JP2015183307A - ポリビニルアルコール系繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】 補強効率に優れた補強用繊維、および該繊維で補強された成形体を提供する。【解決手段】繊維表面に繊維の長さ方向に沿った筋状の凹部を有し、下記(1)〜(4)をともに満足するポリビニルアルコール系繊維。(1)前記筋状の凹部の平均深さが0.05〜2μmであること(2)前記筋状の凹部の開口部の平均幅が0.1〜4μmであること(3)前記筋状の凹部の存在比が5%以上であること(4)破断強度が8cN/dtex以上であること【選択図】図1

Description

本発明は、マトリクスの補強効果に優れた補強用繊維に関する。
従来、セメント補強用繊維として石綿が使用されてきたが、近年の環境問題から石綿に替わるセメント補強用繊維として種々の無機繊維、合成繊維の使用が提案され、合成繊維としてはポリビニルアルコール系繊維(以下PVA系繊維と称する場合がある)、ポリプロピレン系繊維、アクリル系繊維などが主として用いられてきている。中でもPVA系繊維は耐アルカリ性が良好で比較的機械的物性も優れているため好ましく用いられている。
補強用繊維に要求される性能は、第一に強度・弾性であるといわれている。繊維が充分な強度・弾性を有していない場合には、得られる繊維補強成形物は当然のことながら強靭性を有しないこととなる。
第二に要求される性能は、マトリクスとの接着性とされている。補強用繊維とマトリクスの接着が不十分な場合、外部からの応力に対し補強用繊維の強度・弾性が充分に利用されず、繊維補強成形体は補強効果が得られないままクラックや破壊を生じることになる。繊維とマトリクスとの接着性を向上させるには繊維の表面積を大きくすることが有効であり、具体的には繊維断面の扁平化、異型化、細デニール化等の方法が検討されている。
高強度のPVA系繊維を得る方法として種々の検討が行われている(例えば、特許文献1〜4)。しかしながらこれらの方法で得られる繊維は、強度・弾性が大幅に改善されているものの、均質であるため断面が円形に近く、表面積が小さいものである。一般に補強用繊維の強度が増すにつれ限界繊維長が長くなるため、応力を受けたときに抜けが生じやすくなる。これまで検討されてきた繊維も、限界繊維長が長くかつ表面積が小さいため、繊維の強度の割には思ったほど補強効果が得られない。
一方、繊維の表面積を大きくする手段として、異型ノズルを用いて紡糸し繊維断面を異型化する方法があるが、この方法で得られた繊維は機械的物性に劣り繊維補強成形体としては満足のいくものが得られにくい。また繊維の繊度を小さくすることによっても単位量当たりの表面積を大きくすることができるが、この場合マトリクス中での分散性が悪化するため繊維補強成形体の機械的物性は向上しない。
繊維断面を異型化する具体的な方法として、陽イオン交換容量40meq/100g以上の層状ケイ酸塩を0.05重量%以上含み、断面周長比0.85以上、繊維横断面の最大内接円の直径/最小外接円の直径が0.35以下のポリビニルアルコール系繊維が開示されている(特許文献5)。これは、層状ケイ酸塩を添加することで繊維断面が大きく異型化するというものであるが、これも前述の通り、得られた繊維は機械的物性に劣り繊維補強成形体としては満足のいくものが得られにくい。その理由としては、異型断面では繊維の構造に斑があり、紡糸・延伸工程で均一な構造形成及び変形がなされにくく、結果として延伸倍率が低いものしか得られなくなり、機械的強度に劣るものとなってしまうことが考えられる。また、これを補強用繊維としてマトリクス中に導入する際も、異型断面であるがゆえに、混練・攪拌等による物理的衝撃に対して応力集中が起こりやすくなり、結果としてダメージを受けやすく、機械的物性が低下しやすくなる。
また、繊維の表面積を大きくする別の形態として、繊維表面に繊維軸方向に伸びるひだが存在する繊維があり(特許文献6)、90kg/mm以上の強度、ひだとして巾が0.5〜2ミクロンメーター、高さあるいは深さが0.5〜1ミクロンメーターのひだが少なくとも存在することを特徴とするポリビニルアルコール系繊維とそれを含む繊維補強セメント成形品が開示されている。しかし、繊維としてある程度十分な強度を有しているものの、繊維補強セメント成形品としては石綿など別の補強用材料も併せて用いており、繊維のみによる補強効果については更なる改善の余地があった。
