JP6786831B2 - ガス分離ポンプ、熱輸送装置、及びガス分離装置 - Google Patents
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Description
また、近年の地球環境の保全を図る観点から、水素の燃料としての利用が注目され、急速に進展しつつある。一方、燃焼ガス等の様々な排ガス及び副生ガスには、二酸化炭素が含まれていることが多く、地球環境の保全等の観点からは、二酸化炭素の安易な大気中への放出を減らし、かつ、二酸化炭素を選択的に分離して、目的とするガス成分を単離したり、二酸化炭素を分離、回収する等の技術が期待される。
すなわち、前記目的を達成するため、第1の発明は、
<1> 一対の電極と、前記一対の電極の一方と電気的に接続された第1の電解質膜、及び前記一対の電極の他方と電気的に接続され、かつ、前記第1の電解質膜と電気的に直列に接続された第2の電解質膜を含むガス分離部と、前記第1の電解質膜に接続された前記一方の電極に混合ガスを供給するガス供給部と、電圧印加により前記ガス分離部で分離され、かつ、前記第2の電解質膜より排出された、前記混合ガス中の第1ガス成分を流通する第1のガス流通部と、電圧印加により前記ガス分離部で分離され、前記第1の電解質膜及び第2の電解質膜間より排出された、前記混合ガス中の第2ガス成分を流通する第2のガス流通部と、を備えたガス分離ポンプである。
ガス供給部から供給された2種類のガス成分A及びBを混合した混合ガスを、電圧印加した電極対の一方の電極へ接触させると、一方の電極において電気化学的な反応が進行し、一方の電極と電気的に接続された第1の電解質膜を透過可能なイオン(AB+又はAB−)が生成される。生成されたAB+イオン又はAB−イオンは、印加電圧に応じて第1の電解質膜を移動する。
次に、第1の電解質膜と第2の電解質膜との界面にて、下記の反応a)又はb)が進行し、ガス成分Bは系外となる第2のガス流通部へ放出される。
反応a): AB+ → A+ + B
反応b): AB− → A− + B
この際、ガス成分Bは、電気化学的な反応を駆動力として排出されるため、第2のガス流通部においてガス成分Bは、昇圧状態とされる。
さらに、第1の電解質膜と電気的に直列に接続された第2の電解質膜は、例えばA+イオン又はA−イオンのみを透過できるため、膜界面で生成されたA+イオン又はA−イオンは、印加電圧に応じて第2の電解質膜を透過する。そして、電極対の他方の電極における電気化学反応によってガス成分Aとなり、ガス成分Aは、系外となる第1のガス流通部へ放出される。この際にも、ガス成分Aは、電気化学的な反応を駆動力として排出されるため、第1のガス流通部においてガス成分Aは、昇圧状態とされる。
なお、第1の電解質膜と第2の電解質膜とは、互いに接触して重ねられた積層状態でもよいし、第1の電解質膜と第2の電解質膜との間に他の層を介して電気的に接続された積層状態とされてもよい。
また、水素ガス及びアンモニアガスを含む混合ガスを用いることが好ましい。
NH3 + 0.5H2 → NH4 + + e−
生成されたNH4 +イオンは、印加電圧に応じて、第1の電解質膜を移動する。
次に、第1の電解質膜と第2の電解質膜との界面にて下記の反応が進行し、NH3ガスは系外となる第2のガス流通部へ放出される。この際、NH3ガスは電気化学的な反応を駆動力として排出されるため、第2のガス流通部において昇圧状態とされる。そのため、昇圧されたNH3ガスの外部への供給が可能である。
NH4 + → NH3 + H+
さらに、水素イオン(H+イオン)は、印加電圧に応じて第2の電解質膜を透過し、電極対の他方の電極において電気化学反応によりH2ガスとなり、H2ガスは系外となる第1のガス流通部へ放出される。
2H+ + 2e− → H2
この際にも、H2ガスは電気化学的な反応を駆動力として排出されるため、第1のガス流通部において昇圧状態とされる。そのため、昇圧されたH2ガスの外部への供給が可能である。
CO2 + 0.5O2 + e− → CO3 2−
生成されたCO3 2−イオンは、印加電圧に応じて、第1の電解質膜を移動する。
次に、第1の電解質膜と第2の電解質膜との界面にて下記の反応が進行し、CO2ガスは系外となる第2のガス流通部へ放出される。この際、CO2ガスは電気化学的な反応を駆動力として排出されるため、第2のガス流通部において昇圧状態とされる。そのため、昇圧されたCO2ガスの外部への供給が可能である。
CO3 2− → CO2 + O2−
