250は、第2の熱交換型反応器30におけるアンモニア圧力の制御に必要な投入エネルギーが、第1の圧力ボンベ220によるアンモニアの昇圧又は降圧に必要な投入エネルギーより小さくなるように、第1の圧力ボンベ220より小型及び低熱容量に構成されている。
次に、第1の圧力ボンベ220及び第2の熱交換型反応器30との間で行われる熱輸送の例について説明する。
(放熱モード)
まず、初期状態として、アンモニアを第1の圧力ボンベ220側に集め、第1の圧力ボンベ220にアンモニアが吸蔵された状態にし、その後バルブV3を閉じる。
そして、バルブV3、V6を開き、アンモニアを第2の圧力ボンベ250側に吸蔵させて、その後バルブV3、V6を閉じる。
そして、温度調整部252により、第2の圧力ボンベ250を加熱する。その後、バルブV4、V6を開く。
この状態では、第2の圧力ボンベ250側のアンモニア圧が第2の熱交換型反応器30側のアンモニア圧よりも高くなり、第2の熱交換型反応器30のアンモニア圧力を昇圧するため、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応を加速させる。このように、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応が遅くなる期間、すなわち、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応を開始する時点から予め定められた期間において、吸着反応を加速させる。
そして、バルブV6を閉じると共に、バルブV3を開く。このときに、温度調整部222によって、第1の熱交換型反応器20を加熱する。
第2の熱交換型反応器30には、外部の熱利用対象に向けて熱を放出するための熱媒体M2を流通させる。
この状態では、第1の圧力ボンベ220側のアンモニア圧が第2の熱交換型反応器30側のアンモニア圧よりも高くなっており、アンモニア圧が高い第1の圧力ボンベ220から、相対的にアンモニア圧が低い第2の熱交換型反応器30に向けてアンモニアの輸送が行われる。
上記アンモニアの輸送により第2の熱交換型反応器30に到達したアンモニアは、第2の熱交換型反応器30における反応室34内の蓄熱材に、発熱反応により固定化される。この発熱反応により熱媒体M2が加熱され、加熱された熱媒体M2が外部の加熱対象に向けて放熱される。
以上のようにして、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材のアンモニア吸着反応の開始時点から予め定められた期間に、第2の圧力ボンベ250からのアンモニアを第2の熱交換型反応器30へ供給し、吸着反応を加速させる。その後、第1の圧力ボンベ220から第2の熱交換型反応器30へのアンモニアの輸送に伴い、第2の熱交換型反応器30から放熱される。
(蓄熱モード)
上記の放熱が継続されて第1の圧力ボンベ220内のアンモニアが減少した場合には、系内のアンモニアを再び第1の圧力ボンベ220側に集め、第1の圧力ボンベ220にアンモニアを吸蔵させることにより、初期状態に再生させる。
再生の具体的な方法の例としては、まず、バルブV3を閉じた状態で、バルブV4、V6を開き、第2の熱交換型反応器30における熱媒体流路36に高温(例えば、160℃)に維持された熱媒体M2を流通させる。また、温度調整部252により、第2の圧力ボンベ250を冷却する。
これにより、吸熱反応によって第2の熱交換型反応器30からアンモニアが脱離するとともに、第2の熱交換型反応器30から供給されるアンモニアが、第2の圧力ボンベ250に吸蔵されることにより、第2の熱交換型反応器30のアンモニア圧力を降圧するため、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の脱離反応を加速させる。このように、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の脱離反応が遅くなる期間、すなわち、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の脱離反応を開始する時点から予め定められた期間において、脱離反応を加速させる。
そして、バルブV6を閉じると共に、バルブV3を開く。このときに、第2の熱交換型反応器30における熱媒体流路36に高温(例えば、160℃)に維持された熱媒体M2を流通させる。また、温度調整部222により、第1の圧力ボンベ220を冷却する。
これにより、吸熱反応によって第2の熱交換型反応器30からアンモニアが脱離するとともに、第2の熱交換型反応器30側から第1の圧力ボンベ220側にアンモニアが輸送される。
第1の圧力ボンベ220に到達したアンモニアは、第1の圧力ボンベ220に吸蔵される。
以上のようにして、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材のアンモニア脱離反応の開始時点から予め定められた期間に、第2の圧力ボンベ250がアンモニアを第2の熱交換型反応器30から吸蔵し、脱離反応を加速させる。その後、第2の熱交換型反応器30から第1の圧力ボンベ220へのアンモニアの輸送に伴い、第2の熱交換型反応器30が蓄熱される。
化学蓄熱システム200では、上記の放熱モード及び蓄熱モードを繰り返し行うことができる。
