ここで、特許文献2に記載のインクジェットプリンタにおいても、特許文献1に記載されているように、出荷時にインクジェットヘッドに保存液を充填しておくことにより、インクジェットヘッドに空気が残留してしまうのを防止することができる。ただし、この場合には、インクジェットヘッドに加え、インクジェットヘッドに連通するバッファタンクやチューブにも保存液を充填する必要がある。一方で、バッファタンクやチューブはインクジェットヘッドよりも容積が大きい。そのため、この場合には、保存液の量はある程度多くなり、イニシャルパージによって保存液をインクに置換する際に消費されるインクの量が多くなってしまう。
そこで、特許文献2に記載のインクジェットプリンタの製造時に、特許文献1に記載されているような専用の保存液を充填する代わりに、ノズルから吐出するのと同じ種類のインクを充填しておき、このインクを用いて印刷を行うようにすれば、上述のようなイニシャルパージを行う必要がなく、また、保存液が充填されている場合と同様、インクジェットヘッドへの空気の入り込みを防止することもできる。
しかしながら、出荷時にインクジェットヘッド内にインクを充填した場合には、インクジェットプリンタの初回の使用時までの比較的長期間、インクジェットヘッド内のインクが流れることなく滞留することとなる。インクジェットヘッド内のインクが長期間滞留すると、ノズル内でインクが増粘して固まってしまい、パージ等を行っても固まったインクを排出することができなくなってしまう虞がある。そして、この場合には、ノズルからインクを吐出することができなくなってしまう。あるいは、パージなどによって固まったインクをノズルから排出することができたとしても、そのために消費されるインクの量が多くなってしまう。
本発明の目的は、長期間使用されなくてもノズルから内部の液体を容易に排出可能であり、且つ、初回の使用時における液体の消費量を極力少なくすることが可能な液体吐出装置、及び、液体吐出装置の保存方法を提供することである。
第1の発明に係る液体吐出装置は、第1の液体を吐出するノズルを含む第1液体流路を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記第1液体流路に連通する第2液体流路を有する液体供給部と、を備え、前記液体吐出ヘッドを使用しない保存状態において、前記第1液体流路の、少なくとも、前記ノズル側の下流側流路部分には、前記第1の液体よりも粘度の低い第2の液体が充填され、前記第2液体流路の、少なくとも、前記第1液体流路とは反対側の上流側流路部分には、前記第1の液体が充填されている。
液体吐出ヘッドを使用しない状態(出荷前の未使用状態、あるいは、長期間使用する予定がなく保管するときの状態など)に、液体吐出ヘッド内に第1の液体が充填されたまま長期間放置されると、特にノズル近傍における乾燥によって、第1の液体が増粘する。そのため、次に液体吐出ヘッドを使用する際に、新しい第1液体を上流側から供給しても、ノズル内の増粘した第1の液体を排出することが難しく、ノズルから第1液体を吐出することが不可能になることもある。また、ノズル内の増粘した第1の液体を排出できたとしても、そのために消費される第1の液体の量が多くなってしまう。
本発明では、液体吐出ヘッド内の第1液体流路の、少なくともノズル側の流路部分には、ノズルから吐出する第1の液体よりも粘度の低い第2の液体が充填される。そのため、長期間の放置によって第2の液体が多少増粘しても、次に使用する際に、第2の液体をノズルから排出することが容易になる。
一方で、液体供給部の第2液体流路の、少なくとも第1液体流路とは反対側の流路部分には、第1の液体が充填されている。そのため、使用を開始する際に、第2の液体を、第1の液体で置換する際に消費される第1の液体の量を少なくすることができる。
第2の発明に係る液体吐出装置は、第1の液体を吐出するノズルを含む第1液体流路を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記第1液体流路に連通する第2液体流路を有する液体供給部と、を備え、前記液体吐出ヘッドを使用しない保存状態において、前記第1液体流路の、少なくとも、前記ノズル側の下流側流路部分には、前記第1の液体よりも揮発性の低い第2の液体が充填され、前記第2液体流路の、少なくとも、前記第1液体流路とは反対側の上流側流路部分には、前記第1の液体が充填されている。
本発明では、第1液体流路の上流側流路部分に、第1の液体よりも揮発性の低い第2の液体が充填される。そのため、長期間放置しても、第2の液体の増粘しにくく、次に使用する際に、第2の液体をノズルから排出することが容易になる。
第3の発明に係る液体吐出装置は、第1又は第2の発明に係る液体吐出装置において、前記液体供給部の前記第2液体流路は、その途中部にダンパー室を有し、前記ダンパー室の断面のアスペクト比が、このダンパー室に接続されている流路部分よりも大きく、前記第1の液体と前記第2の液体の境界が、前記ダンパー室内にある。
本発明によると、ダンパー室のアスペクト比は、その前後の流路部分と比べて大きい、即ち、より扁平な形状になっているため、ダンパー室内では2種類の液体が混ざりにくい。また、ダンパー室はその前後の流路部分と比べて流路抵抗が小さいため、仮にダンパー室内で2種類の液体が混ざっても、第1の液体がダンパー室から下流側の流路部分に拡散しにくい。
第4の発明に係る液体吐出装置は、第1又は第2の発明に係る液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドの前記第1液体流路と前記液体供給部の前記第2液体流路の間、あるいは、前記第1液体流路又は前記第2液体流路の途中部に配置された、フィルタをさらに備え、前記第1の液体と前記第2の液体の境界が、前記第1液体流路又は前記第2液体流路の、前記フィルタよりも上流側の流路部分にある。
本発明によると、フィルタの流路抵抗が、フィルタの上流側及び下流側のインク流路よりも大きいため、フィルタの上流側にある第1の液体が、フィルタの下流側に流れ込みにくくなる。
第5の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記第1の液体と前記第2の液体は、互いに混じり合わない液体である。
本発明によると、第1の液体と第2の液体が、互いに混じり合わない液体であるため、液体供給部内の第1の液体が、液体吐出ヘッド内へ流れ込みにくくなる。