さらに、酸素イオン(O2−イオン)は、印加電圧に応じて第2の電解質膜を透過し、電極対の他方の電極において電気化学反応によりO2ガスとなり、O2ガスは系外となる第1のガス流通部へ放出される。
2O2− → O2 + 2e−
この際にも、O2ガスは電気化学的な反応を駆動力として排出されるため、第1のガス流通部において昇圧状態とされる。そのため、昇圧されたO2ガスの外部への供給が可能である。
<3> 前記<2>に記載のガス分離ポンプにおいて、第1の電解質膜及び第2の電解質膜が互いに接触している場合、第1の電解質膜及び第2の電解質膜の間(例えば接触界面)に、前記第2ガス成分を排出する流路を有している形態が好ましい。
<4> 第2の発明である熱輸送装置は、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが固定化されるときに放熱する蓄熱材が収納された2つ以上の反応器と、前記2つ以上の反応器と接続された、前記第1の発明であるガス分離ポンプと、を備え、前記2つ以上の反応器間に生じたアンモニア圧の差を利用してアンモニアを前記反応器の一方から他方に輸送することにより熱を輸送する。
第2の発明は、第1の発明であるガス分離ポンプを備えることで、アンモニアガスを昇圧した状態で利用することが可能になり、熱輸送装置の増熱効果を飛躍的高めることができる。
第2のガス流通部には、分岐部位を有することにより分岐部位に弁を有してもよい。第2のガス流通部が管材である場合、管が分岐管を有し、分岐管に弁が設けられた形態でもよい。第2のガス流通部である第2のガス流通管が、例えば弁を有する2つの分岐管を有する場合、2つの分岐管の一方がガス供給部と接続され、他方が第1の流通部と接続されていることにより、第2のガス流通部の弁の開度と2つの分岐管の弁の開度とを調節してアンモニアの差圧を調節する形態でもよい。
これにより、アンモニア圧の差(差圧)をより効果的に保持できるので、熱輸送性をより向上させることができる。すなわち、弁を閉じることによりアンモニア圧の差を長時間保持することができ、弁を開けることによりアンモニアを輸送し、蓄熱した熱を効率よく利用することができる。
すなわち、物理吸着材と比較してアンモニアの固定化及び脱離に要する熱量が大きい性質を有する化学蓄熱材と、化学蓄熱材と比較してアンモニアの固定化及び脱離に要する熱量が小さい性質を有する物理吸着材と、を用いる。このため、アンモニアの固定化及び脱離に要する熱量の差を利用して、小さな熱入力で大きな熱出力を得ることができる。
<9> 第3の発明は、前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の第1の発明であるガス分離ポンプを備え、混合ガス中の炭酸ガスを分離する炭酸ガス分離装置である。
第3の発明は、第1の発明であるガス分離ポンプを備えていることで、少なくとも炭酸ガス及び酸素ガスを含む混合ガスから炭酸ガス(二酸化炭素)を選択的に分離することが可能である。
また、本発明によれば、増熱効果の高い熱輸送装置が提供される。
さらに、本発明によれば、炭酸ガス分離能の高い炭酸ガス分離装置が提供される。
第1実施形態のガス分離ポンプは、水素ガス(以下、「H2ガス」とも表記する。)とアンモニアガス(以下、「NH3ガス」とも表記する。)とを混合して含む混合ガスを用い、混合ガスから水素ガス及びアンモニアガスを分離し、かつ、それぞれ昇圧された分離生成ガスとして外部に排出するものである。
H2ガス及びNH3ガスを含む混合ガスがガス供給管2を通じて供給されると、供給された混合ガスは、電圧印加された電極対の一方である電極17と接触し、電極17における電気化学的な反応によって下記の反応式(1)のように、電極17と電気的に接続されたNH4 +伝導性電解質膜12を透過可能なNH4 +イオンが生成される。
反応式(1):NH3 + 0.5H2 → NH4 + + e−
反応式(3):NH4 + → NH3 + H+
反応式(2):H+ + e− → H2
混合ガスには、例えば、水素ガス及びアンモニアガスを含む混合ガス、炭酸ガス及び酸素ガスを含む混合ガス、等が挙げられる。ガス分離部が本実施形態のようにNH4 +伝導性電解質膜及びH+伝導性電解質膜を有する場合には、水素ガス及びアンモニアガスを含む混合ガスが適している。また、ガス分離部が後述の第2実施形態のようにCO3 2−伝導性電解質膜及びO2−伝導性電解質膜を有する場合には、炭酸ガス及び酸素ガスを含む混合ガスが適している
また、これらの混合ガスは、2種類の被分離ガスを含んでいれば、さらに他のガス成分が含まれていてもよい。