以上の実施形態の例で説明したように、本実施形態の化学蓄熱システム200は、反応器と第1の圧力ボンベとの間に生じたアンモニア圧の差を利用してアンモニアを一方から他方に輸送することにより熱を輸送する装置である。
制御装置90は、化学蓄熱システム200の全制御を担う制御部であり、バルブV3〜V6、V8、温度調整部222、252、及び外部熱源などと電気的に接続されており、バルブやポンプ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
なお、第2実施形態に係る化学蓄熱システム200の他の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
次に、本実施形態の化学蓄熱システム200を制御する制御部である制御装置90による制御ルーチンのうち、第1の圧力ボンベ220からアンモニアを供給して第2の熱交換型反応器30から放熱した後に蓄熱する放熱蓄熱サイクル制御ルーチンを中心に図7を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態の化学蓄熱システム200の起動スイッチのオンにより制御装置90の電源がオンされると、システムが起動され、第2の熱交換型反応器30からの放熱が要求されると、ポンプPの稼動が開始されると共に、放熱蓄熱サイクル制御ルーチンが実行される。
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ100において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3及び流通配管46に取り付けられたバルブV6を開く。このとき、第1の圧力ボンベ220から、第2の圧力ボンベ250へアンモニアが輸送され、第2の圧力ボンベ250にアンモニアが吸蔵される。そして、ステップ102において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3及び流通配管46に取り付けられたバルブV6を閉じる。
そして、ステップ210において、温度調整部252により、第2の圧力ボンベ250の加熱を開始する。ステップ106では、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV4及び流通配管46に取り付けられたバルブV6を開く。このとき、第2の圧力ボンベ250から、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材へアンモニアが輸送され、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に固定化される反応が開始されると共に、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材にアンモニアが固定化される反応が加速される。そして、ステップ212において、上記ステップ106へ移行してから予め定められた期間経過すると、流通配管46に取り付けられたバルブV6を閉じると共に、温度調整部252による第2の圧力ボンベ250の加熱を停止し、加速モードを終了する。そして、放熱モードに切り換えるため、ステップ214へ移行する。
そして、ステップ214において、温度調整部222により、第1の圧力ボンベ220の加熱を開始する。そして、ステップ112において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3を開き、第1の圧力ボンベ220から、第2の熱交換型反応器30へアンモニアを輸送させる。このとき、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に、アンモニアが固定化され、生じた吸着熱が、熱媒体M2を介して放熱される。
次のステップ114において、ステップ110へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q1が経過していないと判定されたときは、第1の圧力ボンベ220がアンモニアを放出できる状態にあるため、ステップ214、112を継続する。一方、時間Q1が経過したと判定されたときには、蓄熱モードに切り換えるため、ステップ116に移行する。
ステップ216において、温度調整部222による第1の圧力ボンベ220の加熱を停止する。
そして、ステップ218において、温度調整部252による第2の圧力ボンベ250の冷却を開始する。そして、ステップ118において、流通配管46に取り付けられたバルブV6を開き、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3を閉じる。このとき、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材から、第2の圧力ボンベ250へアンモニアが輸送され、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材からアンモニアが脱離する反応が開始されると共に、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材からアンモニアが脱離する反応が加速される。そして、ステップ220において、上記ステップ118へ移行してから予め定められた期間経過すると、流通配管46に取り付けられたバルブV6を閉じると共に、温度調整部252による第2の圧力ボンベ250の冷却を停止し、加速モードを終了する。