以上の如く、これまで補強用繊維に要求される2つの性能、すなわち強度・弾性および接着性を両立させることは難しく、従って得られる繊維補強成形体の機械的物性も十分満足できるものではなかった。
特公昭48−32623号公報 特公昭53−1368号公報 特公昭60−126312号公報 特開昭61−108712号公報 特開平10−53918号公報 特公昭62−32144号公報
本発明は、優れた強度・弾性および接着性を有し、補強効率に優れた補強用繊維、および該繊維で補強された成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、極端に繊維を異型断面化することなく、繊維表面に筋状の凹部を導入することによって、強度と弾性を維持しつつ、マトリクスとの接着性を高めようとする際、該凹部の存在比が特に重要であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、繊維表面に繊維の長さ方向に平行な筋状の凹部を有し、下記(1)〜(4)をともに満足するポリビニルアルコール系繊維である。
(1)前記筋状の凹部の平均深さが0.05〜2μmであること
(2)前記筋状の凹部の開口部の平均幅が0.1〜4μmであること
(3)前記筋状の凹部の存在比が5%以上存在であること
(4)破断強度が8cN/dtex以上であること
前記ポリビニルアルコール系繊維は、結晶化度が40%以上、配向度が60%以上であってもよい。
前記ポリビニルアルコール系繊維は、固化性の高い固化浴で固化させる工程と、その後、固化性の低い固化浴で固化させる工程を含む製造方法によって製造されてもよい。
前記ポリビニルアルコール系繊維は、アスペクト比が2以上の化合物を紡糸原液中に含む製造工程によって製造されてもよい。
本発明によれば、繊維の強度と弾性を維持しつつ、マトリクスとの接着性を高めることができるため、補強効率に優れた補強用繊維、および該繊維で補強された成形体を提供することができる。
本発明は、繊維表面に繊維の長さ方向に平行な筋状の凹部を有するポリビニルアルコール系繊維であることが重要である。繊維表面に繊維の長さ方向に平行な筋状の凹部を有することによって、接着面積を上げることができ、マトリクスとの接着性を向上させることができる。
前記凹部の平均深さは0.05〜2μmであることが重要である。0.05μm未満では、マトリクスとの接着面積が小さく、効果的にマトリクスを補強できなくなることがある。また2μmより大きいと、繊維強度が低下する場合がある。平均深さは、0.08〜1.9μmであることが好ましく、0.1〜1.8μmであることがより好ましく、0.2〜1.7μmであることが更に好ましい。
凹部の平均深さは後述の方法で求めることができる。
前記凹部の開口部の平均幅は0.1〜4μmであることが重要である。0.1μm未満の場合、接着面積が小さくなるばかりでなく、例えばセメント系材料の場合CSHゲル(硬化セメントペースト)が凹部に効率的に侵入・結合しにくいため、接着性が十分得られないことがある。また凹部の平均幅が4μmより大きいと、繊維強度が低下する場合がある。平均幅は、0.2〜3.9μmであることが好ましく、0.3〜3.8μmであることがより好ましく、0.4〜3.7μmであることが更に好ましい。
凹部の開口部の平均幅は後述の方法で求めることができる。
本発明によるPVA系繊維は、前記凹部の存在比が5%以上であることが重要である。凹部が5%未満の場合、接着面積が小さくなる。凹部の存在比は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましい。また、前記凹部の存在比は80%以下であることが好ましく、60%以下である事がより好ましく、50%以下であることが更に好ましく、40%以下であることが特に好ましい。
凹部の存在比は後述の方法で求めることができる。