第6の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第5のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記第2液体流路の前記第1液体流路との接続部分は、前記第1液体流路よりも上方に位置しており、前記第2の液体は、前記第1の液体よりも密度が大きい。
液体供給部が、液体吐出ヘッドの上方に位置している場合、液体供給部内の第2の液体が、重力によって液体吐出ヘッド内に流れこむことが考えられる。本発明では、液体吐出ヘッド内の第2の液体が、液体供給部内の第1の液体よりも密度が大きいため、上方の液体供給部から、液体吐出ヘッドへ、第1の液体が重力で流れ込みにくくなる。
第7の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第6の発明に係る液体吐出装置において、
前記液体供給部が、前記第2液体流路と接続された排気流路を有している。
本発明によると、排気流路を介して、第2液体流路に液体を導入する7、又は、第2液体流路から液体を排出することが可能となる。
第8の発明に係る液体吐出装置は、第7の発明に係る液体吐出装置において、前記排気流路が、外部との接続を行うための2つの接続部を有している。
液体吐出装置の使用時などに、排気流路に第1の液体が流れ込むことがある。排気流路に第1の液体が存在している状態で、排気流路を介して第2液体流路に第2の液体を導入すると、第1の液体が混入した第2の液体が第2液体流路に充填されてしまう。そして、この後、第1の液体が混入した第2の液体を、第2液体流路から第1液体流路に流れ込ませることによって、第1液体流路の少なくとも下流側流路部分に充填すると、混入した第1の液体が、ノズル内で増粘して固まってしまう虞がある。これに対して、本発明では、排気流路が2つの接続部を有しているため、一方の接続部から排気流路に第2液体を導入するとともに、導入した第2の液体を他方の接続部から排出することにより、排気流路を第2の液体で洗浄し、排気流路に存在する第1の液体を排出することができる。したがって、排気流路の洗浄後に、排気流路を介して第2液体流路に第2の液体を充填すれば、充填される第2の液体に第1の液体が混ざってしまうことがない。
第9の発明に係る液体吐出装置は、第8又は9の発明に係る液体吐出装置において、前記液体供給部と接続され、前記第1の液体を貯留する第1液体貯留部と、前記排気流路と接続可能に構成され、前記第2の液体を貯留する第2液体貯留部とを有し、前記第2液体貯留部における前記第2の液体の液面が、前記第1液体貯留部における前記第1の液体の液面よりも高い。
本発明によると、第2液体貯留部を排気流路と接続すると、第2液体貯留部に貯留された第2の液体の液面と、第1液体貯留部に貯留された第1の液体の液面との水頭差により、ポンプ等を駆動することなく、排気流路から第2液体流路に第2の液体を充填することができる。そして、この場合には、この後、第2液体流路に上流側から第1の液体を供給することにより、第2液体流路の少なくとも上流側流路部分に第1の液体を充填するとともに、第2液体流路に充填されていた第2の液体を、第1液体流路の少なくとも下流側流路部分に充填することができる。
第10の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第8のいずれかの発明に係る前記液体供給部と接続可能に構成され、且つ、前記第2の液体を貯留する液体貯留部を有する。
本発明によると、液体吐出装置が第2の液体を貯留する液体貯留部を有するため、長期保存時に、液体貯留部から液体供給部を介して液体吐出ヘッドに第2の液体を充填することが可能となる。
第11の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第8のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記液体供給部と接続され、且つ、前記第1の液体を貯留する第1液体カートリッジが装着されるカートリッジ装着部を有し、前記カートリッジ装着部は、前記第2の液体を貯留する第2液体カートリッジも装着可能に構成されている。
本発明によると、第1液体カートリッジが装着されるカートリッジ装着部に、第2の液体を貯留する第2液体カートリッジを装着可能であるため、長期保存時に、第2液体カートリッジから第2の液体を供給することが可能となる。
第12の発明に係る液体吐出装置の保存方法は、第1の液体を吐出するノズルを含む第1液体流路を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記第1液体流路に連通する第2液体流路を有する液体供給部と、を備えた、液体吐出装置の、前記液体吐出ヘッドを使用しないときの保存方法であって、前記第1液体流路の、少なくとも、前記ノズル側の下流側流路部分に、前記第1の液体よりも粘度の低い第2の液体を充填し、前記第2液体流路の、少なくとも、前記第1液体流路とは反対側の上流側流路部分には、前記第1の液体を充填することを特徴とする液体吐出装置の保存方法。
第13の発明に係る液体吐出装置の保存方法は、第1の液体を吐出するノズルを含む第1液体流路を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記第1液体流路に連通する第2液体流路を有する液体供給部と、を備えた、液体吐出装置の、前記液体吐出ヘッドを使用しないときの保存方法であって、
前記第1液体流路の、少なくとも、前記ノズル側の下流側流路部分に、前記第1の液体よりも揮発性の低い第2の液体を充填し、
前記第2液体流路の、少なくとも、前記第1液体流路とは反対側の上流側流路部分には、前記第1の液体を充填することを特徴とする液体吐出装置の保存方法。
第14の発明に係る液体吐出装置の保存方法は、第12又は第13の発明に係る液体吐出装置の保存方法において、前記液体供給部が、前記第2液体流路に接続された排気流路を有し、前記排気流路を介して前記第2液体流路に前記第2の液体を充填した後に、前記第2液体流路に、上流側から前記第1の液体を充填することによって、前記第2液体流路の少なくとも前記上流側流路部分に前記第1の液体を充填するとともに、前記第2液体流路に充填されていた前記第2の液体を、前記第1液体流路の少なくとも前記下流側流路部分に充填する。
第15の発明に係る液体吐出装置の保存方法は、第14に係る液体吐出装置の保存方法において、前記排気流路が、外部との接続を行うための2つの接続部を有し、一方の前記接続部から前記排気流路に前記第2の液体を導入するとともに、導入した前記第2の液体を他方の前記接続部から排出することで、前記排気流路を前記第2の液体で洗浄し、前記排気流路の洗浄後に、前記排気流路を介して前記第2液体流路に前記第2の液体を充填する。