そして、ステップ222において、温度調整部222による第1の圧力ボンベ220の冷却を開始する。そして、ステップ122において、流通配管14に取り付けられたバルブV5及び流通配管38Bに取り付けられたバルブV8を開き、第2の熱交換型反応器30の加熱を開始する。そして、ステップ124において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3を開き、第2の熱交換型反応器30から、第1の圧力ボンベ220へアンモニアを輸送させる。このとき、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材からアンモニアが脱離し、熱媒体M2の熱が蓄熱される。
次のステップ126において、ステップ222へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q2が経過していないと判定されたときは、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に吸着したアンモニアをさらに脱離させて蓄熱材を再生するため、ステップ222、122、124を継続する。一方、時間Q2が経過したと判定されたときには、次のステップ128に移行して、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3、V4を閉じ、流通配管14に取り付けられたバルブV5及び流通配管38Bに取り付けられたバルブV8を閉じる。そして、ステップ224において、温度調整部222による第1の圧力ボンベ250の冷却を停止し、本ルーチンを終了する。
(実施例)
上記の第2実施形態の化学蓄熱システム200で、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応及び脱離反応を加速した実施例について説明する。
本実施例では、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材を、塩化マグネシウム錯体とし、130℃に温調した。その際の平衡圧は75kPaである。
反応開始前、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材はMg(NH3)2Cl2の状態であり、第1の圧力ボンベ220は、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の全てをMg(NH3)6CI2にすることができる量のアンモニアを110kPa以上の圧力で供給できるようにした。また、第2の圧方ボンベ250は、315kPaのアンモニアガスを貯蔵しているが、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の全てをMg(NH3)6CI2にすることができる量のアンモニアガスを貯蔵していないものとした。
また、反応開始前、バルブV3、V6を閉じるようにした。
運転手順として、第2の熱交換型反応器30と第2の圧力ボンベ250の間のバルブV4、V6を3秒開放し、315kPaの圧力を、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材である塩化マグネシウム錯体に加え、吸着反応を加速させる。
そして、バルブV6を閉鎖すると同時にバルブV3を開放し、第1の圧力ボンベ220から第2の熱交換型反応器30へ110〜120kPaのアンモニアガスを供給した。
このときの反応率と圧力の時間変化を図8に示す。圧力制御部を用いず、110〜120kPaのアンモニアガスを塩化マグネシウム錯体に吸着させた場合は吸着反応初期の反応速度が遅いが、圧力制御部としての第2の圧力ボンベ250による昇圧を行った場合(図9参照)は吸着反応初期の反応を加速することができており、吸着に必要な時間を短縮できることが分かった。
以上説明したように、第2実施形態の化学蓄熱システムによれば、第2の熱交換型反応器がアンモニアを脱離するとき及びアンモニアを固定化するときに、第2の圧力ボンベによって、第2の熱交換型反応器のアンモニア圧力を制御することにより、小さな投入エネルギーで、第2の熱交換型反応器におけるアンモニアの脱離及び固定化の反応速度を加速することができる。
また、第2の熱交換型反応器の蓄熱材(塩化金属)のアンモニア吸蔵/放出の促進に必要なアンモニアガス量は、全吸蔵量、放出量に対して、少なくてもよいため、第2の圧力ボンベを第1の圧力ボンベに対して、小型、低熱容量に設計できるため、その温調に必要な熱エネルギーを抑えることができる。
また、大きな圧力差を与えるための第2の圧力ボンベを第1の圧力ボンベに対し、小さく設計することで、小さな投入エネルギーで圧力制御が可能である。
なお、上記の実施の形態では、圧力制御部として、第2の圧力ボンベを用いた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、上記の第1の実施の形態と同様に、圧力制御部として、圧力制御用反応器を用いてもよい。この場合には、第1の実施の形態と同様に、高温の水によって、圧力制御用圧力器を加熱するようにすればよい。また、後述する第3の実施の形態と同様に、圧力制御部として、ピストン及び駆動部を用いてもよい。
(第3実施形態)