本発明のPVA系繊維の結晶化度は40%以上、配向度は60%以上であることが好ましい。結晶化度が40%未満では、繊維の機械特性、耐湿熱性に劣る場合がある。また、配向度が60%未満では、耐熱性、機械特性、耐湿熱性に劣る場合がある。結晶化度は50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。また、配向度は、機械特性の観点から、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが更に好ましい。
結晶化度、配向度は後述の方法で求めることができる。
本発明のPVA系繊維の破断強度は8cN/dtex以上であることが好ましい。破断強度が8cN/dtex未満の場合には、該繊維を添加した成形体において、マトリクスと繊維とが十分に接着している場合でも繊維そのものが破断してしまうので曲げ強度等において十分な補強効果が得られない場合がある。破断強度は、9cN/dtex以上であることがより好ましく、10cN/dtex以上であることが更に好ましく、12cN/dtex以上であることが特に好ましく、13cN/dtex以上であることが殊更に好ましい。
本発明のPVA系繊維の破断伸度は3〜20%であることが好ましい。破断伸度が3%未満では、該繊維を添加した成形体において、耐衝撃強度が低くなるばかりでなく、繊維の製造において延伸工程性が悪化する場合がある。また破断伸度が20%を超えると、耐衝撃性は向上するものの曲げ強度等において十分な補強効果が得られない場合がある。破断伸度は4〜15%であることがより好ましく、5〜10%であることが更に好ましい。
本発明のPVA系繊維の断面形状は本発明の効果に影響を与えない限り、特に制限されるものではないが、機械的強度の観点から、凹部を有する円形または略円形であることが好ましい。断面形状の指標として、平均断面充実度を算出した場合、60〜99%であることが好ましく、65〜98%であることがより好ましく、70〜97%であることが更に好ましい。断面充実度は、繊維の断面積をS1、その繊維を取り囲む最小円の面積をS2とし、以下の式により算出される。
断面充実度(%)=(S1/S2)×100
平均断面充実度は、より具体的には、後述の方法で求めることができる。
図1に本発明のPVA系繊維の繊維側面写真を、また図2に同繊維の断面写真を示す。図1に示すとおり、本発明のPVA系繊維の表面には、筋状の凹部が繊維の長さ方向に平行に存在している。また図2に示すとおり、各凹部はある程度深さを持ったものでありながら、繊維断面形状は略円形であり、よって本発明のPVA系繊維は接着性が高く、かつ機械的特性が維持されている。
本発明の繊維の形態は、ショートカット、マルチフィラメント、モノフィラメント、メッシュ織物など、必要に応じた形態とすることができる。
本発明の繊維の繊度は特に限定されないが、0.1〜10000dtexであることが好ましい。スレートに配合する場合には、0.1〜100dtexであることが、モルタルに配合する場合には1〜2000dtexであることが、分散性および繊維本数に起因する補強効果の点から好ましい。コンクリートに配合する場合には、100〜10000dtexであると繊維が折れにくいため好ましい。またメッシュ織物として用いる場合には総繊度が50〜2,000dtexのマルチフィラメントヤーン、または2〜5,000dtexのモノフィラメントであることが好ましい。またショートカットとして用いる場合のアスペクト比は50〜2000であることが好ましく、150〜600であることがより好ましい。
本発明のPVA系繊維を構成するPVA系ポリマーは特に限定されないが、ポリマーの結晶性、機械的性能、難燃性等の点から、粘度平均重合度1000以上、特に1500以上とするのが好ましく、紡糸性、コストの点から5000以下とするのが好ましい。また同理由からケン化度98モル%以上、なかでも99モル%以上、特に99.5モル%以上とするのが好ましい。
PVA系ポリマーには他のモノマーが共重合されていてもよく、共重合成分としてはたとえばエチレン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニルアミン、アクリルアミド、ピバリン酸ビニル、無水マレイン酸、スルホン酸含有ビニル化合物などが挙げられる。繊維性能、難燃性能等の点からはビニルアルコールユニットを全構成ユニットの70モル%以上含有することが好ましい。