本発明によれば、液体吐出ヘッドを使用しない保存状態において、液体吐出ヘッド内の第1液体流路の、少なくともノズル側の下流側流路部分に、ノズルから吐出する第1の液体よりも粘度又は揮発性の低い第2の液体が充填される。そのため、次に使用する際に、第2の液体をノズルから排出することが容易になる。一方で、液体供給部の第2液体流路の、少なくとも第1液体流路とは反対側の上流側流路部分には、第1の液体が充填されている。そのため、使用を開始する際に、第2の液体を、第1の液体で置換する際に消費する、第1の液体の量を少なくすることができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1に示すように、プリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、プラテン2、キャリッジ3、サブタンク4、インクジェットヘッド5(本発明の「液体吐出ヘッド」)、カートリッジホルダ6、給紙ローラ7、排紙ローラ8、メンテナンスユニット9、制御装置10などを備えている。なお、図1に示すように前後左右の各方向をプリンタの「前」「後」「左」「右」と定義する。また、図1の紙面手前側を「上」、紙面向こう側を「下」とそれぞれ定義する。以下では、前後左右上下の各方向語を適宜使用して説明する。
(プリンタの概略構成)
プラテン2の上面には、被記録媒体である記録用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、走査方向に平行に延びる2本のガイドレール11、12が設けられる。
キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール11、12に沿って走査方向に移動可能に構成されている。キャリッジ3には無端状の駆動ベルト14が連結され、キャリッジ駆動モータ13によって駆動ベルト14が駆動されることで、キャリッジ3は走査方向に移動する。
サブタンク4は、キャリッジ3に搭載されている。図2、図3に示すように、サブタンク4の上面には、チューブジョイント16が設けられており、カートリッジホルダ6(本発明の「カートリッジ装着部」)と接続された4本のインク供給チューブ17がチューブジョイント16に接続されている。カートリッジホルダ6には、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインク(本発明の「第1の液体」)がそれぞれ貯留された4つのインクカートリッジ15が交換可能に装着されている。また、カートリッジホルダ6には、後述する保存液カートリッジ35を装着することもできるようになっている。なお、本実施の形態では、カートリッジホルダ6とこれに装着されたインクカートリッジ15とを合わせたものが、本発明の「第1液体貯留部」に相当する。
そして、4つのインクカートリッジ15にそれぞれ貯留された4色のインクが、4本のインク供給チューブ17を介して、サブタンク4に供給される。また、サブタンク4の右側面には、サブタンク4内の流路に混入した気泡を排出するための、4つの排気ユニット27が設けられている。サブタンク4、及び、排気ユニット27の詳細構成については後述する。
インクジェットヘッド5は、サブタンク4の下部に取り付けられている。インクジェットヘッド5は、その下面であるインク吐出面5aに形成された複数のノズル18を含むヘッド内流路19(本発明の「第1液体流路」)を有する。インクジェットヘッド5は、サブタンク4から供給されたインクを、複数のノズル18からそれぞれ吐出する。複数のノズル18は、4色のインクにそれぞれ対応して配列されて、4列のノズル列を構成している。
図1に戻り、給紙ローラ7と排紙ローラ8は、図示しない搬送モータによってそれぞれ同期して回転駆動される。給紙ローラ7と排紙ローラ8は協働して、プラテン2に載置された記録用紙Pを前方(以下、搬送方向ともいう)に搬送する。
メンテナンスユニット9は、プラテン2よりも走査方向の右側の位置に配置されている。このメンテナンスユニット9は、インクジェットヘッド5の吐出機能の維持、回復のための動作を行う。具体的には、メンテナンスユニット9は、インクジェットヘッド5の複数のノズル18からインクを強制的に吸引排出し、異物、気泡、あるいは、乾燥により高粘度化したインク等をインクジェットヘッド5から排出する、いわゆる吸引パージを行う。また、メンテナンスユニット9は、サブタンク4内の流路に混入している気泡を、インクジェットヘッド5へ流れ込む前に排気ユニット27から吸引して排出する、いわゆる排気パージを行う。
<サブタンク、及び、4つの排気ユニットの構成>
次に、サブタンク4、及び、サブタンク4に設けられた4つの排気ユニット27の構成について、具体的に説明する。
図2、図3に示すように、サブタンク4は、水平面に沿って延在する本体部分20と、この本体部分20の後端部から鉛直下方に延びる連結部分21とを有する。サブタンク4には、4色のインクがそれぞれ流れる4つのインク供給流路22(本発明の「第2液体流路」)が形成されている。なお、図2では、1つのインク供給流路22については全体が図示されているが、残りの3つのインク供給流路22については、図面の簡単のため、一部の図示を省略している。また、図3では、インクジェットヘッド5を側面図で図示している。
各インク供給流路22は、本体部分20に形成されたダンパー室24と、連結部分21に形成された連通流路25を含む。本体部分20の上下両面にはそれぞれ合成樹脂製の可撓性フィルム23が貼り付けられ、本体部分20に形成されたダンパー室24を含む流路が、フィルム23によって覆われている。ダンパー室24は、インク供給流路22のダンパー室24の上流側及び下流側に接続される流路部分よりも、断面のアスペクト比(縦方向の長さに対する横方向の長さ、扁平率)が大きくなっている。すなわち、ダンパー室24は、インク供給流路22のダンパー室24の上流側及び下流側に接続される流路部分よりも断面が扁平になっている。ダンパー室24は、フィルム23の変形によって、インク供給流路22を流れるインクの圧力変動を吸収する。サブタンク4の連結部分21はインクジェットヘッド5に接続されている。インク供給流路22を流れるインクは、連結部分21に形成された連通流路25からインクジェットヘッド5へ供給される。また、連結部分21とインクジェットヘッド5との接続部分にはフィルタ31が設けられている。これにより、連通流路25からインクジェットヘッド5にインクが流れ込む際に、インク中の異物がフィルタ31に捕捉される。