上記の通り、NH4 +イオンがNH4 +伝導性電解質膜及びH+伝導性電解質膜の界面に達すると、膜界面における電気化学反応によってNH4 +イオンはNH3ガスとH+イオンとに変化するため、NH4 +伝導性電解質膜は、NH4 +イオン伝導性を有していれば後述のH+伝導性電解質膜13と同材質の膜が用いられてもよい。
凹凸部は、ガス供給管2の直径方向において、断面が図2に示す凹凸構造を有する複数の溝が所定の間隔をおいて配列された構造を有していてもよい。この場合、生成された分離ガス(本実施形態ではNH3ガス)は、溝を通じて図1の混合ガス流通方向に対して左側に接続されたアンモニアガス流通管6へ向かって排出されることになる。
印加される電圧は、ガス分離膜を透過するイオンの生成が可能であれば、特に制限はない。
例えば、H+伝導性電解質膜については、50℃〜80℃程度が好ましく、60℃〜70℃がより好ましい。
NH4 +伝導性電解質膜については、50℃〜80℃程度が好ましく、60℃〜70℃がより好ましい。
第2実施形態のガス分離ポンプは、二酸化炭素ガス(炭酸ガス;以下、「CO2ガス」とも表記する。)と酸素ガス(以下、「O2ガス」とも表記する。)とを混合して含む混合ガスを用い、混合ガスから酸素ガス及び二酸化炭素ガスを分離し、かつ、それぞれ昇圧された分離生成ガスとして外部に排出するものである。
O2ガス及びCO2ガスを含む混合ガスがガス供給管2を通じて供給されると、供給された混合ガスは、電圧印加された電極対の一方である電極17と接触し、電極17における電気化学的な反応によって下記の反応式(4)のように、電極17と電気的に接続されたCO3 2−伝導性電解質膜112を透過可能なCO3 2−イオンが生成される。
反応式(4):CO2 + 0.5O2 + 2e− → CO3 2−
反応式(6):CO3 2− → CO2 + O2−
反応式(5):2O2− → O2 + 2e−
例えば、CO3 2−伝導性電解質膜については、500℃〜800℃程度が好ましく、600℃〜700℃がより好ましい。
O2−伝導性電解質膜については、500℃〜800℃程度が好ましく、600℃〜700℃がより好ましい。
この場合、燃焼器で発生した二酸化炭素含有ガスがガス供給管2に排出され、酸素ガスが混合された混合ガスが電極17へ供給されると、上記のようにイオン化され、CO2ガスとO2ガスとが分離される。分離されたCO2ガスは炭酸ガス流通管16を通じて貯留タンクに貯留される。一方、O2ガスは、循環して再利用に供される。
燃焼器としては、自動車等の移動装置に搭載されたエンジン等の内燃機関、ボイラ、等が挙げられる。
貯留タンクとしては、気体を封入して貯めることができれば、一般に気体の貯留に使用されるものを適用することができる。
第3実施形態として、図4を参照して、ガス分離ポンプを備えた熱輸送装置(ヒートポンプ)の実施形態を説明する。第3実施形態の熱輸送装置は、既述の本発明のガス分離ポンプを搭載することで、昇圧されたアンモニアガスを所望に応じて系内に供給できるように構成されている。
なお、ガス分離ポンプ10は、第1実施形態におけるガス分離ポンプと同様であり、第1実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
また、アンモニアガス流通管6Bは、一端がアンモニアガス流通管6の配管途中で接続され、他端はガス流通管2Aと接続されている。アンモニアガス流通管6Bには、バルブV3が取り付けられており、第1の熱交換型反応器20からアンモニアが放出される場合にはバルブV3を開き(バルブV2は開状態、バルブV1は閉状態)、第2の熱交換型反応器120へNH3ガスを流通する。逆に、第2の熱交換型反応器120からアンモニアが放出される場合には、バルブV3は閉じられる(バルブV2は閉状態、バルブV1は開状態)。
このように、バルブV1とともにバルブV2、V3の開閉を調節することにより、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器120間におけるNH3ガスの相互流通が可能になっている。そして、NH3ガスの相互流通に際し、ガス分離膜を経由するので、第1の熱交換型反応器20又は第2の熱交換型反応器120に、昇圧されたNH3ガスを供給することが可能である。
この場合、NH4 +伝導性電解質膜12は、H+伝導性電解質膜として機能し、H+伝導性電解質膜13は、NH4 +伝導性電解質膜として機能する。