また本発明の効果を損わない範囲であれば、繊維にPVA系ポリマー以外のポリマーや他の添加剤を含んでいてもかまわない。繊維性能等の点からはPVA系ポリマーの含有量を30質量%以上/繊維、特に50質量%以上/繊維とするのが好ましい。
また本発明では、L/Dが2以上のアスペクト比を持つ化合物を、PVA系ポリマー原液中に微細分散させることで、より効率的に繊維表面に筋状の凹部を有する繊維を得ることができる。該アスペクト比を持つ化合物が微細分散された紡糸原液は、ノズルより吐出される際に吐出方向にシェアがかかるため、吐出後の繊維中では該化合物は繊維方向に異方性をもって並ぶことになる。そのため、スキン層形成、体積収縮をおこしながら固化していく過程で、該化合物の存在が体積収縮を阻害するためか、深く幅の大きな凹部を形成しやすい。
前記化合物は、効率的な凹部の形成、及び紡糸工程性の点で、平均粒子径は小さい方が好ましい。具体的には、0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.02〜9μmであることがより好ましく、0.03〜8μmであることが更に好ましい。また添加量は繊維に対して0.01〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.02〜29質量%であることがより好ましく、0.03〜28質量%であることが更に好ましい。
前記化合物は、L/Dが2以上のアスペクト比を持ち、平均粒子径が0.01〜10μmであれば何でもよいが、効果的に固化過程での体積収縮を阻害するためには硬度が高い方が好ましく、無機系の繊維状・針状・ウィスカー状フィラーや層状化合物が好ましい。具体的には、カーボンカーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの繊維状物、グラファイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカーなどのウイスカー状物、モンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、バイロサイト及びステイブンサイト等のスメクタイト系粘土化合物や、ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト、フッ素バーミキュライト等のバーミキュライト系粘土化合物、白雲母、パラゴナイト、イライト等の雲母系粘土化合物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、合成フッ素雲母(Li型四珪素フッ素雲母、Na型四珪素フッ素雲母等)などの層状化合物を例示することができ、これらは、天然物であっても合成物であってもよい。
次に本発明のPVA系繊維の製造方法を説明する。
本願発明において、繊維表面に繊維の長さ方向に平行な筋状の凹部を有するPVA系繊維を得るためには、繊維の固化の制御が重要である。表面に筋状の凹部を形成する方法としては、まず固化初期に繊維表面に薄いスキン層を形成し、次いでゆっくり体積収縮を起こさせ、表面の薄いスキン層の周長が体積収縮後の周長よりも実質的に長い状態が作られれば、表面スキン層が折りたたまれ、結果として繊維表面に凹部が形成されることとなる。例えば、紡糸原液濃度を薄くすることによって繊維の外周部と内部で固化に要する時間の差を大きくするような紡糸条件を設定する等の方法が可能であるが、紡糸原液を固化させるための固化浴の濃度を調整する方法がより好ましく選択される。
具体的には、まず表面にスキン層を形成させるため、ノズルより吐出された直後の紡糸原液を固化性の高い固化浴で固化させ、その後、紡糸筒内でゆっくり固化させる。
ゆっくり固化させる方法としては、紡糸筒内に固化性を下げる溶媒を流入させる方法や、固化性の高い固化浴中でスキン層を形成後に離浴し、次に固化性の低い固化浴中でゆっくりと固化させる方法などが挙げられる。紡糸原液の濃度は低い方が好ましく、更には、離浴速度も遅い方が好ましい。