また、サブタンク4の本体部分20には、4つのインク供給流路22にそれぞれ接続された4つの排気流路26が形成されている。4つの排気流路26は、サブタンク4の右側面に設けられた4つの排気ユニット27にそれぞれ接続されている。排気ユニット27の内部空間28は、上下方向に延びており、その上端において排気流路26と接続され、その下端が開口している。なお、本実施の形態では、排気流路26と排気ユニット27の内部空間28とを合わせたものが、本発明の「排気流路」に相当する。
また、内部空間28の下側の部分には、排気弁29が設けられている。排気弁29は、図示しない弁駆動機構によって開閉可能となっている。なお、以下では、図4のように排気弁29を塗りつぶして図示ことによって、排気弁29が閉じていることを示し、図5(b)のように排気弁29を塗りつぶさずに図示することによって、排気弁29が開いていることを示す。
<メンテナンスユニットの構成>
図1に示すように、メンテナンスユニット9は、プラテン2よりも走査方向の右側の位置(以下、メンテナンス位置ともいう)に配置されている。メンテナンスユニット9は、ノズルキャップ36、排気キャップ37、吸引ポンプ38、切換装置39等を備えている。
(ノズルキャップ、排気キャップ)
ノズルキャップ36と排気キャップ37は、図示しないキャップ駆動部により、上下に一体的に駆動される。排気キャップ37は、ノズルキャップ36の右側に配置されている。キャリッジ3がメンテナンス位置に移動すると、ノズルキャップ36がインクジェットヘッド5のインク吐出面5aと対向し、排気キャップ37がサブタンク4の4つの排気ユニット27の下面と対向する。その状態で、ノズルキャップ36と排気キャップ37が上方へ移動されると、ノズルキャップ36がインクジェットヘッド5のインク吐出面5aに密着し、排気キャップ37が4つの排気ユニット27の下面に密着する。これにより、複数のノズル18がノズルキャップ36によって覆われ、また、4つの排気ユニット27の下端部に形成された接続部30が排気キャップ37によって共通に覆われる。
(吸引ポンプ)
吸引ポンプ38は、切換装置39による切り換えによって、ノズルキャップ36と排気キャップ37の何れか一方と選択的に接続される。また、吸引ポンプ38は、ノズルキャップ36及び排気キャップ37と接続されるのと反対側において、廃液タンク40に接続されている。吸引ポンプ38がノズルキャップ36と接続されている状態では、インクジェットヘッド5の複数のノズル18からのインクの吸引排出(吸引パージ)が可能となる、また、吸引ポンプ38が排気キャップ37と接続されている状態では、サブタンク4からの気泡の吸引排出(排気パージ)が可能となる。
次に、プリンタ1の保存状態について説明する。プリンタ1の保存状態とは、例えば、プリンタ1の出荷前の未使用状態、プリンタ1を長期間使用する予定がなく保管するときの状態などである。図4は、インク供給チューブ17、インク供給流路22、ヘッド内流路19、排気流路26及び排気ユニット27の内部流路28の接続関係を示す図である。ここで、図4では、ノズル18を含めてヘッド内流路19を示すために、インクジェットヘッド5の向きを実際とは異なる向きで図示し、排気流路26及び内部流路28を示すために、排気流路26及び排気ユニット27の位置を、実際の位置とは異なる位置に図示している。また、ノズルキャップ36と排気キャップ37とは一体的に形成されたものであるが、図4では、便宜上、これらを別々に図示している。
図4に示すように、プリンタ1は、保存状態において、インク供給チューブ17及び、インク供給流路22のダンパー室24の途中部よりも上流側の流路部分に、インクIが充填されている。一方で、インク供給流路22のインクIが充填されている部分よりも下流側の流路部分、ヘッド内流路19、排気流路26、及び、排気ユニット27の内部流路28には、保存液Hが充填されている。ここで、図4では、カートリッジホルダ6にインクカートリッジ15が装着されているが、プリンタ1は、保存状態において、カートリッジホルダ6からインクカートリッジ15が取り外されていてもよい。また、本実施の形態では、後述するインクI及び保存液Hの充填の過程で排気流路26及び内部流路28に保存液Hが充填されるが、排気流路26及び内部流路28には保存液Hが充填されていなくてもよい。
なお、本実施の形態では、インク供給チューブ17及び、インク供給流路22のダンパー室24の途中部よりも上流側の流路部分を合わせたものが、本発明の「上流側流路部分」に相当する。また、ヘッド内流路19のうち、ノズル18側の部分が、本発明の「下流側流路部分」に相当する。
保存液Hは、インクIよりも粘度の低い液体である。具体的には、保存液Hは、例えば、インクIから色材を抜いた液体である。あるいは、インクIの溶剤が水を主成分とするものである場合に、保存液Hが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールなどを主成分とするものであってもよい。
あるいは、保存液Hは、インクよりも揮発性の低い液体であってもよい。具体的には、インクIの溶剤及び保存液Hが、ともに水にグリセリンを混ぜたものであり、保存液Hが、インクIよりもグリセリンの含有量の多いものとなっている。あるいは、インクIの溶剤及び保存液Hは、水に、グリセリンの代わりに、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールなどのうち、いずれかを混ぜたものであってもよい。
また、このとき、保存液HはインクIよりも密度が大きいものであることが好ましい。例えば、インクIの溶剤及び保存液が水とグリセリンを主成分とするものである場合に、保存液Hにおけるグリセリンの含有量を、インクIにおけるグリセリンの含有量よりも多くすれば、保存液HをインクIよりも密度の大きいものとすることができる。
また、保存液Hは、インクIと混ざらない液体であることが好ましい。具体的には、インクIと保存液Hとの溶解度パラメータ(SP値)の差が10以上であることが好ましい。ここで、インクIと保存液Hとの比重の差が大きいほど、インクIと保存液HとのSP値の差は大きくなる。また、インクIと保存液Hとの粘度の差が大きいほど、インクIと保存液HとのSP値の差は大きくなる。また、インクIと保存液Hの極性が異なっている場合にも、インクIと保存液HとのSP値の差は大きくなる。あるいは、保存液Hを界面活性剤が添加されたものとすることによっても、保存液HをインクIと混ざらないものとすることができる。あるいは、保存液Hを、下限臨界溶解温度(LCST)を有するイオン液体(低温では水と相溶し且つ高温では水と相分離するイオン液体)とし、LCST以上の環境温度で、プリンタ1を保存するようにしても、保存液HをインクIと混ざらないものとすることができる。