これにより、まず第2の熱交換型反応器120からアンモニアを放出する場合は、NH4 +イオンがNH4 +伝導性電解質膜12内を移動し、膜界面でNH3ガスを分離後、H+イオンがH+伝導性電解質膜13内を移動し、H2ガスとして排出される。逆に、第1の熱交換型反応器20からアンモニアを放出する場合は、ガス分離膜に逆電圧を印加することで、電極18で生成したNH4 +イオンはH+伝導性電解質膜13内を移動し、膜界面でNH3ガスを分離後、H+イオンがNH4 +伝導性電解質膜12内を移動し、H2ガスとして排出されることになる。
第1の熱交換型反応器20は、図5に示すように、筐体22と、筐体22に設けられた複数の熱媒体流路26と、筐体22に設けられた複数の反応室24と、各反応室24内に収納され、蓄熱材を含む積層体30と、を有して構成されている。
筐体22内では、反応室24と熱媒体流路26とが交互に配置され、かつ、2つの熱媒体流路26が最も外側となるように配置されている。反応室24と熱媒体流路26とは隔壁を隔てて互いに分離されている。これらの構成により、外部から供給される熱媒体M1と反応室24内の蓄熱材成形体との間で熱交換を行えるようになっている。この実施形態では、反応室24、熱媒体流路26は、それぞれ扁平矩形状の開口端を有する角柱状空間とされている。この実施形態では、第1の熱交換型反応器20は、反応室24の開口方向(アンモニアの流れ方向)と熱媒体流路26の開口方向(熱媒体の流れ方向)とが側面視で直交する、直行流型の熱交換型反応器として構成されている。
第1の熱交換型反応器20における反応室24や熱媒体流路26の個数には特に限定はなく、第1の熱交換型反応器20に対し入出力する熱量や、蓄熱材成形体の伝熱面の面積(反応室内壁との接触面積)を考慮して適宜設定できる。
また、筐体22の材質としては、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、等)等の熱伝導性の高く、アンモニア耐食性のある材質が好適である。
但し、本発明における積層体の構成としては、このような蓄熱材成形体/支持体/蓄熱材成形体の3層構成を少なくとも有する構成であればよく、3層構成以外にも、例えば、蓄熱材成形体と支持体とが交互に配置され、かつ、最外層が蓄熱材成形体であるその他の構成(例えば、蓄熱材成形体/支持体/蓄熱材成形体/支持体/蓄熱材成形体の5層構成、等)であってもよい。
なお、本発明において反応器に収納される蓄熱材としては、蓄熱材成形体(例えば、蓄熱材成形体32A及び32B)に限定されるものではなく粉末の蓄熱材を用いることもできるが、反応器における熱交換の効率をより向上させる観点からは、蓄熱材成形体であることが好ましい。
本発明における蓄熱材は、配位反応によりアンモニアを固定化する化学蓄熱材、及び物理吸着によりアンモニアを固定化する物理吸着材の少なくとも一方を含むことが好ましい。蓄熱材の好ましい形態の詳細については後述する。
このような支持体34として、具体的には、波型プレート又は多孔体プレートを用いることが好ましい。
支持体34として多孔体プレートを用いた場合には、多孔体プレート内をアンモニアが通過する。
支持体34として波型プレートを用いた場合には、波型プレートとの蓄熱材成形体との間に生じる隙間をアンモニアガスが通過する。
図6は、特に、支持体として波型プレート36を用いた場合における第1の熱交換型反応器20及び第1の熱交換型反応器20内に収納される積層体40を概念的に示した図である。支持体である波型プレート36以外の構成は図5と同様である。
支持体として波型プレート36を用いた場合は、積層体40における波型プレート36と蓄熱材成形体32A及び32Bとの間に生じる隙間をアンモニアが通過する(図6中の白抜き矢印の方向)。
なお、図4では、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器120の構成を見やすくするために、前記ヘッダ部材28、下記ヘッダ部材29A、下記ヘッダ部材29B、下記ヘッダ部材128、下記ヘッダ部材129A、下記ヘッダ部材129B、下記熱媒体配管27A、下記熱媒体配管27B、下記熱媒体配管127A、及び下記熱媒体配管127Bを、二点鎖線で表している。
熱媒体M1としては、エタノール等のアルコール、水、油類、これらの混合物等、熱媒体として通常用いられる流体を用いることができる。
また、図示しないが、熱輸送装置100の外部において、熱媒体M1の流通経路と熱媒体M2の流通経路とは、互いに独立している。
(放熱)
まず、第1の熱交換型反応器20に供給された熱を第2の熱交換型反応器120に輸送し、輸送された熱を第2の熱交換型反応器120から外部に放熱する熱利用の一例について説明する。この一例では、第1の熱交換型反応器20を熱入力側の反応器とし、第2の熱交換型反応器120を熱出力側の反応器としている。