前記要素が制御できれば、紡糸方法は特に限定されず、PVA系ポリマーを含む紡糸原液を溶液紡糸、具体的には湿式紡糸、乾湿式紡糸、乾式紡糸して製造される。紡糸原液に用いる溶媒としては、PVA系繊維の製造に際して従来から用いられている溶媒、例えば水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコールなどの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、供給性、環境負荷への影響の観点から、水及びDMSOが特に好ましい。紡糸原液中のポリマー濃度は、前述のとおり低い方が好ましいため、PVA系ポリマーの組成や重合度、溶媒によって異なるが、6〜25質量%の範囲が好ましい。本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液にはPVA系ポリマー以外にも、目的に応じて、界面活性剤、分解抑制剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤などの添加剤などが含まれていてもよい。
本発明において用いる固化浴は、紡糸原液が水溶液の場合と原液溶媒が有機溶媒の場合で異なる。
紡糸原液が水溶液の場合には、芒硝水溶液からなる固化浴を用いる。また硼酸を添加した原液については、苛性ソーダと芒硝の混合水溶液を用いる。この場合、固化は脱水によるものなので、芒硝濃度が高いほど、固化性は高くなる。固化性の高い固化浴の芒硝濃度としては200〜400g/Lであることが好ましく、210〜390g/Lであることがより好ましく、220g/L〜380g/Lであることが更に好ましい。
有機溶媒を用いた原液の場合は、固化溶媒と原液溶媒からなる混合液が好ましく、そしてその固化溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などのPVAに対して固化能を有する有機溶媒が好ましい。この場合、固化浴中の固化溶媒の比率が高いほど、固化性は高くなる。固化性の高い固化浴の固化溶媒の比率としては50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
前記の紡糸方法により得られた固化糸は、抽出・洗浄され、乾燥後延伸・熱処理される。
本発明のPVA系繊維は、破断強度を8cN/dtex以上とするために、延伸熱処理される。この延伸熱処理は、一般的には温度210℃以上、好ましくは220℃〜260℃の温度で行うのがよく、8倍以上の全延伸倍率、好ましくは10〜25倍の全延伸倍率で延伸すると、繊維の結晶化度と配向度が向上し、それに伴って繊維の機械特性が向上するので好ましい。
本発明のPVA系繊維では、用途や目的に応じ、耐熱水性を向上させることを目的としてPVA系繊維で一般的に行われているアセタール化処理やその他の架橋処理を施すこともできる。すなわち、PVA系繊維をPVA系ポリマーの水酸基と反応するホルムアルデヒド等の架橋剤を含む水溶液中で処理して、水酸基を封鎖することで繊維を疎水化することができる。
本発明のPVA系繊維はスレート、ボード、パネル等の補強、モルタル・コンクリートの補強、FRP等に広く使用できる。
また用途に応じて、例えばパルプなどの天然繊維、他のPVA系繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、炭素繊維、PPS繊維、PBO繊維などの合成繊維などの他の繊維と併用することもできる。
以下、本発明を実施例、及び比較例にてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお以下で部、%は特に断りのない限り、質量部、質量%を指す。また各種測定方法、セメント成形物の製造方法は以下の方法による。
[繊維の破断強度 cN/dtex、破断伸度 %]
JIS L1013に準拠して測定した。
[結晶化度(Xc) %]
繊維の結晶化度の測定は、Perkin Elmer社製Pyris−1型示差走査型熱量計を用いて、試料の融解エンタルピーを測定した。測定条件は、昇温速度80℃/分で行い、以下の式より重量結晶化度を算出した。なお、標準物質として、インジウムおよび鉛を用いて、融点、融解熱の補正を行った。