本発明の化学蓄熱システムの第3実施形態について図10〜11を参照して説明する。本実施形態は、第1の熱交換型反応器と第2の熱交換型反応器との間でアンモニアの輸送を行い、ピストンによる圧力制御で、第2の熱交換型反応器の蓄熱材の反応を加速するシステム構成となっている。
なお、化学蓄熱システムの第3実施形態において、上記の第1実施形態と同様の構成要素となる部分については、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態の化学蓄熱システム300は、図10に示すように、第1の熱交換型反応器20と、第2の熱交換型反応器30と、アンモニアの吸蔵及び放出が可能なピストン350と、を備えている。なお、第1の熱交換型反応器20が、本発明のアンモニアバッファ容器の一例であり、第2の熱交換型反応器30が、本発明の反応器の一例であり、ピストン350が、本発明の圧力制御部の一例である。
第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30は、アンモニア配管42及び流通配管46を介してピストン350と連通されている。
ピストン350には、ピストン350を駆動するための駆動部352が取り付けられており、駆動部352は、ピストン350がアンモニアを放出及び吸蔵するように駆動させる。
また、ピストン350は、第2の熱交換型反応器30におけるアンモニア圧力の制御に必要な投入エネルギーが、第1の熱交換型反応器20によるアンモニアの昇圧又は降圧に必要な投入エネルギーより小さくなるように、第1の熱交換型反応器20より小型及び低熱容量に構成されている。
また、ピストン350は、アンモニア配管42の管内容積に対し、1倍以上のピストン容積を有するように構成されている。
次に、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30との間で行われる熱輸送の例について説明する。
(放熱モード)
まず、第1の熱交換型反応器20に供給された熱を第2の熱交換型反応器30に輸送し、輸送された熱を第2の熱交換型反応器30から外部に放熱する熱利用の一例について説明する。この一例では、第1の熱交換型反応器20を熱入力側の反応器とし、第2の熱交換型反応器30を熱出力側の反応器としている。
この一例では、まず初期状態として、アンモニアを第1の熱交換型反応器20側に集め、第1の熱交換型反応器20における蓄熱材にアンモニアが固定化された状態にし、その後バルブV3を閉じる。
そして、バルブV3、V6を開き、ピストン350を駆動させて、ピストン350にアンモニアが吸蔵された状態にし、その後バルブV3、V6を閉じる。
そして、バルブV4、V6を開き、ピストン350からアンモニアを放出するように駆動させる。
この状態では、ピストン350側のアンモニア圧が第2の熱交換型反応器30側のアンモニア圧よりも高くなり、第2の熱交換型反応器30のアンモニア圧力を昇圧するため、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応を加速させる。このように、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応が遅くなる期間、すなわち、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の吸着反応を開始する時点から予め定められた期間において、吸着反応を加速させる。
そして、バルブV6を閉じると共に、バルブV3を開く。このときに、バルブV1を開き、第1の熱交換型反応器20に、高温の熱媒体M1を流通させることにより、熱を供給する。
第2の熱交換型反応器30には、外部の熱利用対象に向けて熱を放出するための熱媒体M2を流通させる。
この状態では、第1の熱交換型反応器20側のアンモニア圧が第2の熱交換型反応器30側のアンモニア圧よりも高くなっており、アンモニア圧が高い第1の熱交換型反応器20から、相対的にアンモニア圧が低い第2の熱交換型反応器30に向けてアンモニアの輸送が行われる。このとき、第1の熱交換型反応器20では、吸熱反応によって第1の熱交換型反応器20中の蓄熱材からアンモニアが脱離する。この吸熱反応の維持は、第1の熱交換型反応器20への上記高温の熱媒体M1の流通を維持することにより(即ち、第1の熱交換型反応器20への熱の供給を維持することにより)行われる。
上記アンモニアの輸送により第2の熱交換型反応器30に到達したアンモニアは、第2の熱交換型反応器30における反応室34内の蓄熱材に、発熱反応により固定化される。この発熱反応により熱媒体M2が加熱され、加熱された熱媒体M2が外部の加熱対象に向けて放熱される。
以上のようにして、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材のアンモニア吸着反応の開始時点から予め定められた期間に、ピストン350からのアンモニアを第2の熱交換型反応器30へ供給し、吸着反応を加速させる。その後、第1の熱交換型反応器20から第2の熱交換型反応器30へのアンモニアの輸送に伴い、第1の熱交換型反応器20に供給された熱が、第2の熱交換型反応器30側に輸送され、第2の熱交換型反応器30から放熱される。
(蓄熱モード)
上記の放熱が継続されて第1の熱交換型反応器20内のアンモニアが減少した場合には、系内のアンモニアを再び第1の熱交換型反応器20側に集め、第1の熱交換型反応器20における蓄熱材成形体21A及び21Bにアンモニアを固定化させることにより、初期状態に再生させる。