第1の熱交換型反応器20には、所定の温度(例えば−30℃〜10℃)に維持された熱媒体M1を流通させることにより、熱を供給する。上記所定の温度の熱媒体M1の流通は、放熱及び再生を通じて維持しておくことが好ましい。
第2の熱交換型反応器120には、外部の熱利用対象に向けて熱を放出するための熱媒体M2を流通させる。
この状態では、第1の熱交換型反応器20側のアンモニア圧が第2の熱交換型反応器120側のアンモニア圧よりも高くなっている。バルブV1、V2及びV3を閉じた状態を維持することで、第1の熱交換型反応器20側と第2の熱交換型反応器120側とのアンモニア圧の差を長時間保持することができる。
そして、アンモニアガス(NH3ガス)は、アンモニアガス流通管6Aを通じてガス流通管4Aに入り、循環供給される水素ガスが混合されて電極18に達し、電気化学反応によりNH3ガスとH2ガスに分離される。NH3ガスは、アンモニアガス流通管6に昇圧状態で排出された後、アンモニアガス流通管6Bを流通して第2の熱交換型反応器120に流入する。このとき、H2ガスは、ガス流通管2Aを通じて、再びガス流通管4A側に循環され、混合ガスの生成に供される。昇圧されたNH3ガスが第2の熱交換型反応器120に用いられるので、増熱効果が高い。
上記アンモニアの輸送により第2の熱交換型反応器120に到達したアンモニアは、第2の熱交換型反応器120における反応室124内の蓄熱材に、発熱反応により固定化される。この発熱反応により熱媒体M2が加熱され、加熱された熱媒体M2が外部の加熱対象に向けて放熱される。
上記の放熱が継続されることにより第1の熱交換型反応器20内のアンモニアが減少した場合には、系内のアンモニアを再び第1の熱交換型反応器20側に集め、第1の熱交換型反応器20における蓄熱材成形体32A及び32Bにアンモニアを固定化させることにより、熱輸送装置100を初期状態に再生させる。
再生の具体的な方法の例としては、バルブV2及びV3を閉じてバルブV1を開いた状態で、第1の熱交換型反応器20への上記所定の温度(例えば−30℃〜10℃)の熱媒体M1の流通を維持したまま、第2の熱交換型反応器120における熱媒体流路126に高温(例えば、60℃〜100℃)に維持された熱媒体M2を流通させる方法が好適である。
これにより、吸熱反応によって第2の熱交換型反応器120からアンモニアが脱離するとともに、第2の熱交換型反応器120側から第1の熱交換型反応器20側にアンモニアが輸送される。このとき、ガス分離膜には、放熱時とは逆の電圧を印加する。吸熱反応により脱離したアンモニアには、循環供給される水素ガスが混合され、生成した混合ガスは、ガス流通管2Aを通じて電極17に達し、電気化学反応によりNH3ガスとH2ガスに分離される。NH3ガスは、アンモニアガス流通管6に昇圧状態で排出された後、そのまま第1の熱交換型反応器20に流入する。このとき、H2ガスは、ガス流通管4Aを通じて、再びガス流通管2A側に循環され、混合ガスの生成に供される。昇圧されたNH3ガスが第2の熱交換型反応器120に用いられるので、増熱効果が高い。
この発熱反応の維持は、例えば、第1の熱交換型反応器20への上記所定の温度(例えば−30℃〜10℃)の熱媒体M1の流通を維持することにより行われる。
なお、上記放熱及び再生では、反応器への熱の供給を熱媒体の流通により行う例を示したが、反応器への熱の供給は、不図示の温度調節機構によって行ってもよい。
図7は、アンモニア(NH3)及び水(H2O)の飽和蒸気圧曲線である。図7に示すように、アンモニアは、水と比較して比較的低温においても高い飽和蒸気圧を示す。例えば、−30℃〜0℃の範囲においても大気圧レベル以上のアンモニア蒸気圧を確保できる。このため、本発明の熱輸送装置によれば比較的低温(例えば、−30℃〜+30℃)の条件下においても、アンモニア蒸気の配管内流動に伴う圧力損失を抑えることができるので、熱輸送性に優れる。例えば、本実施形態の熱輸送装置によれば、長い距離(例えば1000mm〜5000mm、更には2000mm〜5000mm)の熱輸送を行うことができる。
次に、本発明における反応器に収納される蓄熱材の好ましい範囲について説明する。
前記蓄熱材は、配位反応によりアンモニアを固定化する化学蓄熱材、及び物理吸着によりアンモニアを固定化する物理吸着材の少なくとも一方を含むことが好ましい。