Xc(%)=ΔHobs/ΔHcal×100
ΔHobs:実測融解熱(J/g)
ΔHcal:完全結晶の融解熱(174.5J/g)
[配向度 %]
株式会社オリエンテック製パルス式直読粘弾性測定器DDV―5―B型を用い、繊維サンプルの繊維軸に沿った10KHzの音波の速度Cを測定し、ポリビニルアルコールのキャストフィルムから得られた無配向試料の音速Cu(2.20km/sec)と比較してMoselayの式(配向度=1―Cu2/C2)により配向度を算出した。
[繊維表面の筋状の凹部の開口部の平均幅μm、凹部の平均深さμm、凹部の存在比%]
繊維断面画像を走査型電子顕微鏡にて撮影し、画像解析ソフトでこの断面の外周に見られる凹部に対して外接するように接線を引き、その接線の長さを見かけ凹部幅W1とした。また、凹部の最底部から前記接線へ垂線を引き、この垂線長をその凹部の見かけ深さL1とした。この操作を各凹部ごとに行った後、幅・深さ各々について全凹部を加算し(ΣW、ΣL)、抽出した凹部の個数nで除することで全凹部の平均幅W、平均深さLを算出した。また、ΣWを、接線と実繊維周で囲まれた略多角形の周長Cで除して繊維表面における凹部の存在比率を算出した。
平均幅W[μm]=ΣW[μm]/n[個]
平均深さL[μm]=ΣL[μm]/n[個]
存在比率[%]=ΣW[μm]/C[μm]×100
〔平均断面充実度%〕
走査型電子顕微鏡にて繊維の断面形状を測定し、繊維の断面積をS1、図3に示すとおり、その繊維を取り囲む最小の真円の面積をS2とし、任意の断面10箇所について、以下の式により断面充実度を算出し、その平均値を求めた。
断面充実度(%)=(S1/S2)×100
[セメント成形板の作成方法]
(1)配合
繊維:2wt%
パルプ(セロファイバー、パルテック株):3wt%
セメント(普通ポルトランドセメント):95wt%
(2)作成
必要量の繊維、パルプ、セメント、水を加えてTAPPI離解機にて分散後、綿布上に流し込んで抄造。得られた抄造シートを型枠に10枚積層し、プレス機にて75kg/cmの圧力で加圧脱水し、タテ20cmxヨコ25cm、厚さ0.4cmの成形板にする。これを50℃湿空下24hr養生後、20℃湿空下14日養生して得た。
[セメント成形板の曲げ試験]
JIS A1408に準拠し、幅2.5cm、長さ8cm、厚さ0.4cmに切り出した試験片をスパン5cmで曲げ試験を行い、MOR(Modulus of Rapture)における曲げ強度および曲げたわみで示した。尚、曲げ強度は応力ひずみ曲線の最大応力を示し、曲げたわみは最大応力時のひずみ量を示す。
曲げ強度は次の式から嵩密度1.7に規格化した補正強度を示した。
補正曲げ強度=測定曲げ強度×(1.7/嵩比重)
粘度平均重合度1700、鹸化度99.9モル%のPVAを濃度16.5質量%となる様に水に添加し、その後硼酸3.0質量%/PVAも添加して、90℃にて溶解し、PVA紡糸原液を得た。得られた紡糸原液を、ホール数1000のノズルを通し、離浴速度3m/分で苛性ソーダ15g/Lと芒硝350g/Lを含有する70℃の水溶液よりなる固化浴中に湿式紡糸した。その後、紡糸筒途中で容量比で75%となるように70℃の水を注入し、水注入後の固化浴組成が苛性ソーダ11g/L、芒硝が260g/Lとなるように調整して固化を遅らせた後、離浴した。次いで中和、湿延伸、水洗、乾燥を行った後、230℃で乾熱延伸を施して、PVA系繊維を得た。得られた繊維の単繊維繊度は2.0dtexであった。全延伸倍率は20倍であった。また、得られた繊維を6mmにカットし、上述のセメント成形体の製造方法に従い、成形物を得た。得られた繊維の物性を表1に、この繊維を用いて得られた成形物の物性を表2に示す。同等の繊維強度である比較例1よりも成形物の曲げ強度が高く、接着性の効果が表れていた。
PVA紡糸原液を得る際にPVA濃度を10.0質量%としたことと、紡糸筒途中で水を注入しないこと以外は実施例1と全く同様にして繊維およびセメント成形物を得た。得られた繊維の物性を表1に、この繊維を用いて得られた成形物の物性を表2に示す。同等の繊維強度である比較例1よりも成形物の曲げ強度が高く、接着性の効果が表れていた。