再生の具体的な方法の例としては、まず、バルブV3を閉じた状態で、バルブV4、V6を開き、第2の熱交換型反応器30における熱媒体流路36に高温(例えば、160℃)に維持された熱媒体M2を流通させる。
これにより、吸熱反応によって第2の熱交換型反応器30からアンモニアが脱離するとともに、第2の熱交換型反応器30から供給されるアンモニアを、ピストン350が吸蔵するように駆動することにより、第2の熱交換型反応器30のアンモニア圧力を降圧するため、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の脱離反応を加速させる。このように、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の脱離反応が遅くなる期間、すなわち、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材の脱離反応を開始する時点から予め定められた期間において、脱離反応を加速させる
そして、バルブV6を閉じると共に、バルブV3を開く。このときに、第2の熱交換型反応器30における熱媒体流路36に高温(例えば、160℃)に維持された熱媒体M2を流通させる。
これにより、吸熱反応によって第2の熱交換型反応器30からアンモニアが脱離するとともに、第2の熱交換型反応器30側から第1の熱交換型反応器20側にアンモニアが輸送される。
第1の熱交換型反応器20に到達したアンモニアは、第1の熱交換型反応器20における反応室24内の蓄熱材成形体21A及び21Bに発熱反応により固定化される。
この発熱反応の維持は、例えば、第1の熱交換型反応器20への外気の供給を維持することにより行われる。
以上のようにして、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材のアンモニア脱離反応の開始時点から予め定められた期間に、ピストン350がアンモニアを第2の熱交換型反応器30から吸蔵し、脱離反応を加速させる。その後、第2の熱交換型反応器30から第1の熱交換型反応器20へのアンモニアの輸送に伴い、第2の熱交換型反応器30が蓄熱される。
化学蓄熱システム100では、上記の放熱モード及び蓄熱モードを繰り返し行うことができる。
以上の実施形態の例で説明したように、本実施形態の化学蓄熱システム300は、2つの反応器間に生じたアンモニア圧の差を利用してアンモニアを一方から他方に輸送することにより熱を輸送する装置である。
制御装置90は、化学蓄熱システム300の全制御を担う制御部であり、バルブV1〜V6、V8、駆動部352、及び外部熱源などと電気的に接続されており、バルブやポンプ、熱源、熱交換を制御して熱利用をコントロールできるように構成されている。
次に、本実施形態の化学蓄熱システム300を制御する制御部である制御装置90による制御ルーチンのうち、第1の熱交換型反応器20に高温の水を供給して第2の熱交換型反応器30から放熱した後に蓄熱する放熱蓄熱サイクル制御ルーチンを中心に図11を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の処理については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施形態の化学蓄熱システムの起動スイッチのオンにより制御装置90の電源がオンされると、システムが起動され、第2の熱交換型反応器30からの放熱が要求されると、ポンプPの稼動が開始されると共に、放熱蓄熱サイクル制御ルーチンが実行される。
本ルーチンが実行されると、まず、ステップ306において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3及び流通配管46に取り付けられたバルブV6を開く。このとき、ピストン350を駆動し、第1の熱交換型反応器20の蓄熱材から、ピストン350にアンモニアを吸蔵させる。そして、ステップ308において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3及び流通配管46に取り付けられたバルブV6を閉じると共に、ピストン350の駆動を停止させる。
そして、ステップ310において、アンモニアを放出するようにピストン350の駆動を開始する。ステップ106では、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV4及び流通配管46に取り付けられたバルブV6を開く。このとき、ピストン350から、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材へアンモニアが輸送され、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に固定化される反応が開始されると共に、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材にアンモニアが固定化される反応が加速される。そして、ステップ312において、上記ステップ106へ移行してから予め定められた期間経過すると、流通配管46に取り付けられたバルブV6を閉じ、ピストン350の駆動を停止すると共に、加速モードを終了する。そして、放熱モードに切り換えるため、ステップ110へ移行する。