前記化学蓄熱材を含む蓄熱材を用いることで、反応器における蓄熱密度をより高くすることができるので、熱輸送装置全体としての蓄熱密度をより高くすることができる。従って、本発明における2つ以上の反応器のうち少なくとも1つは、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが配位反応により固定化されるときに放熱する化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された反応器であることが好ましい。また、化学蓄熱材は物理吸着材と比較して種類による蓄熱温度の差が大きいことから(後述の図8参照)、化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された反応器を用いることで、化学蓄熱材の種類の選定により熱輸送装置の作動温度や作動アンモニア圧等の動作条件の選択の幅を広げることができる。したがって、熱利用の対象に合わせ、作動アンモニア圧や作動温度を広い範囲から選定できる。
一方、前記物理吸着材を含む蓄熱材を用いることで、反応器において、アンモニアの固定化及び脱離に要する熱量をより小さくすることができるので、熱輸送装置全体としての熱輸送の制御性がより向上する。従って、本発明における2つ以上の反応器のうちの少なくとも1つは、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが物理吸着により固定化されるときに放熱する物理吸着材を含む蓄熱材が収納された反応器であることも好ましい。
本発明において、2つ以上の反応器の具体的な組み合わせとしては、(1)化学蓄熱材を含む反応器と化学蓄熱材を含む反応器とを少なくとも有する組み合わせ(以下、「組み合わせ(1)」ともいう)、(2)物理吸着材を含む反応器と物理吸着材を含む反応器とを少なくとも有する組み合わせ(以下、「組み合わせ(2)」ともいう)、又は(3)物理吸着材を含む反応器と化学蓄熱材を含む反応器とを少なくとも有する組み合わせ(以下、「組み合わせ(3)」ともいう)が好ましく、上記の組み合わせ(1)又は組み合わせ(3)がより好ましい。
特に、上記の組み合わせ(1)又は組み合わせ(3)では、アンモニアの固定化及び脱離に要する熱量が相対的に大きい蓄熱材を含む反応器と、アンモニアの固定化及び脱離に要する熱量が相対的に小さい蓄熱材を含む反応器と、を組み合わせることがより容易となる。このため、蓄熱材の組み合わせの選択により、反応器間での反応熱量の差により、小さな熱入力で大きな熱出力を得ることができる。
上記の組み合わせ(3)によれば、熱交換装置全体としては、化学蓄熱材を含む反応器によってより高い蓄熱密度が得られるとともに、物理吸着材を含む反応器によってアンモニアの固定化及び脱離の制御をより容易とすることができる。
更に、上記の組み合わせ(3)では、物理吸着材と比較してアンモニアの固定化及び脱離に要する熱量が大きい性質を有する化学蓄熱材と、化学蓄熱材と比較してアンモニアの固定化及び脱離に要する熱量が小さい性質を有する物理吸着材と、を用いる。このため、反応器間での反応熱量の差を利用して、物理吸着材を含む反応器側に小さい熱量の熱を供給する場合においても、化学蓄熱材を含む反応器側でより大きな熱量を放熱することができる。
例えば、アンモニア1molの固定化及び脱離に要する熱量は、化学蓄熱材(例えば、LiCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、MnCl2、CoCl2、NiCl2、等)では40kJ/mol〜60kJ/molであるのに対し、物理吸着材(例えば、活性炭、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物、等)では、20kJ/mol〜30kJ/molである。
次に、前記化学蓄熱材の好ましい形態について更に詳細に説明する。
前記化学蓄熱材としては、反応器における蓄熱密度をより高くする観点からは、金属塩化物が好ましく、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、又は遷移金属の塩化物がより好ましく、LiCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、MnCl2、CoCl2、又はNiCl2が特に好ましい。
前記金属塩化物は、一種単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
蓄熱温度(℃)は、各金属塩化物について、アンモニアを脱離できる温度の一例を示している。蓄熱密度(kJ/kg)は、各金属塩化物1kg当たりがアンモニアの脱離により蓄熱できる熱量(kJ)を示している。
本実施形態においては、作動アンモニア圧や作動温度に合わせて、金属塩化物の種類を適宜選定することができる。従って、熱利用の対象に合わせ、作動アンモニア圧や作動温度を選定できる幅が広がる。