そして、本実施の形態では、プリンタ1の保存時に、インク供給チューブ17、インク供給流路22、ヘッド内流路19にインクI及び保存液Hが充填されているため、インク供給チューブ17、インク供給流路22、ヘッド内流路19に空気が入り込んでしまうのを防止することができる。
ここで、本実施の形態とは異なり、プリンタ1の保存時に、インク供給チューブ17、インク供給流路22、ヘッド内流路19全てに保存液Hが充填された状態とすることも考えられる。この場合でも、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びインクジェットヘッド5内のインク流路に空気が入り込んでしまうのを防止することができる。
しかしながら、この場合には、容積の大きいインク供給チューブ17やインク供給流路22に保存液Hが充填されることになるため、保存液Hの量はある程度多くなる。そのため、プリンタ1の使用時に、吸引パージ(イニシャルパージ)を行って、インク供給チューブ17、インク供給流路22、ヘッド内流路19内の保存液HをインクIに置換する際に、消費されるインクの量が多くなってしまう。
一方、本実施の形態とは異なり、プリンタ1の保存時に、インク供給チューブ17、インク供給流路22、ヘッド内流路19全てにインクIが充填された状態とすることも考えられる。この場合でも、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びインクジェットヘッド5内のインク流路に空気が入り込んでしまうのを防止することができる。また、この場合には、プリンタ1の初回の使用時に保存液HをインクIに置換する必要がない。
しかしながら、この場合には、プリンタ1が長期間放置されたときに、ノズル18内のインクが増粘して固まり、吸引パージなどを行っても、ノズル18内の固まったインクを排出できず、ノズル18からインクを吐出させることができなくなってしまう虞がある。あるいは、吸引パージなどによってノズル18から固まったインクを排出することができたとしても、吸引パージなどによって消費されるインクの量が多くなってしまう虞がある。
そこで、本実施の形態では、上述したように、インク供給チューブ17、インク供給流路22のダンパー室24の途中部よりも上流側の流路部分にインクIを充填し、インク供給流路22のダンパー室24の途中部よりも下流側の流路部分、及び、ヘッド内流路19に保存液Hを充填している。これにより、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19全てに保存液Hを充填した場合よりも、イニシャルパージにおけるインクの消費量を少なくすることができる。
また、この場合には、ノズル18を含むヘッド内流路19に保存液Hが充填されているため、保存液HがインクIよりも粘度の低い液体である場合には、保存液Hが多少増粘しても、ノズル18から容易に保存液Hを排出することができる。したがって、保存液Hを排出するために消費されるインクの量を少なくすることができる。一方、保存液HがインクIよりも揮発性の低い液体である場合には、保存液Hが増粘しにくいため、ノズル18から容易に保存液Hを排出することができる。したがって、保存液Hを排出するために消費されるインクの量を少なくすることができる。
また、本実施の形態では、インクIと保存液Hの境界Bがダンパー室24内に位置するように、インクI及び保存液Hを充填している。ダンパー室24は、上述したように、インク供給流路22のダンパー室24の上流側及び下流側に接続される流路部分よりも断面のアスペクト比が大きく、扁平な断面形状を有している。そのため、ダンパー室24内でインクIと保存液Hとが混ざりにくい。さらに、ダンパー室24は、インク流路の他の部分よりも流路抵抗が小さいため、仮に、ダンパー室24内にインクIと保存液Hとが混ざったとしても、インクIは、ダンパー室24よりも流路抵抗の大きい下流側の流路部分に拡散しにくい。したがって、インクIがヘッド内流路19に流れ込んでしまうのを防止することができる。
また、ダンパー室24は、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19によって形成されるインク流路のうち、フィルタ31よりも上流側に位置している。そのため、インクIと保存液Hとの境界Bは、フィルタ31の上流側に位置している。一方、上記インク流路のうち、フィルタ31における流路抵抗は、他の流路部分の流路抵抗よりも高くなっている。したがって、仮に、インクIがダンパー室24から下流側に流れ出たとしても、インクIはフィルタ31よりも下流側のヘッド内流路19に流れ込みにくい。
また、本実施の形態では、インクジェットヘッド5の上方にサブタンク4が配置されていることにより、ヘッド内流路19の上方に連通流路25が配置されている。したがって、保存液HをインクIよりも密度の大きいものとすれば、仮に、インクIが連通流路25まで流れ込んだとしても、重力によって、インクIが連通流路25からヘッド内流路19に流れ込んでしまうといったことは起こりにくい。
次に、プリンタ1を保存状態とするために、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19にインクI及び保存液Hを充填する方法について説明する。
プリンタ1を製造した直後には、図5(a)に示すように、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19にインクIを充填し、ノズル18からのインクの吐出検査等を行う。また、プリンタ1の使用時にも、図5(a)に示すように、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19にインクIが充填される。以下では、このように、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19にインクIが充填されている状態から、図4に示すようにインクI及び保存液Hを充填する方法について説明する。