PVA紡糸原液を得る際にPVA濃度を10.0質量%としたこと以外は実施例1と全く同様にして繊維およびセメント成形物を得た。得られた繊維の物性を表1に、成形物の物性を表2に示す。同等の繊維強度である比較例1よりも成形物の曲げ強度が高く、接着性の効果が表れていた。
紡糸原液を得るに際し、四国化成工業(株)製硼酸アルミニウムウィスカー(商品名:アルボレックスY)をPVAに対して3質量%添加する以外は、実施例2と全く同様にして繊維およびセメント成形物を得た。得られた繊維の物性を表1に、成形物の物性を表2に示す。同等の繊維強度である比較例1よりも成形物の曲げ強度が高く、接着性の効果が表れていた。
紡糸原液を得るに際し、クニミネ工業(株)製モンモリロナイト(商品名:クニピアF)をPVAに対して3質量%添加する以外は、実施例2と全く同様にして繊維およびセメント成形物を得た。得られた繊維の物性を表1に、成形物の物性を表2に示す。同等の繊維強度である比較例1よりも成形物の曲げ強度が高く、接着性の効果が表れていた。
比較例1
原液濃度を18%、離浴速度を8m/分とする以外は実施例2と全く同様にして繊維およびセメント成形物を得た。得られた繊維の物性を表1に、成形物の物性を表2に示す。皺がないため、繊維強度は高いにも関わらず、成形物の曲げ強度は低いものであった。
比較例2
実施例1において、全延伸倍率が6倍である以外は実施例2と全く同様にして繊維およびセメント成形物を得た。得られた繊維の物性を表1に、成形物の物性を表2に示す。所定の皺は得られているが、繊維強度が低いため、成形物の曲げ強度は低く、曲げたわみも低いものであった。
比較例3
モンモリロナイトの添加量を0.3質量%とする以外は実施例5と全く同様にして繊維およびセメント成形物を得た。得られた繊維の物性を表1に、成形物の物性を表2に示す。
凹凸が僅かであるため、繊維強度は高いにも関わらず、成形物の曲げ強度は低いものであった。
Figure 2015183307
Figure 2015183307
本発明のPVA系繊維の繊維側面写真 PVA系繊維の表面に、筋状の凹部が繊維の長さ方向に平行に存在している。 本発明のPVA系繊維の繊維断面写真 各凹部はある程度深さを持ったものでありながら、繊維断面形状は略円形である。 断面充実度を示す模式図 繊維断面模式図と、その繊維断面を取り囲む最小の真円をそれぞれ示す。
1 凹部
2 繊維断面模式図(断面積:S1)
3 繊維断面を取り囲む最小の真円(面積:S2)

Claims (6)

  1. 繊維表面に繊維の長さ方向に沿って筋状の凹部を有し、下記(1)〜(4)をともに満足するポリビニルアルコール系繊維。
    (1)前記筋状の凹部の平均深さが0.05〜2μmであること
    (2)前記筋状の凹部の開口部の平均幅が0.1〜4μmであること
    (3)前記筋状の凹部の存在比が5%以上であること
    (4)破断強度が8cN/dtex以上であること
  2. 結晶化度が40%以上、配向度が60%以上である請求項1に記載のポリビニルアルコール系繊維。
  3. ポリビニルアルコール系紡糸原液を固化性の高い固化浴で固化させる工程と、その後、固化性の低い固化浴で固化させる工程を含む湿式紡糸方法によって得られる請求項1または2に記載のポリビニルアルコール系繊維。
  4. アスペクト比が2以上の化合物を含有している請求項1〜3のいずれかに記載のポリビニルアルコール系繊維。
  5. ポリビニルアルコール系紡糸原液を、固化性の高い固化浴で固化させる工程と、その後、固化性の低い固化浴で固化させる工程を含む、繊維表面に繊維の長さ方向に沿って筋状の凹部を有し、下記(1)〜(4)をともに満足する、ポリビニルアルコール系繊維の製造方法。
    (1)前記筋状の凹部の平均深さが0.05〜2μmであること
    (2)前記筋状の凹部の開口部の平均幅が0.1〜4μmであること
    (3)前記筋状の凹部の存在比が5%以上であること
    (4)破断強度が8cN/dtex以上であること
  6. アスペクト比が2以上の化合物を紡糸原液中に含む、請求項5に記載のポリビニルアルコール系繊維の製造方法。
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