例えば、熱輸送装置の作動温度を低くする場合には、BaCl2、CaCl2、SrCl2を選択することができ、熱輸送装置の作動温度を高くする場合には、NiCl2を選択することができる。
本発明における蓄熱材が前記化学蓄熱材を含む場合、該蓄熱材は前記化学蓄熱材以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、アルミナ、シリカ等のバインダー成分、カーボンファイバー等の熱伝導補助材、等が挙げられる。
但し、本発明における蓄熱材が前記化学蓄熱材を含む場合において、蓄熱密度をより向上させる観点からは、蓄熱材中における前記化学蓄熱材の含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
前記成形の圧力としては、例えば、20MPa〜100MPaが挙げられ、20MPa〜40MPaが好ましい。
次に、前記物理吸着材の好ましい形態について更に詳しく説明する。
前記物理吸着材としては、多孔体を用いることができる。
前記多孔体としては、物理吸着によるアンモニアの固定化及び脱離の反応性をより向上させる観点からは、10nm以下の細孔を持つ多孔体が好ましい。
前記細孔のサイズの下限としては、製造適性等の観点から、0.5nmが好ましい。
前記多孔体としては、同様の観点より、平均1次粒子径50μm以下の1次粒子が凝集して得られた1次粒子凝集体である多孔体が好ましい。
前記平均1次粒子径の下限としては、製造適性等の観点から、1μmが好ましい。
前記活性炭としては、BET法による比表面積が800m2/g以上2500m2/g以下(より好ましくは1800m2/g以上2500m2/g以下)である活性炭が好ましい。
前記粘土鉱物としては、非架橋の粘土鉱物であっても、架橋された粘土鉱物(架橋粘土鉱物)であってもよい。前記粘土鉱物としてはセピオライト等が挙げられる。
本発明においては、作動アンモニア圧や作動温度に合わせて、物理吸着材(好ましくは前記多孔体)の種類を適宜選定することができる。
物理吸着によるアンモニアの固定化及び脱離の反応性をより向上させる観点からは、前記物理吸着材は活性炭を少なくとも含むことが好ましい。
前記水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、トリメチルセルロース、等が挙げられる。
その他の成分としては、カーボンファイバー等の熱伝導補助材、等が挙げられる。
前記成形の圧力としては、例えば、20MPa〜100MPaが挙げられ、20MPa〜40MPaが好ましい。
次に、前記熱交換型反応器における反応室(例えば、前記第1の熱交換型反応器20における反応室24、及び、前記第2の熱交換型反応器120における反応室124)の好ましい形態について、前記第1の熱交換型反応器20における反応室24を例として説明する。
前記第1の熱交換型反応器20における反応室24は、内壁が前記蓄熱材成形体32A及び32Bとの接触部分を有していることが好ましい。より好ましくは、反応室24の内壁と、前記蓄熱材成形体32A及び32Bにおける一方の主面と、が接触している形態(即ち、蓄熱材成形体が、反応室の内壁と、支持体表面と、によって挟持されている形態)である。
即ち、蓄熱材成形体32A及び32Bが、それぞれ、反応室24の内壁及び支持体34の表面との接触を保った状態となっていることが好ましい。
反応室24の内壁が前記蓄熱材成形体32A及び32Bとの接触部分を有する構成によれば、反応室24の内壁を通じ、第1の熱交換型反応器と蓄熱材成形体との間での熱交換をより効果的に行うことができる。また、一般に、蓄熱材成形体を繰り返し使用すると、アンモニアの固定化及び脱離により蓄熱材成形体が体積膨張収縮を繰り返し、蓄熱材成形体に割れ(クラックを含む)や微粉化が生じる場合があるが、上記構成によれば、この繰り返し使用時における蓄熱材成形体の割れ(クラックを含む)や微粉化をより効果的に抑制できる。
前記第2の熱交換型反応器120における反応室124の好ましい形態についても、前記第1の熱交換型反応器20における反応室24と同様である。
その他の反応器としては、例えば、第1の熱交換型反応器20及び第2の熱交換型反応器120と同様に、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが固定化されるときに放熱する蓄熱材が収納された反応器を用いることができる。
特に、混合ガス中の水素ガス、炭酸ガス、アンモニアガス等を分離し、昇圧状態のガスとする場合に好適である。
4・・・水素ガス流通管