図4に示すようにインクI及び保存液Hを充填するためには、まず、図5(b)に示すように、カートリッジホルダ6に装着していたインクカートリッジ15を、保存液Hが貯留された保存液カートリッジ35に取り換える。また、ノズルキャップ36をインク吐出面5aに密着させ、排気キャップ37を排気ユニット27の下面に密着させ、排気弁29を開く。また、切換装置39により、排気キャップ37と吸引ポンプ38とを接続する。そして、この状態で、吸引ポンプ38を駆動する。すると、インク供給チューブ17、及び、インク供給流路22のうち連通流路25よりも上流側の流路に充填されていたインクが、排気流路26及び内部流路28を介して接続部30から排出されるとともに、保存液カートリッジ35から供給された保存液Hが、インク供給チューブ17、インク供給流路22のうち連通流路25よりも上流側の流路、排気流路26及び内部流路28に充填される。なお、このときには、インク供給チューブ17、インク供給流路22のうち連通流路25よりも上流側の流路、排気流路26及び内部流路28のインクIが全て保存液Hに置換されるまで、吸引ポンプ38を駆動する。
次に、図6(a)に示すように、排気弁29を閉じ、切換装置39により、ノズルキャップ36と吸引ポンプ38とを接続する。そして、この状態で、吸引ポンプ38を駆動する。すると、連通流路25及びヘッド内流路19のインクIがノズル18から排出されるとともに、連通流路25及びヘッド内流路19に保存液Hが充填される。なお、このときには、連通流路25及びヘッド内流路19内のインクIが全て保存液Hに置換されるまで、吸引ポンプ38を駆動する。そして、これにより、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19全体に保存液Hが充填された状態となる。
次に、図6(b)に示すように、カートリッジホルダ6に装着していた保存液カートリッジ35をインクカートリッジ15に取り換える。また、排気弁29を開き、切換装置39により、排気キャップ37と吸引ポンプ38とを接続する。そして、この状態で吸引ポンプ38を駆動する。すると、インク供給チューブ17、インク供給流路22のうち連通流路25よりも上流側の流路に充填されていた保存液Hが、排気流路26及び内部流路28を介して排出されるとともに、これらの流路にインクカートリッジ15からインクが供給される。そして、インクカートリッジ15から供給されたインクIがダンパー室24に流れ込むまで、吸引ポンプ38を駆動すると、図4に示すように、インク供給チューブ17及びインク供給流路22のダンパー室24の途中部よりも上流側の流路部分にインクが充填され、インク供給流路22のダンパー室24の途中部よりも下流側の流路部分、ヘッド内流路19、排気流路26及び内部流路28に保存液Hが充填された状態とすることができる。
ここで、本実施の形態とは異なり、図5(a)に示す状態から、図5(b)で示した動作を行わずに、図6(a)に示すように、切換装置39により、ノズルキャップ36と吸引ポンプ38とを接続した状態で、吸引ポンプ38を駆動してもよい。この場合でも、インク供給チューブ17、インク供給流路22の及びヘッド内流路19全体に保存液Hが充填された状態とすることができる。
ただし、この場合には、インク供給チューブ17、インク供給流路22内のインクIが全て、フィルタ31及びヘッド内流路19を通ってノズル18から排出されることとなる。一方で、フィルタ31や、ノズル18を含むヘッド内流路19は、ある程度流路抵抗が大きくなっている。したがって、この場合には、図5(a)に示すような、インク供給チューブ17、インク供給流路22の及びヘッド内流路19全てにインクIが充填された状態から、図6(a)に示すような、インク供給チューブ17、インク供給流路22の及びヘッド内流路19全てに保存液Hが充填されたが状態にするのにかかる時間が長くなってしまう。
これに対して、本実施の形態では、インク供給チューブ17、インク供給流路22の連通流路25よりも上流側の流路に充填されたインクIについては、排気流路26及び内部流路28を介して排出し、連通流路25及びヘッド内流路19に充填されたインクIのみを、ノズル18から排出させている。したがって、上述した場合と比較して、図5(a)に示すような、インク供給チューブ17、インク供給流路22の及びヘッド内流路19全てにインクIが充填された状態から、図6(a)に示すような、インク供給チューブ17、インク供給流路22の及びヘッド内流路19全てに保存液Hが充填されたが状態にするのにかかる時間を短くすることができる。
また、本実施の形態では、カートリッジホルダ6に、インクカートリッジ15及び保存液カートリッジ35のいずれかを選択的に装着することができるため、上述したように、カートリッジホルダ6に保存液カートリッジ35を装着することによって、インク流路内に保存液Hを充填することができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
プリンタ1の保存時に充填されるインクIと保存液Hとの境界Bの位置は、ダンパー室24内であることには限られない。変形例1では、図7に示すように、プリンタ1の保存状態において、インク供給チューブ17及びインク供給流路22の連通流路25の下端部を除いた部分にインクIが充填され、連通流路25の下端部、ヘッド内流路19、内部流路28に保存液Hが充填されている。すなわち、インクIと保存液Hとの境界Bが、連通流路25内に位置している。この場合でも、インクIと保存液Hとの境界Bが、フィルタ31よりも上流側に位置しているため、インクIがヘッド内流路19に流れ込みにくい。また、保存液HがインクIよりも密度の大きいものである場合には、連通流路25内のインクIが重力によってヘッド内流路19に流れ込むといったことも起こりにくい。なお、図6(b)の状態で、上述の実施の形態の場合よりも吸引ポンプ38を駆動する時間を長くすれば、インクI及び保存液Hをこのように充填することができる。
また、上述の実施の形態では、サブタンク4とインクジェットヘッド5との接続部分にフィルタ31が設けられていたが、これには限られない。フィルタは、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19によって形成されるインク流路の別の部分に設けられていてもよい。この場合でも、インクIと保存液Hとの境界Bが、フィルタよりも上流側に位置していれば、インクIがヘッド内流路19に流れ込みにくい。
また、インクIと保存液Hとの境界Bは、ダンパー室24内や、フィルタ31よりも上流側に位置していることにも限られない。インクIと保存液Hとの境界は、インク供給チューブ17内、インク供給流路22のうちダンパー室24よりも上流側又は下流側の流路部分、ヘッド内流路19の上流側の流路部分など、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19のうち上述したのとは異なる部分に設けられていてもよい。そして、このとき、インクIと保存液Hとの境界Bは、ダンパー室24及びフィルタ31よりも下流側に位置していてもよい。