そして、ステップ110において、流通配管12、45に取り付けられたバルブV1、V2を開き、第1の熱交換型反応器20の加熱を開始する。そして、ステップ112において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3を開き、第1の熱交換型反応器20から、第2の熱交換型反応器30へアンモニアを輸送させる。
次のステップ114において、ステップ110へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q1に満たない状況にあるか否かが判定され、未だ時間Q1が経過していないと判定されたときは、第1の熱交換型反応器20の蓄熱材がアンモニアを脱離できる状態にあるため、ステップ110〜112を継続する。一方、時間Q1が経過したと判定されたときには、蓄熱モードに切り換えるため、ステップ116に移行する。
ステップ116において、流通配管12、45に取り付けられたバルブV1、V2を閉じて、第1の熱交換型反応器20の加熱を停止する。
そして、ステップ118において、流通配管46に取り付けられたバルブV6を開き、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3を閉じる。そして、ステップ314において、アンモニアを吸蔵するようにピストン350の駆動を開始する。このとき、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材から、ピストン350にアンモニアが吸蔵され、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材からアンモニアが脱離する反応が開始されると共に、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材からアンモニアが脱離する反応が加速される。そして、ステップ316において、上記ステップ314へ移行してから予め定められた期間経過すると、流通配管46に取り付けられたバルブV6を閉じると共に、ピストン350の駆動を停止し、加速モードを終了する。
そして、ステップ122において、流通配管14に取り付けられたバルブV5及び流通配管38Bに取り付けられたバルブV8を開き、第2の熱交換型反応器30の加熱を開始する。そして、ステップ124において、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3を開き、第2の熱交換型反応器30から、第1の熱交換型反応器20へアンモニアを輸送させる。
次のステップ126において、ステップ122へ移行後の経過時間が所定時間(タイマ)Q2に満たない状況であるか否かが判定され、未だ時間Q2が経過していないと判定されたときは、第2の熱交換型反応器30の蓄熱材に吸着したアンモニアをさらに脱離させて蓄熱材を再生するため、ステップ122、124を継続する。一方、時間Q2が経過したと判定されたときには、次のステップ128に移行して、アンモニア配管42に取り付けられたバルブV3、V4を閉じ、流通配管14に取り付けられたバルブV5及び流通配管38Bに取り付けられたバルブV8を閉じて、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、第3実施形態の化学蓄熱システムによれば、第2の熱交換型反応器がアンモニアを脱離するとき及びアンモニアを固定化するときに、ピストンによって、第2の熱交換型反応器のアンモニア圧力を制御することにより、小さな投入エネルギーで、第2の熱交換型反応器におけるアンモニアの脱離及び固定化の反応速度を促進することができる。
また、圧力制御部として、ピストンを用いることで、熱エネルギー以外のエネルギー(電気エネルギー、力学的エネルギー)による昇圧、降圧が可能となる。
また、第2の熱交換型反応器の蓄熱材(塩化金属)のアンモニア吸蔵/放出の促進に必要なアンモニアガス量は、全吸蔵量、放出量に対して、少なくてもよいため、ピストンを第1の熱交換型反応器に対して、小型に設計できるため、必要なエネルギーを抑えることができる。
また、大きな圧力差を与えるためのピストンを第1の熱交換型反応器に対し、小さく設計することで、小さな投入エネルギーで圧力制御が可能である。
以上、本発明の実施形態に係る化学蓄熱システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、アンモニア配管に、更に、圧力調節機構が設けられていてもよい。圧力調整機構としては、外力により第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器30との間のアンモニア圧の差を更に大きくする機能を有する手段を用いることができ、具体的には、圧送ポンプや圧縮機(コンプレッサー等)等、公知の手段を用いることができる。このように、バルブに加え、補助的に圧力調整機構を設け、この圧力調整機構を作動させることにより、アンモニアの輸送(即ち、熱の輸送)をより効果的に行うことができる。
また、本発明に係る熱輸送装置を、化学蓄熱システムに適用した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、化学蓄熱システム以外の熱輸送装置に適用してもよい。