6、6A、6B・・・アンモニアガス流通管
10・・・ガス分離ポンプ
12・・・NH4 +伝導性電解質膜
13・・・H+伝導性電解質膜
13C・・・流路
15・・・ガス分離膜
16・・・炭酸ガス流通管
17、18・・・電極
20・・・第1の熱交換型反応器
112・・・CO3 2−伝導性電解質膜
113・・・O2−伝導性電解質膜
120・・・第2の熱交換型反応器
30、40、130・・・積層体
32A、32B・・・蓄熱材成形体
100・・・熱輸送装置
Claims (12)
- 一対の電極と、
前記一対の電極の一方と電気的に接続された第1の電解質膜、及び前記一対の電極の他方と電気的に接続され、かつ、前記第1の電解質膜と電気的に直列に接続された第2の電解質膜を含むガス分離部と、
前記第1の電解質膜に接続された前記一方の電極に混合ガスを供給するガス供給部と、
電圧印加により前記ガス分離部で分離され、かつ、前記第2の電解質膜より排出された、前記混合ガス中の第1ガス成分を流通する第1のガス流通部と、
電圧印加により前記ガス分離部で分離され、前記第1の電解質膜及び前記第2の電解質膜間から排出された、前記混合ガス中の第2ガス成分を流通する第2のガス流通部と、
を備え、
前記第1の電解質膜及び前記第2の電解質膜がそれぞれスルホン酸基を有する高分子膜であるか、又は前記第1の電解質膜及び前記第2の電解質膜がそれぞれ酸素イオン伝導セラミックスの膜であり、
前記第1の電解質膜及び前記第2の電解質膜の間に、前記第2ガス成分を排出する流路を有する、ガス分離ポンプ。 - 前記第1の電解質膜が、アンモニウムイオンが伝導する電解質膜であり、前記第2の電解質膜が、水素イオンが伝導する電解質膜である請求項1に記載のガス分離ポンプ。
- 前記混合ガスは、水素ガス及びアンモニアガスを含む請求項2に記載のガス分離ポンプ。
- 前記第1の電解質膜が、炭酸イオンを伝導する電解質膜であり、前記第2の電解質膜が、酸素イオンを伝導する電解質膜である請求項1に記載のガス分離ポンプ。
- 前記混合ガスは、炭酸ガス及び酸素ガスを含む請求項4に記載のガス分離ポンプ。
- 前記第1の電解質膜及び前記第2の電解質膜は、互いに接触されて配置されている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のガス分離ポンプ。
- アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが固定化されるときに放熱する蓄熱材が収納された2つ以上の反応器と、
前記2つ以上の反応器と接続された、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のガス分離ポンプと、
を備え、
前記2つ以上の反応器間に生じたアンモニア圧の差を利用してアンモニアを前記反応器の一方から他方に輸送することにより熱を輸送する熱輸送装置。 - 前記第2のガス流通部に弁を有し、前記弁の開度の調節によりアンモニア圧の差を調節する請求項7に記載の熱輸送装置。
- 前記2つ以上の反応器の少なくとも1つは、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが配位反応により固定化されるときに放熱する化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された反応器である請求項7又は請求項8に記載の熱輸送装置。
- 前記2つ以上の反応器の少なくとも1つは、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが物理吸着により固定化されるときに放熱する物理吸着材を含む蓄熱材が収納された反応器である請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の熱輸送装置。
- 前記2つ以上の反応器は、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが配位反応により固定化されるときに放熱する化学蓄熱材を含む蓄熱材が収納された反応器と、アンモニアが脱離するときに蓄熱しアンモニアが物理吸着により固定化されるときに放熱する物理吸着材を含む蓄熱材が収納された反応器と、を含む請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の熱輸送装置。
- 請求項4又は請求項5に記載のガス分離ポンプを備え、混合ガス中の炭酸ガスを分離する炭酸ガス分離装置。
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