この場合でも、インク供給チューブ17及びインク供給流路22のうち、少なくともヘッド内流路19と反対側の上流側流路部分にインクIが充填されるため、イニシャルパージにおけるインクの消費量を少なくすることができる。また、ヘッド内流路19のうち、少なくともノズル18側の下流側流路部分に保存液Hが充填されるため、プリンタ1を使用する際に、ノズル18内の保存液Hを容易に排出することができる。
また、インクIと保存液Hとを充填する方法は、上述の実施の形態のものには限られない。変形例2では、図8に示すように、プリンタ1が、保存液Hが貯留された保存液タンク101(本発明の「液体貯留部」、「第2液体貯留部」)をさらに備えている。保存液タンク101は、カートリッジホルダ6(インクカートリッジ15)よりも上方に配置されている。これにより、保存液タンク101に貯留された保存液Hの液面Haが、カートリッジホルダ6に装着されたインクカートリッジ15に貯留されたインクIの液面Iaより上方に位置している。また、保存液タンク101は、切換装置39に接続されている。切換装置39は、ノズルキャップ36、排気キャップ37、吸引ポンプ38、保存液タンク101の接続関係を切り換える。また、変形例2でも、変形例1と同様、インクIと保存液Hとの境界Bが、連通流路25の下端部に位置している。
そして、変形例2では、インクI及び保存液Hを充填するために、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19全てにインクIが充填された状態から、図9(a)に示すように、ノズルキャップ36をインク吐出面5aに密着させ、排気キャップ37を排気ユニット27の下面に密着させ、排気弁29を開く。また、切換装置39により、保存液タンク101と排気キャップ37とを接続する。すると、保存液タンク101に貯留された保存液Hの液面Haと、インクカートリッジ15に貯留されたインクIの液面Iaの水頭差により、保存液タンク101に貯留されていた保存液Hが、排気流路26及び内部流路28を介して、インク供給流路22のうち連通流路25よりも上流側の流路部分に充填される。
次に、図9(b)に示すように、排気弁29を閉じ、切換装置39により、ノズルキャップ36と吸引ポンプ38とを接続する。そして、この状態で、吸引ポンプ38を駆動する。すると、ヘッド内流路19及び連通流路25に充填されていたインクIがノズル18から排出されるとともに、これらのインク流路に上流側から保存液Hが流れ込む。また、インク供給流路22には、上流側からインクIが充填される。そして、インクIが連通流路25の下端部に到達するまで、吸引ポンプ38を駆動すると、図8に示すように、インクIと保存液Hとの境界Bが連通流路25の下端部に位置するように、インクI及び保存液Hを充填することができる。
変形例3では、図10に示すように、プリンタ1が、変形例2と同様の保存液タンク101を備えているのに加えて、排気ユニット27の下端部に、2つの接続部201、202が設けられている。これに対応して、排気キャップ37には、排気ユニット27の下端部に密着した状態で、2つの接続部201、202とそれぞれ接続される2つの接続部37a、37bを有している。また、切換装置39は、ノズルキャップ36、吸引ポンプ38、保存液タンク101、接続部37a、37bの接続関係を切り換える。また、変形例3でも、変形例1、2と同様、インクIと保存液Hとの境界Bが、連通流路25の下端部に位置している。
そして、変形例3では、インクI及び保存液Hを充填するために、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19全てにインクIが充填された状態から、図11に示すように、ノズルキャップ36をインク吐出面5aに密着させ、排気キャップ37を排気ユニット27の下面に密着させ、排気弁29を開く。また、切換装置39により、保存液タンク101と接続部37aとを接続させるとともに、接続部37bと吸引ポンプ38とを接続させる。そして、この状態で吸引ポンプ38を駆動する。すると、保存液タンク101の保存液Hが、接続部201から内部流路28及び排気流路26に導入されるとともに、導入された保存液Hが接続部202から排出される。
次に、図12(a)に示すように、切換装置39により、保存液タンク101と接続部37aとの接続状態を維持したまま、吸引ポンプ38を停止させ、接続部37bと吸引ポンプ38との接続を遮断する。すると、変形例2と同様、排気流路26及び内部流路28を介して、インク供給流路22の連通流路25よりも上流側の流路部分に保存液Hが充填される。
次に、図12(b)に示すように、排気弁29を閉じ、切換装置39により、ノズルキャップ36と吸引ポンプ38とを接続する。そして、この状態で、吸引ポンプ38を駆動する。すると、変形例2と同様、ヘッド内流路19及び連通流路25に充填されていたインクIがノズル18から排出されるとともに、これらのインク流路に上流側から保存液Hが流れ込む。また、インク供給流路22には、上流側からインクIが充填される。そして、インクIが連通流路25の下端部に到達するまで吸引ポンプ38を駆動すれば、図10に示すように、インクIと保存液Hとの境界Bが連通流路25の下端部に位置するように、インクI及び保存液Hを充填することができる。
ここで、プリンタの使用などに、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19にインクを充填したときや、排気パージを行ったとき等に、インクがインク供給流路22から排気流路26や内部流路28に流れ込むことがある。そのため、上述の変形例2では、内部流路28及び排気流路26を介してインク供給流路22に充填される保存液Hに、内部流路28及び排気流路26内に存在していたインクが混入し、この後、インクが混入した保存液Hが、ヘッド内流路19に充填されることになる。ヘッド内流路19に充填された保存液Hにインクが混入していると、混入したインクがノズル18内で増粘してしまう虞がある。
これに対して、変形例3では、上述したように、接続部201から内部流路28及び排気流路26に保存液Hを導入するとともに、導入した保存液Hを接続部202から排出することによって、排気流路26や内部流路28を保存液Hで洗浄することができる。これにより、排気流路26及び内部流路28内のインクを排出することができる。したがって、この後、上述したように、内部流路28及び排気流路26を介してインク供給流路22に保存液Hを充填し、さらにこの保存液Hをヘッド内流路19に充填すれば、ヘッド内流路19に充填される保存液Hにインクが混入してしまうのを防止することができる。
また、上述の実施の形態では、カートリッジホルダ6にインクカートリッジ15及び保存液カートリッジ35のいずれかを選択的に装着することができるようになっており、カートリッジホルダ6に保存液カートリッジ35を装着することで、保存液Hを供給することができるようになっていたが、これには限られない。変形例4では、図13に示すように、プリンタ1が、変形例2、3と同様の保存液タンク101を備えているのに加えているのに加えて、インク供給チューブ17に、切換装置301が設けられている。切換装置301は、カートリッジホルダ6及び保存液タンク101のいずれかを選択的にインク供給チューブ17に接続する。なお、変形例4では、変形例2、3とは異なり、保存液タンク101は、切換装置39とは接続されていない。
この場合には、上述の実施の形態で、図5(b)のようにカートリッジホルダ6に装着されていたインクカートリッジ15を保存液カートリッジ35に取り換える代わりに、切換装置301によってインク供給チューブ17の接続先をカートリッジホルダ6から保存液タンク101に切り換える。また、上述の実施の形態において、図6(b)のようにカートリッジホルダ6に装着されていた保存液カートリッジ35をインクカートリッジ15に取り換える代わりに、切換装置301によって、インク供給チューブ17の接続先を保存液タンク101からカートリッジホルダ6に切り換える。これにより、上述の実施の形態と同様に、インク供給チューブ17及びインク供給流路22のうちダンパー室24の途中部よりも上流側の流路部分にインクIを充填し、インク供給流路22の内ダンパー室24の途中部よりも下流側の流路部分及びヘッド内流路19に保存液Hを充填することができる。
また、変形例4では、保存液タンク101は、カートリッジホルダ6と同じ高さ、あるいは、カートリッジホルダ6よりも低い位置に配置されているなど、保存液タンク101に貯留された保存液Hの液面Haが、カートリッジホルダ6に装着されたインクカートリッジ15に貯留されたインクIの液面Iaと同じ高さ、あるいは、液面Iaよりも低い位置に位置していてもよい。
また、変形例2〜4では、プリンタ1が、保存液Hが充填された保存液タンク101を備えた構成としたが、これには限られない。プリンタ1に保存液タンク101の代わりに、カートリッジホルダ6とは別の、保存液カートリッジ35(図5(b)等参照)を装着可能なカートリッジホルダを設けてもよい。
また、以上の例では、インクI及び保存液Hの充填を行うために、排気流路26及び内部流路28を使用したが、これには限られない。変形例5では、上述の実施の形態において、図5(a)の状態から、図14(a)に示すように、カートリッジホルダ6に装着されていたインクカートリッジ15を保存液カートリッジ35に取り換える。また、ノズルキャップ36をインク吐出面5aに密着させ、切換装置39によりノズルキャップ36と吸引ポンプ38とを接続する。そして、この状態で吸引ポンプ38を駆動する。すると、ノズル18から、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19内のインクIが排出されるとともに、これらのインク流路に保存液Hが充填される。なお、このときには、インク供給チューブ17、インク供給流路22及びヘッド内流路19内のインクIが全て保存液Hに置換されるまで、吸引ポンプ38を駆動する。
次に、図14(b)に示すように、カートリッジホルダ6に装着されていた保存液カートリッジ35をインクカートリッジ15に取り換えた上で、吸引ポンプ38を駆動する。すると、ノズル18から、ヘッド内流路19及びインク供給流路22に充填されていた保存液Hが排出されるとともに、これらの流路に上流側から保存液Hが充填される。また、インクカートリッジ15から、インク供給チューブ17及びインク供給流路22にインクIが供給される。そして、インクIがダンパー室24に流れ込むまで吸引ポンプ38を駆動すると、インク供給チューブ17及びインク供給流路22のうちダンパー室24の途中部よりも上流側の流路部分にインクIを充填し、インク供給流路22の内ダンパー室24の途中部よりも下流側の流路部分及びヘッド内流路19に保存液Hを充填することができる。
また、変形例5では、上述したように、インクI及び保存液Hの充填に排気流路26及び内部流路28を使用しないため、サブタンク4は、排気流路26及び排気ユニット27を有していないものであってもよい。
また、インクI及び保存液Hの充填の方法は、以上に説明したものには限られない。インク供給チューブ17及びインク供給流路22のうち、少なくともヘッド内流路19と反対側の上流側流路部分にインクIを充填し、ヘッド内流路19のうち、少なくともノズル18側の下流側流路部分に保存液Hを充填することができるのであれば、どのような方法でインクI及び保存液Hの充填を行ってもよい。
また、上述の実施の形態では、保存液HがインクIよりも密度が高い液体であり、ヘッド内流路19と接続される連通流路25がヘッド内流路19よりも上方に位置していたが、これには限られない。保存液Hの密度は、インクIの密度以下であってもよい。また、インク供給流路22のうち、ヘッド内流路19に接続される部分は、ヘッド内流路19と同じ高さ、あるいは、ヘッド内流路19よりも下方に配置されていてもよい。
また、上述の実施の形態では、インクIと保存液Hとが互いに混じり合わない液体であったが、これには限られない。インクIと保存液Hとは、互いに混じり合う液体であってもよい。この場合でも、例えば、インクIと保存液Hとの境界Bがダンパー室24内に配置されていれば、ダンパー室24内で保存液Hとインクとが混ざっても、保存液Hに混ざったインクIがダンパー室24の下流側には拡散しにくい。あるいは、インクIと保存液Hとの境界Bが、フィルタ31よりも上流側に位置していれば、インクIと保存液Hとが混ざっても、保存液Hに混ざったインクがフィルタ31よりも下流側に位置するヘッド内流路19には流れ込みにくい。
また、以上の例では、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。ノズルからインク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドを備えた、プリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。